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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026412
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】サポートカテーテルおよびチューブ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240220BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20240220BHJP
   A61M 25/088 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61M25/00 624
A61M25/06 556
A61M25/088
A61M25/00 610
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214127
(22)【出願日】2023-12-19
(62)【分割の表示】P 2019165243の分割
【原出願日】2019-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 浩二
(72)【発明者】
【氏名】森 好弘
(57)【要約】
【課題】プロキシマルシャフトの一端部がディスタルシャフトの編組から剥がれ難い、新規な構造のサポートカテーテル、および被固定部材が編組から剥がれ難いチューブを提供する。
【解決手段】サポートカテーテルは、治療用カテーテルを挿入可能なチューブ状に形成されると共に、内層、複数の金属線が一方向および他方向に捲回されて筒型メッシュ状に形成されてなる補強層、および外層を含んで構成されるディスタルシャフトと、ディスタルシャフトに接続されたプロキシマルシャフトと、を備え、補強層は、捲回された前記金属線ピッチが第1値である小ピッチ部、および捲回された前記金属線のピッチが第1値よりも大きい第2値である大ピッチ部を含み、プロキシマルシャフトの一端部は大ピッチ部に固定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療部位を治療するための治療用カテーテルと、前記治療用カテーテルが挿入され且つ血管内において前記治療用カテーテルを案内するためのガイディングカテーテルと共に使用され、前記ガイディングカテーテルの基端側開口部から挿入されて前記ガイディングカテーテルの先端側開口部から突出する長さを有し、前記治療用カテーテルの先端部分を前記治療部位まで案内するサポートカテーテルであって、
前記治療用カテーテルを挿入可能なチューブ状に形成されると共に、内層と、複数の金属線が一方向および他方向に捲回されて筒型メッシュ状に形成されてなる補強層と、を含んで構成されるディスタルシャフトと、
前記ディスタルシャフトに接続されたプロキシマルシャフトと、を備え、
前記補強層は、捲回された前記金属線のピッチが第1値である小ピッチ部、および捲回された前記金属線のピッチが前記第1値よりも大きい第2値である大ピッチ部を含み、
前記プロキシマルシャフトの一端部は前記大ピッチ部に固定されている、サポートカテーテル。
【請求項2】
前記補強層は、2つの前記小ピッチ部および当該2つの小ピッチ部の間に位置する前記大ピッチ部を含む、請求項1に記載のサポートカテーテル。
【請求項3】
前記小ピッチ部と前記大ピッチ部との間に徐変ピッチ部を含み、
前記徐変ピッチ部は、前記大ピッチ部から前記小ピッチ部に向かうにつれて捲回された前記金属線のピッチが小さくなる、請求項1又は2に記載のサポートカテーテル。
【請求項4】
前記プロキシマルシャフトの一端部は、前記大ピッチ部において、前記一方向に捲回された前記金属線と前記他方向に捲回された前記金属線とが交わって軸線方向に並ぶ複数の交点のうち、少なくとも2つ以上の交点で固定されている、請求項1乃至3の何れか1項に記載のサポートカテーテル。
【請求項5】
通常時における前記大ピッチ部における捲回された前記金属線と前記内層の長手方向に垂直な直線とがなす鋭角は25°以上70°以下である、請求項1乃至4の何れか1項に記載のサポートカテーテル。
【請求項6】
管状の内層と、
前記内層の外表面上に設けられ、複数の金属線が一方向および他方向に捲回されて筒型メッシュ状に形成されてなる補強層と、を備え、
前記補強層は、捲回された前記金属線のピッチが第1値である小ピッチ部、および捲回された前記金属線のピッチが前記第1値よりも大きい第2値である大ピッチ部を含み、
前記大ピッチ部に固定された被固定部材をさらに備えた、チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用カテーテルおよびガイディングカテーテルと共に使用され、治療用カテーテルを治療部位に案内するサポートカテーテルおよびチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的冠動脈インターベーション(PCI)では、治療用カテーテルおよびガイディングカテーテルと共にサポートカテーテルが使用されることがある。
【0003】
サポートカテーテルは、治療用カテーテルを挿入可能なチューブ状に形成されると共に、内層、補強層および外層を含むディスタルシャフトと、当該ディスタルシャフトに接続されるプロキシマルシャフトとを有している。補強層は、金属素線や樹脂素線などが一定のピッチで捲回されて形成される筒状の編組(例えば、特許文献1参照)を含んで構成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-82802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プロキシマルシャフトとディスタルシャフトとの接続方法としては、プロキシマルシャフトの一端部をディスタルシャフトの補強層(編組)上に固定することで両者を接続する方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、複数の素線が一定のピッチで捲回されて形成される上記特許文献1のような編組の上にプロキシマルシャフトの一端部を固定すると、ディスタルシャフトに長手方向への引っ張り力が加えられた場合に、当該プロキシマルシャフトの一端部と編組(素線)との固定部分に対する負荷がかかってしまい、プロキシマルシャフトの一端部が素線から剥がれて、プロキシマルシャフトの先端側が外層を突き破って露出するなどのおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明の解決課題は、プロキシマルシャフトの一端部がディスタルシャフトの編組から剥がれ難い、新規な構造のサポートカテーテルを提供することにある。
【0008】
また、被固定部材が編組から剥がれ難いチューブを提供することも、本発明の解決課題の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係るサポートカテーテルは、治療部位を治療するための治療用カテーテルと、前記治療用カテーテルが挿入され且つ血管内において前記治療用カテーテルを案内するためのガイディングカテーテルと共に使用され、前記ガイディングカテーテルの基端側開口部から挿入されて前記ガイディングカテーテルの先端側開口部から突出する長さを有し、前記治療用カテーテルの先端部分を前記治療部位まで案内するサポートカテーテルであって、前記治療用カテーテルを挿入可能なチューブ状に形成されると共に、内層と、複数の金属線が一方向および他方向に捲回されて筒型メッシュ状に形成されてなる補強層と、を含んで構成されるディスタルシャフトと、前記ディスタルシャフトに接続されたプロキシマルシャフトと、を備え、前記補強層は、捲回された前記金属線のピッチが第1値で
ある小ピッチ部、および捲回された前記金属線のピッチが前記第1値よりも大きい第2値である大ピッチ部を含み、前記プロキシマルシャフトの一端部は前記大ピッチ部に固定されているものである。
【0010】
本態様に従えば、補強層に大ピッチ部が設けられ、プロキシマルシャフトの一端部が当該大ピッチ部に固定される。これにより、ディスタルシャフトに長手方向の引っ張り力が加えられた際に、当該固定部分にかかる負荷を、プロキシマルシャフトの一端部が小ピッチ部に固定されている場合よりも小さくすることができる。
【0011】
プロキシマルシャフトの一端部をディスタルシャフトの編組上に固定することで、当該固定した部分における編組の金属線の角度が固定される。一定のピッチで捲回されて形成された編組を補強層として有する従来のディスタルシャフトが長手方向へ引っ張られた場合には、プロキシマルシャフトにより固定されていない部分においてはピッチが大きくなる(金属線の角度が大きくなる)方向へ編組が徐々に変化する一方で、金属線の角度が固定された部分においては編組が当該変化に追従することができない。そのため、ピッチが変化する可変部とピッチが変化しない非可変部の境目にあたる当該固定部分に負荷がかかる。これに対して、本態様に係るサポートカテーテルを構成するディスタルシャフトは予め編組ピッチ(金属線の角度)が大きくされた状態で固定されているため、長手方向へ引っ張られた場合でも、プロキシマルシャフトにより固定されていない部分の編組の変化(編組ピッチや金属線の角度の変化)により生じる固定部分への負荷が抑制される。これにより、プロキシマルシャフトの一端部が金属線から剥がれ難くなる。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記補強層は、2つの前記小ピッチ部および当該2つの小ピッチ部の間に位置する前記大ピッチ部を含むものである。
【0013】
本態様に従えば、小ピッチ部よりも硬い大ピッチ部が設けられる範囲をプロキシマルシャフトの一端部を固定する範囲に限定し、当該範囲より基端側を小ピッチ部とすることができる。これにより、ディスタルシャフトの柔軟性を確保し、折れを防止することができる。
【0014】
第3の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記小ピッチ部と前記大ピッチ部との間に徐変ピッチ部を含み、前記徐変ピッチ部は、前記大ピッチ部から前記小ピッチ部に向かうにつれて捲回された前記金属線のピッチが小さくなるものである。
【0015】
本態様に従えば、大ピッチ部と小ピッチ部との間で編組ピッチが徐々に変化するため、ディスタルシャフトの急激な硬度変化を回避し、折れを防止することができる。なお、柔軟性を確保する観点からは徐変ピッチ部は短い方がよく、硬度変化を緩やかにする観点からは徐変ピッチ部は長い方がよい。
【0016】
第4の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、前記プロキシマルシャフトの一端部は、前記大ピッチ部において、前記一方向に捲回された前記金属線と前記他方向に捲回された前記金属線とが交わって軸線方向に並ぶ複数の交点のうち、少なくとも2つ以上の交点で固定されているものである。
【0017】
本態様に従えば、プロキシマルシャフトの一端部が大ピッチ部の少なくとも2つ箇所以上で固定されるため、たとえ最も負荷のかかる先端側に位置する固定位置からプロキシマルシャフトの一端部が剥がれたとしても、すぐさまプロキシマルシャフトとディスタルシャフトとが分離することはない。
【0018】
第5の態様は、第1の態様に係るサポートカテーテルであって、通常時における前記大ピッチ部における捲回された前記金属線と前記内層の長手方向に垂直な直線とがなす鋭角は25°以上70°以下であるものである。
【0019】
本態様に従えば、前記鋭角が90°に近づくほどディスタルシャフトの長手方向への引っ張り強度が向上し、当該鋭角が0°に近づくほどディスタルシャフトの柔軟性が向上して径方向への動きが取り易くなる。
【0020】
第6の態様に係るチューブは、管状の内層と、前記内層の外表面上に設けられ、複数の金属線が一方向および他方向に捲回されて筒型メッシュ状に形成されてなる補強層と、を備え、前記補強層は、捲回された前記金属線のピッチが第1値である小ピッチ部、および捲回された前記金属線のピッチが前記第1値よりも大きい第2値である大ピッチ部を含み、前記大ピッチ部に固定された被固定部材をさらに備えたものである。
【0021】
本態様に従えば、補強層に大ピッチ部が設けられ、被固定部材が当該大ピッチ部に固定される。これにより、チューブに長手方向の引っ張り力が加えられた際に、当該固定部分にかかる負荷を、被固定部材の一端部が小ピッチ部に固定されている場合よりも小さくすることができる。これにより、上述と同様に固定部分への負荷が抑制され、被固定部材が金属線(編組)から剥がれ難くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プロキシマルシャフトの一端部がディスタルシャフトの編組から剥がれ難い新規な構造のサポートカテーテルおよび被固定部材が編組から剥がれ難いチューブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るサポートカテーテルが治療用カテーテルおよびガイディングカテーテルと共に使用されている状態を示す図である。
図2図1のサポートカテーテルを示す側面図である。
図3】外層が設けられてない状態のディスタルシャフトの写真である。
図4】外層が設けられてない状態のディスタルシャフトの図である。
図5】大ピッチ部における編組ピッチと金属線角度との関係を示すグラフである。
図6】プロキシマルシャフトの一端部の補強層における固定点を示す図である。
図7】(a)は従来のサポートカテーテルの補強層を示す図であり、(b)は(a)のプロキシマルシャフトを引っ張った際の補強層の状態を示す図である。
図8】(a)は本実施形態のサポートカテーテルの補強層を示す図であり、(b)は(a)のプロキシマルシャフトを引っ張った際の補強層の状態を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係るチューブを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るサポートカテーテルについて図面を参照しながら説明する。以下に説明するサポートカテーテルは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。また、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。
【0025】
図1に示すような冠動脈2内に形成される狭窄部3を拡張するための手技として、例えば経皮的冠動脈インターベーション(PCI)が知られている。PCIでは、主にガイディングカテーテル4と、バルーンカテーテル5と、本実施形態のサポートカテーテル1と、ガイドワイヤ25とが用いられる。以下、PCIで用いられる各部材について説明する
【0026】
<ガイディングカテーテル>
ガイディングカテーテル4は、血管内においてバルーンカテーテル5およびサポートカテーテル1を案内するためのカテーテルであり、シース7を用いて例えば橈骨動脈8や大腿動脈(図略)に挿入される。ガイディングカテーテル4は、ガイディングカテーテル本体11およびY型コネクタ12を有している。ガイディングカテーテル本体11は、長尺のチューブ形状になっており、当該ガイディングカテーテル本体11の中にバルーンカテーテル5およびサポートカテーテル1を挿入できるように構成されている。また、ガイディングカテーテル本体11は、湾曲可能な円筒状の可撓性チューブから成り、湾曲する血管内を押し進めることができるようになっている。
【0027】
Y型コネクタ12は、ガイディングカテーテル本体11の基端部に設けられている。Y型コネクタ12は、本体部分12aおよびサイドアーム12bを有しており、サイドアーム12bから薬液や造影剤が注入できるようになっている。また、本体部分12aの先端部分は、ガイディングカテーテル本体11の基端部に取り付けられている。本体部分12aは基端側開口12cを有しており、この基端側開口12cからバルーンカテーテル5およびサポートカテーテル1を挿入できるようになっている。
【0028】
<バルーンカテーテル>
バルーンカテーテル5は治療用カテーテルであり、公知のものが採用可能である。バルーンカテーテル5は、冠動脈内の狭窄部3に挿入し、狭窄部3を押し拡げるためのカテーテルである。なお、バルーンカテーテル5は例えばラピッドエクスチェンジ型(RX型)のカテーテルであり、図1に示すように治療用カテーテル本体21およびコネクタ22を有している。治療用カテーテル本体21は、長尺のチューブ形状に形成されている。治療用カテーテル本体21は、その先端部分にステント24が外装されたバルーン23を有している。バルーンカテーテル5は、ガイドワイヤ25、ガイディングカテーテル4およびサポートカテーテル1と共に使用される。
【0029】
<サポートカテーテルの使用方法>
以下では、PCIにおいて橈骨動脈からアプローチする方法について図1を参照しながら説明する。なお、サポートカテーテルの詳細な構成は後述することとする。
【0030】
この方法では、サポートカテーテル1、ガイディングカテーテル4、バルーンカテーテル5およびガイドワイヤ25が用いられる。PCIでは、まず施術者が橈骨動脈8を図略の針で穿刺し、穿刺箇所にシース7を挿入する。その後、シース7を通じてガイディングカテーテル4が橈骨動脈8に挿入されると、ガイディングカテーテル4はその先端側開口部4aが大動脈弓9を通って冠動脈2の入口2aに達するまで推し進められ、先端側開口部4aが入口2aに達するとガイドワイヤ25を挿入して、サポートカテーテル1がガイディングカテーテル4の基端側開口部4bから挿入される。サポートカテーテル1は、施術者によって押し引きされながら、その先端側部分が先端側開口部4aから突出するまで、ガイドワイヤ25に案内されながらガイディングカテーテル4内を押し進められる。これにより、サポートカテーテル1の先端側部分が冠動脈2内に挿入され、更に狭窄部3に達する。
【0031】
このようにしてサポートカテーテル1の先端側部分を狭窄部3まで押し込んだ後は、バルーンカテーテル5がガイディングカテーテル4の基端側開口部4bから挿入される。バルーンカテーテル5は、その先端がディスタルシャフト33内に挿入され、その後ディスタルシャフト33の先端から突出するまで押し進められる。このように押し進めることによって、バルーンカテーテル5の先端部分が狭窄部3に挿入され、バルーン23およびス
テント24が狭窄部3に位置する。そうすると、バルーンカテーテル5の押込みが止められる。
【0032】
このようにバルーンカテーテル5を押し進めることによって、バルーンカテーテル5の先端部分がガイディングカテーテル4によって冠動脈2の入口2aまで案内され、更に入口2aの先ではサポートカテーテル1によって狭窄部3まで案内される。また、サポートカテーテル1のディスタルシャフト33は、狭窄部3又はその近くまで延びているので、バルーンカテーテル5の先端部分を狭窄部3に押し込む際にディスタルシャフト33の先端部分によってバルーンカテーテル5の先端部分がサポートされる。その後、圧力流体によってバルーン23が膨らむ。それと共に、ステント24が展開拡張されて狭窄部3が拡張される。このような方法により、狭窄部3の血流を回復させることができるようになっている。
【0033】
<サポートカテーテル>
次いで、本実施形態におけるサポートカテーテルの構成について説明する。上述のように、サポートカテーテル1は、狭窄部3に近い位置まで進められ、バルーンカテーテル5のバルーン23を狭窄部3まで案内するためのカテーテルである。また、サポートカテーテル1は、狭窄部3にバルーン23を挿入する際にバルーン23をサポートするためのカテーテルでもある。このようなサポートカテーテル1は、ガイディングカテーテル4の基端側開口部4bから挿入されて、当該ガイディングカテーテル4の先端側開口部4aから突出する長さを有している。
【0034】
図2に示すように、サポートカテーテル1は、保護部材32と、ディスタルシャフト33と、ディスタルシャフト33に接続されたプロキシマルシャフト34とを備えている。
【0035】
プロキシマルシャフト34は例えばステンレス鋼等の金属やポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等の合成樹脂から成る長尺状の線材である。プロキシマルシャフト34の表面には例えばPTFEがコーティングされている。保護部材32はプロキシマルシャフト34の基端部に設けられている。保護部材32は、ポリアミドエラストマー等から成る円柱状部材である。
【0036】
ディスタルシャフト33は、大略円筒状に形成されており、バルーンカテーテル5を挿入可能に構成されている。図3に示すように、ディスタルシャフト33は、内側から順に内層35と補強層36と外層37(図2)とを含む三層構造の部材である。
【0037】
ディスタルシャフト33の内層35は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等により形成されている。内層35の製造方法としては、例えば銀メッキした銅線の外表面にPTFEを塗布して内層35を形成する。なお、内層35の材料は上述のものに限定されない。
【0038】
ディスタルシャフト33の補強層36は、例えばステンレス鋼から成る複数の金属線(素線)36aが一方向および他方向に捲回されて筒型メッシュ状(筒型網目状)に形成されたものであって、内層35の外周面上に設けられている。
【0039】
ディスタルシャフト33の外層37は、大略円筒状に形成され、例えばナイロン系エラストマー樹脂又はポリブチレンテレフタレート等により形成される。外層37の基端側部分を図2に示す通り斜めにカットし、又は円弧状や半月状に形成することが好ましい。この場合、内層35の基端側部分も同様の形状に形成することが好ましい。これにより、バルーンカテーテル5をディスタルシャフト33に挿入し易くなる。なお、外層の数を1つ
としているが、これに限定されるものではなく、2つ以上の外層を採用してもよい。なお、外層37の材料は上述のものに限定されない。
【0040】
内層35と外層37とは、互いに同じ材料を用いて構成されてもよく、上述のような材料に限定されない。また、外層37の外周面に、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン(PVP)等を含有する親水性ポリマをコーティングしてもよい。
【0041】
ディスタルシャフト33の先端には先端チップ38が設けられている。この先端チップ38は、例えば造影剤である酸化ビスマス等が配合されたポリアミドエラストマーから成り、大略円筒状に形成されている。先端チップ38は、放射線不透過性を有しており、放射線透視下において陰影が現れるようになっている。
【0042】
ここで、ディスタルシャフト33の内層35の外周面上に設けられた補強層36について詳しく説明する。
【0043】
補強層36を形成する際には、例えば16本の金属線36aを用いる。16本の金属線36aのうち8本を内層35の外周面において一方向にらせん状に捲回し、残りの8本を内層35の外周面において他方向にらせん状に捲回することで補強層36を形成することができる。なお、捲回する金属線36aの本数は各方向8本ずつに限られるものではない。また、金属線36aの捲き方もらせん状に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。
【0044】
図3および図4に示すように、補強層36は、大ピッチ部50、2つの徐変ピッチ部51、および2つの小ピッチ部52を含む。例えば、大ピッチ部50の長さは1~30mmとし、先端側の小ピッチ部52の長さは200~500mmとし、基端側の小ピッチ部52の長さは0~30mmとし、各徐変ピッチ部51の長さは1~5mmとすることができる。ただし、各部の長さはサポートカテーテル1を適用する血管部位などにより適宜設定されるものであり、これに限られるものではない。なお、柔軟性を確保する観点からは徐変ピッチ部51は短い方がよく、硬度変化を緩やかにする観点からは徐変ピッチ部51は長い方がよい。
【0045】
大ピッチ部50は2つの小ピッチ部52の間に配置されている。また、一方の徐変ピッチ部51は一方の小ピッチ部52と大ピッチ部50との間に配置され、他方の徐変ピッチ部51は他方の小ピッチ部52と大ピッチ部50との間に配置されている。
【0046】
小ピッチ部52は、編組ピッチ(ピッチ)が第1値である部位である。編組ピッチは、一方向(或いは他方向)に捲回された1本の金属線36aのうち、補強層36上の周方向における位相(例えば0°位置であるが、任意の角度位置でよい。)が互いに同じであって且つ軸線方向に隣り合う一方の部位と他方の部位との間隔である。すなわち、上記0°位置における一方の部位を基準として、金属線36aが捲回されることにより次に同じ0°位置に位置される他方の部位までの間隔である。第1値は、後述する大ピッチ部50が取り得る第2値よりも小さい値であればよく、サポートカテーテル1を適用する血管部位などにより適宜設定されるものであって限定されるものではない。
【0047】
一方、大ピッチ部50は、上記編組ピッチが第1値よりも大きい第2値である部位である。後述の図7(a)に示すように、通常時における大ピッチ部50における一の金属線36aとプロキシマルシャフト34の長さ方向に垂直な直線Lとがなす鋭角(金属線角度)αは、平面視で例えば25°以上70°以下であり、角度αが当該範囲にある場合に第2値の取り得る範囲は、図5に示すように例えば2~10mmである。なお、上記通常時におけるサポートカテーテル1は、パッケージに収容されている状態、或いはパッケージ
から出されて未使用かつ無負荷の状態のものとする。
【0048】
また、徐変ピッチ部51は、大ピッチ部50から小ピッチ部52に向かうにつれて上記編組ピッチが小さくなる部位である。例えば、大ピッチ部50の編組ピッチが6mmであり、小ピッチ部52の編組ピッチが2mmである場合、徐変ピッチ部51の編組ピッチは6mmから2mmまでの範囲で徐変する。
【0049】
本実施形態において、プロキシマルシャフト34の一端部は、大ピッチ部50および基端側の小ピッチ部52に溶接されている。詳細には、プロキシマルシャフト34の一端部は、大ピッチ部50において、一方向に捲回された金属線36aと他方向に捲回された金属線36aとが交わって軸線方向に並ぶ複数の交点のうち、少なくとも2つ以上の交点で固定される。固定方法は例えば溶接であるがこれに限定はされない。この場合、図6に示すように、プロキシマルシャフト34の一端部は、大ピッチ部50において、上記複数の交点のうち、1つの交点おきに溶接される。図6の符号Pは溶接点を示す。また、プロキシマルシャフト34の一端部は、小ピッチ部52において、上記複数の交点のうち、2つ以上の交点おきに溶接される。なお、後記の図8(a)に示すように、プロキシマルシャフト34の一端部は、大ピッチ部50および小ピッチ部52において、上記複数の交点ごとに溶接されてもよい。
【0050】
次に、本実施形態のサポートカテーテル1の作用およびそれによる効果について、図7および図8を参照しつつ説明する。なお、図7および図8は、正確さには欠けるものの作用効果の容易な理解を優先して表現した模式図である。図7(a)に示す編組ピッチが一定である編組を補強層(従来の補強層)136として有する従来のディスタルシャフト133が図7(b)に示す矢印の方向に引っ張られた場合には、プロキシマルシャフト34により固定されていない部分においては編組ピッチが大きくなる(金属線36aの角度が大きくなる)方向へ編組136が徐々に変化する一方で、金属線36aの角度が固定された部分においては編組136が当該変化に追従することができない。そのため、編組ピッチが変化する可変部とピッチが変化しない非可変部の境目にあたる当該固定部分P1に負荷がかかる。そのため、プロキシマルシャフト34の一端部が金属線36aから剥がれ易くなる。
【0051】
これに対して、本実施形態のサポートカテーテル1を構成するディスタルシャフト33の大ピッチ部50は予め編組ピッチが大きくされているので、図8(a)に示す本実施形態のディスタルシャフト33が図8(b)に示す矢印の方向に引っ張られた場合でも、プロキシマルシャフト34により固定されていない部分の編組36の変化(編組ピッチや金属線36aの角度の変化)により生じる固定部分P2への負荷が抑制される。これにより、プロキシマルシャフト34の一端部が金属線36aから剥がれ難くなる。なお、図8では徐変ピッチ部51の図示を省略している。
【0052】
以上説明したように、本実施形態のサポートカテーテル1によれば、補強層36に大ピッチ部50が設けられ、プロキシマルシャフト34の一端部が当該大ピッチ部50に固定される。これにより、ディスタルシャフト34に長手方向の引っ張り力が加えられた際に、プロキシマルシャフト34の一端部の大ピッチ部50における固定部分にかかる負荷を、プロキシマルシャフト34の一端部が小ピッチ部52に固定されている場合よりも小さくすることができる。これによって、プロキシマルシャフト34の一端部が金属線36aから剥がれ難くなる。
【0053】
また、本実施形態では、大ピッチ部50と小ピッチ部52との間に徐変ピッチ部51が設けられることで、大ピッチ部50と小ピッチ部52との間で編組ピッチが徐々に変化するため、ディスタルシャフト33の急激な硬度変化を回避し、折れを防止することができ
る。
【0054】
また、本実施形態では、プロキシマルシャフト34が大ピッチ部50および基端側の小ピッチ部52に溶接されていることにより、当該プロキシマルシャフト34の溶接領域を増加させることができる。そのため、プロキシマルシャフト34が剥がれる可能性を低減することができる。
【0055】
また、本実施形態では、プロキシマルシャフト34の一端部が大ピッチ部50の少なくとも2つ箇所以上で固定されるため、たとえ最も負荷のかかる先端側に位置する固定位置からプロキシマルシャフト34の一端部が剥がれたとしても、すぐさまプロキシマルシャフト34とディスタルシャフト33とが分離することはない。
【0056】
また、本実施形態では、プロキシマルシャフト34の一端部は、上記複数の交点のうち、大ピッチ部50において1つの交点おきに溶接され、小ピッチ部52において2つ以上の交点おきに溶接される。この場合、プロキシマルシャフト34の一端部が大ピッチ部50および小ピッチ部52において上記複数の交点ごとに溶接される場合よりも製造し易くなる。
【0057】
さらに、本実施形態では、大ピッチ部50において上述の鋭角αを25°以上70°以下とすることで、鋭角αが90°に近づくほどディスタルシャフト33の長手方向への引っ張り強度が向上し、当該鋭角αが0°に近づくほどディスタルシャフト33の柔軟性が向上して径方向への動きが取り易くなる。
【0058】
(他の実施形態)
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0059】
上記実施形態では、一方の小ピッチ部52と大ピッチ部50との間および他方の小ピッチ部52と大ピッチ部50との間に徐変ピッチ部51を設けるように構成したが、これに限定されるものではなく、一方の小ピッチ部52と大ピッチ部50との間および他方の小ピッチ部52と大ピッチ部50との間のうちの少なくとも1つの間に徐変ピッチ部51を設けるようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、プロキシマルシャフト34の一端部を補強層36の大ピッチ部50および基端側の小ピッチ部52に固定することとしたが、これに限定されるものではない。これらと併せて先端側の徐変ピッチ部51にもプロキシマルシャフト34の一端部を固定してもよいし、大ピッチ部50にのみ固定してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、プロキシマルシャフト34の一端部が補強層36の大ピッチ部50に固定されたサポートカテーテル1について説明したが、これに限定されるものではなく、チューブにおいて被固定部材が補強層の大ピッチ部に固定されてもよい。詳細には、図9に示すように、チューブ100は管状の内層135と、当該内層135の外表面上に設けられ、複数の金属線36aが一方向および他方向に捲回されて筒型メッシュ状に形成されてなる補強層36とを備える。補強層36は、上述と同様に小ピッチ部52、徐変ピッチ部51および大ピッチ部50を含む。チューブ100は大ピッチ部50に固定された被固定部材134をさらに備える。なお、チューブ100は補強層36の外側に管状の外層を備えてもよい。このようなチューブ100は上述のサポートカテーテル1と同じ効果を奏する。
【0062】
さらに、上記実施形態では、ディスタルシャフト33の先端に先端チップ38を設けた
が、当該先端チップ38をディスタルシャフト33の補強層36の溶接する際にも、当該溶接点を含む部位を残部よりも編組ピッチが大きい大ピッチ部に構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 サポートカテーテル
4 ガイディングカテーテル
5 バルーンカテーテル
33 ディスタルシャフト
34 プロキシマルシャフト
35,135 内層
36 補強層
36a 金属線
37 外層
50 大ピッチ部
51 徐変ピッチ部
52 小ピッチ部
100 チューブ
134 被固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療部位を治療するための治療用カテーテルと、前記治療用カテーテルが挿入され且つ血管内において前記治療用カテーテルを案内するためのガイディングカテーテルと共に使用され、前記ガイディングカテーテルの基端側開口部から挿入されて前記ガイディングカテーテルの先端側開口部から突出する長さを有し、前記治療用カテーテルの先端部分を前記治療部位まで案内するサポートカテーテルであって、
前記治療用カテーテルを挿入可能なチューブ状に形成されると共に、内層と、複数の金属線が一方向および他方向に捲回されて筒型メッシュ状に形成されてなる補強層と、を含んで構成されるディスタルシャフトと、
前記ディスタルシャフトに接続されたプロキシマルシャフトと、を備え、
前記補強層は、捲回された前記金属線のピッチが第1値である小ピッチ部、および捲回された前記金属線のピッチが前記第1値よりも大きい第2値である大ピッチ部を含み、
前記プロキシマルシャフトの一端部は前記大ピッチ部に固定されており、かつ、前記大ピッチ部よりも先端側の位置において前記小ピッチ部とは固定されていない、サポートカテーテル。
【請求項2】
前記補強層は、2つの前記小ピッチ部および当該2つの小ピッチ部の間に位置する前記大ピッチ部を含む、請求項1に記載のサポートカテーテル。
【請求項3】
前記小ピッチ部と前記大ピッチ部との間に徐変ピッチ部を含み、
前記徐変ピッチ部は、前記大ピッチ部から前記小ピッチ部に向かうにつれて捲回された前記金属線のピッチが小さくなる、請求項1又は2に記載のサポートカテーテル。
【請求項4】
前記プロキシマルシャフトの一端部は、前記大ピッチ部において、前記一方向に捲回された前記金属線と前記他方向に捲回された前記金属線とが交わって軸線方向に並ぶ複数の交点のうち、少なくとも2つ以上の交点で固定されている、請求項1乃至3の何れか1項に記載のサポートカテーテル。
【請求項5】
通常時における前記大ピッチ部における捲回された前記金属線と前記内層の長手方向に垂直な直線とがなす鋭角は25°以上70°以下である、請求項1乃至4の何れか1項に記載のサポートカテーテル。
【請求項6】
管状の内層と、
前記内層の外表面上に設けられ、複数の金属線が一方向および他方向に捲回されて筒型メッシュ状に形成されてなる補強層と、を備え、
前記補強層は、捲回された前記金属線のピッチが第1値である小ピッチ部、および捲回された前記金属線のピッチが前記第1値よりも大きい第2値である大ピッチ部を含み、
前記大ピッチ部に固定され、かつ、前記大ピッチ部よりも先端側の位置において前記小ピッチ部とは固定されない、被固定部材をさらに備えた、チューブ。