(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026255
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】FcRnへの増強された結合及び延長された半減期を有するFc変異体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240220BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240220BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240220BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240220BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240220BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240220BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240220BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/00
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C07K19/00
A61P35/00
A61P37/02
A61K39/395 N
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023204313
(22)【出願日】2023-12-04
(62)【分割の表示】P 2020561607の分割
【原出願日】2019-01-25
(31)【優先権主張番号】62/622,468
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ホワウェイ・チウ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・マクネス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチド(例えば、抗体及びイムノアドヘシン)を提供する。
【解決手段】アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)若しくはグルタミン酸(E)、及び/又はアミノ酸位置307にトリプトファン(W)若しくはグルタミン(Q)を含み、ここでアミノ酸位置254はスレオニン(T)ではなく、そしてさらに:アミノ酸位置434にフェニルアラニン(F)若しくはチロシン(Y);又はアミノ酸位置252にチロシン(Y)を含み、ここでアミノ酸位置はEUナンバリングに従う、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)若しくはグルタミン酸(E)、及び/又はアミノ酸位置307にトリプトファン(W)若しくはグルタミン(Q)
を含み、ここでアミノ酸位置254はスレオニン(T)ではなく、そしてさらに:
アミノ酸位置434にフェニルアラニン(F)若しくはチロシン(Y);又は
アミノ酸位置252にチロシン(Y)
を含み、
ここでアミノ酸位置はEUナンバリングに従う、
改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項2】
a) アミノ酸位置252のチロシン(Y)、及びアミノ酸位置256のアスパラギン酸(D);
b) アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置434のフェニルアラニン(F);
c) アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y);
d) アミノ酸位置307のトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434のフェニルアラニン(F);
e) アミノ酸位置252のチロシン(Y)、及びアミノ酸位置307のトリプトファン(W)、[ここでチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない];
f) アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307のトリプトファン(W)、[ここでチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない];
g) アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307のグルタミン(Q)、[ここでチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない];
h) アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307のグルタミン(Q)、[ここでチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない];並びに
i) アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のグルタミン酸(E)、及びアミノ酸位置307のグルタミン(Q)、[ここでスレオニン(T)はアミノ酸位置254に存在せず、ヒスチジン(H)はアミノ酸位置311に存在せず、そしてチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない];
ここで、アミノ酸置換はEUナンバリングに従う、
からなる群より選択される位置のアミノ酸置換の組み合わせを含む、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項3】
a) M252Y/T256D、M252Y/T256E、M252Y/T307Q、M252Y/T307W、T256D/T307Q、T256D/T307W、T256E/T307Q、及びT256E/T307Wからなる群より選択される二重アミノ酸置換、[ここで、スレオニン(T)はアミノ酸位置254に存在せず、ヒスチジン(H)はアミノ酸位置311に存在せず、そしてチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない];又は
b) M252Y/T256D/T307Q、M252Y/T256D/T307W、M252Y/T256E/T307Q、及びM252Y/T256E/T307Wからなる群より選択される三重アミノ酸置換、[ここで、スレオニン(T)はアミノ酸位置254に存在せず、ヒスチジン(H)はアミノ酸位置311に存在せず、そしてチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない];
ここで、アミノ酸置換はEUナンバリングに従う、
を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項4】
改変されたFcドメインは改変されたヒトFcドメインである、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項5】
改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項6】
結合ポリペプチドはヒトFcRn結合親和性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項7】
結合ポリペプチドはラットFcRn結合親和性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項8】
結合ポリペプチドはヒト及びラットFcRn結合親和性を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項9】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更された血清半減期を有する、請求項2~8のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項10】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増加した血清半減期を有する、請求項9に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項11】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcRn結合親和性を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項12】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項11に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項13】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項14】
単離された結合ポリペプチドは、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項15】
増強されたFcRn結合親和性は、減少したFcRn結合解離速度を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項16】
酸性pHは約6.0である、請求項13~15のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項17】
酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である、請求項13~16のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項18】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項19】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項20】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項21】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項22】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項23】
単離された結合ポリペプチドは、EUナンバリングに従って、三重アミノ酸置換M252Y/S254T/T256Eを有する改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項24】
単離された結合ポリペプチドは抗体である、請求項1~23のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項25】
単離された結合ポリペプチドはモノクローナル抗体である、請求項1~24のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項26】
単離された抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、請求項24~25のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項27】
単離された抗体は全長抗体である、請求項24~26のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項28】
単離された結合ポリペプチドは、1つ又はそれ以上のヒト標的に特異的に結合する、請求項1~27のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチドをコードする核酸を含む単離された核酸分子。
【請求項30】
請求項29に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項31】
ベクターは発現ベクターである、請求項30に記載のベクター。
【請求項32】
請求項30~31のいずれか1項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項33】
宿主細胞は真核生物起源又は原核生物起源である、請求項32に記載の宿主細胞。
【請求項34】
宿主細胞は哺乳動物起源である、請求項32~33のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項35】
宿主細胞は細菌起源である、請求項32~33のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項36】
請求項1~28のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項37】
請求項24~27のいずれか1項に記載の単離された抗体を含む医薬組成物。
【請求項38】
改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307にグルタミン(Q)を含む、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項39】
改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307にトリプトファン(W)を含む、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項40】
改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、及びアミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)を含む、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項41】
改変されたFcドメインは改変されたヒトFcドメインである、請求項38~40のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項42】
改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである、請求項38~41のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項43】
結合ポリペプチドはヒトFcRn結合親和性を有する、請求項38~42のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項44】
結合ポリペプチドはラットFcRn結合親和性を有する、請求項38~42のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項45】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増加した血清半減期を有する、請求項38~44のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項46】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項38~44のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項47】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項38~44のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項48】
単離された結合ポリペプチドは、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項38~47のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項49】
増強されたFcRn結合親和性は、減少されたFcRn結合解離速度を含む、請求項46~48のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項50】
酸性pHは約6.0である、請求項47又は48に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項51】
酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である、請求項47に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項52】
酸性pHは約6.0である、請求項48に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項53】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項38~52のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項54】
単離された結合ポリペプチドはモノクローナル抗体である、請求項38~53のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項55】
抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、請求項38~54のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項56】
単離された結合ポリペプチドは、1つ又はそれ以上のヒト標的に特異的に結合する、請求項38~55のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項57】
請求項38~56のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチドをコードする核酸を含む単離された核酸分子。
【請求項58】
請求項57に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項59】
請求項58に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項60】
請求項38~58のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項61】
改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドであって、ここで改変されたFcドメインは:
アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)、及びアミノ酸位置307にトリプトファン(W)又はグルタミン(Q)、ここでアミノ酸位置254はスレオニン(T)ではない、を含み、そして:
アミノ酸位置434にフェニルアラニン(F)又はチロシン(Y);及び
アミノ酸位置252にチロシン(Y)
をさらに含む少なくとも4つのアミノ酸置換の組み合わせを含み、
ここでアミノ酸位置はEUナンバリングに従う、
上記単離された結合ポリペプチド。
【請求項62】
a) アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307のグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y);
b) アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のグルタミン酸(E)、アミノ酸位置307のトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y);
c) アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のグルタミン酸(E)、アミノ酸位置307のグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y)
;
d) アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307のグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434のフェニルアラニン(F);又は
e) アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307のトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y)
ここでアミノ酸置換はEUナンバリングに従う、
からなる群より選択される位置のアミノ酸置換の組み合わせを有する改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項63】
M252Y/T256D/T307Q/N434Y、M252Y/T256E/T307W/N434Y、M252Y/T256E/T307Q/N434Y、M252Y/T256D/T307Q/N434F、及びM252Y/T256D/T307W/N434Y、
からなる群より選択される四重アミノ酸置換、
ここでアミノ酸置換はEUナンバリングに従う、
を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項64】
改変されたFcドメインは改変されたヒトFcドメインである、請求項61~63のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項65】
改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである、請求項61~64のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項66】
結合ポリペプチドはヒトFcRn結合親和性を有する、請求項61~65のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項67】
結合ポリペプチドはラットFcRn結合親和性を有する、請求項61~65のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項68】
結合ポリペプチドはヒト及びラットFcRn結合親和性を有する、請求項61~67のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項69】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcRn結合親和性を有する、請求項61~68のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項70】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項61~69のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項71】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項61~70のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項72】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項61~71のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項73】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項61~72のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項74】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項61~73のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項75】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有し、そして非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項61~74のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項76】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有し、そして非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項61~75のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項77】
酸性pHは約6.0である、請求項61~76のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項78】
非酸性pHは約7.4である、請求項61~77のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項79】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更された血清半減期を有する、請求項61~78のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項80】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少した血清半減期を有する、請求項61~79のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項81】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少した血清半減期を有する、請求項61~80のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項82】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項61~81のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項83】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少されたFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項61~82のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項84】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項61~83のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項85】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少した熱安定性を有する、請求項61~84のいずれか1項に記載の単離された結合
ポリペプチド。
【請求項86】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少した熱安定性を有する、請求項61~85のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項87】
単離された結合ポリペプチドは抗体である、請求項61~86のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項88】
単離された結合ポリペプチドはモノクローナル抗体である、請求項61~87のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項89】
単離された抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、請求項61~88のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項90】
単離された抗体は全長抗体である、請求項61~89のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項91】
単離された結合ポリペプチドは1つ又はそれ以上の標的に特異的に結合する、請求項61~90のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項92】
請求項61~91のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチドをコードする核酸を含む単離された核酸分子。
【請求項93】
請求項92に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項94】
ベクターは発現ベクターである、請求項93に記載のベクター。
【請求項95】
請求項93~94のいずれか1項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項96】
宿主細胞は真核生物起源又は原核生物起源である、請求項95に記載の宿主細胞。
【請求項97】
宿主細胞は哺乳動物起源である、請求項95~96のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項98】
宿主細胞は細菌起源である、請求項95~96のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項99】
請求項61~92のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項100】
請求項87~90のいずれか1項に記載の単離された抗体を含む医薬組成物。
【請求項101】
EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307にグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434にチロシン(Y)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項102】
EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にグルタミン酸(E)、アミノ酸位置307にトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434にチロシン(Y)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項103】
EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にグルタミン酸(E)、アミノ酸位置307にグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434にチロシン(Y)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項104】
EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307にグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434にフェニルアラニン(F)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項105】
EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307にトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434にチロシン(Y)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチド。
【請求項106】
改変されたFcドメインは改変されたヒトFcドメインである、請求項101~105のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項107】
改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである、請求項101~106のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項108】
結合ポリペプチドはヒトFcRn結合親和性を有する、請求項101~107のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項109】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少した血清半減期を有する、請求項101~108のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項110】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少した血清半減期を有する、請求項101~109のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項111】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有し、そして非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項101~110のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項112】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有し、そして非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する、請求項101~111のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項113】
酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である、請求項111又は112に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項114】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項101~113のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項115】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する、請求項101~114のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項116】
単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少した熱安定性を有する、請求項101~115のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項117】
単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少した熱安定性を有する、請求項101~116のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項118】
単離された結合ポリペプチドはモノクローナル抗体である、請求項101~117のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項119】
抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、請求項118に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項120】
単離された結合ポリペプチドは1つ又はそれ以上の標的に特異的に結合する、請求項101~119のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチド。
【請求項121】
請求項101~120のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチドをコードする核酸を含む単離された核酸分子。
【請求項122】
請求項121に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項123】
請求項122の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項124】
請求項101~120のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項125】
治療有効量の請求項1~28、38~58、61~91、及び101~120のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチドを被験体に投与すること、又は治療有効量の請求項36~37、60、99~100、及び124のいずれか1項に記載の医薬組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体において疾患又は障害を処置する方法。
【請求項126】
疾患又は障害が癌である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
癌は腫瘍である、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
疾患又は障害が自己免疫障害である、請求項125に記載の方法。
【請求項129】
治療有効量の請求項1~28及び38~58のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチドを被験体に投与すること、又は治療有効量の請求項36、37、及び60のいずれか1項に記載の医薬組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体において癌を処置する方法。
【請求項130】
治療有効量の請求項61~91及び101~120のいずれか1項に記載の単離された結合ポリペプチドを被験体に投与すること、又は治療有効量の請求項99、100、及び
124のいずれか1項に記載の医薬組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体において自己免疫障害を処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第62/622,468号(2018年1月26日出願)に対して優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に加入される。
【背景技術】
【0002】
背景
新生児型Fc受容体(FcRn)との抗体の相互作用は、抗体及び他のFc由来の治療剤の血清半減期の維持及び延長における決定因子である。FcRnは、MHCクラス-I様α-ドメイン及びβ2-マクログロブリン(β2-m)サブユニットのヘテロダイマーであり、これは抗体Fc重鎖上の領域を他のFcγ受容体(FcγR)と区別して認識する。FcRnは様々な組織で発現されるが、これは主に血管内皮、腎臓及び血液脳関門において作用し、それぞれIgG分解、排出、及び炎症性応答の惹起を防止すると考えられる。
【0003】
FcRnへの抗体結合は高度にpH依存性であり、そして相互作用は低pH(pH<6.5)でのみ高い親和性で(高ナノモル濃度~低マイクロモル濃度)生じるが、生理学的pH(およそpH7.4)では生じない。エンドソームを6.5未満のpHまで酸性化すると、IgGとFcRnとの間の相互作用は非常に有利となり、そしてFcRn結合抗体の分解の阻害及び細胞表面への再循環の直接の原因となる。pHの増加は相互作用を弱め、そして抗体の血流への放出を促進する。
【0004】
増強された結合が、野生型IgG抗体と比較して延長された血清半減期の直接の結果として治療用抗体についての増加した有効性及び減少した投薬頻度をおそらくもたらすので、ハイスループット変異誘発アプローチを使用したFc操作は、FcRn結合親和性を増強する変異体を同定するために広く追跡されてきた。しかし、FcRn結合親和性を増強する変異体は、予測されない結果を有し得る。例えば、とりわけN434W又はP257I/Q311IのようなpH6.0でFcRn親和性の大幅な増加を示す特定のIgG変異体は、カニクイザル及びヒトFcRn(hFcRn)トランスジェニックマウス研究において野生型又は重度に減少した血清半減期を有する(例えば、Kuoら 2011 上記;非特許文献1;及び非特許文献2を参照のこと)。T250Q/M428L(QL)変異体は、動物モデルにおいてIgG骨格に特異的な結果を示した(例えば、非特許文献1;及び非特許文献3を参照のこと)。M252Y/S254T/T256E(YTE、EUナンバリング)変異体は、インビトロで10倍の増強を示したが、FcγRIIIa受容体に対する親和性の2倍の減少のためにインビボで減少した抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す(例えば、Dall’Acquaら 2002 上記を参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Datta-Mannan et al.2007、J.Biol.Chem.282:1709-1717
【非特許文献2】Datta-Mannan et al.2007、Metab.Dispos.35:86-94
【非特許文献3】Hinton et al.2006、J.Immunol.176:346-356
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、FcRnへの増強された結合及び延長された循環半減期を有する代替のFc変異体の必要性が依然として残されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本発明は、以下の特徴の1つ又はそれ以上を有する新規なIgG抗体の発見に基づく:野生型IgG抗体と比較して、増加した血清半減期、増強されたFcRn結合親和性、増強された酸性pHでのFcRn結合親和性、増強されたFcγRIIIa結合親和性、及び同様の熱安定性。
【0008】
従って、特定の局面において、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)若しくはグルタミン酸(E)、及び/又はアミノ酸位置307にトリプトファン(W)若しくはグルタミン(Q)を含み、ここでアミノ酸位置254はスレオニン(T)ではなく、そしてさらにアミノ酸位置434にフェニルアラニン(F)若しくはチロシン(Y)、又はアミノ酸位置252にチロシン(Y)を含み、ここでアミノ酸位置はEUナンバリングに従う、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0009】
特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは、改変されたヒトFcドメインである。特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである。
【0010】
特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドはヒトFcRn結合親和性、ラットFcRn結合親和性、又はヒト及びラットFcRn結合親和性の両方を有する。
【0011】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、変更された血清半減期を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、増加した血清半減期を有する。
【0012】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、変更されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、増強されたFcRn結合親和性は、減少したFcRn結合解離速度(off-rate)を含む。
【0013】
特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0である。特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である。
【0014】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、減少したFcγRIIIa結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメイン
を含む結合ポリペプチドと比較して、増強されたFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0015】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0016】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、EUナンバリングに従って、三重アミノ酸置換M252Y/S254T/T256Eを有する改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する。
【0017】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、抗体、例えばモノクローナル抗体である。特定の例となる実施態様において、単離された抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。特定の例となる実施態様において、単離された抗体は全長抗体である。
【0018】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、1つ又はそれ以上のヒト標的に特異的に結合する。
【0019】
他の局面において、a)アミノ酸位置252のチロシン(Y)、及びアミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、b)アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置434のフェニルアラニン(F)、c)アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y)、d)アミノ酸位置307のトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434のフェニルアラニン(F)、e)アミノ酸位置252のチロシン(Y)、及びアミノ酸位置307のトリプトファン(W)、[ここでチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない]、f)アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307のトリプトファン(W)、[ここでチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない]、g)アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307のグルタミン(Q)、[ここで、チロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない]、h)アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307のグルタミン(Q)、[ここでチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない]、並びにi)アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のグルタミン酸(E)、及びアミノ酸位置307のグルタミン(Q)、[ここでスレオニン(T)はアミノ酸位置254に存在せず、ヒスチジン(H)はアミノ酸位置311に存在せず、そしてチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない]、[ここでアミノ酸置換はEUナンバリングに従う]からなる群より選択される位置のアミノ酸置換の組み合わせを含む、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0020】
特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたヒトFcドメインである。特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである。
【0021】
特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドはヒトFcRn結合親和性、ラットFcRn結合親和性、又はヒト及びラットFcRn結合親和性の両方を有する。
【0022】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更された血清半減期を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増加した血清半減期を有する。
【0023】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、増強されたFcRn結合親和性は、減少したFcRn結合解離速度を含む。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、EUナンバリングに従って、二重アミノ酸置換M428L/N434Sを有する改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドよりも非酸性pHで低いFcRn結合親和性を有する。
【0024】
特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0である。特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である。
【0025】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0026】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0027】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、EUナンバリングに従って三重アミノ酸置換M252Y/S254T/T256Eを有する改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する。
【0028】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、抗体、例えばモノクローナル抗体である。特定の例となる実施態様において、単離された抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。特定の例となる実施態様において、単離された抗体は全長抗体である。
【0029】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、1つ又はそれ以上のヒト標的に特異的に結合する。
【0030】
他の局面において、a)M252Y/T256D、M252Y/T256E、M252Y/T307Q、M252Y/T307W、T256D/T307Q、T256D/T307W、T256E/T307Q、及びT256E/T307Wからなる群より選択される二重アミノ酸置換、[ここでスレオニン(T)はアミノ酸位置254に存在せず、ヒスチジン(H)はアミノ酸位置311に存在せず、そしてチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない]、又はb)M252Y/T256D/T307Q、M252Y/T256D/T307W、M252Y/T256E/T307Q、及びM252Y/T256E/T307Wからなる群より選択される三重アミノ酸置換、[ここでスレオニン(T)
はアミノ酸位置254に存在せず、ヒスチジン(H)はアミノ酸位置311に存在せず、そしてチロシン(Y)はアミノ酸位置434に存在しない]を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供され、ここでアミノ酸置換はEUナンバリングに従う。
【0031】
特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたヒトFcドメインである。特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインはIgG1 Fcドメインである。
【0032】
特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドは、ヒトFcRn結合親和性、ラットFcRn結合親和性、又はヒト及びラットFcRn結合親和性の両方を有する。
【0033】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更された血清半減期を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増加された血清半減期を有する。
【0034】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、増強されたFcRn結合親和性は、減少したFcRn結合解離速度を含む。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、EUナンバリングに従って、二重アミノ酸置換M428L/N434Sを有する改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドよりも非酸性pHで低いFcRn結合親和性を有する。
【0035】
特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0である。特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である。
【0036】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、減少したFcγRIIIa結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0037】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0038】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、EUナンバリングに従って、三重アミノ酸置換M252Y/S254T/T256Eを有する改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する。
【0039】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、抗体、例えばモノクローナル抗体である。特定の例となる実施態様において、単離された抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。特定の例となる実施態様において、単離された抗体は全長抗体である。
【0040】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、1つ又はそれ以上のヒト標的に特異的に結合する。
【0041】
特定の局面において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307にグルタミン(Q)を含む、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0042】
特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは、改変されたヒトFcドメインである。特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである。
【0043】
特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドは、ヒトFcRn結合親和性又はラットFcRn結合親和性、又はヒト及びラットFcRn結合親和性の両方を有する。
【0044】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増加した血清半減期を有する。
【0045】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、増強されたFcRn結合親和性は、減少したFcRn結合解離速度を含む。
【0046】
特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0である。特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である。
【0047】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0048】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、モノクローナル抗体である。特定の例となる実施態様において、抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0049】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、1つ又はそれ以上のヒト標的に特異的に結合する。
【0050】
特定の局面において、単離されたポリペプチドをコードする核酸を含む単離された核酸分子が提供される。
【0051】
特定の局面において、単離された核酸分子を含むベクターが提供される。特定の例となる実施態様において、ベクターは発現ベクターである。特定の局面において、単離された核酸分子を含む発現ベクターが提供される。
【0052】
特定の局面において、ベクターを含む宿主細胞が提供される。特定の局面において、発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0053】
特定の例となる実施態様において、宿主細胞は真核細胞起源又は原核生物起源である。特定の例となる実施態様において、宿主細胞は哺乳動物起源である。特定の例となる実施態様において、宿主細胞は細菌起源である。
【0054】
特定の局面において、単離された結合ポリペプチドを含む医薬組成物が提供される。
【0055】
特定の局面において、単離された抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0056】
特定の局面において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、及びアミノ酸位置307のトリプトファン(W)を含む、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0057】
特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは、改変されたヒトFcドメインである。特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである。
【0058】
特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドは、ヒトFcRn結合親和性又はラットFcRn結合親和性、又はヒト及びラットFcRn結合親和性の両方を有する。
【0059】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、増加した血清半減期を有する。
【0060】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、増強されたFcRn結合親和性は、減少したFcRn結合解離速度を含む。
【0061】
特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0である。特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である。
【0062】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0063】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドはモノクローナル抗体である。特定の例となる実施態様において、抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0064】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは1つ又はそれ以上のヒト標的に特異的に結合する。
【0065】
特定の局面において、単離されたポリペプチドをコードする核酸を含む単離された核酸分子が提供される。
【0066】
特定の局面において、単離された核酸分子を含むベクターが提供される。特定の例となる実施態様において、ベクターは発現ベクターである。特定の局面において、単離された核酸分子を含む発現ベクターが提供される。
【0067】
特定の局面において、ベクターを含む宿主細胞が提供される。特定の局面において、発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0068】
特定の例となる実施態様において、宿主細胞は真核生物起源又は原核生物起源である。特定の例となる実施態様において、宿主細胞は哺乳動物起源である。特定の例となる実施態様において、宿主細胞は細菌起源である。
【0069】
特定の局面において、単離された結合ポリペプチドを含む医薬組成物が提供される。
【0070】
特定の局面において、単離された抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0071】
特定の局面において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、及びアミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)を含む、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0072】
特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは、改変されたヒトFcドメインである。特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである。
【0073】
特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドは、ヒトFcRn結合親和性又はラットFcRn結合親和性、又はヒト及びラットFcRn結合親和性の両方を有する。
【0074】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、増加した血清半減期を有する。
【0075】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、増強されたFcRn結合親和性は減少したFcRn結合解離速度を含む。
【0076】
特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0である。特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である。
【0077】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0078】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、モノクローナル抗体である。特定の例となる実施態様において、抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0079】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは1つ又はそれ以上のヒト標的に特異的に結合する。
【0080】
特定の局面において、単離されたポリペプチドをコードする核酸を含む単離された核酸分子が提供される。
【0081】
特定の局面において、単離された核酸分子を含むベクターが提供される。特定の例となる実施態様において、ベクターは発現ベクターである。特定の局面において、単離された核酸分子を含む発現ベクターが提供される。
【0082】
特定の局面において、ベクターを含む宿主細胞が提供される。特定の局面において、発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0083】
特定の例となる実施態様において、宿主細胞は真核生物起源又は原核生物起源である。特定の例となる実施態様において、宿主細胞は哺乳動物起源である。特定の例となる実施態様において、宿主細胞は細菌起源である。
【0084】
特定の局面において、単離された結合ポリペプチドを含む医薬組成物が提供される。
【0085】
特定の局面において、単離された抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0086】
特定の局面において、改変されたFcドメインが:アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)、及びアミノ酸位置307にトリプトファン(W)又はグルタミン(Q)を含み、ここでアミノ酸位置254はスレオニン(T)ではなく、そしてさらに:アミノ酸位置434にフェニルアラニン(F)又はチロシン(Y);及びアミノ酸位置252チロシン(Y)を含む[ここでアミノ酸位置はEUナンバリングに従う]少なくとも4つのアミノ酸置換の組み合わせを含む、改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0087】
特定の局面において、a)アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307のグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y);b)アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のグルタミン酸(E)、アミノ酸位置307のトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y);c)アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のグルタミン酸(E)、アミノ酸位置307のグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y);d)アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307のグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434のフェニルアラニン(F);又はe)アミノ酸位置252のチロシン(Y)、アミノ酸位置256のアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307のトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434のチロシン(Y)[ここでアミノ酸置換はEUナンバリングに従う]からなる群より選択される位置でのアミノ酸置換の組み合わせを有する改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0088】
特定の局面において、M252Y/T256D/T307Q/N434Y、M252Y/T256E/T307W/N434Y、M252Y/T256E/T307Q/N434Y、M252Y/T256D/T307Q/N434F、及びM252Y/T256D/T307W/N434Yからなる群より選択される四重アミノ酸置換、[ここでアミノ酸置換はEUナンバリングに従う]を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0089】
特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたヒトFcドメインである。特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである。
【0090】
特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドはヒトFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドはラットFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドはヒト及びラットFcRn結合親和性を有する。
【0091】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcRn結合親和性を有する。
【0092】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。
【0093】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。
【0094】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有し、そして非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有し、そして非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。
【0095】
特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0である。特定の例となる実施態様において、非酸性pHは約7.4である。
【0096】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更された血清半減期を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少した血清半減期を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少した血清半減期を有する。
【0097】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0098】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少した熱安定性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少した熱安定性を有する。
【0099】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは抗体である。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドはモノクローナル抗体である。特定の例となる実施態様において、単離された抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。特定の例となる実施態様において、単離された抗体は全長抗体である。
【0100】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは1つ又はそれ以上の標的に特異的に結合する。
【0101】
特定の局面において、単離されたポリペプチドをコードする核酸を含む単離された核酸分子が提供される。
【0102】
特定の局面において、単離された核酸分子を含むベクターが提供される。
【0103】
特定の例となる実施態様において、ベクターは発現ベクターである。
【0104】
特定の局面において、ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0105】
特定の例となる実施態様において、宿主細胞は真核生物起源又は原核生物起源である。特定の例となる実施態様において、宿主細胞は哺乳動物起源である。特定の例となる実施態様において、宿主細胞は細菌起源である。
【0106】
特定の局面において、単離された結合ポリペプチドを含む医薬組成物が提供される。
【0107】
特定の局面において、単離された抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0108】
特定の局面において、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307にグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434にチロシン(Y)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0109】
特定の局面において、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にグルタミン酸(E)、アミノ酸位置307にトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434にチロシン(Y)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0110】
特定の局面において、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にグルタミン酸(E)、アミノ酸位置307にグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434にチロシン(Y)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0111】
特定の局面において、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307にグルタミン(Q)、及びアミノ酸位置434にフェニルアラニン(F)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0112】
特定の局面において、EUナンバリングに従って、アミノ酸位置252にチロシン(Y)、アミノ酸位置256にアスパラギン酸(D)、アミノ酸位置307にトリプトファン(W)、及びアミノ酸位置434にチロシン(Y)を含む改変されたFcドメインを含む単離された結合ポリペプチドが提供される。
【0113】
特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたヒトFcドメインである。特定の例となる実施態様において、改変されたFcドメインは改変されたIgG1 Fcドメインである。
【0114】
特定の例となる実施態様において、結合ポリペプチドはヒトFcRn結合親和性を有する。
【0115】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少した血清半減期を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少した血清半減期を有する。
【0116】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性、及び非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性、及び非酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。
【0117】
特定の例となる実施態様において、酸性pHは約6.0であり、そして非酸性pHは約7.4である。
【0118】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0119】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドのように減少した熱安定性を有する。特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434Fを含む結合ポリペプチドと比較して減少した熱安定性を有する。
【0120】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドはモノクローナル抗体である。特定の例となる実施態様において、抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0121】
特定の例となる実施態様において、単離された結合ポリペプチドは1つ又はそれ以上の標的に特異的に結合する。
【0122】
特定の局面において、単離されたポリペプチドをコードする核酸を含む単離された核酸分子が提供される。
【0123】
特定の局面において、単離された核酸分子を含む発現ベクターが提供される。
【0124】
特定の局面において、発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0125】
特定の局面において、単離された結合ポリペプチドを含む医薬組成物が提供される。
【0126】
特定の局面において、治療有効量の単離された結合ポリペプチドを被験体に投与すること、又は治療有効量の医薬組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体において疾患又は障害を処置する方法が提供される。
【0127】
特定の例となる実施態様において、疾患又は障害は癌である。特定の例となる実施態様において、癌は腫瘍である。
【0128】
特定の例となる実施態様において、疾患又は障害は自己免疫障害である。
【0129】
特定の局面において、治療有効量の単離された結合ポリペプチドを被験体に投与すること、又は治療有効量の医薬組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体において癌を処置する方法が提供される。
【0130】
特定の局面において、治療有効量の単離された結合ポリペプチドを被験体に投与すること、又は治療有効量の医薬組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体において自己免疫障害を処置する方法が提供される。
【0131】
本発明の前述の及び他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて、例となる実施態様の以下の詳細な説明からより十分に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【
図1】
図1A~
図1Bは、IgG1 Fc領域と相互作用するFcRnの構造を示す。
図1Aは、α-ドメイン(灰色)及びβ2-m(明るい灰色)hFcRnサブユニットと複合した、「グリカン」と名前を付けられた棒として示されるグリコシル化を含めて、1つのFcモノマー(暗い灰色のリボン)を示すhFcRnとIgG1 Fc(pdb:4n0u)との間の相互作用を示す。FcRnとの相互作用に関与する抗体残基の大部分は、C
H2-C
H3境界部(点線)のすぐ隣でグリコシル化部位の反対側のループに位置する。
図1Bは、
図1Aに対して75°回転したIgG1 Fc結晶構造(pdb:5d4q)の表面の描写を示す。FcRn結合境界部は、C
H2及びC
H3ドメインの残基から構成される。示されるように、飽和ライブラリーは、棒として示される11の位置において構築された:M252;I253;S254;T256;K288;T307;K322;E380;L432;N434及びY436。これらの残基の全てはFcRnに接近しているか又は直接接触している。pH依存性の原因である重要なヒスチジン残基(H310、H433、H435)の表面は、目的の位置の近くに集まっており、示されるとおりである。
【
図2-1】
図2A~
図2Dは、Octetスクリーニングアッセイ及び結果を示す。
図2Aは、Octetスクリーニングアッセイを図式的に示す。NiNTAバイオセンサーがヒスチジンタグ化抗原を捕捉し、続いて、ラットFcRn (rFcRn)結合カイネティクスのために抗体変異体を捕捉する。
図2Bは、rFcRn会合段階の開始に整列された、野生型(実線)、T307A/E380A/N434A(AAA)変異体(短い破線)、LS(短い一点鎖線)、YTE(長い破線)、H435A(長い一点鎖線)及びH310A/H435Q(長い二点鎖線)抗体のpH6.0でのrFcRn結合カイネティクスプロフィールを示す。H435A及びH310A/H435Q変異体はFcRn結合をほとんど示さないか、全く示さなかった。YTE変異体は、Octet rFcRn結合アッセイにおいて試験された最も遅いFcRn解離速度を有する。
図2Cは、Octetスクリーニングから得られた変異体のサブセットによる、pH6.0でのFcRn結合カイネティクスの正規化を図式的に示す。大部分の変異体はrFcRnへの有意な結合を保持したが、いくつかは偽(mock)対照(点線)と類似しており、全てのrFcRn結合の喪失を示した(長い破線、点線の下に位置する(模擬))。2つの変異体(実線)は、野生型抗体(太い長い破線)よりも遅いrFcRn解離速度を有していた。
図2Dは、残基位置により分離された観察可能なrFcRn結合カイネティクスとともに、全ての点変異についてのrFcRn解離速度の散布図分析を示す。飽和変異体は、以下の4つのrFcRn解離速度型のうちの1つに分類される:無結合(示されていない)、より速い結合(黒色)、野生型様結合(白色)、より遅い結合(灰色)。18の変異体は、野生型抗体(黒い破線)より有意に遅いrFcRn解離速度を示した。
【
図3】
図3は、ベンチマーク及び野生型変異体のヒト及びラットFcRnとのpH6.0及びpH7.4でのBiacoreカイネティクスを図式的に示す。野生型(左上)、AAA変異体(右上)、M428/N434S(LS)変異体(左下)及びM252Y/S254T/T256E(YTE)変異体(右下)の一連の濃度についての全てのFcRn結合曲線を、それぞれヒト(第一及び第三列)及びラット(第二及び第四列)FcRnについてpH6.0(第一及び第三行)及びpH7.4(第二及び第四行)に示す。AAA、LS及びYTE変異体は、野生型抗体よりもFcRnからの遅い解離速度を示した。概して、抗体は、野生型と比較して、約10倍増加した親和性でrFcRnに結合する。LS変異体は、pH7.4で最も緊密な親和性、そしてpH7.4でhFcRnに対して最も大きい残留結合を有するが、rFcRnはYTE変異体に最も緊密に結合した。
【
図4A】
図4Aは、リード飽和変異体のヒト及びラットFcRnとのpH6.0でのBiacoreカイネティクスを図式的に示す。18のリード飽和変異体についての一連の濃度のFcRn結合速度トレースを示す。M252Y、T256D、T256E、N434F、N434P、N434Y、T307A、T307E、T307F、T307Q及びT307Wは、ヒト及びラットFcRnの両方からのより遅い解離速度を有していた。残りの変異体はラットFcRnのみに特異的であった。
【
図4B】
図4Bは、WT、ベンチマーク及びリード単一飽和変異体のヒトFcRnとのpH6.0でのFcRn結合カイネティクスを図式的に示す。WT、LS、YTE及び18の飽和変異体の一連の濃度を用いたヒトFcRnとのpH6.0でのFcRn結合センサーグラム。組み合わせライブラリーに使用した単一飽和変異体は太字で下線を付している。
【
図5-1】
図5A~
図5Dは、ヒト及びラットFcRnの両方からのpH6.0でのより遅い解離速度を有する複数の変異体を示すデータを表す。
図5A及び5Bは、様々な変異体のBiacoreセンサーグラムを示す。
図5Aは、YTE変異体(長い一点鎖線)、LS変異体(長い二点鎖線)、野生型(WT;点線)、及びリード飽和変異体(リード;様々な濃さの実線)についてのpH6.0でのヒトFcRnの解離速度を示す。
図5Aにおいて、正規化されたセンサーグラムは、WTと比較して改善されたhFcRn解離速度を示すことが示される。
図5Bは、AAA変異体(点線)、LS変異体(二点鎖線)、YTE変異体(一点鎖線)、野生型(実線)及びリード飽和変異体(様々な頻度及び濃さ)についてのpH6.0でのラットFcRnの解離速度を示す。11のリード抗体の各々の代表的なインジェクションを明確さのために示す。これらのリード単一変異体は、野生型と比較して、ヒト及びラットFcRnからの改善された解離速度を示した。
図5C及び
図5Dは、リード飽和(白色丸)及び野生型(黒色丸)抗体変異体についてのヒト(
図5C)及びラット(
図5D)FcRnについてのBiacore動力学的測定から得られた結合及び解離速度を使用した結合親和性プロットを示す。ベンチマーク変異体を示す:AAA(右下に向いた対角線)、LS(点線)及びYTE(左下に向いた対角線)。FcRn解離速度における改善にも関わらず、変異体の大部分は、より遅い結合カイネティクスに起因してヒト又はラットFcRnに対してより緊密な親和性を有していなかった。11の変異体は両方の種のFcRnからのより遅い解離速度を有していた。
【
図6-1】
図6A~
図6Dは、リード飽和変異の組み合わせが、FcRn解離速度及び結合親和性をさらに改善したことを示すデータを表す。
図6A及び
図6Bは、それぞれヒト及びラットFcRnについてのFcRn解離速度を示すBiacoreセンサーグラムを示す。
図6Aは、野生型(点線)及びLS変異体(長い二点鎖線)と比較した、単一(破線)、二重(明るい灰色の実線)、三重(灰色の実線)及び四重(黒色の実線)組み合わせ変異体の代表的な変異体のヒトFcRnについての正規化されたセンサーグラムを示す。
図6Bは、野生型(点線)及びYTE変異体(実線)と比較した、単一(長い二点鎖線)、二重(長い一点鎖線)、三重(長い破線)、及び四重(短い破線)組み合わせ変異体の代表的変異体のラットFcRnについての正規化されたセンサーグラムを示す。複数の変異の組み込みは、ベンチマーク変異体よりも高い程度までFcRnについての解離速度を減少させ、そして結合親和性を増強した。
図6C及び
図6Dは、ヒト(
図6C)又はラット(
図6D)FcRnについての解離速度の関数として結合速度を示す組み合わせ飽和変異体のプロットを示し、これは変異体の大部分がベンチマーク変異体と比較してpH6.0でFcRnに対して増強された結合を有していることを明らかにした。ヒト及びラットFcRnに対する最も緊密な結合変異体は、それぞれ四重及び三重の組み合わせであった。
【
図7-1】
図7A~
図7Dは、pH6.0での増強されたFcRn結合が相互作用のpH依存性を破壊したことを示すデータを表す。
図7A及び
図7Bは、野生型(点線)、並びにLS変異体(
図7A、実線)及びYTE変異体(
図7B、実線)と比較した、単一(長い二点鎖線)、二重(長い一点鎖線)、三重(長い破線)及び四重(短い破線)組み合わせ変異体のpH7.4でのBiacore FcRn結合カイネティクスの代表的なセンサーグラムを示す。FcRn結合を増強する変異の数を増加させることにより、生理的pHでより高い残留結合が生じ、大部分の二重、三重及び四重変異体は両方の種のFcRnに対して丈夫な結合を示した。
図7C及び7Dは、全ての飽和変異体のヒト(
図7C)又はラット(
図7D)FcRnに対するpH7.4での定常状態RU
【数1】
をpH6.0での結合親和性の関数として示す。
図7Cにおいて、pH7.4での残留FcRn結合のpH6.0でのFcRn結合親和性との比較を示す。改善されたFcRn結合特性を有するリード組み合わせは、LSベンチマーク変異体により定義される左下の四半部を占める(ひし形)。
図7Dにおいて、LS(ひし形)及びYTE(三角)変異体は、それぞれリード検証のためのカットオフとして役立つ。これら2つの変異体は、ヒト及びラットFcRnについてそれぞれpH6.0で最も緊密な結合親和性及びpH7.4で最も多い残留結合を有していた。
図7C及び7Dの両方において、単一(白色の丸)、二重(明るい灰色の丸)、三重(暗い灰色の丸)、及び四重(黒色の丸)変異体、さらにはYTE変異体(三角)を示す。
【
図8-1】
図8A~
図8Cは、ベンチマーク変異体のFcRnアフィニティクロマトグラフィー及び示差走査蛍光定量法(DSF)から得られたデータを表す。
図8Aは、WT(黒い実線)、AAA(点線)、LS(長い二点鎖線)、YTE(長い一点鎖線)、H435A(明るい灰色の実線)及びH310A/H435Q(AQ;暗い灰色の実線)変異体についての正規化した溶出プロフィールを示す。pHはグラフの上部に示される。FcRn結合ヌル(null)変異体(H435A、H310A/H435Q)は、カラムに結合せず、フロースルー(<10mL)で溶出する。AAA、LS及びYTE変異体は、WT抗体よりも高いpHで溶出する。
図8Bは、WT(黒色)、LS(灰色)及びYTE(暗い灰色)変異体のDSFプロフィールを示す。YTEはWT及びLSと比較して不安定化していた。
図8Cは、WT及びLS変異体(垂直点線)と比較した、組み合わせ変異体に使用される7つのリード単一変異体のFcRnアフィニティカラム溶出プロフィールを示す。2つの変異体(N434F/Y)はLSよりも高いpHで溶出し、これらの変異を含有する変異体についてのFcRnとの相互作用に関する減少したpH依存性を表す。
【
図9-1】
図9A~
図9Dは、組み合わせ変異体がpH依存性及び熱安定性を有意に乱すということを示すデータを表す。
図9Aは、単一(長い二点鎖線)、二重(長い一点鎖線)、三重(長い破線)及び四重変異体(短い破線)の代表的なFcRnアフィニティクロマトグラムを示す。FcRn結合を増強する変異の数の増加は、溶出をより高いpH値にシフトさせた;LS変異体(小さい点の垂直線)。
図9Bは、単一(白色の丸)、二重(水平縞)、三重(垂直縞)及び四重(格子縞)変異体を含むリード飽和及び組み合わせ変異体についての溶出pHの箱ひげ図を示し、これは、FcRn増強変異体の数が増加するにつれてより高いpH値になる傾向を示した。
図9Cは、FcRnアフィニティクロマトグラフィーからの溶出pHとBiacoreを使用したhFcRn解離速度との間の高い相関(R
2=0.94)が、改善されたFcRn解離カイネティクスとともに抗体-FcRn相互作用のpH依存性の喪失を明らかにしたということを示す。AAA(右下への対角線)、LS(点線)及びYTE(左下への対角線)変異体は、二重変異体と類似したhFcRn解離速度及び溶出pH値を有していた。
図9Dは、組み合わせ飽和変異体のDSFから得られたT
mの箱ひげ図が、さらなるFcRn結合増強変異がWT、単一又はベンチマーク変異体と比較して抗体を不安定化するということを明らかにしたことを示す。
【
図10】
図10A~
図10Bは、7つのリード変異体のFcRnアフィニティークロマトグラフィー及びDSFから得られたデータを表す。
図10Aは、M252Y(実線)、T256D(短い一点鎖線)、T256E(長い破線)、T307Q(長い一点鎖線)、T307W(長い二点鎖線)、N434F(点線)及びN434Y(短い破線)変異体のFcRnアフィニティークロマトグラフィーを示す。クロマトグラムは、野生型及びLS抗体(垂直点線)と比較して溶出pHのシフトを明らかにした。N434F及びN434Yは、LS変異体(垂直点線)よりも高い溶出pH(約pH8.3)を有していた。特定の溶出体積でのpHは、参照のためにクロマトグラムの上に示される。
図10Bは7つのリード変異体のDSFプロフィールを示し、これは7つのリード単一変異体のうちどれも、YTE変異体(垂直点線)と同じ程度まで抗体を不安定化しなかったということを示した。T307Q(長い一点鎖線)を除いて全ての変異体は、WT(垂直点線)と比較して不安定化された。
【
図11-1】
図11A~
図11Cは、FcγRIIIa結合がM252Yを含有する組み合わせ変異体において減少したことを示すデータを表す。
図11Aは、WT(黒色)、LS(灰色)及びYTE(暗い灰色)変異体のFcγRIIIa結合センサーグラムがYTEにより減少した結合応答を明らかにしたということを示す。
図11Bは、示されるように、ベンチマーク、単一及び組み合わせ変異体のFcγRIIIa結合応答の箱ひげ図を示す。M252Y変異を有する変異体は、四重変異体の全てを含めて、FcγRIIIaに対する減少した結合応答を含む。N434F/Yとの組み合わせは、典型的にはFcγRIIIaとの増加した応答を示す。
図11Cは、WT及びYTE変異体(水平点線)と比較して7つのリード単一変異体のFcγRIIIa結合応答を示す。M252Y変異は、WTと比較して減少したFcγRIIIa結合を示すが、6つはこの受容体に対してWT様の又は増加した結合を示す。
【
図12-1】
図12A~12Dは、7つのリード組み合わせ変異体のFcRnアフィニティークロマトグラフィー、DSF、及びFcγRIIIa結合から得られたデータを表す。
図12Aは、野生型抗体及びLS変異体(それぞれ垂直点線及び垂直実線)と比較した、7つのリード組み合わせ変異体のFcRnアフィニティークロマトグラムを示す。各リード変異体は、LS変異体に近い溶出pHを有していた。
図12Bは、YTE及び野生型変異体(示されるように垂直点線)と比較したリード組み合わせ変異体のDSFプロフィールを示す。7つのリード変異体のうち6つは、YTE変異体と同様か又はYTE変異体よりも不安定化されたT
mを有していた:MDWN(長い二点鎖線);YTWN(長い破線);YDTN(実線);YETN(長い一点鎖線);YDQN(点線);YEQN (短い一点鎖線)。M
DQN変異体は、野生型抗体と同様のT
mを有していた(短い破線)。
図12Cは、野生型(より大きな点線)及びYTE変異体(太く長い破線)と比較した、7つのリード変異体のFcγRIIIa結合カイネティクスのBiacoreセンサーグラムを示す。M252Y含有変異体、
YDTN(実線)、
YDQN(短い一点鎖線)、
YT
WN(長い破線)、
YETN(長い一点鎖線)及び
YEQN(より小さい点線)はそれぞれ、YTEと類似した様式で減少した定常状態RUを有していた。(D)は、7つのリード変異体、野生型及びYTE変異体の定常状態RUを示す。M
DWN及びM
DQN変異体のみが、野生型抗体と同様のFcγRIIIaに対する親和性を有していた。
図12E~
図12Hは、3つのリード変異体が一連の鍵となる抗体特質を表したことを示すデータを表す。
図12Eは、WT及びLS(垂直点線)と比較した、DQ(実線)、DW(点線)及びYD(破線)変異体のFcRnアフィニティクロマトグラフィー溶出プロフィールを示す。各二重変異体は、WTとLSとの間の溶出pHを示した。
図12Fは、YTE及びWT変異体(垂直点線)と比較した3つの変異体のDSF蛍光プロフィールが、YD(破線)及びDW(点線)がYTEと比較してわずかに不安定化されたが、DQ(実線)はWTと同様であることを明らかにしたことを示す。
図12Gは、WT及びYTE(水平の点線)と比較したFcγRIIIa結合センサーグラムを示す。YD(破線)はYTEと同様の結合応答を示したが、DQ(実線)及びDW(点線)は、WTと比較してわずかな減少を示した。
図12Hは、均一ブリッジングRF ELISAが、3つのリード変異体及びYTEがLSと異なり有意に減少したか又はWT様のRF結合を示したということを示すデータを表す。**p<0.001、*p<0.01。
【
図13-1】
図13A~
図13Dは、pH6.0及びpH7.4でのリード組み合わせ変異体のFcRnカイネティクスの比較を示すデータを表す。
図13A及び
図13Bは、pH6.0での野生型(点線)及びいずれかのLS(hFcRn、
図13A、太く長い破線)又はYTE(rFcRn、
図13B、太く長い破線)と比較した、ヒトFcRn(
図13A)又はラットFcRn(
図13B)についてのリード組み合わせ変異体のBiacore FcRnセンサーグラムを示す。各組み合わせ変異体は、変更された結合速度及び解離速度にもかかわらずそれぞれのFcRnに対して全体でより緊密な結合親和性を有していた。
図13C及び
図13Dは、pH7.4でのBiacore FcRnセンサーグラムを示す。各hFcRnリード変異体は、LS変異体と比較して同様の又は減少した定常状態FcRn結合応答を有していた。M
DQN及びM
DWN変異体のみが、YTE変異体よりも少ないrFcRn結合をpH7.4で示した。
【
図14】
図14は、特定の実施態様に従う飽和ライブラリーのOctet rFcRn結合解離速度を示す表である。野生型(WT)及び野生型様(WT様)種は白い四角で示される;WT種は示されているとおりである。野生型と比較してほとんどrFcRn結合を有していないか全く有していない変異体は暗い灰色の四角で示される。野生型と比較してより速いrFcRn解離速度有する変異体は明るい灰色の四角で示され、そして野生型と比較してより遅いrFcRn解離速度を有する変異体は黒い四角で示される。
【
図18】
図18は、様々な抗体-2変異体のpH依存性を図示する。リード変異体は、pH6でLSよりも高い結合親和性及びpH7.4でより低い残留結合を維持した。
【
図19】
図19は、抗体-1及び抗体-2の骨格を使用したFcRn結合pH依存性の比較を表す。
【
図20】
図20は、抗体-1及び抗体-2の骨格を使用した熱安定性の比較を表す。
【
図21】
図21は、抗体-1及び抗体-2の骨格を使用したFcγRIIIa結合の比較を表す。
【
図22】
図22A~
図22Iは、DQ、DW及びYD変異体がIgG1骨格間で転移可能であったことを示す複数のプロットを表す。プロットa~cは、低pHで類似したカイネティクスを示すWT(明るい灰色)、LS(暗い灰色)、DQ(黒色塗りつぶし)、DW(点線)及びYD(破線)変異体を用いた3つのIgG1骨格におけるpH6.0での正規化されたFcRn正規化センサーグラムを表す。これら3つの変異体、DQ、DW及びYDは、LS変異体よりもわずかに速い結合速度及び解離速度を有していたが、より緊密なFcRn結合親和性を維持していた。プロットd~fは、pH7.4でのFcRn結合センサーグラムを表す;LSベンチマーク変異体(黒色塗りつぶし)。プロットg~iは、WT(灰色)、LS(暗い灰色)、DQ(黒色実線)、DW(白抜き)及びYD(白抜き四角)変異体を含む各抗体骨格についてのpH6.0でのと比較したpH7.4でのFcRn結合応答を表す。DQ、DW及びYDは、pH6.0での増強された結合及びpH7.4での最小の結合を有する改善されたFcRn特徴を示す。
【
図23-1】
図23A~
図23Cは、mAb2骨格における3つのリード変異体がカニクイザルFcRnに対する結合を同様に改善するということを示す。
図23Aは、hFcRnと類似した結合カイネティクス及び親和性を示すWT(灰色)、LS(暗い灰色)、DQ(黒色実線)、DW(点線)及びYD(破線)のpH6.0での正規化されたcFcRn結合センサーグラムを表す。
図23Bは、3つの変異体についてのcFcRn結合応答が生理的pHで劇的に減少したことを表すが;LS(暗い灰色)、hFcRnと同様の様式でWT(灰色)より高い結合を示した。
図23Cは、WT(灰色)、LS(暗い灰色)、DQ(黒い塗りつぶし)、DW(白抜き)及びYD(白抜き四角)のpH7.4での残留cFcRn結合応答の、pH6.0でのcFcRn結合親和性との比較を表し、3つの変異体全てがhFcRnで観察された改善されたFcRn結合特性を維持した。
【
図24】
図24A~
図24Bは、リード変異体が抗体血清半減期を延長したことを示す。WT(黒い実線と黒い丸)、LS(白い丸と黒い破線)、DQ(明るい灰色の丸と明るい灰色の実線)、DW(暗い灰色の丸と暗い灰色の実線)及びYD(黒い丸と黒い点線)抗体の、カニクイザル(
図24A)及びhFcRnトランスジェニックマウス(
図24B)における時間の関数として血漿抗体濃度の薬物動態プロフィール。3つのリード変異体は全て、WTと比較して抗体半減期を延長する。
【
図25】
図25は、pH6.0での結合親和性の関数としてpH7.4でのヒトFcRnに対する全ての飽和変異体の定常状態RUのプロットを表す。pH7.4での残留FcRn結合のpH6.0でのFcRn結合親和性との比較を示す。pH6.0及びpH7.4の両方での改善されたFcRn結合特性を有する四重組み合わせを、プロットの右上四半部において枠で囲んで示す。単一(白い丸)、二重(明るい灰色の丸)、三重(暗い灰色の丸)、及び四重(黒色の四角)変異体、さらにはベンチマークAAA、LS、及びYTE変異体(示されるとおり)を示す。
【
図26】
図26は、ビオチン化FcRnを捕捉するために使用されたビオチン捕捉(CAPture)法の図解を表す。
【
図27】
図27は、YTEKFベンチマーク及び示される組み合わせ変異体のpH6.0でのヒトFcRn結合カイネティクスを示すプロットを表す。
【
図28】
図28A~
図28Bは、pH6.0(
図28A)及びpH7.4(
図28B)でのYTEKFベンチマークと比較した組み合わせ変異体のFcRn結合カイネティクスを示す。野生型は黒い実線(WT)で示され、そしてYTEKFベンチマークは点線で示される。
【
図29】
図29は、YTEKFベンチマークと比較したpH6.0での結合親和性の関数としての、選択した変異体のpH7.4でのヒトFcRnに対する定常状態RUのプロットを示す。いくつかの変異体(リード四重変異体)は、ヒトFcRnに対してpH6.0及びpH7.4でYTEKFベンチマークよりも増強された結合親和性を示した。
【発明を実施するための形態】
【0133】
詳細な説明
本開示は、変更されたFc新生児型受容体(FcRn)結合親和性を有する結合ポリペプチド(例えば、抗体)を提供する。特定の実施態様において、結合ポリペプチドは、野生型(例えば未改変)Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較してFcRn結合親和性を増強する改変されたFcドメインを含む。本開示はまた、結合ポリペプチドをコードする核酸、結合ポリペプチドを製造するための組み換え発現ベクター及び宿主細胞、並びに本明細書に開示される結合ポリペプチドを含む医薬組成物も提供される。疾患を処置するために本開示の結合ポリペプチドを使用する方法もまた提供される。
【0134】
免疫グロブリンのFcドメインは、非抗原結合機能に関与し、そしてエフェクター分子の結合、例えばFcRnの結合により媒介されるいくつかのエフェクター機能を有する。
図1Aに説明されるように、FcドメインはCH2ドメイン及びCH3ドメインから構成される。FcRnとの相互作用に関与する残基の大部分は、C
H2-C
H3境界部(
図1A、点線)に直接隣接し、グリコシル化部位の反対にあるループに位置する。
図1Bは、IgG1 Fc結晶構造(pdb:5d4q)の表面描写を説明し、そしてFcRn結合境界部を構成するCH2及びCH3ドメインにおける残基を示す。本開示は、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドを提供する。改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、抗体、又はイムノアドヘシン、又はFc融合タンパク質であり得る。
【0135】
特定の実施態様において、結合ポリペプチドは、抗体の抗原依存性エフェクター機能、特に結合ポリペプチドの循環半減期(例えば、血清半減期)を変更するアミノ酸置換を含む改変されたFcドメインを含み得る。いくつかの実施態様において、結合ポリペプチドは、野生型(すなわち、未改変)Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、結合ポリペプチドの血清半減期を変更するアミノ酸置換を含む改変されたFcドメインを含み得る。いくつかの実施態様において、結合ポリペプチドは、野生型(すなわち、未改変)Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、結合ポリペプチドの血清半減期を増加するアミノ酸置換を含む改変されたFcドメインを含み得る。いくつかの実施態様において、結合ポリペプチドは、野生型(すなわち、未改変)Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、結合ポリペプチドの血清半減期を減少するアミノ酸置換を含む改変されたFcドメインを含み得る。
【0136】
特定の実施態様において、循環半減期(例えば、血清半減期)を変更する(すなわち、増加させるか又は減少させる)改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、循環半減期を変更する変異に加えて1つ又はそれ以上の変異を含有する。特定の実施態様において、循環半減期を変更する変異に加えて1つ又はそれ以上の変異は、1つ又はそれ以上
の所望の生化学的特徴、例えば、ほぼ同じ免疫原性の未変更の抗体全体と比較した場合に、減少した又は増強されたエフェクター機能、非共有結合で二量体化する能力、腫瘍の部位に局在化する増加した能力、減少した血清半減期、増加した血清半減期、及び同様のものの1つ又はそれ以上をもたらす。
【0137】
本明細書に記載される結合ポリペプチドは、これらの置換を欠いている結合ポリペプチドと比較した場合に、新生児型Fc受容体(FcRn)への増加したか又は減少した結合のいずれを示してもよく、従って、それぞれ増加したか又は減少した血清半減期を有する。FcRnに対して改善された親和性を有するFcドメインは、より長い血清半減期を有すると期待され、そしてこのような分子は、投与される抗体の長い半減期が所望される場合、例えば、慢性の疾患又は障害を処置するために、哺乳動物を処置する方法において有用性を有する。対照的に、減少したFcRn結合親和性を有するFcドメインは、より短い血清半減期を有すると期待され、そしてこのような分子はまた、例えば、短縮された循環時間が有利であり得る場合、例えばインビボ診断用画像化のため、又は出発抗体が長期間循環中に存在する場合毒性の副作用を有する状況において、哺乳動物への投与のために有用である。減少したFcRn結合親和性を有するFcドメインはまた、胎盤を通過する可能性が低く、従って、妊婦における疾患又は障害の処置においても有用である。さらに、減少したFcRn結合親和性が所望され得る他の適用としては、脳、腎臓、及び/又は肝臓に局在される適用が挙げられる。
【0138】
当然のことながら、この開示に記載される方法は、特定の方法に限定されず、このような方法及び条件として本明細書に開示される実験条件は変わり得る。また当然のことながら、本明細書に使用される用語は、特定の実施態様を記載する目的のみのためのものであり、限定することは意図されない。
【0139】
さらに、本明細書に記載される実験は、他の指示がなければ、当業者の技術範囲内の従来の分子及び細胞生物学並びに免疫学的技術を使用する。このような技術は当業者に周知であり、そして文献において十分に説明されている。例えば、Ausubel、et al.、ed.、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、Inc.、NY、N.Y.(1987-2008)(全ての補遺を含む)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual (Fourth Edition) by MR Green and J.Sambrook及びHarlow et al.、Antibodies:A Laboratory Manual、Chapter 14、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor (2013、2nd edition)を参照のこと。
【0140】
別の定義がなければ、本明細書において使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有する。潜在的な曖昧性の事象において、本明細書に提供される定義は、辞書又は外部の定義に先行する。文脈により別の必要がなければ、単数形は複数を含むものとし、複数形は単数を含むものとする。別の記述がなければ、「又は」は「及び/又は」を意味する。用語「含むこと」、さらには「含む」及び「含まれる」のような他の形態の使用は限定ではない。
【0141】
一般に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学並びにタンパク質及び核酸化学、並びにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は周知であり、そして当該分野で一般的に使用されている。本明細書において提供される方法及び技術は、通常は当該分野で周知の従来の方法に従って行われ、そして他の記載がなければ、本明細書の全体を通して引用され、そして考察される様々な一般的及びより具体的な参考文献において記載されるとおりである。酵素反応及び精製技術は、当
該分野で一般的に遂行されているか又は本明細書に記載されるように、製造者の仕様書に従って行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、及び医学及び医薬化学に関連して使用される命名法、並びにそれらの実験手順及び技術は、当該分野において周知であり一般的に使用されるものである。化学合成、化学分析、医薬製剤、処方、及び送達、並びに患者の処置のために標準的な技術が使用される。
【0142】
本開示がより容易に理解され得るように選択した用語が以下で定義される。
【0143】
用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマー鎖を指し、そして文脈により矛盾がなければ、天然又は人工のタンパク質、ポリペプチドアナログ又はタンパク質配列の変異体、又はそれらのフラグメントを包含する。ポリペプチドはモノマーでもポリマーでもよい。ポリペプチドフラグメントは、例えば少なくとも約5つの連続したアミノ酸、少なくとも約10の連続したアミノ酸、少なくとも約15の連続したアミノ酸、又は少なくとも約20の連続したアミノ酸を含む。
【0144】
用語「単離されたタンパク質」又は「単離されたポリペプチド」は、その由来する起源若しくは供給源のために、その天然の状態で伴っている天然で付随する成分が付随していないか;同じ種由来の他のタンパク質を実質的に含まないか異なる種由来の細胞により発現されるか;又は天然に存在しない、タンパク質又はポリペプチドを指す。従って、化学合成されるか又はそれが天然で由来する細胞とは異なる細胞系で合成されるタンパク質又はポリペプチドは、その天然で付随する成分から「単離されている」だろう。タンパク質又はポリペプチドはまた、当該分野で周知のタンパク質精製技術を使用した単離により、天然で付随する成分を実質的に含まないようにされ得る。
【0145】
本明細書で使用される用語「結合タンパク質」又は「結合ポリペプチド」は、目的の標的抗原(例えば、ヒト標的抗原)に選択的に結合する原因である少なくとも1つの結合部位を含有するタンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体又はイムノアドヘシンを指すものとする。例となる結合部位としては、抗体可変ドメイン、受容体のリガンド結合部位、又はリガンドの受容体結合部位が挙げられる。特定の局面において、結合タンパク質又は結合ポリペプチドは、複数(例えば、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上)の結合部位を含む。特定の局面において、結合タンパク質又は結合ポリペプチドは治療用酵素ではない。
【0146】
用語「リガンド」は、別の物質に結合することができるか、又は結合されることができる物質を指す。同様に、用語「抗原」は、それに対して抗体が生成され得るいずれかの物質を指す。「抗原」は抗体結合基質を参照して一般的に使用され、そして「リガンド」は受容体結合基質を参照する場合にしばしば使用されるが、これらの用語は互いに区別されず、そして広範囲の重複する化学実体を包含する。疑念を避けるために、抗原及びリガンドは本明細書全体を通して交換可能に使用される。抗原/リガンドは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アプタマー、多糖、糖分子、炭水化物、脂質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、合成分子、無機分子、有機分子、及びそれらのいずれかの組み合わせであり得る。
【0147】
本明細書で使用される用語「特異的に結合する」は、多くとも約1x10-6M、約1x10-7M、約1x10-8M、約1x10-9M、約1x10-10M、約1x10-11M、約1x10-12M若しくはそれ以下の解離定数(Kd)で抗原に結合し、かつ/又は非特異的
抗原に対するその親和性よりも少なくとも約2倍大きい親和性で抗原に結合する、抗体又はイムノアドヘシンの能力を指す。
【0148】
本明細書で使用される用語「抗体」は、目的の抗原(例えば、腫瘍関連抗原)に対して有意な既知の特異的免疫反応活性を有するような集合体(例えば、インタクトな抗体分子
、イムノアドヘシン、又はそれらの変異体)を指す。抗体及び免疫グロブリンは、それらの間に鎖間共有結合を有するか又は有していない軽鎖及び重鎖を含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的に十分に理解されている。
【0149】
以下により詳細に考察されるように、「抗体」という総称は、生化学的に区別することができる5つの異なるクラスの抗体を含む。抗体の全ての5つのクラスが明確に本開示の範囲内であるが、以下の考察は概してIgGクラスの免疫グロブリン分子に関するものである。IgGに関して、免疫グロブリンは、分子量約23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖、及び分子量53,000~70,000の2つの同一の重鎖を含む。4つの鎖はジスルフィド結合で「Y」の配置で接合されており、ここで軽鎖は「Y」の口の部分で重鎖を囲んでおり、そして可変領域まで続く。
【0150】
免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ(κ)又はラムダ(λ)のいずれかに分類される。各重鎖クラスは、カッパ又はラムダ軽鎖のいずれかと結合され得る。一般に、軽鎖及び重鎖は、互いに共有結合で結合しており、そして2つの重鎖の「尾」部分は、ジスルフィド共有結合により、又は免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、若しくは遺伝子操作された宿主細胞のいずれかにより生成された場合には非共有結合により結合される。重鎖において、アミノ酸配列は、Y配置の分岐末端でN末端から各鎖の一番下でC末端まで伸びる。当業者には当然のことながら、重鎖がガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、又はイプシロン(ε)として(その中にいくるかのサブクラスがある(例えば、γl~γ4)として分類される。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA IgG、又はIgEと決定するのはこの鎖の性質である。免疫グロブリンアイソタイプサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1など)は十分に特徴づけされており、そして機能を特殊化することが知られている。これらのクラス及びアイソタイプの各々の改変されたバージョンは、本開示を考慮して当業者に容易に認識可能であり、従って、本開示の範囲内である。
【0151】
軽鎖及び重鎖の両方が、構造的及び機能的相同性に分割される。用語「領域」は、免疫グロブリン又は抗体鎖の一部又は部分を指し、そして定常領域又は可変領域だけでなく該領域のさらに別個の部分を含む。例えば、軽鎖可変領域は、本明細書で定義されるように「フレームワーク領域」又は「FR」の間に組み入れられた「相補性決定領域」又は「CDR」を含む。
【0152】
免疫グロブリン重鎖又は軽鎖の領域は、「定常領域」の場合は様々なクラスメンバー内での配列変化が比較的無いことに基づいて、又は「可変領域」の場合には様々なクラスメンバーの領域内での有意な変化に基づいて、「定常」(C)領域又は「可変」(V)領域として定義され得る。用語「定常領域」及び「可変領域」はまた機能的にも使用され得る。この関連で、当然のことながら、免疫グロブリン又は抗体の可変領域は、抗原認識及び特異性を決定する。逆に、免疫グロブリン又は抗体の定常領域は、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などのような重要なエフェクター機能をもたらす。様々な免疫グロブリンクラスのサブユニット構造及び三次元配置は周知である。
【0153】
免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の定常領域及び可変領域は折りたたまれてドメインとなる。用語「ドメイン」は、例えば、β-プリーツシート及び/又は鎖間ジスルフィド結合により安定化されたペプチドループ(例えば、3~4つのペプチドループ)を含む重鎖又は軽鎖の球状領域を指す。免疫グロブリンの軽鎖上の定常領域ドメインは、交換可能に「軽鎖定常領域」、「CL領域」又は「CLドメイン」と呼ばれる。重鎖上の定常ドメイン(例えば、ヒンジ、CH1、CH2又はCH3ドメイン)は、交換可能に「重鎖定常領域ドメイン」「CH」領域ドメイン又は「CHドメイン」と呼ばれる。軽鎖上の可変ドメインは、交換可能に「軽鎖可変領域ドメイン」、「VL領域ドメイン」又は「VLドメイン」
と呼ばれる。重鎖上の可変ドメインは、交換可能に「重鎖可変領域ドメイン」、「VH領域ドメイン」又は「VHドメイン」と呼ばれる。
【0154】
慣習により、可変定常領域のアミノ酸のナンバリングは、それらが抗原結合部位又は免疫グロブリン若しくは抗体のアミノ末端からより離れるにつれて増加する。各重鎖及び軽鎖免疫グロブリン鎖のN末端は可変領域であり、そしてC末端は定常領域である。CH3及びCLドメインは、それぞれ重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端を含む。従って、軽鎖免疫グロブリンのドメインは、VL-CL配向で配置されているが、重鎖のドメインはVH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3配向で配置される。
【0155】
各可変領域ドメインの帰属は、Kabat、Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health、Bethesda、MD、1987 and
1991)の定義に従う。Kabatはまた、広く使用されているナンバリング法も提供し(Kabatナンバリング)、このナンバリング法では、異なる重鎖可変領域間又は異なる軽鎖可変領域間の対応する残基は同じ番号に割り当てられる。VLドメインのCDR1、2及び3はまた、本明細書においてそれぞれCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3と呼ばれる。VHドメインのCDR1、2及び3もまた本明細書においてそれぞれCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と呼ばれる。そのように示される場合、CDRの帰属はKabatの代わりにIMGT(R)(Lefranc et al.、D
evelopmental & Comparative Immunology 27:55-77;2003)に従う。重鎖定常領域のナンバリングはKabat(Kabat、Sequences of Proteins of Immunological
Interest、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1987 and 1991)に記されるようにEUインデックスに従う。
【0156】
本明細書で使用される用語「VHドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、そして用語「VLドメイン」は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ末端可変ドメインを含む。
【0157】
本明細書で使用される用語「CH1ドメイン」は、例えば、Kabatナンバリングシステムでおよそ位置114~223(EU位置118~215)から伸びる免疫グロブリン重鎖の第一の(最もアミノ末端側)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインはVHドメインに隣接し、そしてアミノ末端は免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域に隣接し、そして免疫グロブリン重鎖のFc領域の一部を形成しない。
【0158】
本明細書で使用される用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインに繋ぐ重鎖分子の部分を含む。ヒンジ領域は約25残基を含み、そして可動性であり、従って2つのN末端抗原結合領域が独立して移動することを可能にする。ヒンジ領域は、3つの個別のドメインに細分化することができる:上部、中間、及び下部ヒンジドメイン(Roux et al.J.Immunol.1998、161:4083)。
【0159】
本明細書で使用される用語「CH2ドメイン」は、例えば、Kabatナンバリングシステムでおよそ位置244~360(EU位置231~340)に伸びる重鎖免疫グロブリン分子の一部を含む。CH2ドメインは、別のドメインと密に対合していない点で独特である。むしろ、2つのN連結分枝炭化水素鎖は、インタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメイン間にある。一実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは、IgG1分子(例えば、ヒトIgG1分子)から誘導されたCH2ドメインを含む。
【0160】
本明細書で使用される用語「CH3ドメイン」は、CH2ドメインのN末端から約110残基伸びる重鎖免疫グロブリン分子の一部、例えばKabatナンバリングシステムのおよそ位置361~476(EU位置341~445)を含む。CH3ドメインは、典型的には抗体のC末端部分を形成する。しかし、いくつかの免疫グロブリンにおいて、さらなるドメインがCH3ドメインから伸びて分子のC末端部分を形成し得る(例えば、IgMのμ鎖及びIgEのe鎖におけるCH4ドメイン)。一実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは、IgG1分子(例えば、ヒトIgG1分子)から誘導されるCH3ドメインを含む。
【0161】
本明細書で使用される用語「CLドメイン」は、例えば、Kabat位置約107AからKabat位置約216まで伸びる軽鎖における免疫グロブリンの定常領域ドメインを含む。CLドメインはVLドメインに隣接する。一実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは、カッパ軽鎖(例えば、ヒトカッパ軽鎖)から誘導されたCLドメインを含む。
【0162】
本明細書で使用される用語「Fc領域」は、パパイン切断部位(すなわち、IgGの残基216、重鎖定常領域の最初の残基を114とみなす)のすぐ上流のヒンジ領域から開始し、そして抗体のC末端で終わる重鎖定常領域の一部と定義される。従って、完全Fc領域は、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。
【0163】
本明細書で使用される用語「天然Fc」又は「野生型Fc」は、抗体の消化から生じたか又は他の手段により製造され、モノマー形態又はマルチマー形態の、ヒンジ領域を含有し得る、非抗原結合フラグメントの配列を含む分子を指す。天然Fcの元の免疫グロブリン供給源は、典型的にはヒト起源であり、そしてIgG1及びIgG2のようないずれの免疫グロブリンでもよい。天然Fc分子は、共有結合(すなわち、ジスルフィド結合)及び非共有結合により連結されてダイマー又はマルチマーとなり得るモノマーポリペプチドから作成される。天然Fc分子のモノマーサブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、及びIgE)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、及びIgGA2)に依存して1~4の範囲に及ぶ。天然Fcの一例は、IgGのパパイン消化から生じるジスルフィド結合ダイマーである。本明細書で使用される用語「天然Fc」は、モノマー、ダイマー及びマルチマー形態の総称である。
【0164】
本明細書で使用される用語「Fc変異体」又は「改変されたFc」は、天然/野生型Fcから改変されているがFcRnに対する結合部位をなお含む分子又は配列を指す。従って、用語「Fc変異体」は、非ヒト天然Fcからヒト化された分子又は配列を含み得る。さらに、天然Fcは、本明細書に記載される抗体様結合ポリペプチドに必要ない構造的特徴又は生物学的活性をもたらすので除去することができる領域を含む。従って、用語「Fc変異体」は:(1)ジスルフィド結合形成、(2)選択された宿主細胞との不適合性、(3)選択された宿主細胞における発現の際のN末端異種性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合、又は(7)抗体依存性細胞傷害(ADCC)に影響を及ぼすか又はこれらに関与する、1つ若しくはそれ以上の天然Fc部位若しくは残基を欠いている分子若しくは配列、又は1つ若しくはそれ以上のFc部位若しくは残基が改変されている分子若しくは配列を含む。
【0165】
特定の例となる実施態様において、本明細書において特徴づけられるFc変異体は、野生型Fcを含むIgG抗体と比較して、増加した血清半減期、増強されたFcRn結合親和性、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性、増強されたFcγRIIIa結合親和性、及び/又は同様の熱安定性のうちの1つ又はそれ以上を有する。
【0166】
本明細書で使用される用語「Fcドメイン」は、上で定義されるとおりの天然/野生型Fc及びFc変異体配列を包含する。Fc変異体及び天然Fc分子と同様に、用語「Fcドメイン」は、抗体全体から消化されても又は他の手段により製造されても、モノマー形態又はマルチマー形態の分子を含む。
【0167】
上に示されるように、抗体の可変領域は、抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識し、特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体のVLドメイン及びVHドメインは、三次元抗原結合部位を規定する可変領域(Fv)を組み合わさって形成する。この四次抗体構造は、Yの各アームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。より詳細には、抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖の可変領域の各々上の相補性決定領域(CDR)により規定される。本明細書で使用される用語「抗原結合部位」は、抗原(例えば、細胞表面又は可溶性抗原)に特異的に結合する(免疫反応する)部位を含む。抗原結合部位は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖可変領域を含み、そしてこれらの可変領域により形成された結合部位は、抗体の特異性を決定する。抗原結合部位は、抗体ごとに異なる可変領域により形成される。本開示の変更された抗体は、少なくとも1つの抗原結合部位を含む。
【0168】
特定の実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは、結合ポリペプチドの選択された抗原との会合をもたらす少なくとも2つの抗原結合ドメインを含む。抗原結合ドメインは、必ずしも同じ免疫グロブリン分子から誘導される必要はない。この関連で、可変領域は、液性応答を開始し、そして所望の抗原に対して免疫グロブリンを生成するために導入され得るいずれかの型の動物に由来し得るか又は由来するものである。そのようなものとして、結合ポリペプチドの可変領域は、例えば哺乳動物起源であり得、例えば、ヒト、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、マカクザルなど)、オオカミ(lupine)、又はラクダ科動物(例えば、ラクダ、ラマ及び関連種)であり得る。
【0169】
天然に存在する抗体において、抗体は水性環境でその三次元構造をとるので、各モノマー抗体に存在する6つのCDRは、抗原結合部位を形成するように特異的に位置づけられたアミノ酸の短い不連続な配列である。重鎖及び軽鎖の可変ドメインの残りは、アミノ配列においてより低い分子間可変性を示し、そしてフレームワーク領域と呼ばれる。フレームワーク領域は大部分β-シート立体構造をとり、CDRはβ-シート構造を接続し、そしていくつかの場合ではβ-シート構造の一部を形成するループを形成する。従って、これらのフレームワーク領域は、鎖間非共有相互作用により正しい方向で6つのCDRの位置づけをもたらす足場を形成するように作用する。位置づけられたCDRにより形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに対する表面相補性を規定する。この相補性表面は、免疫反応性抗原エピトープへの抗体の非共有結合を促進する。
【0170】
例となる結合ポリペプチドとしては抗体変異体が挙げられる。本明細書で使用される用語「抗体変異体」としては、それらが天然に存在しないように変更された抗体の合成及び操作された形態、例えば、少なくとも2つの重鎖部分を含むが2つの完全重鎖を含まない抗体(例えば、ドメイン欠失抗体又はミニボディ(minibodies));2つ又はそれ以上の異なる抗体に又は単一の抗原上の異なるエピトープに結合するように変更された多選択性形態(例えば、二重特異的、三重特異的など));scFv分子に接合された重鎖分子などが挙げられる。さらに、用語「抗体変異体」は、抗体の多価形態(例えば、三価、四価など)、同じ抗原の3つ、4つ又はそれ以上のコピーに結合する抗体を含む。
【0171】
本明細書で使用される用語「結合価」は、ポリペプチドにおける潜在的な標的結合部位の数を指す。各標的結合部位は、1つの標的分子又は標的分子上の特異的部位に特異的に結合する。ポリペプチドが1つより多くの標的結合部位を含む場合、各標的結合部位は、同じか又は異なる分子に特異的に結合し得る(例えば、異なるリガンド若しくは異なる抗
原、又は同じ抗原上の異なるエピトープに結合し得る)。主題の結合ポリペプチドは、典型的にはヒト抗原分子に特異的な少なくとも1つの結合部位を有する。
【0172】
用語「特異性」は、所定の標的抗原(例えば、ヒト標的抗原)に特異的に結合する(例えば、免疫反応する)能力を指す。結合ポリペプチドは、単一特異性であり得、そして標的に特異的に結合する1つ若しくはそれ以上の結合部位含有し、又はポリペプチドは多選択性であり得、そして同じか若しくは異なる標的に特異的に結合する2つ若しくはそれ以上の結合部位を含有し得る。特定の実施態様において、結合ポリペプチドは同じ標的の2つの異なる(例えば、非オーバーラップ)部分に対して特異的である。特定の実施態様において、結合ポリペプチドは1つより多くの標的に対して特異的である。腫瘍細胞上に発現される抗原に結合する抗原結合部位を含む例となる結合ポリペプチド(例えば、抗体)は当該分野で公知であり、そしてこのような抗体からの1つ又はそれ以上のCDRが本明細書に記載される抗体に含まれ得る。
【0173】
本明細書で使用される用語「抗原」又は「標的抗原」は、結合ポリペプチドの結合部位により結合される能力がある分子又は分子の一部を指す。標的抗原は1つ又はそれ以上エピトープを有し得る。
【0174】
用語「約」又は「ほぼ」は、所定の値又は範囲の約20%以内、例えば約10%以内、約5%以内、又は約1%若しくはそれ以下以内を意味する。
【0175】
本明細書で使用される「投与する」又は「投与」は、身体の外側に存在する物質(例えば、本明細書において提供される単離された結合ポリペプチド)を、限定されないが、例えば肺(例えば、吸入)、粘膜(例えば、鼻腔内)、皮内、静脈内、筋内送達及び/又は本明細書に記載されるか若しくは当該分野で公知のいずれかの他の物理的送達方法により、患者中に注入するか又はその他の方法で物理的に送達する行動を指す。疾患又はその症状が管理されているか又は処置されている場合、物質の投与は典型的には疾患又はその症状の開始後に起こる。疾患又はその症状が予防されている場合、物質の投与は、典型的には疾患又はその症状の発生前に起こり、そして長く継続されて疾患関連症状の出現又は規模を延期し得るか又は減少し得る。
【0176】
本明細書で使用される用語「組成物」は、特定された成分(例えば、本明細書において提供される単離された結合ポリペプチド)を、場合により特定された量で、さらには特定された成分の組み合わせから直接又は間接的に生じるいずれかの生成物を、場合により特定された量で含有する製品を包含することを意図される。
【0177】
「有効量」は、その薬剤を必要とする個体において所望の生理学的結果を達成するために十分な活性薬剤(例えば、本開示の単離された結合ポリペプチド)の量を意味する。有効量は、処置しようとする個体の健康及び身体状態、処置しようとする個体の分類学的群、組成物の処方、個々の医学状態の評価、及び他の関連する因子に依存して個体間で変化し得る。
【0178】
本明細書で使用される用語「被験体」及び「患者」は交換可能に使用される。本明細書で使用される被験体は哺乳動物、例えば非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)又は霊長類(例えば、サル及びヒト)であり得る。特定の実施態様において、本明細書で使用される用語「被験体」は、脊椎動物、例えば哺乳動物を指す。哺乳動物としては、限定することなく、ヒト、非ヒト霊長類、野生(wild)動物、野生(feral)動物、家畜、スポーツ動物、及びペットが挙げられる。
【0179】
本明細書で使用される用語「治療」は、疾患又はそれに関連する症状の予防、管理、処
置及び/又は寛解において使用され得るいずれかのプロトコル、方法及び/又は薬剤を指す。いくつかの実施態様において、用語「治療」は、被験体における感染に対する免疫応答又はそれに関連する症状の調節において使用され得るいずれかのプロトコル、方法及び/又は薬剤を指す。いくつかの実施態様において、用語「治療(therapies)」及び「治療(therapy)」は、医療関係者のような当業者に公知の疾患若しくはそれに関連する症状の予防、管理、処置及び/若しくは寛解において有用な、生物学的治療、支持療法、並びに/又は他の治療を指す。他の実施態様において、用語「治療(therapies)」及び「治療(therapy)」は、医療関係者のような当業者に公知の被験体における感染に対する免疫応答又はそれに関連する症状の調節において有用な、生物学的治療、支持療法、並びに/又は他の治療を指す。
【0180】
本明細書で使用される用語「処置する」、「処置」及び「処置すること」は1つ又はそれ以上の治療(本明細書において提供される単離された結合ポリペプチドのような1つ又はそれ以上の予防用又は治療用の薬剤を含むがこれらに限定されない)の投与の結果として生じた、疾患又はそれに関連する症状の進行、重症度及び/又は期間の減少又は寛解を指す。本明細書において使用される用語「処置することはまた、処置されている被験体の疾患経過を変更することにも言及し得る。処置の治療効果としては、限定することなく、疾患の発生又は再発を予防すること、症状の軽減、疾患の直接的又は間接的な病理的帰結の減少、疾患の進行速度を減少させること、疾患状態の寛解又は緩和、及び緩解又は改善された予後が挙げられる。
【0181】
結合ポリペプチド
一局面において、本開示は、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチド(例えば、抗体、イムノアドヘシン、抗体変異体、及び融合タンパク質)を提供する。本明細書において開示される結合ポリペプチドは、改変されたFcドメインを含むいずれの結合ポリペプチドも包含する。特定の実施態様において、結合ポリペプチドは抗体、又はイムノアドヘシン又はそれらの誘導体である。いずれの供給源又は種由来の抗体も本明細書において開示される結合ポリペプチドにおいて使用され得る。適切な抗体としては、限定することなく、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体が挙げられる。適切な抗体としては、限定することなく、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、全長抗体、又は単鎖抗体が挙げられる。
【0182】
いずれの免疫グロブリンクラス(例えば、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgE)及び種由来のFcドメインも本明細書に開示される結合ポリペプチドにおいて使用され得る。異なる種又はIgクラス由来のFcドメインの部分を含むキメラFcドメインもまた使用され得る。特定の実施態様において、FcドメインはヒトFcドメインである。いくつかの実施態様において、FcドメインはIgG1 Fcドメインである。他の実施態様において、FcドメインはIgG4 Fcドメインである。いくつかの実施態様において、FcドメインはヒトIgG1又はIgG4 Fcドメインである。いくつかの実施態様において、FcドメインはヒトIgG1 Fcドメインである。他の種及び/又はIgクラス若しくはアイソタイプのFcドメインの場合、当業者には当然のことながら、本明細書に記載されるアミノ酸置換のいずれも適切に適合され得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252、I253、S254、T256、K288、T307、K322、E380、L432、N434、又はY436、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従ってM252、I253、S254、T256、K288、T307、K322、E380、L432、N434、及びY436から選択されるいずれか2つのアミノ酸位置に二重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従ってM252、I253、S254、T256、K288、T307、K322、
E380、L432、N434、及びY436から選択されるいずれか3つのアミノ酸位置に三重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従ってM252、I253、S254、T256、K288、T307、K322、E380、L432、N434、及びY436から選択されるいずれか4つのアミノ酸位置に四重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従ってM252、I253、S254、T256、K288、T307、K322、E380、L432、又はY436、及びそれらの組み合わせから選択されるいずれかのアミノ酸位置にアミノ酸置換を含むことが望ましくあり得、ここでアミノ酸位置N434は置換されていない(すなわち、アミノ酸位置N434は野生型である)。
【0183】
いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252Y(すなわち、アミノ酸位置252のチロシン)、T256D、T256E、K288D、K288N、T307A、T307E、T307F、T307M、T307Q、T307W、E380C、N434F、N434P、N434Y、Y436H、Y436N、又はY436W、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、M252[ここで置換はM252Yである];T256[ここで置換はT256D、又はT256Eである];K288[ここで置換はK288D、又はK288Nである];T307[ここで置換はT307A、T307E、T307F、T307M、T307Q、又はT307Wである];E380[ここで置換はE380Cである];N434[ここで置換はN434F、N434P、又はN434Yである];Y436[ここで置換はY436H、Y436N、又はY436Wである]から選択される二重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252[ここで置換はM252Yである];T256[ここで置換はT256D、又はT256Eである];K288[ここで置換はK288D、又はK288Nである];T307[ここで置換はT307A、T307E、T307F、T307M、T307Q、又はT307Wである];E380[ここで置換はE380Cである];N434[ここで置換はN434F、N434P、又はN434Yである];Y436[ここで置換はY436H、Y436N、又はY436Wである]から選択される三重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252[ここで置換はM252Yである];T256[ここで置換はT256D、又はT256Eである];K288[ここで置換はK288D、又はK288Nである];T307[ここで置換はT307A、T307E、T307F、T307M、T307Q、又はT307Wである];E380[ここで置換はE380Cである];N434[ここで置換はN434F、N434P、又はN434Yである];Y436[ここで置換はY436H、Y436N、又はY436Wである]から選択される四重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、M252Y、T256D、T256E、K288D、K288N、T307A、T307E、T307F、T307M、T307Q、T307W、E380C、Y436H、Y436N、又はY436W、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択されるアミノ酸位置のいずれかにアミノ酸置換を含むことが望ましくあり得、アミノ酸位置N434はフェニルアラニン(F)又はチロシン(Y)で置換されていない。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、M252Y、T256D、T256E、K288D、K288N、T307A、T307E、T307F、T307M、T307Q、T307W、E380C、Y436H、Y436N、又はY436W、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択されるアミノ酸位置にアミノ酸置換を含むことが望ましくあり得、ここでアミノ酸位置N434はチロシン(Y)で置換されていない。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、M252Y、T256D、T256E、K288D、K288N、T307A、
T307E、T307F、T307M、T307Q、T307W、E380C、Y436H、Y436N、又はY436W、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択されるアミノ酸位置のいずれかにアミノ酸置換を含むことが望ましくあり得、アミノ酸位置N434は置換されていない(すなわち、アミノ酸位置N434は野生型である)。
【0184】
特定の実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252、T256、T307、又はN434、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含み得る。特定の実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従ってM252、T256、T307、及びN434から選択されるいずれか2つのアミノ酸位置に二重アミノ酸置換を含み得る。特定の実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従ってM252、T256、T307、及びN434から選択されるいずれか3つのアミノ酸位置に3重アミノ酸置換を含み得る。特定の実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従ってアミノ酸位置M252、T256、T307、及びN434に四重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、M252、T256、又はT307、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含むことが望ましくあり得、ここでアミノ酸位置N434は置換されていない(すなわち、アミノ酸位置N434は野生型である)。
【0185】
例となる実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252[ここで置換はM252Yである];T256[ここで置換はT256D、又はT256Eである];T307[ここで置換はT307Q、又はT307Wである];又はN434[ここで置換はN434F、又はN434Yである]、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含み得る。特定の実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252[ここで置換はM252Yである];T256[ここで置換はT256D、又はT256Eである];T307[ここで置換はT307Q、又はT307Wである];又はN434[ここで置換はN434F、又はN434Yである]から選択されるいずれか2つのアミノ酸位置に二重アミノ酸置換を含み得る。特定の実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252[ここで置換はM252Yである];T256[ここで置換はT256D、又はT256Eである];T307[ここで置換はT307Q、又はT307Wである];又はN434[ここで置換はN434F、又はN434Yである]から選択されるいずれか3つのアミノ酸位置に三重アミノ酸置換を含み得る。特定の実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252[ここで置換はM252Yである];T256[ここで置換はT256D、又はT256Eである];T307[ここで置換はT307Q、又はT307Wである];又はN434[ここで置換はN434F、又はN434Yである]から選択されるアミノ酸位置に四重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、M252Y、T256D、T256E、T307Q、又はT307Wから選択されるアミノ酸置換、及びそれらのいずれかの組み合わせを含むことが望ましくあり得、ここでアミノ酸位置N434はフェニルアラニン(F)又はチロシン(Y)で置換されていない。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、M252Y、T256D、T256E、T307Q、又はT307Wから選択されるアミノ酸置換、及びそれらのいずれかの組み合わせを含むことが所望され得、ここでアミノ酸位置N434はチロシン(Y)で置換されていない。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、M252Y、T256D、T256E、T307Q、又はT307Wから選択されるアミノ酸置換、及びそれらのいずれかの組み合わせを含むことが望ましくあり得、ここでアミノ酸位置N434は置換されていない(すなわち、アミノ酸位置N434は野生型である)。
【0186】
特定の実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、T256D、若しくはT256E、及び/又はT307W、若しくはT307Qから選択されるアミノ酸置換を含み得、そしてN434F、若しくはN434Y、又はM252Yから選択されるアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、T256D、若しくはT256E、及び/又はT307W、若しくはT307Qから選択されるアミノ酸置換を含み、そしてアミノ酸置換M252Yをさらに含むことが望ましくあり得、ここでアミノ酸位置N434はフェニルアラニン(F)又はチロシン(Y)で置換されていない。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従ってT256D、若しくはT256E、及び/又はT307W、若しくはT307Qから選択されるアミノ酸置換を含み、そしてアミノ酸置換M252Yをさらに含むことが望ましくあり得、ここでアミノ酸位置N434はチロシン(Y)で置換されていない。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従って、T256D、若しくはT256E、及び/又はT307W、若しくはT307Qから選択されるアミノ酸置換を含み、そしてさらにアミノ酸置換M252Yを含むことが望ましくあり得、ここでアミノ酸位置N434は置換されていない(すなわち、アミノ酸位置N434は野生型である)。
【0187】
いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252Y/T256D、M252Y/T256E、M252Y/T307Q、M252Y/T307W、M252Y/N434F、M252Y/N434Y、T256D/T307Q、T256D/T307W、T256D/N434F、T256D/N434Y、T256E/T307Q、T256E/T307W、T256E/N434F、T256E/N434Y、T307Q/N434F、T307Q/N434Y、T307W/N434F、及びT307W/N434Yから選択される二重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252Y/T256D/T307Q、M252Y/T256D/T307W、M252Y/T256D/N434F、M252Y/T256D/N434Y、M252Y/T256E/T307Q、M252Y/T256E/T307W、M252Y/T256E/N434F、M252Y/T256E/N434Y、M252Y/T307Q/N434F、M252Y/T307Q/N434Y、M252Y/T307W/N434F、M252T/T307W/N434Y、T256D/307Q/N434F、T256D/307W/N434F、T256D/307Q/N434Y、T256D/307W/N434Y、T256E/307Q/N434F、T256E/307W/N434F、T256E/307Q/N434Y、及びT256E/307W/N434Yから選択される三重アミノ酸置換を含み得る。
【0188】
いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従って、M252Y/T256D/T307Q/N434F、M252Y/T256E/T307Q/N434F、M252Y/T256D/T307W/N434F、M252Y/T256E/T307W/N434F、M252Y/T256D/T307Q/N434Y、M252Y/T256E/T307Q/N434Y、M252Y/T256D/T307W/N434Y、及びM252Y/T256E/T307W/N434Yから選択される四重アミノ酸置換を含み得る。
【0189】
いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインが、EUナンバリングに従ってアミノ酸位置N434に野生型アミノ酸を含むことが望ましくあり得る。いくつかの実施態様において、FcドメインがEUナンバリングに従ってアミノ酸位置N434にフェニルアラニン(F)もチロシン(Y)も含まないことが望ましくあり得る。いくつかの実施態様において、Fcドメインが、EUナンバリングに従ってアミノ酸位置N434にチロシン(Y)を含まないことが望ましくあり得る。いくつかの実施態様において、改変され
たFcドメインは、EUナンバリングに従ってM252Y/T256D、M252Y/T256E、M252Y/T307Q、M252Y/T307W、T256D/T307Q、T256D/T307W、T256E/T307Q、及びT256E/T307Wから選択される二重アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインは、EUナンバリングに従ってM252Y/T256D/T307Q、M252Y/T256D/T307W、M252Y/T256E/T307Q、及びM252Y/T256E/T307Wから選択される三重アミノ酸置換を含み得る。
【0190】
一実施態様において、FcRn結合が変更された結合ポリペプチドは、本明細書に開示される1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を有するFcドメインを含む。一実施態様において、増強されたFcRn結合親和性を有する結合ポリペプチドは、本明細書に開示される1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を有するFcドメインを含む。一実施態様において、増強されたFcRn結合親和性を有する結合ポリペプチドは、本明細書に開示される2つ又はそれ以上のアミノ酸置換を有するFcドメインを含む。一実施態様において、増強されたFcRn結合親和性を有する結合ポリペプチドは、本明細書に開示される3つ又はそれ以上のアミノ酸置換を有するFcドメインを含む。
【0191】
いくつかの実施態様において、結合ポリペプチドは種特異的FcRn結合親和性を示し得る。一実施態様において、結合ポリペプチドはヒトFcRn結合親和性を示し得る。一実施態様において、結合ポリペプチドはラットFcRn結合親和性を示し得る。いくつかの実施態様において、結合ポリペプチドは異種間FcRn結合親和性を示し得る。このような結合ポリペプチドは、1つ又はそれ以上の異なる種にわたって交差反応性であると言われる。一実施態様において、結合ポリペプチドはヒト及びラットFcRn結合親和性の両方を示し得る。
【0192】
新生児型Fc受容体(FcRn)は、抗体のFc領域と相互作用して、正常リソソーム分解のレスキューにより再循環を促進する。このプロセスは、酸性pH(例えば、6.5未満のpH)でエンドソームにおいて発生するが、血流の生理的pH条件下(例えば、非酸性pH)では発生しないpH依存性プロセスである。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む本開示の結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、7未満のpHで、例えば、約pH6.5で、約pH6.0で、約pH5.5で、約pH5.0で、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcRn結合親和性を有する。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、7未満のpHで、例えば約pH6.5、約pH6.0、約pH5.5、約pH5.0で、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して増強されたFcRn結合親和性を有する。非酸性高pHは、例えば7より高いpH、約pH7、約pH7.4、約pH7.6、約pH7.8、約pH8.0、約pH8.5、約pH9.0であり得る。
【0193】
特定の実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドが、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じFcRn結合親和性を非酸性pHで示すことが望ましくあり得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドが、EUナンバリングに従って二重アミノ酸置換M428L/N434Sを有する改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドより低いFcRn結合親和性を非酸性pHで示すことが望ましくあり得る。従って、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドが、pH依存性FcRn結合に対して最小の摂動を示すことが望ましくあり得る。
【0194】
いくつかの実施態様において、酸性pHで増強されたFcRn結合親和性を有する改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少した(すなわち、より遅い)FcRn解離速度を揺する。いくつかの実施態様において、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn結合親和性と比較して増強されたFcRn結合親和性を酸性pHで有する、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、非酸性高pHでの結合ポリペプチドのFcRn解離速度と比較して酸性pHでより遅いFcRn解離速度を有する。
【0195】
いくつかの実施態様において、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、非酸性pHでより高いFcRn結合親和性を示す、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドが提供される。いくつかの実施態様において、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHでより高いFcRn結合親和性を示す、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドが提供される。いくつかの実施態様において、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、非酸性pHでより高いFcRn結合親和性を示し、そして野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して、酸性pHでより高いFcRn結合親和性を示す改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドが提供される。従って、特定の実施態様において、pH依存性FcRn結合の喪失を示す改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドが提供される。
【0196】
特定の実施態様は、本明細書に記載される変更されたFcRn結合親和性を示すFc変異に加えて、例えば、ほぼ同じ免疫原性の変更されていない抗体全体と比較した場合に、減少又は増強されたエフェクター機能、非共有結合で二量体化する能力、腫瘍部位に局在化する増加した能力、減少した血清半減期、増加した血清半減期及び同様のもののような所望の生化学的特徴をもたらすように欠失されているか又は別の方法で変更されている、定常領域ドメインの1つ若しくはそれ以上における少なくとも1つのアミノ酸及び/又は可変領域の1つ若しくはそれ以上における少なくとも1つのアミノ酸を含む抗体を含む。
【0197】
特定の他の実施態様において、結合ポリペプチドは、異なる抗体アイソタイプから誘導された定常領域(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の2つ又はそれ以上に由来する定常領域)を含む。他の実施態様において、結合ポリペプチドは、キメラヒンジ(すなわち、異なる抗体アイソタイプのヒンジドメインから誘導されたヒンジ部分を含むヒンジ、例えば、IgG4分子由来の上部ヒンジドメイン及びIgG1中間ヒンジドメイン)を含む。
【0198】
特定の実施態様において、Fcドメインは、当該分野で公知の技術を使用してエフェクター機能を増加又は減少するように変異され得る。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む本開示の結合ポリペプチドは、Fc受容体に対する変更された結合親和性を有する。いくつかの異なる型のFc受容体があり、これらはそれらが認識する抗体の型に基づいて分類される。例えば、Fc-ガンマ受容体(FcγR)はIgGクラス抗体に結合し、Fc-アルファ受容体(FcαR)はIgAクラス抗体に結合し、そしてFc-イプシロン受容体(FcεR)はIgEクラス抗体に結合する。FcγRは、いくつかのメンバー、例えばFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、及びFcγRIIIbを含むファミリーに属する。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して変更されたFcγRIIIa結合親和性を有する。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して減少したFcγRIIIa結合親和性を有する。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較して増強されたFcγRIIIa結合親和性を有する。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは
、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドと比較してほぼ同じFcγRIIIa結合親和性を有する。
【0199】
他の実施態様において、本明細書に記載される診断及び処置方法における使用のための結合ポリペプチドは、グリコシル化を減少するか又は除去するように変更された定常領域、例えば、IgG1重鎖定常領域を有する。例えば、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチド(例えば、抗体又はイムノアドヘシン)は、抗体Fcのグリコシル化を変更するアミノ酸置換をさらに含み得る。例えば、該改変されたFcドメインは、減少したグリコシル化を有し得る(例えば、N-又はO-連結グリコシル化)。
【0200】
減少した又は変更されたグリコシル化をもたらす例となるアミノ酸置換は、国際PCT公開第WO05/018572号(その全体が参照により本明細書に加入される)。いくつかの実施態様において、結合ポリペプチドはグリコシル化を除去するように改変される。このような結合ポリペプチドは「アグリ(agly)」結合ポリペプチドと呼ばれ得る(例えば、「アグリ抗体」)。理論に束縛されないが、「アグリ」結合ポリペプチドはインビボで改善された安全性及び安定性プロフィールを有し得ると考えられている。アグリ結合ポリペプチドは、いずれのアイソタイプ又はサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のものでよい。多数の当該分野で認識された方法が、「アグリ」抗体又は変更されたグリカンを有する抗体を製造するために利用可能である。例えば、可変されたグリコシル化経路(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ欠失)を有する遺伝子操作された宿主細胞(例えば、改変された酵母、例えば、ピキア(Picchia)、又はCHO細胞)を使用してこのような抗体を製造することができる。
【0201】
特定の実施態様において、結合ポリペプチドは、1つ又はそれ以上のエフェクター機能を媒介する抗体定常領域(例えば、IgG定常領域、例えばヒトIgG定常領域、例えばヒトIgG1定常領域)を含み得る。例えば、C1-複合体の抗体定常領域への結合は、補体系を活性化し得る。補体系の活性化は、細胞病原体のオプソニン化及び溶解において重要である。補体系の活性化は炎症応答も刺激し、そしてまた自己免疫過感受性に関与する。さらに、抗体はFcドメインを介して様々な細胞上の受容体に結合する(抗体Fc領域上のFc受容体結合部位は細胞上のFc受容体(FcR)に結合する。IgG(ガンマ受容体)、IgE(イプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)及びIgM(ミュー受容体)を含む様々なクラスの抗体に特異的な多数のFc受容体がある。細胞表面上のFc受容体への抗体の結合は、多数の重要かつ多用な生物学的応答を惹起し、これらとしては、抗体被覆粒子の貪食及び破壊、免疫複合体のクリアランス、抗体被覆標的細胞のキラー細胞による溶解(抗体依存性細胞介在性細胞傷害、又はADCCと呼ばれる)、炎症メディエーターの放出、経胎盤移行並びに免疫グロブリン産生の制御が挙げられる。いくつかの実施態様において、結合ポリペプチド(例えば、抗体又はイムノアドヘシン)はFc-ガンマ受容体に結合する。代替の実施態様において、結合ポリペプチドは1つ若しくはそれ以上のエフェクター機能(例えば、ADCC活性)を欠いており、かつ/又はFcγ受容体に結合することができない定常領域を含み得る。
【0202】
抗体を含めて、低い熱力学的安定性を有するタンパク質は、ミスフォールディング及び凝集の増加した傾向を有し、そして有用な治療剤としてのタンパク質の活性、有効性、及び可能性を制限するか又は妨害するだろう。特定の実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、野生型Fcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する。いくつかの実施態様において、改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドは、三重アミノ酸置換M252Y/S254T/T256E(YTE)を有する改変されたFcドメインを含む結合ポリペプチドとほぼ同じ熱安定性を有する。
【0203】
改変の結果として得られた生理学的プロフィール、バイオアベイラビリティ及び他の生
化学的効果、例えば腫瘍局在化、体内分布及び血清半減期は、過度の実験なしに周知の免疫学的技術を使用して容易に測定及び定量され得る。
【0204】
特定の実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは、抗体の抗原結合フラグメントを含み得る。用語「抗原結合フラグメント」は、抗原に結合するか又は抗原結合(すなわち、特異的結合)についてインタクトな抗体と(すなわち、それらが由来するインタクト抗体)と競合する免疫グロブリン又は抗体のポリペプチドフラグメントを指す。抗原結合フラグメントは、当該分野で周知の組み換え又は生化学的方法により製造され得る。例となる抗原結合フラグメントとしては、Fv、Fab、Fab’、及び(Fab’)2が挙げられる。例となる実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは、抗原結合フラグメント及び改変されたFcドメインを含む。
【0205】
いくつかの実施態様において、結合ポリペプチドは単鎖可変領域配列(ScFv)を含む。単鎖可変領域配列は、1つ又はそれ以上の抗原結合部位、例えば、可動性リンカーによりVHドメインに連結されたVLドメインを有する単一のポリペプチドを含む。ScFv分子は、VH-リンカー-VL配置で又はVL-リンカー-VH配置で構築され得る。抗原結合部位を構成するVL及びVHドメインを連結する可動性ヒンジは、約10~約50アミノ酸残基を含む。ペプチドの接続は当該分野で公知である。結合ポリペプチドは、少なくとも1つのscFv及び/又は少なくとも1つの定常領域を含み得る。一実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは、改変されたFcドメインに連結されるか融合された少なくとも1つのscFvを含み得る。
【0206】
いくつかの実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは、ScFv分子(例えば、変更されたScFv分子)を有する抗体をコードするDNA配列を融合することにより製造される多価(例えば、四価)抗体である。例えば、一実施態様において、ScFv分子(例えば、変更されたScFv分子)がそのN末端又はC末端で可動性リンカー(例えば、gly/serリンカー)を介して抗体のFcフラグメントに連結されるように、これらの配列を組み合わせる。別の実施態様において、本開示の四価抗体は、ScFv分子を接続ペプチドに融合し、これを改変されたFcドメインに融合して、ScFv-Fab四価分子を構築することにより製造され得る。
【0207】
別の実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは変更されたミニボディ(minibody)である。本開示の変更されたミニボディは、それぞれがScFv分子を含む2つのポリペプチド鎖から構築されたダイマー分子であり、これは接続ペプチドを介して改変されたFcドメインに融合される。ミニボディは、ScFv成分を構築し、そして当該分野で記載された方法を使用してペプチド成分を接続することにより製造され得る(例えば、米国特許第5,837,821号又はWO 94/09817Alを参照のこと)。別の実施態様において、四価ミニボディはが構築され得る。四価ミニボディは、2つのScFv分子が可動性リンカーを使用して連結されること以外はミニボディと同じやり方で構築され得る。次いで、連結されたscFv-scFv構築物を改変されたFcドメインに接合する。
【0208】
別の実施態様において、本開示の結合ポリペプチドは二特異性抗体(diabody)を含む。二特異性抗体は、ダイマー四価分子であり、同じポリペプチド鎖上のVL及びVHドメインが相互作用できないように、それぞれがscFv分子に似たポリペプチドを有するが、両方の可変ドメインを接続する通常は短い(10未満、例えば、約1~約5つの)アミノ酸残基リンカーを有する。代わりに、ポリペプチド鎖のVL及びVHドメインは、第二のポリペプチド鎖上の(それぞれ)VH及びVLドメインと相互作用する(例えば、WO02/02781を参照のこと)。本開示の二特異性抗体は、改変されたFcドメインに融合されたscFv様分子を含む。
【0209】
他の実施態様において、結合ポリペプチドは、同じポリペプチド鎖上に連続して1つ又はそれ以上の可変ドメインを含む多価抗体、例えば、タンデム可変ドメイン(TVD)ポリペプチドを含む。例となるTVDポリペプチドは、米国特許第5,989,830号に記載される「ダブルヘッド(double head)」又は「デュアル-Fv」構成を含む。2つの異なる抗体の可変ドメインは2つの別々の鎖(1つの重鎖及び1つの軽鎖)上で縦列配置で発現され、ここで一方のポリペプチド鎖は、ペプチドリンカーで分離された2つの連続したVHドメインを含み(VH1-リンカー-VH2)、そして他方のポリペプチド鎖は、ペプチドリンカーにより連続して接続される相補的VLドメインからなる(VL1-リンカー-VL2)。クロスオーバーダブルヘッド構成において、2つの異なる抗体の可変ドメインが縦列配置で2つの別個のポリペプチド鎖上に発現され(1つの重鎖及び1つの軽鎖)、ここで一方のポリペプチド鎖は、ペプチドリンカーにより分離された2つのVHドメインを有し(VH1-リンカー-VH2)、そして他方のポリペプチド鎖は、連続してペプチドリンカーにより反対方向で接続された相補的VLドメインからなる(VL2-リンカー-VL1)。「二重-Fv」形式に基づくさらなる抗体変異体としては、二重-可変-ドメイン(Dual-Variable-Domain)IgG (DVD-IgG)二重特異性抗体(米国特許第7,612,181号を参照のこと)及びTBTI形式(US 2010/0226923 A1を参照のこと)が挙げられる。いくつかの実施態様において、結合ポリペプチドは、改変されたFcドメインに融合された同じポリペプチド上に連続して1つ又はそれ以上の可変ドメインを含む多選択性又は多価抗体を含む。
【0210】
別の例となる実施態様において、結合ポリペプチドは、「ダブルヘッド」構成に基づくクロスオーバー二重可変ドメインIgG(CODV-IgG)二重特異性抗体(US20120251541 A1を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)。
【0211】
別の例となる実施態様において、結合ポリペプチドはイムノアドヘシンである。本明細書で使用される「イムノアドヘシン」は、免疫グロブリン定常ドメイン(すなわち、Fc領域)に連結された、1つ又はそれ以上の結合ドメインを含む結合ポリペプチド(例えば、受容体、リガンド又は細胞接着分子由来)を指す(例えば、Ashkenazi et
al.1995、Methods 8(2):104-115、及びIsaacs (1997) Brit.J.Rheum.36:305を参照のこと、これらはそれら全体として参照により本明細書に加入される)。イムノアドヘシンは、それらの国際一般名(INN)において末尾「-セプト(-cept)」により識別される。抗体と同様に、イムノアドヘシンは長い循環半減期を有し、アフィニティーベースの方法により容易に精製され、そして二価性によりもたらされるアビディティーの有利性を有する。市販の治療用イムノアドヘシンの例としては、エタネルセプト(ENBREL(R))、アバタセプト
(ORENCIA(R))、リロナセプト(ARCALYST(R))、アフリベルセプト(ZALTRAP(R)/EYLEA(R))、及びベラタセプト(NULOJIX(R))が挙げら
れる。
【0212】
特定の実施態様において、結合ポリペプチドは免疫グロブリン様ドメインを含む。適切な免疫グロブリン様ドメインとしては、限定することなく、フィブロネクチンドメイン(例えば、Koide et al.(2007)、Methods Mol.Biol.352:95-109を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)、DARPin(例えば、Stumpp et al.(2008) Drug Discov.Today 13 (15-16):695-701を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)、プロテインAのZドメイン(Nygren et al.(2008) FEBS J.275 (11):2668-7
6を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)、リポカリン(例えば、Skerra et al.(2008) FEBS J.275 (11):2677-83を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)、アフィリン(Affilins)(例えば、Ebersbach et al.(2007) J.Mol.Biol.372 (1):172-85を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)、アフィチン(Affitins)(例えば、Krehenbrink et al.(2008). J.Mol.Biol.383 (5):1058-68を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)、アビマー(Avimers)(例えば、Silverman et
al.(2005) Nat.Biotechnol.23 (12):1556-61を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)、フィノマー(Fynomers)(例えば、Grabulovski et al.(2007) J Biol Chem 282 (5):3196-3204を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)、及びクニッツドメインペプチド(例えば、Nixon et al.(2006) Curr Opin Drug Discov Devel 9 (2):261-8を参照のこと、これはその全体として参照により本明細書に加入される)が挙げられる。
【0213】
本開示の結合ポリペプチド及びイムノアドヘシンについて、実質的にいずれの抗原も結合ポリペプチドにより標的にされ得、これらとしては、限定されないが、タンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフ、及び/又は標的抗原のエピトープが挙げられ、これにはサイトカインのような可溶性因子及び膜結合因子の両方、並びに膜貫通受容体が含まれる。
【0214】
本明細書に記載される改変されたFcドメインを含む本開示の結合ポリペプチドは、既知の「親」抗体のCDR配列又は可変ドメイン配列を含み得る。いくつかの実施態様において、親抗体及び本開示の抗体は、本明細書に開示されるFcドメインに対する改変を除いて類似するか又は同一の配列を共有し得る。
【0215】
核酸及び発現ベクター
一局面において、本発明は、本明細書に開示される結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドを発現させることを含む結合ポリペプチドの製造方法もまた提供される。
【0216】
本明細書に開示される結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、典型的には、特許請求される抗体又はイムノアドヘシンの所望の量を製造するために使用され得る宿主細胞中への導入のための発現ベクターに挿入される。従って、特定の局面において、本発明は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドを含む発現ベクター、並びにこれらのベクター及びポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。
【0217】
用語「ベクター」又は「発現ベクター」は、明細書及び特許請求の範囲の目的のために、所望の遺伝子を細胞に導入しそして発現させるために使用されるベクターを意味するために本明細書において使用される。当業者に公知のように、このようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス及びレトロウイルスからなる群より容易に選択され得る。一般に、ベクターは、選択マーカー、所望の遺伝子おクローニングを促進するための適切な制限部位、並びに真核生物細胞又は原核生物細胞に進入し、かつ/又は複製する能力を含む。
【0218】
多数の発現ベクター系が使用され得る。例えば、ベクターの1つのクラスは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロ
ウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTV又はMOMLV)、又はSV40ウイルスのような動物ウイルスから誘導されるDNAエレメントを利用する。その他は、配列内リボソーム結合部位を有するポリシストロニック系の使用を含む。さらに、DNAをそれらの染色体中に組み込んだ細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つ又はそれ以上のマーカーを導入することにより選択され得る。マーカーは、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤抵抗性(例えば、抗生物質)又は銅のような重金属に対する抵抗性を備え得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現させようとするDNA配列に直接連結されても、同時形質転換により同じ細胞中に導入されてもよい。さらなるエレメントもmRNAの最適な合成のために必要であるかもしれない。これらのエレメントはシグナル配列、スプライスシグナル、さらには転写プロモーター、エンハンサー、及び終結シグナルを含み得る。幾つかの実施態様において、クローンされた可変領域遺伝子は、上で考察されるように合成された重鎖及び軽鎖定常領域遺伝子(例えばヒト遺伝子)とともに発現ベクター中に挿入される。
【0219】
他の実施態様において、本明細書に記載される結合ポリペプチドは、ポリシストロニック構築物を使用して発現され得る。このような発現系において、抗体の重鎖及び軽鎖のような目的の複数の遺伝子産物が、単一のポリシストロニック構築物から産生され得る。これらの系は配列内リボソーム進入部位(IRES)を有利に使用して、比較的高いレベルのポリペプチドを真核生物宿主細胞において生じる。適合するIRES配列は米国特許第6,193,980号(これは参照により本明細書に加入される)に開示される。当業者には当然のことながら、このような発現系を使用して、本出願に開示される全種類のポリペプチドを効率的に製造し得る。
【0220】
より一般的に、本開示の結合ポリペプチドをコードするベクター又はDNA配列が製造されると、発現ベクターは適切な宿主細胞中に導入され得る。すなわち、宿主細胞が形質転換され得る。宿主細胞へのプラスミドの導入は、当業者に周知の様々な技術により達成され得る。これらとしては、限定されないが、トランスフェクション(電気泳動及び電気穿孔を含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープDNAを用いた細胞融合、マイクロインジェクション、及びインタクトなウイルスを用いた感染が挙げられる。例えば、Ridgway、A.A.G.「Mammalian Expression Vectors」Chapter 24.2、pp.470-472 Vectors、Rodriguez and Denhardt、Eds.(Butterworths、Boston、MA 1988)を参照のこと。形質転換された細胞を、軽鎖及び重鎖の産生のために適した条件下で増殖させ、そして重鎖及び/又は軽鎖タンパク質合成についてアッセイする。例となるアッセイ技術としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は蛍光活性化セルソーター分析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0221】
本明細書において使用される用語「形質転換」は、遺伝子型を変化させ、結果としてレシピエント細胞における変化を生じる、DNAのレシピエント宿主細胞への導入を指すために広義で使用されるものとする。
【0222】
同じように、「宿主細胞」は、組み換えDNA技術を使用して構築され、そして少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターを用いて形質転換された細胞を指す。組み換え宿主からのポリペプチドの単離のためのプロセスの記載において、用語「細胞」及び「細胞培養物」は、別に明確に特定されていなければ、抗体の供給源を示すために交換可能に使用される。換言すると、「細胞」からのポリペプチドの回収は、遠心分離された全細胞から、又は培地及び懸濁した細胞の両方を含有する細胞培養物のいずれかからを意味し得る。
【0223】
一実施態様において、結合ポリペプチドの発現のために使用される宿主細胞株は、真核生物起源又は原核生物起源のものである。一実施態様において、結合ポリペプチドの発現のために使用される宿主細胞株は、細菌起源のものである。一実施態様において、結合ポリペプチドの発現のために使用される宿主細胞株は哺乳動物起源のものである;当業者は、そこで発現させようとする所望の遺伝子産物に最も適した特定の宿主細胞株を決定することができる。例となる宿主細胞株としては、限定されないが、DG44及びDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣系統、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓系統)、COS(SV40 T抗原を有するCVI由来細胞)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞) BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、BFA-1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、293(ヒト腎臓)が挙げられる。一実施態様において、細胞株は、それらから発現された抗体の変更されたグリコシル化、例えば、フコース欠損(afucosylation)(例えば、PER.C6.RTM.(Crucell)又はFUT8-ノックアウトCHO細胞株(POTELLIGENTTM細胞)(Biowa、Princeton、NJ))をもたらす。一実施態様において、NS0細胞が使用され得る。宿主細胞株は、典型的には商業サービス、American
Tissue Culture Collection又は公開された文献から入手可能である。
【0224】
インビトロ製造は、大量の所望の結合ポリペプチドを得るためのスケールアップを可能にする。組織培養条件下での哺乳動物細胞培養のための技術は当該分野で公知であり、そして例えば、エアリフトリアクター若しくは連続撹拌リアクター中の均一懸濁培養、又は例えば、中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズ若しくはセラミックカートリッジにおいて固定若しくは捕捉された細胞培養が挙げられる。必要な場合及び/又は所望される場合、ポリペプチドの溶液は、慣用のクロマトグラフィー方法、例えばゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-セルロース上でのクロマトグラフィー及び/又は(イムノ-)アフィニティークロマトグラフィーにより精製され得る。
【0225】
結合ポリペプチドをコードする1つ又はそれ上の遺伝子はまた、細菌又は酵母又は植物細胞のような非哺乳動物細胞において発現され得る。これに関して、当然のことながら、細菌のような様々な単細胞非哺乳動物微生物も形質転換され得る;すなわち、培養又は発酵で増殖することができる。形質転換を受けやすい細菌としては、大腸菌(Escherichia coli)又はサルモネラ(Salmonella)の系統のような腸内細菌科;枯草菌(Bacillus subtilis)のようなバチルス科;肺炎球菌(Pneumococcus);連鎖球菌(Streptococcus)、及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のメンバーが挙げられる。さらに当然のことながら、細菌において発現される場合、ポリペプチドは封入体の一部になり得る。ポリペプチドは、単離され、精製され、次いで機能性分子中に組み立てられなければならない。
【0226】
原核生物に加えて、真核微生物も使用され得る。サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、又は一般的にパン酵母は、真核微生物の中で最も広く使用されるが、多数の他の系統が一般に利用可能である。酵母類における発現のために、例えばプラスミドYRp7(Stinchcomb et al.、Nature、282:39 (1979);Kingsman et al.、Gene、7:141 (1979);Tschemper et al.、Gene、10:157 (1980))が一般的に使用される。このプラスミドはTRP1遺伝子を既に含有しており、これが例えばトリプトファンにおける増殖する能力を欠いた酵母の変異株のための選択マーカーをもたらす、ATCC番号44076又はPEP4-1(Jones、Genetics、85:12 (1977))。次いで酵母宿主細胞ゲノムの特徴と
してのtrpl損傷は、トリプトファンの存在しない場合の増殖により形質転換を検出するために有効な環境を提供する。
【0227】
処置方法
一局面において、本発明は、有効量の本明細書に開示される結合ポリペプチドを投与することを含む、それを必要とする患者を処置又は診断する方法を提供する。特定の実施態様において、本開示は、このような処置における哺乳動物被験体における障害、例えば、腫瘍性障害の診断及び/又は処置のためのキット及び方法を提供する。特定の例となる実施態様において、被験体はヒトである。
【0228】
本開示の結合ポリペプチドは、多数の様々な適用において有用である。例えば、一実施態様において、主題の結合ポリペプチドは、結合ポリペプチドの結合ドメインにより認識されるエピトープを保有する細胞を減少させるか又は除去するために有用である。別の実施態様において、主題の結合ポリペプチドは、循環中の可溶性抗原の濃度を低減するか又は可溶性抗原を除去する際に有効である。別の実施態様において、主題の結合ポリペプチドはT-細胞エンゲイジャー(engagers)である。一実施態様において、結合ポリペプチドは、腫瘍サイズを低減し得、腫瘍成長を阻害し得、かつ/又は腫瘍保有動物の生存期間を延長し得る。従って、本開示はまた、ヒト又は他の動物において、有効非毒性量の改変された抗体を上記ヒト又は他の動物に投与することにより腫瘍を処置する方法に関する。
【0229】
一実施態様において、主題の結合ポリペプチドは疾患又は障害の処置のために有用である。例えば、主題の結合ポリペプチドは、抗体関連障害、又は抗体応答性障害、状態若しくは疾患の処置のために有用である。本明細書で使用される用語「抗体関連障害」又は「抗体応答性障害」又は[状態」又は「疾患」は、本開示の抗体又は結合ポリペプチドを含む医薬組成物の投与により寛解され得る疾患又は障害を指すか又は記載する。
【0230】
一実施態様において、主題の結合ポリペプチドは癌の処置のために有用である。本明細書で使用される用語「癌」又は「癌性」は、典型的に未制御の細胞増殖により特徴づけられる生理的状態を指す。癌の例としては、限定されないが、細胞腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫(脂肪肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍、中皮腫、シュワン細胞腫、髄膜腫、腺癌、黒色腫、及び白血病又はリンパ系腫瘍が挙げられる。上記癌のより特定の例としては、有棘細胞癌(例えば、上皮有棘細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃(gastric)癌又は胃(stomach)癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)癌又は腎(renal)癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、精巣癌、食道癌、胆道の腫瘍、さらには頭頸部癌が挙げられる。
【0231】
別の実施態様において、主題の結合ポリペプチドは、他の障害の処置に有用であり、これらとしては、限定されないが、感染性疾患、自己免疫障害、炎症性障害、肺疾患、神経又は神経変性疾患、肝臓疾患、脊椎の疾患、子宮の疾患、抑うつ障害及び同様のものが挙げられる。感染性疾患の非限定的な例としては、RNAウイルス(例えば、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザ)、パラミクソウイルス(例えば、呼吸器多核体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)、コロナウイルス、アルファウイルス(例えば、チクングニアウイルス) レンチウイルス(例えば、HIV)及び同様のもの)又はDNAウイルスにより引き起こされるものが挙げられる。感染性疾患の例としてはまた、限定することなく、例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、腸球菌(Enteroc
occus)、連鎖球菌(Streptococcus)、大腸菌(Escherichia coli)により引き起こされる細菌性感染症、及び例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)により引き起こされるものを含む他の感染性疾患が挙げられる。他の感染性疾患としては、限定することなく、マラリア、SARS、黄熱病、ライム病、リーシュマニア症、炭疽病及び髄膜炎が挙げられる。例となる自己免疫障害としては、限定されないが、乾癬、関節リウマチ、シェーグレン症候群、移植片拒絶、グレーブス病、重症筋無力症及びループス(例えば、全身性エリテマトーデス)が挙げられる。従って、本開示は、例えば、増強された半減期を有する主題の結合ポリペプチドの使用から利益を受けるであろう様々な状態を処置する方法に関する。
【0232】
当業者は、慣用の実験により、悪性病変を処置する目的のためになるであろう改変された結合ポリペプチドの有効非毒性量を決定することができる。例えば、本開示の結合ポリペプチドの治療活性量は、被験体の病期(例えば、ステージI対ステージIV)、年齢、性別、医学的合併症(例えば、免疫抑制状態又は疾患)及び体重、並びに被験体において改変された抗体が所望の応答を惹起する能力にような因子に従って変化し得る。投薬レジメンは、最適な治療応答を生じるように調整され得る。例えば、いくつかに分けられた用量が毎日投与されてもよく、又は治療状況の緊急事態により示されるにつれて比例的に用量を低減してもよい。
【0233】
一般に、本開示において提供される組成物は、いずれかの新生物を予防的又は治療的に処置するために使用され得、改変された抗体により癌性細胞を標的化することを可能にする抗原性マーカーを含む。
【0234】
医薬組成物及びその投与
本開示の結合ポリペプチドを製造しそして被験体に投与する方法は、当業者に周知であるか又は容易に決定される。本開示の結合ポリペプチドの投与経路は、経口、非経口、吸入又は局所によるものであり得る。本明細書で使用される用語非経口としては、静脈内、動脈内、腹腔内、筋内、皮下、直腸又は膣投与が挙げられる。全てのこれらの投与形態は、本開示の範囲内であると明確に検討されるが、投与形態は、注射用液剤、特に静脈内若しくは動脈内注射又は点滴用だろう。通常は、注射に適した医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸、リン酸又はクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、場合により安定剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含み得る。いくつかの実施態様において、結合ポリペプチドは、有害な細胞集団の部位に直接送達され得、それにより患部組織の治療剤への曝露を増加させる。
【0235】
非経口投与のための製剤としては、滅菌水性又は非水性液剤、懸濁剤、及び乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能有機エステル類、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は、生理食塩水及び緩衝化媒体を含めて、水、アルコール性/水溶液、エマルション又は懸濁液を含む。本開示の組成物及び方法において、薬学的に許容しうる担体としては、限定されないが、0.01~0.1M、例えば、0.05Mリン酸緩衝液、又は0.8%食塩水が挙げられる。他の一般的な日経口ビヒクルとしては、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、又は固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、体液及び栄養補給剤、電解質補給剤、例えば、リンゲルデキストロースに基づくもの、及び同様のものが挙げられる。保存料並びに例えば、抗菌薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどのような他の添加剤も存在していてもよい。より詳細には、注射可能用途に適した医薬組成物としては、滅菌水性液剤(水溶性の場合)又は分散液、及び滅菌注射可能液剤又は分散剤の即時調製のための滅菌散剤が挙げられる。このような場合、組成物は無菌でなければならず、そして容易な注射可能性(syringability)が存在する程度まで流動性であるべきである
。これは製造及び貯蔵の条件下で安定であるべきであり、そして典型的には細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して守られる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール、及び同様のもの)を含有する溶媒又は分散媒体、及びそれらの適切な混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散の場合には必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持され得る。
【0236】
微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール及び同様のものにより達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムが組成物中に含まれる。吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含めることにより、注射可能組成物の延長された吸収が起こり得る。
【0237】
いずれの場合にも、滅菌注射可能液剤は、必要量の活性化合物(例えば、それ自体、又は他の活性薬剤と組み合わせた改変された結合ポリペプチド)を、本明細書において列挙された成分のうちの1つ又は組み合わせとともに適切な溶媒中に組み込み、続いて滅菌濾過することにより製造され得る。一般に、分散剤は、活性化合物を滅菌ビヒクルに組み込むことにより製造され、これは基本の分散媒体及び上で列挙したものからの必要な他の成分を含有する。滅菌注射可能液剤の調製のための滅菌散剤の場合、例となる製造方法としては真空乾燥及び凍結乾燥が挙げられ、これにより、前もって滅菌濾過したその溶液からの活性成分といずれかのさらなる所望の成分との粉末が得られる。注射のための製剤は、当該分野公知の方法に従って、加工され、アンプル、バッグ、瓶、シリンジ又はバイアルのような容器中に充填され、そして無菌条件下で密封される。さらに、製剤はパッケージングされてキットの形態で販売され得る。このような製品は、典型的には、付随する組成物が、自己免疫若しくは腫瘍性障害に罹患しているか又は自己免疫若しくは腫瘍性障害にかかりやすい被験体を処置するために有用であるということを示すラベル又は添付文書を有する。
【0238】
上記の状態の処置ための本開示の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理状態、患者がヒトであるか動物であるか、他の投与される薬物、及び処置が予防的であるか治療的であるかを含む多くの様々な因子に依存して変動する。通常は、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も処置され得る。処置投薬量は、安全性及び有効性を最適化するために当業者の公知の慣用の方法を使用して滴定され得る。
【0239】
本開示の結合ポリペプチドは多くの場合に投与され得る。単回投薬間の間隔は、毎週、毎月又は毎年であり得る。間隔は、患者における改変された結合ポリペプチド又は抗原の血中レベルを測定することにより示されるにつれて不規則でもよい。いくつかの方法では、投薬量は、改変された結合ポリペプチドの血漿濃度約1~1000μg/ml、そしていくつかの方法では約25~300μg/mlを達成するように調整される。あるいは、結合ポリペプチドは徐放製剤として投与され得、この場合、必要とされる投与頻度はより低い。抗体について、投薬量及び頻度は患者における抗体の半減期に依存して変わる。一般に、ヒト化抗体は最も長い半減期を示し、キメラ抗体及び非ヒト抗体がこれに続く。
【0240】
投薬量及び投与頻度は、処置が予防的か又は治療的かによって変わり得る。予防的適用において、本抗体を含有する組成物又はそのカクテルは、患者の抵抗性を増強するためにまだ疾患状態ではない患者に投与される。このような量は、「予防有効用量」と定義される。この使用において、正確な量は、この場合もやはり患者の健康状態及び全身の免疫に依存するが、一般に、用量あたり約0.1~約25mg、特に用量あたり約0.5~約2
.5mgの範囲に及ぶ。比較的低い投薬量が、比較的低頻度の間隔で長期間にわたって投与される。一部の患者は彼らの寿命の残りの間処置を受け続ける。治療適用において、比較的高い投薬量(例えば、用量あたり抗体約1~400mg/kg、放射性免疫複合体については約5~25mgの投薬量、そして細胞毒-薬物改変抗体についてはより高い用量がより一般的に使用される)が比較的短い間隔で、疾患の進行が減少するか若しくは終結するまで、又は患者が疾患症状の部分的若しくは完全な寛解を示すまで、必要とされることもある。その後、患者は予防的レジメンを投与され得る。
【0241】
本開示の結合ポリペプチドは、処置(例えば、予防的又は治療的)を必要とする障害又は状態を処置する際に有効である他の薬剤と組み合わせて場合により投与され得る。90Y-標識された本開示の改変抗体の有効な単回処置投薬量(すなわち、治療有効量)は、約5と約75mCiとの間、例えば約10と約40mCiとの間である。131I-改変抗体
の有効単回処置非骨髄除去的(non-marrow ablative)投薬量は、約5と約70mCiとの間、又は約5と約40mCiとの間範囲に及ぶ。131I-標識抗体
の有効単回処置除去的(ablative)投薬量(すなわち、自家骨髄移植を必要とし得る)は、約30と約600mCiとの間、例えば約50と約500mCiとの間に及ぶ。キメラ抗体と併せて、マウス抗体と比べてより長い循環半減期のために、ヨウ素-131標識キメラ抗体の有効単回処置非骨髄除去的投薬量は、約30mCi未満のような約5と約40mCiとの間の範囲に及ぶ。例えば、111In標識についての画像化基準は、典
型的には約5mCi未満である。
【0242】
結合ポリペプチドはすぐ上で記載されるように投与され得るが、他の実施態様では、結合ポリペプチドは別の方法で健常患者に第一選択治療として投与され得るということは強調されなければならない。このような実施態様において、結合ポリペプチドは、正常又は平均的赤色骨髄予備能(red marrow reserves)を有する患者及び/又は処置を受けたことがなく、かつ処置を受けていない患者に投与され得る。本明細書で使用される、補助治療と併せて又は組み合わせた改変された抗体又はイムノアドヘシンの投与は、治療及び開示される抗体の、順次的、同時の、同一の広がりを持つ、同時発生的な、併用の、又は同時期に起こる投与又は適用を意味する。当業者には当然のことながら、組み合わせた治療レジメンの様々な構成要素の投与又は適用は、処置の全体的な有効性を増強するために時間を調整され得る。
【0243】
以前に考察されるように、本開示の結合ポリペプチド、イムノアドヘシン又はそれらの組み合わせは、哺乳動物障害のインビボでの処置のために薬学的有効量で投与され得る。これに関して、当然のことながら、開示される結合ポリペプチドは、投与を容易にし、そして活性薬剤の安定性を促進するために製剤化される。
【0244】
本開示に従う医薬組成物は、生理食塩水、非毒性緩衝液、保存料などのような薬学的に許容しうる非毒性の無菌担体を含み得る。本出願の目的のために、治療剤に結合された又は結合されていない、薬学的有効量の結合ポリペプチド、イムノアドヘシン又はそれらの組み合わせは、抗原への有効な結合を達成するため、及び利益を達成するため、例えば疾患若しくは障害の症状を寛解させるため、又は物質若しくは細胞を検出するために、十分な量を意味すると考えられるものとする。腫瘍細胞の場合、改変された結合ポリペプチドは、腫瘍性又は免疫反応性の細胞上の免疫反応性抗原と相互作用し、そしてそれらの細胞の死滅を増加をもたらすことができる。当然ながら、本開示の医薬組成物は、改変された結合ポリペプチドの薬学的有効量を提供するために単回用量又は複数回用量で投与され得る。
【0245】
本開示の範囲に沿って、開示の結合ポリペプチドは、上述の処置方法に従って、治療効果又は予防効果を生じるために十分な量でヒト又は他の動物に投与され得る。本開示の結
合ポリペプチドは、このようなヒト又は他の動物に、本開示の抗体を従来の薬学的に許容しうる担体又は希釈剤と公知の技術に従って混合することにより製造された従来の投薬形態で投与され得る。薬学的に許容しうる担体又は希釈剤の形態及び特徴が、混合しようとする活性成分の量、投与経路及び補完お周知の変数により決定されるということは当業者により認識されるだろう。さらに当業者には当然のことながら、本開示に記載される結合ポリペプチドの1種又はそれ以上を含むカクテルが特に有効であることが判明し得る。
【0246】
本明細書において言及されるか又は引用される論文、特許、及び特許出願、並びに全ての他の書類及び電子的に利用可能な情報の内容は、各個々の刊行物が具体的かつ個別に参照により加入されると示されるの同じ程度まで、それら全体として参照により本明細書に加入される。出願人らは、いずれかのこのような論文、特許、特許出願、又は他の物理的及び電子的書類からのいずれか及び全ての材料及び情報を本出願に物理的に組み込む権利を有する。
【0247】
本発明はその特定の実施態様を参照して記載されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が為され得、そして等価物が置き換えられ得るということが当業者により理解されるべきである。本明細書に記載される方法の他の適切な改変及び適合が、本明細書に開示される実施態様の範囲から逸脱することなく適切な等価物を使用して為され得るということが当業者に明らかとなるだろう。さらに、多くの改変が、特定の状況、材料、物質の組成物、方法、工程段階を、本発明の目的、精神及び範囲に適合させるために為され得る。全てのこのような改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲内であることが意図される。特定の実施態様を詳細に記載してきたが、これらは以下の実施例を参照することによりより明確に理解され、これら実施例は、説明の目的のみのために含まれ、かつ限定することを意図されない。
【実施例0248】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明され、これらはさらなる限定と解釈されるべきではない。
【0249】
実施例1:材料及び方法
タンパク質試薬:
以下のタンパク質を発現させて単離した:C末端8xヒスチジンタグを有する抗原;rFcRn (UniProt:P1359、p51サブユニット:残基23~298;UniProt:P07151、β2-m:残基21~119);ビオチン化カニクイザルFcRn (UniProt:Q8SPV9、p51サブユニット:C末端Avi-タグを有する残基24~297;UniProt:Q8SPW0、β2-m:残基21~119);ビオチン化hFcRn(UniProt:P55899、p51サブユニット:C末端Avi-タグを有する残基24~297;UniProt:P61769、β2-m:残基21~119);ヒトCD16a(UniProt:P08637、FcγRIIIa:C末端HPC4タグ及び位置158のバリン(V158)を有する残基17~208)。H435A及びH310A/H435Q重鎖変異体をHEK293条件培地から得た。mAb2変異体をEvitriaによりクローンし、そして懸濁液CHO K1条件培地からmAbSelect SuRe アフィニティーカラム(GE Healthcare)を使用して精製し、その後の実験のために緩衝液をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)pH7.4に交換した。
【0250】
飽和ライブラリー構築:
リーダーDNA配列を有するWT IgG1 mAb1抗体重鎖及び軽鎖を、それぞれpBH6414及びpBH6368哺乳動物発現プラスミドにNcoI及びHindIII制限酵素部位を使用して組み込んだ。飽和ライブラリーを、Lightning部位特
異的変異誘発キット(Agilent)及びNNK(N=A/C/G/T、K=G/T)及びWWC(W=A/T)プライマー(IDT Technologies)を用いて作製して、全ての可能なアミノ酸を以下の位置に導入した:M252、I253、S254、T256、K288、T307、K322、E380、L432、N434及びY436(EUナンバリング)。mAb1骨格における3つの対照変異体の重鎖DNA配列、AAA(T307A/E380A/N434A)、LS(M428L/N434S)及びYTE(M252Y/S254T/T256E)を、LakePharmaによるpBH6414ベクターに構築した。
【0251】
組み合わせ飽和ライブラリーを、mAb1重鎖の部位特異的変異誘発によりQ5変異誘発キット(NEBiolabs)並びにT256D、T256E、T307Q、T307W、N434F及びN434Yプライマーを用いてWT及びM252YテンプレートをPCR反応で用いて得た。Ab3骨格への変異組み込みを、Q5変異誘発キット(NEBiolabs)を使用してM252Y、T256D、T307Q及びT307Wプライマーを用いて行った。全てのFc変異体の作製を、Sanger配列決定(Genewiz、Inc.)により確認した。
【0252】
組み換え抗体発現及び精製:
条件培地スクリーニングのために、mAb1の変異重鎖及び野生型軽鎖を含有するDNAを、発現のためのExpi293哺乳動物細胞(Invitrogen)1mLに製造者の指示書に従ってトランスフェクトした。細胞を37℃、5%二酸化炭素及び湿度80%で毎分900回転(RPM)で振盪しながら2mL 96ウェルプレート(Greiner Bio-One)において通気膜で密封してインキュベートした。条件培地をトランスフェクションの5日後に集め、そして使用するまで-80℃で保存した。mAb1及びAb3骨格におけるリード変異体を、30mLスケールで0.2μm通気キャップ(Corning)を備えた125mLのフラスコで発現させた。125mL培養フラスコを発現期間全体の間125RPMで振盪した。条件培地をトランスフェクションの5日後に集め、そして0.22μm、50mLコニカルフィルター(Corning)に通して濾過し、そして4℃で精製まで保存した。
【0253】
mAb1及びAb3の単離を、1mL mAbSelect SuRe HiTrapカラム(GE Healthcare)を使用して行った。PBS pH7.4の10カラム体積での洗浄工程の後、抗体を0.1Mクエン酸pH3.0(Sigma)5カラム体積で溶出し、そして1M tris塩基pH9.0(Sigma)0.5mLで中和した。溶出された抗体を、PBS pH7.4に緩衝液交換し、そして30kDa MWCO Amiconコンセントレーター(Millipore)を使用してその後の試験のために>1mg mL-1に濃縮した。精製した抗体の濃度を、280nmでのそれらのUV吸光度(UV280)から適切な吸光係数を用いて決定した。
【0254】
Octet条件培地スクリーニング及び分析:
mAb1変異体を含有する条件培地のスクリーニングを、Ni-NTAバイオセンサーを備えたOctet QK 384(PALL Life Sciences)で行った。Hisタグ化抗原を15μg mL-1で300秒間PBS、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)及び0.01% Tween-20(Sigma) pH7.4(PBST-BSA 7.4)中に捕捉し、続いて20秒PBST-BSA pH7.4で洗浄した。PBST-BSA pH7.4を用いて1:1希釈した条件培地において200秒間抗体を捕捉した。pH6.0緩衝液中での緩衝液洗浄工程の後に、FcRn結合カイネティクスを、200nM rFcRnを使用して、pH6.0でのそれぞれ150秒200秒の結合及び解離回数について得た。Octetスクリーニングの間の全ての工程において、温度は30℃であり、振盪速度は1000RPMであった。rFcRn結
合カイネティクスプロフィールを、FcRn結合フェーズの開始に対して補正し、Octet 7.1解析ソフトウェアを使用して1:1結合モデルにモデル化した。
【0255】
FcRn結合カイネティクス:
pH6.0及びpH7.4でのFcRn結合カイネティクスを、Biacore T200機器(GE Healthcare)を使用してFcRnの直接固定化又はビオチンCAPtureキット(GE Healthcare)のいずれかを用いて改変されたプロトコルを使用して測定した(例えば、Abdiche et al.、MAbs (2015) 7:331-343;Karlsson et al.、Anal.Biochem.(2016) 502:53-63を参照のこと)。直接固定化のために、ビオチン化FcRnを、濃度20μg mL-1で、180秒(s)間10μL 分-1で10mM酢酸ナトリウムpH4.5(GE Healthcare)中にて、C1センサーチップの表面上約20RUにアミンカップリング化学(GE Healthcare)を介して固定化した。ビオチンCAPtureキットを用いて、CAPture試薬をCAPチップ表面上に結合RU >2,000 RUまで捕捉し、続いて、0.1μg mL-1 FcRnを適切なチャネルにおいて24s 30uL分-1で最終結合RU 約2RUまで捕捉した。FcRn結合カイネティクス実験のためのランニングバッファは、0.05%界面活性剤P-20(PBS-P+、GE Healthcare)を含むPBS、pH6.0又は7.4であった。1000nM抗体からの4倍段階希釈の一連の濃度を、0nM対照を含めて各変異体について四連で行った。動力学的測定を、それぞれ180及び300秒の結合及び解離回数について流量10μL 分-1で得た。C1及びCAPセンサーチップを、それぞれ10mM四ホウ酸ナトリウム、1M NaCl pH8.5(GE Healthcare)を用いて30秒間50μL 分-1で、又は6Mグアニジン塩酸塩、250mM水酸化ナトリウム(GE Healthcare)を用いて120s 50uL分-1を用いて再生し、続いてさらに60~90秒間PBS-P+ pH6.0中での安定化工程を行った。pH7.4定常状態RU測定を、全ての変異体について1000nMで三連で、FcRnの捕捉レベルが両方の方法について10倍~20倍増加した事以外は、上記と同じC1又はCAPセンサーチップ及び動力学的パラメーターを使用して得た。
【0256】
pH6.0での濃度シリーズについての動力学的パラメーターを、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して、アビディティ効果により二価モデルにフィッティングした。例えば、Suzuki et al.、J.Immunol.(2010)184:1968-1976を参照のこと。各濃度シリーズを、独立してフィッティングして、平均結合及び解離速度並びに結合親和性を得た。見かけの結合親和性を二価モデルからの第一の結合及び解離速度から計算した。pH7.4での残留結合を、各抗体1000nMを応答比較と同時に三連で使用して測定した。各反復の定常状態応答を平均して、平均及び標準偏差を得た。
【0257】
FcRnアフィニティークロマトグラフィー:
一実施態様において、FcRnアフィニティーカラムを、Schlothauer et al.2013、mAbs 5:576-586から適合されたプロトコルから作製した。1mL Streptavidin HP HiTrapカラム(GE Healthcare)を、結合緩衝液(20mMリン酸ナトリウム(Sigma)pH7.4、150mM塩化ナトリウム(NaCl;Sigma))を1mL分-1で5カラム体積用いて平衡化し、続いてビオチン化cynoFcRnを4ミリグラム注入した。カラムを結合緩衝液で洗浄し、使用するまで4℃で保存した。
【0258】
FcRnアフィニティカラムを、低pH緩衝液(20mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES;Sigma)pH5.5;150 mM NaCl)を5カラ
ム体積用いて平衡化した後、各抗体300μgを注入した。抗体溶液のpHを、低pH緩衝液を用いてpH5.5に調整した。低pH緩衝液で10カラム体積洗浄した後、抗体を高pH緩衝液(20mM 1,3-ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン(ビストリスプロパン;Sigma) pH9.5;150mM NaCl)との線形pHグラジエントにより30カラム体積にわたって1mL分-1で1mLフラクションで溶出し、そしてUV280でモニタリングした。FcRnアフィニティカラムを、その後
の10カラム体積の低pH緩衝液でその後の実行のために又は結合緩衝液で貯蔵のために再平衡化した。全ての改変体を三連で行った。
【0259】
各変異体についてのFcRnアフィニティカラム溶出プロフィールを、Sigmaplot 11(Systat Software、Inc.)で等式1を使用して単一ガウシアン分布にモデル化し、UV
280極大での溶出体積を決定した。
【数2】
ここでx
0はUV
280ピーク極大での溶出体積であり、y
0はベースラインUV
280吸光度であり、そしてa及びbは分布の半値全幅に関連する。各フラクションのpHをCorning Pinnacle 540 pHメーターにより測定し、そして線形回帰を使用して溶出体積に対して補正した。
【0260】
別の実験において、FcRnアフィニティカラムを、1mLストレプトアビジンHP HiTrapカラム(GE Healthcare)でビオチン化hFcRnを用いてSchlothauer et al.2013、mAbs 5:576-586から適合させた。このカラムに、低pH緩衝液(20mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES;Sigma)pH5.5;150mM NaCl)中の各抗体300ugをAKTA Pure System (AKTA)で注入した。低及び高pH緩衝液(20mM 1,3-ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン(ビストリスプロパン;Sigma) pH9.5;150mM NaCl)を用いて生成された線形pHグラジエントにより30カラム体積にわたって0.5mL分-1で、吸光度及びpHをモニタリングして抗体を溶出した。その後の実行のためにカラムを低pH緩衝液で再平衡化した。全ての変異体を三連で行った。FcRnアフィニティーカラム溶出プロフィールを、Sigmaplot 11 (Systat Software、Inc.)で単一ガウシアン分布にフィッティングして、UV280極大からの溶出体積pHを決定した
。
【0261】
示差走査蛍光定量法:
示差走査蛍光定量法(DSF)実験を、BioRad CFX96実時間系サーマルサイクラー(BioRad)で20μL反応で行った。抗体サンプル及びSypro Orange色素(Invitrogen)の5000xストックをPBS pH7.4でそれぞれ0.4mg mL-1及び10xに希釈した。抗体及びSypro Orangeを1:1比で96ウェルPCRプレートにて混合し、そして接着性microseal(BioRad)で密封して、各抗体の最終濃度を0.2mg mL-1及び5x Sypro
Orange色素にした。全ての抗体変異体を三連で行った。サーマルサイクラープログラムは、20℃での2分の平衡化工程、続いて一定一定の温度勾配0.5℃/5秒で最終温度100℃からなるものであった。各ウェルの蛍光測定を、Sypro orange蛍光に適したFAM励起波長(485nm)及びROX発光(625nm)検出器を使用して得た(例えば、Biggar et al.2012、Biotechniques 53:231-238を参照のこと)。DSF蛍光強度プロフィール及び一次導関数をBioRad CFX Managerからエクスポートし、そしてSigmaplo
t 11で解析した。Tmは蛍光強度プロフィールにおける第一の遷移の中点として定義
された。
【0262】
FcγRIIIa結合カイネティクス:
結合カイネティクス及び親和性を、Biacore T200機器(GE Healthcare)を使用して測定した(Zhou et al.2008 Biotechnol.Bioeng.99:652-665)。アセテートpH4.5中50μg mL-1の抗HPC4抗体(Roche)を、CM5センサーチップの表面に600秒間 10μl分-1でアミン化学を用いてカップリングして最終密度>20,000RUとした。FcγRIIIa結合カイネティクス実験のためのランニングバッファは、0.05%界面活性剤P-20(HBS-P+、GE Healthcare)及び2mM塩化カルシウム(CaCl2、Fluka)を含むHEPES緩衝化食塩水pH7.4であった。各速
度論的追跡を、1.25μg mL-1 HPC4タグ化FcγRIIIa-V158の捕捉から30秒間5μl分-1で開始した。各変異体300nMでの結合及び解離カイネティクスを、各変異体について120~180秒間各工程について5μl分-1で測定した。動力学的測定が完了すると、CM5チップを、10mM EDTA(Ambion)を追加したHBS-P+緩衝液で再生した。次の動力学的測定の前に、CM5チップを120秒間CaCl2を含むHBS-P+で洗浄した。
【0263】
一実験において、FcγRIIIa動力学的実験を、FcRn結合について記載した方法と同様の方法でpH7.4で分析した。WT、ベンチマーク、リード単一及び組み合わせ変異体について、1000nMからの一連の3倍段階希釈でカイネティクスを得て、FcγRIIIaに対する結合親和性を決定した。各濃度及び反復での定常状態RUを決定し、抗体濃度の関数としてプロットし、そして等式2に示されるように定常状態モデルに対してフィッティングした。
【数3】
ここでオフセットは0nM抗体でのベースラインRUであり、R
maxは高抗体濃度でのプ
ラトーRUであり、[抗体]は抗体の濃度であり、そしてK
D,appは変異体とFcγRI
IIaとの間の相互作用の見かけの結合親和性である。
【0264】
別の実験において、FcγRIIIa速度実験を、pH7.4でのFcRn結合について記載される方法と同様の方法で平均定常状態結合応答を使用して分析した。全ての変異体について、300nM抗体の定常状態RUを三連で決定して平均した。WTと比較した応答変化の倍率変化(応答倍率変化)を、各骨格における変異体間の比較のために決定した。
【0265】
等電点電気泳動
リード変異体の等電点(pI)を、Maurice C(Protein Simple)でのキャピラリー電気泳動を使用して決定した。各200μLサンプルは、0.35%メチルセルロース(Protein Simple)、4%pharmalyte3-10(GE Healthcare)、10mMアルギニン(Protein Simple)、0.2mg mL-1抗体並びに4.05及び9.99 pIマーカー(Protein Simple)を含有していた。サンプルをキャピラリー中に1分間1500Vでロードし、続いて6分間3000Vの分離フェーズ、そしてトリプトファン蛍光を使用してモニタリングした。各変異体についてpIをMaurice Cソフトウェアを使用して決定し、そして主要な種についての蛍光極大におけるpHと定義した。
【0266】
均一ブリッジングリウマトイド因子(RF)ELISA
抗体をビオチン化し、そしてEZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin及びMix-n-StainTMジゴキシゲニン抗体標識キット(Biotium)を使用して製造者の指示書に従ってジゴキシゲン(digoxigen)標識した。ビオチン化されかつジゴキシゲニン標識された抗体4μg mL-1を含有するストック溶液を各変異体について製造し、そして1:1の比で300U/mL RF(Abcam)と混合した。室温で20時間インキュベートした後、各抗体-RF混合物100μLをStreptawellプレート(Sigma-Aldrich)に加え、そして室温で2時間インキュベートした。0.05% Tween-20を含むPBS pH7.4で3回プレートを洗浄し、HRP結合抗ジゴキシゲニン二次抗体(Abcam)の1:2000希釈100μLを各ウェルに加えた。2時間室温でインキュベートした後、ウェルを洗浄し、そしてTMB基質(Abcam)100μLで15分間室温にて処理した。停止溶液(Abcam)100μLを用いて反応を停止させ、そして吸光度を450nmでSpectraMaxプレートリーダー測定した。抗体-RF混合物を含まないウェルはブランク減算を提供し、そして実験を3回繰り返した。P値をスチューデントt検定を使用して決定した。
【0267】
インビボ薬物動態
薬物動態研究をカニクイザル及びhFcRnトランスジェニックマウス(Tg32系統、Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)で行なった。サル研究において、mAb2骨格におけるWT、LS、DQ、DW及びYD変異体を単一静脈内用量2.5mg/kgとして腕頭静脈中に用量1.5mL/kgで、3匹の未処置の雄性カニクイザルに投与した。血液サンプル(0.5mL)を伏在静脈の静脈穿刺により投薬の:0.0035、0.17、1、3、7、14、21及び28日後に8回サンプリングして集めた。集めたら、血液サンプルを4℃で10分間1500gで遠心分離し、そして-80℃で保存した。
【0268】
hFcRnマウスにおいて、抗体変異体を、単回静脈内用量2.5mg/kgとして尾静脈中に用量体積5ml/kgで投与した。各時点において、血液20μlを伏在静脈から充填済みヘパリンキャピラリーを使用して集めた。集めた血液サンプルをマイクロチューブに移し、そして1500gで10分間4℃にて遠心分離した。血漿サンプルを集め、各時点についてプールし(6マウス/サンプル)、そして分析前に-80℃で保存した。
【0269】
全てのインビボ研究は、Sanofi研究機関動物管理基本方針を遵守して行われた。サル及びマウス研究は、仏国「Ministere de l’Enseignemen
t Superieur et de la Recherche」及び独国「Regierungspraesidium Darmstadt」により承認された。
各時点での各mAb2変異体の濃度を、ボトムアップ(bottom-up)LC-MS/MSアッセイにより決定した。血漿アリコートの沈殿後に、血漿ペレットをタンパク質変性、還元、アルキル化、トリプシン消化及び固相抽出にかけた後に代替ペプチドを分析した。較正標準を、mAb2変異体を血漿中に1.00、2.00、5.00、10.0、20.0、50.0、100、200及び400μg mL-1で添加することにより調製した。ペプチド分離を、Waters Acquity UPLCシステムで逆相XBridge BEH C18カラム(2.1x150mm、3.5μM、300Å、Waters)を用いて流量300μL分-1で水中0.1%ギ酸及びアセトニトリル中0.1%ギ酸の段階的グラジエントで行った。検出のために、Sciex API5500質量分析計をポジティブイオンモードでソース温度700℃、イオンスプレー電圧5500V、カーテン及びネブライザーガス40及びコリジョンガスmidで使用した。データ取り込み時間(dwell times)は20msであり、そしてエントランス電位は各トランジションについて10Vであった。mAb2骨格の2つの独特の代替ペプチドについ
ての複数の反応モニタリングトランジションを、標準及び対照と比較してAnalystソフトウェアのMQIII統合アルゴリズムからのピーク面積を使用して濃度決定に使用して。クリアランス速度及び血清半減期を、Phoenixソフトウェア(Certara)を使用して時間の関数としての抗体濃度の非コンパートメントモデルから得た。いずれの理論にも束縛されないが、標的媒介薬物動態(target-mediated drug disposition)(TMDD)及び/又は抗薬物抗体(ADA)干渉が推測されるため、濃度の急な減少を示す全ての時点を平均血漿濃度から除外した。
【0270】
実施例2:条件培地における飽和点変異のOctetスクリーニング
FcRnは、Fc受容体の大部分に共通している、MHCクラス-I様α-ドメイン及びβ2-マクログロブリン(β2-m)サブユニットのヘテロダイマー(
図1A)であり、そして抗体Fc重鎖上の領域は、他のFcγRと明らかに異なる(例えば、Oganesyan et al.2014 J.Biol.Chem.289:7812-7824;及びShields et al.2001前出を参照のこと)。
【0271】
WT抗体より遅いFcRn解離速度を有する変異体を同定するために、バイオレイヤー干渉法(biolayer interferometry)(BLI)ベースのアッセイを、条件培地中の抗体変異体をハイスループット様式でスクリーニングするために設計した(
図2A)。このアッセイは、WT抗体と比較して、pH6.0でFcRnに対する親和性を増強する(AAA、LS及びYTE)か又は減少する(H435A、H310A/H435Q)いくつかのベンチマーク変異体を使用して開発された。NiNTAバイオセンサーはhisタグ化抗原を捕捉し、続いて各抗体変異体をpH7.4で捕捉して条件培地を模倣する(
図2A)。約25倍遅いヒトIgG1からの解離速度を有し、そしてヒトFcRn(hFcRn)よりもOctet研究に適しているラットFcRn(rFcRn)へのpH6.0でに結合カイネティクスを、6つの変異体の各々について測定した(
図2B)。H435A(
図2B、長い一点鎖線)及びH310A/H435Q(
図2B、長い二点鎖線)変異体は、FcRn結合カイネティクスをほとんど示さないか又は全く示さなかった(例えば、Shieldsら2001年、前出;Medesanら、1997年、前出;及びRaghavanら、1995年、前出も参照のこと)。AAA(
図2B、短い破線)、LS(
図2B、短い一点鎖線)及びYTE(
図2B、長い破線)変異体は全て、WT(
図2B、実線)と比較してより遅い解離速度を示し、2~7.3分の1の間のFcRn解離速度に減少した。これは、Octetスクリーニングが、摂動を受けたrFcRn解離カイネティクスを有する変異体を区別するために適しているということを実証した。
【0272】
IgG1抗体、mAb1は、減少したFcRn解離速度を有する変異体をスクリーニングするための飽和変異誘発ライブラリーを作製するためのモデル系として役立った。mAb1のFc領域の11の位置を、それらのFcRn境界部に近いこと又は直接的寄与に基づいて選択した(
図1A及び1B)(例えば、Oganesyanら、2014年、前出;及びShieldsら2001年、前出)。これらの位置での全ての点変異は、部位特異的変異誘発を使用して構築され、そして発現のためにExpi293細胞でトランスフェクトされた。条件培地スクリーニングを、飽和ライブラリー変異体のために上記のように行った。変異体のサブセットについての正規化されたFcRn結合Octetセンサーグラムを
図2C(長い破線)に野生型(
図2C、太い長い破線)及び偽のネガティブコントロール(
図2C、点線)とともに示す。偽物は観察可能なFcRn結合を示さなかった。速度プロフィールにおいてシグナル変化をほとんど示さないか又は全く示さなかったので、いくつかの変異体はrFcRnの結合を明らかに破壊していた(
図2C、長い破線、点線下に位置する(偽))。改善されたFcRn解離速度を有する変異体についてのカットオフを、WT抗体の平均よりも低い3つの標準偏差として定義した。
図2Cに示される変異のサブセットにおいて、2つ(
図2C、実線)は野生型抗体と比較して解離速度を有
意に減少した(
図2C、太い長い破線)が、残りの変異体は、同様の(
図2C、短い一点鎖線)又はより速い(
図2C、点線上の長い破線(偽))rFcRn解離速度を有していた。
【0273】
単一点変異の全てについてのrFcRn解離速度を
図2D及び
図14に点及び変異ごとに示す。
図14において、データは野生型と比較したrFcRn解離速度の倍数変化に依存して4つのカテゴリーのうちの1つに分類され、そして野生型種は黒い四角で示される。
【0274】
図14において、飽和ライブラリーの11の位置における全ての可能な置換についてrFcRn解離速度の倍率変化を、WT抗体の平均に対して正規化し、そしてカラーコード化した。全ての変異体は4つのカテゴリーのうちの1つに分類される:結合ほとんど無しから全く無し(暗い灰色)、より速いrFcRn解離速度(灰色)、WT様rFcRn解離速度(水平線)及びより遅いrFcRn解離速度(グリッド)。複数の変異体が、WT抗体よりも遅いrFcRn解離速度を有していた(グリッド)。
【0275】
図14において暗い灰色の変異体は、偽物と同様の様式でrFcRnへの結合をほとんど示さないか又はは全く示さず(
図2C、点線)、そしてM252、I253及びS254ループに局在していた。I253での唯一の変異はメチオニン及びバリンであり、そして両方ともrFcRn解離速度を有意に増加させ、さらにFcRn相互作用に対するI253の重要性を支持する。別の120の変異体(
図2D及び
図14、明るい灰色四角)は、各C
H2及びC
H3ドメインに位置するrFcRnと相互作用を約50%不安定化した。25の変異体はWT様解離速度を有しており(
図2D及び
図14、白色四角)。11の位置のうちの8つは、少なくとも1つのWT様変異を有している(
図14、白色四角)。以下の変異は、野生型と比較して有意に減少したrFcRn解離速度を有していた(
図2D及び
図14、黒色四角):M252Y、T256D/E、K288D/N、T307A/E/F/M/Q/W、E380C、N434F/P/Y及びY436H/N/W。M252Y、N434F及びN434Y変異は、WT抗体の2分の1の速度より大きい解離速度を有していた(
図2D)。これらの変異を発現させ、そしてさらなるインビトロFcRn速度特徴づけのためにプロテインAクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0276】
実施例3:pH6.0でのBiacore FcRn結合カイネティクス
AAA、LS及びYTE変異体は、Biacoreを使用したFcRn結合カイネティクス測定においてヒト及びラットFcRnに対するpH6.0でのポジティブコントロールとして役立つ。FcRnへの濃度依存性結合が、野生型、ベンチマーク(
図3)及びリード(
図4A及び4B)を含む全ての変異体について観察され、そしてヒト及びラットFcRnの単回注射の結合プロフィールをそれぞれ
図5A及び5Bに示す。野生型抗体は、ヒト及びラットFcRnについてそれぞれ2380±470nM及び207±43nM親和性の結合親和性を有していた(表1)。
【0277】
【0278】
表1に示される全てのデータは、各列の上部に示される実験技術を使用して得られた。
【0279】
精製されたタンパク質を使用したOctetによるrFcRn解離速度は、条件培地におけるスクリーニングから得られた速度定数と比較して測定された。溶出pHを、FcRnアフィニティクロマトグラフィーにより三連で(n=3)決定し、そしてDSFは三連で熱安定性を調査した(n=3)。ヒト及びラットFcRnに対するFcRn結合カイネティクスを、Biacoreから一連の抗体濃度を用いて二連で(n=2)得て、独立してフィッティングした。各変異体についてのヒト及びラットFcRnとのpH7.4での定常状態結合応答(RU)を、1000nM抗体を用いて三連で(n=3)Biacoreを使用して測定した。各測定についての単位は以下のとおりである:Octet pH6.0 rFcRn解離速度(x10-3秒-1);溶出pH(無単位);DSF Tm(℃
);Biacore pH6.0 hFcRn結合速度(x104M-1秒-1)、解離速度
(x10-1秒-1)及びKD,app(x109M);Biacore pH6.0 rFcRn結合速度(x104M-1秒-1)、解離速度(x10-3秒-1)及びKD,app (x109M);並びにBiacore pH7.4定常状態結合応答(RU)。
【0280】
図5Bにおいて、AAA(点線)、LS(二点鎖線)及びYTE(一点鎖線)変異体は、WTと比較して1.6倍と10.4倍との間増強された結合親和性を有していた。hFcRnに対して最も緊密な親和性を有していたが、rFcRnはYTEについてより緊密な親和性を有していたので、最も緊密なFcRn親和性を有するベンチマーク変異体のアイデンティテイは種特異的であった(表2A)。
【0281】
【0282】
ヒト及びラットFcRnの両方についてのリード変異体の大部分(
図5A及び5B、様々な色調の実線)は、WT又はベンチマーク変異体よりも有意に遅い結合速度を有していた(<2分の1)(表1)。FcRnの両方の種について増強された結合速度を示したのはN434F及びN434Y変異のみであった。理論に束縛されることなく、hFcRnとのより遅い結合カイネティクスの結果として、リード変異体のみかけの結合親和性は、rFcRnと違って一般的にWTより弱い(
図5C及び5D、表1)。rFcRnについての親和性はYTEより弱い(
図5D、左下への対角線、表2A)。いずれの理論に束縛されることなく、これらの結果は、単一の変異はLS及びYTE変異体を上回るように親和性を増強するために十分でなかったということを示した。FcRn解離速度の順位付け(hFcRnに対する変異体の弱い結合親和性に起因する)は、ヒト及びラットFcRnに対する減少した解離速度を有するサブセットを明らかにした:M252Y、N434F/P/Y、T256D/E及びT307A/E/F/Q/W(表2A)。これらの変異体は、ベンチマーク変異体を上回るFc領域のFcRn結合能をさらに改善するために組み合わせてさらに興味が持たれる。
【0283】
リード変異体についてのインビトロ特徴づけパラメーターを表2Bに示す。
【0284】
【0285】
表2Bにおいて、全てのデータは、各列の上部の実験技術を使用して得られた。FcRnアフィニティクロマトグラフィー、DSF及びFcγRIIIa結合は三連で行った(n=3)。ヒト及びラットFcRnに対するFcRn結合カイネティクスを四連で得、そして独立してフィッティングした。単位:DSF Tm (℃);FcγRIIIa結合
(WTと比べた倍率変化)、Biacore pH6.0 hFcRn結合速度(x104M-1秒-1)、解離速度(x10-1秒-1)及びKD,app(x109M);Biacore
pH6.0 rFcRn KD,app (x109M);Biacore pH7.4 hF
cRn及びrFcRn定常状態RU(RU)。
【0286】
実施例4:組み合わせ変異体はFcRn結合解離速度をさらに減少させる
T307及びN434にように、複数のリード変異が単一の位置に位置しており(
図14黒い四角)、ここでより遅いFcRn解離カイネティクスを示したそれぞれ6つ及び3つの変異が同定された。これらの位置においてhFcRnに対する最も遅いFcRn解離速度を有する変異のみを組み合わせ変異体の作製に使用した。この場合、T307Q、T307W、N434F及びN434Yは、二重、三重及び四重変異体を得るためにM252Y、T256D及びT256Eと混合プライマーPCR及び部位特異的変異誘発を使用して混合された。合計で、組み合わせライブラリーは、7つのリード単一、18の二重、20の三重、8つの四重変異体及びWT抗体を含む54の変異体からなっていた。これらの変異体の命名は以下のとおりである:野生型バックグラウンドは、M252、T256、T307及びN434を含み、そしてMTTNとして再分類される。そのため、三重変異体
YT
QYは、M252
Y、T307
Q及びN434
Y変異を含有するが、位置256にWTスレオニンを維持する。
【0287】
単一変異を用いて、Biacoreを使用したpH6.0でのFcRn結合カイネティクスを使用して、どの組み合わせ変異体が親和性を改善したかを決定した。単一(長い二点鎖線)、二重(長い一点鎖線)、三重(長い破線)及び四重(短い破線)の各々の代表的FcRn結合速度トレースを
図6A及び6Bに、WT(点線)及びFcRn(hFcRn:LS(長い二点鎖線);rFcRn:YTE (実線))のそれぞれの種について最も緊密な親和性を有するベンチマーク変異体と比較して示す。hFcRn結合及び解離速度(
図6C)は、2つの単一、15の二重、18の三重及び8つの四重変異体が、LS変異体(
図6C、点線)よりも増強された結合親和性を有していることを明らかにした。同様に、1つの三重変異体を除いて全ての組み合わせは、YTE(
図6D、左下への対角線)よりも緊密なrFcRnに対する親和性を有していた。hFcRnの場合、追加のFcRn増強変異がさらに結合親和性を増加させた(
図6C)。hFcRnへの最も緊密な親和性を有する5つの組み合わせは、全て四重変異体(
図6C、格子柄)であり、結合親和性は野生型より約500倍高かった。最も高い親和性を有する変異体は二重変異体であったので(
図6D、水平線)、同様の現象はrFcRnでは起こらなかった(
図6D)。三重(
図6D、垂直線)及び四重(
図6D、格子柄)変異体は、典型的には解離速度のわずかな減少(2倍未満)しか示さなかったが、減少した結合速度も示した(
図6D)。いずれの理論にも拘束されないが、これらの結果は、FcRn見かけの結合親和性に関してrFcRnが到達したより低い限界がおそらく存在する(約0.5nM)が、hFcRnでは存在しない(
図6B)ということを示唆する。合計で、40より多くの組み合わせ変異体が、ベンチマーク変異体よりも緊密な親和性を有しており、そしてさらなる特徴づけが、インビボ研究のために最も好ましい特性を有する組み合わせを選択するために必要とされる。
【0288】
実施例5:組み合わせ変異体は生理的pHで有意な結合を保持する
pH6.0での有意に改善されたFcRn親和性の結果として、pH依存性に対する効果を、FcRnアフィニティクロマトグラフィー及びpH7.4でのBiacore定常状態測定を使用して調べた。FcRnアフィニティクロマトグラフィーは、線形pHグラジエントを使用して、変異によるpH依存性の摂動を直接測定する。弱いFcRn結合を有するH435A及びH310A/H435Qは、pHにかかわらずカラムに結合しなかった(
図8A)。WTは生理的pH付近(pH7.37±0.05)で溶出したが、AAA、LS及びYTEはより高いpHを必要とした(表2B)。全ての組み合わせ変異体及び7つのリード単一変異体は、アフィニティカラムから溶出するためにWTより高いpHを必要とした(
図8A及び8C)。N434F/Y変異体はLSより高いpHで溶出し(表2B)、これは、科学的理論に束縛されることを意図しないが、これらたの変異体が、単独及び組み合わせの両方でpH依存性を破壊したことを示す。代表的なクロマトグラムは、変異の数につれてより高い溶出pHへの明らかなシフトを示した(
図9A及び9B)。溶出pHとhFcRn解離速度との間の強い相関(R2=0.94)(
図9C)は、pH6.0でのより遅いFcRn解離速度が、FcRn変異体についての増加した溶出pHに直接寄与したことを示す。
【0289】
生理的条件下での残留結合活性を測定するために、FcRn結合速度実験をpH7.4でBiacoreを使用して行った。いくつかの変異体は、信頼性の無いカイネティクスを示しこのpHで結合をほとんど示さないか全く示さなかったので、定常状態RUを残留FcRn結合親和性の尺度として使用した。単一(長い二点鎖線)、二重(長い一点鎖線)、三重(長い破線)及び四重(短い破線)変異体の代表的速度トレースをLS(
図7A、実線)及びYTE(
図7B、実線)と比較して
図7A及び7Bに示した。これら2つの変異体は、pH7.4でそれぞれヒト及びラットFcRnに対して最も高い残留結合を示した。リード単一変異体の大部分は、WTと比較してわずかに上昇したFcRn結合を有していたが(4.3±1.0RU)、N434F/Y変異を除いて、AAA(13.1±1.7 RU)、L(18.5±2.6 RU)及びYTE(13.1±1.6 RU)
より低かった(表2A及び2B)。組み合わせ変異体はまた、N434F/Yより同等に高い程度までpH7.4でのFcRnnの両方の種への有意な残留結合を有していた(
図7A及び7B)。いずれの理論にも束縛されないが、インビボ研究に理想的な候補は、低pHで増加したFcRn結合を有するが(例えば、AAA、LS及びYTE変異体)、WTと同じ様式で、高pHで低レベルの結合を維持する変異体である。
図7C及び7Dに示されるプロットにおいて、これらの組み合わせは、各pHでそれぞれヒト及びラットFcRnに対するLS及びYTE変異体の親和性により指定された左下四半部を占めるだろう。
【0290】
実施例6:FcRnアフィニティクロマトグラフィー
組み合わせ変異体は、pH6.0での見かけの結合親和性とpH7.4での定常状態RUとの間に中程度のポジティブな相関(hFcRn:R
2=0.69、rFcRn:R
2=0.71)を示した(
図7C及び7D)。いずれの理論にも束縛されないが、これらの結果は、pH6.0でのより高い親和性が、典型的にはpH7.4でのより高い残留FcRn結合につながるということを示す。これらの変異体は、血流中のFcRnに結合されたままになり得、そして高いFcRn親和性abdeg変異と同様に、短い血清半減期を有するか、かつ/又はそれらのクリアランスを促進する(例えば、Swierczら、2014年前出;及びVaccaroら、2005年前出)。抗体-FcRn相互作用はpH依存性であり、そして低pH(<pH6.5)でしか発生しないので飽和変異体は、疎水性又は電荷由来寄与による相互作用を強化し得、これは重要なヒスチジン残基の脱プロトン化を妨害し得(
図1B、示されるとおり)、そして生理学的pHでこの相互作用を弱める。
【0291】
FcRnアフィニティクロマトグラフィーは、FcRn相互作用pH依存性の摂動を直接測定するために線形pHグラジエントを使用する(例えば、Schlothauerら、2013年前出を参照のこと)。AAA、LS、YTE、H435A及びH310A/H435Q変異体を用いたFcRn アフィニティクロマトグラフィーは、H435A(
図8A、明るい灰色の実線)及びH310A/H435Q(
図8A、AQ、暗い灰色の実線)がFcRnにpH5.5でも結合せず、フォロースルーで溶出するということを明らかにした。野生型抗体は、生理的pH付近(pH7.37±0.05)で溶出したが、Octet(
図2)及びBiacore(
図3)により野生型より遅い解離速度及びより緊密なFcRn結合親和性を有するAAA、LS及びYTEは、カラムから解離するためにかなり高いpH(AAA:7.94±0.06;LS:8.29±0.03;YTE:8.14±0.03)を必要とした。溶出プロフィールは、組み合わせライブラリーの変異体の全てが、アフィニティカラムから溶出するために野生型より高いpHを必要とするということを明らかにした。単一(長い二点鎖線)、二重(長い一点鎖線)、三重(長い破線)及び四重(短い破線)変異体についての代表的な平均溶出pHを
図9Aに示す。7つのリード単一変異体は、カラムから解離するためにWTと比較してより高いpHを必要としたが(
図10A、表3)、hFcRnに対して野生型様カイネティクスを有するもの(K288D/N、Y436H/H/W)は全て野生型と同様のpHで溶出した。
【0292】
【0293】
全てのデータを各列の上部の実験技術を使用して得られた。溶出pHをFcRnアフィニティクロマトグラフィーにより三連で(n=3)決定し、そしてDSFにより三連で(n=3)熱安定性を調べた。ヒト及びラットFcRnに対するFcRn結合カイネティクスを、一連の抗体濃度(n=4)を用いてBiacoreから得、そして独立してフィッティングした。各測定についての単位は以下のとおりである:溶出pH(無単位);DSF Tm(℃);Biacore pH6.0 hFcRn 結合速度(x104M-1秒-1)、解離速度(x10-1秒-1)及びKD,app(x109M);Biacore pH6.0
rFcRn 結合速度(x104M-1秒-1)、解離速度(x10-3秒-1)及びKD,app
(x109M)。
【0294】
N434F/Y変異体は、両方ともLS変異体より高いpHで溶出し(N434F:8.30±0.05;N434Y:8.46±0.02)、そしてpH7.4でかなりのFcRn結合を示した(表4)。これらの結果は、これらの変異体が単独でpH依存性を破壊し得るということを示す。一般に、平均溶出pHは、FcRn結合増強変異の数が増えるにつれて増加した(
図9B)。強い相関(R
2=0.94)が、hFcRn解離速度と
比較して溶出pHで現れた(
図9C);いずれの理論にも束縛されないが、相互作用のp
H依存性の破壊が、pH6.0で組み合わせライブラリーについて観察されたより遅いFcRn解離速度に直接寄与するということを示す。
【0295】
実施例7:熱安定性
低い熱力学的安定性を有する抗体を含めて大部分のタンパク質は、ミスフォールディング及び凝集の増加した傾向を有し、そしてそれらの活性、有効性及び新規治療剤としての可能性を限定するか又は妨げる。各変異体の熱安定性をDSFを使用して決定し、そして報告された融解温度(T
m)をSypro Orange蛍光強度プロフィールにおける
第一遷移の中点として定義した。69.0±0.2℃のT
mを有するWTと比較して、L
S変異体はWTに似ており(68.5±0.3℃)、そしてAAA及びYTEは、約8℃(AAA:61.3±0.6℃;YTE:61.2±0.3℃)だけ熱的に不安定化されている(
図8B、9B、及び10B;並びに表2B、3及び4)。69.0±0.2℃のT
mを有するWT及びLSと比較して、AAA及びYTE変異体は、DSFにより約8℃
だけ低い熱安定性を有していた。
【0296】
【0297】
野生型骨格中に導入された変異は太字で下線を付されている。全てのデータは列の上部に示される実験技術を使用して得られた。溶出pH及びTmを三連で決定した(n=3)
。ヒト及びラットFcRnに対するpH6.0でのFcRn結合カイネティクスをBiacore(n=4)から得て、独立してフィッティングした。pH7.4での定常状態FcRn結合応答を、Biacoreを使用して単一抗体濃度で三連で測定した。FcγRIIIa結合親和性を、一連の抗体濃度から二連でBiacoreを使用して決定した。各測定についての単位は以下のとおりである:溶出pH(無単位);DSF Tm(℃);Biacore pH6.0 hFcRn結合速度(x105M-1秒-1)、解離速度(
x10-2秒-1)及びKD,app(x109M);Biacore pH6.0 rFcRn 結合速度(x105M-1秒-1)、解離速度(x10-3秒-1)及びKD,app(x109M);
Biacore pH7.4定常状態結合応答(RU)及びFcγRIIIa KD,app (x109M)。
【0298】
18のリード飽和変異体のうち12は、野生型と比較して減少したT
mを有しており、
そしてT307変異体のいくつか(T307E/F/M/Q)は、わずかな安定性を示した(表4)。組み合わせに使用した7つの単一変異体のうちの1つ(
図10B及び表4)は、YTEと比較して有意に不安定化していた(
図8B及び表5)。二重(
図9D、水平線)、三重(
図9D、垂直線)及び四重(
図9D、格子柄)変異体を加えることにより、単一変異体(
図9D、白色丸)と比較して全体的な熱安定性のさらなる減少がもたらされた。複数の変異体が、AAA又はYTEよりも低いT
mを示し(61.2±0.℃)、こ
れらの変異体の>60%はT307Wを含有していた。四重変異体(
図9D、格子柄)は、融解温度の独特な二峰性分布を示し、T307Qを含有する組み合わせは、T307Wを有するものより約6℃高い熱安定性を有していた(
図9D)。
【0299】
実施例8:Fc変異体はFcγRIIIaとの結合相互作用を変更する
FcRnとの相互作用に加えて、Fc領域ヒンジ及びC
H2ドメインは、FcγRII
Iaを含む他のFc受容体との相互作用の原因である。組み合わせ飽和ライブラリーのために使用された7つの単一変異体のうちの5つはC
H2ドメイン内に位置し、これらの受
容体と相互作用する能力は、相互作用境界部から遠いそれらの位置にもかかわらず、野生型と比較して損なわれ得る。pH7.4でFcRn結合と同様の方法でFcγRIIIa結合を測定するためにBiacoreを使用することにより、YTE(
図11A、暗い灰色)変異体が野生型(
図11A、黒色)と比較して結合応答の約50%の減少を示すということが明らかとなった。いずれの理論にも束縛されないが、YTEについての減少したFcγRIIIa結合は、M252Y変異体が単独でこの受容体に対する有意に減少した親和性を有しているので(
図11B、一番下白色丸)、M252Y変異の結果である。他の単一変異は、この減少した親和性を共有しておらず(
図11B、白色丸)、そしてN434F/Y変異体は単独で結合を16~40%増強した。これらの効果はそれらの対応する組み合わせの全てではないが大部分に転移された。例えば、M252Y含有組み合わせは、FcγRIIIa結合の17%と72%との間の減少を有していた(表5)。
【0300】
【0301】
1つの変異体M
DQF(
図11B、三重変異体カテゴリー中最高)は、FcγRIIIa結合の劇的な140%増加を示した。従って、組み合わせ飽和ライブラリーは、特定のエフェクター機能を有する治療用抗体に合わせるために利用され得る広範囲のFc受容体機能を有する変異体を提供した。
【0302】
図11Cは、WT及びYTE変異体と比較した、7つのリード単一変異体のFcγRIIIa結合応答の箱ひげ図を示す。
【0303】
実施例9:7つのリード組み合わせはFcRn相互作用のpH依存性のバランスを取る
いずれの理論にも束縛されないが、インビボでのさらなる研究のための候補変異体は、
図7C及び7Dに示されるプロットの左下四半部を占めていた。7つの変異体はhFcRnについてこれらの基準を満たし、5つの二重及び2つの三重組み合わせ(M
DQN、M
DWN、
YDTN、
YETN、
YT
WN、
YDQN及び
YEQN)を含んでおり、そしてN434位置に変異を含有していなかった(表3)。これらの組み合わせの各々は、FcRnアフィニティカラムからAAA(pH7.94±0.06)とLS(pH8.29±0.03)との間で溶出し、
YDQNは最も高いpH8.51±0.14で溶出し(
図12A、表5)、pH依存性におけるわずかな摂動のみ、そしてpH7.4でより高い残留結合を示した(表2A)。変異体の1つ(M
DQN)は野生型様熱安定性を有しており、そして6つはYTE変異体と比較して同様又は減少したT
mを有していた(
図12B、表
4)。FcγRIIIa結合アッセイにおいて、5つの組み合わせ変異体はYTEと同様の減少を示した(表4)。単一変異を用いたさらなる調査により、M252YがFcγRIIIa結合に有意に影響を及ぼし、そしていずれの理論にも束縛されないが、この効果をこの変異を含む組み合わせに対して転移するということがわかった。残りの6つの単一変異はWT様であるか、又はこの受容体に対してわずかに改善された結合を有していた。
【0304】
3つの組み合わせ変異体を、それらのFcRn結合特性、熱安定性及びFcγRIIIa結合に基づいてさらなる研究のために選択した。DQ(T256D/T307Q)、DW(T256D/T307W)及びYD(M252Y/T256D)はそれぞれ、LS変異体(
図12E)のような最適なFcRn結合特性をもたらした(表2B)。各変異体は、一定範囲の機能性をもたらす多様な熱安定性及びFcγRIIIa結合特性を提供する(
図12F及び12G、表2B)。
図12Hは均一ブリッジングRFのプロットである。
【0305】
それぞれヒト及びラットFcRnの両方についてのpH6.0での見かけの結合親和性のLSと比較した増強(
図13A、濃い長い破線)及びYTE変異体(
図13B、濃い長い破線)は、結合速度と解離速度との間の妥協(compromise)である(
図13A及び13B、表4)。典型的に、より速い解離速度を有する組み合わせは、より速い結合速度も有し、その逆も当てはまる。この観察は、ヒトFcRnとラットFcRnとの間で維持された(表4)。さらに、これらの変異体の全ては、pH7.4でhFcRnに対してLS変異体(
図13C、濃い長い破線)よりも低い定常状態応答を有していた。これらの結果はrFcRnと一致せず、5つのM252Y含有変異体、
YDTN、
YETN、
YT
WN、
YDQN及び
YEQNは、YTEと比較してpH7.4で上昇したFcRn結合を有していた(
図13、表5)。M
DQN及びM
DWN変異体だけがヒトFcRnとラットFcRnとの間で交差反応性である組み合わせであった。さらに、これら2つの変異体は、M252Y含有変異体と同様の程度まではFcγRIIIaとの相互作用を摂動しなかった(
図12C及び12D並びに表5;M
DQN:600±4 nM;MDWN:512±30nM;WT:467±99nM)。従って、鍵となるFcRn相互作用位置における飽和及び組み合わせ変異誘発は、相互作用のpH依存性のバランスを取り、Fc受容体での機能性を維持し、インイボでFcRn機能性を増強し得、そして治療用抗体の血清半減期を延長し得るリード変異体の同定をもたらした。
【0306】
実施例10:リード組み合わせ変異体のリウマトイド因子結合特徴
これらの変異は抗体表面電荷及び免疫原性を変更し得るので、リード変異体の等電点及びRF結合を調べた。より酸性の抗体が抗体薬物動態を延長すると考えられた。WT及びLS対照と比較して、3つのリード全てが、T256D置換の結果として約0.2pH単位のpIの減少を生じた。FcRn増強変異は、オーバーラップしている相互作用境界部に起因して、リウマトイド因子(RF)のような宿主抗体への結合を同時に変更する。均一ブリッジングELISAを、リード変異体についてRF結合の変化を測定するために適合させた。興味深いことに、LSが、及びYTEは、WTと比較したRF結合において完全に反対のシフトを示した(
図12H)。LSはRF結合を有意に増加させたが、YTE
は有意な減少(p<0.001)を示した。YD(p<0.001)及びDW(p<0.01)もまたRF結合を有意に減少したが、DQはWTと同様の応答を生じた。いずれの理論にも束縛されないが、これらの結果は、DQ、DW及びYDが、LSと比較して免疫原性の利点をもたらし得るということを示す。YD、DW及びDQ変異体は、ベンチマークYTE及びLS変異体に優る改善されたFcRn結合特性と併せて影響され得る鍵となる抗体特徴の範囲を表す。
【0307】
実施例11:リード組み合わせ変異体は他の抗体に転移可能である
図15Aに示されるように、新しい結合アッセイをCM5センサーチップを使用して開発した。結合アッセイは、ビオチン化FcRnを捕捉するためにCM5センサーチップ上にストレプトアビジンを約30RUまで固定化する工程を含み、これは必要に応じて補充される。抗体結合カイネティクスをpH6.0及び7.4で測定し、そして再生のためにpH8.5にした。
図15B及び15Cは、新しい結合アッセイを使用したFcRnの直接固定化及びビオチン化FcRnのストレプトアビジン捕捉を示す。
【0308】
抗体-2のpH6.0でのFcRn結合:マウスFcRn、リード抗体-2変異体は、LS変異体(破線)及び野生型(黒色)よりも遅い解離速度を示す(
図16A)。ヒトFcRnについて、リード変異体は全てより速い結合速度を有するが、LS(破線)と同様の解離速度であった(
図16B)。
【0309】
抗体-2のpH7.4でのFcRn結合:全ての変異体は、LS(破線)と比較してpH7.4で減少したヒト結合を示した(
図17A)。抗体-1バックグラウンドと同様に、DW(M
DWN)及びDQ(M
DQN)変異体もまた、pH7.4でマウス(ラット)FcRnに対してより低い残留結合を示した(
図17B)。
【0310】
リード変異体は、LSと比較してpH6.0でより高い結合親和性、及び pH7.4でより低い残留結合を維持した(
図18)。重要なことには、変異体はFcRn結合に対してほとんど影響なく異なるIgG1バックグラウンド間で転移可能であることが見いだされた。
図19に示されるように、LSはバックグラウンドにかかわらず同様の溶出pHを有していた。抗体-2バックグラウンドにおいて、WT、DQ及びDWは、おそらく抗体-2バックグラウンドにおけるpH6.0でのより緊密な結合の結果として、抗体-1バックグラウンドにおいてより高い溶出pHを示した。
【0311】
抗体-2バックグラウンド変異体は全て、
図20に示されるように、わずかに増加した熱安定性を示した。
【0312】
図21に示されるように、抗体-1バックグラウンドと同様に、YD(
YDTN)は、FcγRIIIa結合応答(左)及び親和性(右)において減少を示した。DQ(明るい灰色)及びDW(暗い灰色)は、抗体-2バックグラウンドにおいて、WT(黒色)と同様のFcγRIIIa結合特性を示した。LSについてのFcγRIIIa結合に対する効果は、抗体-1と抗体-2との間で一致していた。
【0313】
従って、抗体-2バックグラウンドにおけるリード変異体は、抗体-1バックグラウンドにおける同じリード変異体と比較して、FcRn結合、pH依存性、熱安定性、またはFcγRIIIa結合に有意に影響を及ぼさない。
【0314】
一実施態様において、DQ(T256D/T307Q)、DW(T256D/T307W)及びYD(M252Y/T256D)変異体を、さらなるIgG1抗体及び組み換えFcフラグメントに組み込んだ:mAb2は、mAb1と異なる抗原を認識し、そしてAb3はFcフラグメントである。各場合に、pH依存性FcRn結合カイネティクス(図
22)は、溶出pH、熱安定性及びFcγRIIIa結合親和性に加えて高度に類似していた(表2B、及び表6)。いずれの理論にも束縛されないが、これらの結果は、DQ、DW及びYD変異体が、それらの改善されたFcRn結合特性を、Fcドメインからなるタンパク質に付与するということを示す。
【0315】
【0316】
実施例12:リード変異体はインビボ血漿抗体排出半減期を延長した
DQ、DW及びYD変異体の薬物動態(PK)を、カニクイザル及びhFcRnトランスジェニックマウス(系統Tg32)を用いてWT及びLS対照と比較して、それらの抗体循環半減期について調べた(例えば、Avery et al.Mabs(2016)8:1064-1078を参照のこと)。カニクイザルFcRnを用いたFcRn結合研究は、hFcRnと同様の結合親和性を明らかにした(
図23A-23B;表6)。各動物にWT、LS、DQ、DWまたはYD変異体を静脈注射し、そして抗体濃度を質量分析アプローチにより定量して、サル(
図24A)及びhFcRnトランスジェニックマウス(
図24B)においてクリアランス速度及び血清半減期を決定した。クリアランス速度及び血清半減期は、時間の関数として抗体濃度の非コンパートメントモデルから得た。3つ全てのリード変異体及びLSは、サル及びマウスの両方においてWTと比較して有意に減少したクリアランス速度を示した(p<0.001)。WT抗体の血漿半減期は、サル及びマウスにおいてそれぞれ9.9±0.5日及び11.7日であった。さらに、LSベンチマーク及び同定された変異体は、両方の種において野生型と比較して排出半減期の有意な増加を示した(サル及びマウスにおいてそれぞれ2.5倍及び1.7倍の増加)(表7)。DQ、DW及びYDは、LSベンチマークと比較して半減期の同様の延長を示した(表7)。飽和変異誘発により本明細書において同定されたDQ、DW及びYD変異は、マウスおよび非ヒト霊長類動物モデルの両方において、それらのWTカウンターパートよりも有意に延長された血漿半減期を示した。
【0317】
【0318】
表7において、クリアランス速度及び血漿半減期を、mAb2を使用して決定した。各クリアランス速度及び半減期は、カニクイザルについてn=3の平均であり、そしてn=6 hFcRnトランスジェニックマウスのプールから単一の評価であった。WTに対する倍率及びLSに対する倍率は、それぞれWT及びLSと比較して相対的改善を示す。*ADA形成のためにn=2、**部分的皮下投与経路のためにn=2
【0319】
実施例13:pH6.0及びpH7.4で増強されたFcRn結合を有する組み合わせ変異体
実施例2に記載されるようなOctetスクリーニング(BLIベースのスクリーニング)に基づいて、様々な単一、二重、三重、及び四重変異体を生成し、そしてpH6.0及びpH7.4でのFcRnへのそれらの結合を評価した(表8)。
【0320】
【0321】
表8において、様々な単一、二重、三重、及び四重の変異体、さらにはベンチマーク変異体(AAA、LS、YTE)についてのpH6.0でのFcRnに対する結合親和性及びpH7.4でのFcRnに対する定常状態結合を示す。
【0322】
これらの値を
図25にプロットした。
図25は、pH6.0での結合親和性及びpH7.4でのRUを示す。示されるように、ベンチマーク変異体LSは、試験されたベンチマーク変異体(AAA、LS、YTE)のうちpH6.0で最も緊密な結合親和性及びpH7.4で最大の残留結合を有していた。
【0323】
図25に示されるいくつかの組み合わせ変異体が、pH6.0及びpH7.4で増強されたFcRn結合親和性を示したと決定された。組み合わせ変異体のいずれかがpH6.0およびpH7.4の両方で、MST-HN変異体(本明細書で「YTEKFベンチマーク」と呼ばれ、Met252、Ser254、Thr256、His433及びAsn434~Tyr252、Thr254、Glu256、Lys433及びPhe434に変異を含有する)よりも緊密な結合を示したか否かを調べるために、以下の方法論の両方を行った。ビオチン化されたヒト、カニクイザル及びマウスFcRnの捕捉を、ビオチン捕捉(Biotin CAPture)法(図式については
図26を参照のこと)により行った。pH6.0について、1000nMからの一連の濃度(5点)を二連で行った。pH7.4について、単一の濃度(1000 nM)の注射を三連で行った(各FcRnの捕捉レベルを10倍増加させてこのpHでの結合を観察した)。結合:180秒;解離:300秒。
【0324】
YTEKFベンチマーク及び様々な組み合わせ変異体のpH6.0でのヒトFcRn 結合カイネティクスを
図27に示す。
図27に示されるように、全ての試験した変異体は、野生型(WT)と比較してヒトFcRnに対して2桁分より緊密な親和性を示した。
【0325】
図28A及び28Bは、YTEKFベンチマークと比較したpH6.0(
図28A)及びpH7.4(
図28B)での組み合わせ変異体のFcRn結合カイネティクスを示す。
図28Aにおいて、変異体の大部分はYTEKFベンチマークよりも遅い解離速度を示し、そして同様の又はより遅い結合速度を有していた。
図28Bにおいて、YTEKFはpH7.4で有意な結合を示し、そして4つの変異体はより高い残留結合を示す。
【0326】
【0327】
表9において、選択組み合わせ変異体、さらにはYTEKFベンチマーク及びWTについてpH6.0でのFcRnへの結合親和性及びpH7.4でのFcRnへの定常状態結合を示す。
【0328】
図29は、表9に示される選択組み合わせ抗体についてのpH6.0での結合親和性及びpH7.4でのRUの比較を示す。表9及び
図29に示されるように、4つの四重変異体は、YTEKFベンチマークと比較してFcRnについてpH6.0及びpH7.4でより高い親和性を有することが見いだされた。4つの四重変異体はT256D、T307Q、及びN434Y変異で有利に働いた。これらの四重変異体は、親和性においてWT及びYTEKFよりもそれぞれ約500倍及び3倍の改善(pH6.0)を示した。
【0329】
他の特徴づけパラメーター、例えば、熱安定性、FcγRIIIaに対する結合、及び溶出pHを決定し、そして表10に示した。
【0330】
【0331】
表10に示されるように、全てのリード四重変異体は、熱的に不安定化されていることが見いだされ、そして減少したFcγRIIIa結合能を示した。