(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026230
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】レプチン受容体を活性化させる抗原結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240220BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240220BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240220BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240220BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240220BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240220BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240220BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P3/06
A61P3/04
A61P3/10
A61P15/00
A61P25/28
A61P43/00 105
A61P43/00 121
C12P21/08
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202680
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2022169008の分割
【原出願日】2016-10-11
(31)【優先権主張番号】62/240,021
(32)【優先日】2015-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/359,757
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/375,495
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/393,143
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェスパー グロマダ
(72)【発明者】
【氏名】パナイオティス ステーヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ジュディス アルタレホス
(57)【要約】
【課題】レプチン耐性、およびレプチン欠損または低レプチン血症に関連した他の状態を処置するための代替手法を提供する。
【解決手段】本発明は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合する抗体およびこれらの抗原結合性断片を提供する。本発明の抗体は、アゴニスト抗体であり;すなわち、本発明の抗LEPR抗体がLEPRに結合すると、とりわけ、細胞内のレプチン受容体シグナル伝達が活性化する。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、LEPRへの結合についてレプチンと競合しない。本発明の抗体は、例えば、被験体におけるレプチンの通常の生物活性を模倣、置換、または補充するのに有用である。したがって、本発明の抗体および抗原結合性断片は、レプチン耐性およびレプチン欠損に関連した疾患および障害の治療的処置において有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合する抗体および抗体の抗原結合性断片、ならびにこれらの抗体を使用する治療法および診断法に関する。
【0002】
配列表
配列表の公式コピーは、2016_10_11_10178WO01_Sequence_Listing_as_Filed_ST25.TXTのファイル名、2016年10月11日の作成日、約99.6キロバイトのサイズを有するASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に明細書と同時的に提出されている。このASCII形式の文書に含まれている配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
レプチンは、脂肪組織によって主に発現されるポリペプチドホルモンであり、代謝の調節、エネルギー収支、および食物摂取に関与する。レプチン活性は、レプチン受容体との相互作用、およびこの受容体を通じたシグナル伝達によって媒介される。レプチン受容体(「LEPR」、「WSX」、「OB受容体」、「OB-R」、および「CD295」としても公知)は、大きい(818アミノ酸)細胞外ドメインを有するクラスIサイトカイン受容体ファミリーの一回膜貫通型受容体である。レプチン欠損、レプチン耐性、ならびにある特定のLEPRシグナル伝達欠損/シグナル伝達障害変異は、肥満、2型糖尿病、脂質異常症、リポジストロフィー、肝臓脂肪症、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患、重度インスリン耐性、妖精症/ドナヒュー症候群、ラブソン-メンデンホール症候群、ならびに関連合併症に関連している。レプチン耐性、レプチン欠損、および低レプチン血症(hypoleptinemia)(例えば、リポジストロフィー)に対処する治療手法は、罹患した個体への追加のレプチンまたはレプチン類似体の送達に主に注力されてきた。しかし、このような手法は、特にレプチン耐性個体において限られた効力を一般に示しており、有害な副作用が頻繁に付随する。よって、レプチン耐性、およびレプチン欠損または低レプチン血症に関連した他の状態を処置するための代替手法の必要性が当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合する抗体およびこれらの抗原結合性断片を提供する。本発明の抗体は、アゴニスト抗体であり;すなわち、本発明の抗LEPR抗体がLEPRに結合すると、とりわけ、細胞内のレプチン受容体シグナル伝達が活性化する。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、LEPRへの結合についてレプチンと競合しない。本発明の抗体は、例えば、被験体におけるレプチンの通常の生物活性を模倣、置換、または補充するのに有用である。したがって、本発明の抗体および抗原結合性断片は、レプチン耐性およびレプチン欠損に関連した疾患および障害の治療的処置において有用である。
【0005】
本発明の抗体は、全長(例えば、IgG1抗体またはIgG4抗体)の場合もあり、抗原結合性部分(例えば、Fab、F(ab’)2、またはscFv断片)だけを含む場合もあり、機能性に影響を及ぼす、例えば、残留するエフェクター機能を消失させるように修飾することができる(Reddyら、2000年、J. Immunol.、164巻:1925~1933頁)。
【0006】
本発明の例示的な抗LEPR抗体は、本明細書で表1および2に列挙されている。表1は、例示的な抗LEPR抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、ならびに軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のアミノ酸配列識別子を示す。表2は、例示的な抗LEPR抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3の核酸配列識別子を示す。
【0007】
本発明は、表1に列挙したHCVRのアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCVRを含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0008】
本発明はまた、表1に列挙したLCVRのアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0009】
本発明はまた、LEPRに特異的に結合し、表1に列挙したLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかと対になった表1に列挙したHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかを含むHCVRとLCVRとのアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む抗体またはこれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態によれば、本発明は、表1に列挙した例示的な抗LEPR抗体のいずれかの中に含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗体またはこれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66、および82/66からなる群より選択される。
【0010】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR1のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR1(HCDR1)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0011】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR2のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR2(HCDR2)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0012】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR3のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR3(HCDR3)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0013】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR1のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0014】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR2のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0015】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR3のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0016】
本発明はまた、LEPRに特異的に結合し、表1に列挙したLCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかと対になった表1に列挙したHCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかを含むHCDR3とLCDR3とのアミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む抗体またはこれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態によれば、本発明は、表1に列挙した例示的な抗LEPR抗体のいずれかの中に含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む抗体またはこれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号8/16、24/16、32/16、40/16、48/16、56/16、64/72、80/72、および88/72からなる群より選択される。
【0017】
本発明は、LEPRに特異的に結合し、表1に列挙した例示的な抗LEPR抗体のいずれかの中に含有される6つのCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のセットを含む抗体またはこれらの抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号4、6、8、12、14、16;20、22、24、12、14、16;28、30、32、12、14、16;36、38、40、12、14、16;44、46、48、12、14、16;52、54、56、12、14、16;60、62、64、68、70、72;76、78、80、68、70、72;および84、86、88、68、70、72からなる群より選択される。
【0018】
関連した実施形態では、本発明は、LEPRに特異的に結合し、表1に列挙した例示的な抗LEPR抗体のいずれかによって規定されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の中に含有される6つのCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のセットを含む抗体またはこれらの抗原結合性断片を提供する。例えば、本発明は、LEPRに特異的に結合し、配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66、および82/66からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の中に含有されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3アミノ酸配列セットを含む抗体またはこれらの抗原結合性断片を含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列中のCDRを同定するための方法および技法は、当技術分野で周知であり、本明細書に開示の指定されたHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列中のCDRを同定するのに使用することができる。CDRの境界を同定するのに使用することができる例示的な慣習としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義がある。一般論として、Kabat定義は、配列可変性に基づき、Chothia定義は、構造ループ領域の場所に基づき、AbM定義は、KabatとChothiaとの手法間の妥協案である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年);Al-Lazikaniら、J. Mol. Biol.、273巻:927~948頁(1997年);およびMartinら、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA、86巻:9268~9272頁(1989年)を参照。抗体内のCDR配列を同定するのに、公共データベースも利用可能である。
【0019】
本発明は、抗LEPR抗体またはこれらの部分をコードする核酸分子も提供する。例えば、本発明は、表1に列挙したHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCVR核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0020】
本発明はまた、表1に列挙したLCVRのアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したLCVRの核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0021】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR1のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCDR1の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0022】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR2のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCDR2の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0023】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR3のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCDR3の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0024】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR1のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したLCDR1の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0025】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR2のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したLCDR2の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0026】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR3のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したLCDR3の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0027】
本発明はまた、HCVRをコードする核酸分子であって、HCVRが、3つのCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3)のセットを含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列のセットが、表1に列挙した、例示的な抗LEPR抗体のうちのいずれかにより規定される核酸分子も提供する。
【0028】
本発明はまた、LCVRをコードする核酸分子であって、LCVRが、3つのCDR(すなわち、LCDR1、LCDR2、LCDR3)のセットを含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列のセットが、表1に列挙した、例示的な抗LEPR抗体のうちのいずれかにより規定される核酸分子も提供する。
【0029】
本発明はまた、HCVRおよびLCVRの両方をコードする核酸分子であって、HCVRが、表1に列挙したHCVRのアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含み、LCVRが、表1に列挙したLCVRのアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCVRの核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、および表2に列挙したLCVRの核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。本発明のこの態様に従う、ある特定の実施形態では、核酸分子は、HCVRおよびLCVRをコードし、HCVRおよびLCVRのいずれも、表1に列挙した、同じ抗LEPR抗体に由来する。
【0030】
本発明は、抗LEPR抗体の重または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することができる組換え発現ベクターも提供する。例えば、本発明は、上述した核酸分子、すなわち、表1に示されたHCVR、LCVR、および/またはCDR配列のうちのいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。このようなベクターが導入された宿主細胞、ならびに抗体または抗体断片の産生を許容する条件下で宿主細胞を培養することによって抗体またはこれらの部分を産生させる方法、ならびにそのように産生された抗体および抗体断片を回収する方法も、本発明の範囲内に含まれる。
【0031】
別の態様では、本発明は、LEPRに特異的に結合する組換えヒト抗体またはその断片、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。関連した態様では、本発明は、抗LEPR抗体と第2の治療剤との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態では、第2の治療剤は、抗LEPR抗体と有利には組み合わされる任意の薬剤である。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、抗LEPR抗体または本発明の抗体の抗原結合部分を使用してLEPRシグナル伝達を増強または刺激するための治療法を提供する。本発明のこの態様による治療法は、本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む。処置される障害は、in
vitroまたはin vivoで、LEPRシグナル伝達を刺激もしくは活性化することによって、またはレプチンの天然の活性を別段に模倣することによって改善、好転(ameliorate)、阻害、または防止される任意の疾患または状態である。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合し、LEPRシグナル伝達を活性化する、単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目2)
(i)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に約150nM未満のKDで25℃にて単量体ヒトLEPRに結合する;
(ii)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に約1分超のt1/2で25℃にて単量体ヒトLEPRに結合する;
(iii)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に約5nM未満のKDで25℃にて二量体ヒトLEPRに結合する;
(iv)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に約15分超のt1/2で25℃にて二量体ヒトLEPRに結合する;
(v)ヒトレプチンと複合体形成したヒトLEPRに結合する;
(vi)LEPR:レプチン相互作用を遮断しない;
(vii)ヒトレプチンの存在および非存在下で細胞表面発現LEPRに結合する;および
(viii)細胞に基づくレポーターアッセイにおいて約90pM未満のEC50でLEPRシグナル伝達を活性化する
からなる群より選択される1つまたは複数の性質を呈する、項目1に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目3)
レプチンに比べ少なくとも50%の有効性で、細胞に基づくレポーターアッセイにおいてLEPRシグナル伝達を活性化する、項目1または2に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目4)
レプチンに比べ少なくとも70%の有効性で、細胞に基づくレポーターアッセイにおいてLEPRシグナル伝達を活性化する、項目3に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目5)
ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合し、(a)配列番号2、配列番号18、配列番号26、配列番号34、配列番号42、配列番号50、配列番号58、配列番号74、または配列番号82のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、および(b)配列番号10または配列番号66のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む、単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目6)
配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66、および82/66からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む、項目5に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目7)
配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66、および82/66からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目5または6に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。(項目8)
LEPRシグナル伝達を活性化する、項目7に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目9)
配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66および82/66からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と、LEPRへの結合について競合する、項目1から4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目10)
配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66および82/66からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じLEPR上のエピトープに結合する、項目1から4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目11)
項目1から10のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
(項目12)
レプチン欠損またはレプチン耐性に関連した、またはそれによって引き起こされる疾患または状態を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に項目11に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
(項目13)
レプチン欠損またはレプチン耐性に関連した、またはそれによって引き起こされる前記疾患または前記状態が、リポジストロフィー、肥満、メタボリック症候群、食事誘発性食物渇望、機能性視床下部性無月経、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン耐性、インスリン受容体における変異に起因する重度インスリン耐性、アルツハイマー病、レプチン欠損、レプチン耐性、妖精症/ドナヒュー症候群、およびラブソン-メンデンホール症候群からなる群より選択される、項目12に記載の方法。
(項目14)
患者におけるリポジストロフィー状態を処置するための方法であって、それを必要とする患者に項目11に記載の医薬組成物を投与することを含み、前記リポジストロフィー状態が、先天性全身性リポジストロフィー、後天性全身性リポジストロフィー、家族性部分的リポジストロフィー、後天性部分的リポジストロフィー、遠心性腹部リポジストロフィー、環状脂肪組織萎縮症、局在性リポジストロフィー、およびHIV関連リポジストロフィーからなる群より選択される、方法。
(項目15)
シグナル伝達欠損LEPR変異またはシグナル伝達障害LEPR変異に関連した、またはそれによって引き起こされる疾患または状態を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に項目11に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
(項目16)
前記シグナル伝達欠損LEPR変異または前記シグナル伝達障害LEPR変異が、LEPR-A409EまたはLEPR-P316Tである、項目15に記載の方法。
(項目17)
シグナル伝達欠損LEPR変異またはシグナル伝達障害LEPR変異に関連した、またはそれによって引き起こされる前記疾患または前記状態が、早期発症肥満である、項目15または16に記載の方法。
(項目18)
前記被験体に第2の治療剤を投与することをさらに含み、前記第2の治療剤が、組換えヒトレプチン、PCSK9インヒビター、スタチン、エゼチミベ、インスリン、インスリン改変体、インスリン分泌促進物質、メトホルミン、スルホニル尿素、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)インヒビター、GLP-1アゴニスト/類似体、グルカゴン(GCG)インヒビター、グルカゴン受容体(GCGR)インヒビター、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)インヒビター、フェンテルミン、オーリスタット、トピラメート、ブプロピオン、トピラメート/フェンテルミン、ブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、プラムリンチド/メトレレプチン、ロルカセリン、セチリスタット、テソフェンシン、およびベルネペリットからなる群より選択される、項目12から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合し、抗原に対してLEPRを感作させる、単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目20)
ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合し、(a)配列番号26、配列番号34、配列番号42、配列番号50、配列番号58、配列番号74、または配列番号82のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、および(b)配列番号10または配列番号66のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む、項目19に記載の単離抗体、またはその抗原結合性断片。
(項目21)
配列番号26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66、および82/66からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む、項目20に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。(項目22)
ヒトLEPRを特異的に結合し、水素/重水素交換によって決定した場合に配列番号113のアミノ酸162~169および配列番号113のアミノ酸170~181と相互作用する、単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目23)
それぞれ、配列番号4、6、および8ならびに配列番号12、14、および16からなる群より選択されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、ならびにLCDR2ドメインを含む、項目22に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
(項目24)
配列番号2/10からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目22に記載の単離モノクローナル抗体または抗原結合性断片。
【0033】
他の実施形態は、次の詳細な説明を再検討することにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、ELISA(450nmにおける吸光度)によって測定した場合の、漸増濃度の試験抗LEPR抗体または対照分子の存在下での二量体ヒトLEPRのヒトレプチンへの結合を表す。
【0035】
【
図2】
図2A~2Cは、野生型LEPR(円)、シグナル伝達欠損LEPR変異体(A409E、正方形)、またはシグナル伝達障害LEPR変異体(P316T、三角形)を発現するHEK293細胞内のLEPRシグナル伝達の程度を例示する。LEPRシグナル伝達は、漸増濃度のレプチン(
図2A)、H4H16650(
図2B)、またはH4H16679(
図2C)で処置された細胞から調製されるウェスタンブロットからのデンシトメトリーによって測定されるpSTAT3-Y705/STAT3の比として表現される。
【0036】
【
図3】
図3は、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体、または3mg/kgのH4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、もしくはH4H17321P2から選択されるLEPR抗体のいずれかを投薬されたレプチン欠損マウスの日々の食物摂取量の平均を示す。
【0037】
【
図4】
図4は、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体、または3mg/kgのH4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、もしくはH4H17321P2から選択されるLEPR抗体のいずれかを投薬されたマウスの体重の平均パーセント変化を示す。
【0038】
【
図5】
図5は、平均±SEMとして表現される、抗体処置の1日前(陰影の無いバー)および6日後(陰影のあるバー)にμCTによって定量化された各抗体処置群における動物の平均脂肪量を示す。
【0039】
【
図6】
図6は、H4H18482P2、H4H18487P2、H4H18492P2、またはアイソタイプ対照から選択される30mg/kgの抗体を供給されたマウスの体重のパーセント変化を示す。
【0040】
【
図7】
図7Aは、抗LEPR抗体H4H18482P2、H4H18487P2、またはH4H18492P2を投薬する前のマウスの脂肪量を示す。
図7Bは、30mg/kgのH4H18482P2、H4H18487P2、またはH4H18492P2で処置されたマウスの脂肪量を示す。
【0041】
【
図8】
図8は、試験した抗LEPR抗体が、IMR-32/STAT3-luc/Mf LEPR細胞株内のサル(Mf)LEPRを活性化したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明について記載する前に、このような方法および条件は、変動しうるので、本発明は、記載される特定の方法および実験条件に限定されるものではないことを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態だけについて記載することを目的とするものであり、限定的であることを意図するものではないことも理解されたい。
【0043】
別段に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書では、用語「約」は、特定の述べた数値を参照して使用されるとき、値が、述べた値から1%以下変動し得ることを意味する。例えば、本明細書では、表現「約100」は、99および101ならびに間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0044】
本明細書に記載のものと類似するまたは等価な任意の方法および材料を、本発明を実施または試験するのに使用することができるが、好適な方法および材料を次に記載する。
【0045】
定義
表現「レプチン受容体」、「LEPR」などは、本明細書では、配列番号113(UniProtKB/Swiss-Prot受託番号P48357も参照)に示したアミノ酸配列を含むヒトレプチン受容体を指す。科学文献で使用されるLEPRの代替の名称には、「OB受容体」、「OB-R」、および「CD295」が含まれる。LEPRは、「WSX」とも呼ばれる(例えば、米国特許第7,524,937号を参照)。表現「LEPR」は、単量体および多量体(例えば、二量体)LEPR分子の両方を含む。本明細書では、表現「単量体ヒトLEPR」は、いかなる多量体化ドメインも含有または所有せず、かつ別のLEPR分子と直接物理的に接続していない単一LEPR分子として通常の条件下で存在するLEPRタンパク質またはその部分を意味する。例示的な単量体LEPR分子は、配列番号114のアミノ酸配列を含む「hLEPR.mmh」と本明細書で呼ばれる分子である(例えば、本明細書の実施例3を参照)。本明細書では、表現「二量体ヒトLEPR」は、リンカー、共有結合、非共有結合によって、または抗体Fcドメインなどの多量体化ドメインによって互いに接続された2つのLEPR分子を含む構築物を意味する。例示的な二量体LEPR分子は、配列番号115のアミノ酸配列を含む「hLEPR.mFc」と本明細書で呼ばれる分子であり(例えば、本明細書の実施例3を参照)、または配列番号116のアミノ酸配列を含む「hLEPR.hFc」と本明細書で呼ばれる分子である。本明細書では、「抗LEPR抗体」、「LEPRに特異的に結合する抗体」、「LEPR特異的結合タンパク質」などの表現は、別段に具体的に示されていない限り、全長ヒトLEPR、単量体ヒトLEPR、二量体ヒトLEPR、またはLEPR細胞外ドメインを含むかもしくはそれからなる他の構築物に結合する分子を指す。
【0046】
本明細書でのタンパク質、ポリペプチド、およびタンパク質断片へのすべての言及は、非ヒト種由来であると明示的に指定されていない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、またはタンパク質断片のヒトバージョンを指すように意図されている。よって、表現「LEPR」は、非ヒト種、例えば、「マウスLEPR」、「サルLEPR」など由来であると指定されていない限り、ヒトLEPRを意味する。
【0047】
本明細書では、表現「細胞表面発現LEPR」は、1種もしくは複数のLEPRタンパク質またはその細胞外ドメインであって、in vitroまたはin vivoで細胞の表面に発現され、その結果、LEPRタンパク質の少なくとも一部分が細胞膜の細胞外側に露出され、抗体の抗原結合部分に接近可能である、LEPRタンパク質またはその細胞外ドメインを意味する。「細胞表面発現LEPR」は、通常(例えば、天然または野生型状態において)、LEPRタンパク質を発現する細胞の表面に発現されるLEPRタンパク質を含み得、またはそれからなり得る。代替として、「細胞表面発現LEPR」は、通常、その表面にヒトLEPRを発現しないが、その表面にLEPRを発現するように人工的に操作された細胞の表面に発現されるLEPRタンパク質を含み得、またはそれからなり得る。
【0048】
本明細書では、「抗LEPR抗体」または「ヒトレプチン受容体に結合する抗体」などの表現は、単一特異性を有する一価抗体、ならびにLEPRに結合する第1のアームおよび第2の(標的)抗原に結合する第2のアームを含み、抗LEPRアームは、本明細書の表1に示したHCVR/LCVRまたはCDR配列のうちのいずれかを含む、二重特異性抗体の両方を含む。
【0049】
用語「抗体」は、本明細書では、特定抗原(例えば、LEPR)に特異的に結合し、またはそれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。用語「抗体」は、4本のポリペプチド鎖、ジスルフィド結合により相互接続された2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはVHと本明細書で省略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVRまたはVLと本明細書で省略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域とともに散在した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に並べられた3つのCDRおよび4つのFRから構成される。本発明の異なる実施形態では、抗LEPR抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖細胞系列配列と同一である場合があり、または天然もしくは人工的に改変されている場合がある。アミノ酸コンセンサス配列は、2個またはそれよりも多いCDRに並行分析に基づいて定義され得る。
【0050】
用語「抗体」は、本明細書では、完全抗体分子の抗原結合性断片も含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合性断片」などの用語は、本明細書では、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性断片は、例えば、任意の適当な標準技法、例えば、タンパク質消化、または抗体可変ドメインおよび任意選択で定常ドメインをコードするDNAの操作(manipulation)および発現を伴う組み換え遺伝子操作技法などを使用して完全抗体分子から導出することができる。このようなDNAは、公知であり、かつ/または例えば、商業的供給元、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、または合成することができる。DNAは配列決定し、化学的に、または分子生物学技法を使用することによって操作して、例えば、1個または複数の可変および/もしくは定常ドメインを並べて適当な構成にし、またはコドンを導入し、システイン残基を作出し、アミノ酸を修飾し、付加し、もしくは欠失させることなどを行うことができる。
【0051】
抗原結合性断片の非限定的な例としては、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))、または拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小限の認識ユニットがある。他の操作された分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ(minibody)、ナノボディ(nanobody)(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなども、本明細書で使用する場合、表現「抗原結合性断片」内に包含される。
【0052】
抗体の抗原結合性断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むことになる。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のものであり得、一般に、1つまたは複数のフレームワーク配列に隣接し、またはそれとインフレームである少なくとも1つのCDRを含むことになる。VLドメインと付随したVHドメインを有する抗原結合性断片では、VHおよびVLドメインは、任意の適当な配置内で互いに対して位置し得る。例えば、可変領域は、二量体であり得、VH-VH、VH-VL、またはVL-VL二量体を含有し得る。代替として、抗体の抗原結合性断片は、単量体VHまたはVLドメインを含有し得る。
【0053】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合的に連結した少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。非限定的な本発明の抗体の抗原結合性断片内に見出され得る可変および定常ドメインの例示的構成としては、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLがある。上記に列挙した例示的構成のいずれかを含む可変および定常ドメインの任意の構成において、可変および定常ドメインは、互いに直接連結されている場合があり、あるいは完全もしくは部分ヒンジまたはリンカー領域によって連結され得る。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子中の隣接する可変および/または定常ドメインとの間で可撓性または半可撓性連結をもたらす、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個またはそれよりも多い)のアミノ酸からなり得る。さらに、本発明の抗体の抗原結合性断片は、互いに非共有結合性会合で上記に列挙した可変および定常ドメイン構成のいずれかの、かつ/または1つもしくは複数のモノマーVHもしくはVLドメインとの(例えば、ジスルフィド結合による)ホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0054】
完全抗体分子と同様に、抗原結合性断片は、単一特異性または多特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多特異性抗原結合性断片は、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むことになり、各可変ドメインは、別個の抗原に、または同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示の例示的な二重特異性抗体形式を含めた任意の多特異性抗体形式を、当技術分野で利用可能な慣例的な技法を使用して本発明の抗体の抗原結合性断片の文脈において使用するのに適合させ得る。
【0055】
本発明のある特定の実施形態では、本発明の抗LEPR抗体は、ヒト抗体である。用語「ヒト抗体」は、本明細書では、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むように意図されている。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特に、CDR3中でヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはin vivoで体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書では、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むように意図されていない。
【0056】
本発明の抗体は、一部の実施形態では、組換えヒト抗体であり得る。用語「組換えヒト抗体」は、本明細書では、組換え手段によって調製、発現、作出、または単離されたすべてのヒト抗体、例えば、宿主細胞内にトランスフェクトされる組換え発現ベクターを使用して発現される抗体(以下でさらに記載される)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体(以下でさらに記載される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離される抗体(例えば、Taylorら(1992年)、Nucl. Acids Res.、20巻:6287~6295頁を参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作出、もしくは単離される抗体などを含むように意図されている。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかし、ある特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、in vitro変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が使用されるとき、in vivo体細胞変異誘発)に付され、よって組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VHおよびVL配列に由来し、関連する一方で、in vivoでヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然に存在しない場合がある配列である。
【0057】
本発明は、例えば産生中に所望の抗体形態の収量を改善するのに望ましい場合がある、ヒンジ、CH2、またはCH3領域内で1つまたは複数の変異を有する抗体を包含する。
【0058】
本発明の抗体は、単離抗体であり得る。「単離抗体」は、本明細書では、その天然環境の少なくとも1種の成分から同定および分離され、かつ/または回収された抗体を意味する。例えば、抗体が天然に存在し、または天然に産生される生物体の少なくとも1種の成分から、または組織もしくは細胞から分離または回収された抗体は、本発明の目的に関して「単離抗体」である。単離抗体は、組換え細胞内のin situの抗体も含む。単離抗体は、少なくとも1つの精製または単離ステップに付された抗体である。ある特定の実施形態によれば、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0059】
本発明は、抗体が由来した対応する生殖細胞系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域内の1個または複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含む本明細書に開示の抗LEPR抗体の改変体を含む。このような変異は、本明細書で開示されアミノ酸配列を、例えば、公表の抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞系列の配列と比較することにより、たやすく確認することができる。本発明は、本明細書で開示されるアミノ酸配列のうちのいずれかに由来する、抗体およびそれらの抗原結合性断片を含むが、この場合、1または複数のフレームワーク領域内および/またはCDR領域内の、1または複数のアミノ酸を、抗体が由来した生殖細胞系列の配列の対応する残基、または別のヒト生殖細胞系列の配列の対応する残基、または対応する生殖細胞系列残基の保存的アミノ酸置換(本明細書では、このような配列変化をまとめて、「生殖細胞系列変異」と称する)に照らして変異させる。当業者は、本明細書で開示される、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列から始めて、1カ所または複数カ所の個々の生殖細胞系列変異またはそれらの組み合わせを含む、多数の抗体および抗原結合性断片を容易に作製することができる。ある特定の実施形態では、VHドメインおよび/またはVLドメイン内のフレームワーク残基および/またはCDR残基の全てを、抗体が由来した、元の生殖細胞系列の配列内で見出される残基へと復帰変異させる。他の実施形態では、ある特定の残基だけを、元の生殖細胞系列の配列へと復帰変異させる、例えば、FR1の最初の8アミノ酸内、もしくはFR4の最後の8アミノ酸内に見出される残基だけを変異させるか、またはCDR1内、CDR2内、もしくはCDR3内に見出される残基だけを変異させる。他の実施形態では、フレームワーク残基および/またはCDR残基のうちの1または複数を、異なる生殖細胞系列の配列(すなわち、抗体が元来由来した生殖細胞系列の配列と異なる、生殖細胞系列の配列)の対応する残基に変異させる。さらに、本発明の抗体は、フレームワーク領域内および/またはCDR領域内の、2カ所またはこれを超える生殖細胞系列変異の任意の組み合わせを含有することが可能であり、この場合、例えば、ある特定の個々の残基を、特定の生殖細胞系列の配列の対応する残基に変異させる一方で、元の生殖細胞系列の配列と異なる、ある特定の他の残基を維持するか、または異なる生殖細胞系列の配列の対応する残基に変異させる。1カ所または複数カ所の生殖細胞系列変異を含有する抗体および抗原結合性断片が得られたら、これらを、結合特異性の改善、結合アフィニティーの増大、アンタゴニスト性またはアゴニスト性の生物学的特性(場合により)の改善または増強、免疫原性の低減など、1または複数の所望の特性について容易に調べることができる。この一般的な方式で得られた、抗体および抗原結合性断片は、本発明の中に包含される。
【0060】
本発明は、本明細書に開示の例示的な抗LEPR抗体のいずれかにおいて見出される1つまたは複数の可変ドメインまたはCDRアミノ酸配列と実質的に類似するまたは実質的に同一であるアミノ酸配列を含む抗LEPR抗体およびこれらの抗原結合性断片を含む。
【0061】
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な類似性」または「実質的に類似する」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップ重みを使用してプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントされたとき、少なくとも95%配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%または99%配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、1個のアミノ酸残基が類似する化学的性質(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されているものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的性質を実質的に変化させない。2つまたはそれよりも多いアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合では、パーセント配列同一性または類似度は、上向きに調整されて置換の保存的特質について補正される場合がある。この調整を行う手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994年)、Methods Mol. Biol.、24巻:307~331頁を参照。類似する化学的性質を伴った側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、およびヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸があり、(7)硫黄含有側鎖は、システインおよびメチオニンである。好適な保存的アミノ酸置換基は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。代替として、保存的置換は、Gonnetら(1992年)、Science、256巻:1443~1445頁において開示されたPAM250対数尤度行列中に正の値を有する任意の変化である。「中程度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度行列中に負でない値を有する任意の変化である。
【0062】
ポリペプチドの配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、配列分析ソフトウェアを使用して典型的には測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失、および他の修飾に割り当てられる類似性の尺度を使用して類似する配列をマッチさせる。例えば、GCGソフトウェアは、GapおよびBestfitなどのプログラムを含有し、これらのプログラムは、デフォルトパラメータを用いて使用されて異なる種の生物体由来の、または野生型タンパク質とそのムテインとの間の相同性ポリペプチドなどの密接に関連しているポリペプチド間の配列相同性または配列同一性を決定することができる。例えば、GCGバージョン6.1を参照。ポリペプチド配列は、デフォルトまたは推奨パラメータを使用するFASTA、GCGバージョン6.1中のプログラムを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリー配列と検索配列との間の最良の重複領域についての、アラインメントおよびパーセント配列同一性をもたらす(Pearson(2000年)、上記)。本発明の配列を、異なる生物体由来の多数の配列を含有するするデータベースと比較する場合の別の好適なアルゴリズムは、デフォルトパラメータを使用するコンピュータープログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschulら(1990年)、J. Mol. Biol.、215巻:403~410頁およびAltschulら(1997年)、Nucleic Acids Res.、25巻:3389~402頁を参照。
【0063】
Fc改変体を含む抗LEPR抗体
本発明のある特定の実施形態によれば、例えば、中性pHと比較して酸性pHでFcRn受容体への抗体結合を増強または減少させる1個または複数の変異を含むFcドメインを含む抗LEPR抗体が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのCH2またはCH3領域内で変異を含む抗LEPR抗体を含み、変異により、酸性環境中(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲であるエンドソーム中)でFcドメインのFcRnへのアフィニティーが増大する。このような変異は、動物に投与されるとき、抗体の血清半減期を増大させることができる。このようなFc修飾の非限定的な例としては、例えば、250位(例えば、EもしくはQ);250位および428位(例えば、LもしくはF);252位(例えば、L/Y/F/WもしくはT)、254位(例えば、SもしくはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DもしくはT)での修飾;または428位および/もしく433位(例えば、H/L/R/S/P/QもしくはK)および/もしくは434位(例えば、H/FもしくはY)での修飾;または250位および/もしくは428位での修飾;または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位での修飾がある。一実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)修飾;428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)修飾;433K(例えば、H433K)、および434(例えば、434Y)修飾;252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)修飾;250Qおよび428L修飾(例えば、T250QおよびM428L);ならびに307および/または308修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0064】
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254T、および256E(例えば、M252Y、S254T、およびT256E);428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群より選択される変異の1つまたは複数の対または群を含むFcドメインを含む抗LEPR抗体を含む。上記Fcドメイン変異のすべての可能な組み合わせ、および本明細書に開示の抗体可変ドメイン内の他の変異は、本発明の範囲内に企図されている。
【0065】
本発明の抗LEPR抗体は、エフェクター機能が低減された修飾Fcドメインを含み得る。本明細書では、「エフェクター機能が低減された修飾Fcドメイン」は、野生型の天然に存在するFcドメインと比べて、修飾、変異、短縮などされており、その結果、修飾Fcを含む分子が、Fc部分の野生型の天然に存在するバージョンを含む対照薬分子と比べて細胞殺傷(例えば、ADCCおよび/またはCDC)、補体活性化、食作用、およびオプソニン化からなる群より選択される少なくとも1つの効果の重大性または程度の低減を呈する免疫グロブリンの任意のFc部分を意味する。ある特定の実施形態では、「エフェクター機能が低減された修飾Fcドメイン」は、Fc受容体(例えば、FcγR)への結合が低減または減弱されたFcドメインである。
【0066】
本発明のある特定の実施形態では、修飾Fcドメインは、ヒンジ領域内に置換を含む改変体IgG1 Fcまたは改変体IgG4 Fcである。例えば、本発明との関連で使用するための修飾Fcは、改変体IgG1 Fcを含み得、IgG1 Fcヒンジ領域の少なくとも1つのアミノ酸は、IgG2 Fcヒンジ領域由来の対応するアミノ酸と置き換えられている。代替として、本発明との関連で使用するための修飾Fcは、改変体IgG4 Fcを含み得、IgG4 Fcヒンジ領域の少なくとも1つのアミノ酸は、IgG2
Fcヒンジ領域由来の対応するアミノ酸と置き換えられている。本発明との関連で使用することができる非限定的かつ例示的な修飾Fc領域は、米国特許出願公開第2014/0243504号に示されている。
【0067】
本発明との関連で使用することができる他の修飾FcドメインおよびFc修飾は、US2014/0171623;US8,697,396;US2014/0134162;WO2014/043361に示された修飾のいずれかを含む。本明細書に記載の修飾Fcドメインを含む抗体または他の抗原結合性融合タンパク質を構築する方法は、当技術分野で公知である。
【0068】
抗体の生物学的特性
本発明は、ヒトLEPRに結合し、LEPRシグナル伝達を活性化する抗体およびこれらの抗原結合性断片を含む。このような抗体は、「アゴニスト抗体」と本明細書で呼ばれる場合がある。本発明との関連で、「LEPRシグナル伝達の活性化」は、通常、レプチンとLEPRを発現する細胞内のLEPRとの相互作用から生じる細胞内効果の刺激を意味する。ある特定の実施形態では、「LEPRシグナル伝達の活性化」は、STAT3の転写活性化を意味し、これは、例えば、レポーター細胞株内で発現されるSTAT3の標識化バージョンを使用して、STAT3活性を直接的または間接的に測定または同定することができる任意の方法を使用して検出することができる。例えば、本発明は、例えば、本明細書の実施例7に規定された細胞に基づくアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、細胞に基づくレポーターアッセイにおいてLEPRシグナル伝達を活性化する抗体およびこれらの抗原結合性断片を含む。LEPR活性化を検出する細胞に基づくレポーターアッセイ、例えば、本明細書の実施例7に示されたアッセイなどは、EC50値(すなわち、最大半量のシグナル伝達を生じさせるのに要求される抗体濃度)および/またはレプチンの存在下で観察される最大シグナル伝達のパーセンテージの観点から表現され得る検出可能シグナルを生成することができる。本発明のある特定の例示的な実施形態では、例えば、本明細書の実施例7に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、細胞に基づくレポーターアッセイにおいて約12.0nM未満のEC50値を伴ってLEPRシグナル伝達を活性化する抗LEPR抗体が提供されている。本発明のある特定の例示的な実施形態では、例えば、本明細書の実施例7に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、細胞に基づくレポーターアッセイにおいて約65%超のレプチンシグナル伝達と比べた最大パーセント活性化を伴ってLEPRシグナル伝達を活性化する抗LEPR抗体が提供されている。
【0069】
本発明は、高アフィニティーで単量体ヒトLEPRに結合する抗体およびこれらの抗原結合性断片を含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書の実施例3に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、25℃または37℃で表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約150nM未満のKDで単量体ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mmh、配列番号114)に結合する抗LEPR抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、例えば、本明細書の実施例3に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約150nM未満、約140nM未満、約130nM未満、約120nM未満、約110nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約9nM未満、約8nM未満、約7nM未満、約6nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、または約300pM未満のKDで25℃にて単量体ヒトLEPRに結合する抗LEPR抗体が提供されている。
【0070】
本発明は、例えば、本明細書の実施例3に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、25℃または37℃で表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約50分超の解離半減期(t1/2)で単量体ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mmh、配列番号114)に結合する抗体およびこれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態によれば、本明細書の実施例3に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約50分超、約55分超、約60分超、約65分超、またはそれより長いt1/2で、25℃で単量体ヒトLEPRに結合する抗LEPR抗体が提供されている。
【0071】
本発明は、高アフィニティーで二量体ヒトLEPR(例えばhLEPR.mFc、配列番号115)に結合する抗体およびこれらの抗原結合性断片も含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書の実施例3に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、25℃または37℃で表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約1.5nM未満のKDで二量体ヒトLEPRに結合する抗LEPR抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、本明細書の実施例3に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約150nM未満、約130nM未満、約110nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、または約10nM未満のKDで25℃にて二量体ヒトLEPRに結合する抗LEPR抗体が提供されている。
【0072】
本発明は、例えば、本明細書の実施例3に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、25℃または37℃で表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約10分超の解離半減期(t1/2)で二量体ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mFc、配列番号115)に結合する抗体およびこれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態によれば、本明細書の実施例3に規定されたアッセイ形式、または実質的に類似するアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約10分超、約15分超、約20分超、約25分超、約30分超、約40分超、約50分超、約60分超、約70分超、またはそれより長いt1/2で、25℃で二量体ヒトLEPRに結合する抗LEPR抗体が提供されている。
【0073】
本発明は、ヒトレプチンと複合体形成したLEPR(「ヒトレプチンと複合体形成したLEPR」は、表現「レプチン:LEPR」によって表される場合もある)に結合する抗体およびこれらの抗原結合性断片も含む。例えば、本発明は、hLEPRおよびヒトレプチンを含む予め形成された複合体に結合することができる抗体およびこれらの抗原結合性断片を含む。すなわち、ある特定の実施形態によれば、抗LEPR抗体とLEPRとの相互作用は、LEPRと複合体形成したレプチンの存在によって阻害されず;同様に、レプチンとLEPRとの相互作用も、本発明のこの態様によれば、抗LEPR抗体の存在によって阻害されない。抗体またはその抗原結合性断片がヒトレプチンと複合体形成したLEPRに結合するか否かを決定する例示的なアッセイ形式は、本明細書の実施例4に示されている。
【0074】
同様に、本発明は、LEPRに結合し、LEPR:レプチン相互作用を遮断しない抗体およびこれらの抗原結合性断片も含む。例えば、本発明は、LEPRに結合し、それにより抗体:LEPR複合体を生じさせることができる抗体およびこれらの抗原結合性断片を含み、得られる抗体:LEPR複合体は、レプチンと相互作用して抗体、LEPR、およびレプチンを含む三者複合体を生成することができる。抗体またはその抗原結合性断片がLEPRとレプチンとの相互作用を遮断または妨害しない様式でLEPRに結合することができるか否かを決定する例示的なアッセイ形式は、本明細書の実施例5に示されている。
【0075】
本発明は、ヒトレプチンの存在下かつ/または非存在下で細胞表面発現LEPRに結合する抗体及びこれらの抗原結合性断片も含む。細胞表面発現LEPRは、天然に、または操作された細胞株内で、細胞表面に発現され、その結果、抗体またはその抗原結合性断片がLEPR分子に結合することができるLEPRまたはその部分(例えば、LEPRの細胞外部分)を意味する。ある特定の実施形態では、細胞表面発現LEPRは、タグまたはアンカー(例えば、本明細書の実施例6に例示されたGPIアンカー)を介して細胞に接続されたLEPRの細胞外ドメインを含む組換え複合体を含む。本発明のこの態様によれば、レプチンの非存在下で細胞表面発現LEPRに結合することができ、レプチンの存在下(すなわち、レプチンが細胞表面発現レプチンに結合することができる環境下)でも細胞表面発現LEPRに結合することができる抗体が提供されている。すなわち、ある特定の実施形態によれば、抗LEPR抗体と細胞表面発現LEPRとの相互作用は、細胞表面発現LEPRと複合体形成したレプチンの存在によって阻害されない。本発明のこの態様による抗体は、細胞表面で、抗体、細胞表面発現LEPR、およびレプチンを含む三者複合体を形成することができる。抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトレプチンの存在および非存在下で細胞表面発現LEPRに結合することができるか否かを決定する例示的なアッセイ形式は、本明細書の実施例6に示されている。
【0076】
本発明の抗体は、上述の生物学的特性の1つもしくは複数、またはこれらの任意の組み合わせを有し得る。本発明の抗体の生物学的特性の上記リストは、徹底的であるように意図されていない。本発明の抗体の他の生物学的特性は、本明細書の実施例を含む本開示を再検討することにより当業者に明らかとなる。
【0077】
エピトープマッピングおよび関連技術
本発明は、1個または複数の保存的置換を有する本明細書に開示のHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかの改変体を含む抗LEPR抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書の表1に示されたHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、例えば、10またはそれ未満、8またはそれ未満、6またはそれ未満、4またはそれ未満などの保存的アミノ酸置換を伴ったHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗LEPR抗体を含む。ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書の表1に示された配列(例えば、保存的アミノ酸置換を含む)と比べて改変体HCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を含む抗LEPR抗体を提供し、このような改変体抗体は、それにもかかわらず、本明細書に開示の例示的な抗LEPR抗体の1つまたは複数の機能および/または性質を呈する。
【0078】
ヒトLEPRの細胞外ドメインは、N末端サイトカイン受容体相同性ドメイン(CRH-1)、免疫グロブリン様(Ig)ドメイン、およびレプチン-結合ドメイン(LBD)と呼ばれる第2のCRHドメイン(CRH-2)を含有する(Carpenterら(2012年)、Structure、20巻:487~97頁)。さらに、LEPRは、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)および糖タンパク質130(gp13)と最大の相同性、および類似する細胞外ドメインサイズ、および機構を共有する(Haniuら(1998年)、J Biol Chem、273巻(44号):28691~699頁)。
【0079】
用語「エピトープ」は、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域内で特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、1つを超えるエピトープを有し得る。よって、異なる抗体は、抗原上の異なるエリアに結合することができ、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、コンフォメーション性または線形であり得る。コンフォメーションエピトープは、線形ポリペプチド鎖の異なるセグメント由来の空間的に並べられたアミノ酸によって生成される。線形エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって生成されるものである。ある特定の環境において、エピトープは、抗原上のサッカリド、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0080】
本発明は、ヒトLEPR(配列番号113)のアミノ酸M1-D839内に見出される1つまたは複数のエピトープと相互作用する抗LEPR抗体を含む。実施例11に示した通り、ヒトLEPR由来の201個のペプチドは、抗体H4H16650P2に結合しているとき、重水素化取込みが有意に低減された。アミノ酸162~169(ヒトLEPR、配列番号113のアミノ酸LYVLPEVL)および170~191(ヒトLEPR、配列番号113のアミノ酸EDSPLVPQKGSF)に対応するペプチドは、H4H16650P2に結合しているとき、重水素化速度がより遅く、この抗体は、配列LYVLPEVLまたはEDSPLVPQKGSF(配列番号113のそれぞれアミノ酸162~169または170~191)を有する少なくとも2つのヒトLEPRエピトープに結合することを示した。
【0081】
本発明の抗体が結合するエピトープは、LEPRタンパク質の3個またはそれよりも多い(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれよりも多い)アミノ酸の単一の連続した配列からなることができる。代替として、エピトープは、LEPRの複数の連続していないアミノ酸(またはアミノ酸配列)からなる場合がある。一部の実施形態では、エピトープは、LEPRのレプチン-結合ドメインに、またはそれ付近に位置している。他の実施形態では、エピトープは、LEPRのレプチン-結合ドメインと別個の領域に、例えば、抗体が、このようなエピトープに結合しているとき、LEPRへのレプチン結合を妨害しないLEPRの表面上の場所に位置している。
【0082】
当業者に公知の様々な技法を使用して、特定の抗体によって認識されるエピトープ内のアミノ酸を同定することができる。例示的な技法としては、例えば、アラニン走査変異分析、ペプチドブロット分析、およびペプチド切断分析がある。さらに、抗原のエピトープ除去、エピトープ抽出、および化学修飾などの方法を使用することができる(Tomer、2000年、Protein Science、9巻:487~496頁)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するのに使用することができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般論として、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質の重水素標識化、その後の重水素-標識化タンパク質への抗体の結合を伴う。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移し、抗体によって保護された残基(重水素標識化されたままである)を除くすべての残基で水素-重水素交換を起こさせる。抗体が解離した後、標的タンパク質がプロテアーゼ切断および質量スペクトル分析に付され、それによって抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識化残基が明らかになる。例えば、Ehring(1999年)、Analytical Biochemistry、267巻(2号):252~259頁;EngenおよびSmith(2001年)、Anal. Chem.、73巻:256A~265A頁を参照。その抗原と複合体形成した抗体のX線結晶解析も、抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するのに使用することができる。
【0083】
本発明は、本明細書に記載の具体的な例示的な抗体(例えば、本明細書の表1に示したアミノ酸配列のうちのいずれかを含む抗体)のいずれかと同じエピトープに結合する抗LEPR抗体をさらに含む。同様に、本発明は、本明細書に記載の具体的な例示的な抗体(例えば、本明細書の表1に示したアミノ酸配列のうちのいずれかを含む抗体)のいずれかと、LEPRへの結合について競合する抗LEPR抗体も含む。
【0084】
当技術分野で公知の、かつ本明細書に例示されている慣用的な方法を使用することによって、抗体が参照抗LEPR抗体と同じエピトープに結合するか、またはそれと結合について競合するかを決定することができる。例えば、試験抗体が本発明の参照抗LEPR抗体と同じエピトープに結合するか否かを決定するために、参照抗体を、LEPRタンパク質に結合させる。次に、試験抗体のLEPR分子に結合する能力が評価される。試験抗体が、参照抗LEPR抗体との飽和結合後にLEPRに結合することができる場合、試験抗体が参照抗LEPR抗体と異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。一方、試験抗体が、参照抗LEPR抗体との飽和結合後にLEPR分子に結合することができない場合、試験抗体は、本発明の参照抗LEPR抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合することができる。次いで追加の慣用的な実験(例えば、ペプチド変異および結合分析)を実行して、試験抗体の結合の観察された欠如が参照抗体と同じエピトープに結合することに実際に起因するか、または立体遮断(または別の現象)が観察された結合の欠如の原因であるかを確認することができる。この種類の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、または当技術分野で利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的抗体-結合アッセイを使用して実施することができる。本発明のある特定の実施形態によれば、競合的結合アッセイで測定した場合に、例えば、1、5、10、20、または100倍過剰の一方の抗体が、他方の結合を少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%、またはさらには99%阻害する場合、2つの抗体は同じ(または重複する)エピトープに結合する(例えば、Junghansら、Cancer Res.、1990年:50巻:1495~1502頁参照)。代替として、一方の抗体の結合を低減または排除する抗原中の本質的にすべてのアミノ酸変異が他方の結合を低減または排除する場合、2つの抗体は、同じエピトープに結合すると見なされる。一方の抗体の結合を低減または排除するアミノ酸の変異のサブセットのみが他方の結合を低減または排除する場合、2つの抗体は、「重複エピトープ」を有すると見なされる。
【0085】
抗体が参照抗LEPR抗体と結合について競合する(または結合について交差競合する)か否かを決定するために、上述した結合方法を2つの方向で実施する:第1の方向では、参照抗体を飽和条件下でLEFRタンパク質に結合させ、その後試験抗体のLEPR分子への結合を評価する。第2の方向では、試験抗体を飽和条件下でLEPR分子に結合させ、その後参照抗体のLEPR分子への結合を評価する。両方向において、第1の(飽和)抗体のみがLEPR分子に結合することができる場合、試験抗体および参照抗体は、LEPRへの結合について競合すると結論付けられる。当業者が察知することになるように、参照抗体と結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合しない場合もあるが、重複または隣接するエピトープに結合することによって参照抗体の結合を立体的に遮断し得る。
【0086】
ヒト抗体の調製
本発明の抗LEPR抗体は、完全ヒト抗体であり得る。完全ヒトモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体を生成する方法は、当技術分野で公知である。任意のこのような公知の方法を本発明との関連で使用してヒトLEPRに特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
【0087】
例えば、完全ヒトモノクローナル抗体を生成するためのVELOCIMMUNE(商標)技術、または任意の他の同様の公知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有するLEPRに対する高アフィニティーキメラ抗体が最初に単離される。以下の実験セクションと同様に、抗体は、アフィニティー、リガンド遮断活性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特性について特徴付けられ、選択される。必要であれば、マウス定常領域は、所望のヒト定常領域、例えば、野生型または修飾IgG1またはIgG4と置き換えられて完全ヒト抗LEPR抗体が生成される。選択される定常領域は、具体的な使用によって変動し得るが、高アフィニティー抗原結合性および標的特異性特性は、可変領域内に存在する。ある特定の場合では、完全ヒト抗LEPR抗体は、抗原陽性B細胞から直接単離される。
【0088】
生物学的等価物
本発明の抗LEPR抗体および抗体断片は、記載した抗体のものから変動するが、ヒトLEPRに結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。このような改変体抗体および抗体断片は、親配列と比較したとき、アミノ酸の1個または複数の付加、欠失、または置換を含むが、記載した抗体のものと本質的に等価である生物活性を呈する。同様に、本発明の抗LEPR抗体コードDNA配列は、開示した配列と比較したとき、ヌクレオチドの1個または複数の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗LEPR抗体または抗体断片と本質的に生物学的に等価である抗LEPR抗体または抗体断片をコードする配列を包含する。このような改変体アミノ酸およびDNA配列の例は、上記に論じられている。
【0089】
2つの抗原結合性タンパク質または抗体は、例えば、単回用量であれ、複数回用量であれ、同様の実験条件下、同じモル用量で投与された場合に、それらの吸収の速度および程度が有意差を示さない、医薬同等物または医薬代替物であれば、生物学的に同等であると考えられる。一部の抗体は、それらの吸収の程度において同等であるが、それらの吸収の速度において同等でないが、このような吸収速度の差違が、意図的なものであり、例えば、長期使用時において、有効な体内薬物濃度を達成するのに必須ではなく、表示に反映されており、研究される特定の薬物製品にとって、医学的に重要でないと考えられるため、生物学的に同等であると考えうるならば、同等物または医薬代替物と考えられる。
【0090】
一実施形態では、2つの抗原結合性タンパク質は、それらの安全性、純度、および効力において、臨床的に有意義な差違が見られない場合、生物学的に同等である。
【0091】
一実施形態では、2つの抗原結合性タンパク質は、患者を、基準生成物と、生物学的生成物との間で、そのような切換えを伴わずに治療を持続させた場合と比較した、予測される有害作用の危険性の増大であって、免疫原性の臨床的に有意な変化、または有効性の減殺を含む有害作用の危険性の増大を伴わずに、1回または複数回にわたり切り換えうる場合、生物学的に同等である。
【0092】
一実施形態では、2つの抗原結合性タンパク質は、それらのいずれもが、そのような機構が公知である程度において、1または複数の使用条件に対する、1または複数の共通の作用機構により作用する場合、生物学的に同等である。
【0093】
生物学的等価性は、in vivo法により裏付けることもでき、かつin vitro法により裏付けることもできる。生物学的等価性の尺度は、例えば、(a)ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験であって、抗体またはその代謝物の濃度を、血液中、血漿中、血清中、または他の生物学的流体中で、時間の関数として測定するin vivo試験;(b)ヒトのin vivoにおけるバイオアベイラビリティーデータと相関しており、その妥当な予測であるin vitro試験;(c)ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験であって、抗体(またはその標的)の適切な短期的薬理学効果を時間の関数として測定するin vivo試験;および(d)十分にコントロールされた臨床試験であって、抗体の安全性、有効性、もしくはバイオアベイラビリティー、または生物学的等価性を確立する臨床試験を含む。
【0094】
本発明の抗LEPR抗体の生物学的に同等な改変体は、例えば、残基または配列の多様な置換を施すことにより構築することもでき、生物学的活性に必要とされない、末端または内部の残基または配列を欠失させることにより構築することもできる。例えば、生物学的活性に必須でないシステイン残基は、復元時における、不要であるかまたは不適正な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するように、欠失させるか、または他のアミノ酸で置きかえることができる。他の文脈では、生物学的に同等な抗体は、抗体のグリコシル化特徴を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を消失させるかまたは除去する変異を含む抗LEPR抗体改変体を含みうる。
【0095】
種選択性および種交差反応性
本発明は、ある特定の実施形態によれば、ヒトLEPRに結合するが、他の種由来のLEPRに結合しない抗LEPR抗体を提供する。本発明は、ヒトLEPRに、かつ1つまたは複数の非ヒト種由来のLEPRに結合する抗LEPR抗体も含む。例えば、本発明の抗LEPR抗体は、ヒトLEPRに結合することができ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、またはチンパンジーLEPRの1つまたは複数に、場合によって結合しても、しなくてもよい。本発明のある特定の例示的な実施形態によれば、ヒトLEPRおよびカニクイザル(例えば、Macaca fascicularis)LEPRに特異的に結合する抗LEPR抗体が提供される。本発明の他の抗LEPR抗体は、ヒトLEPRに結合するが、カニクイザルLEPRに結合しないか、弱い結合しかしない。
【0096】
多特異性抗体
本発明の抗体は、単一特異性であっても、多特異性(例えば、二重特異性)であってもよい。多特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得、または1つを超える標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有し得る。例えば、Tuttら、1991年、J. Immunol.、147巻:60~69頁;Kuferら、2004年、Trends Biotechnol.、22巻:238~244頁を参照。本発明の抗LEPR抗体は、別の機能分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に連結され得、またはそれと共発現され得る。例えば、抗体またはその断片は、1種または複数の他の分子実体、例えば、別の抗体または抗体断片などに機能的に連結して(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合、または別の方法によって)第2の結合特異性を有する二特異性または多特異性抗体を生じさせることができる。
【0097】
本発明は、免疫グロブリンの一方のアームがヒトLEPRに結合し、免疫グロブリンの他方のアームが第2の抗原に特異的である二特異性抗体を含む。LEPR結合アームは、本明細書の表1に示したHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかを含むことができる。
【0098】
本発明の文脈で使用されうる、例示的な二特異性抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメインおよび第2のIg CH3ドメインの使用を伴うが、この場合、第1のIg CH3ドメインと第2のIg CH3ドメインとは、互いと、少なくとも1つのアミノ酸異なり、少なくとも1つのアミノ酸の差違は、二特異性抗体の、プロテインAへの結合を、アミノ酸差違を欠く二特異性抗体と比較して低減する。一実施形態では、第1のIg CH3ドメインは、プロテインAに結合し、第2のIg CH3ドメインは、H95R修飾(IMGTのエクソン番号付けによる;EU番号付けによるH435R)など、プロテインAへの結合を低減するかまたは消失させる変異を含有する。第2のCH3は、Y96F修飾(IMGTによる;EUによるY436F)をさらに含みうる。第2のCH3内で見出されうる、さらなる修飾は、IgG1抗体の場合のD16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I);IgG2抗体の場合のN44S、K52N、およびV82I(IMGT;EUによるN384S、K392N、およびV422I);IgG4抗体の場合のQ15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)を含む。上記で記載した二特異性抗体フォーマット上の変動は、本発明の範囲内にあることが想定される。
【0099】
本発明の文脈で使用されうる、他の例示的な二特異性フォーマットは、限定なしに述べると、例えば、scFvベースの二特異性フォーマットまたはダイアボディ二特異性フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、Quadroma、KIH(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、KIH(knobs-into-holes)を伴う共通軽鎖など)、交差Mab、交差Fab、(SEED)body、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用型Fab(DAF)-IgG、およびMab2二特異性フォーマットを含む(前出のフォーマットの総説については、例えば、Kleinら、2012年、mAbs、4巻:6号、1~11頁、およびこれに引用されている参考文献を参照されたい)。二特異性抗体はまた、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもでき、例えば、この場合、直交性の化学反応性を伴う非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを作出するが、ここで、このコンジュゲートは、規定された組成、価数、および形状を伴う、多量体の複合体へと自己アセンブルする(例えば、Kazaneら、J. Am. Chem. Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照されたい)。
【0100】
治療用製剤および投与
本発明は、本発明の抗LEPR抗体またはこれらの抗原結合性断片を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、改善された移入、送達、耐容性(tolerance)などをもたらす適当な担体、賦形剤、および他の薬剤などとともに製剤化される。多数の適切な製剤を、すべての創薬化学者に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAに見出すことができる。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、蝋、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CAなど)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカルボワックス(carbowax)(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカルボワックスを含有する半固体混合物がある。Powellら「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA(1998年)、J
Pharm Sci Technol、52巻:238~311頁も参照。
【0101】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢およびサイズ、標的とする疾患、状態、投与経路などに応じて変動し得る。好適な用量は、典型的には体重または体表面積によって算出される。成人患者では、約0.01~約20mg/体重1kg、より好ましくは体重1kg当たり約0.02~約7、約0.03~約5、または約0.05~約3mgの通常単回用量で本発明の抗体を静脈内投与することが有利であり得る。状態の重症度に応じて、処置の頻度および継続時間を調整することができる。抗LEPR抗体の投与の有効投与量およびスケジュールは、経験的に決定されてもよく、例えば、患者の進行は、定期的な評価によってモニターすることができ、用量をそれに応じて調整することができる。さらに、投与量の種間スケーリングを、当技術分野において周知の方法を使用して実施することができる(例えば、Mordentiら、1991年、Pharmaceut. Res.、8巻:1351頁)。
【0102】
多様な送達系、例えば、リポソーム内の封入、マイクロ粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することが可能な組換え細胞、受容体により媒介されるエンドサイトーシスが公知であり、本発明の医薬組成物を投与するのに使用することができる(例えば、Wuら、1987年、J. Biol. Chem.、262巻:4429~4432頁を参照されたい)。導入法は、皮内経路、筋内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、および経口経路を含むがこれらに限定されない。組成物は、任意の簡便な経路、例えば、注入またはボーラス注射、上皮または粘膜皮膚内膜を介する吸収(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、および腸粘膜など)を介して投与することができ、他の生体活性薬剤と併せて投与することができる。投与は、全身投与の場合もあり、局所投与の場合もある。
【0103】
本発明の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジを用いて皮下または静脈内送達することができる。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本発明の医薬組成物の送達にたやすく適用される。このようなペン型送達デバイスは、再使用可能または使い捨てであり得る。再使用可能なペン型送達デバイスは一般に、医薬組成物を含有する交換式カートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物のすべてが投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジをたやすく廃棄し、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと置き換えることができる。こうして、ペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てペン型送達デバイスでは、交換式カートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバーに保持されている医薬組成物で予め充填されている。医薬組成物のリザーバーが空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0104】
多数の再使用可能なペン型送達デバイスおよび自動注射(autoinjector)送達デバイスが、本発明の医薬組成物の皮下送達において適用を有する。例としては、それだけに限らないが、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン、(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、ならびにOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)がある。本発明の医薬組成物の皮下送達において適用がある使い捨てペン型送達デバイスの例としては、それだけに限らないが、ほんの数例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park、IL)がある。
【0105】
ある特定の状況では、医薬組成物を制御放出システムで送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer、上記;Sefton、1987年、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng.、14巻:201頁を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、1974年、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照。さらに別の実施形態では、制御放出システムを組成物の標的に近接して配置し、よって全身用量の一部のみを必要とすることができる(例えば、Goodson、1984年、Medical Applications of Controlled Release、上記、2巻、115~138頁を参照)。他の制御放出システムは、Langer、1990年、Science、249巻:1527~1533頁による総説において論じられている。
【0106】
注射用調製物は、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、および筋内注射、点滴注入などのための剤形を含みうる。これらの注射用調製物は、公知の方法により調製することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、上記で記載した抗体またはその塩を、従来注射のために使用されている、滅菌水性媒体中または滅菌油性媒体中で、溶解させるか、懸濁させるか、または乳化させることにより調製することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩液、グルコース、およびアルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]など、適切な可溶化剤と組み合わせて使用しうる他の補助剤などを含有する等張性溶液がある。油性媒体としては、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用しうる、ゴマ油、ダイズ油などが使用される。このようにして調製された注射剤は、適切なアンプルに充填することが好ましい。
【0107】
上記で記載した、経口使用または非経口使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適する単位用量の剤形へと調製すると有利である。単位用量にあるこのような剤形は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤などを含む。含有される前記抗体の量は一般に、単位用量にある剤形1つ当たり約5~約500mgであり、とりわけ、注射剤の形態では、前記抗体は、約5~約100mgで含有されることが好ましく、他の剤形では、約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0108】
抗体の治療的使用
本発明は、それを必要とする被験体に、抗LEPR抗体(例えば、本明細書の表1に示されたHCVR/LCVRまたはCDR配列のうちのいずれかを含む抗LEPR抗体)を含む治療用組成物を投与することを含む方法を含む。治療用組成物は、本明細書に開示の抗LEPR抗体のいずれか、またはこれらの抗原結合性断片、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含み得る。
【0109】
本発明の抗体は、とりわけ、レプチン欠損、レプチン耐性、低レプチン血症と関連した、またはこれらによって媒介される、あるいはin vitroまたはin vivoでLEPRシグナル伝達を刺激もしくは活性化し、またはレプチンの天然の活性を模倣することによって別段に処置可能な任意の疾患あるいは障害の処置、防止、および/あるいは好転に有用である。例えば、本発明の抗体およびこれらの抗原結合性断片は、リポジストロフィー状態を処置するのに有用である。本発明の抗体およびこれらの抗原結合性断片によって処置可能である例示的なリポジストロフィー状態としては、例えば、先天性全身性リポジストロフィー、後天性全身性リポジストロフィー、家族性部分的リポジストロフィー、後天性部分的リポジストロフィー、遠心性腹部リポジストロフィー(centrifugal abdominal lipodystrophy)、環状脂肪組織萎縮症(lipoatrophia annularis)、局在性リポジストロフィー、およびHIV関連リポジストロフィーがある。
【0110】
本発明は、肥満に関連した1つまたは複数のLEPR変異を発現する細胞、組織、および臓器へのレプチンシグナル伝達を回復させるのに有用な抗LEPR抗体およびこれらの抗原結合性断片も含む。例えば、レプチンの存在下でシグナル伝達を呈さない、またはシグナル伝達の低減を呈し、肥満および関連障害と関連したある特定のLEPR変異体が同定されている。本明細書では、レプチンの存在下でシグナル伝達を呈さないLEPR変異体は、「シグナル伝達欠損LEPR変異体」と呼ばれる。例示的なシグナル伝達欠損LEPR変異は、LEPR-A409Eである(Farooqiら、2007年、N Engl J Med、356巻(3号):237~247頁)。本明細書では、レプチンの存在下でシグナル伝達の低減(野生型LEPRと比較して)を呈するLEPR変異体は、「シグナル伝達障害LEPR変異体」と呼ばれる。例示的なシグナル伝達障害LEPR変異は、LEPR-P316Tである(Mazenら、2011年、Mol Genet Metab、102巻:461~464頁)。よって、本発明は、1つまたは複数のシグナル伝達欠損(例えば、A409E)および/またはシグナル伝達障害(例えば、P316T)LEPR変異体によって引き起こされる、またはこれらと関連した疾患および障害の処置、防止、および/または好転に有用な抗LEPR抗体およびこれらの抗原結合性断片を含む。
【0111】
本発明の抗LEPR抗体およびこれらの抗原結合性断片は、肥満、メタボリック症候群、食事誘発性食物渇望(diet-induced food craving)、機能性視床下部性無月経、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン耐性、インスリン受容体の変異に起因する重度インスリン耐性、インスリン受容体の変異によって引き起こされない重度インスリン耐性、下流シグナル伝達経路における変異によって引き起こされる、または他の原因によって誘導される重度インスリン耐性を含む重度インスリン耐性、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患、アルツハイマー病、レプチン欠損、レプチン耐性、リポジストロフィー、妖精症/ドナヒュー症候群、ラブソン-メンデンホール症候群からなる群より選択される1つまたは複数の疾患または障害の処置または防止にも有用である。
【0112】
本明細書に記載の処置の方法の文脈において、抗LEPR抗体は、単剤療法として(すなわち、唯一の治療剤として)、または1種もしくは複数の追加の治療剤と組み合わせて投与することができる(この例は本明細書の他の場所で記載されている)。
【0113】
組み合わせ療法および製剤
本発明は、1種または複数の追加の治療的に活性な成分と組み合わせた本明細書に記載の抗LEPR抗体のいずれかを含む組成物および治療用製剤、ならびにそれを必要とする被験体にこのような組み合わせを投与することを含む処置の方法を含む。
【0114】
本発明の抗LEPR抗体は、1種または複数の追加の治療的に活性な成分、例えば、肥満、高コレステロール血症、高脂血症、2型糖尿病、1型糖尿病、食欲制御、不妊症などを処置するために処方される医薬品と組み合わせて共製剤化および/または投与することができる。このような追加の治療的に活性な成分の例としては、例えば、組換えヒトレプチン(例えば、メトレレプチン[MYALEPT])、PCSK9インヒビター(例えば、抗PCSK9抗体[アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブ、ラルパンシズマブ(ralpancizumab)など])、スタチン(アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、シムバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンなど)、エゼチミベ、インスリン、インスリン改変体、インスリン分泌促進物質、メトホルミン、スルホニル尿素、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)インヒビター(例えば、デパグリフロジン(dapaglifozin)、カナグリフロジン(canaglifozin)、エンパグリフロジンなど)、GLP-1アゴニスト/類似体(例えば、エクステンジン-4、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチドなど)、グルカゴン(GCG)インヒビター(例えば、抗GCG抗体)、グルカゴン受容体(GCGR)インヒビター(例えば、抗GCGR抗体、低分子GCGRアンタゴニスト、GCGR特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗GCGRアプタマー[例えば、スピーゲルマー(Spiegelmer)]など)、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)インヒビター(例えば、抗ANGPTL3抗体、抗ANGPTL4抗体、抗ANGPTL8抗体など)、フェンテルミン、オーリスタット、トピラメート、ブプロピオン、トピラメート/フェンテルミン、ブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、プラムリンチド/メトレレプチン(Metrelepin)、ロルカセリン、セチリスタット、テソフェンシン、ベルネペリットなどがある。
【0115】
追加の治療的に活性な成分、例えば、上記に列挙した薬剤またはこれらの誘導体のいずれかを、本発明の抗LEPR抗体を投与する直前、同時、直後に投与することができる;(本開示の目的に関して、このような投与レジメンは、追加の治療的に活性な成分「と組み合わせた」抗LEPR抗体の投与とみなされる)。本発明は、本発明の抗LEPR抗体が本明細書の他の場所で記載されている通り、追加の治療的に活性な成分の1種または複数と共製剤化される医薬組成物を含む。
【0116】
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態によれば、複数回用量の抗LEPR抗体(または抗LEPR抗体と本明細書に述べた追加の治療活性剤のいずれかとの組み合わせを含む医薬組成物)を、既定された時間経過にわたって被験体に投与することができる。本発明のこの態様による方法は、複数回用量の本発明の抗LEPR抗体を被験体に順次投与することを含む。本明細書では、「順次投与すること」は、各用量の抗LEPR抗体が異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間、または数カ月)によって分離された異なる日に被験体に投与されることを意味する。本発明は、単回初期用量の抗LEPR抗体、その後1回または複数回の二次用量の抗LEPR抗体、任意選択でその後1回または複数回の三次用量の抗LEPR抗体を患者に順次投与することを含む方法を含む。
【0117】
用語「初期用量」、「二次用量」、および「三次用量」は、本発明の抗LEPR抗体を投与する時間的順序を指す。よって、「初期用量」は、処置レジメンの始めに投与される用量であり(「ベースライン用量」、「負荷用量」、「開始用量」などとも呼ばれる)、「二次用量」は、初期用量後に投与される用量であり、「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初期、二次、および三次用量はすべて、同じ量の抗LEPR抗体を含有し得るが、一般に、投与頻度の観点から互いに異なり得る。しかし、ある特定の実施形態では、初期、二次、および/または三次用量に含まれる抗LEPR抗体の量は、処置の過程の間に互いに変動する(例えば、必要に応じて上下に調整される)。ある特定の実施形態では、2回またはそれよりも多い(例えば、2、3、4、または5回)用量が「負荷用量」として処置レジメンの始めに投与され、その後より少ない頻度に基づいて投与される後続の用量が続く(例えば、「維持用量」)。
【0118】
抗体の診断的および分析的使用
本発明の抗LEPR抗体は、例えば、診断目的で試料中のLEPRまたはLEPR発現細胞を検出および/または測定するのに使用することもできる。例えば、抗LEPR抗体またはその断片は、LEPRの異常な発現(例えば、過剰発現、過少発現、発現の欠如など)によって特徴付けられる状態または疾患を診断するのに使用され得る。LEPRの例示的診断アッセイは、患者から得た試料を本発明の抗LEPR抗体と接触させることを含み得、抗LEPR抗体は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識化されている。代替として、標識化されていない抗LEPR抗体をそれ自体検出可能に標識化されている二次抗体と組み合わせて診断適用において使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、放射性同位体、例えば、3H、14C、32P、35S、もしくは125Iなど;蛍光もしくは化学発光部分、例えば、フルオレセインイソチオシアネートもしくはローダミンなど;または酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどであり得る。試料中のLEPRを検出または測定するのに使用され得る具体的な例示的アッセイとしては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、およびポジトロン放出断層撮影(PET)走査がある。
【0119】
本発明によるLEPR診断アッセイで使用され得る試料としては、正常または病的状態下で検出可能な量のLEPRタンパク質またはその断片を含有する患者から入手可能な任意の組織または体液試料がある。一般に、健康な患者(例えば、異常なLEPRレベルまたは活性に関連した疾患または状態に罹患していない患者)から得られる特定の試料中のLEPRのレベルを測定して、LEPRのベースラインまたは標準レベルを最初に確立する。次いでLEPRのこのベースラインレベルを、LEPR関連疾患または状態を有すると疑われる個体から得られる試料中で測定されるLEPRのレベルと比較することができる。
【実施例0120】
以下の実施例は、当業者に本発明の方法および組成物をどのように作製および使用するかの完全な開示および記述を提供するために提示されており、本発明者らが自身の発明とみなす範囲を限定するように意図されていない。使用する数値(例えば、量、温度など)に関する精度を保証する取り組みを行っているが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。別段に示されていない限り、部分は、重量部であり、分子量は、平均分子量であり、温度は、セ氏温度であり、圧力は、大気または大気付近におけるものである。
【0121】
(実施例1:レプチン受容体(LEPR)に特異的に結合する抗原結合タンパク質の産生)
抗LEPR抗体は、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作されたマウス)をLEPRの細胞外ドメインを含む免疫原で免疫化することによって得た。抗体免疫応答をLEPR特異的イムノアッセイによってモニターした。以前に記載の技法を使用して、完全ヒト抗LEPR抗体を単離および精製した。
【0122】
本実施例の方法に従って生成された例示的な抗LEPR抗体のある特定の生物学的性質を、以下に示す実施例で詳細に記載する。
【0123】
(実施例2:重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸および核酸配列)
表1は、本発明の選択された抗LEPR抗体の重鎖および軽鎖可変領域およびCDRのアミノ酸配列の識別子を示す。対応する核酸配列の識別子を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0124】
抗体は、典型的には、以下の命名法:Fc接頭辞(例えば、「H4H」、「H1M」、「H2M」など)、その後の数値的な識別子(例えば、「16650」、「16679」など)、およびその後の「P」または「N」接尾辞に従って本明細書で呼ばれる。よって、この命名法によれば、抗体は、例えば、「H4H16650P2」、「H4H16679P2」などと本明細書で呼ばれる場合がある。本明細書で使用する抗体の名称のFc接頭辞(H4H、H1M、およびH2M)は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H4H」抗体は、ヒトIgG4 Fcを有し、一方、「H1M」抗体は、マウスIgG1 Fcを有する(すべての可変領域は、抗体名称の最初の「H」によって表される通り、完全にヒトのものである)。当業者が理解することになるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体を、ヒトIgG4を有する抗体に変換することができる、など)が、いずれにしても、表1および2に示した数値的識別子によって示されている可変ドメイン(CDRを含む)は、同じままとなり、結合性質は、Fcドメインの特質にかかわらず同一または実質的に類似であると予期される。
【0125】
本明細書の実施例で使用する「対照薬(comparator)mAb300Dは、Fazeliら(2006年)、J Immunol Methods、312巻:190~200頁およびCarpenterら(2012年)、Structure、20巻(3号):487~97頁に記載のFab9F8を指す。
【0126】
(実施例3:表面プラズモン共鳴で得られるヒトモノクローナル抗LEPR抗体の結合アフィニティーおよび動態定数(kinetic constant))
精製抗LEPRモノクローナル抗体へのLEPR結合に関する平衡解離定数(K
D値)を、Biacore4000計測器を使用してリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して決定した。すべての結合研究は、25℃および37℃にて10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05% v/v界面活性剤Tween-20、pH7.4(HBS-ET)ランニング緩衝液で実施した。Biacoreセンサー表面を、抗LEPRモノクローナル抗体を捕捉するために、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE、#BR-1008-39)とアミンカップリングすることによって最初に誘導体化した。結合研究は、以下のLEPR試薬に対して実施した:C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現されるヒトLEPR細胞外ドメイン(hLEPR.mmh;配列番号114)、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現されるmacaca fascicularis LEPR細胞外ドメイン(mfLEPR.mmh;配列番号117)、C末端マウスIgG2a Fcタグとともに発現されるヒトLEPR細胞外ドメイン(hLEPR.mFc;配列番号115)、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現されるマウスLEPR細胞外ドメイン(mLEPR.mmh;配列番号118)、およびC末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現されるラットLEPR細胞外ドメイン(rLEPR.mmh;配列番号119)。異なる濃度のLEPR試薬をHBS-ETランニング緩衝液(100nM~3.7nM;3倍連続希釈)中で最初に調製し、抗ヒトFc捕捉抗LEPRモノクローナル抗体表面上に30μL/分の流量で4分間注射し、一方、モノクローナル抗体結合LEPR試薬の解離をHBS-ETランニング緩衝液中で10分間モニターした。動的な会合(k
a)および解離(k
d)速度定数を、リアルタイム結合センサーグラムをScrubber2.0c曲線フィッティングソフトウェアを使用して質量輸送制限を用いた1:1結合モデルにフィッティングすることによって決定した。結合解離平衡定数(K
D)および解離半減期(t1/2)を、
【化1】
として動力学的速度定数から算出した。
【0127】
25℃および37℃での本発明の異なる抗LEPRモノクローナル抗体へのhLEPR.mmh、mfLEPR.MMH、またはhLEPR.mFcの結合についての結合動態パラメータを表3から8に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0128】
25℃で、抗LEPRモノクローナル抗体は、表5に示した通り、7.93nM~148nMの範囲のKD値でhLEPR-MMHに結合した。37℃で、抗LEPRモノクローナル抗体は、表4に示した通り、14.8nM~326nMの範囲のKD値でhLEPR-MMHに結合した。
【0129】
本発明の12種の抗LEPRモノクローナル抗体のうちの10種がmfLEPR.MMHに結合した。25℃で、抗LEPRモノクローナル抗体は、表7に示した通り、2.27nM~139nMの範囲のKD値でmfLEPR.MMHに結合した。37℃で、抗LEPRモノクローナル抗体は、表8に示した通り、5.18nM~264nMの範囲のKD値でmfLEPR.MMHに結合した。
【0130】
25℃で、抗LEPRモノクローナル抗体は、表7に示した通り、613pM~5.7nMの範囲のKD値でhLEPR-mFcに結合した。37℃で、抗LEPRモノクローナル抗体は、表8に示した通り、1.16nM~12.8nMの範囲のKD値でhLEPR-mFcに結合した。
【0131】
本発明の抗LEPRモノクローナル抗体のいずれも、25℃または37℃でmLEPR.MMHまたはrLEPR.MMHに結合しなかった(データを示さず)。
【0132】
(実施例4:本発明の抗LEPR抗体は、レプチン:LEPR結合の存在下でLEPRに結合する)
抗LEPR抗体がLEPRに結合することのヒトレプチンによる遮断を、Biacore T200計測器のリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して評価した。研究全体を、25℃にて10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05%v/v界面活性剤Tween-20(HBS-ETランニング緩衝液)中で実施した。Biacore CM5センサー表面を、標準EDC/NHS表面化学を使用してヒトレプチン(R&D Systems、#398-LP)をアミンカップリングすることによって最初に誘導体化した。ヒトLEPRとヒトレプチンとの複合体を、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現させた20nMのヒトLEPR細胞外ドメイン(hLEPR-MMH;配列番号xx)を、ヒトレプチンを固定化したBiacoreセンサー表面上に10μL/分または25μL/分の流量で4分間注射することによって形成して、およそ200RUの結合応答を達成した。hLEPR-MMHへの抗体結合がヒトレプチンによって遮断されるか否かを評価するために、200nMの抗LEPRモノクローナル抗体を、予め形成させたhLEPR-MMH:ヒトレプチン複合体上に、50μL/分または25μL/分の流量で、4~5分間注射した。本発明のすべての抗LEPR抗体は、hLEPR-MMHとヒトレプチンとの複合体(「レプチン:LEPR」)に結合し、シグナル強度はほぼ同等であった。観察された結合をRUで表して表9に報告する。この結果は、ヒトレプチンがhLEPR-MMHの試験した抗LEPR抗体への結合を遮断しないことを示す。
【表9】
【0133】
(実施例5:ヒトレプチン受容体遮断ELISA)
ELISAのために、ヒトレプチン(hLeptin;R&D Systems、#398-LP-01M)を、96ウェルマイクロタイタープレート上にPBS中5μg/mLの濃度で4℃にて一晩被覆した。非特異的結合部位を、PBS中のBSAの0.5%(w/v)溶液を使用して引き続いてブロックした。C末端ヒトFcタグとともに発現させたLEPRタンパク質の10nMの一定量の細胞外ドメイン部分(hLEPR.hFc;配列番号116)を、連続希釈物中8.5pM~500nMの範囲の抗LEPR抗体、hLeptinタンパク質、またはアイソタイプ対照抗体で滴定した。次いでこれらの抗体-タンパク質またはタンパク質-タンパク質複合体を室温(RT)で1.5時間インキュベートした。複合体を、hLeptinを被覆したマイクロタイタープレートに引き続いて移し、RTで2時間インキュベートし、ウェルを洗浄し、プレートに結合したhLEPR.hFcを、西洋わさびペルオキシダーゼとコンジュゲートした抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch Inc、#109-035-098)で検出した。試料をTMB溶液(BD Biosciences、#555214;製造者の指示書に従って1:1の比で混合した基質AおよびB)で発色させて比色反応を生じさせ、次いで1M硫酸で中和した後、Victor X5プレートリーダーで450nmにおける吸光度を測定した。
【0134】
データ分析は、Prism(商標)ソフトウェア(GraphPad)の中のS字状用量応答モデルを使用して実施した。試験した抗体の最大濃度におけるパーセント遮断を、10nMのhLEPR.hFcのプレート上のヒトレプチンへの結合を遮断する抗体の能力の指標として算出した。算出において、抗体の非存在下での10nMのhLEPR.hFcの結合シグナルを100%結合または0%遮断として参照し、hLEPR.hFcの非存在下での緩衝液単独のベースラインシグナルを0%結合または100%遮断として参照した。500nM抗体濃度における遮断データを表10に要約する。
【0135】
表10に示した通り、本発明の抗LEPR抗体のいずれも、hLEPR.hFcのhLeptin被覆表面への結合の28%超の遮断を実証しなかった。しかし、対照薬抗体およびhLeptinは、陽性対照として、hLEPR.hFcのhLeptin被覆表面への結合を99%遮断することができた。アイソタイプ対照抗体は、最大で500nMの濃度で測定可能な遮断を実証しなかった。
【表10】
【0136】
(実施例6:HEK293/Mycx2-hLepR(ecto)-GPIアンカー型細胞を用いたFACS分析による細胞結合)
レプチン受容体、LEPRは、クラスIサイトカイン受容体ファミリーの一回膜貫通型受容体である(Tartagliaら(1997年)、J Biol Chem、7:272巻(10号):6093~6頁)。LEPRは、レプチン、食物摂取および代謝の調節に関与する脂肪組織によって主に発現されるタンパク質に結合することができる(Friedmanら(2014年)、J Endocrinol、223巻(1号):T1~8頁)。
【0137】
抗LEPR抗体による細胞結合を評価するために、HEK293安定細胞株を生成した。HEK293/hLEPR-GPIとして以下で知られる1つの細胞株は、ヒトLEPRの細胞外ドメイン(受託番号P48357のアミノ酸22~839(配列番号113)、アイソフォームB)を、N末端myc-mycタグ、およびGPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)の付加をガイドするヒトカルボキシペプチダーゼM由来のC末端ペプチド配列とともに安定に発現した(Deddishら(1990年)、J. Biological Chemistry、265巻:25号:15083~89頁)。その結果、タンパク質は、膜にGPIで係留することができる。ルシフェラーゼレポーター(Stat3-ルシフェラーゼ、Stat3-luc、SA Bioscience、#CLS-6028L)とともに全長のヒトLEPR(受託番号P48357(配列番号113)のアミノ酸1~1165、アイソフォームB)を安定に発現させるために、別のHEK293細胞株を生成した。この細胞株は、以下でHEK293/Stat3-luc/hLEPR-FLとして知られる。Stat3-ルシフェラーゼレポーターのみを含むHEK293細胞(HEK293/Stat3-luc)も対照細胞株として生成した。
【0138】
FACS分析のために、HEK293親細胞およびHEK293/hLEPR-GPI細胞を解離し、2% FBS含有PBS(FACS緩衝液)中で5×105細胞/ウェルで96ウェルV底プレート上に蒔いた。抗hLEPR抗体の、細胞に結合する能力がレプチンの存在によって影響されるか否かを試験するために、1μMヒトレプチン(R&D Systems、#398-LP)を含む、または含まないFACS緩衝液を細胞とともに4℃で30分間インキュベートし、その後FACS緩衝液中10nMで抗LEPR抗体または対照抗体を添加した。細胞を4℃で30分間引き続いてインキュベートし、その後洗浄し、次いで16μg/mLのAlexa Fluor(登録商標)-647コンジュゲート二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、#109-547-003)とともに4℃で30分間インキュベートした。細胞を、BD CytoFix(商標)(Becton Dickinson、#554655)を使用して引き続いて固定し、濾過し、HyperCyt Flow Cytometer(Beckman Coulter)で分析した。未染色および二次抗体単独の対照もすべての細胞株について試験した。結果をForeCyt(IntelliCyt)およびFlowJoバージョン10ソフトウェアを使用して分析して生存細胞の蛍光の幾何平均を決定した。各試料の蛍光の幾何平均を未染色細胞の幾何平均に対して正規化して、「結合比」と呼ばれる1条件当たりの相対的な結合を得、これらの結合比を試験した各抗体について記録した。
【0139】
表11に示した通り、10nMで試験した9種の本発明の抗LEPR抗体は、レプチン無しで824~3374倍の範囲の結合比でHEK293/hLEPR-GPI細胞に結合することを実証した。抗LEPR抗体は、398および4184倍の結合比で1μMのレプチンの存在下でも結合した。表11に示した通り、10nMで試験した対照薬抗体は、レプチン無しで2349倍の結合比でHEK293/hLEPR-GPI細胞への結合を実証したが、1μMのレプチンの存在下で細胞への有意により低い結合を示し、結合比は、112であった。抗LEPR抗体は、1~9倍の範囲の1μMのレプチンを含むおよび含まない結合比でHEK293親細胞へのいかなる有意な結合も実証しなかった。アイソタイプ対照抗体および二次抗体単独の試料も、レプチンの有無にかかわらず、いずれの細胞株に対しても有意な結合を実証せず、結合比は1~6倍であった。
【0140】
表12に示した通り、レプチン無しで、70nMで試験した本発明の4種の抗体は、707~1131倍の範囲の結合比でHEK293/hLEPR-GPI細胞への結合を実証し、かつ42~51の範囲の結合比でHEK293/Stat3-luc/hLEPR-FL細胞への結合を実証した。抗LEPR抗体は、HEK293/Stat3-luc細胞へのいかなる有意な結合も実証せず、結合比は、1~8倍であった。アイソタイプ対照抗体および二次抗体単独の試料も、試験したいずれの細胞株に対しても有意な結合を実証せず、結合比は1~2倍であった。
【表11】
【表12】
【0141】
(実施例7:本発明の抗LEPR抗体は、レプチンの存在下または非存在下でLEPRシグナル伝達を活性化する)
バイオアッセイは、IMR-32細胞株、ヒト神経芽細胞腫細胞株内でルシフェラーゼレポーター(STAT3-Luc;Qiagen、#CLS-6028L)とともに全長ヒトLEPR(hLEPR;受託番号NP_002294.2のアミノ酸1~1165)を安定に発現するレポーター細胞株を使用してLEPR活性化を介してSTAT3の転写活性化を検出するのに開発された。IMR-32/STAT3-Luc/hLEPRと呼ぶ得られた安定細胞株を、10% FBS、NEAA、1μg/mLピューロマイシン、100μg/mLのハイグロマイシンB、およびペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミンを補充したMEM-Earl培地(完全培地)中で単離および維持した。
【0142】
得られるバイオアッセイを使用してレプチンの存在下または非存在下でのLEPRシグナル伝達に対する本発明の抗LEPR抗体の効果を測定した。バイオアッセイについて、IMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞を、完全培地中、96ウェル形式で、20,000細胞/100μl/ウェルの密度で蒔き、翌日、1% BSAおよび0.1% FBS(アッセイ緩衝液)を補充した適切な体積のOpti-MEM培地で30分間にわたって置き換えた。レプチンの非存在下での本発明の抗体の効果を測定するために、抗LEPR抗体またはアイソタイプ対照抗体およびヒトレプチン(hLeptin;R&D Systems、#398-LP)を半対数連続希釈(half-log serially dilute)してアッセイ緩衝液中100nM~300fMの範囲の最終濃度にし、それを細胞に添加し、5% CO2中、37℃で一晩引き続いてインキュベートした。
【0143】
レプチンの存在下での本発明の抗体の効果を測定するために、アッセイ緩衝液中200pMの固定濃度のヒトレプチンを細胞に添加し、直後に100nM~300fMの範囲の最終濃度に半対数連続希釈された抗LEPR抗体またはアイソタイプ対照抗体を添加した。次いで試料を5% CO2中37℃で一晩インキュベートした。次いでOneGlo試薬(Promega、#E6051)を試料に添加し、ルシフェラーゼ活性を発光モードにてEnvision Multilableプレートリーダー(Perkin Elmer)で測定した。相対光単位(RLU)値を得、結果をGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて非線形回帰を使用して分析した。hLeptin用量応答から得た最大RLU値をIMR-32/STAT3-Luc/hLEPRアッセイにおける100%の活性化として定義した。
【0144】
表13に示した通り、研究1においてhLeptinの非存在下で、試験した抗LEPR抗体のすべてがIMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の弱い刺激を実証し、EC
50値は、134pM~11.9nMの範囲であり、最大活性化は、hLeptin用量応答から得た最大活性化のもののそれぞれ5%~13%の範囲であった。研究2においてhLeptinの非存在下で、試験した4種の抗LEPR抗体がIMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の刺激を実証し、EC
50値は、61.9pM~206.9pMの範囲であり、最大活性化は、hLeptin用量応答から得た最大活性化に対してそれぞれ65%~68%の範囲であった。研究1において200pMのhLeptinの存在下で、試験した抗LEPR抗体のすべてがIMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の刺激を実証し、EC
50値は、20.2pM~523pMの範囲であり、最大活性化は、hLeptin用量応答から得た最大活性化のもののそれぞれ66%~107%の範囲であった。これらの抗体は、レプチン誘導LEPRシグナル伝達を増強したので、これらの抗体を本明細書で定義する「増強剤」と分類した。研究2において200pMのhLeptinの存在下で、試験した4種の抗LEPR抗体がIMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の刺激を実証し、EC
50値は、51.9pM~257.3pMの範囲であり、最大活性化は、hLeptin用量応答から得た最大活性化に対してそれぞれ76%~88%の範囲であった。LEPRシグナル伝達は、レプチンの存在下でこれらの抗体によって認め得るほどには増強されなかった。アイソタイプ対照抗体は、アッセイのいずれにおいてもIMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞のいかなる測定可能な刺激も実証しなかった。
【表13】
【0145】
(実施例8:本発明の抗LEPR抗体は、シグナル伝達欠損またはシグナル伝達障害LEPR変異体を発現する細胞内でシグナル伝達を活性化する)
レプチン-媒介シグナル伝達の欠損また障害を呈し、早期発症肥満と関連したLEPR変異体を同定した。例えば、LEPR-A409Eは、レプチンシグナルをSTAT3に変換しないシグナル伝達欠損変異体LEPRタンパク質であり、A409E変異体は、早期発症肥満の単一遺伝子性の原因として元来同定された。(Farooqiら、2007年、N Engl J Med、356巻(3号):237~247頁)。LEPR-P316Tは、やはり早期発症肥満と関連していると示されたシグナル伝達障害変異体LEPRタンパク質である。(Mazenら、2011年、Mol Genet Metab、102巻:461~464頁)。
【0146】
本実施例では、本発明の抗LEPR抗体の、シグナル伝達欠損またはシグナル伝達障害LEPR変異体を発現する細胞株内でLEPRシグナル伝達を刺激する能力を評価した。特に、野生型LEPR、LEPR-A409E(シグナル伝達欠損)、またはLEPR-P316T(シグナル伝達障害)を発現するレポーター細胞株(HEK293)を構築した。細胞をビヒクルのみ、組換えヒトレプチン、対照IgG、または本発明のアゴニスト抗LEPR抗体(H4H16650またはH4H16679)で処置し、LEPRシグナル伝達の程度(STAT3発現と比べたpSTAT3-Y705発現のウェスタンブロット検出によって測定した)を決定した。
【0147】
本発明のアゴニスト抗LEPR抗体(H4H16650およびH4H16679)は、用量依存的様式で、LEPR-A409E変異体またはLEPR-P316T変異体を発現する細胞内でLEPRシグナル伝達を刺激することをこれらの実験において示した(STAT3発現によって測定した場合)(
図2、パネルBおよびC)。対照的に、レプチンで処置すると、LEPR-P316T変異体を発現する細胞内で中程度のシグナル伝達のみが誘導され、LEPR-A409E変異体を発現する細胞内でシグナル伝達は誘導されなかった(
図2、パネルA)。さらに、LEPRシグナル伝達は、ビヒクルまたはIgG対照抗体で処置したいずれの細胞株においても検出されなかった(データを示さず)。他のシグナル伝達欠損またはシグナル伝達障害LEPR変異体も本アッセイにおいて試験したが、抗LEPR変異体によって活性化されず(データを示さず)、このレスキュー効果が変異体依存性であり得ることを示唆した。
【0148】
本実施例の結果は、本発明のアゴニスト抗LEPR抗体が、ある特定のシグナル伝達欠損またはシグナル伝達障害LEPR変異体(例えば、LEPR-P316TまたはLEPR-A409E)によって引き起こされる、またはそれと関連した疾患または障害(例えば、早期発症肥満)において有用であり得ることを示す。
【0149】
(実施例9:異なる抗LEPRモノクローナル抗体間のOctet交差競合)
異なる抗LEPRモノクローナル抗体のパネル間の結合競合について、Octet HTXバイオセンサープラットフォーム(Pall ForteBio Corp.)でリアルタイム無標識バイオレイヤー干渉法アッセイを使用して決定した。実験全体を、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05%v/v界面活性剤Tween-20、1mg/mL BSA、pH7.4(HBS-EBT)を含有する緩衝液中、25℃にて1000rpmの速度でプレートを振盪させて実施した。2種の抗体がC末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現された組換えヒトLEPR(hLEPR.mmh;配列番号114)上のこれらのそれぞれのエピトープへの結合について互いに競合することができるか否かを評価するために、約0.25nMまたは0.34nMのhLEPR-MMHを20μg/mLのhLEPR-MMHを含有するウェル中に5分間バイオセンサーチップを浸漬することによって抗ペンタHis抗体被覆Octetバイオセンサーチップ(Fortebio Inc、#18-5122)上に最初に捕捉した。次いで、抗原捕捉したバイオセンサーチップを、第1の抗LEPRモノクローナル抗体(引き続いてmAb-1と呼ぶ)を、mAb-1の50μg/mL溶液を含有するウェル中に210秒間液浸させることによって飽和させた。次いでバイオセンサーチップを、第2の抗LEPRモノクローナル抗体(引き続いてmAb-2と呼ぶ)の50μg/mL溶液を含有するウェル中に150秒間引き続いて液浸させた。バイオセンサーチップを、実験のあらゆるステップ間においてHBS-EBT緩衝液で洗浄した。リアルタイム結合応答を実験の過程全体の間モニターし、各ステップの最後に結合応答を記録した。mAb-1と予め複合体形成したhLEPR-MMHへのmAb-2結合の応答を比較し、異なる抗LEPRモノクローナル抗体の競合性/非競合性挙動を表14および表15に示した通り決定した。
【表14】
【表15】
【0150】
(実施例10:レプチン欠損の誘導性マウスモデルにおけるLEPRアゴニスト抗体H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、およびH4H17321P2のin vivo効力)
食物摂取、体重、および体脂肪蓄積(adiposity)に対する本発明の4種の特異的アゴニスト抗LEPR抗体、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、およびH4H17321P2の効果を、ネズミLEPR外部ドメイン配列の代わりにヒトLEPR外部ドメイン配列から構成されているレプチン受容体を発現する遺伝子操作されたLEPRHu/Huマウスのレプチン欠損の誘導性モデルにおいて決定した。レプチン欠損のモデルは、hFc-タグ付きマウスLEPR外部ドメイン(mLEPR.hFcまたは「レプチントラップ」と本明細書で呼ぶ;配列番号120)をコードするプラスミドの流体力学的DNA送達(hydrodynamic DNA delivery)(HDD)によって誘導した。レプチントラップは、発現されるとき分泌され、循環しているレプチンに結合する。レプチントラップをコードするDNA構築物50μgのHDDの後、マウスは、食物消費の増大ならびに体脂肪蓄積および体重の増大を呈した。
【0151】
ベースラインの日々の食物摂取量を、レプチントラップの投与の7日前と4日前(-7日目および-4日目)の間に測定した。0日目に、35匹の13~17週齢の雄LEPR
Hu/Huマウスを、成功裏にレプチントラップを用いたHDDに供した。HDD後6日目と13日目に、後眼窩血液を収集し、体脂肪蓄積を含む身体組成をμCTによって定量化した。HDD後7日目に、マウスを0日目からのパーセント体重変化に基づいて7匹のマウスの5つの群にランダム化した。各群は、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体、3mg/kgのH4H16650P2、3mg/kgのH4H16679P2、3mg/kgのH4H17319P2、または、3mg/kgのH4H17321の単回用量を皮下注射を介して受けた。アイソタイプ対照抗体は、いずれの公知のマウスタンパク質にも結合しなかった。食物摂取量および体重を研究の継続時間にわたって各動物について測定した。
図3は、各処置群の平均の日々の食物摂取量を要約する。
図3において、点線は、HDD注射の前の平均ベースライン食物摂取量を表す。0日目からの体重のパーセント変化を各時点で各動物について算出した。
図4は、各抗体処置群の動物についての体重の平均パーセント変化を要約する。
図5は、抗体処置の1日前および処置から6日後におけるμCTによって定量化した各抗体処置群の動物についての平均脂肪量を要約する。すべての結果を平均±SEMとして表現する。
【0152】
図3および4に示した通り、レプチントラップでのHDDの後、食物摂取量および体重パーセント変化の同様の増大が抗体処置前のマウスの群の中で観察された。
図3に示した通り、3mg/kgの抗体H4H16650P2またはH4H16679P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して、抗体処置から1日後(HDD後8日目)に始まって、測定した後続の時点で食物摂取量の有意な低減を呈した。3mg/kgの抗体H4H17319P2またはH4H17321P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して、抗体処置から2日後(HDD後9日目)および測定した他の後続の時点で食物摂取量の有意な低減を呈した。
図4に示した通り、3mg/kgの抗体H4H16650P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して、抗体処置から1日後(HDD後8日目)および測定した他の後続の時点でパーセント体重変化の有意な低減を呈した。抗体処置から1日後、すなわち8日目に、アイソタイプ対照で処置したマウスは、0日目から体重の21.16±1.27%の増大を示した一方、H4H16650P2で処置したマウスは、0日目から体重の15.57±0.9%の増大を有した。3mg/kgの抗体H4H16679P2、H4H17319P2、またはH4H17321P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して、抗体処置から2日後(HDD後9日目)および測定した他の後続の時点でパーセント体重変化の有意な低減を呈した。9日目に、0日目からの%体重変化は、アイソタイプ対照、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、またはH4H17321P2で処置したマウスについてそれぞれ、23.18±1.22、13.17±1.05、12.95±1.26、15.98±1.78、および15.83±2.01であった。
図5に示した通り、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体で処置したマウスは、抗体処置の1日前(HDD後6日目)と比較して、抗体処置から6日後(HDD後13日目)に脂肪量(fat mass)の有意な増大を実証した。3mg/kgの抗体H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、またはH4H17321P2で処置したマウスは、抗体処置前と比較して抗体処置後に脂肪量(adipose mass)が増加しなかった。処置の6日後(HDD後13日目)、3mg/kgの抗体H4H16650P2、H4H16679P2、またはH4H17319P2で処置したマウスは、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体で処置したマウスと比較して脂肪量の有意な低下を実証した。
【0153】
(実施例11:水素重水素交換によるヒトレプチン受容体(hLEPR.mmh)へのH4H16650P2結合のエピトープマッピング)
H4H16650P2が相互作用するhLEPR.mmhのアミノ酸残基(配列番号114のアミノ酸M1-D839)を決定するための実験を行った。この目的のために、質量分析を用いたH/D交換エピトープマッピングを実行した。H/D交換法の一般的な記述は、例えば、Ehring(1999年)、Analytical Biochemistry、267巻(2号):252~259頁;ならびにEngenおよびSmith(2001年)、Anal. Chem.、73巻:256A~265A頁に示されている。
【0154】
実験手順。HDX-MS実験を、重水素標識化のためのLeaptec HDX PALシステム、試料消化およびローディングのためのWaters Acquity M-Class(Auxiliary solvent manager)、分析カラム勾配のためのWaters Acquity M-Class(μBinary solvent manager)、ならびに消化性ペプチド質量測定のためのSynapt G2-Si質量分析計からなる統合Waters HDX/MSプラットフォームで実施した。
【0155】
標識化溶液をpD7.0(pH6.6と等価)のD2O中の10mM PBS緩衝液で調製した。重水素(deterium)標識化のために、hLEPR.mmh(8pmol/μL)または2:1のモル比で抗体とともに予め混合したhLEPR.mmh 3.8μLを、様々な時点(例えば、非重水素化対照=0秒、1分および20分間標識化した)についてD2O標識化溶液56.2μLとともにインキュベートした。重水素化を、試料50μLを予備冷却したクエンチ緩衝液(100mMリン酸緩衝液、pH2.5中の0.2M TCEP、6M塩化グアニジン)50μLに移すことによってクエンチし、混合試料を1.0℃で2分間インキュベートした。次いでクエンチした試料を、オンラインペプシン/プロテアーゼXIII消化のためにWaters HDX Manager中に注入した。消化したペプチドを0℃でACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、2.1×5mm VanGuardプレカラム上に捕捉させ、5%~40%のBの9分間の勾配分離(移動相A:水中0.1%ギ酸、移動相B:アセトニトリル中0.1%ギ酸)のために、分析カラムACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、1.0×50mmに溶出した。質量分析計を37Vのコーン電圧、0.5秒のスキャン時間、および50~1700Thの質量/電荷範囲に設定した。
【0156】
ヒトLEPR由来のペプチドを同定するために、非重水素化試料からのLC-MSEデータを、Waters ProteinLynx Global Server(PLGS)ソフトウェアを介してヒトLEPR、ペプシン、およびこれらのランダム化された配列を含むデータベースに対して処理および探索した。同定したペプチドをDynamXソフトウェアにインポートし、2つの判定基準:1)アミノ酸1個当たりの最小産物:0.2、および2)複製ファイル閾値:3によってフィルタリングした。次いでDynamXソフトウェアにより、各時間で3回反復して複数の時点にわたって保持時間および高質量精度(<10ppm)に基づいて各ペプチドの重水素取り込みを自動的に決定した。
【0157】
結果。MS
Eデータ取得とカップリングしたオンラインペプシン/プロテアーゼXIIIカラムを使用して、ヒトLEPR由来の合計201ペプチドを抗体の非存在または存在下で再現性良く同定し、70%の配列カバレッジ(sequence coverage)を示した。5種のペプチドは、表16に示した通りH4H16650P2に結合しているとき、重水素化取込みが有意に低減していた(セントロイドデルタ値>0.4ダルトン、p値<0.05)。記録されたペプチド質量は、3回の反復からのセントロイドMH+質量の平均値に対応する。これらのペプチドは、アミノ酸162~169(ヒトLEPR;配列番号113のアミノ酸LYVLPEVL)およびアミノ酸170~181(ヒトLEPR;配列番号113のアミノ酸EDSPLVPQKGSF)に対応し、H4H16650P2に結合しているとき、より遅い重水素化速度を有した。これらの同定された残基はまた、UniprotエントリーP48357(配列番号113;ヒトレプチン受容体)として定義されたヒトLEPRの残基酸162~169および170~181に対応する。
【表16】
【0158】
(実施例12:ヒト化LEPRマウスにおけるLEPR増強剤抗体のin vivo効力試験)
体重および体脂肪蓄積に対する本発明の3種の特異的増強剤抗LEPR抗体、H4H18482P2、H4H18487P2、およびH4H18492P2の効果を、単独で収容された遺伝子操作されたLEPRHu/Huマウスにおいて決定した。このマウスは、ネズミLEPR外部ドメイン配列の代わりにヒトLEPR外部ドメイン配列から構成されるレプチン受容体(mLEPR.hFc、配列番号120)を発現する。
【0159】
-19日目に、体脂肪蓄積を含む身体組成をμCTによって定量化した。0日目に、48匹の14~16週齢の雌LEPR
Hu/Huマウスを体重に基づいて12匹のマウスの4つの群にランダム化した。0日目および11日目に、各群からのマウスは、30mg/kgのアイソタイプ対照抗体、30mg/kgのH4H18482P2、30mg/kgのH4H18487P2、または、30mg/kgのH4H18492P2の単回用量を皮下注射を介して受けた。アイソタイプ対照抗体は、いずれの公知のマウスタンパク質にも結合しない。体重を各動物について研究の継続時間にわたって測定した。0日目からの体重のパーセント変化を各時点で各動物について算出した。
図6は、各処置群の動物についての体重の平均パーセント変化を要約する。
図6は、抗体処置の19日前および処置から11日後におけるμCTによって定量化した各抗体処置群の動物についての平均脂肪量を要約する。すべての結果を平均±SEMとして表現する。
【0160】
図6に示した通り、LEPR増強剤抗体を投薬した後、体重のパーセント変化の低下が観察されたが、アイソタイプ対照抗体を投薬した後では観察されなかった。
図6に示した通り、30mg/kgのH4H18482P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して、処置の2日後(2日目)に始まって、他の時点でパーセント体重変化の有意な低下を呈した。30mg/kgのH4H18487P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して、2日目に始まって、他の時点でパーセント体重変化の有意な低下を呈した。30mg/kgのH4H18492P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して、4、5、および17日目にパーセント体重変化の有意な低下を呈したが、他の時点では呈さなかった。30mg/kgのH4H18482P2で処置したマウスは、H4H18492P2を注射したマウスと比較して、6日目に始まって、後続の日にパーセント体重変化の有意な低下を呈したが、7、14、および17日目では呈さなかった。30mg/kgのH4H18487P2で処置したマウスは、H4H18492P2を注射したマウスと比較して、3日目に始まって、他の時点でパーセント体重変化の有意な低下を呈したが、4および5日目では呈さなかった。
【0161】
図7Aに示した通り、処置前(-19日目)に群間で脂肪量の差異はなかった。
図7Bに示した通り、30mg/kgの抗体H4H18482およびH4H18487で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体と比較して処置の17日後(12日目)に、脂肪量の統計的に有意な低下を示したが、H4H18492で処置したマウスは呈さなかった。
【0162】
本発明の範囲は、本明細書で記載される具体的実施形態により限定されない。実際、本発明前出の記載および添付の図面から、当業者には、本明細書で記載される改変に加えて、多様な改変が明らかとなるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に収まることが意図される。
【0163】
(実施例13:サルLEPRシグナル伝達に対する本発明の抗LEPR抗体の効果)
サルレプチン受容体の転写活性化を評価するために、安定細胞株を開発した。ルシフェラーゼレポーター(STAT3-Luc;SABiosciences、#CLS-6028L)とともにヒトLEPR(hLEPR;受託番号NP_002294.2のアミノ酸840~1165)の膜貫通ドメインおよび細胞質ゾルドメインと融合したMacaca fascicularis LEPR(MfLEPR;827のトレオニンがアラニンに変更された受託番号XP_005543194.1のアミノ酸22~837)の細胞外ドメインを安定に発現させるために、IMR-32細胞(ヒト神経芽細胞腫ATCC)を生成した。以下でIMR-32/STAT3-Luc/MfLEPRと呼ぶ得られた細胞株を単離し、10% FBS、NEAA、1μg/mLピューロマイシン、100μg/mLハイグロマイシンB、およびペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミンを補充したMEM-Earl培地中で維持した。
【0164】
レプチンの非存在下でのサルLEPRシグナル伝達に対する本発明の抗LEPR抗体の効果を測定するためのバイオアッセイを実施した。バイオアッセイのために、IMR-32/STAT3-Luc/MfLEPR細胞を、ペニシリン/ストレプトマイシンを含むOptimem中の0.1% FBS(アッセイ緩衝液)で96ウェルプレートに10,000細胞/ウェルで蒔き、5% CO2中、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ヒトレプチン(hLeptin)、抗LEPR抗体、またはアイソタイプ対照抗体を、アッセイ緩衝液中50nM~0.8pMに連続希釈し(+試験分子を含まない緩衝液単独を含有する試料)、細胞に添加した。5% CO2下で37℃にて5.5時間後、ルシフェラーゼ活性を、OneGlo(商標)試薬(Promega、#E6031)およびVictor(商標)Xマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて測定した。結果を、Prism(商標)6ソフトウェア(GraphPad)を用いて非線形回帰(4パラメーターロジスティクス)を使用して分析してEC50値を得た。抗体の活性化のパーセンテージを、hLeptinにより達成されたRLUの最大範囲のものと比べた、抗体により達成されたRLUの最大範囲として算出した。
【0165】
表17に示した通り、hLeptinの非存在下で、試験した抗LEPR抗体のすべては、IMR-32/STAT3-Luc/mfLEPR細胞内でサルLEPRシグナル伝達の活性化を示し、EC
50値は、266pM~368pMの範囲であり、最大活性化は、76%~82%の範囲であり、100%の活性化は、hLeptinで得られた。hLeptinは、333pMのEC
50値で活性化した。アイソタイプ対照抗体は、IMR-32/STAT3-Luc/mfLEPR細胞のいかなる測定可能な刺激も実証しなかった。
【表17】
【0166】
(実施例14:Luminex MFIシグナルを使用したヒトLEPRの全長細胞外ドメインへのエピトープ結合)
本発明の抗LEPR抗体が結合するヒトLEPRのエピトープを決定するために、Luminex FLEXMAP(FM3DD、LuminexCorp)フローサイトメトリーに基づく分析を利用して抗LEPR抗体の組換えヒトLEPRタンパク質ドメインとの相互作用を特徴付けた。アッセイのために、およそ3百万個のカルボキシル化MicroplexRミクロスフェア(Luminex、カタログ番号LC1000A)を、0.1M NaPO4、pH6.2(活性化緩衝液)中で洗浄、ボルテックス、および超音波処理し、次いで遠心分離して上清を除去した。ミクロスフェアを、25℃で、活性化緩衝液120μL中に再懸濁し、カルボキシレート基(-COOH)を、50mg/mLのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、Thermo Scientific、カタログ番号24500)15μLを添加し、その後50mg/mLの1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC、ThermoScientific、カタログ番号22980)15μLを添加することによって活性化した。10分後、反応物のpHを、50mM MES、pH5(カップリング緩衝液)600μLを添加して5.0に低減し、ミクロスフェアをボルテックスし、遠心分離して上清を除去した。活性化されたビーズを、カップリング緩衝液中でマウスIgGまたはヒトIgGを含む20μg/mLモノクローナル抗myc抗体500μLと直ちに混合し、25℃で2時間インキュベートした。カップリング反応を、1M Tris-HCl、pH8.0 50μLを添加することによってクエンチし、ミクロスフェアを急速にボルテックスし、遠心分離し、DPBS 1mLで4回洗浄してカップリングしていないタンパク質および他の反応成分を除去した。
【0167】
C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR細胞外ドメイン(ヒトLEPR-MMH、配列番号113)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH1(D1)(myc-mycヘキサヒスチジンタグ、アミノ酸209~236を含むヒトLEPR CRH1(D1)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~208)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH1(D1、D2)ドメイン(myc-mycヘキサヒスチジンタグ、アミノ酸319~346を含む、ヒトLEPR CRH1 (D1、D2)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~318)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH1-Ig(D1、D2、D3)ドメイン(myc-mycヘキサヒスチジンタグ、アミノ酸279~306を含む、ヒトLEPR CRH1(D1、D2、D3)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~278)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH1-Ig(D2、D3)ドメイン(myc-mycヘキサヒスチジンタグ、アミノ酸199~226を含むヒトLEPR CRH1-Ig(D2、D3)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~198)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR Ig(D3)ドメイン(myc-mycヘキサヒスチジンタグ、アミノ酸89~116を含むヒトLEPR Ig(D3)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~88)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH2ドメイン(myc-myc-ヘキサヒスチジンタグ、アミノ酸208~235を含むヒトLEPR CRH2-MMH、配列番号113のアミノ酸1~207)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR FNIIIドメイン(myc-mycヘキサヒスチジンタグ、アミノ酸205~232を含むヒトLEPR FNIII-MMH、配列番号113のアミノ酸1~204)、およびC末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR Ig-CRH2-FNIIIドメイン(myc-myc-ヘキサヒスチジンタグ、アミノ酸511~538を含むヒトLEPR Ig-CRH2-FNIII-MMH、配列番号113のアミノ酸1~510)を含む一過性に発現されたLEPRタンパク質を、無血清CHO-S-SFM II培地(Thermo Fisher、カタログ番号31033020)中に懸濁し、次いで遠心分離によって清澄化した。抗mycモノクローナル抗体が固定化されたミクロスフェアのアリコートを上述した通り調製し、これらのタンパク質上清のそれぞれ1mLに個別に添加した。ミクロスフェアを穏やかに混合し、25℃で2時間インキュベートし、DBPS 1mLで2回洗浄し、遠心分離して上清を除去し、最後にDPBS緩衝液1mL中に再懸濁した。全長ヒトLEPRとの、およびヒトLEPRドメインタンパク質のそれぞれとの個々の反応からの抗myc IgG結合ミクロスフェア48μLを引き抜き、PBS+20mg/mL BSA+0.05% アジ化ナトリウム(ブロッキング緩衝液)3.6mL中で一緒に混合した。
【0168】
この混合プールから、ミクロスフェア75μLを96ウェルフィルタープレート(Millipore、カタログ番号:MSBVN1250)のウェルごとに蒔き、個々の抗ヒトLEPRモノクローナル抗体(0.5または5μg/mL)25μLと混合し、25℃で2時間インキュベートし、次いで0.05% Tween20を含むDPBS(洗浄緩衝液)200μLで2回洗浄した。個々のミクロスフェアに結合した抗LEPR抗体レベルを検出し、その量を定量化するために、ブロッキング緩衝液中の2.5μg/mL R-フィコエリトリンコンジュゲートヤギF(ab’)2抗ヒトカッパ(Southern
Biotech、カタログ番号2063-09)100μLまたはブロッキング緩衝液中の1.25μg/mLのR-フィコエリトリンAffiniPure F(ab’)2断片ヤギ抗マウスIgG、F(ab’)2断片特異的(Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-116-072)100μLを添加し、25℃で30分間インキュベートした。30分後、試料を洗浄緩衝液200μLで2回洗浄し、洗浄緩衝液150μL中に再懸濁した。ミクロスフェアのメジアン蛍光強度(MFI)は、Luminex分析器で測定した。
【表18】
【0169】
Luminexに基づく分析の結果を表18で表にする。Luminex MFIシグナル強度は、本発明の12種の抗LEPR抗体が完全なヒトLEPR細胞外ドメインに結合したことを示す。抗LEPR抗体H4H18417P2、H4H18438P2、およびH4H18492P2は、ヒトLEPRのCRH1 D2ドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体H4H18449P2、H4H16650P、およびH4H16679Pは、ヒトLEPRのCRH1(D1~2)ドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体対照薬mABは、ヒトLEPRのCRH2ドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体H4H18445P2は、ヒトLEPRのFNIIIドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体H4H18446P2、H4H18482P2、およびH4H18487P2は、ヒトLEPRのIg-CRH2-FNIIIドメイン内のエピトープに結合した。
ヒトレプチン受容体(LEPR)に特異的に結合する抗体または抗原結合性断片の、重鎖可変領域(HCVR)を含むポリペプチドと軽鎖可変領域(LCVR)を含むポリペプチドとを発現させるための方法であって、前記方法は、
前記抗体または断片の産生を許容する条件下で、以下:
(i)配列番号10に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号26に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(ii)配列番号10に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号34に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(iii)配列番号10に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号2に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(iv)配列番号10に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号18に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(v)配列番号10に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号42に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(vi)配列番号10に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号50に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(vii)配列番号10に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号58に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(viii)配列番号10に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号66に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(ix)配列番号10に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号74に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(x)配列番号90に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号82に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、
(xi)配列番号90に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号98に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、または
(xii)配列番号90に示したアミノ酸配列を含むLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRと、配列番号106に示したアミノ酸配列を含むHCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR
をコードする核酸を含む組み換え発現ベクターを含む宿主細胞を培養することと、
そのように産生された抗体または断片を回収することと
を含む、方法。