(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026383
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】改善された固体状態マグネシウムイオン選択性微小電極並びにそれらの製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
G01N 27/333 20060101AFI20240220BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01N27/333 331C
G01N27/416 351A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211799
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2022510947の分割
【原出願日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】62/888,643
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・チャン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】増加した検出下限を示す電位差測定イオン選択性微小電極における使用のためのマグネシウム感知膜等を提供する。
【解決手段】該マグネシウム感知膜は:三脚型立体化学構造を有するイオノフォア;テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム(KTpCIPB)およびテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム(NaTFPB)から選択される、40mol%~67mol%の範囲内の、イオノフォアに対する親油性ホウ酸塩のモル比をもたらす量で存在する親油性ホウ酸塩;0.5mol%から50mol%の、イオノフォアに対する親油性電解質のモル比をもたらす量で存在する特定の親油性電解質;並びに特定のイオノフォア、親油性ホウ酸塩、及び親油性電解質が配置されているポリマーマトリックスを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプルにおいてイオン化マグネシウムを検出する電位差測定イオン選択性微小電極のためのマグネシウム感知膜であって、該マグネシウム感知膜は:
三脚型立体化学構造を有するイオノフォア;
約50mol%~約100mol%の範囲内の、イオノフォアに対する親油性ホウ酸塩のモル比をもたらす量で存在する親油性ホウ酸塩;
約50mol%より低いか又は約50mol%に等しい、イオノフォアに対する親油性電解質のモル比をもたらす量で存在する親油性電解質[ここで親油性電解質は、式V:
【化1】
により表される];並びに
イオノフォア、親油性ホウ酸塩、及び親油性電解質が配置されているポリマーマトリックス[ここでポリマーマトリックスはポリマー及び可塑剤を含む]
を含む、上記マグネシウム感知膜。
【請求項2】
イオノフォアに対する親油性電解質のモル比は、約15mol%~約45mol%の範囲内である、請求項1に記載のマグネシウム感知膜。
【請求項3】
イオノフォアは、式I~IV:
【化2】
の構造により表されるイオノフォアから選択され、
ここで式IVにおいて、nは約6~約8の範囲内である、請求項1に記載のマグネシウム感知膜。
【請求項4】
ポリマーは、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、及びそれらの組み合わせからなる群
から選択される、請求項1に記載のマグネシウム感知膜。
【請求項5】
膜は、直径約0.5cm未満及び厚さ約100μm未満を有する、請求項1に記載のマグネシウム感知膜。
【請求項6】
親油性ホウ酸塩は、テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム(KTpCIPB)である、請求項1に記載のマグネシウム感知膜。
【請求項7】
生物学的サンプルにおいてイオン化マグネシウムを検出する電位差測定イオン選択性微小電極であって、ここで該電位差測定イオン選択性微小電極は:
三脚型立体化学構造を有するイオノフォア;
約50mol%~約100mol%の範囲内の、イオノフォアに対する親油性ホウ酸塩のモル比をもたらす量で存在する親油性ホウ酸塩;
約50mol%より低いか又は約50mol%に等しい、イオノフォアに対する親油性電解質のモル比をもたらす量で存在する親油性電解質[ここで親油性電解質は、式V:
【化3】
により表される];並びに
イオノフォア、親油性ホウ酸塩、及び親油性電解質が配置されているポリマーマトリックス[ここでポリマーマトリックスはポリマー及び可塑剤を含む]
を含むマグネシウム感知膜を含み;そして
ここで電位差測定イオン選択性微小電極は、約0.1mM未満又は約0.1mMに等しいMg
2+検出下限を有する、上記電位差測定イオン選択性微小電極。
【請求項8】
イオノフォアに対する親油性電解質のモル比は、約15mol%~約45mol%の範囲内である、請求項7に記載の電位差測定イオン選択性微小電極。
【請求項9】
イオノフォアは、式I~IV:
【化4】
の構造により表されるイオノフォアから選択され、
ここで式IVにおいて、nは約6~約8の範囲内である、
請求項7に記載の電位差測定イオン選択性微小電極。
【請求項10】
ポリマーは、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の電位差測定イオン選択性微小電極。
【請求項11】
膜は直径約0.5cm未満及び厚さ約100μm未満を有する、請求項7に記載の電位差測定イオン選択性微小電極。
【請求項12】
親油性ホウ酸塩は、テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム(KTpCIPB)である、請求項7に記載の電位差測定イオン選択性微小電極。
【請求項13】
生物学的サンプル中に存在するマグネシウムイオンのレベルを測定する方法であって、該方法は:
電位差測定イオン選択性微小電極を生物学的サンプルと接触させる工程[ここで、電位差測定イオン選択性微小電極は生物学的サンプル中のイオン化マグネシウムを検出し、そして該電位差測定イオン選択性微小電極は、
三脚型立体化学構造を有するイオノフォア;
約50mol%~約100mol%の範囲内の、イオノフォアに対する親油性ホウ酸塩のモル比をもたらす量で存在する親油性ホウ酸塩;
約50mol%より低いか又は約50mol%に等しい、イオノフォアに対する親油性電解質のモル比をもたらす量で存在する親油性電解質[ここで親油性電解質は、式V:
【化5】
により表される];並びに
イオノフォア、親油性ホウ酸塩、及び親油性電解質が配置されているポリマーマトリックス[ここでポリマーマトリックスはポリマー及び可塑剤を含む]
を含むマグネシウム感知膜を含む];及び
電位差測定イオン選択性微小電極を使用して生物学的サンプル中のマグネシウムイオンのレベルを測定する工程
を含む、上記方法。
【請求項14】
イオノフォアに対する親油性電解質のモル比は、約15mol%~約45mol%の範囲内である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
イオノフォアは、式I~IV:
【化6】
の構造により表されるイオノフォアから選択され、
ここで式IVにおいて、nは約6~約8の範囲内である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーは、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
膜は直径約0.5cm未満及び厚さ約100μm未満を有する、請求項13に記載の方
法。
【請求項18】
親油性ホウ酸塩は、テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム(KTpCIPB)である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
電位差測定イオン選択性電極を、界面活性剤を含む試薬と接触させる工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
界面活性剤の濃度は約100mg/L未満であり、そして界面活性剤は、式IX、X、又はXI:
【化7】
のうち1つの構造により表されるポリ(エチレンオキシド)界面活性剤であり、
ここで式IXにおいて、nは約9~約10の範囲内であり;そして
式XIにおいて、nは約100である、
請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/
参照の記述による援用
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2019年8月19日に出願された米国仮出願第62/888,643号の利益を主張する。上で参照された特許/特許出願の内容全体が、参照により本明細書に明示的に加入される。
【0002】
連邦政府資金による研究又は開発に関する記述
該当なし。
【背景技術】
【0003】
背景
生物学的サンプル中の様々な分析物の存在及び量を決定するためのイオン選択性電極(ISE)の使用は、有用な診断技術となった。実際に、ISEは、とりわけマグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びクロリドのような分析物を検出するために使用されてきた。これらのISEのいくつかは、多数の分析物の同時分析のための臨床診断機器内にしばしば収納されている。
【0004】
感知膜に存在する親油性ホウ酸塩の濃度が、電位差測定選択性電極において特にマグネシウムイオン(Mg2+)選択性電極について、重要な役割を果たすことが知られている。感知膜に存在するボラートのレベルは、カチオン電荷数、中性イオノフォアとの錯体化学量論、及び応答カイネティクスに基づいて、Ca2+、Na+、及びK+のような干渉カチオンに対するMg2+の選択係数を変化させる。Mg2+ ISEについては、ボラート-対-イオノフォアモル比155mol%は、最良の選択性パターンをもたらす最適化された定式と考えられてきた。一般的に使用される親油性ホウ酸塩は、テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム(KTpClPB)又はテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム(NaTFPB)である。
【0005】
膜インピーダンスは、様々な理由で、低い検出下限及び固体状態Mg2+マイクロセンサーの安定な応答を得るために非常に重要である。第一に、固体状態iMgマイクロセンサーは血中Mg2+を試験する際に使用される。低いMg2+濃度(<約0.2mM)を有する血液サンプルにおいて、センサーが様々なMg2+濃度の血液サンプル間で応答を差別化することは困難である。換言すると、Mgマイクロセンサーは、低マグネシウム血症サンプルを試験する際に、特にMg2+濃度が0.2mMより低い場合に困難であり得る。例えば、基礎を置くiMg分析機(Nova Stat Profile Critical Care Xpress (CCX), Nova Biomedical Corporation, Waltham, MA)は、Mg2+が<0.2mMである低Mg2+血液サンプルの試験には消極的である。
【0006】
第二に、Mgイオノフォア(ETH5506、ETH3832、ETH7025など)は、他のイオンの「強い」イオノフォア(例えば、Ca2+に対するETH1001、バリノマイシン-K+、ナトリウムイオノフォアX-Na+など)と比較した場合、標的イオンに対する比較的「弱い」結合能を有する。高い膜インピーダンスは、低Mg2+濃度を有するサンプルにおけるMgセンサーの感度を減少させる。このようにして、Mg2の検出下
限が増加する。
【0007】
第三に、低Mg2+サンプルにおけるマイクロセンサーの応答は、「ラン精度内」及び「総合精度」に関して不安定である。これは、従来の固体状態iMgセンサーよりもかなり小さいサイズを有するマイクロセンサーの高いインピーダンスにより引き起こされる。
【0008】
第四に、界面活性剤(Brij700)を含有するCal試薬を用いるiMgセンサーについて、被覆膜配合(ETH5506のイオノフォア)は、無界面活性剤Cal試薬における理想的なiMg配合と比較して、半分の量の親油性ホウ酸塩(KTpCIPB)で最適化される。これにより、iMgセンサーがiMg応答に対する界面活性剤の影響に対して正確に動作することが可能となる。しかし、膜に存在するボラートの量の減少は、特にマイクロセンサーについて非常に高いインピーダンス(>ギガオーム)をもたらし、そしてこれによりiMgマイクロセンサーは血液サンプル中に存在するMg2+分析物に対して非応答性となる。
【0009】
以前に、カチオンISE膜インピーダンスは、KTpCIPBのようなアニオン性親油性ホウ酸塩を加えることにより効果的に低下された。現在のISE膜配合(Na、K、Ca、及びpH)は、親油性アニオン塩含有量を最適化し、これは速い応答カイネティクス及び迅速なウェットアップ(wetup)手順を確実にする。iMg ISEについて、親油性ホウ酸塩含有量は、干渉するカチオンに対する選択性パターン(Ca2+、K+、及
びNa+に対してMg2+)を調整するように機能する。血液検査において使用されるiM
gセンサーについて、iMgセンサーにおいて親油性ホウ酸塩を1つだけ使用する場合に問題に直面する: (a)ボラートの高すぎる含有量は、シグナル応答に対する界面活性剤干渉を生じる;及び(b)低すぎる含有量のiMgセンサーは、主要な干渉カチオンであるCa2+に対する選択性を喪失する。最適なボラート-対-イオノフォア比は、血液分析機に存在するiMgセンサーのために維持されなければならない。しかし、このような最適比でも、固体iMgマイクロセンサーは低Mg2+血液サンプル(<0.2mM)においてなお困難に直面する。
【0010】
ETH500(テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸テトラドデシルアンモニウム塩、Mw=1148)として知られる親油性電解質は、応答カイネティクスを改善するために従来のISEマクロセンサー(すなわち、Na、K、Ca、pH及びMg)において以前に使用された(例えば、Leginら(非特許文献1);Spichigerら(非特許文献2);Spichiger(非特許文献3);Eugsterら(非特許文献4);及びEugsterら(非特許文献5)を参照のこと)。しかし、iMg固体状態センサーの検出限界を改善すること、又はマイクロセンサーにおけるETH500の使用についての研究は報告されていない。さらに、従来のISEにおいて利用されるETH500の量は、実質的に高く(すなわち、50mol%より高い)、これは膜の誘電体誘電率を変化させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Legin et al. Electrochimica Acta (2004) 49:5203-5207
【非特許文献2】Spichiger et al. J Anal Chem (1991) 341:727-731
【非特許文献3】Spichiger、Electroanalysis (1993) 5:739-745
【非特許文献4】Eugster et al. Clin Chem (1993) 39:855-859
【非特許文献5】Eugster et al. Anal Chem (1993) 65:689-695
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、従来技術の不利を克服する電位差測定イオン選択性微小電極のための新規な改善されたマグネシウム感知膜組成が望まれる。本開示は、このような膜及びそれを含有する微小電極、さらにはそれらに関連する組成物、キット、デバイス、及び方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面のいくつかの概要説明
【
図1】
図1は、iMgマイクロセンサー膜における親油性電解質(ETH500)の添加の膜インピーダンスに対する効果をグラフで示す。
【
図2】
図2は、0.5mM Mg
2+~0.1mM Mg
2+の溶液系における0.0質量% ETH500を含むiMgマイクロセンサーの応答回復をグラフで示す。
【
図3】
図3は、0.5mM Mg
2+~0.1mM Mg
2+の溶液系における0.5質量% ETH500を含むiMgマイクロセンサーの応答回復をグラフで示す。
【
図4】
図4は、0.5mM Mg
2+~0.1mM Mg
2+の溶液系における1.5質量% ETH500を含むiMgマイクロセンサーの応答回復をグラフで示す。
【
図5】
図5は、0.0質量% ETH500を含むiMgマイクロセンサーのAQC安定性をグラフで示す。
【
図6】
図6は、0.5質量% ETH500を含むiMgマイクロセンサーのAQC安定性をグラフで示す。
【
図7】
図7は、1.5質量% ETH500を含むiMgマイクロセンサーのAQC安定性をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
例となる図面、実験、結果、及び検査法を用いて本発明の概念の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、当然のことながら、本発明の概念は、その出願において、以下の記載において述べられるか又は図面、実験、及び/もしくは結果において説明される構成要素の構成及び配置の詳細に限定されない。本発明の概念は、他の実施形態が可能であり、又は様々なやり方で実施もしくは実行されることが可能である。そのようにして、本明細書において使用される言語は、最も広い可能な範囲及び意味を与えられることを意図され;そして実施形態は、例示的であり、包括的ではないことを意図される。また、当然のことながら、本明細書において使用される表現及び用語は、説明の目的のためであり、限定と解釈されるべきではない。
【0015】
本明細書において別の定義がなければ、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈により別のやり方が必要とされなければ、単数形の用語は複数を含むものとし、そして複数形の用語は単数を含むものとする。酵素反応及び精製技術は、製造者の仕様書に従って、又は当該分野で一般的に達成されているように、又は本明細書において記載されるように行われる。前述の技術及び手順は、一般に当該分野で周知の従来の方法に従って、そして本明細書全体を通して引用されそして考察される様々な一般的な参考文献及びより詳細な参考文献に記載されるように行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、並びに医薬及び製薬化学の検査法及び技術に関連して利用される命名法は、当該分野において周知でありかつ一般的に使用されるものである。
【0016】
明細書において言及される全ての特許、公開特許出願、及び非特許刊行物は、本開示が関連する分野の当業者のレベルを示す。本出願の一部において参照される全ての特許、公開特許出願、及び非特許刊行物は、各個々の特許又は刊行物が具体的かつ個別に参照によ
り加入されると示される程度と同じ程度まで、それら全体として参照により本明細書に明示的に加入される。
【0017】
本明細書に開示されそして特許請求される組成物及び/又は方法は全て、本開示を考慮して過度な実験をすることなく製造され実行され得る。本開示の組成物及び方法は、好ましい実施形態に関して記載されてきたが、当業者には当然のことながら、本開示の概念、精神、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物及び/又は方法並びに該方法の工程又は一連の工程において変形が適用され得る。当業者に明らかな全てのこのような類似した置換及び改変は、添付の特許請求の範囲により定義される発明の概念の精神、範囲及び概念内とみなされる。
【0018】
本開示に従って利用されるように、以下の用語は、別の指示がなければ、以下の意味を有すると理解されるものとする:
特許請求の範囲及び/又は明細書において用語「含むこと」に関連して使用される場合の語「a」又は「an」の使用は「1つ」を意味し得るが、「1つ又はそれ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つより多く」の意味とも一致する。単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別のことを示していなければ、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「化合物(a compound)」の言及は、1つもしくはそれ以上、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、4つもしくはそれ以上又はより大きな数の化合物を指し得る。用語「複数」は「2つ又はそれ以上」を指す。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、選択肢のみを指すか又は選択肢が相互に排他的であると明確に示されていなけれれば、「及び/又は」を意味するために使用されるが、開示は、選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。本出願全体を通して、用語「約」は、値がデバイスに固有の誤差変動、その値を決定するために使用されている方法、又は試験対象間に存在する変動を含むということを示すために使用される。例えば、限定としてではないが、用語「約」が利用される場合、指定された値は、特定された値から±20%又は±10%又は±5%又は±1%又は±0.1%だけ変動し得、このような変動は開示された方法を実行するために適切なものであり、そして当業者に理解される。用語「少なくとも1つ」の使用は、1だけでなく1より大きい任意の量を含むと理解され、これには、限定されないが、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などが含まれる。用語「少なくとも1つ」は、それが付けられた用語によって100まで又は100もしくはそれ以上まで拡大され得る;さらに、より大きな限界も満足な結果を生じ得るので、100/1000の量は限定とはみなされるべきではない。さらに、用語「X、Y、及びZの少なくとも1つ」は、Xのみ、Yのみ、及びZのみ、さらにはX、Y、及びZの任意の組み合わせを含むと理解されるだろう。序数用語(すなわち、「第一」、「第二」、「第三」、「第四」など)の使用は、単に2つ又はそれ以上の項目間の差別化の目的のためのみのものであり、例えば、別の項目に対する1つの項目の順序もしくは順番もしくは重要性又は加える順番を示唆することは意図されない。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるように、用語「含むこと(comprising)」(及び含むことの任意の形態、例えば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、「有すること」(及び有するの任意の形態、例えば「有する(have)」及び「有する(has)」)、「含むこと(including)」(及び含むことの任意の形態、例えば「含む(includes)」及び「含む(include)」)又は「含有すること」(及び含有することの任意の形態、例えば「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)は、包括的又はオープンエンドであり、追加の、記載されていない要素又は方法工程を排除しない。
【0020】
本明細書で使用されるように用語「又はそれらの組み合わせ」は、その用語の前に列挙された項目の全ての並べ替え及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、又はそれら
の組み合わせ」は:A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、そして特定の状況で順序が重要な場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABの少なくとも1つを含むことを意図される。この例を用いて続けて、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような1つ又はそれ以上の項目又は用語の反復を含有する組み合わせは明示的に含まれる。当業者には当然のことながら、典型的に、文脈からそうではないことが明らかでなければ、任意の組み合わせにおける項目又は用語の数に制限はない。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「実質的に」は、実質的に記載される事象もしくは状況が完全に生じるか、又は実質的に記載される事象もしくは状況がかなりな程度まで生じることを意味する。例えば、用語「実質的に」は、実質的に記載される事象又は状況が、その時間の少なくとも90%で又はその時間の少なくとも95%で、又はその時間の少なくとも98%で生じる。
【0022】
本明細書で使用されるように、句「と結合した」は、互いに対する2つの部分の直接的な結合だけでなく、互いに対する2つの部分の間接的な結合の両方を含む。結合の非限定的な例としては、直接結合によるか又はスペーサー基を介した別の部分へのある部分の共有結合、直接的又は部分に結合した特異的結合対メンバーにより別の部分へのある部分の非共有結合、例えばある部分を別の部分に溶解することにより又は合成により別の部分にある部分を組み込むこと、及びある部分を別の部分にコーティングすることが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用されるように用語「精製された」は、少なくとも1桁分の精製が出発物質又は天然材料と比較して達成されることを意味し、例えば、限定としてではないが、出発物質又は天然材料の2桁、3桁、4桁又は5桁の精製が達成される。従って、本明細書で使用されるように用語「精製された」は、物質が必ずしも100%精製されることを意味せず、従って上記用語は、精製された組成物中に存在する他の物質の存在を排除しない。
【0024】
用語「アナログ」及び「誘導体」は、本明細書において交換可能に使用され、そしてその構造中に所定の化合物と同じ基本炭素骨格及び炭素官能基を含むが、それらの1つ又はそれ以上の置換も含有し得る物質を指す。本明細書において使用されるように用語「置換」は、化合物上の少なくとも1つの置換基の残基Rでの置換を指すと理解される。特定の非限定的な実施形態において、Rとしては、H、ヒドロキシ、チオール、フルオリド、クロリド、ブロミド又はヨージドから選択されるハロゲン化物、以下のうちの選択された1つのC1-C4化合物が挙げられ得る:場合により置換された、直鎖、分枝又は環式アルキル、及び直鎖、分枝又は環式アルケニル、ここで、任意の置換基は、1つ又はそれ以上のアルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、場合により置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、及びアリールヘテロシクロアルキルから選択され、これらは各々場合により置換され、ここで任意の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、場合により置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、及びアリールヘテロシクロアルキル、フェニル、シアノ、ヒドロキシ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアの、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、-NH(アルキル)、-NH(シクロアルキル)2、カルボキシ及び-C(O))-アルキルの1つ又はそれ以上から選択される。
【0025】
本明細書で使用されるように用語「サンプル」は、本開示に従って利用され得る任意の
種類の生物学的サンプルを含むと理解される。特定の実施形態において、サンプルは、任意の流体サンプル及び/又は流体であることが可能なサンプルであり得る(例えば、流体物質と混合された生物学的サンプル)。利用され得る生物学的サンプルの例としては、限定されないが、全血又はその任意の部分(すなわち、血漿又は血清)、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、手術ドレーン液、皮膚、間質液、涙液、粘液、尿、スワブ、組み合わせなどが挙げられる。本開示は生物学的サンプルを対象とするが、本明細書に開示される概念が、マグネシウムの濃度が決定され得る任意のサンプルに適用され得ることは、当業者に理解され、そのため、本開示の範囲は生物学的サンプルに限定されないということに留意すべきである。
【0026】
本明細書で使用されるように用語「ウェットアップ」は、流体分析機におけるセンサーの設置から、安定したシグナルが較正試薬から得られる時点までの水和過程を指すと理解されるだろう。
【0027】
単独又は別の用語と組み合わせて(限定することなく、例えば、「品質制御回復」、「回復期」及び「回復上昇」)本明細書で使用される用語「回復」は、割り当てられた値又は参照値と比較して分析プロセスの収率を意味すると理解される。
【0028】
本明細書で使用されるように回路は、アナログ及び/もしくはデジタルコンポーネント、又は1つもしくはそれ以上の適切にプログラミングされたプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)並びに関連するハードウェア及びソフトウェア、又はハードウェアに組み込まれた論理回路であり得る。また、「コンポーネント」は1つ又はそれ以上の機能を実行し得る。用語「コンポーネント」は、ハードウェア、例えばプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ、及び/又は同様のものを含み得る。
【0029】
ソフトウェアは、1つ又はそれ以上のコンポーネントにより実行された場合、コンポーネントに特定の機能を実行させる1つ又はそれ以上のコンピューターで読み取り可能な指示を含み得る。当然のことながら、本明細書に記載されるアルゴリズムは、1つ又はそれ以上の非一時的メモリ上に記憶され得る。例となる非一時的メモリとしては、ランダム・アクセス・メモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ、及び/又は同様のものが挙げられ得る。このような非一時的メモリは、電気ベース、光学ベース、及び/又は同様のものであり得る。
【0030】
さらに当然のことながら、本明細書で使用されるように用語「ユーザー」はヒトに限定されず、そして例えば、コンピューター、サーバー、ウェブサイト、プロセッサ、ネットワークインターフェース、ヒト、ユーザー端末、仮想コンピューター、それらの組み合わせなどを含み得る。
【0031】
本明細書で使用されるように用語「較正情報」は、初期三点較正(すなわち、「フルキャリブレーション」)において決定されたNernstian式又はNicolsky-Eisenman式の勾配、オフセット、及び/又は選択性係数の1つ又はそれ以上を指し得る。
【0032】
本明細書で使用されるように用語「較正論理」は、1つ又はそれ以上のイオン選択性電極により測定されたデータを解釈するために制御システム内のプロセッサにより使用されるプログラム論理を指す。特に、用語「較正論理」は、初期三点較正(すなわち、「フルキャリブレーション」)のためにマグネシウムイオン選択性電極からのデータを解釈するためにプロセッサにより使用される制御システムのプログラム論理に関する。
【0033】
本明細書で使用されるように用語「再較正情報」は、初期三点較正後の任意の事後三点較正、二点較正、又は一点較正に由来する情報を使用するNernstian式又はNicolsky-Eisenman式を使用して決定された勾配、オフセット、及び/又は選択性係数の1つ又はそれ以上を指し得る。
【0034】
本明細書で使用されるように用語「再較正論理」はまた、1つ又はそれ以上のイオン選択性電極により測定されたデータを解釈するために制御システム内でプロセッサにより使用されるプログラム論理を指す。特に、用語「再較正論理」は、初期三点較正後の追加の三点較正、一点較正、及び二点較正(本明細書でさらに定義されるとおり)のためのマグネシウムイオン選択性電極からのデータを解釈するためにプロセッサにより使用される制御システムのプログラム論理に関する。
【0035】
現在開示され、かつ/又は特許請求される発明の概念をここで検討すると、微小電極のための新規でかつ改善されたマグネシウム感知膜が提供され、これは既存のマグネシウム感知膜よりも改善された安定性を示す。この新規なマグネシウム感知膜は、中央検査室及び/又はPOC用途に適合可能な新規な電位差測定イオン選択性微小電極の開発において使用され得る。
【0036】
本開示の特定の実施形態は、生物学的サンプル中のイオン化マグネシウムを検出する電位差測定イオン選択性微小電極のためのマグネシウム感知膜に関する。マグネシウム感知膜は、従来の膜、すなわち固体状態平面膜であってよい。マグネシウム感知膜は、三脚型立体化学構造を有するイオノフォア、親油性ホウ酸塩、親油性電解質、並びにイオノフォア、親油性ホウ酸塩、及び親油性電解質が配置されているポリマーマトリックスを含む。ポリマーマトリックスはポリマー及び可塑剤を含む。
【0037】
親油性電解質は、約50mol%より低いか又は約50mol%に等しい、イオノフォアに対する親油性電解質のモル比をもたらす量で存在する。利用され得る親油性電解質:イオノフォア比の非限定的な例としては、約49mol%、約48mol%、約47mol%、約46mol%、約45mol%、約44mol%、約43mol%、約42mol%、約41mol%、約40mol%、約39mol%、約38mol%、約37mol%、約36mol%、約35mol%、約34mol%、約33mol%、約32mol%、約31mol%、約30mol%、約29mol%、約28mol%、約27mol%、約26mol%、約25mol%、約24mol%、約23mol%、約22mol%、約21mol%、約20mol%、約19mol%、約18mol%、約17mol%、約16mol%、約15mol%、約14mol%、約13mol%、約12mol%、約11mol%、約10mol%、約9mol%、約8mol%、約7mol%、約6mol%、約5mol%、約4mol%、約3mol%、約2mol%、約1mol%、約0.5mol%などが挙げられる。さらに、親油性電解質:イオノフォア比は、上に列挙された値のいずれか2つの間の範囲内であり得る;例えば(限定としてではなく)、親油性電解質:イオノフォア比は、約0.5mol%~約49mol%の範囲、又は約5mol%~約48mol%の範囲、又は約15mol%~約45mol%の範囲、又は同様の範囲内である。
【0038】
公知であるか又は公知でなくとも当該技術分野内で企図され、かつ本開示に従って機能することができる三脚型立体化学構造を有するいずれのイオノフォアも本開示の範囲内である。一実施形態において、イオノフォアは少なくとも1つのマロン酸イミド官能基を有し得る。本開示に従って利用され得るイオノフォアの非限定的な例としては、式I~IV:
【化1】
の構造のいずれかにより表されるイオノフォアが挙げられる。
【0039】
式IVにおいて、nは約6~約8の範囲内である。式I~IIIの構造のいずれかにより表されるイオノフォアは、それぞれ製品記号表示ETH5506、ETH5504、ETH3832により当該分野で知られている。式IVにおいてnが6である場合、イオノフォアは製品記号表示ETH5282により知られる;式IVにおいてnが8である場合、イオノフォアは製品記号表示ETH7025により知られる。「ETH」は、スイス連
邦工科大学(Swiss Federal Institute of Technology)(Eidgenoesissche Technische Hochschule)の独語版を示す。
【0040】
(非限定的だが)特定の実施形態において、イオノフォアは式Iの構造により表される(すなわち、ETH5506)。
【0041】
公知であるか又は公知でなくとも当該技術範囲内で企図され、かつ本明細書に記載されるように機能することができる任意の親油性ホウ酸塩は、本開示に従って利用され得る。本明細書において利用され得る親油性ホウ酸塩の非限定的な例としては、テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム(KTpClPB)及びテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム(NaTFPB)が挙げられる。
【0042】
さらに、親油性ホウ酸塩は、膜が本開示に従って機能することを可能にする任意の濃度で存在し得る。例えば(限定としてではなく)、親油性ホウ酸酸塩は、イオノフォアに対する親油性ホウ酸塩のモル比約40mol%、約41mol%、約42mol%、約43mol%、約44mol%、約45mol%、約46mol%、約47mol%、約48mol%、約49mol%、約50mol%、約51mol%、約52mol%、約53mol%、約54mol%、約55mol%、約56mol%、約57mol%、約58mol%、約59mol%、約60mol%、約61mol%、約62mol%、約63mol%、約64mol%、約65mol%、約66mol%、約67mol%、約68mol%、約69mol%、約70mol%、約71mol%、約72mol%、約73mol%、約74mol%、約75mol%、約76mol%、約77mol%、約78mol%、約79mol%、約80mol%、約81mol%、約82mol%、約83mol%、約84mol%、約85mol%、約86mol%、約87mol%、約88mol%、約89mol%、約90mol%、約91mol%、約92mol%、約93mol%、約94mol%、約95mol%、約96mol%、約97mol%、約98mol%、約99mol%、又は約100mol%をもたらす量、さらには上記の値のいずれか2つにより形成される範囲(又は上記値の2つの間の任意の値)、例えば(限定されないが)約40mol%~約100mol%の範囲、約50mol%~約100mol%の範囲などで存在し得る。
【0043】
公知であるか又は公知でなくとも当該技術範囲内で企図され、かつ本明細書に記載されるように機能することができる任意の親油性電解質は、本開示に従って利用され得る。本明細書において利用され得る親油性電解質の非限定的な一例は、式V:
【化2】
により表される構造を有し得る。
【0044】
公知であるか又は公知でなくとも当該技術範囲内で企図され、かつ本明細書に記載され
るように機能することができる任意のポリマーは、本開示に従ってポリマーマトリックスの一部として利用され得る。本明細書において利用され得るポリマーの非限定的な例としては、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
公知であるか又は公知でなくとも当該技術範囲内で企図され、かつ本明細書に記載されるように機能することができる任意の可塑剤は、本開示に従ってポリマーマトリックスの一部として利用され得る。本明細書において利用され得る可塑剤の非限定的な例としては、以下の式VI~VIII:
【化3】
により表されるものが挙げられる。
【0046】
膜は、それらから形成される電位差測定イオン選択性微小電極が本開示に従って機能することを可能にする任意の寸法で提供され得る。特定の非限定的な実施形態において、電位差測定イオン選択性微小電極のための膜は、典型的には、0.5cm未満の直径及び約100μm未満の厚さを有する。さらに、微小電極のための膜は、内部電解質溶液を有していなくても、内部固体状態電解質溶液をナノリットル体積まで(約3μm未満の厚さで)有していてもよい。比較して、微小電極のための膜は、約1mLより多い内部電解質塩水溶液では、約1.0cmより大きい直径及び約100μm~約150μmの範囲内の厚さを有するだろう。
【0047】
本開示の別の実施形態は、生物学的サンプル中のイオン化マグネシウムを検出する電位差測定イオン選択性電極に関する。電位差測定イオン選択性電極は、本明細書で上で記載されたか又はそうでなければ企図されるマグネシウム感知膜のいずれかを含む。電位差測定イオン選択性電極は、いずれの現在のiMgセンサー(その検出下限は0.2mMより大きい)よりも有意に良好な検出下限を有する。例えば(しかし限定としてではなく)、電位差測定イオン選択性微小電極は、約0.1mMより低いか又は約0.1mMに等しいMg2+検出下限を有し得る。
【0048】
本開示の別の実施形態は、生物学的サンプル中に存在するマグネシウムイオンのレベルを測定する方法に関する。該方法において、記載されるか又は記載されていなければ企図される電位差測定イオン選択性電極はいずれも、生物学的サンプルと接触され、そして生物学的サンプル中に存在するマグネシウムイオンのレベルが、電位差測定イオン選択性電極を使用して測定される。
【0049】
該方法は、電位差測定イオン選択性電極を、ポリ(エチレンオキシド)界面活性剤を含む試薬と接触させる工程を更に含み得る。ポリ(エチレンオキシド)界面活性剤は、界面活性剤及び電位差測定イオン選択性電極が本開示に従って機能することを可能にする任意の濃度で利用され得る。本開示の範囲内にあるポリ(エチレンオキシド)界面活性剤濃度の非限定的な例は、約100mg/L未満である。
【0050】
公知であるか又は公知でなければ当該技術内で企図され、かつ本明細書に記載されるように機能することができる任意のポリ(エチレンオキシド)界面活性剤が、本開示に従って利用され得る。本開示に従って利用され得るポリ(エチレンオキシド)界面活性剤の非限定的な例は、式IX~XI:
【化4】
の構造により表される。
【0051】
式IXにおいて、nは約9から約10の範囲内であり;式XIにおいて、nは約100である。式IXの構造により表される界面活性剤の非限定的な一例(例えば、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)は、商品名TRITONTM X-100(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO)で販売される。式Xの構造により表される界面活性剤の非限定的な一例(例えば、ポリエチレン23ラウリルエーテル)は、製品記号表示Brij-35により当該分野で知られている。式XI(式中、nは約10
0である)の構造により表される界面活性剤の非限定的な例は、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル非イオン性界面活性剤であり、これは製品記号表示Brij-700により当該分野で知られている(CAS番号9005-00-9)。式XIの構造により表される界面活性剤の特定の非限定的な例は、米国特許第8,496,900号(2013年7月30日にZhangらに発行された)において開示される。
【0052】
本開示のさらなる別の実施形態は、本明細書において記載されるか又は記載されていなければ企図される膜、微小電極及び/又は試薬のいずれか1つ又はそれ以上を含有するキットを含む。限定としてではないが、例えば、キットは、本明細書に記載されるマグネシウム感知膜のいずれか及び/又は該膜を含有する電位差測定イオン選択性電極のいずれかを含み得る。さらに、キットは、本明細書において記載されるか又は記載されていなければ企図される界面活性剤を含む1つ又はそれ以上の試薬を更に含み得る。あるいは(かつ/又はそれらに加えて)、該試薬は、1つもしくはそれ以上の較正試薬、1つもしくはそれ以上の洗浄試薬、又は1つもしくはそれ以上の品質管理試薬、又は上記の任意の組み合わせであり得る。
【0053】
さらに、キットは、本明細書において記載されるか又は記載されていなければ企図される特定の方法のいずれかを実行するための他の試薬をさらに含有してもよい。これらのさらなる試薬の性質は特定のアッセイ形式に依存し、そしてそれらの同定は十分に当業者の技術範囲内である。
【0054】
構成要素/試薬は、それぞれキットの別個の容器/区画に配置され得るか、又は様々な構成要素/試薬は、構成要素/試薬の競合する性質及び/又は構成要素/試薬の安定性に依存して、キットの1つもしくはそれ以上の容器/区画においいて組み合わされ得る。キットは、アッセイを実行するための他の別個に包装された試薬をさらに含む場合がある。キットにおける様々な構成要素/試薬の相対量は、アッセイ方法の間に起こることが必要な反応を実質的に最適化する構成要素/試薬の濃度を生じるために、そしてさらにアッセイの安定性/感度を実質的に最適化するために、広く変動し得る。ポジティブ及び/又はネガティブコントロールは、キット内に含まれ得る。キットは、キットを使用する方法を説明する一組の書面による指示書を更に含み得る。例えば、限定としてではないが、キットは、電位差測定イオン選択性電極のリンス、較正、及び/又は操作のための指示書をさらに含み得る。この性質のキットは、本明細書に記載されるか又は記載されなければ企図される方法のいずれかにおいて使用され得る。
【実施例0055】
実施例
本明細書以下において実施例が提供される。しかし、本開示は、その出願において、本明細書以下において開示される特定の実験、結果、及び検査手順に限定されないと理解されるべきである。むしろ、実施例は、単に様々な実施形態のうちの1つとして提供されるものであり、そして包括的ではなく例示的であることを意図される。
【0056】
この実施例において、イオノフォアとしてETH5506を用いたiMgの固体状態マイクロセンサーが製造され、ここで被覆膜は、イオノフォアETH5506 15mol%~45mol%の範囲内で親油性電解質ETH500(テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸テトラドデシルアンモニウム塩、Mw=1148の親油性添加剤)をドープされた。バルク感知膜の誘電率特徴(誘電特徴)は増加し、インピーダンスは減少した;従って、主要な干渉カチオンCa2+に対する選択性は改善され、検出限界は<0.1mMに低下した;この検出限界は、基礎を置くNova CCX iMgセンサー(>0.2mM)よりも有意に良好である。さらに、本明細書に記載されるiMgマイクロセンサーは、ETH500を添加することによりより安定な回復を示した。
【0057】
ETH500が50mol%を超えて添加される場合、iMg感知膜の誘電率は、イオノフォアと標的イオンとの間の錯体形成プロセスではなくむしろイオン交換プロセスにより影響を受ける傾向があり、その結果、一価カチオン干渉はより影響が大きくなった(例えば、Na+干渉)。
【0058】
LOQ Mg
2+
を改善するためのiMgマイクロセンサーにおけるETH500
iMgマイクロセンサーを以下のように製造した。被覆膜を、ETH5506ベースのiMg被覆膜カクテルを使用して製造した。膜厚さは70~100マイクロメートルであり、そしてマイクロセンサー直径は200マイクロメートルであった。内部電解質溶液は、メトセルベースの調剤液中40mM MgCI2であり、そして乾燥されたIE厚さは
<3マイクロメートルであった。
【0059】
表1及び
図1は、iMgマイクロセンサー膜へのETH500の添加が、膜インピーダンスを>250Mオームから<20Mオームに有意に減少させたということを明確に実証した。
【0060】
【0061】
図2~4及び表2は、0.5mM Mg
2+から0.1mM Mg
2+の溶液系におけるETH500 0.0質量%、0.5質量%、及び1.5質量%を用いたiMgマイクロセンサーの応答回復を示す。
【0062】
【0063】
3つのレベルの自動QC溶液におけるiMgマイクロセンサーの応答安定性
3つのセンサー(ETH500:0%、0.5%、及び1.5%)を同じセンサーモジュール(RP Cooxモジュール)で組み立てた。AQCにおける標的Mg2+濃度は以下のとおりであった:AQC1、0.9mM Mg2+;AQC2、0.6mM Mg2+;及びAQC3、0.3mM Mg2+。データのシステム番号:SN31467。利用した較正試薬は、RAPIDPoint 500(RP500)血液ガス分析機(Siemens Healthcare Diagnostics、Inc.、Tarrytown、NY)での使用のために開発されたものであった。
【0064】
様々なETH500質量%を有するiMgマイクロセンサーのAQC性能:ETH500を含有しないiMgマイクロセンサー(
図5)は、2つの異なる濃度のETH500を有するiMgマイクロセンサーと比較した場合、より低い安定性を有した(
図6及び7)。さらに、ETH500を含有しないiMgマイクロセンサー(
図5)は、低いMg
2+ AQC(AQC3)に対してポジティブに偏った回復を示した。ETH500を添加すると(
図6及び7)、iMgマイクロセンサーは低Mg
2+ AQC(AQC3)においてかなり減少した偏りを示した。
【0065】
考察
本開示は、血液分析機のためのiMgマイクロセンサーにおいてETH500を導入した最初のものであり、ここでiMgマイクロセンサーは、iMg応答に影響を与える界面活性剤を克服するために親油性ホウ酸塩(例えば、限定されないが、KTpCIPB)に加えて最適な含有量の親油性電解質(ETH500)を含有する。
【0066】
本明細書の上で記載されるように構築された固体状態iMgマイクロセンサーを使用して、≦0.1mMのレベルで低いMg2+濃度を試験し、これは、従来のiMgセンサーよりも4週間にわたって(研究開発フェーズのiMg ISE;Siemens Healthcare Diagnostics、Inc.、Tarrytown、NY)、及びNOVA CCXの基礎を置くiMgセンサー(>0.2mM)よりも有意に良好である。さらに、本明細書に記載されるiMgマイクロセンサーは、ETH500を添加したこ
とによりより安定な回復を示した。
【0067】
ETH500は、応答カイネティクスを改善するために従来のISE(すなわち、Na、K、Ca、pH、及びMg)の研究において以前に報告されたが、iMg固体状態センサーの検出限界を改善することについて報告された研究はない。さらに、従来のISEにおいて利用されるETH500の量は、現在開示されるiMgマイクロセンサーにおいて利用される量よりも実質的に高い。
【0068】
ETH5506は、Mg2+についての好ましい選択的イオノフォアとして使用されてきた。しかし、これは他のカチオンイオノフォア-カチオン対(ETH1001-対-Ca2+、NaX-対-Na+、バリノマイシン-対-K+)よりもその標的カチオンであるMg2+に対して比較的弱い結合力を有する。従来のマイクロセンサーと比較して、iMgマイクロセンサーサイズは、膜インピーダンス増加をもたらす(MオームからGオーム)。本明細書において示されるように、親油性イオン対としてETH500を添加することは、膜の誘電率を変化させる。
【0069】
以下に挙げられるボルンの式によれば:
【数1】
膜誘電率(イプシロン)の増加は、より高い錯体化学量論及びそのより大きなイオン半径に起因して、Mg
2+よりも大きなイオン(例えば、Ca
2+)-イオノフォア(リガンド)錯体形成に対する区別をもたらした。従って、干渉カチオン及び特にCa
2+、に対するiMgマイクロセンサーの選択性は、ETH500の親油性イオン対の添加により改善された。iMgマイクロセンサー応答感度も、特に低いMg
2+レベルを有するサンプルにおいて増強された。
【0070】
従って、この実施例の結果は、0.5%~1.5% ETH500をドープされたiMgマイクロセンサーがサンプルにおいて0.2mMと0.1mM Mg2+との間の応答シグナルを明確に区別できることを実証し、そして従来技術と比較した場合のこの検出下限の改善は、本開示のiMgマイクロセンサーの確実な利点である。
【0071】
従来のiMg膜(マクロセンサー)において、ボラート対イオノフォア比は、Ca2+に対するMg2+選択性を確実にするために非常に重要であり;O’Donnellら(Analytica Chimica Acta (1993) 281:129-134)及びZhangら(Analytical Sciences (2000) 16:11-18)において見られ得るように、現在好ましいボラート対イオノフォア比は150mol%である。このようなiMgセンサーが試薬中で界面活性剤と接触する場合、応答シグナルは強い界面活性剤干渉に起因して歪められる(Malinowskaら(Analytica Chimica Acta (1999) 382:265-275))。近年開示されたiMgセンサー配合(米国特許第10,241,071号、2019年3月26日にZhangらに発行)は、iMgが血液分析機において使用される場合に界面活性剤干渉を首尾よく克服することができる;このiMgセンサー配合は、50mol%~100mol%の範囲に及ぶボラート対イオノフォア比を有する。従来のiMg膜におけるボラート含有量のこのような減少は、膜誘電率を減少させ、それ故、検出下限(LLOD)を上昇させる。ETH500を本明細書に開示されるiMgマクロセンサーに添加することは、ボラート減少に起因する膜誘電率損失を補い、そして低Mg2+サンプルにおけるiMgマイクロセンサー感度を改善する。
【0072】
まとめると、本開示は、0.5~1.5質量%(イオノフォアに対して15mol%~45mol%)ETH500を、界面活性剤を含む較正試薬を含む血液Mg2+分析機のためのiMgマイクロセンサーに導入した最初のものである。従来のセンサーのiMg配合(すなわち、‘071号特許の最適な50mol%~100mol%ボラート-対-イオノフォア比)を基本配合として使用した。本明細書において開示されるマイクロセンサーは、iMgマイクロセンサー検出限界を0.1mM Mg2+まで改善し、これは実質的に従来のiMgセンサー及びNOVA CCX iMgセンサーの基礎を置くシステム(これは最も低いMg2+濃度として0.2mMしか検出できない)よりも実質的に優れている。これは高い精密さ及び精度で低マグネシウム血症サンプルを試験する際のiMgセンサーの非常に重大な改善である。
【0073】
さらに、本開示のiMgマイクロセンサーは、マイクロセンサーのインピーダンス減少に起因してより安定なセンサー応答をもたらす。あらに、回復の全体の精密さも有意に改善される。
【0074】
従って、本開示に従って、組成物、キット、及びデバイス、さらにはそれらを製造及び使用する方法が提供され、これらは、本明細書の上で述べられた目的及び及び利点を十分に満たす。本開示は、本明細書の上で述べられた特定の図面、実験、結果、及び言語と合わせて記載されてきたが、多くの代替、改変、及び変形が当業者に明らかとなるであろうことは明らかである。従って、本開示の精神及び広範な範囲内である全てのこのような代替、改変、及び変形を包含することが意図される。