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特開2024-26252B型肝炎感染症の治療用のPAPD5阻害剤及びPAPD7阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026252
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】B型肝炎感染症の治療用のPAPD5阻害剤及びPAPD7阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20240220BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20240220BHJP
   C07K 16/40 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P43/00 111
A61K31/519
A61K31/4375
A61K39/395 D
A61K45/06
A61P43/00 121
A61P31/20
A61K39/395 S
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
C12N9/12
C12Q1/02
C07K16/40
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204150
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2021179533の分割
【原出願日】2017-06-19
(31)【優先権主張番号】16175045.0
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ハン シンチュン
(72)【発明者】
【氏名】ハッサン ジャバンベイクト
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリック ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヨンコアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ソン
(57)【要約】
【課題】本発明はB型肝炎ウイルス(HBV)感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物を特定するための方法の提供。
【解決手段】HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物として(i)PAP関連ドメイン含有タンパク質5(PAPD5)及び/又はPAP関連ドメイン含有タンパク質7(PAPD7)の発現及び/又は活性を低下させ、且つ/又は(ii)PAPD5及び/又はPAPD7に結合し、そしてHBVの増殖を阻害する化合物が特定される前記方法に関する。本発明はHBV感染症の治療及び/又は予防に使用するためのPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤、並びにHBV感染症の治療及び/又は予防に同時又は順次使用するためのPAPD5の阻害剤とPAPD7の阻害剤を含む混合製剤も提供する。HBV感染症の治療及び/又は予防に使用するための医薬組成物、並びにHBV感染症の治療中に治療成果を監視するための方法も本発明に含まれる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物を特定するための方法であって、
(a)被験化合物を次のものと接触させること、
(i)PAP関連ドメイン含有タンパク質5(PAPD5)ポリペプチド及び/若しくはPAP関連ドメイン含有タンパク質7(PAPD7)ポリペプチド、又は
(ii)PAPD5及び/又はPAPD7を発現する細胞、
(b)前記被験化合物が存在する状態と存在しない状態でPAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を測定すること、及び
(c)HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物としてPAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を低下させる化合物を特定すること
を含む前記方法。
【請求項2】
HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物を特定するための方法であって、
(a)被験化合物を次のものと接触させること、
(i)PAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチド、又は
(ii)PAPD5及び/又はPAPD7を発現する細胞、
(b)前記被験化合物がPAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドに結合するか測定すること、
(c)前記被験化合物がHBVの増殖を阻害するか測定すること、及び
(d)HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物としてPAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドに結合し、且つ、HBVの増殖を阻害する化合物を特定すること
を含む前記方法。
【請求項3】
前記PAPD5ポリペプチドが
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列、
(b)少なくとも80%の同一性を(a)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列、
(c)配列番号1又は2の酵素活性断片のアミノ酸配列、又は
(d)少なくとも80%の同一性を(c)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列
を含む、又は前記アミノ酸配列から成る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記PAPD7ポリペプチドが
(a)配列番号3のアミノ酸配列、
(b)少なくとも80%の同一性を(a)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列、
(c)配列番号3の酵素活性断片のアミノ酸配列、又は
(d)少なくとも80%の同一性を(c)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列
を含む、又は前記アミノ酸配列から成る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
HBVの増殖を阻害する前記化合物がHBV表面抗原(HBsAg)の分泌を阻害し、且つ/又はHBVエンベロープ抗原(HBeAg)の分泌を阻害し、且つ/又は細胞内HBV mRNA若しくはHBV DNAの生産を阻害する、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
PAPD5及びPAPD7の活性がポリAポリメラーゼ機能である、請求項1及び3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
HBV感染症の治療及び/又は予防に使用するためのPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤であって、
(a)PAPD5及び/又はPAPD7に結合する小分子、又は
(b)PAPD5及び/又はPAPD7に特異的に結合する抗体
である前記阻害剤。
【請求項8】
(a)PAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドに結合し、且つ/又は
(b)PAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を阻害する
請求項7に記載の使用のための阻害剤。
【請求項9】
前記阻害剤によってHBsAg及びHBeAgの分泌が減少する、請求項7又は8に記載の使用のための阻害剤。
【請求項10】
前記阻害剤によって慢性HBV感染症の発症が抑制され、且つ/又はHBV感染者の感染性が低下する、請求項7~9のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【請求項11】
前記阻害剤が式(I)の化合物
【化1】
であって、式中
1が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、又はC1~6アルコキシであり、
2が水素;ハロゲン;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルコキシ;シアノ;C3~7シクロアルキル;ヒドロキシ又はフェニル-Cx2x-O-であり、
3が水素;ハロゲン;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;シアノ;ピロリジニル;アミノ;フェニル-Cx2x-N(C1~6アルキル)-;C1~6アルコキシカルボニル-ピペラジニル;又はR7が水素;非置換型であるか、若しくはフルオロ、ヒドロキシ、及びC2~6アルケニルから独立して選択される1~3個の置換基で置換されているC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルコキシC1~6アルキル;アミノC1~8アルキル;C1~6アルキルカルボニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルホニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル;C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル;シアノC1~6アルキル;C3~7シクロアルキルC1~6アルキル;シアノC3~7シクロアルキルC1~6アルキル;フェニルC1~6アルキル;ピロリジニルカルボニルC1~6アルキル;C2~6アルキニル;ヒドロキシC1~6アルキルC2~6アルキニル;アミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;ジC1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;カルボキシC1~6アルキル;若しくはC1~6アルコキシカルボニルアミノC1~8アルキル;ヘテロアリールがN含有単環式ヘテロアリールであるヘテロアリールC1~6アルキル;若しくはヘテロシクロアルキルが単環式ヘテロシクロアルキルであるヘテロシクロアルキルC1~6アルキルであるR7-O-であり、
4が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、シアノ、又はC1~6アルコキシであり、
ただしR1、R2、R3、及びR4が同時に水素ではないことを条件とし、
5が水素又はC1~6アルキルであり、
6が水素;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;非置換型であるか、又はフルオロ若しくはC1~6アルキルによって1回、2回、又は3回置換されているC3~7シクロアルキル;又はフェニル-Cx2x-であり、xが1~6である、
請求項7~10のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【請求項12】
前記阻害剤が式(II)の化合物
【化2】
であって、式中
1がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロC1~6アルキル、ヒドロキシC1~6アルキル、ニトロC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルC1~6アルキル、カルボキシC1~6アルキル、ジ(C1~6アルコキシカルボニル)メチレニル、シアノC1~6アルキル、C3~7シクロアルキルC1~6アルキル、フェニルC1~6アルキル、C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル、C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルスルホニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~6アルキル、アミノカルボニルC1~6アルキル、ジC1~6アルキルアミノカルボニルC1~6アルキル、単環式ヘテロシクロアルキルC1~6アルキル、又はイミダゾリルC1~6アルキルであり、
2がアリール又はヘテロアリールであり、前記アリール又はヘテロアリールが非置換型であるか、又はC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、ハロC1~6アルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、ハロC1~6アルコキシ、-O-Cx2x-R3、-O-Cy2y-NHR6、-NR910、-SO2-R11、-SO2-NR1213、カルボキシ、C1~6アルコキシカルボニル、-C(=O)-NR1213、アリール、ヘテロアリール、単環式ヘテロシクロアルキル、及び-O-単環式ヘテロシクロアルキルから独立して選択される1個、2個、3個、又は4個、の置換基で置換されており、その場合に単環式ヘテロシクロアルキルは非置換型であるか、又はC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、若しくはC1~6アルコキシカルボニルによって置換されており、
3が水素;C3~7シクロアルキル;ハロC3~7シクロアルキル;ヒドロキシ;ヒドロキシC1~6アルキルC3~7シクロアルキル;C1~6アルコキシ;単環式ヘテロシクロアルキル;C1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキル、又はC1~6アルコキシカルボニルによって置換されている単環式ヘテロシクロアルキル;-C(=O)-R4;C1~6アルキルスルフィニル;-SO2-R5;-C(NHR7)-C(=O)-R8;カルボキシC1~6アルコキシ、又はアミノカルボニルC1~6アルコキシであり、
4がヒドロキシ、C1~6アルコキシ、アミノ、C1~6アルキルアミノ、ジC1~6アルキルアミノ、テトラヒドロフラニルアミノ、ピロリジニル、又はモルホリニルであり、
5がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、C1~6アルキルアミノ、又はジC1~6アルキルアミノであり、
7が水素又はC1~6アルコキシカルボニルであり、
8がヒドロキシ又はC1~6アルコキシであり、
6が水素、C1~6アルキルカルボニル、ハロC1~6アルキルカルボニル、C1~6アルコキシカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキルスルホニル、又はC1~6アルコキシC1~6アルキルスルホニルであり、
9及びR10が水素、C1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキルカルボニル、及びC3~7シクロアルキルスルホニルから独立して選択され、又は
9及びR10が結合している窒素と一緒にそれらが単環式ヘテロシクロアルキルを形成し、
11がC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロC3~7シクロアルキル、ヒドロキシC1~6アルキル、C1~6アルコキシC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシC1~6アルキル、C3~7シクロアルキルC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、C1~6アルキルアミノC1~6アルキル、ジC1~6アルキルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルスルホニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルスルフェニルC1~6アルキル、C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル、又はC1~6アルキルスルホニルC1~6アルキルであり、
12及びR13が水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、及びハロC3~7シクロアルキルから独立して選択され、又は
12及びR13が結合している窒素と一緒にそれらが単環式ヘテロシクロアルキルを形成し、
xが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
yが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
U、W、及びZがCH及びNから独立して選択され、
X及びYのうちの一方がNであり、他方がCH又はNである、
請求項7~10のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【請求項13】
前記阻害剤が配列番号7、8、又は9のうちのいずれか1つのアミノ酸伸長物に特異的に結合する抗体である、請求項7~10のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【請求項14】
HBV感染症の治療及び/又は予防に同時又は順次使用するためのPAPD5の阻害剤とPAPD7の阻害剤を含む混合製剤。
【請求項15】
HBV感染症の治療及び/又は予防に使用するための医薬組成物であって、
(a)請求項7~13のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤、又は請求項14に記載の混合製剤、及び
(b)薬学的に許容可能な担体
を含む前記医薬組成物。
【請求項16】
HBV感染症の治療中に治療成果を監視するための方法であって、
(a)検査対象から得られた試料においてPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性を分析すること、
(b)少なくとも1人の基準対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性に対応する基準データと前記量及び/又は活性を比較すること、及び
(c)工程(b)の比較に基づいて治療成果を予測すること
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はB型肝炎ウイルス(HBV)感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物を特定するための方法であって、HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物として(i)PAP関連ドメイン含有タンパク質5(PAPD5)及び/又はPAP関連ドメイン含有タンパク質7(PAPD7)の発現及び/又は活性を低下させ、且つ/又は(ii)PAPD5及び/又はPAPD7に結合し、そしてHBVの増殖を阻害する化合物が特定される前記方法に関する。本発明はHBV感染症の治療及び/又は予防に使用するためのPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤、並びにHBV感染症の治療及び/又は予防に同時又は順次使用するためのPAPD5の阻害剤とPAPD7の阻害剤を含む混合製剤も提供する。HBV感染症の治療及び/又は予防に使用するための医薬組成物、並びにHBV感染症の治療中に治療成果を監視するための方法も本発明に含まれる。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(HBV)はエンベロープ型部分二本鎖DNAウイルスである。小さな3.2kbのHBVゲノムは4つの重複性オープン・リーディング・フレーム(ORF)から構成され、それらのオープン・リーディング・フレームはコア、ポリメラーゼ(Pol)、エンベロープ、及びXタンパク質をコードする。Pol ORFが最長であり、エンベロープORFがその内側に位置する一方でX ORFとコアORFはPol ORFと重複する。HBVのライフサイクルには2つの主要な現象、すなわち(1)弛緩環型DNA(RC DNA)からの閉環型DNA(cccDNA)の生成と(2)RC DNAを生産するためのプレゲノムRNA(pgRNA)の逆転写がある。宿主細胞の感染の前ではHBVゲノムはRC DNAとしてビリオン内に存在する。ヒト肝細胞の表面上に存在する負に帯電したプロテオグリカンへの非特異的結合(Schulze, Hepatology, 46, (2007), 1759-68)と肝細胞 ナトリウム/タウロコール酸 共輸送 ポリペプチド (NTCP) 受容体へのHBV表面抗原(HBsAg)の特異的結合(Yan, J Virol, 87, (2013), 7977-91)によってHBVビリオンは宿主細胞に侵入することができるとされている。ウイルス感染症の抑制は、感染後数分以内から数時間までに応答してそのウイルスの初期増殖に打撃を与え、そして慢性、且つ、持続性の感染症の発症を限定することが可能である宿主自然免疫系による厳重な監視を必要とする。IFNとヌクレオシド/ヌクレオチド類似体に基づく現行の治療法が利用可能であるにもかかわらず、HBV感染症は肝硬変及び肝細胞癌のリスクが比較的に高い推計3億5000万人の慢性保因者に関わる世界的な健康上の大問題のままである。
【0003】
HBV感染に応じた肝細胞及び/又は肝内免疫細胞による抗ウイルス性サイトカインの分泌は感染した肝臓によるウイルス除去において中心的な役割を果たす。しかしながら慢性感染患者は宿主細胞の認識系と後続の抗ウイルス応答に対抗するためにウイルスが採用した様々な回避戦略のせいで弱い免疫応答しか示せない。
【0004】
幾つかのHBVウイルスタンパク質がウイルス認識シグナル伝達系に干渉し、後にインターフェロン(IFN)抗ウイルス活性を妨害することにより初期の宿主細胞応答に対抗可能であることが多数の観察により示された。これらの中でもHBV空サブウイルス粒子(SVP、HBsAg)の過剰分泌が慢性感染患者(CHB)に観察される免疫寛容状態の維持に関与すると考えられている。HBsAg及び他のウイルス抗原への持続的曝露はHBV特異的なT細胞の欠損又は漸進的機能障害を引き起こし得る(Kondo, Journal of Immunology (1993), 150, 4659-4671; Kondo, Journal of Medical Virology (2004), 74, 425-433; Fisicaro, Gastroenterology, (2010), 138, 682-93)。また、HBsAgは直接的な相互作用によって単球、樹状細胞(DC)、及びナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞の機能を抑制することが報告されている(Op den Brouw, Immunology, (2009b), 126, 280-9; Woltman, PLoS One, (2011), 6, e15324; Shi, J Viral Hepat. (2012), 19, e26-33; Kondo, ISRN Gasteroenterology, (2013), Article ID 935295)。
【0005】
HBsAgの定量は慢性B型肝炎における予後と治療応答についての重要なバイオマーカーである。しかしながらHBsAgの消失とセロコンバージョンの達成が慢性感染患者において観察されることは稀であり、最終的な治療目標のうちの1つであり続ける。ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体などの現行の治療法はHBVのDNA合成を阻害する分子であり、HBsAgレベルを低下させることを目的としていない。長期の治療であってもヌクレオシド/ヌクレオチド類似体では自然に観察されるクリアランス(約1%~2%の間)と同等の弱いHBsAgクリアランスしか示されない(Janssen, Lancet, (2005), 365, 123-9; Marcellin, N. Engl. J. Med., (2004), 351, 1206-17; Buster, Hepatology, (2007), 46, 388-94)。
【0006】
B型肝炎ウイルスe抗原(HBVエンベロープ抗原又はHBeAgとも呼ばれる)はB型肝炎ウイルス感染細胞が分泌するウイルスタンパク質である。HBeAgは慢性B型肝炎感染症に関連し、活性型ウイルス疾患と患者の感染性の程度のマーカーとして使用される。
【0007】
B型肝炎ウイルスのプレコア又はHBeAgの機能は完全には分かっていない。しかしながらHBeAgはウイルスの持続に重要な役割を果たすことがよく知られている。HBeAgは免疫調節性タンパク質として機能することによりHBVの慢性化を促進すると考えられている。具体的にはHBeAgは分泌型補助タンパク質であり、細胞内ヌクレオカプシドタンパク質に対する宿主免疫応答を減弱するようである(Walsh, Virology, 2011, 411(1):132-141)。HBeAgはHBVの存続に寄与する免疫寛容原として作用し、可溶性HBeAgが胎盤を通過することを考慮するとおそらく子宮内で機能する(Walsh, Virology, 2011, 411(1):132-141)。さらに、HBeAgはウイルス感染に対する自然免疫応答を弱めるために(i)細胞内シグナル伝達を制御する細胞遺伝子、及び(ii)Toll様受容体2(TLR-2)を下方制御する(Walsh, Virology, 2011, 411(1):132-141)。HBeAgが存在しない状態ではHBVの複製にはTLR2経路の上方制御が伴う(Walsh, Virology, 2011, 411(1):132-141)。よって、HBeAgは宿主免疫応答に影響を与えるためにウイルス宿主間相互作用の調節に重要な役割を有する(Walsh, Virology, 2011, 411(1):132-141)。したがって、HBeAg陽性患者集団においてHBeAgを減少させることがHBV特異的免疫機能不全の反転につながる場合がある(Milich, 1997, J. Viral. Hep. 4: 48-59; Milich, 1998, J. Immunol. 160: 2013-2021)。加えて、分泌されたHBeAgはT細胞寛容の誘発、及びHBeAgと細胞内肝炎コア抗原(HBcAg)との間での解離T細胞寛容の誘発の点でHBcAgよりも著しく有能であり、HBc/HBeAg特異的T細胞寛容のクローン間での不均一性が自然的HBV感染に対して、特にプレコア陰性慢性肝炎に対して重大な意味を持つ可能性がある(Chen, 2005, Journal of Virology, 79: 3016-3027)。
【0008】
したがって、HBsAgの分泌に加えてHBeAgの分泌を減少させることでHBsAgの分泌の阻害だけと比べて慢性HBV感染症の発症の抑制が改善されることになる。加えて、HBeAg陽性の母親に由来する母胎間HBV伝播及び新生児HBV伝播の場合に最も高い率の急性から慢性の感染症の伝播(80%超)が報告されている(Liaw, Lancet, 2009, 373: 582-592; Liaw, Dig. Dis. Sci., 2010, 55: 2727-2734;及びHadziyannis, 2011, Journal of hepatology, 55: 183-191)。したがって、母親になる女性においてHBeAgを減少させることがその患者の感染性を低下させるだけではなく、その女性の子供での慢性HBV感染症の発症も抑制する可能性がある。
【0009】
したがって、HBVの治療にはウイルスの発現、特にHBsAg及びHBeAgの分泌を阻害するという実現されていない医学上の要求が存在する(Wieland, S. F. & F. V. Chisari. J Virol, (2005), 79, 9369-80; Kumar et al. J Virol, (2011), 85, 987-95; Woltman et al. PLoS One, (2011), 6, e15324; Op den Brouw et al. Immunology, (2009b), 126, 280-9)。
【0010】
国際公開第03/022987号パンフレットはC型肝炎陽性組織において上方制御される1298種類の遺伝子を例えば表7Aにおいて開示している。前述の遺伝子のうちの1つはトポイソメラーゼ関連機能タンパク質4(TRF4、AF089897)である。AF089897はTRF4-2とも呼ばれ、本明細書中の配列番号4の位置880~2340に極めてよく似ている。C型肝炎陽性細胞ではPAPD5の断片はわずかにしか上方制御されないという観察結果はPAPD5の阻害が有効な治療法であるということをいくらかでも示すものではない。国際公開第03/022987(A2)号パンフレットはC型肝炎の感染にPAPD5の断片が何らかの重要な役割を果たすというどんな示唆も全く開示していない。加えて、HCV及びHBVは、異なる病因、異なる進行、及び異なる薬物治療を伴う2つの完全に異なる疾患を引き起こす2種類の完全に異なるウイルスである。このことは、PAPD5とPAPD7の阻害剤であるDHQとTHPがC型肝炎ウイルス(HCV)、又はHBV以外の他のウイルスに対しては不活性である(データを示さず)という本発明者らの観察結果と一致する。
【0011】
国際公開第2010/040571号パンフレットでは何らかの実際の証拠が提供されているわけではないが代謝性疾患及び腫瘍状疾患において潜在的な役割を細胞増殖に有する他の遺伝子の長いリストの中にPAPD5が示唆されている。
【0012】
国際公開第2013/166264号パンフレットでは何らかの実際の証拠が提供されているわけではないが代謝性疾患及び腫瘍状疾患において潜在的な役割をウイルス複製の増加に有する他の遺伝子の長いリストの中にPAPD5が示唆されている。
【0013】
国際公開第2017/066712号パンフレットにはテロメア疾患の治療と診断に関してPAPD5の下方制御のことが記載されている。この目的のために5種類のshRNA構造体が説明されている。
【0014】
我々の知る限り、PAPD5又はPAPD7の発現はこれまでにHBVの感染と関連付けられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の根底にある技術的課題はHBV感染症の治療及び/又は予防のために改善された手段と方法を特定し、且つ、提供することである。
【0016】
その技術的課題は本明細書に記載され、且つ、特許請求の範囲において特徴が述べられる実施形態の提示によって解決される。
【0017】
本発明の1つの態様はスクリーニング方法、具体的にはHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物を特定するための方法であって、
(a)被験化合物を次のものと接触させること、
(a1)PAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチド、又は
(a2)PAPD5及び/又はPAPD7を発現する細胞、
(b)前記被験化合物が存在する状態と存在しない状態でPAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を測定すること、及び
(c)HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物としてPAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を低下させる化合物を特定すること
を含む前記方法に関する。
【0018】
本発明の追加の態様はHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物を特定するための方法であって、
(a)被験化合物を次のものと接触させること、
(i)PAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチド、又は
(ii)PAPD5及び/又はPAPD7を発現する細胞、
(b)前記被験化合物がPAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドに結合するか測定すること、
(c)前記被験化合物がHBVの増殖を阻害するか測定すること、及び
(d)HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物としてPAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドに結合し、且つ、HBVの増殖を阻害する化合物を特定すること
を含む前記方法である。
【0019】
本発明の追加の態様はHBV感染症の治療及び/又は予防に使用するためのPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤であって、前記阻害剤は
(a)PAPD5及び/又はPAPD7に結合する小分子、又は
(b)PAPD5及び/又はPAPD7に特異的に結合する抗体
である。
【0020】
HBVの治療又は予防に使用するための前記阻害剤は式(I)又は(II)の化合物から選択され得る。具体的には式(III)及び(IV)の阻害剤が本発明において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】HBX129653/HBX129654化学プローブと3種類のプレイ断片を使用する1対1実験の図である。
図2】HBX129653/HBX129654化学プローブとPAPD5/7全長タンパク質を使用する1対1実験の図である。
図3】競合のためにHBX129653(DHQ)とMOL653/654を使用する競合アッセイの図である。
図4】競合のためにHBX129654(THP)とMOL653/654を使用する競合アッセイの図である。
図5】競合のためにHBX129653(DHQ)とINACT653/INACT654を使用する競合アッセイの図である。MOL653を陽性対照として含めた。
図6】競合のためにHBX129654(THP)とINACT653/INACT654を使用する競合アッセイの図である。MOL653を陽性対照として含めた。
図7】(A)HBV感染dHepaRGにおけるPAPD5及びPAPD7のsiRNAノックダウン(KD)によってHBV発現が低下することを示す図である。HepaRG分化細胞にHBVを感染させ、HBVの感染1日前と感染4日後にPAPD5、PAPD7、又はそれらの両方のいずれかに対するsiRNA(25nMずつ)で処理した。上清を11日目に採取し、上清中に分泌されたHBsAgとHBeAgのレベルをELISAによって測定し、そして非処理対照に対して正規化した。その後、細胞毒性及び遺伝子発現の阻害を測定し、これらも非処理対照に対して正規化した。(B)上清中に分泌されたHBsAgのレベルだけを測定したことを除いて(A)において説明された実験と同じ実験を実施したことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
PAPD5及びPAPD7はポリメラーゼβ様ヌクレオチジルトランスフェラーゼスーパーファミリーに属する非標準型ポリ(A)ポリメラーゼである。本発明の背景において、被験化合物がPAPD5及び/又はPAPD7を阻害するかどうか分析することによりHBV感染症の治療介入に有用な化合物の特定に成功し得ることが驚くべきことに示されている。また、換言するとPAPD5及び/又はPAPD7の阻害がHBV感染症を抑制する化合物の効力についての指標であると添付実施例において確認された。それらの添付実施例は(本明細書においてDHQと呼ばれる)本明細書において以下に示される式(III)を有するジヒドロキノリジノン化合物と(本明細書においてTHPと呼ばれる)本明細書において以下に示される式(IV)を有するテトラヒドロピリドピリミジン化合物がPAPD5ポリペプチドとPAPD7ポリペプチドに結合することを実証している。これらの化合物はHBV感染中にHBV表面抗原(HBsAg)の生産とHBV RNAの発現を阻害する能力を有する(国際公開第2015/113990(A1)号パンフレット及び国際公開第2016/177655号パンフレット)。加えて、それらの添付実施例はsiRNAの使用によるPAPD5及び/又はPAPD7の阻害によってウイルス発現の阻害、特にHBsAg及びHBeAgの分泌の阻害、並びに細胞内HBV mRNA生産の阻害が引き起こされることを示している。これらの結果はPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性(例えば量)を減少させることによってHBV感染症(例えば慢性HBV感染症)が予防又は治療(すなわち、改善及び/又は抑制)され得ることを直接的に示している。したがって、本発明はHBV感染症を予防及び/又は治療(すなわち、改善及び/又は抑制)する化合物としてPAPD5及び/又はPAPD7(例えばPAPD5及びPAPD7)の発現及び/又は活性(例えば発現)を低下させる化合物が特定されるスクリーニング方法に関する。
【0023】
PAPD5及び/又はPAPD7に対抗する(すなわち阻害する)化合物によってHBVの遺伝子発現と複製が阻害され、そうしてHBV感染症が予防、改善、及び/又は抑制されることが本発明の背景において分かっている。そのような化合物はPAPD5及び/又はPAPD7発現及び/又は活性の10~100%、好ましくは20~100%、より好ましくは30~100%、さらにより好ましくは40~100%、さらにより好ましくは50~100%、さらにより好ましくは60~100%、さらにより好ましくは70~100%、さらにより好ましくは80~100%、及び最も好ましくは90~100%の低下を引き起こし得る。
【0024】
本明細書において提供されるスクリーニング方法では工程(a)においてPAPD5及び/又はPAPD7を発現する細胞、すなわち(ai)を使用することによりPAPD5及び/又はPAPD7の発現を測定(すなわち分析/決定)することを企図している。工程(a)において(ai)例えば無細胞調製物中のPAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチド、又は(aii)PAPD5及び/又はPAPD7を発現する細胞のどちらかを使用することでPAPD5及び/又はPAPD7の活性が測定(すなわち分析/決定)され得る。
【0025】
本発明の1つの態様ではPAPD5及び/又はPAPD7の発現(例えばPAPD5の発現、好ましくはPAPD5及びPAPD7の発現)を低下させる化合物がHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制(すなわち治療)する化合物として特定される。本発明の別の態様ではPAPD5及び/又はPAPD7の活性(例えばPAPD5の活性、好ましくはPAPD5及びPAPD7の活性)を低下させる化合物がHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制(すなわち治療)する化合物として特定される。PAPD5の発現及び/又は活性、又は両方の分子、すなわちPAPD5及びPAPD7の発現及び/又は活性を低下させる化合物がHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物として特定されることを優先する。両方の分子、すなわちPAPD5及びPAPD7の発現及び/又は活性を低下させる化合物がHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物として特定されることが最も好ましい。
【0026】
本発明に従うとPAPD5及び/又はPAPD7に結合する化合物を特定するために第1の予備選択工程を実施することによってHBV感染症を予防及び/又は治療(すなわち、改善及び/又は抑制)する化合物を特定(すなわち選択)することができる。後に第2工程においてPAPD5及び/又はPAPD7に結合するとして特定された化合物がHBVの増殖を阻害するか評価され得る。したがって、本発明はPAPD5及び/又はPAPD7(例えばPAPD5及びPAPD7)に結合し、且つ、HBVの増殖を阻害する化合物がHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制(すなわち治療)する化合物として特定される追加のスクリーニング方法に関する。
【0027】
したがって、本発明はHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物を特定するための方法であって、
(a)被験化合物を次のものと接触させること、
(ai)PAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチド、又は
(aii)PAPD5及び/又はPAPD7を発現する細胞、
(b)前記被験化合物がPAPD5及び/又はPAPD7に結合するか測定すること、
(c)前記被験化合物がHBVの増殖を阻害するか測定すること、及び
(d)HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物としてPAPD5及び/又はPAPD7に結合し、且つ、HBVの増殖を阻害する化合物を特定すること
を含む前記方法に関する。
【0028】
したがって、本発明に従うとPAPD5及び/又はPAPD7(例えばPAPD5、好ましくはPAPD5及びPAPD7)に結合し、且つ、HBVの増殖を阻害する化合物がHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制(すなわち治療)する化合物として特定される。(i)PAPD5に結合するか、又は両方の分子、すなわちPAPD5及びPAPD7に結合し、且つ、(ii)HBVの増殖を阻害する化合物がHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物として特定されることを優先する。両方の分子、すなわちPAPD5及びPAPD7に結合し、且つ、HBVの増殖を阻害する化合物がHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物として特定されることが最も好ましい。
【0029】
上記のスクリーニング方法によってHBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物が特定される。前記化合物によってHBV感染症が改善及び/又は抑制(すなわち治療)されることを優先する。したがって、本明細書において提供されるスクリーニング方法はHBV感染症を治療する化合物の特定に有用である。
【0030】
本発明の背景ではPAPD5はPAPD5ポリペプチド又はPAPD5 mRNAであり得る。PAPD5がPAPD5ポリペプチドであることが本明細書において提供されるスクリーニング方法の背景では優先される。本発明の1つの態様は本明細書において提供されるスクリーニング方法であって、前記PAPD5ポリペプチドが
(a)配列番号1又は2のアミノ酸配列、
(b)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を(a)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列、
(c)配列番号1又は2の酵素活性断片のアミノ酸配列、又は
(d)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を(d)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列
を含む、又は前記アミノ酸配列から成るポリペプチドである前記スクリーニング方法に関する。
【0031】
配列番号1又は2(すなわちPAPD5)の酵素活性断片の例は配列番号1又は2の位置145~256にあるヌクレオチジルトランスフェラーゼドメイン、又は配列番号1又は2の位置308~368にあるCid1ポリAポリメラーゼである。
【0032】
本発明の別の態様は本明細書において提供されるスクリーニング方法であって、PAPD5を発現する前記細胞がPAPD5 mRNA、
(i)配列番号1又は2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
(ii)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号1又は2に対して有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドがそのポリヌクレオチドによってコードされる前記ヌクレオチド配列、
(iii)配列番号1又は2の酵素活性断片をコードするヌクレオチド配列、
(iv)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号1又は2の酵素活性断片のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドがそのポリヌクレオチドによってコードされる前記ヌクレオチド配列、
(v)配列番号4又は5を含む、又は前記配列番号から成るヌクレオチド配列、又は
(vi)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号4又は5に対して有するヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドを発現する前記配列、又は
(vii)プロセッシング(すなわちスプライシング)を受けると(v)又は(vi)のポリヌクレオチドになるプレmRNA
を含む、又は前記ヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチドを含有する前記スクリーニング方法に関する。
【0033】
好ましい実施形態では前記PAPD5 mRNAは配列番号4又は5のヌクレオチド配列を含む、又は前記ヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチドであり得る。しかしながら前記PAPD5 mRNAは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号4又は5に対して有するヌクレオチド配列を含む、又は前記ヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチドであって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドであってもよい。
【0034】
本発明の背景ではPAPD7はPAPD7ポリペプチド又はPAPD7 mRNAであり得る。PAPD7がPAPD7ポリペプチドであることが本明細書において提供されるスクリーニング方法の背景では優先される。本発明の1つの態様は本明細書において提供されるスクリーニング方法であって、前記PAPD7ポリペプチドが
(a)配列番号3のアミノ酸配列、
(b)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を(a)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列、
(c)配列番号3の酵素活性断片のアミノ酸配列、又は
(d)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を(c)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列
を含む、又は前記アミノ酸配列から成るポリペプチドである前記スクリーニング方法に関する。
【0035】
配列番号3(すなわちPAPD7)の酵素活性断片の例は配列番号3の位置15~125にあるヌクレオチジルトランスフェラーゼドメイン、又は配列番号3の位置178~238にあるCid1ファミリーポリAポリメラーゼである。
【0036】
本発明の別の態様は本明細書において提供されるスクリーニング方法であって、PAPD7を発現する前記細胞がPAPD7 mRNA、
(i)配列番号3のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
(ii)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号3に対して有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドがそのポリヌクレオチドによってコードされる前記ヌクレオチド配列、
(iii)配列番号3の酵素活性断片をコードするヌクレオチド配列、又は
(iv)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号3の酵素活性断片のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドがそのポリヌクレオチドによってコードされる前記ヌクレオチド配列、又は
(v)配列番号6を含む、又は前記配列番号から成るヌクレオチド配列、又は
(vi)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号6に対して有するヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドを発現する前記配列、又は
(vii)プロセッシング(すなわちスプライシング)を受けると(v)又は(vi)のポリヌクレオチドになるプレmRNA
を含む、又は前記ヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチドを含有する前記スクリーニング方法に関する。
【0037】
好ましい実施形態では前記PAPD7 mRNAは配列番号6のヌクレオチド配列を含む、又は前記ヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチドであり得る。しかしながら前記PAPD7 mRNAは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号6に対して有するヌクレオチド配列を含む、又は前記ヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチドであって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドであってもよい。
【0038】
本発明の背景では前記細胞は真核細胞であり得る。例えば、前記細胞は酵母細胞又は脊椎動物細胞であり得る。脊椎動物細胞には魚類、鳥類、爬虫類、両生類、有袋類、及び哺乳類の細胞が含まれ得る。前記細胞は哺乳類細胞であることが好ましく、ヒト細胞であることが最も好ましい。哺乳類細胞にはネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、マウス及びラットなどのネズミ、及びウサギの細胞も含まれる。本明細書において提供されるスクリーニング方法では前記「細胞」はPAPD5及び/又はPAPD7を内因的に発現するか、PAPD5及び/又はPAPD7を過剰に発現する場合がある。PAPD5及び/又はPAPD7の過剰発現のために前記細胞は発現ベクター内にPAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでよい。好ましい実施形態では前記細胞はPAPD5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とPAPD7ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。本明細書において提供されるスクリーニング方法の細胞は非ヒト動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、又はフェレットに含まれる場合がある。
【0039】
PAPD5及び/又はPAPD7への結合が測定される上記のスクリーニング方法では化合物は特定の結合親和性をPAPD5及び/又はPAPD7に対して有する場合にPAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドに結合する化合物として特定され得る。例えば、PAPD5及び/又はPAPD7に結合するその化合物はマイクロモル濃度範囲、又は好ましくは100nM~1pMの範囲の解離定数(Kd)を有する場合がある。
【0040】
本発明の背景では前記被験化合物がPAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドに特異的に結合するか、すなわち前記被験化合物が専ら、又は主にPAPAD5及び/又はPAPD7に結合するか測定(すなわち分析)される場合がある。例えば、前記被験化合物がPAPD7に特異的に結合するか測定される場合がある。前記被験化合物がPAPD5に特異的に結合するか測定されることが好ましい。前記被験化合物がPAPD5とPAPD7の両方に結合するか測定することがより好ましい。例えば、前記被験化合物がPAPD5及びPAPD7に特異的に結合するか測定される場合がある。
【0041】
例えば、本明細書において提供されるスクリーニング方法では前記被験化合物のPAPD5及び/又はPAPD7への結合はイースト3ハイブリッドスクリーンを実施することで測定され得る。Y3Hシステムは薬物タンパク質間相互作用の検出に適合させた改変版のイースト2ハイブリッド(Y2H)システムである。そのシステムは酵母細胞内部のDNA結合タンパク質に固定可能であるリガンドと目的の薬品の結合を必要とする。その後、それらの結合をレポーター遺伝子の転写活性化に関連付けることにより標的タンパク質との固定化薬品の相互作用が検出される。例えばJohnsson, Nature Chem Bio, 2011, 7: 375-383;及びLicitra, Proc Natl Acad Sci U S A, 1996, 12; 93(23):12817-21を参照されたい。そのようなイースト3ハイブリッドスクリーンでは標識された被験化合物に対する競合のために不活性型遊離化合物を使用する場合がある。
【0042】
Biacore、ケモプロテオミクス、又はマイクロスケール熱泳動を用いて被験化合物のPAPD5及び/又はPAPD7への結合が測定される場合もある。
【0043】
HBVの増殖を阻害する化合物はウイルスRNAの発現を低下させ、ウイルスRNA(HBV RNA)に由来するウイルスDNA(HBV DNA)の生産を減少させ、新しいウイルス粒子(HBV粒子)の生産を減少させ、且つ/又はHBsAg及び/若しくはHBeAgの生産及び/若しくは分泌をもたらす化合物であり得る。したがって、本発明の1つの態様は本明細書において提供されるスクリーニング方法であって、HBVの増殖を阻害する前記化合物によってHBsAgの分泌が阻害され、HBeAgの分泌が阻害され、且つ/又は細胞内HBV mRNA若しくはHBV DNAの生産が阻害される前記スクリーニング方法に関する。HBVの増殖を阻害する化合物はHBsAgの分泌、HBeAgの分泌、及び細胞内HBV mRNAの生産を阻害する化合物であることが好ましい。
【0044】
例えば、HBVの増殖を阻害する化合物は未処理の細胞若しくは動物、又は適切な対照で処理された細胞若しくは動物を比較したときにウイルスRNA(HBV RNA)の発現、ウイルスRNAに由来するウイルスDNA(HBV DNA)の生産、新しいウイルス粒子(HBV粒子)の生産、HBsAg及び/又はHBeAgの生産、及び/又はHBsAg及び/又はHBeAgの分泌を10~100%、好ましくは20~100%、より好ましくは30~100%、さらにより好ましくは40~100%、さらにより好ましくは50~100%、さらにより好ましくは60~100%、さらにより好ましくは70~100%、さらにより好ましくは80~100%、及び最も好ましくは90~100%減少させ得る。
【0045】
本明細書において提供されるスクリーニング方法は前記被験化合物を対照と比較する工程をさらに含んでよい。前記対照は不活性被験化合物であって、
(i)PAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を低下させず、且つ/又は
(ii)PAPD5及び/又はPAPD7に結合せず、且つ、HBVの増殖を阻害しない
化合物である前記不活性被験化合物であり得る。
【0046】
この不活性被験化合物はHBVに対して何の活性も持たず、例えばHBsAgとHBeAgの分泌を阻害しなければ、細胞内HBV mRNAの生産も阻害しない。例えば、その不活性被験化合物はHBsAgの阻害について3μMを超えるIC50値を有する場合がある。本明細書において提供されるスクリーニング方法では前記不活性被験化合物は添付実施例において規定される「不活性DHQ化合物」という化合物又は「不活性THP化合物」という化合物であってよい。PAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性が測定される前記スクリーニング方法では上の(i)において規定される被験化合物を使用してよい。あるいは、PAPD5及び/又はPAPD7への結合が測定される前記スクリーニング方法では上の(ii)において規定される被験化合物を使用してよい。不活性型化合物は例えば化学的修飾及び/又はキラル分離によって活性型の化合物から設計可能である。
【0047】
本明細書において提供されるスクリーニング方法では前記被験化合物が存在する状態と存在しない状態でのPAPD5及び/又はPAPD7の活性が例えばRammelt, RNA, 2011, 17:1737-1746等に記載されるようにmRNAのインビトロポリアデニル化をモニターすることにより測定され得る。簡単に説明すると、ATP(A)、CTP(C)、GTP(G)、UTP(U)、又は4種類全てのdNTPの混合物が存在する状態でリボオリゴヌクレオチドA15を大腸菌内で発現した組換えPAPD5タンパク質とインキュベートしてよい。
【0048】
前記被験化合物が存在する状態と存在しない状態でのPAPD5及び/又はPAPD7の発現は例えば(q)PCR、ウエスタンブロット、又は質量分析を用いて測定可能である。
【0049】
HBVの増殖の阻害は、例えば、HBsAgの分泌及び/又はHBeAgの分泌を阻害し、且つ/又は細胞内HBV mRNAの生産を阻害する活性を前記被験化合物が持つか測定することにより測定可能である。HBsAg及び/又はHBeAgの分泌の阻害はELISAにより、例えばCLIA ELISAキット(Autobio Diagnostic社)を製造業者の指示に従って使用することにより測定可能である。細胞内HBV mRNAの生産の阻害は例えば添付実施例に記載されるようにリアルタイムPCRによって測定可能である。被験化合物がHBVの増殖を阻害するか評価するためのその他の方法は、例えば国際公開第2015/173208号パンフレットに記載されるようなRT-qPCRによるHBV DNAの分泌の測定、ノーザンブロットによる測定、インサイチュハイブリダイゼーションによる測定、又は免疫蛍光による測定である。
【0050】
本明細書において提供されるスクリーニング方法を実施するために公開又は市販されている分子ライブラリーが使用可能である。したがって、本発明の背景では前記被験化合物は
(i)スクリーニングライブラリーの小分子、又は
(ii)ファージディスプレイライブラリーのペプチド、抗体断片ライブラリーのペプチド、又はcDNAライブラリーに由来するペプチド
であり得る。
【0051】
例えば、Hybrigenics Services SASのcDHAヒト肝臓(HLV)ライブラリー又はcDNAヒト胎盤(PLA)ライブラリーが使用可能である。
【0052】
PAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドの活性が測定される本明細書において提供されるスクリーニング方法ではPAPD5及びPAPD7の前記活性はポリAポリメラーゼ機能(すなわちポリAポリメラーゼ活性)であることが好ましい。ポリペプチド(例えばPAPD5又はPAPD7)のポリAポリメラーゼ機能/活性は、例えばRammelt, RNA, 2011, 17:1737-1746等に記載されるようにmRNAのインビトロポリアデニル化をモニターすることにより測定され得る。この方法は、被験化合物が存在する状態と存在しない状態でPAPD5及び/又はPAPD7のポリAポリメラーゼ機能を測定するためにも使用可能である。
【0053】
PAPD5ポリペプチド及び/又はPDPD7ポリペプチドを阻害することによりHBsAg及びHBeAgの分泌、並びに細胞内HBV mRNAの生産が効果的に阻害され得ることが添付実施例によって実証されている。これらのデータはHBV感染症を予防及び/又は治療するためにPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤が使用可能であることを実証している。
【0054】
HBV感染症の治療にある一定の効力を有する幾つかの化合物が当技術分野において説明されている(例えば国際公開第2015/113990(A1)号パンフレット及び国際公開第2016/177655号パンフレットを参照されたい)。しかしながら本発明の背景において、構造の点で完全に異なる抗HBV剤(例えばDHQとTHP)が驚くべきことに、且つ、特異的にPAPD5とPAPD7に結合することが驚くべきことに分かっている。加えて、HBsAg生産の阻害について活性が比較的に低い薬剤も先行技術に含まれている。そのような薬剤はPAPD5及びPAPD7に対して比較的に低い結合親和性を有することが添付実施例において示されている(例えば{不活性DHQ」を参照されたい)。実際、前記化合物のHBV感染症に対する活性とPAPD5及びPAPD7に対する結合親和性との間の明確な相関が添付実施例によって示されている。したがって、PAPD5及び/又はPAPD7に結合する抗HBV剤を選択的に使用することによって特に高い抗HBV効力が生じる。さらに、PAPD5、PAPD7、又は特にPAPD5とPAPD7を阻害する化合物がHBsAg及びHBeAgの分泌の阻害、並びに細胞内HBV mRNAの生産の阻害に関して非常に高い活性を有することが本発明によって初めて示されている。HBsAg及びHBeAgの分泌を減少させることでHBsAgの分泌の減少だけと比べて慢性HBV感染症の発症がより効果的に抑制される。加えて、HBsAg及びHBeAgの分泌を阻害することによってHBV感染者の感染性が低下する。さらに、母親になる女性においてHBeAgを減少させることによってその女性の子供での慢性HBV感染症の発症も抑制可能である。したがって、PAPD5及び/又はPAPD7を阻害する化合物を選択的に使用することによってHBV感染症の治療においてHBsAg及びHBeAgのかなり効果的な減少に関して改善された治療成果が生じることが本発明によって予期せず実証されている。
【0055】
したがって、本発明の一態様はHBV感染症、特に慢性HBV感染症の治療におけるPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤の使用である。追加の実施形態では本発明はPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤をウイルス抗原であるHBsAg及びHBeAgの減少に使用することに関する。
【0056】
したがって、本発明はHBV感染症の治療及び/又は予防に使用するためのPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤であって、
(i)PAPD5及び/又はPAPD7に結合する小分子、
(ii)PAPD5及び/又はPAPD7に対するRNA干渉(RNAi)分子、
(iii)PAPD5及び/又はPAPD7に特異的に結合する抗体、又は
(iv)次のものを含むゲノム編集装置
(a)部位特異的DNAヌクレアーゼ、又は部位特異的DNAヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、及び
(b)ガイドRNA、又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチド
である前記阻害剤に関する。
【0057】
本発明の阻害剤はPAPD5及び/又はPAPD7に特異的なロックド核酸(LNA)分子であってもよい。
【0058】
HBV感染症を治療(例えば改善)するために本発明の阻害剤を使用することを企図している。
【0059】
前記阻害剤はPAPD7を特異的に阻害する分子であり得る。前記阻害剤はPAPD5を特異的に阻害する分子であることが好ましい。前記阻害剤がPAPD5とPAPD7の両方を阻害することがより好ましい。したがって、本発明の阻害剤がPAPD5を阻害するか、又はPAPD5とPAPD7の両方を阻害するかのどちらかであることが優先される。本発明の阻害剤がPAPD5とPAPD7を阻害することが最も好ましい。本発明の1つの態様では本発明の阻害剤によってPAPD5とPAPD7の両方が阻害され、且つ、無薬品対照と比較して(すなわち薬品が投与されなかった細胞又は対象と比較して)少なくとも50%のHBsAg及び/又はHBeAgの分泌の減少が生じる。
【0060】
本発明の阻害剤はHBsAg及びHBeAgの阻害に関して3μM未満、好ましくは2μM未満、より好ましくは1μM、より好ましくは0.1μM未満、及び最も好ましくは0.01μM未満のIC50値を有してよい。
【0061】
部位特異的DNAヌクレアーゼ(Cas9又はCpf1等)及びガイドRNAを使用することによるゲノム編集は当技術分野において一般的に知られており、且つ、例えば「CRISPR-Cas: A Laboratory Manual」、2016年、Jennifer Doudna編、ISBN 978-1-621821-31-1に記載されている。
【0062】
例えば、前記部位特異的DNAヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである場合、前記ゲノム編集装置は
(i)少なくとも1種類の標的配列特異的CRISPR RNA(crRNA)分子と少なくとも1種類のトランス活性化crRNA(tracrRNA)分子から成る少なくとも1種類のガイドRNA、
(ii)前記(i)のRNA分子をコードするポリヌクレオチド、
(iii)少なくとも1種類の標的配列特異的crRNAと少なくとも1種類のtracrRNAを含むキメラRNA分子である少なくとも1種類のガイドRNA、又は
(iv)前記(iii)のキメラRNAをコードするポリヌクレオチド
をさらに含むことが好ましい。
【0063】
代わりの例では前記部位特異的DNAヌクレアーゼはCpf1ヌクレアーゼであり、前記ゲノム編集装置は
(i)標的配列特異的CRISPR RNA(crRNA)分子を含む少なくとも1種類のガイドRNA、又は
(ii)前記(i)のRNA分子をコードするポリヌクレオチド
をさらに含むことが好ましい。
【0064】
PAPD5及び/又はPAPD7の本明細書において提供される阻害剤は少なくとも1種類の組立て済みのCas9タンパク質-ガイドRNAリボヌクレオタンパク質複合体(RNP)を含むゲノム編集装置であってもよい。
【0065】
本明細書では前記ガイドRNAはPAPD5又はPAPD7のゲノムDNAを標的とするように設計される。あるいは、PAPD5とPAPD7のゲノムDNAを標的とすることができるように幾つかのガイドRNAが使用される。PAPD5及び/又はPAPD7の阻害は、非相同末端結合(NHEJ)を介してPAPD5及び/又はPAPD7のゲノムDNAにフレームシフトノックアウト突然変異を導入することにより、又は相同組換え修復(HDR)を介してPAPD5及び/又はPAPD7のゲノムDNAを改変することにより達成可能である。どのようにこれらの機構を誘導することができるかは当技術分野において一般的に知られており、且つ、例えばHeidenreich, 2016, Nat Rev Neurosci 17 36-44に記載されている。
【0066】
本発明の阻害剤は天然分子、例えば天然抗体又は天然RNAi分子であり得る。しかしながら本発明の阻害剤は非天然分子であってもよい。例えば、本発明の阻害剤は天然抗体と同じではないアミノ酸配列を有する抗体であってよく、又は類似の側鎖官能基を提供する合成アミノ酸などの少なくとも1つの非天然アミノ酸残基を含む抗体であってよい。例えば、芳香族アミノ酸はD-又はL-ナフチルアラニン、D-又はL-フェニルグリシン、D-又はL-2-チエニルアラニン、D-又はL-1-、2-、3-、又は4-ピレニルアラニン、D-又はL-3-チエニルアラニン、D-又はL-(2-ピリジニル)-アラニン、D-又はL-(3-ピリジニル)-アラニン、D-又はL-(2-ピラジニル)-アラニン、D-又はL-(4-イソプロピル)-フェニルグリシン、D-(トリフルオロメチル)-フェニルグリシン、D-(トリフルオロメチル)-フェニルアラニン、D-p-フルオロフェニルアラニン、D-又はL-p-ビフェニルアラニン、D-又はL-p-メトキシビフェニルアラニン、D-又はL-2-インドール(アルキル)アラニン、及びD-又はL-アルキルアラニンによって置き換えられてよく、その場合に前記アルキル基は置換型又は非置換型のメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソブチル、及びイソペンチルからなる群より選択される。非限定的な例として考えるべきであるが、ホスホノアミノ酸又は硫酸化アミノ酸によって提供されるように、負の電荷を有するように非カルボン酸系アミノ酸を作製することができる。その他の非天然アミノ酸はいずれかの天然アミノ酸とアルキル基を組み合わせることにより作製されるアルキル化アミノ酸である。リシン及びアルギニンなどの塩基性天然アミノ酸をアミン(NH2)官能基においてアルキル基で置換してもよい。非天然アミノ酸上のさらに他の置換にはアスパラギン又はグルタミンのニトリル誘導体(例えば、CONH2官能基の位置にCN部分を含む誘導体)、及びメチオニンのスルフオキシド誘導体が含まれる。
【0067】
同様に本発明の阻害剤は天然RNAi分子と同じではないヌクレオチド配列を有するRNAi分子であってよく、又は少なくとも1つの非天然ヌクレオチド、例えばオリゴヌクレオチドチオホスフェート、置換リボオリゴヌクレオチド、LNA分子、PNA分子、GNA(グリコール核酸)分子、TNA(トレオース核酸)分子、モルホリノポリヌクレオチドを含む、若しくはポリシロキサン、2’-O-(2-メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの修飾型骨格を有する核酸を含む、若しくはメチルヌクレオシド、チオヌクレオシド、サルフェートヌクレオシド、ベンゾイルヌクレオシド、フェニルヌクレオシド、アミノヌクレオシド、プロピルヌクレオシド、クロロヌクレオシド、及びメタノカルバヌクレオシドなどの置換基を有する核酸を含む、若しくは検出を容易にするためのレポーター分子を含むRNAi分子であってよい。本発明の阻害剤は天然又は非天然の小分子又はゲノム編集装置であってもよい。
【0068】
本発明の背景では本明細書において提供される阻害剤は
(i)PAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチドに結合し、且つ/又は
(ii)PAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を阻害する
ことが可能である。
【0069】
例えば、本発明の阻害剤はPAPD5ポリペプチドに結合し、PAPD5ポリペプチドの活性を阻害してよい。別の例では本発明の阻害剤はPAPD7ポリペプチドに結合し、PAPD7ポリペプチドの活性を阻害する。前記阻害剤がPAPD5ポリペプチドとPAPD7ポリペプチドの両方に結合し、PAPD5ポリペプチドとPAPD7ポリペプチドの両方の活性を阻害することが本明細書においては優先される。本発明の阻害剤はPAPD5又はPAPD7の発現を阻害してもPAPD5とPAPD7の両方の発現を阻害してもよい。
【0070】
上で説明したようにPAPD5及び/又はPAPD7を阻害する化合物がHBsAg及びHBeAgの分泌の阻害、並びに細胞内HBV mRNAの生産の阻害に関して高い活性を有することが本発明の背景において示されている。したがって、本発明の阻害剤はHBsAg及びHBeAgの分泌を減少させる。本発明の阻害剤はHBsAg分泌の減少によって慢性HBV感染症の発症を抑制する。特に、本発明の阻害剤はHBeAg分泌の阻害により、HBsAg分泌だけを減少させる化合物と比較してより効率的に慢性HBV感染症の発症を抑制する。加えて、母親になる女性においてHBeAgを減少させることによってその女性の子供での慢性HBV感染症の発症も抑制可能である。したがって、本発明の阻害剤はHBeAg分泌の減少によって慢性HBV感染症の発症(例えば、HBVに感染した母親の子供における慢性HBV感染症の発症)を抑制し、且つ、HBV感染者の感染性を低下させる。したがって、本発明の1つの態様はHBsAg及びHBeAgの分泌を減少させる本明細書において提供される阻害剤に関した。これと一致して本発明の追加の態様は慢性HBV感染症の発症を抑制し、且つ、HBV感染者の感染性を低下させる本明細書において提供される阻害剤に関する。本発明の特定の態様では本明細書において提供される阻害剤はHBVに感染した母親の子供における慢性HBV感染症の発症を抑制する。この母親はHBeAg陽性であることが好ましい。
【0071】
本発明の阻害剤で治療される対象(又は本発明の阻害剤を予防目的で受容する対象)はヒトであることが好ましく、HBsAg陽性及び/又はHBeAg陽性のヒト患者であることがより好ましく、HBsAg陽性及びHBeAg陽性のヒト患者であることがさらにより好ましい。前記ヒト患者は母親になる女性、例えばHBeAg陽性及び/又はHBsAg陽性である母親になる女性であってよく、より好ましくはHBeAg陽性及びHBsAg陽性である母親になる女性であってよい。
【0072】
本発明の化合物
上で説明したように本発明の阻害剤は小分子であり得る。例えば、本発明の阻害剤は式(I)の化合物、
【0073】
【化1】
【0074】
式中、
1が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、又はC1~6アルコキシであり、
2が水素;ハロゲン;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルコキシ;シアノ;C3~7シクロアルキル;ヒドロキシ又はフェニル-Cx2x-O-であり、
3が水素;
ハロゲン;
非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;
シアノ;
ピロリジニル;
アミノ;
フェニル-Cx2x-N(C1~6アルキル)-;
1~6アルコキシカルボニルピペラジニル;
又はR7が水素;非置換型であるか、若しくはフルオロ、ヒドロキシ、及びC2~6アルケニルから独立して選択される1~3個の置換基で置換されているC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルコキシC1~6アルキル;アミノC1~8アルキル;C1~6アルキルカルボニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルホニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル;C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル;シアノC1~6アルキル;C3~7シクロアルキルC1~6アルキル;シアノC3~7シクロアルキルC1~6アルキル;フェニルC1~6アルキル;ピロリジニルカルボニルC1~6アルキル;C2~6アルキニル;ヒドロキシC1~6アルキルC2~6アルキニル;アミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;ジC1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;カルボキシC1~6アルキル;若しくはC1~6アルコキシカルボニルアミノC1~8アルキル;ヘテロアリールがN含有単環式ヘテロアリールであるヘテロアリールC1~6アルキル;若しくはヘテロシクロアルキルが単環式ヘテロシクロアルキルであるヘテロシクロアルキルC1~6アルキルであるR7-O-であり、
4が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、シアノ、又はC1~6アルコキシであり、
ただしR1、R2、R3、及びR4が同時に水素ではないことを条件とし、
5が水素又はC1~6アルキルであり、
6が水素;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;非置換型であるか、又はフルオロ若しくはC1~6アルキルによって1回、2回、又は3回置換されているC3~7シクロアルキル;又はフェニル-Cx2x-であり、
xが1~6である前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー、又は前記化合物のジアステレオマーであってよく、又は式(II)の化合物、
【0075】
【化2】
【0076】
式中
1がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロC1~6アルキル、ヒドロキシC1~6アルキル、ニトロC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルC1~6アルキル、カルボキシC1~6アルキル、ジ(C1~6アルコキシカルボニル)メチレニル、シアノC1~6アルキル、C3~7シクロアルキルC1~6アルキル、フェニルC1~6アルキル、C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル、C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルスルホニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~6アルキル、アミノカルボニルC1~6アルキル、ジC1~6アルキルアミノカルボニルC1~6アルキル、単環式ヘテロシクロアルキルC1~6アルキル、又はイミダゾリルC1~6アルキルであり、
2がアリール又はヘテロアリールであり、前記アリール又はヘテロアリールが非置換型であるか、又はC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、ハロC1~6アルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、ハロC1~6アルコキシ、-O-Cx2x-R3、-O-Cy2y-NHR6、-NR910、-SO2-R11、-SO2-NR1213、カルボキシ、C1~6アルコキシカルボニル、-C(=O)-NR1213、アリール、ヘテロアリール、単環式ヘテロシクロアルキル、及び-O-単環式ヘテロシクロアルキルから独立して選択される1個、2個、3個、又は4個、の置換基で置換されており、その場合に単環式ヘテロシクロアルキルは非置換型であるか、又はC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、若しくはC1~6アルコキシカルボニルによって置換されており、
3が水素;C3~7シクロアルキル;ハロC3~7シクロアルキル;ヒドロキシ;ヒドロキシC1~6アルキルC3~7シクロアルキル;C1~6アルコキシ;単環式ヘテロシクロアルキル;C1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキル、又はC1~6アルコキシカルボニルによって置換されている単環式ヘテロシクロアルキル;-C(=O)-R4;C1~6アルキルスルフィニル;-SO2-R5;-C(NHR7)-C(=O)-R8;カルボキシC1~6アルコキシ、又はアミノカルボニルC1~6アルコキシであり、
4がヒドロキシ、C1~6アルコキシ、アミノ、C1~6アルキルアミノ、ジC1~6アルキルアミノ、テトラヒドロフラニルアミノ、ピロリジニル、又はモルホリニルであり、
5がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、C1~6アルキルアミノ、又はジC1~6アルキルアミノであり、
7が水素又はC1~6アルコキシカルボニルであり、
8がヒドロキシ又はC1~6アルコキシであり、
6が水素、C1~6アルキルカルボニル、ハロC1~6アルキルカルボニル、C1~6アルコキシカルボニル、
1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキルスルホニル、又はC1~6アルコキシC1~6アルキルスルホニルであり、
9及びR10が水素、C1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキルカルボニル、及びC3~7シクロアルキルスルホニルから独立して選択され、又は
9及びR10が結合している窒素と一緒にそれらが単環式ヘテロシクロアルキルを形成し、
11がC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロC3~7シクロアルキル、ヒドロキシC1~6アルキル、C1~6アルコキシC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシC1~6アルキル、C3~7シクロアルキルC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、C1~6アルキルアミノC1~6アルキル、ジC1~6アルキルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルスルホニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルスルフェニルC1~6アルキル、C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル、又はC1~6アルキルスルホニルC1~6アルキルであり、
12及びR13が水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、及びハロC3~7シクロアルキルから独立して選択され、又は
12及びR13が結合している窒素と一緒にそれらが単環式ヘテロシクロアルキルを形成し、
xが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
yが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
U、W、及びZがCH及びNから独立して選択され、
X及びYのうちの一方がNであり、他方がCH又はNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー、又は前記化合物のジアステレオマーであってよい。
【0077】
本発明の1つの態様では6-メチル-2-オキソ-9-ピロリジン-1-イル-6,7-ジヒドロベンゾ[a]キノリジン-3-カルボン酸、9-フルオロ-6-メチル-2-オキソ-6,7-ジヒドロベンゾ[a]キノリジン-3-カルボン酸、及び9,10-ジフルオロ-6-メチル-2-オキソ-6,7-ジヒドロベンゾ[a]キノリジン-3-カルボン酸が式(I)の化合物から除外される。
【0078】
本発明の1つの特定の実施形態では式(I)及び式(II)の化合物が本発明の阻害剤から除外される。したがって、本発明の1つの実施形態は式(I)又は式(II)の化合物ではない本発明の阻害剤に関する。
【0079】
上で説明したように抗HBV剤であるDHQ(すなわち式(III)の化合物)及びTHP(すなわち式(IV)の化合物)がPAPD5及びPAPD7に効率的に結合することが添付実施例によって実証されている。したがって、本発明の阻害剤が式(III)又は式(IV)の化合物であることが本発明の背景では優先される。
【0080】
【化3】
【0081】
【化4】
【0082】
リンカーリガンド及びアンカーリガンドを有する式(III)及び式(IV)の化合物の派生物がPAPD5及びPAPD7に対する結合親和性を有することも添付実施例に示されている。これらの派生物はそれぞれ式(V)及び式(VI)として下に示されている。したがって、本発明の1つの態様では本発明の阻害剤は式(V)又は式(VI)の化合物である。
【0083】
【化5】
【0084】
【化6】
【0085】
本発明の背景では本発明の阻害剤は式(I)の化合物であってよく、その場合に前記阻害剤は以下の項目(1)~(19)において規定される化合物のうちのいずれか1つである。
1.式(I)の化合物であって、式中
1が水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、メチルアミノ、メトキシ、又はエトキシであり、
2が水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、エチル、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、トリフルオロメトキシ、シアノ、シクロプロピル、ヒドロキシ又はフェニルメチル-O-であり、
3が水素、ブロモ、メチル、プロピル、トリフルオロメチル、シアノ、フェニルメチル-N(メチル)-、tert-ブトキシカルボニルピペラジニル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ジフルオロメチルメチル-O-、ジフルオロメチルエチル-O-、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルメチル-O-、トリフルオロメチルエチル-O-、エチルジフルオロメチル-O-、ビニルジフルオロメチル-O-、プロパルギル-O-、ヒドロキシメチルプロパルギル-O-、メトキシエチル-O-、メトキシプロピル-O-、メトキシブチル-O-、エトキシエチル-O-、メトキシエチル-O-エチル-O-、アミノエチル-O-、アミノペンチル-O-、アミノヘキシル-O-、アミノオクチル-O-、tert-ブトキシカルボニルアミノペンチル-O-、tert-ブトキシカルボニルアミノヘキシル-O-、tert-ブトキシカルボニルアミノオクチル-O-、メチルカルボニルアミノエチル-O-、メチルカルボニルアミノペンチル-O-、メチルスルホニルアミノエチル-O-、メチルスルホニルアミノペンチル-O-、メチルスルホニルエチル-O-、メチルスルホニルプロピル-O-、メチルスルファニルプロピル-O-、シアノプロピル-O-、シアノシクロプロピルメチル-O-、シクロプロピルメチル-O-、シクロヘキシルエチル-O-、ヒドロキシエチル-O-、ヒドロキシプロピル-O-、ヒドロキシ-ジメチルプロピル-O-、ヒドロキシ-ジフルオロプロピル-O-、ヒドロキシブチル-O-、ヒドロキシペンチル-O-、ヒドロキシヘキシル-O-、アミノエチル-O-プロピル-O-、エチルアミノ-エチル-O-プロピル-O-、イミダゾリルエチル-O-、ピラゾリルプロピル-O-、トリアゾリルプロピル-O-、モルホリニルエチル-O-、モルホリニルプロピル-O-、(2-オキソ-ピロリジニル)エチル-O-、(2-オキソ-ピロリジニル)プロピル-O-、フェニルメチル-O-、フェニルエチル-O-、ピロリジニルエチル-O-、ピロリジニルプロピル-O-、ピロリジニルカルボニルメチル-O-、テトラヒドロピラニルメチル-O-、又はカルボキシプロピル-O-であり、
4が水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、又はシアノであり、
ただしR1、R2、R3、及びR4が同時に水素ではないことを条件とし、
5が水素又はメチルであり、
6が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルメチル、シクロプロピル、シクロブチル、メチルシクロプロピル、又はフェニルメチルである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0086】
2.式(I)の化合物であって、式中
1が水素、ハロゲン、C1~6アルキルアミノ、又はC1~6アルコキシであり、
2が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C3~7シクロアルキル、ヒドロキシ、又はフェニル-Cx2x-O-であり、
3が水素;
ハロゲン;
1~6アルキル;
シアノ;
フェニル-Cx2x-N(C1~6アルキル)-;
1~6アルコキシカルボニルピペラジニル;
又はR7が水素;非置換型であるか、若しくはフルオロ、ヒドロキシ、及びC2~6アルケニルから独立して選択される1~3個の置換基で置換されているC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルコキシC1~6アルキル;アミノC1~8アルキル;C1~6アルキルカルボニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルホニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル;C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル;シアノC1~6アルキル;C3~7シクロアルキルC1~6アルキル;シアノC3~7シクロアルキルC1~6アルキル;フェニルC1~6アルキル;ピロリジニルカルボニルC1~6アルキル;C2~6アルキニル;ヒドロキシC1~6アルキルC2~6アルキニル;アミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;カルボキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~8アルキル;ヘテロアリールがN含有単環式ヘテロアリールであるヘテロアリールC1~6アルキル;若しくはヘテロシクロアルキルが単環式ヘテロシクロアルキルであるヘテロシクロアルキルC1~6アルキルであるR7-O-であり、
4が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、又はシアノであり、
ただしR1、R2、R3、及びR4が同時に水素ではないことを条件とし、
5が水素又はC1~6アルキルであり、
6が水素;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;C3~7シクロアルキル;C1~6アルキルC3~7シクロアルキル;又はフェニル-Cx2x-であり、
xが1~6である前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0087】
3.式(I)又は項目1又は2に記載の化合物であって、
式中、
1が水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチルアミノ、メトキシ、又はエトキシであり、
2が水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、シクロプロピル、ヒドロキシ、又はフェニルメチル-O-であり、
3が水素、ブロモ、メチル、プロピル、シアノ、フェニルメチル-N(メチル)-、tert-ブトキシカルボニルピペラジニル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ジフルオロメチルメチル-O-、ジフルオロメチルエチル-O-、トリフルオロメチルメチル-O-、エチルジフルオロメチル-O-、ビニルジフルオロメチル-O-、プロパルギル-O-、ヒドロキシメチルプロパルギル-O-、メトキシエチル-O-、メトキシプロピル-O-、メトキシブチル-O-、エトキシエチル-O-、メトキシエチル-O-エチル-O-、アミノエチル-O-、アミノペンチル-O-、アミノヘキシル-O-、アミノオクチル-O-、tert-ブトキシカルボニルアミノペンチル-O-、tert-ブトキシカルボニルアミノヘキシル-O-、tert-ブトキシカルボニルアミノオクチル-O-、メチルカルボニルアミノエチル-O-、メチルカルボニルアミノペンチル-O-、メチルスルホニルアミノエチル-O-、メチルスルホニルアミノペンチル-O-、メチルスルホニルエチル-O-、メチルスルホニルプロピル-O-、メチルスルファニルプロピル-O-、シアノプロピル-O-、シアノシクロプロピルメチル-O-、シクロプロピルメチル-O-、シクロヘキシルエチル-O-、ヒドロキシエチル-O-、ヒドロキシプロピル-O-、ヒドロキシ-ジメチルプロピル-O-、ヒドロキシ-ジフルオロプロピル-O-、ヒドロキシブチル-O-、ヒドロキシペンチル-O-、ヒドロキシヘキシル-O-、アミノエチル-O-プロピル-O-、エチルアミノ-エチル-O-プロピル-O-、イミダゾリルエチル-O-、ピラゾリルプロピル-O-、トリアゾリルプロピル-O-、モルホリニルエチル-O-、モルホリニルプロピル-O-、(2-オキソ-ピロリジニル)エチル-O-、(2-オキソ-ピロリジニル)プロピル-O-、フェニルメチル-O-、フェニルエチル-O-、ピロリジニルエチル-O-、ピロリジニルプロピル-O-、ピロリジニルカルボニルメチル-O-、テトラヒドロピラニルメチル-O-、又はカルボキシプロピル-O-であり、
4が水素、クロロ、ブロモ、メチル、又はシアノであり、
ただしR1、R2、R3、及びR4が同時に水素ではないことを条件とし、
5が水素又はメチルであり、
6が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルメチル、シクロプロピル、シクロブチル、メチルシクロプロピル、又はフェニルメチルである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0088】
4.式(I)又は項目2に記載の化合物であって、式(IA)の化合物である前記化合物であり、
【0089】
【化7】
【0090】
式中、
1が水素、ハロゲン、又はC1~6アルコキシであり、
2が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C3~7シクロアルキル、ヒドロキシ、又はフェニル-Cx2x-O-であり、
4が水素又はハロゲンであり、
5が水素又はC1~6アルキルであり、
6が水素;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;C3~7シクロアルキル;C1~6アルキルC3~7シクロアルキル;又はフェニル-Cx2x-であり、
7が水素;非置換型であるか、又はフルオロ、ヒドロキシ、及びエテニルから独立して選択される1~3個の置換基で置換されているC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルコキシC1~6アルキル;アミノC1~8アルキル;C1~6アルキルカルボニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルホニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル;C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル;シアノC1~6アルキル;C3~7シクロアルキルC1~6アルキル;シアノC3~7シクロアルキルC1~6アルキル;フェニルC1~6アルキル;ピロリジニルカルボニルC1~6アルキル;C2~6アルキニル;ヒドロキシC1~6アルキルC2~6アルキニル;アミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;カルボキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~8アルキル;ヘテロアリールがN含有単環式ヘテロアリールであるヘテロアリールC1~6アルキル;又はヘテロシクロアルキルが単環式ヘテロシクロアルキルであるヘテロシクロアルキルC1~6アルキルであり、
xが1~6である前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0091】
5.項目4に記載の化合物であって、
1が水素、フルオロ、クロロ、又はメトキシであり、
2が水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、シクロプロピル、ヒドロキシ、又はフェニルメチル-O-であり、
4が水素又はクロロであり、
5が水素又はメチルであり、
6が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルメチル、シクロプロピル、シクロブチル、メチルシクロプロピル、又はフェニルメチルであり、
7が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ジフルオロメチルメチル、ジフルオロメチルエチル、トリフルオロメチルメチル、エチルジフルオロメチル、ビニルジフルオロメチル、プロパルギル、ヒドロキシメチルプロパルギル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、メトキシエチル-O-エチル、アミノエチル、アミノペンチル、アミノヘキシル、アミノオクチル、tert-ブトキシカルボニルアミノペンチル、tert-ブトキシカルボニルアミノヘキシル、tert-ブトキシカルボニルアミノオクチル、メチルカルボニルアミノエチル、メチルカルボニルアミノペンチル、メチルスルホニルアミノエチル、メチルスルホニルアミノペンチル、メチルスルホニルエチル、メチルスルホニルプロピル、メチルスルファニルプロピル、シアノプロピル、シアノシクロプロピルメチル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルエチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシ-ジメチルプロピル、ヒドロキシ-ジフルオロプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシル、アミノエチル-O-プロピル、エチルアミノ-エチル-O-プロピル-、イミダゾリルエチル、ピラゾリルプロピル、トリアゾリルプロピル、モルホリニルエチル、モルホリニルプロピル、(2-オキソ-ピロリジニル)エチル、(2-オキソ-ピロリジニル)プロピル、フェニルメチル、フェニルエチル、ピロリジニルエチル、ピロリジニルプロピル、ピロリジニルカルボニルメチル、テトラヒドロピラニルメチル、又はカルボキシプロピルである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0092】
6.項目4に記載の化合物であって、
1が水素又はハロゲンであり、
2がC1~6アルキル、ハロゲン、又はC3~7シクロアルキルであり、
4が水素であり、
5が水素又はC1~6アルキルであり、
6がC1~6アルキル又はC1~6アルキルC3~7シクロアルキルであり、
7がC1~6アルキル、C1~6アルコキシC1~6アルキル;又はフェニルC1~6アルキルである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0093】
7.項目6に記載の化合物であって、
1が水素、フルオロ、又はクロロであり、
2がメチル、エチル、フルオロ、クロロ、又はシクロプロピルであり、
4が水素であり、
5が水素又はメチルであり、
6がメチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、又はメチルシクロプロピルであり、
7がメチル、エチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、又はフェニルメチルである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0094】
8.項目4に記載の化合物であって、
1が水素であり、
2がC1~6アルコキシであり、
4が水素又はハロゲンであり、
5が水素又はC1~6アルキルであり、
6が水素;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;C3~7シクロアルキル;C1~6アルキルC3~7シクロアルキル;又はフェニル-Cx2x-であり、
7が水素;非置換型であるか、又はフルオロ、ヒドロキシ、及びC2~6アルケニルから独立して選択される1~3個の置換基で置換されているC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルコキシC1~6アルキル;アミノC1~8アルキル;C1~6アルキルカルボニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルホニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル;C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル;シアノC1~6アルキル;シアノC3~7シクロアルキルC1~6アルキル;C3~7シクロアルキルC1~6アルキル;フェニルC1~6アルキル;ピロリジニルカルボニルC1~6アルキル;C2~6アルキニル;ヒドロキシC1~6アルキルC2~6アルキニル;アミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;カルボキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~8アルキル;イミダゾリルC1~6アルキル;ピラゾリルC1~6アルキル;トリアゾリルC1~6アルキル;モルホリニルC1~6アルキル;(2-オキソ-ピロリジニル)C1~6アルキル;ピロリジニルC1~6アルキル;又はテトラヒドロピラニルC1~6アルキルであり、
xが1~6である前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0095】
9.項目8に記載の化合物であって、
1が水素であり、
2がメトキシ、エトキシ、又はプロポキシであり、
4が水素又はクロロであり、
5が水素又はメチルであり、
6が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルメチル、シクロプロピル、シクロブチル、メチルシクロプロピル、又はフェニルメチルであり、
7が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ジフルオロメチルメチル、ジフルオロメチルエチル、トリフルオロメチルメチル、エチルジフルオロメチル、ビニルジフルオロメチル、プロパルギル、ヒドロキシメチルプロパルギル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、メトキシエチル-O-エチル、アミノエチル、アミノペンチル、アミノヘキシル、アミノオクチル、tert-ブトキシカルボニルアミノペンチル、tert-ブトキシカルボニルアミノヘキシル、tert-ブトキシカルボニルアミノオクチル、メチルカルボニルアミノエチル、メチルカルボニルアミノペンチル、メチルスルホニルアミノエチル、メチルスルホニルアミノペンチル、メチルスルホニルエチル、メチルスルホニルプロピル、メチルスルファニルプロピル、シアノプロピル、シアノシクロプロピルメチル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルエチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシ-ジメチルプロピル、ヒドロキシ-ジフルオロプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシル、アミノエチル-O-プロピル、エチルアミノ-エチル-O-プロピル-、イミダゾリルエチル、ピラゾリルプロピル、トリアゾリルプロピル、モルホリニルエチル、モルホリニルプロピル、(2-オキソ-ピロリジニル)エチル、(2-オキソ-ピロリジニル)プロピル、フェニルメチル、フェニルエチル、ピロリジニルエチル、ピロリジニルプロピル、ピロリジニルカルボニルメチル、テトラヒドロピラニルメチル、又はカルボキシプロピルである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0096】
10.項目4に記載の化合物であって、
1が水素又はハロゲンであり、
2がハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、又はC3~7シクロアルキルであり、
4が水素であり、
5が水素又はC1~6アルキルであり、
6が非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;C3~7シクロアルキル、又はC1~6アルキルC3~7シクロアルキルであり、
7が非置換型であるか、又はフルオロ及びヒドロキシから独立して選択される1~3個の置換基で置換されているC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルキル;アミノC1~8アルキル;C1~6アルキルカルボニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルホニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル;C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル;C3~7シクロアルキルC1~6アルキル;フェニルC1~6アルキル;C1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~8アルキル;モルホリニルC1~6アルキル又はテトラヒドロピラニルC1~6アルキルである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0097】
11.項目10に記載の化合物であって、
1が水素、フルオロ、又はクロロであり、
2がフルオロ、クロロ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、又はシクロプロピルであり、
4が水素であり、
5が水素又はメチルであり、
6がメチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、トリフルオロメチルメチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルであり、
7がメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、シクロプロピルメチル、ジフルオロメチルメチル、ジフルオロエチルメチル、ジフルオロメチルエチル、トリフルオロメチルメチル、エチルジフルオロメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシエチル、アミノヘキシル、アミノオクチル、tert-ブトキシカルボニルアミノペンチル、tert-ブトキシカルボニルアミノオクチル、メチルカルボニルアミノペンチル、メチルスルホニルアミノペンチル、メチルスルホニルプロピル、メチルスルファニルプロピル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシ-ジメチルプロピル、ヒドロキシ-ジフルオロプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシル、エチルアミノ-エチル-O-プロピル-、モルホリニルエチル、モルホリニルプロピル、フェニルメチル、又はテトラヒドロピラニルメチルである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0098】
12.R1が水素である、式(I)、項目1、又は項目2に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー。
【0099】
13.R2がハロゲン又はC1~6アルコキシである、式(I)、項目1、又は項目2に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー。
【0100】
14.R2がクロロ又はメトキシである、式(I)、項目1、又は項目2に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー。
【0101】
15.R5が水素である、式(I)、項目1、又は項目2に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー。
【0102】
16.R6がC1~6アルキル又はC1~6アルキルC3~7シクロアルキルである、式(I)、項目1、又は項目2に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー。
【0103】
17.R6がエチル、イソプロピル、tert-ブチル、又はメチルシクロプロピルである、式(I)、項目1、又は項目2に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー。
【0104】
18.R7がC1~6アルコキシC1~6アルキル、ヒドロキシC1~6アルキル、又はアミノC1~6アルキルである、式(I)、項目1、又は項目2に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー。
【0105】
19.R7がメトキシエチル、メトキシプロピル、ヒドロキシジメチルプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシル、アミノブチル、アミノペンチル、又はアミノヘキシルである、式(I)、項目1、又は項目2に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー。
【0106】
本発明の背景では本発明の阻害剤は式(II)の化合物であってもよく、その場合に前記阻害剤は以下の項目(1)~(20)において規定される化合物のうちのいずれか1つである。
1.式(II)の化合物であって、式中
1がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ヒドロキシC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルC1~6アルキル、又はカルボキシC1~6アルキルであり、
2がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、ハロC1~6アルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、ハロC1~6アルコキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、-O-Cx2x-R3、-O-Cy2y-NHR6、-SO2-R11 -SO2-NR1213、カルボキシ、C1~6アルコキシカルボニル、及び-C(=O)-NR1213から独立して選択される1個、2個、3個、又は4個の基によって置換されているフェニル;ハロゲン、C1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、-O-Cx2x-R3、及びNR910から独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているピリジニル;又はC1~6アルキル及びジC1~6アルキルアミノによって置換されているピリミジニルであり、その場合に
3が水素、C3~7シクロアルキル、ハロC3~7シクロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1~6アルキルC3~7シクロアルキル、C1~6アルコキシ、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、チエタニル、1,1-ジオキソチエタニル、1,1-ジオキソチオラニル、モルホリニル、オキソピロリジニル、オキソモルホリニル、オキソピペラジニル、C1~6アルコキシカルボニルオキソピペラジニル、オキソイミダゾリジニル、C1~6アルキルピペラジニル、C1~6アルキルカルボニルピペラジニル、C1~6アルキルスルホニルピペラジニル、C1~6アルコキシカルボニルピペラジニル、アゼチジニル、C1~6アルキルカルボニルアゼチジニル、C1~6アルキルスルホニルアゼチジニル、C1~6アルコキシカルボニルアゼチジニル、-C(=O)-R4、C1~6アルキルスルフィニル、-SO2-R5、-C(NHR7)-C(=O)-R8、カルボキシC1~6アルコキシ又はアミノカルボニルC1~6アルコキシであり、その場合に
4がヒドロキシ、C1~6アルコキシ、アミノ、C1~6アルキルアミノ、ジC1~6アルキルアミノ、テトラヒドロフラニルアミノ、ピロリジニル、又はモルホリニルであり、
5がC1~6アルキル、ヒドロキシ、又はアミノであり、
7が水素又はC1~6アルコキシカルボニルであり、
8がヒドロキシ又はC1~6アルコキシであり、
6が水素、C1~6アルキルカルボニル、ハロC1~6アルキルカルボニル、C1~6アルコキシカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキルスルホニル、又はC1~6アルコキシC1~6アルキルスルホニルであり、
9及びR10が水素、C1~6アルキル、及びC1~6アルキルスルホニルから独立して選択され、又は
9及びR10が結合している窒素と一緒にそれらがピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、及びオキソピペラジニルを形成し、
11がC1~6アルキル又はC1~6アルコキシC1~6アルキルであり、
12及びR13が水素、C1~6アルキル、及びC1~6アルコキシC1~6アルキルから独立して選択され、
xが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
yが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがCH又はNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0107】
2.式(II)又は項目1に記載の化合物であって、式中
1がC1~6アルキルであり、
2がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、ハロC1~6アルキル、シアノ、ヒドロキシ、ハロC1~6アルコキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、-O-Cx2x-R3、-O-Cy2y-NHR6、-SO2-R11、-SO2-NR1213、カルボキシ、C1~6アルコキシカルボニル、及び-C(=O)-NR1213から独立して選択される1個、2個、3個、又は4個の基によって置換されているフェニル;ハロゲン、C1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、-O-Cx2x-R3、及びNR910から独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているピリジニル;又はC1~6アルキル及びジC1~6アルキルアミノによって置換されているピリミジニルであり、その場合に
3が水素、C3~7シクロアルキル、ハロC3~7シクロアルキル、ヒドロキシC1~6アルキルC3~7シクロアルキル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、チエタニル、1,1-ジオキソチエタニル、1,1-ジオキソチオラニル、オキソピロリジニル、オキソモルホリニル、オキソピペラジニル、C1~6アルコキシカルボニルオキソピペラジニル、オキソイミダゾリジニル、C1~6アルキルピペラジニル、C1~6アルキルカルボニルピペラジニル、C1~6アルキルスルホニルピペラジニル、C1~6アルコキシカルボニルピペラジニル、アゼチジニル、C1~6アルキルカルボニルアゼチジニル、C1~6アルキルスルホニルアゼチジニル、C1~6アルコキシカルボニルアゼチジニル、-C(=O)-R4、C1~6アルキルスルフィニル、-SO2-R5、-C(NHR7)-C(=O)-R8、カルボキシC1~6アルコキシ又はアミノカルボニルC1~6アルコキシであり、その場合に
4がヒドロキシ、C1~6アルコキシ、アミノ、C1~6アルキルアミノ、テトラヒドロフラニルアミノ、又はモルホリニルであり、
5がC1~6アルキル、ヒドロキシ、又はアミノであり、
7が水素又はC1~6アルコキシカルボニルであり、
8がヒドロキシ又はC1~6アルコキシであり、
6が水素、C1~6アルキルカルボニル、ハロC1~6アルキルカルボニル、C1~6アルコキシカルボニル、C3~7シクロアルキルスルホニル、又はC1~6アルコキシC1~6アルキルスルホニルであり、
9及びR10が水素、C1~6アルキル、及びC1~6アルキルスルホニルから独立して選択され、又は
9及びR10が結合している窒素と一緒にそれらがピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、及びオキソピペラジニルを形成し、
11がC1~6アルコキシC1~6アルキルであり、
12及びR13が水素、C1~6アルキル、及びC1~6アルコキシC1~6アルキルから独立して選択され、
xが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
yが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0108】
3.R1がメチルである、式(II)、項目1、又は項目2に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0109】
4.式(II)、項目1、又は項目2に記載の化合物であって、式中
1がC1~6アルキルであり、
2がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、ハロC1~6アルキル、シアノ、ヒドロキシ、ハロC1~6アルコキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、-O-Cx2x-R3、-O-Cy2y-NHR6、-SO2-R11、-SO2-NR1213、カルボキシ、C1~6アルコキシカルボニル及び-C(=O)-NR1213から独立して選択される1個、2個、3個、又は4個の基によって置換されているフェニルであり、
3が水素、C3~7シクロアルキル、ハロC3~7シクロアルキル、ヒドロキシC1~6アルキルC3~7シクロアルキル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、チエタニル、1,1-ジオキソチエタニル、1,1-ジオキソチオラニル、オキソピロリジニル、オキソモルホリニル、オキソピペラジニル、C1~6アルコキシカルボニルオキソピペラジニル、オキソイミダゾリジニル、C1~6アルキルピペラジニル、C1~6アルキルカルボニルピペラジニル、C1~6アルキルスルホニルピペラジニル、C1~6アルコキシカルボニルピペラジニル、アゼチジニル、C1~6アルキルカルボニルアゼチジニル、C1~6アルキルスルホニルアゼチジニル、C1~6アルコキシカルボニルアゼチジニル、-C(=O)-R4、C1~6アルキルスルフィニル、-SO2-R5、又は-C(NHR7)-C(=O)-R8であり、その場合に
4がヒドロキシ、C1~6アルコキシ、アミノ、C1~6アルキルアミノ、テトラヒドロフラニルアミノ、又はモルホリニルであり、
5がC1~6アルキル、ヒドロキシ、又はアミノであり、
7が水素又はC1~6アルコキシカルボニルであり、
8がヒドロキシ又はC1~6アルコキシであり、
6が水素、C1~6アルキルカルボニル、ハロC1~6アルキルカルボニル、C1~6アルコキシカルボニル、C3~7シクロアルキルスルホニル、又はC1~6アルコキシC1~6アルキルスルホニルであり、
11がC1~6アルコキシC1~6アルキルであり、
12及びR13が水素、C1~6アルキル、及びC1~6アルコキシC1~6アルキルから独立して選択され、
xが1、2、3、4、5、又は6であり、
yが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0110】
5.式(II)又は項目1~4のいずれか1項に記載の化合物であって、式中
1がメチルであり、
2がメチル、シクロプロピル、フルオロ、クロロ、ヨード、トリフルオロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メトキシ、ジフルオロエトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、トリフルオロメトキシ、シクロプロピルメトキシ、ジフルオロシクロプロピルメトキシ、ヒドロキシメチルシクロプロピルメトキシ、オキセタニルエトキシ、オキセタニルメトキシ、テトラヒドロフラニルエトキシ、テトラヒドロフラニルメトキシ、テトラヒドロピラニルメトキシ、チエタニルメトキシ、(1,1-ジオキソチエタニル)メトキシ、(1,1-ジオキソチオラニル)メトキシ、オキソピロリジニルプロポキシ、オキソモルホリニルプロポキシ、オキソピペラジニルプロポキシ、(tert-ブトキシカルボニルオキソピペラジニル)プロポキシ、オキソイミダゾリジニルプロポキシ、メチルピペラジニルプロポキシ、アセチルピペラジニルプロポキシ、メチルスルホニルピペラジニルプロポキシ、(tert-ブトキシカルボニルピペラジニル)プロポキシ、アゼチジニルエトキシ、アセチルアゼチジニルエトキシ、メチルスルホニルアゼチジニルエトキシ、(tert-ブトキシカルボニルアゼチジニル)エトキシ、(tert-ブトキシカルボニルアゼチジニル)メトキシ、カルボキシブトキシ、カルボキシエトキシ、カルボキシヘキシルオキシ、カルボキシメトキシ、カルボキシプロポキシ、メトキシカルボニルブトキシ、エトキシカルボニルヘキシルオキシ、アミノカルボニルブトキシ、アミノカルボニルヘキシルオキシ、アミノカルボニルメトキシ、アミノカルボニルプロポキシ、メチルアミノカルボニルプロポキシ、テトラヒドロフラニルアミノカルボニルメトキシ、モルホリニルカルボニルメトキシ、メチルスルフィニルプロポキシ、メチルスルホニルプロポキシ、スルホプロポキシ、アミノスルホニルプロポキシ、アミノ-カルボキシ-プロポキシ、(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-カルボキシ-プロポキシ、(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-(メトキシカルボニル)-プロポキシ、アミノプロポキシ、アミノペントキシ、アミノヘキシルオキシ、アミノオクチルオキシ、メチルカルボニルアミノプロポキシ、クロロプロピルカルボニルアミノプロポキシ、(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ヘキシルオキシ、(tert-ブトキシカルボニルアミノ)オクチルオキシ、(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ペントキシ、(tert-ブトキシカルボニルアミノ)プロポキシ、シクロプロピルスルホニルアミノプロポキシ、メトキシエチルスルホニルアミノプロポキシ、メトキシプロピルスルホニル、メトキシプロピルアミノスルホニル、N-メトキシプロピル-N-メチル-アミノスルホニル、カルボキシ、メトキシカルボニル、メトキシプロピルアミノカルボニル、N-メトキシプロピル-N-メチル-アミノカルボニル、及びテトラヒドロフラニルオキシから独立して選択される1個、2個、3個、又は4個の基によって置換されているフェニルであり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0111】
6.R2がハロゲン、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルコキシ、C3~7シクロアルキルC1~6アルコキシ、及びハロC3~7シクロアルキルC1~6アルコキシから独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているフェニルである、式(II)又は項目1~4のいずれか1項に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0112】
7.R2がフルオロ、クロロ、メトキシ、ジフルオロエトキシ、トリフルオロエトキシ、シクロプロピルメトキシ、及びジフルオロシクロプロピルメトキシから独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているフェニルである、式(II)又は項目1~6のいずれか1項に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0113】
8.式(II)又は項目1、2、及び4のいずれか1項に記載の化合物であって、式中
1がC1~6アルキルであり、
2がハロゲン、シアノ、ハロC1~6アルコキシ、-O-Cx2x-R3、及び-O-Cy2y-NHR6から独立して選択される2個又は3個の基によって置換されているフェニルであり、
3が水素、C3~7シクロアルキル、ハロC3~7シクロアルキル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、C1~6アルキルスルホニルアゼチジニル、アミノカルボニル、又はC1~6アルキルスルホニルであり、
6が水素又はC1~6アルコキシカルボニルであり、
xが1、2、3、4、5、又は6であり、
yが1、2、3、4、5、又は6であり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0114】
9.式(II)又は項目1~5及び8のいずれか1項に記載の化合物であって、式中
1がメチルであり、
2がフルオロ、クロロ、シアノ、メトキシ、ジフルオロエトキシ、トリフルオロエトキシ、シクロプロピルメトキシ、ジフルオロシクロプロピルメトキシ、メチルスルホニルプロポキシ、アミノカルボニルメトキシ、オキセタニルメトキシ、オキセタニルエトキシ、テトラヒドロフラニルメトキシ、テトラヒドロピラニルメトキシ、メチルスルホニルアゼチジニルエトキシ、アミノヘキシルオキシ、及び(tert-ブトキシカルボニルアミノ)プロポキシから独立して選択される2個又は3個の基によって置換されているフェニルであり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0115】
10.式(II)又は項目1又は項目2に記載の化合物であって、式中
1がC1~6アルキルであり、
2がハロゲン、C1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、-O-Cx2x-R3、及びNR910から独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているピリジニルであり、
3が水素、C3~7シクロアルキル、チエタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、オキソモルホリニル、1,1-ジオキソチエタニル、C1~6アルキルカルボニルアゼチジニル、C1~6アルキルスルホニルアゼチジニル、-C(=O)-R4、カルボキシC1~6アルコキシ、又はアミノカルボニルC1~6アルコキシであり、その場合に
4がヒドロキシ、C1~6アルコキシ、又はアミノであり、
9及びR10が水素、C1~6アルキル、及びC1~6アルキルスルホニルから独立して選択され、又は
9及びR10が結合している窒素と一緒にそれらがピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、及びオキソピペラジニルを形成し、
xが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0116】
11.式(II)又は項目1~3及び10のいずれか1項に記載の化合物であって、式中
1がメチルであり、
2がフルオロ、クロロ、ヨード、メトキシ、メチル、ジフルオロエトキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、シクロプロピルメトキシ、チエタニルメトキシ、テトラヒドロフラニルメトキシ、テトラヒドロピラニルメトキシ、オキソモルホリニルプロポキシ、(1,1-ジオキソチエタニル)メトキシ、アセチルアゼチジニルメトキシ、メチルスルホニルアゼチジニルメトキシ、カルボキシブトキシ、カルボキシヘプチルオキシ、カルボキシヘキシルオキシ、カルボキシペンチルオキシ、カルボキシプロポキシ、メトキシカルボニルヘプチルオキシ、アミノカルボニルブトキシ、アミノカルボニルヘプチルオキシ、アミノカルボニルヘキシルオキシ、アミノカルボニルメトキシ、アミノカルボニルペンチルオキシ、アミノカルボニルプロポキシ、カルボキシメトキシプロポキシ、アミノカルボニルメトキシプロポキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、及びオキソピペラジニルから独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているピリジニルであり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0117】
12.R2がハロゲン、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルコキシ、C1~6アルキルアミノ、ジC1~6アルキルアミノ、ピロリジニル、及びオキソピペラジニルから独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているピリジニルである、式(II)又は項目1~3及び10のいずれか1項に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0118】
13.R2がフルオロ、クロロ、メトキシ、ジフルオロエトキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ピロリジニル、及びオキソピペラジニルから独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているピリジニルである、式(II)又は項目1~3及び10及び11のいずれか1項に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0119】
14.式(II)又は項目1、2、及び10のいずれか1項に記載の化合物であって、式中
1がC1~6アルキルであり、
2がハロゲン、ハロC1~6アルコキシ、-O-Cx2x-R3、及びNR910から独立して選択される2個又は3個の基によって置換されているピリジニルであり、
3が水素、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、オキソモルホリニル、又はアミノカルボニルであり、
9及びR10が水素及びC1~6アルキルから独立して選択され、又は
9及びR10が結合している窒素と一緒にそれらがピロリジニル及びオキソピペラジニルを形成し、
xが1、2、3、4、5、又は6であり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0120】
15.式(II)又は項目1又は項目6に記載の化合物であって、式中
1がメチルであり、
2がフルオロ、クロロ、メトキシ、ジフルオロエトキシ、テトラヒドロフラニルメトキシ、テトラヒドロピラニルメトキシ、オキソモルホリニルプロポキシ、アミノカルボニルヘキシルオキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ピロリジニル、及びオキソピペラジニルから独立して選択される2個又は3個の基によって置換されているピリジニルであり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがNであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0121】
16.式(II)又は項目1に記載の化合物であって、式中
1がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ヒドロキシC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルC1~6アルキル、又はカルボキシC1~6アルキルであり、
2がハロゲン、ニトロ、C1~6アルキルスルホニル、-O-Cx2x-R3、及び-O-Cy2y-NHR6から独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているフェニル;又はハロゲン、ハロC1~6アルコキシ、-O-Cx2x-R3、及びNR910から独立して選択される2個の基によって置換されているピリジニルであり、その場合に
3が水素、C3~7シクロアルキル、ヒドロキシ、C1~6アルコキシ、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、-C(=O)-R4、-SO2-R5、又はアミノカルボニルC1~6アルコキシであり、その場合に
4がヒドロキシ、C1~6アルコキシ、アミノ、ジC1~6アルキルアミノ、又はピロリジニルであり、
5がC1~6アルキルであり、
6が水素又はC1~6アルキルスルホニルであり、
9及びR10がC1~6アルキルであり、又は
9及びR10が結合している窒素と一緒にそれらがピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、及びオキソピペラジニルを形成し、
xが1、2、3、4、5、又は6であり、
yが1、2、3、4、5、又は6であり、
UがCHであり、
WがCHであり、
ZがCHであり、
XがNであり、
YがNである前記化合物、
又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0122】
17.R1がC1~6アルキルである、式(II)又は項目1又は項目16に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0123】
18.R1がメチルである、式(II)又は項目1、16、及び17のいずれか1項に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0124】
19.R2がハロゲン及びC1~6アルコキシから独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているフェニル;又はハロゲン、ジC1~6アルキルアミノ、ピロリジニル、及びオキソピペラジニルから独立して選択される2個の基によって置換されているピリジニルである、式(II)又は項目1及び16~18のいずれか1項に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0125】
20.R2がフルオロ及びメトキシから独立して選択される1個、2個、又は3個の基によって置換されているフェニル;又はフルオロ、ジメチルアミノ、ピロリジニル、及びオキソピペラジニルから独立して選択される2個の基によって置換されているピリジニルである、式(II)又は項目1及び16~19のいずれか1項に記載の化合物、又は前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくはエナンチオマー若しくはジアステレオマー。
【0126】
上で説明したように本発明の阻害剤はPAPD5及び/又はPAPD7に対するRNAi分子であってもよい。前記RNAi分子はsiRNA又はshRNAであり得る。
【0127】
例えば、本発明の阻害剤はPAPD5向けのsiRNAであってよく、その場合に前記siRNAは以下のsiRNAのうちのいずれか1つである。
PAPD5 siRNAプール(L-010011-00-0010;ON-TARGETplusヒトPAPD5):
siRNA-1‐J-010011-05-標的配列:CAUCAAUGCUUUAUAUCGA(配列番号10)
siRNA-2‐J-010011-06-標的配列:GGACGACACUUCAAUUAUU(配列番号11)
siRNA-3‐J-010011-07-標的配列:GAUAAAGGAUGGUGGUUCA(配列番号12)
siRNA-4‐J-010011-08-標的配列:GAAUAGACCUGAGCCUUCA(配列番号13)
【0128】
本発明の阻害剤はPAPD7向けのsiRNAであってもよく、その場合に前記siRNAは以下のsiRNAのうちのいずれか1つである。
PAPD7 siRNAプール(L-009807-00-0005;ON-TARGETplusヒトPAPD7):
siRNA-1‐J-009807-05-標的配列:GGAGUGACGUUGAUUCAGA(配列番号14)
siRNA-2‐J-009807-06-標的配列:CGGAGUUCAUCAAGAAUUA(配列番号15)
siRNA-3‐J-009807-07-標的配列:CGGAGUUCAUCAAGAAUUA(配列番号16)
siRNA-4‐J-009807-08-標的配列:GCGAAUAGCCACAUGCAAU(配列番号17)
【0129】
適切なsiRNAの標的配列が上に示されている。対応するsiRNAの配列はこれらの標的配列に対して全く相補的である。
【0130】
本発明の背景ではPAPD5とPAPD7の両方の発現を阻害するためにPAPD5向けのsiRNAをPAPD7向けのsiRNAと混合することを企図している。
【0131】
構造の点で完全に異なる2種類の抗HBV剤(すなわちDHQとTHP)がPAPD5とPAPD7に対して共通の結合部位を有する、又は少なくとも相互に近接して結合していることが添付実施例によって驚くべきことに示されている。具体的にはPAPD5及びPAPD7内の選択的相互作用ドメイン(SID)が特定されている。SIDとは同じ基準タンパク質に合致する全てのプレイ断片によって共有されるアミノ酸配列のことである。したがって、それらのSIDは抗HBV剤であるDHQとTHPがPAPD5及びPAPD7に結合するアミノ酸領域に相当する。したがって、これらの領域に結合することによってPAPD5及びPAPD7の活性が阻害され、結果としてHBVの増殖が阻害される。したがって、本発明の阻害剤はPAPD5及び/又はPAPD7の少なくとも1つのSIDにと好意的に結合する抗体であってよい。よって、本発明の阻害剤は配列番号7~9のうちのいずれか1つのアミノ酸伸長物に特異的に結合する抗体であってよい。本発明の阻害剤は配列番号7~9のアミノ酸伸長物のうちの1つより多くに特異的に結合する抗体であってもよい。
【0132】
用途
PAPD5及びPAPD7の同時阻害によって相乗的効果がHBV増殖の阻害について生じることが本発明の背景において驚くべきことに示されている。PAPD5の発現だけを低下させると約50%のHBsAg及びHBeAgの分泌が減少することが添付実施例によって示されている。PAPD7の発現だけを低下させると15%以下のHBsAg及びHBeAgの分泌が減少する。PAPD5及びPAPD7の同時ノックダウンによって単一ノックダウンの合計よりも上の相乗的効果がHBsAg及びHBeAgの分泌の減少について生じる。理論に捉われるものではないが、理論に捉われるものではないが、PAPD5及びPAPD7の両タンパク質は高い配列相同性と同じ酵素的機能を有しているのでこの相乗効果は両タンパク質の補正効果に起因する可能性がある。
【0133】
したがって、本発明の1つの実施形態はHBV感染症の治療及び/又は予防に使用するためのPAPD5の阻害剤とPAPD7の阻害剤を含む混合製剤に関する。したがって、本発明はHBV感染症の治療及び/又は予防に同時又は順次使用するためのPAPD5の阻害剤とPAPD7の阻害剤を含む混合製剤に関する。本発明の背景ではHBV感染症を治療(例えば改善)するために前記混合製剤を使用することを企図している。本発明の阻害剤に関連して本明細書において開示される定義は必要な変更が加えられて本発明の混合製剤に適用される。前記混合製剤はPAPD5阻害剤である分子とPAPD7阻害剤である別の分子(例えば、2種類の別個のsiRNA分子又は2種類の別個の小分子)を含んでよい。これらの2種類の別個の阻害剤は1つの単位内に、例えば1つの丸剤又はバイアル瓶内に製剤されてよい。あるいは、これらの2種類の別個の阻害剤は別々の単位内に、例えば別々の丸剤又はバイアル瓶内に個別に製剤されてよい。それらの2種類の阻害剤の相乗効果が達成されることを条件としてそれらの2種類の別個の阻害剤は一緒に(すなわち同時に)投与されても別々に(すなわち順次に)投与されてもよい。本発明の1つの態様では無薬品対照と比較して(すなわち薬品が投与されていない細胞又は対象と比較して)前記混合製剤によって少なくとも50%のHBsAg及びHBeAgの分泌の減少が生じる。
【0134】
本発明はHBV感染症の治療及び/又は予防に使用するための医薬組成物にも関し、その場合に前記医薬組成物は
(i)本発明の阻害剤又は本発明の混合製剤、及び
(ii)所望により薬学的に許容可能な担体
を含む。
【0135】
したがって、本発明はHBV感染症を治療及び/又は予防する方法であって、そのような処置を必要とする対象に本発明の阻害剤、本発明の医薬組成物、又は本発明の混合製剤の有効量を投与することを含む前記方法に関する。
【0136】
本発明の阻害剤、本発明の混合製剤、又は本発明の医薬組成物は混合療法に使用可能である。例えば、本発明の阻害剤、本発明の混合製剤、又は本発明の医薬組成物はインターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-2a、及びインターフェロンアルファコン-1(PEG化型及び非PEG化型)、リバビリン、ラミブジン(3TC)、エンテカビル、テノホビル、テルビブジン(LdT)、アデホビルなどの他のHBV剤、又はHBV RNA複製阻害剤、HBsAg分泌阻害剤、HBVカプシド阻害剤、アンチセンスオリゴマー(例えば国際公開第2012/145697号パンフレット及び国際公開第2014/179629号パンフレットに記載されている)、siRNA(例えば国際公開第2005/014806号パンフレット、国際公開第2012/024170号パンフレット、国際公開第2012/2055362号パンフレット、国際公開第2013/003520号パンフレット、国際公開第2013/159109号パンフレット、国際公開第2017/027350号パンフレット、及び国際公開第2017/015175号パンフレットに記載される)、HBV治療ワクチン、HBV予防ワクチン、HBV抗体療法(モノクローナル又はポリクローナル)、若しくはHBVの治療及び/若しくは予防用のTLR2、3、7、8、若しくは9のアゴニストなどの他の新興抗HBV剤と混合可能である。
【0137】
PAPD5及び/又はPAPD7の下方制御にはHBV感染細胞におけるHBsAgとHBeAg並びに細胞内HBV mRNAの生産の減少が付随することが添付実施例によって実証されている。これらの結果は、例えばPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤を用いる治療が進行中であるか、又は実施された場合にPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性がHBV感染症の治療中の治療成果の監視に使用可能であることを示している。したがって、本発明はHBV感染症の治療中に治療成果を監視するための方法であって、
(a)検査対象から得られた試料においてPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性を分析すること、
(b)少なくとも1人の基準対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性に対応する基準データと前記量及び/又は活性を比較すること、及び
(c)工程(b)の比較に基づいて治療成果を予測すること
を含む前記方法に関する。
【0138】
本発明の監視方法では検査対象はHBV感染症向けの薬物治療を受けている人間、又はHBV感染症向けの薬物治療を受けた人間であり得る。その薬物治療は上記の抗HBV剤を含んでよい。その薬物治療はPAPD5及び/又はPAPDの阻害剤を含んでもよい。
【0139】
本発明の監視方法では基準データは少なくとも1人の基準対象の試料におけるPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性に相当してよい。前記試料は血液又は肝臓生検試料であってよい。
【0140】
本発明の1つの態様は、前記少なくとも1人の基準対象がHBV感染症であるがHBV感染症向けの薬物治療を受けたことが無く、且つ、前記基準データと比較して減少した前記検査対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が工程(c)においてHBV感染症の治療における治療成果を表す本発明の監視方法に関する。例えば、前記減少したPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性は、前記検査対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が前記少なくとも1人の基準対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性の0~90%であることを意味し得る。例えば、前記減少したPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性は前記少なくとも1人の基準対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性の0~80%、好ましくは0~70%、より好ましくは0~60%、さらにより好ましくは0~50%、さらにより好ましくは0~40%、さらにより好ましくは0~30、さらにより好ましくは0~20%、及び最も好ましくは0~10%であり得る。
【0141】
本発明の別の態様は、前記少なくとも1人の基準対象がHBV感染症であってHBV感染症向けの薬物治療を受けたことがあり、且つ、前記基準データと比較して同一又は類似の前記検査対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が工程(c)においてHBV感染症の治療における治療成果を表す本発明の監視方法に関する。本発明の追加の態様は、前記少なくとも1人の基準対象がHBV感染症ではなく、且つ、前記基準データと比較して同一又は類似の前記検査対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が工程(c)においてHBV感染症の治療における治療成果を表す本発明の監視方法に関する。同一又は類似のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性は、前記検査対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が前記少なくとも1人の基準対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性の90~110%であることを意味し得る。例えば、前記同一又は類似のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性は前記少なくとも1人の基準対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性の95~105%であり得る。
【0142】
本発明は、HBV感染症を予防及び/又は治療(例えば改善)する化合物の特定及び/又は特徴解析のために使用可能である、PAPD5及び/又はPAPD7の発現が上昇した、低下した、又は存在しない細胞又は非ヒト動物(例えばマウス、ラット、フェレット、又はウサギ)も包含する。例えば、前記細胞又は非ヒト動物は、例えば発現ベクター内にクローン化されており、且つ、外来性プロモーターに機能可能であるように結合された、PAPD5及び/又はPAPD7をコードする外来性ヌクレオチド配列を含んでよい。前記細胞又は非ヒト動物はPAPD5及び/又はPAPD7、好ましくはPAPD5及びPAPD7を過剰発現してよい。あるいは、前記細胞又は非ヒト動物はPAPD5及び/又はPAPD7のノックダウン、好ましくはPAPD5及びPAPD7のノックダウンを有してよい。
【0143】
本発明の実施形態
したがって、本発明は以下の項目に関する。
1.B型肝炎ウイルス(HBV)感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物を特定するための方法であって、
(a)被験化合物を次のものと接触させること、
(a1)PAP関連ドメイン含有タンパク質5(PAPD5)及び/又はPAP関連ドメイン含有タンパク質7(PAPD7)、又は
(a2)PAPD5及び/又はPAPD7を発現する細胞、
(b)前記被験化合物が存在する状態と存在しない状態でPAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を測定すること、及び
(c)HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物としてPAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を低下させる化合物を特定すること
を含む前記方法。
【0144】
2.HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物を特定するための方法であって、
(a)被験化合物を次のものと接触させること、
(a1)PAPD5及び/又はPAPD7、又は
(a2)PAPD5及び/又はPAPD7を発現する細胞、
(b)前記被験化合物がPAPD5及び/又はPAPD7に結合するか測定すること、
(c)前記被験化合物がHBVの増殖を阻害するか測定すること、及び
(d)HBV感染症を予防、改善、及び/又は抑制する化合物としてPAPD5及び/又はPAPD7に結合し、且つ、HBVの増殖を阻害する化合物を特定すること
を含む前記方法。
【0145】
3.PAPD5がPAPD5ポリペプチド又はPAPD5 mRNAである、項目1又は2に記載の方法。
【0146】
4.前記PAPD5ポリペプチドが
(i)配列番号1又は2のアミノ酸配列、
(ii)少なくとも80%の同一性を(i)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列、
(iii)配列番号1又は2の酵素活性断片のアミノ酸配列、又は
(iv)少なくとも80%の同一性を(iii)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列
を含む、又は前記アミノ酸配列から成るポリペプチドである、項目3に記載の方法。
【0147】
5.前記PAPD5 mRNAが
(i)配列番号1又は2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
(ii)少なくとも80%の同一性を配列番号1又は2に対して有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドがそのポリヌクレオチドによってコードされる前記ヌクレオチド配列、
(iii)配列番号1又は2の酵素活性断片をコードするヌクレオチド配列、又は
(iv)少なくとも80%の同一性を配列番号1又は2の酵素活性断片のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドがそのポリヌクレオチドによってコードされる前記ヌクレオチド配列
を含む、又は前記ヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチドである、項目3に記載の方法。
【0148】
6.PAPD7がPAPD7ポリペプチド又はPAPD7 mRNAである、項目1又は2に記載の方法。
【0149】
7.前記PAPD7ポリペプチドが
(i)配列番号3のアミノ酸配列、
(ii)少なくとも80%の同一性を(i)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列、
(iii)配列番号3の酵素活性断片のアミノ酸配列、又は
(iv)少なくとも80%の同一性を(iii)のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列であって、そのポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する前記アミノ酸配列
を含む、又は前記アミノ酸配列から成るポリペプチドである、項目6に記載の方法。
【0150】
8.前記PAPD7 mRNAが
(i)配列番号3のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
(ii)少なくとも80%の同一性を配列番号3に対して有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドがそのポリヌクレオチドによってコードされる前記ヌクレオチド配列、
(iii)配列番号3の酵素活性断片をコードするヌクレオチド配列、又は
(iv)少なくとも80%の同一性を配列番号3の酵素活性断片のアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であって、ポリAポリメラーゼ機能を有するポリペプチドがそのポリヌクレオチドによってコードされる前記ヌクレオチド配列
を含む、又は前記ヌクレオチド配列から成るポリヌクレオチドである、項目6に記載の方法。
【0151】
9.前記細胞が真核細胞である、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
【0152】
10.HBVの増殖を阻害する前記化合物がHBV表面抗原(HBsAg)の分泌を阻害し、HBVエンベロープ抗原(HBeAg)の分泌を阻害し、且つ/又は細胞内HBV mRNA若しくはHBV DNAの生産を阻害する、項目2~9のいずれか1項に記載の方法。
【0153】
11.前記被験化合物を対照に対して比較する工程がさらに含まれる、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
【0154】
12.前記対照において不活性被験化合物が使用され、前記不活性被験化合物が
(i)PAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を低下させず、且つ/又は
(ii)PAPD5及び/又はPAPD7に結合せず、且つ、HBVの増殖を阻害しない
化合物である、項目11に記載の方法。
【0155】
13.前記被験化合物が
(i)スクリーニングライブラリーの小分子、又は
(ii)ファージディスプレイライブラリーのペプチド、抗体断片ライブラリーのペプチド、又はcDNAライブラリーに由来するペプチド
である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0156】
14.PAPD5及びPAPD7の活性がポリAポリメラーゼ機能である、項目1及び3~13のいずれか1項に記載の方法。
【0157】
15.HBV感染症の治療及び/又は予防に使用するためのPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤であって、
(i)PAPD5及び/又はPAPD7に結合する小分子、
(ii)PAPD5及び/又はPAPD7に対するRNA干渉(RNAi)分子、
(iii)PAPD5及び/又はPAPD7に特異的に結合する抗体、又は
(iv)次のものを含むゲノム編集装置
(a)部位特異的DNAヌクレアーゼ、又は部位特異的DNAヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、及び
(b)ガイドRNA、又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチド
である前記阻害剤。
【0158】
16.(i)PAPD5及び/又はPAPD7に結合し、且つ/又は
(ii)PAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を阻害する
項目15に記載の使用のための阻害剤。
【0159】
17.前記阻害剤によってHBsAg及びHBeAgの分泌が減少する、項目15又は16に記載の使用のための阻害剤。
【0160】
18.前記阻害剤によって慢性HBV感染症の発症が抑制され、且つ/又はHBV感染者の感染性が低下する、項目15~17のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【0161】
19.前記阻害剤が式(III)又は式(IV)の化合物である、項目15~18のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【0162】
【化8】
【0163】
【化9】
【0164】
20.前記阻害剤がsiRNA又はshRNAなどのRNAi分子である、項目15~18のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【0165】
21.前記阻害剤が配列番号7~9のうちのいずれか1つのアミノ酸伸長物に特異的に結合する抗体である、項目15~18のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【0166】
22.HBV感染症の治療及び/又は予防に同時又は順次使用するためのPAPD5の阻害剤とPAPD7の阻害剤を含む混合製剤。
【0167】
23.HBV感染症の治療及び/又は予防に使用するための医薬組成物であって、
(i)項目15~21のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤、又は項目22に記載の混合製剤、及び
(ii)所望により薬学的に許容可能な担体
を含む前記医薬組成物。
【0168】
24.HBV感染症の治療中に治療成果を監視するための方法であって、
(a)検査対象から得られた試料においてPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性を分析すること、
(b)少なくとも1人の基準対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性に対応する基準データと前記量及び/又は活性を比較すること、及び
(c)工程(b)の比較に基づいて治療成果を予測すること
を含む前記方法。
【0169】
25.前記検査対象がHBV感染症向けの薬物治療を受けている、又はHBV感染症向けの薬物治療を受けたことがある人間である、項目24に記載の監視方法。
【0170】
26.前記基準データが少なくとも1人の基準対象の試料におけるPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性に相当する、項目24又は25に記載の監視方法。
【0171】
27.前記少なくとも1人の基準対象がHBV感染症であるがHBV感染症向けの薬物治療を受けたことが無く、且つ、前記基準データと比較して減少した前記検査対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が工程(c)においてHBV感染症の治療における治療成果を表す、項目24~26のいずれか1項に記載の監視方法。
【0172】
28.前記減少したPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性とは、前記検査対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が前記少なくとも1人の基準対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性の0~90%であるという意味である、項目27に記載の監視方法。
【0173】
29.前記少なくとも1人の基準対象がHBV感染症であってHBV感染症向けの薬物治療を受けたことがあり、且つ、前記基準データと比較して同一又は類似の前記検査対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が工程(c)においてHBV感染症の治療における治療成果を表す、項目24~26のいずれか1項に記載の監視方法。
【0174】
30.前記少なくとも1人の基準対象がHBV感染症ではなく、且つ、前記基準データと比較して同一又は類似の前記検査対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が工程(c)においてHBV感染症の治療における治療成果を表す、項目24~26のいずれか1項に記載の監視方法。
【0175】
31.前記同一又は類似のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性とは、前記検査対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性が前記少なくとも1人の基準対象の試料中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性の90~110%であるという意味である、項目29又は30に記載の監視方法。
【0176】
製造
式(I)の化合物(すなわち式(I)によるジヒドロキノリジノン化合物)は国際公開第2015/113990(A1)号パンフレットに記載されるように合成可能である。簡単に説明すると、式(I)の化合物は以下の工程を含む方法によって調製可能であり、
(a)式(A)の化合物の加水分解
【0177】
【化10】
【0178】
【化11】
【0179】
式中、R1~R7及びR9は別段の指定が無い限り式(I)に関連して上で定義されている。
【0180】
工程(a)及び工程(b)では例えば水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムなどの塩基が使用可能である。
【0181】
式(II)の化合物(すなわち式(II)によるテトラヒドロピリドピリミジン化合物)は国際公開第2016/177655号パンフレットに記載されるように合成可能である。簡単に説明すると、式(II)の化合物は以下の工程のうちの1つを含む方法によって調製可能であり、
(a)ルイス酸の存在下での式(A)の化合物の式(B)の化合物との結合
【0182】
【化12】
【0183】
1M(B)、
(b)塩基の存在下での式(C)の化合物の式(D)の化合物との結合
【0184】
【化13】
【0185】
NHR910(D)、
(c)式(E)の化合物の式(F)の化合物との結合
【0186】
【化14】
【0187】
2-L2(F)、
式中、R1、R2、U、W、X、Y、及びZは式(II)に関連して上で定義されており、MはH、Mg、Zn、又はNaであり、L1がF、Cl、又はBrであり、且つ、L2がF、Cl、又はBrである。
工程(a)では前記ルイス酸は例えばBF3・Et2O又はSc(OTf)3であり得、
工程(b)では前記塩基は例えばK2CO3又はDIEAであり得、
工程(c)では前記反応は塩基の存在下で実施可能であり、その塩基は例えばK2CO3又はDIEAであり得る。前記反応は塩基が存在しない状態でも実施可能である。
【0188】
組成物
上で説明したように本発明はHBV感染症の治療及び/又は予防に使用するためのPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤、HBV感染症の治療及び/又は予防に使用するためのPAPD5の阻害剤とPAPD7の阻害剤を含む混合製剤、及び前記阻害剤又は前記混合製剤を含む医薬組成物に関する。前記医薬組成物(すなわち医薬)は所望により薬学的に許容可能な担体を含む。前記医薬組成物は治療上許容可能な希釈剤又は賦形剤をさらに含んでよい。
【0189】
典型的な医薬組成物はPAPD5阻害剤及び/又はPAPD7阻害剤と担体又は賦形剤を混合して調製される。適切な担体及び賦形剤は当業者によく知られており、例えばAnsel, Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Philadelphia: Lippincott, Williams & Wilkins, 2004、Gennaro, Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Philadelphia: Lippincott, Williams & Wilkins, 2000、及びRowe, Handbook of Pharmaceutical Excipients, Chicago, Pharmaceutical Press, 2005において詳細に記載されている。それらの製剤は1種類以上の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、滑材、加工助剤、着色料、甘味料、芳香剤、香味剤、希釈剤、及び薬品の外観の改善又は医薬品(すなわち医薬)の製造の補助のための他の公知の添加物を含んでもよい。例えば、本発明の医薬組成物は、生理学的に許容可能な担体、すなわち適切な投与形態に用いられる投薬量と濃度では受容者にとって無毒である担体とPAPD5の阻害剤及び/又はPAPD7の阻害剤を外界温度、適切なpH、及び所望の純度で混合することで製剤可能である。本発明の医薬組成物は無菌であってよい。
【0190】
本発明による化合物は薬学的に許容可能なそれらの塩の形態で存在し得る。「薬学的に許容可能な塩」という言葉は、本発明の化合物の生物学的有効性と特性を保持し、且つ、適切な無毒の有機酸又は無機酸又は有機塩基又は無機塩基から形成される従来の酸付加塩又は塩基付加塩を指す。酸付加塩には例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸などの無機酸に由来する酸付加塩、及びp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸等のような有機酸に由来する酸付加塩が含まれる。塩基付加塩には、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、及び例えば水酸化テトラメチルアンモニウムなどの第四級アンモニウムヒドロキシドに由来する塩基付加塩が含まれる。医薬化合物の塩への化学修飾は化合物の改善された物理的及び化学的安定性、吸湿性、流動性、及び溶解性を得るために製薬化学者によく知られている技術である。その技術は例えばBastin著、Organic Process Research & Development、2000年、第4巻、427~435頁、又はPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第6版(1995年)内のAnsel著、196頁及び1456~1457頁に記載されている。例えば、本明細書において提供される化合物の薬学的に許容可能な塩はナトリウム塩であり得る。
【0191】
1つのキラル中心、又は幾つかのキラル中心を含有する化合物はラセミ体、ジアステレオ異性体混合物、又は光学活性単一異性体のいずれかとして存在し得る。それらのラセミ体は公知の方法に従ってエナンチオマーに分離可能である。特に、結晶化によって分離可能であるジアステレオ異性体塩は例えばD型又はL型の酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、又はカンファースルホン酸などの光学活性酸との反応によってラセミ混合物から形成される。
【0192】
本発明の医薬組成物は適正医療実施規範に合致するように製剤化され、調剤され、投与される。この状況で考慮される因子には治療を受ける特定の哺乳類動物、個々の患者の臨床状態、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、患者の年齢と性別、及び医療従事者に公知の他の因子が含まれる。本明細書において、「有効量」(「(治療)有効用量」としても知られる)は医師又は他の臨床家によって求められている対象の生物学的又は医学的応答を誘発することになる化合物の量を意味する。本発明の阻害剤、本発明の混合製剤、又は本発明の医薬組成物の「有効量」はそのような考慮事項によって左右されることになり、HBsAg及び/又はHBeAgを阻害するために必要な最小量である。例えば、そのような量は受容者の細胞にとって有毒であるか、又はその哺乳類動物全体にとって有毒である量よりも少ない量であってよい。
【0193】
例えば、PAPD5阻害剤及び/又はPAPD7阻害剤が式(I)又は式(II)の化合物である場合、一回の投薬で非経口的に投与される薬学的有効量は患者の体重に対して約0.01~100mg/kgの範囲内であってよく、あるいは一日当たり患者の体重に対して約0.01~100mg/kgの範囲内であってよく、使用される典型的な初期化合物範囲は0.3~15mg/kg/日である。別の例ではPAPD5阻害剤及び/又はPAPD7阻害剤が式(I)又は式(II)の化合物である場合、錠剤及びカプセル剤などの経口単位剤形が約0.1~約1000mgを含有していることが好ましい。
【0194】
本発明の阻害剤、本発明の混合製剤、又は本発明の医薬組成物は、経口投与、局所(頬側及び舌下を含む)投与、直腸投与、膣投与、経皮投与、非経口投与、皮下投与、腹腔内投与、肺内投与、皮内投与、髄腔内投与、及び硬膜外投与、及び鼻腔内投与、及び所望により局所的治療向けに傷害内投与を含むあらゆる適切な手段で投与可能である。非経口注入には筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は皮下投与が含まれる。
【0195】
本発明の阻害剤、本発明の混合製剤、又は本発明の医薬組成物はあらゆる従来の投与形態で、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、水剤、分散剤、懸濁剤、シロップ剤、スプレー剤、坐剤、ゲル剤、乳剤、パッチ剤等として投与可能である。そのような組成物は医薬調製物に通常の成分、例えば、希釈剤、担体、pH調整剤、甘味料、充填剤、及びその他の活性薬剤を含んでもよい。
【0196】
本発明の阻害剤、本発明の混合製剤、又は本発明の医薬組成物はHBV発明の予防及び/又は治療に有用である。それらはHBsAg及び/又はHBeAgの分泌を阻害することが好ましく、HBsAg及びHBeAgの分泌を阻害することが最も好ましい。
【0197】
定義
「治療」、「治療すること」、「治療する」、又はそのような用語は所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを全般的に意味するために本明細書において使用される。この効果は疾患及び/又はその疾患が原因の有害作用の部分的治癒又は完全治癒に関して治療的である。本明細書において使用される「治療」という用語は対象における疾患のあらゆる治療に当てはまり、その用語は(a)その疾患を抑制すること、すなわちHBsAg及び/又はHBeAgの増加の阻害のようにその疾患の発症を止めること、又は(b)その疾患を改善(すなわち軽減)すること、すなわちHBsAg及び/又はHBeAgの生産の抑制のようにその疾患の退行を引き起こすことを含む。したがって、HBV感染症を改善及び/又は抑制する化合物はHBV発明を治療する化合物である。本明細書において使用される「治療」という用語は、既に明確になり、且つ、顕在化したHBV感染症の治療のように既に顕在化した障害の医療介入に関することが好ましい。本明細書において、「予防すること」、「予防」、又は「予防する」という用語は予防的処置、すなわち疾患を治療することよりもむしろ予防することが目的である手段又は手法に関する。予防は疾患又はその症状の完全予防又は部分的予防に関して予防的である所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。したがって、本明細書において「HBV感染症の予防」には対象においてHBV感染症が生じることを予防すること、及びHBV感染症の症状が生じることを予防することが含まれる。
【0198】
本発明の目的では「対象」(又は「患者」)は脊椎動物であり得る。本発明の背景では「対象」という用語にはヒトも他の動物も含まれ、特に哺乳類動物が含まれ、他の生物も含まれる。したがって、本明細書において提供される手段と方法はヒトの治療と獣医用途の両方に適用可能である。よって、本明細書では対象はマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、モルモット、フェレット、ネコ、イヌ、ニワトリ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、又は霊長類動物などの動物であり得る。対象は哺乳類動物であることが好ましい。対象はヒトであることがより好ましい。
【0199】
「B型肝炎ウイルス感染症」又は「HBV感染症」という用語は当技術分野において一般的に知られおり、その用語はB型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされ、且つ、肝臓を侵す感染症を指す。HBV感染症は急性感染症又は慢性感染症であり得る。感染者の中には初期感染時に何の症状も無い者がおり、中には急に嘔吐、皮膚黄変、疲労感、暗色尿、及び腹部痛を伴う病状が始まる者もいる(「Hepatitis B Fact sheet N°204」、who.int.、2014年7月;2014年11月4日に検索)。これらの症状は数週間続くことが多く、これらの症状の結果死亡する場合があり得る。症状が始まるまで30日~180日かかることがある。出生前後に感染した者では90%の者が慢性B型肝炎感染症を発症するが、5歳より後に感染した者では10%未満しか発症しない(「Hepatitis B FAQs for the Public - Transmission」、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、2011年11月29日に検索)。慢性患者の大半が症状を持たないが、しかしながらやがて肝硬変や肝臓癌が発症する(Chang, 2007, Semin Fetal Neonatal Med, 12: 160-167)。これらの合併症の結果、慢性患者の15~25%が死亡する(「Hepatitis B Fact sheet N°204」、who.int.、2014年7月;2014年11月4日に検索)。本明細書では「HBV感染症」という用語には急性B型肝炎感染症と慢性B型肝炎感染症が含まれる。「HBV感染症」という用語には初期感染症の無症状期、有症状期、並びにHBV感染症の無症状慢性期も含まれる。
【0200】
本明細書では配列番号1又は2(すなわちPAPD5)の酵素活性断片は、配列番号1又は2(すなわちPAPD5)の連続アミノ酸残基伸長物を含み、且つ、PAPD5の生物活性(すなわち機能性)、特にポリAポリメラーゼ機能を保持するポリペプチドに関する。これと合致して、本明細書では配列番号3(すなわちPAPD7)の酵素活性断片は、配列番号3(すなわちPAPD7)の連続アミノ酸残基伸長物を含み、且つ、PAPD7の生物活性(すなわち機能性)、特にポリAポリメラーゼ機能を保持するポリペプチドに関する。PAPD5及びPAPD7の酵素活性断片の例はヌクレオチジルトランスフェラーゼドメイン及びCid1ポリAポリメラーゼである。
【0201】
本明細書では「ポリペプチド」という用語にはペプチド(アミド)結合によって連結されたアミノ酸単量体を含む、又はそのようなアミノ酸単量体から成る全ての分子が含まれる。したがって、「ポリペプチド」という用語はペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質などの全てのアミノ酸配列を含む。本明細書に記載される「ポリペプチド」は天然ポリペプチドであっても非天然ポリペプチドであってもよい。非天然ポリペプチドはその天然の相対物と比較して少なくとも1つの突然変異(例えば、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、又はアミノ酸付加)を含む場合がある。非天然ポリペプチドはベクターにクローン化され、且つ/又は前記ポリペプチドの天然プロモーターではないプロモーターに機能可能であるように結合される場合もある。前記プロモーターは構成的活性プロモーターであり得る。本明細書において使用される「アミノ酸」又は「残基」という用語には天然アミノ酸並びに他のアミノ酸(例えば、非天然アミノ酸、核酸配列によってコードされないアミノ酸、合成アミノ酸等)のL異性体とD異性体が含まれる。天然アミノ酸の例はアラニン(Ala;A)、アルギニン(Arg;R)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、システイン(Cys;C)、グルタミン(Gln;Q)、グルタミン酸(Glu;E)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リシン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、トレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、バリン(Val;V)である。翻訳後修飾天然アミノ酸はデヒドロブチリン(Dhb)及びラビオニン(Lab)である。非天然アミノ酸の例が上に記載されている。非天然ポリペプチドは天然型のポリペプチドのアミノ酸配列と比較してそのアミノ酸配列に共有結合又は非共有結合した1つ以上の非アミノ酸置換基又は異種性アミノ酸置換基、例えばレポーター分子又は他のリガンドを含む場合がある。
【0202】
「ヌクレオチド配列」又は「ポリヌクレオチド」という用語は当技術分野において一般的に知られており、その用語はDNA及びRNAなどの天然分子を含む、又はそれらから成る分子、並びに例えばオリゴヌクレオチドチオホスフェート、置換リボオリゴヌクレオチド、LNA分子、PNA分子、GNA(グリコール核酸)分子、TNA(トレオース核酸)分子、モルホリノポリヌクレオチドなどの核酸類似体、又はポリシロキサン及び2’-O-(2-メトキシ)エチル-ホスホロチオエートなどの修飾型骨格を有する核酸、又はメチルヌクレオシド、チオヌクレオシド、サルフェートヌクレオシド、ベンゾイルヌクレオシド、フェニルヌクレオシド、アミノヌクレオシド、プロピルヌクレオシド、クロロヌクレオシド、及びメタノカルバヌクレオシドなどの置換基を有する核酸、又は検出を容易にするためのレポーター分子を含む、又はそれらから成る分子を含む。さらに、「ヌクレオチド配列」という用語は本発明の背景では「核酸分子」という用語と同等に解釈されるものとされ、その用語は具体的にDNA、RNA、PNA、又はLNA、又はそれらのハイブリッド、又は当技術分野において知られているそれらのあらゆる修飾物を指すことができる(例えば修飾物について例えば米国特許第5525711号明細書、米国特許第4711955号明細書、米国特許第5792608号明細書、欧州特許第302175号明細書を参照されたい)。本明細書において記載され、提供される核酸配列に含まれる核酸残基は天然核酸残基でも人工核酸残基でもよい。核酸残基の例はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、ウラシル(U)、キサンチン(X)、及びヒポキサンチン(HX)である。当業者が理解するように、チミン(T)とウラシル(U)は各種のポリヌクレオチドに応じて互換的に使用され得る。例えば、当業者が理解するようにDNAの部分としてのチミン(T)は転写された対応するmRNAの部分としてのウラシル(U)に対応する。本明細書において記載され、提供されるポリヌクレオチドは一本鎖でも二本鎖でもよく、直鎖状でも環状でもよく、天然でも人工でもよい。
【0203】
本明細書において提供されるヌクレオチド配列はベクター内にクローン化され得る。本明細書において使用される「ベクター」という用語にはプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、及び遺伝子操作に一般的に使用される他のベクターが含まれる。好ましい実施形態ではこれらのベクターは哺乳類細胞又は酵母細胞のような細胞の形質転換に適切である。本明細書では前記ベクターは発現ベクターであってよい。一般的に発現ベクターは文献中に広範に記載されている。発現ベクターは選択マーカー遺伝子と宿主内での複製を確実にする複製起点、プロモーター、及び転写終結シグナルを含んでよい。発現することが望まれる核酸配列の挿入を可能にする少なくとも1つの制限部位又はポリリンカーがそのプロモーターと終結シグナルとの間に存在してよい。本明細書において提供されるヌクレオチド配列をクローン化することが可能なベクターの非限定的な例はアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、HIVベースレンチウイルスベクター、非ウイルス性ミニサークルベクター、又は細菌発現系及び真核生物発現系用の他のベクターである。
【0204】
本明細書では「化合物」という用語は小分子などの有機分子、RNAi分子などのポリヌクレオチド、抗体などのポリペプチド、及び無機化合物を含むあらゆる分子を意味する。「化合物」という用語には脂質、ホルモン類似体、ポリペプチドリガンド、酵素、受容体、チャネル、及び抗体複合体も含まれる。例えば、本明細書では化合物とはPAPD5及び/又はPAPD7に対するRNAi分子、PAPD5及び/又はPAPD7に特異的に結合する抗体、又はPAPD5及び/若しくはPAPD7に結合する小分子であり得る。
【0205】
「阻害剤」という用語は当技術分野において知られており、その用語は特定のタンパク質(例えばPAPD5及び/又はPAPD7)の生理学的機能(すなわち活性)を完全又は部分的に抑制する、又は低下させることが可能な化合物/物質に関する。阻害剤は「アンタゴニスト」としても知られる。本発明の背景において、PAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤は、例えば、前記化合物/物質がそれぞれPAPD5及び/又はPAPD7に結合するとそれぞれPAPD5及び/又はPAPD7の生理学的活性の抑制又は低下又は阻害又は不活性化を引き起こし得る。PAPD5及び/又はPAPD7への阻害剤/アンタゴニストの結合によってPAPD5及び/又はPAPD7の酵素機能(すなわちポリAポリメラーゼ機能)が低下することもあれば、PAPD5及び/又はPAPD7への内在性活性化分子の結合が抑制されることによってこれらのタンパク質の活性(すなわち機能)が阻害されることもある。本発明の背景において、PAPD5及び/又はPAPD7の「阻害剤」はPAPD5遺伝子及び/又はPAPD7遺伝子の発現の抑制又は低下によりそれぞれPAPD5及び/又はPAPD7の活性/機能を抑制することが可能であってよい。したがって、PAPD5及び/又はPAPD7の機能性(すなわち活性)であって、ポリAポリメラーゼ機能を含む前記機能の低下に反映されるPAPD5及び/又はPAPD7の発現レベルの低下(例えばPAPD5及び/又はPAPD7のmRNAレベルの低下、又はPAPD5及び/若しくはPAPD7のタンパク質レベルの低下)がPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤によって引き起こされ得る。よって、本発明の背景ではPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤はPAPD5及び/又はPAPD7のレベルを低下させることが可能であるPAPD5発現及び/又はPAPD7発現の転写抑制因子も包含し得る。したがって、PAPD5及び/又はPAPD7の活性の低下(比較的に低い発現の結果であり得る)を引き起こす全ての手段と方法が本発明に準拠するPAPD5及び/又はPAPD7の阻害剤として使用されるものとする。
【0206】
本明細書では「RNA干渉(RNAi)分子」という用語はRNAの発現又は翻訳を阻害するあらゆる分子を指す。低分子干渉RNA(siRNA)は転写後の相補性mRNAに結合することによりそれらの分解と翻訳機会の喪失を引き起こす二本鎖RNAである。短ヘアピンRNA(shRNA)は発現するとDICERとRNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)を介してmRNAを減少させることが可能なヘアピン構造を有する人工RNA分子である。RNAi分子は目的の遺伝子のRNA配列に基づいて設計可能である。その後で対応するRNAi分子を化学的に、又はインビトロ転写によって合成することができ、又はベクター若しくはPCR産物から発現することができる。
【0207】
「小分子」という用語は低分子量(900ダルトン未満)を有する有機化合物を指す。小分子は生物学的過程の制御に役立つ場合があり、一般的に10-9mの程度のサイズを有する。多くの薬品が小分子である。
【0208】
本明細書では「抗体」という用語は広い意味で使用され、具体的には完全モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2種類の完全抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二特異性抗体)、及び抗体断片が、所望の生物活性を示す(すなわちPAPD5及び/又はPAPD7に特異的に結合する)限り、その用語に包含される。ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、又はCDR移植抗体も含まれる。「抗体断片」は完全抗体の部分を含む。「抗体断片」という用語には、例えば(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインから成る一価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片、(iii)VHドメインとCH1ドメインから成るFd断片、(iv)抗体の単腕のVLドメインとVHドメインから成るFv断片、(v)VHドメインから成るdAb断片(Ward; 1989; Nature 341; 544-546)、及び(vi)単離相補性決定領域(CDR)を含む、又はこれらから成る抗原結合部分、すなわち抗原(PAPD5及び/又はPAPD7等)に結合する能力を保持する「抗原結合部位」(例えば、断片、サブ配列、相補性決定領域(CDR))が含まれる。抗体断片又は抗体派生物はF(ab’)2断片、Fv断片、又はscFv断片、又は単鎖抗体をさらに含む。
【0209】
「特異的に結合する」又は「特異的結合を行う」という語句が結合分子を指すとき、その語句は専ら、又は主に標的分子、好ましくはPAPD5及び/又はPAPD7に対して中間の、又は他かい結合親和性を有する結合分子(例えば抗体)を指す。「特異的に結合する」という語句はタンパク質及び他の生物由来物質からなる異種性集団が存在する状態で標的(好ましくはPAPD5タンパク質及び/又はPAPD7タンパク質)の存在について決定する結合反応を指す。したがって、指定された測定条件下では明示された結合分子は特定の標的(好ましくはPAPD5タンパク質及び/又はPAPD7タンパク質)に優先的に結合し、被験試料中に存在する他の成分には大量に結合しない。そのような条件下での標的タンパク質への特異的な結合には特定の標的タンパク質に対する特異性に関して選択される結合分子が必要とされ得る。特定の標的タンパク質と特異的に反応する結合分子を選択するために様々な測定形式が使用可能である。例えば、PAPD5タンパク質及び/又はPAPD7タンパク質と特異的に反応する結合分子を特定するために固相ELISA免疫アッセイ、免疫沈降、Biacore、及びウエスタンブロットが使用可能である。PAPD5タンパク質は配列番号1又は2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであることが最も好ましい。しかしながら前記PAPD5タンパク質は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号1又は2のアミノ酸配列に対して有し、且つ、機能的であり、その機能がポリAポリメラーゼ機能であるポリペプチドであってもよい。前記PAPD7タンパク質は配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであることが最も好ましい。しかしながら前記PAPD7タンパク質は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を配列番号3のアミノ酸配列に対して有し、且つ、機能的であり、その機能がポリAポリメラーゼ機能であるポリペプチドであってもよい。特異的又は選択的反応はバックグラウンドのシグナル又はノイズの少なくとも2倍であることが典型的であり、バックグラウンドの10倍を超えることがさらに典型的である。換言すると、「特異的に結合する」という語句はタンパク質及び他の生物由来物質からなる異種性集団の中で標的タンパク質(好ましくはPAPD5及び/又はPAPD7)の存在について決定する結合反応を指す。ある特定の標的(好ましくはPAPD5及び/又はPAPD7)に特異的に結合する抗体は少なくとも約1×106-1又は107-1、又は好ましくは約108-1~109-1、又はより好ましくは約1010-1~1011-1、又はそれよりも高い結合定数(Ka)で前記標的に結合することが典型的である。また、特定の標的(好ましくはPAPD5及び/又はPAPD7)に特異的に結合する抗体は所定の標的又は近縁の標的以外の非特異的標的(例えば、BSA、カゼイン)への結合についての親和性よりも少なくも2倍高い親和性でこの標的に結合することが好ましい。
【0210】
本発明の背景では「同一性」又は「パーセント同一性」という用語はアミノ酸配列又はヌクレオチド配列が本明細書において示される配列、例えば配列番号1、2、又は3の配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性を有していることを意味しており、同一性の値が高い方が低い値よりも好ましい。本発明に従うと核酸配列又はアミノ酸配列が2つ以上存在する状況での「同一性」又は「パーセント同一性」は、当技術分野において知られている配列比較アルゴリズムを使用して、又は手作業の整列と目視検査によって測定する場合のように比較ウインドウ又は指定領域にわたって最大の一致度になるように比較及び整列したときに同一である2つ以上の配列、又は同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチドを指定パーセンテージ(例えば、配列番号1、2、若しくは3のアミノ酸配列、又は配列番号4、5、若しくは6のヌクレオチド配列との少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性)で有する2つ以上の配列を指す。
【0211】
記載される同一性が好ましくは少なくとも約50アミノ酸長の領域、好ましくは少なくとも100アミノ酸長の領域、より好ましくは少なくとも400アミノ酸長の領域、より好ましくは少なくとも500アミノ酸長の領域、より好ましくは少なくとも600アミノ酸長の領域、最も好ましくはアミノ酸全長の領域にわたって存在する。ヌクレオチド配列の場合では、記載される同一性が少なくとも100ヌクレオチド長の領域、好ましくは少なくとも1,000ヌクレオチド長の領域、より好ましくは少なくとも2,000ヌクレオチド長の領域、最も好ましくはヌクレオチド全長の領域にわたって存在することが最も好ましい。
【0212】
当業者は、例えばCLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson, 1994, Nucl Acids Res, 2: 4673-4680)に基づくアルゴリズム又はFASTDB(Brutlag, 1990, Comp App Biosci, 6: 237-245)などのアルゴリズムを当技術分野において知られているように使用して配列間のパーセント同一性を決定する方法を知ることになる。当業者にはBLASTアルゴリズムとBLAST2.0アルゴリズム(Altschul, 1997, Nucl Acids Res 25: 3389-3402、Altschul, 1993, J Mol Evol, 36: 290-300、Altschul, 1990, J Mol Biol 215: 403-410)も利用可能である。例えば、BLAST2.0はベーシック・ローカルアラインメント・サーチツール(BLAST)の代わりになり(Altschul, 1997、上記引用と同じ、Altschul, 1993、上記引用と同じ、Altschul, 1990、上記引用と同じ)、局所的な配列アラインメントの検索に使用可能である。BLASTは上で考察したようにヌクレオチド配列とアミノ酸配列の両方のアラインメントを作成して配列の類似性を決定する。それらのアラインメントの局所的性質のため、BLASTは完全一致の決定又は類似配列の特定に特に有用である。BLASTを使用する類位のコンピューター手法(Altschul, 1997、上記引用と同じ、Altschul, 1993、上記引用と同じ、Altschul, 1990、上記引用と同じ)がGenBank又はEMBLなどのヌクレオチドデータベース中の同一分子又は関連分子の検索に使用される。
【0213】
本明細書では「測定すること」という用語は「分析すること」又は「決定すること」(すなわち検出及び/又は定量すること)も意味する。例えば、「PAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を測定すること」という用語はPAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性の量を決定すること、例えばPAPD5ポリペプチド及び/又はPAPD7ポリペプチド(すなわちタンパク質)の量を決定することを意味する。PAPD5タンパク質及び/又はPAPD7タンパク質の量及び/又は活性を測定するための方法が当技術分野において知られており、本明細書において上に記載されている。同様に「被験化合物がPAPD5及び/又はPAPD7に結合するか測定すること」という用語は被験化合物がPAPD5及び/又はPAPD7に、例えばPAPD5ポリペプチド(すなわちタンパク質)及び/又はPAPD7ポリペプチド(すなわちタンパク質)に結合するか分析又は決定(すなわち検出)することを意味する。これと合致して、「被験化合物がHBVの増殖を阻害するか測定すること」という用語は被験化合物がHBVの増殖を阻害するか分析又は決定(すなわち検出及び/又は定量)することを意味する。
【0214】
本明細書において使用される場合、「C1~6アルキル」という用語は1~6個、特に1~4個の炭素原子を含有する飽和型の直鎖又は分岐鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、1-ブチル、2-ブチル、tert-ブチル等を単独で、又は組み合わせて表す。具体的な「C1~6アルキル」基はメチル、エチル、イソプロピル、及びtert-ブチルである。
【0215】
「C3~7シクロアルキル」という用語は3~7個までの炭素原子、特に3~6個までの炭素原子を含有する飽和型炭素環、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等を単独で、又は組み合わせて指す。具体的な「C3~7シクロアルキル」基はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルである。
【0216】
「C2~6アルケニル」という用語は2~6個、特に2~4個の炭素原子を含有する不飽和型の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、例えばビニル、プロペニル、アリル、ブテニル等を意味する。具体的な「C2~6アルケニル」基はアリル及びビニルである。
【0217】
「C2~6アルキニル」という用語は2~6個、特に2~4個の炭素原子を含有する不飽和型の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、例えばエチニル、1-プロピニル、プロパルギル、ブチニル等を意味する。具体的な「C2~6アルキニル」基はエチニル及び1-プロピニルである。
【0218】
「Cx2x」という用語は1~6個、特に1~4個の炭素原子を含有する飽和型の直鎖又は分岐鎖アルキル基を単独で、又は組み合わせて表す。「C1~6アルコキシ」という用語は「C1~6アルキル」が上で定義された通りであるC1~6アルキル-O-基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、2-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ等を単独で、又は組み合わせて表す。具体的な「C1~6アルコキシ」基はメトキシ、エトキシ、及びプロポキシである。
【0219】
「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
【0220】
「ハロC1~6アルキル」という用語はC1~6アルキル基の水素原子のうちの少なくとも1つが同じハロゲン原子又は異なるハロゲン原子、特にフッ素原子によって置き換えられているC1~6アルキル基を意味する。ハロC1~6アルキルの例にはモノフルオロ置換型、ジフルオロ置換型、又はトリフルオロ置換型のメチル、エチル、又は-プロピル、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル、3,3-ジフルオロプロピル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、又はトリフルオロメチルが挙げられる。具体的な「ハロC1~6アルキル」基はジフルオロメチル又はトリフルオロメチルである。
【0221】
「ハロC1~6アルコキシ」という用語はC1~6アルコキシ基の水素原子のうちの少なくとも1つが同じハロゲン原子又は異なるハロゲン原子、特にフッ素原子によって置き換えられているC1~6アルコキシ基を意味する。ハロC1~6アルコキシルの例にはモノフルオロ置換型、ジフルオロ置換型、又はトリフルオロ置換型のメトキシ、エトキシ、又はプロポキシ、例えばフルオロプロポキシ、ジフルオロプロポキシ、トリフルオロプロポキシ、フルオロエトキシ、ジフルオロエトキシ、トリフルオロエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、又はトリフルオロメトキシが挙げられる。具体的な「ハロC1~6アルコキシ」基は3-フルオロプロポキシ、3,3-ジフルオロプロポキシ、3,3,3-トリフルオロプロポキシ、2-フルオロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、又はトリフルオロメトキシである。
【0222】
「C3~7シクロアルキル」という用語は3~7個までの炭素原子、特に3~6個までの炭素原子を含有する飽和型炭素環、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等を単独で、又は組み合わせて指す。具体的な「C3~7シクロアルキル」基はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルである。
【0223】
「C1~6アルコキシ」という用語は「C1~6アルキル」が上で定義された通りであるC1~6アルキル-O-基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、2-ブトキシ、tert-ブトキシ等を単独で、又は組み合わせて表す。具体的な「C1~6アルコキシ」基はメトキシ及びエトキシであり、より具体的にはメトキシである。
【0224】
「ハロC3~7シクロアルキル」という用語はC3~7シクロアルキル基の水素原子のうちの少なくとも1つが同じハロゲン原子又は異なるハロゲン原子、特にフッ素原子によって置き換えられているC3~7シクロアルキル基を意味する。ハロC3~7シクロアルキルの例にはモノフルオロ置換型又はジフルオロ置換型のシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル、例えばフルオロシクロプロピル、ジフルオロシクロプロピル、フルオシクロブチル、ジフルオシクロブチル、フルオシクロペンチル、ジフルオシクロペンチル、フルオシクロヘキシル、又はジフルオシクロヘキシルが挙げられる。具体的な「ハロC1~6アルキル」基はジフルオロシクロプロピルである。
【0225】
式(I)に関して「アミノ」という用語は一級アミノ(-NH2)、二級アミノ(NH-)、又は三級アミノ
【0226】
【化15】
を単独で、又は組み合わせて指す。
【0227】
式(II)に関して「アミノ」という用語は式-NR’R”の基であって、式中、R’及びR”が独立して水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C3~7シクロアルキル、ヘテロC3~7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールである前記基を意味する。あるいは、R’及びR”が結合している窒素と一緒にそれらはヘテロC3~7シクロアルキルを形成し得る。
【0228】
「カルボニル」という用語は-C(O)-基を単独で、又は組み合わせて指す。
【0229】
「シアノ」という用語は-CN基を単独で、又は組み合わせて指す。
【0230】
「C1~6アルキルスルフィニル」という用語はC1~6アルキル基が上で定義されている-SO-C1~6アルキル基を意味する。C1~6アルキルスルフィニルの例にはメチルスルフィニル及びエチルスルフィニルが挙げられる。
【0231】
「C1~6アルキルスルホニル」という用語はC1~6アルキル基が上で定義されている-SO2-C1~6アルキル基を意味する。C1~6アルキルスルホニルの例にはメチルスルホニル及びエチルスルホニルが挙げられる。
【0232】
「単環式ヘテロアリール」という用語はN、O、及びSから選択される1個、2個、3個、又は4個のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である5~8個の環原子からなる一価芳香族複素単環系を意味する。単環式ヘテロアリール部分の例にはピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、アゼピニル、ジアゼピニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル等が挙げられる。
【0233】
式(I)に関して「単環式ヘテロシクロアルキル」という用語はN、O、及びSから選択される1個、2個、又は3個の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である一価飽和型又は部分不飽和型の3~7個の環原子からなる単環系を指す。単環式ヘテロシクロアルキルの例はアジリジニル、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、ピロリジニル、2-オキソ-ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロ-チエニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキソ-チオモルホリン-4-イル、アゼパニル、ジアゼパニル、ホモピペラジニル、又はオキサゼパニルである。具体的な「単環式ヘテロシクロアルキル」基はモルホリニル、2-オキソ-ピロリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニルであり、より具体的にはピロリジン-1-イル、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、及びモルホリン-1-イルである。
【0234】
式(II)に関して「単環式ヘテロシクロアルキル」という用語はN、O、及びSから選択される1個、2個、又は3個の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である一価飽和型又は部分不飽和型の4~7個の環原子からなる単環系である。単環式ヘテロシクロアルキルの例はアジリジニル、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、ピロリジニル、2-オキソ-ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、チエタニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペラジニル、モルホリニル、2-オキソ-モルホリニル、2-オキソ-ピペラジニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキソ-チオモルホリン-4-イル、1,1-ジオキソチオラニル、1,1-ジオキソチエタニル、オキソイミダゾリジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、ホモピペラジニル、又はオキサゼパニルである。具体的な「単環式ヘテロシクロアルキル」基はアゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、1,1-ジオキソチエタニル、1,1-ジオキソチオラニル、モルホリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキソイミダゾリジニル、2-オキソ-ピロリジニル、2-オキソ-モルホリニル、及び2-オキソ-ピペラジニルである。より具体的には「単環式ヘテロシクロアルキル」基はアゼチジニル、ピロリジニル、モルホリニル、オキソモルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、及びオキソピペラジニルである。
【0235】
「アリール」という用語は6~10個の炭素環原子を含む一価芳香族炭素環式単環系又は二環系を意味する。アリール部分の例にはフェニル及びナフチルが含まれ、具体的な「アリール」はフェニルである。
【0236】
「ヘテロアリール」という用語はN、O、及びSから選択される1個、2個、3個、又は4個のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である5~12個の環原子からなる一価芳香族複素環式単環系又は二環系を意味する。ヘテロアリール部分の例にはピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、アゼピニル、ジアゼピニル、イソオキサゾリル、ベンゾフラニル、イソチアゾリル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、イソベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、又はキノキサリニルが挙げられる。具体的な「ヘテロアリール」はピリジニル及びピリミジニルである。
【0237】
「N含有単環式ヘテロアリール」という用語はヘテロ原子のうちの少なくとも1つがNである単環式ヘテロアリールを指す。N含有単環式ヘテロアリールの例はピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、アゼピニル、ジアゼピニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル等である。具体的な「N含有単環式ヘテロアリール」基はイミダゾリル、ピラゾリル、及びトリアゾリルであり、より具体的にはイミダゾール-1-イル、ピラゾール-1-イル、及び1,2,4-トリアゾール-1-イルである。
【0238】
「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。ハロゲンは特にフッ素、塩素、又は臭素である。
【0239】
「ヒドロキシ」という用語は-OH基を単独で、又は組み合わせて指す。
【0240】
「2-オキソ-ピロリジニル」という用語は
【0241】
【化16】
を単独で、又は組み合わせて指す。
【0242】
「スルホニル」という用語は-S(O)2-基を単独で、又は組み合わせて指す。
【0243】
「C1~6アルキルアミノ」という用語はアミノ基の水素原子のうちの少なくとも1つがC1~6アルキル基によって置き換えられている上で定義されたようなアミノ基を指す。
【0244】
「C1~6アルキルスルホニル」という用語は「C1~6アルキル」が上で定義された通りであるC1~6アルキル-S(O)2-基を指す。
【0245】
「アミノカルボニル」という用語は「アミノ」が上で定義された通りであるアミノ-C(O)-基を指す。
【0246】
「シアノC3~7シクロアルキル」という用語はC3~7シクロアルキル基の水素原子のうちの少なくとも1つがシアノ基によって置き換えられている上で定義されたようなC3~7シクロアルキル基を指す。
【0247】
「ピロリジニルカルボニル」という用語はピロリジニル-C(O)-基を指す。
【0248】
「エナンチオマー」という用語は化合物の重ね合わせることができない互いの鏡像である2種類の立体異性体を意味する。
【0249】
「ジアステレオマー」という用語は2つ以上のキラル中心を有する立体異性体であって、その分子が互いの鏡像ではない立体異性体を意味する。ジアステレオマーは異なる物理的特性、例えば融点、沸点、分光特性、及び反応性を有する。
【0250】
非限定的な図と実施例を参照することで本発明をさらに説明する。
【実施例0251】
実施例によって本発明を例示する。
【0252】
材料と方法
化合物の化学
ハイブリジェニクス・サービス・SASによって実施されるY3Hスクリーニングに適切であるようにDHQとTHPの2種類の化学シリーズの各1種類の化合物を合成した。両化合物はPEG5リンカーを含み、且つ、トリメトプリム(TMP)アンカーリガンドでタグされた(表1)。
【0253】
【表1】
【0254】
Y3H ULTImate YChemH(商標)スクリーン
前記2種類の化合物はロッシュによってハイブリジェニクス・サービス・SASに提供され、透過性と毒性について検査された。その後、化合物をハイブリジェニクスのcDNAヒト胎盤ライブラリー(PLA)に対してスクリーニングした。それらのスクリーニングはハイブリジェニクスULTImate Y2H(商標)向けに開発された最適化済み細胞間接合プロトコルに従って、異なる化合物濃度を用いて実施された(表2)。
【0255】
【表2】
【0256】
Y3H ULTImate YChemH(商標)依存性アッセイ
前記スクリーンより得られたクローンを96ウェルフォーマットで選び取り、スポットアッセイを用いる依存性アッセイにおいて選択条件(HIS+)下での増殖について陽性のクローンを評価した。前記タグ付き化合物が存在するときに選択培地上で増殖可能なクローンだけを選別し、処理(細胞溶解、PCR、遺伝子シーケンシング)し、BLAST分析を用いてタンパク質アラインメントについてマップした。
【0257】
Y3H ULTImate YChemH(商標)1対1検証実験-プレイ断片
この検証工程ではそれぞれ1種類の特定された断片プレイと1種類の化学プローブ(HBX129653、HBX129654)を1対1実験において検査する。前記スクリーニングライブラリーから選択された3種類のプレイのプラスミドを酵母細胞から抽出し、大腸菌中で増幅し、そして再度YHGX13酵母細胞に形質転換処理した。それぞれの相互作用について、トリプトファン、ロイシン、及びヒスチジンを含まず、且つ、前記化学プローブとFK506を添加された選択培地上にフックコンストラクトとプレイコンストラクトの両方を発現する二倍体酵母培養物の1倍希釈物、1/10希釈物、1/100希釈物、及び1/1000希釈物をスポットした。二回の複製実験で相互作用を検査した。各化合物及び各濃度(DMSO;5μM、10μM、及び20μMのHBX129653;5μM、10μM、及び20μMのHBX129654;5μMのHBX24786トリメトプリム(TMP);及び5μMのHBX129634(TMP-PEG5-OH))に付き1枚のプレートを使用した。プレートを30℃で3日間にわたってインキュベートした。
【0258】
Y3H ULTImate YChemH(商標)1対1検証実験-全長タンパク質
全長PAPD5var1のコード配列(NM_001040284.2)及び全長PAPD7varX1のコード配列(XM_005248234.2)をそれらのタンパク質の(高GC含量を除くための)N末端側コドン最適化遺伝子断片と市販のC末端側領域のクローンから再構成し、元のpGADGHからの派生物であるプラスミドpP7(Cellular interactions in development: A practical approach、Hartley, D.A.編、1993年、Oxford University Press、オックスフォード内のBartelら著、153~179頁)内にGal4活性化ドメイン(AD)とイン・フレームになるようにクローン化した(AD-プレイ)。挿入断片全体をシーケンシングすることでそれらのコンストラクトを確認した。それぞれのプレイについて、二倍体酵母培養物を作製するために前記プレイプラスミドで形質転換されたYHGX13酵母細胞(Y187 ade2-101::loxP-kanMX-loxP, matα)とDHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)フックで形質転換されたYPT6AT酵母細胞(mata)との間でミニ交雑を実施した。それぞれの相互作用について、トリプトファン、ロイシン、及びヒスチジンを含まず、且つ、前記化学プローブとFK506を添加された選択培地上にフックコンストラクトとプレイコンストラクトの両方を発現する二倍体酵母培養物の1倍希釈物、1/10希釈物、1/100希釈物、及び1/1000希釈物をスポットした。二回の複製実験で相互作用を検査した。各化合物及び各濃度(DMSO;5μM、10μM、及び20μMのHBX129653;5μM、10μM、及び20μMのHBX129654;5μMのHBX24786トリメトプリム(TMP);及び5μMのHBX129634(TMP-PEG5-OH))に付き1枚のプレートを使用した。プレートを30℃で3日間にわたってインキュベートした。
【0259】
Y3H ULTImate YChemH(商標)-遊離化合物との競合
本競合アッセイは一定濃度の化学プローブ(HBX129653、HBX129654)と濃度上昇するその化学プローブの親化合物(MOL653、MOL654)又はその不活性型エナンチオマー(INACT653、INACT654)を使用する前記1対1検証に基づいている(表3)。前記遊離化合物について8種類の濃度(0μM、0.25μM、0.5μM、1μM、2μM、5μM、10μM、及び20μM)、及び前記タグ付きY3H化合物について一定濃度(1μM)の選択培地上で本競合アッセイを実施した。
【0260】
【表3】
【0261】
HepaRG細胞培養
HepaRG細胞(Biopredics International、レンヌ、フランス;カタログ番号HPR101)をウィリアムのE培地(GIBCO)、培養培地サプリメント(Biopredics、カタログ番号ADD710)、及び1%(体積/体積)GlutaMAX-I(Gibco番号第32551番)及び1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco番号第15140番)からなる完全HepaRG培養培地の中で5%CO2含有加湿雰囲気下、37℃において2週間にわたって培養した。分化を開始させるために集密細胞上の前記培養培地に0.9%(体積/体積)DMSO(シグマ・アルドリッチ、D2650)を添加した。1週間後に培地を完全分化培地(1.8%(体積/体積)DMSOを添加したHepaRG培養培地)に置き換え、7日毎に分化培地を交換しながらその中で細胞を約4週間にわたって維持した。分化したHepaRG細胞(dHepaRG)は胆管細胞様細胞に囲まれた肝細胞様細胞島を示した。HBV感染及び化合物処理の前にdHepaRG細胞を100μLの完全分化培地中にウェル当たり60,000細胞の割合でコラーゲンI被覆96ウェルプレート(Gibco、カタログ番号A11428-03)に播種した。HBV感染の前に播種後約1週間にわたって96ウェルプレート中で細胞に分化表現型を回復させた。
【0262】
dHepaRGのHBV感染
30のMOIでHBV粒子をdHepaRG細胞に感染させた。それらのHBV粒子はHBV産生HepG2.2.15細胞(Sells et al 1987 Proc Natl Acad Sci U S A 84, 1005-1009)から生産された。dHepaRGの培養条件、分化、及びHBV感染はこれまでに記載されている(Hantz, 2009, J. Gen. Virol., 2009, 90: 127-135)。簡単に説明すると、4%PEG-8000とウイルスストック(20~30GE/細胞)を含む完全分化培地(120μL/ウェル)を添加した。感染から1日後にリン酸緩衝生理食塩水でそれらの細胞を3回洗浄し、その実験中に培地(完全分化培地)を2日毎に交換した。
【0263】
HBV感染HepaRGのsiRNA処理
4種類の異なるsiRNAのプール(ON TARGETplus)をGE Dharmaconより取得した(表4)。
【0264】
【表4】
【0265】
HBV細胞を使用する感染の1日前と感染の4日後にPAPD5かPAPD7のどちらか、又は両方に対するsiRNAプール、又は対照としての非ターゲティングsiRNAで細胞を処理した。製造業者のプロトコルに従ってDharmaFect 4(GE Dharmacon;カタログ番号T-2004-01)及びOPTI-MEM(Thermo Scientific;カタログ番号51985034)を使用してそれらのsiRNAを形質移入した。それらの細胞を11日間にわたって処理した。
【0266】
HBV抗原の測定
HBV抗原の発現と分泌に対する影響を評価するために11日目に上清を収集した。製造業者のプロトコルに従ってCLIA ELISAキット(Autobio Diagnostic;番号CL0310-2、番号CL0312-2)を使用してHBVのHBsAgレベルとHBeAgレベルを測定した。簡単に説明すると、ウェル当たり25μLの上清を各抗体で被覆されたマイクロタイタープレートに移し、25μLの酵素複合体試薬を添加した。そのプレートを振盪器上で60分間にわたって室温でインキュベートした後に自動洗浄機を使用してウェルを洗浄緩衝液で5回洗浄した。25μLの基質Aと基質Bを各ウェルに添加した。それらのプレートを振盪器上で10分間にわたって室温でインキュベートした後にEnvision発光リーダー(Perkin Elmer)を使用して発光を測定した。
【0267】
細胞生存度
HBV感染dHepaRG細胞から上清培地を取り除いた後にCellTiterGlo One溶液(Promega)と共に細胞をインキュベートして細胞生存度を測定した。
【0268】
細胞内mRNAのリアルタイムPCR
細胞内mRNAを単離するためにdHepaRGをPBS(Gibco)で1回洗浄し、そしてマグナピュア「96細胞内RNAラージボリュームキット」(ロッシュ;番号05467535001)を使用して溶解した。それらの溶解物は-80℃で貯蔵可能である。リアルタイムqPCR反応のためにAB7900 HT配列検出システム(Applied Biosystems)とTaqMan(登録商標)遺伝子発現マスターミックス(ThermoFisher Scientific)を使用した。HBV mRNAの検出のためにHBVコア特異的プライマー(Integrated DNA Technologies)(表5)を使用し、siRNAの存在下でのPAPD5及びPAPD7の減少の測定のために遺伝子特異的TaqMan(登録商標)発現アッセイプローブ(ThermoFisher Scientific;PAPD5:カタログ番号4331182;PAPD7:カタログ番号4331182)を使用した。β-アクチンに対するTaqMan(登録商標)発現アッセイプローブ(ThermoFisher Scientific;PAPD5:カタログ番号4331182)を使用して試料を正規化した。
【0269】
【表5】
【0270】
実施例1:DHQとTHPはPAPD5及びPAPD7に結合する
PAPD5/7はDHQ及びTHPの共通の相互作用パートナーとしてY3H ULTImate YChemHスクリーニングにおいて特定された
材料と方法の節において記載されたような両化合物(DHQ及びTHP)についてのY3Hスクリーニングにおいて多数の断片によってPAPD5(変異体1:NP_001035374;変異体2:NP_001035375)とPAPD7(XP_005248291)の両方のタンパク質が特定された。それらの特定されたタンパク質はハイブリジェニクスによって(スケールA~Dのうちの)Aという信頼スコアを与えられた(表6)。
【0271】
【表6】
【0272】
特定されたプレイ断片のY3H ULTImate YChemH1対1検証とさらに全長タンパク質での検証を用いてDHQ及びTHPとのPAPD5/7の相互作用が確認できた
第1の検証工程では(材料と方法の節において記載されたような)1対1検証アッセイのために第1のスクリーニングで特定された3種類の断片を選択し、それらの断片を3つの異なる濃度(5μM、10μM、及び20μM)で試験した(表7)。
【0273】
【表7】
【0274】
3種類の断片全てが既に最低の試験濃度でDHQとTHPの特異的結合体として検証できた(図1)。
【0275】
第2の検証工程ではPAPD5及びPAPD7の全長タンパク質を合成し、DHQ及びTHPとの(材料と方法の節において記載されたような)1対1検証に使用した(表8)。
【0276】
【表8】
【0277】
これらの全長タンパク質とDHQ及びTHPとの間の相互作用が最低の試験濃度で確認され、それらの化学プローブに対して特異的であることが示された(図2)。
【0278】
Y3HにおけるDHQ及びTHPとのPAPD5/7の相互作用について両方の遊離活性型化合物は競合可能であるが、不活性型エナンチオマーは競合しない
タンパク質断片並びに全長PAPD5及び全長PAPD7へのDHQとTHPの結合の検証後に不活性型又は活性型の遊離化合物のどちらかを使用する(材料と方法の節において記載されたような)Y3H ULTImate YChenH競合実験においてその結合を確認した(表9)。前記不活性型エナンチオマーが存在するときではなく前記親活性型化合物が存在するときに酵母の増殖低下が減少したことは、前記親化合物が前記化学プローブと競合し、前記タンパク質標的と相互作用することを意味する。
【0279】
全ての試験化合物について、製造業者のプロトコルに従ってCellTiter-Glo細胞生存度発光アッセイ(Promega)を用いて最高の濃度(20μM)での非選択培地上の毒性を検査した。酵母の増殖は影響を受けなかったのでこの濃度ではどの化合物についても毒性が認められなかった(データを示さず)。両方の活性型親化合物(DHQ及びTHPについてそれぞれMOL653及びMOL654)について競合が観察可能であり、断片との相互作用についての競合に必要な濃度よりも全長タンパク質への結合についての競合に必要な濃度が低かった(図3及び図4)。交差競合の成功はDHQ及びTHPがPAPD5/7に対して共通の結合側面を有する、又は少なくとも相互に近接して結合していることを示唆する。
【0280】
【表9】
【0281】
実施例2:siRNAを使用するPAPD5及び/又はPAPD7の阻害による効果的なHBV感染症の治療
DHQ及びTHPのPAPD5/7への結合とこれらの2種類のタンパク質のHBV遺伝子発現に対する影響を相関づけるため、我々は自然にHBVに感染したdHepaRGにおいてこれらのタンパク質を減少させ、この減少のウイルスパラメーターに対する影響をモニターするためにRNAi技術を使用した。そのために我々は材料と方法の節に記載されているようにHBV感染dHepaRG細胞においてPAPD5及びPAPD7に対するsiRNAプール(表4参照)を使用した。
【0282】
PAPD5の減少により、(材料と方法の節に記載されているようなCLIA ELISA及びリアルタイムPCRを用いて測定される)分泌されたHBsAg及びHBeAg、並びに細胞内HBV mRNAによって評価されるウイルス発現の阻害が生じた。PAPD5 mRNAの減少がHBV遺伝子の発現を劇的に低下させた一方でPAPD7の阻害が有するHBV発現に対する効果は控えめであった(図7)。しかしながらPAPD7とPAPD5に対するsiRNAが混合されると相乗的抗HBV活性の増強が観察され(図7)、PAPD5が存在しないときの補正的役割がPAPD7について示唆された。
【0283】
実施例3:DHQ及びTHPによってHBsAg及びHBeAgが効率的に減少する
HBsAgとHBeAgを読みだされた情報として使用してDHQ及びTHP及びそれらの変異体のHBV感染症に対する有効性をHepG2.2.15細胞において測定した。
【0284】
HepG2.2.15細胞(Sells et al 1987 Proc Natl Acad Sci U S A 84, 1005-1009)を96ウェルプレート(100uL中に15.000細胞/ウェル)内でDMEM+GluTaMax-1(GiBCO;カタログ番号10569)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(GiBCO;カタログ番号15140)、10%FBS(Clontech;カタログ番号631106)、0.25ug/mlジェネテシン(Invitrogen;10131035)中に培養した。DMSO中に100μMが最高濃度の3倍段階希釈物である9段階希釈物を使用して前記化合物を試験した。四回の複製実験で各化合物を試験した。それらの細胞を3日間にわたってインキュベートし、上清を収集し、そして材料と方法の節に記載されているようにHBsAgとHBeAgを測定した。HBsAg及びHBeAgの分泌の減少における試験された化合物のIC50値が下に示されている。
HBX129653(DHQ-TMP):IC50 HBsAg 1.181uM
HBX129654(THP-TMP):IC50 HBsAg 0.299uM
MOL653(DHQ-遊離活性型):IC50 HBsAg 0.003uM;IC50 HBeAg 0.007uM
MOL654(THP-遊離活性型):IC50 HBsAg 0.003uM
INACT653(DHQ-遊離不活性型):IC50 HBsAg 3.15uM
INACT654(THP-遊離不活性型):IC50 HBsAg >25uM
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024026252000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024026252000001.app
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症を治療及び/又は予防するために使用するためのPAPD5及び/又はPAPD7阻害剤であって、前記阻害剤が、以下の:
(a)PAPD5及び/又はPAPD7に結合する小分子;又は
(b)PAPD5及び/又はPAPD7に特異的に結合する抗体
である、前記PAPD5及び/又はPAPD7阻害剤。
【請求項2】
(a)PAPD5及び/又はPAPD7ポリペプチドに結合するか;及び/又は
(b)PAPD5及び/又はPAPD7の発現及び/又は活性を阻害する、請求項1に記載の使用のための阻害剤。
【請求項3】
前記阻害剤が、HBsAg及びHBeAgの分泌を減少させる、請求項1又は2に記載の使用のための阻害剤。
【請求項4】
前記阻害剤が、慢性HBV感染の発症を抑制するか、及び/又はHBV感染者の感染力を低下させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【請求項5】
前記阻害剤が、以下の式(I):
式(I);
【化1】
であって、式中
1が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、又はC1~6アルコキシであり、
2が水素;ハロゲン;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルコキシ;シアノ;C3~7シクロアルキル;ヒドロキシ又はフェニル-Cx2x-O-であり、
3が水素;ハロゲン;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;シアノ;ピロリジニル;アミノ;フェニル-Cx2x-N(C1~6アルキル)-;C1~6アルコキシカルボニル-ピペラジニル;又はR7‐O‐であり、ここでR7が水素;非置換型であるか、若しくはフルオロ、ヒドロキシ、及びC2~6アルケニルから独立して選択される1~3個の置換基で置換されているC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルコキシC1~6アルコキシC1~6アルキル;アミノC1~8アルキル;C1~6アルキルカルボニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルホニルアミノC1~8アルキル;C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル;C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル;シアノC1~6アルキル;C3~7シクロアルキルC1~6アルキル;シアノC3~7シクロアルキルC1~6アルキル;フェニルC1~6アルキル;ピロリジニルカルボニルC1~6アルキル;C2~6アルキニル;ヒドロキシC1~6アルキルC2~6アルキニル;アミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;C1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;ジC1~6アルキルアミノC1~6アルコキシC1~6アルキル;カルボキシC1~6アルキル;若しくはC1~6アルコキシカルボニルアミノC1~8アルキル;ヘテロアリールがN含有単環式ヘテロアリールであるヘテロアリールC1~6アルキル;若しくはヘテロシクロアルキルが単環式ヘテロシクロアルキルであるヘテロシクロアルキルC1~6アルキルであり、
4が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、シアノ、又はC1~6アルコキシであり、
ただしR1、R2、R3、及びR4が同時に水素ではないことを条件とし、
5が水素又はC1~6アルキルであり、
6が水素;非置換型であるか、又はフルオロによって1回、2回、又は3回置換されているC1~6アルキル;非置換型であるか、又はフルオロ若しくはC1~6アルキルによって1回、2回、又は3回置換されているC3~7シクロアルキル;又はフェニル-Cx2x-であり、xが1~6である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【請求項6】
前記阻害剤が式(II):
【化2】
で表される化合物であって、式中
1がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロC1~6アルキル、ヒドロキシC1~6アルキル、ニトロC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルC1~6アルキル、カルボキシC1~6アルキル、ジ(C1~6アルコキシカルボニル)メチレニル、シアノC1~6アルキル、C3~7シクロアルキルC1~6アルキル、フェニルC1~6アルキル、C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル、C1~6アルキルスルホニルC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルスルホニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~6アルキル、アミノカルボニルC1~6アルキル、ジC1~6アルキルアミノカルボニルC1~6アルキル、単環式ヘテロシクロアルキルC1~6アルキル、又はイミダゾリルC1~6アルキルであり、
2がアリール又はヘテロアリールであり、前記アリール又はヘテロアリールが非置換型であるか、又はC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、ハロC1~6アルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、ハロC1~6アルコキシ、-O-Cx2x-R3、-O-Cy2y-NHR6、-NR910、-SO2-R11、-SO2-NR1213、カルボキシ、C1~6アルコキシカルボニル、-C(=O)-NR1213、アリール、ヘテロアリール、単環式ヘテロシクロアルキル、及び-O-単環式ヘテロシクロアルキルから独立して選択される1個、2個、3個、又は4個、の置換基で置換されており、その場合に単環式ヘテロシクロアルキルは非置換型であるか、又はC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、若しくはC1~6アルコキシカルボニルによって置換されており、
3が水素;C3~7シクロアルキル;ハロC3~7シクロアルキル;ヒドロキシ;ヒドロキシC1~6アルキルC3~7シクロアルキル;C1~6アルコキシ;単環式ヘテロシクロアルキル;C1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキル、又はC1~6アルコキシカルボニルによって置換されている単環式ヘテロシクロアルキル;-C(=O)-R4;C1~6アルキルスルフィニル;-SO2-R5;-C(NHR7)-C(=O)-R8;カルボキシC1~6アルコキシ、又はアミノカルボニルC1~6アルコキシであり、
4がヒドロキシ、C1~6アルコキシ、アミノ、C1~6アルキルアミノ、ジC1~6アルキルアミノ、テトラヒドロフラニルアミノ、ピロリジニル、又はモルホリニルであり、
5がC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、C1~6アルキルアミノ、又はジC1~6アルキルアミノであり、
7が水素又はC1~6アルコキシカルボニルであり、
8がヒドロキシ又はC1~6アルコキシであり、
6が水素、C1~6アルキルカルボニル、ハロC1~6アルキルカルボニル、C1~6アルコキシカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキルスルホニル、又はC1~6アルコキシC1~6アルキルスルホニルであり、
9及びR10が水素、C1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルキルスルホニル、C3~7シクロアルキルカルボニル、及びC3~7シクロアルキルスルホニルから独立して選択され、又は
9及びR10が結合している窒素と一緒にそれらが単環式ヘテロシクロアルキルを形成し、
11がC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロC3~7シクロアルキル、ヒドロキシC1~6アルキル、C1~6アルコキシC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシC1~6アルキル、C3~7シクロアルキルC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、C1~6アルキルアミノC1~6アルキル、ジC1~6アルキルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルスルホニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニルアミノC1~6アルキル、C1~6アルキルスルフェニルC1~6アルキル、C1~6アルキルスルファニルC1~6アルキル、又はC1~6アルキルスルホニルC1~6アルキルであり、
12及びR13が水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、及びハロC3~7シクロアルキルから独立して選択され、又は
12及びR13が結合している窒素と一緒にそれらが単環式ヘテロシクロアルキルを形成し、
xが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
yが1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
U、W、及びZがCH及びNから独立して選択され、
X及びYのうちの一方がNであり、他方がCH又はNである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【請求項7】
前記阻害剤が、配列番号7、8又は9のいずれか1つのアミノ酸伸長物に特異的に結合する抗体である、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤。
【請求項8】
HBV感染の治療及び/又は予防における同時又は連続使用のための、PAPD5の阻害剤及びPAPD7の阻害剤を含む併用製剤。
【請求項9】
HBV感染の治療及び/又は予防における使用のための医薬組成物であって、前記医薬組成物が以下の:
a.請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための阻害剤;又は請求項8に記載の併用製剤;及び
b.薬学的に許容される担体
を含む、前記医薬組成物。
【請求項10】
HBV感染の治療中の治療成功をモニターするための方法であって、該方法は以下の:
a.試験対象から得られたサンプル中のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性を分析すること;
b.前記量及び/又は活性を、少なくとも1つの参照対象のPAPD5及び/又はPAPD7の量及び/又は活性に対応する参照データと比較すること;ならびに
c.比較ステップ(b)に基づいて治療の成功を予測すること
を包含する、前記方法。
【請求項11】
インビトロでのPAPD5及び/又はPAPD7の生理学的活性を低下又は阻害又は不活性化するための
a.PAPD5及び/又はPAPD7に結合する小分子であって、該小分子が900ダルトン未満の低分子量を有する有機化合物である、小分子;又は
b.PAPD5及び/又はPAPD7に特異的に結合する抗体;
の使用であって、該小分子は、HBeAgの分泌を低下させ;
ここで、PAPD5ポリペプチドは、以下の:
(i)配列番号1又は2のアミノ酸配列;
(ii)(i)のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する、アミノ酸配列;
(iii)配列番号1又は2の酵素的に活性なフラグメントのアミノ酸配列;又は
(iv)(iii)のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する、アミノ酸配列;
を含むか、又はからなり;
ここで、PAPD7ポリペプチドは、以下の:
(v)配列番号3のアミノ酸配列;
(vi)(v)のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する、アミノ酸配列;
(vii)配列番号3の酵素活性フラグメントのアミノ酸配列;又は
(viii)(vii)のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する、アミノ酸配列
を含むか、又はからなる、前記使用。
【請求項12】
インビトロでPAPD5及び/又はPAPD7の生理学的活性を低下又は阻害又は不活性化する方法であって、当該方法が、細胞に以下の:
a. PAPD5及び/又はPAPD7に結合する小分子であって、該小分子が900ダルトン未満の低分子量の有機化合物である、小分子;又は
b. PAPD5及び/又はPAPD7に特異的に結合する抗体
投与することを含み、
ここで、該小分子は、HBeAgの分泌を減少させ;
ここで、PAPD5ポリペプチドは、以下の:
(i)配列番号1又は2のアミノ酸配列;
(ii)(i)のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する、アミノ酸配列;
(iii)配列番号1又は2の酵素的に活性なフラグメントのアミノ酸配列;又は
(iv)(iii)のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する、アミノ酸配列;
を含むか、又はからなり;
ここで、PAPD7ポリペプチドは、以下の:
(v)配列番号3のアミノ酸配列;
(vi)(v)のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する、アミノ酸配列;
(vii)配列番号3の酵素活性フラグメントのアミノ酸配列;又は
(viii)(vii)のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ポリペプチドがポリAポリメラーゼ機能を有する、アミノ酸配列
を含むか、又はからなる、前記方法。
【請求項13】
前記小分子又は抗体がPAPD5及び/又はPAPD7ポリペプチドに結合して、内在性活性化分子のPAPD5及び/又はPAPD7への結合を阻害し、及び/又はPAPD5及び/又はPAPD7の酵素機能を低下させる、請求項11に記載の使用又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記低分子又は抗体が、慢性HBV感染の発症を阻害する、及び/又はHBV感染者の感染力を低下させる、請求項11もしくは請求項13に記載の使用、又は請求項12もしくは請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、配列番号7,8又は9のいずれか1つのアミノ酸伸長物に特異的に結合する、請求項11、請求項13又は請求項14に記載の使用、あるいは請求項12、請求項13又は請求項14に記載の方法。