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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026271
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】洗い流さない口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240220BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20240220BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240220BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/78 20060101ALN20240220BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
A61K8/73
A61P1/02
A61K31/728
A61Q11/00
A61K8/81
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/22
A61K31/78
A61K31/4166
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023204966
(22)【出願日】2023-12-04
(62)【分割の表示】P 2021573194の分割
【原出願日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/091294
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】ロス、ストランド
(72)【発明者】
【氏名】スー、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シ、ユンミン
(72)【発明者】
【氏名】タニガイベル、シャンムガム
(72)【発明者】
【氏名】ワン、コアンナン
(72)【発明者】
【氏名】リー、シャオシャオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯肉健康を促進するための、良好な展延性及び改善された保持特性を有する洗い流さない口腔ケア組成物を提供する。
【解決手段】洗い流さない口腔ケア組成物は、ヒアルロン酸又はその塩、粘膜付着性ポリマーとしてのポリアクリル酸、及び更なるポリマーを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア組成物であって、
(a)前記組成物の0.1重量%~10重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記組成物の0.1重量%~10重量%のポリアクリル酸と、
(c)前記組成物の0.1重量%~10重量%の更なるポリマーと、
(d)前記組成物の30重量%~75重量%の総含水量と、を含み、
前記口腔ケア組成物が、研磨材を実質的に含まず、
前記口腔ケア組成物が、洗い流さない組成物である、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸が、900,000ダルトン~5,000,000ダルトン、好ましくは900,000ダルトン~2,000,000ダルトンの重量平均分子量を有し、好ましくは、前記ヒアルロン酸が、前記組成物の0.1重量%~5.0重量%、より好ましくは0.2重量%~2.0重量%の量で存在する、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記ポリアクリル酸が、前記組成物の0.5重量%~5重量%、好ましくは1重量%~4重量%の量で存在する、請求項1~2のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記組成物の0.01重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%のアラントインを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記更なるポリマーが、天然ガム、直鎖硫酸化多糖類、アニオン性セルロース、非イオン性セルロース誘導体、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、ポリビニルピロリジン、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択され、好ましくは、前記更なるポリマーが、前記組成物の0.2重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記更なるポリマーが、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、30,000ダルトン~1,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、ポリビニルピロリジン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
ポリオールを更に含み、好ましくは、前記ポリオールが、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、及びこれらの組合せからなる群から選択され、好ましくは、前記ポリオールが、前記組成物の1重量%~30重量%、好ましくは5重量%~20重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
ビタミンを更に含み、好ましくは、前記ビタミンが、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB5、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記総含水量が、前記組成物の40重量%~75重量%、好ましくは45重量%~70重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
前記口腔ケア組成物が、ゲル形態である、請求項1~9のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に定義される口腔ケア組成物を用いて対象の歯肉健康を改善する方法であって、前記口腔ケア組成物を前記対象の口腔内組織上に適用する工程を含み、この工程で、前記口腔ケア組成物は、1分~1000分、好ましくは2分~200分の期間除去せずに放置され、任意に、前記適用工程は、口腔衛生レジメンの最後の工程として実施することができる、方法。
【請求項12】
対象の歯肉健康を改善する方法であって、少なくとも2工程:
(a)抗菌練り歯磨き、好ましくはスズ含有練り歯磨き、より好ましくはスズイオン源及びアミノ酸を含有する練り歯磨きを用いて、前記対象の歯をブラッシングする工程と、 (b)続いて、請求項1~10のいずれか一項に定義される口腔ケア組成物を前記対象の前記口腔内組織上に適用する工程、好ましくは直ちに適用する工程、好ましくは歯肉縁、歯肉溝、又は歯肉ポケットに沿って適用する工程であって、この工程で、前記口腔ケア組成物は、1分~1000分、好ましくは2分~200分の期間除去せずに放置される工程と、を含む、方法。
【請求項13】
前記口腔ケア組成物を前記対象の前記口腔内組織上に適用する工程が、ハンドル及びヘッドとを有するアプリケータを用いて、前記口腔ケア組成物を前記対象の前記口腔内組織上に広げることによって行われる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
練り歯磨き及び請求項1~10のいずれか一項により定義される口腔ケア組成物を含むキットであって、好ましくは、前記練り歯磨きが、抗菌練り歯磨きであり、より好ましくは、前記練り歯磨きが、スズ含有練り歯磨きであり、最も好ましくは、前記練り歯磨きが、スズイオン源及びアミノ酸を含む練り歯磨きである、キット。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に定義される口腔ケア組成物及び送達キャリアを含むキットであって、前記送達キャリアが、ストリップ、材料のフィルム、歯科用トレイ、アライナ、スポンジ材料、アプリケータ、又はこれらの混合物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸と、ユーザの歯肉健康を促進するためのポリマーの組合せと、を含む口腔ケア組成物に関する。特に、このような口腔ケア組成物は、歯肉創傷治癒を改善するのに有用である良好な展延性を有する、洗い流さない処方を提供する。
【背景技術】
【0002】
歯肉炎及び/又は歯周炎などの歯肉疾患は、口腔内で急性及び慢性の歯肉炎症を引き起こす。「歯肉炎」は、この疾患の軽症の状態である。歯肉炎の症状としては、歯肉の出血、並びに歯肉の発赤、腫脹、又は柔らかくなってしまっていることを挙げることができる。未処置のまま放置した場合、歯肉炎は、「歯周炎」に進行し得る。歯周炎により、歯肉と歯の間が空き、病原性細菌により感染され得る「歯周ポケット」と呼ばれる空間が形成される。細菌は、バイオフィルムとして歯根表面上に存在する。バイオフィルム内の細菌は、歯肉と、歯肉の内側に存在している支持歯槽骨とを攻撃し得る。このような攻撃は、歯を支持する軟組織及び骨に対して重度の損傷を与える可能性がある。歯肉疾患の後期段階(すなわち、「進行した歯周炎」)では、歯の動揺、そして最終的には歯の脱落という、より深刻な問題が生じ得る。
【0003】
歯肉の問題を有するユーザは、典型的には、家庭用の溶液として抗菌練り歯磨きを用いて歯をブラッシングすることに限定されてきた。このメカニズムは、歯垢及び細菌、並びに宿主に対する関連した毒素負荷を浄化及び制御するのに役立ち得る。しかしながら、ブラッシングの滞留時間が2分間と限られているために、宿主組織を修復する時間又は更には強化する時間がほとんどない。したがって、ユーザは、より長い時間にわたって宿主組織に適用され、かつ歯肉を修復、強化、及び再生することができるレジメンを期待している。このようなユーザの期待を満たすため、そのような利益がもたらされるように、口腔に適用することができる多数のゲル又は軟膏製品が開発されている。例えば、ユーザは、ゲル処方製品を口腔組織(例えば、歯肉領域)上に適用し、吐き出す前に、又はあるいは吐き出し若しくはすすぎをせずに、しばらく放置することができる。望ましい製品は、口腔への適用を可能にし、口腔組織に付着し、含有される口腔ケア有益剤を長期間にわたって放出するのに充分な、持続性及びレオロジー特性を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ユーザに良好な感覚的利益を提供するのに良好な展延性及び付着性を有するだけでなく、ユーザに望ましい歯肉健康上の利益(例えば、歯肉創傷治癒及び抗菌効果)も提供する、このような洗い流さない組成物を提供することが、継続して必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
洗い流さない口腔ケア組成物を処方するための新規な技術は、上記のニーズの少なくとも一部を満たすように、本発明者らによって開発されている。特に、ヒアルロン酸及びポリアクリル酸と更なるポリマーとの組合せを含む洗い流さない口腔ケア組成物が、ユーザに望ましい触感を提供し、また良好な歯肉健康上の利益、特に良好な歯肉創傷治癒効果を提供することは、驚くべき発見である。
【0006】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、改善された創傷治癒利益及びバリア機能利益を呈する本発明の洗い流さない口腔ケア組成物は、歯肉痛を緩和し、歯肉の再生を促進し、粘膜/歯肉の損傷の修復及び歯肉の出血する傷の治癒を加速させ、並びに/又は歯肉免疫/抵抗を増強するのに役立ち得ると考えられる。洗い流さない口腔ケア組成物は、義歯不適合によって引き起こされる患部及び刺激に対して保護フィルムを形成するのに更に役立ち得る。洗い流さない口腔ケア組成物は、ルートスケーリング/プレーニング又は歯肉移植後の歯肉損傷の修復又は治癒を更に助け得る。洗い流さない口腔ケア組成物は更に、粘膜への水和を改善するのに役立ち、口内乾燥を軽減又は緩和するのに役立ち得る。
【0007】
洗い流さない口腔ケア組成物は、良好な展延性を得るために最適な粘度プロファイルを有することが有利である。
【0008】
洗い流さない口腔ケア組成物は、重くなく、過度にねばつく/べたつくことがなく、清涼感、安全性、及び有効な感覚などのユーザが楽しめる経験を提供することもまた有利である。
【0009】
持続性、付着性、及び粘度の間のバランス作用として認識される、長期使用のための心地よい口当たり及び味をユーザに提供することが更に有利である。
【0010】
歯をブラッシングした後、又は口腔衛生レジメンの最後の工程として、洗い流さない口腔ケア組成物を適用することは更に有利である。洗い流さない口腔ケア組成物は、口腔の軟組織上に適用され、2分超、好ましくは10分超、すすがれる又は吐き出されることなく残されることが有利である。
【0011】
送達キャリアを用いることによって洗い流さないゲルを歯肉に適用することが更に有利であって、この送達キャリアは、ストリップ、材料のフィルム、歯科用トレイ、アライナ、スポンジ材料、アプリケータ、又はこれらの混合物を含んでもよい。
【0012】
一態様では、本発明は、(a)組成物の約0.1重量%~約10重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)組成物の約0.1重量%~約10重量%のポリアクリル酸と、(c)組成物の約0.1重量%~約10重量%の更なるポリマーと、を含む、口腔ケア組成物を対象とする。更なるポリマーは、好ましくは、天然ガム、直鎖硫酸化多糖類、アニオン性セルロース、非イオン性セルロース誘導体、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、ポリビニルピロリジン、及びこれらの組合せから選択される。好ましくは、口腔ケア組成物は、洗い流さない組成物である。一例では、口腔ケア組成物は、組成物の約0.1~約5重量%のアラントインを更に含んでもよい。
【0013】
好ましくは、ヒアルロン酸は、約900,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、好ましくは、約900,000ダルトン~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する。より好ましくは、ヒアルロン酸は、組成物の約0.1重量%~約5重量%、より好ましくは、約0.2重量%~約0.8重量%の量で存在する。
【0014】
本発明の別の態様では、上述の口腔ケア組成物は、組成物の約30重量%~約85重量%、好ましくは、約40重量%~約80重量%、好ましくは、約45重量%~約75重量%の総含水量を更に含む。好ましくは、上述の口腔ケア組成物は、研磨材を実質的に含まず、好ましくは、研磨材を本質的に含まない。
【0015】
本発明の更に別の態様では、そこで定義される口腔ケア組成物を用いて対象の歯肉健康を改善する方法であって、口腔ケア組成物を対象の口腔内組織上に適用する工程を含む方法が提供され、この工程で、口腔ケア組成物は、少なくとも1分、又は少なくとも2分、又は1分~1000分若しくは2分~200分の期間除去せずに放置され、任意に、適用工程は、口腔衛生レジメンの最後の工程として実施することができる。
【0016】
本発明のまた別の態様では、対象の歯肉衛生を改善する方法であって、少なくとも2工程:(a)練り歯磨き、好ましくは抗菌練り歯磨き、より好ましくはスズ含有練り歯磨き、より好ましくはスズ含有練り歯磨き、更により好ましくはスズイオン源及びアミノ酸を含有する練り歯磨きで歯をブラッシングする工程と、(b)続いて、本明細書により定義される口腔ケア組成物(oral are composition)を対象の口腔内組織上に好ましくは直ちに適用する工程、好ましくは歯肉縁、歯肉溝、又は歯肉ポケットに沿って適用する工程であって、この工程で、この口腔ケア組成物は、1分~1000分の期間除去せずに放置される工程と、を含む、対象の歯肉健康を改善する方法が提供される。
【0017】
本発明のまた更に別の態様では、本発明の口腔ケア組成物及び送達キャリアを含むキットであって、この送達キャリアが、ストリップ、材料のフィルム、歯科用トレイ、アライナ、スポンジ材料、アプリケータ、又はこれらの混合物を含む、キットが提供される。好ましい例では、キットは、本発明の口腔ケア組成物と、ハンドル及びヘッドを有するアプリケータとを含む。練り歯磨き及び本発明の口腔ケア組成物を含むキットもまた提供される。好ましい例では、キットは、抗菌練り歯磨き及び本発明の口腔ケア組成物を含み、この練り歯磨きは、好ましくはスズ含有練り歯磨きであり、より好ましくはスズイオン源及びアミノ酸を含む練り歯磨きである。好ましくは、練り歯磨き及び口腔ケア組成物は、歯肉健康を改善するために、それぞれ順次適用される。
【0018】
本発明のこれらの特徴及びその他の特徴は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲と併せて検討することで当業者には明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書で使用するとき、「a」及び「an」などの冠詞は、特許請求の範囲で使用する場合、請求又は記載されているもののうちの1つ以上を意味するものと理解される。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「含む」とは、特に言及したもの以外の工程、及び成分を付加することができることを意味する。この用語は、「~からなる(consisting of)」及び「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語を包含する。本発明の組成物は、本明細書に記載される本発明の必須要素及び制限事項、並びに本明細書に記載されるあらゆる追加若しくは任意の成分、構成要素、工程、又は制限事項を含み、これらからなり、あるいは、これらから本質的になることができる。
【0021】
本明細書で使用するとき、単語「好ましい」、「好ましくは」、及びその変形は、一定の条件下において一定の利益をもたらす本発明の実施形態に関する。しかしながら、同じ、又は他の状況下においては、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「歯肉用ゲル」又は「歯肉ゲル」とは、製品又は組成物が、歯肉組織、並びに対象の口腔内の他の軟組織(例えば、頬側粘膜)、好ましくは製品又は組成物の50%超が歯肉及び他の軟組織に主に適用されることを意図する、ゲルの形態であることを意味する。
【0023】
本明細書で使用するとき、「洗い流さない」とは、製品又は組成物が、一定時間、例えば1分超、好ましくは2分超、表面に採用又は適用されることを意味する。好ましくは、「洗い流さない」ゲルとは、すすがれない又は吐き出されないよう意図されるゲル製品又は組成物を意味する。
【0024】
用語「歯肉ケア」とは、歯肉の発赤、腫脹、若しくは柔らかくなってしまっている状態、及び/又は歯肉茎部(stem gum)の出血が挙げられる、初期の歯肉疾患(すなわち、歯肉炎)の症状のうちの1つ以上を軽減することを目的とする利益を意味する。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「歯肉健康」とは、歯肉創傷治癒を少なくとも改善することを含む「歯肉ケア」上の利益を提供する、並びに歯肉炎、歯周炎又はこれらの両方を含む歯肉疾患に関し細菌の有害な影響を軽減するように細菌活性の低減の更なる改善を提供する、口腔ケア組成物の固有の又は促進された利益を指す。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「促進する」とは、口腔内で本発明の口腔ケア組成物を使用することに関連する歯肉健康上の利益を促進及び/又は増強することを意味する。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「~を実質的に含まない(substantially free)」は、組成物中に、かかる組成物の総重量の0.05%以下、好ましくは0.01%以下及びより好ましくは0.001%以下の記載の材料が存在することを指す。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「本質的に含まない」とは、記載の材料が組成物に意図的に添加されたものでないこと、又は好ましくは分析によって検出可能なレベルでは存在しないことを意味する。すなわち、記載の材料が、意図的に添加されたその他の材料のうちのいずれかの不純物としてのみ存在する、組成物を包含することを意味する。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「総含水量」とは、遊離水、及び口腔ケア組成物中の他の成分によって結合される水、の両方を意味する。
【0030】
用語「口腔衛生レジメン」又は「レジメン」とは、口腔健康のための2つ以上に分かれた異なる処置工程、例えば、練り歯磨き、マウスリンス、フロス、爪楊枝、スプレー、口腔洗浄器、マッサージ器を使用するための用語であり得る。
【0031】
全ての百分率、部及び比率は、別途指定されない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。列挙されている成分に関するとき、こうした重量は全て、活性レベルに基づき、このため、別途指定されない限り、市販の材料に含まれている可能性のある溶媒又は副生成物を含まない。
【0032】
別途指定されない限り、本明細書で言及される測定は全て、25℃(すなわち、室温)で行われる。
【0033】
口腔ケア組成物
本発明に記載される口腔ケア組成物は、歯肉組織、及び対象の口腔内の他の軟組織(例えば、頬側粘膜)上に適用するように構成される。驚くべきことに、本発明の口腔ケア組成物は、ユーザに対する歯肉健康上の利益の促進に有用であり、特に、創傷治癒利益を改善するのに有用であることが発見された。
【0034】
一態様では、本発明は、ゲル形態である口腔ケア組成物を対象とする。口腔ケア組成物は、
(a)組成物の約0.1重量%~約10重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)組成物の約0.1重量%~約10重量%のポリアクリル酸と、
(c)組成物の約0.1重量%~約10重量%の、天然ガム、直鎖硫酸化多糖類、アニオン性セルロース、非イオン性セルロース誘導体、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、ポリビニルピロリジン、及びこれらの組合せから選択される更なるポリマーと、
(d)組成物の約30重量%~約75重量%を超える総含水量と、を含む。
【0035】
好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の約0.01~約5重量%のアラントインを更に含む。いくつかの実施形態では、アラントインは、組成物の約0.05重量%~約4重量%、好ましくは、約0.08重量%~約3重量%の量で存在する。
【0036】
そこに記載される口腔ケア組成物は、洗い流さない組成物である。容易な適用、薄層形成、並びに歯肉溝/歯肉ポケット内及び歯肉の歯肉線縁に沿った均一な広がりを可能にする、本発明で使用するための所望の粘度であるゲルを有することが望ましい。本発明の口腔ケア組成物は、本明細書に記載のレオロジー試験方法によって測定した際、約50Pa・s~約500Pa・sの粘着稠度係数Kである粘度プロファイルを有してもよい。好ましくは、口腔ケア組成物は、約50Pa・s~約250Pa・s、好ましくは約50Pa・s~約200Pa・s、より好ましくは約50Pa・s~約150Pa・sの粘着稠度係数Kを有する。そのような粘度プロファイル範囲により、ユーザは展延性のより良好な感覚的経験が得られる。製品の粘性が高すぎる場合、ユーザが歯肉組織へ製品を均一に塗り広げることが困難になる場合がある。製品の粘度が低すぎる場合、流れやすく、指又はアプリケータによって適切な領域に保持することは困難である。
【0037】
一態様では、本発明の口腔ケア組成物は、望ましい粘膜付着特性を有する。粘膜付着とは、一方が少なくとも粘膜である2つの表面の間における、表面エネルギーの結果的な低下を伴う界面力による一定期間の付着相互作用と定義できる。口腔ケア用途のための粘膜付着ポリマーとは、理想的には、(1)親水性及び親油性の活性成分を容易に保持し、かつそれらの放出を妨げず、(2)活性成分の浸透及び吸収を促進し、(3)生物学的基質に可能な限り迅速に付着し、かつある期間保持され、(4)安全であり、(5)費用効率が高く、並びに(6)消費者が許容可能な用途を提供するべきである。
【0038】
本発明の口腔ケア組成物は、本明細書に記載の粘膜付着試験方法によって測定される場合、0.6FI%以上の範囲の粘膜付着指数を有する。好ましくは、口腔ケア組成物は、約0.8FI%以上、より好ましくは約1.0FI%以上の粘膜付着指数を有する。好ましくは、口腔ケア組成物は、約20FI%未満、好ましくは約15FI%未満、より好ましくは約10FI%未満の粘膜付着指数を有する。例として、口腔ケア組成物は、約1.2FI%以上、又は約1.3FI%以上、又は約1.5FI%以上、又は約1.8FI%以上、又は約2.0FI%以上の粘膜付着指数を有してもよい。
【0039】
ヒアルロン酸及び塩
本発明の口腔ケア組成物は、ヒアルロン酸又はその塩を含む。ヒアルロン酸は、グルクロン酸とn-アセチグルコシラミン(n-acetyglucosylamine)とのポリマーである、脊椎動物の結合組織中に存在する多糖類であり、高分子量のグルコサミンファミリーのメンバーである。ヒアルロン酸(ヒアルロナン)は、インタクトで健康な歯肉、及び口腔粘膜組織の必須構成要素である。ヒアルロン酸は、早期の肉芽組織形成を誘導し、炎症を阻害し、上皮の代謝回転を促進し、また結合組織の血管新生も促進することによって、創傷治癒を補助するための潜在的に理想的な分子を作る多くの特性を有する。好ましくは、本発明で使用されるヒアルロン酸は、約900,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、好ましくは約900,000ダルトン~約3,000,000ダルトン、より好ましくは約900,000ダルトン~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量(M.W.)を有する。ヒアルロン酸の分子量は、ゲル電気泳動法を用いて測定することができる。本発明のヒアルロン酸は、組成物の約0.1重量%~約5.0重量%の量で存在する。好ましくは、ヒアルロン酸は、組成物の約0.2重量%~約2重量%、あるいは約0.2重量%~約1重量%、より好ましくは約0.2重量%~約0.8重量%の量で存在する。例えば、ヒアルロン酸は、組成物の約0.2重量%、又は約0.3重量%、又は約0.4重量%、又は約0.5重量%、又は約0.6重量%、又は約0.7重量%、又は約0.8重量%、又は約0.9重量%、又は約1.0重量%の量で存在する。口腔ケア製品に好適なヒアルロン酸の任意の塩を本発明で使用することができる。好ましくは、ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウムであってもよい。
【0040】
アラントイン
口腔ケア組成物は、組成物の約0.01~約5重量%のアラントインを更に含んでもよい。5-ウレイドヒダントイン又はグリオキシルジウレイドとも呼ばれるアラントインは、尿酸の酸化生成物である。アラントインは、創傷及び皮膚刺激を治癒させ、健康な組織の成長を刺激するのに役立つ。いくつかの例では、アラントインは、組成物の約0.02重量%~約4重量%、又は約0.05重量%~約3重量%の量で存在し得る。例えば、アラントインは、組成物の約0.05重量%、又は約0.1重量%、又は約0.2重量%、又は約0.3重量%、又は約0.4重量%、又は約0.5重量%、又は約0.6重量%、又は約0.8重量%、又は約0.9重量%、又は約1重量%の量で存在し得る。アラントインは、ヒアルロン酸含有組成物の創傷治癒利益を改善又は増加させるのに役立ち得ることが発見されている。
【0041】
粘膜付着性ポリマー
本発明の口腔ケア組成物は、粘膜付着性ポリマーとしてポリアクリル酸を含む。ポリアクリル酸(Polyacrylic acid:PAA)ポリマーとは、アクリル酸の合成高分子量ポリマーの総称である。これらは、アリルエーテルペンタエリスリトール、スクロースのアリルエーテル、又はプロピレンのアリルエーテルで架橋された、アクリル酸のホモポリマーであってもよい。また、中性pHの水溶液では、PAAはアニオン性ポリマーであり、すなわちPAAの側鎖の多くがそのプロトンを失い、負電荷を獲得する。これにより、PAA多価電解質は、水を吸収及び保持し、その元の体積の何倍までも膨潤する能力を有するようになる。ポリアクリル酸はまた、carbomerの商標名でも呼ばれる。例えば、Carbopol(登録商標)、Pemulen(登録商標)及びNoveon(登録商標)などのCarbopol(登録商標)型ポリマーは、ポリアルケニルエーテル又はジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のポリマーである。Carbomerのコマーシャルコード、例えば940(商標)は、ポリマーの分子量及び特定の成分を示す。
【0042】
好ましくは、本発明で使用されるポリアクリル酸は、口腔ケア組成物の約0.1重量%~約10重量%の量で存在する。例えば、ポリアクリル酸は、口腔ケア組成物の約0.2重量%~約5重量%、又は約0.5重量%~約8重量%、又は約1.0重量%~約5重量%の料で存在する。
【0043】
更なるポリマー
本発明の口腔ケア組成物は、更なるポリマーを含む。好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.5重量%~約6重量%、より好ましくは約1重量%~約5重量%、更により好ましくは約1.3重量%~約2.6重量%の更なるポリマーを含む。更なるポリマーは、天然ガム、直鎖硫酸化多糖類、アニオン性セルロース、非イオン性セルロース誘導体、ポリビニルピロリジン、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマー、及びこれらの組合せから選択される。
【0044】
好ましくは、天然ガムは、カラヤガム、アラビアガム(アカシアガムとしても知られている)、トラガカントガム、キサンタンガム、及びこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、天然ガムは、キサンタンガムである。キサンタンガムは、細菌キサントモナス・カメストリス(Xanthomonas camestris)によって分泌される多糖類である。一般に、キサンタンガムは、それぞれ2:2:1のモル比でグルコース、マンノース、及びグルクロン酸を含む、五糖繰り返し単位から構成される。(モノマーの)化学式は、C354929である。一例では、キサンタンガムは、CP Kelco Inc(Okmulge,US)製である。
【0045】
好ましくは、直鎖硫酸化多糖類は、カラギーナンである。カラギーナンの例としては、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、及びこれらの組合せが挙げられる。一例では、直鎖硫酸化多糖類は、ι-カラギーナンである。
【0046】
好ましくは、アニオン性セルロースは、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose:「CMC」)である。一例では、CMCは、アルカリ及びモノクロロ酢酸又はそのナトリウム塩で処理することによって、セルロースから調製される。異なる種は、商業上、粘度によって特徴付けられる。市販されている一例は、Ashland Special Ingredients製のAqualon(商標)ブランドのCMC(例えば、Aqualon(商標)7H3SF;Aqualon(商標)9M3SF;Aqualon(商標)TM9A;Aqualon(商標)TM12A)である。
【0047】
好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、約50,000ダルトン~約1,300,000ダルトンの重量平均分子量範囲、好ましくは300~4,800の平均重合度を有する。より好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose:「HEC」)である。他の例では、非イオン性セルロースは、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシメチルセルロースであってもよい。
【0048】
好ましくは、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマーは、30,000~1,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリルとのコポリマーからなる群から選択される。
【0049】
一例では、GANTREZ(商標)シリーズのポリマーは、30,000ダルトン~1,000,000ダルトンの重量平均分子量(M.W.)を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GANTREZ(商標)AN139(M.W.500,000ダルトン)、AN119(M.W.250,000ダルトン)及びS-97医薬品グレード(M.W.70,000ダルトン)として、Ashland Chemicals(Kentucky,USA)から入手可能である。
【0050】
別の実施例では、ACUSOL(商標)及びSOKALANシリーズのポリマーには、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーが含まれる。その例は、約2,000~約1,000,000の重量平均分子量(M.W.)を有するマレイン酸とアクリル酸との0:1000~1000:0コポリマーである。これらのコポリマーは、Dow Chemicals(Michigan,USA)からACUSOL(商標)445及び445N、ACUSOL(商標)531、ACUSOL(商標)463、ACUSOL(商標)448、ACUSOL(商標)460、ACUSOL(商標)465、ACUSOL(商標)497、ACUSOL(商標)490として、またBASF(New Jersey,USA)からSokalan(登録商標)CP5、Sokalan(登録商標)CP7、Sokalan(登録商標)CP45、及びSokalan(登録商標)CP12 Sとして市販されている。
【0051】
好ましくは、粘膜付着性ポリマーと更なるポリマーとの比は、約5:1~約1:5である。いくつかの例では、ポリアクリル酸と更なるポリマーとの比は、約4:1~約1:4、あるいは約3:1~約1:3、あるいは約2.5:1~約1:2.5であり得る。例えば、本発明の口腔ケア組成物は、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリジンを含むことができ、その比は、約3:1~約1:3、若しくは約2:1~約1:2、若しくは約1.5:1~約1:1.5、若しくは約1.2:1、若しくは約1:1、又は上述の値の間の任意の組合せである。代替例では、口腔ケア組成物は、ポリアクリル酸及びヒドロキシエチルセルロースを含み、その比は、約3:1~約1:3若しくは約2:1~約1:2であるか、又は約1.5、若しくは約1.2、若しくは約1である。
【0052】

本明細書で使用するとき、用語「経口的に許容されるキャリア」とは、本発明の活性成分を含有し、口腔内に送達するためのペースト又はゲルなどの、液体又は半固体のビヒクルを意味する。水は、その多くの利点により、口腔組成物中のキャリア材料として一般的に使用される。例えば、水は加工助剤として有用であり、口腔に対して害がなく、練り歯磨きの迅速な発泡を助ける。水は、それ自体で成分として添加されてもよく、又は例えば、ソルビトール及びラウリル硫酸ナトリウムなどの他の一般的な原料中のキャリアとして存在してもよい。本明細書で使用するとき、総含水量という用語は、別個に添加された、又は、他の原料のための溶媒若しくはキャリアとして、口腔ケア組成物中に存在する水の総量を意味するが、ある特定の無機塩の結晶化に伴う水として存在し得るものを除く。
【0053】
本発明の口腔ケア組成物は、総含水量の少なくとも約30%を含む。好ましくは、口腔ケア組成物は、約35%~約85%を超える総含水量を含む。他の実施形態では、組成物は、約40%~約80%、あるいは約45%~約75%、あるいは約50%~約70%、あるいは約50%~約60%、あるいは約45%~約55%、あるいは約55%~約65%、あるいは約65%~約75%、あるいはこれらの組合せの総含水量を含む。
【0054】
無研磨材
好ましくは、本発明の口腔ケア組成物は、研磨材を実質的に含まない。用語「研磨材」とは、本発明の目的では、カルシウム含有研磨材及びシリカ研磨材を含む。カルシウム含有研磨材は、炭酸カルシウム、リン酸ニカルシウム、リン酸三カルシウム、オルトリン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、ポリリン酸カルシウム、カルシウムオキシアパタイト、炭酸ナトリウム、及びこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。カルシウム含有研磨材が炭酸カルシウムである一実施形態では、炭酸カルシウムは、微粉砕天然チョーク、粉砕炭酸カルシウム、沈殿炭酸カルシウム、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。シリカ研磨材は、一般に、0.1~30μm、好ましくは5~15μmの範囲の平均粒径を有してもよい。シリカ研磨材は、W.R.Grace&Company、Davison Chemical Divisionによって商標名「Syloid」の下で市販されている、沈降性シリカ又はシリカキセロゲルのようなシリカゲル、並びにJ.M.Huber Corporationによって商標名Zeodent(登録商標)の下で市販されているもの、特にZeodent(登録商標)119、Zeodent(登録商標)118、Zeodent(登録商標)109、及びZeodent(登録商標)129の名称を持つシリカなどの沈降性シリカ材料であり得る。
【0055】
好ましくは、本発明の口腔ケア組成物は、低濃度の研磨材を含有する。例えば、口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~約5重量%の研磨材、あるいは0重量%~約3重量%、あるいは0重量%~2重量%、あるいは0重量%~約1重量%、あるいは約3重量%未満、又は約2重量%未満、又は約1重量%未満、又は約0.5重量%未満の研磨材を含んでもよい。好ましくは、組成物は、研磨材を実質的に含まず、より好ましくは研磨材を含まない。
【0056】
湿潤剤
本明細書の口腔ケア組成物は、湿潤剤を含有してもよい。湿潤剤は、口腔ケア組成物を空気への曝露時に硬化させて、口内に湿った感触を与えるように、及び特定の湿潤剤では望ましい風味の甘味を付与する役割を果たす。
【0057】
本発明に好適な湿潤剤としては、食用多価アルコール、例えば、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、湿潤剤は、ソルビトール、グリセリン、及びこれらの組合せから選択される。別の実施形態では、湿潤剤は、グリセリンである。更に別の実施形態では、湿潤剤は、ソルビトールである。一実施形態では、口腔ケア組成物は、組成物の1重量%~50重量%未満、好ましくは10重量%~40重量%の湿潤剤を含む。更に別の実施形態では、口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の15重量%~30重量%のグリセリンを含有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、及びこれらの組合せからなる群から選択されるポリオールを含み得る。好ましくは、ポリオールは、組成物の1重量%~30重量%、好ましくは5重量%~20重量%の量で存在する。
【0059】
一例では、本発明の口腔ケア組成物は、エタノールを実質的に含まず、好ましくはエタノールを本質的に含まない。エタノールは、ユーザに刺激感を与え得るので、場合によっては望ましくない。
【0060】
風味剤
本明細書に記載の口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.001重量%~約5重量%、あるいは約0.01重量%~約4重量%、あるいは約0.1重量%~約3重量%、あるいは約0.5重量%~約2重量%、あるいはこれらの組合せの風味剤組成物を含んでもよい。用語「風味剤組成物」は、最も広範な意味で使用され、風味成分、若しくは感覚剤(sensates)若しくは感覚剤(sensate agents)、又はこれらの組合せを含む。風味成分は、米国特許出願公開第2012/0082630(A1)号の段落39に記載されているものを含んでもよい。そして感覚剤及び感覚剤成分は、参照により本明細書に組み込まれる段落40~45に記載されているものを含んでもよい。
【0061】
風味組成物又は風味成分の例としては、ミントオイル、ウィンターグリーン、クローブバッドオイル、カッシア、セージ、パセリオイル、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、ヘリオトロピン、4-シス-ヘプテナール、ジアセチル、メチル-p-tert-ブチルフェニル酢酸塩、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、1-メンチル酢酸塩、オキサノン、a-イリソン、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸ブチル、酪酸エチル、酢酸エチル、アントラニル酸メチル、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、カプロン酸アリル、オイゲノール、ユーカリプトール、チモール、シンナミルアルコール、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、a-テルピネオール、リナロール、リモネン、シトラール、ネラール、ゲラニアール、ゲラニオール、ネロール、マルトール、エチルマルトール、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、メントン、β-ダマセノン、イオノン、γ-デカラクトン、γ-ノナラクトン、y-ウンデカラクトン、又はこれらの組合せが挙げられる。一般に適切な香料成分は、構造的特徴及びレドックス反応し難い官能基を有する化学物質である。これらとしては、飽和しているか、あるいは安定な芳香環又はエステル基を含有する、香料成分の誘導体が挙げられる。
【0062】
冷涼剤、温感剤、及び刺感剤(tingling agent)などの感覚剤は、ユーザに信号を送達するのに有用である。最もよく知られている冷涼剤は、メントール、特に1-メントールであり、これはハッカ油中で天然に見出される。合成冷涼剤の中でも、その多くは、メントールの誘導体であるか、又はメントールと構造的に関連している。すなわち、シクロヘキサン部分を含み、カルボキサミド、ケタール、エステル、エーテル、及びアルコールを含む官能基で誘導体化されている。例としては、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(「WS-3」として商業上知られる)などのp-メンタンカルボキサミド化合物が挙げられる。メントールと構造的に無関係である合成カルボキサミド冷涼剤の例は、N,2,3-トリメチル-2-イソプロピルブタンアミドである。更なる例示的な合成冷涼剤としては、3-1-メントキシ-プロパン-1,2-ジオール、イソプレゴール、p-メンタン-3,8-ジオールなどのアルコール誘導体;メントングリセリンアセタール(「MGA」として商業上知られる);メンチルエステル、例えば、メンチルアセテート、メンチルアセトアセテート、メンチルラクテート、及びモノメンチルスクシネートなどが挙げられる。
【0063】
メントールと構造的に無関連であるが、同様の生理学的冷涼効果を有すると報告されている更なる薬剤としては、3-メチル-2-(1-ピロリジニル)-2-シクロペンタン-1-オン(3-MPC)、5-メチル-2-(1-ピロリジニル)-2-シクロペンタン-1-オン(5-MPC);2,5-ジメチル-4-(1-ピロリジニル)-3(2H)-フラノン(DMPF);イシリン(AG-3-5、化学名142-ヒドロキシフェニル]-4-[2-ニトロフェニル]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-2-オンとしても知られる)を含む、米国特許第6,592,884号に記載されるα-ケトエナミン誘導体が挙げられる。
【0064】
温感剤のいくつかの例としては、以下が挙げられる:エタノール、ベンジルニコチネートなどのニコチネートエステル、多価アルコール、ノナノイルバニリルアミド、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体、例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、及びバニリルヘキシルエーテル、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガ抽出物、ショウガ油、ジンジェロール、ジンゲロン、又はこれらの組合せ。
【0065】
いくつかの刺感剤の例としては、以下が挙げられる:カプサイシン、ホモカプサイシン、ジャンブオレオレシン(jambu oleoresin)、サンショウ抽出物(Zanthoxylum peperitum)、サンショオール(Saanshool)I、サンショオールII、サンショアミド(sanshoamide)、ピペリン、ピペリジン、スピラントール、4-(1-メトキシメチル)-2-フェニル-1,3-ジオキソラン、又はこれらの組合せ。
【0066】
本明細書の口腔ケア組成物は、カモミール、樫皮、メリッサ、ローズマリー、及びサルビアの抽出物などの薬草成分を更に含み得る。これら、及びいくつかの薬草由来の風味付与構成要素は、より高い治療効果を提供するために、風味へ寄与するのにちょうど充分な濃度で含まれ得るか、又は1%以上といったより高い濃度で添加され得る。
【0067】
防腐剤
本発明の口腔ケア組成物は、防腐剤を含んでもよい。防腐剤は、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、カプリル酸ソルビタン(Velsan SC(登録商標))、1-2ヘキサンジオール及びカプリリルグリコール(Symdiol 68(登録商標))、パラベン、並びに/又は組合せであってもよい。パラベンは、メチルパラベン若しくはプロピルパラベン、又はこれらの組合せを含んでもよい。ベンジルアルコール又はフェノキシエタノールの濃度は、組成物の約0.10重量%~約0.40重量%超、好ましくは約0.15重量%~約0.30重量%超、より好ましくは約0.17重量%~約0.23重量%超、あるいは約0.18重量%~約0.22重量%超、あるいは約0.19重量%~約0.21重量%超、あるいは約0.20重量%超の料で存在してもよい。Velsan C(登録商標)の濃度は、約0.10%~約0.50%、好ましくは約0.20%~約0.40%、より好ましくはあるいは約0.25%~約0.30%の量で存在してもよい。Symdiol 68(登録商標)の濃度は、約0.10%~約0.80%、好ましくは約0.10%~約0.50%、より好ましくは約0.20%~約0.30%で存在してもよい。パラベンの濃度は、組成物の約0.01重量%~約0.11重量%、好ましくは約0.02重量%~約0.10重量%、より好ましくは約0.03重量%~約0.09重量%の量で存在してもよい。一実施形態では、組成物は、組成物の0.005重量%~0.1重量%、好ましくは約0.01重量%~約0.08重量%、あるいは約0.01重量%~約0.05重量%のプロピルパラベンを含む。別の実施形態では、組成物は、組成物の約0.01重量%~約0.1重量%、好ましくは約0.02重量%~約0.07重量%、あるいは約0.03重量%~約0.05重量%のメチルパラベンを含む。
【0068】
更に別の実施形態では、パラベンは、メチルパラベンとプロピルパラベンとの組合せを含み、このメチルパラベンとプロピルパラベンとの重量比はより大きい。また更に別の実施形態では、パラベンは、メチルパラベン及びプロピルパラベンであって、このメチルパラベンとプロピルパラベンとの重量比は、約5:3~約30:3、好ましくは約5:3~約20:3超、より好ましくは約6:3~約15:3である。
【0069】
一実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、トリクロサン(すなわち、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール)を実質的に含まず、好ましくはトリクロサンを含まない。
【0070】
甘味剤
本明細書の口腔ケア組成物は、甘味剤を含んでもよい。これらとしては、サッカリン、ブドウ糖、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、果糖、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D-トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、スクラロース、ネオテーム、及びこれらの混合物のような、甘味料が挙げられる。甘味剤は、一般に、口腔ケア組成物中で、組成物の約0.005重量%~約5重量%、あるいは約0.01重量%~約1重量%、あるいは約0.1重量%~約0.5重量%、あるいはこれらの組合せの濃度で使用される。
【0071】
着色剤
本明細書の口腔ケア組成物は、着色剤(すなわち、顔料、染料、及び乳白剤)を含んでもよい。着色剤は、水溶液、好ましくは1%着色剤水溶液の形態であってよい。二酸化チタンもまた本発明の口腔ケア組成物に加えられてもよい。二酸化チタンは、口腔ケア組成物に不透明度を加える白色粉末である。二酸化チタンは、一般に、組成物の約0.25重量%~約5重量%を構成する。組成物のために選択された構成要素は、互いに、化学的かつ物理的に適合するものでなければならないことが理解されよう。
【0072】
抗歯石剤
口腔ケア組成物は、抗歯石剤の有効量を含んでよく、一実施形態では、この抗歯石剤は、約0.05%~約50%、あるいは約0.75%~約25%、あるいは約0.1%~約15%で存在してもよい。非限定的な例としては、米国特許出願公開第2011/0104081(A1)号の段落64に記載されているもの、及び米国特許出願公開第2012/0014883(A1)号の段落63~68に記載されているもの、並びにそれらで引用される参考文献が挙げられる。一例は、ピロリン酸イオンの供給源としてのピロリン酸塩である。一実施形態では、組成物は、ピロリン酸四ナトリウム(tetrasodium pyrophosphate:TSPP)若しくはピロリン酸二ナトリウム又はこれらの組合せ、好ましくは組成物の約0.01重量%~約重量2%、より好ましくは約0.1重量%~約1重量%のピロリン酸塩を含む。理論に束縛されるものではないが、TSPPは、カルシウムキレートにより歯垢形成を軽減するだけでなく、また、モノフルオロリン酸塩安定化(モノフルオロリン酸塩を含むそれらの処方において)の更なる利益を提供してもよい。
【0073】
他の成分
本発明の口腔ケア組成物は、他の口腔ケア活性物質を含んでもよい。例えば、口腔ケア組成物は、ビタミンを更に含んでもよく、このビタミンは、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB5、及びこれらの組合せから選択される。本明細書において、用語「ビタミン」とは、当該ビタミン及びその全ての誘導体を意味する。成分は、口腔ケア組成物に更なる利益を提供してもよい。鎖切断又はラジカル捕捉抗酸化剤としての細胞外抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又はα-トコフェロールの使用は、宿主組織損傷を引き起こし得る細胞内活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)の制御及び調節を助ける。デスパンテニナオール(dexpantheninaol)の使用は、上皮化を改善し、損傷した組織の創傷治癒において増殖期を誘導することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、口腔ケア組成物は、組成物の約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.5重量%~約8重量%、又は約0.5重量%~約5重量%の、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB5、又はこれらの組合せから選択されたビタミンを含んでもよい。本発明に記載のビタミンとは、当該ビタミン及びその全ての誘導体を意味する。
【0075】
本発明の口腔ケア組成物は、界面活性剤、抗菌剤、フッ化物イオン、及び当業者に既知の他の成分などの通常及び従来の補助的構成要素を更に含んでもよい。口腔ケア組成物のために選択された成分は、互いに、化学的かつ物理的に適合するものでなければならないことが理解されよう。
【0076】
使用方法
本発明はまた、対象の口腔の口腔内組織(例えば、口腔粘膜、歯肉)、特に歯肉組織へ適用し、2分超、好ましくは10分超、より好ましくは30分超、又は60分以上放置することを含む、口腔を治療する方法に関する。本明細書の使用方法は、対象の口腔粘膜(例えば、歯肉縁又は歯肉溝/歯肉ポケット)を、本発明にかかる口腔ケア組成物と接触させることを含む。
【0077】
本発明は更に、対象の口腔内組織上に口腔ケア組成物を適用する工程、好ましくは、歯肉縁又は歯肉溝に沿って、少なくとも1日1回、好ましくは少なくとも1日2回、より好ましくは毎回の歯磨きの直後に適用する工程を含む、本明細書に記載される口腔ケア組成物を用いて対象の歯肉健康を改善する方法に関する。本明細書における用語「直ちに」とは、1時間以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内、あるいは10分以内を意味する。好ましくは、口腔ケア組成物は、アプリケータを用いることによって対象の口腔内組織上に適用され得、このアプリケータは、口腔ケア組成物を、対象の歯肉縁又は歯肉溝に沿って広げるためのハンドル及びヘッドを有する。好ましくは、口腔ケア組成物は、口腔内組織上に適用される前に、アプリケータのヘッド上に分注される。
【0078】
本発明は更に、少なくとも2工程:(a)歯を、抗菌練り歯磨き、好ましくはスズ含有練り歯磨きでブラッシングする工程と、その直後に、(b)本明細書により定義される口腔ケア組成物(oral are composition)を、対象の口腔内組織上に、好ましくは歯肉縁、溝、又は歯肉ポケットに沿って適用する工程と、を含む、対象の歯肉健康を改善する方法に関する。
【0079】
試験法
試験1:レオロジー試験法
粘度プロファイルを評価するための(及び、製造指示書に従って実行される)、レオロジー試験法が記載される。粘度プロファイルは、歯磨剤マクロレオロジー試験手順を用いて、TA AR2000レオメータ(TA Instruments(New Castle、United States)から販売)上で試験する。使用される幾何形状は、溶媒トラップを備えた40mmの鋼製平行プレートである。歯磨剤をAR2000レオメータのペルチェプレート上に置き、ギャップ設定は1000マイクロメートルである。歯磨剤マクロレオロジー試験は、応力掃引(stress sweep)発振試験、周波数掃引発振試験、及び定常流動試験からなる。重要なパラメータ設定を列挙する:(a)応力掃引工程:発振応力(Pa):0.01~500;(b)周波数(Hz):1.0;(c)周波数掃引工程:周波数(Hz):0.1~10、及び制御発振応力(Pa):1.5;(d)定常流動工程1:剪断速度(秒-1):0.01~100;及び、(e)定常流動工程2:剪断速度(秒-1):100~0.01。
【0080】
剪断流動試験とは、異なる剪断速度で粘度を測定するための粘度試験様式である。定常流動試験とは、各点における速度が時間と共に変化しない流動である。この試験における3つの主要パラメータは、粘度、剪断速度、及び剪断応力である。べき乗則モデルは、非ニュートン流体において剪断減粘が生じる剪断速度の範囲にわたる、粘度又は剪断応力と剪断速度との間の関係を特徴付けるために使用される、周知のモデルである。これは、ニュートン挙動からの全体的な粘度範囲及び偏差の程度を定量化する。べき乗則モデルは、η=Kγn-1として記載され、η=粘度、及びγ=剪断速度である。Kは粘着稠度係数として知られており、モデル化されている流動曲線の部分にわたる全体的な粘度の範囲を表す。指数「n」とは、速度指数として既知である。K及びηは、べき乗則モデルフィッティングによって判定することができる。速度指数nに基づいて、べき乗則モデルは、3つの基本的なタイプの流動を表す:
n=1 ニュートン挙動
n<1 剪断減粘(又は擬塑性)
n>1 剪断増粘
【0081】
本明細書の組成物の粘度プロファイルは、0.1~10秒-1の剪断速度範囲とのべき乗則モデルフィッティングによって判定される、粘着稠度係数K(Pa・s)によって表される。
【0082】
試験2:付着性試験法
試料の付着性は、Texture Analyser(TA Plus/30)、Stable Micro System(Surrey、UK)を用いて試験される。手順を以下に記載する:
1.試料調製:ゲル又は軟膏試料を、「0.03±0.005g」の量として、試験プレートにパイプアウトする。
2.TAシーケンスを作製して、器具の動作を可能にする:プローブを各試料に圧縮し、判定されたプログラムシーケンスに従う(段階2では、速度10mm/秒、力5g;段階4では、速度1mm/秒、力200g、及び段階5では、時間は1秒)。
3.器具及び付属品設定:
3.1 利用可能なプローブオプション:金属製丸プレートを用いて試験を試行する 3.2 TAを「圧縮」に設定
4.全分析は5回反復して実施されるべきである。
5.測定:付着性:試料の表面とプローブの表面との間の引力を克服するのに必要な作用。
6.データ計算:プログラムしたTTAデータ分析マクロを利用する(例えば、力5g)。
【0083】
付着性値(単位:gf秒)とは、試料の表面とプローブの表面との間の引力を克服するのに必要なエネルギーを表す。
【0084】
試験3:粘膜付着試験法
粘膜付着試験法が提供される。試験試料は、室温で1時間、フルオレセインイソチオシアネート(Fluorescein isothiocyanate:FITC)で標識される。得られた溶液を、遊離FITC分子を除去するために、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)中で48時間透析される。シリカウェハを、エタノール/(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)/アンモニア溶液(20:4:1、v/v/v)の混合物で8時間処理し、次いでエタノール及び水ですすぎ、乾燥させて、アミン官能化シリカウェハ(NH-SW)を得る。NH-SWを、ムチン溶液中において、室温で8時間インキュベートする。ムチン修飾シリカウェハを、振盪器内のPBS緩衝液中において、37℃で12時間、試験試料と共にインキュベートし、続いて脱イオン水ですすぐ。ムチン修飾シリカウェハの蛍光画像を蛍光顕微鏡法により撮影し、ImageJソフトウェアでの蛍光強度(Fluorescent Intensity:FI)の測定に使用する(National Institutes of Health、USA、(https://imagej.nih.gov/ij/))。「粘膜付着指数」を説明するために使用される蛍光強度率(「FI%」)とは、正規化された画像フィールド内の総画素に対する蛍光画素である。したがって、FI%が高い第1の試験試料は、FI%がより低い第2の試験試料と比較して、より強い粘膜付着を有する。
【0085】
試験4:ヒト歯肉線維芽細胞の改善された創傷治癒を測定するためのアッセイ
インビトロヒト歯肉線維芽細胞を使用して、ゲル組成物による処置の結果として、創傷治癒移行の効果を評価する。この方法は、3つの段階を含む。
【0086】
段階1-初代ヒト歯肉線維芽細胞(Human Gingival Fibroblast、HGF)を培養する ヒト歯肉線維芽細胞を、抜歯患者から採取し、5mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄する。この組織を小片に刻んで、15mLの遠心管に入れる。試料を、37℃で1時間、等量の8%ディスパーゼ1mL及び6%コラゲナーゼ1mLで消化する。この消化の間、試料を15分毎に振盪する必要がある。消化プロセスが完了したら、管に室温で6分間、1100RPMで遠心分離を行う。遠心分離後、管の底には上清液から分離された細胞のペレットが形成されている。次いでこの上清液を廃棄し、細胞ペレットを3mLの新鮮な最小必須培地(Minimum Essential Medium、MEM、Thermo Fisherから入手可能)培養培地に懸濁させた後、ペトリ皿に移す。細胞を入れたペトリ皿を、37℃、5%COのインキュベータ内に約10日間入れる。培地の変色について2日毎にペトリ皿を確認する。培地の変色が生じた場合、新鮮な培養培地に交換する。
【0087】
段階2-ヒト歯肉線維芽細胞を継代培養する
ペトリ皿の細胞単層被覆率が80~90%になったら、前述の培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄する。0.25%トリプシン-EDTA溶液1mLを添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、細胞を37℃で約1~2分間静置する。ペトリ皿表面から剥がれにくい細胞を剥がするために、ペトリ皿をタップすることが必要な場合もある。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収する。次いで管を1100RPMで6分間室温で遠心分離する。上清を廃棄し、細胞ペレットを、同じ遠心管内で、4mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させる。それぞれペトリ皿上に観察される細胞単層被覆が80~90%になるまで、細胞懸濁液1mL及び新鮮なMEM培養培地9mLを入れた4枚のペトリ皿を37℃、5%COのインキュベータ内に約3~5日間入れる。最も高い細胞生存率を達成するためにも、この段階は創傷治癒アッセイ前に2~4回繰り返す必要がある。
【0088】
段階3-創傷治癒アッセイ
ペトリ皿の細胞単層被覆率が80~90%になったら、前述の培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄する。0.25%トリプシン-EDTA溶液1mLを添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、細胞を37℃で約1~2分間静置する。ペトリ皿表面から剥がれにくい細胞を剥がすために、培養ペトリ皿をタップする必要がある場合もある。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収する。次いで管を1100RPMで6分間室温で遠心分離する。上清を廃棄し、細胞ペレットを、6mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させる。1mLの細胞懸濁液及び1mLの新鮮なMEM培地を、それぞれ6ウェルプレートの各ウェルに添加する。細胞単層被覆率が50~70%になるまで、プレートを37℃、5%COでインキュベートする。次いで画像取得の間、ウェルの外側底部の中央に、基準線として線をマーキングする。滅菌した1mLのピペットチップで細胞単層の右半分をこすり取ることによって、創傷を手作業で作製する。細胞を2mLのPBSで洗浄して、懸濁された細胞が全く観察されなくなるまで、懸濁細胞を除去する。2mLの培養培地、及び1%の対照組成物を含有する2mLの培養培地又は1%の発明の組成物を含有する2mLの培養培地をウェルに添加する。
【0089】
HGFの高密度デジタル画像は、Olympus(登録商標)UIS2 WHN対物レンズ(10倍)を有するOlympus(登録商標)IX71デジタルSLRカメラを用いて撮影する。第1の画像は、プレート上の中央線のマーキングを基準線として使用して、時間0時間(すなわち、ベースライン)で取得する。次いで、プレートを、以下に記載されるように、37℃、5%COで様々な時間間隔にわたってインキュベートする。一致した撮影領域は以前に取得され、画像は、ベースライン後の後の時間間隔(例えば、16時間、24時間、48時間、65時間、72時間等)で取得され、異なる処置脚部の下での創傷治癒性能の指標として、細胞被覆率(%)を評価する。画像は、Wimasis(登録商標)WimScratchソフトウェア(Wimasis GmbH,Germanyから入手可能)によって評価され、各試料のマッチングベースライン画像と比較して、点線で示されるように、HGF細胞の被覆度(すなわち、創傷治癒)の程度(すなわち、割合)を判定する。WimScratchソフトウェアは、高度なエッジ検出及びオーバレイ技法を利用して、細胞及びブランクの領域を認識し、すなわち、画像内の緑色のオーバレイは、特定の画像の細胞被覆領域を表し、灰色の領域は創傷領域を表す。読み出しは、両方の領域に対して提示され、総面積のパーセントとして正規化される。
【実施例0090】
以下の実施例及び説明は、本発明の範囲内にある実施形態を更に明らかにする。これらの実施例は単に例示することが目的であり、これらの多くの変形例が発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく可能であることから、本発明の制限として解釈されるべきではない。
【0091】
実施例A:実施例1~4
実施例1~4は、以下の表1に示すゲル組成物であり、構成要素の量は、重量%である。これらは、処方者によって選択される従来の方法によって好適に調製されてもよい。実施例1~4は、ヒアルロン酸ナトリウム、及びアラントインを含む又は含まない少なくとも2種のポリマーの組合せで作製された、本発明にかかる発明の処方である。
【0092】
【表1】
約1,400,000DaのM.W.を有するヒアルロン酸ナトリウム。
【0093】
実施例B:ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒の改善を測定するためのアッセイ
インビトロヒト歯肉線維芽細胞を使用して、発明の組成物及び対照組成物による処置の結果として、創傷治癒移行の効果を評価する。この方法は、3つの段階を含む。
【0094】
段階1-初代ヒト歯肉線維芽細胞(Human Gingival Fibroblast、HGF)を培養する ヒト歯肉線維芽細胞を、抜歯患者から採取し、5mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄する。この組織を小片に刻んで、15mLの遠心管に入れる。試料を、37℃で1時間、等量の8%ディスパーゼ1mL及び6%コラゲナーゼ1mLで消化する。この消化の間、試料を15分毎に振盪する必要がある。消化プロセスが完了したら、管に室温で6分間、1100RPMで遠心分離を行う。遠心分離後、管の底には上清液から分離された細胞のペレットが形成されている。次いでこの上清液を廃棄し、細胞ペレットを3mLの新鮮な最小必須培地(Minimum Essential Medium、MEM、Thermo Fisherから入手可能)培養培地に懸濁させた後、ペトリ皿に移す。細胞を入れたペトリ皿を、37℃、5%COのインキュベータ内に約10日間入れる。培地の変色について2日毎にペトリ皿を確認する。培地の変色が生じた場合、新鮮な培養培地に交換する。
【0095】
段階2-ヒト歯肉線維芽細胞を継代培養する
ペトリ皿の細胞単層被覆率が80~90%になったら、前述の培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄する。0.25%トリプシン-EDTA溶液1mLを添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、細胞を37℃で約1~2分間静置する。ペトリ皿表面から剥がれにくい細胞を剥がするために、ペトリ皿をタップすることが必要な場合もある。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収する。次いで管を1100RPMで6分間室温で遠心分離する。上清を廃棄し、細胞ペレットを、同じ遠心管内で、4mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させる。それぞれペトリ皿上に観察される細胞単層被覆が80~90%になるまで、細胞懸濁液1mL及び新鮮なMEM培養培地9mLを入れた4枚のペトリ皿を37℃、5%COのインキュベータ内に約3~5日間入れる。最も高い細胞生存率を達成するためにも、この段階は創傷治癒アッセイ前に2~4回繰り返す必要がある。
【0096】
段階3-創傷治癒アッセイ
ペトリ皿の細胞単層被覆率が80~90%になったら、前述の培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄する。0.25%トリプシン-EDTA溶液1mLを添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、細胞を37℃で約1~2分間静置する。ペトリ皿表面から剥がれにくい細胞を剥がすために、培養ペトリ皿をタップする必要がある場合もある。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収する。次いで管を1100RPMで6分間室温で遠心分離する。上清を廃棄し、細胞ペレットを、6mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させる。1mLの細胞懸濁液及び1mLの新鮮なMEM培地を、それぞれ6ウェルプレートの各ウェルに添加する。細胞単層被覆率が50~70%になるまで、プレートを37℃、5%COでインキュベートする。次いで画像取得の間、ウェルの外側底部の中央に、基準線として線をマーキングする。滅菌した1mLのピペットチップで細胞単層の右半分をこすり取ることによって、創傷を手作業で作製する。細胞を2mLのPBSで洗浄して、懸濁された細胞が全く観察されなくなるまで、懸濁細胞を除去する。2mLの培養培地、及び1%の対照組成物を含有する2mLの培養培地又は1%の発明の組成物を含有する2mLの培養培地をウェルに添加する。
【0097】
HGFの高密度デジタル画像は、Olympus(登録商標)UIS2 WHN対物レンズ(10倍)を有するOlympus(登録商標)IX71デジタルSLRカメラを用いて撮影する。第1の画像は、プレート上の中央線のマーキングを基準線として使用して、時間0時間(すなわち、ベースライン)で取得する。次いで、プレートを、以下に記載されるように、37℃、5%COで様々な時間間隔にわたってインキュベートする。一致した撮影領域は以前に取得され、画像は、ベースライン後の後の時間間隔(例えば、16時間、24時間、48時間、65時間、72時間等)で取得され、異なる処置脚部の下での創傷治癒性能の指標として、細胞被覆率(%)を評価する。画像は、Wimasis(登録商標)WimScratchソフトウェア(Wimasis GmbH,Germanyから入手可能)によって評価され、各試料のマッチングベースライン画像と比較して、点線で示されるように、HGF細胞の被覆度(すなわち、創傷治癒)の程度(すなわち、割合)を判定する。WimScratchソフトウェアは、高度なエッジ検出及びオーバレイ技法を利用して、細胞及びブランクの領域を認識し、すなわち、画像内の緑色のオーバレイは、特定の画像の細胞被覆領域を表し、灰色の領域は創傷領域を表す。読み出しは、両方の領域に対して提示され、総面積のパーセントとして正規化される。
【0098】
結果:表1は、組成物実施例1(すなわち、0.2%HAのみ)及び組成物実施例2(すなわち、0.2%HA+0.1%アラントイン)による処理の72時間後のHGFの細胞回収率を示す。表2を参照すると、結果は、発明組成物の実施例1(0.2%HAを含有)が、創傷領域の22.5%~32.2%の細胞被覆率を増加させることによって、創傷治癒を改善することを示す。一方で、組成物実施例2(0.2%HA及び0.1%アラントインを含有)は、創傷領域の60.3%まで更に細胞被覆率を増加させることによって、創傷治癒を改善する。
【0099】
【表2】
【0100】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0101】
相互参照される又は関連する任意の特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとは見なされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとは見なされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0102】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
【外国語明細書】