(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026324
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】化合物、発光材料および発光素子
(51)【国際特許分類】
C07D 519/00 20060101AFI20240220BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240220BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20240220BHJP
【FI】
C07D519/00 CSP
C07D519/00 301
C07D519/00 311
H10K85/60
H10K50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207488
(22)【出願日】2023-12-08
(62)【分割の表示】P 2021086188の分割
【原出願日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2020090095
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020147167
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020188657
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021074492
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516003621
【氏名又は名称】株式会社Kyulux
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山下 正貴
(72)【発明者】
【氏名】鄭 碩賢
(72)【発明者】
【氏名】バリジャパリ ウママヘシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユソク
(57)【要約】
【課題】優れた発光材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式で表される化合物を発光材料として用いる。Rは水素原子、重水素原子、アリール基または炭素原子で結合するヘテロアリール基、Arはアリール基または炭素原子で結合するヘテロアリール基、D
1およびD
2はドナー性基で、少なくとも1つはヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[一般式(1)において、
Rは、水素原子、重水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または炭素原子で結合する置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、
Arは、置換もしくは無置換のアリール基、または炭素原子で結合する置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、
D
1およびD
2は、各々独立にドナー性基を表すが、そのうちの少なくとも1つはヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基(前記ヘテロ環と前記カルバゾールは置換されていてもよい)である。]
【請求項2】
前記化合物が下記一般式(2)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項3】
前記化合物が下記一般式(3)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化3】
【請求項4】
D1とD2が同一である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
D1とD2が異なる、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基のカルバゾール-9-イル基に縮合しているヘテロ環が、置換もしくは無置換のフラン環、置換もしくは無置換のチオフェン環、または置換もしくは無置換のピロール環であって、前記フラン環、前記チオフェン環および前記ピロール環にはさらに他の環が縮合していてもよい、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が下記のいずれかの構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【化4】
[上記の各構造において、水素原子は置換されていてもよいが、さらにヘテロ環が縮合していることはない。]
【請求項8】
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が下記のいずれかの構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【化5】
[上記の各構造において、水素原子は置換されていてもよいが、さらにヘテロ環が縮合していることはない。]
【請求項9】
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が下記のいずれかの構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【化6】
[上記の各構造において、水素原子は置換されていてもよいが、さらにヘテロ環が縮合していることはない。R’は水素原子、重水素原子または置換基を表す。]
【請求項10】
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基のカルバゾール-9-イル基に、置換もしくは無置換のフラン環、置換もしくは無置換のチオフェン環、および置換もしくは無置換のピロール環(前記フラン環、前記チオフェン環および前記ピロール環にはさらに他の環が縮合していてもよい)からなる群より選択される2つのヘテロ環が縮合している、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が、カルバゾール環の1,2位にヘテロ環が縮合した構造を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が、カルバゾール環の2,3位にヘテロ環が縮合した構造を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が、カルバゾール環の3,4位にヘテロ環が縮合した構造を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
RとArが異なる、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
Rが水素原子または重水素原子である、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
Arが置換もしくは無置換のフェニル基、または置換もしくは無置換のピリジル基である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子からなる、請求項1~16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項20】
前記発光素子が発光層を有しており、前記発光層が前記化合物とホスト材料を含む、請求項19に記載の発光素子。
【請求項21】
前記発光素子が発光層を有しており、前記発光層が前記化合物と発光材料を含み、前記発光材料から主として発光する、請求項20に記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料として有用な化合物とそれを用いた発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、ホール輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、遅延蛍光材料を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究も見受けられる。
【0003】
遅延蛍光材料は、励起状態において、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を生じた後、その励起一重項状態から基底状態へ戻る際に蛍光を放射する材料である。こうした経路による蛍光は、基底状態から直接生じた励起一重項状態からの蛍光(通常の蛍光)よりも遅れて観測されるため、遅延蛍光と称されている。ここで、例えば、発光性化合物をキャリアの注入により励起した場合、励起一重項状態と励起三重項状態の発生確率は統計的に25%:75%であるため、直接生じた励起一重項状態からの蛍光のみでは、発光効率の向上に限界がある。一方、遅延蛍光材料では、励起一重項状態のみならず、励起三重項状態も上記の逆項間交差を介した経路により蛍光発光に利用することができるため、通常の蛍光材料に比べて高い発光効率が得られることになる。
【0004】
このような原理が明らかにされて以降、様々な研究により種々の遅延蛍光材料が発見されるに至っている。しかしながら、遅延蛍光を放射する材料であれば、直ちに発光材料として有用である訳ではない。遅延蛍光材料の中には、逆項間交差が比較的生じにくいものもあり、遅延蛍光の寿命が長いものもある。また、高電流密度領域で励起子が蓄積して発光効率が低下してしまったり、長時間駆動を続けると急速に劣化してしまったりするものもある。したがって、実用性の点で改善の余地がある遅延蛍光材料が極めて多いのが実情である。このため、遅延蛍光材料として知られているベンゾニトリル系化合物においても、課題があることが指摘されている。例えば、下記の構造を有する化合物は遅延蛍光を放射する材料であるものの(特許文献1参照)、遅延蛍光の寿命が長いうえ、素子耐久性が不十分であるという課題を抱えている。
【0005】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような課題を抱えていることが指摘されているにもかかわらず、遅延蛍光材料の化学構造と特性との関係については十分な解明がなされているとは言いがたい。このため、発光材料として有用な化合物の化学構造を一般化するのは現状では困難であり、不明な点が多い。
【0008】
このような状況下において本発明者らは、発光素子用の発光材料としてより有用な化合物を提供することを目的として研究を重ねた。そして、発光材料としてより有用な化合物の一般式を導きだして一般化することを目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、イソフタロニトリル誘導体のうち、特定の条件を満たす構造を持つ化合物が発光材料として有用であることを見いだした。本発明は、こうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に、以下の構成を有する。
【0010】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
【化2】
[一般式(1)において、
Rは、水素原子、重水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または炭素原子で結合する置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、
Arは、置換もしくは無置換のアリール基、または炭素原子で結合する置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、
D
1およびD
2は、各々独立にドナー性基を表すが、そのうちの少なくとも1つはヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基(前記ヘテロ環と前記カルバゾールは置換されていてもよい)である。]
[2] 前記化合物が下記一般式(2)で表される、[1]に記載の化合物。
【化3】
[3] 前記化合物が下記一般式(3)で表される、[1]に記載の化合物。
【化4】
[4] D
1とD
2が同一である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の化合物。
[5] D
1とD
2が異なる、[1]~[3]のいずれか1つに記載の化合物。
[6] 前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基のカルバゾール-9-イル基に縮合しているヘテロ環が、置換もしくは無置換のフラン環、置換もしくは無置換のチオフェン環、または置換もしくは無置換のピロール環であって、前記フラン環、前記チオフェン環および前記ピロール環にはさらに他の環が縮合していてもよい、[1]~[5]のいずれか1つに記載の化合物。
[7] 前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が下記のいずれかの構造を有する、[1]~[6]のいずれか1つに記載の化合物。
【化5】
[上記の各構造において、水素原子は置換されていてもよいが、さらにヘテロ環が縮合していることはない。]
[8] 前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が下記のいずれかの構造を有する、[1]~[6]のいずれか1つに記載の化合物。
【化6】
[上記の各構造において、水素原子は置換されていてもよいが、さらにヘテロ環が縮合していることはない。]
[9] 前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が下記のいずれかの構造を有する、[1]~[6]のいずれか1つに記載の化合物。
【化7】
[上記の各構造において、水素原子は置換されていてもよいが、さらにヘテロ環が縮合していることはない。R’は水素原子、重水素原子または置換基を表す。]
[10] 前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基のカルバゾール-9-イル基に、置換もしくは無置換のフラン環、置換もしくは無置換のチオフェン環、および置換もしくは無置換のピロール環(前記フラン環、前記チオフェン環および前記ピロール環にはさらに他の環が縮合していてもよい)からなる群より選択される2つのヘテロ環が縮合している、[1]~[9]のいずれか1つに記載の化合物。
[11] 前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が、カルバゾール環の1,2位にヘテロ環が縮合した構造を有する、[1]~[10]のいずれか1つに記載の化合物。
[12] 前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が、カルバゾール環の2,3位にヘテロ環が縮合した構造を有する、[1]~[10]のいずれか1つに記載の化合物。
[13] 前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基が、カルバゾール環の3,4位にヘテロ環が縮合した構造を有する、[1]~[10]のいずれか1つに記載の化合物。
[14] RとArが異なる、[1]~[13]のいずれか1つに記載の化合物。
[15] Rが水素原子または重水素原子である、[1]~[13]のいずれか1つに記載の化合物。
[16] Arが置換もしくは無置換のフェニル基、または置換もしくは無置換のピリジル基である、[1]~[15]のいずれか1つに記載の化合物。
[17] 炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子からなる、[1]~[16]のいずれか1つに記載の化合物。
[18] [1]~[17]のいずれか1つに記載の化合物からなる発光材料。
[19] [1]~[17]のいずれか1つに記載の化合物を含むことを特徴とする発光素子。
[20] 前記発光素子が発光層を有しており、前記発光層が前記化合物とホスト材料を含む、[19]に記載の発光素子。
[21] 前記発光素子が発光層を有しており、前記発光層が前記化合物と発光材料を含み、前記発光材料から主として発光する、[20]に記載の発光素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化合物は、発光材料として有用である。また、本発明の化合物の中には遅延蛍光寿命が短い化合物が含まれる。さらに、本発明の化合物を用いた有機発光素子は、素子耐久性が高くて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の一部または全部は重水素原子(2H、デューテリウムD)に置換することができる。本明細書の化学構造式では、水素原子はHと表示しているか、その表示を省略している。例えばベンゼン環の環骨格構成炭素原子に結合する原子の表示が省略されているとき、表示が省略されている箇所ではHが環骨格構成炭素原子に結合しているものとする。本明細書の化学構造式では、重水素原子はDと表示している。
【0014】
【0015】
一般式(1)におけるD1およびD2の少なくとも1つは、ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基を表す。ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基を構成するヘテロ環とカルバゾール環は、それぞれ置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。
カルバゾール-9-イル基に縮合しているヘテロ環の数は1つ以上であり、1つまたは2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。2つ以上のヘテロ環が縮合しているとき、それらのヘテロ環は同一であってもよいし、異なっていてもよい。本発明の一態様では、ヘテロ環はカルバゾール-9-イル基の1,2位に縮合している。本発明の別の一態様では、ヘテロ環はカルバゾール-9-イル基の2,3位に縮合している。本発明のさらに別の一態様では、ヘテロ環はカルバゾール-9-イル基の3,4位に縮合している。
カルバゾール-9-イル基に縮合しているヘテロ環は、ヘテロ原子を含む環である。ヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子およびケイ素原子から選択されることが好ましく、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択されることがより好ましい。好ましい一態様では、ヘテロ原子は酸素原子である。別の好ましい一態様では、ヘテロ原子は硫黄原子である。さらに別の好ましい一態様では、ヘテロ原子は窒素原子である。ヘテロ環の環骨格構成原子として含まれているヘテロ原子の数は1つ以上であり、1~3つが好ましく、1または2つがより好ましい。好ましい一態様ではヘテロ原子の数は1つである。ヘテロ原子の数が2つ以上であるとき、それらは同一種のヘテロ原子であることが好ましいが、異種のヘテロ原子で構成されていてもよい。例えば、2つ以上のヘテロ原子がすべて窒素原子であってもよい。ヘテロ原子以外の環骨格構成原子は炭素原子である。
カルバゾール-9-イル基に縮合しているヘテロ環を構成する環骨格構成原子数は、4~8であることが好ましく、5~7であることがより好ましく、5または6であることがさらに好ましい。好ましい一態様では、ヘテロ環を構成する環骨格構成原子数は5である。ヘテロ環には共役二重結合が2つ以上存在していることが好ましく、ヘテロ環が縮合することにより、カルバゾール環の共役系が拡張するものであることが好ましい(芳香族性を有することが好ましい)。ヘテロ環の好ましい例として、フラン環、チオフェン環、ピロール環をあげることができる。
カルバゾール-9-イル基に縮合しているヘテロ環には、さらに他の環が縮合していてもよい。また、縮合する環は単環であっても縮合環であってもよい。縮合する環としては、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環を挙げることができる。芳香族炭化水素環としてはベンゼン環を挙げることができる。芳香族複素環としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環を挙げることができる。脂肪族炭化水素環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環を挙げることができる。脂肪族複素環としては、ピペリジン環、ピロリジン環、イミダゾリン環を挙げることができる。縮合環の具体例として、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピラン環、テトラセン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、シンノリン環を挙げることができる。
【0016】
本発明の好ましい一態様では、ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基は、ベンゾフラン縮合カルバゾール-9-イル基、ベンゾチオフェン縮合カルバゾール-9-イル基、インドール縮合カルバゾール-9-イル基、またはシラインデン縮合カルバゾール-9-イル基である。本発明のより好ましい一態様では、ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基は、ベンゾフラン縮合カルバゾール-9-イル基、ベンゾチオフェン縮合カルバゾール-9-イル基、またはインドール縮合カルバゾール-9-イル基である。
【0017】
本発明では、ベンゾフラン縮合カルバゾール-9-イル基として、置換もしくは無置換のベンゾフロ[2,3-a]カルバゾール-9-イル基を採用することができる。また、置換もしくは無置換のベンゾフロ[3,2-a]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾフロ[2,3-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾフロ[3,2-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾフロ[2,3-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。
好ましいベンゾフラン縮合カルバゾール-9-イル基は、ベンゾフラン環が2,3位で1つだけ縮合し、その他にヘテロ環が縮合していないカルバゾール-9-イル基である(ベンゼン環は縮合していてもよい)。具体的には、下記のいずれかの構造を有する基であり、下記構造中の水素原子は置換されていてもよい。例えば、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換されているものや、下記構造中の水素原子の全部が重水素原子で置換されているものを好ましく例示することができる。無置換であるものも好ましく採用することができる。
【化9】
【0018】
ベンゾフラン環が2,3位で2つ縮合し、その他にヘテロ環が縮合していないカルバゾール-9-イル基も好ましい(ベンゼン環は縮合していてもよい)。具体的には、下記のいずれかの構造を有する基であり、下記構造中の水素原子は置換されていてもよい。例えば、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換されているものや、下記構造中の水素原子の全部が重水素原子で置換されているものを好ましく例示することができる。無置換であるものも好ましく採用することができる。
【化10】
【0019】
本発明では、ベンゾチオフェン縮合カルバゾール-9-イル基として、置換もしくは無置換のベンゾチエノ[2,3-a]カルバゾール-9-イル基を採用することができる。また、置換もしくは無置換のベンゾチエノ[3,2-a]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾチエノ[2,3-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾチエノ[3,2-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾチエノ[2,3-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾチエノ[3,2-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。
好ましいベンゾチオフェン縮合カルバゾール-9-イル基は、ベンゾチオフェン環が2,3位で1つだけ縮合し、その他にヘテロ環が縮合していないカルバゾール-9-イル基である(ベンゼン環は縮合していてもよい)。具体的には、下記のいずれかの構造を有する基であり、下記構造中の水素原子は置換されていてもよい。例えば、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換されているものや、下記構造中の水素原子の全部が重水素原子で置換されているものを好ましく例示することができる。無置換であるものも好ましく採用することができる。
【化11】
【0020】
ベンゾチオフェン環が2,3位で2つ縮合し、その他にヘテロ環が縮合していないカルバゾール-9-イル基も好ましい(ベンゼン環は縮合していてもよい)。具体的には、下記のいずれかの構造を有する基であり、下記構造中の水素原子は置換されていてもよい。例えば、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換されているものや、下記構造中の水素原子の全部が重水素原子で置換されているものを好ましく例示することができる。無置換であるものも好ましく採用することができる。
【化12】
【0021】
本発明では、インドール縮合カルバゾール-9-イル基として、置換もしくは無置換のインドロ[2,3-a]カルバゾール-9-イル基を採用することができる。また、置換もしくは無置換のインドロ[3,2-a]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のインドロ[2,3-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のインドロ[3,2-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のインドロ[2,3-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のインドロ[3,2-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。
好ましいインドール縮合カルバゾール-9-イル基は、インドール環が2,3位で1つだけ縮合し、その他にヘテロ環が縮合していないカルバゾール-9-イル基である(ベンゼン環は縮合していてもよい)。具体的には、下記のいずれかの構造を有する基であり、下記構造中のR’は水素原子、重水素原子または置換基(好ましくはR’は置換基)を表す。R’は置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。下記構造中の水素原子は置換されていてもよい。例えば、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換されているものや、下記構造中の水素原子の全部が重水素原子で置換されているものを好ましく例示することができる。無置換であるものも好ましく採用することができる。
【化13】
【0022】
ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基を構成するヘテロ環とカルバゾール環は、それぞれ置換されていてもよい。置換されている場合は、重水素原子で置換されていてもよいし、それ以外の置換基で置換されていてもよい。ここでいう置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、シアノ基を挙げることができる。これらの置換基は、さらに別の置換基で置換されていてもよい。例えば、重水素原子
、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基で置換されている態様を挙げることができる。
ここでいう「アルキル基」は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。また、直鎖部分と環状部分と分枝部分のうちの2種以上が混在していてもよい。アルキル基の炭素数は、例えば1以上、2以上、4以上とすることができる。また、炭素数は30以下、20以下、10以下、6以下、4以下とすることができる。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デカニル基、イソデカニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。置換基たるアルキル基は、さらに重水素原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
「アルケニル基」は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。また、直鎖部分と環状部分と分枝部分のうちの2種以上が混在していてもよい。アルケニル基の炭素数は、例えば2以上、4以上とすることができる。また、炭素数は30以下、20以下、10以下、6以下、4以下とすることができる。アルケニル基の具体例として、エテニル基、n-プロペニル基、イソプロペニル基、n-ブテニル基、イソブテニル基、n-ペンテニル基、イソペンテニル基、n-ヘキセニル基、イソヘキセニル基、2-エチルヘキセニル基を挙げることができる。置換基たるアルケニル基は、さらに置換されていてもよい。
「アリール基」および「ヘテロアリール基」は、単環であってもよいし、2つ以上の環が縮合した縮合環であってもよい。縮合環である場合、縮合している環の数は2~6であることが好ましく、例えば2~4の中から選択することができる。環の具体例として、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、キノリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ナフチリジン環を挙げることができる。アリーレン基またはヘテロアリーレン基の具体例として、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基を挙げることができる。
「アルコキシ基」および「アルキルチオ基」のアルキル部分については、上記のアルキル基の説明と具体例を参照することができる。「アリールオキシ基」および「アリールチオ基」のアリール部分については、上記のアリール基の説明と具体例を参照することができる。「ヘテロアリールオキシ基」および「ヘテロアリールチオ基」のヘテロアリール部分については、上記のヘテロアリール基の説明と具体例を参照することができる。
ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基は、水素原子および重水素原子以外の原子数が16以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、例えば16以上とすることもできる。また、80以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
【0023】
一般式(1)において、ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基は、D1だけであってもよいし、D2だけであってもよい。本発明の好ましい一態様では、D1とD2がともにヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基である。このとき、D1とD2は同一構造であってもよいし、互いに異なるヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基であってもよい。
D1とD2の一方だけがヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基であるとき、他方はヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基以外のドナー性基(以下「他のドナー性基」と称する)である。ここでいう他のドナー性基は、ハメットのσp値が負の基である。ここで、「ハメットのσp値」は、L.P.ハメットにより提唱されたものであり、パラ置換ベンゼン誘導体の反応速度または平衡に及ぼす置換基の影響を定量化したものである。具体的には、パラ置換ベンゼン誘導体における置換基と反応速度定数または平衡定数の間に成立する下記式:
log(k/k0) = ρσp
または
log(K/K0) = ρσp
における置換基に特有な定数(σp)である。上式において、kは置換基を持たないベンゼン誘導体の速度定数、k0は置換基で置換されたベンゼン誘導体の速度定数、Kは置換基を持たないベンゼン誘導体の平衡定数、K0は置換基で置換されたベンゼン誘導体の平衡定数、ρは反応の種類と条件によって決まる反応定数を表す。本発明における「ハメットのσp値」に関する説明と各置換基の数値については、Hansch,C.et.al.,Chem.Rev.,91,165-195(1991)のσp値に関する記載を参照することができる。ハメットのσp値が負の基は電子供与性(ドナー性)を示し、ハメットのσp値が正の基は電子求引性(アクセプター性)を示す傾向がある。
【0024】
本発明における他のドナー性基は、置換アミノ基を含む基であることが好ましい。アミノ基の窒素原子に結合する置換基は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましく、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることがより好ましい。置換アミノ基は、特に、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ基であることが好ましい。本発明におけるドナー性基は、置換アミノ基の窒素原子で結合する基であってもよいし、置換アミノ基が結合した基で結合する基であってもよい。置換アミノ基が結合する基は、π共役基であることが好ましい。より好ましいのは、置換アミノ基の窒素原子で結合する基である。ここでいう置換基たるアルキル基、アルケニル基、アリール基およびヘテロアリール基については、芳香族炭化水素環基と芳香族複素環基の置換基に関する上記の対応する記載を参照することができる。
本発明における他のドナー性基として特に好ましいのは、置換もしくは無置換のカルバゾール-9-イル基である。カルバゾール-9-イル基には、ベンゼン環やヘテロ環(ただし、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、インデン環、シラインデン環を除く)がさらに縮合していてもよい。カルバゾール-9-イル基の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、置換アミノ基を挙げることができ、好ましい置換基として、アルキル基、アリール基、置換アミノ基を挙げることができる。置換アミノ基の説明については、1つ前の段落の記載を参照することができる。また、ここでいう置換アミノ基には置換もしくは無置換のカルバゾリル基が含まれ、例えば置換もしくは無置換のカルバゾール-3-イル基や置換もしくは無置換のカルバゾール-9-イル基が含まれる。
本発明における他のドナー性基は、水素原子および重水素原子以外の原子数が8以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましく、例えば16以上とすることもできる。また、80以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましい。
【0025】
以下において、一般式(1)のD
1とD
2が採ることができるドナー性基の具体例を示す。D13~D78、D84~D119、D150~D161、D168~D209、D215~D268、D270~D324がヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基の具体例であり、D1~D12、D79~83、D120~149、D162~D167、D210~D214、D269が他のドナー性基の具体例である。以下の構造式において、Phはフェニル基を表し、*は結合位置を表す。
【化14】
D324
【0026】
一般式(1)におけるRは、水素原子、重水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または炭素原子で結合する置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。本発明の好ましい一態様では、Rは水素原子または重水素原子である。ただし、Rが置換もしくは無置換のアリール基である態様や、Rが炭素原子で結合する置換もしくは無置換のヘテロアリール基である態様も採用しうる。Rがアリール基である場合は置換アリール基であることが好ましい。また、Rがヘテロアリール基である場合は置換ヘテロアリール基であることが好ましい。
一般式(1)におけるArは、置換もしくは無置換のアリール基、または炭素原子で結合する置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。本発明の好ましい一態様では、Arは置換もしくは無置換のアリール基である。ただし、Arが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である態様も採用しうる。
【0027】
RとArが採りうるアリール基とヘテロアリール基の説明と好ましい範囲については、ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基の置換基におけるアリール基とヘテロアリール基の記載を参照することができる。ただし、ヘテロアリール基は、炭素原子で結合するヘテロアリール基である。アリール基の置換基とヘテロアリール基の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、シアノ基を挙げることができる。これらの置換基は、さらに別の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換基の群として、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基を挙げることができる。
【0028】
本発明の好ましい一態様では、Rが水素原子または重水素原子で、Arが置換もしくは無置換のフェニル基(フェニル基には、ベンゼン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環およびピロール環から選択される1以上の環が縮合していてもよい)である。本発明の別の好ましい一態様では、Rが水素原子または重水素原子で、Arが置換もしくは無置換のピリジル基(ピリジル基には、ベンゼン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環およびピロール環から選択される1以上の環が縮合していてもよい)である。本発明の別の好ましい一態様では、Rが水素原子または重水素原子で、Arが置換フェニル基(フェニル基には、置換もしくは無置換のフェニル基、および置換もしくは無置換のピリジル基から選択される1以上の基が置換している)である。本発明の別の好ましい一態様では、Rが水素原子または重水素原子で、Arが置換ピリジル基(ピリジル基には、置換もしくは無置換のフェニル基、および置換もしくは無置換のピリジル基から選択される1以上の基が置換している)である。
【0029】
以下において、一般式(1)のRとArが採ることができる置換もしくは無置換のアリール基、および炭素原子で結合する置換もしくは無置換のヘテロアリール基の具体例を示す。以下の構造式において、*は結合位置を表す。
【化15】
【0030】
一般式(1)で表される化合物は、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子だけで構成される化合物であってもよい。本発明の好ましい一態様では、一般式(1)で表される化合物は、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子だけで構成される。また、一般式(1)で表される化合物は、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子だけで構成される化合物であってもよい。一般式(1)で表される化合物は、炭素原子、水素原子および窒素原子からなる群より選択される原子だけで構成される化合物であってもよい。さらに、一般式(1)で表される化合物は水素原子を含まず、重水素原子を含む化合物であってもよい。例えば、一般式(1)で表される化合物は、炭素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子だけで構成される化合物であってもよい。
本発明の一態様では、一般式(1)で表される化合物は対称構造を有する。
【0031】
本発明の好ましい一態様では、一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される構造を有する。
【化16】
【0032】
本発明の好ましい一態様では、一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される構造を有する。
【化17】
【0033】
一般式(2)および一般式(3)におけるR、Ar、D1およびD2の定義と説明については、一般式(1)の対応する記載を参照することができる。
【0034】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。具体例は、化合物ごとに下記一般式のR
1~R
4を特定することにより示している。一般式(1)のRは下記一般式のR
1に相当し、一般式(1)のD
1は下記一般式のR
2に相当する。なお、以下の化合物のうち回転異性体が存在する場合は、回転異性体の混合物と、分離した各回転異性体も、本明細書に開示されているものとする。
【化18】
【表1】
【0035】
化合物1~240におけるR2のD13をD264へ置換した化合物を、順に化合物86401~86640としてここに開示する。 化合物1~240におけるR2のD13をD265へ置換した化合物を、順に化合物86641~86880としてここに開示する。 化合物1~240におけるR2のD13をD266へ置換した化合物を、順に化合物86881~87120としてここに開示する。 化合物1~240におけるR2のD13をD267へ置換した化合物を、順に化合物87121~87360としてここに開示する。 化合物1~240におけるR2のD13をD268へ置換した化合物を、順に化合物87361~87600としてここに開示する。 化合物1~240におけるR2のD13をD269へ置換した化合物を、順に化合物87601~87840としてここに開示する。 化合物1~240におけるR2のD13をD296へ置換した化合物を、順に化合物87841~88080としてここに開示する。 化合物1~240におけるR2のD13をD298へ置換した化合物を、順に化合物88081~88320としてここに開示する。以上の化合物86401~88320は各構造が個別に特定されており、本明細書においてそれぞれ具体的な化合物として記載されている。
【0036】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、900以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)で表される最小化合物の分子量である。好ましくは624以上である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。一般式(1)で表される化合物は、シアノベンゼン系化合物の中では有機溶媒に溶解しやすいという利点がある。このため、一般式(1)で表される化合物は塗布法を適用しやすいうえ、精製して純度を高めやすい。
【0037】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のAr、D
1、D
2のいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(4)または(5)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化19】
【0038】
一般式(4)または(5)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、L1およびL2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0~20であり、より好ましくは1~15であり、さらに好ましくは2~10である。連結基は-X11-L11-で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(4)または(5)において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基である。
L1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)のAr、D1、D2のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
【0039】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(6)~(9)で表される構造を挙げることができる。
【化20】
【0040】
これらの式(6)~(9)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)のAr、D
1、D
2のいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化21】
【0041】
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0042】
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は発光材料である。
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を発することができる化合物である。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、UV領域、可視スペクトルのうち青色、緑色、黄色、オレンジ色、赤色領域(例えば約420nm~約500nm、約500nm~約600nmまたは約600nm~約700nm)または近赤外線領域で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうち赤色またはオレンジ色領域(例えば約620nm~約780nm、約650nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうちオレンジ色または黄色領域(例えば約570nm~約620nm、約590nm、約570nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうち緑色領域(例えば約490nm~約575nm、約510nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうち青色領域(例えば約400nm~約490nm、約475nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、紫外スペクトル領域(例えば280~400nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、赤外スペクトル領域(例えば780nm~2μm)で光を発することができる。
【0043】
小分子の化学物質ライブラリの電子的特性は、公知のab initioによる量子化学計算を用いて算出することができる。例えば、基底として、6-31G*、およびベッケの3パラメータ、Lee-Yang-Parrハイブリッド汎関数として知られている関数群を用いた時間依存的な密度汎関数理論を使用してHartree-Fock方程式(TD-DFT/B3LYP/6-31G*)を解析し、特定の閾値以上のHOMOおよび特定の閾値以下のLUMOを有する分子断片(部分)をスクリーニングすることができる。
それにより、例えば-6.5eV以上のHOMOエネルギー(例えばイオン化ポテンシャル)があるときは、供与体部分(「D」)が選抜できる。また例えば、-0.5eV以下のLUMOエネルギー(例えば電子親和力)があるときは、受容体部分(「A」)が選抜できる。ブリッジ部分(「B」)は、例えば受容体と供与体部分を特異的な立体構成に厳しく制限できる強い共役系であることにより、供与体および受容体部分のπ共役系間の重複が生じるのを防止する。
ある実施形態では、化合物ライブラリは、以下の特性のうちの1つ以上を用いて選別される。
1.特定の波長付近における発光
2.算出された、特定のエネルギー準位より上の三重項状態
3.特定値より下のΔEST値
4.特定値より上の量子収率
5.HOMO準位
6.LUMO準位
ある実施形態では、77Kにおける最低の一重項励起状態と最低の三重項励起状態との差(ΔEST)は、約0.5eV未満、約0.4eV未満、約0.3eV未満、約0.2eV未満または約0.1eV未満である。ある実施形態ではΔEST値は、約0.09eV未満、約0.08eV未満、約0.07eV未満、約0.06eV未満、約0.05eV未満、約0.04eV未満、約0.03eV未満、約0.02eV未満または約0.01eV未満である。
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、25%超の、例えば約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上の量子収率を示す。
【0044】
[一般式(1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物は、新規化合物である。
一般式(1)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、D1、D2を導入したい位置がフッ素原子で置換されたジフルオロイソフタロニトリルにD1-HやD2-Hを水素化ナトリウムの存在下でテトラヒドロフラン中で反応させることにより合成することが可能である。D1とD2が互いに異なる場合は、D1-H、D2-Hとの反応を2段階で行ってもよい。反応の具体的な条件や反応手順については、後述の合成例を参考にすることができる。
【0045】
[一般式(1)で表される化合物を用いた構成物]
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物と組み合わせ、同化合物を分散させ、同化合物と共有結合し、同化合物をコーティングし、同化合物を担持し、あるいは同化合物と会合する1つ以上の材料(例えば小分子、ポリマー、金属、金属錯体等)と共に用い、固体状のフィルムまたは層を形成させる。例えば、一般式(1)で表される化合物を電気活性材料と組み合わせてフィルムを形成することができる。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を正孔輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を電子輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を正孔輸送ポリマーおよび電子輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を、正孔輸送部と電子輸送部との両方を有するコポリマーと組み合わせてもよい。以上のような実施形態により、固体状のフィルムまたは層内に形成される電子および/または正孔を、一般式(1)で表される化合物と相互作用させることができる。
【0046】
[フィルムの形成]
ある実施形態では、一般式(1)で表される本発明の化合物を含むフィルムは、湿式工程で形成することができる。湿式工程では、本発明の化合物を含む組成物を溶解した溶液を面に塗布し、溶媒の除去後にフィルムを形成する。湿式工程として、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法(スプレー法)、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。湿式工程では、本発明の化合物を含む組成物を溶解することができる適切な有機溶媒を選択して用いる。ある実施形態では、組成物に含まれる化合物に、有機溶媒に対する溶解性を上げる置換基(例えばアルキル基)を導入することができる。
ある実施形態では、本発明の化合物を含むフィルムは、乾式工程で形成することができる。ある実施形態では、乾式工程として真空蒸着法を採用することができる、これに限定されるものではない。真空蒸着法を採用する場合は、フィルムを構成する化合物を個別の蒸着源から共蒸着させてもよいし、化合物を混合した単一の蒸着源から共蒸着させてもよい。単一の蒸着源を用いる場合は、化合物の粉末を混合した混合粉を用いてもよいし、その混合粉を圧縮した圧縮成形体を用いてもよいし、各化合物を加熱溶融して冷却した混合物を用いてもよい。ある実施形態では、単一の蒸着源に含まれる複数の化合物の蒸着速度(重量減少速度)が一致ないしほぼ一致する条件で共蒸着を行うことにより、蒸着源に含まれる複数の化合物の組成比に対応する組成比のフィルムを形成することができる。形成されるフィルムの組成比と同じ組成比で複数の化合物を混合して蒸着源とすれば、所望の組成比を有するフィルムを簡便に形成することができる。ある実施形態では、共蒸着される各化合物が同じ重量減少率になる温度を特定して、その温度を共蒸着時の温度として採用することができる。
【0047】
[一般式(1)で表される化合物の使用の例]
有機発光ダイオード:
本発明の一態様は、有機発光素子の発光材料としての、本発明の一般式(1)で表される化合物の使用に関する。ある実施形態では、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層における発光材料として効果的に使用できる。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を発する遅延蛍光(遅延蛍光体)を含む。ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体を提供する。ある実施形態では、本発明は遅延蛍光体としての一般式(1)で表される化合物の使用に関する。ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される化合物は、ホスト材料として使用することができ、かつ、1つ以上の発光材料と共に使用することができ、発光材料は蛍光材料、燐光材料またはTADFでよい。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、正孔輸送材料として使用することもできる。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、電子輸送材料として使用することができる。ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される化合物から遅延蛍光を生じさせる方法に関する。ある実施形態では、化合物を発光材料として含む有機発光素子は、遅延蛍光を発し、高い光放射効率を示す。
ある実施形態では、発光層は一般式(1)で表される化合物を含み、一般式(1)で表される化合物は、基材と平行に配向される。ある実施形態では、基材はフィルム形成表面である。ある実施形態では、フィルム形成表面に対する一般式(1)で表される化合物の配向は、整列させる化合物によって発せられる光の伝播方向に影響を与えるか、あるいは、当該方向を決定づける。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物によって発される光の伝播方向を整列させることで、発光層からの光抽出効率が改善される。
本発明の一態様は、有機発光素子に関する。ある実施形態では、有機発光素子は発光層を含む。ある実施形態では、発光層は発光材料として一般式(1)で表される化合物を含む。ある実施形態では、有機発光素子は有機光ルミネッセンス素子(有機PL素子)である。ある実施形態では、有機発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)である。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、発光層に含まれる他の発光材料の光放射を(いわゆるアシストドーパントとして)補助する。ある実施形態では、発光層に含まれる一般式(1)で表される化合物は、その最低の励起一重項エネルギー準位にあり、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位との間に含まれる。
ある実施形態では、有機光ルミネッセンス素子は、少なくとも1つの発光層を含む。ある実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極との間の有機層を含む。ある実施形態では、有機層は、少なくとも発光層を含む。ある実施形態では、有機層は、発光層のみを含む。ある実施形態では、有機層は、発光層に加えて1つ以上の有機層を含む。有機層の例としては、正孔輸送層、正孔注入層、電子障壁層、正孔障壁層、電子注入層、電子輸送層および励起子障壁層が挙げられる。ある実施形態では、正孔輸送層は、正孔注入機能を有する正孔注入輸送層であってもよく、電子輸送層は、電子注入機能を有する電子注入輸送層であってもよい。有機エレクトロルミネッセンス素子の例を
図1に示す。
【0048】
発光層:
ある実施形態では、発光層は、陽極および陰極からそれぞれ注入された正孔および電子が再結合して励起子を形成する層である。ある実施形態では、層は光を発する。
ある実施形態では、発光材料のみが発光層として用いられる。ある実施形態では、発光層は発光材料とホスト材料とを含む。ある実施形態では、発光材料は、一般式(1)の1つ以上の化合物である。ある実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子および有機光ルミネッセンス素子の光放射効率を向上させるため、発光材料において発生する一重項励起子および三重項励起子を、発光材料内に閉じ込める。ある実施形態では、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いる。ある実施形態では、ホスト材料は有機化合物である。ある実施形態では、有機化合物は励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーを有し、その少なくとも1つは、本発明の発光材料のそれらよりも高い。ある実施形態では、本発明の発光材料中で発生する一重項励起子および三重項励起子は、本発明の発光材料の分子中に閉じ込められる。ある実施形態では、一重項および三重項の励起子は、光放射効率を向上させるために十分に閉じ込められる。ある実施形態では、高い光放射効率が未だ得られるにもかかわらず、一重項励起子および三重項励起子は十分に閉じ込められず、すなわち、高い光放射効率を達成できるホスト材料は、特に限定されることなく本発明で使用されうる。ある実施形態では、本発明の素子の発光層中の発光材料において、光放射が生じる。ある実施形態では、放射光は蛍光および遅延蛍光の両方を含む。ある実施形態では、放射光は、ホスト材料からの放射光を含む。ある実施形態では、放射光は、ホスト材料からの放射光からなる。ある実施形態では、放射光は、一般式(1)で表される化合物からの放射光と、ホスト材料からの放射光とを含む。ある実施形態では、TADF分子とホスト材料とが用いられる。ある実施形態では、TADFはアシストドーパントである。
【0049】
一般式(1)で表される化合物をアシストドーパントとして用いるとき、発光材料(好ましくは蛍光材料)として様々な化合物を採用することが可能である。そのような発光材料としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、クリセン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、スチルベン誘導体、フルオレン誘導体、アントリル誘導体、ピロメテン誘導体、ターフェニル誘導体、ターフェニレン誘導体、フルオランテン誘導体、アミン誘導体、キナクリドン誘導体、オキサジアゾール誘導体、マロノニトリル誘導体、ピラン誘導体、カルバゾール誘導体、ジュロリジン誘導体、チアゾール誘導体、金属(Al,Zn)を有する誘導体等を用いることが可能である。これらの例示骨格には置換基を有してもよいし、置換基を有していなくてもよい。また、これらの例示骨格どうしを組み合わせてもよい。
以下において、一般式(1)で表されるアシストドーパントと組み合わせて用いることができる発光材料を例示する。
【0050】
【0051】
また、WO2015/022974号公報の段落0220~0239に記載の化合物も、一般式(1)で表されるアシストドーパントとともに用いる発光材料として、特に好ましく採用することができる。
【0052】
ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、0.1重量%以上である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、1重量%以上である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、50重量%以下である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、20重量%以下である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、10重量%以下である。
ある実施形態では、発光層のホスト材料は、正孔輸送機能および電子輸送機能を有する有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、放射光の波長が増加することを防止する有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、高いガラス転移温度を有する有機化合物である。
【0053】
いくつかの実施形態では、ホスト材料は以下からなる群から選択される:
【化23】
ある実施形態では、発光層は2種類以上の構造が異なるTADF分子を含む。例えば、励起一重項エネルギー準位がホスト材料、第1TADF分子、第2TADF分子の順に高い、これら3種の材料を含む発光層とすることができる。このとき、第1TADF分子と第2TADF分子は、ともに最低励起一重項エネルギー準位と77Kの最低励起三重項エネルギー準位の差ΔE
STが0.3eV以下であることが好ましく、0.25eV以下であることがより好ましく、0.2eV以下であることがより好ましく、0.15eV以下であることがより好ましく、0.1eV以下であることがさらに好ましく、0.07eV以下であることがさらにより好ましく、0.05eV以下であることがさらにまた好ましく、0.03eV以下であることがさらになお好ましく、0.01eV以下であることが特に好ましい。発光層における第1TADF分子の含有量は、第2TADF分子の含有量よりも多いことが好ましい。また、発光層におけるホスト材料の含有量は、第2TADF分子の含有量よりも多いことが好ましい。発光層における第1TADF分子の含有量は、ホスト材料の含有量よりも多くてもよいし、少なくてもよいし、同じであってもよい。ある実施形態では、発光層内の組成を、ホスト材料を10~70重量%、第1TADF分子を10~80重量%、第2TADF分子を0.1~30重量%としてもよい。ある実施形態では、発光層内の組成を、ホスト材料を20~45重量%、第1TADF分子を50~75重量%、第2TADF分子を5~20重量%としてもよい。ある実施形態では、第1TADF分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第1TADF分子の含有率=A重量%)の光励起による発光量子収率φPL1(A)と、第2TADF分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第2TADF分子の含有率=A重量%)の光励起による発光量子収率φPL2(A)が、φPL1(A)>φPL2(A)の関係式を満たす。ある実施形態では、第2TADF分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第2TADF分子の含有率=B重量%)の光励起による発光量子収率φPL2(B)と、第2TADF分子の単独膜の光励起による発光量子収率φPL2(100)が、φPL2(B)>φPL2(100)の関係式を満たす。ある実施形態では、発光層は3種類の構造が異なるTADF分子を含むことができる。本発明の化合物は、発光層に含まれる複数のTADF化合物のいずれであってもよい。
ある実施形態では、発光層は、ホスト材料、アシストドーパント、および発光材料からからなる群より選択される材料で構成することができる。ある実施形態では、発光層は金属元素を含まない。ある実施形態では、発光層は炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で構成することができる。あるいは、発光層は、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で構成することもできる。あるいは、発光層は、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で構成することもできる。
発光層が本発明の化合物以外のTADF材料を含むとき、そのTADF材料は公知の遅延蛍光材料であってよい。好ましい遅延蛍光材料として、WO2013/154064号公報の段落0008~0048および0095~0133、WO2013/011954号公報の段落0007~0047および0073~0085、WO2013/011955号公報の段落0007~0033および0059~0066、WO2013/081088号公報の段落0008~0071および0118~0133、特開2013-256490号公報の段落0009~0046および0093~0134、特開2013-116975号公報の段落0008~0020および0038~0040、WO2013/133359号公報の段落0007~0032および0079~0084、WO2013/161437号公報の段落0008~0054および0101~0121、特開2014-9352号公報の段落0007~0041および0060~0069、特開2014-9224号公報の段落0008~0048および0067~0076、特開2017-119663号公報の段落0013~0025、特開2017-119664号公報の段落0013~0026、特開2017-222623号公報の段落0012~0025、特開2017-226838号公報の段落0010~0050、特開2018-100411号公報の段落0012~0043、WO2018/047853号公報の段落0016~0044に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物であって、遅延蛍光を放射しうるものが含まれる。また、ここでは、特開2013-253121号公報、WO2013/133359号公報、WO2014/034535号公報、WO2014/115743号公報、WO2014/122895号公報、WO2014/126200号公報、WO2014/136758号公報、WO2014/133121号公報、WO2014/136860号公報、WO2014/196585号公報、WO2014/189122号公報、WO2014/168101号公報、WO2015/008580号公報、WO2014/203840号公報、WO2015/002213号公報、WO2015/016200号公報、WO2015/019725号公報、WO2015/072470号公報、WO2015/108049号公報、WO2015/080182号公報、WO2015/072537号公報、WO2015/080183号公報、特開2015-129240号公報、WO2015/129714号公報、WO2015/129715号公報、WO2015/133501号公報、WO2015/136880号公報、WO2015/137244号公報、WO2015/137202号公報、WO2015/137136号公報、WO2015/146541号公報、WO2015/159541号公報に記載される発光材料であって、遅延蛍光を放射しうるものを好ましく採用することができる。なお、この段落に記載される上記の公報は、本明細書の一部としてここに引用する。
【0054】
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および発光層以外の各層について説明する。
【0055】
基材:
いくつかの実施形態では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は基材により保持され、当該基材は特に限定されず、有機エレクトロルミネッセンス素子で一般的に用いられる、例えばガラス、透明プラスチック、クォーツおよびシリコンにより形成されたいずれかの材料を用いればよい。
【0056】
陽極:
いくつかの実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス装置の陽極は、金属、合金、導電性化合物またはそれらの組み合わせから製造される。いくつかの実施形態では、前記の金属、合金または導電性化合物は高い仕事関数(4eV以上)を有する。いくつかの実施形態では、前記金属はAuである。いくつかの実施形態では、導電性の透明材料は、CuI、酸化インジウムスズ(ITO)、SnO2およびZnOから選択される。いくつかの実施形態では、IDIXO(In2O3-ZnO)などの、透明な導電性フィルムを形成できるアモルファス材料を使用する。いくつかの実施形態では、前記陽極は薄膜である。いくつかの実施形態では、前記薄膜は蒸着またはスパッタリングにより作製される。いくつかの実施形態では、前記フィルムはフォトリソグラフィー方法によりパターン化される。いくつかの実施形態では、パターンが高精度である必要がない(例えば約100μm以上)場合、当該パターンは、電極材料への蒸着またはスパッタリングに好適な形状のマスクを用いて形成してもよい。いくつかの実施形態では、有機導電性化合物などのコーティング材料を塗布しうるとき、プリント法やコーティング法などの湿式フィルム形成方法が用いられる。いくつかの実施形態では、放射光が陽極を通過するとき、陽極は10%超の透過度を有し、当該陽極は、単位面積あたり数百オーム以下のシート抵抗を有する。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは10~1,000nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは10~200nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは用いる材料に応じて変動する。
【0057】
陰極:
いくつかの実施形態では、前記陰極は、低い仕事関数を有する金属(4eV以下)(電子注入金属と称される)、合金、導電性化合物またはその組み合わせなどの電極材料で作製される。いくつかの実施形態では、前記電極材料は、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム-銅混合物、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム-アルミニウム混合物および希土類元素から選択される。いくつかの実施形態では、電子注入金属と、電子注入金属より高い仕事関数を有する安定な金属である第2の金属との混合物が用いられる。いくつかの実施形態では、前記混合物は、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム-アルミニウム混合物およびアルミニウムから選択される。いくつかの実施形態では、前記混合物は電子注入特性および酸化に対する耐性を向上させる。いくつかの実施形態では、陰極は、蒸着またはスパッタリングにより電極材料を薄膜として形成させることによって製造される。いくつかの実施形態では、前記陰極は単位面積当たり数百オーム以下のシート抵抗を有する。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は10nm~5μmである。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は50~200nmである。いくつかの実施形態では、放射光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極および陰極のいずれか1つは透明または半透明である。いくつかの実施形態では、透明または半透明のエレクトロルミネッセンス素子は光放射輝度を向上させる。
いくつかの実施形態では、前記陰極を、前記陽極に関して前述した導電性の透明な材料で形成されることにより、透明または半透明の陰極が形成される。いくつかの実施形態では、素子は陽極と陰極とを含むが、いずれも透明または半透明である。
【0058】
注入層:
注入層は、電極と有機層との間の層である。いくつかの実施形態では、前記注入層は駆動電圧を減少させ、光放射輝度を増強する。いくつかの実施形態では、前記注入層は、正孔注入層と電子注入層とを含む。前記注入層は、陽極と発光層または正孔輸送層との間、並びに陰極と発光層または電子輸送層との間に配置することがきる。いくつかの実施形態では、注入層が存在する。いくつかの実施形態では、注入層が存在しない。
以下に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0059】
【0060】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【化25】
【0061】
障壁層:
障壁層は、発光層に存在する電荷(電子または正孔)および/または励起子が、発光層の外側に拡散することを阻止できる層である。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、発光層と正孔輸送層との間に存在し、電子が発光層を通過して正孔輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層と電子輸送層との間に存在し、正孔が発光層を通過して電子輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、障壁層は、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層および正孔障壁層は励起子障壁層を構成する。本明細書で用いる用語「電子障壁層」または「励起子障壁層」には、電子障壁層の、および励起子障壁層の機能の両方を有する層が含まれる。
【0062】
正孔障壁層:
正孔障壁層は、電子輸送層として機能する。いくつかの実施形態では、電子の輸送の間、正孔障壁層は正孔が電子輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。正孔障壁層に用いる材料は、電子輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
以下に、正孔障壁層に用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0063】
【0064】
電子障壁層:
電子障壁層は、正孔を輸送する。いくつかの実施形態では、正孔の輸送の間、電子障壁層は電子が正孔輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。電子障壁層に用いる材料は、正孔輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
以下に電子障壁材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【0065】
【0066】
励起子障壁層:
励起子障壁層は、発光層における正孔と電子との再結合を通じて生じた励起子が電荷輸送層まで拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、発光層における励起子の有効な閉じ込め(confinement)を可能にする。いくつかの実施形態では、装置の光放射効率が向上する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、陽極の側と陰極の側のいずれかで、およびその両側の発光層に隣接する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層が陽極側に存在するとき、当該層は、正孔輸送層と発光層との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。いくつかの実施形態では、励起子障壁層が陰極側に存在するとき、当該層は、発光層と陰極との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。いくつかの実施形態では、正孔注入層、電子障壁層または同様の層は、陽極と、陽極側の発光層に隣接する励起子障壁層との間に存在する。いくつかの実施形態では、正孔注入層、電子障壁層、正孔障壁層または同様の層は、陰極と、陰極側の発光層に隣接する励起子障壁層との間に存在する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーを含み、その少なくとも1つが、それぞれ、発光材料の励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーより高い。
【0067】
正孔輸送層:
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は単層である。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は、正孔の注入または輸送特性および電子の障壁特性のうちの1つの特性を有する。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は有機材料である。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は無機材料である。本発明で使用できる公知の正孔輸送材料の例としては、限定されないが、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導剤、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導剤、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導剤、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリンコポリマーおよび導電性ポリマーオリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、またはその組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料はポルフィリン化合物、芳香族三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物から選択される。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は芳香族三級アミン化合物である。以下に正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【0068】
【0069】
電子輸送層:
電子輸送層は、電子輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、電子輸送層は単層である。いくつかの実施形態では、電子輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、電子輸送材料は、陰極から注入された電子を発光層に輸送する機能さえあればよい。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はまた、正孔障壁材料としても機能する。本発明で使用できる電子輸送層の例としては、限定されないが、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アゾール誘導体、アジン誘導体またはその組合せ、またはそのポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はチアジアゾール誘導剤またはキノキサリン誘導体である。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はポリマー材料である。以下に電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【0070】
【0071】
さらに、各有機層に添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0072】
【0073】
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示したが、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。
【0074】
デバイス:
いくつかの実施形態では、発光層はデバイス中に組み込まれる。例えば、デバイスには、OLEDバルブ、OLEDランプ、テレビ用ディスプレイ、コンピューター用モニター、携帯電話およびタブレットが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を有するOLEDを含む。
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載の構成物は、OLEDまたは光電子デバイスなどの、様々な感光性または光活性化デバイスに組み込まれうる。いくつかの実施形態では、前記構成物はデバイス内の電荷移動またはエネルギー移動の促進に、および/または正孔輸送材料として有用でありうる。前記デバイスとしては、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回線(OIC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検出装置、有機光受容体、有機磁場クエンチ(field-quench)装置(O-FQD)、発光燃料電池(LEC)または有機レーザダイオード(O-レーザー)が挙げられる。
【0075】
バルブまたはランプ:
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を含むOLEDを含む。
いくつかの実施形態では、デバイスは色彩の異なるOLEDを含む。いくつかの実施形態では、デバイスはOLEDの組合せを含むアレイを含む。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、3色の組合せ(例えばRGB)である。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、赤色でも緑色でも青色でもない色(例えばオレンジ色および黄緑色)の組合せである。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、2色、4色またはそれ以上の色の組合せである。
いくつかの実施形態では、デバイスは、
取り付け面を有する第1面とそれと反対の第2面とを有し、少なくとも1つの開口部を画定する回路基板と、
前記取り付け面上の少なくとも1つのOLEDであって、当該少なくとも1つのOLEDが、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を含む、発光する構成を有する少なくとも1つのOLEDと、
回路基板用のハウジングと、
前記ハウジングの端部に配置された少なくとも1つのコネクターであって、前記ハウジングおよび前記コネクターが照明設備への取付けに適するパッケージを画定する、少なくとも1つのコネクターと、を備えるOLEDライトである。
いくつかの実施形態では、前記OLEDライトは、複数の方向に光が放射されるように回路基板に取り付けられた複数のOLEDを有する。いくつかの実施形態では、第1方向に発せられた一部の光は偏光されて第2方向に放射される。いくつかの実施形態では、反射器を用いて第1方向に発せられた光を偏光する。
【0076】
ディスプレイまたはスクリーン:
いくつかの実施形態では、本発明の発光層はスクリーンまたはディスプレイにおいて使用できる。いくつかの実施形態では、本発明に係る化合物は、限定されないが真空蒸発、堆積、蒸着または化学蒸着(CVD)などの工程を用いて基材上へ堆積させる。いくつかの実施形態では、前記基材は、独特のアスペクト比のピクセルを提供する2面エッチングにおいて有用なフォトプレート構造である。前記スクリーン(またマスクとも呼ばれる)は、OLEDディスプレイの製造工程で用いられる。対応するアートワークパターンの設計により、垂直方向ではピクセルの間の非常に急な狭いタイバーの、並びに水平方向では大きな広範囲の斜角開口部の配置を可能にする。これにより、TFTバックプレーン上への化学蒸着を最適化しつつ、高解像度ディスプレイに必要とされるピクセルの微細なパターン構成が可能となる。
ピクセルの内部パターニングにより、水平および垂直方向での様々なアスペクト比の三次元ピクセル開口部を構成することが可能となる。更に、ピクセル領域中の画像化された「ストライプ」またはハーフトーン円の使用は、これらの特定のパターンをアンダーカットし基材から除くまで、特定の領域におけるエッチングが保護される。その時、全てのピクセル領域は同様のエッチング速度で処理されるが、その深さはハーフトーンパターンにより変化する。ハーフトーンパターンのサイズおよび間隔を変更することにより、ピクセル内での保護率が様々異なるエッチングが可能となり、急な垂直斜角を形成するのに必要な局在化された深いエッチングが可能となる。
蒸着マスク用の好ましい材料はインバーである。インバーは、製鉄所で長い薄型シート状に冷延された金属合金である。インバーは、ニッケルマスクとしてスピンマンドレル上へ電着することができない。蒸着用マスク内に開口領域を形成するための適切かつ低コストの方法は、湿式化学エッチングによる方法である。
いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、基材上のピクセルマトリックスである。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、リソグラフィー(例えばフォトリソグラフィーおよびeビームリソグラフィー)を使用して加工される。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、湿式化学エッチングを使用して加工される。更なる実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、プラズマエッチングを使用して加工される。
【0077】
デバイスの製造方法:
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザーパネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断することにより形成される。
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザーパネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断することにより形成される。
【0078】
本発明の他の態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの製造方法を提供し、当該方法は、
マザーパネルのベース基材上に障壁層を形成する工程と、
前記障壁層上に、セルパネル単位で複数のディスプレイユニットを形成する工程と、
前記セルパネルのディスプレイユニットのそれぞれの上にカプセル化層を形成する工程と、
前記セルパネル間のインタフェース部に有機フィルムを塗布する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、障壁層は、例えばSiNxで形成された無機フィルムであり、障壁層の端部はポリイミドまたはアクリルで形成された有機フィルムで被覆される。いくつかの実施形態では、有機フィルムは、マザーパネルがセルパネル単位で軟らかく切断されるように補助する。
いくつかの実施形態では、薄膜トランジスタ(TFT)層は、発光層と、ゲート電極と、ソース/ドレイン電極と、を有する。複数のディスプレイユニットの各々は、薄膜トランジスタ(TFT)層と、TFT層上に形成された平坦化フィルムと、平坦化フィルム上に形成された発光ユニットと、を有してもよく、前記インタフェース部に塗布された有機フィルムは、前記平坦化フィルムの材料と同じ材料で形成され、前記平坦化フィルムの形成と同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記発光ユニットは、不動態化層と、その間の平坦化フィルムと、発光ユニットを被覆し保護するカプセル化層と、によりTFT層と連結される。前記製造方法のいくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、ディスプレイユニットにもカプセル化層にも連結されない。
【0079】
前記有機フィルムと平坦化フィルムの各々は、ポリイミドおよびアクリルのいずれか1つを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記障壁層は無機フィルムであってもよい。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はポリイミドで形成されてもよい。前記方法は更に、ポリイミドで形成されたベース基材の1つの表面に障壁層を形成する前に、当該ベース基材のもう1つの表面にガラス材料で形成されたキャリア基材を取り付ける工程と、インタフェース部に沿った切断の前に、前記キャリア基材をベース基材から分離する工程と、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記OLEDディスプレイはフレキシブルなディスプレイである。
いくつかの実施形態では、前記不動態化層は、TFT層の被覆のためにTFT層上に配置された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルムは、不動態化層上に形成された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルムは、障壁層の端部に形成された有機フィルムと同様、ポリイミドまたはアクリルで形成される。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイの製造の際、前記平坦化フィルムおよび有機フィルムは同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、障壁層の端部に形成されてもよく、それにより、当該有機フィルムの一部が直接ベース基材と接触し、当該有機フィルムの残りの部分が、障壁層の端部を囲みつつ、障壁層と接触する。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記発光層は、ピクセル電極と、対電極と、当該ピクセル電極と当該対電極との間に配置された有機発光層と、を有する。いくつかの実施形態では、前記ピクセル電極は、TFT層のソース/ドレイン電極に連結している。
いくつかの実施形態では、TFT層を通じてピクセル電極に電圧が印加されるとき、ピクセル電極と対電極との間に適切な電圧が形成され、それにより有機発光層が光を放射し、それにより画像が形成される。以下、TFT層と発光ユニットとを有する画像形成ユニットを、ディスプレイユニットと称する。
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットを被覆し、外部の水分の浸透を防止するカプセル化層は、有機フィルムと無機フィルムとが交互に積層する薄膜状のカプセル化構造に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、前記カプセル化層は、複数の薄膜が積層した薄膜状カプセル化構造を有する。いくつかの実施形態では、インタフェース部に塗布される有機フィルムは、複数のディスプレイユニットの各々と間隔を置いて配置される。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、一部の有機フィルムが直接ベース基材と接触し、有機フィルムの残りの部分が障壁層の端部を囲む一方で障壁層と接触する態様で形成される。
【0081】
一実施形態では、OLEDディスプレイはフレキシブルであり、ポリイミドで形成された柔軟なベース基材を使用する。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はガラス材料で形成されたキャリア基材上に形成され、次に当該キャリア基材が分離される。
いくつかの実施形態では、障壁層は、キャリア基材の反対側のベース基材の表面に形成される。一実施形態では、前記障壁層は、各セルパネルのサイズに従いパターン化される。例えば、ベース基材がマザーパネルの全ての表面上に形成される一方で、障壁層が各セルパネルのサイズに従い形成され、それにより、セルパネルの障壁層の間のインタフェース部に溝が形成される。各セルパネルは、前記溝に沿って切断できる。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記の製造方法は、更にインタフェース部に沿って切断する工程を含み、そこでは溝が障壁層に形成され、少なくとも一部の有機フィルムが溝で形成され、当該溝がベース基材に浸透しない。いくつかの実施形態では、各セルパネルのTFT層が形成され、無機フィルムである不動態化層と有機フィルムである平坦化フィルムが、TFT層上に配置され、TFT層を被覆する。例えばポリイミドまたはアクリル製の平坦化フィルムが形成されるのと同時に、インタフェース部の溝は、例えばポリイミドまたはアクリル製の有機フィルムで被覆される。これは、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃を有機フィルムに吸収させることによってひびが生じるのを防止する。すなわち、全ての障壁層が有機フィルムなしで完全に露出している場合、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃が障壁層に伝達され、それによりひびが生じるリスクが増加する。しかしながら、一実施形態では、障壁層間のインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されて、有機フィルムがなければ障壁層に伝達されうる衝撃を吸収するため、各セルパネルをソフトに切断し、障壁層でひびが生じるのを防止してもよい。一実施形態では、インタフェース部の溝を被覆する有機フィルムおよび平坦化フィルムは、互いに間隔を置いて配置される。例えば、有機フィルムおよび平坦化フィルムが1つの層として相互に接続している場合には、平坦化フィルムと有機フィルムが残っている部分とを通じてディスプレイユニットに外部の水分が浸入するおそれがあるため、有機フィルムおよび平坦化フィルムは、有機フィルムがディスプレイユニットから間隔を置いて配置されるように、相互に間隔を置いて配置される。
【0083】
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットは、発光ユニットの形成により形成され、カプセル化層は、ディスプレイユニットを被覆するためディスプレイユニット上に配置される。これにより、マザーパネルが完全に製造された後、ベース基材を担持するキャリア基材がベース基材から分離される。いくつかの実施形態では、レーザー光線がキャリア基材へ放射されると、キャリア基材は、キャリア基材とベース基材との間の熱膨張率の相違により、ベース基材から分離される。
いくつかの実施形態では、マザーパネルは、セルパネル単位で切断される。いくつかの実施形態では、マザーパネルは、カッターを用いてセルパネル間のインタフェース部に沿って切断される。いくつかの実施形態では、マザーパネルが沿って切断されるインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されているため、切断の間、当該有機フィルムが衝撃を吸収する。いくつかの実施形態では、切断の間、障壁層でひびが生じるのを防止できる。
いくつかの実施形態では、前記方法は製品の不良率を減少させ、その品質を安定させる。
他の態様は、ベース基材上に形成された障壁層と、障壁層上に形成されたディスプレイユニットと、ディスプレイユニット上に形成されたカプセル化層と、障壁層の端部に塗布された有機フィルムと、を有するOLEDディスプレイである。
【実施例0084】
以下に合成例と実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR-3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
【0085】
【0086】
窒素気流下で、炭酸カリウム(1.04g,7.5mmol),ベンゾフロ[2,3-c]カルバゾール(1.61g,6.3mmol)および4,6-ジフルオロ-5-フェニルイソフタロニトリル(0.60mmol,2.5mmol)をジメチルホルムアミド(20mL)中、100℃で9時間反応した。その後、室温に戻し,水とメタノールを加え反応を停止した。析出した黄色固体をろ過し、ろ物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)および再沈殿(トルエン/メタノール)で精製し,黄色固体の化合物C1(1.33g,収率76%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ): 8.49 (s,1H), 8.43 (d, J =7.6Hz, 2H), 7.96-7.91 (m, 4H), 7.70 (d, J =7.6 Hz, 2H), 7.47-7.36 (m, 8H), 7.14-7.11 (m, 2H), 7.10-7.07 (m, 2H), 6.52-6.46 (m, 3H), 6.37 (t, J=7.6 Hz, 2H).
MS (ASAP): 715.34 (M+H+). Calcd for C50H26N4O2: 714.21.
【0087】
【0088】
化合物C1(2.40g,3.4mmol),4-ブロモベンゾニトリル(1.17g,5.0mmol),炭酸カリウム(0.93g,6.7mmol),2-エチルヘキサン酸(0.10mg,0.7mmol),トリシクロヘキシルホスフィン(0.10g,0.5mmol)およびジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.20g,0.3mmol)を窒素気流下でキシレン(30mL)に溶解させ,120℃で18時間攪拌した。この混合物を室温に戻し,セライトろ過により難溶物を取り除いた。減圧留去によりろ液を濃縮後,残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン=2/1)および再沈殿(トルエン/メタノール)にて精製し、白色固体の化合物C2(1.90g,収率68%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ): 8.43 (d, J =7.6 Hz, 2H), 8.00-7.92 (m, 8H), 7.70 (d, J =8.0 Hz, 2H), 7.48-7.36 (m, 8H), 7.19 (d, J =8.0 Hz, 2H), 7.14 (d, J =8.0 Hz, 2H), 6.54-6.50 (m, 3H), 6.40 (t, J =7.6 Hz, 2H).
MS (ASAP): 816.45 (M+H+). Calcd for C57H29N5O2: 815.23.
【0089】
【0090】
窒素気流下で、炭酸カリウム(1.22g,8.8mmol),ベンゾフロ[2,3-c]カルバゾール(2.00g,7.4mmol)および4,6-ジフルオロ-5-フェニルイソフタロニトリル(0.77mmol,3.0mmol)をジメチルホルムアミド(36mL)中、80℃で2時間反応した。その後、室温に戻し,水を加え反応を停止した。反応混合物にクロロホルムを加え分液し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製することで黄色固体の化合C3(2.25g,収率90%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.44 (s, 1H), 8.22 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 7.92 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.88-7.81 (m, 2H), 7.69 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.45-7.40 (m, 2H), 7.38-7.33 (m, 2H), 7.27-7.26 (m, 1H), 7.22 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 7.07-6.95 (m, 4H) , 6.49-6.46 (m, 3H), 6.40-6.36 (m, 2H), 2.56 (d, J = 7.2 Hz, 6H).
MS (ASAP): 743.28 [(M+H)+, cal. C52H31N4O2, 743.24].
【0091】
【0092】
窒素気流下で、水素化ナトリウム(0.30g,7.5mmol),11-フェニル-11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール(2.08g,6.3mmol)をTHF(20mL)中,室温で1時間間攪拌後、テトラヒドロフラン(50ml)に溶解させた4,6-ジフルオロ-5-フェニルイソフタロニトリル(1.50g,6.24mmol)滴下にて加えた。5時間室温で反応した後、水を加え反応を停止させた。反応混合物にクロロホルムを加え分液し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製することで黄色固体の中間体1(1.82g,収率53%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.99 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.61 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 7.48-7.40 (m, 4H), 7.36-7.20 (m, 7H), 6.84-6.82 (br, 1H), 6.70 (t, J= 7.6 Hz, 1H), 6.40 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 6.06 (br, 1H); MS (ASAP): 553.70 [(M+H)+, cal. C38H22FN4, 553.18].
【0093】
窒素気流下で、炭酸カリウム(0.36g,2.6mmol),ベンゾフロ[2,3-c]カルバゾール(0.54g,2.1mmol)および中間体1(0.96mmol,1.7mmol)をジメチルホルムアミド(17mL)中、室温で4時間反応した。水を加えることで反応を停止し、反応混合物にクロロホルムを加え分液し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製することで黄色固体の化合物C4(1.36g,収率99%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.78 (s, 1.00), 8.55 (d, J = 8.8 Hz, 0.54), 8.27-8.19 (m, 2.38), 8.02-7.97 (m, 1.55), 7.89-7.83 (m, 2.85), 7.94-7.75 (m, 1.99), 7.70-7.62 (m, 1.98), 7.59-7.43 (m, 6.17), 7.39-7.34 (m, 0.51), 7.29-7.26 (m, 2.61), 7.21-7.16 (m, 1.02), 7.06-6.99 (m, 1.00), 6.81 (br, 0.90), 6.67-6.61 (m, 1.00), 6.15 (t, J = 7.6 Hz, 0.5), 6.09 (t, J = 7.6 Hz, 0.5), 5.91 (br, 1.87), 5.57 (br, 0.90), 5.29 (br, 0.90); MS (ASAP): 790.31 [(M+H)+, cal. C56H32N4O, 790.25].
【0094】
【0095】
窒素気流下で、水素化ナトリウム(0.30g,7.5mmol),5-フェニル-5,12-ジヒドロインドロ[3,2-a]カルバゾールをTHF(50mL)中,室温で1時間間攪拌後、THF(50ml)に溶解させた4,6-ジフルオロ-5-フェニルイソフタロニトリル(1.49g,6.20mmol)滴下にて加えた。15時間室温で反応した後、水で反応を停止させた。反応混合物にクロロホルムを加え分液し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製することで黄色固体の中間体2(1.70g,収率50%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 9.05 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 8.16 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 8.09-8.07 (m, 1H), 7.72-7.68 (m, 2H), 7.61-7.57 (m, 3H), 7.37-7.29 (m, 2H), 7.27-7.19 (m, 4H), 7.14-7.02 (m, 2H), 6.99-6.95 (m, 4H), 6.21 (d, J = 8.0 Hz, 1H).
MS (ASAP): 553.40 [(M+H)+, cal. C38H22FN4, 553.18].
【0096】
窒素気流下で、炭酸カリウム(0.43g,3.1mmol),ベンゾフロ[2,3-c]カルバゾール(0.66g,2.6mmol)および中間体2(1.30mmol,2.4mmol)をジメチルホルムアミド(25mL)中、室温で4時間反応した。水を加えることで反応を停止し、反応混合物にクロロホルムを加え分液し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製することで黄色固体の化合物C5(1.63g,収率88%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 9.44 (s, 1H), 8.22-8.17 (m, 1H), 8.12-8.07 (m, 1H), 7.76 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.69-7.26 (m, 17H), 7.08 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.54-6.49 (m, 1H), 6.40-6.03 (m, 5H).
MS (ASAP): 790.37 [(M+H)+, cal. C56H32N4O, 790.25].
【0097】
【0098】
窒素気流下で、リン酸カリウム(1.74g,8.2mmol),5-フェニル-5,12-ジヒドロインドロ[3,2-a]カルバゾール(2.28g,6.8mmol)および4,6-ジフルオロ-5-フェニルイソフタロニトリル(0.66g,2.7mmol)をジメチルホルムアミド(30mL)中、110℃で6時間反応した。反応後、室温で水を加えることで反応を停止し、反応混合物にクロロホルムを加え分液し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製することで黄色固体の化合物C6(0.97g,収率41%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 9.57 (s, 1H), 8.01 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.91 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.64-7.60 (m, 4H), 7.54-7.50 (m, 4H), 7.42-7.35 (m, 10H), 7.26 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.22-7.19 (m, 2H), 6.91 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.52-6.49 (m, 2H), 6.21 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 5.78 (t, J= 8.0 Hz, 2H), 5.22 (d, J = 7.6 Hz, 2H).
MS (ASAP): 865.47 [(M+H)+, cal. C62H37N6, 865.30].
【0099】
【0100】
窒素気流下で、水素化ナトリウム(0.19g,4.7mmol),ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール(1.02g,4.0mmol)をテトラヒドロフラン(15mL)中,0℃で30分間攪拌後,4,6-ジフルオロ-5-フェニルイソフタロニトリルを加えた。反応溶液を40℃に昇温し6時間反応した後、室温に戻し,水とメタノールで反応を停止した。析出した黄色固体をろ過し、ろ物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘキサン=4/1)および再沈殿(トルエン/メタノール)で精製し,黄色固体の化合物C7(0.98g,収率78%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ): 8.44 (d, J =8.0 Hz, 2H), 7.99-7.95 (m, 4H), 7.89-7.86 (m, 2H), 7.73-7.63 (m, 5H), 7.49-7.45 (m, 4H), 7.42-7.37 (m, 4H), 7.25 (d, J =8.4 Hz, 2H), 7.23 (d,J =8.8 Hz, 2H), 6.56-6.50 (m, 3H), 6.40 (t, J =7.6 Hz, 2H).
MS (ASAP): 791.26 (M+H+). Calcd for C56H30N4O2: 790.24
【0101】
【0102】
窒素気流下で、水素化ナトリウム(0.49g,11.8mmol),ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール(2.54g,9.9mmol)をテトラヒドロフラン(20mL)中,0℃で30分間攪拌後,4,5-ジフルオロ-6-フェニルイソフタロニトリルを加えた。反応溶液を室温に戻し6時間室温で反応した後,水とメタノールで反応を停止した。析出した黄色固体をろ過し、ろ物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/クロロホルム=10/1)および再沈殿(トルエン/メタノール)で精製し,黄色固体の化合物C8(0.48g,収率17%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ): (With the presence of stereoisomers in the sample, the proton number is displayed as a relative ratio.) 8.53 (s, 1H), 8.12 (t, J =7.6 Hz, 1H), 7.97-7.94 (m, 1H), 7.89-7.74 (m, 2H), 7.67 (d, J =8.4 Hz, 0.5H), 7.59-7.50 (m, 3H), 7.45 (d, J =8.4 Hz, 0.5H), 7.41-7.28 (m, 4H), 7.22-7.17 (m, 0.5H), 7.14-6.97 (m, 10H), 6.90-6.84 (m, 2.5H).
MS (ASAP): 715.38 (M+H+). Calcd for C50H26N4O2: 714.21
【0103】
【0104】
窒素気流下、炭酸セシウム(1.30g,4.0mmol),5-フェニル-5,11-ジヒドロインドロ[3,2-a]カルバゾール(0.78g,2.3mmol)および4,6-ジフルオロ-5-フェニルイソフタロニトリル(0.24g,1.0mmol)をジメチルホルムアミド(20mL)中、80℃で12時間反応した。反応後、室温で水を加えることで反応を停止し、反応混合物にクロロホルムを加え分液し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)および再沈殿(トルエン/メタノール)で精製することで黄色固体の化合物C9(0.17g,収率22%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ): 8.53 (d, J =7.6 Hz, 1H), 8.21 (d, J =8.0 Hz, 1H), 8.15 (d, J =8.0 Hz, 1H), 7.89-7.96 (m,4H), 7.85 (s, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.07-7.66 (m, 22H), 6.95 (d, J =8.0 Hz, 1H), 6.40-6.58 (m, 3H), 6.34 (t, J =8.0 Hz, 2H).
MS (ASAP): 865.58 (M+H+). Calcd for C62H36N6: 864.30
【0105】
(合成例10)化合物C10の合成
合成例1と同様の手法により化合物C10を合成した(収率84%)。
【化40】
【0106】
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ): 8.62 (s,2H), 8.51 (s, 1H), 7.99-7.90 (m, 4H), 7.79-7.71 (m, 6H), 7.69-7.64 (m, 2H), 7.52-7.44 (m, 6H), 7.39-7.35 (m, 4H), 7.21-7.18 (m, 2H), 7.09-7.06 (m, 2H), 6.58-6.50 (m, 3H), 6.41 (t, J = 8.4 Hz, 2H).
MS (ASAP): 867.50 (M+H+). Calcd for C62H34N4O2: 866.27.
【0107】
(合成例11)化合物C11の合成
合成例1と同様の手法により化合物C11を合成した(収率78%)。
【化41】
【0108】
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ): 8.62 (s,2H), 8.51 (s, 1H), 7.96-7.91 (m, 4H), 7.72 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.70-7.64 (m, 2H), 7.46-7.37 (m, 2H), 7.21-7.19 (m, 2H), 7.09-7.06 (m, 2H),
MS (ASAP): 882.21 (M+H+). Calcd for C62H19D15N4O2: 881.36.
【0109】
(合成例12)化合物C12の合成
合成例1と同様の手法により化合物C12を合成した(収率78%)。
【化42】
【0110】
1H NMR (400MHz, DMSO, δ): 9.48 (s,1H), 8.51 (s, 1H), 8.29 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 8.19 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.91 (m J = 8.4 Hz, 4H), 7.84 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 7.45 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 6.73(t, J = 7.2 Hz ,2H), 6.38 (t, J = 7.2 Hz ,3H),
MS (ASAP): 895.35 (M+H+). Calcd for C62H30N4O4:894.23
【0111】
(合成例13)化合物C13の合成
合成例1と同様の手法により化合物C13を合成した(収率64%)。
【化43】
【0112】
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ): 8.82-8.76 (m, 4H), 8.45 (s, 1H), 7.64-7.32 (m, 22H), 7.21 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.08-7.05 (m, 2H), 6.47-6.44 (m, 3H), 6.32 (t, J = 9.2 Hz,2H).
MS (ASAP): 865.27 (M+H+). Calcd for C62H36N6: 864.30
【0113】
(合成例14)化合物C14の合成
合成例1と同様の手法により化合物C14を合成した(収率47%)。
【化44】
【0114】
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ): 8.47 (s, 1H), 8.19-8.10 (m, 4H), 7.68-7.51 (m, 10H), 7.38-7.26 (m, 6H), 7.20-7.14 (m, 2H), 7.06-6.98 (m ,4H), 6.74 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 6.47-6.44 (m, 3H), 6.31 (t, J =7.6 Hz, 2H)..
MS (ASAP): 865.37 (M+H+). Calcd for C62H36N6: 864.30
【0115】
(実施例1~9、比較例1~4)薄膜の作製と評価
石英基板上に真空蒸着法にて、真空度1×10
-3Pa未満の条件にて化合物C1とHost1とを異なる蒸着源から蒸着し、化合物C1の濃度が20重量%である薄膜を100nmの厚さで形成し、実施例1のドープ薄膜とした。
化合物C1の代わりに、化合物C2~C9をそれぞれ用いて、順に実施例2~9の薄膜を得た。また、化合物AとPPFを用いて同様に比較例1の薄膜を得た。なお、本願明細書中の実施例および比較例にて発光材料として用いた各化合物は、使用前に昇華精製をしてから用いた。
得られた各薄膜に300nm励起光を照射したところ、いずれの薄膜についてもフォトルミネッセンスが認められた。発光の過渡減衰曲線から遅延蛍光の寿命(τ
d)を得て、比較例1の寿命をきじゅんとして比較例1に対する相対値を計算した。結果は以下の表に示す通りであった。実施例1~9の遅延蛍光寿命(τ
d)が短いことが確認された。
【表2】
【0116】
(実施例10~14、比較例2)有機エレクトロルミネッセンス素子の作製
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基材上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度1×10-6Paで積層した。まず、ITO上にHATCNを10nmの厚さに形成し、その上にNPDを30nmの厚さに形成した。次いで、その上にTrisPCzを10nmの厚さに形成し、さらにその上にHost1を5nmの厚さに形成した。次に、化合物C1およびHost1をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの発光層を形成した。このとき、化合物C1の濃度は35重量%とした。その上に、SF3TRZを10nmの厚さに形成し、さらにその上にSF3TRZとLiqを異なる蒸着源から共蒸着して30nmの厚さに形成した。この時、SF3TRZ:Liq(重量比)は7:3とした。さらに、Liqを2nmの厚さに形成し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成した。以上の手順により、実施例10の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
化合物C1の代わりに、化合物C2、化合物C3、化合物C4、化合物C6、比較化合物Aをそれぞれ用いて、順に実施例11~14、比較例2の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0117】
(評価)
実施例10の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光について、CIE色度座標のxとyを測定したところ、x=0.26、y=0.57で色度が良好であることが確認された。また、実施例10と比較例2の各有機エレクトロルミネッセンス素子の12.6mA/cm2における発光強度が95%に低下するまでの時間(LT95)を測定して、比較例2のLT95を1としたときの相対値を算出した。結果は以下の表に示す通りであった。実施例10の有機エレクトロルミネッセンス素子は素子寿命(素子耐久性)が大幅に改善されていた。
【0118】
【0119】
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基のカルバゾール-9-イル基に縮合しているヘテロ環が、置換もしくは無置換のフラン環、置換もしくは無置換のチオフェン環、または置換もしくは無置換のピロール環であって、前記フラン環、前記チオフェン環および前記ピロール環にはさらに他の環が縮合していてもよい、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
前記ヘテロ環縮合カルバゾール-9-イル基のカルバゾール-9-イル基に、置換もしくは無置換のフラン環、置換もしくは無置換のチオフェン環、および置換もしくは無置換のピロール環(前記フラン環、前記チオフェン環および前記ピロール環にはさらに他の環が縮合していてもよい)からなる群より選択される2つのヘテロ環が縮合している、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。