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特開2024-26305直線又は回転運動を行う磁気式及び機械式アクチュエータ要素を含む試料処理デバイス及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026305
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】直線又は回転運動を行う磁気式及び機械式アクチュエータ要素を含む試料処理デバイス及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20240220BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206696
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2021195533の分割
【原出願日】2016-07-25
(31)【優先権主張番号】62/331,635
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/196,816
(32)【優先日】2015-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/261,577
(32)【優先日】2015-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518026017
【氏名又は名称】ノベル マイクロデバイシズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】パイス,アンドレア マリア,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】パイス,ロハン ジョセフ,アレキサンダー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の試料調製及びアッセイ段階にわたる、シンプルであり低電力であり自動化された生物試料処理の方法及びデバイスを提供し、方法及びデバイスは、設備がない非ラボラトリ環境での複雑な診断アッセイのポイントオブケア実施を容易にする。
【解決手段】1つ以上のカム102は、カムシャフト103が回転するとカムローブ104が1つ以上のロッカアームをアクチュエートするように構成されており、1つ以上のロッカアームは、アクチュエーションによってロッカアームが開位置から閉位置に動いて、1つ以上のバーストポーチ106に圧力がかけられて、易壊性メンブレンが破れて流体が1つ以上の反応チャンバ107に放出されるように構成されているマイクロ流体デバイス101。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフト及びカムローブを含む1つ以上のカムと、
1つ以上のロッカアームと、
1つ以上の流路と、1つ以上の反応チャンバと、流体及び易壊性メンブレン封止材を含む1つ以上のバーストポーチと、を含むマイクロ流体カートリッジと、
前記カムシャフトを回転させるように構成されたカム機構と、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記1つ以上のカムは、前記カムシャフトが回転すると前記カムローブが前記1つ以上のロッカアームをアクチュエートするように構成されており、前記1つ以上のロッカアームは、アクチュエーションによって前記ロッカアームが開位置から閉位置に動いて、前記1つ以上のバーストポーチに圧力がかけられて、前記易壊性メンブレンが破れて前記流体が前記1つ以上の反応チャンバに放出されるように構成されている、
マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
複数のカムローブ及びロッカアームが、前記カムシャフトが完全に1回転すると、前記ロッカアームが、時間的且つ空間的に制御された様式で複数のバーストポーチに圧力をかけるように構成されている、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記1つ以上のカムローブ及び前記1つ以上のロッカアームは、前記1つ以上のバーストポーチの前記易壊性メンブレン封止材が破られた後に前記ロッカアームが前記閉位置にとどまるように構成されている、請求項1又は2のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記カムローブは、前記ロッカが前記ポーチを破裂させた後に前記閉位置にとどまるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記1つ以上の流路に沿って1つ以上のダイヤフラム弁を更に含み、前記1つ以上のカムローブは、前記カムシャフトが回転すると、前記カムローブが前記1つ以上のダイヤフラム弁を開いたり、且つ/又は閉じたりするように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記カムシャフトは、ぜんまい機構によって回転するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
試料調製チャンバを更に含み、前記試料調製チャンバはDNAキャプチャ用ビヒクルを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
更に、前記カムシャフトの回転速度と、前記複数のカムローブ及び前記複数のロッカアームの前記構成とにより、前記複数のバーストポーチを、時間的に制御された様式で破裂させてDNA精製の洗浄段階を実施することが可能になる、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記マイクロ流体カートリッジは更に、増幅チャンバ、ヒートシンク、及びヒータを含み、前記ヒートシンク及び前記ヒータは、前記複数のカムローブ及び前記複数のロッカアームのアクチュエーション後に前記増幅チャンバを断続的に冷却又は加熱するように構成されている、請求項8に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
更に、前記カムシャフトの回転速度と、前記複数のカムローブ及び前記複数のロッカアームの前記構成とにより、前記ヒートシンク及び前記ヒータが、時間的に制御された様式で前記増幅チャンバを断続的に冷却又は加熱してPCR熱サイクルを実施することが可能になる、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記マイクロ流体カートリッジは更に、DNAキャプチャ用ビヒクルを含むDNAハイブリダイゼーションチャンバを含む、請求項8に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
マイクロ流体カートリッジを含むマイクロ流体デバイスであって、
複数の試薬充填済みポーチと、
反応チャンバと、
カムシャフトと、を含み、
前記カムシャフトは、複数のスロットを、前記カムシャフトに沿う複数の角度位置に含み、それによって、前記カムシャフトが所定の位置まで回転すると、前記角度スロットのうちの1つ以上が、前記試薬充填済みポーチのうちの1つ以上と前記反応チャンバとの間に流路を形成する、
マイクロ流体デバイス。
【請求項13】
試薬及び易壊性封止材を含む試薬ポーチと、
磁界に引き寄せられると前記試薬ポーチをへこませて前記易壊性封止材を破るように構成された一体型磁気要素と、
を含む試薬定量供給装置。
【請求項14】
前記磁気要素はプランジャを含む、請求項13に記載の試薬定量供給装置。
【請求項15】
前記磁気要素はビーズを含む、請求項13に記載の試薬定量供給装置。
【請求項16】
前記磁気要素は鋭利物体を含む、請求項13に記載の試薬定量供給装置。
【請求項17】
流体導管と、
反応チャンバと、
請求項13~16のいずれか一項に記載の試薬定量供給装置と、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記試薬定量供給装置は、気密封止が形成されるように、前記マイクロ流体デバイスと接着されており、前記試薬定量供給装置は、前記易壊性封止材が破られたら、前記流体導管経由で前記試薬を前記反応チャンバに出し切って空になるように構成されている、
マイクロ流体デバイス。
【請求項18】
トラップを更に含み、前記トラップは、固定されていない磁性材料を含み、前記試薬ポーチをへこんだ状態で保持するように構成されている、請求項17に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項19】
弁を介して互いに流体接続されている複数の流体チャンバと、
永久磁石を含む回転シャフトであって、前記永久磁石は前記回転シャフトの円周上で軸方向及び半径方向に配列され、磁極が交互になっている、前記回転シャフトと、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記流体チャンバのそれぞれは、前記回転シャフトの軸に垂直な経路に沿って運動方向が制限されている、トラップされた永久磁石を含み、前記回転シャフト及び前記流体チャンバは、前記回転シャフトが回転すると、前記永久磁石が動いて前記各流体チャンバ内の流体を混合するように構成されている、
マイクロ流体デバイス。
【請求項20】
封止材の易壊性部分のある厳密な位置に破裂箇所がある試薬ポーチであって、前記封止材の前記易壊性部分に直接重なる、前記試薬ポーチの特定の場所に拘束された磁気要素を含む前記試薬ポーチ。
【請求項21】
1つ以上の直線アクチュエータ要素と、
マイクロ流体カセットと、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記1つ以上の直線アクチュエータ要素は、磁気ビーズ移動用固定磁気要素、流体弁アクチュエーション用固定磁気要素、及び/又は試薬ポーチ破裂用固定磁気要素を含み、前記マイクロ流体カセットは、磁気プランジャ要素が一体化された貯蔵試薬ポーチと、試料処理用試薬チャンバと、弁を通る磁気ビーズの動きを制御する非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁と、磁気ビーズ移動用固定磁気要素を含む磁気プランジャを含む磁気制御弁と、を含む、
マイクロ流体デバイス。
【請求項22】
前記1つ以上のアクチュエータ要素は、前記マイクロ流体デバイスの下及び/又は上を摺動するように構成されている、請求項21に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項23】
前記アクチュエータ要素は、モータ、ぜんまい、手回しクランク、手で押すこと、及び直線ソレノイドアクチュエータから成る群から選択される方法で動かされる、請求項21~22のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項24】
1つ以上の直線アクチュエータ要素と、
マイクロ流体カセットと、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記1つ以上の直線アクチュエータ要素は、固定磁気要素と部分的にトラップされた磁気要素との組み合わせを含み、前記部分的にトラップされた磁気要素は、それぞれのトラップに収容されて、それぞれの動きが、磁気ビーズ移動、流体弁アクチュエーション、及び/又は試薬ポーチ破裂の為の1つの軸又は方向に制限されており、前記マイクロ流体カセットは、磁気プランジャ要素が一体化された貯蔵試薬ポーチと、試料処理用試薬チャンバと、弁を通る磁気ビーズの動きを制御する非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁と、磁気ビーズ移動用固定磁気要素を含む磁気プランジャを含む磁気制御弁と、を含む、
マイクロ流体デバイス。
【請求項25】
前記1つ以上のアクチュエータ要素は、前記マイクロ流体デバイスの下及び/又は上を摺動するように構成されている、請求項24に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項26】
前記アクチュエータ要素は、モータ、ぜんまい、手回しクランク、手で押すこと、及び直線ソレノイドアクチュエータから成る群から選択される方法で動かされる、請求項24~25のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項27】
反応チャンバに組み込まれた磁気プランジャ要素と一列に並ぶ試薬ポーチを含むマイクロ流体デバイスであって、前記磁気プランジャ要素は、磁界に引き寄せられると、前記試薬ポーチの易壊性封止材を破り、前記試薬ポーチ内に入り、前記試薬ポーチ内の試薬を前記反応チャンバに押し出すように構成されている、マイクロ流体デバイス。
【請求項28】
前記磁気プランジャ要素は、流体入口と前記試薬ポーチとの間に位置し、更に、前記磁気要素はノッチを有し、前記ノッチは、ガイドとして働き、前記反応チャンバへの流体の流れを、前記ガイドノッチを通るように制限し、前記ガイドノッチは、前記磁気要素プランジャがその最も高い位置に達したときに前記反応チャンバへの流体の流れが閉じられるように構成されている、請求項27に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項29】
複数の部分的にトラップされた磁気要素が回転シャフト内部に収容されているアクチュエータ要素であって、前記回転シャフトはスリーブ内で複数の磁石トラップを有するように構成されている、前記アクチュエータ要素と、
複数の、請求項13~16のいずれか一項に記載の試薬定量供給装置と、
混合チャンバと、
混合チャンバ磁石と、
を含むマイクロ流体デバイス。
【請求項30】
両磁極が前記回転シャフトの円周上にあることによって、前記シャフトが回転するにつれて、混合チャンバ磁石を高い周波数で引き寄せたり斥けたりするように構成された固定永久磁石を更に含む、請求項29に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項31】
前記回転シャフトが回転するにつれて、第1の試薬定量供給装置が第1の部分的にトラップされた磁気要素と一列に並び、これによって、前記第1の部分的にトラップされた磁石は前記回転シャフトから外に出て前記スリーブの第1の磁石トラップに入り、これによって、前記磁気要素を引き寄せて、前記第1の試薬定量供給装置の前記ポーチの前記易壊性封止材を破ることが可能になるように構成されている、請求項29~30のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項32】
前記回転シャフトが回転し続けるにつれて、第2の試薬定量供給装置が第2の部分的にトラップされた磁気要素と一列に並び、これによって、前記第2の部分的にトラップされた磁石は前記回転シャフトから外に出て前記スリーブの第2の磁石トラップに入り、これによって、前記磁気要素を引き寄せて、前記第2の試薬定量供給装置の前記ポーチの前記易壊性封止材を破ることが可能になるように構成されている、請求項31に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項33】
貯蔵試薬の定量供給が完了した後に、前記回転シャフトが高RPMで回転して混合を有効にすることが可能であり、これは、前記シャフト内の前記固定永久磁石が、高い周波数で交番する磁極を前記混合磁石に対して差し出すようにすることによって可能であるように構成されている、請求項32に記載のマイクロ流体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線又は回転運動を行う磁気式及び機械式アクチュエータ要素を含む試料処理デバイス及びその使用方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年7月23日に出願された米国特許仮出願第62/196,816号、2015年12月1日に出願された米国特許仮出願第62/261,577号、並びに2016年5月4日に出願された米国特許仮出願第62/331,635号の利益を主張するものであり、これらの全内容が参照によって本明細書に完全に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
ポイントオブケア(「POC」)デバイスは、患者ケアの現場における便利で迅速な検査を可能にする。それゆえに、マイクロ流体工学の技術を取り込んだPOCデバイスの一種であるサンプルツーアンサーラボオンチップ(「LOC」)システムが普及しつつある。このようなLOCは、これまで手動で、且つ/又は現場外で実施されてきた抽出、増幅、検出、解釈、報告などの様々なラボ機能を全て同一デバイス上に統合したものである。サンプルツーアンサーLOC検査は、ラボ施設ではなく患者ケアの現場で実施される為、これらのタイプの検査には汚染管理の課題があり、特に、処理中の、人間とのやりとりが絡む段階においてその課題があった。従って、試料処理をサンプルツーアンサーLOC内で自動化して、人間とのやりとりを最小限に抑えることが必要とされる。このようなサンプルツーアンサーLOCは、一般にサイズが数平方ミリメートルから数平方センチメートルであり、多くの場合、微小電気機械システム(「MEMS」)型である。ここで述べるような、生物物質を検出して分析することが可能なMEMSは、一般にバイオMEMSと呼ばれる。
【0004】
市販のPOC診断デバイスのほとんどは、臨床検査改善修正法案(「CLIA」)の下で中程度から高度の複雑さとしてカテゴライズされる。これらの連邦指針は、これらの指針が免除される特定の条件を除き、一般に、人間に対する臨床ラボ検査機器に適用される。それらの条件の1つは、デバイス又は計器が、特定のリスク、誤差、及び複雑さの要件を満たす場合である。POC診断検査がCLIAを免除されることに適格であるようにするには、試料調製段階及び流体操作段階を最小限に抑える必要がある。これらの段階を最小限に抑える1つの方法は、試薬をブリスタポーチやバーストポーチなどの密封機構に格納して販売することである。マイクロ流体チップへの試薬送達は、一般に、シリンジポンプや蠕動ポンプなどのポンプと、外部試薬が充填されたボトル、シリンジ、又はリザーバと、を使用することを含む。このようなシステムは、1つにまとめなければならない構成要素が多いことと、マイクロ流体チップとの間に漏れのない流体インタフェースが必要であることとにより、可搬にしにくいだけでなく複雑である。シンプルであり小型であり低電力である流体操作の自動化を可能にする方法を実施することは、最先端の市販品でもまだ成功していない。従って、このことは、大規模臨床施設においていまだに行われている多段階バイオアッセイ検査の大多数において、POCの実施を妨げる障害と見なされている。
【0005】
分注、加熱、冷却、混合、洗浄、培養、 ラベリング、結合、溶離などを含み、これらに限定されない複数の処理段階を必要とする複雑なバイオアッセイは、サンプルツーアンサーシーケンスを実行する為には高価なラボ自動化機器が頼りである。サンプルツーアンサーシーケンスを自動化する為の、低コストであり低電力であり小型である計装はまだ実現されておらず、従って、サンプルツーアンサーシーケンスを実行するポイントオブケアマイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイス上でアッセイを実行する為には、スタンドアロンの卓上機器又は可搬機器の形態をとる追加計装が頼りである。マイクロ流体カートリッジ上での試料処理段階を自動化できる別個の計装を実施することは、検査当たりのコスト、従って、カートリッジのコストを低く保つ為の一法であると考えられる。この計装は、ポイントオブケア用途向けに開発されたシステムでは、ソレノイドプランジャ、直線アクチュエータ、マイクロコントローラ、及び電子回路を有する可搬卓上機器の形態で試料処理シーケンスを自動化することが可能である。この計装は、試料処理シーケンスに対する管理権限をユーザに与えるが、動作する為には、管理された環境とかなりの量の電力が必要である。このようなポイントオブケアシステムは、計器を動作させる為のインフラストラクチャが存在しない低資源環境や、高価な検査用計器を購入する必要性がわからないか、購入する余裕がないか、或いは、検査の為の計器の操作の訓練を受けていない非専門家しかいない家庭環境又は院外環境では実現不可能である。従って、マイクロ流体デバイスに直接組み込まれることが可能であって、自動サンプルツーアンサーシーケンスを実行できる、低電力でありスタンドアロンであり廉価であり使い捨てである計装を可能にする方法を開発することが、複雑な多段階の核酸、タンパク質、及び免疫のアッセイをサンプルツーアンサーから実行できる使い捨て検査デバイスを開発する上での障害であると見られる。
【0006】
それらを実行する計装を必要としない使い捨て検査は、以下のものに限定される。1)試料が液体のみであり、試薬を使用しない、シンプルな単段階アッセイ(このような検査としては、典型的には、尿検査ストリップや妊娠検査などの浸漬棒検査がある)。2)試薬の小瓶と指示書を含むキットの形式で販売される多段階アッセイ。ユーザが、指示に従い、試薬を使い捨て試験カートリッジの別々の領域に定量供給することが前提である(このようなデバイスは、典型的には、試料調製段階を必要としない免疫アッセイを実行する)。
【0007】
多段階アッセイデバイスの幾つかの例として、チェンビオ・ダイアグノスティック・システム・インコーポレイテッド(Chembio Diagnostic Systems, Inc.)のDPP(登録商標) HIV 1/2アッセイ、SURE CHECK(登録商標) HIV 1/2、HIV 1/2 STAT-PAK(登録商標)、及びHIV 1/2 STAT-PAK(登録商標) DIPSTICK検査があり、これらに限定されない。これらの検査は、ユーザが一連の段階を手動で実施してシーケンスを完結させることが前提である。ユーザが訓練を受けていないか、指示に正しく従わないと、検査が正しく行われないリスクがあり、従って、検査がどのように行われたかに応じて結果がばらつく可能性がある。更に、試薬がデバイス内に完全には収容されていない場合には汚染のリスクもある。適正なラボプロトコル、手袋、及び設備(例えば、ヒュームフードや、密閉されたバイオセーフティ施設のようなラボインフラストラクチャ)によって取り扱わないと有害である一部の刺激の強い試薬は、検査が、密閉された施設内で熟練した技師によって行われない限り、そのようなキット検査に実装できない。
【0008】
検査がシンプルであり自動化されたものでないと、非専門家が検査を正しく実行できないリスクがある。検査の複雑さが高まって2~3段階を超えると、こうした手動キットベースの検査は、その有用性を達成できなくなる。核酸増幅アッセイの進歩(例えば、ループ媒介増幅などの等温アッセイ)により、これらの検査では試料を単一温度(通常は60~70℃)に保持すればよい為、加熱/冷却の熱サイクルの計装負荷が軽減された。しかしながら、このような検査は、依然として、サンプルツーアンサーシーケンスを完結させる為に複数の段階をユーザが行わなければならず、その為には、熟練した操作者又は更なる自動化計装が必要である。
【0009】
生物試料の処理が必要な多くの診断アッセイにおいては、試料調製が不可欠である。生物試料は、典型的には、複数の複雑な処理段階を経て、アッセイでの使用に適する状態になる。それらの段階は、ロー試料から注目検体を分離し、濃縮し、且つ/又は生成する為に、且つ、所望のアッセイに干渉する可能性のある物質を試料から除去する為に必要である。試料処理段階は、多くの場合、温度、試薬の量、及び培養時間に関して厳密な条件を必要とし、厳密なシーケンスで、且つ、ラボラトリ環境のような緻密に管理された環境で実施されなければならない。従来の試料処理用自動化システムは、非常に複雑で高価な計装と熟練した操作担当者が必要であった。こうしたシステムは、一元化されたラボに置かれることが多い為、ロー試料を適正に保管して、処理の為に別の場所にあるラボに転送することを頻繁に行わなければならない。このような因子は、高コスト、結果が出るのが遅いこと、出荷及び不適正な保管に起因する試料の保全性の低下などを含む幾つかの制限につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、複数の試料調製及びアッセイ段階にわたる、シンプルであり低電力であり自動化された生物試料処理の方法及びデバイスを提供する。本明細書に記載の方法及びデバイスは、設備がない非ラボラトリ環境での複雑な診断アッセイのポイントオブケア実施を容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従って、直線運動又は回転運動による自動化を用いた、磁気式アクチュエータ要素及び機械式アクチュエータ要素を有するサンプルツーアンサーマイクロ流体デバイスの様々な実施形態と、それらの使用方法とを開示する。一実施形態ではマイクロ流体デバイスが提供され、これは、
カムシャフト及びカムローブを含む1つ以上のカムと、
1つ以上のロッカアームと、
1つ以上の流路と、1つ以上の反応チャンバと、流体及び易壊性メンブレン封止材を含む1つ以上のバーストポーチと、を含むマイクロ流体カートリッジと、
カムシャフトを回転させるように構成されたカム機構と、を含み、
1つ以上のカムは、カムシャフトが回転するとカムローブが1つ以上のロッカアームをアクチュエートするように構成されており、1つ以上のロッカアームは、アクチュエーションによってロッカアームが開位置から閉位置に動いて、1つ以上のバーストポーチに圧力がかけられて、易壊性メンブレンが破れて流体が1つ以上の反応チャンバに放出されるように構成されている。
【0012】
実施形態によっては、複数のカムローブ及びロッカアームが、カムシャフトが完全に1回転すると、ロッカアームが、時間的且つ空間的に制御された様式で複数のバーストポーチに圧力をかけるように構成されている。実施形態によっては、1つ以上のカムローブ及び1つ以上のロッカアームは、1つ以上のバーストポーチの易壊性メンブレン封止材が破られた後にロッカアームが閉位置にとどまるように構成されている。実施形態によっては、カムローブは、ロッカがポーチを破裂させた後に閉位置にとどまるように構成されている。実施形態によっては、マイクロ流体デバイスは更に、1つ以上の流路に沿って1つ以上のダイヤフラム弁を含み、1つ以上のカムローブは、カムシャフトが回転すると、カムローブが1つ以上のダイヤフラム弁を開いたり、且つ/又は閉じたりするように構成されている。実施形態によっては、カムシャフトは、ぜんまい機構によって回転するように構成されている。実施形態によっては、マイクロ流体デバイスは更に、試料調製チャンバを含み、試料調製チャンバはDNAキャプチャ用ビヒクルを含む。実施形態によっては、カムシャフトの回転速度と、複数のカムローブ及び複数のロッカアームの構成とにより、複数のバーストポーチを、時間的に制御された様式で破裂させてDNA精製の洗浄段階を実施することが可能になる。
【0013】
実施形態によっては、マイクロ流体カートリッジは更に、増幅チャンバ、ヒートシンク、及びヒータを含み、ヒートシンク及びヒータは、複数のカムローブ及び複数のロッカアームのアクチュエーション後に増幅チャンバを断続的に冷却又は加熱するように構成されている。実施形態によっては、カムシャフトの回転速度と、複数のカムローブ及び複数のロッカアームの構成とにより、ヒートシンク及びヒータが、時間的に制御された様式で増幅チャンバを断続的に冷却又は加熱してPCR熱サイクルを実施することが可能になる。実施形態によっては、マイクロ流体カートリッジは更に、DNAキャプチャ用ビヒクルを含むDNAハイブリダイゼーションチャンバを含む。
【0014】
別の実施形態では、マイクロ流体カートリッジを含むマイクロ流体デバイスが提供され、これは、
複数の試薬充填済みポーチと、
反応チャンバと、
カムシャフトと、を含み、
カムシャフトは、複数のスロットを、カムシャフトに沿う複数の角度位置に含み、それによって、カムシャフトが所定の位置まで回転すると、それらの角度スロットのうちの1つ以上が、試薬充填済みポーチのうちの1つ以上と反応チャンバとの間に流路を形成する。
【0015】
別の実施形態では、試薬定量供給装置が提供され、これは、
試薬及び易壊性封止材を含む試薬ポーチと、
磁界に引き寄せられると試薬ポーチをへこませて易壊性封止材を破るように構成された一体型磁気要素と、を含む。実施形態によっては、磁気要素はプランジャを含む。実施形態によっては、磁気要素はビーズを含む。実施形態によっては、磁気要素は鋭利物体を含む。
【0016】
別の実施形態では、マイクロ流体デバイスが提供され、これは、
流体導管と、
反応チャンバと、
本明細書の別の場所に記載の試薬定量供給装置と、を含み、
試薬定量供給装置は、気密封止が形成されるように、マイクロ流体デバイスと接着されており、試薬定量供給装置は、易壊性封止材が破られたら、流体導管経由で試薬を反応チャンバに出し切って空になるように構成されている。実施形態によっては、マイクロ流体デバイスは更に、トラップを含み、トラップは、固定されていない磁性材料を含み、試薬ポーチをへこんだ状態で保持するように構成されている。
【0017】
別の実施形態では、マイクロ流体デバイスが提供され、これは、
弁を介して互いに流体接続されている複数の流体チャンバと、
永久磁石を含む回転シャフトであって、永久磁石は回転シャフトの円周上で軸方向及び半径方向に配列され、磁極が交互になっている、回転シャフトと、を含み、
流体チャンバのそれぞれは、回転シャフトの軸に垂直な経路に沿って運動方向が制限されている、トラップされた永久磁石を含み、回転シャフト及び流体チャンバは、回転シャフトが回転すると、永久磁石が動いて各流体チャンバ内の流体を混合するように構成されている。
【0018】
別の実施形態では、封止材の易壊性部分のある厳密な位置に破裂箇所がある試薬ポーチが提供され、この試薬ポーチは、封止材の易壊性部分に直接重なる、試薬ポーチの特定の場所に拘束された磁気要素を含む。
【0019】
別の実施形態では、マイクロ流体デバイスが提供され、これは、
1つ以上の直線アクチュエータ要素と、
マイクロ流体カセットと、を含み、
1つ以上の直線アクチュエータ要素は、磁気ビーズ移動用固定磁気要素、流体弁アクチュエーション用固定磁気要素、及び/又は試薬ポーチ破裂用固定磁気要素を含み、マイクロ流体カセットは、磁気プランジャ要素が一体化された貯蔵試薬ポーチと、試料処理用試薬チャンバと、弁を通る磁気ビーズの動きを制御する非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁と、磁気ビーズ移動用固定磁気要素を含む磁気プランジャを含む磁気制御弁と、を含む。実施形態によっては、1つ以上のアクチュエータ要素は、マイクロ流体デバイスの下及び/又は上を摺動するように構成されている。実施形態によっては、アクチュエータ要素は、モータ、ぜんまい、手回しクランク、手で押すこと、及び直線ソレノイドアクチュエータから成る群から選択される方法で動かされる。
【0020】
別の実施形態では、マイクロ流体デバイスが提供され、これは、
1つ以上の直線アクチュエータ要素と、
マイクロ流体カセットと、を含み、
1つ以上の直線アクチュエータ要素は、固定磁気要素と部分的にトラップされた磁気要素との組み合わせを含み、部分的にトラップされた磁気要素は、それぞれのトラップに収容されて、それぞれの動きが、磁気ビーズ移動、流体弁アクチュエーション、及び/又は試薬ポーチ破裂の為の1つの軸又は方向に制限されており、マイクロ流体カセットは、磁気プランジャ要素が一体化された貯蔵試薬ポーチと、試料処理用試薬チャンバと、弁を通る磁気ビーズの動きを制御する非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁と、磁気ビーズ移動用固定磁気要素を含む磁気プランジャを含む磁気制御弁と、を含む。実施形態によっては、1つ以上のアクチュエータ要素は、マイクロ流体デバイスの下及び/又は上を摺動するように構成されている。実施形態によっては、アクチュエータ要素は、モータ、ぜんまい、手回しクランク、手で押すこと、及び直線ソレノイドアクチュエータから成る群から選択される方法で動かされる。
【0021】
別の実施形態では、マイクロ流体デバイスが提供され、これは、反応チャンバに組み込まれた磁気プランジャ要素と一列に並ぶ試薬ポーチを含み、磁気プランジャ要素は、磁界に引き寄せられると、試薬ポーチの易壊性封止材を破り、試薬ポーチ内に入り、試薬ポーチ内の試薬を反応チャンバに押し出すように構成されている。実施形態によっては、磁気プランジャ要素は、流体入口と試薬ポーチとの間に位置し、更に、磁気要素はノッチを有し、ノッチは、ガイドとして働き、反応チャンバへの流体の流れを、ガイドノッチを通るように制限し、ガイドノッチは、磁気要素プランジャがその最も高い位置に達したときに反応チャンバへの流体の流れが閉じられるように構成されている。
【0022】
別の実施形態では、マイクロ流体デバイスが提供され、これは、
複数の部分的にトラップされた磁気要素が回転シャフト内部に収容されているアクチュエータ要素であって、回転シャフトはスリーブ内で複数の磁石トラップを有するように構成されている、アクチュエータ要素と、
複数の、本明細書の別の場所に記載の試薬定量供給装置と、
混合チャンバと、
混合チャンバ磁石と、を含む。実施形態によっては、マイクロ流体デバイスは更に、両磁極が回転シャフトの円周上にあることによって、シャフトが回転するにつれて、混合チャンバ磁石を高い周波数で引き寄せたり斥けたりするように構成された固定永久磁石を含む。実施形態によっては、マイクロ流体デバイスは、回転シャフトが回転するにつれて、第1の試薬定量供給装置が第1の部分的にトラップされた磁気要素と一列に並び、これによって、第1の部分的にトラップされた磁石は回転シャフトから外に出てスリーブの第1の磁石トラップに入り、これによって、磁気要素を引き寄せて、第1の試薬定量供給装置のポーチの易壊性封止材を破ることが可能になるように構成されている。実施形態によっては、マイクロ流体デバイスは、回転シャフトが回転し続けるにつれて、第2の試薬定量供給装置が第2の部分的にトラップされた磁気要素と一列に並び、これによって、第2の部分的にトラップされた磁石は回転シャフトから外に出てスリーブの第2の磁石トラップに入り、これによって、磁気要素を引き寄せて、第2の試薬定量供給装置のポーチの易壊性封止材を破ることが可能になるように構成されている。実施形態によっては、マイクロ流体デバイスは、貯蔵試薬の定量供給が完了した後に、回転シャフトが高RPMで回転して混合を有効にすることが可能であり、これは、シャフト内の固定永久磁石が、高い周波数で交番する磁極を混合磁石に対して差し出すようにすることによって可能であるように構成されている。
【0023】
別の実施形態では、本システムは、機械的工夫で確実に、磁気プランジャ要素がアクチュエーション後にその最初の位置に戻れないようにしており、磁気プランジャを収容するスリーブは、その壁内に少なくとも1つのカンチレバー式ラチェット要素が成形されており、磁石は、この位置ではラチェットを偏向させているが、磁石が移動すると、ラチェットは元に戻り、磁気プランジャがその最初の位置に戻ることができないようにする。実施形態によっては、ラチェットの代わりにばね荷重ボールが使用される。
【0024】
別の実施形態では、トラック上を動く磁石を含むアクチュエータ要素を使用する試料処理システムが提供され、磁石は、生体分子が表面に結合している磁気ビーズを引き寄せる。磁石は、トラックに沿って動きながら、マイクロ流体チップ内で磁気ビーズを引きずる。トラックの経路は、複数の試薬チャンバを通り、磁気ビーズは、適切なタイミングで全ての試薬チャンバにわたって動かされ、最後に磁石はトラップ、例えば、ボールトラップを通り抜ける。実施形態によっては、磁気要素はキャリッジ上にマウントされており、キャリッジは摺動レールに沿って自由に動く。摺動レール全体が、直線ねじに沿って動くことによってマイクロ流体デバイスの長さ方向をトラバースする。本システムの別の実施形態では、直線ねじの代わりにラックピニオン機構が使用される。別の実施形態では、複数の試料処理段階を順次的又は同時に実施するために、1つ以上の磁石がトラック上に配列されてよい。
【0025】
別の実施形態では、試料処理シーケンスを自動化する為に、回転アクチュエータ要素を使用するマイクロ流体デバイスが提供される。更に、試料処理デバイスの実施形態によっては、x、y、z、及びrの各軸を制御する為の設計及び試料処理要件に応じて、1つ以上の回転アクチュエータ要素及び直線アクチュエータ要素を組み合わせて使用してよい。
【0026】
別の実施形態では、一例示的マイクロ流体デバイスにおいて流体流を制御する磁気プランジャ要素弁が提供される。実施形態によっては、非磁気プランジャ要素を有する磁気旋回ロッカ弁が提供され、例えば、そのような弁では、磁気要素を有するロッカが、その軸を中心に旋回(又は回転)する。外部磁界が近傍に入ってくると、この磁界はロッカ上の磁気要素を引き寄せ、これによって、プランジャがダイヤフラム弁を上から押して、流路を通る流体の流れを止める。この磁界が除去されると、ロッカはその最初の位置に戻り、流路内の流れが再開可能になる。
【0027】
別の実施形態では、マイクロ流体デバイス上で磁気プランジャ要素を使用してへこますことが可能なダイヤフラム弁又はピンチ弁が提供される。外部磁界が磁気プランジャ要素の近傍に入ってくると、この磁界はプランジャを引き寄せて、ダイヤフラム弁をへこませ、流路内の流れを止める。
【0028】
別の実施形態では、永久磁石が回転シャフトの円周上に、回転シャフトの長さ方向に極性が交番するように、軸方向及び半径方向に貼り付けられる。流体デバイス又は流体容器は、その内部に第2の永久磁石材料がトラップされていて、その動きが1つの軸に制限されている。回転シャフトが流体デバイス又は流体容器の近傍に配置されると、容器内の永久磁石材料に対して引力と斥力が交互にかかり、結果として、流体デバイス又は流体容器の内部で往復せん断運動が発生する。
【0029】
本システムの別の実施形態では、磁気プランジャ要素は、試薬定量供給装置のポーチを絞ることと、易壊性封止材を破ることと、流体導管を通してマイクロ流体デバイスに試薬を定量供給することと、に必要な方向にのみ動くことができるように制限される。
【0030】
実施形態によっては、マイクロ流体デバイス内の反応チャンバは、流体を1つの反応チャンバから別の反応チャンバに移動させる為に圧縮可能なように設計される。
【0031】
別の実施形態では、核酸増幅検査の為の試料調製を行うマイクロ流体デバイスが提供される。流体ウェルは、各流体ウェルの底部に入っている入口流体導管によって、混和性試薬を収容している1つ以上の試薬定量供給装置とつながっている。各流体ウェル空間は、入口流体導管から入る混和性液体試薬が部分的にしか充填されないように設計されている。流体ウェルの充填が完了したら、不混和性液体を収容している試薬定量供給装置がアクチュエートされて、その内容物が主流体導管を通って流体デバイスに定量供給され、これが主流体導管及び流体ウェルの空いている空間に充填されて、流体経路が形成され、同時に、流体ウェル内の混和性液体同士の間に障壁が形成され、これによって、混和性液体同士が混ざり合うことが避けられる。
【0032】
別の実施形態では、磁気ビーズによる試料調製の為のマイクロ流体カートリッジが提供され、これは、流体ウェル、流体導管、貯蔵液体試薬リザーバ、及び弁を含む。マイクロ流体カートリッジは、永久磁石と突出部又は突起部とを含む上部アクチュエータ要素と下部アクチュエータ要素との間に挟まれている。永久磁石及び突起部は、マイクロ流体カートリッジがアクチュエータ要素の近傍で回転する際のアクチュエータ要素の位置及び速度に応じて、アッセイ自動化シーケンスの様々な段階を厳密なタイミングで実施するように空間配置されている。実施可能なアッセイ段階として、貯蔵試薬を流体ウェルに定量供給すること、弁を開閉して流体流の方向を制御すること、ベントを開閉すること、磁気ビーズをウェル間でキャプチャし、再懸濁し、動かすことなどがある。
【0033】
ここまで、本開示の主題によって全体的又は部分的に対処される、本開示の主題の特定の態様について述べてきたが、以下において詳細に記載される説明が添付の実施例及び図面と併せて進むにつれて他の態様が明らかになるであろう。
【0034】
以上、本開示の主題について大まかに説明してきたが、以下では添付図面について言及する。これらの図面は必ずしも正しい縮尺では描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】サンプルツーアンサーマイクロ流体デバイスの一実施形態の側面図であり、ロッカアームのアクチュエーション前の様子を示す図である。
図1B】サンプルツーアンサーマイクロ流体デバイスの上記実施形態の側面図であり、ロッカアームのアクチュエーション後の様子を示す図である。
図2】一例示的サンプルツーアンサーマイクロ流体デバイスの斜視図である。
図3】試料分析機能を有する一例示的マイクロ流体デバイスのブロック図である。
図4】回転ポート設計を使用した一例示的マイクロ流体デバイスの一実施形態の上面図である。
図5】試薬定量供給装置(RDU)の断面図であり、図5Aは、試薬ポーチ内の磁気式破壊要素を示す図であり、図5Bは、マイクロ流体デバイス内の、易壊性封止材を破裂させる鋭利物体を示す図である。
図6】磁気要素プランジャによって破裂する試薬ポーチを示す図である。
図7】回転シャフトによる磁気式混合要素の一実施形態を示す図である。図7Aは、永久磁石を有する回転シャフトを示す図であり、永久磁石は回転シャフトの円周上で軸方向及び半径方向に配列され、磁極が交互になっている。図7Bは、回転シャフトがその近傍にある多チャンバ流体混合システムを示す図である。
図8】易壊性封止材の破裂箇所を制御する為の拘束された磁気式破壊要素を含む例示的RDU用試薬ポーチの上面図及びAA断面図である。
図9】一例示的試料処理用マイクロ流体デバイスを示す図である。図9Aは、直線アクチュエータ要素の上面図であり、図9Bは、直線アクチュエータ要素のAA断面図であり、図9Cは、マイクロ流体カセットの上面図である。
図10A】乃至
図10F】アクチュエータ要素がマイクロ流体カセットの下を摺動していく試料処理シーケンスの様々な過程を示す図である。
図11A】乃至
図11F】直線アクチュエータ要素の様々な実施例を示す図である。
図12A】乃至
図12D】固定磁気要素と部分的にトラップされた磁気要素との組み合わせを有するアクチュエータ要素を含むマイクロ流体試料処理デバイスの実施例を示す図である。
図13】一例示的マイクロ流体デバイスの断面図であり、図13Aは、反応チャンバに組み込まれた磁気プランジャ要素を示す図であり、図13Bは、磁気プランジャ要素が磁界に引き寄せられて、易壊性封止材を破り、試薬ポーチの内容物を反応チャンバに押し出す様子を示す図である。
図14】一例示的マイクロ流体デバイスの断面図であり、図14Aは、反応チャンバに組み込まれたノッチ付き磁気プランジャ要素を示す図であり、図14Bは、ノッチ付き磁気プランジャ要素が磁界に引き寄せられて、易壊性封止材を破り、試薬ポーチの内容物を反応チャンバに押し出す様子を示す図であり、図14Cは、試薬ポーチの試薬が定量供給された後にノッチ付き磁気プランジャ要素が流体導管の入口ポートを閉じ、ラチェット要素が、外部磁界がなくなっても磁気プランジャ要素を永続的封止位置に機械的に保持する様子を示す図である。
図15】部分的にトラップされた磁気要素と固定磁気要素とが回転シャフト内に収容された回転シャフトアクチュエータ要素を含む試料処理システムの一実施形態を示す図である。
図16A】乃至
図16D】回転シャフトアクチュエータ要素がマイクロ流体デバイスに対して回転していく試料処理シーケンスの様々な過程を示す図である。
図17A】乃至
図17B】外部磁界がなくなっても磁気プランジャ要素を永続的封止位置に機械的に保持する別の非限定的な実施形態を示す図である。
図18A】乃至
図18B】トラック上を動く磁石を含むアクチュエータ要素を含む試料処理システムの一実施形態を示す図である。
図19A】乃至
図19C】回転アクチュエータ要素の様々な実施例を示す図である。
図20】非磁気プランジャ要素を有する一例示的磁気旋回ロッカ弁を示す図である。図20A及び図20Bは、旋回ロッカ弁の幾何学的形状の2つの非限定的な実施形態の上面図である。図20Cは、ロッカが磁界によって作動して、非磁気プランジャがダイヤフラム弁をへこませて流れを止める過程を示す図である。
図21】一体化された磁気プランジャ要素を有するダイヤフラム弁又はピンチ弁を示す図である。図21Aは、磁界「M」が弁の近傍にないときの開状態の弁を示す図である。図21Bは、磁界「M」が弁の近傍にあるときの閉状態の弁を示す図である。
図22】磁気プランジャ要素の摺動運動及び圧延運動により試薬ポーチから試薬を絞り出すRDUを示す図である。図22Aは、摺動する平面磁気要素を示す図である。図22Bは、圧延シリンダ磁気要素を示す図である。図22C及び図22Dは、試薬ポーチを空にする様子を示す図である。
図23A】乃至
図23D】アクチュエータ要素の上面図及びAA断面図と、絞り要素を有するマイクロ流体カセットの上面図及びBB断面図と、絞り要素が直線アクチュエータ要素に引きずられて流体を次の反応チャンバに押し出す各過程と、をそれぞれ示す図である。
図24】流体ウェル構成と、貯蔵試薬を定量供給して油-水流体回路を形成する原理の概略を示す図である。
図25A】乃至
図25C】流体ウェル、流体導管、貯蔵液体試薬リザーバ、及び弁を含む、磁気ビーズによる試料調製の為の一例示的マイクロ流体カートリッジの概略を示す図である。
図26B】固定永久磁石を含む上部及び下部回転アクチュエータ要素が一体化された一例示的マイクロ流体デバイスにおける、磁気ビーズによる試料調製の原理を示す図である。
図26A】乃至
図26I】直線アクチュエーションによる、流体ウェル間での磁気ビーズのキャプチャ、再懸濁、及び移動の原理を示す為の、アクチュエータ要素に対するマイクロ流体カートリッジの位置の様々な過程を示す図である。
図27A】乃至
図27G】マイクロ流体デバイスにおける、磁気ビーズによる試料調製の原理を示す、上部及び下部アクチュエータ要素を有するマイクロ流体デバイスの断面図である。マイクロ流体デバイスは、油相を介して互いに接続された流体ウェルを含む。上部及び下部アクチュエータ要素は、所定のシーケンスでオン又はオフにされることが可能な電磁石を有する。マイクロ流体デバイスは2つのアクチュエータ要素の間を動く。
図28】マイクロ流体カートリッジ及びアクチュエータ要素を示す、マイクロ流体デバイスの斜視図である。マイクロ流体カートリッジは、アクチュエータ要素との間を摺動する。
図29A】乃至
図29E】磁石が運動経路に沿って動き続ける際に、マイクロ流体デバイスの流体ウェル内の突起部をバッフルとして使用して磁気ビーズをウェルに拘束する原理を示す図である。
図30A】乃至
図30B】アクチュエートされるランセットを使用して、マイクロ流体デバイス上の流体を流体ウェルからラテラルフローストリップに移す原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本開示の主題を、本開示の主題の、全てではないが幾つかの実施形態が示された添付図面を参照しながら、より詳細に説明する。全体を通して、類似の参照符号は類似の要素を指す。本開示の主題は、多様な形態で実施されてよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。実際、本開示の主題が関係する分野にあって、上述の記載及び関連図面において示された教示の恩恵を有する当業者であれば、本明細書に記載の本開示の主題の様々な修正形態や他の実施形態を思いつかれるであろう。従って、当然のことながら、本開示の主題は、開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲には、修正形態や他の実施形態が包含されるものとする。

直線又は回転運動の自動化を行う磁気式及び機械式アクチュエータ要素を有するサンプルツーアンサーマイクロ流体デバイス及びその使用方法
【0037】
本開示の発明は、シンプルであり低コストであり低電力である計装を使用するサンプルツーアンサー自動化の方法及び統合デバイスを含む。一実施形態では、複数の段階が厳密なシーケンスで実施され、その全ての自動化がカムシャフトの1回転以内に組み込まれているラボオンチップマイクロ流体システム及び関連方法が提供される。一例示的実施形態では、カートリッジに格納された試薬充填済みポーチの易壊性封止材を、圧力をかけて破裂させることにより、時限試薬送達を含む流体操作シーケンスが可能になる。一実施形態では温度管理も可能であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)中に、カム機構を使用してヒートシンクの接触をアクチュエートすることにより、試料温度を制御して、結果が出るまでの全体時間を短縮することが可能である。
【0038】
カムシャフトは、時計のように正確に動いて、例えば、複数の弁の開閉を厳密なシーケンスで行うことにより、エンジンを動作させるようなタスクを実施することが可能である。本発明は、LOCに適用される場合には、単一カムシャフトを使用して、サンプルツーアンサー診断検査を完結させる為に必要な全てのアクチュエーション及び自動化段階を実施することが可能である。
【0039】
従って、必要となるアクチュエーションは、カムシャフトを完全に1回転させるアクチュエーションだけでよい。更に、本発明によれば、一実施形態の単一プラットフォーム上にプレPCRモジュール及びポストPCRモジュール、又は幾つかの下流アッセイプロセスを含む自己完結型マイクロ流体カートリッジも可能である。
【0040】
更に、回転カムシャフトは、ぜんまいによる自己動力式であってよく、これは、例えば、LOCデバイス上での完全に電池不要の自動化を可能にする。
【0041】
低資源環境での診断デバイスは一般に電池式でなければならない為、本発明によれば、ポイントオブケア技術は完全無電力化に一歩近づくことが可能になる。回転カムシャフトを組み込むことにより、ポイントオブケア診断は、幾つかの因子によって改善され、幾つか挙げると、デバイスのサイズ、電力消費、コスト、及び複雑さが減ることなどによって改善される。
【0042】
本発明の一態様によるマイクロ流体カートリッジは、マイクロ流体工学のモジュール性を利用して、プレPCR及びポストPCRの各処理段階を単一プラットフォーム上に統合できるようにすることが可能である。システムには多用途性も加味されてよく、これは、PCRベースのDNA増幅と更なる下流処理(例えば、DNAハイブリダイゼーションアレイなど)を同じチップ上に統合できる為である。その結果、1つの試料を、複数の病原体に関してスクリーニングすることが容易に可能である。
【0043】
本発明の様々な態様が、他の様々なデバイスにも適用可能であってよい。例えば、本発明は、ラボオンチップデバイス上でのサンプルツーアンサー形式のバイオアッセイを本質的に自動化することに使用されてもよい。別の可能な用途として、タンパク質アッセイがあってよい。
【0044】
先行する既存技術に対する本発明の他の利点として、次のものがある。1)流体管理、温度管理、及び電気的管理に関する全てのアクチュエーション段階を単一カムシャフト上で制御すること。2)非常にシンプルな設計、低製造コスト、低電力、及び1つのモータ、又はぜんまいでアクチュエーションシーケンスを制御すること。3)マイクロ流体カートリッジ及びカムシャフト技術を使用して、複数の下流アッセイプロセスを単一の自己完結型プラットフォーム上に統合できること。4)自己完結型カートリッジにより、回転カムシャフトアクチュエータと歩調を合わせた動作によりデバイス上での厳密な自動化を可能にすることができる下流処理用追加モジュールを「レゴ」ブロック方式で追加できること。
【0045】
従って、本発明の様々な態様を用いて、試薬充填済みブリスタポーチを特徴とする使い捨ての自己完結型マイクロ流体カートリッジと、サンプルツーアンサーシーケンスの個々のアクチュエーション及び自動化段階の全てを1回転で完結させる相補カムシャフトと、で構成されるデバイスが可能である。カムシャフトは、本質的には、サンプルツーアンサー自動化プロセス全体に対する機械式「プログラム」として働く。カムシャフトがロッカアームと連動して使用される場合、ロッカアームは、アクチュエーション用プランジャのように動作することが可能である。カムシャフトが回転すると、ロッカがブリスタポーチと接触し、易壊性封止材を破裂させるのに必要な力をかける。この概念を図1に示す。この概念を用いると、単一のカムシャフトアクチュエータが、以下の不可欠なタスクのうちの1つ以上を実施することが可能である。1)オンチップ試薬充填済みブリスタパックの易壊性封止材を破って、その内容物を放出すること。2)オンチップダイヤフラム弁をアクチュエートしてマイクロ流体チップ上での流体送達を制御すること。3)管理された量の試薬を空間的且つ時間的に反応チャンバに放出すること。4)マイクロ流体チップ上での急速な熱サイクルの為に冷却要素をアクチュエートすること。5)永久磁石をアクチュエートして磁気ビーズを1つの場所から別の場所に動かすこと。6)読み出しの為に電気的接点をアクチュエートすること。
【0046】
代替の非限定的な実施形態は以下を含む。1)ぜんまいを使用してカムシャフトに動力を与えること。2)シリンジプランジャの動作の自動化に使用されるカムシャフトアクチュエータを使用して、自動化されたシーケンスにおいて試薬を定量供給すること。3)水平方向又は垂直方向の設計を行うこと。
【0047】
本明細書に記載の各特徴は、単一アクチュエーション機構による、流体操作/管理、温度管理、電気的管理の3D空間的且つ時間的な制御を可能にするものであってよい。動作シーケンスは、カムローブの配列及び方位によってコード化される。
【0048】
又、実施形態によっては、サンプルツーアンサーシーケンスを自動化することが可能であってよい、ロッカを使用しないカム、ピン付きカム、ギヤ、時計仕掛け、ぜんまい、ピアノハンマ動作、又は他の任意の機械的変形形態を含んでよい。
【0049】
一実施形態では、1つの試料から別の試料へと動くように機能化された電極をアクチュエートすることに、カム機構が使用されてもよい。
【0050】
ここで図1A及び図1Bを参照すると、一例示的マイクロ流体デバイス101の側面図が示されており、これらはそれぞれ、ロッカアーム109のアクチュエーションの前後の様子を示している。マイクロ流体デバイス101はカム102を有し、カム102はカムシャフト103及びカムローブ104を有する。マイクロ流体カートリッジ105も示されており、これは、少なくとも1つのオンチップバーストポーチ又はブリスタポーチ106及び反応チャンバ107を有する。バーストポーチ又はブリスタポーチ107は、試薬などの流体が充填されており、破裂すると、収容されていた流体を定量供給する。これらのバーストポーチ又はブリスタポーチ106は、大量のバッチ製造が可能であり、それによって製造コストを下げることが可能である。特にマイクロ流体用途向けに製造される場合、収容される流体の体積は、15μLから450μLの範囲である。ブリスタポーチ106は、一般に、ポーチの出口に易壊性メンブレン封止材が取り付けられている。この易壊性メンブレンは、一般に、封止材を破って内容物を放出させるには、意図的に圧力をかけることが必要である。
【0051】
カム機構102がカムシャフト103によって回転すると、カムローブ104がロッカ109をアクチュエートすることによって、ロッカ109がバーストポーチ107に圧力をかけて、易壊性メンブレンを破る。
【0052】
図2に見られるように、複数のカム202がカムシャフト203上にマウントされてよい。各カム202はカムローブ204を有し、カムローブ204は、ロッカアームを様々なタイミングと間隔でアクチュエートする空間トポグラフィを備える。カムシャフト203が回転すると、カムローブ204がロッカアーム209を押し、押されたロッカアーム209がバーストポーチ又はブリスタポーチ206に圧力をかけて、その内容物を放出する。カムシャフト203上に複数のカム202を配列することにより、反応を空間的且つ時間的に制御することが可能である。ロッカアーム209又はロッカ機構はプランジャのように働いて、ブリスタポーチ206を押下して、その易壊性メンブレン封止材が破裂するほどの圧力をかける。様々な試薬を収容している複数のバーストポーチが、例えば、図2に示されるように、マイクロ流体カートリッジ上に空間的に組み付けられてよい。
【0053】
カムシャフト203が完全に1回転する間に、各カムローブ204が持ち上がって各ロッカ209と係合して、マイクロ流体カートリッジ205上の各ブリスタポーチ206に貯蔵された試薬の放出が空間的且つ時間的に制御される。カムローブ204は、ポーチの破裂後もロッカが閉位置にとどまるように設計されている。これは、破裂したポーチに試薬が逆流しないようにする逆流防止弁として働くことが可能である。カムローブ204は又、流路に沿うダイヤフラム弁を開閉することにより、そのチャネルの流体流制御を実現することに使用されてもよい。
【0054】
大まかに上述したように、図2には、カムとロッカの複数の機構が示されている。カム202とロッカ209の各機構は、それぞれ特定のブリスタポーチ206に対応する。カムとロッカの各機構が適切な間隔でアクチュエートされると、様々な試薬が各ブリスタポーチから放出されて、マイクロ流体カートリッジ205上に形成された各チャネル208を通って、やはりマイクロ流体カートリッジ205上に形成された各反応チャンバ207に入る。
【0055】
回転カムシャフトは、ぜんまい機構による自己動力式であってもよい。これにより、LOCデバイス上での完全無電力自動化が可能になり、この場合、ユーザは、基本的に、キーを回すことによって自動診断結果を取得することが可能である。低資源環境での診断デバイスは電池式でなければならない為、このイノベーションは、ポイントオブケア技術を完全無電力化に一歩近づける。
【0056】
次に図3を参照すると、PCR及びDNAハイブリダイゼーションの為の一例示的サンプルツーアンサーシステム301の概念を示すブロック図が示されている。この例では、複数のカム302がカムシャフト303によって支持されている。各カム302はカムローブ304を有し、カムローブ304はロッカ309をアクチュエートするように働く。マイクロ流体カートリッジ305には、複数のバーストポーチ306(この例では、溶解緩衝液、洗浄緩衝液、及び溶離緩衝液)と、様々な反応チャンバ307と、廃棄物チャンバ313と、各流体をそのそれぞれのチャンバ307、313につなぐ様々なチャネル308とが設けられる。更に、流体が逆流して汚染を引き起こすことを防ぐ為に、特定のチャンバ307、313とバーストポーチ306との間に弁310が設けられる。
【0057】
この例では、試料が最初にチャンバ307(試料調製)に投入され、このチャンバは、DNAキャプチャ用ビヒクル、例えば、シリカビーズ、FTAペーパー、又は磁気ビーズなどを収容してよい。試料調製段階では、カムシャフト303が回転すると、これによって、カムローブ304が対応するロッカをアクチュエートして「閉」位置に入れ、これによって、(この例では)溶解緩衝液を収容しているバーストポーチが破裂して、溶解緩衝液が試料調製チャンバ307に放出される。反応段階ごとにタイミングを制御する為に、カムシャフトの回転速度及びローブサイズは様々であってよい。他のロッカも順次閉位置に入ってそれぞれのポーチを破裂させ、例えば、DNA精製の洗浄段階の為に洗浄緩衝液306を試料調製チャンバ307に放出する。
【0058】
PCR熱サイクルの間に、熱シンク又はヒートシンク311が、その対応するロッカによって断続的にアクチュエートされて、増幅チャンバに接触し、冷却を施すことが可能である。特に非常に時間がかかる段階が、PCR熱サイクルにより、試料の温度を下げている。アクチュエートされるヒートシンクを使用すると、冷却段階の間のみ接触が行われるため、各PCRサイクルを完結させるのにかかる時間を大幅に短縮することが可能である。従って、この例で示したようなカムシャフトの1回転によって、サンプルツーアンサーシーケンスの完全な自動化を実現することが可能である。
【0059】
マイクロ流体カートリッジ上にはヒートシンク311も設けられてよく、これは、例えば、PCRサイクル中に、カム機構及び/又は回転速度で指定される厳密なシーケンスで反応チャンバ307との断続的な接触を行う為に設けられてよい。一次熱物質移動計算によれば、試料を95度から65度まで冷却するのにかかる時間が約7分の1になると推定された。この時間短縮は、周囲大気温度25度において1インチ×1インチ×0.5インチのアルミニウムブロックヒートシンクによって実現された。例えば、ヒートシンクがない場合の所要冷却時間が30秒/サイクルであって、サイクル数が25であった場合、PCRプロセス全体では12.5分の時間が節約されることになる。このことは、例えば、流体操作中の温度管理において顕著な有利点となる。この図では、マイクロ流体カートリッジ305上にヒータ312も示されている。
【0060】
次に図4を参照すると、回転ポートが組み込まれた設計の一例示的サンプルツーアンサーマイクロ流体デバイスの平面図が示されている。図4に示されるように、例示的マイクロ流体デバイス401は、マイクロ流体カートリッジ405の一部としてカムシャフト403が組み込まれている。この実施形態では、カートリッジのカムシャフト403は、回転している間にアクチュエーション機構と結合される。このシステムにより、様々なアッセイのそれぞれに固有のカムシャフトを設計及び構築することが可能である。別のアプローチとして、標準のカムシャフトモジュールマウントを構築し、様々なアッセイのそれぞれに固有のカムシャフトモジュールを開発する方法がある。
【0061】
図4の例示的システムは、シャフト403に沿う所定の角度位置に配置された、精密にカットされたスロット414を使用する。所定の角度位置まで回転すると、スロット414が、試薬充填済みポーチ406と反応チャンバ407との間に流路408を形成する。試薬充填済みポーチ406を押下することにより、流れ圧力を発生させることが可能である。回転ポートは、シンプルな弁にもなる。
【0062】
マイクロ流体カートリッジは、PCR増幅チャンバがない設計であってもよい。この場合、カートリッジは、ターゲットを増幅せずに検体を検出する為にDNAハイブリダイゼーションチャンバを含んでよい。この設計は、強力な単分子検出器(例えば、全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡や単一光子アバランシェダイオード(SPAD)アレイ検出器)による、DNAハイブリダイゼーションアレイを通るサンプルツーアンサー高スループットスクリーニングを特に必要とする場合がある。
【0063】
又、実施形態によっては、本発明は、磁気アクチュエーションと機械式自動化とを組み合わせて、マイクロ流体デバイス上でのサンプルツーアンサーシーケンスを完結させる。本明細書に記載のデバイスのアクチュエーション方法及び様々な実施形態を用いて、試薬を流体導管から流体デバイスに定量供給すること、弁を開閉すること、流体チップ内での攪拌及び混合を引き起こすこと、電気回路をオン/オフすること、又は流体チャンバ内の電気的接続を形成することを行うことが可能である。
【0064】
流体デバイスは、マイクロ流体デバイス上での生物試料処理に必要な試薬を定量供給する試薬ポーチから成る。ポーチの試薬としては、例えば、緩衝液、塩、酸、基剤、ラベル、タグ、マーカ、水、アルコール、溶剤、ワックス、油、ガス、ゲルなどがあり、これらに限定されない。十分な圧力がポーチにかけられると、ポーチは破裂し、これによって、ポーチの内容物が、それぞれの意図された反応チャンバにつながる流体導管に定量供給される。ポーチは、ポーチが破裂すると、その内容物が押し出されて、反応チャンバにつながる流体導管に入るように、流体導管の入口と位置合わせされた易壊性封止材を有する設計になっている。
【0065】
磁石が磁気要素を引き寄せることが可能であり、磁気要素は、別の磁石、電磁石、又は強磁性体材料のいずれかであってよい。以下では、本発明の、破裂圧力をかけて試薬ポーチを空にする新規な方法及び装置を説明する。この装置は、試薬定量供給装置(RDU)と呼ばれる。RDUは、貯蔵試薬を収容する試薬ポーチと、永久磁石又は強磁性体要素のいずれかであってよい一体型磁気要素とで構成される。この磁気要素がその近傍に入ってきた磁界に引き寄せられると、磁気要素は、この磁界のほうに動いて、試薬ポーチをへこませるプランジャのように働き、本明細書に記載の非限定的な実施形態の1つによれば、ポーチを破裂させ、これによって、その内容物が流体チップ内に吐出される。プランジャの動きは、プランジャがブリスタを効率よく空にできるように制限され、この制限は、プランジャがそのように動くようにガイドを設計することによって達成される。
【0066】
図5は、マイクロ流体デバイス上のRDUの断面図を示す。この例では、RDUは、マイクロ流体デバイス511とともに気密封止を形成するように、接着剤512でマイクロ流体デバイス511に接着される。RDUは、試薬ポーチ505の上に一体型磁気要素プランジャ503を有する。試薬ポーチは、貯蔵試薬514を収容しており、易壊性封止層506で封止されている。磁気要素プランジャは、その動きが制限されるようにシース502に入れられることによって、定位置に保持されている。
【0067】
実施形態によっては、試薬充填済みポーチは、小さなビーズ又は鋭利物体504を含んでおり、ビーズ又は鋭利物体504は、磁界509の影響下で易壊性封止材を破れやすくする。この物体は、磁性材料で作られていて、磁界に引き寄せられると、易壊性封止材を破裂させる。図5Bに見られるような別の実施形態では、流体デバイスの入口に固定された鋭利物体513が、試薬ポーチの易壊性封止材を押すことによって破裂させる。
【0068】
実施形態によっては、図5に見られるように、マイクロ流体デバイス511上にトラップ510があって、試薬ポーチの下で、固定されていない磁性材料が永続的に配備されて定位置に保持され、ポーチをへこんだままにすることが可能である。そのようなシステムは、1回だけ作動する弁のように働いて、試薬ポーチをへこんだままに保つことにより、反応チャンバから試薬ポーチへの逆流を完全に阻止する。図6に見られる別の実施形態では、易壊性封止材が、一定の圧力で破裂するように設計される。磁気要素プランジャが、磁界に引き寄せられて、易壊性封止材を破るのに必要な破裂圧力及び変形を与える。試薬ポーチの上方に位置する磁気要素プランジャが、この同じ磁界に同時に引き寄せられ、破裂したポーチを変形させて、貯蔵試薬を押し出し、流体導管607を通って反応チャンバ608に流入させる。
【0069】
大量の試料を混合、溶解、又は均質化しなければならない用途では、流体を、互いに流体接続されている複数の別々の小さなチャンバに分割してよく、各チャンバにはそれぞれ固有のトラップされた永久磁石が収容されている。図7Aは、永久磁石を含む回転シャフト705を示しており、永久磁石は回転シャフトの円周上で軸方向及び半径方向に配列され、磁極706が交互になっている。図7Bは、多チャンバ流体混合システムを示しており、このシステムでは、複数の流体チャンバ704が弁702で互いに接続されていて、これらは様々な量の試料を扱うことが可能である。各チャンバには永久磁石703があり、その動き方向は、回転シャフトの軸に垂直な経路に沿うように制限されている。
【0070】
図8に見られる別の実施形態では、試薬ポーチは、破裂点が決まった場所に発生することが可能なように設計されている。これは、試薬ポーチが磁気要素804を含み、磁気要素804が試薬ポーチの特定の場所805に拘束され、従って磁気要素804が封止材802の易壊性部分806の真上に来るように試薬ポーチを設計することによって実現される。
【0071】
本明細書に記載の試料処理方法は、1つのアクチュエーション運動で複数のプロセスを実施することが可能であるが、マイクロ流体デバイス上のアクチュエーション制御について説明する都合上、本明細書では、単一直線アクチュエータ要素が複数の試料処理段階を制御する簡略化された例を説明するものとし、3つの試料処理段階は、具体的には、1)試薬ポーチを破裂させて貯蔵試薬を放出させる段階、2)チャンバ間で磁気ビーズを動かす段階、及び3)流体弁を開閉する段階である。
【0072】
同じアクチュエーション制御要素に組み込むことが可能な他のプロセスとして、流体チャンバ内の電気的接続を開閉すること、電気回路のオンオフ制御の為に押しボタンスイッチを押すこと、バキュテナに穴を開けること、通気孔を開閉すること、加熱要素又はヒートシンクをアクチュエートすることなどがあり、これらに限定されない。そのようなシステムの大きな有利点は、システムの複雑化を最小限に抑えて更なる段階を追加できることである。図9A図9B、及び図9Cを参照すると、試料処理用一例示的マイクロ流体デバイス901の上面図及び断面AAが直線アクチュエータ要素903及びマイクロ流体カセット908を含み、直線アクチュエータ要素903は、磁気ビーズ移動用固定磁気要素904と、流体弁アクチュエーション用固定磁気要素905と、試薬ポーチ破裂用固定磁気要素902と、を含み、マイクロ流体カセット908は、磁気プランジャ要素が一体化された貯蔵試薬ポーチ907と、試料処理用試薬チャンバ906と、弁を通る磁気ビーズの動きを制御する非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁909と、磁気プランジャを含む磁気制御弁910と、を含む。アクチュエータ要素903は、マイクロ流体カセット908と近接しており、マイクロ流体カセット908に対して摺動する。この例示的実施形態では、アクチュエータ要素903は、マイクロ流体カセット908の下を摺動するが、別の実施形態では、マイクロ流体デバイス901は、アクチュエータ要素903が上側を摺動するように設計される。
【0073】
更に、アクチュエータ要素は上部要素及び下部要素を含んでよく、これらは一緒に同じ方向に動くか、別々に異なる方向に動き、それらの動きの結果として、試料処理の複数のアクチュエーション段階が所定のシーケンスで実施される。
【0074】
試料処理シーケンスの、アクチュエータ要素がマイクロ流体カセットの下を摺動していく際の様々な過程を、図10A図10B図10C図10D図10E、及び図10Fに示す。摺動を引き起こすことに使用可能な方法として、モータ、ぜんまい、手回しクランク、手で押すこと、直線ソレノイドアクチュエータなどがある。摺動アクチュエータ要素1003上の固定磁気要素1004、1005、及び1002の形状は、マイクロ流体カセット上の流体要素に対するアクチュエーション状態(オン/オフ、開/閉、上昇/下降)が、摺動アクチュエータ要素上の固定磁気要素の形状によって制御されるように決定される。図10Aの第1の過程で、摺動アクチュエータ要素上の固定磁石が、非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁1009と重なり、この弁を閉じる。アクチュエータ要素が摺動し続けると、図10Bの第2の過程で、固定磁気要素が貯蔵試薬ポーチをへこませ、その内容物を反応チャンバに放出させる。同時に、非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁1009が閉じたままであることにより、貯蔵試薬が反応チャンバに貯留される。アクチュエータ要素が摺動し続けると、図10Cの第3の過程で、第2の固定磁気要素が第2の貯蔵試薬ポーチと重なり、これを破裂させて、その内容物を同じ反応チャンバに放出させる。非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁1009は、閉じたままである。図10Dの第4の過程で、磁気要素が、磁気ビーズを収容している反応チャンバと重なり、磁気ビーズを引き寄せ、流体導管を通して第2の反応チャンバに入れることを開始する。この同じ過程で、第3の試薬ポーチが破裂し、その内容物が第2の反応チャンバに放出される。アクチュエータ要素が摺動し続けると、図10Eの第5の過程で、固定磁気要素がもはや、非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁1009と重ならなくなり、その弁は「オフ」状態になって、流体導管が開き、磁気ビーズは第2の反応チャンバに通り抜けることが可能になる。最後に、図10Fの第6の過程で、磁気ビーズは第2の反応チャンバに移され、一方、固定磁気要素は、第2のチャンバに入る弁、及び第2のチャンバから出る弁と重なって、これらの弁を閉じ、これによって、磁気ビーズは第2の反応チャンバに貯留される。
【0075】
この実施形態は、複数の試料処理段階が単一のアクチュエータ要素によってどのように制御されうるかの一例を示している。このシステムは、アクチュエーション段階を完結させる為にネオジム磁石などの永久磁石を使用して、結果として得られる装置で使用されるアクチュエーション制御用電力を最小限にすることが好ましい。一方、電磁石と永久磁石を組み合わせて使用して試料処理段階を自動化することも可能である。
【0076】
更なる制御の為に、実施形態によっては、異なる速度で異なる方向にアクチュエートされる複数のアクチュエータ要素が利用されてよい。直線アクチュエータ要素の幾つかの非限定的な実施形態を、図11A~11Fに示す。
【0077】
アクチュエータ要素の別の実施形態を、図12A図12B図12C、及び図12Dに示す。これは、固定磁気要素及び部分的にトラップされた磁気要素1212の組み合わせを含むものとなり、これらはそれぞれのトラップ1211に収容され、それによって、これらの動きは1つの軸/方向に制限される。部分的にトラップされた磁気要素は、摺動アクチュエータ要素が前進し続けても、図5Aに示された磁気トラップ510に不可逆的に付着してトラップされるように機能することが可能である。この実施形態は、後続の試料処理段階の間に逆流しないように、試薬ポーチをへこんだままにするなど、弁を永続的に閉じることが望ましい場合に有用である。
【0078】
図12Bは、止まり穴に収容されている部分的にトラップされた磁気要素1212を示す、アクチュエータ要素の断面AAであり、その動きは、マイクロ流体カセット1208の表面に垂直な方向に制限されている。図12Dは、アクチュエータ要素が摺動する特定の過程を示しており、この過程では、部分的にトラップされた磁石は、アクチュエータ要素から離れて、試薬ポーチの下に位置する磁気トラップ110に永続的に付着している。この実施形態では、試薬ポーチは、摺動アクチュエータ要素が前進し続けても、部分的にトラップされた磁気要素1212によって永続的にへこまされる。
【0079】
試薬を流体チャンバに定量供給する別の例示的方法を、図13A及び図13Bに示す。ここでは、磁気プランジャ要素1303が反応チャンバ1304内に組み込まれており、それに試薬ポーチ1302が位置合わせされている。磁気プランジャ要素は、磁界1305に引き寄せられると、試薬ポーチの易壊性封止材を破り、試薬ポーチに入り、試薬1306を反応チャンバ内に押し出す。
【0080】
図14に見られる別の実施形態では、反応チャンバは流体入口から離れて位置しており、磁気プランジャ要素は、入口と試薬ポーチの間に位置している。磁気要素の上にノッチ1403があり、ノッチ1403は、ガイドとして働いて、反応チャンバへの流体の流れを、ガイドノッチを通るように制限する。ガイドノッチは、磁気要素プランジャがその最高位置に達したときに、流体導管を通って反応チャンバに入る入口が、図14Cに見られるように閉じられるように設計される。流体デバイスの内部にラチェット要素1402があり、これは、磁気要素プランジャを永続的に封止位置に保持する。
【0081】
試料処理システムの別の実施形態として、部分的にトラップされた磁気要素1502が回転シャフト1503の内部に収容されたアクチュエータ要素を図15に示す。この回転シャフトは、磁気トラップ1505を有するスリーブ1504の中に組み付けられる。スリーブは、マイクロ流体デバイス1506に組み付けられ、マイクロ流体デバイス1506は、RDU1507、混合チャンバ1508、及び混合チャンバ磁石1509を含む。固定永久磁石1510が、その両磁極が回転シャフトの円周上に来るように配列されており、シャフトが回転するにつれて、混合チャンバ磁石は高い周波数でこの磁石に引き寄せられたり斥けられたりする。
【0082】
図16Aは、回転シャフトがスリーブ内に組み付けられた過程を示す。部分的にトラップされた磁石はいずれも、RDUとずれた位置にある。図16Bに示された過程は、第1のRDUの位置が第1の部分的にトラップされた磁気要素の位置と重なる角度まで回転シャフトが回転した時点を示している。この過程では、この部分的にトラップされた磁石は、回転シャフトから外に出て、スリーブの磁気トラップに入る。又、これによって、第1のRDU上の磁気要素が引き寄せられて、ポーチの易壊性封止材が破裂し、その構成物である試薬が溶解チャンバ内に押し出される。図16Cに示される次の過程では、第2の部分的にトラップされた磁石の位置が第2のRDUの位置と重なる角度までシャフトが回転している。これにより、このRDUもその構成物を混合チャンバに出し切る。
【0083】
貯蔵試薬の定量供給が完了した後に、回転シャフトは、混合を有効にする為に、図16Dに示されるように高RPMで回転する。これにより、シャフト内の固定永久磁石は、高い周波数で交番する磁極を混合磁石に対して差し出す。こうして高い周波数で引き寄せられたり斥けられたりすることにより、混合チャンバ内で混合が引き起こされる。
【0084】
図17を参照すると、本システムの別の実施形態が示されており、これは、機械的工夫で確実に、磁気プランジャ要素がアクチュエーション後にその最初の位置に戻れないようにしたものである。この実施形態は、試薬ポーチや弁のような要素が試料処理シーケンスの最後までへこんだままでなければならない場合に有利である。図17Aは、磁石がその最初の位置にある過程を示す。この磁石を収容するスリーブは、その壁内に少なくとも1つのカンチレバー式ラチェット要素が成形されている。磁石は、この位置ではラチェットを偏向させている。図17Bに示されるように磁石が移動すると、ラチェットは元に戻り、磁石が下降してその最初の位置に戻ることができないようにする。図17Cは、ばね荷重ボールを有する、この機構の別の実施形態を示す。このボールは、上記ラチェットと同様に働き、磁力が磁石をボールに向かって引き寄せている間は、ボールは磁石の側面によって偏向しているが、磁界が除去されると、磁石のエッジはばね荷重ボールを押し込むことができなくなる。
【0085】
図18を参照すると、試料処理システムのユニークな一実施形態が示されており、これは、トラック1803上を動く磁石1802を含むアクチュエータ要素を使用する。磁石は、生体分子が表面に結合している磁気ビーズを引き寄せる。磁石は、トラックに沿って動きながら、マイクロ流体チップ1804内で磁気ビーズを引きずる。トラックの経路は、図18の試薬チャンバR1からR4を通る。磁気ビーズは、適切なタイミングで全ての試薬チャンバにわたって動かされる。最後に、磁石はトラップの端部、即ち、ボールトラップ1805を通り抜ける。
【0086】
図18Bは、磁石がトラック上を動くための機構を示す。磁気要素はキャリッジ1807上にマウントされており、キャリッジ1807は摺動レール1806に沿って自由に動く。摺動レール全体が、直線ねじ1808に沿って動くことによってマイクロ流体デバイスの長さ方向をトラバースする。このシステムの別の実施形態では、直線ねじの代わりにラックピニオン機構が使用される。摺動レールがチップの長さ方向をトラバースするにつれて、キャリッジ上の磁石がトラックに乗って進む。
【0087】
別の実施形態では、複数の試料処理段階を順次的又は同時に実施するために、1つ以上の磁石がトラック上に配列されてよい。この実施形態では、磁石はトラック上を摺動するように示されているが、可動コンベヤベルトのトラック経路上に磁石を固定することも可能である。
【0088】
上述の実施形態は、直線アクチュエータ要素を使用する試料処理の自動化を示しているが、回転要素にもそれらなりの利点がある。図19A図19B図19Cは、回転アクチュエータ要素を使用して試料処理シーケンスを自動化するマイクロ流体デバイスの実施形態を示す。
【0089】
更に、試料処理デバイスの実施形態によっては、x、y、z、及びrの各軸を制御する為の設計及び試料処理要件に応じて、1つ以上の回転アクチュエータ要素及び直線アクチュエータ要素を組み合わせて使用してよい。
【0090】
以下では、一例示的マイクロ流体デバイスにおいて流体流を制御する磁気プランジャ要素弁の実施形態について説明する。この実施形態では、非磁気プランジャ要素を有する一例示的磁気旋回ロッカ弁について説明する。図20A及び図20Bは、マイクロ流体デバイスにおいて弁として使用可能な旋回ロッカ弁の幾何学的形状の2つの非限定的な実施形態の上面図を示す。そのような弁では、磁気要素2005を有するロッカ2003が、その軸2006を中心に旋回(又は回転)する。外部磁界2004が近傍に入ってくると、この磁界はロッカ上の磁気要素を引き寄せる。これにより、プランジャ2002がダイヤフラム弁を上から押して、流路を通る流体の流れを止める。図20Cに示される過程では、ロッカが磁界によって作動して、非磁気プランジャがダイヤフラム弁をへこませて流れを止める。この磁界が除去されると、ロッカはその最初の位置に戻り、流路内の流れが再開可能になる。
【0091】
図21を参照すると、マイクロ流体デバイス上で、2101で示される磁気プランジャ要素を使用してダイヤフラム弁又はピンチ弁をへこますことが可能である。図21Aに示される過程では、流路が開いている。磁気プランジャ要素2102がダイヤフラム2103の上方に見える。外部磁界が磁気プランジャ要素の近傍に入ってくると、この磁界はプランジャを引き寄せて、ダイヤフラム弁をへこませ、流路内の流れを止める。これを図21Bに示す。
【0092】
回転シャフトに固定された永久磁石を適用することにより、細胞やウイルスなどであってこれらに限定されない生物試料の混合、均質化、及び/又は機械的破砕が可能になる。一例示的実施形態では、永久磁石が回転シャフトの円周上に、回転シャフトの長さ方向に極性が交番するように、軸方向及び半径方向に貼り付けられる。流体デバイス又は流体容器は、その内部に第2の永久磁石材料がトラップされていて、その動きが1つの軸に著しく制限されている。回転シャフトが流体デバイス又は流体容器の近傍に配置されると、容器内の永久磁石材料に対して引力と斥力が交互にかかり、結果として、流体デバイス又は流体容器の内部で往復せん断運動が発生する。この作用を用いて、細胞やウイルスなどの生物試料の混合、均質化、及び溶解を行うことが可能である。この実施形態では、流体容器は少なくとも1つの永久磁石を内部に収容し、それらの動きは、シャフトの回転軸に垂直な方向に制限される。交番磁界の周波数は、シャフトの回転速度と、永久磁石の磁極の半径方向の空間分布とによって決まる。
【0093】
別の実施形態では、流体デバイス/流体容器内の磁石は、別の方向(例えば、回転シャフトの軸に平行な方向)の往復運動に制限されてよい。更に、上述の磁石の動きの制限を全く行わないことが有利である場合がある。実施形態によっては、粒子(例えば、ガラス、シリカ、ポリマー、金属、又はこれらの組み合わせから作られたビーズ)を容器の内部に配置してよく、これらの粒子は、流体容器内での生物試料(細胞やウイルスなど)の機械的破砕を支援することになる。一実施形態では、永久磁石は、流体チャンバ内で流体と直接接触してよく、別の実施形態では、永久磁石は、流体チャンバに近接してよく、例えば、流体チャンバ内で振動や強制渦を引き起こすことが可能であるほど近接している別個のチャンバ内で不透水層によって隔てられてよい。そのようなシステムの、極性が交番/スイッチングする電磁石を使用する場合と比較した場合との有利点として、そのようなシステムは、1つのアクチュエータ回転要素(モータシャフト)で、回転シャフトの長さ方向に間隔を置いて配置された複数の流体チャンバ又は流体容器において溶解、均質化、及び混合の各作用を引き起こすことが可能である。
【0094】
本システムの別の実施形態では、RDUの試薬ポーチから試薬を絞り出すことが理想的であろう。このことは特に、試薬の流量の更なる制御が必要な場合に有利である。図22は、そのような実施形態の断面図である。この実施形態では、磁気プランジャ要素2203は、ポーチを絞ることと、易壊性封止材2202を破ることと、流体導管を通してマイクロ流体デバイスに試薬を定量供給することと、に必要な方向にのみ動くことができるように制限される。実施形態によっては、図22Aに示されるように、磁気プランジャ要素は、底面が平らな平面であってよい。又、実施形態によっては、磁気プランジャ要素は、圧延作用をもたらすシリンダであってよい。図22B図22C、及び図22Dは、RDUの磁気プランジャ要素2203が、マイクロ流体デバイスのアクチュエータ要素の部分的にトラップされたシリンダ磁石によってアクチュエートされている様子を示しており、この結果として、試薬ポーチが絞られて易壊性封止材が破裂して、マイクロ流体デバイス上のチャンバに試薬が安定的に流入する。
【0095】
空気が充填されたポーチを使用して流体を押し出すことにより、流体をマイクロ流体デバイスの1つの反応チャンバから別の反応チャンバに移動させることが可能である。実施形態によっては、マイクロ流体デバイスの反応チャンバが圧縮可能なように設計されている場合に、図22に示された実施形態を使用して、流体を1つの反応チャンバから別の反応チャンバに移動させることが可能である。試薬が充填されている場合と同様に、空気が充填されたポーチを破裂させて試薬をチャンバ外に押し出すことも可能であるが、実施形態によっては、図22に示された絞り機構を使用してこの段階を実施してもよい。図23では上述のマイクロ流体デバイスを示しているが、ここでは、反応チャンバは、平らな平面の状態になるまで絞って圧縮することが可能なように設計されている。図23Aは、試薬をポーチから絞り出す為の部分的に固定された磁気ローラを含むアクチュエータ要素の上面図及びAA断面図を示す。図23Bは、部分的にトラップされた磁気ローラが反応チャンバの近傍にある反応ポーチの上面図及びBB断面図を示す。図23C及び図23Dは、直線アクチュエータ要素が動くにつれて、反応チャンバが磁気ロール要素によって絞られてその流体を次のチャンバに定量供給する様子を示している。
【0096】
本発明の別の態様は、核酸増幅検査の為の試料調製を行う流体デバイスである。この流体デバイスは、主流体導管を介して互いに接続されるように構成された2つ以上の流体ウェルを含む。これらの流体ウェルは、それぞれの入口流体導管から個別に液体試薬が充填されてよい。本発明の態様によっては、それらの入口流体導管は、流体デバイスにあるそれぞれの外開口につながっており、これによって、各流体ウェルは、入口流体導管からウェルへ試薬を分注又は注入することによって充填されることが可能である。
【0097】
ポイントオブケア環境では自己完結型システムが有利であり、これは、ユーザが行う複雑な分注又は注入の手順が全く不要な為である。従って、本発明の他の態様では、試薬は、流体デバイス上の試薬ポーチに貯蔵されてよい。ポーチに十分な圧力がかけられると、ポーチは破裂して、その内容物が、それぞれの意図された反応チャンバにつながる流体導管に定量供給される。ポーチは、入口流体導管と位置合わせされた易壊性封止材を有するように設計されており、ポーチが破裂すると、その内容物が押し出されて入口流体導管に入り、流体ウェルに充填される。ポーチの試薬としては、例えば、緩衝液、塩、酸、基剤、ラベル、タグ、マーカ、水、アルコール、溶剤、ワックス、油、ガス、ゲルなどがあり、これらに限定されない。
【0098】
各流体ウェル空間は、混和性液体試薬が部分的にしか充填されないように設計されており、これは、各流体ウェルをつないでいる主流体導管に各流体ウェル内の混和性液体が溢れ出て互いに混ざり合うことがないようにする為である。各流体ウェルの表面は、親水性の表面と疎水性の表面とを含んでよく、或いは(例えば、親水性又は疎水性のコーティングによって)親水性又は疎水性になるように改質されてよい。親水性改質は、湿潤性を高めて、液体試薬がウェルに均一に充填されることをより可能にする為に行われてよく、一方、疎水性改質は、湿潤性を低下させて、流体充填済みの流体ウェル間での固体粒子の円滑な移動を促進する為に行われてよい。
【0099】
鉱油などの不混和性液体を収容している試薬ポーチが、各ウェルをつないでいる主流体導管につながれており、アクチュエーションが行われると、1)不混和性液体を収容している試薬ポーチの内容物が放出されて、流体ウェルに充填されている液体の上に不混和性油相が形成され、2)流体ウェル内の全ての混和性液体がひと続きにつなげられて流体回路が形成されるが、それらは油相によって互いに隔てられるため、互いに混ざり合うことはない。主流体導管は、余剰の油を集める外部リザーバにつながっている。各混和性試薬は、アッセイ要件に応じて、順次的又は同時にそれぞれのウェルに定量供給されてよい。試薬ウェルの充填の完了後に不混和性液体が定量供給され、これによって、主流体導管及び部分的に充填されたウェルの空いている空間に不混和性油相が完全に充填されて流体回路が形成される。
【0100】
油相によって隔てられた緩衝液を流体ウェルに事前充填し、その流体ウェルを、後で使用する為に封止してカートリッジに格納することが可能であるが、幾つかの試薬(酵素、オリゴ、dNTP、緩衝液などがあり、これらに限定されない)は、室温では、又は長期にわたっては、それぞれの液体形態では安定しない為、使用するまで凍結乾燥形式で保存するか水和する必要がある。更に、そのような事前充填済みのシステムに試料を投入することが難問である。本開示の発明は、マイクロ流体デバイス上での試料処理の為の試料投入、試薬送達、及びアッセイ自動化に関連するそれらの難問に対処する方法及びデバイスを提供する。
【0101】
図24は、流体チャンバ構成の概略ブロック図を示す。流体ウェル2407は、各流体ウェルの底部に入っている入口流体導管2403によって、混和性試薬を収容している1つ以上のRDU2402(RDU1、RDU2、RDU3)とつながっている。各流体ウェル空間は、入口流体導管から入る混和性液体試薬2404が部分的にしか充填されないように設計されている。流体ウェルの充填が完了したら、不混和性液体を収容しているRDU4がアクチュエートされて、その内容物が主流体導管2401を通って流体デバイスに定量供給される。不混和性液体の非限定的な一例が油2406であり、これが主流体導管及び流体ウェルの空いている空間に充填されて、流体経路が形成され、同時に、流体ウェル内の混和性液体同士の間に障壁が形成され、これによって、混和性液体同士が混ざり合うことが避けられる。流体回路を閉じることに使用される不混和性液体は、混和性液体試薬との反応性が最小限又はゼロであるように選択される。余剰の油は、リザーバ2405に集まる。この油は、核酸増幅、又は他の、加熱を必要としうるアッセイ段階の間の蒸発を防ぐ蒸気障壁としても働く。
【0102】
形成された流体回路は、磁気ビーズを使用して固相キャプチャを行う試料調製段階を自動化することに関して有利であり、それは、ビーズを磁石で動かして、油相を貫通させ、様々な試料処理試薬を収容している流体ウェルに入れることが可能な為である。一例として、各流体ウェルは、核酸精製の為の溶解緩衝液、結合緩衝液、洗浄緩衝液、及び溶離緩衝液が充填され、油相によって隔てられてよい。磁気ビーズは、核酸精製の為の試料調製段階を完結させる為に、油相を貫通して、所定のシーケンスで様々な流体ウェルに入るように動かされてよい。これにより、マイクロ流体デバイス上での試料処理段階の容易な自動化が可能になる。
【0103】
別の実施形態では、マイクロ流体カートリッジ上の各流体ウェル及び主流体導管は、完全に油が事前充填されてよい。マイクロ流体デバイスの使用時には、試薬ポーチに貯蔵された混和性液体試薬がマイクロ流体カートリッジ上の所望の流体ウェルに定量供給されて、余剰の油が押し退けられ、この油は余剰油リザーバ105に集められる。
【0104】
磁気ビーズは、生物試料調製において、生物試料中の核酸、タンパク質、生体分子、及び細胞の抽出、隔離、及び精製を行う為によく使用される。磁気ビーズによる固相抽出の大きな利点は、遠心分離又は真空マニホールドが不要な為に自動化が容易なことである。最適化された条件の下では、DNAは磁気ビーズの機能化表面に選択的に結合し、一方、他の汚染物質は溶液中にとどまる。ビーズは、外部磁界によって定位置にキャプチャされることが可能であり、汚染物質は、汚染物質を有する溶液をピペットで吸い出し、ビーズを洗浄緩衝液で洗浄することにより除去可能である。精製されたDNAは、その後、所望の体積で溶離されて、分子生物学用途で直接使用されることが可能である。
【0105】
本開示の発明は、流体チップを含む、磁気ビーズによる試料調製の方法及びデバイスを示しており、流体チップは、不混和性油相によって隔てられた試料調製用混和性液体試薬を有する一連の流体ウェルと、必要とされる流体ウェル及び再懸濁段階の数に応じて1つ以上の空間的に配向された永久磁石が固定されている上部及び下部アクチュエータ要素と、を含む。上部及び下部アクチュエータ上の永久磁石は、単一の連続的な動きの中で、1)磁気ビーズを再懸濁することと、2)磁気ビーズを流体ウェル間で所定のシーケンスで動かすことと、が可能であるように配列される。
【0106】
流体ウェルは、ビーズをウェルの上部又は下部の固定位置に拘束し、ビーズが、アクチュエータ要素上の永久磁石の方向にそれ以上動かないようにする為に、一定間隔を置いて配置され、物理障壁として働く上部及び下部バッフル又は障害物を有するように設計されている。
【0107】
実施形態によっては、流体ウェルの壁が、ビーズの動きを所定の経路に制限するバッフル又は物理障壁として働いてよい。ウェルの対向面上の磁石がビーズの近傍に来ると、ビーズは磁石に引き寄せられて、流体ウェル内に存在している液体試薬又は緩衝液を通って再懸濁される。不混和性油相は、サンプルツーアンサーシーケンスを完結させる為に流体経路を完結させるように働き、これによって、ビーズが再懸濁されて、油充填済み主流体導管を経由して一連のウェルの様々な試薬の中を通って動くことが可能である。本発明は、有利なことに、単一の連続的な動きと永久磁石だけを用いてサンプルツーアンサーシーケンスを完結させることが可能であり、これによって、サンプルツーアンサー自動化の複雑さ及び電力負荷を軽減することが可能である。実施形態によっては、アクチュエータ要素又はマイクロ流体デバイスを動かす為に、サーボモータ又はステッパモータを使用してよい。実施形態によっては、動きを発生させる為に、機械式ぜんまい機構を使用してよい。機械式ぜんまい機構は、シーケンスを自動化するのに電気エネルギを必要としない完全無電力化がなされている点が特に有利である。実施形態によっては、アクチュエータ要素は、ユーザの指で手動駆動されてよい。
【0108】
図25Aを参照すると、磁気ビーズによる試料調製の為の一例示的マイクロ流体カートリッジの概略図が示されており、これは、流体ウェル、流体導管、貯蔵液体試薬リザーバ、及び弁を含む。マイクロ流体カートリッジは、永久磁石と突出部又は突起部とを含む上部アクチュエータ要素と下部アクチュエータ要素との間に挟まれている。永久磁石及び突起部は、マイクロ流体カートリッジがアクチュエータ要素の近傍で回転する際のアクチュエータ要素の位置及び速度に応じて、アッセイ自動化シーケンスの様々な段階を厳密なタイミングで実施するように空間配置されている。実施可能なアッセイ段階として、貯蔵試薬を流体ウェルに定量供給すること、弁を開閉して流体流の方向を制御すること、ベントを開閉すること、磁気ビーズをウェル間でキャプチャし、再懸濁し、動かすことなどがある。図25B及び図25Cに見られるように、磁気ビーズは、油充填済み流体導管2505を通って、マイクロ流体デバイス上の複数の試薬充填済み流体ウェル2506に順次的に入ることが可能であるが、その油充填済み流体導管2505は、ウェルの壁がビーズを所望のウェルに拘束する物理障壁として働くように、交互にオフセットしている。回転アクチュエータ要素上の永久磁石もオフセットしており、これは、複数の試薬充填済み流体ウェルにあるビーズを回転経路に沿ってキャプチャ及び再懸濁する為である。
【0109】
一例として、等温核酸増幅検査(NAAT)、例えば、ループ介在等温増幅(LAMP)が、マイクロ流体デバイス上で、組み込みヒータを使用して実施されてよい。流体ウェルには、結合、洗浄、及び溶離の為の各緩衝液が充填されてよい。核酸の抽出及び精製には、チャージスイッチ(ChargeSwitch)磁気ビーズが使用されてよい。増幅を行うように指定された流体ウェルのマイクロ流体カートリッジには、LAMP用凍結乾燥試薬が貯蔵されてよい。結合を行うように指定されたウェルのマイクロ流体カートリッジには、磁気ビーズが貯蔵されてよい。
【0110】
マイクロ流体カートリッジは上部アクチュエータ要素と下部アクチュエータ要素との間を回転する為、NAATを実施する動作のシーケンスは以下のとおりであってよい。1)弁を開くことによって第1の(「結合」)ウェルに溶解物が投入される。2)「結合」、「洗浄1」、「洗浄2」、及び「溶離」の各緩衝液が、マイクロ流体カートリッジ上の、それぞれ、第1、第2、第3、及び第4のウェルに定量供給される。3)鉱油が充填され、鉱油はウェル内の試薬の上に重なって、連続的な流体回路を形成し、磁気ビーズがこの流体回路を通ってウェル間を移動することが可能である。4)磁気ビーズは、最上層の油導管を通って、順次的にキャプチャされ、再懸濁され、4つのウェルに入れられる。5)弁を開くことによって、溶離ウェルからの溶離DNAが、凍結乾燥マスタミックスを収容している第5の(LAMP増幅)ウェルに計量供給されてよく、これによって試薬が水和される。6)1つのアクチュエータ要素上にあるヒータがLAMP増幅チャンバと接触し、これを、所望の時間にわたって所望の温度に加熱する。
【0111】
図25B及び図25Cは、本開示の発明における、磁気ビーズを流体ウェル間でキャプチャし、再懸濁し、移動させて試料調製を達成する原理をより詳細に示す。上部アクチュエータ要素2502は、1、3、及び5とラベル付けされた、空間的に配向された永久磁石2507を有し、下部アクチュエータ要素2504は、2、4、及び6とラベル付けされた、空間的に配向された永久磁石を有する。この実施形態では、マイクロ流体カートリッジ2503は、固定された上部アクチュエータ要素2502と下部アクチュエータ要素2504との間を反時計回りに回転する。「結合」ウェルが上部永久磁石「1」の下に来る位置までマイクロ流体カートリッジが回転すると、これによって、磁気ビーズは、上部永久磁石「1」に引き寄せられ、「結合」ウェルの上でキャプチャされる。マイクロ流体カートリッジは回転し続けて、ビーズを、接続用の油充填済み流体導管を介して、「洗浄」とラベル付けされた次のウェルに入れる。「洗浄」ウェルの側壁は、磁気ビーズの経路に沿う物理障壁として働き、油中のビーズを洗浄ウェルの上に拘束する。これは、永久磁石「1」が離れて、その力がビーズに及ばなくなった為である。マイクロ流体カートリッジは、回転し続けると、第1の「洗浄」ウェルが、下部アクチュエータ要素上の「2」とラベル付けされた永久磁石の上になる位置まで来る。これにより、第1の洗浄ウェルの上にあるビーズは、永久磁石「2」に引き寄せられ、「洗浄」ウェルの下部にある洗浄緩衝液内で再懸濁され、キャプチャされる。同様に、磁気ビーズは、磁石3、4、5、及び6によって再懸濁され、キャプチャされ、動かされ、その後、「溶離」ウェルに到達し、そこで、ビーズ上の核酸が、「溶離」ウェルの下部にある緩衝液内に溶離される。
【0112】
図26Aから図26Iを参照すると、直線アクチュエーションを用いて流体ウェル間で磁気ビーズをキャプチャし、再懸濁し、移動させる原理を説明する為の、アクチュエータ要素に対するマイクロ流体カートリッジの位置の様々な過程が示されている。アクチュエータ要素は、上部永久磁石及び下部永久磁石を含む。図26Aは開始位置を示しており、ここでは、どのウェルも磁界の範囲内にない。図26Bでは、第1の上部永久磁石が第1のウェルの近傍に来て、主流体導管にある油の中の磁気ビーズをキャプチャする。キャプチャされた磁気ビーズは、図26Cに見られるように、主流体導管を通って第2のウェルまで動かされる。
【0113】
ここで、第2の流体ウェルの壁が磁気ビーズの経路をふさいでおり、磁気ビーズは第2の流体ウェル内に拘束されたままとなる。図26Dに示される位置では、第1の下部永久磁石が第2の流体ウェルの近傍に来て、ビーズを流体ウェルの下部に引き寄せ、ビーズは、流体ウェルにある緩衝液試薬の中で再懸濁される。図26Eに示される位置では、第2の上部永久磁石が第2のウェルの近傍に来て、ビーズを、主流体導管経由で第3の流体ウェル内まで引きずる。図26Fは、第3の流体ウェルの側壁がバッフルとして働く為にビーズが第3の流体ウェルに拘束されている様子を示す。図26Gでは、第2の下部永久磁石が、第3のウェルの近傍に来て、ビーズをウェルの下部に引き寄せて、下部にある緩衝液の中でビーズを再懸濁する。図26Hでは、ビーズは、第3の上部永久磁石によって上部に引き寄せられ、主流体導管経由で第4の流体ウェルまで動かされる。図26Iでは、第3の下部永久磁石がビーズを第4の流体ウェルの下部に引き寄せて、第4の流体ウェルにある緩衝液の中でビーズを再懸濁する。
【0114】
図27に示されるように、永久磁石の代わりに電磁石が使用されてよい。マイクロ流体カートリッジは、電磁石を含むアクチュエータ要素間を動く。異なる複数の流体ウェル2703間での磁気ビーズの移動及び再懸濁を促進する為のシーケンスで、上部電磁石又は下部電磁石がオンオフされてよい。図27は、試料処理シーケンス全体における磁気ビーズ移動の様々な過程を示す。図27Aに示される過程では、電磁石EM12701がオンにされて、油相2702中のビーズをキャプチャする。図27Bに示される過程に見られるように、EM1がオンのままである為に、ビーズは油相中を動かされる。図27Cの過程では、EM1はオフにされ、EM22704がオンにされる。これにより、ビーズがEM2に引き寄せられて、試薬2703に入り、その流体ウェル内で再懸濁される。ビーズが次の流体ウェルに動けるようになると、EM1が再度オンにされて、ビーズを引き寄せて油相に入れる。図27Dに示される過程では、ビーズは、次の試薬充填済み流体ウェルに動かされる。次にEM1がオフにされ、EM2がオンにされて、ビーズが、流体ウェルに充填された試薬を通って再懸濁され、その後、図27Eに示されるように、EM2によってキャプチャされる。最後に図27F及び図27Gでは、EM1又はEM2が所望のタイミングシーケンスで選択的にオンオフされることによって、ビーズは、最後の流体ウェルに動かされ、再懸濁される。反応ウェル内でビーズの混合及び再懸濁を達成する為に、上部電磁石及び下部電磁石は交番パルスで駆動されてよい。永久磁石及びバッフルの代わりに電磁石が使用されてよいが、電磁石は、オンオフの切替の為に電源及び電子制御装置を必要とする為、計装要件が複雑になる。従って、電磁石の使用は、永久磁石の使用ほどの訴求力がなく、特にポイントオブケア環境及び低資源環境では訴求力がない。
【0115】
本開示の発明は、マイクロ流体カートリッジ上での流体操作の方法及びデバイスを示している。マイクロ流体デバイスは、易壊性封止材を有する1つ以上の貯蔵試薬充填済みポーチと、1つ以上の突起部を含むアクチュエータ要素とを含み、これらの突起部は、カートリッジがアクチュエータ要素間を摺動する際に所定のシーケンスで試薬を流体カートリッジのウェルに定量供給するように、空間的に配向されている。
【0116】
図28を参照すると、試料調製の為の、磁気ビーズを使用した順次試薬送達を行うマイクロ流体カートリッジ及びアクチュエータ要素の斜視図が示されている。マイクロ流体カートリッジは、易壊性封止材で封止された試薬ポーチ2803にオンボード貯蔵試薬を有しており、力がかかると封止材が破れて、試薬が流体導管を通ってマイクロ流体カートリッジ上のウェルに放出される。マイクロ流体カートリッジがアクチュエータ要素と係合し、その間を一端から他端まで摺動すると、試薬ポーチが絞られて試薬が順次送達されるように、それらのポーチが空間的に配向されている。流体ウェルは1つ以上の上部バッフル2804及び下部バッフル2802を有しており、これらはビーズをウェル内に拘束するように働く。アクチュエータ要素は、その上に1つ以上の機械要素(例えば、突起部、プランジャなど)2806を有しており、これらは、試薬ポーチを絞って、それらの試薬をマイクロ流体カートリッジ上のウェルに定量供給するように働くように配列されている。これらの機械要素は、逆流を防ぐ為にサンプルツーアンサーシーケンスの最後まで試薬ポーチを絞られたままに保つように設計されている。実施形態によっては、機械要素は、マイクロ流体カートリッジ上の流体流の方向を制御する為に、又はベントを開閉する為に、所定のシーケンスでマイクロ流体カートリッジ上のピンチ式弁を開閉するように働いてもよい。アクチュエータ要素は、その上に1つ以上の固定磁石を有してもよい。図28に見られるように、アクチュエータ要素は上部磁石2805及び下部磁石2807を有しており、これらは、試料調製シーケンスを完結させるべく、磁気ビーズを様々な流体ウェルに入れてキャプチャ、再懸濁、及び移動を行うように、空間的に配列されている。
【0117】
実施形態によっては、ビーズは、LAMP又は他のNAAT増幅システムの中に直接移されて、そのシステム内で直接溶離されてよい。これにより、キャプチャされた核酸が全て、NAAT増幅システムに入力されることが可能になる。図29は、磁石が運動経路に沿って動き続ける際に、流体ウェル内の突起部をバッフルとして使用してビーズをウェルに拘束する原理を示している。流体ウェルは、その上部に突起部2902を有し、これは、磁石がその運動経路に沿って動き続ける際にビーズを拘束するように働く。図29に示されるマイクロ流体デバイスの概略断面図において、試薬2908は不混和性油相2904によって隔離されている。マイクロ流体デバイスの上部アクチュエータ要素上及び下部アクチュエータ要素上には、それぞれ、上部固定磁石2905及び下部固定磁石2907がある。図29Aに見られるように上部固定磁石2905が第1の流体ウェルの近傍に来ると、その中にある磁気ビーズが磁石に引き寄せされ、油相の上部でキャプチャされる。マイクロ流体カートリッジがアクチュエータ要素間を動き続けると、図29Bに見られるように、ビーズは流体導管を通って動き、第2の流体ウェルに入る。ここで、図29Cに見られるように、マイクロ流体デバイスが動き続けて上部磁石の磁界の外に出る際に、突起部2902はビーズを第2のウェルに拘束するように働く。油相内に拘束された磁気ビーズは、その後、図29Dに見られるように下部磁石が流体ウェルの近傍に来ると、ウェルの下部の混和性試薬の中を動くことが可能である。ここで、上部でキャプチャされた磁気ビーズは、下部磁石2907に引き寄せられて、流体ウェルの下部にある試薬の中で再懸濁され、動かされる。図29Eで、磁気ビーズは、ウェルの下部でキャプチャされ、側壁がバッフルとして働いて、ビーズがウェルの外に出ないようにする。この方法により、空間的に配向されたバッフル及び永久磁石を使用して、マイクロ流体デバイス上のチャンバ間又はウェル間で磁気ビーズを動かして、試料処理を行うことが可能である。
【0118】
一実施形態では、中空流路を有するランセット、又は針が、アクチュエータ要素によってアクチュエートされて、増幅チャンバの壁に穴をあけ、流体を検出用ラテラルフローストリップに流すことが可能である。図30は、検出対象の検体を含む液体生成物を流体ウェル3002からラテラルフローストリップ3003に移す原理を示している。図30Aは、アクチュエートされる前の、中空流路3004を有するランセット3005を示す。図30Bは、アクチュエーション後の中空ランセットを示しており、ランセットは、ラテラルフローストリップと流体ウェルの下部とを貫通して、流体がラテラルフローストリップに流れる為の導管を形成している。
【0119】
試料処理システムは、用途及びユーザ要件に応じて、生物試料処理を実施する、単一であり自己完結型であり自給自足である統合システムを形成するように、モータ、アクチュエータ、加熱要素、熱電対、ファン、冷却装置、マイクロコントローラ、光検出器、電極、フィルタ、光源、バッテリパック、無線モジュール、及び電子回路を統合してよい。試薬ポーチ、リザーバ、及び反応チャンバの容積は、バイオアッセイ及びユーザニーズに応じて様々であってよい。典型的な容積は、1μlから10ml、又は5μlから1mlの範囲であってよい。マイクロ流体デバイスに適した素材はいろいろあり、例えば、ガラス、ポリカーボネート、PMMA、COC、シリコン、又はこれらの材料の1つ以上の組み合わせがある。マイクロ流体デバイスは、統合されたシリコン又はガラスMEMS機能化電極アレイ又はマイクロアレイ、或いは検出用ラテラルフローストリップとともにポリマー射出成形されてよい。材料は、ユーザの要件、その材料の上で実施されるアッセイの要件、その生体適合性、化学的適合性に基づいて選択されてよい。マイクロ流体デバイスのフットプリントは、ユーザ要件及び試料処理用途に応じて、数平方ミリメートルから数十平方センチメートルの範囲であってよい。実施形態によっては、複数のマイクロ流体デバイスがスタック又は配列されてよく、同時に処理されてよい。試料処理システムにおける磁石の引力、形状、及びサイズは、試料処理ニーズ、易壊性封止材の形状、サイズ、体積、材料特性、及び破裂圧力に応じて選択される。易壊性封止材の材料として、アルミホイル、ポリマー、ゴム、金属、粘着テープ、金属酸化物、又はこれらの材料の組み合わせがある。

一般的定義
【0120】
本明細書では特定の用語を使用しているが、これらは、限定の為ではなく、一般的且つ説明的な意味でのみ使用している。本明細書で使用している全ての技術用語及び科学用語は、別の定義がなされていない限り、本明細書の記述対象が属する技術分野の当業者の一般的理解と同じ意味を有している。
【0121】
「核酸」は、本明細書では、ヌクレオチドと呼ばれる共有結合サブユニットを含む高分子化合物を意味する。「ヌクレオチド」は、リン酸基と結合しているヌクレオシド(即ち、糖質、通常はリボース又はデオキシリボースと結合しているプリン塩基又はピリミジン塩基を含む化合物)を含む分子(又はより大きな核酸分子中の個別ユニット)である。
【0122】
「ポリヌクレオチド」又は「オリゴヌクレオチド」又は「核酸分子」は、本明細書では、一本鎖型又は二本鎖型のリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、又はシチジン;「RNA分子」又は単に「RNA」))又はデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、又はデオキシシチジン;「DNA分子」又は単に「DNA」)のリン酸エステル多量体型、又はこれらの任意のリン酸エステル類似体(例えば、ホスホロチオエートやチオエステル)を意味するものとして区別なく使用している。任意の長さのRNA配列、DNA配列、又はRNA/DNA混成配列を含むポリヌクレオチドが可能である。本発明で使用されるポリヌクレオチドは、天然、合成、組み換え、体外生成、又はこれらの組み合わせであってよく、当該技術分野において知られている任意の精製方法を利用して精製されてもよい。従って、「DNA」という用語は、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、半合成DNA、相補的DNA(「cDNA」;メッセンジャーRNAテンプレートから合成されたDNA)及び組み換えDNA(人工的に設計されたものであり、従って、その天然のヌクレオチド配列からの分子生物学的マニピュレーションが行われたものであるDNA)を包含し、これらに限定されない。
【0123】
「増幅する」、「増幅」、「核酸増幅」などは、核酸テンプレート(例えば、テンプレートDNA分子)の複数のコピーを生成すること、又は核酸テンプレート(例えば、テンプレートDNA分子)に対して相補的な複数の核酸配列コピーを生成することを意味する。
【0124】
「上部」、「下部」、「上」、「下」、及び「~上」は、本明細書を通して、上述のデバイスの構成要素の相対位置(例えば、デバイス内の上部基板及び下部基板の相対位置)に関して用いている。当然のことながら、本デバイスの機能は、空間内でのデバイスの向きに無関係である。
【0125】
液滴アクチュエータ上のビーズに関する「ビーズ」は、液滴アクチュエータの近傍にある液滴と相互作用することが可能な任意のビーズ又は粒子を意味する。ビーズの形状は、様々な形状、例えば、球形、ほぼ球形、卵形、円盤形、立方体、アモルファス、及び他の3次元形状のうちのいずれであってもよい。ビーズは、例えば、液滴アクチュエータ上の液滴が、液滴アクチュエータ上のビーズ、及び/又は液滴アクチュエータ上にないビーズと接触するようにされることを可能にするように、液滴アクチュエータ上の液滴内で液滴操作を受けること、又は他の方法で液滴アクチュエータに関して構成されることが可能であってよい。ビーズは、液滴内、液滴操作ギャップ内、又は液滴操作面上に与えられてよい。ビーズは、液滴操作ギャップの外にあるリザーバ、又は液滴操作面から離れて位置するリザーバに与えられてよく、リザーバは、ビーズを含む液滴が液滴操作ギャップに入るか液滴操作面と接触するようにされることを可能にする流路に関連付けられてよい。ビーズは様々な材料で製造されてよく、例えば、樹脂やポリマーで製造されてよい。ビーズは任意の適切なサイズであってよく、たとえば、マイクロビーズ、マイクロ粒子、ナノビーズ、ナノ粒子などであってよい。場合によっては、ビーズは磁気に反応し、又、場合によっては、ビーズは磁気にはあまり反応しない。磁気に反応するビーズの場合、磁気に反応する材料は、ビーズのほぼ全体を構成してよく、或いはビーズの一部分を構成してよく、或いはビーズの1つの構成要素だけを構成してよい。ビーズのその他の部分としては、特に、アッセイ試薬の吸着を可能にするポリマー材料、コーティング、及び部分があってよい。適切なビーズの例として、フローサイトメトリーマイクロビーズ、ポリスチレンのマイクロ粒子及びナノ粒子、機能化されたポリスチレンのマイクロ粒子及びナノ粒子、コーティングされたポリスチレンのマイクロ粒子及びナノ粒子、シリカマイクロビーズ、蛍光性のマイクロ球体及びナノ球体、機能化された蛍光性のマイクロ球体及びナノ球体、コーティングされた蛍光性のマイクロ球体及びナノ球体、染色されたマイクロ粒子及びナノ粒子、磁性体のマイクロ粒子及びナノ粒子、超常磁性体のマイクロ粒子及びナノ粒子(例えば、カリフォルニア州カールズバッドにあるインビトローゲングループ(Invitrogen Group)から入手可能なDYNABEADS(登録商標)粒子)、蛍光性のマイクロ粒子及びナノ粒子、コーティングされた、磁性体のマイクロ粒子及びナノ粒子、強磁性体のマイクロ粒子及びナノ粒子、コーティングされた、強磁性体のマイクロ粒子及びナノ粒子などがある。ビーズは、生体分子、又は生体分子と結合して錯体を形成することが可能な他の物質とあらかじめ結合されてよい。ビーズは、所望のターゲットに対する親和力を有する抗体、タンパク質又は抗原、DNA/RNAプローブ、又は他の任意の分子とあらかじめ結合されてよい。
【0126】
磁気に反応するビーズに関する「固定化する」は、ビーズを液滴内、又は液滴アクチュエータ上の充填流体内で位置的にほぼ拘束することを意味する。例えば、一実施形態では、固定化されたビーズは、実質的に全てのビーズを有する1つの液滴と、実質的にビーズがない1つの液滴とを発生させる液滴分割操作を実行できるほどに、液滴内で位置的に拘束されている。「磁気に反応する」は、磁界に対する反応性があることを意味する。
【0127】
「磁気に反応するビーズ」は、磁気に反応する材料を含むか、磁気に反応する材料から成る。磁気に反応する材料の例として、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、メタ磁性材料などがある。適切な常磁性材料の例として、鉄、ニッケル、及びコバルト、並びに、Fe304、BaFel2019、CoO、NiO、Mn203、Cr203、CoMnPなどの金属酸化物がある。
【0128】
任意の形態の液体(例えば、動いているか静止しているかにかかわらず、液滴又は連続体)が、電極、アレイ、マトリックス、又は面に対して、それらの「上」にあるか、それらの「場所」にあるか、それらの「上方」にあると記述された場合、そのような液体は、電極/アレイ/マトリックス/面と直接接触してよく、或いは、液体と電極/アレイ/マトリックス/面との間に介在する1つ以上の層又は薄膜と接触してよい。一例では、充填流体が、そのような液体と電極/アレイ/マトリックス/面との間の薄膜と見なされてよい。
【0129】
長く続いている特許法の慣習に従うと、「a」、「an」、及び「the」は、特許請求の範囲を含む本出願において使用される場合には「1つ以上の」を意味する。従って、例えば、「被験体(a subject)」への参照は、文脈が明らかに反対の意味(例えば、複数の被験体)などでない限り、複数の被験体を包含する。
【0130】
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise、omprises、及びcomprising)」という語は、文脈上別段の解釈が必要でない限り、非排他的な意味で使用される。同様に、「包含する(include)」という語、並びにその文法上の異形は非限定的であるものとし、それによって、リストの形での項目の列挙は、リストされた項目に置換又は追加できる他の同様の項目を排除するものではない。
【0131】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的の為に、特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている量、サイズ、寸法、比率、形状、処方、パラメータ、パーセンテージ、パラメータ、分量、特性、及び他の数値を表す全ての数は、「約」という語が値、量、又は範囲とともに明示的に現れていなくても、全ての場合において「約」という語で修飾されているものとして理解されたい。従って、反対のことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、厳密ではなく、厳密である必要もないが、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差などを反映して、且つ、本開示の主題により得られることが求められている所望の特性に応じた、当業者に知られている他の因子を反映して、近似的であってよく、且つ/又は、必要に応じて、より大きくても、より小さくてもよい。例えば、「約」という語は、値に言及する場合には、指定された量から、実施形態によっては±100%、実施形態によっては±50%、実施形態によっては±20%、実施形態によっては±10%、実施形態によっては±5%、実施形態によっては±1%、実施形態によっては±0.5%、実施形態によっては±0.1%のばらつきを包含するという意味であってよく、これは、そのようなばらつきが、本開示を実施したり、本開示の組成物を使用したりする上で妥当であるという理由による。
【0132】
更に、「約」という語は、1つ以上の数値又は数値範囲に関連して使用される場合には、範囲内の全ての数字を含むそのような数字の全てを指すと理解されるべきであり、記載の数値の上下の境界を拡張することにより、その範囲を修正するものである。エンドポイントによる数値範囲の記載は、その範囲に包含される全ての数、例えば、端数を含む整数全体(例えば、1~5という記載は、1、2、3、4、5と、それらの端数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1などを含む)と、その範囲にある任意の範囲を包含する。
【0133】
本明細書で言及される全ての発行物、特許出願、特許、及び他の文献は、本開示対象が関係する技術分野の当業者のレベルを表す。全ての発行物、特許出願、特許、及び他の文献は、個々の発行物、特許出願、特許、及び他の文献のそれぞれが、参照によって組み込まれるものとして具体的且つ個別に示されているのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれている。本明細書では様々な特許出願、特許、及び他の文献が参照されているが、当然のことながら、そのような参照は、これらの文書のいずれかが当該技術分野における共通一般知識の一部を形成していることを認めるものではない。
【0134】
上掲の主題について、明確に理解されることを目的として、図解や実施例により、ある程度詳しく説明してきたが、当業者であれば理解されるように、添付の特許請求の範囲から逸脱しない限り、何らかの変更や修正が実施されてよい。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図21
図22
図23-1】
図23-2】
図24
図25-1】
図25-2】
図26-1】
図26-2】
図27-1】
図27-2】
図28
図29
図30
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックと、前記トラックに摺動可能に係合された少なくとも1つの磁石とを有する、1つ以上のアクチュエータ要素と、
1つ以上の流体ウェルを有するマイクロ流体カートリッジであって、前記流体ウェルの少なくとも1つが磁気ビーズを有する、マイクロ流体カートリッジと、を備える、
マイクロ流体試料処理デバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0134】
上掲の主題について、明確に理解されることを目的として、図解や実施例により、ある程度詳しく説明してきたが、当業者であれば理解されるように、添付の特許請求の範囲から逸脱しない限り、何らかの変更や修正が実施されてよい。
〔付記1〕
カムシャフト及びカムローブを含む1つ以上のカムと、
1つ以上のロッカアームと、
1つ以上の流路と、1つ以上の反応チャンバと、流体及び易壊性メンブレン封止材を含む1つ以上のバーストポーチと、を含むマイクロ流体カートリッジと、
前記カムシャフトを回転させるように構成されたカム機構と、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記1つ以上のカムは、前記カムシャフトが回転すると前記カムローブが前記1つ以上のロッカアームをアクチュエートするように構成されており、前記1つ以上のロッカアームは、アクチュエーションによって前記ロッカアームが開位置から閉位置に動いて、前記1つ以上のバーストポーチに圧力がかけられて、前記易壊性メンブレンが破れて前記流体が前記1つ以上の反応チャンバに放出されるように構成されている、
マイクロ流体デバイス。
〔付記2〕
複数のカムローブ及びロッカアームが、前記カムシャフトが完全に1回転すると、前記ロッカアームが、時間的且つ空間的に制御された様式で複数のバーストポーチに圧力をかけるように構成されている、付記1に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記3〕
前記1つ以上のカムローブ及び前記1つ以上のロッカアームは、前記1つ以上のバーストポーチの前記易壊性メンブレン封止材が破られた後に前記ロッカアームが前記閉位置にとどまるように構成されている、付記1又は2のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記4〕
前記カムローブは、前記ロッカが前記ポーチを破裂させた後に前記閉位置にとどまるように構成されている、付記1~3のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記5〕
前記1つ以上の流路に沿って1つ以上のダイヤフラム弁を更に含み、前記1つ以上のカムローブは、前記カムシャフトが回転すると、前記カムローブが前記1つ以上のダイヤフラム弁を開いたり、且つ/又は閉じたりするように構成されている、付記1~4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記6〕
前記カムシャフトは、ぜんまい機構によって回転するように構成されている、付記1~5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記7〕
試料調製チャンバを更に含み、前記試料調製チャンバはDNAキャプチャ用ビヒクルを含む、付記2~6のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記8〕
更に、前記カムシャフトの回転速度と、前記複数のカムローブ及び前記複数のロッカアームの前記構成とにより、前記複数のバーストポーチを、時間的に制御された様式で破裂させてDNA精製の洗浄段階を実施することが可能になる、付記7に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記9〕
前記マイクロ流体カートリッジは更に、増幅チャンバ、ヒートシンク、及びヒータを含み、前記ヒートシンク及び前記ヒータは、前記複数のカムローブ及び前記複数のロッカアームのアクチュエーション後に前記増幅チャンバを断続的に冷却又は加熱するように構成されている、付記8に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記10〕
更に、前記カムシャフトの回転速度と、前記複数のカムローブ及び前記複数のロッカアームの前記構成とにより、前記ヒートシンク及び前記ヒータが、時間的に制御された様式で前記増幅チャンバを断続的に冷却又は加熱してPCR熱サイクルを実施することが可能になる、付記9に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記11〕
前記マイクロ流体カートリッジは更に、DNAキャプチャ用ビヒクルを含むDNAハイブリダイゼーションチャンバを含む、付記8に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記12〕
マイクロ流体カートリッジを含むマイクロ流体デバイスであって、
複数の試薬充填済みポーチと、
反応チャンバと、
カムシャフトと、を含み、
前記カムシャフトは、複数のスロットを、前記カムシャフトに沿う複数の角度位置に含み、それによって、前記カムシャフトが所定の位置まで回転すると、前記角度スロットのうちの1つ以上が、前記試薬充填済みポーチのうちの1つ以上と前記反応チャンバとの間に流路を形成する、
マイクロ流体デバイス。
〔付記13〕
試薬及び易壊性封止材を含む試薬ポーチと、
磁界に引き寄せられると前記試薬ポーチをへこませて前記易壊性封止材を破るように構成された一体型磁気要素と、
を含む試薬定量供給装置。
〔付記14〕
前記磁気要素はプランジャを含む、付記13に記載の試薬定量供給装置。
〔付記15〕
前記磁気要素はビーズを含む、付記13に記載の試薬定量供給装置。
〔付記16〕
前記磁気要素は鋭利物体を含む、付記13に記載の試薬定量供給装置。
〔付記17〕
流体導管と、
反応チャンバと、
付記13~16のいずれか一項に記載の試薬定量供給装置と、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記試薬定量供給装置は、気密封止が形成されるように、前記マイクロ流体デバイスと接着されており、前記試薬定量供給装置は、前記易壊性封止材が破られたら、前記流体導管経由で前記試薬を前記反応チャンバに出し切って空になるように構成されている、
マイクロ流体デバイス。
〔付記18〕
トラップを更に含み、前記トラップは、固定されていない磁性材料を含み、前記試薬ポーチをへこんだ状態で保持するように構成されている、付記17に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記19〕
弁を介して互いに流体接続されている複数の流体チャンバと、
永久磁石を含む回転シャフトであって、前記永久磁石は前記回転シャフトの円周上で軸方向及び半径方向に配列され、磁極が交互になっている、前記回転シャフトと、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記流体チャンバのそれぞれは、前記回転シャフトの軸に垂直な経路に沿って運動方向が制限されている、トラップされた永久磁石を含み、前記回転シャフト及び前記流体チャンバは、前記回転シャフトが回転すると、前記永久磁石が動いて前記各流体チャンバ内の流体を混合するように構成されている、
マイクロ流体デバイス。
〔付記20〕
封止材の易壊性部分のある厳密な位置に破裂箇所がある試薬ポーチであって、前記封止材の前記易壊性部分に直接重なる、前記試薬ポーチの特定の場所に拘束された磁気要素を含む前記試薬ポーチ。
〔付記21〕
1つ以上の直線アクチュエータ要素と、
マイクロ流体カセットと、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記1つ以上の直線アクチュエータ要素は、磁気ビーズ移動用固定磁気要素、流体弁アクチュエーション用固定磁気要素、及び/又は試薬ポーチ破裂用固定磁気要素を含み、前記マイクロ流体カセットは、磁気プランジャ要素が一体化された貯蔵試薬ポーチと、試料処理用試薬チャンバと、弁を通る磁気ビーズの動きを制御する非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁と、磁気ビーズ移動用固定磁気要素を含む磁気プランジャを含む磁気制御弁と、を含む、
マイクロ流体デバイス。
〔付記22〕
前記1つ以上のアクチュエータ要素は、前記マイクロ流体デバイスの下及び/又は上を摺動するように構成されている、付記21に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記23〕
前記アクチュエータ要素は、モータ、ぜんまい、手回しクランク、手で押すこと、及び直線ソレノイドアクチュエータから成る群から選択される方法で動かされる、付記21~22のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記24〕
1つ以上の直線アクチュエータ要素と、
マイクロ流体カセットと、を含むマイクロ流体デバイスであって、
前記1つ以上の直線アクチュエータ要素は、固定磁気要素と部分的にトラップされた磁気要素との組み合わせを含み、前記部分的にトラップされた磁気要素は、それぞれのトラップに収容されて、それぞれの動きが、磁気ビーズ移動、流体弁アクチュエーション、及び/又は試薬ポーチ破裂の為の1つの軸又は方向に制限されており、前記マイクロ流体カセットは、磁気プランジャ要素が一体化された貯蔵試薬ポーチと、試料処理用試薬チャンバと、弁を通る磁気ビーズの動きを制御する非磁気プランジャを特徴とする磁気旋回ロッカ弁と、磁気ビーズ移動用固定磁気要素を含む磁気プランジャを含む磁気制御弁と、を含む、
マイクロ流体デバイス。
〔付記25〕
前記1つ以上のアクチュエータ要素は、前記マイクロ流体デバイスの下及び/又は上を摺動するように構成されている、付記24に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記26〕
前記アクチュエータ要素は、モータ、ぜんまい、手回しクランク、手で押すこと、及び直線ソレノイドアクチュエータから成る群から選択される方法で動かされる、付記24~25のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記27〕
反応チャンバに組み込まれた磁気プランジャ要素と一列に並ぶ試薬ポーチを含むマイクロ流体デバイスであって、前記磁気プランジャ要素は、磁界に引き寄せられると、前記試薬ポーチの易壊性封止材を破り、前記試薬ポーチ内に入り、前記試薬ポーチ内の試薬を前記反応チャンバに押し出すように構成されている、マイクロ流体デバイス。
〔付記28〕
前記磁気プランジャ要素は、流体入口と前記試薬ポーチとの間に位置し、更に、前記磁気要素はノッチを有し、前記ノッチは、ガイドとして働き、前記反応チャンバへの流体の流れを、前記ガイドノッチを通るように制限し、前記ガイドノッチは、前記磁気要素プランジャがその最も高い位置に達したときに前記反応チャンバへの流体の流れが閉じられるように構成されている、付記27に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記29〕
複数の部分的にトラップされた磁気要素が回転シャフト内部に収容されているアクチュエータ要素であって、前記回転シャフトはスリーブ内で複数の磁石トラップを有するように構成されている、前記アクチュエータ要素と、
複数の、付記13~16のいずれか一項に記載の試薬定量供給装置と、
混合チャンバと、
混合チャンバ磁石と、
を含むマイクロ流体デバイス。
〔付記30〕
両磁極が前記回転シャフトの円周上にあることによって、前記シャフトが回転するにつれて、混合チャンバ磁石を高い周波数で引き寄せたり斥けたりするように構成された固定永久磁石を更に含む、付記29に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記31〕
前記回転シャフトが回転するにつれて、第1の試薬定量供給装置が第1の部分的にトラップされた磁気要素と一列に並び、これによって、前記第1の部分的にトラップされた磁石は前記回転シャフトから外に出て前記スリーブの第1の磁石トラップに入り、これによって、前記磁気要素を引き寄せて、前記第1の試薬定量供給装置の前記ポーチの前記易壊性封止材を破ることが可能になるように構成されている、付記29~30のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記32〕
前記回転シャフトが回転し続けるにつれて、第2の試薬定量供給装置が第2の部分的にトラップされた磁気要素と一列に並び、これによって、前記第2の部分的にトラップされた磁石は前記回転シャフトから外に出て前記スリーブの第2の磁石トラップに入り、これによって、前記磁気要素を引き寄せて、前記第2の試薬定量供給装置の前記ポーチの前記易壊性封止材を破ることが可能になるように構成されている、付記31に記載のマイクロ流体デバイス。
〔付記33〕
貯蔵試薬の定量供給が完了した後に、前記回転シャフトが高RPMで回転して混合を有効にすることが可能であり、これは、前記シャフト内の前記固定永久磁石が、高い周波数で交番する磁極を前記混合磁石に対して差し出すようにすることによって可能であるように構成されている、付記32に記載のマイクロ流体デバイス。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
図1A】サンプルツーアンサーマイクロ流体デバイスの一実施形態の側面図であり、ロッカアームのアクチュエーション前の様子を示す図である。
図1B】サンプルツーアンサーマイクロ流体デバイスの上記実施形態の側面図であり、ロッカアームのアクチュエーション後の様子を示す図である。
図2】一例示的サンプルツーアンサーマイクロ流体デバイスの斜視図である。
図3】試料分析機能を有する一例示的マイクロ流体デバイスのブロック図である。
図4】回転ポート設計を使用した一例示的マイクロ流体デバイスの一実施形態の上面図である。
図5】試薬定量供給装置(RDU)の断面図であり、図5Aは、試薬ポーチ内の磁気式破壊要素を示す図であり、図5Bは、マイクロ流体デバイス内の、易壊性封止材を破裂させる鋭利物体を示す図である。
図6】磁気要素プランジャによって破裂する試薬ポーチを示す図である。
図7】回転シャフトによる磁気式混合要素の一実施形態を示す図である。図7Aは、永久磁石を有する回転シャフトを示す図であり、永久磁石は回転シャフトの円周上で軸方向及び半径方向に配列され、磁極が交互になっている。図7Bは、回転シャフトがその近傍にある多チャンバ流体混合システムを示す図である。
図8】易壊性封止材の破裂箇所を制御する為の拘束された磁気式破壊要素を含む例示的RDU用試薬ポーチの上面図及びAA断面図である。
図9】一例示的試料処理用マイクロ流体デバイスを示す図である。図9Aは、直線アクチュエータ要素の上面図であり、図9Bは、直線アクチュエータ要素のAA断面図であり、図9Cは、マイクロ流体カセットの上面図である。
図10A】乃至
図10F】アクチュエータ要素がマイクロ流体カセットの下を摺動していく試料処理シーケンスの様々な過程を示す図である。
図11A】乃至
図11F】直線アクチュエータ要素の様々な実施例を示す図である。
図12A】乃至
図12D】固定磁気要素と部分的にトラップされた磁気要素との組み合わせを有するアクチュエータ要素を含むマイクロ流体試料処理デバイスの実施例を示す図である。
図13】一例示的マイクロ流体デバイスの断面図であり、図13Aは、反応チャンバに組み込まれた磁気プランジャ要素を示す図であり、図13Bは、磁気プランジャ要素が磁界に引き寄せられて、易壊性封止材を破り、試薬ポーチの内容物を反応チャンバに押し出す様子を示す図である。
図14】一例示的マイクロ流体デバイスの断面図であり、図14Aは、反応チャンバに組み込まれたノッチ付き磁気プランジャ要素を示す図であり、図14Bは、ノッチ付き磁気プランジャ要素が磁界に引き寄せられて、易壊性封止材を破り、試薬ポーチの内容物を反応チャンバに押し出す様子を示す図であり、図14Cは、試薬ポーチの試薬が定量供給された後にノッチ付き磁気プランジャ要素が流体導管の入口ポートを閉じ、ラチェット要素が、外部磁界がなくなっても磁気プランジャ要素を永続的封止位置に機械的に保持する様子を示す図である。
図15】部分的にトラップされた磁気要素と固定磁気要素とが回転シャフト内に収容された回転シャフトアクチュエータ要素を含む試料処理システムの一実施形態を示す図である。
図16A】乃至
図16D】回転シャフトアクチュエータ要素がマイクロ流体デバイスに対して回転していく試料処理シーケンスの様々な過程を示す図である。
図17A】乃至
図17C】外部磁界がなくなっても磁気プランジャ要素を永続的封止位置に機械的に保持する別の非限定的な実施形態を示す図である。
図18A】乃至
図18B】トラック上を動く磁石を含むアクチュエータ要素を含む試料処理システムの一実施形態を示す図である。
図19A】乃至
図19C】回転アクチュエータ要素の様々な実施例を示す図である。
図20】非磁気プランジャ要素を有する一例示的磁気旋回ロッカ弁を示す図である。図20A及び図20Bは、旋回ロッカ弁の幾何学的形状の2つの非限定的な実施形態の上面図である。図20Cは、ロッカが磁界によって作動して、非磁気プランジャがダイヤフラム弁をへこませて流れを止める過程を示す図である。
図21】一体化された磁気プランジャ要素を有するダイヤフラム弁又はピンチ弁を示す図である。図21Aは、磁界「M」が弁の近傍にないときの開状態の弁を示す図である。図21Bは、磁界「M」が弁の近傍にあるときの閉状態の弁を示す図である。
図22】磁気プランジャ要素の摺動運動及び圧延運動により試薬ポーチから試薬を絞り出すRDUを示す図である。図22Aは、摺動する平面磁気要素を示す図である。図22Bは、圧延シリンダ磁気要素を示す図である。図22C及び図22Dは、試薬ポーチを空にする様子を示す図である。
図23A】乃至
図23D】アクチュエータ要素の上面図及びAA断面図と、絞り要素を有するマイクロ流体カセットの上面図及びBB断面図と、絞り要素が直線アクチュエータ要素に引きずられて流体を次の反応チャンバに押し出す各過程と、をそれぞれ示す図である。
図24】流体ウェル構成と、貯蔵試薬を定量供給して油-水流体回路を形成する原理の概略を示す図である。
図25A】乃至
図25C】流体ウェル、流体導管、貯蔵液体試薬リザーバ、及び弁を含む、磁気ビーズによる試料調製の為の一例示的マイクロ流体カートリッジの概略を示す図である。
図26A直線アクチュエーションによる、流体ウェル間での磁気ビーズのキャプチャ、再懸濁、及び移動の原理を示す為の、アクチュエータ要素に対するマイクロ流体カートリッジの位置の過程を示す図である。
図26B】固定永久磁石を含む上部及び下部回転アクチュエータ要素が一体化された一例示的マイクロ流体デバイスにおける、磁気ビーズによる試料調製の原理を示す図である。
図26C】乃至
図26I】直線アクチュエーションによる、流体ウェル間での磁気ビーズのキャプチャ、再懸濁、及び移動の原理を示す為の、アクチュエータ要素に対するマイクロ流体カートリッジの位置の様々な過程を示す図である。
図27A】乃至
図27G】マイクロ流体デバイスにおける、磁気ビーズによる試料調製の原理を示す、上部及び下部アクチュエータ要素を有するマイクロ流体デバイスの断面図である。マイクロ流体デバイスは、油相を介して互いに接続された流体ウェルを含む。上部及び下部アクチュエータ要素は、所定のシーケンスでオン又はオフにされることが可能な電磁石を有する。マイクロ流体デバイスは2つのアクチュエータ要素の間を動く。
図28】マイクロ流体カートリッジ及びアクチュエータ要素を示す、マイクロ流体デバイスの斜視図である。マイクロ流体カートリッジは、アクチュエータ要素との間を摺動する。
図29A】乃至
図29E】磁石が運動経路に沿って動き続ける際に、マイクロ流体デバイスの流体ウェル内の突起部をバッフルとして使用して磁気ビーズをウェルに拘束する原理を示す図である。
図30A】乃至
図30B】アクチュエートされるランセットを使用して、マイクロ流体デバイス上の流体を流体ウェルからラテラルフローストリップに移す原理を示す図である。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの永久磁石を有する1つ以上のアクチュエータ要素であって、前記少なくとも2つの永久磁石は、前記少なくとも2つの永久磁石がアッセイの連続的な段階を実行するように、前記1つ以上のアクチュエータ要素上に空間的に配置されている、前記1つ以上のアクチュエータ要素と、
複数の流体ウェルを有するマイクロ流体カートリッジであって、前記複数の流体ウェルの少なくとも1つが磁性粒子を受容するように適合されている、前記マイクロ流体カートリッジとを備え、
前記マイクロ流体カートリッジは、前記磁石が前記マイクロ流体カートリッジと相互作用してアッセイの連続的な段階実行するように、前記1つ以上のアクチュエータ要素に十分に近接して配置されており、
前記少なくとも1つの永久磁石は、前記磁性粒子を捕捉して流体ウェル間で移動させるように適合されている、
マイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項2】
前記1つ以上のアクチュエータ要素は、円形状であり、中心軸を中心とした回転に適合している、請求項1に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項3】
ヒータ、ヒートシンク、突起部、又はそれらの組み合わせ、の1つ以上を更に有する、請求項1に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項4】
前記マイクロ流体カートリッジは、2つのアクチュエータ要素の間に配置される、請求項1に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項5】
前記マイクロ流体カートリッジ及び前記2つのアクチュエータ要素は、円形状であり、中心軸を中心とした回転に適合している、請求項4に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項6】
前記マイクロ流体カートリッジ及び前記2つのアクチュエータ要素は、直線運動に適合している、請求項4に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項7】
1つのアクチュエータ要素と、1つのマイクロ流体カートリッジとを備える、請求項1に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項8】
前記1つのアクチュエータ要素と、前記1つのマイクロ流体カートリッジは、固定されている、請求項7に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項9】
前記マイクロ流体カートリッジ及び前記1つのアクチュエータ要素は、円形状であり、中心軸を中心とした回転に適合している、請求項7に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項10】
前記マイクロ流体カートリッジ及び前記1つのアクチュエータ要素は、直線運動に適合している、請求項7に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項11】
前記マイクロ流体カートリッジは、前記複数の流体ウェルに接続された1つ以上の油充填済み流体導管を更に備え、前記流体導管は、交互にオフセットされ、前記磁性粒子を後続の磁石相互作用まで前記流体ウェル内に捕捉する、請求項1に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも2つの永久磁石は、オフセットされている、請求項1に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項13】
前記マイクロ流体カートリッジは、1つ以上の試薬供給ユニットを更に備える、請求項1に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項14】
前記複数の流体ウェルは、二次流体導管によって前記1つ以上の試薬供給ユニットに接続されている、請求項13に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項15】
前記1つ以上の試薬供給ユニットは、混和性液体、不混和性液体、又はそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項16】
少なくとも第1の試薬供給ユニット及び第2の試薬供給ユニットを有し、前記第1の試薬供給ユニットは、一次導管によって前記1つ以上の流体ウェルに接続され、前記第2の試薬供給ユニットは、前記二次流体導管によって前記1つ以上の流体ウェルに接続されている、請求項14に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項17】
前記第1の試薬供給は、混和性液体、不混和性液体、又はそれらの組み合わせで満たされており、請求項16に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項18】
前記第2の試薬供給ユニット及び前記二次流体導管は、混和性液体、不混和性液体、又はそれらの組み合わせで充填されており、前記1つ以上の流体ウェルは、前記混和性液体で部分的に満たされている、請求項16に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項19】
前記1つ以上の試薬供給ユニットは、液体で部分的に満たされている、請求項13に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項20】
前記第1の試薬供給ユニットは、前記一次導管内及び前記1つ以上の流体ウェル内に前記非混和性液体を放出するように適合され、前記不混和性液体は、前記1つ以上の流体ウェル内に存在する前記混和性液体と重なる、請求項18に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項21】
前記不混和性液体は、油を含む、請求項20に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項22】
前記混和性液体は、緩衝液中の磁性粒子を含む、請求項20に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項23】
前記1つ以上の流体ウェル及び/又は前記二次導管は、凍結乾燥試薬を含む、請求項14に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項24】
少なくとも1つの突起部、少なくとも1つのヒータ、及び少なくとも1つのヒートシンクを更に備え、前記少なくとも2つの永久磁石、前記少なくとも1つの突起部、及び前記少なくとも1つのヒータは、前記少なくとも2つの永久磁石、前記少なくとも1つの突起部、及び前記少なくとも1つのヒータがアッセイの連続的な段階を実行するように、前記1つ以上のアクチュエータ要素上に空間的に配置されている、前記1つ以上のアクチュエータ要素上に空間的に配置されている、請求項19に記載のマイクロ流体試料処理デバイス。
【請求項25】
生物試料を調整方法であって、
磁性粒子を受容するように適合されている少なくとも1つの流体ウェルと、貯蔵された試薬を含む少なくとも1つの試薬パウチと、を有するマイクロ流体カートリッジと、少なくとも1つの磁石と、少なくとも1つの突起部と、を有する1つ以上のアクチュエータ要素と、少なくとも1つのヒータと、少なくとも1つのヒートシンクと、を備えるマイクロ流体診断デバイスを提供する工程であって、前記少なくとも1つの磁石及び前記少なくとも1つの突起部は、前記少なくとも1つの磁石及び前記少なくとも1つの突起部がアッセイの連続的な段階を実行するように、前記1つ以上のアクチュエータ要素上に空間的に配置されている工程と、
前記マイクロ流体カートリッジに生物試料を導入し、前記生物試料から対象検体を分離する工程と、
前記対象検体を前記磁性粒子に結合させる工程と、
前記試薬パウチに前記少なくとも1つの突起部によって加えられる力によって、前記少なくとも1つの試薬パウチから前記貯蔵された試薬を破裂させて放出する工程と、
前記1つ以上のアクチュエータ要素及び前記磁石の移動により、前記対象検体に結合された前記磁性粒子を流体ウェル間で移動させる工程と、
を含む方法。
【外国語明細書】