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特開2024-26257芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化のための促進剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026257
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化のための促進剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20240220BHJP
   C08G 59/70 20060101ALI20240220BHJP
   C08G 59/72 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08G59/50
C08G59/70
C08G59/72
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023204336
(22)【出願日】2023-12-04
(62)【分割の表示】P 2020554234の分割
【原出願日】2019-03-21
(31)【優先権主張番号】18165724.8
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストルツ,クリストフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化速度を促進するための、実質的により速い硬化時間を生ずる新規な触媒を提供する。
【解決手段】(a)カルボキシレートリガンドとの金属錯体;及び(b)三フッ化ホウ素アミン錯体又は三フッ化ホウ素フェノール錯体を含む芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化のための促進剤組成物を提供する。また、(i)硬化剤としての芳香族アミン;ならびに(ii)上記の促進剤組成物あるいはまた(1)カルボキシレートリガンドとの金属錯体及び(2)芳香族アミンとの三フッ化ホウ素アミン錯体のその場生成のための正味の三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エーテレートの混合物を含むエポキシ樹脂の硬化のための硬化組成物を提供する。さらにそのような組成物の使用及びそのような組成物の使用から得られる硬化樹脂製品を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カルボキシレートリガンドとの金属錯体;及び
(b)三フッ化ホウ素アミン錯体又は三フッ化ホウ素フェノール錯体
を含む、芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化のための促進剤組成物。
【請求項2】
カルボキシレートリガンドとの金属錯体の金属カチオンが亜鉛、錫及びクロムから選ばれる請求項1に記載の促進剤組成物。
【請求項3】
カルボキシレートリガンドがオクトエート、ネオデカノエート及びナフテネートから選ばれる請求項1又は2に記載の促進剤組成物。
【請求項4】
三フッ化ホウ素アミン錯体のアミンがエチルアミン、モノイソプロピルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、ピペリジン及び2,4-ジメチルアニリンから選ばれる請求項1ないし3のいずれかに記載の促進剤組成物。
【請求項5】
三フッ化ホウ素フェノール錯体のフェノールがフェノール、2-メチルフェノール、3-メチルフェノール及び4-メチルフェノールから選ばれる請求項1ないし4のいずれかに記載の促進剤組成物。
【請求項6】
(a)対(b)の化学量論比が1:50から50:1までの範囲内である請求項1ないし5のいずれかに記載の促進剤組成物。
【請求項7】
(a)対(b)の化学量論比が1:10から10:1までの範囲内である請求項6に記載の促進剤組成物。
【請求項8】
(a)対(b)の化学量論比が1:3から3:1までの範囲内である請求項7に記載の促進剤組成物。
【請求項9】
(i)硬化剤としての芳香族アミン;ならびに
(ii)請求項1ないし8のいずれかに記載の促進剤組成物か、代わりに(1)カルボキシレートリガンドとの金属錯体及び(2)芳香族アミンと共に三フッ化ホウ素アミン錯体をその場生成するための、正味の三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エーテレートの混合物
を含むエポキシ樹脂の硬化のための硬化組成物。
【請求項10】
(i)エポキシ樹脂;
(ii)硬化剤としての芳香族アミン;及び
(iii)請求項1ないし8のいずれか1つに記載の促進剤組成物
を含む硬化可能なエポキシ組成物。
【請求項11】
エポキシ樹脂に関する加えられる促進剤組成物の量がエポキシ樹脂の100部当たりに0.01から15部までの促進剤組成物の範囲内である請求項10に記載の硬化可能なエポキシ組成物。
【請求項12】
(i)エポキシ樹脂;(ii)芳香族アミン;ならびに(iii)請求項1ないし8のいずれか1つに記載の促進剤組成物あるいはまた(1)カルボキシレートリガンドとの金属錯体及び(2)芳香族アミンと共に三フッ化ホウ素アミン錯体をその場生成するための、正味の三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エーテレートの混合物を混合することを含む硬化可能なエポキシ組成物の調製方法。
【請求項13】
硬化可能なエポキシ組成物を実質的に硬化させるのに十分な時間及び温度で請求項10に記載の硬化可能なエポキシ組成物を硬化させる段階を含む硬化樹脂製品の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により得られる硬化可能な樹脂製品。
【請求項15】
芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化のための請求項1ないし8のいずれかに記載の促進剤組成物の使用、又はエポキシ樹脂の硬化のための請求項9に記載の硬化組成物の使用。
【請求項16】
芳香族アミンがジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、1,2-、1,3-及び1,4-ベンゼンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、1,3-キシレンジアミン、1,2-ジアミノ-3,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジメチルアニリン)、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-プロパンジオール-ビス(4-アミノベンゾエート)及びそれらの混合物から選ばれる請求項15に記載の使用。
【請求項17】
エポキシ樹脂に関する加えられる促進剤組成物の量が樹脂の100部当たりに0.01から15部までの範囲内である請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
請求項15ないし17のいずれかに記載の使用から得られる硬化樹脂製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的分野
本開示は、芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化のための促進剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
アミンはエポキシ樹脂の硬化(curing)又は硬化(hardening)のために広く用いられる。ほとんどの場合、数秒ないし数分の範囲内の硬化時間を生ずる脂肪族アミンが用いられる。しかしながら特別な状況において芳香族アミンの使用が好ましい場合がある。しかしながら芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化は、脂肪族アミンと比較して非常に遅い。促進剤なしで、例えば120℃の温度において芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化は数時間の範囲内である。
【0003】
従って、芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化を促進するために促進剤又は触媒が開発されてきた。
【0004】
特許文献1は、遷移金属錯体及び塩を含むエポキシ樹脂の硬化のための促進剤組成物を開示している。
【0005】
特許文献2はその目的のための三フッ化ホウ素錯体の使用を記載しており、特許文献3は金属カルボキシレートの使用を記載している。しかしながらこれらの触媒を用いてさえ、通常の硬化時間は30分ないし60分の範囲内である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/081546 A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許第2,909,494号明細書
【特許文献3】米国特許第3,201,360号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開示の目的
本開示の目的は、芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化速度を促進するための、実質的により速い硬化時間を生ずる新規な触媒を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示
本明細書で他にことわらなければ、本開示と結び付けて用いられる技術用語は当業者が通常理解する意味を有するものとする。さらに、状況により他の意味が必要とされなければ、単数の用語は複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。
【0009】
明細書中で挙げられるすべての特許、公開特許出願及び非特許出版物は、本開示が関係する当業者のレベルの指標である。本出願のいずれかの部分において言及されるすべての特許、公開特許出願及び非特許出版物は明らかに、個々の特許又は出版物が特定的且つ個別に引用することによりそれらが本開示と矛盾しない程度まで本明細書の内容となると示される場合と同じ程度まで、それらの記載事項全体が引用することにより本明細書の内容となる。
【0010】
本明細書において開示される組成物及び/又は方法のすべては、本開示を見て過度な実験なしで製造され得、実施され得る。本開示の組成物及び方法を好ましい態様の観点で記載するが、本開示の概念、精神及び範囲から逸脱することなく組成物及び/又は方法に対して並びに本明細書に記載される方法の段階又は段階の順序において変更が適用される場合があることは、当業者に明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の置き換え及び修正は本開示の精神、範囲及び概念内であるとみなされる。
【0011】
本開示に従って用いられる場合、以下の用語は他にことわらなければ以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0012】
“a”又は“an”という用語の使用は、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」又は「含む(containing)」という用語(あるいはそのような用語の変形)と一緒に用いられる場合、「1つ」を意味する場合があるが、それは「1つ以上(one or more)」、「少なくとも1つ」及び「1つ以上(one or more than one)」の意味とも一致する。
【0013】
「又は」という用語の使用は、選択肢(alternatives)のみを指すと明らかに示されていなければ、並びに選択肢が互いに排他的である場合のみに、「及び/又は」を意味するために用いられる。
【0014】
本開示全体を通じて、「約」という用語は、値が定量装置、機構又は方法に関する誤差の固有の変動或いは測定されるべき対象の間に存在する固有の変動を含むことを示すために用いられる。例えば、しかし制限としてではなく、「約」という用語が用いられる場合、それが指す指定される値はプラス又はマイナス10パーセント又は9パーセント又は8パーセント又は7パーセント又は6パーセント又は5パーセント又は4パーセント又は3パーセント又は2パーセント又は1パーセント又はそれらの間の1つ以上の割合だけ変わる場合がある。
【0015】
「少なくとも1つ」の使用は1つ並びに1つより大きいいずれの量も含み、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むがこれらに限られないことが理解されるであろう。「少なくとも1つ」という用語はそれが指す用語に依存して最高で100又は1000以上に拡大される場合がある。さらに、100/1000の量は、下限又は上限も満足な結果を生む場合があるので、制限と考えられるべきではない。
【0016】
本明細書で用いられる場合、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」のような含む(comprising)のいずれかの形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」のような有する(having)のいずれかの形態)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」のような含む(including)のいずれかの形態)又は「含む(containing)」(並びに「含む(contains)」及び含む(contain))のような含む(containing)のいずれかの形態)という用語は包括的又は非制限的であり、追加の挙げられていない要素又は方法段階を排除しない。
【0017】
「又はそれらの組み合わせ」並びに「及びそれらの組み合わせ」という句は、本明細書で用いられる場合、前記の用語に先行する挙げられている項目のすべての順列及び組み合わせを指す。例えば「A、B、C又はそれらの組み合わせ」は:A、B、C、AB、AC、BC又はABC及び特定の状況において順序が重要である場合はまたBA、CA、CB
、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABの少なくとも1つを含むことが意図されている。この例で続けると、BB、AAA、CC、AABB、AACC、ABCCCC、CBBAAA、CABBBなどのような1つ以上の項目又は用語の繰り返しを含む組み合わせは明らかに含まれる。当業者は、状況から他であることが明らかでなければ、典型的にいずれの組み合わせにおいても項目又は用語の数に制限はないことを理解するであろう。同じ考え方で、「又はそれらの組み合わせ」並びに「及びそれらの組み合わせ」という用語は、「より選ばれる」又は「からなる群より選ばれる」という句と一緒に用いられる場合、句に先行する挙げられている項目のすべての順列及び組み合わせを指す。
【0018】
「1つの態様において(in one embodiment)」、「1つの態様において(in an embodiment)」、「1つの態様に従うと」などの句は一般に、句に続く特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの態様に含まれ、且つ本開示の1つより多い態様に含まれる場合があることを意味する。重要なことに、そのような句は非制限的であり、必ずしも同じ態様を指さず、もちろん1つ以上の前の及び/又は後の態様を指すことができる。例えば添付の請求項において、特許請求される態様のいずれをもいずれの組み合わせにおいても用いることができる。
【0019】
本明細書で用いられる場合、「カルボキシレートリガンドとの金属錯体」という句は、(i)少なくとも1種の金属カチオン及び(ii)金属カチオンに結合したカルボキシレートリガンドを含む錯体を意味する。本明細書で用いられる場合、カルボキシレートリガンドは金属カチオンに結合したカルボキシレートイオンであり、それはオクトエート、ネオデカノエート及びナフテネートのような有機酸に由来する。「活性金属カルボキシレート」という句は、本明細書で「カルボキシレートリガンドとの金属錯体」という句に関して互換的に用いられる。例えば「亜鉛カルボキシレート」という表現は、亜鉛が金属カチオンであるカルボキシレートリガンドとの金属錯体を指す。亜鉛カルボキシレートの制限ではない例は亜鉛オクトエートである。
【0020】
前記目的は、芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化を促進するための促進剤組成物の使用により解決され、促進剤組成物は
(a)カルボキシレートリガンドとの金属錯体;及び
(b)三フッ化ホウ素アミン錯体又は三フッ化ホウ素フェノール錯体
を含む。
【0021】
好ましくは、カルボキシレートリガンドとの金属錯体の金属カチオンは、亜鉛、錫及びクロムから選ばれる。
【0022】
好ましくは、カルボキシレートリガンドは、オクトエート、ネオデカノエート及びナフテネートから選ばれる。
【0023】
好ましい態様において、三フッ化ホウ素アミン錯体のアミンは、エチルアミン、モノイソプロピルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、ピペリジン及び2,4-ジメチルアニリンから選ばれる。
【0024】
好ましい態様において、三フッ化ホウ素フェノール錯体のフェノールは、フェノール、2-メチルフェノール、3-メチルフェノール及び4-メチルフェノールから選ばれる。
【0025】
好ましい態様において、(a):(b)の化学量論比は1:50から50:1までの範囲内であり、ここで「(a)」はカルボキシレートリガンドとの金属錯体を指し、「(b)」は三フッ化ホウ素アミン錯体又は三フッ化ホウ素フェノール錯体を指す。
【0026】
より好ましい態様において、(a):(b)の化学量論比は約1:10ないし10:1、最も好ましくは1:3ないし3:1であり、ここでも「(a)」はカルボキシレートリガンドとの金属錯体を指し、「(b)」は三フッ化ホウ素アミン錯体又は三フッ化ホウ素フェノール錯体を指す。
【0027】
本開示は、
(i)硬化剤としての芳香族アミン;ならびに
(ii)本明細書で開示される促進剤組成物か、代わりに(1)カルボキシレートリガンドとの金属錯体及び(2)芳香族アミンと共に三フッ化ホウ素アミン錯体をその場生成するための、正味の三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エーテレートの混合物
を含むエポキシ樹脂の硬化のための硬化組成物にも関する。
【0028】
成分(ii)の代わりとして、正味の三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エーテレートの十分な量を芳香族アミンと混合し、カルボキシレートリガンドとの金属錯体対三フッ化ホウ素アミン錯体又は三フッ化ホウ素フェノール錯体の1:50から50:1まで、好ましくは1:10ないし10:1、より好ましくは1:3ないし3:1の化学量論比が達成されるようにする。
【0029】
本開示はさらに:
(i)エポキシ樹脂;
(ii)硬化剤としての芳香族アミン;ならびに
(iii)本明細書で開示される促進剤組成物あるいはまた(1)カルボキシレートリガンドとの金属錯体及び(2)芳香族アミンと共に三フッ化ホウ素アミン錯体をその場生成するための、正味の三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エーテレートの混合物
を含む硬化可能なエポキシ組成物に関する。
【0030】
1つの態様において、芳香族アミンはジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニル-スルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、1,2-、1,3-及び1,4-ベンゼンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、1,3-キシレンジアミン、1,2-ジアミノ-3,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジメチルアニリン)、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-プロパンジオール-ビス(4-アミノベンゾエート)及びそれらの混合物から選ばれる。しかしながら他のいずれの芳香族アミンも適している。
【0031】
1つの態様において、エポキシ樹脂に関する加えられる促進剤組成物の量は、エポキシ樹脂の100部当たりに0.01から15部までの促進剤組成物、最も好ましくはエポキシ樹脂の100部当たりに0.1から5部までの促進剤組成物の範囲内である。
【0032】
別の態様において、硬化可能なエポキシ組成物はさらに、例えば強化剤、流動改変剤又は接着改変剤(adhesion modifiers)を含む1種以上の追加の添加剤を含むことができる。
【0033】
別の側面において、本開示は(i)エポキシ樹脂;(ii)芳香族アミン;ならびに(iii)本明細書に記載される促進剤組成物か、代わりに(1)カルボキシレートリガンドとの金属錯体及び(2)芳香族アミンと共に三フッ化ホウ素アミン錯体をその場生成するための、正味の三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エーテレートの混合物、を混合する
ことを含む硬化可能なエポキシ組成物の調製方法を目的とする。
【0034】
本開示は、(i)芳香族アミン;ならびに(ii)本明細書に記載される促進剤組成物か、代わりに(1)カルボキシレートリガンドとの金属錯体及び(2)芳香族アミンと共に三フッ化ホウ素アミン錯体をその場生成するための、正味の三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エーテレートの混合物、を混合することを含む硬化組成物の調製方法も目的とする。
【0035】
本開示はさらに、硬化可能なエポキシ組成物を実質的に硬化させるのに十分な時間、温度及び圧力で硬化可能なエポキシ組成物を硬化させる段階を含む硬化樹脂製品の製造方法も目的とする。
【0036】
本開示は、硬化可能なエポキシ組成物を実質的に硬化させるのに十分な時間及び温度で硬化可能なエポキシ組成物を硬化させる本明細書に記載される方法により得られる硬化樹脂製品も目的とする。
【0037】
本開示は、芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化のための本明細書に開示される促進剤組成物の使用又はエポキシ樹脂の硬化のための本明細書に開示される硬化組成物の使用にも関する。
【0038】
本開示に従う使用の1つの態様において、芳香族アミンはジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニル-スルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、1,2-、1,3-及び1,4-ベンゼンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、1,3-キシレンジアミン、1,2-ジアミノ-3,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジメチルアニリン)、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-プロパンジオール-ビス(4-アミノベンゾエート)及びそれらの混合物から選ばれる。しかしながら他のいずれの芳香族アミンも適している。
【0039】
好ましくは、エポキシ樹脂に関する加えられる促進剤組成物の量は、樹脂の100部当たりに0.01から15部まで、最も好ましくは樹脂の100部当たりに0.1から5部までの範囲内である。
【0040】
最後に、本開示は本明細書に開示される使用から得られる硬化樹脂製品に関する。
【0041】
驚くべきことに、芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化を促進するための2種の既知の触媒の混合物は、単独の触媒を合わせることから予測される硬化時間と比較して実質的により速い硬化時間に、すなわち明確な相乗効果に導く。
【0042】
これらの新規な促進剤組成物は、芳香族アミンを、特にジエチルトルエンジアミンを、短い硬化サイクル時間がより有利になるという要求が過去数年に及んで非常に大きくなりつつある工業的用途のために魅力的なものとする。
【0043】
芳香族硬化剤ジエチルトルエンジアミン(DETDA)を用いる標準的なビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル(BADGE)の硬化について、新規な促進剤組成物を試験した。さまざまな化学量論比及び重量比において、複数のカルボキシレートリガンドと金属錯体及び三フッ化ホウ素錯体とからなる促進剤組成物を試験した。
【0044】
本明細書で開示される促進剤又は硬化組成物はいずれの適したエポキシ樹脂とも一緒に用いられる場合がある。エポキシ樹脂は少なくとも2つのエポキシド基を含むモノマー性、オリゴマー性又はポリマー性化合物の場合がある。さらにエポキシ樹脂は脂肪族、脂環式、芳香族、環式、複素環式又はそれらの混合物の場合がある。また、エポキシ樹脂は飽和又は不飽和、置換又は非置換の場合がある。本開示の促進剤又は硬化組成物を用いる硬化に有用なエポキシ樹脂のリストは、Lee,H.and Neville,K.“Handbook of Epoxy Resisns”,McGraw-Hill Book Company,New York,1967,Chapter 2,pages 257-307中に見い出され得る。
【0045】
有用なエポキシ樹脂のいくつかの制限ではない例は、トリメチロールプロパンエポキシドのようなエピハロヒドリンとポリグリコールの反応から製造される脂肪族エポキシド;ジグリシジル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-F-ジグリシジルエーテル;レゾルシノールジグリシジルエーテル;パラ-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルのようなハロゲンを含むエポキシ樹脂;エポキシド化フェノールノボラック、エポキシド化ビスフェノール-Aノボラック及びオキサゾリドン-修飾エポキシ樹脂;エポキシ末端ポリオキサゾリドン;及びそれらの混合物である。
【0046】
芳香族アミンは、エポキシ樹脂の硬化(curing)(又は硬化(hardening))に適したいずれのそのような化合物の場合もある。制限ではない例はジエチルトルエンジアミン(DETDA)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)(ジエチルDDM)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)を含む。
【0047】
本明細書に開示される促進剤組成物は、硬化に、予測されなかった相乗的促進効果を示す。新規な促進剤組成物は既知の系と比較して最高で約3倍速く硬化させる。さらに、130℃における等温硬化後のガラス転移温度(Tg)増強(build up)はずっと速く(130℃において10分間で約30-50℃より高い)、それはより速い離型性(demoldability)に及び従って短い硬化サイクルに導く重要な特徴である。
【0048】
以下の実施例から詳細を知ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
実施例
等モル比で(100重量部のAraldite(登録商標) GY 250,24.1重量部のLonzacure(登録商標) DETDA 80)ジエチルトルエンジアミン(LonzaからのLonzacure(登録商標) DETDA 80)を用い、標準的なBADGE(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)樹脂(Huntsman Corp.又はその関連会社から入手可能なAraldite(登録商標) GY 250)を130℃で等温硬化させ、示差走査熱量測定(Dynamic Scanning
Calorimetry)(DSC)により追跡した。促進剤種(accelerator species)として、亜鉛オクトエート(Alfa Aesar)、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体(Sigma Aldrich)及び本開示に従う種々の混合物を調べた。
【0050】
【表1】
【0051】
亜鉛、錫及びクロムカルボキシレートの三フッ化ホウ素エチルアミン錯体との混合物は、硬化速度及びTg増強に有意な相乗的触媒効果を示す。
【0052】
【表2】
【0053】
錫オクトエート又は触媒負荷量の増加は硬化速度の向上に導く。高すぎる錫オクトエート又は触媒負荷量はより低い最終的なTgに導く場合がある。結局、高い最終的なTgと組み合わされた速い硬化速度を得るために、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体と一緒の錫オクトエートの最適な触媒負荷量及びモル比、すなわち0.5-2.0のモル比を以て0.005-0.015モルがある。しかしながら、主に反応の速度が重要な場合、他の配合組成(formulation)がより興味深い場合がある。
【0054】
【表3】
【0055】
三フッ化ホウ素錯体と錫オクトエートのすべての混合物は硬化速度及びTg増強に有意
な相乗的触媒効果を示す。
【0056】
上記で開示された主題は例であり、制限的ではないと考えられるべきであり、添付の請求項は本開示の真の範囲内に含まれるすべてのそのような修正、強調及び他の態様を包含することが意図されている。かくして本開示の範囲は法律により許される最大の程度まで以下の請求項及びそれらの同等事項の許され得る最も広い解釈により決定されるべきであり、前記の詳細な記述により限定されるか又は制限されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カルボキシレートリガンドとの金属錯体;及び
(b)三フッ化ホウ素フェノール錯体
を含み、
(a)対(b)の化学量論比が1:3から3:1までの範囲内であり、かつ
カルボキシレートリガンドがオクトエート、ネオデカノエート及びナフテネートから選ばれる、
芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化のための促進剤組成物。
【請求項2】
カルボキシレートリガンドとの金属錯体の金属カチオンが亜鉛、錫及びクロムから選ばれる請求項1に記載の促進剤組成物。
【請求項3】
三フッ化ホウ素フェノール錯体のフェノールがフェノール、2-メチルフェノール、3-メチルフェノール及び4-メチルフェノールから選ばれる請求項1又は2に記載の促進剤組成物。
【請求項4】
(i)硬化剤としての芳香族アミン;ならびに
(ii)請求項1ないしのいずれかに記載の促進剤組成
を含む、エポキシ樹脂の硬化のための硬化組成物。
【請求項5】
(i)エポキシ樹脂;
(ii)硬化剤としての芳香族アミン;及び
(iii)請求項1ないしのいずれか1つに記載の促進剤組成物
を含む硬化可能なエポキシ組成物。
【請求項6】
エポキシ樹脂に関する加えられる促進剤組成物の量がエポキシ樹脂の100部当たりに0.01から15部までの促進剤組成物の範囲内である請求項に記載の硬化可能なエポキシ組成物。
【請求項7】
(i)エポキシ樹脂;(ii)芳香族アミン;ならびに(iii)請求項1ないしのいずれか1つに記載の促進剤組成物を含む、硬化可能なエポキシ組成物の調製方法。
【請求項8】
硬化可能なエポキシ組成物を実質的に硬化させるのに十分な時間及び温度で請求項に記載の硬化可能なエポキシ組成物を硬化させる段階を含む硬化樹脂製品の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法により得られる硬化可能な樹脂製品。
【請求項10】
芳香族アミンを用いるエポキシ樹脂の硬化のための請求項1ないしのいずれかに記載の促進剤組成物の使用、又はエポキシ樹脂の硬化のための請求項に記載の硬化組成物の使用。
【請求項11】
芳香族アミンがジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、1,2-、1,3-及び1,4-ベンゼンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、1,3-キシレンジアミン、1,2-ジアミノ-3,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジメチルアニリン)、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-プロパンジオール-ビス(4-アミノベンゾエート)及びそれらの混合物から選ばれる請求項10に記載の使用。
【請求項12】
エポキシ樹脂に関する加えられる促進剤組成物の量が樹脂の100部当たりに0.01から15部までの範囲内である請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれかに記載の使用から得られる硬化樹脂製品。

【外国語明細書】