(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026308
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】抗ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原結合性タンパク質およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240220BHJP
C07K 16/08 20060101ALI20240220BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240220BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240220BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240220BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240220BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240220BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240220BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240220BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240220BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20240220BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240220BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/08 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 S
A61K39/395 T
A61P31/20
A61P11/04
A61P15/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K45/00
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206822
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2019571685の分割
【原出願日】2018-06-27
(31)【優先権主張番号】62/525,937
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ケビン エー. ブレイ
(72)【発明者】
【氏名】フランク デルフィーノ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー シー. フランクリン
(72)【発明者】
【氏名】エレナ エス. ガルノバ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ アール. カーシュナー
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス マクドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム オルソン
(72)【発明者】
【氏名】ギャビン サーストン
(57)【要約】
【課題】抗ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原結合性タンパク質およびその使用方法の提供。
【解決手段】本発明は、HLAによりディスプレイされるヒトパピローマウイルス(HPV)ペプチドに特異的に結合する抗原結合性タンパク質、ならびにこれらの結合性タンパク質を使用する治療方法および診断方法を提供する。HPV-6、HPV-11、HPV-16およびHPV-18亜型の主要なカプシドタンパク質であるHPV L1およびL2を標的とするワクチンが感染を防止するために開発されているが、そのようなワクチンでは、確立された病変を有する対象を処置することはできないという課題が存在する。本発明は、このような従来技術の課題を解決する手段を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に明白に組み込まれる、2017年6月28日に出願された米国仮出願第62/525,937号の優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に出願されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2018年6月27日に作成された前記ASCIIコピーの名称は10355WO01_seqlisting.txtであり、サイズは253,600バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、HLAによりディスプレイされるヒトパピローマウイルス(HPV)ペプチドに特異的に結合する抗原結合性タンパク質、ならびにこれらの結合性タンパク質を使用する治療方法および診断方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、世界的で極めて一般的である、小さな、エンベロープを有さないDNAウイルスのグループである。HPVは、主に性的接触によって伝染し、大多数の人が性行為の開始直後にHPVに感染する。
【0005】
HPVには170種を超える型が存在し、その一部は、疣贅または良性乳頭腫を引き起こす可能性があり、その他の、そのうちの少なくとも13種は、子宮頸がん、肛門生殖器のがん(肛門、陰茎、膣および外陰部のがん)、頭部/頸部がん、ならびに、喉の奥、舌の根元、および扁桃を含めた中咽頭がんを含めたがんを引き起こす可能性がある(高リスク型HPVとしても公知)。実際に、HPVは、全ての頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)の20~40%および子宮頸がんの100%に存在する。
【0006】
子宮頸がんは、発展途上地域に暮らす女性において2番目に多いがんであり、2012年には新規の症例が445,000件(世界中の新規の症例の84%)であったと推定される。2012年には、およそ270,000名の女性が子宮頸がんにより死亡しており、これらの死亡の85%よりも多くが、低所得国および中所得国において生じている。
【0007】
全ての子宮頸がんおよび前がん性子宮頸部病変のおよそ70%が、2つのHPV型(16および18)により引き起こされる。HPV16または18などの高リスクHPV亜型に持続感染した際のがんの発症は、2種のウイルス腫瘍性タンパク質、E6およびE7の発現に主に起因し、これらのタンパク質は、病変において持続的に発現され、MHCクラスIによって細胞表面に提示されるが、正常な細胞では発現されない。E6およびE7は、腫瘍抑制因子p53およびRbをプロテアソーム依存的な様式で分解することにより、ゲノムの不安定性および細胞形質転換を促進する。腫瘍は最初の細胞不死化事象の数年後に生じ、形質転換された表現型の維持、ならびに細胞成長停止および/またはアポトーシスの防止にはE6およびE7の持続的発現が必要とされる(McLaughlin-Drubin M.E. &
Miinger K., Virology (2009) 384: 335-344)。
【0008】
HPV-6、HPV-11、HPV-16およびHPV-18亜型の主要なカプシドタンパク質であるHPV L1およびL2を標的とするワクチンが感染を防止するために開発されているが、そのようなワクチンでは、確立された病変を有する対象を処置することはできない。したがって、子宮頸がんを有する対象の処置には、外科手術、照射療法、および化学療法などの高度に侵襲的で不健全な従来の手法が依然として使用されている。さらに、そのような処置では、初期子宮頸がんを有する対象に対しては利益がもたらされるが、進行したまたは再発性子宮頸がんを有する患者には有用性が限られている。
したがって、高い特異性でHPVを標的とするため、ならびにHPVによって引き起こされる子宮頸がんおよび他のがんを処置するための新しい治療戦略について、まだ対処されていない要求が当技術分野において存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】McLaughlin-Drubin M.E. & Miinger K., Virology (2009) 384: 335-344
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本発明は、HLAによりディスプレイされるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HLA-A2:HPV16E7)のコンフォメーションエピトープに特異的に結合する抗原結合性タンパク質を提供する。本発明の抗原結合性タンパク質は、HLAによりディスプレイされるHPV16E7に高度の特異性で結合し、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれよりも多くのアミノ酸が異なる、HLAによりディスプレイされるペプチドには結合しない。本発明の抗原結合性タンパク質により、HPV16E7を発現しているがん細胞などの、HPV16E7ペプチド提示細胞(すなわち、MHC分子、例えばHLA-A2と結合したHPV16E7ペプチドをその表面上に提示している細胞)の特異的標的化、および、一部の実施形態では、例えば、そのような細胞のT細胞媒介性死滅を刺激するためにT細胞活性化を刺激することが可能になる。さらに、検出可能部分と融合させた場合には、本発明の抗原結合性タンパク質により、HPV16E7陽性疾患または障害を、循環HPV16E7レベルよりも妥当な疾患進行の尺度であるHPV16E7ペプチド提示細胞の数および分布の変化に対して高感度で診断および予後判定することが可能になる。
【0011】
本発明の抗原結合性タンパク質は、全長抗体(例えば、IgG1抗体またはIgG4抗体)などの抗体の場合もあり、抗体の抗原結合性部分(例えば、Fab、F(ab’)2またはscFv断片)のみを含む場合もあり、また、機能性に影響を及ぼすため、例えば、残留するエフェクター機能を排除するために改変することができる(Reddy et al.,
2000, J. Immunol. 164: 1925-1933)。一部の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質は、抗体またはその抗原結合性断片であり得る。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、二重特異性であり得る。
【0012】
第1の態様では、本発明は、HPV16E7のアミノ酸残基11~19または82~90を含む、HLAによりディスプレイされるペプチドなどの、HLAによりディスプレイされるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチドのコンフォメーションエピトープに特異的に結合する単離された組換え抗原結合性タンパク質を提供する。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、抗体である。一部の実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体である。
【0013】
例示的な本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質が本明細書の表1および2に列挙されている。表1には、例示的な抗HLA-A2:HPV16E7抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、ならびに軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列識別子が記載されている。表2には、例示的な抗HLA-A2:HPV16E7抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3の核酸配列識別子が記載されている。
【0014】
本発明は、表1に列挙されているHCVRアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含むHCVRを含む抗原結合性タンパク質を提供する。
【0015】
本発明は、表1に列挙されているLCVRアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む抗原結合性タンパク質も提供する。
【0016】
本発明は、表1に列挙されているHCVRアミノ酸配列のいずれかと表1に列挙されているLCVRアミノ酸配列のいずれかとの対を含むHCVRおよびLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む抗原結合性タンパク質も提供する。ある特定の実施形態によると、本発明は、表1に列挙されている例示的な抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質のいずれかに含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗原結合性タンパク質を提供する。ある特定の実施形態では、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/202、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、378/386、394/402、410/418、426/434、442/450、458/466、474/482、490/498、506/514、および522/530からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号2/10(例えば、H4sH17364N)、34/42(例えば、H4sH17670P)、82/90(例えば、H4sH17675P)、194/202(例えば、H4sH17930N2)、282/290(例えば、H4sH21064P)、および506/514(例えば、H4sH17363N)のうちの1つから選択される。
【0017】
ある特定の実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質であって、前記HCVRが、5つ以下のアミノ酸置換を有する表1に列挙されているアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、5つ以下のアミノ酸置換を有する表1に列挙されているアミノ酸配列を含む、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を提供する。例えば、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質であって、前記HCVRが、5つ以下のアミノ酸置換を有する配列番号194のアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、5つ以下のアミノ酸置換を有する配列番号202のアミノ酸配列を含む、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を提供する。別の例示的な実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質であって、前記HCVRが、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号194のアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号202のアミノ酸配列を含む、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を提供する。
【0018】
本発明は、表1に列挙されているHCDR1アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む抗原結合性タンパク質も提供する。
【0019】
本発明は、表1に列挙されているHCDR2アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む抗原結合性タンパク質も提供する。
【0020】
本発明は、表1に列挙されているHCDR3アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む抗原結合性タンパク質も提供する。
【0021】
本発明は、表1に列挙されているLCDR1アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む抗原結合性タンパク質も提供する。
【0022】
本発明は、表1に列挙されているLCDR2アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む抗原結合性タンパク質も提供する。
【0023】
本発明は、表1に列挙されているLCDR3アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む抗原結合性タンパク質も提供する。
【0024】
本発明は、表1に列挙されているHCDR3アミノ酸配列のいずれかと表1に列挙されているLCDR3アミノ酸配列のいずれかとの対を含むHCDR3およびLCDR3アミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む抗原結合性タンパク質も提供する。ある特定の実施形態によると、本発明は、表1に列挙されている例示的な抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質のいずれかに含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む抗原結合性タンパク質を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号8/16(例えば、H4sH17364N)、40/48(例えば、H4sH17670P)、88/96(例えば、H4sH17675P)、200/208(例えば、H4sH17930N2)、288/296(例えば、H4sH21064P)、および512/520(例えば、H4sH17363N)からなる群から選択される。
【0025】
本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗原結合性タンパク質であって、前記HCVRが、表1に列挙されているアミノ酸配列と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むHCDR1、表1に列挙されているアミノ酸配列と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むHCDR2、および表1に列挙されているアミノ酸配列と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、抗原結合性タンパク質も提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗原結合性タンパク質であって、前記LCVRが、表1に列挙されているアミノ酸配列と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むLCDR1、表1に列挙されているアミノ酸配列と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むLCDR2、および表1に列挙されているアミノ酸配列と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、抗原結合性タンパク質を提供する。例えば、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質であって、前記HCVRが、配列番号196のアミノ酸配列または配列番号196と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号198のアミノ酸配列または配列番号198と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むHCDR2、および配列番号200のアミノ酸配列または配列番号200と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を提供する。別の例示的な実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗原結合性タンパク質であって、前記LCVRが、配列番号204のアミノ酸配列または配列番号204と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号206のアミノ酸配列または配列番号206と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号208のアミノ酸配列または配列番号208と1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、抗原結合性タンパク質を提供する。
【0026】
本発明は、表1に列挙されている例示的な抗原結合性タンパク質のいずれかに含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む抗原結合性タンパク質も提供する。ある特定の実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号4-6-8-12-14-16(例えば、H4sH17364N)、36-38-40-44-46-48(例えば、H4sH17670P)、84-86-88-92-94-96(例えば、H4sH17675P)、196-198-200-204-206-208(例えば、H4sH17930N2)、284-286-288-292-294-296(例えば、H4sH21064P)、および508-510-512-516-518-520(例えば、H4sH17363N)からなる群から選択される。
【0027】
関連する実施形態では、本発明は、表1に列挙されている例示的な抗原結合性タンパク質のいずれかによって定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対に含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む抗原結合性タンパク質を提供する。例えば、本発明は、配列番号2/10(例えば、H4sH17364N)、34/42(例えば、H4sH17670P)、82/90(例えば、H4sH17675P)、194/202(例えば、H4sH17930N2)、282/290(例えば、H4sH21064P)、および506/514(例えば、H4sH17363N)からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対に含有されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む抗原結合性タンパク質を含む。
【0028】
HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技法は、当技術分野で周知であり、本明細書に開示される指定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するために使用することができる。CDRの境界を同定するために使用することができる例示的な慣習としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が挙げられる。一般に述べると、Kabat定義は配列変動性に基づき、Chothia定義は構造的ループ領域の場所に基づき、AbM定義はKabat手法とChothia手法の折衷である。例えば、Kabat, "Sequences of Proteins of Immunological Interest," National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991);Al-Lazikani et al., J. Mol. Biol. 273: 927-948 (1997);およびMartin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 9268-9272 (1989)を参照されたい。公共のデータベースも抗原結合性タンパク質内のCDR配列を同定す
るために利用可能である。
【0029】
本発明は、改変されたグリコシル化パターンを有する抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む。一部の実施形態では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための改変、または、例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増大させるために、オリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠く抗体が有用であり得る(Shield et al. (2002) JBC 277: 26733を参照されたい)。他の適用では、補体依存性細胞傷害
(CDC)を改変するためにガラクトシル化の改変を行うことができる。
【0030】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質は、表1に列挙されているHCVRアミノ酸配列のいずれかと表1に列挙されているLCVRアミノ酸配列のいずれかとの対を含むHCVRおよびLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含むモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、モノクローナル抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgMからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインおよびそのバリアントを含む。
【0031】
本発明は、表3に列挙されているHCアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片を提供する。
【0032】
本発明は、表3に列挙されているLCアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片も提供する。
【0033】
本発明は、表3に列挙されているHCアミノ酸配列のいずれかと表3に列挙されているLCアミノ酸配列のいずれかとの対を含むHCおよびLCアミノ酸配列対(HC/LC)を含む抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態によると、本発明は、表3に列挙されている例示的な抗PD-1抗体のいずれかに含有されるHC/LCアミノ酸配列対を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HC/LCアミノ酸配列対は、配列番号578/579、580/581、582/583、584/585、586/587、588/589、590/591、および592/593からなる群から選択される。
【0034】
一態様では、本発明は、HLA-ペプチド複合体に結合する抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片であって、HLA-ペプチド複合体に含まれるペプチドのアミノ酸残基の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%と接触する、抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片は、HLA-ペプチド複合体に含まれるペプチドのアミノ酸残基の全てに「わたる」またはそれと接触する。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片は、HLA-ペプチド複合体に高い親和性および特異性で結合し、ここで、抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片は、ディスプレイされたペプチドの全長と接触する。「接触」とは、本明細書で使用される場合、直接または水に媒介される水素結合、電荷-電荷相互作用、または疎水性/ファンデルワールス相互作用を含む。一実施形態では、抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片は、HLA-A2-HPV16E7 11-19ペプチド複合体に結合し、ここで、抗原結合性タンパク質は、ペプチド11~19(配列番号538)の10個のアミノ酸残基のうち少なくとも6個、およびHLA-A2に結合し、したがって、完全にHLA-A2-ペプチド複合体にわたる。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含み、ここで、HCVRおよびLCVRはそれぞれ、表1に列挙されているHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。一実施形態では、抗原結合性タンパク質は、完全ヒト抗原結合性タンパク質である。ある特定の実施形態では、完全ヒト抗原結合性タンパク質は、ファージディスプレイ法および技術を使用することでは得られない。一実施形態では、抗原結合性タンパク質は、IGKV1-39亜型の軽鎖可変領域を含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、本発明は、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドに結合する抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片であって、抗原結合性タンパク質が、配列番号538の1つまたは複数のアミノ酸に結合する、抗原結合性タンパク質またはその抗原性断片を提供する。一実施形態では、抗原結合性タンパク質は、配列番号538の少なくとも6つのアミノ酸に結合する。一実施形態では、抗原結合性タンパク質は、配列番号538のY11、D14、L15、P17およびE18からなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸に結合する。
【0036】
ある特定の実施形態では、本発明は、HLA-A2により提示されるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HPV16E7ペプチド)のコンフォメーションエピトープに特異的に結合する抗原結合性タンパク質であって、コンフォメーションエピトープが、配列番号538の1つまたは複数のアミノ酸を含む、抗原結合性タンパク質を提供する。ある特定の実施形態では、コンフォメーションエピトープは、配列番号538のY11、D14、L15、P17およびE18からなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む。
【0037】
本発明は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む抗原結合性タンパク質とHLA-A2:HPV16E7との特異的結合について競合する抗原結合性タンパク質であって、HCVRおよびLCVRがそれぞれ、表1に列挙されているHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する、抗原結合性タンパク質も提供する。
【0038】
本発明は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗原結合性タンパク質とHLA-A2:HPV16E7との結合について交差競合する抗原結合性タンパク質であって、HCVRおよびLCVRがそれぞれ、表1に列挙されているHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する、抗原結合性タンパク質も提供する。
【0039】
本発明は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗原結合性タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合性タンパク質であって、HCVRおよびLCVRがそれぞれ、表1に列挙されているHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する、抗原結合性タンパク質も提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗原結合性タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合性タンパク質であって、HCVRが、配列番号2、34、82、194、282および504からなる群から選択され、LCVRが、配列番号10、42、90、202、290および514からなる群から選択される、抗原結合性タンパク質を提供する。
【0040】
一実施形態では、本発明は、HLA-A2により提示されるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HPV16E7ペプチド)のコンフォメーションエピトープに特異的に結合する組換え型の単離された抗原結合性タンパク質であって、(a)25℃における表面プラズモン共鳴アッセイで測定されると、単量体HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドに約20nM未満の結合解離平衡定数(KD)で結合する;(b)25℃における表面プラズモン共鳴アッセイで測定されると、単量体HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドに約25nM未満の結合解離平衡定数(KD)で結合する;(c)発光アッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に約6nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には結合しない;(d)発光アッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に約1nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には実質的に結合しない;(e)フローサイトメトリーアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に約30nM未満のEC50で結合する;(f)フローサイトメトリーアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に約75nM未満のEC50で結合する;および(g)コンフォメーションエピトープが、配列番号538の1つまたは複数のアミノ酸を含む、からなる群から選択される性質を有する、抗原結合性タンパク質を提供する。本明細書の他の箇所で開示されている通り、「オフターゲットペプチド」は、標的ペプチド(例えば、HPV16E7 11-19ペプチド)と1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれよりも多くのアミノ酸が異なるペプチドを指す。
【0041】
第2の態様では、本発明は、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質をコードする核酸分子を提供する。例えば、本発明は、表1に列挙されているHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0042】
本発明は、表1に列挙されているLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているLCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0043】
本発明は、表1に列挙されているHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCDR1核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0044】
本発明は、表1に列挙されているHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCDR2核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0045】
本発明は、表1に列挙されているHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCDR3核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0046】
本発明は、表1に列挙されているLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているLCDR1核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0047】
本発明は、表1に列挙されているLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているLCDR2核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0048】
本発明は、表1に列挙されているLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているLCDR3核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0049】
本発明は、HCVRをコードする核酸分子であって、HCVRが、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットが、表1に列挙されている例示的な抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質のいずれかによって定義される、核酸分子も提供する。
【0050】
本発明は、LCVRをコードする核酸分子であって、LCVRが、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットが、表1に列挙されている例示的な抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質のいずれかによって定義される、核酸分子も提供する。
【0051】
本発明は、HCVRおよびLCVRの両方をコードする核酸分子であって、HCVRが、表1に列挙されているHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、LCVRが、表1に列挙されているLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む、核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列、および、表2に列挙されているLCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。本発明のこの態様によるある特定の実施形態では、核酸分子はHCVRおよびLCVRをコードし、ここで、HCVRおよびLCVRはどちらも表1に列挙されている同じ抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質に由来する。
【0052】
本発明は、表3に列挙されている重鎖アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供する。本発明は、表3に列挙されている軽鎖アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する。
【0053】
本発明は、重鎖(HC)および軽鎖(LC)の両方をコードする核酸分子であって、HCが、表3に列挙されているHCアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、LCが、表3に列挙されているLCアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む、核酸分子も提供する。
【0054】
関連する態様では、本発明は、ポリペプチドを発現させることができる組換え発現ベクターであって、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む組換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上記の核酸分子、すなわち、表1に記載されているHCVR、LCVR、および/またはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。本発明は、ポリペプチドを発現させることができる組換え発現ベクターであって、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の重鎖および/または軽鎖を含む、組換え発現ベクターも提供する。例えば、本発明は、上記の核酸分子、すなわち、表2に記載されている重鎖または軽鎖配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。そのようなベクターが導入された宿主細胞、ならびに、宿主細胞を抗原結合性タンパク質の産生が可能になる条件下で培養し、そのように産生された抗原結合性タンパク質を回収することによって抗原結合性タンパク質を産生する方法も本発明の範囲内に含まれる。
【0055】
第3の態様では、本発明は、治療有効量の、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチド(例えば、HPV16E7のアミノ酸残基11~19または82~90を含むペプチド)のコンフォメーションエピトープに特異的に結合する組換え型の単離された抗原結合性タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。関連する態様では、本発明は、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と第2の治療剤の組合せである組成物を特徴とする。一実施形態では、第2の治療剤は、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と有利に組み合わせられる任意の作用剤である。抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と有利に組み合わせることができる例示的な作用剤としては、限定することなく、HPVに結合し、かつ/もしくはその複製もしくは感染をモジュレートする他の作用剤(他の抗体もしくはその抗原結合性断片などを含む)および/または免疫細胞活性化をモジュレートする作用剤が挙げられる。本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と組み合わせて使用することができる追加的な治療薬は本明細書の他の箇所で開示されている。
【0056】
第4の態様では、本発明は、HPV16E7陽性がんなどの、HPVに関連する疾患または障害を有する対象を処置するための方法を提供する。方法は、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質または本発明の医薬組成物を、それを必要とする対象に治療有効量で投与することを含む。処置される障害は、本明細書に提示される抗原結合性タンパク質および組成物によって改善される、好転する、阻害されるまたは防止される任意の疾患または状態である。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質(または医薬組成物)を第2の治療剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与する。第2の治療剤は、T細胞共阻害剤に対する抗体、腫瘍細胞抗原に対する抗体、T細胞受容体に対する抗体、ウイルス感染細胞上のエピトープに対する抗体、細胞傷害性薬剤、抗がん薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド)、化学療法剤、外科手術、放射線療法、免疫抑制剤および当技術分野で公知の任意の他の薬物または治療からなる群から選択することができる。ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、本発明の抗原結合性タンパク質に関連する副作用(複数可)が万一生じた場合には、そのようなあらゆる可能性のある副作用(複数可)を打ち消すまたは低減するのに役立つ作用剤であり得る。
【0057】
ある特定の実施形態では、本発明は、HPV関連がんの成長を抑制するための方法を提供する。例えば、本発明は、対象における原発腫瘍または転移性腫瘍に起因する腫瘍成長を抑制する方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、HPV関連がんを有する対象の生存(例えば、無増悪生存または全生存)を増強する方法を提供する。がんの例としては、これだけに限定されないが、頭頸部の扁平上皮細胞癌などの扁平上皮細胞癌、子宮頸がん、肛門生殖器のがん、中咽頭がんが挙げられる。
【0058】
ある特定の実施形態では、本発明は、確立された腫瘍の成長を阻害または抑制するための方法を提供する。方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の抗原結合性タンパク質を含む医薬組成物を投与することを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質を第2の治療剤と組み合わせて投与する。
【0059】
抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片は、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内投与することができる。抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片は、対象の体重1kg当たり約0.1mg~体重1kg当たり約100mgの用量で投与することができる。
【0060】
第5の態様では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離された核酸分子を提供する。CARは、HLA-A2により提示されるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HPV16E7ペプチド)のコンフォメーションエピトープ、例えば、HPV16E7のアミノ酸残基11~19または82~90に特異的に結合する細胞外結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。一実施形態では、細胞外結合性ドメインは、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性断片である。例示的な本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質は、本明細書に記載の抗原結合性タンパク質のいずれかである。
【0061】
例えば、ある特定の実施形態では、本発明のCARへの使用に適した抗原結合性タンパク質は、表1に列挙されている重鎖可変領域(HCVR)配列のいずれか1つに含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3);ならびに表1に列挙されている軽鎖可変領域(LCVR)配列のいずれか1つに含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。
【0062】
他の実施形態では、本発明のCARへの使用に適した抗原結合性タンパク質は、表1に列挙されているHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVR;および/または表1に列挙されているLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0063】
一部の実施形態では、本発明のCARへの使用に適した抗原結合性タンパク質は、(a)表1に列挙されているHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVR;および(b)表1に列挙されているLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0064】
一実施形態では、本発明のCARへの使用に適した抗原結合性タンパク質は、(a)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、220、236、252、268、284、300、316、332、348、364、380、396、412、428、444、460、476、492、508、および524からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;(b)配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366、382、398、414、430、446、462、478、494、510、および526からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;(c)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368、384、400、416、432、448、464、480、496、512、および528からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;(d)配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、228、244、260、276、292、308、324、340、356、372、388、404、420、436、452、468、484、500、516、および532からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;(e)配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、230、246、262、278、294、310、326、342、358、374、390、406、422、438、454、470、486、502、518、および534からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに(f)配列番号16.32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、232、248、264、280、296、312、328、344、360、376、392、408、424、440、456、472、488、504、520、および536からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインを含む。
【0065】
さらなる実施形態では、本発明のCARへの使用に適した抗原結合性タンパク質は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/202、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、378/386、394/402、410/418、426/434、442/450、458/466、474/482、490/498、506/514、および522/530からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対、例えば、配列番号2/10、34/42、82/90、194/202、282/290、および506/514からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0066】
一部の実施形態では、本発明のCARに使用するための単離された抗原結合性タンパク質は、scFvである。
【0067】
他の態様では、本発明は、単離されたCAR核酸分子を含むベクター;およびそのようなベクターを含む免疫エフェクター細胞を提供する。
【0068】
本発明のさらに他の態様では、HPV16E7陽性がん、例えば、扁平上皮細胞癌、例えば、子宮頸がん、頭頸部小細胞癌、肛門生殖器のがん、および中咽頭がんなどのHPVに関連する疾患または障害を有する対象を処置するための方法が提供される。方法は、本発明のCARを含む免疫エフェクター細胞の集団を対象に投与することを含む。
【0069】
一部の態様では、本発明は、例えば、対象または対象から得た試料中のHPV16E7陽性細胞を検出するための方法を提供する。方法は、検出可能部分を含む本発明の抗原結合性タンパク質を、対象から得た細胞試料などの細胞と接触させるか、または対象に投与し、検出可能部分の存在を検出することを含む。
【0070】
他の実施形態は、詳細な説明を精査することにより明らかになろう。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
HLA-A2により提示されるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HPV16E7ペプチド)のコンフォメーションエピトープに特異的に結合する単離された抗原結合性タンパク質であって、前記コンフォメーションエピトープが、Y11、D14、L15、P17およびE18からなる群から選択される配列番号537の1つまたは複数のアミノ酸を含む、単離された抗原結合性タンパク質。
(項目2)
(a)25℃における表面プラズモン共鳴アッセイで測定されると、単量体HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドに約20nM未満の結合解離平衡定数(KD)で結合する;
(b)25℃における表面プラズモン共鳴アッセイで測定されると、単量体HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドに約25nM未満の結合解離平衡定数(KD)で結合する;
(c)発光アッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に約6nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には結合しない;
(d)発光アッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に約1nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には実質的に結合しない;
(e)フローサイトメトリーアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に約30nM未満のEC50で結合する;および
(f)フローサイトメトリーアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に約75nM未満のEC50で結合する
からなる群から選択される性質を有する、項目1に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目3)
前記HPV16E7ペプチドが、YMLDLQPET(配列番号538)のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目4)
全長抗体、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、単鎖Fv(scFv)、T-ボディ構築物、またはCARである、項目1から3のいずれか一項に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目5)
ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である、項目1から4のいずれか一項に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目6)
表1に列挙されている重鎖可変領域(HCVR)配列のいずれか1つに含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3);ならびに表1に列挙されている軽鎖可変領域(LCVR)配列のいずれか1つに含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む、項目1から5のいずれか一項に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目7)
表1に列挙されているHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む、項目1から6のいずれか一項に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目8)
表1に列挙されているLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、項目1から7のいずれか一項に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目9)
(a)表1に列挙されているHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVR;および(b)表1に列挙されているLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、項目1から8のいずれか一項に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目10)
(a)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、220、236、252、268、284、300、316、332、348、364、380、396、412、428、444、460、476、492、508、および524からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;
(b)配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366、382、414、430、446、462、478、494、510、および526からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;
(c)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368、384、400、416、432、448、464、480、496、512、および528からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;
(d)配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、204、228、244、260、276、292、308、324、340、356、372、388、404、420、436、452、468、484、500、516、および532からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;
(e)配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、230、246、262、278、294、310、326、342、358、374、390、406、422、438、454、470、486、502、518、および534からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに
(f)配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、232、248、264、280、296、312、328、344、360、376、392、408、424、440、456、472、488、504、520、および536からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン
を含む、項目1から9のいずれか一項に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目11)
配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/202、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、378/386、394/402、410/418、426/434、442/450、458/466、474/482、490/498、506/514、および522/530からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目10に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目12)
配列番号2/10、34/42、82/90、194/202、282/290、および506/514からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目11に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目13)
項目11に記載の抗原結合性タンパク質と結合について競合する、単離された抗原結合性タンパク質。
(項目14)
項目11に記載の抗原結合性タンパク質と同じエピトープに結合する、単離された抗原結合性タンパク質。
(項目15)
検出可能部分を含む、項目1から14のいずれか一項に記載の単離された抗原結合性タンパク質。
(項目16)
項目1から15のいずれか一項に記載のHLA-A2:HPV16E7に結合する単離された抗原結合性タンパク質および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
(項目17)
項目1から15のいずれか一項に記載の抗原結合性タンパク質のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
(項目18)
項目1から15のいずれか一項に記載の抗原結合性タンパク質のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
(項目19)
項目17または18に記載のポリヌクレオチド分子を含むベクター。
(項目20)
項目19に記載のベクターを発現する細胞。
(項目21)
HPV16E7に関連する疾患または障害を有する対象を処置する方法であって、前記対象に、項目1から15のいずれか一項に記載の抗原結合性タンパク質または項目16に記載の医薬組成物を治療有効量で投与するステップを含み、それにより、前記対象を処置する、方法。
(項目22)
前記HPV16E7に関連する疾患または障害が、HPV関連がんである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記HPV関連がんが、扁平上皮細胞癌である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記HPV関連がんが、子宮頸がん、肛門生殖器のがん、頭頸部がん、または中咽頭がんである、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記抗原結合性タンパク質を第2の治療剤と組み合わせて前記対象に投与する、項目21から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記第2の治療剤が、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二重特異性抗体、抗酸化剤などの栄養補助剤、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、外科手術、放射線、NSAID、コルチコステロイド、抗HPVワクチン、および前記疾患または障害に付随する少なくとも1つの症状を好転させるために有用な任意の他の治療からなる群から選択される、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記抗原結合性タンパク質を皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内または頭蓋内投与する、項目21から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記抗原結合性タンパク質を、前記対象の体重1kg当たり約0.1mg~体重1kg当たり約100mgの用量で投与する、項目21から27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離された核酸分子であって、前記CARが、HLA-A2により提示されるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HPV16E7ペプチド)のコンフォメーションエピトープに特異的に結合する細胞外結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、単離された核酸分子。
(項目30)
前記細胞外結合性ドメインが、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質である、項目29に記載の単離された核酸分子。
(項目31)
前記単離された抗原結合性タンパク質が、表1に列挙されている重鎖可変領域(HCVR)配列のいずれか1つに含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3);ならびに表1に列挙されている軽鎖可変領域(LCVR)配列のいずれか1つに含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む、項目30に記載の単離された核酸分子。
(項目32)
前記単離された抗原結合性タンパク質が、表1に列挙されているHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む、項目30または31に記載の単離された核酸分子。
(項目33)
前記単離された抗原結合性タンパク質が、表1に列挙されているLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、項目30から32のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目34)
前記単離された抗原結合性タンパク質が、(a)表1に列挙されているHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVR;および(b)表1に列挙されているLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、項目30から33のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目35)
前記単離された抗原結合性タンパク質が、
(a)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、220、236、252、268、284、300、316、332、348、364、380、396、412、428、444、460、476、492、508、および524からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;
(b)配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366、382、414、430、446、462、478、494、510、および526からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;
(c)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368、384、400、416、432、448、464、480、496、512、および528からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;
(d)配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、204、228、244、260、276、292、308、324、340、356、372、388、404、420、436、452、468、484、500、516、および532からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;
(e)配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、230、246、262、278、294、310、326、342、358、374、390、406、422、438、454、470、486、502、518、および534からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに
(f)配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、232、248、264、280、296、312、328、344、360、376、392、408、424、440、456、472、488、504、520、および536からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン
を含む、項目30から34のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目36)
前記単離された抗原結合性タンパク質が、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/202、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、378/386、394/402、410/418、426/434、442/450、458/466、474/482、490/498、506/514、および522/530からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目30から35のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目37)
前記単離された抗原結合性タンパク質が、配列番号2/10、34/42、82/90、194/202、282/290、および506/514からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目30から32のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目38)
配列番号540、541、542、543、544、または545のいずれか1つを含む、項目30から37のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目39)
前記単離された抗原結合性タンパク質が、scFvである、項目30から38のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目40)
項目30から39のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
(項目41)
項目40に記載のベクターを含む、単離された免疫エフェクター細胞。
(項目42)
T-ボディである、項目41に記載の単離された免疫エフェクター細胞。
(項目43)
前記対象に項目41または42に記載の免疫エフェクター細胞を投与するステップを含む、HPVに関連する疾患または障害を有する対象を処置する方法。
(項目44)
前記HPVに関連する疾患または障害が、HPV関連がんである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記HPV関連がんが、扁平上皮細胞癌である、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記HPV関連がんが、子宮頸がん、肛門生殖器のがん、頭頸部がん、または中咽頭がんである、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記抗原結合性タンパク質を第2の治療剤と組み合わせて前記対象に投与する、項目43から46のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0071】
詳細な説明
本方法に関して記載する前に、記載されている特定の方法および実験条件は変動し得るので、本発明はそのような方法および条件に限定されないことが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書において使用される用語法は、特定の実施形態を説明する目的のものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0072】
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似した、またはそれと等しい任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料がここに記載されている。本明細書で言及されている全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
「ヒトパピローマウイルス」(「HPV」)という用語は、皮膚または粘膜細胞に感染する小さな、エンベロープを有さないデオキシリボ核酸(DNA)ウイルスを指す。環状の二本鎖ウイルスゲノムはおよそ8kbの長さである。ゲノムは、ウイルスの複製に関与する6つの初期タンパク質、ならびに、ウイルスの構造タンパク質である2つの後期タンパク質、L1およびL2をコードする。170種を超えるHPVの型が同定されており、これらは数字で示される。HPV-5などの一部のHPV型は、臨床症状を全く顕在化させることなく個体の寿命にわたって持続する感染を確立し得る。HPV1型および2型は、一部の感染個体において疣贅を引き起こす可能性がある。HPV6型および11型は、生殖器疣贅および呼吸器乳頭腫症を引き起こす可能性がある。HPV16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型、73型、および82型は、発がん性であると考えられる。
【0074】
「HPV16E7」という用語は、E7で示されるHPV16型初期遺伝子、および、当該遺伝子から翻訳されるタンパク質を指す。
【0075】
全長HPV16E7のアミノ酸配列はGenBankにおいて受託番号NP_041326.1(配列番号537)で提供される。「HPV16E7」という用語は、組換えHPV16E7またはその断片を含む。この用語は、例えば、ヒスチジンタグ、マウスもしくはヒトFc、またはROR1などのシグナル配列とカップリングしたHPV16E7またはその断片も包含する。ある特定の実施形態では、この用語は、HLA-A2に関しては、HLA-A2と連結した、またはHLA-A2によってディスプレイされるHPV16E7またはその断片を含む。
【0076】
「HLA」という用語は、ヒトにおける主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)タンパク質をコードする遺伝子複合体であるヒト白血球抗原(HLA)系または複合体を指す。これらの細胞表面タンパク質は、ヒトにおける免疫系の制御に関与する。MHCクラスI(A、B、およびC)に対応するHLAは、細胞の内側からペプチドを提示する。
【0077】
「HLA-A」という用語は、HLA-A遺伝子座によってコードされるヒト白血球抗原(HLA)の群を指す。HLA-Aは、ヒトMHCクラスI細胞表面受容体の3つの主要な型のうちの1つである。当該受容体は、ヘテロ二量体であり、重鎖α鎖およびより小さなβ鎖で構成される。α鎖はバリアントHLA-A遺伝子によってコードされ、β鎖(β2-ミクログロブリン)は不変β2ミクログロブリン分子である。
【0078】
「HLA-A2」という用語は、HLA-A遺伝子座における1つの特定のクラスI主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)対立遺伝子群である;α鎖はHLA-A*02遺伝子によってコードされ、β鎖はβ2-ミクログロブリンまたはB2M遺伝子座によってコードされる。
【0079】
「抗原結合性タンパク質」、「結合性タンパク質」または「結合性分子」という用語は、本明細書で使用される場合、HLA-A2により提示されるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HPV16E7ペプチド)のコンフォメーションエピトープ、例えば、アミノ酸残基11~19または82~90を含むHLA-A2によりディスプレイされるペプチドなどの目的の分子に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合性部位を含有する分子を含む。結合性タンパク質は、全長抗体もしくは抗体の抗原結合性断片などの抗体、またはキメラ抗原受容体(CAR)、または任意の他のポリペプチド、例えば、受容体-抗体(Rab)タンパク質であり得る。
【0080】
「HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質」または「HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質」などの用語は、HLA-A2によるHPV16E7のペプチド断片、例えば、アミノ酸残基11~19またはアミノ酸残基82~90の提示によってコンフォメーションエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性部分などの抗原結合性タンパク質を指す。ある特定の実施形態では、コンフォメーションエピトープは、細胞の表面上にHLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチドによって創出される。
【0081】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして公知の抗原結合性タンパク質の可変領域内の特異的な抗原結合性部位と相互作用する抗原性決定因子を指す。単一の抗原は、1つよりも多くのエピトープを有し得る。したがって、異なる抗原結合性タンパク質は抗原上の異なる領域に結合し得、異なる生物学的影響を有し得る。「エピトープ」という用語は、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位も指す。エピトープは、抗原結合性タンパク質が結合する抗原の領域も指す。エピトープは、構造的または機能的と定義することができる。機能的エピトープは、一般に、構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープはまた、「コンフォメーション」でもあり得る、すなわち、非直線的アミノ酸で構成される。ある特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの、分子の化学的に活性な表面の群分けである決定因子を含み得、ある特定の実施形態では、特定の3次元構造特性、および/または特定の電荷特性を有し得る。
【0082】
本発明の一部の実施形態では、結合性タンパク質は、抗体またはその抗原結合性断片、例えば、全長抗体またはその抗原結合性断片である。
【0083】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ジスルフィド結合によって相互接続した2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖で構成される免疫グロブリン分子(すなわち、「全抗体分子」)、ならびにその多量体(例えば、IgM)またはその抗原結合性断片を指すものとする。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)および重鎖定常領域(ドメインCH1、CH2およびCH3で構成される)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」または「VL」)および軽鎖定常領域(CL)で構成される。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域と、その間に散在する、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明のある特定の実施形態では、抗体(またはその抗原結合性断片)のFRは、ヒト生殖細胞系列配列と同一であってもよく、または天然にもしくは人工的に改変されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれよりも多くのCDRの並列分析に基づいて定義することができる。
【0084】
1つもしくは複数のCDR残基の置換または1つもしくは複数のCDRの省略も可能である。1つまたは2つのCDRを結合のために分配することができる、抗体などの抗原結合性タンパク質が科学文献に記載されている。Padlan et al.(1995 FASEB J. 9: 133-139)は、抗体とそれらの抗原の接触領域を公開された結晶構造に基づいて分析し、
CDR残基の約5分の1~3分の1のみが抗原と実際に接触すると結論づけた。Padlanは、1つまたは2つのCDRが抗原と接触するアミノ酸を有さない多くの抗体も見いだした(Vajdos et al. 2002 J Mol Biol 320: 415-428も参照されたい)。
【0085】
抗原と接触しないCDR残基は、以前の研究に基づき、Chothia CDRの外側にあるKabat CDRの領域から、分子モデリングによって、および/または経験的に同定することができる(例えば、CDRH2の残基H60~H65は多くの場合必要でない)。CDRまたはその残基(複数可)が省略される場合、通常それは別のヒト抗体配列またはそのような配列のコンセンサスにおける対応する位置を占有するアミノ酸で置換される。CDR内の置換の位置および置換するアミノ酸も経験的に選択することができる。経験的な置換は、保存的置換または非保存的置換であり得る。
【0086】
本明細書に開示される抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質、例えば、完全ヒト抗HLA-A2:HPV16E7モノクローナル抗体もしくはその抗原結合性断片、またはCARは、対応する生殖細胞系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み得る。そのような突然変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗原結合性タンパク質、例えば抗体もしくはその抗原結合性断片、またはCARを含み、ここで、1つまたは複数のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸が、抗原結合性タンパク質が由来する生殖細胞系列配列の対応する残基(複数可)、または別のヒト生殖細胞系列配列の対応する残基(複数可)、または対応する生殖細胞系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換(そのような配列変化は、本明細書ではまとめて「生殖細胞系列突然変異」と称される)に突然変異している。当業者は、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から開始して、1つまたは複数の個々の生殖細胞系列突然変異またはこれらの組合せを含む多数の抗原結合性タンパク質、例えば抗体もしくはその抗原結合性断片、またはCARを容易に作製することができる。ある特定の実施形態では、VHドメインおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基の全てが、抗原結合性タンパク質、例えば抗体が由来する元の生殖細胞系列配列において見いだされる残基にまた突然変異して戻っている。他の実施形態では、ある特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8アミノ酸内もしくはFR4の最後の8アミノ酸内に見いだされる突然変異した残基のみ、またはCDR1、CDR2またはCDR3内に見いだされる突然変異した残基のみが、元の生殖細胞系列配列にまた突然変異して戻っている。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)の1つまたは複数が、異なる生殖細胞系列配列(すなわち、抗体が元々由来する生殖細胞系列配列とは異なる生殖細胞系列配列)の対応する残基(複数可)に突然変異している。さらに、本発明の抗原結合性タンパク質、例えば抗体もしくはその抗原結合性断片、またはCARは、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つまたはそれよりも多くの生殖細胞系列突然変異の任意の組合せを含有し得、ここで、例えば、ある特定の個々の残基は特定の生殖細胞系列配列の対応する残基に突然変異しており、一方で、元の生殖細胞系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持されているまたは異なる生殖細胞系列配列の対応する残基に突然変異している。1つまたは複数の生殖細胞系列突然変異を含有する抗原結合性タンパク質、例えば抗体および抗原結合性断片が得られたら、例えば、結合特異性の改善、結合親和性の増大、アンタゴニストまたはアゴニスト生物学的性質の改善または増強(場合によっては)、免疫原性の低下などの1つまたは複数の所望の性質について容易に試験することができる。この一般的な様式で得られる抗原結合性タンパク質、例えば抗体もしくはその抗原結合性断片、またはCARは本発明の範囲内に包含される。
【0087】
本発明は、1つまたは複数の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗原結合性タンパク質、例えば、完全ヒト抗HLA-A2:HPV16E7モノクローナル抗体もしくはその抗原結合性断片、またはCARも含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと比べて10またはそれ未満、8またはそれ未満、6またはそれ未満、4またはそれ未満などの保存的アミノ酸置換を伴うHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む。
【0088】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むものとする。本発明のヒトモノクローナル抗体(mAb)は、例えば、CDR、特にCDR3に、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroにおけるランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発によって、またはin vivoにおける体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトFR配列に移植されたmAbを含むものではない。この用語は、非ヒト哺乳動物において、または非ヒト哺乳動物の細胞において組換えによって作製された抗体を包含する。この用語は、ヒト対象から単離されたまたはヒト対象において生成された抗体を含むものではない。
【0089】
「組換え」という用語は、本明細書で使用される場合、例えばDNAスプライシングおよびトランスジェニック発現を含む、組換えDNA技術として当技術分野で公知の技術または方法によって創出されたか、発現されたか、単離されたか、または得られた、本発明の抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片を指す。この用語は、例えば、非ヒト哺乳動物(トランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えば、トランスジェニックマウスを含む)、もしくは細胞(例えば、CHO細胞)発現系において発現された、または組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗原結合性タンパク質、例えば抗体を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、本明細書では互換的に使用され、抗原(例えば、HLA-A2によりディスプレイされるHPV16E7ペプチド、例えば、HPV16E7のアミノ酸残基11~19または82~90を含むペプチドのコンフォメーションエピトープ)に結合することができる細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む組換え融合タンパク質を指す。
【0091】
「免疫エフェクター細胞」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞死滅活性、サイトカインの分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導)を有する免疫系の任意の細胞を指す。一実施形態では、本明細書に記載のCARと共に使用される免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球、特に細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)およびヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)である。本発明では、他のT細胞の集団、例えば、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞も有用である。当業者には理解される通り、他の細胞を本明細書に記載のCARと共に免疫エフェクター細胞として使用することもできる。具体的には、免疫エフェクター細胞は、NK細胞、NKT細胞、好中球、およびマクロファージも含む。免疫エフェクター細胞は、エフェクター細胞の前駆体も含み、そのような前駆細胞を、in vivoまたはin vitroにおいて免疫エフェクター細胞に分化するように誘導することができる。したがって、この点について、免疫エフェクター細胞は、対象に投与されると成熟免疫エフェクター細胞に分化する、またはin vitroにおいて成熟免疫エフェクター細胞に分化するように誘導することができる、臍帯血、骨髄または動員末梢血に由来する細胞のCD34+集団内に含有される造血幹細胞(HSC)などの免疫エフェクター細胞の前駆体を含む。
【0092】
本明細書に開示される通り、「オフターゲットペプチド」という用語は、標的ペプチド(例えば、HPV16 E7 11-19ペプチド)と1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれよりも多くのアミノ酸が異なるペプチドを指す。ある特定の実施形態では、この用語は、標的ペプチドと3つ未満のアミノ酸または3つのアミノ酸が異なるペプチドを含む。例えば、9-merペプチドに関しては、1つ、2つ、または3つのアミノ酸が標的ペプチドと同一でない場合、「オフターゲット」ペプチドと考えられる。ある特定の実施形態では、アミノ酸同一性は、「類似性の程度」(DoS)という用語で表される。9-merペプチド内の6つまたはそれよりも多くのアミノ酸が同一である場合、DoSは6である。ある特定の実施形態では、DoSが6以上のペプチドを「オフターゲット」ペプチドとみなす。「オフターゲット」ペプチドという用語は、配列相同性に基づいて標的ペプチドと同様であり、HLA-A2に結合することが予測され、必須正常組織において発現されるタンパク質に含まれるペプチドも指す。
【0093】
「特異的に結合する(specifically binds)」、または「特異的に結合する(binds specifically to)」などという用語は、抗原結合性タンパク質、例えば抗体もしくはその抗原結合性断片、またはCARが、生理的条件下で比較的安定な抗原と複合体を形成することを意味する。特異的結合は、平衡解離定数が少なくとも約1×10-8Mまたはそれ未満であることによって特徴付けることができる(例えば、KDが小さいほど密接な結合を示す)。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定するための方法は当技術分野で周知であり、それらの例として、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが挙げられる。本明細書に記載の通り、抗原結合性タンパク質、例えば抗体は、表面プラズモン共鳴、例えばBIACORE(商標)により、HLA-A2により提示されるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HPV16E7ペプチド)のコンフォメーションエピトープ、例えば、HPV16E7のアミノ酸残基11~19または82~90を含むペプチドに特異的に結合することが同定されている。
【0094】
「高親和性」抗原結合性タンパク質、例えば抗体という用語は、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチド、例えば、HPV16E7のアミノ酸残基11~19または82~90を含むペプチドのコンフォメーションエピトープに対して、表面プラズモン共鳴、例えばBIACORE(商標)、または溶液親和性ELISAによって測定されるように、少なくとも10-8M;好ましくは10-9M;より好ましくは10-10M、なおより好ましくは10-11M、なおより好ましくは10-12MのKDで表される結合親和性を有する抗原結合性タンパク質、例えば、mAbを指す。
【0095】
「遅い解離速度」、「Koff」または「kd」という用語は、抗原結合性タンパク質がHLA-A2:HPV16E7から、表面プラズモン共鳴、例えばBIACORE(商標)によって決定されると1×10-3s-1またはそれ未満、好ましくは1×10-4s-1またはそれ未満の速度定数で解離することを意味する。
【0096】
抗原結合性タンパク質(例えば、抗体)の「抗原結合性部分」、抗原結合性タンパク質(例えば、抗体)の「抗原結合性断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在する、酵素により入手可能な、合成の、または遺伝子操作された任意のポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の「抗原結合性断片」、または「抗体断片」という用語は、本明細書で使用される場合、HLA-A2とカップリングした、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチド、例えば、HPV16E7のアミノ酸残基11~19または82~90を含むペプチドのコンフォメーションエピトープに結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。
【0097】
特定の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質、例えば抗体または抗体断片、またはCARは、リガンド、検出可能部分、または、HPV16E7陽性がんなどのHPVに関連する疾患もしくは障害もしくは慢性HPV感染を含めたHPV感染を含めた疾患もしくは状態を処置するために有用な、細胞毒、第2の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質、腫瘍特異的抗原に対する抗体、抗がん薬、もしくは任意の他の治療用部分などの治療用部分(「免疫コンジュゲート」)などの部分とコンジュゲートすることができる。
【0098】
「単離された抗原結合性タンパク質」、例えば、単離された抗体は、本明細書で使用される場合、異なる抗原特異性を有する他の抗原結合性タンパク質、例えば抗体(Ab)を実質的に含まない抗原結合性タンパク質、例えば抗体を指すものとする(例えば、HLA-A2:HPV16E7またはその断片に特異的に結合する単離された抗体は、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチドのコンフォメーションエピトープ以外の抗原に特異的に結合する抗原結合性タンパク質、例えば抗体を実質的に含まない)。
【0099】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、N.J.)を使用してバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変更を検出することによるリアルタイム生体分子相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。
【0100】
「KD」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗原結合性タンパク質-抗原相互作用の平衡解離定数を指すものとする。
【0101】
「交差競合する」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原に結合し、別の抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片の結合を阻害または遮断する抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片を意味する。この用語は、2つの抗原結合性タンパク質、例えば抗体の間の、両方向の競合、すなわち、第1の抗原結合性タンパク質、例えば抗体が結合し、第2の抗原結合性タンパク質、例えば抗体の結合を遮断すること、およびその逆も含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合性タンパク質、例えば抗体と第2の抗原結合性タンパク質、例えば抗体は、同じエピトープに結合し得る。あるいは、第1のおよび第2の抗原結合性タンパク質、例えば抗体は、異なるが重複するエピトープに結合し得、したがって、一方の抗原結合性タンパク質、例えば抗体が結合することにより、第2の抗原結合性タンパク質、例えば抗体結合が、例えば立体的な障害によって阻害または遮断される。抗原結合性タンパク質、例えば抗体間の交差競合は、当技術分野で公知の方法によって、例えば、リアルタイム、無標識バイオレイヤー干渉アッセイによって測定することができる。2つの抗原結合性タンパク質、例えば抗体の間の交差競合は、第2の抗原結合性タンパク質、例えば抗体の結合が自己結合(第1および第2の抗原結合性タンパク質、例えば抗体が同じ抗原結合性タンパク質、例えば抗体である場合)に起因するバックグラウンドシグナルよりも少ないこととして表すことができる。2つの抗原結合性タンパク質、例えば抗体の間の交差競合は、例えば、第2の抗原結合性タンパク質、例えば抗体の結合の%が、ベースライン自己バックグラウンド結合よりも低いこととして表すことができる(第1および第2の抗原結合性タンパク質、例えば抗体が同じ抗原結合性タンパク質、例えば抗体である場合)。
【0102】
「実質的な同一性」または「実質的に同一の」という用語は、核酸またはその断片について言及する場合、以下に考察する通り、別の核酸(またはその相補鎖)と妥当なヌクレオチド挿入または欠失を伴って最適にアラインメントした場合に、任意の周知の配列同一性のアルゴリズムによって測定されるように、ヌクレオチド塩基の少なくとも約90%、およびより好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%にヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、ある特定の例では、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に同様のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。
【0103】
配列同一性は、アルゴリズム、例えば、グローバルアラインメントに関してはNeedleman Wunsch アルゴリズム(Needleman and Wunsch 1970, J. Mol.
Biol. 48: 443-453)、または局所アラインメントに関してはSmith Wate
rmanアルゴリズム(Smith and Waterman 1981, J. Mol. Biol. 147: 195-197)を使用して算出することができる。別の好ましいアルゴリズムは、Dufresne et al
in Nature Biotechnology in 2002(vol. 20, pp. 1269-71)により記載されており、ソフトウェアGenePAST(GQ Life Sciences,Inc. Boston、MA)に使用されている。
【0104】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に同様の」という用語は、2つのペプチド配列が、例えばプログラムGAPまたはBESTFITにより、デフォルトのギャップ重みづけを使用して最適にアラインメントした場合に、少なくとも90%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。同一でない残基の位置は保存的アミノ酸置換によって異なることが好ましい。「保存的アミノ酸置換」は、同様の化学的性質(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によってアミノ酸残基が置換されたものである。一般に、保存的アミノ酸置換によりタンパク質の機能的性質は実質的に変化しない。2つまたはそれよりも多くのアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、類似性のパーセントまたは程度を上向きに調整して置換の保存性を補正することができる。この調整を行うための手段は当業者には周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPearson (1994)Methods Mol. Biol. 24: 307-331を参照されたい。化学的性質が同様の側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、
1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;3)アミドを含有する側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、および7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換えは、参照により本明細書に組み込まれるGonnet et al. (1992)Science 256: 1443 45に開示されているPAM250対数尤度行列が正の値である任意の変化である。「中等度に保存的」置換えは、PAM250対数尤度行列が負でない値である任意の変化である。
【0105】
ポリペプチドについての配列類似性は、一般には、配列解析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアでは、保存的アミノ酸置換を含めた種々の置換、欠失および他の改変に割り当てられる類似性の尺度を使用して同様の配列をマッチさせる。例えば、GCGソフトウェアは、デフォルトパラメータと共に使用して、異なる種の生物体に由来する相同なポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間または野生型タンパク質とその突然変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を決定することができるGAPおよびBESTFITなどのプログラムを含む。例えば、GCG Version 6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、FASTAをデフォルトまたは推奨されるパラメータを用いて使用して比較することもできる;GCG Version 6.1.FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)のプログラムにより、クエリおよび検索配列間の重複が最良の領域のアラインメントおよびパーセント配列同一性がもたらされる(Pearson (2000)上記)。本発明の配列を異なる生物体に由来する多
数の配列を含むデータベースと比較する際の別の好ましいアルゴリズムは、コンピュータプログラムBLAST、特に、デフォルトパラメータを使用したBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれるAltschul
et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410および (1997) Nucleic Acids
Res. 25: 3389-3402を参照されたい。
【0106】
「治療有効量」という句は、それが投与されるものに対して所望の効果をもたらす量を意味する。正確な量は、処置の目的に依存し、当業者が公知の技法を使用して確かめることができる(例えば、Lloyd (1999) The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照されたい)。
【0107】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、HPV感染、またはHPV関連がん(例えば、HPV16E7陽性がん)などのHPVに関連する疾患もしくは障害などの疾患または障害の好転、防止および/または処置を必要とする動物、好ましくは哺乳動物を指す。この用語は、HPV関連がん、転移性HPV関連がんなどのHPVに関連する疾患もしくは障害またはHPV感染を有するまたは有するリスクがあるヒト対象を含む。
【0108】
本明細書で使用される場合、「抗がん薬」は、これだけに限定されないが、細胞毒および作用剤、例えば、代謝拮抗薬、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、抗有糸分裂薬、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、シクロホスファミド、ミトタン(O,P’-(DDD))、生物製剤(例えば、抗体およびインターフェロン)および放射性薬剤などを含めた、がんを処置するまたは好転させるまたは阻害するために有用な任意の作用剤を意味する。本明細書で使用される場合、「細胞毒または細胞傷害性薬剤」は、化学療法剤も指し、細胞に有害な任意の作用剤を意味する。例としては、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、テモゾラミド(temozolamide)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、シスプラチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン(vinbiastine)、コルヒチン(coichicin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンおよびその類似体またはホモログが挙げられる。
【0109】
本明細書で使用される場合、「抗ウイルス薬」という用語は、宿主対象におけるウイルス感染を処置する、防止する、または好転させるために使用される任意の薬物または治療を指す。「抗ウイルス薬」という用語は、これだけに限定されないが、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノホビル、リルピビリン、鎮痛薬およびコルチコステロイドを含む。
【0110】
以下のいずれか1つを含む免疫原を使用して、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチドのコンフォメーションエピトープ、例えば、HLA-A2と連結したHPV16E7のアミノ酸残基11~19または残基82~90を含むペプチドに対する抗原結合性タンパク質、例えば抗体を生成することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質、例えば抗体を、全長ネイティブHPV16E7タンパク質(NCBI受託番号NP_041326.1参照)(配列番号537)を用いて、または、HLA-A2と連結したGenBank受託番号NP_041326.1(配列番号537)のアミノ酸残基11~19(YMLDLQPET;配列番号538)もしくはGenBank受託番号NP_041326.1(配列番号537)のアミノ酸残基82~90(LLMGTLGIV;配列番号539)を含むペプチドなどの組換えHPV16E7ペプチドを用いて免疫したマウスから得る。
【0111】
あるいは、HPV16E7またはその断片を、標準の生化学的技法を使用して作製し、HLA-A2との関連で改変し、免疫原として使用することができる。
【0112】
一部の実施形態では、免疫原は、E.coliにおいて、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの任意の他の真核細胞もしくは哺乳動物細胞において発現させた組換えHPV16E7ペプチドであり得る。
【0113】
ある特定の実施形態では、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチドのコンフォメーションエピトープに特異的に結合する抗原結合性タンパク質を、上記の領域、または、指定の領域を本明細書に記載の領域のN末端またはC末端のいずれかまたはその両方から約5~約20アミノ酸残基を超えて伸びるペプチドの断片を使用して調製することができる。ある特定の実施形態では、上記の領域またはその断片の任意の組合せをHLA-A2:HPV16E7に特異的な抗原結合性タンパク質、例えば抗体の調製に使用することができる。
【0114】
ペプチドを、タグ付けのために、またはKLHなどの担体分子とのコンジュゲーションの目的のために、ある特定の残基の付加または置換を含むように改変することができる。例えば、ペプチドのN末端もしくはC末端のいずれかにシステインを付加することができる、または、リンカー配列を付加して、ペプチドを例えば免疫のためのKLHとのコンジュゲーションのために調製することができる。
【0115】
結合活性を測定するための非限定的な、例示的なin vitroアッセイが本明細書の実施例において例示されている。実施例4では、ヒト抗HLA-A2:HPV16E7に特異的な抗原結合性タンパク質、例えば抗体の結合親和性および運動定数を表面プラズモン共鳴によって決定し、測定はBiacore4000またはT200機器で行った。実施例6および7には、HPV16E7の断片を過剰発現する細胞への抗体の結合が記載されている。
【0116】
HLA-A2:HPV16E7に特異的な抗原結合性タンパク質、例えば抗体は、追加的な標識または部分を含有しない場合もあり、N末端もしくはC末端標識または部分を含有する場合もある。一実施形態では、標識または部分はビオチンである。結合アッセイでは、標識の場所(もしあれば)により、ペプチドが結合する表面に対するペプチドの方向を決定することができる。例えば、表面をアビジンでコーティングした場合、N末端ビオチンを含有するペプチドは、ペプチドのC末端部分が表面に対して遠位になるように配向される。一実施形態では、標識は、放射性核種、蛍光色素またはMRIで検出可能な標識であり得る。ある特定の実施形態では、そのような標識された抗原結合性タンパク質を、イメージングアッセイを含めた診断アッセイに使用することができる。
【0117】
抗原結合性タンパク質
本発明は、抗体またはその抗原結合性断片、およびCARを含む抗原結合性タンパク質(例えば、本発明のCARをコードする核酸分子)(下記)を提供する。特に他の指示がなければ、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖を含む抗体分子(すなわち、「全抗体分子」)ならびにその抗原結合性断片を包含すると理解されるものとする。抗体の「抗原結合性部分」、抗体の「抗原結合性断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素により入手可能な、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の「抗原結合性断片」、または「抗体断片」という用語は、本明細書で使用される場合、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチドのコンフォメーションエピトープに特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体断片などの抗原結合性タンパク質は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、dAb断片、CDRを含有する断片、または単離されたCDRを含み得る。抗体の抗原結合性断片などの抗原結合性タンパク質は、例えば、全抗体分子から、タンパク質消化、または抗体可変ドメインおよび(必要に応じて)定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を伴う組換え遺伝子工学技法などの任意の適切な標準技法を使用して得ることができる。そのようなDNAは公知であり、かつ/または、例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能である、もしくは合成することができる。DNAを、配列決定し、例えば、1つもしくは複数の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを適切な立体配置に配置するため、またはコドンを導入するため、システイン残基を創出するため、アミノ酸を修飾する、付加する、もしくは欠失させるためなどで、化学的にまたは分子生物学技法を使用することによって操作することができる。
【0118】
抗体の抗原結合性断片の非限定的な例としては、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))、または制約されたFR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。他の操作された分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRが移植された抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ(minibody)、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(small modular immunopharmaceutical)(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインも、本明細書で使用される「抗原結合性断片」という表現に包含される。
【0119】
抗原結合性タンパク質(例えば、抗体)の抗原結合性断片は、一般には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成になり、一般に、1つまたは複数のフレームワーク配列と隣接しているまたはインフレームにある少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインと会合したVHドメインを有する抗原結合性タンパク質では、VHドメインおよびVLドメインを互いに対して任意の適切な配置に位置させることができる。例えば、可変領域は二量体であり得、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含有する。あるいは、抗体の抗原結合性断片は、単量体VHドメインまたはVLドメインを含有し得る。
【0120】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインと共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。本発明の抗原結合性タンパク質の抗原結合性断片内に見いだすことができる可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な、例示的な立体配置としては、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLが挙げられる。上に列挙されている例示的な立体配置のいずれかを含めた可変ドメインおよび定常ドメインの立体配置のいずれにおいても、可変ドメインと定常ドメインは、互いと直接連結するか、完全なもしくは部分的なヒンジまたはリンカー領域によって連結するかのいずれかでよい。ヒンジ領域は、少なくとも2個(例えば、5個、10個、15個、20個、40個、60個またはそれよりも多く)のアミノ酸からなり得、単一のポリペプチド分子内の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間に柔軟なまたは半柔軟な連結をもたらすものである。さらに、本発明の抗体の抗原結合性断片は、上に列挙されている可変ドメインおよび定常ドメイン立体配置のいずれかの、互いとの非共有結合性の会合でのおよび/または1つもしくは複数の単量体VHドメインもしくはVLドメインとの(例えば、ジスルフィド結合(複数可)による)ホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0121】
全抗体分子と同様に、抗原結合性タンパク質、例えば抗体の抗原結合性断片は、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合性断片は、一般には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別々の抗原、または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体形式を含めた任意の多重特異性抗体形式は、当技術分野において利用可能な慣例の技法を使用して本発明の抗体の抗原結合性断片に関連した使用に適応させることができる。
【0122】
抗原結合性タンパク質の調製
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体などの抗原結合性タンパク質を生成するための方法は、当技術分野で公知である。任意のそのような公知の方法を本発明に関して使用して、HLA-A2により提示されるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HPV16E7ペプチド)のコンフォメーションエピトープに特異的に結合するヒト抗体を作出することができる。
【0123】
VELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticals、VELOCIMMUNE(登録商標)を参照されたい)または抗原結合性タンパク質、例えばモノクローナル抗体を生成するための任意の他の公知の方法を使用し、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチドのコンフォメーションエピトープに対する高親和性抗原結合性タンパク質、例えば、キメラ抗体を、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する状態で最初に単離する。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結したヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成を伴い、その結果、マウスが抗原刺激に応答してヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗原結合性タンパク質、例えば抗体を産生する。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖および軽鎖定常領域をコードするDNAを作動可能に連結する。次いで、完全ヒト抗体を発現することができる細胞において当該DNAを発現させる。
【0124】
一般に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスを目的の抗原で攻撃し、マウスから抗原結合性タンパク質、例えば抗体を発現するリンパ性細胞(例えば、B細胞)を回収する。リンパ性細胞を骨髄腫細胞株と融合して不死ハイブリドーマ細胞株を調製し、そのようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、選択して、目的の抗原に対する特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、望ましいアイソタイプの重鎖および軽鎖の定常領域に連結することができる。そのような抗原結合性タンパク質をCHO細胞などの細胞において産生させることができる。あるいは、抗原特異的抗原結合性タンパク質、例えば、キメラ抗体、または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを抗原特異的リンパ球から直接単離することができる。
【0125】
最初に、高親和性抗原結合性タンパク質、例えば、キメラ抗体をヒト可変領域およびマウス定常領域を有する状態で単離する。以下の実験の節におけるものと同様に、抗原結合性タンパク質を、親和性、選択性、エピトープなどを含めた望ましい特性について特徴付け、選択する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域で置き換えて、本発明の抗原結合性タンパク質、例えば完全ヒト抗体、例えば野生型もしくは改変IgG1またはIgG4を生成する。一方、選択される定常領域は、特定の使用、可変領域に存在する高親和性抗原結合性および標的特異性という特性に応じて変動し得る。
【0126】
生物学的同等性
本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質は、記載の抗原結合性タンパク質、例えば抗体のものから変動するアミノ酸配列を有するが、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチドのコンフォメーションエピトープに結合する能力を保持するタンパク質を包含する。そのようなバリアント抗原結合性タンパク質は、親配列と比較した場合に1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、または置換を含むが、記載の抗原結合性タンパク質のものと本質的に同等の生物活性を示す。同様に、本発明の抗原結合性タンパク質をコードするDNA配列は、開示されている配列と比較した場合に1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗原結合性タンパク質と本質的に生物学的に同等である抗原結合性タンパク質をコードする配列を包含する。
【0127】
2つの抗原結合性タンパク質、または抗体は、例えば、同じモル濃度用量で、同様の実験条件下、単回用量または複数用量のいずれかで投与した場合に吸収の速度および程度に有意差が示されない薬学的同等物または薬学的代替物である場合、それらは生物学的に同等であるとみなされる。一部の抗原結合性タンパク質または抗体は、それらの吸収の程度は同等であるがそれらの吸収の速度は同等でなく、それでもなお、そのような吸収の速度の差が意図的なものであり、ラベリングに反映されており、例えば長期にわたる使用での有効な体内薬物濃度の実現のために必須ではなく、試験される特定の薬品に関して医学的に些細であるとみなされることからそれらが生物学的に同等であるとみなすことができる場合、同等物または薬学的代替物とみなされる。
【0128】
一実施形態では、2つの抗原結合性タンパク質(または抗体)は、それらの安全性、純度、または効力に臨床的に意味のある差異がない場合、生物学的に同等である。
【0129】
一実施形態では、2つの抗原結合性タンパク質(または抗体)は、患者が参照製品と生物学的製剤とを1回または複数回切り換えることができ、そのような切り換えを伴わない継続治療と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化、または効果の減弱を含めた有害作用のリスクの上昇が予想されない場合、生物学的に同等である。
【0130】
一実施形態では、2つの抗原結合性タンパク質(または抗体)は、それらがどちらも、使用の条件(複数可)に関して共通の作用機構(複数可)によって作用する場合、そのような機構が公知である限りでは、生物学的に同等である。
【0131】
生物学的同等性は、in vivoおよび/またはin vitroにおける方法によって実証することができる。生物学的同等性の尺度としては、例えば、(a)血液、血漿、血清、または他の生体液中の抗原結合性タンパク質またはその代謝産物の濃度を時間に応じて測定する、ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験;(b)ヒトin
vivo生物学的利用能データと相関し、それを合理的に予測する、in vitro試験;(c)抗原結合性タンパク質(またはその標的)の妥当な急性薬理学的効果を時間に応じて測定する、ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験;および(d)抗原結合性タンパク質の安全性、有効性、または生物学的利用能もしくは生物学的同等性を確立する管理良好な臨床試験が挙げられる。
【0132】
本発明の抗原結合性タンパク質(または抗体)の生物学的に同等であるバリアントは、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を行うこと、または生物活性には必要ない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失させることによって構築することができる。例えば、生物活性のために必須ではないシステイン残基を欠失させるまたは他のアミノ酸で置き換えて、復元時の不必要なまたは不適当な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止することができる。他の状況では、生物学的に同等である抗原結合性タンパク質は、抗原結合性タンパク質のグリコシル化特性を改変させるアミノ酸の変化、例えば、グリコシル化を排除または除去する突然変異を含む抗原結合性タンパク質バリアントを含み得る。
【0133】
Fcバリアントを含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質
本発明のある特定の実施形態によると、例えば、中性pHと比較して酸性pHにおける抗原結合性タンパク質のFcRn受容体への結合を増強するまたは減弱させる1つまたは複数の突然変異を含むFcドメインを含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質、例えば抗体が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのCH2領域またはCH3領域に突然変異を含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含み、ここで、当該突然変異(複数可)は、酸性環境(例えば、pHが約5.5から約6.0までにわたるエンドソームにおける)におけるFcドメインのFcRnに対する親和性を増大させる。そのような突然変異の結果として、動物に投与した際の抗原結合性タンパク質の血清中半減期を増大させることができる。そのようなFc改変の非限定的な例としては、例えば、250位(例えば、EもしくはQ);250位および428位(例えば、LもしくはF);252位(例えば、L/Y/F/WもしくはT)、254位(例えば、SもしくはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DもしくはT)における改変;または428位および/もしくは433位(例えば、H/L/R/S/P/QもしくはK)および/もしくは434位(例えば、A、W、H、FもしくはY[N434A、N434W、N434H、N434FもしくはN434Y])における改変;または250位および/もしくは428位における改変;または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位における改変が挙げられる。一実施形態では、改変は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)改変;428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)改変;433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)改変;252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)改変;250Qおよび428L改変(例えば、T250QおよびM428L);ならびに307および/または308改変(例えば、308Fまたは308P)を含む。さらに別の実施形態では、改変は、265A(例えば、D265A)および/または297A(例えば、N297A)改変を含む。
【0134】
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E);428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);257Iおよび311I(例えば、P257IおよびQ311I);257Iおよび434H(例えば、P257IおよびN434H);376Vおよび434H(例えば、D376VおよびN434H);307A、380Aおよび434A(例えば、T307A、E380AおよびN434A);ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群から選択される1つまたは複数の突然変異の対または群を含むFcドメインを含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む。一実施形態では、本発明は、二量体安定化を促進するために、IgG4のヒンジ領域にS108P突然変異を含むFcドメインを含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む。本明細書に開示される抗原結合性タンパク質可変ドメイン内の、前述Fcドメイン突然変異と他の突然変異との可能性のある全ての組合せが本発明の範囲内に入るものとする。
【0135】
本発明は、キメラ重鎖定常(CH)領域を含む抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質も含み、ここで、当該キメラCH領域は、1つよりも多くの免疫グロブリンアイソタイプのCH領域に由来するセグメントを含む。例えば、本発明の抗原結合性タンパク質は、ヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子またはヒトIgG4分子に由来するCH2ドメインの一部または全部とヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子またはヒトIgG4分子に由来するCH3ドメインの一部または全部との組合せを含むキメラCH領域を含み得る。ある特定の実施形態によると、本発明の抗原結合性タンパク質は、キメラヒンジ領域を有するキメラCH領域を含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上ヒンジ」アミノ酸配列(EU番号付けに従って216位から227位までのアミノ酸残基)とヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下ヒンジ」配列(EU番号付けに従って228位から236位までのアミノ酸残基)の組合せを含み得る。ある特定の実施形態によると、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4の上ヒンジに由来するアミノ酸残基とヒトIgG2の下ヒンジに由来するアミノ酸残基とを含む。本明細書に記載のキメラCH領域を含む抗原結合性タンパク質は、ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質の治療的性質または薬物動態的性質に悪影響を及ぼすことなく改変されたFcエフェクター機能を示す(例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20140243504号を参照されたい)。
【0136】
抗原結合性タンパク質の生物学的特性
一般に、本発明の抗原結合性タンパク質は、HLA-A2により提示されるヒトパピローマウイルス(HPV)16E7ペプチド(HPV16E7)ペプチドのコンフォメーションエピトープに結合することによって機能する。
【0137】
本発明は、HLA-A2との関連でHPV16E7ペプチドに高い特異性で結合する抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む。抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質は、HLA-A2の不在下ではHPV16E7ペプチドに結合しない。さらに、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質は、HLA-A2との関連でオフターゲットペプチドには結合しない。
【0138】
本発明は、単量体HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドに高親和性で結合する抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む。例えば、本発明は、単量体HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドに(例えば、25℃でまたは37℃で)、例えば本明細書の実施例4において定義されているアッセイ形式を使用した表面プラズモン共鳴によって測定されるように、約20nM未満のKDで結合する抗原結合性タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、例えば本明細書の実施例4において定義されているアッセイ形式を使用した表面プラズモン共鳴、または実質的に同様のアッセイによって測定されるように、単量体HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドに、約15nM未満、約12nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.1nM未満、約0.05nM未満または約0.04nM未満のKDで結合する。
【0139】
本発明は、例えば本明細書の実施例4において定義されているアッセイ形式を使用した表面プラズモン共鳴、または実質的に同様のアッセイによって測定されるように、単量体HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドに(例えば、25℃でまたは37℃で)約25nM未満のKDで結合する抗原結合性タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、例えば本明細書の実施例4において定義されているアッセイ形式を使用した表面プラズモン共鳴、または実質的に同様のアッセイによって測定されるように、単量体HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドに約20nM未満、約15nM未満、約12nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.1nM未満、約0.05nM未満または約0.04nM未満のKDで結合する。
【0140】
本発明は、本明細書の実施例6において定義されている発光アッセイまたは実質的に同様のアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に約6nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には結合しない抗原結合性タンパク質も含む。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、例えば、本明細書の実施例6のアッセイ形式または実質的に同様のアッセイを使用し、本明細書の実施例6において定義されている発光アッセイまたは実質的に同様のアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に、約6nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には結合しない。
【0141】
本発明は、本明細書の実施例6において定義されている発光アッセイまたは実質的に同様のアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に約1nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には結合しない抗原結合性タンパク質も含む。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、例えば、本明細書の実施例6のアッセイ形式または実質的に同様のアッセイを使用し、本明細書の実施例6において定義されている発光アッセイまたは実質的に同様のアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に約1nM未満、約0.5nM未満、約0.2nM未満、または約0.01nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には結合しない。
【0142】
本発明は、本明細書の実施例7において定義されているフローサイトメトリーアッセイまたは実質的に同様のアッセイによって測定されるように、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に約30nM未満のEC50で結合する抗原結合性タンパク質も含む。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、例えば本明細書の実施例7のアッセイ形式を使用したフローサイトメトリーアッセイ、または実質的に同様のアッセイによって測定されるように、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に約25nM未満、約20nM未満、約15nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のEC50で結合する。
【0143】
本発明は、本明細書の実施例7において定義されているフローサイトメトリーアッセイまたは実質的に同様のアッセイによって測定されるように、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に約75nM未満のEC50で結合する抗原結合性タンパク質も含む。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、例えば本明細書の実施例7のアッセイ形式を使用したフローサイトメトリーアッセイ、または実質的に同様のアッセイによって測定されるように、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に、約75nM未満、約70nM未満、約65nM未満、約60nM未満、約55nM未満、約50nM未満、約45nM未満、約40nM未満、約35nM未満、約30nM未満、約25nM未満、約20nM未満、約15nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のEC50で結合する。
【0144】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質は、それを必要とする対象に予防的に投与した場合に、腫瘍の成長を阻害することまたはがんの進行を遅延させることにおいて有用であり、対象の生存を増大させることができる。例えば、本発明の抗原結合性タンパク質の投与により、原発腫瘍の縮小を導くことができ、また、転移または二次腫瘍の発生を防止することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質は、それを必要とする対象に治療的に投与した場合に、腫瘍の成長を阻害することにおいて有用であり、対象の生存を増大させることができる。例えば、本発明の抗原結合性タンパク質を対象に治療有効量で投与することにより、対象における確立された腫瘍の縮小および消失を導くことができる。
【0145】
一実施形態では、本発明は、HLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチドのコンフォメーションエピトープに結合する単離された組換え抗原結合性タンパク質であって、以下の特性の1つまたは複数を示す、抗原結合性タンパク質を提供する:(i)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、218、234、250、266、282、298、314、330、346、362、378、394、410、426、442、458、474、490、506、および522、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む;(ii)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、226、242、258、274、290、306、322、338、354、370、386、402、418、434、450、466、482、498、514、および530、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む;(iii)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368、384、400、416、432、448、464、480、496、512、および528、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;ならびに配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、232、248、264、280、296、312、328、344、360、376、392、408、424、440、456、472、488、504、520、および536、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインを含む;(iv)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、220、236、252、268、284、300、316、332、348、364、380、396、412、428、444、460、476、492、508、および524、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、228、244、260、276、292、308、324、340、356、372、388、404、420、436、452、468、484、500、516、および532、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;ならびに配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、230、246、262、278、294、310、326、342、358、374、390、406、422、438、454、470、486、502、518、および534、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様な配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメインを含む;(v)25℃における表面プラズモン共鳴アッセイで測定されると、単量体HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドに約20nM未満の結合解離平衡定数(KD)で結合する;(vi)25℃における表面プラズモン共鳴アッセイで測定されると、単量体HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドに約25nM未満の結合解離平衡定数(KD)で結合する;(vii)発光アッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に約6nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には結合しない;(viii)発光アッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に約1nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞には実質的に結合しない;(ix)フローサイトメトリーアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 11-19ペプチドを発現する細胞に約30nM未満のEC50で結合する;(x)フローサイトメトリーアッセイによって決定されると、HLA-A2:HPV16E7 82-90ペプチドを発現する細胞に約75nM未満のEC50で結合する;(xi)配列番号538と1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれよりも多くのアミノ酸が異なるHLA-A2によりディスプレイされるオフターゲットペプチドには結合しない;ならびに(xii)配列番号539と1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれよりも多くのアミノ酸が異なるHLA-A2によりディスプレイされるオフターゲットペプチドには結合しない。
【0146】
本発明の抗原結合性タンパク質は、上述の生物学的特性の1つまたは複数、またはこれらの任意の組合せを有し得る。本発明の抗原結合性タンパク質の他の生物学的特性は、本明細書の実施例を含めた本開示の精査から当業者には明らかになろう。
【0147】
エピトープマッピングおよび関連する技術
本発明は、HLA-A2によりディスプレイされるHPV16E7ペプチドの1つまたは複数のドメイン内に見いだされる1つまたは複数のアミノ酸と相互作用する抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む。エピトープは、上述のHPV16E7分子のドメインのいずれかまたは両方内に位置する複数の連続していないアミノ酸(またはアミノ酸配列)(例えば、コンフォメーションエピトープ)からなり得る。
【0148】
抗原結合性タンパク質がポリペプチドまたはタンパク質内の「1つまたは複数のアミノ酸と相互作用する」かどうかを決定するために、当業者に公知の種々の技法を使用することができる。例示的な技法としては、例えば、Antibodies, Harlow and Lane (Cold
Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY)に記載されているものなどの慣例の交差遮断アッセイが挙げられる。他の方法としては、アラニンスキャニング変異性分析、ペプチドブロット分析(Reineke (2004) Methods Mol. Biol. 248: 443-63)
、ペプチド切断分析結晶学的研究およびNMR分析が挙げられる。さらに、エピトープ切り出し、エピトープ抽出および抗原の化学修飾などの方法を利用することができる(Tomer (2000) Prot. Sci. 9: 487-496)。抗原結合性タンパク質と相互作用するポリペ
プチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般に述べると、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素で標識し、その後、抗原結合性タンパク質を重水素で標識されたタンパク質に結合させることを伴う。次に、タンパク質/抗原結合性タンパク質複合体を水に移し、抗原結合性タンパク質複合体によって保護されているアミノ酸内の交換可能なプロトンが界面の一部ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンよりも遅い速度で重水素から水素への逆交換を受ける。結果として、タンパク質/抗原結合性タンパク質界面の一部を形成するアミノ酸は重水素を保持し得、したがって、界面に含まれないアミノ酸と比較して比較的高い質量を示す。抗原結合性タンパク質の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析法に供し、それにより、抗原結合性タンパク質が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素で標識された残基を明らかにする。例えば、Ehring (1999)
Analytical Biochemistry 267: 252-259; Engen and Smith (2001) Anal. Chem. 73: 256A-265Aを参照されたい。
【0149】
「エピトープ」という用語は、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、連続したアミノ酸、またはタンパク質の3次フォールディングによって並置した連続していないアミノ酸の両方で形成されたものであり得る。連続したアミノ酸で形成されたエピトープは、一般には、変性溶媒に曝露しても保持されるが、3次フォールディングによって形成されたエピトープは、一般には、変性溶媒を用いた処理で消失する。エピトープは、一般には、独特の空間コンフォメーション内に少なくとも3つ、より一般的には少なくとも5つまたは8~10のアミノ酸を含む。
【0150】
抗原構造に基づく抗体プロファイリング(ASAP)としても公知の修飾補助プロファイリング(MAP)は、同じ抗原を対象とする多数のモノクローナル抗原結合性タンパク質、例えば抗体(mAb)を、化学的にまたは酵素的に修飾された抗原表面への各抗体の結合プロファイルの類似性に従ってカテゴリー分けする方法である(その全体が参照により明確に本明細書に組み込まれるUS2004/0101920を参照されたい)。各カテゴリーは、別のカテゴリーによって表されるエピトープとは明確に異なるか、または部分的に重複するかのいずれかの独特のエピトープを反映することができる。この技術により、遺伝的に同一の抗原結合性タンパク質を迅速にフィルタリングすることが可能になり、したがって、特徴付けの焦点を遺伝的に別個の抗原結合性タンパク質に当てることができる。ハイブリドーマスクリーニングに適用する場合、MAPにより、所望の特性を有する抗原結合性タンパク質を産生する稀なハイブリドーマクローンを同定することが容易になる。MAPを使用して、本発明の抗原結合性タンパク質を異なるエピトープに結合する抗原結合性タンパク質の群に選別することができる。
【0151】
本発明は、本明細書の表1に記載の特定の例示的な抗原結合性タンパク質のいずれか、または表1に記載の例示的な抗原結合性タンパク質のいずれかのCDR配列を有する抗原結合性タンパク質と同じエピトープまたは当該エピトープの一部に結合する抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む。同様に、本発明は、HLA-A2:HPV16E7またはその断片との結合について、本明細書の表1に記載の特定の例示的な抗原結合性タンパク質のいずれか、または表1に記載の例示的な抗原結合性タンパク質のいずれかのCDR配列を有する抗原結合性タンパク質と競合する抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質も含む。
【0152】
抗原結合性タンパク質が、参照抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と、同じエピトープに結合するかまたは結合について競合するかを、当技術分野で公知の慣例の方法を使用することによって容易に決定することができる。例えば、試験抗原結合性タンパク質が本発明の参照抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗原結合性タンパク質を、HLA-A2:HPV16E7タンパク質またはペプチドに飽和条件下で結合させる。次に、試験抗原結合性タンパク質のHLA-A2:HPV16E7分子に結合する能力を評価する。参照抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質との飽和結合後に試験抗原結合性タンパク質がHLA-A2:HPV16E7に結合することができれば、試験抗原結合性タンパク質が参照抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質とは異なるエピトープに結合すると結論づけることができる。他方では、参照抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質との飽和結合後に試験抗原結合性タンパク質がHLA-A2:HPV16E7タンパク質に結合することができなければ、試験抗原結合性タンパク質は、本発明の参照抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質が結合するエピトープと同じエピトープに結合する可能性がある。
【0153】
抗原結合性タンパク質が参照抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と結合について競合するかどうかを決定するために、上記の結合方法体系を2方向で実施する:第1の方向では、参照抗原結合性タンパク質をHLA-A2:HPV16E7タンパク質に飽和条件下で結合させ、その後、試験抗原結合性タンパク質のHLA-A2:HPV16E7分子への結合を評価する。第2の方向では、試験抗原結合性タンパク質をHLA-A2:HPV16E7分子に飽和条件下で結合させ、その後、参照抗原結合性タンパク質のHLA-A2:HPV16E7分子への結合を評価する。どちらの方向でも最初の(飽和)抗原結合性タンパク質のみがHLA-A2:HPV16E7分子に結合することができる場合には、試験抗原結合性タンパク質と参照抗原結合性タンパク質がHLA-A2:HPV16E7との結合について競合すると結論づけられる。当業者には理解される通り、参照抗原結合性タンパク質と結合について競合する抗原結合性タンパク質は、必ずしも参照抗原結合性タンパク質と同一のエピトープに結合するのではない可能性があり、参照抗原結合性タンパク質の結合が重複するまたは隣接するエピトープへの結合によって立体的に遮断される可能性もある。
【0154】
2つの抗原結合性タンパク質は、それぞれが他方の抗原への結合を競合的に阻害する(遮断する)場合、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、競合結合アッセイで測定されると、1倍、5倍、10倍、20倍または100倍過剰の一方の抗原結合性タンパク質は他方の結合を少なくとも50%であるが、好ましくは75%、90%またはさらには99%阻害する(例えば、Junghans et al., Cancer Res. 1990 50: 1495-1502を参照されたい)。あるいは、2つの抗原結合性タンパク質は、一方の抗原結合性タンパク質の結合を低減または排除する抗原におけるアミノ酸突然変異の本質的に全てにより他方の結合も低減または排除される場合、同じエピトープを有する。2つの抗原結合性タンパク質は、一方の抗原結合性タンパク質の結合を低減または排除するアミノ酸突然変異の一部により他方の結合も低減または排除される場合、重複するエピトープを有する。
【0155】
次いで、追加的な慣例の実験(例えば、ペプチド突然変異および結合分析)を行って、観察される試験抗原結合性タンパク質の結合の欠如が実際に参照抗原結合性タンパク質と同じエピトープへの結合に起因するのか、それとも立体的遮断(または別の現象)が観察される結合の欠如の原因であるのかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリーまたは当技術分野において利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的抗原結合性タンパク質結合アッセイを使用して実施することができる。
【0156】
免疫コンジュゲート
本発明は、がんを処置するために細胞毒または化学療法剤などの治療用部分とコンジュゲートした抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質(「免疫コンジュゲート」)を包含する。本明細書で使用される場合、「免疫コンジュゲート」という用語は、細胞毒、放射性薬剤、サイトカイン、インターフェロン、検出可能部分などの標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチドもしくはタンパク質または治療剤と化学的にまたは生物学的に連結した抗原結合性タンパク質を指す。抗原結合性タンパク質は、その標的と結合することができる限りは、分子に沿って任意の場所で、細胞毒、放射性薬剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチドまたは治療剤と連結することができる。免疫コンジュゲートの例としては、抗原結合性タンパク質-薬物コンジュゲートおよび抗原結合性タンパク質-毒素融合タンパク質が挙げられる。一実施形態では、作用剤は、HPV16E7またはHLA-A2:HPV16E7に対する第2の異なる抗体であり得る。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質を、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞、すなわち、HPV感染細胞に特異的な作用剤とコンジュゲートすることができる。抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質とコンジュゲートすることができる治療用部分の型には、処置される状態および実現される所望の治療効果を考慮に入れる。免疫コンジュゲートを形成するための適切な作用剤の例は、当技術分野で公知である;例えば、PCT公開第WO05/103081号を参照されたい。
【0157】
キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体(CAR)により、T細胞特異性が、がん細胞の表面上に発現される、抗体に認識される抗原の方へ向け直され、一方、T細胞受容体(TCR)により、細胞内腫瘍抗原が含まれるように標的の範囲が広がる。B細胞分化抗原CD19に特異的な、CARにより向け直されたT細胞は、B細胞悪性腫瘍の処置における劇的な有効性が示されており、一方、TCRにより向け直されたT細胞は、固形がんに罹患している患者における利点が示されている。Stauss et al.は、がんの処置における使用のための治療用
CARおよびTCRを改変するため、例えば、抗原特異的エフェクター機能を増強し、操作されたT細胞の毒性を限定するための戦略を記載している(Current Opinion in Pharmacology 2015, 24: 113-118)。
【0158】
本発明の1つの態様は、HLA-A2によって腫瘍細胞の表面上にディスプレイされるHPV16E7ペプチド、例えば、HPV16E7のアミノ酸残基11~19または82~90を含むペプチドなどに特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む。本発明の一実施形態では、本明細書に記載のCARは、細胞外標的特異的結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータもしくはFcRガンマに由来するシグナル伝達ドメインなど)、および/または、これだけに限定されないが、例えば、CD28、CD137、CD134もしくはCD278などの共刺激分子に由来する1つもしくは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、CARは、CD8アルファヒンジなどの、細胞外結合性ドメインと膜貫通ドメインの間のヒンジまたはスペーサー領域を含む。本発明の別の実施形態では、本明細書に記載のCARは、細胞外標的特異的結合性ドメイン、およびT細胞受容体定常ドメイン(「T-ボディ構築物」)を含む。
【0159】
本明細書に記載のCARのいずれかへの使用のために、細胞外標的特異的結合性ドメインは、本発明の抗原結合性タンパク質のFab、Fab’、(Fab’)2、Fv、または単鎖Fv(scFv)を含み得ることが理解されるべきである。
【0160】
本明細書で使用される場合、CARの結合性ドメインまたは細胞外ドメインにより、目的の標的抗原に結合する能力を有するCARがもたらされる。結合性ドメインは、生体分子(例えば、細胞表面受容体または腫瘍タンパク質、またはその構成成分)を特異的に認識し、それに結合する能力を有する任意のタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、またはペプチドであり得る。結合性ドメインは、任意の天然に存在する、合成の、半合成の、または組換えによって作製された、目的の生体分子に対する結合パートナーを含む。例えばまた、本明細書にさらに記載されている通り、結合性ドメインは、抗体軽鎖および重鎖可変領域であってよい、または軽鎖および重鎖可変領域は単鎖にいずれかの方向で共に接合していてよい(例えば、VL-VHまたはVH-VL)。ウエスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリー、または表面プラズモン共鳴分析(例えば、BIACORE分析を使用する)を含めた、特定の標的に特異的に結合する本開示の結合性ドメインを同定するための種々のアッセイが公知であり、また、本明細書に記載されている。標的は、それに対して腫瘍死滅をもたらすエフェクター免疫応答が誘発されることが望ましい、臨床的に興味深い任意の抗原であり得る。一実施形態では、キメラ抗原受容体の結合性ドメインの標的抗原は、腫瘍細胞の表面上にHLA-A2により提示されるHPV16E7ペプチドのコンフォメーションエピトープ、例えば、HPV16E7のアミノ酸残基11~19または82~90を含むペプチドなどである。
【0161】
例示的な結合性ドメインとしては、scFvなどの抗体の抗原結合性断片、scTCR、受容体の細胞外ドメイン、細胞表面分子/受容体のリガンド、またはその受容体結合性ドメイン、および腫瘍結合性タンパク質などの抗原結合性タンパク質が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明のCARに含められる抗原結合性ドメインは、可変領域(Fv)、CDR、Fab、scFv、VH、VL、ドメイン抗体バリアント(dAb)、ラクダ科動物抗体(VHH)、フィブロネクチン3ドメインバリアント、アンキリンリピートバリアントおよび他のタンパク質スキャフォールドに由来する他の抗原特異的結合性ドメインであり得る。
【0162】
一実施形態では、CARの結合性ドメインは、抗HLA-A2:HPV16E7単鎖抗体(scFv)であり、マウスscFv、ヒトscFvまたはヒト化scFvであり得る。単鎖抗体は、所望の標的に特異的なハイブリドーマのV領域遺伝子からクローニングすることができる。可変領域重鎖(VH)および可変領域軽鎖(VL)のクローニングに使用することができる技法は、例えば、Orlandi et al., PNAS, 1989; 86: 3833-3837に記載されている。したがって、ある特定の実施形態では、結合性ドメインは、抗体由
来の結合性ドメインを含むが、抗体に由来しない結合性ドメインであってもよい。抗体由来の結合性ドメインは、抗体の断片または抗体の1つもしくは複数の断片の遺伝子操作産物であり得、当該断片は、抗原との結合に関与するものである。
【0163】
ある特定の実施形態では、本発明のCARは、分子の妥当な間隔およびコンフォメーションで付加された種々のドメイン間のリンカーを含み得る。例えば、一実施形態では、結合性ドメインVHまたはVLの間に、1~10の間のアミノ酸長であり得るリンカーが存在し得る。他の実施形態では、キメラ抗原受容体のドメインのいずれかの間のリンカーは、1~20アミノ酸長または20アミノ酸長であり得る。この点について、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸長であり得る。さらなる実施形態では、リンカーは、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸長であり得る。本明細書に記載の数を含めた範囲、例えば、10~30アミノ酸長のリンカーも本明細書に含まれる。
【0164】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のCARへの使用に適したリンカーは、柔軟なリンカーである。適切なリンカーは、容易に選択することができ、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸を含め、1アミノ酸(例えば、Gly)から20アミノ酸まで、2アミノ酸から15アミノ酸まで、3アミノ酸から12アミノ酸までなどの適切な種々の長さのいずれかであり得、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、または7アミノ酸であり得る。
【0165】
例示的な柔軟なリンカーとしては、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当技術分野で公知の他の柔軟なリンカーが挙げられる。グリシンポリマーおよびグリシン-セリンポリマーは、比較的構造化されておらず、したがって、本明細書に記載のCARなどの融合タンパク質のドメイン間の中性つなぎ鎖として機能することができる。グリシンは、ファイ-プサイ空間にアラニンよりも大きく接近し、側鎖がより長い残基よりも制限がはるかに小さい(Scheraga, Rev. Computational Chem. 11173-142 (1992)を参照されたい)。CARの設計は、全てまたは部分的に柔軟なリンカーを含み得、したがって、リンカーは、所望のCAR構造をもたらすために、柔軟なリンカー、ならびに、より柔軟性の低い構造を付与する1つまたは複数の部分を含み得ることが当業者には理解されよう。
【0166】
CARの結合性ドメインの後には「スペーサー」または「ヒンジ」が続いてよく、これは、妥当な細胞間接触、抗原結合性および活性化を可能にするために抗原結合性ドメインをエフェクター細胞表面から離れるよう動かす領域を指す(Patel et al., Gene Therapy, 1999; 6: 412-419)。CAR内のヒンジ領域は、一般に、膜貫通(TM)ドメ
インと結合性ドメインの間にある。ある特定の実施形態では、ヒンジ領域は、免疫グロブリンヒンジ領域であってよく、野生型免疫グロブリンヒンジ領域であっても、または変更された野生型免疫グロブリンヒンジ領域であってもよい。本明細書に記載のCARに使用される他の例示的なヒンジ領域としては、CD8アルファ、CD4、CD28およびCD7などの1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が挙げられ、これは、これらの分子に由来する野生型ヒンジ領域であってもよく、または変更されたものであってもよい。一実施形態では、ヒンジ領域は、CD8アルファヒンジを含む。
【0167】
「膜貫通」領域またはドメインは、細胞外結合性部分を免疫エフェクター細胞の原形質膜に繋ぎ止め、結合性ドメインの標的抗原への結合を容易にするCARの部分である。膜貫通ドメインは、CD3ゼータ膜貫通ドメインであってよいが、CD8アルファ、CD4、CD28、CD45、CD9、CD16、CD22、CD33、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、およびCD154から得られるものを含む他の膜貫通ドメインも使用することができる。一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD137の膜貫通ドメインである。ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、合成されたものであり、その場合、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。
【0168】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、および、CARが結合した標的細胞への細胞傷害因子の放出を含めた細胞傷害活性、または細胞外CARドメインへの抗原結合で引き出される他の細胞応答を引き出すために標的抗原への有効なCAR結合のメッセージを免疫エフェクター細胞の内部へ伝達することに関与するキメラ抗原受容体タンパク質の部分を指す。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊化された機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含めた活性の援助であり得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、特殊化された機能を果たすように細胞を方向付けるタンパク質の一部を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、ドメイン全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮された部分を使用する限り、そのような短縮された部分によりエフェクター機能シグナルが伝達される限りは、そのような短縮された部分をドメイン全体の代わりに使用することができる。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するために十分な、細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮された部分を含むものとする。細胞内シグナル伝達ドメインは、「シグナルトランスダクションドメイン」としても公知であり、一般には、ヒトCD3またはFcRy鎖の一部に由来する。
【0169】
T細胞受容体単独で生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であること、および二次または共刺激シグナルも必要であることが公知である。したがって、T細胞活性化は、2つの別個のクラスの細胞質内シグナル伝達配列:T細胞受容体(一次細胞質内シグナル伝達配列)を通じて抗原依存的一次活性化を開始するもの、および抗原非依存的様式で作用して二次または共刺激シグナルをもたらすもの(二次細胞質内シグナル伝達配列)によって媒介されると言うことができる。一次細胞質内シグナル伝達配列により、T細胞受容体複合体の一次活性化が阻害性に、または阻害性にのいずれかで制御される。共刺激様式で作用する一次細胞質内シグナル伝達配列は、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含有し得る。
【0170】
本発明において特に使用される一次細胞質内シグナル伝達配列を含有するITAMの例としては、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものが挙げられる。いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載の抗HLA-A2:HPV16E7 CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータまたはFcRガンマに由来する。
【0171】
本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル伝達ドメイン」または「共刺激ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの部分を指す。共刺激分子は、抗原に結合した際のTリンパ球の効率的な活性化および機能に必要な第2のシグナルをもたらす、抗原受容体またはFc受容体以外の細胞表面分子である。そのような共刺激分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、PD-1、ICOS(CD278)、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKD2C、B7-H2およびCD83に特異的に結合するリガンドが挙げられる。したがって、本開示は、CD3ゼータおよび4-1BBに由来する例示的な共刺激ドメインを提供するが、他の共刺激ドメインも本明細書に記載のCARとの使用が意図されている。1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含めることにより、CAR受容体を発現するT細胞の有効性および増大を増強することができる。細胞内シグナル伝達および共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインのカルボキシル末端と任意の順序でタンデムに連結することができる。
【0172】
CD3またはFcRガンマ由来のシグナル伝達ドメインを含有するように操作されたscFvに基づくCARにより、T細胞活性化およびエフェクター機能のための強力なシグナルが送達されることが示されているが、これらは、同時の共刺激シグナルの不在下でT細胞の生存および増大を促進するシグナルを引き出すためには十分でない。結合性ドメイン、ヒンジ、膜貫通およびCD3ゼータまたはFcRガンマに由来するシグナル伝達ドメインを1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、CD28、CD137、CD134およびCD278に由来する細胞内共刺激ドメイン)と共に含有する他のCARにより、in vitroにおいて、ならびに動物モデルおよびがん患者において、抗腫瘍活性をより有効に方向付けること、ならびに、サイトカイン分泌、溶解活性、CAR発現T細胞の生存および増殖を増大させることができる(Milone et al., Molecular
Therapy, 2009; 17: 1453-1464; Zhong et al., Molecular Therapy, 2010;
18: 413-420; Carpenito et al., PNAS, 2009; 106: 3360-3365)。
【0173】
一実施形態では、本発明のHLA-A2:HPV16E7 CARは、(a)結合性ドメインとして抗HLA-A2:HPV16E7 scFv(例えば、表1に記載のHLA-A2:HPV16E7抗体の任意の1つまたは複数由来の結合性領域(例えば、CDRまたは可変ドメイン)を有するscFv)(b)ヒトCD8アルファに由来するヒンジ領域、(c)ヒトCD8アルファ膜貫通ドメイン、ならびに(d)ヒトT細胞受容体CD3ゼータ鎖(CD3)細胞内シグナル伝達ドメイン、および必要に応じてCD28、CD137、CD134、およびCD278に由来する1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、異なるタンパク質ドメインをアミノ末端からカルボキシル末端まで、以下の順序で配置する:結合性ドメイン、ヒンジ領域および膜貫通ドメイン。細胞内シグナル伝達ドメインおよび必要に応じた共刺激シグナル伝達ドメインを膜貫通カルボキシ末端に任意の順序でタンデムに連結して、単鎖キメラポリペプチドを形成する。一実施形態では、HLA-A2:HPV16E7 CARをコードする核酸構築物は、異なるコード配列、例えば、(5’~3’)ヒト抗HLA-A2:HPV16E7 scFvのコード配列、ヒトCD8アルファ-ヒンジのコード配列、ヒトCD8アルファ膜貫通ドメインのコード配列、およびCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインのコード配列を含む核酸分子を含むキメラ核酸分子である。別の実施形態では、HLA-A2:HPV16E7 CARをコードする核酸構築物は、異なるコード配列、例えば、(5’~3’)ヒト抗HLA-A2:HPV16E7 scFvのコード配列、ヒトCD8アルファ-ヒンジのコード配列、ヒトCD8アルファ膜貫通ドメインのコード配列、CD137共刺激ドメインのコード配列、およびCD3ゼータ共刺激ドメインのコード配列を含む核酸分子を含むキメラ核酸分子である。ある特定の実施形態では、HLA-A2:HPV16E7 CARをコードする核酸構築物は、異なるコード配列、例えば、(5’~3’)ヒト抗HLA-A2:HPV16E7 scFvのコード配列、ヒトCD8アルファ-ヒンジのコード配列、ヒトCD8アルファ膜貫通ドメインのコード配列、CD137共刺激ドメインのコード配列、およびCD3ゼータ共刺激ドメインのコード配列を含む核酸分子を含むキメラ核酸分子であり、ここで、抗HLA-A2:HPV16E7 scFvは、配列番号2、34、82、194、282、および506からなる群から選択されるVH、ならびに配列番号10、42、90、202、290および514からなる群から選択されるVLを含む。一部の実施形態では、本発明は、配列番号540、541、542、543、544および545からなる群から選択されるHLA-A2:HPV16E7 CARをコードする核酸分子を含む。
【0174】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のCARをコードするポリヌクレオチドをベクターに挿入する。「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、そのタンパク質の発現および/またはポリヌクレオチドのクローニングをもたらすために共有結合により挿入することができるビヒクルを指す。そのようなベクターは「発現ベクター」と称することもできる。単離されたポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用してベクターに挿入することができ、例えば、これだけに限定することなく、ベクターを、妥当な制限酵素を使用して消化することができ、次いで、マッチする制限末端を有する単離されたポリヌクレオチドとライゲーションすることができる。発現ベクターは、細胞において転写させることができる遺伝子産物の少なくとも一部をコードする異種または改変された核酸配列を組み入れ、発現させる能力を有する。ほとんどの場合、次いで、RNA分子をタンパク質に翻訳する。発現ベクターは、種々の調節配列を含有し得、これらは、特定の宿主生物体における作動可能に連結したコード配列の転写、および場合によって翻訳に必要な核酸配列と称される。転写および翻訳を支配する調節配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能も果たし、以下で考察する核酸配列を含有し得る。発現ベクターは、追加的なエレメントを含み得、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有し得、したがって、2つの生物体において、例えば、発現のためにヒト細胞において、ならびにクローニングおよび増幅のために原核生物宿主において維持することが可能になる。
【0175】
発現ベクターは、そのそれぞれの宿主細胞における効率的な遺伝子の転写および翻訳のための、CMV、PGKおよびEF1アルファプロモーターなどのプロモーター配列、リボソーム認識および結合性TATAボックス、ならびに3’UTRAAUAAA転写終結配列などの、必要な5’上流および3’下流制御エレメントを有し得る。他の適切なプロモーターとしては、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)、HIV LTRプロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、EBV最初期プロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターである構成的プロモーターが挙げられる。これだけに限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターを含めたヒト遺伝子プロモーターも使用することができる。ある特定の実施形態では、誘導性プロモーターもキメラ抗原受容体を発現するベクターの一部として考えられている。これにより、目的のポリヌクレオチド配列の発現をオンにするまたは発現をオフにすることができる分子スイッチがもたらされる。誘導性プロモーターの例としては、これだけに限定されないが、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、またはテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
【0176】
発現ベクターは、発現されるCARに組み入れられる6×-ヒスチジン、c-Myc、およびFLAGタグなどの追加的な配列を有し得る。したがって、発現ベクターを、発現ベクターで行われる目的の核酸(複数可)の効率的な転写を容易にするまたは増強することができる、時にはエンハンサー配列、プロモーター領域および/またはターミネーター配列として機能し得る5’および3’非翻訳制御配列を含有するように操作することができる。発現ベクターを、特定の細胞型、細胞の場所、または組織型における複製および/または発現機能性(例えば、転写および翻訳)のために操作することもできる。発現ベクターは、宿主またはレシピエント細胞においてベクターを維持するための選択マーカーを含み得る。
【0177】
ベクターの例は、プラスミド、自律複製配列、および転移因子である。さらなる例示的なベクターとしては、限定することなく、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、ラムダファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージ、および動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして有用な動物ウイルスのカテゴリーの例としては、限定することなく、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。発現ベクターの例は、哺乳動物細胞における発現のためのLenti-X(商標)バイシストロン発現系(Neo)ベクター(Clontrch)、pClneoベクター(Promega);哺乳動物細胞におけるレンチウイルス媒介性遺伝子移入および発現のためのpLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)、およびpLenti6.2N5-GW/lacZ(Invitrogen)である。哺乳動物細胞においてキメラタンパク質を発現させるために、本明細書に開示されるCARのコード配列をそのような発現ベクターにライゲーションすることができる。
【0178】
ある特定の実施形態では、本発明のCARをコードする核酸は、ウイルスベクター内に提供される。ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、または泡沫状ウイルスに由来するものであり得る。本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源のエレメントを少なくとも1つ含み、ウイルスベクター粒子にパッケージングすることが可能な核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターには、必須ではないウイルス遺伝子の代わりに、本明細書に記載の種々のキメラタンパク質のコード配列を含めることができる。ベクターおよび/または粒子は、in vitroまたはin vivoのいずれかにおいてDNA、RNAまたは他の核酸を細胞に移入する目的で利用することができる。多数の形態のウイルスベクターが当技術分野で公知である。
【0179】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のCARのコード配列を含有するウイルスベクターは、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである。「レトロウイルスベクター」という用語は、主にレトロウイルスに由来する構造的および機能的遺伝子エレメントを含有するベクターを指す。「レンチウイルスベクター」という用語は、主にレンチウイルスに由来するLTRの外側の構造的および機能的遺伝子エレメントを含有するベクターを指す。
【0180】
本明細書において使用するためのレトロウイルスベクターは、任意の公知のレトロウイルス(例えば、C型レトロウイルス、例えば、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、Friend、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV))に由来し得る。本発明のレトロウイルスとしては、ヒトT細胞白血病ウイルス、HTLV-1およびHTLV-2、ならびにレトロウイルスのレンチウイルスファミリー、例えば、ヒト免疫不全ウイルス、HIV-1、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ免疫不全ウイルス(EIV)、および他のクラスのレトロウイルスなども挙げられる。
【0181】
本明細書において使用するためのレンチウイルスベクターは、ゆっくりと発達する疾患を生じさせるレトロウイルスの群(または属)であるレンチウイルスに由来するベクターを指す。この群に含まれるウイルスとしては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV1型、およびHIV2型を含む);ビスナ・マエディ;ヤギ関節炎脳炎ウイルス;ウマ伝染性貧血ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。組換えレンチウイルスの調製は、Dull et al. and Zufferey et al. (Dull et al., J. Virol., 1998; 72:
8463-8471 and Zufferey et al., J. Virol. 1998; 72: 9873-9880)による
方法を使用して達成することができる。
【0182】
本発明において使用するためのレトロウイルスベクター(すなわち、レンチウイルスベクターおよび非レンチウイルスベクターの両方)は、標準のクローニング技法を使用し、所望のDNA配列を、本明細書に記載の順序および方向で組み合わせることによって形成することができる(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. M.
et al. (eds.) Greene Publishing Associates, (1989), Sections 9.10-9.14およびその他の標準の実験マニュアル; Eglitis, et al. (1985) Science 230: 1395-1398; Danos and Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 6460-6464; Wilson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 3014-3018; Armentano et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6141-6145;
Huber et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 8039-8043; Ferry
et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 8377-8381; Chowdhury et al. (1991) Science 254: 1802-1805; van Beusechem et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7640-7644; Kay et al. (1992) Human Gene Therapy 3: 641-647; Dai et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:
10892-10895; Hwu et al. (1993) J. Immunol 150: 4104-4115; 米国特許第
4,868,116号;米国特許第4,980,286号;PCT出願WO89/07136;PCT出願WO89/02468;PCT出願WO89/05345;およびPCT出願WO92/07573)。
【0183】
ベクターの形成に使用するためのレトロウイルス配列(すなわち、レンチウイルス配列および非レンチウイルス配列の両方)を得るために適した供給源としては、例えば、Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、Mdを含めた市販の供給源から入手可能なゲノムRNAおよびcDNAが挙げられる。配列は、化学的に合成することもできる。
【0184】
HLA-A2:HPV16E7 CARを発現させるために、ベクターを宿主細胞に導入して、宿主細胞内でのポリペプチドの発現を可能にすることができる。発現ベクターは、これだけに限定することなく、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択マーカー、およびシグナル配列を含めた、発現を調節するための種々のエレメントを含有し得る。これらのエレメントは、上記の通り、当業者が必要に応じて選択することができる。例えば、プロモーター配列を、ベクター内のポリヌクレオチドの転写が促進されるように選択することができる。適切なプロモーター配列としては、限定することなく、T7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、ベータアクチンプロモーター、EF1aプロモーター、CMVプロモーター、およびSV40プロモーターが挙げられる。エンハンサー配列を、ポリヌクレオチドの転写が増強されるように選択することができる。選択マーカーを、ベクターが挿入された宿主細胞をベクターを挿入されていない宿主から選択することが可能になるように選択することができ、例えば、選択マーカーは、抗生物質耐性を付与する遺伝子であってよい。シグナル配列は、発現されたポリペプチドの、宿主細胞の外部への輸送が可能になるように選択することができる。
【0185】
ポリヌクレオチドのクローニングのために、ベクターを宿主細胞(単離された宿主細胞)に導入して、ベクター自体の複製を可能にし、それにより、ベクターに含有されるポリヌクレオチドのコピーを増幅することができる。クローニングベクターは、一般に、限定することなく、複製開始点、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、および選択マーカーを含む配列構成成分を含有し得る。これらのエレメントは、当業者が必要に応じて選択することができる。例えば、複製開始点は、宿主細胞におけるベクターの自律複製が促進されるように選択することができる。
【0186】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に提示されるベクターを含有する単離された宿主細胞を提供する。ベクターを含有する宿主細胞は、ベクターに含有されるポリヌクレオチドの発現またはクローニングにおいて有用であり得る。適切な宿主細胞は、限定することなく、原核細胞、真菌細胞、酵母細胞、または哺乳動物細胞などの高等真核細胞を含み得る。この目的のための適切な原核細胞は、限定することなく、グラム陰性またはグラム陽性生物体などの真正細菌、例えば、Enterobacteriaceae、例えば、Escherichia、例えば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescans、およびShigella、ならびにB.subtilisおよびB.licheniformisなどのBacilli、P.aeruginosaなどのPseudomonas、ならびにStreptomycesを含む。
【0187】
本発明のCARを、当技術分野で公知のトランスフェクションおよび/または形質導入技法を使用して宿主細胞に導入する。本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」および「形質導入」という用語は、外因性核酸配列が宿主細胞に導入されるプロセスを指す。核酸は、宿主細胞DNAに組み込むこともでき、または染色体外で維持することもできる。核酸は、一過性に維持することもでき、または安定に導入することもできる。トランスフェクションは、これだけに限定されないが、リン酸カルシウム-DNA共沈澱、DEAEデキストラン媒介性トランスフェクション、ポリブレン媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、微量注射、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、および微粒子銃を含めた当技術分野で公知の種々の手段によって実現することができる。形質導入は、トランスフェクションによるものではなく、ウイルス感染による、ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターを使用する遺伝子(複数可)の送達を指す。ある特定の実施形態では、レトロウイルスベクターをパッケージングベクターによってビリオンに形質導入した後、細胞と接触させる。例えば、レトロウイルスベクターに保有される抗HLA-A2:HPV16E7 CARをコードする核酸を感染およびプロウイルス組込みによって細胞に形質導入することができる。
【0188】
本明細書で使用される場合、「遺伝子操作された」または「遺伝子改変された」という用語は、細胞における総遺伝子材料に余分の遺伝子材料をDNAまたはRNAの形態で追加することを指す。「遺伝子改変細胞」、「改変細胞」、および「向け直された細胞」という用語は、互換的に使用される。
【0189】
特に、免疫エフェクター細胞の特異性を目的の標的抗原、例えば、HLA-A2によりディスプレイされるHPV16E7ペプチド、例えば、アミノ酸残基11~19または82~90のコンフォメーションエピトープに向け直すために、本発明のCARを免疫エフェクター細胞に導入し、発現させる。
【0190】
本発明は、本明細書に記載のCARを発現する免疫エフェクター細胞を作出するための方法を提供する。一実施形態では、方法は、HPV16E7に関連する疾患または障害を有する対象などの対象から単離された免疫エフェクター細胞にトランスフェクトまたは形質導入し、したがって、免疫エフェクター細胞に本明細書に記載の1つまたは複数のCARを発現させることを含む。ある特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞を個体から単離し、in vitroにおけるさらなる操作を伴わずに遺伝子改変する。次いで、そのような細胞を個体に直接再投与することができる。さらなる実施形態では、免疫エフェクター細胞をまずin vitroにおいて活性化し、刺激して増殖させた後、CARを発現するように遺伝子改変する。この点について、免疫エフェクター細胞を遺伝子改変する(すなわち、本明細書に記載のCARを発現するように形質導入またはトランスフェクトする)前またはその後に培養することができる。
【0191】
本明細書に記載の免疫エフェクター細胞のin vitroにおける操作または遺伝子改変の前に、対象から細胞の供給源を得ることができる。特に、本明細書に記載のCARと共に使用するために、免疫エフェクター細胞はT細胞を含む。そのような組換えT細胞は、本明細書では、「T-ボディ」と称される。
【0192】
本発明の一実施形態では、T-ボディは、細胞外標的特異的結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータまたはFcRガンマに由来するシグナル伝達ドメインなど)、および/または、例えば、これだけに限定されないが、CD28、CD137、CD134もしくはCD278などの共刺激分子に由来する1つもしくは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む本発明のCARを含む。本発明の別の実施形態では、T-ボディは、細胞外標的特異的結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞外結合性ドメインと膜貫通ドメインの間のヒンジまたはスペーサー領域、細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータまたはFcRガンマに由来するシグナル伝達ドメインなど)、および/または共刺激分子に由来する1つもしくは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む本発明のCARを含む。本発明のさらに別の実施形態では、T-ボディは、細胞外標的特異的結合性ドメイン、およびT細胞受容体定常ドメインを含むT-ボディ構築物CARを含む。本明細書に記載のCARのいずれかを含むT-ボディに使用するために適した細胞外標的特異的結合性ドメインは、本発明の抗原結合性タンパク質のFab、Fab’、(Fab’)2、Fv、または単鎖Fv(scFv)を含み得る。
【0193】
T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含めたいくつかの供給源から得ることができる。ある特定の実施形態では、T細胞は、フィコール分離などの当業者に公知の任意の数の技法を使用して対象から採取された一単位の血液から得ることができる。一実施形態では、個体の循環血液由来の細胞をアフェレーシスによって得る。アフェレーシス産物は、一般には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含めたリンパ球を含有する。一実施形態では、アフェレーシスによって採取された細胞を、血漿画分を除去するため、および細胞をその後の処理のために妥当な緩衝剤または培地に入れるために洗浄することができる。本発明の一実施形態では、細胞をPBSで洗浄する。代替の実施形態では、洗浄された溶液は、カルシウムを欠き、また、マグネシウムを欠く可能性がある、または全てではないが多くの二価カチオンを欠く可能性がある。当業者には理解される通り、洗浄ステップは、半自動フロースルー遠心分離機を使用することによるものなどの当業者に公知の方法によって実現することができる。洗浄後、細胞を種々の生体適合性緩衝剤に、または他の生理食塩溶液に緩衝剤を伴ってもしくは伴わずに再懸濁することができる。ある特定の実施形態では、細胞を直接再懸濁させた培養培地中のアフェレーシス試料の望ましくない構成成分を除去することができる。
【0194】
ある特定の実施形態では、T細胞を、末梢血単核細胞(PBMC)から、赤血球を溶解させ、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離によって単球を枯渇させることによって単離する。CD28+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD45RA+T細胞、およびCD45RO+T細胞などの特定のT細胞の亜集団を正の選択または負の選択技法によってさらに単離することができる。例えば、負に選択された細胞に独特の表面マーカーに方向付けられる抗体の組合せを用いた負の選択によるT細胞集団の富化を実現することができる。本明細書において使用するための1つの方法は、負に選択された細胞に存在する細胞表面マーカーに方向付けられるモノクローナル抗体のカクテルを使用する負の磁気免疫粘着反応またはフローサイトメトリーによる細胞選別および/または選択である。例えば、CD4+細胞を負の選択によって富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、一般には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。フローサイトメトリーおよび細胞選別を使用して、本発明において使用するための目的の細胞集団を単離することもできる。
【0195】
本明細書に記載の方法を使用するCARを用いた遺伝子改変のためにPBMCを直接使用することができる。ある特定の実施形態では、PBMCの単離後、Tリンパ球をさらに単離し、ある特定の実施形態では、細胞傷害性T細胞およびヘルパーTリンパ球の両方を、遺伝子改変および/または増大の前またはその後のいずれかに、ナイーブT細胞亜集団、メモリーT細胞亜集団、およびエフェクターT細胞亜集団に選別することができる。標準の方法を使用することによってCD8+細胞を得ることができる。一部の実施形態では、CD8+細胞を、これらの型のCD8+細胞のそれぞれに関連する細胞表面抗原を同定することによってナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞にさらに選別する。複数の実施形態では、メモリーT細胞はCD8+末梢血リンパ球のCD62L+サブセットおよびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCを、抗CD8抗体および抗CD62L抗体を用いた染色後にCD62L-CD8+画分およびCD62L+CD8+画分に選別する。一部の実施形態では、セントラルメモリーTCMの表現型マーカーの発現は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、およびCD127を含み、グランザイムBについて陰性である。一部の実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD45RO+T細胞、CD62L+T細胞、CD8+T細胞である。一部の実施形態では、エフェクターT細胞は、CD62L、CCR7、CD28、およびCD127について陰性であり、グランザイムBおよびパーフォリンについて陽性である。一部の実施形態では、ナイーブCD8+Tリンパ球は、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127、およびCD45RAを含めたナイーブT細胞の表現型マーカーの発現を特徴とする。
【0196】
ある特定の実施形態では、CD4+T細胞を亜集団にさらに選別する。例えば、CD4+Tヘルパー細胞を、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによってナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞に選別することができる。CD4+リンパ球は、標準の方法によって得ることができる。一部の実施形態では、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD45RO-T細胞、CD45RA+T細胞、CD62L+CD4+T細胞である。一部の実施形態では、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L陽性かつCD45RO陽性である。一部の実施形態では、エフェクターCD4+細胞は、CD62LおよびCD45RO陰性である。
【0197】
T細胞などの免疫エフェクター細胞は、公知の方法を使用して単離した後に遺伝子改変することができる、または、免疫エフェクター細胞は、遺伝子改変する前にin vitroにおいて活性化し、増大させる(または前駆体の場合では分化させる)ことができる。別の実施形態では、T細胞などの免疫エフェクター細胞を、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を用いて遺伝子改変し(例えば、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターを用いて形質導入する)、次いで、in vitroにおいて活性化し、増大させる。T細胞を活性化し、増大させるための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第6,905,874号;米国特許第6,867,041号;米国特許第6,797,514号;WO2012079000、US2016/0175358に記載されている。一般に、そのような方法は、PBMCまたは単離されたT細胞を、一般にビーズまたは他の表面に付着させた抗CD3抗体および抗CD28抗体などの刺激性作用剤および共刺激性作用剤と、IL-2などの妥当なサイトカインを伴う培養培地中で接触させることを含む。同じビーズに付着させた抗CD3抗体および抗CD28抗体は「代理」抗原提示細胞(APC)として機能する。他の実施形態では、米国特許第6,040,177号;米国特許第5,827,642号;およびWO2012129514に記載されているものなどの方法を使用し、フィーダー細胞ならびに妥当な抗体およびサイトカインを用いてT細胞を活性化し、刺激して増殖させることができる。
【0198】
本発明は、HPVに関連する疾患または障害、例えば、がんを処置するための改変免疫エフェクター細胞の集団を提供し、改変免疫エフェクター細胞は、本明細書に開示されるHLA-A2:HPV16E7 CARを含む。
【0199】
本明細書に記載の通り調製したCARを発現する免疫エフェクター細胞は、本開示に基づいて当業者には明らかになる公知の技法またはその変形に従った養子免疫療法のための方法および組成物に利用することができる。例えば、Gruenbergらに対する米国特許出願
公開第2003/0170238号を参照されたい;Rosenbergに対する米国特許第4,
690,915号も参照されたい。
【0200】
一部の実施形態では、まず細胞をそれらの培養培地から収集し、次いで、細胞を、投与に適した培地および容器システム(「薬学的に許容される」担体)を用いて洗浄し、処置有効量に濃縮することによって細胞を製剤化する。適切な注入培地は、任意の等張性培地製剤、一般には、通常の生理食塩水、Normosol R(Abbott)またはPlasma-Lyte A(Baxter)であってよいが、水または乳酸リンゲル液中5%ブドウ糖も利用することができる。注入培地にヒト血清アルブミンを補充することができる。
【0201】
組成物中の処置有効量の細胞は、少なくとも2個の細胞(例えば、少なくとも1つのCD8+セントラルメモリーT細胞および少なくとも1つのCD4+ヘルパーT細胞サブセット)である、または、より一般には、102個よりも多くの細胞、および106個までおよび108個または109個の細胞を含み、1010個よりも多くの細胞であり得る。細胞の数は、意図される組成物の最終的な使用、同様にそれに含まれる細胞の型に依存する。
【0202】
細胞は、治療を受ける患者に対して自己または異種であり得る。所望であれば、処置は、本明細書に記載の通り、免疫応答の誘導を増強するために、マイトジェン(例えば、PHA)またはリンフォカイン、サイトカイン、および/またはケモカイン(例えば、IFN-γ、IL-2、IL-12、TNF-α、IL-18、およびTNF-β、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1αなど)の投与も含み得る。
【0203】
本発明のCARを発現する免疫エフェクター細胞集団は、単独で、または希釈剤および/もしくはIL-2もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の構成成分と組み合わせた医薬組成物としてのいずれかで投与することができる。簡単に述べると、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載のT細胞などのCARを発現する免疫エフェクター細胞集団を、1つもしくは複数の薬学的にもしくは生理的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含み得る。そのような組成物は、例えば中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝剤;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含み得る。本発明の組成物は、静脈内投与用に製剤化されることが好ましい。
【0204】
本明細書に記載の方法または当技術分野で公知の他の方法を使用して本明細書に記載のCAR発現T細胞を投与することより対象において誘導される抗腫瘍免疫応答は、感染細胞を死滅させることができる細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、およびヘルパーT細胞応答によって媒介される細胞性免疫応答を含み得る。B細胞を活性化し、したがって、抗体産生を導くことができるヘルパーT細胞によって主に媒介される体液性免疫応答も誘導することができる。本発明の組成物によって誘導される免疫応答の型を分析するために様々な技法を使用することができ、それらは、当技術分野において十分に記載されている;例えば、Current Protocols in Immunology, Edited by: John E. Coligan, Ada
M. Kruisbeek, David H. Margulies, Ethan M. Shevach, Warren Strober (2001) John Wiley & Sons, NY, N.Y。
【0205】
したがって、本発明は、HPVに関連する疾患または障害、例えば、HPV16E7陽性がんと診断された、またはそれを有する疑いがある、またはそれが発生するリスクがある個体を処置するための方法であって、個体に本明細書に記載のCARを発現する免疫エフェクター細胞を治療有効量で投与するステップを含む方法を提供する。
【0206】
一実施形態では、本発明は、HPV16E7陽性がんと診断された対象を処置する方法であって、HPV16E7陽性がんと診断された対象から免疫エフェクター細胞を取り出すステップと、前記免疫エフェクター細胞を、本発明のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含むベクターで遺伝子改変し、それにより、改変免疫エフェクター細胞の集団を作製するステップと、改変免疫エフェクター細胞の集団を同じ対象に投与するステップとを含む方法を提供する。一実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む。
【0207】
本明細書に記載の細胞組成物を投与するための方法は、対象において本発明のCARを直接発現するex vivoで遺伝子改変された免疫エフェクター細胞の再導入、または対象に導入されるとCARを発現する成熟免疫エフェクター細胞に分化する遺伝子改変された免疫エフェクター細胞の前駆体の再導入のいずれかをもたらすために有効な任意の方法を含む。1つの方法は、ex vivoにおいて末梢血T細胞に本発明による核酸構築物を用いて形質導入し、形質導入された細胞を対象に戻すことを含む。
【0208】
治療的投与および製剤
本発明は、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片、またはCARを含む治療用組成物を提供する。本発明による治療用組成物は、移動、送達、耐性などの改善をもたらすために製剤に組み入れられた適切な担体、賦形剤、および他の作用剤と共に投与される。多数の妥当な製剤は、全ての薬剤師に公知の処方集:Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAにおいて見いだすことができる。これらの製剤としては、例えば
、散剤、ペースト剤、軟膏剤、ゼリー剤、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性または陰イオン性)含有小胞(例えば、LIPOFECTIN(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト剤、水中油および油中水エマルション、エマルションカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powell et al. "Compendium of excipients for parenteral formulations" PDA (1998) J Pharm Sci Technol 52: 238-311も参照されたい。
【0209】
抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片の用量は、投与を受ける対象の年齢およびサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変動し得る。本発明の抗原結合性タンパク質を成体患者における疾患もしくは障害を処置するため、またはそのような疾患を防止するために使用する場合、本発明の抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片を、通常、体重1kg当たり約0.1~約60mg、より好ましくは体重1kg当たり約5~約60mg、約20~約50mg、約10~約50mg、約1~約10mg、または約0.8~約11mgの単一用量で投与することが有利である。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続時間を調整することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片を少なくとも約0.1mg~約800mg、約1~約500mg、約5~約300mg、または約10~約200mg、約100mgまで、または約50mgまでの初回用量として投与することができる。ある特定の実施形態では、初回用量の後、第2のまたは複数のその後の用量の抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片を、初回用量とほぼ同じまたはそれ未満であり得る量で投与することができ、ここで、その後の用量は、少なくとも1日~3日;少なくとも1週間、少なくとも2週間;少なくとも3週間;少なくとも4週間;少なくとも5週間;少なくとも6週間;少なくとも7週間;少なくとも8週間;少なくとも9週間;少なくとも10週間;少なくとも12週間;または少なくとも14週間隔てられる。
【0210】
種々の送達系、例えば、リポソームへの封入、微小粒子、マイクロカプセル、突然変異体ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが公知であり、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができる(例えば、Wu et al. (1987) J. Biol. Chem. 262: 4429-4432を参照されたい)。導入の方法としては、これだけに限定されないが、皮内経路、経皮経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および経口経路が挙げられる。組成物は、任意の都合のよい経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜の内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通じた吸収によって投与することができ、また、他の生物活性のある作用剤と一緒に投与することができる。投与は、全身または局所であり得る。医薬組成物は、小胞、特にリポソーム中に入れて送達することもできる(例えば、Langer (1990) Science 249: 1527-1533を参照されたい)。
【0211】
本発明の抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性断片を送達するためのナノ粒子の使用も本明細書において意図されている。抗原結合性タンパク質とコンジュゲートしたナノ粒子は、治療への適用および診断への適用の両方のために使用することができる。抗原結合性タンパク質とコンジュゲートしたナノ粒子ならびに調製および使用の方法は、参照により本明細書に組み込まれるArruebo, M., et al. 2009 ("Antibody-conjugated nanoparticles for biomedical applications" in J. Nanomat. Volume 2009, Article ID 439389, 24 pages, doi: 10.1155/2009/439389)により
詳細に記載されている。腫瘍細胞または自己免疫性組織細胞またはウイルス感染細胞を標的とするために、ナノ粒子を開発し、医薬組成物に含有される抗原結合性タンパク質とコンジュゲートすることができる。薬物送達用のナノ粒子は、例えば、そのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,257,740号、または米国特許第8,246,995号にも記載されている。
【0212】
ある特定の状況では、医薬組成物を徐放系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、徐放系は、組成物の標的の近傍に置くことができ、したがって、わずかな全身用量しか必要ない。
【0213】
注射用調製物は、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、頭蓋内注射、腹腔内注射および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を含み得る。これらの注射用調製物は、一般に公知の方法によって調製することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、上記の抗原結合性タンパク質またはその塩を注射に慣習的に使用される滅菌水性媒体または油性媒体中に溶解、懸濁、または乳化させることによって調製することができる。注射剤用の水性媒体としては、例えば、生理学的食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張溶液などがあり、これらを、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性物質[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加生成物)]などの妥当な可溶化剤と組み合わせて使用することができる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、これらを、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用することができる。このように調製された注射剤は、妥当なアンプルに充填されることが好ましい。
【0214】
本発明の医薬組成物は、標準の針およびシリンジを用いて皮下または静脈内に送達することができる。さらに、皮下送達に関しては、ペン型送達デバイスが本発明の医薬組成物の送達に容易に適用される。そのようなペン型送達デバイスは、再利用可能なものであっても使い捨てであってもよい。再利用可能なペン型送達デバイスでは、一般に、医薬組成物を含有する交換式カートリッジが利用される。カートリッジ中の医薬組成物が全て投与され、カートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に廃棄し、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。次いで、ペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てペン型送達デバイスでは、交換式カートリッジはない。その代わりに、使い捨てペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバー中に医薬組成物が保持された、予め充填された状態でもたらされる。医薬組成物がなくなり、リザーバーが空になったら、デバイス全体を廃棄する。
【0215】
多数の再利用可能なペン型および自動注入送達デバイスが本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される。例としては、これらに確実に限定されるものではないが、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Burghdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)がある。本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てペン型送達デバイスの例としては、これらに確実に限定されるものではないが、ほんの数例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park、IL)がある。
【0216】
上記の経口使用または非経口使用のための医薬組成物を、活性成分の用量に合うように適合させた単位用量の剤形に調製することが有利である。そのような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤、ピル、カプセル剤、注射(アンプル)、坐剤などが挙げられる。含有される抗原結合性タンパク質の量は、一般に、単位用量の剤形当たり約5~約500mgであり、特に、注射の形態では抗原結合性タンパク質が約5~約100mg含有されることが好ましく、他の剤形に関しては約10~約250mg含有されることが好ましい。
【0217】
抗原結合性タンパク質の治療的使用
本発明の抗体は、とりわけ、HPV16に関連するまたはHPV16に媒介される任意の疾患または障害を処置する、防止するおよび/または好転させるために有用である。例えば、本発明は、HPV関連がん(例えば、HPV16E7陽性がん)(腫瘍成長阻害)および/またはHPV感染などのHPVに関連する疾患または障害を、本明細書に記載の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質(または抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む医薬組成物)をそのような処置を必要とする患者に投与することによって処置する方法、ならびに、HPV関連がん(腫瘍成長阻害)および/またはHPV感染の処置に使用するための抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質(または抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含む医薬組成物)を提供する。本発明の抗原結合性タンパク質は、HPV関連がんもしくはHPV感染などの疾患もしくは障害もしくは状態を処置する、防止する、および/もしくは好転させるため、ならびに/またはそのような疾患、障害もしくは状態に付随する少なくとも1つの症状を好転させるために有用である。本明細書に記載の処置方法に関しては、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を単独療法として(すなわち、唯一の治療剤として)投与することもでき、1つまたは複数の追加的な治療剤(その例は、本明細書の他の箇所で記載されている)と組み合わせて投与することもできる。
【0218】
本発明の一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、これだけに限定されないが、HPV関連がん、例えば、頭頸部の扁平上皮細胞癌などの扁平上皮細胞癌、子宮頸がん、肛門生殖器のがん、中咽頭がんを含めた原発性がんまたは再発性がんに罹患している対象を処置するために有用である。
【0219】
抗原結合性タンパク質を使用して、HPV関連がんの初期または後期症状を処置することができる。一実施形態では、本発明の抗体またはその断片を使用して、進行がんまたは転移性がんを処置することができる。抗原結合性タンパク質は、腫瘍成長を低減または阻害または縮小することにおいて有用である。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質を用いた処置により、対象における腫瘍の40%よりも大きな退縮、50%よりも大きな退縮、60%よりも大きな退縮、70%よりも大きな退縮、80%よりも大きな退縮または90%よりも大きな退縮が導かれる。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質を使用して、腫瘍の再燃を防止することができる。ある特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、HPV関連がんを有する対象における無増悪生存または全生存を延長することにおいて有用である。一部の実施形態では、抗体は、化学療法または照射療法に起因する毒性を低減すると同時にHPV関連がんに罹患している患者の長期生存を維持することにおいて有用である。
【0220】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質は、慢性HPV感染に罹患している対象を処置するために有用である。一部の実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質は、宿主におけるウイルス力価を低下させることにおいて有用である。
【0221】
本発明の1つまたは複数の抗体を投与して、疾患または障害の症状または状態の1つまたは複数を軽減するまたは防止するまたはその重症度を低下させることができる。
【0222】
本発明の1つまたは複数の抗体を、HPV関連がんなどのHPVに関連する疾患または障害、およびHPV感染などの疾患または障害が発生するリスクがある患者に対して予防的に使用することも本明細書において意図されている。
【0223】
本発明のさらなる実施形態では、本抗体を、HPV関連がんなどのHPVに関連する疾患もしくは障害またはHPV感染に罹患している患者を処置するための医薬組成物を調製するために使用する。本発明の別の実施形態では、本抗体を、HPV関連がんまたはHPV感染を処置するために有用な、当業者に公知の任意の他の作用剤または任意の他の治療と共に、補助療法として使用する。
【0224】
併用療法および製剤
併用療法は、本発明のCARなどの本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質(例えば、本発明のCARを含む免疫エフェクター細胞)または本発明の医薬組成物、および、本発明の抗原結合性タンパク質と有利に組み合わせることができる任意の追加的な治療剤を含み得る。本発明の抗原結合性タンパク質は、HPV陽性がん、例えば、扁平上皮細胞癌、子宮頸がん、肛門生殖器のがん、頭頸部がん、または中咽頭がんなどのHPV16E7に関連する疾患または障害を処置するまたは阻害するために使用される1つまたは複数の抗がん薬または治療と相乗的に組み合わせることができる。
【0225】
本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を、腫瘍成長を阻害し、かつ/またはがん患者の生存を増強するための免疫賦活療法および/または免疫支持療法と組み合わせて使用することが本明細書において意図されている。免疫賦活療法は、抑制された免疫細胞に対する「ブレーキを外す」こと、または免疫応答を活性化するために「アクセルを踏む」ことのいずれかによって免疫細胞活性を強化するための直接免疫賦活療法を含む。例としては、他のチェックポイント受容体の標的化、ワクチン接種およびアジュバントが挙げられる。免疫支持モダリティは、免疫原性細胞死、炎症を促進することによって腫瘍の抗原性を増大することができる、または抗腫瘍免疫応答を促進する他の間接的な効果を有するものである。例としては、放射線、化学療法、抗血管新生剤、および外科手術が挙げられる。
【0226】
種々の実施形態では、1つまたは複数の本発明の抗原結合性タンパク質を、PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、BGB-A317もしくはREGN2810など)、PD-L1阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、もしくはREGN3504など)、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、別のT細胞共阻害剤もしくはリガンドのアンタゴニスト(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160もしくはVISTAに対する抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト[例えば、「VEGF-Trap」、例えば、アフリバーセプトもしくはUS7,087,411に記載されている他のVEGF阻害性融合タンパク質など、もしくは抗VEGF抗体もしくはその抗原結合性断片(例えば、ベバシズマブ、もしくはラニビズマブ)もしくはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、もしくはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスバクマブ)、形質転換増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、CD20阻害剤(例えば、抗CD20抗体、例えば、リツキシマブなど)、腫瘍特異的抗原に対する抗体[例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異的抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9]、ワクチン(例えば、カルメット-ゲラン桿菌、がんワクチン)、抗原提示を増大させるためのアジュバント(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、二重特異性抗体(例えば、CD3×CD20二重特異性抗体、もしくはPSMA×CD3二重特異性抗体)、細胞毒、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、照射療法、外科手術、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15などのサイトカイン、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド、および非ステロイド性抗炎症薬)、抗酸化剤などの栄養補助剤、または、がんを処置するための任意の他の治療ケアと組み合わせて使用することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質をHPVワクチンと組み合わせて使用することができる。例示的なHPVワクチンとしては、Gardasil、Gardasil9、およびCervarix、Lm-LLo-E7(ADXS11-001;ADXS-HPV;Advaxis,Inc.);GLBL101c(GENOLAC BL Corp);TA-HPV(European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC));TG4001(Transgene/Roche);MVA E2(Instituto Mexicano del Seguro Social);HPV16-SLP(ISA Pharmaceuticals);GL-0810(Gliknik Inc.);Pepcan+Candin(University of Arkansas);GTL001(ProCervix;Genticel);TA-CIN(Xenova Research Limited);TA-CIN+TA-HPV(Celtic Pharma);pNGVL4a-sig/E7(detox)/HSP70+TA-HPV(Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center);pNGVL4a-CRT/E7(detox)(Sidney Kimmel
Comprehensive Cancer Center);GX-188E(Genexine,Inc);VGX-3100(Inovio Pharmaceuticals);HPV-16およびHPV-18 E7およびキーホールリンペットヘモシアニンでパルスされた樹状細胞(National Institutes of Health);HPV+腫瘍ライセートでパルスされたDC(Department of Biotechnology(DBT,Govt.of India));PDS0101(PDS Biotechnology Corp);ProCervix(Genticel);GX-188E(Genexine,Inc);pNGVL4a-CRT/E7(detox)(Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center);pNGVL4a-sig/E7(detox)/HSP70+TA-HPV(Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center);TVGV-1+GPI-0100(THEVAX Genetics Vaccine Co.);Pepcan+Candin(University
of Arkansas);ISA101(SLP-HPV-01;HPV16-SLP;ISA Pharmaceuticals);ADXS11-001(Lm-LLo-E7;Advaxis,Inc.);ISA101(SLP-HPV-01;HPV16-SLP;ISA Pharmaceuticals);DPX-E7(Dana-Farber Cancer Institute);ADXS11-001(Lm-LLo-E7;Advaxis,Inc.);INO-3112(VGX-3100+INO-9012;Inovio Pharmaceuticals);ADXS11-001(Lm-LLo-E7;Advaxis,Inc.);INO-3112(VGX-3100+INO-9012;Inovio Pharmaceuticals);ISA101(SLP-HPV-01;HPV16-SLP;ISA Pharmaceuticals);およびTA-CIN+GPI-0100(Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center)が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を、抗腫瘍応答を強化するための樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどを含めたがんワクチンと組み合わせて使用することができる。本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と組み合わせて使用することができるがんワクチンの例としては、黒色腫および膀胱がんに対するMAGE3ワクチン、乳がんに対するMUC1ワクチン、脳がん(多形神経膠芽腫を含む)に対するEGFRv3(例えば、Rindopepimut)、またはALVAC-CEA(CEA+がんに対して)が挙げられる。
【0227】
ある特定の実施形態では、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質は、がんを有する患者の長期間長持ちする抗腫瘍応答を生成させ、かつ/または生存を増強するための方法において放射線療法と組み合わせて投与することができる。一部の実施形態では、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を、がん患者に放射線療法を施行する前に、それと同時に、またはその後に投与することができる。例えば、放射線療法を1つまたは複数の線量で腫瘍病変に施行し、その後、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を1つまたは複数の用量で投与することができる。一部の実施形態では、患者の腫瘍の局所的な免疫原性を増強するため(アジュバント放射線)および/または腫瘍細胞を死滅させるため(切除放射線)に放射線療法を腫瘍病変に局所的に施行し、その後、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を全身投与することができる。例えば、脳がん(例えば、多形神経膠芽腫)を有する患者に頭蓋内放射線を本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の全身投与と組み合わせて施行することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を、放射線療法および化学療法剤(例えば、テモゾロミド)またはVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリバーセプト)と組み合わせて投与することができる。
【0228】
ある特定の実施形態では、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を、慢性HPV感染を処置するための1つまたは複数の抗ウイルス薬と組み合わせて投与することができる。抗ウイルス薬の例としては、これだけに限定されないが、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノホビル、リルピビリンおよびコルチコステロイドが挙げられる。
【0229】
追加的な治療的に活性な作用剤(複数可)/構成成分(複数可)は、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与することができる。本開示の目的に関して、そのような投与レジメンは、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の、第2の治療的に活性な構成成分と「組み合わせた」投与とみなされる。
【0230】
追加的な治療的に活性な構成成分(複数可)は、対象に、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の投与の前に投与することができる。例えば、第1の構成成分が第2の構成成分の投与の1週間前、72時間前、60時間前、48時間前、36時間前、24時間前、12時間前、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前、15分前、10分前、5分前、または1分未満前に投与される場合、第1の構成成分は第2の構成成分の「前に」投与されるとみなすことができる。他の実施形態では、追加的な治療的に活性な構成成分(複数可)を、対象に、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の投与後に投与することができる。例えば、第1の構成成分が第2の構成成分の投与の1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後に投与される場合、第1の構成成分は第2の構成成分の「後」に投与されるとみなすことができる。さらに他の実施形態では、追加的な治療的に活性な構成成分(複数可)を対象に本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の投与と同時に投与することができる。「同時」投与は、本発明の目的に関しては、例えば、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質および追加的な治療的に活性な構成成分を対象に単一の剤形で(例えば、共製剤化されて)投与すること、または別々の剤形で対象に互いから約30分またはそれ未満の間に投与することを含む。別々の剤形で投与する場合、各剤形を同じ経路で投与することができる(例えば、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質および追加的な治療的に活性な構成成分の両方を静脈内、皮下などに投与することができる);あるいは、各剤形を異なる経路で投与することができる(例えば、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を静脈内に投与することができ、追加的な治療的に活性な構成成分を皮下に投与することができる)。いずれにしても、構成成分を単一の剤形で投与すること、別々の剤形で同じ経路によって投与すること、または別々の剤形で異なる経路によって投与することは全て、本開示の目的に関しては「同時投与」とみなされる。本開示の目的に関して、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を追加的な治療的に活性な構成成分の投与の「前に」、「同時に」または「後に」投与すること(これらの用語は、本明細書の上で定義されている通りである)は、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と追加的な治療的に活性な構成成分を「組み合わせた」投与とみなされる。
【0231】
本発明は、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質が本明細書の他の箇所に記載の追加的な治療的に活性な構成成分(複数可)の1つまたは複数と種々の投与量の組合せを使用して共に製剤化された医薬組成物を含む。
【0232】
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態によると、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質(または抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と本明細書で言及されている追加的な治療的に活性な作用剤のいずれかの組合せを含む医薬組成物)の複数用量を対象に定義された時間経過にわたって投与することができる。本発明のこの態様による方法は、対象に多数用量の本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を逐次的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「逐次的に投与すること」とは、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の各用量を対象に異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日間、数週間、または数カ月)を隔てた異なる日に投与することを意味する。本発明は、患者に、単一の初回用量の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質、その後に、1または複数の二次用量の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質、および必要に応じて、その後に1または複数の三次用量の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を逐次的に投与することを含む方法を含む。抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を対象の体重1kg当たり0.1mg~体重1kg当たり100mgの用量で投与することができる。
【0233】
「初回用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の投与の時間的順序を指す。したがって、「初回用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量である(「ベースライン用量」とも称される);「二次用量」は、初回用量の後に投与される用量であり、「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初回用量、二次用量、および三次用量は全て同じ量の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を含み得るが、一般に、投与の頻度に関しては互いと異なり得る。しかし、ある特定の実施形態では、初回用量、二次用量および/または三次用量に含有される抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の量は、処置の過程中、互いに変動する(例えば、必要に応じて上向きまたは下向きに調整される)。ある特定の実施形態では、処置レジメンの開始時に「負荷用量」として2またはそれよりも多く(例えば、2、3、4、または5)の用量を投与し、その後、その後の用量をより低い頻度で投与する(例えば、「維持用量」)。
【0234】
ある特定の実施形態では、初回用量、二次用量および/または三次用量に含有される抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の量は、最適以下または治療量以下である。本明細書で使用される場合、「治療量以下」または「最適以下」という用語は、治療効果をもたらすには低すぎるレベルで、またはがんなどの疾患を処置するために必要なレベルを下回るレベルで投与される抗体の用量を指す。
【0235】
本発明のある特定の例示的な実施形態では、二次用量および/または三次用量をそれぞれ、直前の用量の1~26週間後(例えば、1週間後、1と1/2週間後、2週間後、2と1/2週間後、3週間後、3と1/2週間後、4週間後、4と1/2週間後、5週間後、5と1/2週間後、6週間後、6と1/2週間後、7週間後、7と1/2週間後、8週間後、8と1/2週間後、9週間後、9と1/2週間後、10週間後、10と1/2週間後、11週間後、11と1/2週間後、12週間後、12と1/2週間後、13週間後、13と1/2週間後、14週間後、14と1/2週間後、15週間後、15と1/2週間後、16週間後、16と1/2週間後、17週間後、17と1/2週間後、18週間後、18と1/2週間後、19週間後、19と1/2週間後、20週間後、20と1/2週間後、21週間後、21と1/2週間後、22週間後、22と1/2週間後、23週間後、23と1/2週間後、24週間後、24と1/2週間後、25週間後、25と1/2週間後、26週間後、26と1/2週間後、またはそれよりも後)に投与する。「直前の用量」という句は、本明細書で使用される場合、多数回の投与の連続において、連続の中で間に用量を挟まないまさに次の用量の投与前に患者に投与される抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の用量を意味する。
【0236】
本発明のこの態様による方法は、患者に任意の数の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質の二次用量および/または三次用量を投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、単一の二次用量のみを患者に投与する。他の実施形態では、2またはそれよりも多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれよりも多く)の二次用量を患者に投与する。同様に、ある特定の実施形態では、単一の三次用量のみを患者に投与する。他の実施形態では、2またはそれよりも多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれよりも多く)の三次用量を患者に投与する。
【0237】
多数の二次用量を伴う実施形態では、各二次用量を他の二次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各二次用量を患者に直前の用量の1~2週間後または1~2カ月後に投与することができる。同様に、多数の三次用量を伴う実施形態では、各三次用量を他の三次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各三次用量を患者に直前の用量の2~12週間後に投与することができる。本発明のある特定の実施形態では、二次用量および/または三次用量を患者に投与する頻度は、処置レジメンの過程にわたって変動し得る。投与の頻度は、処置の過程中に、臨床検査後の個々の患者の必要に応じて医師によって調整される場合もある。
【0238】
抗原結合性タンパク質の診断への使用
例えば、診断目的で、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を使用して、試料中のHPV16E7を検出および/または測定することができる。一部の実施形態では、HPV16E7陽性がんなどのHPVに関連する疾患もしくは障害、またはHPV感染などの疾患または障害を検出するためのアッセイにおける、1つまたは複数の本発明の抗原結合性タンパク質の使用が意図されている。HPV16E7についての例示的な診断アッセイは、例えば、対象(例えば、患者)から得た試料を本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質と接触させることを含み得、ここで、抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質は、検出可能な標識もしくはレポーター分子で標識されている、またはHPV16E7を対象試料から選択的に単離するための捕捉用リガンドとして使用される。あるいは、標識されていない抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質を、診断への適用において、それ自体が検出可能に標識された二次抗原結合性タンパク質、例えば抗体と組み合わせて使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、放射性同位元素、例えば、3H、14C、32P、35S、もしくは125Iなど;蛍光もしくは化学発光部分、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、もしくはローダミンなど;または、酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどであり得る。試料中のHPV16E7を検出または測定するために使用することができる特定の例示的なアッセイとしては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。
【0239】
本発明によるHPV16E7診断アッセイに使用することができる試料としては、正常条件または病的条件下にある検出可能な分量のHPV16E7タンパク質またはその断片のいずれかを含有する対象から入手可能な任意の組織または体液試料が挙げられる。一般に、健康な患者(例えば、HPV16E7に関連する疾患または障害、例えば、HPV16E7陽性がんを患っていない患者)から得た特定の試料中のHPV16E7のレベルを測定して、ベースラインまたは標準のHPV16E7のレベルを最初に確立する。次いで、このHPV16E7のベースラインレベルを、がんに関連する状態、またはそのような状態に付随する症状を有する疑いがある個体から得た試料において測定されたHPV16E7のレベルと比較する。
【0240】
HPV16E7に特異的な抗原結合性タンパク質は、追加的な標識または部分を含有しない場合もあり、またはN末端もしくはC末端標識もしくは部分を含有する場合もある。一実施形態では、標識または部分はビオチンである。結合アッセイでは、標識の場所(もしあれば)により、ペプチドが結合する表面に対するペプチドの方向を決定することができる。例えば、表面をアビジンでコーティングした場合、N末端ビオチンを含有するペプチドは、ペプチドのC末端部分が表面に対して遠位になるように配向される。
【0241】
本発明の態様は、開示される抗原結合性タンパク質の、患者におけるHPV16E7陽性がんまたはHPV感染の予後を予測するためのマーカーとしての使用に関する。本発明の抗原結合性タンパク質を診断アッセイにおいて患者におけるがんの予後を評価するためおよび生存を予測するために使用することができる。
【実施例0242】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作出し、使用するかに関する完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、発明者らが自身の発明とみなすものの範囲を限定するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関しては正確さを確実にするための試みが行われているが、いくらかの実験的な誤差および偏差が考慮されるべきである。別段の指定のない限り、部分は重量による部分であり、分子量は、平均分子量であり、温度は摂氏度であり、室温は約25℃であり、および圧力は、大気または大気付近の圧力である。
【0243】
(実施例1)
HLA-A2:HPV16E7に対するヒト抗体の生成
HLA-A2:HPV16E7に対するヒト抗体を、HLA-A2とカップリングしたGenBank受託番号NP_041326.1(配列番号537)のアミノ酸11~19(YMLDLQPET;配列番号538)またはGenBank受託番号NP_041326.1(配列番号537)のアミノ酸残基82~90(LLMGTLGIV;配列番号539)のいずれかを含むHPV16E7のペプチド断片を使用して生成した。例えば、米国特許第8,502,018号に記載されている通り、免疫原を、免疫応答を刺激するためのアジュバントと共に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む、操作されたマウス)に直接投与した。抗体免疫応答をHLA-A2:HPV16E7特異的イムノアッセイによってモニターした。所望の免疫応答が達成されたら、脾細胞を収集し、それらの生存能力を保存し、ハイブリドーマ細胞株を形成するために、マウス骨髄腫細胞と融合した。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、選択して、HLA-A2:HPV16E7特異的抗体を産生する細胞株を同定した。この技法および上記の免疫原を使用し、いくつかの抗HPV16E7キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびマウス定常ドメインを有する抗体)を得た。このように生成した例示的な抗体に以下の通り名前を付けた:H4sH17364N;H4sH17368N2;H4sH17930N;H4sH17930N2;H4sH17363NおよびH4sH17368N3。
【0244】
抗HLA-A2:HPV16E7抗体をまた、その全体が参照により明確に本明細書に組み込まれる米国特許第7,582,298号に記載されている通り、骨髄腫細胞との融合は伴わずに、抗原陽性B細胞(免疫したマウスのいずれかに由来するもの)からも直接単離した。この方法を使用し、いくつかの完全ヒト抗HLA-A2:HPV16E7抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびヒト定常ドメインを有する抗体)を得た。
【0245】
前述の方法に従って生成した例示的な抗体に、以下の通り名前を付けた:H4sH17670P;H4sH17672P;H4sH17673P;H4sH17675P;H4sH17680P;H4sH17697P;H4sH17707P;H4sH17715P;H4sH17726P;H4sH17730P;H4sH21051P;H4sH21054P;H4sH21055P;H4sH21058P;H4sH21064P;H4sH21073P;H4sH21077P;H4sH21079P;H4sH21080P;H4sH21083P;H4sH21086P;H4sH21090P;H4sH21091P;H4sH21093P;H4sH21099P;H4sH21100P;H4sH21103P;およびH4sH21104P。
【0246】
本実施例の方法に従って生成した例示的な抗体の生物学的性質を下記の実施例に詳しく記載する。
【0247】
(実施例2)
重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列
表1に、選択された本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域およびCDRのアミノ酸配列識別子を記載する。対応する核酸配列識別子を表2に記載する。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【0248】
抗体は、本明細書では一般に以下の命名法に従って称される:Fc接頭辞(例えば、「H1M」、「H4sH」、「H4H」など)、続いて、数値識別子(例えば、表1に示されている通り、「17670」、「17930」など)、続いて、「P」、「N」または「N2」接尾辞。したがって、この命名法に従って、本明細書では、抗体を、例えば、「H4sH17670P」、「H4sH17930N」、「H4sH17368N2」などと称することができる。本明細書で使用される抗体の名称におけるH4sHおよびH4H接頭辞は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H4sH」抗体は、米国特許出願公開第20140243504号(その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている2つまたはそれよりも多くのアミノ酸変化を有するヒトIgG4 Fcを有し、「H4H」抗体は、ヒンジ領域におけるセリンからプロリンへの突然変異(S108P)を有するヒトIgG4 Fcを有し、「H1M」抗体は、マウスIgG1 Fcを有し、「H2M」抗体は、マウスIgG2 Fcを有する(抗体の名称の最初の「H」によって示される通り、全ての可変領域が完全ヒト可変領域である)。当業者には理解される通り、特定のFcアイソタイプを有する抗体を、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体を、ヒトIgG4を有する抗体に変換することができる、など)が、いずれにしても、可変ドメイン(CDRを含む)-表1に示されている数値識別子によって示される-は同じままであり、Fcドメインの性質にかかわらず抗原に対する結合特性は同一であるまたは実質的に同様であることが予測される。
【0249】
ある特定の実施形態では、マウスIgG1 Fcを有する選択された抗体をヒトIgG4 Fcを有する抗体に変換した。ある特定の実施形態では、抗体は、米国特許出願公開第20100331527号(その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている2つまたはそれよりも多くのアミノ酸変化を有するヒトIgG4 Fcを含む。一実施形態では、IgG4 Fcドメインは、二量体安定化を促進するために、ヒンジ領域におけるセリンからプロリンへの突然変異(S108P)を含む。
【0250】
表3に、本発明の選択された抗体の重鎖配列および軽鎖配列のアミノ酸配列識別子を示す。
【表3】
【0251】
(実施例3)
可変遺伝子利用分析
産生される抗体の構造を分析するために、抗体可変領域をコードする核酸をクローニングし、配列決定した。抗体の核酸配列および予測されるアミノ酸配列から、各重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)について遺伝子使用を同定した(表4)。
【表4-1】
【表4-2】
【0252】
(実施例4)
ヒトモノクローナル抗HLA-A2:HPV16E7単一特異性抗体の表面プラズモン共鳴により導かれた結合親和性および運動定数
ヒト抗HLA-A2/HPV16E7抗体の結合親和性および運動定数を25℃でリアルタイム表面プラズモン共鳴(SPR;Biacore4000またはBiacoreT-200、GE Healthcare Life Sciences、Pittsburgh、PA)によって決定した。抗体を、モノクローナル抗ヒトFc抗体(GE、#BR-1008-39)とアミンカップリングすることによって誘導体化したCM5 Biacoreセンサー表面(GE Healthcare Life Sciences)上に捕捉した。E7:11-19ペプチド(配列番号538)またはE7:82-90ペプチド(配列番号539)のいずれかを含有する単量体HLA-A2:HPV16E7ペプチド複合体を種々の濃度で抗HLA-A2:HPV16E7抗体が捕捉された表面にわたって50μL/分(BiacoreT-200)または30μL/分(Biacore4000)の流速で注射した。抗体-試薬会合を4~5分間モニタリングし、解離を10分間モニタリングした。全ての結合試験をHBS-ET緩衝剤(0.01MのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、0.05%v/v界面活性物質P20)中で実施した。
【0253】
運動会合(k
a)および解離(k
d)速度定数を、Scrubber2.0c曲線あてはめソフトウェアを使用してリアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルにあてはめることによって決定した。結合解離平衡定数(K
D)および解離半減期(t1/2)を運動速度定数から以下の通り算出した:
【数1】
【0254】
単一特異性抗HLA-A2:HPV16E7抗体についての単量体HLA-A2/HPV16E7ペプチド複合体に対する結合運動パラメータを以下の表5および6に示す。
【表5-1】
【表5-2】
【表6-1】
【表6-2】
【0255】
データから、本発明の抗HLA-A2/HPV16E7抗体の大多数が可溶性HLA-A2/HPV16E7ペプチド複合体に選択的に結合し、一部はナノモル以下の親和性を示すことが実証される。しかし、一部の抗体では、HLA-A2/HPV16E7複合体への結合が示されなかった。
【0256】
(実施例5)
潜在的なオフターゲットペプチドの予測
標的9-merペプチド-HLA-A2複合体を考慮して、関連する潜在的なオフターゲットペプチドを以下の3つの判断基準に基づいて定義する:A)ペプチドは9-merであり、HLA-A2に結合することが予測される、B)ペプチドは、配列相同性に基づいて標的ペプチドと同様である、およびC)ペプチドは、必須正常組織において発現される遺伝子に由来する。したがって、YMLDLQPET(HPV16 E711-19;配列番号538)およびLLMGTLGIV(HPV16 E782-90;配列番号539)に関連する潜在的なオフターゲットペプチドを予測するために、以下の方法体系を使用した(一般に、Dhanik, Ankur, et al. (2016) BMC Bioinformatics 17 (1): 286を参照されたい)。
【0257】
第1のステップとして、基準のヒトタンパク質配列をUniprotKBデータベース(2014年9月バージョン)(Magrane, Michele, and UniProt Consortium. Database 2011 (2011): bar009)からダウンロードし、全ての9-merを抽出した。これにより、20,014種のタンパク質配列から11,118,076種のペプチドがもたらされた。
【0258】
次に、ペプチドのHLA-A2との結合親和性を、NetMHCstab webserver(バージョン1.0)を使用してコンピュータ計算した(Jorgensen, Kasper W., et al. (2014) Immunology 141 (1): 18-26)。親和性値が500nM未満であるペプチドをHLA-A2に結合するものと予測し、残りを棄却し、その結果、338,452種のペプチドが残った。
【0259】
次いで、ペプチド配列を標的ペプチドとの配列相同性について評価した。各ペプチドについて、標的ペプチドに対するその類似性の程度(DoS)を算出した。DoS値は、2つのペプチド間で同一の位置にある同一のアミノ酸の数を表す。DoS値が6未満であるペプチドを退け、その結果、HLA-A2/HPV16E7:11-19の場合では21種のペプチドが残り、HLA-A2/HPV16E7:82-90の場合では78種のペプチドが残った。
【0260】
21種のペプチドに対応する遺伝子の必須正常組織におけるそれらの発現を調べた。発現についての評価を、OmicSoft(Hu, Jun, et al.Bioinformatics (2012) 28 (14): 1933-1934)から提供されるGTEx(Gene Tissue Expression)およびTCGA(The Cancer Genome Atlas)データベースに由来する遺伝子発現データを使用して行った。データは、497種のTCGA隣接正常試料(15種の必須組織型にわたる)、および2,928種のGTEx正常試料(22種の必須組織型にわたる)からRPKM(Reads Per Kilobase Per
Million)値として入手可能であった。乳房、子宮頸部、卵管、精巣、子宮、および膣以外の組織を必須とみなした。遺伝子について、GTExデータベースおよびTCGAデータベースにおいて必須正常組織型それぞれにおける最大で95パーセンタイル発現が0.5RPKM以上である場合、必須正常組織において発現されるとみなした。HLA-A2/HPV16E7:11-19(YMLDLQPET)に関しては、21種のペプチドのうち、10種のペプチドが必須正常組織において発現される遺伝子に由来するものであった。HLA-A2/HPV16E7:82-90(LLMGTLGIV)に関しては、78種のペプチドのうち、49種のペプチドが必須正常組織において発現される遺伝子に由来するものであった。
【0261】
10種のペプチドが、標的YMLDLQPET-HLA-A2複合体に関連すると予測されるオフターゲットを構成する(表7)。おそらくLLMGTLGIV-HLA-A2複合体に関連するオフターゲットを構成すると予測される49種の潜在的なペプチドのうち、13種を実験による検証のためにランダムに選び取り、それらを表8に列挙する。
【表7】
【表8-1】
【表8-2】
【0262】
(実施例6)
HLA-A2/HPV16E7 M特異性を決定するためのT2ペプチドパルス
抗HLA-A2/HPV16E7モノクローナル抗体特異性を決定するために、標的またはオフターゲットペプチド(前の実施例で同定された)を負荷された、ペプチドパルスされたT2細胞を使用した。実験を以下の通り行った:HPV16E7標的またはオフターゲットペプチドの外因性負荷のために、T2細胞をAIM V(登録商標)Mediumですすぎ、CellometerTM Auto T4 cell counter(Nexcelom Bioscience)を用いて計数した。T-75フラスコ当たりおよそ600万個のT2細胞を、10μgのヒトb2mおよび100μgのHPV16E7ペプチドまたはオフターゲットペプチドを含有する9mLのAIM V(登録商標)Medium中、26℃で24時間培養した(表6および7)。ペプチド負荷されたT2細胞をCa2+/Mg2+を伴わないPBSで1回洗浄し、計数した。細胞洗浄緩衝剤中1ウェル当たり細胞およそ10,000個のペプチド負荷されたT2細胞または無処理のT2を96ウェル炭素電極プレート(MULTI-ARRAY high bind plate、MSD)に播種し、37℃で1時間インキュベートして、細胞をプレートに接着させた。PBS中2%BSA(w/v)を使用し、室温で1時間にわたって非特異的な結合性部位をブロッキングした。プレートに結合した細胞に、1.7pMから100nMまでにわたる段階希釈物中、抗HLA-A2/HPV16E7:11-19、抗HLA-A2/HPV16E7:82-90または対照抗体の溶液、ならびに抗体を伴わない溶液を添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いで、AquaMax2000プレート洗浄器(MDS Analytical Technologies)を使用して洗浄して、結合していない抗体を除去した。プレートに結合した抗体を、SULFO-TAG(商標)とコンジュゲートした、Fcガンマ断片に特異的なヤギポリクローナル抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch、Meso Scale Discovery)を用いて室温で1時間にわたって検出した。洗浄後、プレートをRead Buffer(MSD)で製造者の推奨手順に従って展開し、発光シグナルをSECTOR Imager600(Meso Scale Discovery)機器で記録した。相対発光単位(RLU)で測定される発光強度を記録して、濃度範囲における各抗体の結合強度を示した。11nMにおける各抗HLA-A2/HPV16E7抗体についてのアイソタイプ対照と比較した細胞結合シグナルの比を表8および9に報告し、これは、特異性を示すものである。11nMの濃度では、大多数の抗体が、T2無処理細胞に対して最小の結合を示した。全ての抗体を全ての対応する関連オフターゲットペプチドで試験したのではない。これらの試験されていないものは「試験されていない(Not Tested)」の代わりにNTと記されている。結合比が15よりも大きい抗体は(+++)と記され、比が15同等またはそれ未満であるが10よりも大きいまたは10と等しいである抗体は(++)と記され、比が10未満であるが3よりも大きいまたは3と等しい抗体は(+)と記され、結合比が3未満の抗体は非結合体として分類し、(-)で示した。さらに、直接結合シグナル(RLU単位)を抗体濃度の関数として分析し、データをGraphPad Prism(商標)を使用してS字(4パラメータロジスティック)用量応答モデルにあてはめた。可能であれば各抗体の効力を示すために、細胞において最大の結合シグナルの50%が検出される抗体の濃度と定義されるEC50値を決定した。細胞表面HLA-A2/HPV16E7:11-19またはHLA-A2/HPV16E7:82-90のみへの結合についてのEC50値も表9および10に報告する。
【0263】
本発明の抗HLA-A2/HPV16E7:11-19抗体13種のうち10種がT2細胞表面HLA-A2/ペプチド複合体に結合する。これらの10種の抗体のうち7種(H4sH17670P;H4sH17675P;H4sH17363N;H4sH17364N;H4sH17930N;H4sH17930N2;およびH4sH21064P)は、HLA-A2/HPV16E7:11-19複合体に対して特異的である。3種の抗体(H4sH17672P、H4sH21079P、H4sH21080P)は、より高い効力を示し、EC50値は1.1nMを下回った。3種の抗体(H4sH17673P、H4sH17680P、H4sH17697P)は、T2ペプチド負荷細胞には結合せず、表9の最初の列に(-)で示されている。
【0264】
HPV16E7:82-90標的および予測されるオフターゲットペプチドが負荷されたT2細胞に関する細胞結合結果を表9に要約する。本発明の抗HLA-A2/HPV16E7:82-90 mAb21種のうち16種がT2細胞表面HLA-A2/ペプチド複合体に結合した。この群に由来する2種のmAbのみが(H4sH17368N2、H4sH21086P)HLA-A2/HPV16E7 82-90複合体に対する特異性を示した。5種の抗体(H4sH17730P、H4sH21051P、H4sH21054P、H4sH21055P、H4sH21077P)はT2ペプチド負荷細胞に結合せず、表10に(-)で示されている。
【表9】
【表10-1】
【表10-2】
【0265】
表9および10に示されている通り、本発明の抗HLA-A2:HPV16E7抗原結合性タンパク質は、HLA-A2によって提示される特異的HPVペプチド(表9の配列番号538、または表10の配列番号539)にのみ高い特異性で結合し、HLA-A2によって提示されるいかなるオフターゲットペプチドにも結合しなかった。
【0266】
(実施例7)
ペプチドパルスされたT2細胞を使用した結合特異性分析およびFACS分析
HPV11-19ペプチド(3T3/HLA.A2/hB2M/HPV16E7:11-19)またはHPV82-90ペプチド(3T3/HLA.A2/hB2M/HPV16E7(82-90)のいずれかを提示するHLA-A2複合体を発現するNIH3T3細胞に対するフローサイトメトリーによってHPV16E7抗体の相対的結合および特異性にアクセスした。HLA複合体を発現するNIH3T3細胞を、ヒトHLA.A2(受託番号P01892)、ヒトB2M(受託番号NP_004039.1)およびHPV16E7のアミノ酸11~19(配列番号538)またはアミノ酸82~90(配列番号539)(受託番号AKI85233)のいずれかを含むユビキチンペプチドカセット(Levy F., et al. (1996) Proceedings of the National Academy of Sciences
of the United States of America 93 (10): 4907-4912; Valmori D, et al. (1999) Journal of Experimental Medicine 189 (6): 895-906)をlipofectomine2000(Invitrogen、Cat番号11668)を使用してトランスフェクトし、その後、1μg/mlのピューロマイシン、500μg/mlのG418、および100μg/mlのハイグロマイシンで少なくとも2週間にわたって選択することによって生成した。染色のために、細胞解離緩衝剤(Millipore、Cat番号S-004-C)を使用して細胞を収集し、計数した。細胞を、96ウェルV底プレート中、染色緩衝剤(PBS、カルシウムおよびマグネシウムを含まない(Irving9240)+2%FBS(ATCC30-2020)に1ウェル当たり細胞200,000個の密度でプレーティングし、一次抗体の3倍段階希釈物(1.7pM~100nM)を用いて4℃で30分にわたって染色した。一次抗体とのインキュベート後、細胞を染色緩衝剤で1回洗浄し、二次抗体(Jackson ImmunoResearch、Cat番号109-606-170)とコンジュゲートしたAlexa-Flour647を10μg/mlで用いて4℃で30分にわたって染色した。次いで、染色緩衝剤中に希釈したBD Cytofix(BD、Cat番号554655)の50%溶液を用いて細胞を洗浄し、固定した。試料をintellicyt iQueフローサイトメーターに流し、分析して、平均蛍光強度(MFI)を算出した。MFI値を、GraphPad
Prismで4パラメータロジスティック方程式を使用して12点応答曲線にプロットして、EC
50値を算出した。各用量応答曲線について二次抗体単独(すなわち一次抗体なし)も3倍段階希釈物の続きとして分析に含め、最低用量として表す。EC
50値(M)および最大結合倍率(最高用量から最低用量までに変化した倍率)を表11に示す。いくつかの抗体が3T3/HLA.A2/hB2M/HPV16E7:11-19細胞株または3T3/HLA.A2/hB2M/HPV16E7:82-90細胞株のいずれかに特異的に結合した。EC
50値は5~500nMにわたり、結合倍率は1.0倍~43.8倍にわたった。
【表11】
【0267】
6種のHPV16E7:11-19抗体の特異性を、HPV16E7:11-19、HPV16E7:82-90または予測されるオフターゲットペプチドをパルスしたT2(174 CEM.T2)細胞への結合を評価することによってさらに特徴付けた(表7)。パルスのために、T2(174CEM.T2)をAIM V培地に1ml当たり細胞1×10
6個の密度で再懸濁させた(Gibco、Cat番号31035-025)。10μg/mlのhB2M(EMD Millipore Cat番号475828)および100μg/mlの示されているペプチドを添加することによって細胞をパルスした。次いで、T2細胞を26℃で終夜インキュベートし、染色緩衝剤で洗浄し、示されている抗体を10μg/mlの濃度で用い、上記のプロトコールに従って染色した。MFI値を算出し、染色されなかった細胞に対する倍率変化として示した。6種のHPV16E7:11-19抗体のHPV16E7:11-19でパルスされたT2細胞に対する相対的結合は、染色されなかった細胞の986~1200倍にわたった。他のペプチドでパルスされたT2細胞に対してはアイソタイプ対照を超える有意な結合は観察されなかった(表12)。
【表12】
【0268】
(実施例8)
アラニンスキャニングペプチドを使用したエピトープ分析
アラニンスキャニングを実施して、HPV16E7:11-19ペプチド内のどの残基が抗体結合に重要であるかを決定した。T2細胞をアラニンスキャニングペプチドでパルスし、HPV16E7:11-19抗体を用いて上記の通り染色した。以下のアラニンスキャニングペプチドを使用した(表13)。
【表13】
【0269】
アスパラギン酸14のアラニンへの変換(D14A)およびグルタミン16のアラニンへの変換(Q16A)により、試験した全ての抗体について抗体結合が著しく低減した。チロシン11のアラニンへの変換(Y11A)では、H4sH17670P、H4sH17675P、H4sH21064P、およびH4sH17930N2の結合が低減したが、H4sH17363NまたはH4sH17364Nの結合は低減しなかった。ロイシン13のアラニンへの変換(L13A)およびプロリン17のアラニンへの変換(P17A)では、全体的な抗体結合が低減した(表14)。
【0270】
要約すると、D14およびQ16が抗体結合のために重要な残基である。
【表14】
【0271】
(実施例9)
キメラ抗原受容体に使用するための、HLA-A2/HPV16E7抗体のScFvへの再編成
6種のHLA-A2/HPV16E7:11-19抗体(17363N、17364N、17670P、17675P、17930N2および21064P)をVL-VH単鎖可変性断片(ScFv)に再編成し、CD8αヒンジおよび膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ζ刺激ドメインを使用したキメラ抗原受容体(CAR)構築物に入れた(配列番号540~545)。HLA-A2/HPV16E7:11-19特異的CARをレンチウイルス発現ベクター(Lenti-X(商標)バイシストロン発現系(Neo)、Clontech Cat番号632181)にクローニングし、レンチウイルス粒子をLenti-X Packaging Single-Shot(VSV-G)システム(Clontech Cat番号631276)により、製造者のプロトコールに従って生成した。次いで、NFAT-ルシフェラーゼレポーターを発現するように操作されたジャーカット細胞(Jurkat/NFATLuc cl.3C7)に、6種の異なるCAR構築物を用い、RetroNectin(登録商標)Pre-coated Dish(Clontech、Cat番号T110a)を製造者のプロトコールに従って使用して形質導入した。500μg/mlのG418(Gibco、Cat番号11811-098)中で少なくとも2週間にわたって選択した後、CAR-T細胞株を生成した。
【0272】
CAR-T株の活性をCAR-T/抗原提示細胞(APC)バイオアッセイで評価した。
【0273】
バイオアッセイを実施するために、Jurkat/NFATLuc cl.3C7CAR-T細胞50,000個をThermo-Nunc96ウェル白色プレート(Thermo Scientific、Cat番号136101)中、アッセイ培地(10%FBSおよび1%P/S/Gを含むRPMI培地)50μlに添加し、その後、APCの3倍段階希釈物(細胞150,000個~細胞200個)をアッセイ培地50μlに添加した。以下のAPCを利用した:CASKI(HLA-A2+/HPV16+)、11-19または82-90ペプチドを提示するHLA-A2の単鎖バージョンを過剰発現するCASKI細胞、HEK293(HLA-A2+/HPV16-)、またはC33a(HLA-A2+/HPV16-)。細胞混合物を37℃、5%CO
2、加湿インキュベーター中で5時間インキュベートした。Promega One-Glo(Cat番号E6130)およびPerkin Elmer Envisionプレートリーダーを使用してNFAT-ルシフェラーゼ活性を測定した。相対ルシフェラーゼ単位(RLU)を生成し、GraphPad Prismで4パラメータロジスティック方程式を使用して8点応答曲線にプロットして、EC
50値を算出した。各用量応答曲線についてのゼロAPC条件も3倍段階希釈物の続きとして含め、最低用量として表す。活性化の最大倍率を、曲線上の最大RLUと最低RLUの比をとることによって決定した。6種全てのHLA-A2/HPV16E7:11-19CAR-T細胞株が、HPV16E7:11-19ペプチドを過剰発現したCASKI細胞によって活性化され、活性化の最大倍率は2.5~32.3倍であった。HPV16E7:82-90ペプチドを過剰発現したAPCまたはHEK293およびC33a細胞ではCAR-T細胞株は活性化されなかった。興味深いことに、抗体17675P由来のScFvを使用した1つのCAR-T細胞株がネイティブなCASKI細胞によって活性化され、活性化倍率は4.1であり、EC
50は細胞68654個であった(表15)。
【表15】
【0274】
HPV16E7:11-19ペプチドを提示するHLA-A2の量を増加させることにより、HLA-HPV16E7:11-19CARの活性化の増大がもたらされるはずである。インターフェロンガンマにより、プロテアソームが上方制御されるにもかかわらずMHCクラス1分子による抗原提示を増大できることが報告されている(Fruh K. and
Yang Y. (1999) Curr Opin Immunol. 11 (1): 76-81)。この知見に基づいて
、インターフェロンガンマで前処理した野生型CASKI細胞またはHEK293細胞によりCAR-T細胞株の活性化の増大をもたらすことができるかどうかを決定した。CASKI細胞およびHEK293細胞を500単位/mlの組換えヒトIFN-γ(Peprotech Cat番号300-02)を用いて48時間にわたって前処理し、次いで、上記の通りCAR-T/APCバイオアッセイに使用した(表16)。IFNγで前処理したCASKI細胞により、6種全てのHPV16E7:11-19CAR-T細胞株が活性化され、活性化倍率は2.4~10.6にわたった。
【表16】
【0275】
HPV16E7:11-19CAR-T株の特異性をルシフェラーゼアッセイでさらに評価するために、T2細胞をAPCとして使用し、予測されるオフターゲットペプチドでパルスした(表17)。簡単に述べると、T2細胞を示されているペプチドの3倍段階希釈物(1.7pg/ml~100ng/ml)でパルスした。パルス後、50,000個のCAR-T細胞をThermo-Nunc96ウェル白色プレート(Thermo Scientific、Cat番号136101)の50μLのアッセイ培地に添加した。次いで、50,000個のパルスされたT2細胞をプレートのアッセイ培地50μLに添加した。細胞混合物を37℃、5%CO
2、加湿インキュベーター中で5時間インキュベートした。NFAT-ルシフェラーゼ活性を、Promega One-Glo(商標)(Cat番号E6130)およびPerkin Elmer Envisionプレートリーダーを使用して決定した。RLUを、GraphPad Prismで4パラメータロジスティック方程式を使用して12点応答曲線にプロットして、EC
50値を算出した。各用量応答曲線についてパルスされていない条件も3倍段階希釈物の続きとして分析に含め、最低用量として表す。活性化の最大倍率を以前に記載されている通り決定した。全てのCAR-T細胞株がHPV16E7:11-19ペプチドでパルスされたT2細胞によって活性化された。抗体17364N由来のScFvを利用するJurkat/NFATLuc CART株は、Endophilin-B1(SH3GLB1:244-252)、コンドロイチン硫酸シンターゼ2(CHPF:463:471)およびE3ユビキチン-タンパク質リガーゼCBL(CBL:83-91)でパルスされたT2細胞によって非特異的に活性化された。他のCAR-T細胞株は全て、いかなるオフターゲットペプチドでも有意には活性化されなかった。
【表17-1】
【表17-2】
【0276】
(実施例10)
HLA-A2+HPV16E7:11-19ペプチドへのFab結合の構造解析
抗体とHLA-ペプチド複合体の特異的な相互作用をよりよく理解するための取り組みにおいて、HPV16E7:11-19ペプチドをディスプレイするHLA-A2/b2mに結合した抗体Fab断片のX線結晶構造を決定した。一方の構造は17670P Fabを含有し、他方の構造は17363N Fabを含有する;合わせて、これらの2つの構造が上記の6種の抗体の配列空間にわたる(例えば、表11および表12)。HLAによりディスプレイされるHPV16E7:11-19ペプチドの9残基全てが、17670P構造および17363N構造のどちらに関しても電子密度マップにおいて明白に目視できる。2.9Å(17670P構造の分解能)においてさえ、ペプチド残基の位置および同一性は明白であり、残基-残基相互作用を正確に決定することができる。17363P構造は2.6Åであり、これにより、正確度を改善することが可能である。
【0277】
17670P Fabおよび17363N Fabは、HLA-ペプチド複合体の上部に、TCRの結合の仕方と非常に類似した様式で結合する。これらのFabは互いにほぼ等しく位置し、配向されている;どちらもペプチド結合溝の境をなす「レール」にかなり並行に整列し、どちらも結合したペプチドに集中し、重鎖CDRが、結合したペプチドのN末端の半分と接触しており、軽鎖CDRが、ペプチドのC末端の半分と接触している。他の公開された抗体複合体構造(例えば、PDBコード1W72および4WUU)から、抗体がHLAによりディスプレイされるペプチド全体にはわたらないことが明らかになる。しかし、部分的なペプチドカバレッジしか有さないこれらの抗体の特異性は乏しく、接触していないペプチドの一部の広範囲にわたる変化を許容し、結合親和性の低下はわずかである。
【0278】
これらの構造により、17670Pおよび17363N Fab重鎖はHPV16E7ペプチドの残基11、14、15と接触し、一方、Fab軽鎖は残基15、17、18と接触することが示される。残基12、13、16、または19の側鎖はHLA分子に向けられるので、これらとFabの接触はなされない。以下の通り、結合したペプチドに元のHPV16 E7タンパク質の残基の位置に従って番号を付す:
【化1】
【0279】
大多数のFab接触は骨格とではなくペプチド側鎖となされる。
【0280】
17670Pによってなされるペプチド接触は、ほぼ排他的にCDR LCDR1およびHCDR3、特に、HCDR3に集中する。特に、配列番号34のFab重鎖残基100、101、102、105、109、110および配列番号42の軽鎖残基30、31、32、50は結合したペプチドと接触し、一方、配列番号34のFab重鎖残基28、31、32、100、102、104、109、110、113および配列番号42の軽鎖残基31、50、52、53、54、55、92はHLAと接触する。ここでの「接触」は、直接または水に媒介される水素結合、電荷-電荷相互作用、または疎水性/ファンデルワールス相互作用を伴い得る。17363Nに関しては、配列番号506のFab重鎖残基102、103、108、111、112および配列番号514の軽鎖残基28、30、32、50、68が、結合したペプチドと接触し、一方、配列番号506のFab重鎖残基28、32、100、102、103、107、112および配列番号514の軽鎖残基31、49、50、51、52、53、55、92がHLA分子と接触する。
【0281】
6種の抗HLA-A2:HPV16E7:11-19抗体のうち、17675Pが、ペプチド結合性を決定するCDR配列が17670Pと最も類似し、21064Pと17930N2もペプチド結合性CDR領域に高度の類似性を共有する。17670PとHLA-ペプチド複合体との間の重要な接触は、大部分は17675P、21064P、および17930N2に保存されており、したがって、これらの抗体でなされる結合は17670Pの結合と同じである可能性が高い。
【0282】
対照的に、17363NのCDR H3は17670P由来のCDR H3と比較して全く異なる配列を有し、この配列の差異はCDR H3の構造的差異に変換され、これにより、この領域におけるHLA-ペプチド複合体との接触は変更される。例えば、17670Pの重鎖Tyr100は結合したペプチドのTyr11と接触する。17363Nの等価な残基はTyr102であり(この抗体のCDR H3は2残基長い)この残基はペプチドTyr11と接触しない。その代わりに、Tyr102は近くのHLA分子と接触するように再び配向される。
【0283】
リード抗体17364Nは、17363Nと非常に類似した配列を有し、HLA-ペプチド複合体と接触する全ての残基が同一である。この抗体は、17363Nと非常に類似し、したがって、17670P、17675P、17930N2、および21064Pとは異なる結合形式を有するはずである。
【0284】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態による範囲に限定されるものではない。実際に、前述の説明および添付図から、本明細書に記載のものに加えて本発明の種々の改変が当業者に明らかになるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るものとする。