(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026318
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】股関節置換物を監視する器具、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/32 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A61F2/32
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207198
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2022027879の分割
【原出願日】2014-03-14
(31)【優先権主張番号】61/789,170
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519316911
【氏名又は名称】カナリー メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ハンター ウィリアム エル
(57)【要約】
【課題】置換用人工股関節を提供する。
【解決手段】置換用人工股関節であって、人工大腿骨ステムと、大腿骨ステムに結合された人工大腿骨頭と、大腿骨頭に結合された人工寛骨臼組立体と、大腿骨ステム、大腿骨頭及び寛骨臼組立体のうちの少なくとも1つに結合された複数のセンサとを有することを特徴とする、置換用人工股関節が提供される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換用人工股関節であって、
人工大腿骨ステムと、
前記大腿骨ステムに結合された人工大腿骨頭と、
前記大腿骨頭に結合された人工寛骨臼組立体と、前記大腿骨ステム、前記大腿骨頭及び前記寛骨臼組立体のうちの少なくとも1つに結合された複数のセンサと、を有する、置換用人工股関節。
【請求項2】
前記複数のセンサは、前記大腿骨ステムに設けられたセンサを含むことを特徴とする請求項1記載の置換用人工股関節。
【請求項3】
前記複数のセンサは、前記大腿骨頭に設けられたセンサを含む、請求項1記載の置換用人工股関節。
【請求項4】
前記複数のセンサは、前記寛骨臼組立体に設けられたセンサを含む、請求項1記載の置換用人工股関節。
【請求項5】
前記センサは、加速度計、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、機械的応力センサ、及び温度センサから成る群から選択される、請求項1~4のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節。
【請求項6】
前記加速度計は、加速度、傾動、振動、衝撃及び/又は回転を検出する、請求項5記載の置換用人工股関節。
【請求項7】
前記複数のセンサは、前記大腿骨頭と前記寛骨臼組立体との間に配置された接触センサを含む、請求項1記載の置換用人工股関節。
【請求項8】
前記複数のセンサは、前記寛骨臼組立体の外面上に配置された複数の接触センサを含む、請求項1記載の置換用人工股関節。
【請求項9】
前記複数のセンサは、前記寛骨臼組立体の外面上に配置された複数の接触センサを含む、請求項1記載の置換用人工股関節。
【請求項10】
前記複数のセンサは、前記大腿骨頭と前記寛骨臼組立体との間に配置された複数のひずみセンサを含む、請求項1記載の置換用人工股関節。
【請求項11】
前記複数のセンサは、前記大腿骨ステム上に配置された加速度計を含む、請求項1記載の置換用人工股関節。
【請求項12】
前記寛骨臼組立体は、寛骨臼シェル及び寛骨臼ライナを含む、請求項1記載の置換用人工股関節。
【請求項13】
前記寛骨臼ライナと前記寛骨臼シェルとの間に配置されたひずみセンサを更に含む、請求項7記載の置換用人工股関節。
【請求項14】
人工大腿骨ステムと、前記大腿骨ステムに結合された複数のセンサを有する、医療器具。
【請求項15】
人工大腿骨頭と、前記大腿骨頭に結合された複数のセンサと、を有することを特徴とする、医療器具。
【請求項16】
人工寛骨臼組立体と、前記寛骨臼組立体に結合された複数のセンサと、を有する、医療器具。
【請求項17】
前記センサは、前記医療器具の表面内及び前記表面上に配置されている、請求項14~16のうちいずれか一に記載の医療器具。
【請求項18】
前記センサは、加速度計、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、機械的応力センサ、及び温度センサから成る群から選択される、請求項14~17のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節。
【請求項19】
前記加速度計は、加速度、傾動、振動、衝撃及び/又は回転を検出する、請求項18記載の置換用人工股関節。
【請求項20】
前記大腿骨ステム内に配置されていてセンサに電気的に結合された電子プロセッサを更に有する、請求項1~19のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具。
【請求項21】
前記電気結合は、ワイヤレス結合である、請求項20記載の置換用人工股関節又は医療器具。
【請求項22】
前記電子プロセッサに結合されると共に前記大腿骨ステムの内部に配置されたメモリを更に有する、請求項20又は21記載の置換用人工股関節又は医療器具。
【請求項23】
前記センサは、1平方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいセンサ密度で前記置換用人工股関節又は医療器具上に又は内に配置された複数のセンサである、請求項1~22のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具。
【請求項24】
前記センサは、1立方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいセンサ密度で前記股関節置換物上又は内に配置された複数のセンサである、請求項1~22のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具。
【請求項25】
方法であって、
患者の股関節部中の本来の位置に設けられた人工大腿骨頭と人工寛骨臼組立体との間の複数の配置場所に配置された接触センサから接触データを得るステップと、
前記接触データを前記大腿骨頭に結合された人工大腿骨ステム内に配置されているメモリ内に記憶するステップと、
前記接触データを前記メモリから前記大腿骨ステムの外部の場所に伝送するステップをと含む、方法。
【請求項26】
患者の股関節部中の本来の位置に設けられた人工大腿骨頭と人工寛骨臼組立体との間の複数の配置場所に配置されたひずみセンサからひずみデータを得るステップと、
前記ひずみデータを前記大腿骨頭に結合された人工大腿骨ステム内に配置されているメモリ内に記憶するステップと、
前記ひずみデータを前記大腿骨ステム内の前記メモリから前記大腿骨ステムの外部の場所に設けられたメモリに伝送するステップと、を更に含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
患者の体内の本来の位置に存在した状態で前記寛骨臼組立体と前記患者の骨盤骨との間に配置された接触センサから接触データを得るステップと、
前記接触データを前記大腿骨ステム内に設けられたメモリ内に記憶するステップと、
前記接触データを前記大腿骨ステム内の前記メモリから前記大腿骨ステムの外部の場所に設けられたメモリに伝送するステップと、を更に含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
患者の股関節部内の本来の位置に設けられた置換用股関節組立体上の複数の場所に配置された加速度計から加速度データを得るステップと、
前記加速度データを前記大腿骨頭に結合された人工大腿骨ステム内に設けられたメモリ内に記憶するステップと、
前記加速度データを前記大腿骨ステム内の前記メモリから前記大腿骨ステムの外部の場所に設けられたメモリに伝送するステップと、を含む、方法。
【請求項29】
a)請求項1~24のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具のセンサからデータを得るステップと、
b)前記データを請求項1~24のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具内の記憶サイトのところに設けられたメモリ内に記憶するステップと、及び
c)前記データを前記メモリから前記記憶サイトの外部の場所に伝送するステップと、を含む、方法。
【請求項30】
前記置換用人工股関節又は医療器具は、患者の体内に植え込まれ、前記データは、前記患者の外部のサイトに伝送される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記データは、腕時計、リストバンド、携帯電話又は眼鏡に伝送される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記データは、居住地又はオフィスに伝送される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記データは、保健医療提供者に伝送される、請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記データを分析するステップを更に含む、請求項25~33のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項35】
記憶コンテンツが方法を実行するようコンピュータ計算システムを環境設定する非一過性コンピュータ可読記憶媒体であって、前記方法は、
患者を識別するステップを含み、前記識別された患者は、少なくとも1つのワイヤレス股関節インプラントを有し、前記股関節インプラントは、1つ又は2つ以上のセンサを有し、
ワイヤレス問い合わせユニットを検出して前記それぞれのセンサのうちの少なくとも1つからセンサデータを収集するステップと、
前記収集したセンサデータを受け取るステップと、を含む、記憶媒体。
【請求項36】
前記方法は、前記収集したセンサデータからデリケートな患者データを除去するステップと、センサの形式又は配置場所に従って前記データを分析するステップとを更に含む、記憶コンテンツが方法を実施するためにコンピュータ計算システムを環境設定する請求項35記載の記憶媒体。
【請求項37】
前記股関節インプラントは、請求項1~24のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具である、請求項35又は36記載の記憶媒体。
【請求項38】
前記データは、腕時計、リストバンド、携帯電話又は眼鏡上で受け取られる、請求項35~37のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
【請求項39】
前記データは、患者の居住地又はオフィス内で受け取られる、請求項35~38のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
【請求項40】
前記データは、保健医療提供者に提供される、請求項35~39のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
【請求項41】
前記データは、1つ又は2つ以上のウェブサイトに書き込まれる、請求項35~40のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
【請求項42】
前記データは、経時的な変化の視覚化を可能にするようプロットされる、請求項25~34のうちいずれか一に記載の方法又は請求項35~41のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
【請求項43】
前記データは、2次元又は3次元画像を提供するようプロットされる、請求項42記載の方法又は記憶媒体。
【請求項44】
前記データは、2次元又は3次元動画を提供するようプロットされる、請求項42又は43記載の方法又は記憶媒体。
【請求項45】
前記データは、人工股関節インプラント又は医療器具を有する患者の動作範囲を求めるよう利用される、請求項42~44のうちいずれか一に記載の方法又は記憶媒体。
【請求項46】
前記データは、前記人工股関節インプラント又は医療器具の不具合又は誤動作を判定し又は予測するために用いられる、請求項42~44のうちいずれか一に記載の方法又は記憶媒体。
【請求項47】
置換用人工股関節又は医療器具の劣化を検出する方法であって、
a)請求項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具を患者に提供するステップと、
b)センサの変化を検出し、かくして前記人工股関節インプラント又は医療器具の劣化を突き止めるステップと、を含む、方法。
【請求項48】
前記センサは、1つ又は2つ以上の生理学的及び/又は場所的パラメータを検出することができる、請求項47記載の方法。
【請求項49】
置換用人工股関節又は医療器具の感染を検出する方法であって、
a)請求項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具を患者に提供するステップと、
b)センサの変化を検出し、かくして前記人工股関節インプラント又は医療器具の感染を突き止めるステップと、を含む、方法。
【請求項50】
前記センサの変化は、温度の上昇である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
人工股関節置換物又は医療器具を画像化する方法であって、請求項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具内、上、及び/又は内部に設けられたセンサの変化を検出するステップを含み、前記人工股関節インプラント又は医療器具は、1平方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいセンサ密度でセンサを有する、方法。
【請求項52】
人工股関節インプラント又は医療器具を画像化する方法であって、請求項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具内、上、及び/又は内部に設けられたセンサの経時的変化を検出するステップを含み、前記人工股関節インプラント又は医療器具は、1立方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいセンサ密度でセンサを有する、方法。
【請求項53】
前記センサは、流体圧力センサ、接触センサ、位置センサ、加速度計、圧力センサ、血液量センサ、血流量センサ、血液化学センサ、血液代謝センサ、機械的応力センサ、温度センサのうちの1つ又は2つ以上である、請求項51又は52記載の方法。
【請求項54】
患者の体内に人工股関節インプラント又は医療器具を配置する方法であって、a)請求項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具を植え込むステップと、b)センサを検出することによって前記人工股関節インプラント又は医療器具の配置を検出するステップとを含む、方法。
【請求項55】
前記人工股関節インプラント又は医療器具は、2つ又は3つ以上の区分を有し、前記2つ又は3つ以上の区分の検出は、1つ又は2つ以上のセンサの分析によって判定できる、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記人工股関節インプラント又は医療器具の配置は、前記人工股関節インプラント又は医療器具に設けられた前記1つ又は2つ以上のセンサの2次元又は3次元表示又は画像によって視覚化できる、請求項54又は55記載の方法。
【請求項57】
前記人工股関節インプラント又は医療器具の配置を検出する前記ステップにより、前記人工股関節インプラント又は医療器具が不正確に配置されたかどうかの判定が可能である、請求項54~56のうちいずれか一に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、股関節置換術に関し、特に、股関節全置換術及び部分置換術の実施を監視する器具及び方法に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2013年3月15日に出願された米国特許仮出願第61/789,170号の35.U.S.C.§119(e)に基づく権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
股関節置換術は、最もありふれた整形外科的処置のうちの1つである。これは、患者が典型的には股関節の外傷、股関節の無血管性壊死に起因して患者が股関節の十分な使用を失った場合、又は関節の激痛及び/又は持続性関節疼痛(例えば、種々のタイプの関節炎(例えば、リウマチ様関節炎又は骨関節症)に起因する)の治療のために実施される場合がある。
【0004】
股関節置換術は、多種多様な形態を取る場合がある。股関節全置換術又は人工股関節置換術(THR)では、大腿骨頭と寛骨臼の両方が置換される。半(部分)股関節形成術では、大腿骨頭だけが置換され、患者自体の寛骨臼は、保持される。股関節置換物の大腿骨コンポーネントは、一体の完全なユニットとして頭及びステムを備えた単一部品である場合があり、或いは、数個の部品の状態で作られる場合があり、この場合、例えば、人工大腿骨ステムを別個の大腿骨頭部品及び頸部区分に結合する(これは、患者に長さ及び/又は大腿骨頭サイズにあった特注適合性を提供するために行われる場合が多い)。大腿骨コンポーネントは、骨用セメントで定位置に接着する場合があり(接着股関節)又は大腿骨コンポーネントを大腿骨の髄間内に正確に嵌め込まれてセメントなしで定位置に保持される場合がある(AML‐anatomic medullary locking(解剖学的髄内ロッキング)-ステム設計)。同様に、THRの寛骨臼コンポーネントも又、大腿骨頭を受け入れる股関節隙に結合される単一部品であっても良く、或いは、骨盤骨に結合されるシェル及びシェルに取り付けられた内側ライナを含む2部品コンポーネントであっても良い。THRの寛骨臼コンポーネントは、スクリュー及び/又はセメントにより定位置に保持される場合があり、又はセメントなしで取り付けられる場合がある。
【0005】
現在、種々のコンポーネントは、同種の材料で作られる場合があり(例えば、全ての部分は、金属で作られる場合がある)又は個々のコンポーネントは、多種多様な材料で作られる場合がある。例えば、寛骨臼コンポーネントは、骨への取り付け及び内方成長を容易にするために外面被膜を備えた金属シェル及びポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、セラミック又は外科用ステンレス鋼で作られた内張り(内側ライナ)を有するのが一般的である。同様に、大腿骨頭の構成に用いられる材料について数種類の互いに異なる組み合わせが存在する場合がある。例えば、大腿骨頭は、金属、通常はコバルトクロム(しかしながら、ステンレス鋼又はチタンでも良い)又はセラミック材料で構成される場合があり、他方、大腿骨ステムは、典型的には金属(ステンレス鋼、チタン、又はコバルトクロム)であり、大腿骨内へのインプラントの結合を促進するために表面被膜を備える場合が多い。
【0006】
図1は、当該技術分野において知られているタイプの人工股関節全体を示している。
図2は、
図1の人工股関節全体の分解組立て図である。寛骨臼シェル(なお、前後関係から特段の問題がなければ、特に明示しない場合であっても「人工寛骨臼シェル」を意味している)は、任意適当な材料、好ましくは金属又はセラミックで形成でき、内側ライナは又、寛骨臼シェルのための材料と適合性のある任意適当な材料で形成できる。例えば、ライナは、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、セラミック、金属、又は他形式の材料で作られる場合がある。大腿骨頭(これ又、前後関係から特段の問題がなければ、特に明示していない場合であっても、以下「人工大腿骨頭」を意味している)は、金属又はセラミックで作られる場合があり、かかる大腿骨頭は、寛骨臼ライナ(同様に、前後関係から特段の問題がなければ、特に明示していない場合であっても、以下「人工寛骨臼ライナ」を意味している)を構成する材料と同種又は異種材料のものである場合があり、例えば、セラミック寛骨臼ライナ上のセラミック大腿骨頭(セラミック・オン・セラミック股関節;COC)、金属寛骨臼ライナ上の金属大腿骨頭(メタル・オン・メタル股関節;MOM)又は変形例としてポリエチレン寛骨臼ライナ上の金属又はセラミック大腿骨頭(メタル・オン・ポリウレタン,MOP;メタル・オン・架橋ポリウレタン,MOXP;セラミック・オン・ポリウレタン,COP;セラミック・オン・架橋ポリウレタン,COXP)、又はこれらの他の組み合わせである。大腿骨ステム(同様に、前後関係から特段の問題がなければ、特に明示していない場合であっても、以下「人工大腿骨ステム」を意味している)は、通常、患者の体内において長期間使用のための生体適合性のある金属(ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム)で作られ、かかる大腿骨ステムは、大腿骨体中に挿入され、骨用セメントの有無を問わず定位置に保持される。
【0007】
残念ながら、股関節全体を挿入すると、種々の合併症が経時的に起こる場合がある。例えば、
図3に示されているように、大腿骨頭と寛骨臼ライナとの間に摩耗が生じる場合があり、その結果、人工股関節の動作が不適切になる。加うるに、患者は、炎症を生じる場合があり、コンポーネントのうちのどれかが僅かに動き又は転位があった場合でも疼痛を生じる。寛骨臼ライナ(存在する場合には、THRの場合のように)及び大腿骨頭(THRと半関節形成術の両方)に用いられる材料の種類に応じて、寛骨臼ライナ及び/又は大腿骨頭に摩耗が生じる場合があり、その結果、関節の弛み又は部分(又は完全)転位が生じると共に股関節の性能が劣化する場合があり、その結果、動作及び歩行が困難になり、しかも患者に疼痛及び炎症が引き起こされる場合がある。第2のありふれた合併症は、長期間にわたり(例えば、8~12年)、骨軟化又は骨溶解と呼ばれているプロセスに起因して骨盤及び/又は大腿骨のいずれか内のインプラントを包囲している組織内で骨消失が起こることである。
【0008】
インプラントの周りの骨の侵食(エロージョン)は、大腿骨頭と寛骨臼カップとの間の摩擦により生じてインプラントを包囲している組織に入り込んで炎症や骨消失を引き起こす材料デブリ(金属、セラミック、及び/又はポリウレタン破片)によって引き起こされる場合がある。炎症及び骨軟化の他の潜在的な原因は、インプラントの振動及び運動、機械的摩耗及び裂離、インプラント材料とその周りの骨との生体適合性の欠如、金属アレルギー、及び骨用セメントとその周りの骨との生体適合性の欠如である。追加の合併症としては、感染、神経損傷、材料感受性、神経衝突、及び股関節脱臼(筋肉が十分には治癒していない場合に起こる可能性が高く、通常、術後最初の4~12週間の間である)が挙げられる。
【0009】
現在、股関節置換術を受けた患者の術後院内監視が病院内スタッフ及び医療チームによる個人的訪問により、医学的監視(バイタルサイン等)、股関節可動域(ROM)の評価、物理療法(早期可動及び活動を含む)、及び必要に応じて診断画像化研究及び血液研究により行われている。患者がいったん退院すると、プロテーゼ(人工装具)性能及び患者の満足度は、定期的な医師の診療所への訪問の際にチェックされ、かかる訪問では、全病歴、身体所見及び補完的画像化及び診断研究が患者の経過を監視すると共に何らかの潜在的な合併症の発生を識別するために用いられる。かかる訪問の際、外科医は、典型的には、股関節の可動域を評価し、或る特定の動作又は行為の際に起こる何らかの疼痛を識別しようとし、そして患者に質問して活動レベル、日々の機能発揮具合、ペインコントロール、及びリハビリテーションの経過を判定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
残念ながら、患者の回復期間の大部分は、病院訪問の合間又は診療所訪問の合間で起こる。全関節可動域(ROMは、ペインコントロール、抗炎症薬の程度、時刻、最近の活動、及び/又は患者が診察時にどのように感じているかに応じて変化する場合がある)、「実生活」プロテーゼ性能、患者活動レベル、運動耐性、及び手術日から全回復までのリハビリテーション労力の有効性(物理療法、薬物等)を正確に測定してフォローすることは極めて困難であると言える。この情報の大部分に付き、医師は、術後治療有効性並びに回復及びリハビリテーション経過に対する洞察を得るために患者の自己申告又は第三者の観察に依存しており、多くの場合、これは、求めるべきものが何であるかについてはっきりとは分かっておらず、「正常の/予想される」術後回復がどのようなものであるかについて知識がなく、ノンコンプライアンスであり、或いはこれらの症候を効果的に伝えることができない患者によって一層複雑になる。さらに、これらが症候性になり、医師訪問の合間に生じる前に合併症(院内外)を鑑別して追跡すること又は存在の検出が困難な合併症を鑑別して追跡することも又、THR患者の管理に対して有益且つ追加の情報を提供する。現在、あらゆる事例において、医師も患者もこれらの人がもしそうでない場合に有する可能性のある「リアルタイム」の連続した客観性のあるプロテーゼ性能測定のタイプにアクセスできないでいる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来の人工股関節の欠点の多くを解決する新規な股関節全及び部分置換物、これら新規な股関節置換物を構成して監視する方法を開示し、更に他の関連した利点を提供する。
【0012】
概要を述べると、患者の体内の人工股関節の健全性及び有効性を監視するための多くのセンサを備えた全及び部分人工股関節が提供される。センサは、人工股関節の外面上、人工股関節の内面上、プロテーゼ材料(ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム、ポリウレタン、高分子量ポリウレタン、セラミックス等)それ自体の内部、人工股関節を構成する種々のコンポーネント相互間、人工股関節(存在していれば)を固定するために用いられる骨用セメント(例えば、PMMA、又はPMMA及びMMAコポリマーブレンド)の内部及び/又はプロテーゼの周りの組織内に配置されるのが良い。或る特定の実施形態では、センサは、受動型であり、かくしてそれ自体の電源を必要としない形式のものである。
【0013】
本発明の一観点では、全又は部分人工股関節及び人工股関節上、人工股関節内、又は人工股関節の周りに配置されたセンサを含むインプラントを患者の体内に位置決めすると共に留置する組立体が提供される。種々の実施形態では、センサは、人工股関節の外面上、人工股関節の内面上、人工股関節を構成するために用いられる材料内、人工股関節を構成する種々のコンポーネント相互間、人工股関節を固定するために用いられる骨用セメント上又は内、人工股関節の周りの組織(代表的には骨又は骨髄、しかしながら筋肉、靱帯、腱、関節包、及び/又は滑液コンパートメント)上又は内、或いはこれらの任意の組み合わせに配置されるのが良い。本発明内に用いられるのに適したセンサの代表的な例としては、加速度計(加速度センサ、傾動センサ、振動センサ、衝撃センサ、及び回転センサ)、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、機械的応力センサ、及び温度センサが挙げられる。特に好ましい実施形態では、センサは、ワイヤレスセンサであり、又はワイヤレスマイクロプロセッサに接続されたセンサである。
【0014】
別の実施形態では、複数の上述のセンサが人工股関節上、人工股関節内、又は人工股関節の周り(骨用セメント又は組織)に配置され、好ましい実施形態では、人工股関節は、1つ以上の形式のセンサ(例えば、次のセンサ、即ち、加速度センサ、傾動センサ、振動センサ、衝撃センサ、回転センサ、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、及び機械的応力センサのうちの1つ若しくは2つ以上又はこれらの任意の組み合わせ)を有するのが良い。
【0015】
種々の実施形態によれば、センサは、人工股関節の作用、動き、機能、摩耗、性能、潜在的副作用及び医学的状態並びに患者の生きている組織とのそのインターフェースを監視するために置換用人工股関節内の種々の場所に配置される。患者の活動、患者の機能、プロテーゼの活動、プロテーゼの機能、プロテーゼの性能、及び潜在的な副作用のライブの連続した現場での監視が提供される。加うるに、置換用人工股関節及び患者自体の身体組織とのその相互作用の多くの観点についての情報が利用でき、かかる情報は、身体計測、医用画像化及び診断医学的研究によって現時点では利用できない臨床的に重要な測定を含む。
【0016】
一実施形態によれば、センサは、人工股関節の可動域(ROM)に関する評価データを提供する。現在、ROMは、医師が身体計測中に可動域全体にわたり人工股関節を受動的に動かし、結果(屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋、及び屈曲の際のか回転の程度)を記録することによって通常、臨床的に測定される。動作センサ及び加速度計は、身体計測中及び訪問相互間における通常の日々の活動中の両方における人工股関節の全ROMを正確に求めるために使用できる。
【0017】
一実施形態によれば、接触センサがインプラントの周りの骨の侵食及びインプラントの周りの弛みを測定するために、プロテーゼとその周りの骨との間、プロテーゼとその周りの骨用セメントとの間、及び/又は骨用セメントとその周りの骨との間に設けられる。他の実施形態では、プロテーゼとその周りの骨との間、プロテーゼとその周りの骨用セメントとの間、骨用セメントとその周りの骨との間のひずみ、及び更にプロテーゼの種々の部分に及ぼされるひずみを検出するためにひずみゲージが設けられる。ひずみの突然の増大により、大きすぎるほどの応力が置換用プロテーゼに加わり、それにより身体に対するダメージが大きくなる場合のあることが分かる。例えば、ひずみの長期間にわたる漸次減少は、インプラントの周りの骨の再吸収を生じさせる場合があり、それによりプロテーゼの弛み又はプロテーゼの周りの骨折が生じる。
【0018】
他の実施形態によれば、振動、衝撃、傾動及び回転を検出する加速度計が設けられる。他の実施形態では、関節面を監視するために表面磨耗を測定するセンサ、例えば接触センサ又は圧力センサが大腿骨頭、寛骨臼、及び/又は寛骨臼カップ内の様々な深さに埋め込まれるのが良い。他の実施形態では、可動域を指示すると共に或る期間にわたる実際の使用の際の部分(又は完全な)股関節脱臼があるかどうかをモニタする位置センサ並びに他形式のセンサが設けられる。
【0019】
別の実施形態では、人工股関節(全又は部分)は、特定の配置場所に特定された密度でセンサを有するのが良い。例えば、人工股関節は、器具の1平方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きいセンサ(例えば、加速度センサ、傾動センサ、振動センサ、衝撃センサ、回転センサ、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、及び機械的応力センサ又はこれらの任意の組み合わせ)のセンサ密度を有するのが良い。他の実施形態では、人工股関節(全又は部分)は、器具の1立方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きいセンサ(例えば、加速度センサ、傾動センサ、振動センサ、衝撃センサ、回転センサ、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、及び機械的応力センサ又はこれらの任意の組み合わせ)のセンサ密度を有するのが良い。関連の実施形態では、センサ(例えば、加速度センサ、傾動センサ、振動センサ、衝撃センサ、回転センサ、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、及び機械的応力センサ)が人工股関節上、人工股関節内、人工股関節周りの特定の場所に配置されるのが良く、かかる配置場所としては、例えば、人工大腿骨ステム、人工大腿骨頸部、人工大腿骨頭、寛骨臼カップ、寛骨臼内張り、連結されるべき器具の種々の部分(例えば、大腿骨ステム、大腿骨頸部及び大腿骨頭の連結セグメント、寛骨臼カップ及び寛骨臼内張りの連結セグメント)内、及び人工股関節の周り(人工股関節を固定するために用いられる骨用セメント上又は内、人工股関節の周りの組織上又は内、代表的には骨又は骨髄上又は内、しかしながら更に筋肉、靱帯、腱、関節包及び/又は滑液コンパートメント上又は内)が挙げられる。
【0020】
本発明の或る特定の実施形態では、全又は部分人工股関節は、特定の一義的な識別番号を備え、別の実施形態では、人工股関節上、人工股関節内又は人工股関節の周りのセンサの各々は、特定の一義的な識別番号かグループ識別番号(例えば、センサを加速度センサ、傾動センサ、振動センサ、衝撃センサ、回転センサ、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、又は機械的応力センサとして識別する識別番号)のいずれかを有する。さらに別の実施形態では、特定の一義的な識別番号又はグループ識別番号は、特に、人工股関節上、人工股関節内又は人工股関節周りの位置と関連している。
【0021】
本発明の他の観点では、植え込まれた全又は部分人工股関節を監視する方法が提供され、この方法は、体外の場所からのワイヤレス電気信号を体内の場所に送信するステップと、この電気信号を体内に設けられた人工股関節上、人工股関節内又は人工股関節周りに配置されたセンサのところで受信するステップと、受信した信号を用いてセンサに電力供給するステップと、センサのところでデータを検出するステップと、検出したデータをセンサから体外に設けられた受信ユニットに出力するステップとを含む。
【0022】
部分又は全人工股関節の健全性は、ワイヤレスで問い合わせ可能であり、その結果は、定期的に報告される。これにより、患者の健康を定期的に又は患者及び/又は医師によって要望される任意の時点でチェックすることができる。
【0023】
別の実施形態では、センサの各々は、信号受信回路及び信号出力回路を有する。信号受信回路は、電力とデータ収集要求コンポーネントの両方を含む問い合わせ信号を受信する。問い合わせ信号からの電力を用いて、センサは、検出を行うのに必要な回路の部分を起動し、検出を実行し、次にデータを問い合わせモジュールに出力する。問い合わせモジュールは、制御ユニットの制御下で働き、制御ユニットは、適当なI/O回路、メモリ、マイクロプロセッサの形態をしたコントローラ及び他の回路を含み、その目的は、問い合わせモジュールを駆動することにある。さらに別の実施形態では、センサ(例えば、加速度センサ、傾動センサ、振動センサ、衝撃センサ、回転センサ、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、又は機械的応力センサ)は、これらを人工股関節内に容易に組み込むことができ又は違ったやり方でこれに機械的に取り付けることができる(例えば、人工股関節へのセンサの永続的な取り付けを可能にする開口部又は他の付属物により)と共に/或いは人工股関節を包囲している骨用セメント又は組織中に容易に組み込むことができるよう構成されている。
【0024】
本発明の更に別の観点では、ワイヤレス電気信号を体外の場所から体内の場所に送信し、この電気信号を体内に設けられた人工股関節上、人工股関節内又は人工股関節の周りに配置された上述のセンサのうちの1つで受信し、受信した信号を用いてこのセンサに電力供給し、センサのところでデータを検出し、そしてセンサからの検出データを体外に設けられた受信ユニットに出力するのに適した方法又は器具が提供される。或る特定の実施形態では、受信ユニットは、センサにより提供された信号の分析を行うことができる。
【0025】
センサにより収集されたデータを人工大腿骨ステム内に設けられたメモリ内に記憶するのが良い。医師への訪問の際、データをワイヤレスセンサによりダウンロードするのが良く、医師は、プロテーゼのリアルタイム性能を表すデータを得ることができる。
【0026】
得られる利点としては、プロテーゼのより正確な監視及び患者の健康に寄与する正確で現場のデータの医学的報告が可能であることが挙げられる。1つ又は2つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。他の特徴、他の目的及び他の利点は、本明細書、図面及び特許請求の範囲の記載から明らかであろう。加うるに、本明細書において引用する全ての特許明細書及び特許出願明細書を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】
図1の全股関節置換物の分解組立て図である。
【
図3】患者の骨盤内の全股関節置換物を示す図である。
【
図4】本明細書において説明する種々の実施形態としてのセンサが設けられた全人工股関節の分解組立て図である。
【
図5】人工股関節を交換した後における
図4の実施形態を示す図であり、患者の骨との接触場所を示す図である。
【
図6A】本明細書において説明する種々の実施形態に従って種々のセンサが設けられた寛骨臼カップ、ライナ及び人工大腿骨の分解組立て図である。
【
図6B】種々の場所へのひずみゲージの組み込みの仕方を示す図である。
【
図7A】ボールが取り付けられた人工大腿骨インプラントの側面図である。
【
図7B】種々のセンサ及び電力発生セグメントを備えた人工大腿骨インプラントの側面拡大図である。
【
図8A】本明細書において説明する実施形態に従って種々のセンサを有する寛骨臼カップの平面図である。
【
図8B】種々のセンサが設けられた
図9の寛骨臼カップ内のライナを示す図である。
【
図9】種々のセンサ配置場所の例を含む組立て状態の全人工股関節の側面図である。
【
図10】患者の体内で完全に機能状態にあり種々の互いに異なる形式のセンサを備えた
図9の人工股関節組立体全体を示す図である。
【
図11A】本明細書において開示する種々の実施形態に従って測定されると共に監視できる人工股関節の動きを示す図である。
【
図11B】本明細書において開示する種々の実施形態に従って測定されると共に監視できる人工股関節の動きを示す図である。
【
図12】センサデータを処理するために構成された情報及び通信技術システム実施形態を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態によるセンサ、問い合わせモジュール、及び制御ユニットのブロック図である。
【
図14】本発明の一実施形態に従ってデータを得るために探査されると共にデータを出力している患者の体内の股関節置換物上に配置された1つ又は2つ以上のセンサの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
概要を説明すると、本発明は、本器具の健全性及び有効性を監視するために利用できる種々の股関節置換物を提供する。しかしながら、本発明を説明する前に、最初に以下に用いられる或る特定の用語の定義を説明することが本発明の理解に有用であると言える。
【0029】
「股関節置換物」は、この用語が本明細書において用いられる場合、種々の互いに異なる形態を取ることができると共に患者の股関節の全て又は所々を合成材料で置換することを必要とする場合がある。股関節全置換術又は人工股関節置換術(THR)では、大腿骨頭と寛骨臼の両方が置換される。半(部分)股関節形成術では、大腿骨頭だけが置換され、患者自体の寛骨臼は、保持される。股関節置換物の大腿骨コンポーネントは、一体の完全なユニットとして頭及びステムを備えた単一部品である場合があり、或いは、数個の部品の状態で作られる場合があり、この場合、例えば、人工大腿骨ステムを別個の大腿骨頭部品及び頸部区分に結合する(これは、患者に長さ及び/又は大腿骨頭サイズにあった特注適合性を提供するために行われる場合が多い)。大腿骨コンポーネントは、PMMA骨用セメントで定位置に接着する場合があり(接着股関節)又は大腿骨コンポーネントを大腿骨の髄間内に正確に嵌め込まれてセメントなしで定位置に保持される場合がある(AML‐anatomic medullary locking(解剖学的髄内ロッキング)-ステム設計)。同様に、THRの寛骨臼コンポーネントも又、大腿骨頭を受け入れる股関節隙に結合される単一部品であっても良く、或いは、骨盤骨に結合されるシェル及びシェルに取り付けられた内側ライナを含む2部品コンポーネントであっても良い。THRの寛骨臼コンポーネントは、スクリュー及び/又はセメントにより定位置に保持される場合があり、又はセメントなしで取り付けられる場合がある。
【0030】
現在、種々のコンポーネントは、同種の材料で作られる場合があり(例えば、全ての部分は、金属で作られる場合がある)又は個々のコンポーネントは、多種多様な材料で作られる場合がある。例えば、寛骨臼コンポーネントは、骨への取り付け及び内方成長を容易にするために外面被膜を備えた金属シェル及びポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、セラミック又は外科用ステンレス鋼で作られた内張り(内側ライナ)を有するのが一般的である。同様に、大腿骨頭の構成に用いられる材料について数種類の互いに異なる組み合わせが存在する場合がある。例えば、大腿骨頭は、金属、通常はコバルトクロム(しかしながら、ステンレス鋼又はチタンでも良い)又はセラミック材料で構成される場合があり、他方、大腿骨ステムは、典型的には金属(ステンレス鋼、チタン、又はコバルトクロム)であり、大腿骨内へのインプラントの結合を促進するために表面被膜を備える場合が多い。
【0031】
本明細書で用いられる「股関節インプラント」又は「股関節置換物」又は「股関節置換物又はその一部分」又は「医療器具」は、文脈上特定の別段の必要がない場合、全人工股関節を構成する種々のコンポーネントのうちの任意のもの又は全てを意味するものと理解されるべきであり、かかるコンポーネントとしては、例えば、人工大腿骨ステム、人工大腿骨頭及び寛骨臼組立体並びにこれらの種々のサブコンポーネントが挙げられる。「置換用人工股関節」という用語は、部分置換用人工股関節か全置換用人工股関節かのいずれかを意味するものと理解されるべきである。
【0032】
「センサ」は、人体、人体内に挿入された股関節インプラントの1つ又は2つ以上の互いに異なる観点及び/又は人体内に挿入された股関節インプラントの健全性、衝撃、有効性又は作用効果を計測するために利用できる器具を意味している。本発明に用いられるのに適したセンサの代表的な例としては、例えば、流体圧力センサ、接触センサ、位置センサ、脈圧センサ、血液量センサ、血流量センサ、化学センサ(例えば、血液及び/又は他の体液用)、代謝センサ(例えば、血液及び/又は他の体液用)、加速度計、機械的応力センサ及び温度センサが挙げられる。或る特定の実施形態では、センサは、ワイヤレスセンサであっても良く、或いは、他の実施形態では、センサは、ワイヤレスマイクロプロセッサに接続されても良い。別の実施形態では、センサのうちの1つ又は2つ以上(全てを含む)は、センサを具体的に識別する一義的センサ識別番号(“USI”)を有する場合がある。
【0033】
多種多様なセンサ(マイクロ(微小)電子機械システム、即ち“MEMS”又はナノ電子機械システム、即ち“NEMS”、及びBioMEMS又はBioNEMS、とも呼ばれており、これらについては、一般に、https://en.wikipedia.org/wiki/MEMSを参照されたい)を本発明に用いることができる。代表的な特許明細書及び特許出願明細書としては、米国特許第7,383,071号明細書及び米国特許出願公開第2010/0285082号明細書が挙げられる。代表的な刊行物としては、アルベルト・フォッシュ(Albert Foch ),「イントロダクション・トゥ・バイオエムイーエムエス(Introduction to BioMEMS )」,シーアールシー・プレス(CRC Press),2013年、マーク・ジェイ・マドウ(Marc J. Madow),「フロム・エムイーエムエス・トゥ・バイオ‐エムイーエムエス・アンド・バイオ‐エヌイーエムエス:マニュファクチャリング・テクニクス・アンド・アプリケーションズ(From MEMS to Bio-MEMS and Bio-NEMS: Manufacturing Techniques and Applications)」,シーアールシー・プレス(CRC Press),2011年、シモナ・バドゥレスク(Simona Badilescu),「バイオ‐エムイーエムエス:サイエンス・アンド・エンジニアリング・パースペクティブス(Bio-MEMS: Science and Engineering Perspectives)」,シーアールシー・プレス(CRC Press ),2011年、スティーブン・エス・サリターマン(Sreven S. Saliterman),「ファンダメンタルズ・オブ・バイオエムイーエムエス・アンド・メディカル・マイクロデバイシズ(Fundamentals of BioMEMS and Medical Microdevices)」,エスピーアイイージ・インターナショナル・ソサエティ・オブ・オプティカル・エンジニアリング(SPIE-The International Society of Optical Engineering),2006年,ワンジュン・ワン(Wanjunn Wang),スティーブン・エー・ソパー(Steven A.Soper)編,「バイオ‐エムイーエムエス:テクノロジーズ・アンド・アプリケーションズ(Bio-MEMS: Technologies and Applications )」,シーアールシー・プレス(CRC Press),2012年、フォルカー・ケンペ(Volker Kempe),「イナーシャル・エムイーエムエス:ピルンシプルズ・アンド・プラクテイス(Inertial MEMS: Principles and Practice)」,ケンブリッジ・ユニバーシティ・プレス(Cambridge University Press),2011年、ポーラ・ディー・エル他(Polla, D. L. et al.),「マイクロデバイシズ・イン・メディスン(Microdevices in Medicine)」,アニュアル・レビュー・オブ・バイオメディカル・エンジニアリング(Ann. Rev. Biomed. Eng.),2000年,第2巻,p.551~576、ユン・ケー・エス他(Yun, K. S. et al. ),「ア・サーフェス‐テンション・ドリブン・マイクロポンプ・フォア・ローボルテージ・アンド・ローパワー・オペレイションズ(A Surface-Tnesion Driven Micropunp for Low-voltage and Low Power Operations)」,ジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システムズ(J. Microelectromechanical Sys.),2002年10月,11:5、イェ・アール他(Yeh, R. et al.),「シングル・マスク,ラージ・フォース,アンド・ラージ・ディスプレイスメント・エレクトロスタティック・リニア・インチウォーム・モーターズ(Single Mask, Large Force, and Large Displacement Electrostatic Linear Inchworm Motors)」,ジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システムズ(J. Microelectromechanical Sys.),2002年8月,11:4,p.330~336、ロー・エヌ・シー他(Loh, N. C. et al),「サブ10cm3インターフェロメトリック・アクセレロメータ・ウィズ・ナノ‐ジー・レソリューション(Sub-10cm3 Interferometric Accelerometer with Nano-g Rsolution)」,ジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システムズ(J. Microelectromechanical Sys.),2002年6月,11:3,p.182~187、これらの刊行物の全てを参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0034】
本明細書において提供される本発明の種々の観点を更に理解するため、以下の項目、即ち、A.股関節インプラントの医療的使用、B.股関節インプラントの代表的な実施形態、C.股関節インプラントに施される被膜、D.薬剤溶出性股関節インプラント、E.股関節インプラントの感染を監視する方法、F.電力の発生、G.センサの医療的使用、H.股関節インプラントを含む組立体の医学的画像化及び自己診断、予測的分析及び予測的維持、I.股関節インプラントを含む組立体を監視する方法、及びJ.股関節インプラントを含む組立体からのデータの収集、伝送、分析、及び配信が以下に提供される。
【0035】
A.股関節置換物の医療的使用
股関節置換は、患者が結果的に障害、運動及び機能の喪失、歩行障害、及び/又は持続性関節疼痛及び不快感が生じるような股関節の十分な使用を失っている場合に実施される。全又は部分股関節置換を招く股関節機能障害の良く見受けられる原因は、外傷(典型的には、股関節部骨折、多くの場合大腿骨頸部のところで起こる)、股関節の無血管性壊死、又は種々の形式の関節炎(例えば、リウマチ様関節炎又は骨関節症)が挙げられる。大抵の患者では、手術は、歩行の改善、機能の回復及び疼痛の軽減に成功しており、その結果、この手術は、西側世界における最もありふれた整形外科的処置のうちの1つである。
【0036】
B.
股関節インプラントの代表的な実施形態
図4は、本明細書において説明する1つ又は2つ以上のセンサ22を備えた置換用股関節の形態をしたプロテーゼ10を示している。置換用股関節は、寛骨臼ライナ14が納められる寛骨臼シェル12を有する。置換用股関節は、2つのコンポーネント、即ち、人工大腿骨頭18及び人工大腿骨インプラント又は人工大腿骨ステム20を含む(更に、人工大腿骨頸部17を含む)人工大腿骨組立体16を更に有する。
【0037】
図5は、患者の体内に配置された置換用人工股関節10を分解組立て図で示している。
図5に示されているように、寛骨臼シェル12は、骨盤骨23に固定される。大腿骨ステム20は、大腿骨24に結合され、大腿骨頭18は、大腿骨ステム20上にいつでも配置可能な状態にあり、しかも寛骨臼シェルのライナ14にいつでも入ることができる状態で示されている。種々の実施形態を説明するために
図4と
図5を併せて説明する。
【0038】
複数のセンサ22が患者の行動及びプロテーゼ性能のリアルタイム動作を本来の位置又は原位置で監視するためにプロテーゼ10内に配置されている。次に、種々の実施形態に従って種々のこれらセンサについて説明する。
【0039】
一実施形態では、接触センサ22が寛骨臼シェル12の外面上に設けられている。これらセンサ22は、隣り合う部分相互間、例えば寛骨臼シェル12と骨盤23との接触及び/又は寛骨臼シェルと骨用セメント(存在している場合)との接触及び/又は骨用セメント(存在している場合)と骨盤との接触を検出して記録する。接触センサ22は、プロテーゼ10の弛み及びその周りのセメント(存在している場合)及び/又は骨盤骨へのその連結状態を検出することができる。寛骨臼の弛みは、骨の消失が寛骨臼の周りの骨盤骨で起こった(代表的には、8~12年にわたり)ときに(例えば、骨軟化又は骨溶解と呼ばれているプロセスに起因する)生じるありふれた合併症である。インプラントの周りの骨の侵食(エロージョン)は、大腿骨頭と寛骨臼カップとの間の摩擦により生じてインプラントを包囲している組織に入り込んで炎症や骨消失を引き起こす材料デブリ(金属、セラミック、及び/又はポリウレタン破片)によって引き起こされる場合がある。炎症及び骨軟化の他の潜在的な原因は、インプラントの振動及び運動、機械的摩耗及び裂離、インプラント材料とその周りの骨との生体適合性の欠如、金属アレルギー、及び骨用セメントとその周りの骨との生体適合性の欠如である。加うるに、接触センサ22は、材料デブリが経時的に堆積した結果として及び/又はシェルと骨盤骨との間の炎症の存在の結果として所望レベルよりも骨盤骨23から遠くに配置されていることを指示することができる。複数の接触センサ22が寛骨臼シェル12の周りの互いに異なる場所に配置されている。図示の実施例では、多くのセンサが寛骨臼シェル12の外面上に配置された状態で示されている。種々の実施形態では、これらセンサは、骨盤骨及び/又はその周りの骨用セメント(存在している場合)への接触場所に基づいて多種多様なパターンで配置されるのが良い。例えば、これらセンサは、寛骨臼シェル12と骨盤骨23及び/又はその周りの骨用セメント(存在している場合)との物理的接触に関する正確なデータを収集するために、X字形のパターンで、最も外側の周囲から冠までの寛骨臼シェル周りの長円形又は同心リングとして、或いは種々の他のパターンをなして配列されるのが良い。種々の実施形態では、接触センサは又、骨用セメントと寛骨臼プロテーゼとの物理的接触及び/又は骨用セメントと骨盤骨との物理的接触に関するデータを収集するよう骨用セメント(存在している場合)内に分散して配置されると共に/或いはこの骨用セメント内に配列されても良い。
【0040】
接触センサ22は又、寛骨臼ライナ14の2つの表面上の種々の場所に配置されても良い。したがって、接触センサ22は、寛骨臼ライナと寛骨臼シェルとの接触(及び/又は相互運動)(これらセンサは、寛骨臼ライナとシェルとの間のずれを検出するよう「対になる」のが良い)並びに大腿骨頭と寛骨臼ライナとの接触を検出することができる。同様に、接触センサ22は、大腿骨頭と寛骨臼ライナとの接触を検出するよう大腿骨頭上の種々の場所に配置されても良い。かくして、
図4及び
図5の実施形態では、種々の接触センサが骨と寛骨臼コンポーネントとの接触及び大腿骨頭と寛骨臼ライナとの接触を監視するために設けられる。生まれつき備わった寛骨臼又は人工股関節の合成寛骨臼からの大腿骨頭の転位は、術後まもなく(特に、周囲の支持組織が手術から治癒している間)起こる股関節置換物のありふれた合併症であり、大腿骨頭及び/又は寛骨臼上のセンサは、関節転位が起こった場合に患者及び保健医療提供者に警告することができる。股関節の部分又は不完全な転位(亜脱臼)も又生じる場合があり、かかる部分又は不完全な転位は、患者又は医師に対しては容易には明らかではない場合があり、大腿骨頭及び寛骨臼上の接触センサは、関節が正確に機能しているかどうか(追従しているかどうか)及び亜脱臼(準臨床的又は無症候性である場合であっても)が起こっているかどうかを判定することができる。
【0041】
追加の接触センサが大腿骨ステムと大腿骨との接触及び/又は大腿骨ステムとその周りの骨用セメント(存在している場合)との接触を監視するために大腿骨ステム上にも配置されるのが良い。接触センサは又、骨用セメントと大腿骨プロテーゼとの物理的接触及び/又は骨用セメントと大腿管との物理的接触に関するデータを収集するために骨用セメント(例えば、存在している場合には22B)内に分散して配置されると共に/或いはこの骨用セメント内に配列されても良い。これらセンサ22,22Bは、モジュール式大腿骨プロテーゼ内の連結部品相互間、例えば大腿骨頭18、大腿骨頸部17及び/又は大腿骨ステム20の相互接触を検出して記録することができる。隣接の部品上に対応の対をなして配置されるのが良いこれらセンサを用いると、モジュール式大腿骨プロテーゼの連結要素が正しく位置合わせされて取り付けられていることを確かめることができる。大腿骨体20上のセンサを用いると、大腿骨体と大腿骨との接触及び/又は大腿骨体とその周りの骨用セメント(存在している場合)との接触を監視するために使用でき、骨用セメント内のセンサは、骨用セメント(例えば、22B、存在している場合)と大腿骨との接触を監視するために使用できる。大腿骨体22上の接触センサは、プロテーゼの弛み及びその周りのセメント(存在している場合)及び/又は大腿骨へのその連結状態を検出することができる。大腿骨体の弛みは、骨の消失が骨溶解に起因して大腿骨体の周りの大腿管内で起こった(代表的には、8~12年にわたり)ときに生じるありふれた合併症である。上述したように、インプラントの周りの骨の侵食は、大腿骨頭と寛骨臼カップとの間の摩擦により生じて人工大腿骨の周りの組織に入り込んで炎症や骨消失を引き起こす材料デブリ(金属、セラミック、及び/又はポリウレタン破片)によって引き起こされる場合がある。炎症及び骨軟化の他の潜在的な原因は、インプラント振動及び動き、機械的摩耗及び裂離、インプラント材料とその周りの骨との生体適合性の欠如、金属アレルギー、及び骨用セメントとその周りの骨との生体適合性の欠如である。複数の接触センサ22が大腿骨体の周りの互いに異なる場所に配置されている。
図4及び
図5に示されているように、センサは、大腿骨体の外面上に配置された状態で示されている。種々の実施形態では、これらセンサは、大腿管及び/又はその周りの骨用セメント(存在している場合)に対する接触場所に基づいて種々の互いに異なるパターンをなして配置されるのが良い。例えば、これらセンサは、大腿骨体20と大腿骨及び/又はその周りの骨用セメント(存在している場合)との物理的接触に関する正確なデータを収集するために、螺旋のパターンをなして、大腿骨体の周りの垂直の線又は同心リングとして、或いは種々の他のパターンをなして配列されるのが良い。本発明の種々の実施形態では、接触センサは、本器具の1平方センチメートル当たり又は1立方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きいセンサ密度で大腿骨体及び大腿骨及び/又は骨用セメント上に配置される。
【0042】
図6Aは、プロテーゼ上に配置できるひずみゲージ26のための種々の位置を明確に図示できるようにするための寛骨臼シェル12、ライナ14、及び大腿骨頭18の分解組立て図である。接触センサ22は、
図6には図示されていないが、ひずみゲージと同時に用いることができ、かかる接触センサは、互いに隣接して配置されても良く又は同一のセンサであっても良い。ひずみゲージ26は、プロテーゼとその前の骨との間に生じる応力を検出するよう寛骨臼シェル12上の種々の場所に配置されるのが良い。ひずみが減少すると、それにより、骨の再吸収(消失)が生じ、それによりプロテーゼの弛み又は骨折が生じたらしいことが分かる。ひずみセンサ26は、接触センサ22とは異なるデータ点を提供する。接触センサ22は、隣り合う構造体相互間に現時点で接触があるかどうかを指定するに過ぎず、かくして、2つの表面相互間の当接接触が生じているかどうかの良好な指標をもたらす。しかしながら、これら接触センサは、表面のいずれかにひずみが存在するかどうかの指標を提供するわけではなく、他方、ひずみセンサ26は、インプラント全体に加えられている機械的ひずみ力を表すデータを出力し、かかる機械的ひずみ力は、是正されなければ、将来の弛み及びプロテーゼの故障の前触れである場合がある。加うるに、ひずみゲージ26は、2つの表面相互間、例えば寛骨臼ライナと骨盤骨との間又は寛骨臼シェル12と寛骨臼ライナ14との間に生じているひずみを指示する形式のものであるのが良い。さらに、かかるひずみゲージは、大腿骨頭18と寛骨臼ライナ14との間のひずみ及びかかるひずみの存在場所に関するデータを集めることができる。
【0043】
図6Bに示されているように、ひずみゲージは、大腿骨プロテーゼ、特に大腿骨ステム上に設けられるのが良いが、大腿骨頸部及び大腿骨頭上にも設けられるのが良い。ひずみゲージは、プロテーゼとその周りの骨との間に生じるひずみを検出するよう大腿骨ステム上の種々の場所に配置されるのが良い。ひずみが減少すると、それにより、大腿管内において骨の再吸収(消失)が生じ、それによりプロテーゼの弛み又は大腿骨の骨折が生じたらしいことが分かる。ひずみセンサは、大腿骨体中に存在するひずみの指標を提供すると共にインプラント全体に加えられている最も重要な機械的ひずみ応力を測定することができ、かかる機械的ひずみ力は、是正されなければ、結果として弛み及びプロテーゼの故障の高い蓋然性をもたらす。本発明の種々の実施形態では、ひずみセンサは、本器具の1平方センチメートル当たり又は1立方センチメートル当たり1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、又は10個以上のセンサ密度で寛骨臼シェル、寛骨臼ライナ、大腿骨体、及び大腿骨及び/又は骨用セメント上に配置される。
【0044】
図7A及び
図7Bは、加速度計が大腿骨体18、大腿骨頸部及び大腿骨頭内及び上の種々の場所に配置されている一実施形態を示している。具体的に説明すると、
図7Aに示されているように、1つ又は2つ以上の加速度計が大腿骨頭18上に配置されるのが良い。加うるに、加速度計又はジャイロスコープの形態をした1つ又は2つ以上の加速度センサ42が大腿骨体部分18の表面上又はこの大腿骨体部分の内部に配置されるのが良い。加速度計は、種々のコンポーネントの加速度、振動、衝撃、傾動、及び回転を検出することができるという利点をもたらす。これにより、種々の条件下において且つ長期間にわたってプロテーゼ10の性能を測定することができる。この特定の実施例では、プロテーゼ10は、置換用股関節である。当然のことながら、これは、任意他のプロテーゼ、例えば人工肘関節、肩関節、中手骨関節、距腿関節(足関節)等であっても良い。本発明の種々の実施形態では、ひずみセンサは、本器具の1平方センチメートル当たり又は1立方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、又は10個より大きいセンサ密度で寛骨臼シェル上、寛骨臼ライナ上、大腿骨体上、及び大腿骨上及び/又は骨用セメント上に配置される。
【0045】
股関節を置換してまもなく、下肢は、最初に受動的に動くようにされ、次に能動的に動くようにされ、しかる後まもなくして、患者は、その関節上に次第に重量を負担させ始めることになる。加速度計42は、下肢が前方に振り出されて地面に当たって踏みしめ、そして地面から持ち上げられ、そして身体が前に推進されるときの歩行中を含む運動中に股関節隙の運動を測定することになる。加うるに、加速度計は、足が地面に当たったときの衝撃及び大腿骨を介して骨盤骨に伝えられる力の作用並びにプロテーゼ10内の互いに異なる場所で生じる場合のあるなんらかの振動、衝撃又は回転を測定することになる。患者は引き続き術後に関節可動域を向上させ続けると、人工股関節内の互いに異なる場所で生じる加速度を監視することができる。予想されるように、患者が手術から治癒しているときに、行動レベルが次第に向上し、歩行状態が良くなり、ステップ(歩み)がより迅速になり(しかも流れるように進み)、加うるに、長いストライド長が各ステップで達成されることになる。この結果、足が地面に当たったときにはいつでも大きな衝撃が生じる場合があり、かかる衝撃は、大腿骨頭18上、大腿骨ステム20内及びプロテーゼ10上の他の場所に配置された種々の加速度計42によって経時的に測定できる(そして、先の値と比較できる)。術後の経過を監視することができ(読みを毎日、毎週等で比較することができ)、情報をコンパイルして患者と担当医の両方に取り次ぐことができ、それにより、リハビリテーションを順次フォローすることができ、そして予想される(代表的には、年齢層)基準と比較することができる。或る特定の実施形態では、ウェラブル器具が選択され又はランダム化された方式でセンサに問い合わせ、収集したセンサデータを捕捉すると共に/或いは記憶する。次にこのデータを別のシステム又は装置にダウンロードすることができる(以下に詳細に説明するように)。
【0046】
本明細書において説明しているセンサ(例えば、接触センサ、ひずみゲージ及び/又は加速度計)によって収集されたデータを単純で広く利用されている市販の分析技術、例えば歩数計及び全地球測位システム(GPS)機能により統合することにより、更に臨床的に重要なデータ、例えば、患者の歩行の程度(時間、距離、ステップ、速度、歩調)、患者の行動レベル(行動の頻度、持続時間、強度)、運動耐性(作業、カロリ、パワー、トレーニング効果)、可動域(後述する)及び種々の「現実世界」条件下におけるプロテーゼ性能(しかしながら、これらには限定されない)を収集することができる。患者の回復の良好な管理を可能にする際にこの情報の値を誇張することは困難である。担当医(又は理学療法士、リハビリテーション専門家)は、スケジュール設定された訪問の際に患者を挿間的に観察するに過ぎず、正確な正に診察時点での患者の機能の度合いに多くの非対応要因、例えば、ちょっと挙げてみただけでも、疼痛の存否、炎症の存否、硬直、時刻、薬剤使用のコンプライアンス及びタイミング(疼痛用薬物、抗炎症薬)、最近の活動及び運動レベル、患者の耐久力、心的状態、言語上の障壁、医師‐患者関係の特性、又は患者が自分の症状を正確に述べることができる能力によって影響を受ける場合がある。連続監視及びデータ収集により、患者及び医師は、多くの条件及び状況下における患者の機能に関する情報を供給することによって経過を客観的に監視することができ、それにより性能が種々のインターベンション(ペインコントロール、運動、理学療法、抗炎症薬、吸息等)によってどのように影響を受けたかを評価し、そしてリハビリテーション経過と先の機能及び将来の予想機能を比較することができる。良好な治療上の決定及び良好な患者のコンプライアンスは、医師と患者の双方が患者のリハビリテーション、活動、機能及び全体的性能に関する種々の治療様式の影響を観察するという利点を得た場合に期待できる。
【0047】
接触のために用いられるセンサ、ひずみセンサ及び加速度計は、一般的に利用できるひずみの許容可能な形式であって良い(これについては、例えば、米国特許第7,450,332号明細書、同第7,463,997号明細書及び同第7,924,267号明細書を参照されたい。なおこれら米国特許は、ひずみゲージ、加速度計及び他の多くの検出機能として作用することができるMEMSセンサを含む種々の形式のかかるセンサを記載している)。米国特許第7,450,332号明細書に記載されている特定のセンサは、重力場に対する物体の自由落下及び物体の運動を検出し、かかるセンサは、下肢の受動的及び能動的運動の際並びに下肢がステップ相互間で振り出しているとき、地面との衝突前、衝突後及び衝突中の全ての間における下肢に作用する力の全て及び下肢の動き全体を検出して記憶することができるという点で、特定の利点を有する。
【0048】
図7A、
図8A及び
図8Bは、更に別の形式のセンサ、即ち、寛骨臼ライナ及び大腿骨頭内の種々の場所に配置できる関節面摩耗センサ46を示している。一実施形態によれば、1つ又は2つ以上の関節面摩耗センサが
図7A及び
図8Bに示されているように寛骨臼ライナ14及び/又は大腿骨頭18の種々の深さのところに配置されている。表面摩耗度を測定するこれらセンサ46は、関節面の侵食を監視する(そして、2つのコンポーネントの表面磨耗の程度及び深さに関する情報を提供する)ために寛骨臼ライナ及び/又は大腿骨頭内で様々な深さのところに埋め込まれた接触圧力センサであるのが良い。これらセンサは、寛骨臼シェル12と寛骨臼ライナ14との物理的接触の任意の所与の摩耗又は劣化を監視するために
図8A及び
図8Bに示されているように寛骨臼シェル12と寛骨臼ライナ14との間に配置されても良い。
【0049】
図9は、複数の互いに異なるセンサ(例えば、22,24,42,44,46)が設けられた置換用人工股関節の形態をしたプロテーゼ全体の一例を示している。このプロテーゼは、単一の人工股関節10内に、複数の接触センサ22、ひずみゲージ24、加速度計42、関節摩耗面センサ46並びに電気的電力発生構造体44を有するのが良い。加うるに、複数の位置センサも又、寛骨臼ライナ14に対する大腿骨頭18の正確な位置を監視し、記録し、そして伝送するために配置されるのが良い。
【0050】
図10は、位置センサ52及び/又は加速度計53をプロテーゼ内に設けることができる互いに異なる場所を示している。位置センサ52並びに加速度計53は、大腿骨ステム内又は大腿骨頸部内又は大腿骨頭内に近位側と遠位側の両方に納められるのが良い。これら位置センサは、寛骨臼コンポーネント、即ち、寛骨臼ライナと寛骨臼シェルの両方内に収納されても良い。位置センサ及び/又は加速度計を大腿骨ステムの長さに沿って配置することによって、寛骨臼コンポーネント及び骨盤と比較して大腿骨の正確な存在場所を正確に求めてメモリに記憶することができる。同様に、加速度計を大腿骨インプラントの頸部及び頭内の互いに異なる場所に配置することによって、互いに異なる場所に加えられる圧力の大きさ、かかる場所での動き及び寛骨臼コンポーネントの互いに対する相対位置を正確に求めることができる。同様に、かかるセンサは、身体計測の正確さを高め、そして股関節の完全脱臼又は部分脱臼(亜脱臼)を検出することができる。
【0051】
C.股関節インプラントに施される被膜
本発明の或る特定の実施形態では、股関節インプラントの1つ又は2つ以上の表面上に施された1つ又は2つ以上の被膜を有するのが良い股関節インプラントが提供される。被膜は、種々の目的のために股関節インプラント上に設けられるのが良い。被膜は、生分解性であっても良く、非生分解性であっても良く、これらの組み合わせであっても良い。被膜の代表的な例は、ポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミノ酸、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)、ゴアテックス(登録商標)(Gortex)で構成されたポリマー)を主成分とする被膜であるが、非ポリマー被膜も又利用できる。本発明の或る特定の実施形態では、本明細書において説明しているような1つ又は2つ以上のセンサは、被膜全体にわたって分散して設けられる(例えば、ランダムな仕方であっても)のが良い。
【0052】
D.薬剤溶出性股関節インプラント
本発明の或る特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサを有すると共に所望の作用剤(例えば、薬剤又は治療剤)を体内の所望の場所に放出するために利用できる薬剤溶出性股関節インプラントが提供される。適当な抗瘢痕化又は抗線維化薬剤の代表的な例が米国特許第5,716,981号明細書、米国特許出願公開第2005/0021126号明細書、同第2005/0171594号明細書、同第2005/0181005号明細書及び同第2005/0181009号明細書に開示されており、これら米国特許及び米国特許出願公開を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0053】
関連実施形態では、薬剤溶出性送り出し器具が要求時に(例えば、遠隔起動/要求時又は時間設定されたスケジュールに基づいて、これについては、一般に、米国特許出願公開第2011/0092948号明細書(発明の名称:Remotely Activated Piezoelectric Pump For Delivery of Biological Agents to the Intervertebral Disc and Spine)を参照されたい。なお、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする)又は作動イベントの検出時(例えば、圧力センサによる漏れの検出時)に所望の薬剤を放出するために股関節インプラント内に設けられるのが良い。例えば、本発明の或る特定の実施形態では、生物学的作用剤を疾患を治療するため又は疾患を予防するために股関節インプラントと一緒に投与し、又は股関節インプラントから放出するのが良い(例えば、i)癌の場合、化学療法剤と共に又は再狭窄を阻止する場合、又はii)感染の場合、抗菌薬と一緒に)。
【0054】
好ましい実施形態では、1つ又は2つ以上のセンサ(例えば、圧力センサ、接触センサ、及び/又は位置センサ)が所望の薬剤の適切な配置並びに所望の部位に放出されるべき薬剤の量及び放出運動学的特徴を求めるために利用されるのが良い。
【0055】
E.感染を監視する方法
他の実施形態では、1つ又は2つ以上の温度センサを有する股関節インプラントが提供される。かかる股関節インプラントは、股関節の温度、股関節インプラントの温度及び股関節インプラントに隣接して位置する局所組織及び環境中の温度を測定するために利用できる。また、温度の変化を経時的に監視するための方法が提供され、その目的は、感染が差し迫っているかどうかを判定すると共に/或いはかかる通知を(例えば、患者及び/又は保健医療提供者に)提供することにある。
【0056】
本発明の或る特定の実施形態では、代謝センサ及び物理的センサが関節置換術の稀ではあるが潜在的に生命を脅かす合併症があるかどうかについて監視するために利用できる。患者のうちのごく僅か(1%未満)では、人工股関節及びその周りの組織が代表的には、術野を汚染する細菌(多くの場合、黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌)が患者自体の皮膚に棲みつくことによって感染状態になる場合がある。センサ、例えば温度センサ(温度上昇を検出する)、pHセンサ(pH減少を検出する)、及び他の代謝センサは、インプラント上又はその周りの感染の存在を示唆するために使用できる。感染の早期の検出により、抗生物質又は手術によるドレナージによる先制的な治療が可能であり、しかもプロテーゼを人工的に取り除く必要性がなくなる。
【0057】
F.
電力の発生
図7Bは、患者が新品の人工股関節を使って歩行しているときに得ることができる特定の利点を示している。
図7Bに示されているように、小型電気発生ユニット44が大腿骨ステム18の外面に沿って又は変形例として内面に沿って配置されるのが良い。特に、ユーザが1歩を踏み出す度に、大腿骨ステム16の内部構造体内の圧力の放出及び圧力の増大が生じる。適当な圧電材料又は微小電気発生器を用いて、1歩を踏み出す度に少量の電気を発生させることができる。電気をこれ又大腿骨ステム16内に設けられたキャパシタ(コンデンサ)内に蓄えることができる。次に、この電気を用いて、プロテーゼ内の種々の場所に配置されているセンサに電力供給することができる。
【0058】
電力を僅かな機械的運動又は機械的振動から取り出す種々の技術が記載されている。これについては、例えば、ユー・ケイ・シン他(U. K. Singh et al.),「ピエゾエレクトリック・パワー・スキャベンジング・オブ・メカニカル・バイブレーション・エナジー(Piezoelectric Power Scavenging of Mechanical Vibration Energy )」,オーストラリアン・マイニング・テクノロジー・コンファレンス(Australian Mining Technology Conference ),2007年10月24日,p.111~118という論文を参照されたい。この論文は、極めて僅かな運動から電気を作ってこの電気を後で使用するために蓄えることができる種々の形式の電力スカベンジャの実施例を提供している。上述の論文は又、運動の必要性がなく、しかしながらこれとは異なり、高い圧力を加えた結果として電気を生じさせるために圧力を加え、そして特定の構造体から抜く実施形態を記載している。この論文の実施形態で説明されているように、患者が1歩を踏み出す際に自分の体重を下肢にかけたときに力が大腿骨ステム16の内部構造体に加えられ、かかる力は、本明細書において説明するセンサの全てを作動させるのに足るよりもそれ以上の電力を発生させることができる。極めて少量の繰り返し動作から電気を生じさせることができる他の機構が2010年7月1日に出願公開された米国特許出願公開第2010/0164705号明細書に記載されている。この米国特許出願公開明細書は、エネルギーをタイヤの回転の際に取り出すことができ、次に取り出したエネルギーを用いて複数の互いに異なるセンサに電力供給することができ、次に、選択された期間に、選択したセンサが中央収集場所に収集したデータを出力することができる手段としての事実を記載している。この形式の他のセンサは、発行された米国特許第7,603,894号明細書(発明の名称:Self-Powered Tire Monitoring System)に記載されている。
【0059】
好ましい一実施形態では、電気発生システムは、動くことはなく、かかる電気発生システムは、1歩を踏み出す際に加えられる圧力及び1歩が完了して次の1歩のために下肢が自由に振り出す際のその圧力の放出だけを利用している。運動が生じないので、患者は、1歩を踏み出す際の大腿骨ステム18の位置又は長さの僅かな変化による感覚を何ら受けることがない。これとは異なり、長さは、一定に保たれ、電気は、圧電構造体により又は大腿骨ステム18の支持構造体の一部をなしてはいない内部吊り下げ構造体によって生じる。
【0060】
他の技術も又電力を取り出すために利用可能であり、かかる他の技術としては、例えば、チャンドラカサン他(Chandrakasan et al.),「ネクスト・ジェネレーション・マイクロ‐パワー・システムズ(Next Generation Micro-power Systems)」,シンポジウム・オン・ブイエルエスアイ・サーキュイッツ・ダイジェスト・オブ・テクニカル・ペーパーズ(Symposium on VLSI Circuits Digest of Technical Papers),2008年,p.1~5に開示されている技術が挙げられる(これについては、米国特許第8,283,793号明細書(発明の名称:Device for Energy Harvesting within a Vessel)及び芸国特許第8,331,632号明細書(発明の名称:Devices, Methods and Systems for Harvesting Energy in the Body)も又参照されたい)。なお、これら特許文献及び非特許文献の全てを参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0061】
1つ又は2つ以上の電気発生器44によって電気を発生させた後、電気を本明細書において記載している種々のセンサのうちの任意の1つに送る。例えば、電気を接触センサ22、ひずみゲージ24、又は加速度計42に送るのが良い。この電気は又、本明細書において後で説明する他のセンサにも送ることができる。電力の送電は、任意の許容可能な技術によって実施できる。例えば、センサが大腿骨ステムに物理的に結合されている場合、電線が電気発生器44から特定のセンサ、例えば加速度計42又は大腿骨ステムの一部である他の表面磨耗構造体まで延びるのが良い。寛骨臼コンポーネント内に位置しているセンサの場合、電気をワイヤレススマートカードが適当な送信及び受信アンテナを用いてすぐ隣接して位置する電源から電力を受け取るのと同じ仕方でワイヤレスで送ることができる。電力のかかる送信及び受信技術も又、上述の刊行物、特許出願公開明細書及び発行された米国特許に記載されており、これら刊行物、米国特許出願公開及び米国特許の全てを参照により引用し、これらの記載内容を本明細書の一部とする。
【0062】
G.
センサの医療的使用
図11A及び
図11Bは、患者の身体計測中におけるセンサの使用の実施例及び本明細書の教示に従って植え込まれたセンサから得ることができるデータの種々の形式を示している。センサは、人工股関節の可動域(ROM)に関する評価データを提供する。現在、ROMは、医師が身体計測中に可動域全体にわたり人工股関節を受動的に動かし、結果(屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋、及び屈曲の際の回転の程度)を記録することによって通常、臨床的に測定される。動作センサ及び加速度計は、身体計測中及び訪問相互間における通常の日々の活動中の両方における人工股関節の全ROMを正確に求めるために使用できる。
図11Aに示されているように、股関節の健常面における1つの主要な要因は、患者が手術から回復しているときに患者が物理療法中の種々の時点で達成することができる角度Xである。角度Xが小さくなると、医師は、関節の機能が改善していると確信を得ることができる。角度Xを経時的に追跡することによって、物理療法士は、患者の経過を観察することができ、瘢痕組織の形成、亜脱臼又は他の病理学的特徴が股関節のROMに対する制限/影響を及ぼしているかどうかを評価し、そして必要に応じて治療を変更/実施することができる。センサが本明細書において指示されたように取り付けられた状態で、物理療法士又は医師は、その角度が達成されたと推定する必要はなく、これとは異なり、下肢が読み出しコンピュータに隣接して配置された場合に、正確な角度を股関節が臨床的に評価されている正にその時点で知ることができる。他方、Xが引き続き減少しておらず、大きなままである(又は増大している)場合、物理療法士又は医師は、患者がリハビリテーションの際に抱えている場合のある問題又は手術からの回復の遅延に注意を喚起される場合があり、そして後ではなくて直ぐに調査すると共に/或いは措置を講じることができる。同様に、
図11Bの実施形態は、ユーザが下肢を図示のように正確に90°の角度Yで保持しているときにとることができる測定値を指示している。下肢がしっかりと90°に保持されている状態で、下肢全体について種々のセンサからデータを収集することができ、その目的は、ひずみ、接触場所、加速度及び他のデータを得ることにある。本発明において用いられる1センサは、下肢が正確に90°に保持されていることを患者に注意を喚起することができ、その結果、患者が監視されているときにデータを数ヶ月にわたり互いに異なる時点で収集しているときにデータの収集が正確であることが可能であるようにする。屈曲及び伸展が部位を示す図に示されているが、当業者には明らかであるはずのこととして、データは又、外転、内転、外旋、内旋、及び屈曲の際の回転について収集することができる。加うるに、ROMも又、患者が自宅に居るときに日々の活動中に生じるROMを解釈することによって患者の訪問相互間で監視されるのができる。
【0063】
次に、作用の幾つかの観点及びこれにより得られる利点について説明する。特定の一利点は、患者の回復及び股関節インプラント10の生の且つ本来の位置での監視である。本明細書において説明しているセンサは、一定方式で、正常な日常における活動中に、しかも必要ならば夜間であってもデータを収集する。すなわち、ひずみを長期間にわたって定期的に測定し、収集し、そして記憶し、特定の測定値が定期的にとられる。例えば、接触センサは、10秒ごとに1回、1分間に1回、又は1日に1回データを得て報告することができる。他のセンサは、より頻繁に、例えば1秒間に数回データを収集するであろう。例えば、加速度及び位置データを1秒に数回収集して記憶することが見込まれる。他形式のデータは、分を基準として又は時を基準として収集する必要があるだけである。大腿骨ステムは、先行技術においては中空である大きな内側区分又は金属の中実バーを有しているので、この内部構造体は、1つ又は2つ以上のプロセッサ回路、CPU、メモリチップ及び他の電気回路並びにデータを送信するアンテナ及びデータを受信するアンテナを収容するために十分すぎるほどの空間を有する。プロセッサは、医療従事者によって設定された任意所望のスケジュールで種々のセンサからデータを収集するようプログラムされているのが良い。全ての行為を術後に連続的に監視し、そしてデータを収集して大腿骨ステム18内に設けられたメモリに記憶するのが良い。
【0064】
患者は、一般に、定期的な健康診断を受けることになる。患者が健康診断のために医師の診療所に行ったとき、医師は、インプラント10、この実施例では股関節置換物に読み取り装置を密接して配置して大腿骨ステム18内の内部回路からデータを医師の診療所内のデータベースに転送する。スマートカード又は他の技術を用いたワイヤレス送信の使用法は、当該技術分野において極めて周知であり、これについて詳細に説明する必要はないであろう。データのかかるワイヤレス送信の実施例は、本明細書において説明した米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書に記載されている。それ以前の数週間又はそれどころか数ヶ月にわたる患者の運動及び下肢の使用に基づいて収集されたデータは、数ヶ月で大腿骨ステム18内に配置されているメモリから医師のコンピュータ又はワイヤレス装置に転送される。したがって、コンピュータは、異常があるかないか、経時的に予想しなかった変化があるかどうか、良い又は悪い傾向があるかどうか、及び患者の健康及びプロテーゼの動作性を表す他の徴候があるかどうかについてデータを分析する。さらに、医師は、加速度の大きさ及び方向を含む股関節に対する全ての影響の記録を詳細に示すデータを収集することができる。医師は、加速度の大きなイベント、例えば患者の転倒又は他の物理的な活動又は運動の所在を突き止めた場合、医師は、転倒の際に患者が抱えている何らかの問題について患者に問い合わせるよう注意を喚起されるのが良く又は別法として、潜在的に股関節インプラントに対する損傷を引き起こす場合のある活発すぎる活動をしないよう患者に警告するのが良い。例えば、患者がスキー又はジョギングをしようと決心した場合、医師は、インプラント10に対するかかる活動の影響を監視することができ、かかる影響としては、そのイベントそれ自体の際の加速度及びひずみが挙げられる。次に、医師は、このイベント後の数時間及び数日におけるプロテーゼの健全性を調べてこれをこのイベントの前のデータと比較し、それにより何らかの特定のイベントが長期間にわたる損傷、即ち、周りの骨組織からのプロテーゼの分離又は関節亜脱臼を生じさせたかどうか又は活動がインプラントにその特定の人工股関節に関する製造業者の性能仕様を超える応力/ひずみ/衝撃力を加えたかどうかを判定することができる。データを収集してかかるデータをひずみゲージ、接触センサ、表面磨耗センサ又は存在している場合のある他のセンサからのインプラントの目下の且つ長期間にわたる性能と比較することができる。
【0065】
一変形例では、患者は又、かかる読み取り装置を自宅に有するのが良く、かかる読み取り装置は、定期的に、例えば1日に1回又は1週間に1回インプラントからのデータを照合する。患者自身のリハビリテーションを続けるよう患者に権限を与え―そして患者が自分の健康及びリハビリテーションに関する種々のライフスタイルの選択の良い(及び悪い)効果を認識できるようにすることにより、コンプライアンスを向上させると共に患者に関する成果を向上させることが期待できる。さらに、患者の経験をウェブにより他の患者と共有することができ、それにより自分の経過を機能及びリハビリテーションに関して予想される「基準」と比較して患者の医師の注意を引くべき徴候及び症状について患者に対して注意を喚起することができる。互いに異なるインプラントの性能を互いに異なる患者(異なる性別、体重、活動レベル等)で比較することができ、それにより製造業者がより良いプロテーゼを設計するのを助けると共に整形外科医が特定の患者タイプに正しいプロテーゼの選択をするのを助けることができる。支払人、患者、製造業者及び医師は全て、この比較情報の収集から利益を受けることができる。最後に、自宅で集積されたデータを収集し、そしてインターネットを介して分析のために医師の診療所に送信することができ、―潜在的に場合によっては不必要な訪問がなくなり、又場合によっては迅速な医療フォローアップが促進される。
【0066】
H.股関節インプラントを含む組立体の医用画像化及び自己診断、予想分析及び予想保守
本発明は、多様な条件にわたってセンサの使用により画像化を行うことができる股関節インプラントを提供する。例えば、本発明の種々の観点によれば、股関節インプラント又はセンサを備えた股関節置換物を含む組立体を画像化する方法が提供され、この方法は、股関節インプラント内、股関節インプラント上及び/又は股関節インプラント内部のセンサの変化を経時的に検出するステップを含み、股関節インプラントは、1平方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいセンサ密度でセンサを有する。他の観点では、股関節インプラントは、1立方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいのセンサ密度でセンサを有する。これら実施形態のいずれの場合でも、1平方センチメートル又は1立方センチメートル当たり50個未満、75個未満、100個未満又は100個のセンサが設けられるのが良い。上述したように、本発明において多様なセンサを利用することができ、かかるセンサとしては、例えば、接触センサ、ひずみゲージセンサ、圧力センサ、流体圧力センサ、位置センサ、脈圧センサ、血液量センサ、血流量センサ、血液化学センサ、血液代謝センサ、機械的応力センサ、及び温度センサが挙げられる。
【0067】
例えば、本明細書において説明したセンサを有する股関節インプラントを利用すると、位置的運動を検出することができるセンサにより股関節解剖学的構造を画像化することができる。用いられるセンサは、種々の物理的変化に起因した股関節インプラントの運動を検出するための加速度計及び動作センサを更に含むのが良い。加速度計及び/又は動作センサの位置の経時的変化を股関節インプラントの位置の経時的変化の測定値として用いることができる。かかる位置的変化を股関節解剖学的構造の代用マーカとして用いることができ、―即ち、かかる位置的変化は、股関節インプラントの寸法、形状及び配置場所の変化及び/又は股関節インプラントの運動/移動に関する情報を提供するよう股関節インプラントの「画像」を生じさせることができる。例えば、股関節インプラントの弛み(代表的には、大腿骨ステム又は寛骨臼シェル内の)の結果として、プロテーゼが活動中に植え込まれて重量のかかる骨に対するプロテーゼの望ましくない動きが生じる場合がある。本発明においてセンサを利用することによって、互いに異なる動作及び活動の際に存在する望ましくない運動の存在場所及び運動の程度を求めることが可能である。同様に、関節隙の変化(即ち、大腿骨と寛骨臼コンポーネントを隔てる空間の変化)を経時的に監視することは、関節面(大腿骨頭及び/又は寛骨臼ライナ)の侵食及び摩耗の指標として用いることができる。最後に、関節の可動域全体にわたるセンサの運動を辿ることにより、関節の動的「画像」(動画)を提供することができ、それにより、医師は、関節機能(及びその周りの組織)の経時的な向上と傾斜の両方を監視することができる。
【0068】
次に、或る特定の例示の実施形態ついて詳細に説明する。特定の一利点は、股関節インプラントを備えた患者の回復に関する生の且つ本来の位置での監視である。本明細書において説明しているセンサは、一定方式で、正常な日常における活動中に、しかも必要ならば夜間であってもデータを収集する。例えば、接触センサは、10秒ごとに1回、1分間に1回、又は1日に1回データを得て報告することができる。他のセンサは、より頻繁に、例えば1秒間に数回データを収集するであろう。例えば、温度、接触、及び/又は位置データを1秒に数回収集して記憶することが期待される。他形式のデータは、分を基準として又は時を基準として収集する必要があるだけである。さらに別のセンサは、患者により知らされた場合にのみデータを収集して「イベント記録」の一部として―即ち、患者が特定のイベント(例えば、疼痛、外傷など)を受けた場合―それを行うことができ(外部信号発生/トリガ装置により)、そして器具に信号を送ってその時点での読みを得ることができ、その目的は、患者の症候の根源的な原因又はトリガを良好に理解しようとして主観的/症候性データと主観的/センサデータの比較を可能にすることにある。
【0069】
或る特定の場合、股関節インプラントは、1つ又は2つ以上のプロセッサ回路、CPU、メモリチップ及び他の電気回路並びにデータを送信するアンテナ及びデータを受信するアンテナを収容する目的に十分なサイズのものであり且つかかる目的にとって十分過ぎるほどの空間を有する。他の実施形態では、関連の医療器具は、1つ又は2つ以上のプロセッサ回路、CPU、メモリチップ及び他の電気回路並びにデータを送信するアンテナ及びデータを受信するアンテナを収容することができる。プロセッサは、医療従事者によって設定された任意所望のスケジュールで種々のセンサからデータを収集するようプログラムされているのが良い。全ての行為を術後に連続的に監視し、そしてデータを収集して股関節インプラント内に設けられたメモリに記憶するのが良い。
【0070】
股関節インプラントを備えた患者は、一般に、定期的な健康診断を受けることになる。患者が健康診断のために医師の診療所に行ったとき、医師は、インプラント、この実施例では股関節インプラントに読み取り装置を密接して配置して股関節インプラント内の内部回路からデータを医師の診療所内のデータベースに転送する。スマートカード又は他の技術を用いたワイヤレス送信の使用法は、当該技術分野において極めて周知であり、これについて詳細に説明する必要はないであろう。データのかかるワイヤレス送信の実施例は、本明細書において説明した米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書に記載されている。収集された(例えば、短期間にわたり、数週間にわたり、或いはそれどころか数ヶ月にわたって収集された)データは、数ヶ月で股関節インプラント内に配置されているメモリから医師のコンピュータ又はワイヤレス装置に転送される。したがって、コンピュータは、異常があるかないか、経時的に予想しなかった変化があるかどうか、良い又は悪い傾向があるかどうか、及び患者の健康及び股関節インプラントの動作性を表す他の徴候があるかどうかについてデータを分析する。例えば、患者がスキー又はジョギングをしようと決心した場合、医師は、股関節インプラントに対するかかる活動の影響を監視することができ、かかる影響としては、そのイベントそれ自体の際の加速度及びひずみが挙げられる。次に、医師は、このイベント後の数時間及び数日における股関節インプラントの健全性を調べてこれをこのイベントの前のデータと比較し、それにより何らかの特定のイベントが長期間にわたる損傷を生じさせたかどうか又は活動が股関節インプラントにその特定の股関節インプラントに関する製造業者の性能仕様を超える力を加えたかどうかを判定することができる。データを収集してかかるデータをひずみゲージ、接触センサ、表面磨耗センサ又は存在している場合のある他のセンサからの股関節インプラントの目下の且つ長期間にわたる性能と比較することができる。電子データ捕捉、文書化及び臨床決定支援システム(EDDS)の代表的な一例が国際公開第2012/061825号パンフレットに記載されており、この国際公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0071】
一変形例では、患者は又、かかる読み取り装置を自宅に有するのが良く、かかる読み取り装置は、定期的に、例えば1日に1回又は1週間に1回インプラントからのデータを照合する。上述したように、患者は、「イベント記録」の一部として装置読取りを(外部信号発生/トリガ装置により)「トリガ」することも可能である。患者自身のリハビリテーションを続けるよう患者に権限を与え―そして患者が自分の健康及びリハビリテーションに関する種々のライフスタイルの選択の良い(及び悪い)効果を認識できるようにすることにより、コンプライアンスを向上させると共に患者に関する成果を向上させることが期待できる。さらに、患者の経験をウェブにより他の患者と共有することができ、それにより自分の経過を機能及びリハビリテーションに関して予想される「基準」と比較して患者の医師の注意を引くべき徴候及び症状について患者に対して注意を喚起することができる。互いに異なる股関節インプラントの性能を互いに異なる患者(異なる性別、体重、活動レベル等)で比較することができ、それにより製造業者がより良い器具を設計するのを助けると共に外科医及び他の保健医療提供者が特定の患者タイプに合った正しい股関節インプラントの選択をするのを助けることができる。支払人、患者、製造業者及び医師は全て、この比較情報の収集から利益を受けることができる。最後に、自宅で集積されたデータを収集し、そしてインターネットを介して分析のために医師の診療所に送信することができ、―潜在的に場合によっては不必要な訪問がなくなり、又場合によっては迅速な医療フォローアップが促進される。
【0072】
I.
股関節インプラントを監視する方法
上述したように、本発明は又、本明細書において提供される股関節インプラントのうちの1つ又は2つ以上を監視する方法を提供する。
図12は、例えば上述した図のうちの任意の1つに示された形式の股関節インプラント10に使用できる監視システムを示している。監視システムは、センサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)、問い合わせモジュール124、及び制御ユニット126を含む。センサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)は、ワイヤレス源から受け取った電力で動作することができる受動ワイヤレス形式のものである。この種のかかるセンサは、当該技術分野において周知であり広く利用されている。この種の圧力センサは、MEMS圧力センサ、例えばエスティーマイクロエレクトロニクス(STMicroelectornics)社により開放市場で市販されている部品番号LPS331APであるのが良い。MEMS圧力センサは、極めて小さい電力で動作することがよく知られており且つ長期間にわたって電力が供給されていない状態のままであって且つアイドル状態のままであるのに適している。これら圧力センサにはRF信号によりワイヤレスで電力供給することができ、これら圧力センサは、RF信号でワイヤレス信号上でワイヤレスで受け取った電力に基づいて、圧力の検出を行い、次に検出したデータを出力する。
【0073】
一実施形態では、電気発生システム(上述した)が提供され、この電気発生システムを利用すると、本明細書において説明したセンサに電力供給することができる。動作中、
図12に示されているように、問い合わせモジュール124が信号128を出力する。信号128は、通常RF帯のワイヤレス信号であり、このワイヤレス信号は、センサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)のための電力を含むと共にセンサ22が検出を実行する問い合わせ要求を含む。信号128による問い合わせ時、センサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)は、起動して、検出及びデータ報告中、動作を維持するのに十分な電力を搭載型キャパシタ内に蓄える。かかる電力受け取り回路及び搭載型キャパシタへの電力貯蔵は、当該技術分野において周知であり、従って、詳細には示す必要がないであろう。適切な検出は、センサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)によって実施され、次に、データは、センサから出力されて信号130の状態で問い合わせモジュール124に戻され、この問い合わせモジュールにおいて、信号130は、問い合わせモジュールの入力ポートのところで受け取られる。
【0074】
一実施形態によれば、センサのための電力を供給すると共に検出動作を実施して信号を出力してこれを問い合わせモジュール124に戻すのに十分な信号強度が初期信号128内に提供されている。他の実施形態では、2種類又は3種類以上の信号128が送られ、各信号は、追加の電力をセンサに提供してセンサが検出動作を完了させ、次にデータを信号経路130により伝送してこれを問い合わせモジュール124に戻すのに十分な電力を提供する。例えば、信号128をこの信号の第1の部分のところの検出要求成分と共に連続的に送るのが良く、次に引き続き安定信号として又はパルスとしてのいずれかとして電力を提供してセンサを動作させるのが良い。センサがデータをいつでも出力可能な状態にあるとき、センサは、データが到来しているという内容の警告信号を問い合わせモジュール124に送り、信号128をターンオフして干渉を回避するのが良い。変形例として、問い合わせ信号128は、第1の周波数の状態にあるのが良く、出力信号130は、これらの信号128,130が互いに干渉することがないほど十分離れた第2の周波数の状態にあるのが良い。好ましい実施形態では、これら信号は両方とも、同一の周波数であり、その結果、センサの同一のアンテナが信号128を受信して信号130を送信することができるようになっている。
【0075】
問い合わせ信号128は、股関節置換物に設けられている特定の信号を選択するためのデータを含むのが良い。例えば、信号128は、股関節置換物上の全てのセンサを同時に起動させるのが良く、次に互いに異なる選択された時刻に各々からデータに関する要求を送り、その結果、1つの問い合わせ信号128が設定されている時間の間、例えば、1~2秒間提供されている状態で、その結果、股関節置換物上のセンサの各々がこの期間中、データを収集し、次に、期間の終わりに、データをそれぞれの信号130で次の0.5~2秒にわたり異なる時間に報告して1つの問い合わせ信号128で全てのセンサ22からのデータが収集されるようにする。
【0076】
問い合わせモジュール124は、制御ユニット126の制御下で動作しており、この制御ユニット126は、コントローラのためのマイクロプロセッサ、メモリ、問い合わせモジュールとインターフェースするためのI/O回路及び電源を含む。制御ユニットは、データをコンピュータ又は他の装置に出力し、それにより表示して患者を治療するための医師によって使用できるようにする。
【0077】
図13は、患者の体内における好ましい実施形態としての作用を示している。患者は、表皮132を有する。
図13に示されているように、問い合わせモジュール124及び制御ユニット126は、患者の皮膚132の外部に配置される。問い合わせ信号128は、ワイヤレスRF信号で患者の皮膚を通り、データは、センサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)からのワイヤレスRF信号130上で受け取られて問い合わせモジュール124に戻される。ワイヤレス信号は、任意の周波数範囲内にあって良いが、RF範囲が好ましい。3~1300kHzのVLF~LF範囲内の周波数が信号を小さい電力で体内の十分な深さまで運ぶことができるようにする上で好ましいが、3kHz未満の周波数及び1300kHzを超える周波数も又使用できる。検出は、多量のデータの転送を必要とせず且つ小電力が好ましく、従って、低周波数RF信号が無難である。これは又、他のワイヤレス信号発生器、例えばブルートゥース(登録商標)、携帯電話等との競合を回避すると共にかかる他のワイヤレス信号発生器による偶発的な起動を回避する。
【0078】
J.
股関節インプラントからのデータの収集、転送、分析、及び配布
図14は、センサデータ(例えば、本願において提供されている図のうちの任意の1つのセンサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)からのデータ)を処理するよう構成された情報・通信技術(ICT)システム800の一実施形態を示している。
図14では、ICTシステム800は、ネットワーク804を介して情報のやりとりをするコンピュータ計算数値を含むものとして示されているが、他の実施形態では、コンピュータ計算装置は、互いに直接に又は他の介在する装置を介して情報のやりとりをすることができ、場合によっては、コンピュータ計算装置は、全く情報のやりとりをしない。
図14のコンピュータ計算装置は、コンピューティングサーバ802、制御ユニット126、問い合わせユニット124、及び分かりやすくするために図示されていない他の装置を有する。
【0079】
図14では、1つ又は2つ以上のセンサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)が問い合わせモジュール124と通信する。問い合わせモジュール124は、制御ユニット126によって指図されるが、他の場合、問い合わせモジュール124は、自律的に動作して情報をセンサ22に対して授受する。問い合わせモジュール124及び制御ユニット126のうちの一方又はこれら両方は、コンピューティングサーバ802と通信することができる。
【0080】
或る特定の実施形態では、問い合わせモジュール及び/又は制御ユニットは、患者に取り付けられるウェアラブル装置であるのが良い。ウェアラブル装置(例えば、腕時計状装置、リストバンド、眼鏡又は患者によって持ち運び可能又は装用可能な他の装置)は、設定された(又はランダムな)期間にわたりセンサに問い合わせしてデータを収集し、そしてデータを1つ又は2つ以上のネットワーク(804)に送ることができる。さらに、ウェアラブル装置は、これ又ネットワークに送信できるデータをおのずから収集することができる。収集可能なデータの代表的な例としては、場所(例えば、GPS)、体温又は皮膚温度、及び他の生理学的データ(例えば、脈拍)が挙げられる。さらに別の実施形態では、ウェアラブル装置は、器具の故障の恐れ又は実際の故障を含む(これには限定されない)多くの所定の条件のうちの任意のものを患者に直接通知することができる。
【0081】
問い合わせモジュール124とセンサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)との間で伝えられる情報は、本明細書において説明する多くの目的にとって有用であると言える。幾つかの場合、例えば、センサデータ情報を収集して患者個人の健康について明示的に分析する。他の場合、センサデータを収集し、そしてこれを別のコンピュータ計算装置に伝送して他のデータと集計する(例えば、センサ22からのセンサデータを収集してウェアラブル装置(例えば、或る特定の実施形態ではGPSデータ等を含むのが良い装置)から収集した他のデータと集計するのが良い)。
【0082】
図14は、コンピューティングサーバ802a,802b、及び1つ又は2つ以上の他のサーバ802nを更に含むサーバの共同組合としてコンピューティングサーバ802の観点を示している。理解されるように、コンピューティングサーバ802は、コンピューティングサーバのユーザの利益に合わせて個々に又は集合的に動作する任意の数のコンピューティングサーバを含む場合がある。
【0083】
幾つかの実施形態では、コンピューティングサーバ802は、1つ又は2つ以上の地理学的場所、例えば米国及びカナダ国内で作られたクラウドコンピュータ計算装置として構成されている。計算装置は、MICROSOFT AZURE クラウドコンピュータ計算装置として又は他の幾つかの事実上アクセス可能な遠隔コンピュータ計算サービスとして作られるのが良い。
【0084】
問い合わせモジュール124及び制御ユニット126は、オプションとして、コンピューティングサーバ802と通信するものとして示されている。問い合わせモジュール124又は制御ユニット126を介して、センサデータは、ネットワーク804によりコンピューティングサーバ802に転送される(追加的に又は代替的にコンピューティングサーバ802から転送される)。
【0085】
ネットワーク804は、コンピューティングネットワークとして構成されたセルラー通信ネットワーク、従来型ケーブルネットワーク、衛星ネットワーク、光ファイバネットワーク、及び1つ又は2つ以上のローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、パーソナルエリアネットワーク等のうちの幾つか又は全てを含む。好ましい実施形態では、ネットワーク804は、コンピュータ計算装置のユーザが他のコンピュータ計算装置を閲覧してこれと対話することができるよう協働して働く任意の通信ハードウェア及びソフトウェアを含む。
【0086】
コンピューティングサーバ802は、中央処理装置(CPU)ディジタルシグナル処理ユニット(DSP)808、通信モジュール810、入力/出力(I/O)モジュール812、及び記憶モジュール814を含む。コンピューティングサーバ802のコンポーネントは、1つ又は2つ以上のバス816によって互いに協働的に結合され、かかるバス816は、コンピューティングサーバ802内の且つこれを通る情報の転送及び制御を容易にする。通信モジュール810は、情報をコンピュータサーバ802と他のコンピュータ計算装置(例えば、コンピューティングサーバ802a,802b,802n、制御ユニット126、問い合わせユニット124等)との間で伝えるよう構成可能である。I/Oモジュール812は、例えばキーボード、コンピュータマウス、トラックボール等のようなデバイスからの入力を受け取るよう構成可能である。I/Oモジュール812は、例えばディスプレイ、レコーダ、LED、オーディオ装置等のようなデバイスへの出力を提供するよう構成可能である。
【0087】
記憶モジュール814は、1種類又は2種類以上の形式の記憶媒体を含むのが良い。例えば、
図14の記憶モジュール814は、読取り書込み記憶装置(RAM)818、読取り専用記憶装置(ROM)810、ディスク式メモリ822、光学式メモリ824及び他形式のメモリ記憶媒体826を含む。幾つかの実施形態では、記憶モジュール814の中の1つ又は2つ以上の記憶装置上には、1つ又は2つ以上のデータベース構造が構築されている。データベース構造を用いると、センサ22から収集したデータを記憶することができる。
【0088】
幾つかの実施形態では、記憶モジュール814は、非一過性コンピュータ可読媒体(CRM)として組織化されたメモリの1つ又は2つ以上の部分を更に含むのが良い。CRMは、CPU808によって実行可能なコンピュータ計算命令を記憶するよう構成されている。コンピュータ計算命令を1つ又は2つ以上のファイルとして記憶するのが良く、各ファイルは、1つ又は2つ以上のコンピュータプログラムを含むのが良い。コンピュータプログラムは、スタンドアローン型プログラムであっても良く大きなコンピュータプログラムの一部であっても良い。代替的に又は追加的に、各ファイルは、センサ(例えば、股関節置換物のセンサ)からのデータの収集、分析、処理、及び/又は配布を命令するアプリケーションのためのデータ又は他のコンピュータ計算サポートマテリアルを含むのが良い。センサデータアプリケーションは、代表的には、コンピュータ可読媒体上に記憶された1組の命令を実行する。
【0089】
理解されるように、図示すると共に本明細書において説明するコンピューティングサーバは、例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。コンピューティングサーバ802は、図示されていない他の装置に接続可能であり、かかる接続は、1つ又は2つ以上のネットワークを介して、例えば、インターネット(Internet)を介し又はネットワーク804中に組み込まれたウェブ(Web )を介する接続を含む。一般的にいって、コンピュータ計算システム又は装置(例えば、「クライアント」又は「サーバ」)又はこれらのうちの任意の部分は、オプションとしてプログラムされ又は違ったやり方でソフトウェアにより構成された場合、互いに対話して記載した形式の機能を実行することができるハードウェアの任意の組み合わせを含むのが良く、かかるハードウェアとしては、デスクトップ型又は他形式のコンピュータ、データベースサーバ、ネットワーク記憶装置及び他のネットワーク装置、PDA、携帯電話、ワイヤレス電話、ページャ、電子オーガナイザ、インターネットアプライアンス、テレビジョンを利用したシステム(例えば、セットトップボックス及び/又はパーソナル/ディジタルビデオレコーダ)及び適当な構内通信機能を含む種々の他の製品が挙げられるが、これらには限定されない。加うるに、図示のシステムモジュールにより提供される機能は、幾つかの実施形態では、少ないモジュールの状態に組み合わされても良く又は追加のモジュールの状態に分散されても良い。同様に、幾つかの実施形態では、図示のモジュールのうちの幾つかの機能が提供されなくても良く且つ/或いは他の追加の機能が利用可能であっても良い。
【0090】
加うるに、種々のアイテムがメモリ内に記憶されるものとして又は利用されながら記憶されるものとして示されているが、これらアイテム又はこれらアイテムのうちの幾つかの部分をメモリ管理及び/又はデータ完全性の目的でメモリと他の記憶装置との間で転送されるのが良い。少なくとも幾つかの実施形態では、図示のモジュール及び/又はシステムは、CPU/DSP808又は他のプロセッサによって実行されたときに、このプロセッサをプログラムしてモジュール/システムのための記載された操作を自動的に実行するソフトウェア命令を含むソフトウェアモジュール/システムである。変形例として、他の実施形態では、ソフトウェアモジュール及び/又はシステムのうちの幾つか又は全ては、別の装置に設けられているメモリ内で動作してインターコンピュータ通信を介して図示のコンピュータ計算システム/装置と情報と通信することができる。
【0091】
さらに、幾つかの実施形態では、モジュール及び/又はシステムのうちの幾つか又は全ては、他の仕方で、例えば、少なくともファームウェア及び/又はハードウェア手段の状態で部分的に実行され又は提供可能であり、かかる手段としては、1つ又は2つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、標準集積回路、コントローラ(例えば、適当な命令を実行することにより、そして、マイクロコントローラ及び埋め込み型コントローラを含む)、フィールド書き換え可能ゲートアレイ(FPGA)、複合プログラム可能論理デバイス(CPLD)等が挙げられるが、これらには限定されない。システム、モジュール、又はデータ構造の幾つ化又は全ても又、適当な入力又は出力システムによって又は適当な接続方式を介して読み取られるべき一過性又は非一過性コンピュータ可読記憶媒体814、例えばハードディスク822又はフラッシュドライブ又は他の不揮発性記憶装置826、揮発性メモリ818、不揮発性メモリ810、ネットワーク記憶装置又は携帯可能なメディア物品(例えば、DVDディスク、CDディスク、光ディスク、フラッシュメモリ装置等)上に記憶されるのが良い(例えば、ソフトウェア命令又は構造化データとして)。システム、モジュール、及びデータ構造は又、幾つかの実施形態では、種々のコンピュータ可読送信媒体上で生成データ信号として(例えば、搬送波又は他のアナログ若しくはディジタル伝搬信号として)伝送されるのが良く、かかるコンピュータ可読送信媒体としては、ワイヤレス方式及びワイヤード/ケーブル利用媒体が挙げられる。データ信号は、単一若しくは多重化アナログ信号の一部として、多数の別々の信号パケット又はフレームとして、ディジタルビットの別々の又はストリーミング設定として種々の形態を取ることができ又は他の何らかの形態を取ることができる。かかるコンピュータプログラム製品は、他の実施形態では、他の形態を取ることも可能である。したがって、本発明を他のコンピュータシステム構成例で実施できる。
【0092】
図14では、例えばセンサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)からのセンサデータがコンピューティングサーバ802に提供される。一般的に言って、センサデータは、既知の患者及び既知のセンサから取り出されたデータを表す。センサデータは、追加の情報、例えばUSI、UDI、タイムスタンプ、場所(例えばGPS)スタンプ、日付印、及び他の情報を含み又は更に関連しているのが良い。種々のセンサ相互間の差は、幾つかがデータを特定のソース、収集装置、伝送特性等と関連付ける多くの又は少ないデータビットを含む場合があるということにある。
【0093】
幾つかの実施形態では、センサデータは、慎重な取り扱いを要する又はデリケートな情報、例えば特定の患者と関連したプライベートな健康情報を含む場合がある。デリケートな情報、例えばセンサ(例えば、22,22B,24,42及び/又は46)からのセンサデータは、関係者が広く又は容易に漏れることのないよう望む任意の情報を含む場合がある。デリケートな情報は、独立している場合があり又は他のデリケートではない情報と組み合わせられる場合がある。例えば、患者の医学情報は、典型的にデリケートな情報である。幾つかの場合、患者の医学情報の保管及び伝送は、政府の命令(例えば、法律、規則等)、例えば米国の医療保険の携行性と責任に関する法律(HIPPA)によって保護されている。
【0094】
本明細書によって説明している「デリケートな」情報と言った場合、これは、完全にデリケートな情報及びデリケートである情報とデリケートではない情報の何らかの組み合わせである情報を含む。デリケートな情報は、データファイルの状態で又は他の何らかのフォーマットで表されるのが良い。本明細書で用いられているように患者の医学情報を含むデータファイルを「デリケートな情報」という場合がある。他の情報、例えば雇用情報、財政状況、識別情報及び他の多くの形式の情報も又、デリケートな情報と考えられる場合がある。
【0095】
コンピュータ計算システムは、コード化アルゴリズム(例えば、ASCII)、良く認識されたファイルフォーマット(例えば、PDF)、又は他の何らかのフォーマットによってデリケートな情報を表すことができる。コンピュータ計算システムでは、デリケートな情報は、暗号化アルゴリズムにより広く又は容易に漏れることから保護できる。
【0096】
一般的に言って、デリケートな情報は、別々の組をなすデータビットとしてコンピュータ計算システムによって格納可能である。1組のデータビットは、「平文」と呼ばれる場合がある。さらに、コンピュータ処理システムは、暗号化プロセスを利用し、暗号化アルゴリズム(即ち、サイファ)を利用して平文を極めて読み取り不能な状態(即ち、サイファテキスト)を有する1組のデータビットに変換することができる。サイファテキストを作るために用いられる暗号化キーの知識を有するコンピュータ計算システムは、この情報を平文の読み取り可能な状態に復元することができる。したがって、幾つかの場合、デリケートなデータ(例えば、センサデータ806a,806b)は、オプションとして、コンピュータ計算装置に伝えられる前に暗号化される。
【0097】
一実施形態では、
図14の情報及び通信技術(ICT)システム800の動作は、コンピュータ可読媒体上に記憶された1つ又は2つ以上のセンサデータコンピュータプログラムを含む。コンピュータプログラムは、オプションとして、1人又は2人以上の患者の体内に植え込まれた1つ又は2つ以上の股関節置換物センサからのデータを導くと共に/或いは受け取ることができる。センサデータコンピュータプログラムをコンピューティングサーバ802内で実行するのが良い。代替的に又は追加的に、センサデータコンピュータプログラムは、制御ユニット126、問い合わせユニット124内で実行できる。
【0098】
一実施形態では、股関節置換物センサデータの収集及び使用を命令するコンピュータプログラムは、記憶モジュール814内の非一過性コンピュータ可読媒体上に記憶される。コンピュータプログラムは、ワイヤレス股関節置換物が体内に挿入されている患者を識別するよう構成される。ワイヤレス股関節置換物は、1つ又は2つ以上のワイヤレスセンサを有するのが良い。
【0099】
幾つかの場合、コンピュータプログラムは、1人の患者を識別し、他の場合、2人又は3人以上の患者が識別される。患者は各人、1つ又は2つ以上のワイヤレス股関節置換物を有し、各ワイヤレス股関節置換物は、本明細書において説明した形式の1つ又は2つ以上のワイヤレスセンサを有するのが良い。
【0100】
コンピュータプログラムは、ワイヤレス股関節置換器具からのセンサデータの収集を命令するよう構成されている。センサデータは、一般に、ワイヤレス問い合わせユニット124により集められる。幾つかの場合、プログラムは、ワイヤレス問い合わせユニット124と通信する。他の場合、プログラムは、制御ユニット126と通信し、制御ユニット126は、ワイヤレス問い合わせユニット124に命令を出す。さらに他の場合、センサデータの収集を命令する他の機構が用いられる。
【0101】
センサデータをいったん収集すると、かかるデータを更に処理するのが良い。例えば、幾つかの場合、センサデータは、削除することができ又はかかるデータとの関連を解くことができるデリケートな患者データを含む。センサデータは、個々に記憶されても良く(例えば、一義的なセンサ識別番号、デバイス番号等によって)又はセンサ形式、タイムスタンプ、ロケーションスタンプ、日付印、患者のタイプ、他の患者特性又は他の何らかの手段によって他のセンサデータと集成されても良い。
【0102】
以下の擬似コード記述がコンピューティングサーバ802によって実行され、全体として
図14を参照して本明細書において説明した1つの例示のアルゴリズムを全体的に説明するために用いられている。
【0103】
当業者であれば認識されるように、装置及び/又はプロセス及び/又はシステムを具体化し、しかる後、技術及び/又は他の実務を用いてかかる具体化された装置及び/又はプロセス及び/又はシステムをより包括的な装置及び/又はプロセス及び/又はシステムに組み込むことが、当該技術分野では通例である。すなわち、本明細書において説明した装置及び/又はプロセス及び/又はシステムの少なくとも一部分を妥当な量の実験により他の装置及び/又はプロセス及び/又はシステムに組み込むことができる。当業者であれば認識されるように、かかる他の装置及び/又はプロセス及び/又はシステムの例としては、前後関係及び用途に対して適当な場合、(a)空中輸送機関(例えば、飛行機、ロケット、ヘリコプタ等)、(b)地上輸送機関(例えば、自動車、トラック、機関車、タンク、装甲人員運搬車等)、(c)建物(例えば、住宅、ウェアハウス、オフィス等)、(d)電気器具(例えば、冷蔵庫、洗濯機、乾燥器等)、(e)通信システム(例えば、ネットワーク化システム、電話システム、IPシステム上の音声等)、(f)企業体(例えば、インターネットサービスプロバイダ(ISP)企業体、例えばコムキャスト・ケーブル(Comcast Cable )、クウェスト(Qwest )、サウスウエスタン・ベル(Southwestern Bell )等)、又は(g)ワイヤード/ワイヤレスサービス事業体(例えば、スプリント(Sprint)、シンギュラー(Cingular)、ネクステル(Nextel)等)等の全て又は一部を含む場合がある。
【0104】
或る特定の場合、システム又は方法の使用が、コンポーネントが管轄区域外に配置されている場合であっても管轄区域内で起こる場合がある。例えば、分散コンピューティングコンテキストでは、分散型コンピューティングシステムの使用が、このシステムの部分(例えば、管轄外に配置されている中継器、サーバ、プロセッサ、信号担持媒体、送信側コンピュータ、受信側コンピュータ等)が管轄区域外に配置されている場合であっても管轄区域内で起こる場合がある。
【0105】
システム又は方法の販売は、同様に、このシステム又は方法のコンポーネントが管轄区域外に配置されると共に/或いは管轄区域外で用いられる場合であっても管轄区域内で起こる場合がある。さらに、一管轄区域内で方法を実行するシステムの少なくとも一部の具体化は、別の管轄区域内でのシステムの使用を排除しない。
【0106】
結論として、種々のセンサを利用した股関節置換物は、種々の重要な臨床上の機能、例えば股関節置換物の安全で正確であり且つ外傷性の低い配置及び配備、股関節置換物及びその前の解剖学的構造の手続き的及び術後(リアルタイム)画像化、股関節置換物合併症の発生、及び患者の全体的な健康状態に役立つよう利用可能である。現時点において、股関節が置換された患者の術後(入院患者と外来患者の両方の)評価は、患者の病歴、身体計測及び必要に応じて診断的画像化研究で補完された医学的監視によるものである。しかしながら、患者の回復期間の大部分は、病院訪問と診療所訪問との間で起こり、日常の機能に関するデータの大部分は、非捕捉状態であり、更に、何らかの診断的画像化技術の使用による患者の経過の監視は、費用がかかると共に侵襲性である場合があり、しかもそれ自体の健康上のリスク(例えば、冠動脈造影法)を伴う場合がある。したがって、症候の発生又は悪化を正確に測定してフォローし、そして「実生活」上の股関節置換物性能を評価することは極めて困難であると言える。というのは、特に症候が患者の活動レベル、運動耐性、並びにリハビリテーション上の努力及び薬物の有効性に関連しているからである。
【0107】
現在、医師も患者ももしそうでなければ得たいであろうと思う可能性のある「リアルタイム」の連続した客観的な股関節置換物性能測定の形式にアクセスできる医師も患者も存在しない。股関節置換物の機能、健全性、解剖学的構造及び生理学的特徴を原位置で監視することができることにより、診療所の訪問の際に有用な客観的情報を医師に提供することができ、更に、患者は、重要な補完的臨床情報を医師に提供するために(かかる情報は、遠隔場所からであっても保健医療提供者に電子的に送ることができる)自宅で種々の時点で(例えば、疼痛を感じたとき、運動中、薬剤の服用後等)追加の読みを得ることができる。患者の将来の見通しから見て、これら同一のパラメータの多くを自宅で監視することができることにより、これらパラメータは、患者の看護及び回復においてより予防的な役割を果たすことができ、そして医療扶助を求めるための早期の警告指標か保証かのいずれかを患者に提供することができる。
【0108】
一変形例では、患者は又、かかる読み取り装置を自宅に有するのが良く、かかる読み取り装置は、定期的に、例えば1日に1回又は1週間に1回股関節置換物からのデータを照合する。患者自身のリハビリテーションを続けるよう患者に権限を与えること―そして患者が自分の健康及びリハビリテーションに関する種々のライフスタイルの選択の良い(及び悪い)効果を認識できるようにすること―に加えて、かかる情報アクセスは、コンプライアンスを向上させると共に患者に関する成果を向上させることが期待できる。例えば、或る特定の実施形態では、本明細書において提供した装置及びシステムは、正常な及び/又は設定されたパラメータからの偏差(例えば、10%超、20%超、25%超、50%超、70%超、及び/又は100%超)について患者又は許可を得ている第三者に教示し又は違ったやり方で通知することができる。さらに、患者の回復経験をウェブにより他の患者と共有することができ、それにより自分の経過を機能及びリハビリテーションに関して予想される「基準」と比較して患者の医師の注意を引くべき徴候及び症状について患者に対して注意を喚起することができる。互いに異なる股関節置換物の性能を互いに異なる患者(異なる性別、体重、活動レベル、併発症、例えば高血圧症や糖尿病、喫煙状態、肥満症等)で比較することができ、それにより製造業者がより良い股関節置換物を設計するのを助けると共に医師が特定の患者タイプに適正な股関節置換物の選択をするのを助けることができる。支払人、患者、製造業者及び医師は全て、この比較情報の収集から利益を受けることができる。粗悪品や危険な製品を識別して市場からなくすことができ、そして客観的な長期間にわたる有効データを収集して分析することができる。最後に、自宅で集積されたデータを収集し、そしてインターネットを介して分析のために医師の診療所に送信することができ、―潜在的に場合によっては不必要な訪問がなくなると共に迅速な医療フォローアップが促進される。
【0109】
以下は、本明細書において開示したシステム及び方法の幾つかの特定の番号が付けられた実施態様である。これら実施態様は、例示であるに過ぎない。理解されるように、本発明は、例示のために本明細書において記載した実施形態には限定されず、上記の開示内容範囲に含まれる本発明のかかる全ての形態を含むものである。
〔実施態様項1〕
置換用人工股関節であって、
人工大腿骨ステムと、
上記大腿骨ステムに結合された人工大腿骨頭と、
上記大腿骨頭に結合された人工寛骨臼組立体と、上記大腿骨ステム、上記大腿骨頭及び上記寛骨臼組立体のうちの少なくとも1つに結合された複数のセンサとを有する、置換用人工股関節。
〔実施態様項2〕
上記複数のセンサは、上記大腿骨ステムに設けられたセンサを含むことを特徴とする実施態様項1記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項3〕
上記複数のセンサは、上記大腿骨頭に設けられたセンサを含む、実施態様項1記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項4〕
上記複数のセンサは、上記寛骨臼組立体に設けられたセンサを含む、実施態様項1記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項5〕
上記センサは、加速度計、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、機械的応力センサ、及び温度センサから成る群から選択される、実施態様項1~4のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項6〕
上記加速度計は、加速度、傾動、振動、衝撃及び/又は回転を検出する、実施態様項5記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項7〕
上記複数のセンサは、上記大腿骨頭と上記寛骨臼組立体との間に配置された接触センサを含む、実施態様項1記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項8〕
上記複数のセンサは、上記寛骨臼組立体の外面上に配置された複数の接触センサを含む、実施態様項1記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項9〕
上記複数のセンサは、上記寛骨臼組立体の外面上に配置された複数の接触センサを含む、実施態様項1記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項10〕
上記複数のセンサは、上記大腿骨頭と上記寛骨臼組立体との間に配置された複数のひずみセンサを含む、実施態様項1記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項11〕
上記複数のセンサは、上記大腿骨ステム上に配置された加速度計を含む、実施態様項1記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項12〕
上記寛骨臼組立体は、寛骨臼シェル及び寛骨臼ライナを含む、実施態様項1記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項13〕
上記寛骨臼ライナと上記寛骨臼シェルとの間に配置されたひずみセンサを更に含む、実施態様項7記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項14〕
人工大腿骨ステムと、上記大腿骨ステムに結合された複数のセンサを有する、医療器具。
〔実施態様項15〕
人工大腿骨頭と、上記大腿骨頭に結合された複数のセンサとを有することを特徴とする、医療器具。
〔実施態様項16〕
人工寛骨臼組立体と、上記寛骨臼組立体に結合された複数のセンサとを有する、医療器具。
〔実施態様項17〕
上記センサは、上記医療器具の表面内及び上記表面上に配置されている、実施態様項14~16のうちいずれか一に記載の医療器具。
〔実施態様項18〕
上記センサは、加速度計、圧力センサ、接触センサ、位置センサ、化学マイクロセンサ、組織代謝センサ、機械的応力センサ、及び温度センサから成る群から選択される、実施態様項14~17のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項19〕
上記加速度計は、加速度、傾動、振動、衝撃及び/又は回転を検出する、実施態様項18記載の置換用人工股関節。
〔実施態様項20〕
上記大腿骨ステム内に配置されていてセンサに電気的に結合された電子プロセッサを更に有する、実施態様項1~19のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具。
〔実施態様項21〕
上記電気結合は、ワイヤレス結合である、実施態様項20記載の置換用人工股関節又は医療器具。
〔実施態様項22〕
上記電子プロセッサに結合されると共に上記大腿骨ステムの内部に配置されたメモリを更に有する、実施態様項20又は21記載の置換用人工股関節又は医療器具。
〔実施態様項23〕
上記センサは、1平方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいセンサ密度で上記置換用人工股関節又は医療器具上に又は内に配置された複数のセンサである、実施態様項1~22のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具。
〔実施態様項24〕
上記センサは、1立方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいセンサ密度で上記股関節置換物上又は内に配置された複数のセンサである、実施態様項1~22のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具。
〔実施態様項25〕
方法であって、
患者の股関節部中の本来の位置に設けられた人工大腿骨頭と人工寛骨臼組立体との間の複数の配置場所に配置された接触センサから接触データを得るステップと、
上記接触データを上記大腿骨頭に結合された人工大腿骨ステム内に配置されているメモリ内に記憶するステップと、
上記接触データを上記メモリから上記大腿骨ステムの外部の場所に伝送するステップをと含む、方法。
〔実施態様項26〕
患者の股関節部中の本来の位置に設けられた人工大腿骨頭と人工寛骨臼組立体との間の複数の配置場所に配置されたひずみセンサからひずみデータを得るステップと、
上記ひずみデータを上記大腿骨頭に結合された人工大腿骨ステム内に配置されているメモリ内に記憶するステップと、
上記ひずみデータを上記大腿骨ステム内の上記メモリから上記大腿骨ステムの外部の場所に設けられたメモリに伝送するステップとを更に含む、実施態様項25記載の方法。
〔実施態様項27〕
患者の体内の本来の位置に存在した状態で上記寛骨臼組立体と上記患者の骨盤骨との間に配置された接触センサから接触データを得るステップと、
上記接触データを上記大腿骨ステム内に設けられたメモリ内に記憶するステップと、
上記接触データを上記大腿骨ステム内の上記メモリから上記大腿骨ステムの外部の場所に設けられたメモリに伝送するステップとを更に含む、実施態様項25記載の方法。
〔実施態様項28〕
患者の股関節部内の本来の位置に設けられた置換用股関節組立体上の複数の場所に配置された加速度計から加速度データを得るステップと、
上記加速度データを上記大腿骨頭に結合された人工大腿骨ステム内に設けられたメモリ内に記憶するステップと、
上記加速度データを上記大腿骨ステム内の上記メモリから上記大腿骨ステムの外部の場所に設けられたメモリに伝送するステップとを含む、方法。
〔実施態様項29〕
a)実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具のセンサからデータを得るステップと、
b)上記データを実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具内の記憶サイトのところに設けられたメモリ内に記憶するステップと、及び
c)上記データを上記メモリから上記記憶サイトの外部の場所に伝送するステップとを含む、方法。
〔実施態様項30〕
上記置換用人工股関節又は医療器具は、患者の体内に植え込まれ、上記データは、上記患者の外部のサイトに伝送される、実施態様項29記載の方法。
〔実施態様項31〕
上記データは、腕時計、リストバンド、携帯電話又は眼鏡に伝送される、実施態様項30記載の方法。
〔実施態様項32〕
上記データは、居住地又はオフィスに伝送される、実施態様項30記載の方法。
〔実施態様項33〕
上記データは、保健医療提供者に伝送される、実施態様項30記載の方法。
〔実施態様項34〕
上記データを分析するステップを更に含む、実施態様項25~33のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項35〕
記憶コンテンツが方法を実行するようコンピュータ計算システムを環境設定する非一過性コンピュータ可読記憶媒体であって、上記方法は、
患者を識別するステップを含み、上記識別された患者は、少なくとも1つのワイヤレス股関節インプラントを有し、上記股関節インプラントは、1つ又は2つ以上のセンサを有し、
ワイヤレス問い合わせユニットを検出して上記それぞれのセンサのうちの少なくとも1つからセンサデータを収集するステップと、
上記収集したセンサデータを受け取るステップとを含む、記憶媒体。
〔実施態様項36〕
上記方法は、上記収集したセンサデータからデリケートな患者データを除去するステップと、センサの形式又は配置場所に従って上記データを分析するステップとを更に含む、記憶コンテンツが方法を実施するためにコンピュータ計算システムを環境設定する実施態様項35記載の記憶媒体。
〔実施態様項37〕
上記股関節インプラントは、実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の置換用人工股関節又は医療器具である、実施態様項35又は36記載の記憶媒体。
〔実施態様項38〕
上記データは、腕時計、リストバンド、携帯電話又は眼鏡上で受け取られる、実施態様項35~37のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
〔実施態様項39〕
上記データは、患者の居住地又はオフィス内で受け取られる、実施態様項35~38のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
〔実施態様項40〕
上記データは、保健医療提供者に提供される、実施態様項35~39のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
〔実施態様項41〕
上記データは、1つ又は2つ以上のウェブサイトに書き込まれる、実施態様項35~40のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
〔実施態様項42〕
上記データは、経時的な変化の視覚化を可能にするようプロットされる、実施態様項25~34のうちいずれか一に記載の方法又は実施態様項35~41のうちいずれか一に記載の記憶媒体。
〔実施態様項43〕
上記データは、2次元又は3次元画像を提供するようプロットされる、実施態様項42記載の方法又は記憶媒体。
〔実施態様項44〕
上記データは、2次元又は3次元動画を提供するようプロットされる、実施態様項42又は43記載の方法又は記憶媒体。
〔実施態様項45〕
上記データは、人工股関節インプラント又は医療器具を有する患者の動作範囲を求めるよう利用される、実施態様項42~44のうちいずれか一に記載の方法又は記憶媒体。
〔実施態様項46〕
上記データは、上記人工股関節インプラント又は医療器具の不具合又は誤動作を判定し又は予測するために用いられる、実施態様項42~44のうちいずれか一に記載の方法又は記憶媒体。
〔実施態様項47〕
置換用人工股関節又は医療器具の劣化を検出する方法であって、
a)実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具を患者に提供するステップと、
b)センサの変化を検出し、かくして上記人工股関節インプラント又は医療器具の劣化を突き止めるステップと、を含む、方法。
〔実施態様項48〕
上記センサは、1つ又は2つ以上の生理学的及び/又は場所的パラメータを検出することができる、実施態様項47記載の方法。
〔実施態様項49〕
置換用人工股関節又は医療器具の感染を検出する方法であって、
a)実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具を患者に提供するステップと、
b)センサの変化を検出し、かくして上記人工股関節インプラント又は医療器具の感染を突き止めるステップと、を含む、方法。
〔実施態様項50〕
上記センサの変化は、温度の上昇である、実施態様項49記載の方法。
〔実施態様項51〕
人工股関節置換物又は医療器具を画像化する方法であって、実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具内、上、及び/又は内部に設けられたセンサの変化を検出するステップを含み、上記人工股関節インプラント又は医療器具は、1平方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいセンサ密度でセンサを有する、方法。
〔実施態様項52〕
人工股関節インプラント又は医療器具を画像化する方法であって、実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具内、上、及び/又は内部に設けられたセンサの経時的変化を検出するステップを含み、上記人工股関節インプラント又は医療器具は、1立方センチメートル当たり1個より大きい、2個より大きい、3個より大きい、4個より大きい、5個より大きい、6個より大きい、7個より大きい、8個より大きい、9個より大きい、10個より大きい又は20個より大きいセンサ密度でセンサを有する、方法。
〔実施態様項53〕
上記センサは、流体圧力センサ、接触センサ、位置センサ、加速度計、圧力センサ、血液量センサ、血流量センサ、血液化学センサ、血液代謝センサ、機械的応力センサ、温度センサのうちの1つ又は2つ以上である、実施態様項51又は52記載の方法。
〔実施態様項54〕
患者の体内に人工股関節インプラント又は医療器具を配置する方法であって、a)実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の人工股関節インプラント又は医療器具を植え込むステップと、b)センサを検出することによって上記人工股関節インプラント又は医療器具の配置を検出するステップとを含む、方法。
〔実施態様項55〕
上記人工股関節インプラント又は医療器具は、2つ又は3つ以上の区分を有し、上記2つ又は3つ以上の区分の検出は、1つ又は2つ以上のセンサの分析によって判定できる、実施態様項54記載の方法。
〔実施態様項56〕
上記人工股関節インプラント又は医療器具の配置は、上記人工股関節インプラント又は医療器具に設けられた上記1つ又は2つ以上のセンサの2次元又は3次元表示又は画像によって視覚化できる、実施態様項54又は55記載の方法。
〔実施態様項57〕
上記人工股関節インプラント又は医療器具の配置を検出する上記ステップにより、上記人工股関節インプラント又は医療器具が不正確に配置されたかどうかの判定が可能である、実施態様項54~56のうちいずれか一に記載の方法。
【0110】
上述の種々の実施形態のうちの任意のものを組み合わせて別の実施形態を提供することができる。本明細書において言及した米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、PCT出願公開、外国特許、外国特許出願、非特許文献の全てを参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。実施形態の観点を必要ならば改造して種々の特許、特許出願及び特許出願公開の概念を採用して更に別の実施形態を提供することができる。これらの変更及び他の変更を上述の詳細な説明の内容に照らして実施形態に対して行うことができる。一般に、次の特許請求の範囲の記載において、用いられる用語は、特許請求の範囲に記載された本発明を本明細書及び特許請求の範囲に開示した特定の実施形態に限定するものと解されてはならず、考えられるあらゆる実施形態を特許請求の範囲の記載基づく均等例の全範囲と一緒に含むものと解されるべきである。したがって、特許請求の範囲に記載された発明は、開示内容によって制限されることはない。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換用人工股関節であって、
人工大腿骨ステムと、
前記大腿骨ステムに結合された人工大腿骨頭と、
前記大腿骨頭に結合された人工寛骨臼組立体と、前記大腿骨ステム、前記大腿骨頭及び前記寛骨臼組立体のうちの少なくとも1つに結合された複数のセンサと、を有する、置換用人工股関節。
【外国語明細書】