特開 2024-2624 化粧料

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024002624

(43)【公開日】2024-01-11

(54)【発明の名称】化粧料

(51)【国際特許分類】

   A61K 8/49 20060101AFI20231228BHJP

   A61K 8/29 20060101ALI20231228BHJP

   A61K 8/92 20060101ALI20231228BHJP

   A61Q 1/04 20060101ALI20231228BHJP

【ＦＩ】

A61K8/49

A61K8/29

A61K8/92

A61Q1/04

【審査請求】未請求

【請求項の数】6

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022101943

(22)【出願日】2022-06-24

(71)【出願人】

【識別番号】000001959

【氏名又は名称】株式会社 資生堂

(74)【代理人】

【識別番号】100099759

【弁理士】

【氏名又は名称】青木 篤

(74)【代理人】

【識別番号】100123582

【弁理士】

【氏名又は名称】三橋 真二

(74)【代理人】

【識別番号】100117019

【弁理士】

【氏名又は名称】渡辺 陽一

(74)【代理人】

【識別番号】100141977

【弁理士】

【氏名又は名称】中島 勝

(74)【代理人】

【識別番号】100138210

【弁理士】

【氏名又は名称】池田 達則

(72)【発明者】

【氏名】金澤 真里奈

(72)【発明者】

【氏名】小坂 恭平

(72)【発明者】

【氏名】千葉 桐子

【テーマコード（参考）】

4C083

【Ｆターム（参考）】

4C083AA122

4C083AB241

4C083AB242

4C083AC012

4C083AC212

4C083AC372

4C083AC841

4C083AC842

4C083AD022

4C083AD572

4C083BB11

4C083CC13

4C083DD30

4C083EE01

(57)【要約】

【課題】二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する化粧料における有機顔料の退色を抑えて、すなわち、耐退色性に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】下記の成分を含有しており： （ａ）赤色１０４号（１）を含む有機顔料、
（ｂ）二酸化チタン粒子、及び（ｃ）油分、ここで、有機顔料において、赤色１０４号（１）が５０質量％超であり、かつ二酸化チタン粒子が、下記の（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質で表面被覆されている、化粧料：（ｉ）炭素原子数１２以下のカルボン酸でアミド化された塩基性アミノ酸、又はそれらの塩、（ｉｉ）炭素原子数１４以下のカルボン酸でアミド化された酸性アミノ酸、又はそれらの塩、（ｉｉｉ）不飽和油、（ｉｖ）シリカ、（ｖ）有機チタネート。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】

【請求項1】

下記の成分を含有しており：
（ａ）赤色１０４号（１）を含む有機顔料、
（ｂ）二酸化チタン粒子、及び
（ｃ）油分、
前記有機顔料において、前記赤色１０４号（１）が５０質量％超であり、かつ
前記二酸化チタン粒子が、下記の（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質で表面被覆されている、化粧料：
（ｉ）炭素原子数１２以下のカルボン酸でアミド化された塩基性アミノ酸、又はそれらの塩、
（ｉｉ）炭素原子数１４以下のカルボン酸でアミド化された酸性アミノ酸、又はそれらの塩、
（ｉｉｉ）不飽和油、
（ｉｖ）シリカ、
（ｖ）有機チタネート。

【請求項2】

前記有機顔料の含有量が、０．００１～２０質量％である、請求項１に記載の化粧料。

【請求項3】

前記二酸化チタン粒子の含有量が、０．１～２０質量％である、請求項１に記載の化粧料。

【請求項4】

前記油分の含有量が、５０質量％以上である、請求項１に記載の化粧料。

【請求項5】

油性化粧料である、請求項１～４のいずれか一項に記載の化粧料。

【請求項6】

口唇化粧料である、請求項１～４のいずれか一項に記載の化粧料。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、化粧料に関する。

【背景技術】

【0002】

化粧料、例えばメーキャップ化粧料には、その美的役割を果たす目的のために、通常、様々な顔料が配合されている。

【0003】

しかしながら、それら顔料は、紫外線や酸化に対して非常に不安定であり、化粧料の色調が変化し、また損なわれて、化粧料としての質が低下するという問題があった。特に、口紅やアイシャドウ等の化粧料でよく使われている赤色有機顔料はその褪色が著しく、かつその褪色が化粧料の色調に及ぼす影響が大きい。

【0004】

そこで、有機顔料を含む化粧料において、有機顔料、特に赤色有機顔料の耐光性、すなわち耐褪色性を向上させることが強く望まれていた。

【0005】

このような問題に対して、例えば特許文献１では、４－ｔｅｒｔ－ブチル－４’－メトキシベンゾイルメタンと、ステアリン酸カルシウムと、リン脂質及び／又はその水素添加物とが配合された、有機顔料を含むメーキャップ化粧料が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【特許文献1】特開２００５－２００３７８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

口紅やアイシャドウ等の化粧料には、白色顔料又は紫外線散乱剤として二酸化チタン粒子を配合することが多い。

【0008】

本発明者らは、二酸化チタン粒子と共に有機顔料を配合する化粧料において、有機顔料中に５０質量％超の赤色１０４号（１）が配合されている場合、有機顔料の退色が顕著であることを見出した。

【0009】

本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する化粧料における有機顔料の退色を抑えること、すなわち、耐退色性に優れた化粧料を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0010】

上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。

【0011】

〈態様１〉
下記の成分を含有しており：
（ａ）赤色１０４号（１）を含む有機顔料、
（ｂ）二酸化チタン粒子、及び
（ｃ）油分、
前記有機顔料において、前記赤色１０４号（１）が５０質量％超であり、かつ
前記二酸化チタン粒子が、下記の（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質で表面被覆されている、化粧料：
（ｉ）炭素原子数１２以下のカルボン酸でアミド化された塩基性アミノ酸、又はそれらの塩、
（ｉｉ）炭素原子数１４以下のカルボン酸でアミド化された酸性アミノ酸、又はそれらの塩、
（ｉｉｉ）不飽和油、
（ｉｖ）シリカ、
（ｖ）有機チタネート。
〈態様２〉
前記有機顔料の含有量が、０．００１～２０質量％である、態様１に記載の化粧料。
〈態様３〉
前記二酸化チタン粒子の含有量が、０．１～２０質量％である、態様１に記載の化粧料。
〈態様４〉
前記油分の含有量が、５０質量％以上である、態様１に記載の化粧料。
〈態様５〉
油性化粧料である、態様１～４のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様６〉
口唇化粧料である、態様１～４のいずれか一項に記載の化粧料。

【発明の効果】

【0012】

本発明によれば、二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する化粧料における有機顔料の退色を抑えることができる。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。

【0014】

《化粧料》
本発明の化粧料は、
下記の成分を含有しており：
（ａ）赤色１０４号（１）を含む有機顔料、
（ｂ）二酸化チタン粒子、及び
（ｃ）油分、
有機顔料において、赤色１０４号（１）が５０質量％超であり、かつ
二酸化チタン粒子が、下記の（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質で表面被覆されている、化粧料である：
（ｉ）炭素原子数１２以下のカルボン酸でアミド化された塩基性アミノ酸、又はそれらの塩、
（ｉｉ）炭素原子数１４以下のカルボン酸でアミド化された酸性アミノ酸、又はそれらの塩、
（ｉｉｉ）不飽和油、
（ｉｖ）シリカ、
（ｖ）有機チタネート。

【0015】

理論に限定されるものではないが、二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する場合の有機顔料の退色は、次のメカニズムによるものと推測される。すなわち、化粧料中の二酸化チタン粒子は、光照射を受けてラジカルを発生させ、そして、赤色１０４号（１）等の有機顔料は、このラジカルによる攻撃を受けて、退色してしまうと考えられる。

【0016】

更に驚くべきことに、本発明者らは、その鋭意研究によって、有機顔料において、赤色１０４号（１）が５０質量％以下である場合、有機顔料の退色の影響が比較的小さいことを見いだした（参考例９～１２を参照）。

【0017】

よって、本発明は、有機顔料において、赤色１０４号（１）が５０質量％超である場合を対象とし、有機顔料の退色問題を解決するものである。

【0018】

この退色問題に対して、本発明の化粧料によれば、酸化チタンが特定の物質（すなわち、上述した（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質）によって被覆されていることによって、酸化チタンによるラジカルの発生を抑制し、かつ／又は発生したラジカルを失活できると考えられる。

【0019】

以下では、本発明の化粧料に含有されうる各成分について詳細に説明する。

【0020】

〈成分（ａ） 赤色１０４号（１）を含む有機顔料〉
本発明の化粧料において、有機顔料は、赤色１０４号（１）を含む。ここで、赤色１０４号（１）（又は「赤色１０４号」と記す）は、桃色に着色することのできる着色料であり、「フロキシンＢ」とも称する。

【0021】

本発明の有機顔料において、赤色１０４号（１）の含有量は、有機顔料の全体に対して、５０質量％超である。より具体的には、赤色１０４号（１）の含有量は、有機顔料の全体に対して、５５質量％以上、６０質量％以上、６５質量％以上、７０質量％以上、７５質量％以上、８０質量％以上、８５質量％以上、９０質量％以上、９５質量％以上、９９質量％以上、又は１００質量％であってよい。

【0022】

本発明において、有機顔料は、赤色１０４号（１）以外の有機顔料を更に含んでよい。より具体的には、赤色１０４号（１）以外の有機顔料としては、例えば、赤色２０１号、赤色２０２号、赤色２０４号、赤色２０５号、赤色２２０号、赤色２２６号、赤色２２８号、赤色４０５号、橙色２０３号、橙色２０４号、黄色２０５号、黄色４０１号、青色４０４号、赤色３号、赤色１０６号、赤色２２７号、赤色２３０号、赤色４０１号、赤色５０５号、橙色２０５号、黄色４号、黄色５号、黄色２０２号、黄色２０３号、緑色３号及び青色１号等の通常化粧料に使用できるものが挙げられるが、これらに限定されない。

【0023】

本発明の化粧料において、有機顔料の含有量は、特に限定されず、例えば、化粧料全体に対して、０．００１質量％以上、０．００５質量％以上、０．０１質量％以上、０．０５質量％以上、０．１０質量％以上、０．５０質量％以上、１．０質量％以上、１．１質量％以上、１．２質量％以上、１．３質量％以上、１．４質量％以上、１．５質量％以上、１．６質量％以上、１．７質量％以上、１．８質量％以上、１．９質量％以上、２．０質量％以上、２．１質量％以上、２．２質量％以上、２．３質量％以上、２．４質量％以上、又は２．５質量％以上であってよく、また、２０質量％以下、１５質量％以下、１０質量％以下、又は５．０質量％以下であってよい。

【0024】

〈成分（ｂ） 二酸化チタン粒子〉
本発明の化粧料に含有されうる二酸化チタン粒子（被覆前の粒子）としては、特に限定されず、通常、化粧料に使用できるものであってよく、例えば、無機顔料（例えば、白色顔料）又は紫外線散乱剤として使用する二酸化チタン粒子であってよい。

【0025】

なお、本発明において、これらの二酸化チタン粒子は、下記の（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質で表面被覆されている：

【0026】

（物質（ｉ））
物質（ｉ）は、炭素原子数１２以下のカルボン酸でアミド化された塩基性アミノ酸、又はそれらの塩を含む。

【0027】

本発明において、塩基性アミノ酸とは、分子内に、カルボキシ基の数に比べてアミノ基の数が多く、塩基性領域にあるアミノ酸であり、主にジアミノモノカルボン酸型のアミノ酸である。塩基性アミノ酸の具体例としては、リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルチニン、又はカナバリン等が挙げられる。

【0028】

また、本発明において、塩基性アミノ酸とアミド化反応するためのカルボン酸の炭素原子数は、１２以下であってよく、より具体的には、１２以下、１１以下、又は１０以下であってよく、又は８以上、９以上、又は１０以上であってよい。

【0029】

すなわち、本発明に係る二酸化チタン粒子は、炭素原子数８～１２のカルボン酸でアミド化された塩基性アミノ酸、若しくは炭素原子数１０～１２のカルボン酸でアミド化された塩基性アミノ酸、又はそれらの塩で表面被覆されていてよい。なお、これらのカルボン酸でアミド化された塩基性アミノ酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0030】

更に具体的には、本発明に係る二酸化チタン粒子は、例えばラウロイルリジン又はそのナトリウム塩等で表面被覆されていてもよい。

【0031】

（物質（ｉｉ））
物質（ｉｉ）は、炭素原子数１４以下のカルボン酸でアミド化された酸性アミノ酸である、又はそれらの塩を含む。

【0032】

本発明において、酸性アミノ酸とは、分子内に、アミノ基の数に比べてカルボキシ基の数が多く、酸性性領域にあるアミノ酸であり、主にモノアミノジカルボン酸型のアミノ酸である。酸性アミノ酸の具体例としては、グルタミン酸、又はアスパラギン酸等が挙げられる。

【0033】

また、本発明において、酸性アミノ酸とアミド化反応するためのカルボン酸の炭素原子数は、１４以下であってよく、より具体的には、１４以下、１３以下、１２以下、１１以下、又は１０以下であってよく、又は８以上、９以上、又は１０以上であってよい。

【0034】

すなわち、本発明に係る二酸化チタン粒子は、炭素原子数８～１４のカルボン酸でアミド化された酸性アミノ酸、若しくは炭素原子数１０～１４のカルボン酸でアミド化された酸性アミノ酸、又はそれらの塩で表面被覆されていてよい。なお、これらのカルボン酸でアミド化された酸性アミノ酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0035】

更に具体的には、本発明に係る二酸化チタン粒子は、例えばミリストイルグルタミン酸又はそのナトリウム塩等で表面被覆されていてもよい。

【0036】

（物質（ｉｉｉ））
物質（ｉｉｉ）は、不飽和油を含む。

【0037】

不飽和油としては、例えば炭素原子数８～２０の不飽和脂肪酸、又はこれらの混合物であってよい。不飽和脂肪酸としては、より具体的には、例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエイコセン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0038】

なお、本発明において、不飽和油は、飽和脂肪酸と混合して用いることができる。したがって、例えば、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸との混合物であるアボカド油、植物油（例えば水添野菜油）等で、二酸化チタン粒子を表面処理することができる。

【0039】

更に具体的には、本発明に係る二酸化チタン粒子は、例えばアボカド油及び水添野菜油の混合物で表面被覆されていてもよい。

【0040】

（物質（ｉｖ））
物質（ｉｖ）は、シリカ（ＳｉＯ_２）を含む。

【0041】

すなわち、本発明に係る二酸化チタン粒子は、シリカで表面被覆されていてもよい。

【0042】

（物質（ｖ））
物質（ｖ）は、有機チタネートを含む。

【0043】

有機チタネートとしては、例えば、長鎖カルボン酸型、ピロリン酸型、亜リン酸型、アミノ酸型等のアルキルチタネート等が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、有機チタネートとしては、炭素数８～２４のアルキル基を有するアルキルチタネートであってよい。更に具体的には、有機チタネートとしては、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、又はジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0044】

本発明において、二酸化チタン粒子は、上記の（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質で表面被覆されることによって、その表面を疎水性又は親水性にすることができる。

【0045】

本発明において、二酸化チタン粒子が上記の（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質で表面被覆されている場合の被覆量は、特に限定されない。ここで、上記の（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質の被覆量は、例えば、被覆後の二酸化チタン粒子１００質量部に対して、０．０２質量部以上、０．０５質量部以上、０．１質量部以上、０．５質量部以上、１．０質量部以上、３．０質量部以上、又は５．０質量部以上であってよく、また２０質量部以下、１５質量部以下、１２質量部以下、又は１０質量部以下であってよい。

【0046】

また、二酸化チタン粒子を被覆する方法は、特に限定されず、例えば、上記の（ｉ）～（ｖ）のうちの少なくとも１つの物質を溶媒中に溶解又は分散させて、被覆前の二酸化チタン粒子を添加し混合させた後に、溶媒を除去することによって行ってよい。

【0047】

本発明の化粧料において、二酸化チタン粒子の含有量は、特に限定されず、例えば、化粧料に対して、０．０１質量％以上、０．０５質量％以上、０．１０質量％以上、０．５０質量％以上、１．０質量％以上、１．１質量％以上、１．２質量％以上、１．３質量％以上、１．４質量％以上、１．５質量％以上、１．６質量％以上、１．７質量％以上、１．８質量％以上、１．９質量％以上、２．０質量％以上、２．１質量％以上、２．２質量％以上、２．３質量％以上、２．４質量％以上、又は２．５質量％以上であってよく、また、２０質量％以下、１５質量％以下、１０質量％以下、又は５．０質量％以下であってよい。なお、ここでいう「二酸化チタン粒子の含有量」は、表面被覆された後の二酸化チタン粒子の化粧料中における含有量である。

【0048】

〈成分（ｃ） 油分〉
本発明の化粧料に含有されうる油分としては、特に限定されず、通常化粧料に使用できるものであってよく、例えば植物油、合成油であってよく、また、その性状としては、例えば、固形状、半固形状、液体状、揮発性であってよい。より具体的には、油分としては、例えば、炭化水素油、油脂類、ワックス・ロウ類、硬化油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、油性ゲル化剤類、極性油等が挙げられるが、これらに限定されない。油分は、単独で又は２種以上組み合わせて使用することができる。

【0049】

炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α－オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン、水添ポリブテン、ポリデセン、水添ポリデセンなどを挙げることができる。

【0050】

油脂類としては、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油などを挙げることができる。

【0051】

ワックス・ロウ類としては、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モクロウ、ミツロウなどを挙げることができる。

【0052】

脂肪酸類としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などを挙げることができる。

【0053】

高級アルコール類としては、例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノールなどを挙げることができる。

【0054】

シリコーン類としては、例えば、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサンなどを挙げることができる。

【0055】

フッ素系油剤類としては、例えば、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテルなどを挙げることができる。

【0056】

油性ゲル化剤類としては、例えば、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、１２－ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムなどを挙げることができる。

【0057】

極性油としては、例えば、ＩＯＢが、０．１０以上、０．１５以上、０．２０以上、０．２２以上、又は０．２４以上の極性油を挙げることができる。ＩＯＢの上限値としては特に制限はないが、例えば、０．５０以下、０．４５以下、又は０．４０以下とすることができる。ここで、ＩＯＢ値とは、Ｉｎｏｒｇａｎｉｃ／Ｏｒｇａｎｉｃ Ｂａｌａｎｃｅ（無機性／有機性比）の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。ＩＯＢ値は、具体的には、ＩＯＢ値＝無機性値／有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子１個について「有機性値」が２０、水酸基１個について「無機性値」が１００といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のＩＯＢ値を算出することができる（例えば、甲田善生著、「有機概念図－基礎と応用－」、ｐ．１１～１７、三共出版、１９８４年発行参照）。

【0058】

このような極性油としては、例えば、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ２－エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ２－エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ（カプリル／カプリン）酸グリセリル、セバシン酸ジエチルヘキシル、オクチルドデカノール、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ２－エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、オキシステアリン酸オキシステアリル、テトラ（エチルヘキサン酸／安息香酸）ペンタエリスリチル、トリオクタノイン、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヒマシ油、セバシン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンなどを挙げることができる。

【0059】

また、本発明において、油分の見かけヨウ素価は、６．０～３０．０であってよい。ここで、油分に含まれる不飽和部分の尺度として、「油分の見かけヨウ素価」を用いる。油分の見かけヨウ素価の値が大きければ多いほど、化粧料全体に対する不飽和部分の割合が多いことを示す。

【0060】

なお、化粧料が１種類のみの油分を含む場合には、「油分の見かけヨウ素価」は、その油分のヨウ素価と化粧料全体に対するその油分の重量割合との積である。すなわち例えば、化粧料中に油分として油分Ａのみが含まれる場合には、油分Ａのヨウ素価を「ａ」とし、化粧料全体に対する油分Ａの含有率を「ｘ質量％」とすると、この化粧料の「油分の見かけヨウ素価」は、以下の式（１）から求めることができる：
油分の見かけヨウ素価＝ａ×ｘ％ …（１）

【0061】

また、化粧料が２種類以上の油分を含む場合には、「油分の見かけヨウ素価」は、個々の油分のヨウ素価と化粧料全体に対するその油分の重量割合との積を、すべての油分について合計した値である。すなわち例えば、化粧料中に２種類の異なる油分ＡとＢが含まれる場合には、油分Ａのヨウ素価を「ａ」とし、化粧料全体に対する油分Ａの含有率を「ｘ質量％」とし、また、油分Ｂのヨウ素価を「ｂ」とし、化粧料全体に対する油分Ｂの含有率を「ｙ質量％」とすると、この化粧料の「油分の見かけヨウ素価」は、以下の式（２）から求めることができる：
油分の見かけヨウ素価＝ａ×ｘ％＋ｂ×ｙ％ …（２）

【0062】

なお、各油分のヨウ素価は、１００ｇの油分試料に付加することができるヨウ素（Ｉ_２）のグラム数であり、日本工業規格（ＪＩＳ） Ｋ００７０：１９９２に準じた試験によって測定することができる。

【0063】

また、本発明において、「飽和油」は、ヨウ素価が５．０以下の油分として定義することができ、また「不飽和油」は、ヨウ素価が５．０超の油分として定義することができる。

【0064】

本発明の化粧料において、油分の含有量は、特に限定されず、目的とする化粧料の剤型に合わせて適宜設定することができる。例えば、油分の含有量は、化粧料全体に対して、１．０質量％以上、５．０質量％以上、１０質量％以上、２０質量％以上、３０質量％以上、４０質量％以上、５０質量％以上、６０質量％以上、７０質量％以上、８０質量％以上、又は９０質量％以上であってよく、また９９質量％以下、９５質量％以下、又は９０質量％以下であってよい。

【0065】

〈その他の任意成分〉
本発明の化粧料は、上述した成分のほかに、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を１種類以上更に含んでよい。

【0066】

本発明において、その他の任意成分としては、例えば界面活性剤、水、保湿剤、高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、ｐＨ調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の効果を損なわない限りその他の任意成分を適宜配合し、目的とする化粧料の類型に応じて常法により製造することができる。また、上述した有機顔料の他、通常化粧料に用いられる他の任意の色材を本発明の効果を損なわない限り含んでいてよい。

【0067】

〈化粧料の剤型及び用途〉
本発明の化粧料は、その剤型には特に限定されず、例えば油性型、乳化型、又は粉末型等任意の剤型が挙げられる。これらの剤型のうち、油性型において、特に有機顔料の退色が問題となりやすいため、本発明の化粧料は、油性化粧料であることが好ましい。なお、油性化粧料とは、液状、半固形状、又は固形状の油剤や油溶性化合物である油分を連続相とする化粧料を指す。

【0068】

また、本発明の化粧料は、その用途には特に限定されず、例えば口唇化粧料として好ましく用いられる。

【0069】

口唇化粧料としては、例えば口紅、グロス、リップトリートメント、リップクリーム、リップ下地が挙げられる。

【0070】

また、そのほかに、本発明の化粧料は、例えばファンデーション、チーク、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロー、ネールエナメル、ネールトリートメント等としても使用することができる。

【実施例0071】

以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。

【0072】

《参考例１及び２》
以下の表１に示す構成成分及びそれぞれの配合量に基づいて、参考例１及び２の口紅試料を作製して、退色評価を行った。

【0073】

（退色の評価方法）
作製した各試料に対して、キセノンフェードメーター（スガ試験機（株）製）を用いて、２５℃にて、１２０ＭＪ／ｍ^２で３０時間照射して、照射前後の各試料の色差（ΔＥ）を計測した。各試料の有機顔料の退色を評価し、それぞれの評価結果を表１に示す。

【0074】

より具体的には、参考例１の色差（ΔＥ_１）を基準として、参考例２の色差を「ΔＥ_ｘ」とする場合に、以下の式によって、参考例２の試料の「退色抑制率」を求めた。なお、「退色抑制率」の値が大きいほど、試料の退色が少なく、つまり、耐退色性に優れていることを意味する。
試料の退色抑制率＝［（ΔＥ_１－ΔＥ_ｘ）／ΔＥ_１］×１００％

【0075】

【表1】

【0076】

表１からは、二酸化チタン粒子を含まない参考例２は、二酸化チタン粒子を含む参考例１に比べて、退色抑制率が大きかったこと、すなわち有機顔料の退色が少なかったことが分かった。

【0077】

この結果から、二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する場合の化粧料において、有機顔料の退色は、二酸化チタン粒子の存在によるものであると示唆された。

【0078】

《参考例３～１２》
参考例３～１２では、二酸化チタン粒子と有機顔料とを併用する場合の化粧料において、赤色１０４号（１）の有機顔料における含有量による退色の有無について調べた。なお、二酸化チタン粒子としては、シリコーンで表面処理した酸化チタンを用いた。

【0079】

より具体的には、以下の表２に示す構成成分及びそれぞれの配合量に基づいて、参考例３～１２の口紅試料を作製して、退色評価を行い、それぞれの結果を表２に示す。なお、各参考例に使用される顔料（有機顔料及び無機顔料）の詳細は、表３に示す。

【0080】

【表2】

【0081】

【表3】

【0082】

表２の結果から明らかなように、赤色１０４号（１）が５０質量％～０質量％である参考例９～１２の場合は、赤色１０４号（１）が６６．７質量％～１００質量％である参考例の場合に比べて、照射前後の各試料の色差（ΔＥ）が小さかったこと、すなわち有機顔料の退色が少なかったことが分かった。

【0083】

すなわち、この結果から、有機顔料において、赤色１０４号（１）が５０質量％以下である場合、有機顔料の退色が比較的小さいことが分かった。

【0084】

《実施例１～５及び比較例１～８》
実施例１～５及び比較例１～８では、二酸化チタン粒子が種々の物質で二酸化チタン粒子の表面を被覆されている場合の退色について調べた。

【0085】

より具体的には、上述した参考例１のシリコーンで表面処理した酸化チタンの代わりに、下記の表４に示す各物質で被覆された二酸化チタン粒子を用いたこと以外は、参考例１と同様にして、口紅試料を作成して、退色評価を行った。評価結果は、表４に示す。また、評価基準として参考例１を用いた。

【0086】

【表4】

【0087】

表４から明らかなように、実施例１～５の試料の退色抑制率はいずれも、比較例１～８の退色抑制率よりも高かった。これは、実施例１～５の試料が耐退色性に優れていることを意味している。

【0088】

《処方例》
以下に、本発明の化粧料の処方例を例示的に記載するが、本発明はこの例示に限定されるものではない。

【0089】

【表5】