(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026247
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】シリコーン(メタ)アクリレート、その製造方法および硬化性組成物におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 77/20 20060101AFI20240220BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08G77/20
C09K3/00 W
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203864
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2022519340の分割
【原出願日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】19200055.2
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フラウケ ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート クノット
(72)【発明者】
【氏名】サディック アマジャヘ
(72)【発明者】
【氏名】ハーディ デーラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ローゼ
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト ダジーク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善されたシリコーン(メタ)アクリレートの製造方法、相応して製造されたシリコーン(メタ)アクリレート、および硬化性組成物におけるその使用を提供する。
【解決手段】シリコーン(メタ)アクリレートの製造方法であって、少なくとも1つの最終平衡化アセトキシシリコーンを少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルと反応させる方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン(メタ)アクリレートの製造方法であって、少なくとも1つのアセトキシシリコーンを少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルと反応させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアセトキシシリコーンが、式(I)の化合物である、請求項1記載の方法。
Mm1MAcO
m2Dd1DAcO
d2TtQq 式(I)
[式中、
M=[R3SiO1/2]、
MAcO=[R2(AcO)SiO1/2]、
D=[R2SiO2/2]、
DAcO=[R(AcO)SiO2/2]、
T=[RSiO3/2]、
Q=[SiO4/2]、
m1=0~32、好ましくは0~22、特に0であり、
m2=0~32、好ましくは1~10、特に2であり、
d1=1~1000、好ましくは5~500、特に10~400であり、
d2=0~10、好ましくは0~5、特に0であり、
t=0~10、好ましくは0~5、特に1~5であり、
q=0~10、好ましくは0~5、特に1~5であり、
Rは、それぞれ互いに独立して、一価の有機基からなる群から選択され、好ましくは、それぞれ互いに独立して、1~30個の炭素原子を有する一価の炭化水素基からなる群から選択され、特にメチルであり、
AcOは、アセトキシ基であるが、ただし、
m1+m2=少なくとも2、好ましくは2~20、特に3~10であり、
m2+d2=少なくとも1、好ましくは2~10、特に2~6である]
【請求項3】
前記少なくとも1つのアセトキシシリコーンが、
a)アルコキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または
b)アセトキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または
c)ヒドロキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または
d)単純なシロキサン環および/もしくはDT環
と無水酢酸とを、好ましくは酢酸、およびpKaが-1.3以下である少なくとも1つのブレンステッド酸、好ましくはpKaが-3.0未満である超酸、より好ましくはパーフルオロアルカンスルホン酸、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸を触媒として用いて反応させることにより製造される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ブレンステッド酸酸性、好ましくは超酸酸性、より好ましくはパーフルオロアルカンスルホン酸酸性、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸酸性である前記少なくとも1つのアセトキシシリコーンを塩基で中和してから、前記少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとさらに反応させる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルが、式(II)の化合物である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【化1】
[式中、
x=少なくとも1、好ましくは1~3、特に1であり、
R
1は、それぞれ互いに独立して、(x+1)価の有機基からなる群から選択され、好ましくは、それぞれ互いに独立して、酸素原子および/または窒素原子および/またはNH基で中断されていてもよい、1~40個の炭素原子を有する炭化水素基からなる群から選択され、特に、それぞれ互いに独立して、二価のアルキレン基および二価のポリオキシアルキレン基からなる群から選択され、
R
2は、それぞれ互いに独立して、水素基またはメチル基である]
【請求項6】
前記少なくとも1つのアセトキシシリコーンのアセトキシ基に対する前記少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基のモル比が、少なくとも1.00、好ましくは1.03~1.15、特に1.05~1.10である、請求項1から5までのいずれか1項記載のシリコーン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアセトキシシリコーンと前記少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとを、
a)pKa値-3未満のブレンステッド酸、好ましくはスルホン酸またはハロカルボン酸、特にトリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびトリフルオロ酢酸からなる群から選択されるもの、
および/または
b)ルイス酸
および/または
c)金属触媒、好ましくは、アルキルチタネート、カルボン酸金属塩、およびアセチルアセトナト系金属錯体からなる群から選択されるもの、特にチタンテトラブタノラート、亜鉛アセチルアセトナート、およびカルボン酸亜鉛からなる群から選択されるもの
からなる群から選択される触媒の存在下で反応させる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアセトキシシリコーンと前記少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとの反応を、40℃~150℃、特に好ましくは70℃~120℃の温度で、1~8時間、好ましくは3~6時間にわたって行う、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
200mbar未満、好ましくは20mbar未満、特に4mbar未満の減圧の適用下で、80℃~140℃、好ましくは100℃~130℃の温度で、1~8時間、好ましくは1~4時間にわたって、反応生成物から揮発性成分を除去する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
反応生成物中に含まれ得る酸を、固体、液体または気体の塩基の添加により20℃~110℃、好ましくは40℃~80℃の温度で中和し、その際、特にアルカリ金属元素および/もしくはアルカリ土類金属元素および/もしくはアンモニウムの炭酸塩および/もしくは炭酸水素塩の形態の固体塩基の使用、または液体塩基の、ここでは好ましくは脂肪族および/もしくは芳香族および/もしくはアルキル芳香族アミンの液体塩基の使用、または気体塩基としてのアンモニアの使用が好ましい、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により製造可能な、生成物またはシリコーン(メタ)アクリレート。
【請求項12】
前記生成物またはシリコーン(メタ)アクリレートの全質量に対する、重金属、ホウ素および/または塩素の質量割合が、それぞれ0.5%以下、特に0.1%以下である、請求項11記載の生成物またはシリコーン(メタ)アクリレート。
【請求項13】
前記生成物またはシリコーン(メタ)アクリレートの質量に対するD4、D5およびD6の質量割合の合計が、0.1%以下、特に0.05%以下である、請求項11または12記載の生成物またはシリコーン(メタ)アクリレート。
【請求項14】
式(III)の、好ましくは請求項11記載の、シリコーン(メタ)アクリレート。
M
m1M
Acr
m2D
d1D
Acr
d2T
tQ
q 式(III)
[式中、
M=[R
3SiO
1/2]、
M
Acr=[RR
AcrSiO
1/2]、
D=[R
2SiO
2/2]、
D
Acr=[RR
AcrSiO
2/2]、
T=[RSiO
3/2]、
Q=[SiO
4/2]、
m1=0~32、好ましくは0~22、特に0であり、
m2=0~32、好ましくは1~10、特に2であり、
d1=1~1000、好ましくは5~500、特に10~400であり、
d2=0~10、好ましくは0~5、特に0であり、
t=0~10、好ましくは0~5、特に1~5であり、
q=0~10、好ましくは0~5、特に1~5であるが、ただし、
m1+m2=少なくとも2、好ましくは2~20、特に3~10であり、
m2+d2=少なくとも1、好ましくは2~10、特に2~6であり、
Rは、それぞれ互いに独立して、一価の有機基からなる群から選択され、好ましくは、それぞれ互いに独立して、1~30個の炭素原子を有する一価の炭化水素基からなる群から選択され、特にメチルであり、
R
Acrは、それぞれ互いに独立して、式(IV)の一価の基から選択され、
【化2】
ここで、
x=少なくとも1、好ましくは1~3、特に1であり、
R
1は、それぞれ互いに独立して、(x+1)価の有機基からなる群から選択され、好ましくは、それぞれ互いに独立して、酸素原子および/または窒素原子および/またはNH基で中断されていてもよい、1~40個の炭素原子を有する炭化水素基からなる群から選択され、特に、それぞれ互いに独立して、二価のアルキレン基および二価のポリオキシアルキレン基からなる群から選択され、
R
2は、それぞれ互いに独立して、水素基またはメチル基である]
【請求項15】
請求項14記載の少なくとも1つのシリコーン(メタ)アクリレートを含む、請求項11から13までのいずれか1項記載の生成物。
【請求項16】
請求項11から15までのいずれか1項記載の少なくとも1つの生成物または少なくとも1つのシリコーン(メタ)アクリレートを含む、組成物。
【請求項17】
前記組成物が、硬化可能であり、好ましくはラジカル反応によって硬化可能であり、前記ラジカル反応は、熱、紫外線または電子線により開始可能である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
請求項17記載の組成物の硬化により得られる、剥離コーティングまたは3D印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン(メタ)アクリレートの製造方法であって、少なくとも1つのアセトキシシリコーンを少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルと反応させる方法、該方法により製造されたシリコーン(メタ)アクリレート、および硬化性組成物におけるその使用に関する。
【0002】
本発明において、シリコーン(メタ)アクリレートとは、メタクリル酸エステル基および/またはアクリル酸エステル基(以下、(メタ)アクリル酸エステル基ともいう)を有するオルガノシロキサンを意味すると理解される。また、オルガノシロキサンは、以下、単にシロキサンともいう。
【0003】
オルガノシロキサンは、ケイ素原子に結合した有機基を有し、かつ式≡Si-O-Si≡[式中、「≡」は、当該ケイ素原子の残りの3つの原子価を表す]の構造単位を有する化合物を意味すると理解される。好ましくは、オルガノシロキサンは、M=[R3SiO1/2]、D=[R2SiO2/2]、T=[RSiO3/2]からなる群から選択される単位から構成され、かつ任意にさらに式Q=[SiO4/2]の単位を有する化合物であり、ここで、Rは、一価の有機基を表す。基Rは、ここではそれぞれ互いに独立して選択することができ、対で比較した場合、同一であるかまたは異なっている。また、基Rの一部は、例えばヒドロキシ基や塩素などの一価の非有機基で置換されていてもよい。本明細書でオルガノシロキサンの構造単位を説明するために使用されるM、D、T、Qという技術用語に関連して参考文献として引用されるのは、W. Noll, Chemie und Technologie der Silicone, Verlag Chemie GmbH, Weinheim (1960), page 2 ff.である。
【0004】
剥離コーティング(しばしば、非粘着コーティングまたはリリースコーティングとも呼ばれる)は、先行技術から知られている。それらは、ラベル、粘着テープまたは衛生用品の製造に多岐にわたって使用されている。剥離コーティングは、粘着剤と接触した際の低い粘着性を特徴とし、放射線硬化シリコーンからなる。官能性シリコーンの硬化には、通常は2つの機序が用いられる。カチオン硬化の場合、エポキシ官能性オルガノシロキサンは、照射時に酸を放出する光重合開始剤を用いて重合される。フリーラジカル硬化の場合、シリコーン(メタ)アクリレートは、照射時にラジカルを形成する光重合開始剤を用いて重合される。
【0005】
市販のシリコーン(メタ)アクリレートの大半は、(メタ)アクリレート基を有する基がケイ素-炭素結合で結合していることを特徴とするいわゆるSiC型から誘導されている。このシリコーン(メタ)アクリレートを製造するには、ハイドロジェンシロキサンから出発し、これを貴金属触媒、通常は白金触媒によるヒドロシリル化反応において反応相手であるヒドロキシ官能性オレフィンまたはエポキシ官能性オレフィンと結合させて、SiC結合を形成させる。その後、このようにして得られたヒドロキシ官能性シリコーンまたはエポキシ官能性シリコーンを(メタ)アクリル化する。このことは、例えば国際公開第2017/080747号に記載されている。たとえこれらの方法が良好な生成物品質を確実に保証したとしても、これらの方法は、その多段プロセス、高価なハイドロジェンシロキサンおよび貴金属触媒の使用による重大なコスト上の欠点を有する。さらに悪いことに、生成物マトリックスから触媒残分を完全に除去することは実際には不可能であるため、この方法では、純粋な(貴)金属不含のシリコーン(メタ)アクリレートを得ることはできない。さらに、この反応をうまく実施するためには、有機物、すなわちSiを含まない反応物を常に化学量論的に過剰に使用しなければならず、後に手間のかかる蒸留による除去が必要となる。シリコーン(メタ)アクリレートは重合し易いため、生産規模での蒸留はプロセス工学的に要求が多く、時間やコストがかかる。
【0006】
このようにSiC型のシリコーン(メタ)アクリレートの製造が困難であることから、よりコスト効率の良い代替案として、(メタ)アクリレート基、または(メタ)アクリレート基を有する有機基がケイ素-酸素-炭素結合を介して結合しているSiOC型としてシリコーン(メタ)アクリレートを提供しようとする尽力がすでに過去になされている。この目的のため、独国特許出願公開第2948708号明細書および独国特許出願公開第3426087号明細書は、クロロシロキサンの使用を教示している。当該クロロシロキサンは、例えばペンタエリスリトールトリアクリレートまたはヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシ官能性アクリル酸エステルとの反応によりSiOC型のシリコーンアクリレートとされ、続いてこれらが剥離コーティングに使用される。この方法の欠点はクロロシロキサンを使用することにあり、これがヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルと結合することにより、塩酸(HCl)の放出が避けられない。しかし、目的のSiOC結合型のシリコーン(メタ)アクリレートは加水分解し易いため、放出された塩酸を効率よく捕捉するためには大量のアミンを使用しなければならず、その結果、塩負荷が高くなる。したがって、実際の運転では、ろ過にかなりの手間がかかり、またそれに伴って生成物の損失が生じることが予想される。
【0007】
このようにして製造されたSiOC型のシリコーン(メタ)アクリレートのさらなる欠点は、その臭気の放出に起因し、これは特に衛生用品への使用において容認できないものである。近年、環状シロキサンがSVHC物質([S]ubstances of [V]ery [H]igh [C]oncern)として厳しく格付けされたことにより、これらの製造経路の魅力はさらに低下している。なぜならば、環状シロキサンは、使用されるクロロシロキサンから、再平衡化が生じることなく蒸留により除去することが不可能であり、その上、酸残留物あるいは塩残留物による触媒作用を受けて、転化生成物の貯蔵中にも再生し得るためである。
【0008】
これらの欠点を克服するために、独国特許出願公開第10359764号明細書では、ハイドロジェンシロキサンとヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとの脱水素型カップリングが利用されている。触媒の存在下で実施されるこの方法では水素ガスが放出され、このガスが離れると反応マトリックスが発泡する。(メタ)アクリレート基は酸素がないと重合し易いが、水素放出プロセスにおける酸素の存在は、爆発閾値を考慮すると常に大きな問題があると認められるため(酸水素ガスの発生)、この方法の実施はプロセス工学的に非常に要求が高い。さらに悪いことに、この反応には、有毒で高コストであり、また生成物から除去することができない系外の有機ホウ素触媒が比較的大量に必要とされる。
【0009】
これらの尽力が今日まで不満足な結果しかもたらしていないことを考慮すると、解決すべき技術的課題は、これまで知られている方法の欠点を克服するかまたはまったく有していない、SiOC型のシリコーン(メタ)アクリレートを製造するための、簡便で信頼性が高く、また費用効果の高い方法を見出すことである。特に、塩素で置換されたシロキサンの使用を避けたいという要求がある。直接的合成の事業主におけるいずれにせよ集中的な生産環境(ミュラー・ロショー合成法)以外では、強度に苛性で高腐食性のクロロシランおよび/またはクロロシロキサンの取扱いがますます問題となり、物流、取扱い、材料の選択、装置工学、安全工学および廃棄に関して高度の投資が必要となる。
【0010】
しかし、驚くべきことに、アセトキシシリコーンとヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとを反応させることにより、先に述べたいずれの障害もなくSiOC型のシリコーン(メタ)アクリレートが得られることが見出された。本発明において、アセトキシシリコーンとは、1つ以上のケイ素原子上に1つ以上のアセトキシ基を有するオルガノシロキサンを意味すると理解される。したがって、アセトキシシリコーンは、式≡Si-OAcの少なくとも1つの基を有し、ここで、「OAc」はアセトキシ基であり、「≡」は、ケイ素原子の残りの3つの原子価である。この場合、1つのケイ素原子は、1つ以上のアセトキシ基を有することができる。
【0011】
SiOC系シリコーン誘導体、特にSiOC系ポリエーテルシロキサンを製造するための反応性出発物質として、直鎖または分岐構造型のアセトキシシリコーンは重要な化合物クラスである。
【0012】
上記の実施形態と関連して、本発明において、結果的にはアセトキシシリコーンの製造においても、アセトキシシリコーンの技術史においてしばしば使用されてきた出発物質である、強度に苛性で高腐食性のクロロシランおよび/またはクロロシロキサンを使用しないことが好ましい。
【0013】
例えば分岐SiOC結合型シリコーンポリエーテルを製造する旧来の経路では、特に、シロキサン環の存在下でクロロシランと酢酸とを酸触媒で反応させる方法も用いられている(米国特許第4380451号明細書)。冒頭に述べたクロロ化学の基本的な欠点に加えて、この方法の特徴は、(同上、第4欄第1行に)提案されているシロキサン中間式から明らかなように、ケイ素に結合した塩素のアセトキシ官能基による置換が不完全であることである。同様に問題となるのが、クロロシランまたはその部分加水分解物を酸性平衡化触媒の存在下でオルガノシロキサンおよび一塩基性カルボン酸と反応させることにより直鎖および分岐の平衡化オルガノシロキサンを製造する方法を記載した、欧州特許第0003285号明細書の教示である。該文献に開示されたα,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサンのGC分析(GC:ガスクロマトグラフィー)に関しては、少量存在するクロロシロキサンがGC測定の評価に考慮されていないと記載されている(同上、第6頁第30行)。他方で、該文献(同上)第4頁第44行~第46行に記載されているように、その中の残留塩素含有量は約0.2%~3.0%で変動する。
【0014】
米国特許第3595885号明細書には、カルボン酸および/またはカルボン酸塩および/またはカルボン酸無水物との反応による平衡化クロロシロキサニル硫酸塩から出発する平衡化アシルオキシ官能化シロキサンの製造方法が記載されている。米国特許第3595885号明細書(第5欄、第72行~第74行)は、純粋なカルボン酸および/またはカルボン酸無水物を使用した場合には、硫酸基を含む生成物を考慮しておかなければならない(Siに結合した-SO4-および/または-OSO3H)と教示している。しかし、残りのカルボン酸塩経路を支持する実施例も、得られるアシルオキシシロキサンが硫酸不含であることを実証しておらず、このことは、そこに記載されている物質を低温硬化性シリコーンゴムの成分として使用するという目的の追求にとって無意味である。なぜならば、これらはスズ触媒の存在下でヒドロキシ官能性シリコーンと反応してシロキサニル硫酸塩官能基を加水分解するためである。したがって、問題のある生成物品質を特徴とするこの塩素経路は、要求の厳しい用途には適していない(この点については、例IV、塩素含有量0.5%未満も参照)。さらに、当該明細書における平衡化アシルオキシ官能化シロキサンとの記載は適切でない。例えば、シリコーン骨格に組み込まれた架橋性のスルファト基がカルボン酸塩での処理によって溶出される場合、常にアシルオキシ基末端の短い開裂生成物が生じるため、得られる混合物は、特に出発物質と比較して決して真の平衡物ではない。
【0015】
国際公開第2019/105608号および欧州特許出願公開第3492513号明細書、ならびに未公開の特許出願PCT/EP2019/061655は、SiOC結合型ポリエーテルシロキサンの製造に関するものであり、トリフルオロメタンスルホン酸酸性の直鎖または分岐構造型の平衡化アセトキシシロキサンが反応中間体として使用されている。さらに、未公開の欧州特許出願EP18210035.4およびEP19176876.1は、特に平衡化アセトキシシロキサンの製造に関するものである。
【0016】
例えば、国際公開第2019/105608号および欧州特許出願公開第3492513号明細書では、アセトキシ基を有するトリフルオロメタンスルホン酸酸性の最終平衡化シロキサンの製造方法が提供されており、その際、トリフルオロメタンスルホン酸が触媒として用いられ、酢酸の添加下にD4および/またはD5などの環状シロキサンおよび/またはD/T型の環状分岐シロキサンの混合物が無水酢酸と反応させられる。ここで使用されるD/T型の環状分岐シロキサンは、いずれも欧州特許出願公開第3321304号明細書および未公開の特許出願EP17169876.4に詳細に記載されている。
【0017】
欧州特許出願公開第3321304号明細書には、水の添加下に、少なくとも1つの酸性触媒の存在下で、溶媒中でトリアルコキシシランをシロキサン環および/またはα,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサンと反応させることにより、D単位およびT単位を有するシロキサンのみからなり、かつシロキサンマトリックス中に存在するSi-アルコキシ基および/またはSiOH基を有するD単位およびT単位の29Si-NMR分光法により決定可能な累積割合が2モル%以下、好ましくは1モル%未満であるD/T型の環状分岐シロキサンの混合物が得られ、そしてこれらの混合物が好ましくはさらに少なくとも5質量%のシロキサン環、例えば好ましくはオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)および/またはそれらの混合物を含むことが開示されている。
【0018】
これに加えて、EP17169876.4には、少なくとも1つの酸性触媒の存在下で、トリアルコキシシランとシロキサン環および/またはα,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサンとの酸性触媒による平衡化を行い、その後、水の添加により誘発される加水分解および縮合反応ならびにケイ素含有溶媒の添加を行い、その後、放出されたアルコール、系内に存在する水およびケイ素含有溶媒を蒸留により分離し、酸性触媒の中和または分離、および必要に応じて形成される場合がある塩の分離を行うことにより、D単位およびT単位のみを有する環状分岐シロキサンの混合物であって、シロキサンマトリックス中に存在するSi-アルコキシ基および/またはSiOH基を有するD単位およびT単位の29Si-NMR分光法により決定可能な累積割合が2モル%超でかつ10モル%未満である混合物が得られることが記載されている。この場合、ケイ素含有溶媒は、好ましくは、異性体シロキサン環であるオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)および/またはそれらの混合物を含み、好ましくは、ケイ素含有溶媒とD単位およびT単位を有するシロキサンとの質量比=1:1~5:1で使用される。
【0019】
未公開の特許出願PCT/EP2019/061655には、触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸を用いて、環状シロキサン、特にD4および/またはD5と無水酢酸とを、好ましくは酢酸を添加しながら反応させることにより得られる、トリフルオロメタンスルホン酸酸性の平衡化α,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサンが記載されている。
【0020】
未公開の特許出願EP18210035.4には、アルコキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/またはアセトキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/またはヒドロキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、また任意に単純なシロキサン環および/またはDT環と無水酢酸、パーフルオロアルカンスルホン酸(特にトリフルオロメタンスルホン酸)および好ましくは酢酸とを反応させることによる、アセトキシ官能基を有する直鎖または分岐シロキサンの製造方法が記載されている。
【0021】
未公開の特許出願EP19176876.1には、3個を上回るケイ素原子の鎖長を有するアセトキシ官能基を有するシロキサンを製造するための反応系であって、アルコキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/またはアセトキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/またはヒドロキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または単純なシロキサン環および/またはDT環、ならびに無水酢酸、ブレンステッド酸および酢酸からなる反応媒体を含むものが開示されている。この場合、pKa値が-1.30以下、好ましくはpKa値が-2.90以下、特に好ましくはpKa値が-4.90以下であるブレンステッド酸が用いられ、反応系中の酢酸は、反応系に対して0.4~15.0質量%、好ましくは0.5~10.0質量%、好ましくは0.8~6.5質量%、特に好ましくは1.0~6.0質量%の量で含まれている。
【0022】
さらに未公開の特許出願EP19176876.1では、酢酸に対して使用されるブレンステッド酸のモル量比として、pKa値が-4.90以下であるカテゴリー(A)のブレンステッド酸の場合には1/30以上でかつ1/3以下の範囲にあり、pKa値が-1.30~-4.80であるカテゴリー(B)のブレンステッド酸の場合には1/10以上でかつ1以下の範囲にあり、カテゴリー(A)およびカテゴリー(B)のブレンステッド酸の混合物の場合には1/30以上でかつ1以下の範囲にあるものである。ここで、トリフルオロメタンスルホン酸の単独使用、ならびにトリフルオロメタンスルホン酸および酢酸の単独使用は除外され、かつ/または使用されるブレンステッド酸は、少なくとも部分的に-1.3以下かつ-13.5超のpKa値を有する。
【0023】
未公開の特許出願EP19176874.6は、第1のステップで、D/T型の環状分岐シロキサンを、任意に単純なシロキサン環ならびに/またはヒドロキシ基を有するシロキサンならびに/またはアセトキシ基および/もしくはアルコキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサンとの混合物で無水酢酸と酸触媒反応させて、アセトキシ基を有する分岐シロキサンを生成し、第2のステップで、アセトキシ変性シロキサンを、特に酢酸の添加下で酸、好ましくは超酸と平衡化させることによる、アセトキシ変性シロキサンの製造が記載されており、その際、D/T型の環状分岐シロキサンは、D単位およびT単位を有するシロキサンに加えて任意にQ単位を有するシロキサンをも含むD/T型の環状分岐シロキサンの混合物であるが、ただし、これらの混合物においてQ単位に由来するSi原子の割合は、すべてのSi原子の合計に対して10質量%以下かつ0質量%以上、好ましくは5質量%以下かつ0質量%以上を占める。
【0024】
未公開の特許出願EP19176871.2は、酸、好ましくは超酸、特にトリフルオロメタンスルホン酸を触媒として用いて、酢酸の添加下に、特にD4および/もしくはD5を含む環状シロキサンならびに/またはD/T型の環状分岐シロキサンの混合物を、任意に、ヒドロキシ基を有するシロキサンならびに/またはアセトキシ基および/もしくはアルコキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサンとの混合物で無水酢酸と反応させることによる、アセトキシ基を有する、酸性の、好ましくは超酸性の、特にトリフルオロメタンスルホン酸酸性の最終平衡化シロキサンの製造が開示されており、その際、D/T型の環状分岐シロキサンは、D単位およびT単位を有するシロキサンに加えて任意にQ単位を有するシロキサンをも含むD/T型の環状分岐シロキサンの混合物であるが、ただし、これらの混合物においてQ単位に由来するSi原子の割合は、すべてのSi原子の合計に対して10質量%以下かつ0質量%以上、好ましくは5質量%以下かつ0質量%以上を占める。
【0025】
ここに挙げられた文献の教示によれば、特に好ましいのは、アセトキシ基を有する最終平衡化ブレンステッド酸酸性シロキサンの製造およびさらなる処理であり、非常に特に好ましいのは、アセトキシ基を有する最終平衡化トリフルオロメタンスルホン酸酸性シロキサンの製造およびさらなる処理である。このことは、本発明にも同様に該当する。
【0026】
「最終平衡化」という用語が意味するのは、温度23℃、圧力1013.25hPaで確立された平衡が達成されていることである。平衡の達成の指標として、ガスクロマトグラフィーによって決定される全環含有量を考慮することができ、これは、シロキサンマトリックスに対するD4、D5およびD6の含有量の合計として定義され、α,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサンを誘導体化して対応するα,ω-ジイソプロポキシポリジメチルシロキサンを得た後、または分岐アセトキシシロキサンを誘導体化して対応する分岐イソプロポキシシロキサンを得た後に確認されたものである。酢酸の本発明による使用によって、直鎖α,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサンについての全環含有量約13質量%および分岐アセトキシシロキサンについての全環含有量約8質量%の通常の平衡割合を問題なく下回ることが可能となる。したがって、直鎖α,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサンについて13質量%未満、好ましくは12質量%未満の全環含有量の平衡割合、および分岐アセトキシシロキサンについて8質量%未満、好ましくは7質量%未満の全環含有量の平衡割合を下回ると、非常に特に好ましい実施形態に相当する。ここで、α,ω-ジイソプロポキシポリジメチルシロキサンを得るため、または分岐イソプロポキシシロキサンを得るための誘導体化は、ガスクロマトグラフィーによる分析の条件下で起こり得るα,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサンまたは分岐アセトキシシロキサンの熱による逆開裂反応を回避するために意図的に選択される(逆開裂反応に関しては、特にJ. Pola et al., Collect. Czech. Chem. Commun. 1974, 39(5), 1169-1176およびW. Simmler, Houben-Weyl, Methods of Organic Chemistry, Vol.VI/2, 4th Edition, O-Metal Derivates of Organic Hydroxy Compounds p.162 ffも参照のこと)。
【0027】
アセトキシ基を有する、ブレンステッド酸酸性、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸酸性の直鎖または分岐構造型シロキサンを製造するための、クロロシランおよび/またはクロロシロキサンおよび/またはクロロシロキサニル硫酸塩を使用しないここに引用した技術教示はいずれも、完全に本発明の開示内容に含まれる。
【0028】
したがって、本発明の課題は、冒頭に記載したように、シリコーン(メタ)アクリレートを製造するために今日まで使用されてきた方法の少なくとも1つの欠点を克服することにあった。
【0029】
ここで、驚くべきことに、シリコーン(メタ)アクリレートの製造方法であって、アセトキシシリコーンとヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとを反応させる方法によって前記課題が解決されることが見出された。
【0030】
したがって、本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項、実施例および発明の詳細な説明に示されている。
【0031】
以下に、本発明による主題を例示的に説明するが、本発明はこれらの例示的な実施形態に限定されるものではない。以下に、範囲、一般式、または化合物クラスを示す場合、これらは、明示されている対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を選び出して得ることができるすべての下位範囲および下位化合物群をも包含するものとする。本明細書において文献を引用する場合、その内容は完全に本発明の開示内容の一部を構成するものとする。
【0032】
以下に平均値を示す場合、特に断りのない限り、これは数平均である。以下に、測定により求められる測定値、パラメータまたは物質特性を示す場合、特に断りのない限り、これらは25℃、好ましくは101325Pa(常圧)の圧力で測定された測定値、パラメータまたは物質特性である。
【0033】
以下に数値範囲を「X~Y」の形式で示す場合、XおよびYは、数値範囲の限界を表し、これは特に断りのない限り、「少なくともXからYまで」と記載することと同義である。したがって、範囲の表示には、特に断りのない限り、範囲の限界XおよびYが包含される。
【0034】
「(メタ)アクリル」という表記は、「メタクリル」および/または「アクリル」を表す。
【0035】
分子または分子断片が1つ以上の立体中心を有する場合、または対称性に基づいて異性体に区別できる場合、または例えば回転性の制限などの他の効果に基づいて異性体に区別できる場合、可能なすべての異性体が本発明に包含される。
【0036】
以下の式(I)および(III)は、例えば、繰返し断片、ブロック、またはモノマー単位などの繰返し単位から構成されており、かつ分子量分布を有し得る化合物を表す。繰返し単位の頻度は、添え字で表される。式で用いられている添え字は、統計的平均値(数平均)とみなされる。したがって、使用される添え字の数字および示された添え字の数値範囲は、実際に存在する構造および/またはそれらの混合物の可能な統計的分布の平均値であると理解される。以下の式(I)および(III)における様々な断片あるいは繰返し単位は、統計的に分布していてよい。統計的分布は、任意の数のブロックおよび任意の順序でブロック状に構成されているか、またはランダムな分布に従っており、また交互に構成されていてもよく、鎖が存在する場合には鎖全体にわたって勾配を形成してもよく、特に、任意に異なる分布の群が続き得るすべての混合形態を形成することもできる。よって、本発明において、異なる単位を複数有することができる例えばアセトキシシリコーンまたはシリコーン(メタ)アクリレートなどの化合物が記載されている場合、これらの単位は、これらの化合物において、例えば統計的に分布して不規則的に、または規則的に存在することができる。このような化合物中の単位の数に関するデータは、対応するすべての化合物について平均をとった平均値(数平均)と理解される。特定の実施形態によって、統計的分布が実施形態により制約を受ける場合がある。制約を受けないすべての範囲では、統計的分布は変化しない。
【0037】
本発明の第1の主題は、シリコーン(メタ)アクリレートの製造方法であって、少なくとも1つのアセトキシシリコーンを少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルと反応させることを特徴とする方法である。
【0038】
アセトキシシリコーンが、式(I)
Mm1MAcO
m2Dd1DAcO
d2TtQq 式(I)
[式中、
M=[R3SiO1/2]、
MAcO=[R2(AcO)SiO1/2]、
D=[R2SiO2/2]、
DAcO=[R(AcO)SiO2/2]、
T=[RSiO3/2]、
Q=[SiO4/2]、
m1=0~32、好ましくは0~22、特に0であり、
m2=0~32、好ましくは1~10、特に2であり、
d1=1~1000、好ましくは5~500、特に10~400であり、
d2=0~10、好ましくは0~5、特に0であり、
t=0~10、好ましくは0~5、特に1~5であり、
q=0~10、好ましくは0~5、特に1~5であり、
Rは、それぞれ互いに独立して、一価の有機基からなる群から選択され、好ましくは、それぞれ互いに独立して、1~30個の炭素原子を有する一価の炭化水素基からなる群から選択され、特にメチルであり、
AcOは、アセトキシ基であるが、ただし、
m1+m2=少なくとも2、好ましくは2~20、特に3~10であり、
m2+d2=少なくとも1、好ましくは2~10、特に2~6である]の化合物であることが好ましい。
【0039】
また、アセトキシシリコーンが環状でないことがさらに好ましい。したがって、式(I)のアセトキシシリコーンについて、m1+m2=2+t+2×qが成り立つことが好ましい。
【0040】
ここで、式(I)のアセトキシシリコーンの一価の有機基Rは、AcOと異なる。さらに、式(I)のアセトキシシリコーンの一価の有機基Rが、それぞれ互いに独立して、直鎖または分岐、飽和または不飽和、芳香族または脂肪族、置換または非置換炭化水素基からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、式(I)のアセトキシシリコーンの一価の有機基Rは、それぞれ独立して、1~30個の炭素原子を有する飽和炭化水素基または6~30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、より好ましくは1~14個の炭素原子を有する飽和炭化水素基または単環芳香族炭化水素基から選択される。より好ましくは、式(I)のアセトキシシリコーンの一価の有機基Rは、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピルおよびフェニルからなる群から選択される。特に、R=メチルである。
【0041】
この場合、アセトキシシリコーンは、様々な合成経路によって製造することができる。
【0042】
アセトキシシリコーンは、
a)アルコキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または
b)アセトキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または
c)ヒドロキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または
d)単純なシロキサン環および/もしくはDT環
と無水酢酸と、好ましくは酢酸とを、pKaが≦-1.3である少なくとも1つのブレンステッド酸、好ましくは超酸、より好ましくはパーフルオロアルカンスルホン酸、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸を触媒として用いて反応させることにより製造されることが好ましい。
【0043】
シランとして、好ましくはジアルコキシジアルキルシランおよび/またはトリアルコキシアルキルシラン、より好ましくはジアルコキシジメチルシランおよび/またはトリアルコキシメチルシラン、特にジエトキシジメチルシランおよび/またはトリエトキシメチルシランが使用される。
【0044】
シロキサンとして、好ましくはテトラメチルジシロキサン、α,ω-ジハイドロジェンポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルハイドロジェン)シロキサン、α,ω-ジアルコキシポリジメチルシロキサンおよび/またはα,ω-ジビニルポリジメチルシロキサンが使用される。
【0045】
本発明の趣意での単純なシロキサン環とは、D単位のみから構成される。好ましい単純なシロキサン環は、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)および/またはこれらの混合物である。
【0046】
本発明の趣意でのDT環とは、実質的に、好ましくはD単位およびT単位のみからなり、かつこれらの単位を必須に含むD/T型の環状分岐シロキサンである。シロキサンマトリックス中に存在するSi-アルコキシ基および/またはSiOH基を有するD単位およびT単位の29Si-NMR分光法により決定可能な累積割合が2モル%以下、好ましくは1モル%未満、または2モル%超でかつ10モル%未満であることが好ましい。
【0047】
D/T型の環状分岐シロキサンは、D単位およびT単位を有するシロキサンに加えて任意にQ単位を有するシロキサンをも含むD/T型の環状分岐シロキサンの混合物であってもよいが、ただし、これらの混合物においてQ単位に由来するSi原子の割合は、すべてのSi原子の合計に対して10質量%以下かつ0質量%以上、好ましくは5質量%以下かつ0質量%以上を占める。
【0048】
酸性触媒として、シロキサンに対して先行技術から知られている強酸(平衡酸)、すなわち、硫酸などの鉱酸のみならず、スルホン酸;フルオロアルキルスルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸;酸性アルミナ;または酸性イオン交換樹脂、例えばAmberlite(登録商標)、Amberlyst(登録商標)またはDowex(登録商標)およびLewatit(登録商標)の商標名で知られている製品が適している。この場合、超酸が好ましい。超酸とは、濃(100%)硫酸(H2SO4:pKa値=-3.0)よりも強い酸のことである。好ましくはパーフルオロアルカンスルホン酸が使用され、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸が使用される。
【0049】
ブレンステッド酸のpKa値の詳細な一覧は文献に記載されており、例えばCRC Handbook of Chemistry and Physics 99th editionから得ることができるが、例えばEvans pKa Table(evans.rc.fas.harvard.edu/pdf/evans_pKa_table.pdf)や“Das Periodensystem der Elemente online, pKs-Werte absteigend nach Wert sortiert”, 2010-2019, (C)Rene Rauschなどの電子ソースにも記載されている。また、pKaを決定するために、当業者に知られている方法を利用することができる。場合によっては異なって参照されることがあるpKa値とは別に、電位差滴定は、本発明の趣意においてpKa値を正確に決定するのに特に適した方法であることが実証されている。この方法は長期にわたって確立されており、例えば、Benet L.Z., Goyan J.E.: Potentiometric determination of dissociation constants; J. Pharm. Sci. 56, 665-680 (1967)を参照されたい。
【0050】
また、特にD4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)および/もしくはD5(デカメチルシクロペンタシロキサン)を含む環状シロキサン、ならびに/またはD/T型の環状分岐シロキサン、好ましくはD/T型の環状分岐シロキサン(=DT環)と無水酢酸とを、トリフルオロメタンスルホン酸を触媒として使用して、好ましくは酢酸の添加下に反応させることにより製造されるアセトキシシリコーンを使用することが好ましく、特に好ましくは
a)D単位およびT単位を有するシロキサンのみからなるD/T型の環状分岐シロキサンの混合物であって、シロキサンマトリックス中に存在するSi-アルコキシ基および/またはSiOH基を有するD単位およびT単位の29Si-NMR分光法により決定可能な累積割合が2モル%以下、好ましくは1モル%未満であり、好ましくは少なくとも5質量%のシロキサン環、例えば好ましくはオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)および/またはそれらの混合物を含む、混合物;
または
b)D単位およびT単位のみを有する環状分岐シロキサンの混合物であって、シロキサンマトリックス中に存在するSi-アルコキシ基および/またはSiOH基を有するD単位およびT単位の29Si-NMR分光法により決定可能な累積割合が2モル%超でかつ10モル%未満である、混合物;
と無水酢酸とを、トリフルオロメタンスルホン酸を触媒として使用して、好ましくは酢酸の添加下に反応させることにより製造されるアセトキシシリコーンを使用することが好ましい。
【0051】
さらに、特にD4および/またはD5を含む環状シロキサンと無水酢酸とを、トリフルオロメタンスルホン酸を触媒として使用して、好ましくは酢酸の添加下に反応させることにより製造されたアセトキシシリコーンを使用することが好ましい。
【0052】
さらに、3個を上回るケイ素原子を有し、かつ
a)アルコキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または
b)アセトキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または
c)ヒドロキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサン、ならびに/または
d)単純なシロキサン環、特にD4および/もしくはD5を含むシロキサン環、ならびに/またはDT環
と、無水酢酸、ブレンステッド酸および酢酸とを反応させることにより製造されたアセトキシシリコーンを使用することが好ましく、
その際、pKa値が-1.30以下、好ましくはpKa値が-2.90以下、特に好ましくはpKa値が-4.90以下であるブレンステッド酸を使用し、
酢酸は、反応マトリックスに対して0.4~15.0質量%、好ましくは0.5~10.0質量%、好ましくは0.8~6.5質量%、特に好ましくは1.0~6.0質量%の量で含まれており、
酢酸に対して使用されるブレンステッド酸のモル量比は、pKa値が-4.90以下であるカテゴリー(A)のブレンステッド酸の場合には1/30以上でかつ1/3以下の範囲にあり、
pKa値が-1.30以下かつ-4.80以上であるカテゴリー(B)のブレンステッド酸の場合には1/10以上でかつ1以下の範囲にあり、
カテゴリー(A)およびカテゴリー(B)のブレンステッド酸の混合物の場合には1/30以上でかつ1以下の範囲にあるが、ただし、
(i)トリフルオロメタンスルホン酸の単独使用、ならびにトリフルオロメタンスルホン酸および酢酸の単独使用は除外され、かつ/または(ii)使用されるブレンステッド酸は、少なくとも部分的に-1.3以下かつ-13.5超のpKa値を有し、
ブレンステッド酸は、好ましくはブレンステッド酸塩-ブレンステッド酸の組み合わせ、例えば好ましくはアルミニウムトリフラート/メタンスルホン酸、ビスマストリフラート/メタンスルホン酸および/またはナトリウムトリフラート/メタンスルホン酸、および/またはナトリウムトリフラート/硫酸の使用によって、任意に少なくとも部分的にその場で提供される。
【0053】
さらに、第1のステップで、D/T型の環状分岐シロキサンを、任意に単純なシロキサン環ならびに/またはヒドロキシ基を有するシロキサンならびに/またはアセトキシ基および/もしくはアルコキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサンとの混合物として無水酢酸と酸触媒反応させて、アセトキシ基を有する分岐シロキサンを生成し、第2のステップで、アセトキシ基を有する分岐シロキサンを、特に酢酸の添加下で、酸、好ましくは超酸と平衡化させることにより製造されたアセトキシシリコーンを使用することが好ましく、その際、D/T型の環状分岐シロキサンは、D単位およびT単位を有するシロキサンに加えて任意にQ単位を有するシロキサンをも含んでいてもよいD/T型の環状分岐シロキサンの混合物であるが、ただし、これらの混合物においてQ単位に由来するSi原子の割合は、すべてのSi原子の合計に対して10質量%以下かつ0質量%以上、好ましくは5質量%以下かつ0質量%以上を占める。
【0054】
酸、好ましくは超酸、特にトリフルオロメタンスルホン酸を触媒として用いて、酢酸の添加下に、特にD4および/もしくはD5を含む環状シロキサンならびに/またはD/T型の環状分岐シロキサンの混合物を、任意に、ヒドロキシ基を有するシロキサンならびに/またはアセトキシ基および/もしくはアルコキシ基を有するシランおよび/もしくはシロキサンとの混合物で無水酢酸と反応させることにより製造された、アセトキシ基を有する、酸性の、好ましくは超酸性の、特にトリフルオロメタンスルホン酸酸性の最終平衡化シロキサンをアセトキシシリコーンとして使用することも同様に好ましく、その際、D/T型の環状分岐シロキサンは、D単位およびT単位を有するシロキサンに加えて任意にQ単位を有するシロキサンをも含むD/T型の環状分岐シロキサンの混合物であるが、ただし、これらの混合物においてQ単位に由来するSi原子の割合は、すべてのSi原子の合計に対して10質量%以下かつ0質量%以上、好ましくは5質量%以下かつ0質量%以上を占める。
【0055】
さらに、本発明によるシリコーン(メタ)アクリレートの製造方法において、アセトキシシリコーンとして、3個を上回るケイ素原子を有するブレンステッド酸酸性の平衡化直鎖α,ω-アセトキシシリコーンであって、シロキサンマトリックスに対するD4、D5およびD6を含む環状シロキサンの含有量の合計として定義され、その誘導体化により対応する直鎖α,ω-イソプロポキシシロキサンを得た後にガスクロマトグラフィーにより確認された全環含有量が20質量%未満、好ましくは13質量%未満、特に好ましくは12質量%未満であるものを使用することが好ましい。
【0056】
さらに、本発明によるシリコーン(メタ)アクリレートの製造方法において、アセトキシシリコーンとして、アセトキシ基を有する、ブレンステッド酸酸性の平衡化分岐シロキサンであって、シロキサンマトリックスに対するD4、D5およびD6を含む環状シロキサンの含有量の合計として定義され、その誘導体化により対応する分岐イソプロポキシシロキサンを得た後にガスクロマトグラフィーにより確認された全環含有量が20質量%未満、好ましくは8質量%未満、特に好ましくは7質量%未満であるものを使用することが好ましい。
【0057】
すでに上述したように、好ましい方法によって製造されるアセトキシシリコーンは、通常、触媒として使用されるブレンステッド酸または超酸またはパーフルオロアルカンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸を含む。したがって好ましくは、アセトキシシリコーンは、ブレンステッド酸酸性、好ましくは超酸酸性、より好ましくはパーフルオロアルカンスルホン酸酸性、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸酸性アセトキシシリコーンである。
【0058】
これらのブレンステッド酸酸性、好ましくは超酸酸性、より好ましくはパーフルオロアルカンスルホン酸酸性、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸酸性アセトキシシリコーンを、好ましくはヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸と直接反応させてシリコーン(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0059】
それに対して、本発明による方法の代替的な、同様に好ましい実施形態は、これらのブレンステッド酸酸性、好ましくは超酸酸性、より好ましくはパーフルオロアルカンスルホン酸酸性、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸酸性アセトキシシリコーンを、塩基で中和してからヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸とさらに反応させてシリコーン(メタ)アクリレートを得ることを特徴とする。
【0060】
この場合、アセトキシシリコーンは、固体、液体または気体塩基によって中和することができ、特にアルカリ金属元素および/もしくはアルカリ土類金属元素および/もしくはアンモニウムの炭酸塩および/もしくは炭酸水素塩の形態の固体塩基の使用、またはここでは好ましくは脂肪族および/もしくは芳香族および/もしくはアルキル芳香族のアミンの液体塩基の使用、または気体塩基としてのアンモニアの使用が好ましい。特に好ましくは、特に炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが使用される。好ましくは、反応混合物中に存在する酸の量に加えられる固体、液体または気体塩基の量が算定される。好ましくは、塩基の質量割合は、塩基を含まない反応混合物の質量に対して0.5%~5%、特に0.8%~2%である。塩基を化学量論的量で使用することが好ましい。塩基が比較的大過剰であると、例えば付随して沈殿する塩によって直接的にろ過の負担が生じるため、特に工業規模で実施される場合の本発明による方法にとって不利である。同様に、大量の液体有機塩基(アミン)は生成物中に残存するため、これらも顕著に有害である。
【0061】
また、アセトキシシリコーンは塩素不含であることが好ましい。このようなアセトキシシリコーンは、アセトキシシリコーンの前述の好ましい製造方法によって得ることができる。
【0062】
アセトキシシリコーンとしては、最終平衡化アセトキシシリコーンを用いることが好ましい。これらも、アセトキシシリコーンの前述の好ましい製造方法によって製造することができる。
【0063】
シリコーン(メタ)アクリレートのさらなる製造には、特に直鎖または分岐アセトキシシリコーンが適している。直鎖アセトキシシリコーンとして、好ましくは、α,ω-アセトキシシリコーン、すなわち末端アセトキシ基を有するオルガノシロキサンが適している。直鎖アセトキシシリコーンは、好ましくは、D単位のみから構成された単純なシロキサン環から製造される。分岐アセトキシシリコーンは、好ましくは、D単位とT単位との双方からなるD/T型の環状分岐シロキサンから製造される。単純なシロキサン環またはD/T型の環状分岐シロキサンと、上記のとおり無水酢酸とを、好ましくはさらに酢酸を用いて、反応を触媒する酸の存在下で反応させて、アセトキシシリコーンを得ることができる。
【0064】
次に、本発明により製造されたアセトキシシリコーンを、少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルと反応させることで、シリコーン(メタ)アクリレートが得られる。
【0065】
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルが、式(II)の化合物であることが好ましい。
【化1】
[式中、
x=少なくとも1、好ましくは1~3、特に1であり、
R
1は、それぞれ互いに独立して、(x+1)価の有機基からなる群から選択され、好ましくは、それぞれ互いに独立して、酸素原子および/または窒素原子および/またはNH基で中断されていてもよい、1~40個の炭素原子を有する炭化水素基からなる群から選択され、特に、それぞれ互いに独立して、二価のアルキレン基および二価のポリオキシアルキレン基からなる群から選択され、
R
2は、それぞれ互いに独立して、水素基またはメチル基である。]
【0066】
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、第一級および/または第二級および/または第三級のOH基を有することができる。また、これらを位置異性体混合物の形態で使用することもできる。R1は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、芳香族または脂肪族、置換または非置換であってよい。好ましくは、R1は、二価の基(x=1)からなる群から選択され、より好ましくは、アルキレン基またはポリオキシアルキレン基である。R1は、特に好ましくは、エチレン基(-CH2-CH2-)またはプロピレン基(-CH(CH3)CH2-/-CH2CH(CH3)-)である。さらに、R2は、特に好ましくは水素基であり、したがって、アクリル酸エステルを使用することが特に好ましい。
【0067】
適切な(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-1-プロピルアクリレート(1,2-プロパンジオール-1-アクリレート)、1-ヒドロキシ-2-プロピルアクリレート(1,2-プロパンジオール-2-アクリレート)、1-ヒドロキシ-3-プロピルアクリレート(1,3-プロパンジオール-1-アクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-1-プロピルメタクリレート(1,2-プロパンジオール-1-メタクリレート)、1-ヒドロキシ-2-プロピルメタクリレート(1,2-プロパンジオール-2-メタクリレート)、1-ヒドロキシ-3-プロピルメタクリレート(1,3-プロパンジオール-1-メタクリレート)およびペンタエリスリトールトリメタクリレートからなる群から選択することができる。
【0068】
本発明によれば、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくは、アセトキシシリコーンに結合したアセトキシ基に対して少なくとも化学量論的量で、より好ましくはアセトキシシリコーンに対して1.03~1.15、特に1.05~1.10の量で使用される。したがって、少なくとも1つのアセトキシシリコーンのアセトキシ基に対する少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基のモル比が、少なくとも1.00、好ましくは1.03~1.15、特に1.05~1.10であることが好ましい。
【0069】
本発明によれば、好ましくは、アセトキシシリコーンとヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとの反応は、溶媒中で、より好ましくは非極性溶媒中で、より好ましくはエーテル、ケトン、芳香族炭化水素および/またはそれらの混合物中で、より好ましくはトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、メチルイソブチルケトンおよび/またはそれらの混合物中で実施される。しかし、特に好ましくは、アセトキシシリコーンとヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとの反応は、無溶媒で行われる。
【0070】
本発明によれば、好ましくは、反応は、固体、液体または気体の塩基を添加することによって行うことができる。しかし、特に好ましくは、反応は、塩基を使用せずに行われる。
【0071】
好ましくは、アセトキシシリコーンとヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとの反応は、触媒を用いて行われる。ここで、縮合反応用の触媒として、好ましくは酸が使用される。
【0072】
ここで、少なくとも1つのアセトキシシリコーンと少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとを、
a)pKa値-3未満のブレンステッド酸、好ましくはスルホン酸またはハロカルボン酸、特にトリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびトリフルオロ酢酸からなる群から選択されるもの、
および/または
b)ルイス酸
および/または
c)金属触媒、好ましくは、アルキルチタネート(チタンアルコラート)、カルボン酸金属塩、およびアセチルアセトナト系金属錯体からなる群から選択されるもの、特にチタンテトラブタノラート、亜鉛アセチルアセトナート、およびカルボン酸亜鉛からなる群から選択されるもの
からなる群から選択される触媒の存在下で反応させることが好ましい。
【0073】
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、アセトキシシリコーンおよび好ましくは縮合を触媒する酸を含む反応混合物の反応中および反応後の(メタ)アクリレート基の望ましくない重合を避けるために、ラジカル捕捉剤/抑制剤が、好ましくは反応前または反応中に反応混合物に添加される。適切なラジカル捕捉剤/抑制剤は、当業者には十分に知られている。ラジカル捕捉剤/抑制剤として、例えば、ヒドロキシ官能性芳香族炭化水素、キノン、窒素および/または硫黄基を有する複素環化合物、ならびに立体障害アミンが適している。好ましくは、ラジカル捕捉剤/抑制剤は、メチルハイドロキノン、p-メトキシフェノールおよびフェノチアジンからなる群から選択される。特に好ましくは、メチルハイドロキノンが使用される。ラジカル捕捉剤/抑制剤の質量割合が、反応混合物の質量に対して0.05%~1.0%、好ましくは0.1%~0.5%、特に0.2%~0.4%であることがさらに好ましい。
【0074】
本発明によれば、少なくとも1つのアセトキシシリコーンと少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとの反応は、40℃~150℃、特に好ましくは70℃~120℃の温度で、1~8時間、特に好ましくは3~6時間にわたって行われることが好ましい。好ましくは、反応は、1mbar~1013mbarの圧力で行われる。
【0075】
得られた反応生成物は、揮発性の反応生成物および/または副生成物を含むことがある。これらを十分に除去することが有利である。したがって、200mbar未満、好ましくは20mbar未満、特に4mbar未満の減圧の適用下で、80℃~140℃、好ましくは100℃~130℃の温度で、1~8時間、好ましくは1~4時間にわたって、反応生成物から揮発性成分、例えば、揮発性の反応生成物および/または副生成物を除去することが好ましい。「揮発性成分を含まない反応生成物」という用語は、ここでは、反応生成物中の揮発性成分の割合を減少させることを意味すると理解される。
【0076】
揮発性成分を除去した後、反応生成物は酸を含む場合がある。したがって、反応生成物中に含まれ得る酸を、固体、液体または気体の塩基の添加により20℃~110℃、好ましくは40℃~80℃の温度で中和することが好ましく、その際、特にアルカリ金属元素および/もしくはアルカリ土類金属元素および/もしくはアンモニウムの炭酸塩および/もしくは炭酸水素塩の形態の固体塩基の使用、または液体塩基の、ここでは好ましくは脂肪族および/もしくは芳香族および/もしくはアルキル芳香族アミンの液体塩基の使用、または気体塩基としてのアンモニアの使用が好ましい。特に好ましくは、特に炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが使用される。好ましくは、反応混合物中に存在する酸の量に加えられる固体、液体または気体塩基の量が算定される。好ましくは、塩基の質量割合は、塩基を含まない反応混合物の質量に対して0.5%~5%、特に0.8%~2%である。塩基を化学量論的量で使用することが好ましい。塩基が大過剰であると、例えば付随して沈殿する塩によって直接的にろ過の負担が生じるため、特に工業規模で実施される場合の本発明による方法にとって不利である。同様に、大量の液体有機塩基(アミン)は生成物中に残存するため、これらも顕著に有害である。反応生成物を精製するために、任意にろ過を行うことができる。この場合、ろ過助剤として、例えば、セルロース、シリカゲル、珪藻土またはパーライトを使用することができる。また、反応生成物中の望ましくない物質または不純物の割合を、活性炭および/または例えばTonsil(登録商標)のような漂白土によって減少させることも可能である。
【0077】
したがって、本発明のさらなる主題はさらに、本発明による方法によって製造可能な生成物(方法生成物または反応生成物ともいう)である。
【0078】
本発明のさらなる主題は、本発明による方法によって製造可能なシリコーン(メタ)アクリレートである。
【0079】
本発明による生成物は、本発明による少なくとも1つのシリコーン(メタ)アクリレートを含むか、または(実質的に)これからなる。
【0080】
本発明による方法によって得られるこれらの生成物またはシリコーン(メタ)アクリレートは、特に、重金属(例えば重金属イオンまたは重金属化合物の形態で)、ホウ素(例えばホウ素化合物の形態で)および/または塩素(例えば塩化物または塩素化合物の形態で)を含まないかまたは実質的に含まないことを特徴とする。方法生成物または少なくとも1つのシリコーン(メタ)アクリレートの質量に対する、重金属、ホウ素および/または塩素の質量割合は、好ましくは0.5%以下、特に0.01%以下である。重金属は、好ましくは、標準状態での密度が5.0g/cm3より大きい金属を意味すると理解される。
【0081】
本発明による方法によって得られるシリコーン(メタ)アクリレート中における環状シロキサンの含有量が低いことがさらに好ましい。したがって、方法生成物またはシリコーン(メタ)アクリレートの質量に対するD4、D5およびD6の質量割合の合計として定義される、ガスクロマトグラフィーにより決定される方法生成物中の全環含有量が、0.1%以下、特に0.05%以下であることが好ましい。
【0082】
好ましくは、本発明によるシリコーン(メタ)アクリレートは、式(III)の化合物である。
M
m1M
Acr
m2D
d1D
Acr
d2T
tQ
q 式(III)
[式中、
M=[R
3SiO
1/2]、
M
Acr=[RR
AcrSiO
1/2]、
D=[R
2SiO
2/2]、
D
Acr=[RR
AcrSiO
2/2]、
T=[RSiO
3/2]、
Q=[SiO
4/2]、
m1=0~32、好ましくは0~22、特に0であり、
m2=0~32、好ましくは1~10、特に2であり、
d1=1~1000、好ましくは5~500、特に10~400であり、
d2=0~10、好ましくは0~5、特に0であり、
t=0~10、好ましくは0~5、特に1~5であり、
q=0~10、好ましくは0~5、特に1~5であるが、ただし、
m1+m2=少なくとも2、好ましくは2~20、特に3~10であり、
m2+d2=少なくとも1、好ましくは2~10、特に2~6であり、
Rは、それぞれ互いに独立して、一価の有機基からなる群から選択され、好ましくは、それぞれ互いに独立して、1~30個の炭素原子を有する一価の炭化水素基からなる群から選択され、特にメチルであり、
R
Acrは、それぞれ互いに独立して、式(IV)の一価の基から選択され、
【化2】
ここで、
x=少なくとも1、好ましくは1~3、特に1であり、
R
1は、それぞれ互いに独立して、(x+1)価の有機基からなる群から選択され、好ましくは、それぞれ互いに独立して、酸素原子および/または窒素原子および/またはNH基で中断されていてもよい、1~40個の炭素原子を有する炭化水素基からなる群から選択され、特に、それぞれ互いに独立して、二価のアルキレン基および二価のポリオキシアルキレン基からなる群から選択され、
R
2は、それぞれ互いに独立して、水素基またはメチル基である。]
【0083】
したがって、方法生成物が、式(III)の少なくとも1つのシリコーン(メタ)アクリレートを含むか、または(実質的に)これからなることが好ましい。
【0084】
方法生成物またはシリコーン(メタ)アクリレートが、環状でないことがさらに好ましい。したがって、式(III)のシリコーン(メタ)アクリレートについて、m1+m2=2+t+2×qが成り立つことが好ましい。
【0085】
ここで、式(III)のシリコーン(メタ)アクリレートの一価の有機基Rは、RAcrと異なる。さらに、式(III)のシリコーン(メタ)アクリレートの一価の有機基Rが、それぞれ独立して、直鎖または分岐、飽和または不飽和、芳香族または脂肪族、置換または非置換炭化水素基からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、式(III)のシリコーン(メタ)アクリレートの一価の有機基Rは、それぞれ独立して、1~30個の炭素原子を有する飽和炭化水素基または6~30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、より好ましくは1~14個の炭素原子を有する飽和炭化水素基または単環芳香族炭化水素基から選択される。より好ましくは、式(III)のシリコーン(メタ)アクリレートの一価の有機基Rは、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピルおよびフェニルからなる群から選択される。特に、R=メチルである。
【0086】
基RAcrは、第一級および/または第二級および/または第三級OH基を有するヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルから誘導されている。したがって、基RAcrは、例えば、位置異性体混合物から誘導されていてよい。R1は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、芳香族または脂肪族、置換または非置換であってよい。好ましくは、R1は、二価の基(x=1)からなる群から選択され、より好ましくは、アルキレン基またはポリオキシアルキレン基である。R1は、特に好ましくは、エチレン基(-CH2-CH2-)またはプロピレン基(-CH(CH3)CH2-/-CH2CH(CH3)-)である。さらに、R2は、特に好ましくは水素基であり、したがって、RAcrは、特に好ましくはヒドロキシ官能性アクリル酸エステルから誘導されている。基RAcrを誘導することができる適切な(メタ)アクリル酸エステルは、すでに上に列挙されている。
【0087】
さらに、R2は、特に好ましくは、水素基である。したがって、1つ以上のアクリル酸エステル基を有する基RAcrが特に好ましい。
【0088】
本発明による方法生成物または本発明によるシリコーン(メタ)アクリレートは、硬化性組成物における成分として特に適している。
【0089】
したがって、本発明のさらなる主題は、本発明による方法生成物または本発明によるシリコーン(メタ)アクリレートを含む組成物である。
【0090】
本発明によるこの組成物が硬化可能であること、好ましくはラジカル反応によって硬化可能であることが好ましく、ここで、ラジカル反応は、熱、紫外線または電子線により開始可能である。
【0091】
本発明による組成物は、コーティング材料として使用することがさらに好ましい。コーティング材料を硬化させることにより、剥離コーティングを得ることができる。
【0092】
本発明による組成物を3D印刷法で使用することがさらに好ましい。ここで、本発明による組成物は、製造する3D印刷物(3D物体)の出発材料として使用することができる。したがって、3D印刷物は、出発材料を硬化させることによって得ることができる。
【0093】
本発明による組成物は、フリーラジカルによって三次元的に架橋され、例えば過酸化物の添加によって、または紫外線もしくは電子線のような高エネルギー放射線の作用下で非常に短い時間内で熱的に硬化して、機械的および化学的に耐久性のある層を形成することができ、これは、本発明による組成物の適切な配合が与えられれば、予め定めることができる粘着特性および付着特性も有する。
【0094】
放射線として紫外線が使用される場合、架橋/硬化は、好ましくは、光重合開始剤および/または光増感剤の存在下で行われる。好ましいのは、ノリッシュ1型の光重合開始剤、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシドまたはその誘導体である。慣用的な光重合開始剤は、例えば“A Compilation of Photoinitiators Commercially available for UV today”(K. Dietliker, SITA Technology Ltd., London 2002)に記載されている。本発明による好ましい組成物は、組成物全体の質量に対して0.01%~10%、特に0.1%~5%の質量割合で光重合開始剤および/または光増感剤を有する。光重合開始剤および/または光増感剤は、好ましくは本発明による組成物に可溶であり、より好ましくは、組成物全体の質量に対して0.01%~10%、特に0.1%~5%の質量割合で可溶である。
【0095】
好ましい組成物は、本発明によるシリコーン(メタ)アクリレートに加えてさらに、それとは異なる成分であって、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合性基を有する、純粋な有機リン含有またはリン不含化合物(例えば有機モノマーまたはポリマー(メタ)アクリル酸エステル)、さらなる有機変性シリコーン(例えば、SiC型のシリコーン(メタ)アクリレート)、シラン、光重合開始剤、光増感剤、熱ラジカル重合開始剤(例えば、過酸化物)、充填剤(例えば、疎水化シリカまたは金属酸化物)、MQ樹脂、顔料、溶媒、硬化促進剤、アンチミスト添加剤、アミン相乗剤および安定剤(例えば、ホスファイト、またはヒンダードアミン光安定剤(HALS))、酸化防止剤、および酸素捕捉剤からなる群から選択される成分を含む。
【0096】
剥離コーティングあるいは3D印刷物の製造方法は、好ましくは、以下の間接的または直接的な連続ステップを含む:
a.表面に組成物を施与するステップ、
b.組成物を、好ましくは紫外線の照射により硬化させるステップ。
【0097】
ここで、3D印刷法による3D印刷物の製造において、方法ステップaおよびbは、好ましくは交互に複数回行われる。したがって、3D印刷物は段階的に構築される。
【0098】
本発明による組成物を硬化させるための適切なUV放射源は、中圧水銀蒸気ランプであって、任意にドープされたもの、または低圧水銀蒸気ランプ、UV-LEDランプ、またはいわゆるエキシマエミッタである。紫外線エミッタは、多色性であっても単色性であってもよい。エミッタの発光範囲は、好ましくは、光重合開始剤および/または光増感剤の吸収範囲に位置する。
【0099】
剥離コーティングの製造において、好ましくは、表面は支持体の表面であり、好ましくは面状支持体の表面である。ここで、本発明による組成物は、面状支持体に片面に施与されても両面に施与されてもよい。好ましくは、面状支持体は、紙、織物、金属箔およびプラスチックフィルムからなる群から選択される。支持体は、平滑であってもよいし、表面構造を備えていてもよい。特に好ましい支持体は、ポリプロピレンフィルムおよびポリエチレンフィルムである。
【0100】
剥離コーティングは、例えば、粘着テープ、ラベル、自己粘着性衛生製品の包装、食品包装、自己粘着性感熱紙、またはビチューメン屋根膜のライナーにおいて使用される。剥離コーティングは、これらの用途で採用される粘着材料に対して良好な剥離効果を有する。
【0101】
以下に示す実施例において本発明を例示的に説明するが、本発明の適用範囲は、本明細書および特許請求の範囲の全体から明らかであり、本発明は実施例に記載の実施形態に限定されるものと読み取ることはできない。
【実施例0102】
以下の例は、当業者に本発明を説明するためにのみ役立つものであり、特許請求の範囲に記載された主題を何ら制限するものではない。すべての例において、反応モニタリングに、1H-NMRおよび29Si-NMR分光法を用いた。
【0103】
[全般的方法]
核スピン共鳴分光法(NMR分光法):
本発明において、1H-NMR試料を、BBIサンプルヘッドを備えたBrucker 400分光計において、22℃でCDCl3中に溶解させ、テトラメチルシラン(TMS)の外部標準に対して測定周波数400MHzで測定する[δ(1H)=0.0ppm]。
【0104】
本発明において、29Si-NMR試料を、ギャップ幅10mmの287430サンプルヘッドを備えたBruker Avance III分光計において、22℃でCDCl3中に溶解させ、テトラメチルシラン(TMS)の外部標準に対して測定周波数79.49MHzで測定する[δ(29Si)=0.0ppm]。
【0105】
ガスクロマトグラフィー(GC):
ガスクロマトグラムを、HP-1型のカラム;30m×0.32mm ID×0.25μm dF(Agilent Technologies No.19091Z-413E)およびキャリアガスとしての水素を備えたAgilent Technologies社製GC 7890B型のGC装置で、以下のパラメータで記録する:
検出器:FID;310℃
インジェクタ:スプリット;290℃
モード:コンスタントフロー2mL/分
温度プログラム:60℃ 8℃/分-150℃ 40℃/分-300℃ 10分
【0106】
[合成例]
合成例1(S1)
a)平均鎖長N=14の直鎖α,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサンの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた2L四ツ口フラスコ内で、デカメチルシクロペンタシロキサン1349.6g、無水酢酸157.2g、酢酸22.6gおよびトリフルオロメタンスルホン酸3.01gを撹拌しながら150℃に加熱する。150℃で6時間撹拌した後、60℃に冷却する。その後、無水炭酸ナトリウム30.1gを加える。このバッチをさらに1時間撹拌した後、ろ過する。ろ液として、29Si-NMRにより決定された平均組成MAcO
2D12の無色透明のアセトキシシリコーンが得られる。
【0107】
b)平均式MAcr
2D12[式中、R1=プロピレンであり、R2=Hである]のα,ω-シリコーンアクリレートの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた500ml四ツ口フラスコ内で、ヒドロキシプロピルアクリレート(純度95%、Sigma Aldrich、第一級ヒドロキシ基を有する異性体(1-ヒドロキシ-2-プロピルアクリレート)25%および第二級ヒドロキシ基を有する異性体(2-ヒドロキシ-1-プロピルアクリレート)75%を含む位置異性体混合物)54.66g、ならびにメチルハイドロキノン0.11g、トリクロロ酢酸(Sigma Aldrich)0.56g、および酢酸1.41g(p.a.,Baker)を装入して撹拌する。ここで、使用したヒドロキシプロピルアクリレートを、さらに予備乾燥することなく使用する。合成例1a)で得られた平均鎖長N=14、平均式MAcO
2D12の直鎖α,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサン226.57gを室温で迅速に計量供給し、反応混合物を110℃に加熱する。加熱すると、反応混合物は透明で単相となる。110℃で4時間撹拌した後、反応混合物をロータリーエバポレーターで、100℃で、4mbarに減圧して1時間加熱して、揮発性の反応生成物および/または副生成物を蒸留により除去する。四ツ口フラスコ内で、80℃に冷却した蒸留缶出液に無水炭酸ナトリウム5.6gを混合し、80℃で2時間撹拌する。冷却後、プリーツフィルターで固体をろ過により除去し、無色透明の液状生成物が得られる。この生成物の29Si-NMRスペクトルから、Si結合したアセトキシ基のシグナルはもはや存在せず、その代わりにSiOC結合したヒドロキシプロピルアクリレートのシグナルが出現していることがわかる。29Si-NMRスペクトルから算出される平均鎖長はN=14である。したがって、29Si-NMRスペクトルから算出された平均的な構造は、近似式MAcr
2D12[式中、R1は、プロピレン(-CH(CH3)CH2-/-CH2CH(CH3)-)であり、R2は、Hである]に相当する。
【0108】
合成例2(S2)
a)平均鎖長N=39の直鎖α,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサンの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた2L四ツ口フラスコ内で、デカメチルシクロペンタシロキサン1390.3g、無水酢酸70.2g、酢酸21.9gおよびトリフルオロメタンスルホン酸2.96gを撹拌しながら150℃に加熱する。150℃で6時間撹拌した後、60℃に冷却する。その後、無水炭酸ナトリウム29.7gを加える。このバッチをさらに1時間撹拌した後、ろ過する。ろ液として、29Si-NMRにより決定された平均組成MAcO
2D37の無色透明のアセトキシシリコーンが得られる。
【0109】
b)平均式MAcr
2D37[式中、R1=プロピレンであり、R2=Hである]のα,ω-シリコーンアクリレートの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた500ml四ツ口フラスコ内で、ヒドロキシプロピルアクリレート(純度95%、Sigma Aldrich、第一級ヒドロキシ基を有する異性体(1-ヒドロキシ-2-プロピルアクリレート)25%および第二級ヒドロキシ基を有する異性体(2-ヒドロキシ-1-プロピルアクリレート)75%を含む位置異性体混合物)27.33g、ならびにメチルハイドロキノン0.13g、トリクロロ酢酸(Sigma Aldrich)0.65g、および酢酸1.63g(p.a.,Baker)を装入して撹拌する。ここで、使用したヒドロキシプロピルアクリレートを、さらに予備乾燥することなく使用する。合成例2a)で得られた平均鎖長N=39、平均式MAcO
2D37の直鎖α,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサン297.93gを室温で迅速に計量供給し、反応混合物を110℃に加熱する。加熱すると、反応混合物は透明で単相となる。110℃で4時間撹拌した後、反応混合物をロータリーエバポレーターで、100℃で、4mbarに減圧して1時間加熱して、揮発性の反応生成物および/または副生成物を蒸留により除去する。四ツ口フラスコ内で、80℃に冷却した蒸留缶出液に無水炭酸ナトリウム6.5gを混合し、80℃で2時間撹拌する。冷却後、プリーツフィルターで固体を分離し、ろ液として無色透明の液状生成物が得られる。この生成物の29Si-NMRスペクトルから、Si結合したアセトキシ基のシグナルはもはや存在せず、その代わりにSiOC結合したヒドロキシプロピルアクリレートのシグナルが出現していることがわかる。したがって、使用したα,ω-ジアセトキシポリジメチルシロキサンの平均式MOAc
2D37から出発して、平均式MAcr
2D37[式中、R1は、プロピレン(-CH(CH3)CH2-/-CH2CH(CH3)-)であり、R2は、Hである]のα,ω-シリコーンアクリレートが得られる。
【0110】
合成例3(S3)
a)平均式MAcO
3.5D22T2の分岐アセトキシシリコーンの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた1L四ツ口フラスコ内で、近似式D5.45Tの環状分岐DTシロキサン329.91g、デカメチルシクロペンタシロキサン381.52g、無水酢酸78.61g、酢酸11.85gおよびトリフルオロメタンスルホン酸1.58gを撹拌しながら150℃に加熱する。150℃で6時間撹拌した後、60℃に冷却する。その後、無水炭酸ナトリウム15.8gを加える。このバッチをさらに1時間撹拌した後、ろ過する。ろ液として、29Si-NMRにより平均組成MAcO
3.5D22T2とみなすことができる無色透明のアセトキシシリコーンが得られる。
【0111】
b)平均式MAcr
2.5D18.7T2[式中、R1=プロピレンであり、R2=Hである]のシリコーンアクリレートの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた500ml四ツ口フラスコ内で、ヒドロキシプロピルアクリレート(純度95%、Sigma Aldrich、第一級ヒドロキシ基を有する異性体(1-ヒドロキシ-2-プロピルアクリレート)25%および第二級ヒドロキシ基を有する異性体(2-ヒドロキシ-1-プロピルアクリレート)75%を含む位置異性体混合物)54.66g、ならびにメチルハイドロキノン0.12g、トリクロロ酢酸(Sigma Aldrich)0.62g、および酢酸1.55g(p.a.,Baker)を装入して撹拌する。ここで、使用したヒドロキシプロピルアクリレートを、さらに予備乾燥することなく使用した。合成例3a)で得られた平均式MAcO
3.5D22T2の分岐末端アセトキシシリコーン255.73gを室温で迅速に計量供給し、反応混合物を110℃に加熱する。加熱すると、反応混合物は透明で単相となる。110℃で4時間撹拌した後、反応混合物をロータリーエバポレーターに移し、100℃で、4mbarに減圧して1時間にわたって揮発性の反応生成物および/または副生成物を蒸留により除去する。その後、なおもロータリーエバポレーター上で蒸留缶出液に無水炭酸ナトリウム6.2gを加え、80℃で2時間蒸留を継続する。冷却後、プリーツフィルターで固体をろ過により除去し、無色透明の液状生成物が得られる。この生成物の29Si-NMRスペクトルから、Si結合したアセトキシ基のシグナルはもはや存在せず、その代わりにSiOC結合したヒドロキシプロピルアクリレートのシグナルが出現していることがわかる。29Si-NMRスペクトルから算出された平均的な構造は、式MAcr
2.5D18.7T2[式中、R1は、プロピレン(-CH(CH3)CH2-/-CH2CH(CH3)-)であり、R2は、Hである]に相当する。
【0112】
合成例4(S4)
a)平均式MAcO
5.1D54.5T3の分岐アセトキシシリコーンの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた1L四ツ口フラスコ内に、メチルトリエトキシシラン58.84g、デカメチルシクロペンタシロキサン465.95g、およびトリフルオロメタンスルホン酸1.21gを装入し、無水酢酸81.42gおよび酢酸18.19gからなる混合物を計量供給する。これを段階的に撹拌しながら150℃まで加熱し、生じる留出物を溜める。150℃で5時間撹拌した後、60℃に冷却する。その後、無水炭酸ナトリウム3.03gを加える。このバッチをさらに1時間撹拌した後、ろ過する。ろ液として、29Si-NMRにより平均組成MAcO
5.1D54.5T3とみなすことができる無色透明のアセトキシシリコーンが得られる。
【0113】
b)平均式MAcr
3.89D50.3T3[式中、R1=プロピレンであり、R2=Hである]のシリコーンアクリレートの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた500ml四ツ口フラスコ内で、ヒドロキシプロピルアクリレート(純度95%、Sigma Aldrich、第一級ヒドロキシ基を有する異性体(1-ヒドロキシ-2-プロピルアクリレート)25%および第二級ヒドロキシ基を有する異性体(2-ヒドロキシ-1-プロピルアクリレート)75%を含む位置異性体混合物)42.01g、ならびにメチルハイドロキノン0.12g、トリクロロ酢酸(Sigma Aldrich)0.62g、および酢酸1.54g(p.a.,Baker)を装入して撹拌する。ここで、使用したヒドロキシプロピルアクリレートを、さらに予備乾燥することなく使用した。合成例4a)で得られた平均式MAcO
5.1D54.5T3の分岐末端アセトキシシリコーン266.43gを室温で迅速に計量供給し、反応混合物を110℃に加熱する。加熱すると、反応混合物は透明で単相となる。110℃で4時間撹拌した後、反応混合物をロータリーエバポレーターに移し、100℃で、4mbarに減圧して1時間にわたって揮発性の反応生成物および/または副生成物を蒸留により除去する。その後、蒸留缶出液に無水炭酸ナトリウム6.2gを加え、80℃で2時間撹拌する。冷却後、プリーツフィルターで固体をろ過により除去し、無色透明の液状生成物が得られる。29Si-NMRスペクトルから算出された平均的な構造は、式MAcr
3.89D50.3T3[式中、R1は、プロピレン(-CH(CH3)CH2-/-CH2CH(CH3)-)であり、R2は、Hである]に相当する。
【0114】
合成例5(S5)
a)平均式MAcO
3.63D55.8T2の分岐アセトキシシリコーンの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた1L四ツ口フラスコ内に、メチルトリエトキシシラン42.79g、デカメチルシクロペンタシロキサン516.11g、およびトリフルオロメタンスルホン酸1.25gを装入し、無水酢酸63.70gおよび酢酸18.68gからなる混合物を計量供給する。これを段階的に撹拌しながら150℃まで加熱し、生じる留出物を溜める。150℃で5時間撹拌した後、60℃に冷却する。その後、無水炭酸ナトリウム4.4gを加える。このバッチをさらに1時間撹拌した後、ろ過する。ろ液として、29Si-NMRにより平均組成MAcO
3.63D55.8T2とみなすことができる無色透明のアセトキシシリコーンが得られる。
【0115】
b)平均式MAcr
3.03D55.09T2[式中、R1=プロピレンであり、R2=Hである]のシリコーンアクリレートの製造:
KPG撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた500ml四ツ口フラスコ内で、ヒドロキシプロピルアクリレート(純度95%、Sigma Aldrich、第一級ヒドロキシ基を有する異性体(1-ヒドロキシ-2-プロピルアクリレート)25%および第二級ヒドロキシ基を有する異性体(2-ヒドロキシ-1-プロピルアクリレート)75%を含む位置異性体混合物)29.18g、ならびにメチルハイドロキノン0.113g、トリクロロ酢酸(Sigma Aldrich)0.57g、および酢酸1.41g(p.a.,Baker)を装入して撹拌する。ここで、使用したヒドロキシプロピルアクリレートを、さらに予備乾燥することなく使用した。合成例5a)で得られた平均式MAcO
3.63D55.8T2の分岐末端アセトキシシリコーン253.79gを室温で迅速に計量供給し、反応混合物を110℃に加熱する。加熱すると、反応混合物は透明で単相となる。110℃で4時間撹拌した後、反応混合物をロータリーエバポレーターに移し、初めに110℃で、2mbarまで減圧して揮発性の反応生成物および/または副生成物を蒸留により除去する。蒸留開始後、ゆっくりと130℃まで昇温し、130℃、2mbarでさらに3時間蒸留する。その後、蒸留缶出液に無水炭酸ナトリウム2.4gおよびジメチルヘキサデシルアミン0.02gを加え、80℃で2時間撹拌する。冷却後、プリーツフィルターで固体をろ過により除去する。29Si-NMRスペクトルから算出された平均的な構造は、式MAcr
3.03D55.09T2[式中、R1は、プロピレン(-CH(CH3)CH2-/-CH2CH(CH3)-)であり、R2は、Hである]に相当する。ガスクロマトグラフィーで決定された環状シロキサン含有量は、D4が<0.02%、D5が<0.02%、D6が<0.26%である。トリクロロ酢酸の残留含有量に起因する生成物の全塩素含有量は、391ppmである。
【0116】
比較例1(V1)(本発明によらない)。
【0117】
鎖長N=28.6のSiC結合α,ω-シリコーンアクリレートの製造(国際公開第2017/080747号の比較例1に相当)
KPG撹拌機、内部温度計およびガス導入管を備えた加熱可能な500ml四ツ口フラスコ内に、α,ω位にSiC結合エポキシ官能基を有する平均鎖長N=28の直鎖エポキシシロキサン227.7gを、メチルハイドロキノン0.02g、p-メトキシフェノール0.02g、酢酸クロム(III)水溶液(50質量%)0.49g、ならびにアクリル酸15.2gおよび酢酸0.8gと共に撹拌しながら装入する。その後、反応バッチを、適度な空気流の導入下に120℃に加熱する。反応中に試料を採取し、それぞれの酸価に基づいて、達成された転化率を決定する。18時間の反応時間後に、93%の転化率で反応を終了させる。バッチを25℃まで冷却させ、次いでろ過し、ろ液を120℃で蒸留して揮発分を分離する。蒸留残渣の1H-および29Si-NMRスペクトルから、使用したエポキシ基の91%が対応するカルボン酸エステルへ転化していることが確認された。得られた生成物の粘度は、1026mPasである。
【0118】
[適用試験]
剥離コーティングの製造:
本発明による合成例S1~S3で製造したSiOC系シリコーンアクリレートと、比較例V1で製造したSiC結合シリコーンアクリレートとの双方の適用試験を、剥離コーティング用配合物において行う。剥離コーティングは、先行技術から知られており、特に面状支持体上の粘着コーティングとして、この場合特に、粘着テープまたはラベルラミネートにおけるそれらの使用について知られている。
【0119】
剥離コーティング用配合物を製造するために、合成例S1~S5および比較例V1で得られたシリコーンアクリレート各98gを、光重合開始剤TEGO(登録商標)A18(Evonik Industries AG)各2gと徹底的に混合する。
【0120】
さらに剥離コーティング用配合物を製造するが、その際、TEGO(登録商標)RC 711(Evonik Industries AG)各30gを、光重合開始剤TEGO(登録商標)A18各2gと共に、合成例S1~S5および比較例V1で得られたシリコーンアクリレート各68gと徹底的に混合する(例S1a~S5a)。TEGO(登録商標)RC 711は、アクリレート官能性オルガノシロキサンであり、付属の技術データシートのデータによれば、コーティング材料を基材に良好に固定するものである。
【0121】
さらに剥離コーティング用配合物を製造するが、その際、成分S1およびS3各30gを成分S2、S4、S5各68gおよび光重合開始剤TEGO(登録商標)A18(Evonik Industries AG)2gと混合する(例S2/1、S2/3、S4/1、S4/3、S5/1およびS5/3)。
【0122】
このようにして製造したコーティング材料を、面状支持体に施与する。すべての適用例において、これは幅50cmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(BOPP)からなり、これには、それぞれ1kWの発電機出力を用いたコーティング材料の施与の前にコロナ前処理を施しておいた。コーティング材料は、COATEMA(登録商標)(Coating Machinery GmbH、ドルマーゲン、ドイツ)社製5ロールコーティングユニットを用いて、単位面積当たりの質量が約1g/m2となるように施与し、IST(登録商標)Metz GmbH(ニュルティンゲン、ドイツ)社製中圧水銀蒸気ランプの紫外線を60W/cm、ベルト速度100m/分で残留酸素含有量50ppm未満の窒素雰囲気下で作用させて硬化させる。
【0123】
こうしてコーティングした試料を、ラブオフ、剥離値、および残留接着率に関する試験に供する。
【0124】
ラブオフ:
硬化したコーティングが支持体材料に付着しているかどうかを、親指でコーティングを強く擦ることによって確認する。付着性が不十分な場合、ゴム状のくずのような磨耗が発生する。このようなくずが、強く擦っても発生しないことが望ましい。試験を、訓練された試験者によって行う。評価は1~5の範囲に分類され、1は支持体材料への付着性が非常に良好であり、5は支持体材料への付着性が劣悪である。
【0125】
剥離値:
粘着テープやラベルの形で工業的に使用される粘着物質の剥離効果は、剥離値(TW)で表され、剥離値が低いほど剥離効果が良好であることを示す。剥離値は、剥離コーティングの品質、粘着剤自体、および試験条件に依存する。したがって、剥離コーティングの評価には、同一の粘着剤および試験条件が存在することが必要である。剥離値の測定は、粘着テープまたはラベルラミネートを2.5cm幅に切断し、次いで粘着剤側をそれぞれ試験対象のシリコーンコーティングに貼付して行う。この試験は、FINAT Handbook 8th Edition, The Hague/NL, 2009のFTM10に従って行うが、加圧下で40℃での貯蔵を行うように変更を加える。使用した粘着テープは、Tesa(登録商標)7475(Tesa SE、ハンブルク、ドイツの商標)である。報告された値は、それぞれ5回測定した平均値であり、単位は[cN/2.5cm]で示される。剥離値が10cN/2.5cm未満である系は、剥離が容易であるとみなし、例えばラベルラミネートのような多くの用途に通常適している。
【0126】
残留接着力:
残留接着力(短時間残留接着力、KUR)を、FINAT Handbook 8th Edition, The Hague/NL, 2009のFTM11の試験プロトコルに従って測定するが、ただし、シリコーンに接触させた試験用粘着テープの貯蔵を1分間行い、標準表面は未処理のBOPP表面であるという相違点がある。使用した粘着テープは、Tesa(登録商標)7475(Tesa SE、ハンブルク、ドイツの商標)である。残留接着力は、シリコーンの架橋の指標である。重合しておらず、したがって移行性であるシリコーン成分が存在する場合、そうした成分の割合が多くなると残留接着力値は低下する。80%超の値を許容可能とする。ラブオフ試験、剥離値および短時間残留接着力(KUR)の結果を表1に示す。
【表1】
【0127】
表1から明らかなように、本発明による例S2、S4およびS5では、比較例V1と同様に低い剥離値を実現できる。しかし、S2、S4、S5およびV1をベースとするコーティングの欠点は、下地への付着性(ラブオフ)が低いことにある。しかしこれは、慣用の付着成分、ここではTEGO(登録商標)RC 711の添加により、他の特性(TWおよびKUR)に悪影響を及ぼすことなく大幅に改善することができる(コーティング例S2a、S4a、S5aおよびV1a)。
【0128】
本発明による2つの例S1およびS3は、追加の付着成分なしでもすでに良好な付着性をもたらす。これらの剥離値は、特に剥離挙動が容易であることが重視される用途には、若干高すぎる。しかし、この剥離挙動が好まれる特別な用途も存在する。さらに、例S2/1、S2/3、S4/1、S4/3、S5/1およびS5/3から明らかなように、S1およびS2は、付着成分としてのその機能の点でTEGO(登録商標)RC 711の代替物として機能し得る。
【0129】
本発明による例はいずれも、短時間残留接着力(KUR)から明らかなように、良好な硬化を示す。したがって、本発明により製造された成分は、剥離コーティングに使用するためのすべての重要な要件を満たしている。これらは、それぞれの系に合わせて、付着成分としても、低い剥離値を有する成分としても使用することができる。
前記少なくとも1つのアセトキシシリコーンのアセトキシ基に対する前記少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基のモル比が、少なくとも1.00である、請求項1から5までのいずれか1項記載のシリコーン(メタ)アクリレートの製造方法。