(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026253
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】AAVベクター、及び抗AAV(アデノ関連ウイルス)中和抗体についてのアッセイ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/864 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023204220
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2021195840の分割
【原出願日】2014-07-11
(31)【優先権主張番号】61/845,841
(32)【優先日】2013-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ハイ,キャサリン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ミンゴッツィ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イーフェン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ウイルスキャプシドに対する体液性免疫を克服する戦略を提供する。
【解決手段】ベクター配列がリポータトランスジーンを含む組換えAAVベクター配列において、前記リポータトランスジーンが、(a)一本鎖又は自己相補的ゲノムを含み、(b)1つ又は複数の発現調節エレメントに作動可能に連結され、かつ(c)1つ又は複数のフランキングエレメントによってフランキングされている、組換えAAVベクター配列を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベクター配列がリポータトランスジーンを含む組換えAAVベクター配列において、前
記リポータトランスジーンが、(a)一本鎖又は自己相補的ゲノムを含み、(b)1つ又
は複数の発現調節エレメントに作動可能に連結され、かつ(c)1つ又は複数のフランキ
ングエレメントによってフランキングされている、組換えAAVベクター配列。
【請求項2】
ベクターがリポータトランスジーンを含む組換えAAVベクターにおいて、前記リポー
タトランスジーンが、(a)一本鎖又は自己相補的ゲノムを含み、(b)1つ又は複数の
発現調節エレメントに作動可能に連結され、かつ(c)1つ又は複数のフランキングエレ
メントによってフランキングされており、ここで、前記組換えAAVベクターは、感染性
組換えAAV粒子を含む、組換えAAVベクター。
【請求項3】
AAVに結合する抗体を、分析又は検出若しくは測定するための方法において、以下:
(a)組換えベクターを包膜する感染性組換えAAV粒子を用意するステップであって、
(i)前記ベクターが、リポータトランスジーンを含み、(ii)前記リポータトランス
ジーンが、一本鎖若しくは自己相補的ゲノムを含むと共に、(iii)前記リポータトラ
ンスジーンが、1つ又は複数の発現調節エレメントに作動可能に連結され、かつ1つ又は
複数のフランキングエレメントによってフランキングされている、ステップ;
(b)AAVに結合する抗体を分析又は検出するために、被験者からの生体サンプルを用
意するステップ;
(c)前記感染性組換えAAV粒子に感染し得る細胞を用意するステップ;
(d)(a)の感染性組換えAAV粒子を(b)の生体サンプルと接触させるか、又はイ
ンキュベートし、これによって得られる混合物(M)を生成するステップ;
(e)得られた混合物(M)と(c)の細胞を、(a)の前記感染性組換えAAV粒子が
、前記細胞中の前記リポータトランスジーンに感染して、これを発現させることを可能に
する条件下で、接触させるステップ;
(f)前記リポータトランスジーンの発現を測定するステップ;並びに
(g)(f)の前記リポータトランスジーン発現を対照のリポータトランスジーンと比較
するステップであって、前記対照が、(i)AAVに結合する抗体が欠失した陰性(-)
対照であるか、又は(ii)AAVに結合する既定量の抗体を有する陰性(-)対照であ
るかのいずれかであり、これによって、AAVに結合する抗体の存在を分析、又は検出若
しくは測定するステップ
を含む方法。
【請求項4】
前記細胞が、哺乳動物細胞を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が、AAV複製及び/又はゲノム組込みのためのヘルパー機能をコード化する
核酸配列をもたらす、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AA
V6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh74
、若しくはRh10、又はこれらAAV血清型のいずれかのハイブリッド若しくはキメラ
のVP1、VP2若しくはVP3配列と90%以上同一のVP1、VP2若しくはVP3
配列を含むAAV粒子に感染し得る、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AA
V6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh74
、若しくはRh10、又は前記AAV血清型のいずれかのハイブリッド若しくはキメラに
感染し得る、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、哺乳動物細胞を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が、HEK-293、CHO、BHK、MDCK、10T1/2、WEHI細
胞、COS、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、WI38、MRC5
、A549、HT1080、293、B-50、3T3、NIH3T3、HepG2、S
aos-2、Huh7、HER、HEK、HEL、又はHeLa細胞を含む、請求項3に
記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が、AAV E4遺伝子を発現する、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が、2V6.11細胞を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記リポータトランスジーンが、酵素、比色、蛍光、発光、化学発光、又は電気化学シ
グナルを賦与するタンパク質をコード化する、請求項1若しくは2に記載のAAVベクタ
ー、又は請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記リポータトランスジーンが、ルシフェラーゼ遺伝子を含む、請求項1若しくは2に
記載のAAVベクター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記ルシフェラーゼ遺伝子が、ウミシイタケ(renilla)ルシフェラーゼ又はホ
タル(firefly)ルシフェラーゼ遺伝子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リポータトランスジーンが、βガラクトシダーゼ遺伝子、βグルコロニダーゼ遺伝
子、又はクロラムフェニコールトランスフェラーゼ遺伝子を含む、請求項1若しくは2に
記載のAAVベクター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記リポータトランスジーンが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質
(RFP)又はアルカリホスファターゼをコード化する、請求項1若しくは2に記載のA
AVベクター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記組換えベクターが、AAVベクターを含む、請求項1若しくは2に記載のAAVベ
クター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV
6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh74、
若しくはRh10ベクター、又はこれらAAVベクターのいずれかのハイブリッド若しく
はキメラを含む、請求項17に記載のAAVベクター。
【請求項19】
前記発現調節エレメントが、哺乳動物細胞において作動可能なプロモータ及び/又はエ
ンハンサー核酸配列を含む、請求項1若しくは2に記載のAAVベクター、又は請求項2
に記載の方法。
【請求項20】
前記発現調節エレメントが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモータ/エン
ハンサー、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモータ/エンハンサー、SV40プロモー
タ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)プロモータ、ニワトリβアクチン(CBA)
プロモータ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモータ、又は伸長因子-1α(
EF1-α)プロモータを含む、請求項1若しくは2に記載のAAVベクター、又は請求
項2に記載の方法。
【請求項21】
前記リポータトランスジーンが、一本鎖ゲノムである、請求項1若しくは2に記載のA
AVベクター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記リポータトランスジーンが、自己相補的ゲノムである、請求項1若しくは2に記載
のAAVベクター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記フランキングエレメントが、1つ又は複数のAAV逆方向末端反復配列(ITR)
を含む、請求項1若しくは2に記載のAAVベクター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記リポータトランスジーンが、1つ又は複数の5’及び/又は3’AAV ITRの
間に位置する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記自己相補的リポータトランスジーンゲノムが、二本鎖逆方向反復配列構造を含む、
請求項1若しくは2に記載のAAVベクター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記フランキングエレメントが、AAV Repタンパク質によりプロセシングされて
いない突然変異又は変異型AAV ITRを含む、請求項1若しくは2に記載のAAVベ
クター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記フランキングエレメントが、感染性組換えAAV粒子において、自己相補的リポー
タトランスジーンゲノムの二本鎖逆方向配列構造への形成を可能にするか、又はそれを促
進する突然変異若しくは変異型AAV ITRを含む、請求項1に記載のAAVベクター
、又は請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記突然変異、改変若しくは変異型AAV ITRが、欠失D配列、及び/又は突然変
異、改変若しくは変異型末端分離(resolution)部位(TRS)配列を有する
、請求項27又は28に記載のAAVベクター又は方法。
【請求項29】
前記突然変異、改変若しくは変異型末端分離(resolution)部位(TRS)
配列が、CGGTTGを含む、請求項28に記載のAAVベクター又は方法。
【請求項30】
前記突然変異又は変異型AAV ITRが、前記リポータトランスジーンの自己相補的
配列同士の間に位置する、請求項27又は28に記載のAAVベクター又は方法。
【請求項31】
前記突然変異又は変異型AAV ITRが、AAV2ゲノム配列のヌクレオチド122
~144に対応するヌクレオチドが欠失したAAV2 ITRを含む、請求項27又は2
8に記載のAAVベクター又は方法。
【請求項32】
前記組換えベクターが、AAVの第1の逆方向末端反復配列(ITR);哺乳動物細胞
において作動可能なプロモータ;リポータトランスジーン;ポリアデニル化シグナル;及
び任意選択でAAVの第2のITRを含む、請求項1若しくは2に記載のAAVベクター
、又は請求項2に記載の方法。
【請求項33】
前記組換えベクターが、哺乳動物細胞において、作動可能なプロモータの下流にリポー
タトランスジーンの挿入を可能にする制限部位を、また、該制限部位の下流に転写後調節
エレメントを含み、ここで、前記プロモータ、前記制限部位及び前記転写後調節エレメン
トは、5’AAV ITRの下流に、また任意選択の3’AAV ITRの上流に位置す
る、請求項1若しくは2に記載のAAVベクター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項34】
前記感染性組換えAAV粒子が、霊長類に感染するAAV血清型を含む、請求項1若し
くは2に記載のAAVベクター、又は請求項2に記載の方法。
【請求項35】
前記感染性組換えAAV粒子が、ヒト又はアカゲザル(rhesus macaque
)に感染するAAV血清型を含む、請求項1若しくは2に記載のAAVベクター、又は請
求項2に記載の方法。
【請求項36】
前記感染性組換えAAV粒子が、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV
4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、A
AV12、Rh74、若しくはRh10、又はこれらAAV血清型のいずれかのハイブリ
ッド若しくはキメラのVP1、VP2又はVP3配列と90%以上同一であるVP1、V
P2又はVP3配列を含む、請求項1若しくは2に記載のAAVベクター、又は請求項2
に記載の方法。
【請求項37】
前記感染性組換えAAV粒子が、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV
4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、A
AV12、Rh74、若しくはRh10、又は前記AAV血清型のいずれかのハイブリッ
ド若しくはキメラを含む、請求項1若しくは2に記載のAAVベクター、又は請求項2に
記載の方法。
【請求項38】
前記生体サンプルが、霊長類サンプルを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項39】
前記生体サンプルが、血清を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項40】
前記生体サンプルが、血漿を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項41】
前記生体サンプルが、ヒト血清又はヒト血漿を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項42】
前記被験者が、哺乳動物である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項43】
前記被験者が、ヒトである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項44】
前記被験者が、タンパク質の不十分な発現又は活性に起因する障害に罹患している、請
求項2又は3に記載の方法。
【請求項45】
前記被験者が、異常、欠陥若しくは望ましくないタンパク質の発現又は活性に起因する
障害に罹患している、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項46】
前記被験者が、遺伝性疾患に罹患している、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項47】
前記被験者が、遺伝子置換又は補充療法の候補である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項48】
前記被験者が、遺伝子ノックダウン又はノックアウト療法の候補である、請求項2又は
3に記載の方法。
【請求項49】
前記被験者が、以下:肺疾患(例えば、嚢胞性線維症)、出血性疾患(例えば、抑制因
子を伴う、若しくは伴わないA型血友病又はB型血友病)、サラセミア、血液疾患(例え
ば、貧血)、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症
(ALS)、てんかん、リソソーム蓄積症、銅若しくは鉄蓄積障害(例えば、ウィルソン
若しくはメンケス病)、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、神経若しくは神経変性疾患、癌
、1型若しくは2型糖尿病、ゴーシェ病、ハーラー病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、
代謝異常(例えば、グリコーゲン蓄積症)、網膜変性疾患(例えば、RPE65欠損症、
コロイデレミア、及びその他の眼病)、固形臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓、心臓)の疾
患、又は感染性ウイルス性(例えば、B型及びC型肝炎、HIVなど)、細菌性若しくは
真菌性疾患に罹患している、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項50】
陰性(-)対照と比較した(f)の前記リポータトランスジーン発現に基づいて、前記
生体サンプル中のAAVに結合する抗体の量を計算するステップをさらに含む、請求項2
又は3に記載の方法。
【請求項51】
前記生体サンプル中のAAVに結合する抗体の前記量を、前記被験者に関連する報告書
に入力又は算入するステップをさらに含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項52】
前記生体サンプル中のAAVに結合する抗体の前記量をデータベースに入力し、これに
よって、データベースエントリー、すなわち前記被験者に関連するデータベースエントリ
ーを作成するステップをさらに含む、請求項2又は2に記載の方法。
【請求項53】
分析又は検出される前記抗体が、AAVキャプシドタンパク質に結合する、請求項2又
は3に記載の方法。
【請求項54】
分析又は検出される前記抗体が、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV
4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、A
AV12、Rh74、若しくはRh10、又は前記AAV血清型のいずれかのハイブリッ
ド若しくはキメラに結合する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項55】
前記既定量の抗体が、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV
5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、
Rh74、若しくはRh10、又は前記AAV血清型のいずれかのハイブリッド若しくは
キメラに結合する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項56】
前記生体サンプルを、(a)の感染性組換えAAV粒子との接触又はインキュベートの
前に希釈する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項57】
前記生体サンプルの複数の希釈物を分析する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項58】
複数の異なる希釈率の前記生体サンプルを分析する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項59】
前記生体サンプルを、(a)の感染性組換えAAV粒子との接触又はインキュベートの
前に、1:1~1:500に希釈する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項60】
前記生体サンプルを、(a)の感染性組換えAAV粒子との接触又はインキュベートの
前に、1:500~1:5000に希釈する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項61】
少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つの異なる希釈率の生体サンプルを分析
する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項62】
前記細胞を、前記得られた混合物(d)と6~48時間接触させる、請求項2又は3に
記載の方法。
【請求項63】
前記細胞を、前記得られた混合物(d)と12~36時間接触させる、請求項2又は3
に記載の方法。
【請求項64】
前記細胞を、前記得られた混合物(d)と20~30時間接触させる、請求項2又は3
に記載の方法。
【請求項65】
前記細胞を、前記得られた混合物(d)と約24時間接触させる、請求項2又は3に記
載の方法。
【請求項66】
前記リポータトランスジーンの発現を測定する前に、前記細胞を溶解させる、請求項2
又は3に記載の方法。
【請求項67】
前記生体サンプルが、熱失活させてある、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項68】
前記生体サンプルが、約50~70℃で約15分~1時間熱失活させてある、請求項2
又は3に記載の方法。
【請求項69】
前記生体サンプルが、約56℃で約30分間熱失活させてある、請求項2又は3に記載
の方法。
【請求項70】
前記方法がin vitroで実施される、請求項2又は3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2013年7月12日に提出された“AAV VECTOR AND ASS
AY FOR ANTI-AAV(ADENO-ASSOCIATED VIRUS)N
EUTRALIZING ANTIBODIES“と題する米国仮特許出願第61/84
5,841号明細書に対する優先権を主張するものであり、この出願は、その全体を参照
により本明細書に組み込むものとする。
【背景技術】
【0002】
アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターに対する体液性免疫は、血管内遺伝子移入に対
する重要なバリアを賦与するため、ベクターが標的細胞に侵入する前に、ベクターのクリ
アランスが起こる。AAVキャプシドに対する抗体は、該ウイルスの天然の宿主であるヒ
トにおいて極めて優勢であり、キャプシドタンパク質配列の相同性の程度によって、多様
な血清型と交差反応する。その結果、比較的低い力価の中和抗体(NAb)であっても、
ベクターが血流に導入された場合、AAV導入を阻止することができる。反対に、眼への
遺伝子移入、AAVベクターの脳又は直接的筋肉内送達は、NAbによる中和を受けにく
いと考えられる。
【0003】
AAVに対するNAbは、滑液(SF)においてみいだされ、血清依存的様式でベクタ
ー媒介性形質導入を阻害する潜在力を有する。しかし、SF中の様々な血清型に対するN
abレベル、並びに血清中の抗AAV NAb力価とSFとの関係については、ほとんど
わかっていない。最後に、NAbは、in vivoでのAAV媒介性形質導入を効率的
に阻止することができるため、ウイルスキャプシドに対する体液性免疫を克服する戦略は
、遺伝子移入を成功させる上で極めて重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書には、ウイルスベクター、ウイルス粒子、並びにウイルス抗体、又はサンプル
の中和抗体活性をスクリーニング、検出、分析、及び定量する方法及び使用を開示する。
このようなウイルスベクター、ベクター粒子、並びに方法及び使用は、多種多様なウイル
スタイプ(例えば、レンチウイルス、アデノウイルス、及びアデノ関連ウイルス(AAV
)血清型など)に適用可能である。様々なウイルスベクター、ウイルス粒子、並びに抗体
スクリーニング方法及び使用を用いて、抗ウイルス免疫グロブリン(g)(例えば、Ig
G、IgA、IgM、IgE、IgDなど)をスクリーニング、検出、分析及び定量する
ことができる。
【0005】
こうしたスクリーニング、検出、分析及び定量から得られる結果を用いて、レンチウイ
ルス、アデノウイルス、及びアデノ関連ウイルス(AAV)血清型を用いた(欠陥若しく
は欠損遺伝子を置換若しくは補充するか、又は欠陥若しくは望ましくない遺伝子の発現を
ノックダウン若しくはノックアウトするための)遺伝子療法に関する被験者の適合性、又
はベクタータイプ若しくは用量を決定することができる。例えば、被験者が、AAV血清
型2(AAV2)などの特定のウイルス血清型に対して抗体をほとんど、又は全く発現し
なければ、被験者は、AA2媒介性遺伝子療法の好適な候補となり得る。被験者が、AA
V2などの特定のウイルス血清型に対して中程度若しくは実質的な量の抗体を発現する場
合には、被験者は、AAV2媒介性遺伝子療法、又はB細胞応答の薬理学的調節の薬剤若
しくは方法と併用した該療法のためのAAV2ベクターの用量をより多く又はより多数回
必要とし得る。このように、そうでなければウイルスベクター遺伝子移入療法の理想的な
候補ではなかった被験者における遺伝子移入を達成することができる。あるいは、入手可
能であれば、非AAV2ベクター(例えば、別のAAV血清型)をそのような被験者の遺
伝子療法に使用することもできる。従って、ウイルスベクター投与は、存在するウイルス
抗体(もしあれば)の存在若しくは非存在、タイプ及び/又は量(例えば、力価)に基づ
いてパーソナライズすることができると共に、ベクターは、所与の被験者ついて、該被験
者におけるウイルス抗体の存在、タイプ及び量に基づいて選択することができる。
【0006】
本発明によれば、組換えAAVベクター配列、すなわちリポータトランスジーンを含む
ベクター配列が提供される。一実施形態では、組換えAAVベクター配列は、リポータト
ランスジーンを含み、このリポータトランスジーンは、(a)一本鎖又は自己相補的ゲノ
ムを含み、(b)1つ又は複数の発現調節エレメントに作動可能に連結され、かつ(c)
1つ又は複数のフランキングエレメントによってフランキングされている。
【0007】
本発明によれば、ベクターが、リポータトランスジーンを含む、組換えAAVベクター
も提供される。一実施形態において、組換えAAVベクターは、リポータトランスジーン
を含み、該リポータトランスジーンは、(a)一本鎖又は自己相補的ゲノムを含み、(b
)1つ又は複数の発現調節エレメントに作動可能に連結され、かつ(c)1つ又は複数の
フランキングエレメントによってフランキングされている。特定の実施形態では、組換え
AAVベクターは、感染性組換えAAV粒子を含む。
【0008】
本発明によれば、AAVに結合する抗体を、分析又は検出若しくは測定するための方法
及び使用がさらに提供される。一実施形態では、方法又は使用は、以下を含む:A)組換
えベクターをキャプシドで包膜する感染性組換えAAV粒子を用意するステップであって
、(i)ベクターが、リポータトランスジーンを含み、(ii)リポータトランスジーン
が、一本鎖若しくは自己相補的ゲノムを含むと共に、(iii)リポータトランスジーン
が、1つ又は複数の発現調節エレメントに作動可能に連結され、かつ1つ又は複数のフラ
ンキングエレメントによってフランキングされている、ステップ;B)AAVに結合する
抗体を分析又は検出するために、被験者からの生体サンプルを用意するステップ;C)前
記感染性組換えAAV粒子に感染し得る細胞を用意するステップ;D)(A)の感染性組
換えAAV粒子を(B)の生体サンプルと接触させるか、又はインキュベートし、これに
よって得られる混合物(M)を生成するステップ;得られた混合物(M)と(C)の細胞
を、(A)の感染性組換えAAV粒子が、前記細胞中のリポータトランスジーンに感染し
て、これを発現させることを可能にする条件下で、接触させるステップ;リポータトラン
スジーンの発現を測定するステップ;並びに(f)の前記リポータトランスジーン発現を
対照のリポータトランスジーン発現と比較するステップであって、前記対照が、(i)A
AVに結合する抗体が欠失した陰性(-)対照であるか、又は(ii)AAVに結合する
既定量の抗体を有するいずれかである、ステップ。前記(-)対照のリポータトランスジ
ーン発現より大きい(f)のリポータトランスジーン発現によって、生体サンプル中のA
AVに結合する抗体の存在を分析、又は検出若しくは測定する。AAVに結合する既定量
の抗体のリポータトランスジーン発現と比較した(f)のリポータトランスジーン発現に
よって、対照より多い、又は少ない生体サンプル中の抗体を分析、又は検出若しくは測定
する。
【0009】
本発明の特定の態様において、組換えベクターは、AAVベクターを含む。より具体的
態様では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、A
AV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh7
4、若しくはRh10ベクター、又はこれらAAVベクターのいずれかのハイブリッド若
しくはキメラを含む。
【0010】
本発明の特定の態様では、本方法又は使用は、in vitroで実施される。例えば
、細胞は、感染性組換えAAV粒子とin vitroで接触又はインキュベートしても
よい。
【0011】
本発明の様々な実施形態において、分析、検出又は測定される抗体は、ウイルスエンベ
ロープ又はキャプシドタンパク質、例えば、AAVキャプシドタンパク質に結合する。本
発明の特定の態様では、分析、検出又は測定される抗体は、AAV血清型AAV1、AA
V2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AA
V10、AAV11、AAV12、Rh74、若しくはRh10、又はこれらAAV血清
型のいずれかのハイブリッド若しくはキメラに結合する。
【0012】
本発明の様々な実施形態では、AAVに結合する既定量の抗体は、任意のAAV血清型
であってよい。本発明の具体的態様では、既定量の抗体は、AAV1、AAV2、AAV
3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AA
V11、AAV12、Rh74、若しくはRh10、又はこれらAAV血清型のいずれか
のハイブリッド若しくはキメラに結合する。
【0013】
本発明の様々な実施形態において、細胞は、霊長類(例えば、ヒト)細胞などの哺乳動
物細胞を含む。本発明のより具体的態様では、細胞は、HEK-293(例えば、2V6
.11)細胞、CHO、BHK、MDCK、10T1/2、WEHI細胞、COS、BS
C 1、BSC 40、BMT 10、VERO、WI38、MRC5、A549、HT
1080、293、B-50、3T3、NIH3T3、HepG2、Saos-2、Hu
h7、HER、HEK、HEL、又はHeLa細胞を含む。
【0014】
別の態様では、細胞は、AAV複製及び/又はゲノム組込みのためのヘルパー機能をコ
ード化する核酸配列をもたらす。より具体的な態様では、細胞は、AAV E4遺伝子、
及び/又はAAVrep若しくはcapを発現する。
【0015】
さらに別の態様では、細胞は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4
、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AA
V12、Rh74、若しくはRh10、又はこれらAAV血清型のいずれかのハイブリッ
ド若しくはキメラのVP1、VP2若しくはVP3配列と90%以上同一のVP1、VP
2若しくはVP3配列を含むAAV粒子に感染し得るか、又は前記細胞は、AAV血清型
AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、
AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh74、若しくはRh10、又は前
記AAV血清型のいずれかのハイブリッド若しくはキメラに感染し得る。
【0016】
さらに別の態様では、細胞は、得られた混合物(M)と、6~48時間、12~36時
間、20~30時間、又は約24時間の期間にわたって接触させる。また別の態様では、
リポータトランスジーンの発現を測定する前に、細胞を溶解させる。
【0017】
本発明の様々な実施形態において、リポータトランスジーンは、酵素、比色、蛍光、発
光、化学発光、又は電気化学シグナルを付与するタンパク質をコード化する。特定の態様
では、リポータトランスジーンは、ウミシイタケ(renilla)ルシフェラーゼ又は
ホタル(firefly)ルシフェラーゼ遺伝子などのルシフェラーゼ遺伝子を含む。別
の具体的態様では、リポータトランスジーンは、βガラクトシダーゼ遺伝子、βグルコロ
ニダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールトランスフェラーゼ遺伝子を含む。別の具体的態
様では、リポータトランスジーンは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク
質(RFP)又はアルカリホスファターゼをコード化する。
【0018】
本発明のさらに別の様々な実施形態では、リポータトランスジーンは、一本鎖ゲノムで
あるか、又はリポータトランスジーンは、自己相同的ゲノムである。本発明の別の態様で
は、自己相補的リポータトランスジーンゲノムは、二本鎖(又は二重螺旋)逆方向反復配
列構造を含む。本発明のさらに別の態様では、自己相補的リポータトランスジーンゲノム
は、ヘアピンループ構造を含む。
【0019】
本発明の別の実施形態では、ベクター又はベクター配列は、1つ(又は複数の)発現調
節エレメント、例えば、哺乳動物細胞において作動可能なプロモータ及び/又はエンハン
サー核酸配列を含む。本発明のまた別の実施形態では、ベクター又はベクター配列は、1
つ又は複数のフランキングエレメント、例えば、1つ又は複数のAAV逆方向末端反復配
列(ITR)を含む。本発明のさらに別の態様では、リポータトランスジーンは、1つ又
は複数の5’及び/又は3’AAV ITRなどの1つ又は複数のフランキングエレメン
トの間に位置する。
【0020】
本発明のより具体的な実施形態では、ベクター又はベクター配列は、AAVの第1の逆
方向末端反復配列(ITR);哺乳動物細胞において作動可能なプロモータ;リポータト
ランスジーン;ポリアデニル化シグナル;及び任意選択で、AAVの第2のITRを含む
。本発明の特定の態様では、組換えベクター又はベクター配列は、哺乳動物細胞において
、作動可能なプロモータの下流にリポータトランスジーンの挿入を可能にする制限部位を
、また、該制限部位の下流に転写後調節エレメントを含む。本発明の別の特定の態様では
、組換えベクター又はベクター配列は、哺乳動物細胞において、作動可能なプロモータの
下流にリポータトランスジーンの挿入を可能にする制限部位を、また、該制限部位の下流
に転写後調節エレメントを含む。特定の態様では、プロモータ、制限部位及び転写後調節
エレメントは、5’AAV ITRの下流に、また任意選択の3’AAV ITRの上流
に位置する。
【0021】
本発明のより具体的態様では、フランキングエレメントは、AAV Repタンパク質
によりプロセシングされていない突然変異又は変異型AAV ITRである。本発明の別
の具体的態様では、フランキングエレメントは、感染性組換えAAV粒子において、自己
相補的リポータトランスジーンゲノムの二本鎖逆方向配列構造への形成を可能にするか、
又はそれを促進する突然変異若しくは変異型AAV ITRである。本発明のさらに別の
具体的態様では、フランキングエレメントは、D配列が欠失した、及び/又は末端分離(
resolution)部位(TRS)配列が欠失した、突然変異若しくは変異型AAV
ITRである(例えば、突然変異若しくは変異型AAV ITRは、リポータトランス
ジーンの自己相補的配列同士の間に位置する)。本発明のまた別の具体的態様では、突然
変異若しくは変異型AAV ITRは、AAV2ゲノム配列のヌクレオチド122~14
4に対応する1つ又は複数のヌクレオチドが突然変異、改変、変異若しくは欠失したAA
V2 ITRを含む。
【0022】
本発明の別の具体的態様では、感染性組換えAAV粒子は、霊長類に感染するAAV血
清型を含む。特定の態様では、感染性組換えAAV粒子は、ヒト又はアカゲザル(rhe
sus macaque)に感染するAAV血清型を含む。様々な具体的態様では、感染
性組換えAAV粒子は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV
5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、
Rh74、若しくはRh10、又はこれらAAV血清型のいずれかのハイブリッド若しく
はキメラのVP1、VP2又はVP3配列と90%以上同一であるVP1、VP2又はV
P3配列を含む。別の様々な具体的態様では、感染性組換えAAV粒子は、AAV血清型
AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、
AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh74、若しくはRh10、又は前
記AAV血清型のいずれかのハイブリッド若しくはキメラを含む。
【0023】
本発明の様々な実施形態において、生体サンプルは、霊長類サンプルを含む。こうした
サンプルとして、限定はしないが、血清、血漿、又は血液、例えば、ヒト血清、ヒト血漿
若しくはヒト血液が挙げられる。
【0024】
本発明の別の実施形態において、生体サンプルを熱失活させるか、又は熱失活させてあ
る。特定の態様では、生体サンプルは、約50~70℃で約15分~1時間熱失活させる
か、若しくは熱失活させてあり、又は、約56℃で約30分間熱失活させるか、若しくは
熱失活させてある。
【0025】
本発明の別の実施形態において、生体サンプルは、感染性組換えAAV粒子との接触又
はインキュベートの前に希釈する。特定の態様では、生体サンプルの複数の希釈物を分析
、測定若しくは検出する。別の特定の態様では、複数の異なる希釈率の生体サンプルを分
析、測定若しくは検出する。より具体的態様では、生物学的サンプルは、感染性組換えA
AV粒子との接触又はインキュベートの前に、1:1~1:500に希釈するか;又は生
体サンプルは、感染性組換えAAV粒子との接触又はインキュベートの前に、1:500
~1:5000に希釈する。別の具体的態様では、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ若
しくは6つの異なる希釈率の生体サンプルを分析、測定若しくは検出する。
【0026】
本発明の様々な実施形態において、被験者(例えば、AAVベクターなどのウイルスベ
クター媒介性遺伝子療法の候補)被験者は、哺乳動物(例えば、霊長類)である。特定の
態様では、被験者は、ヒトである。
【0027】
本発明の様々な実施形態において、被験者は、タンパク質の不十分な発現又は活性に起
因する障害に罹患しているか、又は異常、欠陥若しくは望ましくないタンパク質の発現又
は活性に起因する障害に罹患している。
【0028】
本発明の別の様々な実施形態において、被験者は、遺伝性疾患に罹患している。本発明
のさらに別の様々な実施形態において、被験者は、遺伝子ノックダウン又はノックアウト
療法などの遺伝子置換又は補充療法の候補である。本発明のより具体的態様では、被験者
は、以下:肺疾患(例えば、嚢胞性線維症)、出血性疾患(例えば、抑制因子を伴う、若
しくは伴わないA型血友病又はB型血友病)、サラセミア、血液疾患(例えば、貧血)、
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、
てんかん、リソソーム蓄積症、銅若しくは鉄蓄積障害(例えば、ウィルソン若しくはメン
ケス病)、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、神経若しくは神経変性疾患、癌、1型若しく
は2型糖尿病、ゴーシェ病、ハーラー病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、代謝異常(例
えば、グリコーゲン蓄積症)、網膜変性疾患(例えば、RPE65欠損症、コロイデレミ
ア、及びその他の眼病)、固形臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓、心臓)の疾患、又は感染
性ウイルス性(例えば、B型及びC型肝炎、HIVなど)、細菌性若しくは真菌性疾患に
罹患している。
【0029】
本発明の様々な別の実施形態では、生体サンプル中のAAVに結合する抗体の量を決定
/計算する。一実施形態では、陰性(-)対照と比較した(f)のリポータトランスジー
ン発現に基づいて計算する。別の態様では、AAV抗体対照の既定量と比較した(f)の
リポータトランスジーン発現に基づいて計算する。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態では、抗体の量を、生体サンプルを取得した被験者に関連
するデータベース又は報告書に入力する。この入力により、被験者に関連するデータベー
スエントリー又は報告書を作成する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】細胞継代数の関数としてのルシフェラーゼリポータ遺伝子Maxシグナルを示す。GraphPad Prism Version 5.0bを用いて実施する統計分析。線形回帰:R2曲線0.1509、p<0.0001、曲線の傾きは、有意に非ゼロである。継代1~12の細胞を用いて得られたMaxシグナル(RLU)の平均値を継代13~25の平均値と比較することにより、さらなる統計分析を実施した。この目的のために、両側独立t検定を用いた。平均値+/-平均値の標準誤差:継代1~12、17921+/-1181、n=53;継代13~25、11427+/-903、n=45、p<0.0001。
【0032】
【
図1B】細胞継代数の関数としてのルシフェラーゼリポータ遺伝子バックグラウンドシグナルを示す。GraphPad Prism Version 5.0bを用いて実施する統計分析。線形回帰:R2曲線0.04720、p=0.0308、曲線の傾きは、有意に非ゼロである。継代1~12の細胞を用いて得られたバックグラウンドシグナル(RLU)の平均値を継代13~25の平均値と比較することにより、さらなる統計分析を実施した。この目的のために、両側独立t検定を用いた。平均値+/-平均値の標準誤差:継代1~12、320+/-24、n=54;継代13~25、252+/-27、n=45、p=0.0651。
【0033】
【
図2】オペレータ1及び2に関するヒト血清サンプルの平均NAb力価を示す。エラーバーは、±標準偏差を示す。
【0034】
【
図3】表示するように、突然変異TRS配列「CGGTTG」を有するAAV2 ITRの構造を示す。RBS:Rep結合配列;Flop/Flip:ITR(+/-系統に類似)。
【0035】
【
図4】ルシフェラーゼリポータトランスジーンを有する一般的プラスミド構築物構造を示す。CBA:ニワトリβアクチンプロモータ;pA:ポリアデニル化。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、少なくとも一部が、ウイルス抗体、又は中和抗体をスクリーニング、検出、
分析、及び定量するための高感度アッセイに基づく。従って、本発明は、ベクター、ウイ
ルスベクター及び粒子、並びにウイルス抗体、又は例えば、サンプル中の中和抗体をスク
リーニング、検出、分析、及び定量する方法及び使用を提供する。
【0037】
本明細書に記載するように、ベクター配列、ベクター(例えば、ウイルスベクター)及
び粒子は、ウイルス抗体、又は中和抗体をスクリーニング、検出、分析、及び定量する手
段を提供する。本発明のベクター配列、ベクター(例えば、ウイルスベクター)及び粒子
、並びにウイルス抗体をスクリーニング、検出、分析、及び定量する方法及び使用では、
リポータトランスジーン(トランスジーンは、検出可能なシグナルをもたらす)を用いる
が、該トランスジーンは、一本鎖又は自己相補的ゲノムを含む。自己相補的トランスジー
ンゲノムは、ウイルス粒子(ウイルスベクター)にパッケージングされたとき、又はウイ
ルスベクターの細胞形質導入及び形質導入細胞内でのウイルス脱殻時に、二本鎖になるか
、又は二本鎖の二量体である。
【0038】
「相補性」又は「相補体」という用語は、トランスジーンなどのポリヌクレオチド又は
核酸分子に関して用いられる場合、塩基対合により、1つの一本鎖配列が、別の一本鎖配
列と「特異的にハイブリダイズ」若しくは結合(アニーリング)して、二本鎖若しくは二
重螺旋分子を形成するか、形成することができるような、複数の化学塩基を指す。2つの
一本鎖配列が、互いに特異的にハイブリダイズ若しくは結合(アニーリング)して、二本
鎖(若しくは二重螺旋)分子を形成する能力は、一方の鎖(例えば、センス)上の塩基の
官能基によるものであり、該塩基は、逆方向の核酸鎖(アンチセンス)上の別の塩基と水
素結合する。典型的に、各々他方に結合することができる相補的塩基は、DNAの場合、
AとT、及びCとGであり、RNAの場合、CとG、及びUとAである。従って、自己相
補的配列は、ATCGXXXCGATであり、Xは、非相補的塩基を表し、ハイブリダイ
ズしないX塩基を有するこのような二本鎖若しくは二重螺旋分子の構造は、以下:
【化1】
のように、出現する。
【0039】
従って、「相補性」及び「相補体」という用語は、トランスジーンなどのポリヌクレオ
チド又は核酸分子に関して用いられる場合、二本鎖若しくは二重螺旋ポリヌクレオチド又
は核酸分子が形成する物理的状態を示すか、あるいは、単に、各一本鎖分子が、他方と二
本鎖を形成することができるような、2つのポリヌクレオチド又は核酸分子同士の配列関
係を表す。従って、「相補性」及び「相補体」は、各ポリヌクレオチド又は核酸分子鎖の
塩基の関係を指すのであって、2本の鎖が、二本鎖(若しくは二重螺旋)立体配置、又は
二重螺旋における相互の物理的状態として存在しなければならない関係ではない。
【0040】
典型的には、AAVなどの一本鎖核酸をパッケージングするウイルスベクターの場合、
逆方向末端反復配列(ITR)配列は、複製に参加して、ヘアピンループを形成し、これ
が、第2のDNA鎖の開始及び合成を可能にするような自己プライミング(self-p
riming)に寄与する。第2DNA鎖の合成後、AAV ITRは、いわゆる末端分
離部位(TRS)を有し、これによって、ヘアピンループが、各々ウイルスパッケージン
グのための5’及び3’末端反復配列を有する2つの一本鎖に切断される。
【0041】
少なくとも1つのITRにおける、欠失、突然変異、修飾、又は非機能性TRSの使用
によって、TRSで切断されていない二本鎖二重螺旋が形成される。自己相補的リポータ
トランスジーン二本鎖二重螺旋構造の実施形態では、典型的に、2つの相補鎖の間に位置
する欠失、突然変異、又は変異型TRSを有するITRが存在する。非切断性又は非分離
性TRSは、二本鎖形態が切断されないことから、自己相補的リポータトランスジーン二
本鎖二重螺旋構造の形成を可能にする。欠失、突然変異、若しくは変異型TRSを有する
非分離性ITR、又は非分離性ITRのいずれかは、ウイルスパッケージングに好適とな
り得る。分離性AAV ITRは、ITRが要望される機能、例えば、ウイルスパッケー
ジング又は組み込みを媒介する限り、野生型ITR配列である必要はない。
【0042】
欠失、突然変異、修飾、又は変異し得る様々なAAV血清型のITR及びTRS配列に
は、本明細書に記載する、又は当業者には公知のあらゆるAAV血清型が含まれる。例え
ば、様々なAAV血清型のITR及びTRS配列としては、例えば、AAV-1、-2、
-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-rh74、-rh10
又はAAV-2i8が挙げられる。AAV2の場合、代表的な突然変異TRS配列は、「
CGGTTG」である。
【0043】
トランスジーン以外に考慮される自己相補的リポータトランスジーン配列を含むベクタ
ー又はベクター又は配列、例えば、1つ又は複数のITR、発現若しくは調節制御配列、
下流配列などについては、リポータトランスジーン以外のベクター配列のこうした配列は
、自己相補性であってもよいが、自己相補性である必要はない。ゆえに、自己相補性は、
例えば、リポータトランスジーンなどのトランスジーンだけが自己相補的であるような、
リポータトランスジーンなどのトランスジーンに関する具体的な文脈で用いることができ
るが、他の非トランスジーン配列は、自己相補性であっても、なくてもよい。
【0044】
自己相補性トランスジーンの場合、一本鎖における全ての塩基が、逆方向相補鎖の全て
の塩基と相補的である必要はない。ただ、2つのポリヌクレオチド又は核酸分子が、特異
的にハイブリダイズするか、又は互いに結合(アニーリング)することを可能にするのに
十分な数の相補的ヌクレオチド若しくはヌクレオシド塩基があればよい。従って、自己相
補的ポリヌクレオチド又は核酸分子の間に、非相補的塩基の短い配列セグメント若しくは
領域が存在し得る。例えば、1~5、5~10、10~20、20~30、30~40、
40~50、50~75、75~100、若しくは100~150、又はそれ以上の連続
した、若しくは非連続の非相補的塩基が存在し得るが、2つのポリヌクレオチド又は核酸
分子が、特異的にハイブリダイズするか、又は互いに結合(アニーリング)して、二本鎖
(若しくは二重螺旋)配列の形成を可能にするように、十分な相補的塩基が両配列の長さ
にわたって存在し得る。従って、2つの一本鎖領域の配列は、互いに対して100%未満
相補的であってもよく、それでもなお二本鎖二重螺旋分子を形成することができる。特定
の実施形態では、2つの一本鎖配列は、互いに対して少なくとも70%、少なくとも75
%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少な
くとも98%、少なくとも99%又はそれ以上の相補性を有する。
【0045】
自己相補的ポリヌクレオチド又は核酸分子同士の非相補的塩基のこのようなセグメント
又は領域は、内部配列であってよく、これにより、2つの一本鎖分子の相補的部分が、二
本鎖又は二重螺旋を形成すると、非相補的塩基は、ループ又はバルジ(bulge)立体
配置を形成し、全体的構造はヘアピンに類似する。自己相補的ポリヌクレオチド又は核酸
分子の間の非相補的塩基のこうしたセグメント若しくは領域は、相補的領域をフランキン
グすることもでき、その場合、5’又は3フランキング領域のいずれか若しくは両方が、
二本鎖二重螺旋を形成しないこともある。
【0046】
二本鎖又は二重螺旋配列を形成する自己相補性トランスジーンは、一本鎖トランスジー
ンの対応物より速く発現される(より迅速な開始)。従って、このような発現は、指定の
時点(例えば、1、2、34、5、6、7、8、9、10、11、12、12~16、1
6~20、20~24時間)などで、経時的に発現を測定することにより検出することが
できる。さらに、二本鎖自己相補性トランスジーンの発現量は、一般に、一本鎖リポータ
トランスジーン対応物より大きい。従って、このような発現は、発現が最大値に近いとみ
なされるか、又は最大時点で測定することにより検出することができる。従って、二本鎖
自己相補性トランスジーン立体配置は、検出感度を高めると共に、とりわけ、特定の細胞
型への感染が効率的でないウイルス、すなわち細胞感染性又は親和性が比較的低いウイル
スのウイルス抗体定量の正確度を改善する。
【0047】
本明細書で用いる場合、「ベクター」は、細胞に核酸(例えば、リポータトランスジー
ン)を送達するのに用いることができるパルボウイルス(例えば、AAV)などのウイル
ス粒子を意味し得るが、このようなベクターとして、ビリオンにパッケージングされるか
、又はウイルスタンパク質(AAVキャプシドなどのエンベロープタンパク質若しくはキ
ャプシドタンパク質)により包膜される核酸(例えば、リポータトランスジーン)がある
。あるいは、「ベクター」という用語は、より限定的な文脈で、ベクター配列又は核酸を
指すのにも用いられる場合もある。従って、本明細書で用いられるベクターは、核酸(例
えば、リポータトランスジーン)を含むウイルス粒子、又は核酸若しくは配列のみ(この
ような配列は、「ベクター配列」などと呼ぶことができる)を指すのに用いられ得る。
【0048】
ウイルスベクターは、ウイルスゲノムを含む1つ又は複数の核酸エレメントに由来する
か、又はこれらに基づく。具体的ウイルスベクターとしては、アデノ関連ウイルス(AA
V)ベクターなどのパルボウイルスベクターが挙げられる。
【0049】
特定の実施形態では、組換えベクター(例えば、AAV)は、パルボウイルスベクター
である。パルボウイルスは、一本鎖DNAゲノムを有する小型ウイルスである。「アデノ
関連ウイルス」(AAV)は、パルボウイルスファミリーに属する。
【0050】
本明細書で用いる場合、ウイルスベクターなどのベクターの修飾語、並びに組換えポリ
ヌクレオチド及びポリペプチドなどの配列の修飾語としての「組換え」という用語は、組
成物(例えば、AAV若しくは配列)が、一般に天然では起こらない様式で操作(例えば
、改変)されていることを意味する。組換えベクターの具体例、例えば、AAVベクター
の場合、野生型ウイルス(例えば、AAV)ゲノムに通常存在しないポリヌクレオチドが
ウイルスゲノム内に挿入されている。例えば、組換えベクターの1例においては、当該遺
伝子が、通常、ウイルス(例えば、AAV)ベクターゲノムなどのベクター内で結合され
ている5’、3’及び/又はイントロン領域と一緒に、又はそれなしで、異種ポリヌクレ
オチド(例えば、トランスジーン)がベクター配列にクローン化されている。「組換え」
という用語は、常にAAVベクターなどのウイルスベクター、並びにベクター配列及びポ
リヌクレオチド及びポリペプチドに関して用いられるとは限らないが、省略されていたと
しても、AAVなどのウイルスベクター、ベクター配列及びポリヌクレオチド及びポリペ
プチドの組換え形態は明白に包含される。
【0051】
組換え「ベクター」又は「AAVベクター」は、分子法を用いて、ウイルス(例えば、
AAV)配列から野生型ゲノムを除去し、リポータトランスジーンなどの非ネイティブ核
酸で置換することにより、AAVなどのウイルスの野生型ゲノムから取得することができ
る。典型的には、AAVの場合、野生型AAVゲノムの1つ又は両方の逆方向末端反復(
ITR)配列がAAVベクター中に保持される。組換えウイルスベクター(例えば、AA
V)は、ウイルスゲノム配列の全部又は一部が、リポータトランスジーンなどのウイルス
(例えば、AAV)核酸に関して、非ネイティブ配列で置換されていることから、ウイル
ス(例えば、AAV)ゲノムから識別される。従って、リポータトランスジーンなどの非
ネイティブ配列の取り込みは、ウイルスベクター(例えば、AAV)を「組換え」ベクタ
ーとして定義し、これは、AAVの場合、「rAAVベクター」と呼ぶことができる。
【0052】
組換えベクター「ゲノム」(例えば、ウイルス若しくはAAVベクターゲノム)は、後
に行うex vivo、in vitro若しくはin vivoでの細胞の感染(形質
導入若しくは形質転換)のために、ウイルス(本明細書では、「粒子」又は「ビリオン」
とも呼ばれる)に包膜又はパッケージングすることができる。組換えAAVベクターゲノ
ムをAAVに包膜又はパッケージングする場合、該粒子は、「rAAV」と呼ぶことがで
きる。このような粒子又はビリオンは、典型的に、ベクターゲノムを包膜又はパッケージ
ングするタンパク質を含む。具体例として、ウイルスキャプシド及びエンベロープタンパ
ク質、並びにAAVの場合には、AAVキャプシドタンパク質が挙げられる。
【0053】
組換えプラスミドの場合、ベクター「ゲノム」は、最終的にパッケージング又は包膜さ
れて、ウイルス粒子を形成する組換えプラスミド配列の部分を指す。組換えプラスミドを
用いて、組換えベクターを構築又は製造する場合、ベクターゲノムは、組換えプラスミド
のベクターゲノム配列に対応しない「プラスミド」の部分を含まない。組換えプラスミド
のこの非ベクターゲノム部分は、「プラスミド骨格」と呼ばれ、これは、プラスミドのク
ローン化及び増幅、すなわち、増殖及び組み換えウイルス生産に必要なプロセスにとって
重要であるが、これ自体はウイルス(例えば、AAV)粒子にパッケージング又は包膜さ
れない。
【0054】
従って、ベクター「ゲノム」は、ウイルス(例えば、AAV)によりパッケージング又
は包膜され、異種(トランスジーン)ポリヌクレオチド配列を含むベクタープラスミドの
部分を指す。組換えプラスミドの非ベクターゲノム部分は、骨格を含み、これは、プラス
ミドのクローン化及び増幅に重要であるが、これ自体はウイルス(例えば、AAV)によ
ってパッケージング又は包膜されない。
【0055】
組換えベクター配列は、ポリヌクレオチドの挿入又は取り込みによって操作される。本
明細書に開示するように、ベクター配列又はプラスミドは、一般に、細胞中での増殖のた
めの少なくとも1つの複製起点と1つ又は複数の制御エレメントとを含む。
【0056】
組換えベクター(例えば、AAV)、ベクター配列若しくはプラスミド、並びにその方
法及び使用は、あらゆるウイルス株又は血清型を含む。非制限的例として、組換えベクタ
ー(例えば、AAV)プラスミドは、例えば、AAV-1、-2、-3、-4、-5、-
6、-7、-8、-9、-10、-11、-rh74、-rh10又はAAV-2i8な
どの任意のAAVゲノムに基づくものでよい。このようなベクターは、同じ株若しくは血
清型(又は亜群若しくは変異体)に基づくものであっても、あるいは、互いに異なってい
てもよい。非制限的例として、1つの血清型ゲノムに基づく組換えベクター(例えば、A
AV)プラスミドは、ベクターをパッケージングするキャプシドタンパク質の1つ又は複
数と同一であってもよい。さらに、組換えベクター(例えば、AAV)プラスミドは、ベ
クターをパッケージングするキャプシドタンパク質の1つ又は複数とは異なる。従って、
あくまで例示として、rAAV-2ベクタープラスミドは、例えば、AAV-1、-3、
-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-rh74、-rh10又はA
AV-2i8キャプシドからの3つのキャプシドタンパク質の少なくとも1つ(又は複数
)を有し得る。
【0057】
本明細書に開示するように、ベクターを用いて、リポータトランスジーンで標的細胞に
形質導入し、続いて、このトランスジーンを転写及び任意選択で翻訳させることにより、
トランスジーン発現を検出又は測定するための検出可能なシグナルを提供する。シグナル
の量は、細胞形質導入及び続く発現の効率と比例する。リポータトランスジーンをパッケ
ージング又は包膜するベクタータンパク質に結合する抗体は、トランスジーン導入及び後
の発現を阻害する。従って、ウイルス(例えば、AAV)ベクタータンパク質などのベク
タータンパク質に結合する抗体の存在についての検出、測定及び分析を確認することがで
きる。
【0058】
本明細書に記載するアッセイでは、抗体の検出、測定及び分析は、リポータトランスジ
ーンをパッケージング又は包膜するエンベロープ若しくはキャプシドタンパク質の同一性
によって決定される。従って、AAV-2抗体を検出しようとする場合、リポータトラン
スジーンをAAV-2キャプシドタンパク質によって包膜すべきである。AAV-7抗体
を検出しようとする場合には、リポータトランスジーンをAAV-7キャプシドタンパク
質によって包膜すべきである。AAV-8抗体を検出しようとする場合には、リポータト
ランスジーンをAAV-8キャプシドタンパク質によって包膜すべきである。抗体が存在
する場合、抗体は、リポータトランスジーンを包膜するエンベロープ又はキャプシドタン
パク質に結合して、細胞の形質導入、並びにその結果として起こるリポータトランスジー
ン発現を低減させる。エンベロープ又はキャプシドタンパク質に結合する抗体の量が多い
ほど、細胞のベクター形質導入、並びにその結果として起こるリポータトランスジーン発
現は低減する。
【0059】
伝統的な定義に従い、血清型は、目的のウイルスが、中和活性について既存の特性決定
された全ての血清型に特異的な血清に対して試験され、その結果、目的のウイルスを中和
する抗体が全くみいだされていないことを意味する。天然に存在するウイルス単離物が多
くみいだされ、及び/又はキャプシド突然変異体が生成されているため、現在存在する血
清型のいずれかと血清学的差異がある場合もあれば、ない場合もある。従って、新規ウイ
ルス(例えば、AAV)は、血清学的差異がない場合、この新規ウイルス(例えば、AA
V)は、対応する血清型の血清亜群又は変異体となり得る。多くの場合、キャプシド配列
修飾を有する突然変異型ウイルスに関して、これらが、血清型の伝統的な定義に応じて別
の血清型であるか否かを決定するための中和活性についての血清学試験は、いまだに実施
されていない。従って、便宜上、そして繰り返しを避けるため、「血清型」という用語は
、血清学的に異なるウイルス(例えば、AAV)、並びに血清学的に異なっておらず、所
与の血清型の血清亜群又は変異型に属すると思われるウイルス(例えば、AAV)の両方
を指す。
【0060】
AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8
、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74若しくはAAV-2i8を含
む、組換えベクター(例えば、AAV)及びベクター配列は、1つ又は複数の機能性AA
V ITR配列とフランキングする1つ又は複数の異種ポリヌクレオチド配列(トランス
ジーン)を包含するように、当業者には公知の組換え技術を用いて、構築することができ
る。こうしたベクターは、1つ又は複数の野生型AAV遺伝子、例えば、rep及び/又
はcap遺伝子が全部又は一部欠失しているが、AAVベクター粒子への組換えベクター
のレスキュー、複製、及びパッケージングの必要に応じて、少なくとも1つの機能性フラ
ンキングITR配列(例えば、AAV2又はいずれか他のAAV血清型ITR)を保持す
る。従って、AAVベクターゲノムは、複製及びパッケージングのために必要なcis配
列(例えば、機能性ITR配列)を含む。
【0061】
「トランスジーン」、「配列」、「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、本
明細書では、置き換え可能に用いられ、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RN
A)を含む、あらゆる形態の核酸、オリゴヌクレオチドを指す。トランスジーンとしては
、ゲノムDNA、cDNA及びアンチセンスDNA(スプライシング若しくは非スプライ
シング)が挙げられる。トランスジーンには、天然に存在する、合成、及び意図的に改変
若しくは修飾されたポリヌクレオチド、並びに類似体及び誘導体が含まれる。トランスジ
ーンは、典型的に、一本鎖若しくは二本鎖、線状若しくは環状であり、任意の長さであっ
てよい。トランスジーンについて述べる際、特定のポリヌクレオチドの配列又は構造は、
5’から3’方向の配列を提供する慣習に従って記載する場合がある。
【0062】
「異種」トランスジーン、配列、又はポリヌクレオチドは、細胞へのポリヌクレオチド
のベクター媒介性移入/送達の目的で、ベクター(例えば、AAV)に挿入されるポリヌ
クレオチドを指す。異種トランスジーン、配列、又はポリヌクレオチドは、典型的に、ベ
クター(例えば、AAV)核酸とは異なる、すなわち、ウイルス(例えば、AAV)核酸
配列に関して、非ネイティブである。いったん細胞に移入/送達されると、ビリオン内に
含まれる異種トランスジーン、配列、又はポリヌクレオチドは発現(例えば、転写、適切
であれば、翻訳)され得る。あるいはビリオン内に含まれ、細胞中に移入/送達された異
種トランスジーン、配列、又はポリヌクレオチドが発現される必要はない。「異種」とい
う用語は、本明細書において、常にトランスジーン、配列、又はポリヌクレオチドに関し
て用いられるわけではないが、修飾語「異種」がない場合でも、トランスジーン、配列、
又はポリヌクレオチドと言うとき、省略にかかわらず、異種トランスジーン、配列、又は
ポリヌクレオチドを含むことが意図される。
【0063】
「トランスジーン」という用語は、本明細書では、便宜上、細胞又は生物に導入された
異種ポリヌクレオチドを指すために用いられる。トランスジーンは、ポリヌクレオチドに
転写される遺伝子、又は典型的には、中間転写物としてポリペプチド若しくはタンパク質
をコード化する遺伝子など、あらゆるポリヌクレオチドを指す。
【0064】
本明細書で用いる場合、「リポータ」トランスジーンは、検出可能なシグナルを賦与す
る遺伝子である。シグナルは、トランスジーン自体、トランスジーンの転写物、又はトラ
ンスジーンによりコード化されるタンパク質によって賦与され得る。リポータトランスジ
ーンの特定の非制限的例として、ルシフェラーゼタンパク質をコード化するルシフェラー
ゼ遺伝子などがある。
【0065】
「トランスジーン」又は「ポリヌクレオチド配列」によりコード化される「ポリペプチ
ド」、「タンパク質」及び「ペプチド」は、天然に存在するタンパク質と同様に、完全長
ネイティブ配列、さらには、サブ配列、修飾形態又は変異体がネイティブ完全長タンパク
質のある程度の機能性を保持している限り、機能性サブ配列、修飾形態又は配列変異体を
包含する。本発明の方法及び使用において、トランスジーン又はポリヌクレオチド配列に
よりコード化されるこうしたポリペプチド、タンパク質及びペプチドは、野生型タンパク
質と同一であってよいが、同一である必要はない。
【0066】
本明細書に開示する非制限的リポータトランスジーン及びコード化タンパク質を含む、
トランスジーン、配列及びポリヌクレオチドのあらゆる哺乳動物及び非哺乳動物形態が、
既知又は未知のいずれも明白に包含される。従って、本発明は、非哺乳動物、ヒト以外の
哺乳動物、及びヒト由来のリポータトランスジーン及びタンパク質を含み、これらのリポ
ータトランスジーン及びタンパク質は、本明細書で記載するように、形質導入又は移入後
に、細胞中に検出可能である。
【0067】
トランスジーンを有する細胞において、トランスジーンは、ウイルスベクター(例えば
、AAV)などのベクターによって、導入/移入されている。このプロセスは、細胞の「
形質導入」又は「形質転換」又は「トランスフェクション」と呼ばれる。「形質導入する
」、「形質転換する」及び「トランスフェクトする」という用語は、トランスジーンなど
の分子の細胞への導入を指す。
【0068】
トランスジーンが導入された細胞は、「形質転換細胞」又は「形質転換体」と呼ばれる
。従って、「形質導入」、「形質転換」又は「トランスフェクト」された細胞(例えば、
哺乳動物では、細胞又は組織若しくは臓器細胞)は、該細胞への外性分子、例えば、ポリ
ヌクレオチド若しくはタンパク質(例えば、トランスジーン)の取り込み後の該細胞の遺
伝子変化を意味する。このように、「形質導入」、「形質転換」又は「トランスフェクト
」された細胞は、例えば、外性分子が導入された細胞、又はその子孫である。上記細胞は
増殖させることができ、また導入されたトランスジーンを転写させる、及び/又はタンパ
ク質を発現させることもできる。
【0069】
導入されたトランスジーンは、レシピエント細胞の核酸に組み込んでもよいし、組み込
まなくてもよい。導入されたトランスジーンが、レシピエント細胞又は生物の核酸(ゲノ
ムDNA)に組み込まれたら、これを該細胞又は生物中に安定に維持し、さらに、レシピ
エント細胞若しくは生物の子孫細胞若しくは生物に継代させるか、又は遺伝させることが
できる。最後に、導入されたトランスジーンは、レシピエント細胞又は宿主生物中に一時
的に存在してもよい。
【0070】
トランスジーンを担持するベクター(例えば、ウイルスベクター)による形質導入の標
的となり得る細胞は、ベクターによる感染に対し感受性の任意の細胞であってよい。この
ような細胞は、感染に対する低度、中度若しくは高度の感受性を有し得る。従って、標的
細胞は、あらゆる起原(例えば、中胚葉、外胚葉若しくは内胚葉)のあらゆる組織又は臓
器タイプの細胞を含む。細胞の特定の非制限的例として、肝臓(例えば、肝細胞、類洞内
皮細胞)、膵臓(例えば、β膵島細胞)、肺、中枢若しくは末梢神経系、例えば、脳(例
えば、神経、グリア若しくは上衣細胞)又は脊柱、腎臓(HEK-293細胞)、眼(例
えば、網膜、細胞成分)、脾臓、皮膚、胸腺、精巣、肺、隔膜、心臓(心臓系)、筋肉若
しくは腰筋、又は消化管(例えば、内分泌)、脂肪組織(白色、褐色若しくはベージュ)
、筋肉(例えば、線維芽細胞)、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、上皮細胞、内皮細胞、
唾液腺細胞、内耳神経細胞又は造血系(例えば、血液若しくはリンパ系)細胞が挙げられ
る。別の例としては、幹細胞、例えば、肝臓(例えば、肝細胞、類洞内皮細胞)、膵臓(
例えば、β膵島細胞)、肺、中枢若しくは末梢神経系、例えば、脳(例えば、神経、グリ
ア若しくは上衣細胞)又は脊柱、腎臓、眼(網膜、細胞成分)、脾臓、皮膚、胸腺、精巣
、肺、隔膜、心臓(心臓系)、筋肉若しくは腰筋、又は消化管(例えば、内分泌)、脂肪
組織(白色、褐色若しくはベージュ)、筋肉(例えば、線維芽細胞)、滑膜細胞、軟骨細
胞、破骨細胞、上皮細胞、内皮細胞、唾液腺細胞、内耳神経細胞又は造血系(例えば、血
液若しくはリンパ系)細胞へと発生又は分化する万能性又は多能性前駆細胞が挙げられる
。
【0071】
AAVベクター及びベクター配列などのウイルスベクターは、1つ又は複数の「発現制
御エレメント」又は「調節エレメント」を含んでもよい。典型的に、発現制御エレメント
又は調節エレメントは、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼす核
酸配列である。ベクター内に存在する、プロモータ及びエンハンサーなどの、本明細書に
記載の発現制御エレメント及び調節エレメントを含む制御エレメントは、適正な異種ポリ
ヌクレオチド(トランスジーン)転写、並びにもし適切であれば、翻訳を促進するために
含まれる(例えば、プロモータ、エンハンサー、イントロンのスプライシングシグナル、
mRNAのフレーム内翻訳を可能にするための遺伝子の正しいリーディングフレームの維
持、終止コドンなど)。このようなエレメントは、cisで作用するが、transでも
作用し得る。
【0072】
発現制御は、転写、翻訳、スプライシング、メッセージ安定性などのレベルで実施する
ことができる。典型的に、転写を調節する発現制御エレメントは、転写ポリヌクレオチド
の5’末端付近(すなわち「上流」)に並置される。発現制御エレメントはまた、転写さ
れた配列の3’末端(すなわち「下流」)又は転写物内(例えば、イントロン中)にも配
置することができる。発現制御エレメントは、転写配列から特定の距離(例えば、ポリヌ
クレオチドから100~500、500~1000、2000~5000、5000~1
0,000又はそれ以上のヌクレオチド)離れた地点(相当の距離離れていても)に配置
してもよい。それでも、ポリヌクレオチド長さの制約のために、AAVベクターの場合、
このような発現制御エレメントは、典型的に、ポリヌクレオチドから1~1000ヌクレ
オチドの範囲内にある。
【0073】
機能的に、作動可能に連結された異種ポリヌクレオチド(トランスジーン)の発現は、
エレメントが、ポリヌクレオチドの転写、また、もし適切であれば、転写物の翻訳を調節
するように、エレメント(例えば、プロモータ)によって、少なくともその一部が制御可
能である。発現制御エレメントの具体例として、プロモータがあり、これは、通常、転写
された配列の5’側に配置することができる。発現制御エレメントの別の具体例は、エン
ハンサーであり、これは、転写された配列の5’、3’側、又は転写された配列内に配置
することができる。
【0074】
本明細書で用いる場合、「プロモータ」は、トランスジーンに隣接して位置するDNA
配列を指す。プロモータは、典型的に、隣接する配列、例えば、異種ポリヌクレオチド(
トランスジーン)に作動可能に連結される。プロモータは、典型的に、プロモータが存在
しない場合に発現される量と比較して、異種ポリヌクレオチド(トランスジーン)から発
現される量を増加させる。
【0075】
本明細書で用いる場合、「エンハンサー」は、異種ポリヌクレオチド(トランスジーン
)に隣接して位置する配列を指すことができる。エンハンサーエレメントは、典型的に、
プロモータの上流に位置するが、やはり機能し、また、DNA配列(例えば、トランスジ
ーン)の下流又は該配列内に配置することができる。従って、エンハンサーエレメントは
、異種ポリヌクレオチド(トランスジーン)の100塩基対、200塩基対、若しくは3
00以上の塩基対上流又は下流に配置することができる。エンハンサーエレメントは、典
型的に、プロモータエレメントによって付与される増大した発現よりも多く、異種ポリヌ
クレオチド(トランスジーン)の発現を増大させる。
【0076】
発現制御エレメント(例えば、プロモータ)は、特定の組織又は細胞型で活性のものを
含み、これらは、本明細書において「組織特異的発現制御エレメント/プロモータ」と呼
ばれる。組織特異的発現制御エレメントは、典型的に、特定の細胞又は組織(例えば、肝
臓、脳、中枢神経系、脊髄、眼、網膜、骨、筋肉、肺、膵臓、心臓、腎細胞など)におい
て活性である。発現制御エレメントは、典型的に、特定の細胞、組織若しくは臓器タイプ
に特有の転写活性化タンパク質、又はその他の転写調節因子によって認識されるため、こ
れらの細胞、組織若しくは臓器において活性である。
【0077】
発現制御エレメントはまた、遍在性又は乱交雑プロモータ/エンハンサーも含み、これ
らは、多くの異なる細胞型におけるポリヌクレオチドの発現を駆動することができる。こ
うしたエレメントとして、限定はしないが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロ
モータ/エンハンサー配列、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモータ/エンハンサー配
列並びに様々な哺乳動物細胞型において活性の他のウイルスプロモータ/エンハンサー、
又は天然に存在しない合成エレメント(例えば、Boshart et al,Cell
,41:521-530(1985)を参照)、SV40プロモータ、ジヒドロ葉酸レダ
クターゼ(DHFR)プロモータ、ニワトリβアクチン(CBA)プロモータ、ホスホグ
リセロールキナーゼ(PGK)プロモータ、並びに伸長因子-1α(EF1-α)プロモ
ータが挙げられる。
【0078】
発現制御エレメントは、調節可能な様式で、発現を付与することもできる。すなわち、
シグナル又は刺激が、作動可能に連結された異種ポリヌクレオチド(トランスジーン)の
発現を増大若しくは低減する。シグナル又は刺激に応答して、作動可能に連結されたポリ
ヌクレオチドの発現を増大する調節可能なエレメントは、「誘導性エレメント」(すなわ
ち、シグナルにより誘導される)とも呼ばれる。特定の例として、限定はしないが、ホル
モン(例えば、ステロイド)誘導性プロモータがある。シグナル又は刺激に応答して、作
動可能に連結されたポリヌクレオチドの発現を低減する調節可能なエレメントは、「抑制
エレメント」(すなわち、シグナルが除去されるか、存在しないとき、発現が増大される
ように、シグナルは発現を低減する)とも呼ばれる。典型的に、こうしたエレメントによ
り付与される増大又は低減の量は、存在するシグナル又は刺激の量に比例し;シグナル又
は刺激の量が多いほど、発現の増大又は低減の程度も大きくなる。特定の非制限的例とし
て、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(metallothionine)(MT)プロ
モータ、ステロイドホルモン誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモータ;T7ポ
リメラーゼプロモータ系(国際公開第98/10088号パンフレット);テトラサイク
リン抑制系(Gossen,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA,89:5547-5551(1992));テトラサイクリン誘導系(Gosse
n,et al.,Science.268:1766-1769(1995);また、
Harvey,et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.2:512-
518(1998)も参照);RU486-誘導系(Wang,et al.,Nat.
Biotech.15:239-243(1997)及びWang,et al.,Ge
ne Ther.4:432-441(1997)];並びにラパマイシン誘導系(Ma
gari,et al.,J.Clin.Invest.100:2865-2872(
1997);Rivera,et al.,Nat.Medicine.2:1028-
1032(1996))が挙げられる。本発明に関して有用となり得る、その他の調節可
能な制御エレメントに、特定の生理学的状態、例えば、温度、急性期によって調節される
ものがある。
【0079】
さらに、発現制御エレメントは、異種ポリヌクレオチド(トランスジーン)のネイティ
ブエレメントも含む。ネイティブ制御エレメント(例えば、プロモータ)は、異種ポリヌ
クレオチドの発現が、ネイティブ発現を模倣することが要望される場合に用いることがで
きる。ネイティブエレメントは、異種ポリヌクレオチドの発現を一時的若しくは発生過程
で、又は組織特異的に、又は特定の転写刺激因子に応答して、調節しようとする場合に用
いてもよい。さらに、イントロン、ポリアデニル化部位若しくはKozak共通配列など
の他のネイティブ発現制御エレメントを用いてもよい。
【0080】
本明細書で用いる場合、「作動可能な連結」又は「作動可能に連結された」という用語
は、そのように表現された成分が意図される様式で機能することを可能にするような、該
成分の物理的又は機能的並置を指す。トランスジーンとの作動可能な連結状態にある発現
制御エレメントの例において、この関係は、制御エレメントがトランスジーンの発現を調
節するような関係である。より具体的には、例えば、作動可能に連結された2つのDNA
配列とは、2つのDNAが、これらDNA配列の少なくとも一方が他方の配列に生理学的
作用を及ぼすことができるような関係で、配置(cis又はtrans)されていること
を意味する。
【0081】
本明細書に開示するように、AAV及びベクター配列などのウイルスベクターを含むベ
クターは、さらに別の核酸エレメントを含んでもよい。これらのエレメントとして、限定
はしないが、AAV ITR配列、プロモータ/エンハンサーエレメント、転写終結シグ
ナル、トランスジーンをフランキングする5’若しくは3’非翻訳領域(例えば、ポリア
デニル化配列)、又はイントロンIの全部若しくは一部が挙げられる。このようなエレメ
ントはまた、任意選択で転写終結シグナルも含む。転写終結シグナルの具体的な非制限的
例として、SV40転写終結シグナルがある。
【0082】
「フランキングする」という用語は、トランスジーンなどのベクター若しくはベクター
配列のエレメントに関して本明細書で用いられる場合、該当するエレメントが、5’又は
3’側に位置することを意味する。従って、発現制御エレメントがトランスジーンをフラ
ンキングする場合、この制御エレメントは、トランスジーンの5’又は3’側に位置する
。用語「フランキングする」は、それらの間の中間配列を除外するものではない。例えば
、トランスジーンと制御エレメント、例えば、制限部位との間に介在配列が存在し得る。
制限部位は、トランスジーンと制御エレメントとの間の介在配列であってもよい。従って
、あるエレメントを「フランキングする」配列とは、1つのエレメントが、該配列の5’
又は3’側に位置するが、フランキング配列は、それがフランキングする配列に直接隣接
しないように、介在配列が存在し得ることを示す。
【0083】
本明細書に開示するように、AAVベクターは、一般にサイズが約4kb~約5.2k
bの規定範囲であるか、又はこれを若干超えるDNAの挿入片を受容する。従って、リポ
ータトランスジーンが一本鎖ゲノムであるか、又は自己相補的である場合、トランスジー
ンのサイズは、約4kb~約5.2kbより小さくなる。
【0084】
より短いベクター配列の場合、ウイルス粒子へのAAVベクターのパッケージングに許
容されるウイルスゲノム配列の通常サイズ若しくはその前後に長さを調整するための、挿
入断片へのスタッファー又は充填材の導入。様々な実施形態では、充填材/スタッファー
核酸配列は、核酸の非翻訳(非タンパク質コード化)セグメントである。AAVベクター
の特定の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、4.7kb未満の長さを有し、充
填材又はスタッファーポリヌクレオチド配列は、トランスジーン配列と組み合わせた(例
えば、ベクターに挿入された)場合、全長が約3.0~5.5Kb、又は約4.0~5.
0Kb、又は約4.3~4.8Kbとなる長さを有する。
【0085】
修飾形態を含むポリヌクレオチド及びポリペプチドは、種々の標準的クローン化、組換
えDNA技術を用いて、細胞発現又はin vitro翻訳及び化学合成技術により、作
製することもできる。ポリヌクレオチドの純度は、配列決定、ゲル電気泳動などにより決
定することができる。例えば、核酸は、ハイブリダイゼーション又はコンピューターによ
るデータベーススクリーニング法を用いて単離することができる。このような方法として
、限定はしないが、以下のものが挙げられる:(1)相同性ヌクレオチド配列を検出する
ための、ゲノムDNA若しくはcDNAライブラリーとプローブのハイブリダイゼーショ
ン;(2)例えば、発現ライブラリーを用いた、共通の構造的特徴を有するポリペプチド
を検出するための、抗体スクリーニング;(3)目的の核酸配列にアニーリングすること
ができるプライマーを用いた、ゲノムDNA又はcDNA上でのポリメラーゼ連鎖反応(
PCR);(4)関連配列についての配列データベースのコンピューター検索;並びに(
5)減じられた核酸ライブラリーの示差スクリーニング。
【0086】
修飾形態を含むポリヌクレオチド及びポリペプチドはまた、当業者には周知の方法、例
えば、自動化合成装置を用いて、化学合成により生成することもできる(例えば、App
lied Biosystems,Foster City,CAを参照)。ペプチドは
、全部又は一部を、化学的方法(例えば、Caruthers(1980).Nucle
ic Acids Res.Symp.Ser.215;Horn(1980);並びに
Banga,A.K.,Therapeutic Peptides and Prot
eins,Formulation,Processing and Delivery
Systems(1995)Technomic Publishing Co.,L
ancaster,PAを参照)を用いて合成することができる。ペプチド合成は、様々
な固相技術(例えば、Roberge Science 269:202(1995);
Merrifield,Methods Enzymol.289:3(1997)を参
照)を用いて実施することができ、自動化合成は、例えば、ABI 431A Pept
ide Synthesizer(Perkin Elmer)を用いて、製造者の指示
に従い、達成することができる。
【0087】
組成物(例えば、ベクター)の修飾語として用いられる場合、「単離された」という用
語は、組成物が、人の手により作製されているか、又はその天然に存在するin viv
o環境から完全に、又は少なくとも一部が分離されていることを意味する。一般に、単離
された組成物は、それらが天然では通常結合する1つ又は複数の物質、例えば、1つ又は
複数のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜を実質的に含まない。用語「単離され
た」は、人の手により生み出された組合せ、例えば、ベクターゲノムと医薬製剤をパッケ
ージング又は包膜する組換えウイルスベクター(例えば、AAV)、ベクター配列、又は
ウイルス粒子(例えば、AAV)を除外しない。さらに、用語「単離された」は、組成物
の別の物理的形態、例えば、ハイブリッド/キメラ、多量体/オリゴマー、修飾(例えば
、リン酸化、グリコシル化、脂質化)若しくは誘導された形態、又は人の手により生成さ
れた宿主細胞に発現された形態も除外しない。
【0088】
組換えベクター、ベクター配列、粒子などを担持するリポータトランスジーンによって
、ウイルス抗原、例えば、AAVキャプシドを含むエンベロープ又はキャプシドタンパク
質に結合する抗体を分析又は検出(測定/定量)することができる。本発明によれば、ウ
イルス抗原に結合する抗体を分析又は検出(測定/定量)するための方法が提供される。
一実施形態では、一方法は、以下を含む:組換えベクターを包膜する感染性組み換えウイ
ルス粒子を用意するステップであって、(i)ベクターが、リポータトランスジーンを含
み、(ii)リポータトランスジーンが、一本鎖若しくは自己相補的ゲノムを含み、(i
ii)リポータトランスジーンが、1つ又は複数の発現調節エレメントに作動可能に連結
され、かつ1つ又は複数のフランキングエレメントによってフランキングされている、ス
テップ;ウイルスに結合する抗体を分析又は検出するために、被験者からの生体サンプル
を用意するステップ;前記感染性組換えウイルス粒子に感染し得る細胞を用意するステッ
プ;感染性組換えウイルス粒子を生体サンプルと接触させるか、又はインキュベートし、
これによって得られる混合物を生成するステップ;得られた混合物と細胞を、感染性組み
換えウイルス粒子が、細胞に感染して、該細胞中にリポータトランスジーンを発現させる
ことができる条件下で、接触させるステップ;リポータトランスジーンの発現を測定する
ステップ。混合物のリポータトランスジーン発現を陰性(-)対照のリポータトランスジ
ーン発現と比較するステップであって、ここで、(-)対照は、(i)感染性ウイルスに
結合する抗体が欠失しているか、又は(ii)感染性ウイルスに結合する既定量の抗体を
有するかのいずれかである、ステップ。混合物のリポータトランスジーン発現が、(-)
対照より高ければ、これによって、生体サンプル中のウイルスに結合する抗体の存在が決
定又は検出される。
【0089】
特定の態様では、分析若しくは検出対象の抗体が、AAV粒子に結合し、及び/又は感
染性組み換えウイルス粒子は、1つ又は複数のAAVキャプシドタンパク質を含み、及び
/又は組換えベクターは、任意選択で1つ又は複数のAAV ITRと共に、AAVベク
ターなどのウイルスベクターを含む。
【0090】
「被験者」という用語は、動物、典型的に、哺乳動物、例えば、ヒト、ヒト以外の霊長
類(類人猿、テナガザル、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、マカク)、飼育動物
(イヌ及びネコ)、家畜(ニワトリ及びアヒルなどの家禽、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、
ブタ)、並びに実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)などを指す。ヒト被験
者は、胎児、新生児、幼児、小児及び成人被験者を含む。
【0091】
本発明は、パッケージング材及び1つ又は複数の構成要素を含むキットを提供する。キ
ットは、典型的に、ラベル又はパッケージング挿入片を含み、これらは、構成要素の説明
、又はキット内の要素のin vitro、in vivo、若しくはex vivoで
の使用についての指示を含む。キットは、このような要素、例えば、ベクター(例えば、
AAV)、ベクター配列、ゲノム若しくはウイルス粒子又は組成物の収集物を含んでよい
。
【0092】
キットは、キットの1つ又は複数の成分を収容する物理的構造を指す。パッケージング
材は、成分を滅菌状態に維持することができ、こうした目的に一般に使用される材料(例
えば、紙、段ボール、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプル、バイアル、チューブな
ど)から製造することができる。
【0093】
ラベル又は挿入片は、キット内の1つ又は複数の要素、用量、活性成分の臨床薬理学(
作用機構、薬物動態及び薬力学)の明示情報を含んでよい。ラベル又は挿入片は、製造者
、ロット番号、製造場所及び製造日、使用期限を明示する情報を含んでもよい。ラベル又
は挿入片は、製造者情報、ロット番号、製造者の場所及び日付を明示する情報を含んでも
よい。ラベル又は挿入片は、一方法、又は使用におけるキット構成要素の1つ又は複数を
使用する上での臨床医又は被験者に対する指示を含んでもよい。指示は、本明細書に記載
する方法及び使用のいずれかを実施する上での指示を含んでよい。
【0094】
ラベル又は挿入片は、「印刷物」、例えば、紙若しくはボール紙を含んでもよく、ある
いは個別の、又は要素、キット若しくはパッキング材(例えば、箱)に添付した、又はキ
ット構成要素を含有するアンプル、チューブ若しくはバイアルに貼り付けた印刷物を含ん
でもよい。ラベル又は挿入片は、さらに、コンピューターで読み取り可能な媒体、例えば
、バーコード化した印刷ラベル、ディスク、CD-若しくはDVD-ROM/RAMなど
の光ディスク、DVD、MP3、磁気テープ、又はRAM及びROMなどの電気記憶媒体
、あるいはこれらのハイブリッド、例えば、磁気/光学媒体、FLASH媒体若しくはメ
モリータイプカードを含んでもよい。
【0095】
別に定義されていない限り、本明細書で用いる技術及び科学用語は全て、本発明が属す
る分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるもの
と類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適
な方法及び材料は、本明細書に記載されるものである。
【0096】
本明細書に引用される全ての出願、刊行物、特許及びその他の参照文献、GenBan
k引用事項及びATCC引用事項は、その全体を参照により本明細書に組み込むものとす
る。不一致が生じた場合、定義を含め、本明細書が優先されるものとする。
【0097】
本明細書に開示される特徴の全てをあらゆる組合せで組み合わせてもよい。本明細書に
開示される各々の特徴の代わりに、同じ、同等、若しくは類似の目的を果たす別の特徴を
用いてもよい。従って、別のことが明示されていない限り、開示される特徴(例えば、組
換えベクター(例えば、AAV)、ベクター配列、プラスミド、ゲノム、若しくはトラン
スジーン、又は組み換えウイルス粒子(例えば、AAV)は、同等の、若しくは類似する
特徴の類の例である。
【0098】
本明細書で用いる場合、単数形「1つの」、「及び」及び「その」は、文脈が明らかに
別のことを示すのでない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1つのポリヌ
クレオチド」というとき、複数のポリヌクレオチドを含み、「1つのベクター」というと
き、複数のベクターを含み、「1つのベクター配列、プラスミドまたはゲノム」というと
き、複数のベクター配列を含み、「1つのウイルス」又は「粒子」というとき、複数のビ
リオン/粒子を含む。
【0099】
本明細書で用いる場合、全ての数値又は数値範囲は、文脈が明らかに別のことを示すの
でない限り、そのような範囲内の整数、並びに範囲内の値又は整数の分数を含む。従って
、例示のために、少なくとも80%の相同性又は同一性というとき、81%、82%、8
3%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%など、並びに
81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%、など、82.1%、8
2.2%、82.3%、82.4%、82.5%などを含む。
【0100】
「より多い(大きい)又は少ない」を伴うある整数というとき、指示対象の数より大き
い又は小さい任意の数をそれぞれ含む。従って、例えば、1より大きいというとき、2、
3、4、5、6、及びそれ以上を含む。
【0101】
本明細書で用いる場合、全ての数値又は範囲は、文脈が明らかに別のことを示すのでな
い限り、そのような範囲内の値及び整数の分数、並びにそのような範囲内の整数の分数を
含む。従って、例示のために、例えば、1~10のような数パーセンテージの範囲などの
値範囲をいうとき、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、並びに1.1、1.2
、1.3、1.4、1.5などを含む。従って、1~50の範囲というとき、1、2、3
、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、
19、20など、以後50まで、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、
2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などを含む。
【0102】
範囲のシリーズを指すとき、シリーズ内の様々な範囲の境界の値を組み合わせた範囲を
含む。従って、例示のために、以下:11~10、10~20、20~30、30~40
、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~20
0、200~250、250~300、300~400、400~500、500~75
0、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,00
0~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,
000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、
6,000~7,000、7,000~8,000、又は8,000~9,000の範囲
のシリーズというとき、10~50、50~100、100~1,000、1,000~
3,000、2,000~4,000などの範囲を含む。
【0103】
本発明は、一般に、様々な実施形態及び態様を説明するために肯定的な表現を用いて開
示されている。本発明はさらに、物質又は材料、方法ステップ及び条件、プロトコル、若
しくは手順などの特定の対象の内容が、全部又は一部排除される実施形態も具体的に含む
。例えば、本発明の特定の実施形態又は態様では、材料及び/又は方法ステップが排除さ
れる。従って、本発明が何を含まないかについて、本発明が概して本明細書に表現されて
いなかったとしても、本発明において明白には排除されない態様がやはり本明細書に開示
される。
【0104】
いくつかの本発明の実施形態について説明してきた。しかし、当業者であれば、本発明
の精神及び範囲を逸脱することなく、多様な用途及び条件に合わせて、これを改変するた
めに、本発明の様々な変更及び修正を行うことができる。従って、以下に示す実施例は、
例示を意図するのであって、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものでは
ない。
【実施例0105】
実施例1
この実施例は、抗AAV中和抗体(NAb)アッセイの性能を評価する様々な試験を概
説する。このようなアッセイを用いて、AAVベクター媒介性遺伝子移入試験への登録前
に被験者を選択すると共に、AAVベクター媒介性遺伝子移入療法の過程で、及びAAV
ベクター媒介性遺伝子移入療法後の抗AAV中和抗体の存在又は量をモニターすることが
できる。
【0106】
成人集団の実質的な部分は、典型的には、幼児期における気道の感染により、野生型A
AVに曝露されている(Calcedo,2011)。従って、多くの人は、ベクターと
交差反応するAAVに対するNAbを保有している。初期の臨床試験(Manno et
al.2006)により、あまり高くない力価のNAbであっても、ベクターが循環を
介して送達されると、形質導入を阻止するようであることが明らかにされた。ヒト以外の
霊長類での他の研究から、ベクターが循環を介して送達されると、1:5という低いNA
b力価が、肝臓の形質導入を完全に阻止することが立証された(Jiang et al
.,Blood 2006;Scallan,Blood 2006)。このアッセイの
目的は、この治験への参加のために来診する被験者におけるNAb力価を決定することで
あり;既存の力価が>1:5の者は、この治験に参加する候補ではない。
【0107】
本治験は、リポータ遺伝子を発現するAAVベクターを用いた細胞アッセイを使用する
。試験血清をベクターと混合して、ルシフェラーゼ発現のレベルを、血清に曝露していな
い対照サンプル中のレベルと比較する。中和力価は、細胞及びベクターを含むが、血清は
含まないウェルと比較して、リポータ遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)発現の50%以
上の阻害をもたらす血清の最大希釈度として定義するが、本明細書には範囲として報告す
る;例えば、サンプルの1:3.1希釈度で50%以上の阻害が認められたら、力価は、
1:3.1~1:10の範囲として報告する。
【0108】
3つの変数が、アッセイの精度及び正確度に影響を与え得る。これらは、アッセイ結果
への細胞継代数の影響、オペレータ変動性、並びに試験血清の凍結-解凍サイクル及びF
ACTによる結果の安定性である。試験のための血清サンプルは、通常ドライアイスで凍
結した状態で受け取り、-80℃で保存し、最初の解凍時に試験する。さらにもう1回の
凍結-解凍サイクルの後、反復アッセイを実施してもよい。
【0109】
実施例2
この実施例は、本明細書に記載する試験で用いられる特定の材料及び装置についての説
明を含む。
【0110】
材料:試験サンプル、すなわち被検体供給源は、以下の通りである:血清又は血漿(血漿
は、抗凝固因子としてのヘパリンを含有してはならない);PBS(リン酸緩衝食塩水)
、滅菌、Ca++及びMg++非含有の、Invitrogen 14190-136若
しくは同等物;DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Mod
ified Eagle Medium))、Invitrogen 11965-08
4、若しくは同等物;FBS(ウシ胎仔血清)、Hyclone SH30070.03
IR、若しくは同等物;ペニシリン/ストレプトマイシン、Invitrogen 15
140-122、若しくは同等物;L-グルタミン、200 mM、Invitroge
n 25030-156、若しくは同等物;cDMEM:完全DMEM(10% FBS
、1×ペニシリン/ストレプトマイシン、1×L-グルタミン);Ad-E4を安定に発
現するヒト胎児由来腎臓細胞(2V6.11細胞、ATCC番号:CRL-2784、継
代#26以下);トリプシン-EDTA(EDTA 4Naを含む0.25%トリプシン
)1×、Invitrogen 25200-056、若しくは同等物;ルシフェラーゼ
プラスミドを標準として用いて、ドット-ブロットハイブリダイゼーションにより滴定し
た、キャプシド:ベクターゲノム(vg)比が1の密度勾配精製AAV-ルシフェラーゼ
;対照FACT血漿、George King Biomedical Cat# 00
20-1、ロット番号D9d1、50ulアリコート中に冷凍保存;ポナステロン(Po
nasterone)A、Invitrogen H101-01、濃度1μg/mLで
100%エタノール中に再構成;500mL濾過システム、0.22μm、Millip
ore SCGPU05RE;96-ウェル平底組織培養プレートCorning 35
95;セロロジカルピペット(Serological Pipettes)、5、10
、25mL;50mL遠心分離/コニカルチューブ、Corning 430290;試
薬リザーバ、Costar 4870;12-チャンネルのマルチチャンネルピペタ(M
ulti-channel Pipettor)1~10μl;12-チャンネルのマル
チチャンネルピペタ20~200μl;p-20、p-200及びp-1000レイニン
・ピペットマン(Rainin Pipetman);ピペットチップ(Pipet T
ips);エッペンドルフ(Eppendorf)チューブ;12-チャンネルレザーバ
、Costar 4877;ピペット・エイド(Pipette Aid)、Drumm
ond 4-000-100若しくは同等物;ボルテックス(Vortex)ミキサー;
生存細胞計数用のトリパンブルー(Trypan Blue)(Sigma T8154
若しくは同等物);ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼアッセイキット、P
romega、カタログ#E2820;Microsoft Excelソフトウェア。
【0111】
装置:37℃及び5%CO2のインキュベータ;安全キャビネット(Biologica
l Safety Cabinet);血球計数器(Hemacytometer)、R
eichert Bright-Line、Fisher#02-671-5、又は同等
物;倒立顕微鏡;冷凍庫、-80℃;冷蔵庫、2~8℃;インキュベータ、37℃;化学
天秤;Veritasマイクロプレートルミノメータ、Turner Biosyste
ms;及び攪拌器。
【0112】
実施例3
この実施例は、抗AAV抗体を検出及び/又は定量する例示的方法の説明を含む。
【0113】
2V6.11細胞(アデノウイルス由来のE4遺伝子を発現するように遺伝子改変され
たHEK-293細胞)を、AAV-ルシフェラーゼベクター単独、又は様々な希釈度の
血清と混合したベクターで形質導入する。24時間後、ルミノメータを用いて、ルシフェ
ラーゼ発現を検出する。細胞は、これらの治験及び常用的アッセイについて同一に扱った
。
【0114】
3回反復した結果ラン(run)をベクター単独(対照)からの読取り値と比較して、
ルシフェラーゼ発現が、ベクター単独の場合の50%以下と等しくなる血清希釈度を決定
する。このアッセイでは、低いレベルの阻害で感度がより高いという理由で、リポータ遺
伝子としてlacZではなく、ルシフェラーゼリポータ遺伝子を用いる。
【0115】
ラン(run)の成功を評価する基準は、以下を含む:
1.対照血漿(プールしたヒト血漿、FACT)が、AAV8ベクターについては1:
100~1:316、及びAAV2ベクターについては1:1000~1:3160の読
取り値をもたらす。
2.細胞を含むが、ベクター及び血清は含まないウェルが、許容される程度の低い読取
り値をもたらす。
3.細胞及びベクターを含むが、血清は含まないウェルが、許容される読取り値をもた
らす。
【0116】
循環を通して、ベクターを送達するプロトコルの場合、典型的に、低い(<1:5)又
は検出不能な力価が、治験への参加には好ましい。そのため、この範囲にある全ての結果
を反復ラン(repeat run)で確認する。
【0117】
アッセイのアッセイ間変動性を、米国に居住し、重篤な血友病を有する成人(抗AAV
8NAb力価が、低-陰性から高まで)から得た9つのヒト血清サンプルからなる1群に
おいて推定した。これらの治験には、陽性対照FACT血漿(ロット#D9d1)が含ま
れた。FACTは、少なくとも30人のヒトドナー由来の正常なヒト血漿サンプルの市販
されているプールである。プールされた集団には、より高い力価のAAV抗体を有する個
体があり、これが、このアッセイにおいて陽性として現れることになる。陽性対照として
の血漿の使用は、血清と血漿が類似レベルの抗体を有するため、許容される。単一ロット
のFACT血漿を治験に使用した。
【0118】
より詳細には、試薬及びサンプル:濃度≧2×1011vg/mLのAAV-CBS-ウ
ミシイタケ(Renilla)ベクターを調製し、アリコートを-80℃で保存する。対
照血漿FACTについては、サンプルを56℃で30分熱失活させてから、アリコートを
-80℃で保存する。試験サンプルについては、サンプル(血清又は血漿)を56℃で3
0分熱失活させてから、アリコートを-80℃で保存する。ルシフェラーゼ溶解及びアッ
セイバッファーについては、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ系中の試薬
を調製し、製造者に従って使用する。希釈血清については、ウシ胎仔血清を56℃で30
分熱失活させてから、室温まで冷却した後、0.22μMフィルターを通してろ過する。
アリコートを-80℃で保存する。
【0119】
より詳細には、本手順のために、ATCC(cat.No.CRL-2784)から取
得した低継代(#2)2V6.11細胞を37℃の水浴中で約2分かけて解凍した後、1
0%FBS、1%Pen/Strep、及び1%グルタミンを含むDMEMで2回洗浄す
る。次に、細胞をT-75細胞培養フラスコに播種し、2日間培養し、トリプシン処理し
た後、T-75フラスコにおいてさらに2継代にわたって再播種する。続いて、細胞をト
リプシン処理し、洗浄し、計数してから、cDMEM及びポナステロン(Ponaste
rone)A(最終濃度1ug/mLまで添加)中で1×105細胞/mLに希釈した後
、96ウェルプレート上に、ウェル当たり20,000個の密度で播種する。細胞を37
℃/5%CO2インキュベータにおいて一晩インキュベートすると、約70~80%密集
度になるはずである。
【0120】
希釈プレート(96ウェルU底組織培養プレート)において試験サンプル及び対照血漿
サンプルの希釈系列を調製する。希釈剤としてFBSを用いて、FACT対照血漿の3.
1倍(half-log)階段希釈を調製する。希釈範囲は、FACT血漿に応じて変動
する。少なくとも6つの連続的希釈、典型的に、1:10~1:3160が推奨される。
【0121】
希釈剤としてFBSを用いて、試験サンプルの3.1倍階段希釈を調製する。希釈範囲
は、サンプルに応じて変動する:推奨される希釈度は、ベースライン(投与前)サンプル
の場合、1:1~1:316、AAV投与後のサンプルについては、1:10以上である
。
【0122】
希釈プレートから前記希釈物の18μLを第2の96ウェルプレアッセイプレートに移
す。AAVルシフェラーゼベクターをDMEM中で8×107~2×109vg/mLに希
釈することにより、作業濃度のAAVルシフェラーゼベクターを調製するが、その際、c
DMEM又はウシ血清を含有する希釈剤は一切使用しない。0.5mL希釈ベクターの量
が1つの全アッセイプレートに十分である。
【0123】
希釈した試験及び対照サンプルとベクターの混合物を調製することにより、「中和」サ
ンプルを取得する。希釈ベクターを12チャンネルレザーバに移す。レザーバから18μ
Lの希釈ベクターを、プレアッセイプレート中の試験及び対照サンプルの希釈物の各々1
8μLに移す。18μLの希釈ベクターを18μLのFBSと混合して、ベクター単独対
照(「V+FBS」)を得る。18μLのFBSを「ブランク(Blank)」としてプ
レアッセイプレートの1ウェルに添加する。プレアッセイプレートを37℃で1時間イン
キュベートする。
【0124】
インキュベーション後、7.5μLの「中和」試験希釈物、「中和」対照血漿希釈物、
V+FBS対照及びブランクFBSをアッセイプレートに3回反復して移す。アッセイプ
レートを37℃/5%CO2インキュベータにおいて一晩インキュベートする。
【0125】
細胞溶解及びルシフェラーゼ活性の測定のために、記載のように、15又は50mL円
錐チューブ中に十分な溶解バッファー(1プレートにつき5mLで十分である)、及び1
5又は50mL円錐チューブ中に十分なアッセイバッファー(1プレートにつき7mLで
十分である)を調製する。形質導入から20~24時間後、PBSで細胞を1回洗浄する
。マルチチャンネルピペットを用いて、細胞培養物上清を吸引する。細胞単層をかき乱さ
ないように注意しながら、200μLのPBSを細胞に添加する。洗浄液を吸引し、ウェ
ル当たり40μLの溶解バッファーを添加してから、室温で15分間インキュベートする
。
【0126】
ルミノメータを作動させ、アッセイバッファーを指定箇所にロードし、インジェクター
を充填し、細胞板をロードする(Promegaルシフェラーゼプロトコル)。ルシフェ
ラーゼ活性を測定し、読取り値を全てExcelに保存する。ルミノメータのパラメータ
:組込み時間、2秒、最後の操作とこの注入との間隔:0秒、注入量:50ul、注入速
度:333ul/秒、注入と測定との間隔:1秒。
【0127】
抗AAV中和抗体力価の計算のために、Excelシートの3回反復ウェルからの平均
生ルシフェラーゼ-BLANK値を計算し、ルシフェラーゼ発現率(%)を決定する:
ルシフェラーゼ発現率(%)=[(試験サンプルルシフェラーゼ読取り値-ブランク)/
(V-FBSルシフェラーゼ読取り値-ブランク)]×100。
ルシフェラーゼ阻害率(%)=100-ルシフェラーゼ発現率(%)
【0128】
サンプルの中和力価は、ルシフェラーゼ発現の50%以上の阻害率をもたらす、最も高
い希釈度として決定する。NAb力価は、希釈度範囲として報告する。例えば、50%以
上の阻害率がサンプルの1:10希釈度で認められた場合、力価は、1:10~1:31
の範囲として報告する。
【0129】
オペレータ変動:オペレータ変動性は、異なる日に同じ群のヒト血清サンプルについて、
オペレータ1及び2により実施された複数のAAV NAbの結果に基づいて評価した。
オペレータに対して、サンプル番号はマスクしなかった。
【0130】
オペレータ1は、異なる日に6回、9つの血清サンプルについてNAbアッセイを実施
した。FACT血漿は、6つの異なる日に計18回試験した。
【0131】
オペレータ2は、異なる日に5回、9つの血清サンプルについてNAbアッセイを実施
した。FACT血漿は、5つの異なる日に計15回試験した。
【0132】
細胞継代数を記録し、結果分析に用いた。最後に、複数の凍結-解凍サイクル後にFA
CT血漿の抗AAV8 NAb力価を決定して、サンプル取り扱いに関連する抗AAV8
NAbの変化を評価した。
【表1】
【0133】
サンプル希釈物を括弧内に示す。Maxシグナル(Signal)ウェルは、サンプル
希釈剤のみとインキュベートしたウイルスを含む。バックグラウンドウェルは、希釈剤の
みを含む。最大3つの未知のサンプルを96ウェルプレートで試験した。ここに示すアッ
セイプレートのレイアウトは、アッセイの実施中に用いたものと同一である。
【0134】
実施例4
この実施例は、抗AAV抗体を検出及び/又は定量するためのアッセイ結果の説明を含
む。
【0135】
細胞継代数の関数としてのシグナル強度:合計33のプレートに播種した後、この治験に
おけるAAV NAb試験に使用した。最大及び最小リポータシグナル強度を細胞継代数
の関数として測定した。
【0136】
細胞継代数が増加すると、最大リポータ遺伝子シグナル(Maxシグナル)の低下が認
められた(
図1A)が、これは、アッセイの結果に影響しないようであった。すなわち、
NAb力価は、最大25継代まで、細胞継代数には関係なく、アッセイしたサンプルにつ
いて同じであり、全てのアッセイが、アッセイ成功の要件を満たした。本アッセイで用い
た細胞は、決して25回超継代培養しなかったことに留意されたい。NAbアッセイの目
的のために、細胞は、25継代以下であるべきである。
【0137】
バックグラウンドシグナルもまた、細胞継代数と共に低下した(
図1B)。しかし、細
胞継代1~12と13~25についての平均シグナルは、統計的に差はなかった。
【0138】
オペレータ変動性:これらの分析に用いられ、数ヵ月の期間にわたって実験室で常用的に
評価されたFACT血漿の特定のロットのAAV NAb力価は、AAV8ベクターの場
合、1:100~1:316である。平均値からのNAb力価≧又は≦1/2ログを排除
した。排除したラン(run)の研究への標準的アプローチは、試薬はいずれも期限切れ
ではなく、ルミノメータを含む重要な装置の維持が最新であることを確認することである
。経験から、許容範囲外アッセイについて、具体的原因がみいだされるのは稀であり;恐
らく、これは細胞アッセイに固有の変動性を表すことがわかっている。
【0139】
オペレータ1:オペレータ1により実施された決定の群において、FACT対照血漿の抗
AAV8 NAb力価を、6つの個別の治験で18回測定した。
・16/18回で、FACT血漿は、1:100~1:316の力価を示した;
・1/18回(プレート2、4日目)で、測定された力価は、1/2log低く、1:
31~1:100であり、これによってこのアッセイランは排除された;
・1/18回(プレート3、6日目)で、測定された力価は、1/2log高く、1:
316~1:1000であり、これによってこのアッセイランは排除された。
【表2】
【0140】
合計9つのヒト血清サンプルを、6つの異なる日に、抗AAV8 NAbについて試験
した。結果を表2Bにまとめる。グレーの陰影を付けた箇所は、FACT血漿対照NAb
力価が、過去の範囲とは違っていたため、分析から除外したアッセイランを示す。
【0141】
全ての日で陰性(<1:1)と評点されたサンプル1、2、3、5及び7について、力
価の間に変動性は全く認められなかった。サンプル4及び9の場合、5つの試験日に関し
て約1logの変動が認められ、力価は、それぞれ<1:1から1:3.1~1:10ま
で、及び1:3.1~1:10から1:31.6~1:100までと変動した。サンプル
6の場合、half logの変動が認められ;このサンプルは、第5日を除く全ての日
で陰性と評点された。サンプル8では、力価のhalf log変動が認められ、力価は
、1:316~1:1000から1:1000~1:3160まで変動した。
【0142】
各サンプルは、1~4日目で閾値を超え(不適格)、5日目に閾値未満(適格)と評点
されたサンプル9を除き、一貫して、治験適格基準の閾値を超えるか、又は満たないかの
いずれかの評価であった。
【表3】
【0143】
オペレータ2:オペレータ2により実施された治験の部分(表3A)では、FACT対照
血漿の抗AAV8 NAb力価を、5つの個別の実験で15回測定した。
・13/15回で、FACT血漿は、1:100~1:316の力価を示した;
・1/15回(プレート3、3日目)で、測定された力価は、1/2log高く、1:
316~1:1000であり、これによってこのアッセイランは排除された;
・1/15回(プレート3、5日目)で、測定された力価は、1/2log低く、1:
31.6~1:100であり、これによってこのアッセイランは排除された。
【表4】
【0144】
合計9つのヒト血清サンプルを、5つの異なる日に、抗AAV8 NAbについて試験
した。結果を表3Bにまとめる。陰影を付けた箇所は、FACT血漿対照NAb力価が、
過去の範囲とは違っていたため、分析から除外したアッセイランを示す。
【0145】
サンプル1、2、3、5、6は、陰性抗AAV8 NAb力価(<1:1)で、サンプ
ル4は、力価が1:1~1:3.1であり、一貫して、5つの全ての試験日を通じて同じ
力価を示した。サンプル8及び9も、試験日を通じて一貫しており;サンプル8は、1:
100~1:316、サンプル9は、1:10~1:31.6と評点された。サンプル7
は、1:1~1:3.1、すなわちhalf log変動と評点された2日目を除いて、
全ての試験日で陰性(<1:1)と評点された。
【0146】
各サンプルは、一貫して、治験適格性の閾値を超えるか、又は満たないかのいずれかと
評点された。
【表5】
【0147】
オペレータ間変動性:オペレータ1及び2により測定された各サンプルについての平均A
AV NAb力価を表4及び
図2に示す。平均値は、報告された力価範囲の低値の逆数を
用いて計算した。例えば、所与のランにおけるサンプルの力価が、1:3.1~1:10
として報告された場合、平均値を計算するのに3.1を用いた。力価が、<1.1として
記録された場合には、0の値を用いた。
【0148】
サンプル1、2、3、4又は5については、オペレータ間変動性が認められなかった。
サンプル6、7、8及び9の場合、いくらかのオペレータ間変動性が認められたが、オペ
レータ平均値同士の差は、いずれのサンプルについても、1log以下であった。平均F
ACT力価は、オペレータ間でほぼ同じであり、0.01logしか違わなかった(平均
FACT力価の計算は、FACT力価が過去の変異とは異なる、除外されたランも含んだ
)。
【表6】
【0149】
凍結-解凍サイクルの影響:AAV NAb力価に対する反復凍結-解凍サイクルの影響
をFACT血漿陽性対照について評価した。サンプルを最大6つの凍結-解凍サイクルに
付した(37℃で解凍し、エタノール/ドライアイス浴中で凍結し、その間-80℃で保
存する)後、抗AAV8 NAb力価を測定した。試験を2回反復した。試験サンプルも
-80℃で保存するが、氷上(0℃)で解凍したことに留意されたい。凍結-解凍試験の
結果を表5にまとめる。最大6回の凍結-解凍サイクル後に、AAV NAb力価に変動
は測定されなかった。
【表7】
【0150】
実施例5
この実施例は、AAV抗体アッセイに基づく結論の説明を含む。
【0151】
NAbアッセイで用いた細胞の最初の解凍から25継代以内に、ルシフェラーゼシグナ
ルの最大シグナルに有意な低下が観測された。しかし、この低下は、この試験結果に影響
を及ぼさなかったと考えられる。すなわち、AAV NAb力価は、25継代まで、細胞
継代数とは関係なく、アッセイしたサンプルについて同一であり、全てのアッセイがアッ
セイの成功の要件を満たした。
【0152】
6回の凍結-解凍サイクルは、本アッセイで測定した対照血漿サンプルのNAb力価に
影響しない。このアッセイで用いた対照血漿は、受け取り時に、アリコートに等分及び凍
結されており、解凍したアリコートは再凍結しない。
【0153】
同じサンプル群の複数の測定値間で、NAb力価に限定的な変動性が認められた(アッ
セイ間変動性)。中間から高いNAb力価を有するサンプルについては、より高い変動性
が測定され、低力価NAbサンプルでは、より低い変動性が観測された。
【0154】
同様に、中間から高いNAb力価を有するサンプルについては、オペレータ間で、NA
b力価のより高い変動性が観測され(オペレータ間変動性)、低力価NAbサンプルでは
、より低い変動性が観測された。
【0155】
本AAV媒介性遺伝子移入試験への参加のための閾値が、<1:5であるとすれば,7
/8試験ランで>1:5(治験への参加に不適格)と評点され、1/8試験ランで<1:
5(治験への参加に適格)と評点されたサンプル9だけに曖昧な結果が認められた。これ
が、実際の被験者サンプルであった場合、<1:5の力価については、直ちに反復試験が
実施されたであろう。
【0156】
これらの結果は、NAbアッセイが、ヒト血清(又は血漿)サンプル中の抗AAV N
Ab力価を測定するための信頼できる試験であることを示している。このようなアッセイ
は、AAV遺伝子移入試験への登録前に、低い抗AAV力価を有する被験者を識別するた
め、及び/又はAAV媒介性遺伝子移入の過程で、又は移入後にAAV力価をモニターす
るために使用することができる。
ベクター配列がリポータトランスジーンを含む組換えAAVベクター配列において、前記リポータトランスジーンが、(a)一本鎖又は自己相補的ゲノムを含み、(b)1つ又は複数の発現調節エレメントに作動可能に連結され、かつ(c)1つ又は複数のフランキングエレメントによってフランキングされている、組換えAAVベクター配列。