(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026263
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】三次元ガラスセラミック物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 23/03 20060101AFI20240220BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240220BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C03B23/03
C03C21/00 101
C03B32/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204559
(22)【出願日】2023-12-04
(62)【分割の表示】P 2021524165の分割
【原出願日】2019-11-05
(31)【優先権主張番号】62/755,787
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ローヒット ライ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ロバート ジュニア サルツァー
(72)【発明者】
【氏名】リェルカ ウクラインツィク
(72)【発明者】
【氏名】シブジナ ジャン ワシントン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ イマーマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガラス物品をセラミック化して形成した三次元(3D)ガラスセラミック物品を提供する。
【解決手段】三次元ガラスセラミック物品は、0.1mmから2mmの厚さを有し、±0.1mm以下の寸法精度制御を有する。また、0.8mmの試料厚さにおいて、400nmから800nmの波長で85%以上の透過率を含む。三次元ガラスセラミック物品を形成する方法は、有核ガラス物品を金型に入れる工程、及び有核ガラス物品を結晶化温度に加熱する工程を含み、加熱工程中、有核ガラス物品は金型内にある。次に、有核ガラス物品を結晶化し、三次元ガラスセラミック物品を形成するのに十分な時間、結晶化温度で有核ガラス物品を保持する工程であって、該保持工程中、有核ガラス物品が金型内にある、工程、及び金型から三次元ガラスセラミック物品を取り出す工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1mmから2mmの試料厚さを有する三次元ガラスセラミック物品であって、
セラミック形成前の前記物品の3D形状と、セラミック形成後の前記物品の3D形状の変化が、±0.1mm以下である、三次元ガラスセラミック物品。
【請求項2】
0.8mmの試料厚さにおいて、400nmから800nmの波長で85%以上の透過率を含む、請求項1に記載の三次元ガラスセラミック物品。
【請求項3】
ヘイズが0.40%以下であり、
複屈折が5.0nm未満であり、かつ
平坦度の偏差が0.10nm以下である、
請求項1又は請求項2に記載の三次元ガラスセラミック物品。
【請求項4】
前記三次元ガラスセラミック物品が強化されており、340MPa以上かつ400MPa以下の圧縮応力を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の三次元ガラスセラミック物品。
【請求項5】
前記三次元ガラスセラミック物品が強化されており、100MPa以上かつ150MPa以下の中央張力を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元ガラスセラミック物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、ここに参照することによってその内容全体が援用される、2018年11月5日出願の「三次元ガラスセラミック物品の製造方法(Methods of Making Three Dimensional Glass Ceramic Articles)」と題された米国仮特許出願第62/755787号の利益及び優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、ガラス物品をセラミック化して三次元(3D)ガラスセラミック物品を形成する方法に関し、特に、ガラス物品をセラミック化して三次元ガラスセラミック物品を形成する方法、並びにそれによって形成される物品に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯用電子機器に使用することができる透明なカバーに対する需要は、引き続き存在している。ガラス、ジルコニア、プラスチック、金属、及びガラスセラミックなど、幾つかの材料が、現在、携帯用電子機器のカバーとして使用されている。透明なガラスセラミックを使用することの利点には、イオン交換されたガラスの強度を超える高い強度、並びに高い透過率が含まれ、これにより、ガラスセラミックは、光学ディスプレイ、アンテナ周波数の全スペクトルのマイクロ波伝送、及び電磁充電に適した選択肢となる。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様は、±0.1mm以下の寸法精度制御を含む、0.1mmから2mmの厚さを有する三次元ガラスセラミック物品を含む。
【0005】
第2の態様は、0.8mmの試料厚さにおいて、400nmから800nmの波長で85%以上の透過率を含む、第1の態様に記載の三次元ガラスセラミック物品を含む。
【0006】
第3の態様は、三次元ガラスセラミック物品がイオン交換によって強化される、第1又は第2の態様に記載の三次元ガラスセラミック物品を含む。
【0007】
第4の態様は、ヘイズが0.40%以下である、第1から第3の態様のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品を含む。
【0008】
第5の態様は、複屈折が5.0nm未満である、第1から第4の態様のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品を含む。
【0009】
第6の態様は、平坦度の偏差が0.10nm以下である、第1から第5の態様のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品を含む。
【0010】
第7の態様は、三次元ガラスセラミック物品が強化されており、340MPa以上かつ400MPa以下の圧縮応力を有する、第1から第6の態様のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品を含む。
【0011】
第8の態様は、三次元ガラスセラミック物品が強化されており、100MPa以上かつ150MPa以下の中央張力を有する、第1から第7の態様のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品を含む。
【0012】
第9の態様は、三次元ガラスセラミック物品が強化されており、0.17×厚さ以上の圧縮の深さを有する、第1から第8の態様のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品を含む。
【0013】
第10の態様は、三次元ガラスセラミック物品を形成する方法を含み、該方法は、有核ガラス物品を金型に入れる工程;有核ガラス物品を結晶化温度に加熱する工程であって、加熱工程中、有核ガラス物品が金型内にある、工程;有核ガラス物品を結晶化し、三次元ガラスセラミック物品を形成するのに十分な時間、結晶化温度で有核ガラス物品を保持する工程であって、該保持工程中、有核ガラス物品が金型内にある、工程;及び、金型から三次元ガラスセラミック物品を取り出す工程を含む。
【0014】
第11の態様は、有核ガラス物品が、金型に入れられたときに、15%以下の結晶相を含む、第10の態様に記載の方法を含む。
【0015】
第12の態様は、有核ガラス物品が、金型に入れられたときに、10%以下の結晶相を含む、第10又は第11の態様に記載の方法を含む。
【0016】
第13の態様は、結晶化温度が600℃以上かつ800℃以下である、第10から第12の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0017】
第14の態様は、有核ガラス物品を結晶化し、三次元ガラスセラミック物品を形成するのに十分な時間が150秒以上かつ450秒以下である、第10から第13の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0018】
第15の態様は、加熱工程又は保持工程のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の間、有核ガラス物品に圧力が印加され、該圧力が0.10MPa以上かつ1.00MPa以下である、第10から第14の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0019】
第16の態様は、方法が、保持工程の後に、三次元ガラスセラミック物品を冷却する工程をさらに含む、第10から第15の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0020】
第17の態様は、三次元ガラスセラミック物品を形成する方法を含み、該方法は、非晶質ガラス物品を金型に入れる工程;非晶質ガラス物品を核形成温度に加熱する工程であって、該加熱工程中、非晶質ガラス物品が金型内にある、工程;非晶質ガラス物品を核形成し、核形成された三次元ガラス物品を形成するのに十分な第1の時間、核形成温度で非晶質ガラス物品を保持する工程であって、該保持工程中、非晶質ガラス物品が金型内にある、工程;核形成された三次元ガラス物品を結晶化温度に加熱する工程であって、該加熱工程中、核形成された三次元ガラス物品が金型内にある、工程;有核ガラス物品を結晶化し、三次元ガラスセラミック物品を形成するのに十分な第2の時間、結晶化温度で核形成された三次元ガラス物品を保持する工程であって、該保持工程中、核形成された三次元ガラス物品が金型内にある、工程;及び、金型から三次元ガラスセラミック物品を取り出す工程を含む。
【0021】
第18の態様は、核形成温度が450℃以上かつ750℃以下である、第17の態様の方法を含む。
【0022】
第19の態様は、第1の時間が1.0時間以上かつ4.0時間以下である、第17又は第18の態様に記載の方法を含む。
【0023】
第20の態様は、結晶化温度が600℃以上かつ800℃以下である、第17から第19の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0024】
第21の態様は、第2の時間が150秒以上かつ450秒以下である、第17から第20の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0025】
第22の態様は、加熱工程又は保持工程のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の間、有核ガラス物品に圧力が印加され、該圧力が0.10MPa以上かつ1.00MPa以下である、第17から第21の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0026】
第23の態様は、方法が、第2の時間、結晶化温度で核形成された三次元ガラス物品を保持した後に、三次元ガラスセラミック物品を冷却する工程をさらに含む、第17から第22の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0027】
第24の態様は、三次元ガラスセラミック物品を形成する方法を含み、該方法は、非晶質ガラス物品を金型に入れる工程;非晶質ガラス物品を核形成温度に加熱する工程であって、該加熱工程中、非晶質ガラス物品が金型内にある、工程;非晶質ガラス物品を核形成し、核形成された三次元ガラス物品を形成するのに十分な時間、核形成温度で非晶質ガラス物品を保持する工程であって、該保持工程中、非晶質ガラス物品が金型内にある、工程;及び、金型から核形成された三次元ガラス物品を取り出す工程を含む。
【0028】
第25の態様は、核形成温度が450℃以上かつ750℃以下である、第24の態様の方法を含む。
【0029】
第26の態様は、非晶質ガラス物品を核形成し、核形成された三次元ガラス物品を形成するのに十分な時間が1.0時間以上かつ4.0時間以下である、第24又は第25の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0030】
第27の態様は、加熱工程又は保持工程のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の間、非晶質ガラス物品に圧力が印加され、該圧力が0.10MPa以上かつ1.00MPa以下である、第24から第26の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0031】
第28の態様は、方法が、ある時間、核形成温度で保持した後に、三次元ガラスセラミック物品を冷却する工程をさらに含む、第24から第27の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0032】
第29の態様は、方法が、核形成された三次元ガラス物品が金型から取り出された後に、核形成された三次元ガラス物品を結晶化する工程をさらに含む、第24から第28の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0033】
実施形態は、非晶質ガラス物品を金型に入れる工程;非晶質ガラス物品を核形成温度に加熱する工程であって、該加熱工程中、非晶質ガラス物品が金型内にある、工程;非晶質ガラス物品を核形成し、核形成された三次元ガラス物品を形成するのに十分な時間、核形成温度で非晶質ガラス物品を保持する工程であって、該保持工程中、非晶質ガラス物品が金型内にある、工程;及び、金型から核形成された三次元ガラス物品を取り出す工程を含む、三次元ガラスセラミック物品を形成する方法を含む。
【0034】
追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その説明から当業者に容易に明らかとなり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含めた本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されよう。
【0035】
前述の概要及び以下の詳細な説明はいずれも、さまざまな実施形態を説明しており、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図していることが理解されるべきである。添付の図面は、さまざまな実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載されるさまざまな実施形態を例証しており、その説明とともに、特許請求の範囲の主題の原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】時間に対する温度の測定値、並びに本明細書に開示され、説明される実施形態によるセラミック化サイクルの核形成及び結晶化(成長)を示すグラフ
【
図1B】本明細書に開示され、説明される実施形態によるセラミック化サイクルにおける、温度に対する核形成速度及び結晶成長速度を示すグラフ
【
図2A】本明細書に開示され、説明される実施形態による三次元ガラス物品を形成するためのプロセスのフローチャート
【
図2B】本明細書に開示され、説明される実施形態による三次元ガラス物品を形成するためのプロセスのフローチャート
【
図2C】本明細書に開示され、説明される実施形態による三次元ガラス物品を形成するためのプロセスのフローチャート
【
図3A】本明細書に開示され、説明される実施形態による3Dガラスセラミック物品の写真
【
図3B】本明細書に開示され、説明される実施形態による、形成されたままの3Dガラスセラミック物品のコンピュータ支援設計(CAD)によって設計された物品に対する偏差を示す概略図
【
図4】本明細書に開示され、説明される実施形態による3Dガラスセラミック物品の写真
【
図5B】形成されたままの3Dガラスセラミック物品のCADによって設計された物品に対する偏差を示す概略図
【
図6B】形成されたままの3Dガラスセラミック物品のCADによって設計された物品に対する偏差を示す概略図
【
図7B】形成されたままの3Dガラスセラミック物品のCADによって設計された物品に対する偏差を示す概略図
【
図8】本明細書に開示され、説明される実施形態による3Dガラスセラミック物品の写真
【
図9】本明細書に開示され、説明される実施形態による3Dガラスセラミック物品の写真
【
図10】本明細書に開示され、説明される実施形態による、アスファルト上への落下試験の結果を示すグラフ
【
図11】本明細書に開示され、説明される実施形態による、80グリットのサンドペーパー上への落下試験の結果を示すグラフ
【
図12A】本明細書に開示され、説明される実施形態による、プレス温度の関数としての150秒間プレスされた3Dガラスセラミックのヘイズを示すグラフ
【
図12B】本明細書に開示され、説明される実施形態による、プレス温度の関数としての150秒間プレスされた3Dガラスセラミックの平坦度の偏差及び寸法精度制御を示すグラフ
【
図12C】本明細書に開示され、説明される実施形態による、プレス温度の関数としての150秒間プレスされた3Dガラスセラミックの複屈折を示すグラフ
【
図13A】本明細書に開示され、説明される実施形態による、プレス時間の関数としての800℃の温度でプレスされた3Dガラスセラミックのヘイズを示すグラフ
【
図13B】本明細書に開示され、説明される実施形態による、プレス時間の関数としての800℃の温度でプレスされた3Dガラスセラミックの平坦度の偏差及び寸法精度制御を示すグラフ
【
図13C】本明細書に開示され、説明される実施形態による、プレス時間の関数としての800℃の温度でプレスされた3Dガラスセラミックの複屈折を示すグラフ
【
図14A】本明細書に開示され、説明される実施形態による、プレス時間の関数としての810℃の温度でプレスされた3Dガラスセラミックのヘイズを示すグラフ
【
図14B】本明細書に開示され、説明される実施形態による、プレス時間の関数としての810℃の温度でプレスされた3Dガラスセラミックの平坦度の偏差及び寸法精度制御を示すグラフ
【
図14C】本明細書に開示され、説明される実施形態による、プレス時間の関数としての810℃の温度でプレスされた3Dガラスセラミックの複屈折を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0037】
これより、その実施形態が添付の図面に示されている、三次元ガラス物品をセラミック化するための方法の実施形態を詳細に参照する。可能な場合はいつでも、同一又は類似した部分についての言及には、図面全体を通して同じ参照番号が用いられる。実施形態では、0.4mmから2mmの厚さを有し、±0.1mm以下の寸法精度制御を含む三次元ガラスセラミック物品が提供される。実施形態には、このような三次元ガラス物品の製造方法も含まれる。
【0038】
図1Aを参照すると、ガラスセラミックを形成するために、ガラス前駆体は、結晶核を発達させるのに十分な時間、そのアニール点を超える温度で加熱される(「核形成」とも呼ばれる)。熱処理は、例えば、徐冷炉又は加熱炉内で実施することができる。
図1Aに示されるように、核形成プロセスは、非晶質ガラス内に小さい結晶核を形成する。この状態では、物品は、非晶質ガラス物品に関連する多くの特性を維持し、かつ、3D成形可能なように十分に粘性がある。物品は、約10%の結晶相を発達させうる。アニール点を超えて加熱された後、ガラスは次に、通常はガラスのアニール点とガラスの軟化点との間のより高い温度でさらに加熱され、結晶相を発達させる(「成長」又は「結晶化」とも呼ばれる)。
図1Aに示されるように、結晶化段階では、(核形成段階で形成された)核の周りに、高温での時間の経過とともに、より大きい結晶が成長する。物品がますます結晶化するにつれて(例えば結晶がますます大きくなると)、物品の特性はますます結晶性セラミックのようになり、物品は3D成形可能ではなくなる。多くの場合、熱処理又はセラミック化プロセスは、前駆体ガラスを核形成温度に加熱すること、核形成温度を所定の時間維持すること、有核ガラスを結晶化温度に加熱すること、及び結晶化温度を所定の時間維持することを含む。
【0039】
歴史的に、核形成の温度と時間は、
図1Bに示されるように、ガラス転移温度(Tg)又はアニール温度を経験的に上回るように選択される。同様に、成長の温度と時間もまた、核形成温度を経験的に上回るように選択される。有益な時間と温度は、処理の核形成段階及び成長段階の時間と温度の両方を変更することによって達成することができる。核形成事象と結晶成長事象は、しばしば重複する。したがって、粘度などの物理的特性は、核形成と成長の両方の工程において、時間の関数として発展する。しかしながら、密度及び/又は粘度の増加の速度は、核形成段階から成長段階へと移行するときに変化する。
【0040】
ガラスシートは、ガラスセラミック物品を形成するのに適している任意のガラス組成物から作製することができるが、ガラスシートのガラス組成物は、ガラスセラミック物品の機械的及び光学的特性に影響を与える可能性があるものと理解されたい。さまざまな実施形態では、ガラス組成物は、結果的に得られるガラスセラミック物品が、ペタライト結晶相とケイ酸リチウム結晶相とを有するように選択される。幾つかの実施形態では、ペタライト結晶相及びケイ酸リチウム結晶相は、ガラスセラミック物品中に存在する他の結晶相よりも高い質量パーセントを有する。
【0041】
さまざまな実施形態では、ガラス組成物は、スロットドロー、フロート、圧延、及び当技術分野で知られている他のシート成形プロセスを含むがこれらに限定されないプロセスを介して、シートへと製造することができる。
【0042】
3Dガラスセラミック物品を形成するための従来のプロセスでは、前駆体ガラスシートは、従来のプロセスによって形成され、完全に非晶質の状態にある間(核形成が行われる前など)に金型に入れられる。前駆体ガラスは、所望の3D形状へと成形され、したがって、3Dガラス物品を形成するのに十分な時間、加熱し、金型に機械的圧力を加えることなどによって、金型内で3Dガラス物品が形成される。3Dガラス物品が形成されると、該3Dガラス物品は、伝統的には、金型から3Dガラス物品を取り出し、該3Dガラス物品を加熱炉又は徐冷炉内に入れ、そこで、上記のように、3Dガラス物品がセラミック化される温度に3Dガラス物品が供されることによって、3Dガラス物品をセラミック化し、3Dガラスセラミック物品を形成する。
【0043】
しかしながら、このセラミック化サイクル中に、結晶化に起因して体積変化が生じ、したがって、形成された3D形状が歪むことがよくある。言い換えると、3Dガラス物品は、セラミック処理中に、多くの場合、予期しない、制御するのが困難な方法で形状が変化する。
【0044】
より具体的には、約15質量%を超える結晶相を有するガラスセラミックは、小さい曲げ半径(<10mm)を有する家庭用電化製品のカバー形状へと成形することができない。15質量%を超える結晶相を有するガラスセラミックの3D成形物品を入手するための1つの選択肢は、前駆体ガラスを形成し、次いで、得られた3D物品をセラミック化することである。しかしながら、3D物品は、セラミック化されると、高密度化及び体積変化を被る。3D物品は、セラミック化サイクル中、低粘度に対応する温度をとり、これは、とりわけ、3D物品が家庭用電化製品のカバーガラスに通常用いられる薄いガラス(0.4mm~1.5mmの範囲の厚さ)でできている場合には、変形しやすくなりうる。したがって、未焼成のガラスで作られたセラミック化された3D成形品の±0.100mm以下の精度公差を達成するために、3D物品はセラミック化プロセス中、金型に保持される。通常のセラミック化プロセスは1時間(hr)より長く、したがって、精密金型での3Dカバーガラス物品のセラミック化にはコストがかかる。加えて、金型でのこのように長いタクトタイムとセラミック化サイクルの期間中の低い粘度では、金型の寿命が非常に短く、3Dセラミック物品のコストがさらに増加する。家庭用電化製品の3D構成要素の厳しい公差(±100μm未満の公差など)を所与とすると、この形状の変化は許容できない物品を生じさせる可能性がある。
【0045】
したがって、セラミック化プロセスの実施後に、3D物品の設計された形状により厳密に一致する3Dガラスセラミック物品を形成するためのプロセスが必要である。0.4mmから約2mmの範囲の厚さを有する3D形状の薄いガラス物品のセラミック化は、2つの金型間で圧縮下に保持せずに3D形状にセラミック化する場合には容易に変形するため、とりわけ困難である。
【0046】
本明細書に開示され、説明される実施形態は、物品が金型内にある間にセラミック化プロセスの少なくとも一部を実施することによって、従来の3Dガラスセラミックプロセスの上記の問題に対処する。実施形態によれば、少なくともセラミック化プロセスの結晶化段階は、金型内で行われる。
【0047】
金型内での核形成前のガラスの結晶化
幾つかの実施形態によれば、未焼成のガラスシート(前駆体ガラス又は前駆体ガラスシートとも呼ばれる)は、従来の核形成方法を使用して、加熱炉又は徐冷炉内で核形成される。プロセスの3つのフローチャートが
図2A~2Cに示されている。
図2A~2Cの各フローチャートは、前駆体ガラスシートから始まり、核形成の後に3D成形する。しかしながら、実施形態では、ガラスシートは、核形成の前に(エッジの予備成形、ラップ仕上げ、研磨、及びコンピュータ数値制御(CNC)によるエッジ機械加工などによって)処理される(
図2A及び2B)。実施形態では、ガラスシートは、このような処理の前に核形成される(
図2C)。
図2A~2Cに示されている各実施形態では、3D CNC、研磨、及び強化(イオン交換などによって)などのさらなる処理は、2金型プロセスでの3D成形及びセラミック化の後に実行することができ、これについては、以下に詳しく説明する。結晶化段階が始まる前に、有核ガラス物品は、加熱炉又は徐冷炉から取り出され、金型に入れられる。実施形態では、有核ガラスは、該有核ガラスを金型に入れる前に、核形成温度から室温まで(又は核形成温度と室温の間の任意の温度まで)冷却されうる。この冷却により、有核ガラスの応力を緩和させることができる。有核ガラスは室温に戻され、3D成形用のプリフォームへとラップ仕上げ及び研磨される。あるいは、有核ガラスをプリフォーム形状へと切断だけして金型に入れることもできる。しかしながら、この場合、有核ガラスの表面は粗く、核形成中に表面に欠陥が生じる可能性があり、したがって、金型が損傷し、金型の寿命が短くなる可能性がある。したがって、型に置かれる前に、有核シートをラップ仕上げし、研磨することが好ましい。上記のように、ガラスセラミックが結晶化するにつれて、ガラスセラミックを3D成形することはますます困難になる。したがって、ガラスを金型に入れる前に核形成する実施形態では、ガラスは、金型で加熱されたときに十分に粘性になり、所望の曲げ半径へと曲げることができ、3Dガラス物品を作ることができるようになるように、低い結晶相含有量を有することが有利でありうる。したがって、実施形態では、ガラス物品は、金型に入れられたときに、15%以下の結晶相、例えば、14%以下の結晶相、13%以下の結晶相、12%以下の結晶相、11%以下の結晶相、10%以下の結晶相、9%以下の結晶相、8%以下の結晶相、7%以下の結晶相、6%以下の結晶相、又は5%以下の結晶相、例えば、5%の結晶相~15%の結晶相、又は6%の結晶相~14%の結晶相、又は7%の結晶相~13%の結晶相、又は8%の結晶相~12%の結晶相、又は9%の結晶相~11%の結晶相(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)を含む。実施形態によれば、ガラスセラミック組成物は、40%以上かつ45%以下の二ケイ酸リチウム、40%以上かつ45%以下のペタライト、及び0%以上かつ5%以下のメタケイ酸リチウムを含む。
【0048】
このような実施形態における核形成プロセスは特に限定されないが、幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、450℃以上かつ750℃以下、例えば、475℃以上かつ750℃以下、500℃以上かつ750℃以下、525℃以上かつ750℃以下、550℃以上かつ750℃以下、575℃以上かつ750℃以下、600℃以上かつ750℃以下、625℃以上かつ750℃以下、650℃以上かつ750℃以下、675℃以上かつ750℃以下、700℃以上かつ750℃以下、又は725℃以上かつ750℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の温度で核形成されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、450℃以上かつ725℃以下、例えば、450℃以上かつ700℃以下、450℃以上かつ675℃以下、450℃以上かつ650℃以下、450℃以上かつ625℃以下、450℃以上かつ600℃以下、450℃以上かつ575℃以下、450℃以上かつ550℃以下、450℃以上かつ525℃以下、450℃以上かつ500℃以下、又は450℃以上かつ475℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の温度で核形成されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、475℃以上かつ725℃以下、例えば、500℃以上かつ700℃以下、525℃以上かつ675℃以下、550℃以上かつ650℃以下、又は575℃以上かつ625℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の温度で核形成されうる。
【0049】
非晶質ガラス物品は、1.0時間以上かつ4.0時間以下、例えば、1.5時間以上かつ4.0時間以下、2.0時間以上かつ4.0時間以下、2.5時間以上かつ4.0時間以下、3.0時間以上かつ4.0時間以下、又は3.5時間以上かつ4.0時間以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、核形成温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、1.0時間以上かつ3.5時間以下、例えば、1.0時間以上かつ3.0時間以下、1.0時間以上かつ2.5時間以下、1.0時間以上かつ2.0時間以下、又は1.0時間以上かつ1.5時間以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、核形成温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、1.5時間以上かつ3.5時間以下、例えば、2.0時間以上かつ3.0時間以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、核形成温度で保持されうる。
【0050】
有核ガラス物品を金型に入れた後、該有核ガラス物品を結晶化温度まで加熱し、そこで、まだ金型内にある間に有核ガラス製品を結晶化させる。この加熱プロセス中に、有核ガラス(3D成形に適した粘度を有する)が金型の形状に適合し、3Dガラスセラミック物品を形成する。実施形態によれば、ガラスは結晶化温度まで急速に加熱される。この急速な加熱は、有核ガラス内で結晶を急速に成長させ、ガラスセラミックを形成することによって、変形を緩和する。当業者は、ガラスセラミックに十分な数の結晶が形成されると、ガラスセラミックが金型によって引き起こされる損傷を受けにくくなることを理解するであろう。したがって、有核ガラスを結晶化温度まで急速に加熱することにより、結晶がより迅速に形成され、ガラスが欠陥を起こしやすい時間が短縮される。実施形態によれば、結晶化温度は、それが3D成形ガラス物品において70%以上の結晶相及び30%以下のガラス相をもたらすようなものである。有核シートから形成された3Dガラス物品は、徐冷炉内でスタックの一部であるガラスシートをセラミック化するために従来のセラミック化プロセスで用いられている温度よりも50℃以上かつ100℃以下だけ高い温度で結晶化されうる。この温度上昇により、結晶成長時間を約0.5~1時間(従来のプロセス)から約1~2分へと短縮することができる。実施形態によれば、結晶化温度は、600℃以上かつ850℃以下、例えば、625℃以上かつ850℃以下、650℃以上かつ850℃以下、675℃以上かつ850℃以下、700℃以上かつ850℃以下、725℃以上かつ850℃以下、750℃以上かつ850℃以下、又は775℃以上かつ850℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態によれば、結晶化温度は、600℃以上かつ825℃以下、例えば、600℃以上かつ800℃以下、600℃以上かつ775℃以下、600℃以上かつ750℃以下、600℃以上かつ725℃以下、600℃以上かつ700℃以下、600℃以上かつ675℃以下、600℃以上かつ650℃以下、又は600℃以上かつ625℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、結晶化温度は、625℃以上かつ775℃以下、例えば、650℃以上かつ750℃以下、又は675℃以上かつ725℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。
【0051】
有核ガラス物品は、90秒以上かつ450秒以下、例えば、100秒以上かつ450秒以下、125秒以上かつ450秒以下、150秒以上かつ450秒以下、175秒以上かつ450秒以下、200秒以上かつ450秒以下、225秒以上かつ450秒以下、250秒以上かつ450秒以下、275秒以上かつ450秒以下、300秒以上かつ450秒以下、325秒以上かつ450秒以下、350秒以上かつ450秒以下、375秒以上かつ450秒以下、400秒以上かつ450秒以下、400秒以上かつ450秒以下、又は425秒以上かつ450秒以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、結晶化温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、有核ガラス物品は、90秒以上かつ425秒以下、例えば、90秒以上かつ400秒以下、90秒以上かつ375秒以下、90秒以上かつ350秒以下、90秒以上かつ325秒以下、90秒以上かつ300秒以下、90秒以上かつ275秒以下、90秒以上かつ250秒以下、90秒以上かつ225秒以下、90秒以上かつ200秒以下、90秒以上かつ175秒以下、90秒以上かつ150秒以下、90秒以上かつ125秒以下、又は90秒以上かつ100秒以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、結晶化温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、有核ガラス物品は、175秒以上かつ425秒以下、例えば、200秒以上かつ400秒以下、225秒以上かつ375秒以下、250秒以上かつ350秒以下、又は275秒以上かつ325秒以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、結晶化温度で保持されうる。
【0052】
有核ガラスは、加熱され、結晶化温度で保持された後、0.1℃/秒以上かつ8℃/秒以下、並びに前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲の速度、例えば、0.2℃/秒以上かつ7.5℃/秒以下、又は0.3℃/秒以上かつ7℃/秒以下、又は0.4℃/秒以上かつ6.5℃/秒以下、又は0.5℃/秒以上かつ6℃/秒以下、又は0.6℃/秒以上かつ5.5℃/秒以下、又は0.7℃/秒以上かつ5℃/秒以下、又は0.8℃/秒以上かつ4.5℃/秒以下、又は0.9℃/秒以上かつ4℃/秒以下、又は1.0℃/秒以上かつ3.5℃/秒以下、又は1.1℃/秒以上かつ3℃/秒以下、又は1.2℃/秒以上かつ2.5℃/秒以下、又は1.3℃/秒以上かつ2℃/秒以下、又は1.4℃/秒以上かつ2℃/秒以下、又は1.5℃/秒以上かつ2℃/秒以下の速度で、室温に戻るまでゆっくりと冷却される。実施形態では、ガラスは、結晶化温度から室温へと能動的に冷却されうる。幾つかの実施形態では、ガラスを室温の環境に曝露することにより、ガラスを結晶化温度から室温へと受動的に冷却してもよい。
【0053】
実施形態によれば、金型による結晶化プロセス中に機械的圧力をガラスに印加することができる。特定の理論に縛られはしないが、結晶化プロセス中に金型を通してガラスに圧力を印加すると、金型内のガラスの動きと膨張を物理的に妨げることにより、結晶化プロセス中のガラスの変形が緩和され、また、この圧力の印加は、ガラスを結晶化温度まで急速に加熱可能にしうる。加えて、特定の理論に縛られはしないが、金型を通してガラスに圧力を印加することにより、上に開示された時間など、より短い時間で結晶化を実施することも可能になりうると考えられる。
【0054】
実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.10MPa以上かつ1.00MPa以下、例えば、0.25MPa以上かつ1.00MPa以下、0.40MPa以上かつ1.00MPa以下、0.50MPa以上かつ1.00MPa以下、0.60MPa以上かつ1.00MPa以下、0.75MPa以上かつ1.00MPa以下、0.80MPa以上かつ1.00MPa以下、又は0.90MPa以上かつ1.00MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.10MPa以上かつ0.90MPa以下、例えば、0.10MPa以上かつ0.80MPa以下、0.10MPa以上かつ0.75MPa以下、0.10MPa以上かつ0.60MPa以下、0.10MPa以上かつ0.50MPa以下、0.10MPa以上かつ0.40MPa以下、又は0.10MPa以上かつ0.25MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.25MPa以上かつ0.90MPa以下、例えば、0.40MPa以上かつ0.80MPa以下、又は0.50MPa以上かつ0.75MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.10MPa以上かつ0.50MPa以下、例えば、0.25MPa以上かつ0.50MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。
【0055】
ガラスが結晶化して3Dガラスセラミック物品を形成し、室温まで冷却した後、該3Dガラスセラミック物品は、伝統的かつ一般に知られている仕上げプロセス、例えばコンピュータ数値制御(CNC)加工、研削、研磨、強化(例えば、化学的又は熱的強化)などによって仕上げることができる。
【0056】
金型内でのガラスの核形成及び結晶化
幾つかの実施形態によれば、未焼成の非晶質ガラスシートは、金型内で核形成され、結晶化される。実施形態では、非晶質ガラスは、該非晶質ガラスを金型に入れる前に、室温に冷却されうる。この冷却により、非晶質ガラスの応力の緩和が可能になりうる。
【0057】
非晶質ガラスが金型に入れられると、非晶質ガラスは、450℃以上かつ750℃以下、例えば、475℃以上かつ750℃以下、500℃以上かつ750℃以下、525℃以上かつ750℃以下、550℃以上かつ750℃以下、575℃以上かつ750℃以下、600℃以上かつ750℃以下、625℃以上かつ750℃以下、650℃以上かつ750℃以下、675℃以上かつ750℃以下、700℃以上かつ750℃以下、又は725℃以上かつ750℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の温度で核形成されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、450℃以上かつ725℃以下、例えば、450℃以上かつ700℃以下、450℃以上かつ675℃以下、450℃以上かつ650℃以下、450℃以上かつ625℃以下、450℃以上かつ600℃以下、450℃以上かつ575℃以下、450℃以上かつ550℃以下、450℃以上かつ525℃以下、450℃以上かつ500℃以下、又は450℃以上かつ475℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の温度で核形成されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、475℃以上かつ725℃以下、例えば、500℃以上かつ700℃以下、525℃以上かつ675℃以下、550℃以上かつ650℃以下、又は575℃以上かつ625℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の温度で核形成されうる。
【0058】
非晶質ガラス物品は、1.0時間以上かつ4.0時間以下、例えば、1.5時間以上かつ4.0時間以下、2.0時間以上かつ4.0時間以下、2.5時間以上かつ4.0時間以下、3.0時間以上かつ4.0時間以下、又は3.5時間以上かつ4.0時間以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、核形成温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、1.0時間以上かつ3.5時間以下、例えば、1.0時間以上かつ3.0時間以下、1.0時間以上かつ2.5時間以下、1.0時間以上かつ2.0時間以下、又は1.0時間以上かつ1.5時間以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、核形成温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、1.5時間以上かつ3.5時間以下、例えば、2.0時間以上かつ3.0時間以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、核形成温度で保持されうる。この核形成プロセス中に、ガラスは金型の形状に一致し、3D有核ガラス物品を形成する。
【0059】
核形成後、3Dガラス物品は結晶化温度まで加熱され、有核ガラス物品は、まだ金型内にある間に結晶化される。実施形態によれば、ガラスは結晶化温度まで急速に加熱される。この急速な加熱は、有核ガラス内で結晶を急速に成長させ、ガラスセラミックを形成することによって、変形を緩和する。当業者は、ガラスセラミックに十分な数の結晶が形成されると、金型によってガラスセラミックに欠陥が生じにくくなることを理解するであろう。したがって、ガラス物品を急速に加熱することにより、結晶が急速に形成され、欠陥が形成される可能性のある時間を短縮する。実施形態によれば、結晶化温度は、600℃以上かつ850℃以下、例えば、625℃以上かつ850℃以下、650℃以上かつ850℃以下、675℃以上かつ850℃以下、700℃以上かつ850℃以下、725℃以上かつ850℃以下、750℃以上かつ850℃以下、又は775℃以上かつ850℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態によれば、結晶化温度は、600℃以上かつ825℃以下、例えば、600℃以上かつ800℃以下、600℃以上かつ775℃以下、600℃以上かつ750℃以下、600℃以上かつ725℃以下、600℃以上かつ700℃以下、600℃以上かつ675℃以下、600℃以上かつ650℃以下、又は600℃以上かつ625℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、結晶化温度は、625℃以上かつ775℃以下、例えば、650℃以上かつ750℃以下、又は675℃以上かつ725℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。
【0060】
有核ガラス物品は、90秒以上かつ450秒以下、例えば、100秒以上かつ450秒以下、125秒以上かつ450秒以下、150秒以上かつ450秒以下、175秒以上かつ450秒以下、200秒以上かつ450秒以下、225秒以上かつ450秒以下、250秒以上かつ450秒以下、275秒以上かつ450秒以下、300秒以上かつ450秒以下、325秒以上かつ450秒以下、350秒以上かつ450秒以下、375秒以上かつ450秒以下、400秒以上かつ450秒以下、400秒以上かつ450秒以下、又は425秒以上かつ450秒以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、結晶化温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、有核ガラス物品は、90秒以上かつ425秒以下、例えば、90秒以上かつ400秒以下、90秒以上かつ375秒以下、90秒以上かつ350秒以下、90秒以上かつ325秒以下、90秒以上かつ300秒以下、90秒以上かつ275秒以下、90秒以上かつ250秒以下、90秒以上かつ225秒以下、90秒以上かつ200秒以下、90秒以上かつ175秒以下、90秒以上かつ150秒以下、90秒以上かつ125秒以下、又は90秒以上かつ100秒以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、結晶化温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、有核ガラス物品は、175秒以上かつ425秒以下、例えば、200秒以上かつ400秒以下、225秒以上かつ375秒以下、250秒以上かつ350秒以下、又は275秒以上かつ325秒以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、結晶化温度で保持されうる。
【0061】
有核ガラスは、加熱され、結晶化温度で保持された後、0.1℃/秒~8.0℃/秒(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)、例えば、0.2℃/秒以上かつ7.5℃/秒以下、又は0.3℃/秒以上かつ7℃/秒以下、又は0.4℃/秒以上かつ6.5℃/秒以下、又は0.5℃/秒以上かつ6℃/秒以下、又は0.6℃/秒以上かつ5.5℃/秒以下、又は0.7℃/秒以上かつ5℃/秒以下、又は0.8℃/秒以上かつ4.5℃/秒以下、又は0.9℃/秒以上かつ4℃/秒以下、又は1.0℃/秒以上かつ3.5℃/秒以下、又は1.1℃/秒以上かつ3℃/秒以下、又は1.2℃/秒以上かつ2.5℃/秒以下、又は1.3℃/秒以上かつ2℃/秒以下、又は1.4℃/秒以上かつ2℃/秒以下、又は1.5℃/秒以上かつ2℃/秒以下で、室温に戻るまでゆっくりと冷却される。実施形態では、ガラスは、結晶化温度から室温へと能動的に冷却されうる。幾つかの実施形態では、ガラスを室温の環境に曝露することにより、ガラスを結晶化温度から室温へと受動的に冷却してもよい。
【0062】
幾つかの実施形態によれば、金型による核形成及び結晶化プロセス中に、機械的圧力をガラスに印加することができる。特定の理論に縛られはしないが、核形成及び結晶化プロセス中に金型を通してガラスに圧力を印加すると、金型内のガラスの動きと膨張を物理的に妨げることにより、核形成及び結晶化プロセス中のガラスの変形が緩和され、また、この圧力の印加は、ガラスを結晶化温度まで急速に加熱可能にしうる。加えて、特定の理論に縛られはしないが、金型を通してガラスに圧力を印加することにより、上に開示された時間など、より短い時間で結晶化を実施することも可能になりうると考えられる。
【0063】
実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.10MPa以上かつ1.00MPa以下、例えば、0.25MPa以上かつ1.00MPa以下、0.40MPa以上かつ1.00MPa以下、0.50MPa以上かつ1.00MPa以下、0.60MPa以上かつ1.00MPa以下、0.75MPa以上かつ1.00MPa以下、0.80MPa以上かつ1.00MPa以下、又は0.90MPa以上かつ1.00MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.10MPa以上かつ0.90MPa以下、例えば、0.10MPa以上かつ0.80MPa以下、0.10MPa以上かつ0.75MPa以下、0.10MPa以上かつ0.60MPa以下、0.10MPa以上かつ0.50MPa以下、0.10MPa以上かつ0.40MPa以下、又は0.10MPa以上かつ0.25MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.25MPa以上かつ0.90MPa以下、例えば、0.40MPa以上かつ0.80MPa以下、又は0.50MPa以上かつ0.75MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.10MPa以上かつ0.50MPa以下、例えば、0.25MPa以上かつ0.50MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。
【0064】
ガラスが結晶化して3Dガラスセラミック物品を形成し、室温まで冷却した後、該3Dガラスセラミック物品は、伝統的かつ一般に知られている仕上げプロセス、例えばコンピュータ数値制御(CNC)加工、研削、研磨、強化(例えば、化学的又は熱的強化)などによって仕上げることができる。
【0065】
金型内でのガラスの核形成
幾つかの実施形態によれば、未焼成の非晶質ガラスシートは、金型内で核形成され、金型の外で結晶化される。実施形態では、非晶質ガラスは、非晶質ガラスを金型に入れる前に、室温に冷却されうる。この冷却により、非晶質ガラスの応力の緩和が可能になりうる。
【0066】
非晶質ガラスが金型に入れられると、非晶質ガラスは、450℃以上かつ750℃以下、例えば、475℃以上かつ750℃以下、500℃以上かつ750℃以下、525℃以上かつ750℃以下、550℃以上かつ750℃以下、575℃以上かつ750℃以下、600℃以上かつ750℃以下、625℃以上かつ750℃以下、650℃以上かつ750℃以下、675℃以上かつ750℃以下、700℃以上かつ750℃以下、又は725℃以上かつ750℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の温度で核形成されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、450℃以上かつ725℃以下、例えば、450℃以上かつ700℃以下、450℃以上かつ675℃以下、450℃以上かつ650℃以下、450℃以上かつ625℃以下、450℃以上かつ600℃以下、450℃以上かつ575℃以下、450℃以上かつ550℃以下、450℃以上かつ525℃以下、450℃以上かつ500℃以下、又は450℃以上かつ475℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の温度で核形成されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、475℃以上かつ725℃以下、例えば、500℃以上かつ700℃以下、525℃以上かつ675℃以下、550℃以上かつ650℃以下、又は575℃以上かつ625℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の温度で核形成されうる。
【0067】
非晶質ガラス物品は、1.0時間以上かつ4.0時間以下、例えば、1.5時間以上かつ4.0時間以下、2.0時間以上かつ4.0時間以下、2.5時間以上かつ4.0時間以下、3.0時間以上かつ4.0時間以下、又は3.5時間以上かつ4.0時間以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、核形成温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、1.0時間以上かつ3.5時間以下、例えば、1.0時間以上かつ3.0時間以下、1.0時間以上かつ2.5時間以下、1.0時間以上かつ2.0時間以下、又は1.0時間以上かつ1.5時間以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、核形成温度で保持されうる。幾つかの実施形態では、非晶質ガラス物品は、1.5時間以上かつ3.5時間以下、例えば、2.0時間以上かつ3.0時間以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の時間、核形成温度で保持されうる。この核形成プロセス中に、ガラスは金型の形状に一致し、3D有核ガラス物品を形成する。
【0068】
幾つかの実施形態によれば、金型による核形成プロセス中に、機械的圧力をガラスに印加することができる。特定の理論に縛られはしないが、核形成プロセス中に金型を通してガラスに圧力を印加すると、金型内のガラスの動きと膨張を物理的に妨げることにより、核形成プロセス中のガラスの変形が緩和される。
【0069】
実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.10MPa以上かつ1.00MPa以下、例えば、0.25MPa以上かつ1.00MPa以下、0.40MPa以上かつ1.00MPa以下、0.50MPa以上かつ1.00MPa以下、0.60MPa以上かつ1.00MPa以下、0.75MPa以上かつ1.00MPa以下、0.80MPa以上かつ1.00MPa以下、又は0.90MPa以上かつ1.00MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.10MPa以上かつ0.90MPa以下、例えば、0.10MPa以上かつ0.80MPa以下、0.10MPa以上かつ0.75MPa以下、0.10MPa以上かつ0.60MPa以下、0.10MPa以上かつ0.50MPa以下、0.10MPa以上かつ0.40MPa以下、又は0.10MPa以上かつ0.25MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.25MPa以上かつ0.90MPa以下、例えば、0.40MPa以上かつ0.80MPa以下、又は0.50MPa以上かつ0.75MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、ガラスに印加される圧力は、0.10MPa以上かつ0.50MPa以下、例えば、0.25MPa以上かつ0.50MPa以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。
【0070】
核形成後、3D有核ガラス物品は、金型から取り出され、次に、金型の外、例えば、加熱炉又は徐冷炉内で結晶化温度まで加熱される。有核3Dガラス物品を結晶化するために、任意の従来の結晶化プロセスを使用することができるものと理解されたい。実施形態によれば、結晶化温度は、600℃以上かつ850℃以下、例えば、625℃以上かつ850℃以下、650℃以上かつ850℃以下、675℃以上かつ850℃以下、700℃以上かつ850℃以下、725℃以上かつ850℃以下、750℃以上かつ850℃以下、又は775℃以上かつ850℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態によれば、結晶化温度は、600℃以上かつ825℃以下、例えば、600℃以上かつ800℃以下、600℃以上かつ775℃以下、600℃以上かつ750℃以下、600℃以上かつ725℃以下、600℃以上かつ700℃以下、600℃以上かつ675℃以下、600℃以上かつ650℃以下、又は600℃以上かつ625℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。幾つかの実施形態では、結晶化温度は、625℃以上かつ775℃以下、例えば、650℃以上かつ750℃以下、又は675℃以上かつ725℃以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)でありうる。結晶化プロセスの時間は、上に開示されたものを含む、任意の適切な時間でありうる。
【0071】
実施形態による方法は、任意の既知のガラス前駆体組成物に対して使用することができるが、幾つかの実施形態では、ガラス前駆体は、酸化物基準で、以下の表1に提供される範囲内に入る組成を有する:
【0072】
【0073】
幾つかの実施形態では、ガラス前駆体は、酸化物基準で、下記の表2に示されるような組成を有する:
【0074】
【0075】
ガラスが結晶化して3Dガラスセラミック物品を形成し、室温まで冷却した後、該3Dガラスセラミック物品は、伝統的かつ一般に知られている仕上げプロセス、例えばコンピュータ数値制御(CNC)加工、研削、研磨、強化(例えば、化学的又は熱的強化)などによって仕上げることができる。
【0076】
実施形態では、3Dガラスセラミックは、イオン交換強化などによって化学的に強化することができる。イオン交換強化は、3Dガラスセラミックを溶融塩浴に浸漬することなどにより、3Dガラスセラミックを溶融塩に曝露することによって提供することがで、あるいは、溶融塩を3Dガラスセラミックの1つ以上の表面に噴霧又は他の方法で施すことなどにより、3Dガラスセラミックの1つ以上の表面に溶融塩を施すことによって提供することができる。実施形態では、溶融塩は、硝酸アルカリ(硝酸カリウム(KNO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、及び硝酸リチウム(LiNO3)など)、亜硝酸アルカリ(亜硝酸カリウム(KNO2)、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)、及び亜硝酸リチウム(LiNO2)など)、並びにケイ酸を含む。アルカリ硝酸塩、アルカリ亜硝酸塩、及びケイ酸のさまざまな組合せを使用することができる。実施形態では、溶融塩は、50.0質量%以上かつ70.0質量%以下のKNO3、30.0質量%以上かつ50.0質量%以下のNaNO3を含むことができる。実施形態では、溶融塩は、上乗せ添加として0.1質量%以上かつ0.7質量%以下の量で加えた、LiNO3、NaNO2、及びケイ酸のうちの1つ以上を含みうる。上乗せ添加とは、本明細書で用いられる場合には、組成物の100%に対する量の成分の添加を指す。溶融塩が70g(70質量%)のKNO3及び30g(30質量%)のNaNO3を含む非限定的かつ単純化された例として、1質量%のLiNO3の上乗せ添加は、1gのLiNO3(すなわち、100gのKNO3及びNaNO3の1%)になるであろう。溶融塩浴は、450℃以上かつ600℃以下、例えば、450℃以上かつ550℃以下、又は約500℃の温度へと加熱されうる。実施形態では、3Dガラスセラミックは、3時間以上かつ8時間以下、例えば、4時間以上かつ8時間以下、5時間以上かつ8時間以下、又は6時間以上かつ8時間以下の時間、溶融塩浴中で処理されうる。実施形態では、3Dガラスセラミックは、3時間以上かつ5時間以下、例えば、3時間以上かつ4時間以下の時間、溶融塩浴中で処理されうる。
【0077】
本明細書に開示され、説明される実施形態に従って製造された3Dガラスセラミック物品は、徐冷炉を使用してセラミック化されたガラス物品と比較して、溶融塩浴からガラス物品へのイオンのより速い拡散を可能にすることが見出された。特定の理論に縛られはしないが、溶融塩浴から3Dガラスセラミック物品へのこのより速いイオンの拡散は、本明細書に開示され、説明される実施形態に従って製造された3Dガラスセラミックの熱履歴が、徐冷炉内で形成されたガラス物品の熱履歴とは異なるために起こると考えられる。すなわち、徐冷炉内でセラミック化された物品は、反りを制御するためにゆっくりと冷却されるのに対し、本明細書に開示され、説明される実施形態に従って製造された3Dガラスセラミック物品では、該3Dガラスセラミック物品を急速に冷却することができる。3Dガラスセラミック物品のこの改善されたイオン交換プロセスによって達成される特性は、以下及び付随する実施例において説明される。
【0078】
3Dガラスセラミックに化学強化が行われた後、実施形態では、3Dガラスセラミックは、340MPa以上かつ400MPa以下、例えば、345MPa以上かつ400MPa以下、350MPa以上かつ400MPa以下、355MPa以上かつ400MPa以下、360MPa以上かつ400MPa以下、365MPa以上かつ400MPa以下、370MPa以上かつ400MPa以下、375MPa以上かつ400MPa以下、380MPa以上かつ400MPa以下、385MPa以上かつ400MPa以下、390MPa以上かつ400MPa以下、395MPa以上かつ400MPa以下、395MPa以上かつ400MPa以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲の圧縮応力(CS)を有する。実施形態では、3Dガラスセラミックに化学強化が行われた後、3Dガラスセラミックは、340MPa以上かつ395MPa以下、例えば、340MPa以上かつ390MPa以下、340MPa以上かつ385MPa以下、340MPa以上かつ380MPa以下、340MPa以上かつ375MPa以下、340MPa以上かつ370MPa以下、340MPa以上かつ365MPa以下、340MPa以上かつ360MPa以下、340MPa以上かつ355MPa以下、340MPa以上かつ350MPa以下、340MPa以上かつ345MPa以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲のCSを有する。実施形態では、3Dガラスセラミックに化学強化が行われた後、3Dガラスセラミックは、200MPa以上かつ395MPa以下、例えば、250MPa以上かつ390MPa以下、300MPa以上かつ385MPa以下、360MPa以上かつ380MPa以下、325MPa以上かつ375MPa以下、並びにそれらの間のすべての範囲及び部分範囲のCSを有する。CSは、膜応力測定(FSM)システムを使用して測定し、表面近くの圧縮応力を測定する。
【0079】
FSM測定に関しては、この測定は、例えば、折原製作所(日本所在)によって製造されたFSM-6000などの市販の機器を使用して実施することができる。表面応力測定は、ガラスセラミックの複屈折に関連する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依拠している。SOCは、その内容全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、「ガラス応力-光学係数の測定のための標準試験方法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient)」と題されたASTM規格C770-16に記載される手順C(ガラスディスク法)に準拠して測定される。
【0080】
3Dガラスセラミックに化学強化が行われた後、実施形態では、3Dガラスセラミックは、100MPa以上かつ150MPa以下、例えば、105MPa以上かつ150MPa以下、110MPa以上かつ150MPa以下、115MPa以上かつ150MPa以下、120MPa以上かつ150MPa以下、125MPa以上かつ150MPa以下、130MPa以上かつ150MPa以下、135MPa以上かつ150MPa以下、140MPa以上かつ150MPa以下、145MPa以上かつ150MPa以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲の中央張力(CT)を有する。実施形態では、3Dガラスセラミックに化学強化が行われた後、3Dガラスセラミックは、100MPa以上かつ145MPa以下、例えば、100MPa以上かつ140MPa以下、100MPa以上かつ135MPa以下、100MPa以上かつ130MPa以下、100MPa以上かつ125MPa以下、100MPa以上かつ120MPa以下、100MPa以上かつ115MPa以下、100MPa以上かつ110MPa以下、100MPa以上かつ105MPa以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲のCTを有する。実施形態では、3Dガラスセラミックに化学強化が行われた後、3Dガラスセラミックは、90MPa以上かつ145MPa以下、例えば、110MPa以上かつ140MPa以下、115MPa以上かつ135MPa以下、120MPa以上かつ130MPa以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲のCTを有する。CTは、6次多項式フィットを使用して、SLP2000(405nm)で測定した。
【0081】
6次多項式フィットを使用するSLP2000(405nm)に関して、この測定は、圧縮の深さと中央張力を取得するために用いられる405nmで動作するOriharaSLP2000散乱光光弾性応力計を使用して実行することができる。405nmの波長はスペックルを最小化すると考えられることから、透明なガラスセラミックにとって405nmの波長は特に有利でありうる。しかしながら、スペックルが大幅に増加する可能性があるが、より高い波長(例えば、633nm)を使用することもできる。このような幾つかの実施形態では、測定中に試験片を動かすことによってスペックルを平均化することができる。
【0082】
Orihara SLP2000には、2倍の倍率のテレセントリックレンズが組み込まれており、深さ方向に最大600μmのカメラ視野を実現する。しかしながら、ガラスセラミックの高屈折率の性質に起因して、深さの知覚を約800μmまで拡張することができ、SLP2000を使用して、本明細書に記載されるさまざまなガラスセラミック物品の完全な応力プロファイル測定を得ることができる。
【0083】
動作中、405nmのレーザダイオードは、ガラスセラミックに入る前に、液晶可変リターダを介して周期的に位相変調される。ガラスセラミックの応力分布に起因して、散乱光はガラスセラミックの厚さを通過するときに強度と位相の変化を経験する。光は全方向に散乱するが、ガラスセラミックの表面に対して45°に設定されたカメラは、レーザ経路に沿った強度変動の垂直成分をキャプチャする。レーザ経路に沿った各点で経験する位相シフトは、画像分析によってキャプチャされ、内部応力σは次式(2)に従って推定することができる:
【0084】
【0085】
式中、λはレーザの波長であり、βは応力光学係数(SOC)であり、φは位相シフトであり、xは光路長である。
【0086】
SLP2000ソフトウェアは、試料内のレーザビームのライブ表示を提供する。さまざまな実施形態では、6次多項式フィットを使用して、さまざまなガラスセラミック試料にわたって一貫した結果を提供することができる。しかしながら、処理領域、レーザ波長、及び適切なフィッティング関数は、特定の実施形態に応じて変化しうる。
【0087】
3Dガラスセラミックに化学強化が行われた後、実施形態では、3Dガラスセラミックは、0.17×厚さ以上の圧縮の深さ(DOC)を有する。DOCは、6次多項式フィットを使用して、SLP2000(405nm)で測定した。
【0088】
イオン交換の有効性は、3Dガラスセラミック物品の落下試験結果に示されうる。イオン交換は、徐冷炉でセラミック化された物品よりも短時間で行われるが、本明細書に開示及び記載された実施形態による3Dガラスセラミックは、徐冷炉でセラミック化された物品と同等に、又はさらに良好に機能する。実施形態では、3Dガラスセラミック物品は、ガラスの破損による故障なしに、3Dガラスセラミック物品の広い表面に対して1メートルからアスファルトの表面までの20回以上の落下、例えば、22回以上の落下、25回以上の落下、27回以上の落下、又は30回以上の落下を耐え抜く。
【0089】
加えて、3Dガラスセラミックの広い側を80グリットのサンドペーパー上に落下させ、30cmから開始して10cm刻みで徐々に高さを上げて落下させ、ガラスが割れる高さを決定することにより、落下試験を実施した。実施形態では、試験した3Dガラスセラミックの50%以上が、150センチメートル(cm)以上、例えば、155cm以上、160cm以上、165cm以上、170cm以上、175cm以上、180cm以上、185cm以上、190cm以上、又は195cm以上からの落下を耐え抜く。試験の上限は220cmである。
【0090】
実施形態では、3Dガラスセラミックは、0.40%以下、例えば、0.35%以下、0.30%以下、0.25%以下、0.20%以下、0.15%以下、0.10%以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲のヘイズを有する。実施形態では、ヘイズは、0.15%以下かつ0.10%以上、0.14%以下かつ0.10%以上、0.13%以下かつ0.10%以上、0.12%以下かつ0.10%以上、0.11%以下かつ0.10%以上、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲である。ヘイズは、標準BYK-Gardnerヘイズガード計測器を使用して測定した。
【0091】
加えて、本明細書に開示及び説明される方法に従って形成された3Dガラスセラミックは、徐冷炉内でセラミック化されたガラスセラミックと同様の又は改善された複屈折を有する。実施形態では、3Dガラスセラミックは、5.0nm未満、例えば、4.7nm以下、4.5nm以下、4.2nm以下、4.0nm以下、3.7nm以下、3.5nm以下、3.2nm以下、3.0nm以下、2.7nm以下、2.5nm以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲の複屈折を有する。実施形態では、3Dガラスセラミックは、2.5nm以上かつ4.5nm以下、例えば、2.5nm以上かつ4.2nm以下、2.5nm以上かつ4.0nm以下、2.5nm以上かつ3.7nm以下、2.5nm以上かつ3.5nm以下、2.5nm以上かつ3.2nm以下、2.5nm以上かつ3.0nm以下、2.5nm以上かつ2.7nm以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲の複屈折を有する。実施形態では、3Dガラスセラミックは、2.7nm以上かつ4.5nm以下、例えば、3.0nm以上かつ4.5nm以下、3.2nm以上かつ4.5nm以下、3.5nm以上かつ4.5nm以下、3.7nm以上かつ4.5nm以下、4.0nm以上かつ4.5nm以下、4.2nm以上かつ4.5nm以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲の複屈折を有する。複屈折は、Stress Photonics GFP1000複屈折測定システムを使用して透過率で測定した。
【0092】
3Dガラスセラミック物品の形成に上記の方法を使用することにより、3Dガラスセラミック物品は、CADによって設計された3D物品などの3D物品設計の寸法に非常に類似した寸法を有することができる。形成されたままの3Dガラス物品と設計された3D物品との差は、寸法精度制御と呼ぶことができ、任意の地点で±xmmで測定することができる。実施形態では、0.1から2mmの厚さを有する3Dガラスセラミック物品は、±0.1mm以下、例えば±0.05mm以下(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の寸法精度制御を有しうる。CADからの偏差はATOSGOM白色光3Dスキャンシステムを使用して測定し、データはRapidformXORソフトウェアを使用して分析して理想的なCADに対する偏差を導出した。3Dセラミックガラス物品はまた、厚さ1mmの試料において、500nmから800nmの間の光の波長で85%以上、例えば、500nmから800nmの間の光の波長で90%以上、又は500nmから800nmの間の光の波長で95%以上(前述の範囲内のすべての範囲及び部分範囲を含む)の透過率を有してよく、ここで、測定は1nmの波長増分で行われ、次に、波長範囲にわたって平均化される。
【0093】
寸法精度制御の改善に加えて、本明細書に開示され、説明される実施形態に従って製造された3Dガラスセラミックは、0.10nm以下、例えば、0.07nm以下、0.05nm以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲の平坦度の偏差を有する。実施形態では、3Dガラスセラミックは、0.05nm以上かつ0.10nm以下、例えば、0.06nm以上かつ0.10nm以下、0.07nm以上かつ0.10nm以下、0.08nm以上かつ0.10nm以下、0.09nm以上かつ0.10nm以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲の平坦度の偏差を有する。実施形態では、3Dガラスセラミックは、0.05nm以上かつ0.09nm以下、例えば、0.05nm以上かつ0.08nm以下、0.05nm以上かつ0.07nm以下、0.05nm以上かつ0.06nm以下、並びにこれらの範囲内のすべての範囲及び部分範囲の平坦度の偏差を有する。平坦度に対する偏差は、CADに対する曲線偏差と同じ方法で、ATOS GOM 3Dスキャンシステムを使用して測定した。
【実施例0094】
以下の実施例によって実施形態がさらに明らかになるであろう。
【0095】
実施例1
実施例1では、0.8mmの厚さを有する、下記表3に開示される組成を有するガラスのガラスシートを、600℃で2時間核形成した。
【0096】
【0097】
有核ガラスを600℃から室温まで冷却し、次にグラファイトの金型に入れ、この組成物の結晶成長温度に対応する755℃の最高温度まで加熱した。ガラスを755℃で300秒間、0.5MPaの圧力で保持した後、冷却の初期段階で同じ圧力を維持しつつ、ゆっくりと冷却した。有核ガラスを3D成形するまでの全サイクルは、室温からの加熱及び室温への冷却を含めて、45分間であった。実施例1に従って成形された、得られたガラスセラミック3D物品は、以下の結晶相集合体(質量%で)を有しており、光学的に透明であった:
【0098】
実施例1で製造した3Dガラスセラミック物品の写真が
図3Aに示されている。設計された物品(従来のコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを使用して設計された)と比較した、実施例1で形成された3Dガラスセラミック物品の形状が、
図3Bに示されている。
図3Bに見られるように、成形されたままの3Dガラスセラミック物品とCADによって設計された3D物品のパラメータは類似しており、寸法精度制御は±0.1mm以下である。
【0099】
実施例2
2つの追加の3Dガラスセラミック物品を、一方の3Dガラスセラミック物品には0.25MPaの圧力を印加し、他方の3Dガラスセラミック物品には0.75MPaの圧力を印加したことを除き、実施例1について上に開示されたプロセスに従って製造した。
図4は、結果的に得られる3Dガラスセラミック物品を示しており、
図4の左側は0.75MPaの圧力で形成された3Dガラスセラミック物品、
図4の右側は0.25MPaの圧力で形成された3Dガラスセラミック物品である。
図4に示されるように、3Dガラスセラミック物品は、結晶相の集合体に寄与する圧力を示す、わずかにヘイズした外観を有していた。しかしながら、灰色がかった押圧痕は、ガラスセラミック物品の表面から約5μmを研磨することによって容易に取り除くことができる。
【0100】
実施例3
上記表1の組成と、0.8mmの厚さを有し、600℃で2時間核形成したガラスから、有核ガラスを形成した。有核ガラスを600℃から室温まで冷却し、次にグラファイトの金型に入れ、650℃の最高温度まで加熱し、0.25MPaの圧力で135秒間プレスした。次に、ガラスを755℃の温度に加熱し、0.21MPaの圧力で45分間プレスした。このプロセスを使用して製造した透明な3Dガラスセラミック物品の対応する結晶相の集合体は次の通りであった(質量%で):
【0101】
比較例1~3
比較例を、実施例1の組成及び厚さを有するガラスから製造した。第1の比較例を、最初に核形成することなくプレスし、形成された3D物品の写真である
図5Aに示した。
図5Bは、成形されたままの3D物品とCADによって設計された物品の寸法の比較を示している。この比較例では、±0.1mmを超えた寸法精度制御を有していた。
【0102】
第2の比較例では、上記の組成を有し、0.8mmの厚さを有する未焼成のガラスを、600℃の最大プレス温度、0.25MPaの圧力で90秒間プレスした。このプロセスは、ガラスを実質的に核形成しなかった。次に、3D形状のガラス物品を、570℃で4時間、続いて740℃で1時間の熱処理サイクルを使用して、加熱炉内でセラミック化(核形成及び結晶化)した。第2の比較例に従って形成された3Dセラミックガラス物品が
図6Aに示されており、形成されたままの3Dガラスセラミック製品の寸法のCADによって設計された製品に対する寸法の比較が
図6Bに示されている。
図6A及び
図6Bに示されるように、材料の高密度化に起因して、セラミック化サイクル中に歪んだ形状を有していた。この比較例では、±0.1mmを超えた寸法精度制御を有していた。
【0103】
第3の比較例を、セラミック化プロセス中に3Dガラス物品に重りが追加されたことを除き、第2の比較例と同じ方法で製造した。第3の比較例に従って形成された3Dセラミックガラス物品が
図7Aに示されており、形成されたままの3Dガラスセラミック物品のCADによって設計された物品に対する寸法の比較が
図7Bに示されている。
図7A及び
図7Bに示されるように、平坦な領域に荷重がかかっている物品の部分は、セラミック化サイクル中に形状を維持することができた。この比較例では、±0.1mmを超えた寸法精度制御を有していた。
【0104】
実施例4
表1に開示されている組成を有するガラスを使用して製造し、3D成形プロセスで核形成及び結晶化し、
図8に示される白色を生じた、未焼成のガラスの3D成形品の実施例。未焼成のガラスを3D金型に入れ、750℃の最大プレス温度、0.25MPaの圧力で300秒間プレスした。同じ時間と温度で圧力を0.75MPaに増加させると、より不透明な白色が生成した。両方の実施例の合計3D成形時間は約45分であった。
【0105】
実施例5
押圧は、11個のモジュールを備えたプレスで行われ、金型は表に示されている時間の間、各モジュール内にある。以下のすべての例は、表1に開示されている組成を有するガラスを600℃で2時間、核生成したものである。この実施例は、下記表4に示される実施形態に従った方法を使用して、ある特定の結晶相を目標とすることが可能であることを示している。
【0106】
【0107】
この実施例に従って製造されたガラスの写真が
図9に示されている。
【0108】
実施例6
下記の表に示されるように、3Dガラスセラミック物品を前駆体ガラス組成物から形成した:
【0109】
2時間の核形成時間で、5℃/分の加熱速度で加熱することによって、ガラスを核形成した。冷却速度は5℃/分であった。続いて、有核ガラスを金型に入れ、セラミック化した。金型プレス機での成形プロセスの設定値が下記表に示されている。各モジュールのサイクルタイムは150秒であった。
【0110】
セラミック化後、60.0質量%のKNO
3、40.0質量%のNaNO
3、0.1質量%のLiNO
3、0.5質量%のNaNO
2、及び0.5質量%のケイ酸を含む溶融塩浴中(LiNO
3、NaNO
2、及びケイ酸は、上乗せ添加として加える)に3Dガラスセラミック物品を入れ、5時間の間、500℃の温度に加熱することによって、3Dガラスセラミック物品を化学的に強化した。次に、強化した3Dガラスセラミック物品を1メートルの高さからアスファルト表面に落下させた。ガラスセラミック部品が破損するまで(破壊などによって)、落下を繰り返した。破壊による故障までの落下の回数(落下数)を測定した。
図10は、上記の落下試験の結果を示しており、肉眼で見える損傷が観察される前に、平均25.7回の落下が行われた。
【0111】
比較として、酸化物基準で下記表に記載される前駆体ガラス組成物を使用して調製し、次に成形されたガラスを徐冷炉内でセラミック化したガラスセラミックを、上に開示された落下試験に供し、ガラスが破壊するまで、平均10.3回の落下を実施した。したがって、これらの試験は、本明細書に開示され、説明される実施形態に従って形成された3Dガラスセラミックの改善された耐久性を示している。
【0112】
実施例7
3Dガラスセラミック物品を、下記の表に示されるように、酸化物基準で、前駆体ガラス組成物から形成した。
【0113】
上記実施例6に記載されるように、ガラスを核形成し、セラミック化した。セラミック化後、60.0質量%のKNO
3、40.0質量%のNaNO
3、0.1質量%のLiNO
3、0.5質量%のNaNO
2、及び0.5質量%のケイ酸を含む溶融塩浴中(LiNO
3、NaNO
2、及びケイ酸は、上乗せ添加として加えた)に3Dガラスセラミック物品を入れ、5時間の間、500℃の温度に加熱することによって、3Dガラスセラミック物品を化学的に強化した。次に、強化した3Dガラスセラミック物品を、広い表面を80グリットのサンドペーパー上に、30cmから開始して10cm刻みで徐々に高さを上げて、ガラスが破壊によって故障するまで、落下させた。ガラスが割れた落下の高さを報告した。
図11は、ガラスが割れる前に平均高さ194cmに達した、上記の落下試験の結果を示している。
【0114】
上記の試験を繰り返したが、化学的強化の時間を8時間に延長した。この試験では、
図11に示されるように、肉眼で見える損傷が観察される前に、平均高さ197cmに達した。
【0115】
比較として、成形したガラスを570℃で4時間、及び740℃で1時間の間、セラミック化することによって調製された同様のガラスセラミックを上記の落下試験に供し、肉眼で見える損傷が観察される前に、平均高さ194cmに達した。したがって、これらの試験は、本明細書に開示され、説明される実施形態に従って形成されたガラスセラミックの耐久性が、徐冷炉内でセラミック化されたガラスセラミックと同等又はそれよりも優れていることを示している。
【0116】
実施例8
0.8mmの厚さを有する3Dガラスセラミック物品を、実施例7に記載されるガラス組成物から形成した。上記実施例6に記載されるように、ガラスを核形成し、セラミック化した。セラミック化後、60.0質量%のKNO
3、40.0質量%のNaNO
3、0.1質量%のLiNO
3、0.5質量%のNaNO
2、及び0.5質量%のケイ酸を含む溶融塩浴中(LiNO
3、NaNO
2、及びケイ酸は、上乗せ添加として加える)に3Dガラスセラミック物品を入れることによって、3Dガラスセラミック物品を化学的に強化した。化学強化の時間は、下記の表(3Dガラスセラミックの圧縮応力(CS)、中央張力(CT)、及び圧縮の深さ(DOC)も示している)に示されるように変化させた:
【0117】
上記表に示されるように、本明細書に開示され、説明される実施形態に従って形成した実施例1の3Dガラスセラミックは、比較例1よりも短い時間でイオン交換浴に曝露されたにもかかわらず、比較例1より優れたCS及び比較例1と同じCTを有していた。同様に、本明細書に開示され、説明される実施形態に従って形成された実施例2の3Dガラスセラミックは、比較例1と同じ時間でイオン交換浴に曝露された場合、比較例1より優れたCS及び優れたCTを有していた。
【0118】
実施例9
3Dガラスセラミック物品を、上記実施例7に記載されるガラス組成物から形成した。上記実施例6に記載されるように、ガラスを核形成し、セラミック化した。続いて、有核ガラスを金型に入れ、異なる温度で150秒間プレスした。ヘイズ、平坦度の偏差、寸法精度制御、及び複屈折を測定した。
図12A~12Cに示されるように、ヘイズ(
図12A)、平坦度の偏差(
図12B)、寸法精度制御(
図12B)、及び複屈折(
図12C)はすべて、約800℃の温度で許容可能な値を示した。
【0119】
このことから、800℃と810℃のプレス温度で3Dガラスセラミックをプレスし、プレス時間を約80秒から約160秒まで変化させて試験を行った。これらの試験の結果は、800℃の試験の場合が
図13A~13Cに、810℃の試験の場合が14A~14Cに示されている。
【0120】
特許請求の範囲に記載の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態にさまざまな修正及び変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本明細書は、このような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入る限り、本明細書、に記載されるさまざまな実施形態の修正及び変更に及ぶことが意図されている。
【0121】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0122】
実施形態1
±0.1mm以下の寸法精度制御を含む、0.1mmから2mmの厚さを有する三次元ガラスセラミック物品。
【0123】
実施形態2
0.8mmの試料厚さにおいて、400nmから800nmの波長で85%以上の透過率を含む、実施形態1に記載の三次元ガラスセラミック物品。
【0124】
実施形態3
前記三次元ガラスセラミック物品が、イオン交換によって強化される、実施形態1又は2に記載の三次元ガラスセラミック物品。
【0125】
実施形態4
ヘイズが0.40%以下である、実施形態1から3のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品。
【0126】
実施形態5
複屈折が5.0nm未満である、実施形態1から4のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品。
【0127】
実施形態6
平坦度の偏差が0.10nm以下である、実施形態1から5のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品。
【0128】
実施形態7
前記三次元ガラスセラミック物品が強化されており、340MPa以上かつ400MPa以下の圧縮応力を有する、実施形態1から6のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品。
【0129】
実施形態8
前記三次元ガラスセラミック物品が強化されており、100MPa以上かつ150MPa以下の中央張力を有する、実施形態1から7のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品。
【0130】
実施形態9
前記三次元ガラスセラミック物品が強化されており、0.17×厚さ以上の圧縮の深さを有する、実施形態1から8のいずれかに記載の三次元ガラスセラミック物品。
【0131】
実施形態10
三次元ガラスセラミック物品を形成する方法であって、
有核ガラス物品を金型に入れる工程;
前記有核ガラス物品を結晶化温度に加熱する工程であって、前記加熱工程中、前記有核ガラス物品が前記金型内にある、工程;
前記有核ガラス物品を結晶化し、三次元ガラスセラミック物品を形成するのに十分な時間、前記結晶化温度で前記有核ガラス物品を保持する工程であって、前記保持工程中、前記有核ガラス物品が前記金型内にある、工程;及び
前記金型から前記三次元ガラスセラミック物品を取り出す工程
を含む、方法。
【0132】
実施形態11
前記有核ガラス物品が、前記金型内に入れられたときに、15%以下の結晶相を含む、実施形態10に記載の方法。
【0133】
実施形態12
前記有核ガラス物品が、前記金型内に入れられたときに、10%以下の結晶相を含む、実施形態10又は11に記載の方法。
【0134】
実施形態13
前記結晶化温度が、600℃以上かつ800℃以下である、実施形態10から12のいずれかに記載の方法。
【0135】
実施形態14
前記有核ガラス物品を結晶化し、三次元ガラスセラミック物品を形成するのに十分な前記時間が、150秒以上かつ450秒以下である、実施形態10から13のいずれかに記載の方法。
【0136】
実施形態15
前記加熱工程又は前記保持工程のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の間、前記有核ガラス物品に圧力が印加され、該圧力が0.10MPa以上かつ1.00MPa以下である、実施形態10から14のいずれかに記載の方法。
【0137】
実施形態16
前記方法が、前記保持工程の後に、前記三次元ガラスセラミック物品を冷却する工程をさらに含む、実施形態10から15のいずれかに記載の方法。
【0138】
実施形態17
三次元ガラスセラミック物品を形成する方法において、該方法が、
非晶質ガラス物品を金型に入れる工程;
前記非晶質ガラス物品を核形成温度に加熱する工程であって、前記加熱工程中、前記非晶質ガラス物品が前記金型内にある、工程;
前記非晶質ガラス物品を核形成し、核形成された三次元ガラス物品を形成するのに十分な第1の時間、前記核形成温度で前記非晶質ガラス物品を保持する工程であって、該保持工程中、前記非晶質ガラス物品が前記金型内にある、工程;
前記核形成された三次元ガラス物品を結晶化温度に加熱する工程であって、前記加熱工程中、前記核形成された三次元ガラス物品が前記金型内にある、工程;
前記有核ガラス物品を結晶化し、三次元ガラスセラミック物品を形成するのに十分な第2の時間、前記結晶化温度で前記核形成された三次元ガラス物品を保持する工程であって、該保持工程中、前記核形成された三次元ガラス物品が前記金型内にある、工程;及び
前記金型から前記三次元ガラスセラミック物品を取り出す工程
を含む、方法。
【0139】
実施形態18
前記核形成温度が450℃以上かつ750℃以下である、実施形態17に記載の方法。
【0140】
実施形態19
前記第1の時間が1.0時間以上かつ4.0時間以下である、実施形態17又は18に記載の方法。
【0141】
実施形態20
前記結晶化温度が600℃以上かつ800℃以下である、実施形態17から19のいずれかに記載の方法。
【0142】
実施形態21
前記第2の時間が150秒以上かつ450秒以下である、実施形態17から20のいずれかに記載の方法。
【0143】
実施形態22
前記加熱工程又は前記保持工程のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の間、前記有核ガラス物品に圧力が印加され、該圧力が0.10MPa以上かつ1.00MPa以下である、実施形態17から21のいずれかに記載の方法。
【0144】
実施形態23
前記方法が、第2の時間、前記結晶化温度で前記核形成された三次元ガラス物品を保持した後に、前記三次元ガラスセラミック物品を冷却する工程をさらに含む、実施形態17から22のいずれかに記載の方法。
【0145】
実施形態24
三次元ガラスセラミック物品を形成する方法において、該方法が、
非晶質ガラス物品を金型に入れる工程;
前記非晶質ガラス物品を核形成温度に加熱する工程であって、前記加熱工程中、前記非晶質ガラス物品が前記金型内にある、工程;
前記非晶質ガラス物品を核形成し、核形成された三次元ガラス物品を形成するのに十分な時間、前記核形成温度で前記非晶質ガラス物品を保持する工程であって、該保持工程中、前記非晶質ガラス物品が前記金型内にある、工程;及び
前記金型から前記核形成された三次元ガラス物品を取り出す工程
を含む、方法。
【0146】
実施形態25
前記核形成温度が450℃以上かつ750℃以下である、実施形態24に記載の方法。
【0147】
実施形態26
前記非晶質ガラス物品を核形成し、核形成された三次元ガラス物品を形成するのに十分な時間が1.0時間以上かつ4.0時間以下である、実施形態24又は25に記載の方法。
【0148】
実施形態27
前記加熱工程又は前記保持工程のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の間、前記非晶質ガラス物品に圧力が印加され、該圧力が0.10MPa以上かつ1.00MPa以下である、実施形態24から26のいずれかに記載の方法。
【0149】
実施形態28
前記方法が、ある時間にわたり前記核形成温度で保持した後に、前記三次元ガラスセラミック物品を冷却する工程をさらに含む、実施形態24から27のいずれかに記載の方法。
【0150】
実施形態29
前記方法が、前記核形成された三次元ガラス物品が前記金型から取り出された後に、前記核形成された三次元ガラス物品を結晶化する工程をさらに含む、実施形態24から28のいずれかに記載の方法。