IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エシコン エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026429
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】編まれた組織スキャフォールド
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A61B17/072
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023214751
(22)【出願日】2023-12-20
(62)【分割の表示】P 2020544296の分割
【原出願日】2019-01-21
(31)【優先権主張番号】15/901,245
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517076008
【氏名又は名称】エシコン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Ethicon LLC
【住所又は居所原語表記】#475 Street C, Suite 401, Los Frailes Industrial Park, Guaynabo, Puerto Rico 00969, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ベンデリー・マイケル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハリス・ジェイソン・エル
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン・ザ・フォース・フレデリック・イー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】埋め込み部位における組織内圧力の変動による隣り合う組織との間での漏れを抑制できる外科用ステープル留め器具を提供する。
【解決手段】外科用ステープル留め器具100と共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリ及びその製造方法が提供される。外科用ステープルカートリッジと共に使用するためのスキャフォールド及びその製造方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ステープル留め器具と共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリであって、
複数のステープル及びカートリッジデッキを有するステープルカートリッジと、
少なくとも2種類の異なる繊維材料で形成され、前記カートリッジデッキと嵌合するように構成されているような取り付け特性を有する、編まれた弾性変形可能な生体吸収性スキャフォールドと、
を備え、
前記ステープルが、前記スキャフォールドを通って前記スキャフォールドに押し当てられて捕捉された組織の中へと配備可能であり、前記スキャフォールドが、
それぞれが、第1のタイプの繊維と第2のタイプの繊維とを有する第1のニット層及び第2のニット層、並びに
前記第1のニット層と前記第2のニット層との間に配設され、前記第2のタイプの繊維から形成されている支持層、
を備えており、
前記第1のタイプの繊維がマルチフィラメント繊維であり、前記第2のタイプの繊維がモノフィラメント繊維であり、
前記マルチフィラメント繊維は第1のフィラメントと第2のフィラメントを含み、前記スキャフォールドが体内に配置された際に、前記第2のフィラメントの材料は、前記第1のフィラメントの材料の生分解速度よりも早い速度で分解する、
ステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項2】
前記第2のタイプの繊維は、前記第1のニット層及び前記第2のニット層の前記第1のタイプの繊維に編み込まれている、請求項1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項3】
前記第1のタイプの繊維が、ポリ-L乳酸、グリコリドとL-ラクチドとの共重合体、グリコール酸と乳酸との共重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(乳酸)、ポリグリコリド、並びにグリコリドと、カプロラクトンと、トリメチレンカーボネートと、ラクチドとの共重合体のうちの少なくとも1つから形成されている、請求項1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項4】
前記第2のタイプの繊維が、ポリジオキサノン、ポリジオキサノンとポリグリコリドとの共重合体、ラクチドとポリカプロラクトンとの共重合体、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとの共重合体、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシアルカノエート、及びポリグリコネートのうちの少なくとも1つから形成されている、請求項1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項5】
前記第1のタイプの繊維が、生体吸収性ポリマー材料でコーティングされている、請求項1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項6】
前記第2のニット層が前記カートリッジデッキに当接する、請求項1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項7】
前記カートリッジデッキの外側表面が、前記スキャフォールドと係合するように構成された1つ以上の取り付け機構を備える、請求項1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項8】
前記スキャフォールドが、非変形時高さから変形時高さまで変形するように構成され、前記非変形時高さは、前記ステープルが形成された形状にあるときの前記複数のステープルのうちの各ステープルの高さよりも大きく、前記ステープルが形成された形状とは、前記ステープルが前記ステープルカートリッジから発射されて組織と共に前記スキャフォールドを捕捉するように変形された形状である、請求項1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項9】
外科用ステープル留め器具と共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリであって、
複数のステープル及びカートリッジデッキを有するステープルカートリッジと、
編まれた弾性変形可能な生体吸収性スキャフォールドと、を備え、前記ステープルが、前記スキャフォールドを通って前記スキャフォールドに押し当てられて捕捉された組織の中へと配備可能であり、前記スキャフォールドは少なくとも第1の層と第2の層とを含み、
前記第1の層が編まれており、かつ第1の繊維及び第2の繊維を含み、前記第1の繊維及び前記第2の繊維が互いに異なる材料で形成され、
前記第2の層が、前記第2の繊維のみを含んでおり、
前記第1の繊維がマルチフィラメント繊維であり、前記第2の繊維がモノフィラメント繊維であり、
前記マルチフィラメント繊維は第1のフィラメントと第2のフィラメントを含み、前記スキャフォールドが体内に配置された際に、前記第2のフィラメントの材料は、前記第1のフィラメントの材料の生分解速度よりも早い速度で分解する、
ステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項10】
前記スキャフォールドが、前記第1の繊維及び前記第2の繊維を含む第3の層を更に含み、前記第3の層が編まれており、かつ前記第2の層が、前記第1の層と前記第3の層との間に配置されている、請求項9に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項11】
前記第2の繊維は、前記第1の繊維に編み込まれている、請求項9に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項12】
前記第1の繊維が、生体吸収性ポリマー材料でコーティングされている、請求項9に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項13】
前記第2の層が前記カートリッジデッキに当接する、請求項9に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項14】
前記カートリッジデッキの外側表面が、前記スキャフォールドと係合するように構成された1つ以上の取り付け機構を備える、請求項9に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項15】
前記スキャフォールドが、非変形時高さから変形時高さまで変形するように構成され、前記非変形時高さは、前記ステープルが形成された形状にあるときの前記複数のステープルのうちの各ステープルの高さよりも大きく、前記ステープルが形成された形状とは、前記ステープルが前記ステープルカートリッジから発射されて組織と共に前記スキャフォールドを捕捉するように変形された形状である、請求項9に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項16】
外科用ステープルカートリッジと共に使用するためのスキャフォールドであって、
それぞれが、第1のタイプの繊維と第2のタイプの繊維とを有する第1のニット層及び第2のニット層と、
前記第1のニット層と前記第2のニット層との間に配設され、前記第2のタイプの繊維から形成されている支持層と、
を備えており、
前記第1のタイプの繊維がマルチフィラメント繊維であり、前記第2のタイプの繊維がモノフィラメント繊維であり、
前記マルチフィラメント繊維は第1のフィラメントと第2のフィラメントを含み、前記スキャフォールドが体内に配置された際に、前記第2のフィラメントの材料は、前記第1のフィラメントの材料の生分解速度よりも早い速度で分解する、
スキャフォールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
編まれた組織スキャフォールド及びその製造方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
外科用ステープル留め器具は、外科的処置において、組織、血管、導管、シャント若しくは特定の処置に関連する他の対象物又は身体部位の開口部を閉鎖するために使用される。開口部は、血管内又は胃のような内臓内の通路など、自然に存在するものであってもよく、又は組織若しくは血管穿刺でバイパス若しくは吻合を形成することによって、若しくはステープル留め処置中の組織切開によってなど、外科的処置中に外科医によって形成されることがある。
【0003】
一部の外科用ステープル留め器具では、外科医がステープル留めをされている組織に対して適切なステープル高さを有する適切なステープルを選択する必要がある。例えば外科医は、厚い組織に使用するには背の高いステープルを選択し、薄い組織に使用するには背の低いステープルを選択することができる。しかしながら一部の事例では、ステープル留めされている組織は、その厚さが一貫したものではないため、ステープルは、各ステープル部位において、望ましい発射後形状を達成することができない。その結果、ステープル留めされた全ての部位で又はその近くで、望ましい封止を形成することができるというわけではなく、これにより、血液、空気、胃腸液及び他の流体が、封止されていない部位を通って滲出することが起こり得る。
【0004】
更に、ステープルや、ステープリングのような処置と共に埋め込まれ得る他の物体及び材料は、一般に、それらが埋め込まれる組織のいくつかの特性を欠いている。例えば、ステープル並びに他の物体及び材料は、それらが埋め込まれる組織の自然な可撓性を欠くことがあり、したがって、埋め込み部位における組織内圧力の変動に耐えることができない。これは、望ましくないことに組織の裂けをもたらし、その結果として、ステープル部位又はその付近での漏れ、及び/又は埋め込まれた物とその隣り合う組織との間での漏れを引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、外科用ステープル留め器具の現在の問題に対処する、改善された器具及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
外科用ステープル留め器具と共に使用するための、ステープルカートリッジアセンブリが提供される。
【0007】
1つの例示的な実施形態において、ステープルカートリッジアセンブリは、複数のステープル及びカートリッジデッキを有するステープルカートリッジと、少なくとも2種類の異なる繊維材料で形成され、カートリッジデッキと嵌合するように構成されるような取り付け特性を有する、編まれた弾性変形可能な生体吸収性スキャフォールドと、を含み、ステープルが、スキャフォールドを通ってスキャフォールドに押し当てられて捕捉された組織の中へと配備可能である。スキャフォールドは、第1のニット層及び第2のニット層と、第1のニット層と第2のニット層との間に配設された支持層とを含むことができる。第1のニット層及び第2のニット層のそれぞれは、第1のタイプの繊維及び第2のタイプの繊維を含むことができ、そのうち第1のタイプの繊維が主に存在する。第1のタイプの繊維は、第1のガラス転移温度を有することができ、第2のタイプの繊維は、第1のガラス転移温度未満である第2のガラス転移温度を有することができる。支持層は、第2のタイプの繊維で形成することができる。一態様では、第1のガラス転移温度は、第2のガラス転移温度よりも少なくとも約30℃高いものであり得る。別の態様では、カートリッジデッキの外側表面が、スキャフォールドと係合するように構成された1つ以上の取り付け機構を含むことができる。
【0008】
一部の態様では、第2のタイプの繊維は、第1のタイプの繊維及び第2のタイプの繊維が非固定的に取り付けられるような方法で、第1のニット層及び第2のニット層の第1のタイプの繊維と相互接続されることができる。
【0009】
一部の態様では、第1のタイプの繊維は、マルチフィラメント繊維であってもよく、第2のタイプの繊維はモノフィラメント繊維であり得る。一態様では、第1のタイプの繊維は、生体吸収性ポリマー材料でコーティングされ得る。
【0010】
第1のタイプの繊維及び第2のタイプの繊維は、様々な材料から形成され得る。一態様では、第1のタイプの繊維が、ポリ-L乳酸、グリコリドとL-ラクチドとの共重合体、グリコール酸と乳酸との共重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(乳酸)、ポリグリコリド、及び、グリコリドと、カプロラクトンと、トリメチレンカーボネートと、ラクチドとの共重合体のうちの少なくとも1つから形成され得る。別の態様では、第2のタイプの繊維は、ポリジオキサノン、ポリジオキサノンとポリグリコリドとの共重合体、ラクチドとポリカプロラクトンとの共重合体、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとの共重合体、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシアルカノエート、及びポリグリコネートのうちの少なくとも1つから形成され得る。
【0011】
スキャフォールドもまた、様々な形状を有することができる。例えば、一態様では、スキャフォールドは、カートリッジデッキに熱成形されるように構成され得るが、そこでは第2のニット層がカートリッジデッキに当接する。別の態様では、スキャフォールドが組織内に配備された状態にあるときに、少なくとも3日間、スキャフォールドが、捕捉された組織に少なくとも約3g/mmの応力を印加するように構成され得る。更に別の態様では、スキャフォールドは、非変形時高さから変形時高さまで変形するように構成されてもよく、非変形時高さは、ステープルが形成された形状にあるときの、複数のステープルのうちの各ステープルの高さよりも大きい。
【0012】
別の実施形態では、ステープルカートリッジアセンブリが提供され、そのステープルカートリッジアセンブリは、複数のステープル及びカートリッジデッキを有するステープルカートリッジと、編まれた弾性変形可能な生体吸収性スキャフォールドとを含むことができ、そこでは、ステープルが、スキャフォールドを通ってスキャフォールドに対して捕捉された組織内へと配備可能である。スキャフォールドは、少なくとも2つの層を含むことができる。第1の層はニット層であってもよく、かつ第1の繊維及び第2の繊維を含むことができるが、第2の層は第2の繊維のみを含む。第1の繊維及び第2の繊維は、互いに異なる材料で形成され得るが、第1の繊維は、第2の繊維のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有することができる。第2の層内の第2の繊維が、第1のニット層内に、第2の繊維が第1の層内の第1の繊維に対して実質的に垂直に向けられた支持部材を形成するような方法で、編み込まれ得る。一態様では、第1の繊維のガラス転移温度は、第2の繊維のガラス転移温度より少なくとも約30℃高いものであり得る。別の態様では、第1の繊維は、生体吸収性ポリマー材料でコーティングされ得る。
【0013】
一部の態様では、スキャフォールドはまた、第1の繊維及び第2の繊維を含むことができる第3の層を含むことができ、第3の層は編まれたものであり得、第2の層は、第1の層と第3の層との間に配置され得る。
【0014】
一態様では、第2の繊維は、第1の繊維及び第2の繊維が非固定的に取り付けられるように、第1の繊維と相互接続され得る。
【0015】
スキャフォールドもまた、様々な形状を有することができる。例えば、一態様では、スキャフォールドは、ステープルカートリッジに熱成形されるように構成され得るが、そこでは第2のニット層がカートリッジデッキに当接する。別の態様では、スキャフォールドが組織内に配備された状態にあるときに、少なくとも3日間、スキャフォールドが、捕捉された組織に少なくとも約3g/mmの応力を印加するように構成され得る。更に別の態様では、スキャフォールドは、非変形時高さから変形時高さまで変形するように構成されてもよく、非変形時高さは、ステープルが形成された形状にあるときの、複数のステープルのうちの各ステープルの高さよりも大きい。
【0016】
一部の態様では、カートリッジデッキの外側表面が、編まれたスキャフォールドと係合するように構成された1つ以上の取り付け機構を含むことができる。
【0017】
外科用ステープルカートリッジと共に使用するためのスキャフォールドも提供され、そのスキャフォールドは、それぞれが第1のタイプの繊維及び第2のタイプの繊維を有する第1のニット層及び第2のニット層であって、第1のタイプの繊維が主として存在する第1のニット層及び第2のニット層、並びに、第1のニット層と第2のニット層との間に配設され、第2のタイプの繊維で形成されている支持層を含み得る。第1のタイプの繊維は、第1のガラス転移温度を有することができ、第2のタイプの繊維は、第1のガラス転移温度未満である第2のガラス転移温度を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本特許又は出願書類は、少なくとも1つのカラー印刷図面(複数可)を含む。カラー図面を有する本特許又は特許出願公開の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されるであろう。
【0019】
本発明は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて読むことで、より完全に理解されるであろう。
図1】従来の外科用ステープル留め及び切断器具の例示的な一実施形態の斜視図である。
図2図1の外科用ステープル留め及び切断器具のステープルカートリッジのウェッジスレッドの斜視図である。
図3図1の外科用ステープル留め及び切断器具の、ナイフ及び発射バー(「E字形梁部」)の斜視図である。
図4図1のステープル留め及び切断器具内に配置され得る外科用カートリッジの長手方向断面図である。
図5図4の外科用カートリッジアセンブリのステープルカートリッジ内に配設され得る、未発射(配備前)形状のステープルの上面図である。
図6】カートリッジデッキに取り付けられたスキャフォールドを有する外科用カートリッジアセンブリの例示的な実施形態の長手方向断面図である。
図7】組織にステープル留めされたときの図6のスキャフォールドを示す概略図である。
図8A図6の外科用カートリッジアセンブリのカートリッジデッキに取り付けられ得るスキャフォールドの、例示的な実施形態の拡大上面図である。
図8B図8Aのスキャフォールドの、線B-Bに沿った拡大断面図である。
図8C図8Aのスキャフォールドの、線C-Cに沿った別の拡大断面図である。
図9図8A図8Cに示されるスキャフォールドの、500μmスケールでの走査型電子顕微鏡写真(SEM)の画像である。
図10A】実施例2に論じられるように、移植されて60日目に除去されたスキャフォールドの病理組織画像である。
図10B図10Aに示される断面10Bの拡大図である。
図11A】実施例2に論じられるように、移植されて90日目に除去されたスキャフォールドの病理組織画像である。
図11B図11Aに示される断面11Bの拡大図である。
図12A】スキャフォールドの別の例示的実施形態の斜視図である。
図12B】カートリッジデッキに取り付けられた、図12Aに示されるスキャフォールドを有するステープルカートリッジアセンブリの別の例示的な実施形態である。
図13】スキャフォールドの別の例示的実施形態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願で開示する器具及び方法の構造、機能、製造及び使用の原理が総括的に理解されるように、特定の代表的な実施形態について、これから説明することにする。これらの実施形態のうちの1つ以上の例が、添付の図面に例示されている。当業者であれば、本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示される器具、システム及び方法は、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義されることが理解されるであろう。1つの例示的な実施形態に関連して図示又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0021】
更に、本開示においては、実施形態の同様の参照符合を付した構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の参照符合を付した各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。加えて、開示されるシステム、器具及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される範囲において、かかる寸法は、かかるシステム、器具及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及び器具、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、システム及び器具が内部で用いられる対象の解剖学的構造、システム及び器具が一緒に用いられる構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及び器具が用いられる方法及び手順に依存し得る。
【0022】
「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書では、器具のハンドルを握っている臨床医などのユーザを基準として使用されることが認識されるであろう。「前方」及び「後方」といった他の空間的用語は、同様に、遠位及び近位にそれぞれ対応する。便宜上、また説明を明確にするため、本明細書では「垂直」及び「水平」などの空間的用語が、図面に対して使用されている点も更に理解されるであろう。しかしながら、外科用器具は、多くの向き及び位置で使用されるものであり、これらの空間的用語は、限定的かつ絶対的なものであることを意図するものではない。
【0023】
値又は範囲は、本明細書では、「約」及び/又は「約」1つの特定の値から別の特定の値として表すことができる。そのように値又は範囲が表される場合、開示される他の実施形態は、列挙された特定の値、及び/又は1つの特定の値から別の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用によって値が近似の形式で表現された場合、開示される多くの値が列挙され、その特定値により別の実施形態が形成されることが理解されるであろう。開示される多くの値が存在し、本明細書において、各値もその値自体に加えて「約」が付く値として開示されることも更に理解されるであろう。一部の実施形態では、「約」を用いて、例えば、列挙された値の10%以内、列挙された値の5%以内、又は列挙された値の2%以内を意味し得る。
【0024】
本教示を説明及び定義する目的で、別途記載のない限り、用語「実質的に」は、本明細書では、任意の定量的な比較、値、測定又は他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために利用されることに留意されたい。用語「実質的に」はまた、本明細書では、定量的表現が、問題の対象物の基本的機能の変化をもたらすことなく、記述された基準から変化し得る程度を表すためにも利用される。
【0025】
外科用ステープルカートリッジアセンブリ及びその製造方法が提供される。一般的に言えば、ステープルカートリッジアセンブリが提供され、そのステープルカートリッジアセンブリは、内部に複数のステープルが配設されたカートリッジデッキを含むステープルカートリッジを有する。ステープルカートリッジアセンブリはまた、編まれた弾性変形可能な生体吸収性スキャフォールドを含み、そのスキャフォールドは、カートリッジデッキと解放可能に嵌合し、ステープルが、その中を通って組織内に配備されることを可能にするように構成されている。スキャフォールドは、カートリッジデッキに解放可能に嵌合され得るが、それによって、ステープルがカートリッジデッキから組織内に配備されるときに、スキャフォールドの少なくとも一部が、ステープルによって捕捉された組織に取り付けられ得るようになっている。本明細書で論じられるように、スキャフォールドは、例えば組織の厚さの変化などの組織の特性の変動を補償するように、かつ/又はスキャフォールドが組織にステープル留めされた際に、組織が内部成長するのを促進するように構成され得る。例えば、スキャフォールドは、組織配備状態にあるとき(例えば、スキャフォールドがインビボで組織にステープル留めされるとき)、少なくとも約3g/mmの応力を組織に、少なくとも3日間印加するように構成され得る。例示的なステープルカートリッジアセンブリは、本明細書で説明され、図面に示すように、外科用ステープルの適用を容易にするための様々な特徴を有し得る。しかしながら、ステープルカートリッジアセンブリは、これらの特徴の一部のみを有し得、かつ/又は当該技術分野では既知の様々な他の特徴を有し得るということは、当業者には認識されるであろう。本明細書に述べられるステープルカートリッジアセンブリは、特定の代表的な実施形態を表すことを意図したものに過ぎない。更に、スキャフォールドは、外科用ステープルカートリッジアセンブリと関連させて説明されているが、スキャフォールドは、任意のタイプの外科用器具と関連させて使用することができる。
【0026】
図1は、例えばスキャフォールドなどの埋め込み式補助材と共に使用するのに好適な、例示的な外科用ステープル留め及び切断器具100を示す。外科用ステープル留め及び切断器具100はアンビル102を含んでもよく、これは細長いステープルチャネル104への枢動可能な取付部を中心に繰り返し開閉することができる。ステープル適用アセンブリ106は、アンビル102とチャネル104とを備えてもよく、このアセンブリ106が細長いシャフト108に近位側に取り付けられて、実施部分110を形成し得る。ステープル適用アセンブリ106が閉じているとき、又は少なくとも実質的に閉じているとき、実施部分110は、トロカールを通してステープル適用アセンブリ106を挿入するのに好適な、十分に小さな断面を呈し得る。器具100は、組織をステープル留め及び切断するように構成されているが、組織をステープル留めするが組織を切断しないように構成された外科用器具もまた、本明細書で企図される。
【0027】
様々な事例において、ステープル適用アセンブリ106は、細長いシャフト108に接続したハンドル112によって操作される。ハンドル112は、ピストルグリップ118の前で枢動してステープル適用アセンブリ106を閉鎖することができる細長いシャフト108及びステープル適用アセンブリ106を、シャフト108の長手方向軸線及び閉鎖トリガ116を中心として回転させる、回転ノブ114などのユーザ制御部を備え得る。例えば、閉鎖トリガ116がクランプされたとき、閉鎖解放ボタン120はハンドル112上で外側に出た状態であってもよく、これにより閉鎖解放ボタン120を押圧して閉鎖トリガ116のクランプを解除し、ステープル適用アセンブリ106を開くことができる。
【0028】
発射トリガ122は、閉鎖トリガ116の前で枢動することができ、これによりステープル適用アセンブリ106に、その中にクランプ締めされた組織の切断とステープル留めを、同時に行わせることができる。様々な事例において、外科医の手によって加えられることが要求される、ストローク1回あたりの力の量を低減するために、複数の発射ストロークが発射トリガ122を使用して用いられ得る。ある特定の実施形態において、ハンドル112は、発射の進行を表示することができる1つ以上の回転式インジケータホイール、例えば、回転式インジケータホイール124を備え得る。手動発射解放レバー126により、必要に応じて、発射システムが発射のための移動を完了する前に、発射システムを後退できるようになり、更に、発射解放レバー126により、発射システムが固着する及び/又は機能しなくなる場合に、外科医又は他の臨床医が発射システムを後退させることが可能となっている。
【0029】
本開示との使用に好適な外科用ステープル留め及び切断器具100及び他の外科用ステープル留め及び切断器具に関する更なる詳細は、例えば、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,332,984号及び米国特許出願公開第2009/0090763号に記載されている。更に、外科用ステープル留め及び切断器具は、ハンドルを含む必要はなく、むしろその代わりに、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年8月29日に出願された、Frederick E.Sheltonらの米国特許出願第15/689,198号に記載されているように、外科用ロボットに連結するように構成されたハウジングを含む必要がある。
【0030】
図2及び図3を参照して、例えば発射アセンブリ228などの発射アセンブリは、例えば図1の器具100のような外科用ステープル留め及び切断器具と共に利用することで、ウェッジスレッド230を前進させることができ、このウェッジスレッド230は、ステープルを、例えば図1のステープル適用アセンブリ106のようなステープル適用アセンブリから、例えば図1のアンビル102のようなアンビルと、例えば図1のチャネル104のような細長いステープルチャネルとの間に捕捉された組織の中へと配備するように構成された複数のウェッジ232を備える。更に、発射アセンブリ228の遠位部分にあるE字形梁部233が、ステープルをステープル適用アセンブリから発射し、また発射中にアンビルを細長いステープルチャネルに対して位置付け得る。E字形梁部233は、一対の上部ピン234、ウェッジスレッド230の部分238に続き得る一対の中間ピン236、及び底部ピン又はフット240、並びに発射アセンブリ228が遠位側に前進するときに捕捉された組織を切断するように構成され得る鋭利な切断縁部242を含む。加えて、切断縁部242の各垂直端部をブラケット装着する、一体成形され、近位側に突出している上部ガイド244及び中間ガイド246は、組織を切断する前に、組織を鋭利な切断縁部242へ誘導するのを補助する組織ステージングエリア248を更に画定してもよい。中間ガイド246はまた、ステープル適用アセンブリによるステープル成形を行うウェッジスレッド230(図2)の段付き中央部材250を当接させることにより、ステープル適用アセンブリと係合しそれを発射するのに使用され得る。
【0031】
図4を参照すると、ステープルカートリッジ400は、図1の外科用ステープル留め及び切断器具100のような外科用ステープル留め及び切断器具と共に利用することができ、カートリッジデッキ402及び複数のステープルキャビティ404を含むことができる。例えば、ステープル406は、各ステープルキャビティ404内に、取り外し可能に配置することができる。未発射(配備前)形状のステープル406は、図5により詳細に示されている。ステープルカートリッジ400はまた、発射及び/又は切断部材(例えば、図3のE字形梁部233のようなE字形梁部)を受容するように構成され得る長手方向チャネルを含むことができる。
【0032】
各ステープル406は、クラウン(基部)406及びクラウン406から延出している1本以上の脚部406を備えることができる。ステープル406が配備される前に、ステープル406のクラウン406は、ステープルカートリッジ400内に配置されているステープルドライバ408によって支持され得るが、同時に、ステープル406の脚部406は、ステープルキャビティ404内に少なくとも部分的に収容され得る。更に、ステープル406のステープル脚部406は、ステープル406が未発射位置にあるとき、ステープルカートリッジ400の組織接触表面410を越えて延在することができる。特定の実例において、図5に示されるように、ステープル脚部406の先端部は、組織を切開及び貫通することができる鋭い先端部を含み得る。
【0033】
ステープル406は、未発射位置と発射位置との間に配備され得るが、それによりステープルキャビティ404を通って脚部406が移動し、図1のアンビル102のようなアンビルと、ステープルカートリッジ400との間に配置された組織を貫通し、アンビルと接触するようになっている。脚部406がアンビルに当たって変形するにつれて、各ステープル406の脚部406Lが、各ステープル406内で、組織の一部を捕捉し、この組織に圧縮力をかけることができる。更に、各ステープル406の脚部406は、ステープル406のクラウン406に向かって下方に変形して、組織が内部に捕捉され得るステープル捕捉領域を形成することができる。様々な事例において、ステープル捕捉領域は、変形した脚部の内側表面と、ステープルのクラウンの内側表面との間で画定され得る。ステープルの捕捉領域の大きさは、例えば、脚部の長さ、脚部の直径、クラウンの幅及び/又は脚部の変形の程度などのいくつかの要素に依存し得る。
【0034】
使用時には、図1のアンビル102のようなアンビルは、図1の閉鎖トリガ116のような閉鎖トリガを押し下げることによって、閉鎖位置へと移動させることができ、図3のE字形梁部233のようなE字形梁部を前進させることができる。アンビルは、組織を、ステープルカートリッジ400の組織接触表面410に押し当てて配置することができる。アンビルが適切に配置されると、ステープル406を配備することができる。
【0035】
上で論じたようにステープル406を配備するために、図2のスレッド230のようなステープル発射スレッドは、ステープルカートリッジ400の近位端400pから遠位端400dに向かって移動され得る。図3の発射アセンブリ228のような発射アセンブリが前進するにつれて、スレッドは、ステープルドライバ408に接触し、ステープルドライバ408を、ステープルキャビティ404の内部で上方に持ち上げることができる。少なくとも1つの例において、スレッド及びステープルドライバ408はそれぞれ、1つ以上の傾斜面、すなわち斜めになった表面を含み得るが、これらが協働して、ステープルドライバ408を、未発射位置から上方に動かすことができる。ステープルドライバ408がそれぞれのステープルキャビティ404内で上方に持ち上げられるにつれて、ステープルドライバ408がステープル406を上方に持ち上げ、これによりステープル406がステープルキャビティ404から出てきて、組織の中に入り込み得る。様々な事例において、スレッドは、発射シーケンスの一部として、いくつかのステープルを同時に上方に移動させることができる。
【0036】
当業者は、スキャフォールドが図示され、以下に説明されるが、本明細書で開示されるスキャフォールドは、他の外科用器具と共に使用することができ、記載されているようなステープルカートリッジに連結する必要がないことを理解するであろう。
【0037】
上述したように、いくつかの外科用ステープル留め器具では、外科医は、ステープル留めされる組織に対して適切なステープル高さを有する適切なステープルを選択することを求められることが多い。例えば外科医は、厚い組織に使用するには背の高いステープルを選択し、薄い組織に使用するには背の低いステープルを選択することができる。しかしながら、一部の事例では、ステープル留めされている組織は、その厚さが一貫したものではないため、ステープルは、ステープル留めされた組織の全てのセクション(例えば、厚い組織のセクション及び薄い組織のセクション)に対して、所望の発射後形状を達成することができるというわけではない。組織の厚さが一貫していないことはまた、同じ又は実質的に同じ高さを有するステープルが使用される場合、特にステープル部位がステープル部位での、かつ/又はステープルラインに沿った組織内圧力に晒された場合に、ステープル留めされた部位における望ましくない漏れ及び/又は組織の引き裂きをもたらし得る。
【0038】
したがって、手術中に組織をステープル留めする際にステープル高さを考慮する必要がなくなるように、発射後の(配備後の)ステープル内に捕捉される組織の様々な厚さを補償するように構成され得るスキャフォールドの様々な実施形態が提供される。すなわち、本明細書に記載されるスキャフォールドは、同じ又は類似の高さを有するステープルのセットを、様々な厚さの組織(すなわち、薄い組織から厚い組織まで)をステープル留めする際に使用されるのを可能にしつつ、スキャフォールドと組み合わせて、発射後のステープル内及び発射後のステープル間に適切な組織圧縮を提供することができる。したがって、本明細書に記載されるスキャフォールドは、ステープル留めされた薄い又は厚い組織に対して好適な圧縮を維持することができ、それによって、ステープル部位における組織からの漏出及び/又は組織の引き裂きを最小限に抑えることができる。
【0039】
代替的には、又は加えて、スキャフォールドは、組織の内方成長を促進するように構成され得る。様々な事例において、治療される組織(例えば、ステープル留め及び/又は切開される組織)の治癒を促進するため、及び/又は患者の回復を加速するために、埋め込み可能なスキャフォールドの中への組織の内方成長を促進させることが望ましい。より具体的には、埋め込み可能なスキャフォールドへの組織の内方成長により、手術部位での炎症の発生率、程度、及び/又は期間が減少し得る。埋め込み型スキャフォールドの中への、及び/又はその周辺での組織の内方成長により、例えば、手術部位での感染症の拡大が管理され得る。例えば埋め込み型スキャフォールドの中への、及び/又はその周辺での、血管、特に白血球の内方成長は、埋め込み型スキャフォールド及び隣接組織の中で、及び/又はそれらの周辺での感染に対抗し得るものである。組織の内方成長はまた、患者の身体による、異物(例えば、埋め込み型スキャフォールド及びステープル)の受容を促し、患者の身体が異物を拒絶する可能性を低減し得る。異物の拒絶により、手術部位では感染及び/又は炎症が生じ得る。
【0040】
一般に、本明細書で提供されるスキャフォールドは、図4のステープルカートリッジ400のようなステープルカートリッジの上に設計及び配置され、それによりステープルがステープルカートリッジのカートリッジデッキから発射(配備)されるときに、ステープルがスキャフォールドを貫通して組織内に入り込むようになっている。ステープルの脚がステープルカートリッジアセンブリと向かい合って配置されたアンビルに押し当てられて変形されるにつれて、変形した脚部が、各ステープル内に、スキャフォールドの一部及び組織の一部を捕捉するようになる。すなわち、ステープルが組織内に発射されると、スキャフォールドの少なくとも一部分が組織と発射後のステープルとの間に配置される。本明細書に記載されるスキャフォールドは、ステープルカートリッジアセンブリのステープリングカートリッジに取り付けられるように構成されているが、本明細書では、スキャフォールドは、外科用ステープル留め器具のジョーなどの他の器具構成要素と嵌合するように構成され得るということも企図される。
【0041】
図6は、ステープルカートリッジ602とスキャフォールド604とを含む、ステープルカートリッジアセンブリ600の例示的な実施形態を示す。以下に詳細に記載される相違点以外は、ステープルカートリッジ602は、ステープルカートリッジ400(図4)と同様であってよいので、本明細書では詳細には説明しない。図示のように、スキャフォールド604は、ステープルカートリッジ602に押し当てられて配置される。ステープルカートリッジは、カートリッジデッキ606と、図4及び図5に示されるステープル406のような複数のステープル608とを含むことができる。ステープル608は任意の好適な未成形時(配備前)高さを有し得る。例えば、ステープル608は、約2~4.8mmの未形成時高さを有し得る。配備の前に、ステープル608のクラウンが、ステープルドライバ610によって支持され得る。
【0042】
図示の実施形態では、スキャフォールド604は、カートリッジデッキ606の外側表面612、例えば組織接触表面に嵌合され得る。カートリッジデッキ606の外側表面612は、1つ以上の取り付け機構を含むことができる。1つ以上の取り付け機構は、スキャフォールド604と係合して、カートリッジデッキ606に対してスキャフォールド604が望ましくない移動をすること、及び/又はカートリッジデッキ606からスキャフォールド604が早すぎるタイミングで解放されることを回避するように構成され得る。例示的な取り付け機構は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0106427号に見出すことができる。
【0043】
スキャフォールド604は弾性的に変形可能であり、そのため、スキャフォールドは様々な高さに圧縮されることが可能となり、それによって、配備されたステープル内に捕捉される組織が異なる厚さを有していても、それを補償することができるようになっている。スキャフォールド604は、未圧縮(未変形)、すなわち配備前の高さを有し、変形して複数の圧縮(変形)後、すなわち配備後の高さのうちの1つになるように構成されている。例えば、スキャフォールド604は、ステープル608の発射後高さ(例えば、図7の発射後のステープル608aの高さ(H))よりも高い未圧縮高さを有し得る。一実施形態では、スキャフォールド604の未圧縮高さは、ステープル608の発射後高さよりも、約10%高い、約20%高い、約30%高い、約40%高い、約50%高い、約60%高い、約70%高い、約80%高い、約90%高い、又は約100%高いということが可能である。特定の実施形態において、スキャフォールド604の未圧縮(又は配備前)高さは、例えば、ステープル608の発射後高さよりも、100%を超えて高いものであり得る。
【0044】
スキャフォールド604は、カートリッジデッキ606の外側表面612と、解放可能に嵌合され得る。図7に示すように、ステープルが発射されると、組織(T)とスキャフォールド604の一部とが、発射後(成形後)のステープル608aによって捕捉される。発射後のステープル608aは、その中に捕捉領域を画定し、捕捉されたスキャフォールド604及び組織(T)を収容する。発射後のステープル608aによって画定される捕捉領域は、発射後のステープル608aの高さ(H)によって、少なくとも部分的に制限される。例えば、発射後のステープル608aの高さは、約0.130インチ以下であり得る。一部の実施形態において、発射後のステープル608aの高さは、約0.025~0.130インチであり得る。一部の実施形態において、発射後のステープル608aの高さは、約0.030~0.100インチであり得る。
【0045】
上記のように、スキャフォールド604は、ステープル内に捕捉された組織の厚さが各ステープル内で同じであるか又は異なるかどうかにかかわらず、複数の発射後のステープル内で圧縮され得る。少なくとも1つの例示的な実施形態では、ステープルライン(列)内のステープルは変形されて、発射後の高さが、例えば約2.75mmとなるようにすることができ、その高さ内で、組織(T)とスキャフォールド604とは圧縮され得る。特定の例では、組織(T)は、約1.0mmの圧縮後高さを有することができ、スキャフォールド604は、約1.75mmの圧縮後高さを有することができる。特定の例では、組織(T)は、約1.50mmの圧縮後高さを有することができ、スキャフォールド604は、約1.25mmの圧縮後高さを有し得る。特定の例では、組織(T)は、約1.75mmの圧縮後高さを有することができ、スキャフォールド604は、約1.00mmの圧縮後高さを有し得る。特定の例では、組織(T)は、約2.00mmの圧縮後高さを有することができ、スキャフォールド604は、約0.75mmの圧縮後高さを有することができる。特定の例では、組織(T)は、約2.25mmの圧縮後高さを有することができ、スキャフォールド604は、約0.50mmの圧縮後高さを有し得る。つまり、捕捉された組織(T)及びスキャフォールド604の圧縮後高さの合計は、発射後のステープル608aの高さ(H)と等しく、又は少なくとも実質的に等しいものであり得る。
【0046】
以下でより詳細に論じられるように、スキャフォールドの構造は、スキャフォールド及び組織が発射後のステープル内に捕捉されると、スキャフォールドが、組織を通って循環する血液の圧力に耐えることができる応力を印加することができるように構成され得る。高血圧は、典型的には210mmHgと見なされており、したがって、スキャフォールドは、所定の期間(例えば、3日間)にわたって、210mmHg以上(例えば、3g/mm)の応力を、組織に印加することが望ましい。したがって、特定の実施形態では、スキャフォールドは、少なくとも約3g/mmの応力を、捕捉された組織に少なくとも3日間印加するように構成され得る。スキャフォールドは、スキャフォールドが生体内で組織にステープル留めされるとき、組織配備状態にある。一実施形態では、印加される応力は、約3g/mmであり得る。別の実施形態では、印加される応力は、3g/mm超であり得る。更に別の実施形態では、応力は、少なくとも約3g/mmであってもよく、捕捉された組織に、3日を超えて印加され得る。例えば、一実施形態では、応力は、少なくとも約3g/mmであってよく、約3~5日間にわたって、捕捉された組織に適用され得る。
【0047】
捕捉された組織に少なくとも約3g/mmの応力を所定時間適用するように構成されたスキャフォールドを設計するために、フックの法則(F=kD)の原理を使用することができる。例えば、捕捉された組織に印加される力(応力)が既知である場合、スキャフォールドを、ある剛性(k)を有するように設計することができる。剛性は、スキャフォールドの材料及び/又は形状(例えば、繊維の種類及び/若しくは直径、並びに/又は繊維の相互接続性)を調整することによって設定することができる。更に、組織の最小厚さ、例えば1mmに対して、最大量の圧縮変位を有するようにスキャフォールドを設計することができる。したがって、変位の長さDは、所与の最大ステープル高さ、例えば、2.75mmに対して、組織の最小厚さ(例えば1mm)に、ステープル留めされた場合の組織の厚さを足したものであり得る。例として、一実施形態では、スキャフォールドは、最大成形されたステープルの最大高さ2.75mmを超える高さを有し、最小厚さ1mmを有する組織にステープル留めされたときに1.75mmの高さまで圧縮するように構造化することができる。したがってスキャフォールドは、圧縮性において様々に変化し得るので、一定の長さの変位Dを維持することができ、捕捉された組織及びスキャフォールドの剛性(k)及び総厚さ(D)が、捕捉された組織に3g/mmの応力を印加することができるようになっている。なお、当業者であれば、例えば、補助材が埋め込み後に室温から体温に変化させられる場合に、前述の式が温度の変動を考慮するように変更され得ることを理解するであろう。
【0048】
更に、スキャフォールドは、捕捉された組織に、所定の時間(例えば、3日間)にわたって、実質的に連続的な応力(例えば、3g/mm)を提供するように更に開発され得る。これを達成するために、スキャフォールドの材料の分解速度及びスキャフォールド内の組織の内方成長速度を考慮する必要がある。その際、スキャフォールドの剛性及び/又は捕捉された組織及びスキャフォールドの総厚さが、3g/mm未満の印加応力をもたらすことができる様式では変化しないように、スキャフォールドを設計することができる。
【0049】
スキャフォールドは、様々なステープル留め条件(例えば、組織厚さ、成形されたステープルの高さ、組織内圧力)の下で、組織にステープル留めされる。ステープル留め条件に応じて、組織の引き裂き及び漏出を防止するために、スキャフォールドが組織に適用できる必要がある有効量の応力を決定することができる。例えば、一実施形態では、有効量の応力は、少なくとも約3g/mmである。スキャフォールドが組織に、有効な量の応力を提供するためには、スキャフォールドは、様々なステープル留め条件を効果的に補償するように設計され得る。したがって、スキャフォールドは、組織にステープル留めされたときに異なる圧縮高さをとるように調整され得る。組織内圧力、組織厚さ及び成形されたステープル高さが有限範囲であるため、ある範囲のステープル留め条件にわたって、所与の時間(例えば、少なくとも3日間)にわたって、スキャフォールドが組織にステープル留めされたときに、実質的に連続的な所望の応力(例えば、3g/mm)を組織に印加するのに有効であり得る、スキャフォールドにとって適切な材料及び/又は幾何学的構造を決定することができる。すなわち、以下により詳細に記載されるように、本スキャフォールドが組織にステープル留めされたときに、本スキャフォールドが所定の平面内の様々な高さに圧縮され得るように、本スキャフォールドは圧縮性材料で形成され、幾何学的に構成されている。更に、スキャフォールドがこのように異なる応答ができるため、スキャフォールドが組織にステープル留めされたときに生じ得る組織内圧力の変動(例えば、血圧のスパイク)に曝露されたときにも、スキャフォールドが組織への連続的な所望の応力を印加し続けることを可能にし得る。
【0050】
スキャフォールドは、様々な構成を有することができる。例えば、特定の実施形態では、スキャフォールドは、少なくとも1つのニット層と、少なくとも1つの支持層と、を含むことができる。本明細書では、「ニット層」は、「ニットゾーン」と同義的に使用され、「支持層」は、「スペーサゾーン」と同義的に使用される。
【0051】
図8A図8C及び図9は、スキャフォールド800の例示的な実施形態を示し、そのスキャフォールド800は、第1のニット層802及び第2のニット層804を有し、それらの間には支持層806が配置されている。この図示された実施形態では、第1のニット層802は組織に押し当てられて配置されるように構成することができ、第2のニット層804は、図6のカートリッジデッキ606のようなカートリッジデッキに押し当てられて配置されるように構成され得る。
【0052】
図示のように、ニット層802、804は、第1のタイプの繊維808及び第2のタイプの繊維810を含み、支持層806は第2のタイプの繊維810を含む。このように、2種類の異なる繊維808、810でスキャフォールド800を形成させることによって、スキャフォールドが、埋め込み後に時が経つにつれて変化し得る、可変的剛性プロファイルを有することができる。例えば、第1のタイプの繊維808は、ニット層802、804の構造構成要素として機能することができ、その剛性プロファイルは、第1の種類の繊維808の分解プロファイルと、ニット層802、804内での、第1のタイプの繊維808と第2のタイプの繊維810との間の相互作用との関数であり得る。
【0053】
更に、ニット層802、804は、スキャフォールド800がカートリッジデッキに取り付けられるとき、第1のタイプの繊維808の少なくとも一部が、カートリッジデッキに実質的に平行な方向に向けられているように構成され得る。第1のタイプの繊維808及び第2のタイプの繊維810は、様々なサイズを有することができるが、一部の実施態様では、第1のタイプの繊維808は、第2のタイプの繊維810の繊維直径よりも小さい繊維直径を有する。
【0054】
ニット層802、804及び支持層806の繊維808、810は、モノフィラメント又はマルチフィラメントのいずれかであり得るが、一部の実施態様では、図8A図8C及び図9に示すように、第1のタイプの繊維808はマルチフィラメント繊維であり、第2のタイプの繊維810はモノフィラメント繊維である。本明細書で使用するとき、用語「モノフィラメント繊維」は、それ自体の通常及び慣例的な意味を有し、単一のフィラメントから形成された繊維を含むことができる。本明細書で使用するとき、用語「マルチフィラメント繊維」は、それ自体の通常及び慣例的な意味を有し、互いに関連付けられて一体構造を形成する2本以上のフィラメントから形成された繊維を含むことができる。一実施形態では、マルチフィラメント繊維は、非結合マルチフィラメント繊維である。本明細書で使用するとき、「非結合マルチフィラメント繊維」は、それ自体の通常及び慣例的な意味を有し、それらの長さに沿って少なくとも1つの点で互いに接触するが、互いに物理的に取り付けられていない2本以上のフィラメントのアセンブリを含むことができる。非結合マルチフィラメント繊維の非限定的な例としては、紡績糸(長さに沿って互いに撚り合わされたフィラメント)及びトウ(フィラメントは、それらの長さに沿っては互いに撚られていないフィラメント)を含む。
【0055】
マルチフィラメント繊維は、様々な構成を有することができる。例えば、一部の実施態様では、各マルチフィラメント繊維は、約6~40本のフィラメントを含む。一態様では、各マルチフィラメント繊維は、約14~28本のフィラメントを含む。マルチフィラメント繊維のフィラメントどうしの間に存在する表面積及び空隙の増加は、スキャフォールド内の組織内方成長の改善を促進することができる(例えば、実施例2を参照)。
【0056】
マルチフィラメント繊維は、様々なサイズを有し得る。例えば、各マルチフィラメント繊維は、約0.02~0.2mm、約0.05~0.2mm、又は約0.15~0.2mmの平均直径を有することができる。一部の実施態様では、マルチフィラメント繊維の各フィラメントは、モノフィラメント繊維の繊維直径よりも小さい直径を有する。例えば、ニット層802、804が、マルチフィラメント繊維である第1のタイプの繊維、及びモノフィラメント繊維である第2のタイプの繊維を含む場合、マルチフィラメント繊維の各フィラメントは、モノフィラメント繊維の直径の約1/5~1/20の直径を有し得る。特定の実施形態では、マルチフィラメント繊維の各フィラメントは、モノフィラメント繊維の直径の約1/10の直径を有することができる。
【0057】
マルチフィラメント繊維は、同じ材料で形成されたフィラメントから、又は異なる材料のフィラメントから形成することができる。例えば、一部の実施態様では、マルチフィラメント繊維は、第1の材料の第1のフィラメント及び第2の材料の第2のフィラメントを含むことができる。一実施形態では、第2の材料は、第1の材料の分解速度よりも速い速度で分解する。このようにして、第2の材料の分解は、マクロファージを活性化することができ、したがって、マクロファージを加速度的に引きつけるのを促進し、治癒の炎症フェーズを加速化させ、スキャフォールドの、移植後の経時的な可変的剛性プロファイルに実質的に影響を及ぼさない。マクロファージの活性化は、筋線維芽細胞集団及び血管新生の増加を引き起こすことができる。更に、第2の材料の分解は、スキャフォールド内で組織が内方成長するのを促進することができる。第1の材料は、例えば、ポリ-L乳酸、グリコリドとL-ラクチドとの共重合体、グリコール酸と乳酸との共重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(乳酸)、ポリグリコリド、及び、グリコリドと、カプロラクトンと、トリメチレンカーボネートと、ラクチドとの共重合体のうちの少なくとも1つであり得る。好適な第1の材料の非限定的な例は、ポリグラクチン910、Lactomer(商標)9-1、75:25又は50:50の乳酸/グリコール酸、Polygytone(商標)6211、又はCaprosyn(商標)で形成することができる。第2の材料は、例えば、Vicryl Rapide(商標)などのグリコリドとL-ラクチドとの共重合体であり得る。
【0058】
マルチフィラメント繊維は、様々な割合範囲で第2のフィラメントを含むことができるが、一部の実施態様では、マルチフィラメント繊維はそれぞれ、約15~85%の範囲又は約25~45%の範囲の第2のフィラメントを含むことができる。第2のフィラメントは、様々な繊維直径を有することができる。例えば、一部の実施態様では、第2のフィラメントは、約0.0005~0.02mmの繊維直径を有することができる。一実施形態では、第2のフィラメントは、約0.015mmの繊維直径を有する。
【0059】
モノフィラメント繊維は、様々なサイズを有し得る。例えば、モノフィラメントは、約0.2~0.35mmの直径を有することができる。一部の実施態様では、モノフィラメント繊維はそれぞれ、マルチフィラメント繊維の平均直径よりも小さい直径を有することができる。マルチフィラメント繊維の平均直径(D)は、以下の式を使用して計算することができる。
【0060】
【数1】
式中、
W:単位長さ当たりのマルチフィラメント繊維(繊維束)の重量
N:フィラメントの本数
ρ:繊維の密度。
【0061】
第1のタイプの繊維808及び第2のタイプの繊維810は、様々なガラス転移温度を有することができるが、一部の実施態様では、第1のタイプの繊維808は第1のガラス転移温度を有し、第2のタイプの繊維810は、第1のガラス転移温度未満である第2のガラス転移温度を有する。例えば、第1のガラス転移温度は、第2のガラス転移温度よりも少なくとも約30℃高いものであり得る。他の例示的な実施形態では、第1のガラス転移温度は、第2のガラス転移温度より少なくとも約45℃高いものであり得る。第1のタイプの繊維808及び第2のタイプの繊維810のガラス転移の差は、スキャフォールドの構造的一体性に悪影響を及ぼすことなく、カートリッジデッキへのスキャフォールドの確実な取り付けを更に容易にすることができる。
【0062】
既に述べたように、スキャフォールドの一部は、発射後のステープル内に組織と共に捕捉されるため、スキャフォールドが、好適な生体吸収性材料で形成されることが望ましい。したがって、第1のタイプの繊維808及び第2のタイプの繊維810はそれぞれ、様々な吸収性材料で形成することができる。第1のタイプの繊維に好適な材料の非限定的な例としては、ポリ-L乳酸、グリコリドとL-ラクチドとの共重合体、グリコール酸と乳酸との共重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(乳酸)、ポリグリコリド、及びグリコリドと、カプロラクトンと、トリメチレンカーボネートと、ラクチドとの共重合体のうちの少なくとも1つが挙げられる。例えば、第1のタイプの繊維は、ポリグラクチン910、Lactomer(商標)9-1、75:25又は50:50の乳酸/グリコール酸、Polygytone(商標)6211、又はCaprosyn(商標)で形成することができる。第2のタイプの繊維に好適な材料の非限定的な例としては、ポリジオキサノン、ポリジオキサノンとポリグリコリドとの共重合体、ラクチドとポリカプロラクトンとの共重合体、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとの共重合体、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシアルカノエート、及びポリグリコネートうちの少なくとも1つが挙げられる。例えば、第2のタイプの繊維は、92:8ポリジオキサノン/ポリグリコリド、25:75ラクチド/ポリカプロラクトン、Glycomer(商標)631、又はMaxon(商標)で形成することができる。一実施形態では、第1のタイプの繊維はポリグラクチン910で形成され、第2のタイプの繊維はポリジオキサノンで形成されている。
【0063】
一部の実施形態では、第1のタイプの繊維808は、生体吸収性ポリマー材料でコーティングされ得る。このようにして、第1のタイプの繊維808のガラス転移温度は、例えば第1のタイプの繊維の基材のガラス転移温度と比較してガラス転移温度を上昇又は低下させることによって変更することができ、特定の事例では、これはスキャフォールドをカートリッジデッキに取り付けるために望ましい場合がある。例えば、第1のタイプの繊維808のガラス転移温度を低下させることは、スキャフォールド800の、図6のカートリッジデッキ606のようなカートリッジデッキへのより確実な取り付けを提供することができ、かつ/又はスキャフォールド800のカートリッジデッキへの適合性を向上させ、冷却されると好適な形状を維持することができる。好適なコーティング材料の非限定的な例としては、ポリジオキサノン又は25:75ラクチド/ポリカプロラクトンが挙げられる。
【0064】
ニット層802、804はそれぞれ、図8A図8C及び図9のように、一部の実施態様では、様々な編まれたパターンを有し得る。では、ニット層802、804はそれぞれ、ラッシェル編みパターンを有することができる(例えば、以下の実施例1に記載されるように)。当業者であれば、スキャフォールドのニットが他のワープニットパターンの形態をとることができることを理解するであろう。
【0065】
図8A図8C及び図9に示されるように、第2のタイプの繊維810は、第1の繊維及び第2の繊維が非固定的に取り付けられ、摺動可能に相互接続されるようなあり方で、第1のニット層802及び第2のニット層804の第1のタイプの繊維808と相互接続する。したがって、この例示された実施形態では、第1のタイプの繊維808及び第2のタイプの繊維810は、互いに対して移動することができ、それによって、移動及びx方向(例えば、伸張)及びy方向(例えば、圧縮)の拡張を可能にする。加えて、第1のタイプの繊維808と第2のタイプの繊維810との間の相互接続は、少なくとも部分的に、スキャフォールド800の剛性に影響を及ぼし得る。例えば、相互接続がより緊密になると、スキャフォールド800がより高い剛性を有するようになる。
【0066】
更に、図8A図8C及び図9に示されるように、第1のニット層802及び第2のニット層804はそれぞれ、内部に形成された複数の開口部812を含む。第1のニット層802及び第2のニット層804の開口部812はそれぞれ、第1のタイプの繊維808及び第2のタイプの繊維810から形成された周辺部を有する。第2のニット層804の開口部812は、図5のステープル406のようなステープルのクラウンの幅の約1/4未満のサイズを有し得る。したがって、一部の実施態様では、発射後のステープルのクラウンは、第2のニット層804内の少なくとも4つの開口部812にわたって広がることができる。一実施形態では、開口部812は、クラウンの幅の約1/8であるサイズを有することができる。ステープルのクラウンは様々な幅を有することができるが、一部の実施態様では、クラウンの幅は、約0.080~0.140インチであり得る。一実施形態において、クラウンの幅は約0.12インチである。
【0067】
第1のニット802及び第2のニット804内の複数の開口部812は、様々なサイズを有することができる。例えば、第2のニット層804内の複数の開口部812は、約0.002~0.1インチの直径を有し得る。本明細書で使用するとき、開口部の「直径」は、開口部の任意の対の頂点間の最大距離である。
【0068】
上述したように、図8A図8C及び図9に図示されているように、スキャフォールド800は、第1のニット層802と第2のニット層804との間に配置された支持層806を含む。支持層806は、第1のニット層802及び第2のニット層804に、非固定的に取り付けられている。支持層806は、スキャフォールド800が、図6のカートリッジデッキ606のようなカートリッジデッキに取り付けられるときに、支持層806の第2のタイプの繊維810の少なくとも一部が、カートリッジデッキに対して実質的に非平行な方向に向けられているように構成され得る。支持層806は、図8A図8C及び図9において、この例示的な実施形態ではモノフィラメントである第2のタイプの繊維810のみを含むよう示されているが、本明細書では、支持層806は、例えば、第1のタイプの繊維808を含む追加的タイプの繊維を含むことができるということも想到される。
【0069】
図示のように、支持層806の繊維810は、起立(スペーサ)繊維814及びそれらの間に複数の空隙816を形成するように、支持層806内に配置されている。起立繊維814は、互いに非固定的に取り付けられている。更に、起立繊維814は、第1のニット層802及び第2のニット層804の第1のタイプの繊維808に、非固定的かつ摺動可能に相互接続されている。一部の実施態様では、複数の空隙816は、第1のニット層802及び第2のニット層804内の複数の開口部812よりも大きいものであり得る。
【0070】
起立繊維814は、スキャフォールド800に印加される力の下で(例えば、組織にステープル留めされたとき)、屈曲するように構成されている。起立繊維814の弾力性により、少なくとも部分的に、スキャフォールドが様々な高さに圧縮されるのを可能にし、それによって、スキャフォールドが、異なる厚さの組織部分を有する組織(T)を収容することが可能になる。すなわち、特定の組織厚さとは無関係に、発射後のステープル内の、捕捉された組織及びスキャフォールドの圧縮高さの合計を維持することができ、したがって、その合計は、発射後のステープルの高さに等しいか又は少なくとも実質的に等しくなり得る。このようにして、少なくとも部分的に、スキャフォールド800は、少なくとも所定の期間(例えば、少なくとも約3日間)にわたって、少なくとも約3g/mmの応力を、捕捉された組織に印加するように構成され得る。
【0071】
一般に、各起立繊維814の材料組成、高さ及び/又は横断面積が、その剛性又は圧縮下で撓曲する能力を少なくとも部分的に制御し、次いでその能力が、スキャフォールド800の圧縮性を少なくとも部分的に制御する。したがって、起立繊維814は、スキャフォールド800の圧縮性を1つ以上の所望の値へと調整するように構成され得る。例えば、図8B図8C及び図9中の起立繊維814は、同じ材料から作られるが、一部の実施態様では、支持層806は、異なる剛性を有する異なる材料の起立繊維を含むことができる。代替的に又は追加的に、一部の実施態様では、支持層806は、異なる高さ及び/又は横断面積の起立繊維を含むことができる。一実施形態では、起立繊維814は、例えば、約25:1~6:1という比の、高い長さ対直径比を有し得る。このように、起立繊維814は、埋め込まれたスキャフォールド内で、組織が内方成長し細胞が統合されるのを更に促進することができる。
【0072】
支持層806の特定のセクション内の起立繊維814の量はまた、とりわけ、そのようなセクションの圧縮性、ひいてはスキャフォールド800の圧縮性に影響を及ぼし得る。特定の事例では、起立繊維814は、例えば、支持層806のうちの特定のセクションに戦略的に集中され、そのようなセクションにおける柱強度を高めるようになっていることができる。少なくとも1つの事例では、起立繊維814は、ステープルが発射されたときにステープルを受容するように構成された、支持層806のセクションに集中され得る。代替的には、起立繊維814は、ステープルが発射されたときにステープルを受容しない支持層806のセクションに集中され得る。
【0073】
起立繊維814に対する空隙816の比率は、様々に変化し得る。一実施態様では、この比は、少なくとも約3:1の範囲であり得る。他の実施態様では、起立繊維814に対する空隙816の比率は、少なくとも約5:1、又は少なくとも約12:1の範囲であり得る。更に、支持層806内の空隙816の少なくとも一部分は、それぞれ異なるサイズを有することができる。このようにして、スキャフォールド800の断面全体にわたる可変的空隙径は、細胞外リモデリングを促進することができる。すなわち、可変的空隙径は、スキャフォールド800が埋め込まれたときの、スキャフォールド内の細胞の血管再生及び細胞の移動性を促進することができ、それによって組織及び細胞の内方成長をともに促進することができる。更に、可変的空隙径はまた、埋め込まれたスキャフォールドから、したがって埋め込み部位からの、副生成物及び細胞廃棄物の抽出を容易にすることができる。
【0074】
一部の実施形態では、スキャフォールド800はまた、第2のニット層804に相互接続された多孔質層をも含むことができる。このように、スキャフォールド800が、図6のカートリッジデッキ606のようなカートリッジデッキに取り付けられるとき、多孔質層は、カートリッジデッキと第2のニット層804との間に配置される。一実施形態では、多孔質層は、第2のニット層804に融合又は結合される。多孔質層は、スキャフォールド800の繊維808、810よりも低いガラス転移温度を有する材料で形成され得る。本明細書では、多孔質層は、スキャフォールド800の繊維808、810の少なくとも1つと同じか、又はより高いガラス転移温度を有する材料で形成され得るということも想到される。多孔質層は、約0.003インチ未満の厚さを有することができる。一実施形態では、多孔質層は、約0.001インチ未満の厚さを有する。多孔質層はまた、直径約0.0005インチ超の細孔を含むことができる。例えば、一部の実施態様では、細孔はそのサイズが、約0.0005~約0.001インチで変化し得る。更に、一部の実施態様では、細孔は、層の表面積の50%を構成することができる。
【0075】
本明細書に記載されるスキャフォールドは、図8A図8C及び図9中のスキャフォールド800と同様に、任意の好適な方法を用いて製造することができる。例えば、一実施形態では、その方法は、第1のニット層を形成することと、第2のニット層を形成することと、スペーサを第1のニット層及び第2のニット層と相互に編み込むことと、を含み得る。第1のニット繊維及び第2のニット繊維は、第1のポリマーの繊維を含み得る。第1のニット層は、カートリッジデッキと嵌合するように構成され得る。スペーサ繊維を第1のニット層及び第2のニット層と相互に編み込むことにより、第1のニット層及び第2のニット層を、離間した平行な関係で一緒に接続することができる。本明細書で使用するとき、「離間した平行関係」とは、互いから離れており、かつ互いと実質的に平行である平面内に、第1の層及び第2の層が延在することを意味する。スペーサ繊維は、第1のポリマーとは異なる第2のポリマーのみで形成され得る。第1のポリマー繊維は、第2のポリマー繊維の直径とは異なる直径を有することができる。スペーサ繊維は、第1のニット層及び第2のニット層と一体化され、第1のニット層と第2のニット層との間に延在することができる。この方法はまた、スペーサ繊維と相互に編み込まれた第1のニット層及び第2のニット層をアニールすることも含み得る。
【0076】
スペーサ繊維が第1のニット層及び第2のニット層との相互に編み込まれることにより、それらの間に、支持層を形成することができる。第1のニット層の形成は、第1のポリマー繊維を所定のパターンに従って編むことを含み得る。第2のニット層の形成は、第1のポリマー繊維を所定のパターンに従って編むことを含み得る。ニット層はそれぞれ様々なニットパターンを有することができるが、一部の実施態様では、ニット層はそれぞれ、ラッシェル編みパターンを有することができる(例えば、以下の実施例1に記載されるように)。当業者であれば、スキャフォールドのニット層が他の経編パターンの形態をとることができることを理解するであろう。
【0077】
図12Aは、スキャフォールド1000の、別の例示的実施形態を図示する。以下に詳細に記載される相違点以外、スキャフォールド1000は、スキャフォールド800(図8A図8C及び図9)と同様であってよく、したがって、本明細書では詳細に説明しない。この実施形態では、スキャフォールド1000は、第1の部分1004と第2の部分1006とを有する第1のニット層1002を含み、第1の部分1004と第2の部分1006とはそれぞれ、外側縁部及び内側縁部を有する。内側縁部1004a、1006aは、スキャフォールド1000の長手方向軸線(L)に沿って延在するチャネル1008を画定する。チャネル1008は、ナイフなどの切断部材を受容するように構成されている。図12Bに示されるように、チャネル1008は、スキャフォールド1000を完全に貫通して延在はしていない。特に、チャネル1008は、第2のニット1010を貫通して延在はしてしない。このように、スキャフォールド1000は、十分な構造的一体性を有するように構成され、それによって効果的に操作され、図12Bのカートリッジデッキ2014のようなカートリッジデッキに取り付けられる。別の実施形態では、図13に示すように、スキャフォールド3000は、穿孔されたチャネル3008を有し得る。使用中、切断部材が最初に発射され、スキャフォールド1000に沿って移動するとき、切断部材は第2のニット層1010を切断し、それによってスキャフォールド1000を2つの断片に分離する。
【0078】
更に、図12Aに示すように、スキャフォールド1000は、以下で更に説明するように、図12Bのカートリッジデッキ2014の陥凹チャネル2016のような陥凹チャネルと嵌合するように構成されたフランジ1012を含む。図12Aは、スキャフォールド1000の一方の側にフランジ1012を有するスキャフォールド1000を示しているが、スキャフォールド1000の反対側に配置された追加のフランジ1012が存在する。当業者であれば、フランジ1012の数及び配置は、図12Aに図示されるものに限定されないことを理解するであろう。フランジ1012は様々な材料で作製することができるが、一部の実施態様では、図12Aに示すように、フランジ1012は、第2のニット層1010の延長部である。他の実施形態では、フランジ1012は、異なる材料で形成され、スキャフォールド1000の他の構成要素と直結又は非直結で形成され得る。当業者であれば、フランジは、スキャフォールドの第1のニット層及び/又は第2のニット層の材料と同じ又は異なる材料で形成され得ること、及び任意の好適な方法によってそれに取り付けられ得ることを理解するであろう。
【0079】
図12Bは、ステープルカートリッジアセンブリ2000の別の例示的な実施形態を示す。以下に詳細に記載される相違点以外は、ステープルカートリッジアセンブリ2000は、ステープルカートリッジアセンブリ600(図6)と同様であり得るので、本明細書では詳細には説明しない。更に、簡潔にするために、ステープルカートリッジアセンブリ2000の、一部特定の構成要素は、図12Bには図示されていない。
【0080】
ステープルカートリッジアセンブリ2000は、陥凹チャネル2016を有するカートリッジデッキ2014に取り付けられた、図12Aのスキャフォールド1000を含む。スキャフォールド1000は、以下により詳細に記載されるように、任意の好適な方法を用いてカートリッジデッキに取り付けることができる。図示されているように、陥凹チャネル2016は、フランジ1012が、カートリッジデッキの側面(複数可)に取り付けられ得るようにフランジ1012を受容するように構成されている。このように、スキャフォールド1000は、カートリッジデッキ2014によりしっかりと取り付けられ、それによって使用中のスキャフォールド1000が、望ましくない移動をしてしまうのを防止することができる。
【0081】
任意の好適な方法を用いて、スキャフォールドをカートリッジデッキに適用して、ステープルカートリッジアセンブリを形成することができる。例えば、一部の実施形態では、その方法は、カートリッジデッキを加熱することと、スキャフォールドをカートリッジデッキの表面に押し当てて配置することと、を含むことができる。スキャフォールドは、第1のタイプの繊維及び第2のタイプの繊維を含み得るが、そのうち第1のタイプの繊維が主に存在する。本明細書で、「主に存在する」という表現が、ある層内の特定の繊維の量を説明するために使用されるときには、それは、その層内の繊維合計量の50%超の量を意味する。第1のタイプの繊維は、第1のガラス転移温度を有することができ、第2のタイプの繊維は、第1のガラス転移温度未満である第2のガラス転移温度を有することができる。カートリッジデッキは、少なくとも第2のガラス転移温度の温度に加熱され得る。この方法はまた、カートリッジデッキ及びそれに適用されたスキャフォールドを、第2のガラス転移温度未満である温度に冷却することを含み得る。
【0082】
スキャフォールドは、それぞれが、第1のタイプの繊維及び第2のタイプの繊維をともに有する第1のニット層及び第2のニット層と、第1のニット層と第2のニット層との間に配置された支持層とを含むことができる。そのような事例では、カートリッジデッキの表面に押し当ててスキャフォールドを配置することは、第1のニット層を表面に押し当てて配置することと、第1のニット層が結合して表面の形状に適合するように、スキャフォールドに力を加えることと、を含み得る。支持層は、第2のタイプの繊維で形成することができる。
【0083】
本明細書に開示される器具は、1回の使用の後に廃棄されるように設計することができ、又はこれらは複数回使用されるように設計することができる。しかしながらいずれの場合でも、器具を少なくとも1回使用した後で再調整して、再使用することができる。再調整は、器具を分解する工程、続いて特定の部分を洗浄又は交換する工程、及びその後の再組み立ての工程の任意の組み合わせを含むことができる。特に、器具は分解することができ、器具の任意の数の特定の部分又は部品を、任意の組み合わせで選択的に交換又は取り除くことができる。特定の部品を洗浄及び/又は交換すると、器具は、再調整設備において、又は外科的処置の直前に手術チームによって、後で使用するために再組立てすることができる。器具の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための様々な技術を利用してもよいことを、当業者は理解されよう。そのような技術の使用と、それにより再調整された器具は、全て本出願の範囲内にある。
【0084】
本教示は、以下の非限定的な実施例を参照することにより更に理解され得る。
【実施例0085】
実施例1:スキャフォールドの製造
2つのニット層と、それらの間に配置された支持層とを有するサンプルを用意した。2つのニット層はそれぞれ、バイクリル繊維(バイクリルのマルチフィラメント繊維)から形成され、支持層は、ポリジオキサノン(PDS)繊維(PDSのモノフィラメント繊維)から形成された。これらの詳細は以下の表1に提供される。
【0086】
【表1】
【0087】
試料は、6本のガイドバー(GB)構造を備えた16ゲージのダブルニードルバーラッシェル編機を使用して経編みであった。各ガイドバーを、パターン鎖を使用して個別に制御し、そのパターンを以下の表2に見出すことができる。PDSを支持層に使用し、バイクリルをニット層に使用した。
【0088】
【表2】
【0089】
5インチ幅の試料、約6.4ヤードを作製した。試料をイソプロピルアルコールで洗浄した。試料をロール上に置き、窒素パージされたホイルバッグ内で密封し、更に処理するまで窒素流下で保持した。
【0090】
次に、表3に記載のサイクル条件を使用して、試料のおよそ5インチ×5インチのセグメントをアニールした。
【0091】
【表3】
【0092】
次いで、アニーリングしたサンプルを切断して、約5mm×10mmの試料スキャフォールドを作製した。スキャフォールド試料のうちの1つを光学顕微鏡(OM)及びSEMによって検査した。サンプルスキャフォールドの様々なOM画像を、図8A図8Cに示す。またスキャフォールド試料の断面SEM画像を、図9に示す。
【0093】
実施例2:細胞内内方成長と炎症の抑制
実施例1で用意したサンプルスキャフォールドを、ヘマトキシリン及びエオシン染料(H&E)の染料を注射したウサギに最大90日間皮下移植した。移植されたスキャフォールドを60日目に除去したものの組織病理学画像を、図10A図10Bに示す。また、90日目に除去したものの画像は、図11A図11Bに示す。これらの画像に示される白い楕円/円は、垂直又はわずかに垂直からずれるかのいずれかで切断されたスキャフォールドの繊維である。図示のように、黒い箱は、埋め込み中に組織の内方成長が生じたスキャフォールドの部位の一部を示す。更に、図10B及び図11B中の矢印は、繊維の周囲の炎症性領域を示すものであり、治癒における炎症フェーズを示す。
【0094】
当業者には、上述の実施形態に基づいて本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明された内容により限定されるものではない。本明細書において引用されている全ての刊行物及び参照文献は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれている。参照によって全体又は一部が本明細書に組み込まれるとされる任意の特許、公開又は情報は、組み込まれる資料は、この文書に記載されている既存の定義、記述、又は他の開示資料と矛盾しない程度にのみ、本明細書に組み込まれる。したがって、本明細書に明確に示した開示内容は、本明細書に援用されるいかなる矛盾する文献にも優先するものとする。
【0095】
〔実施の態様〕
(1) 外科用ステープル留め器具と共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリであって、
複数のステープル及びカートリッジデッキを有するステープルカートリッジと、
少なくとも2種類の異なる繊維材料で形成され、前記カートリッジデッキと嵌合するように構成されているような取り付け特性を有する、編まれた弾性変形可能な生体吸収性スキャフォールドと、
を備え、
前記ステープルが、前記スキャフォールドを通って前記スキャフォールドに押し当てられて捕捉された組織の中へと配備可能であり、前記スキャフォールドが、
それぞれが、第1のタイプの繊維と第2のタイプの繊維とを有する第1のニット層及び第2のニット層であって、前記第1のタイプの繊維が主として存在し、前記第1のタイプの繊維が第1のガラス転移温度を有し、前記第2のタイプの繊維が前記第1のガラス転移温度未満である第2のガラス転移温度を有する、第1のニット層及び第2のニット層、並びに
前記第1のニット層と前記第2のニット層との間に配設され、前記第2のタイプの繊維から形成されている支持層、
を備える、ステープルカートリッジアセンブリ。
(2) 前記第1のタイプの繊維がマルチフィラメント繊維であり、前記第2のタイプの繊維がモノフィラメント繊維である、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(3) 前記第2のタイプの繊維は、前記第1のタイプの繊維及び前記第2のタイプの繊維が非固定的に取り付けられるような方法で、前記第1のニット層及び前記第2のニット層の前記第1のタイプの繊維と相互接続されている、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(4) 前記第1のガラス転移温度が、前記第2のガラス転移温度より少なくとも約30℃高い、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(5) 前記第1のタイプの繊維が、ポリ-L乳酸、グリコリドとL-ラクチドとの共重合体、グリコール酸と乳酸との共重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(乳酸)、ポリグリコリド、並びにグリコリドと、カプロラクトンと、トリメチレンカーボネートと、ラクチドとの共重合体のうちの少なくとも1つから形成されている、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【0096】
(6) 前記第2のタイプの繊維が、ポリジオキサノン、ポリジオキサノンとポリグリコリドとの共重合体、ラクチドとポリカプロラクトンとの共重合体、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとの共重合体、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシアルカノエート、及びポリグリコネートのうちの少なくとも1つから形成されている、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(7) 前記第1のタイプの繊維が、生体吸収性ポリマー材料でコーティングされている、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(8) 前記スキャフォールドが、前記カートリッジデッキに熱成形されるように構成され、前記第2のニット層が前記カートリッジデッキに当接する、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(9) 前記カートリッジデッキの外側表面が、前記スキャフォールドと係合するように構成された1つ以上の取り付け機構を備える、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(10) 前記スキャフォールドが組織内に配備された状態にあるときに、少なくとも3日間、前記スキャフォールドが、前記捕捉された組織に少なくとも約3g/mmの応力を印加するように構成されている、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【0097】
(11) 前記スキャフォールドが、非変形時高さから変形時高さまで変形するように構成され、前記非変形時高さは、前記ステープルが形成された形状にあるときの前記複数のステープルのうちの各ステープルの高さよりも大きい、実施態様1に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(12) 外科用ステープル留め器具と共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリであって、
複数のステープル及びカートリッジデッキを有するステープルカートリッジと、
編まれた弾性変形可能な生体吸収性スキャフォールドと、を備え、前記ステープルが、前記スキャフォールドを通って前記スキャフォールドに押し当てられて捕捉された組織の中へと配備可能であり、前記スキャフォールドは少なくとも2つの層を含み、
前記第1の層がニット層であり、かつ第1の繊維及び第2の繊維を含み、前記第1の繊維及び前記第2の繊維が互いに異なる材料で形成され、かつ前記第1の繊維が、前記第2の繊維のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有し、
前記第2の層が、前記第2の繊維のみを含み、前記第2の層内の前記第2の繊維は、前記第1のニット層に、前記第2の繊維が前記第1の層内の前記第1の繊維に対して実質的に垂直に向けられた支持部材を形成するような方法で編み込まれている、ステープルカートリッジアセンブリ。
(13) 前記スキャフォールドが、前記第1の繊維及び前記第2の繊維を含む第3の層を更に含み、前記第3の層がニット層であり、かつ前記第2の層が、前記第1の層と前記第3の層との間に配置されている、実施態様12に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(14) 前記第2の繊維は、前記第1の繊維及び前記第2の繊維が非固定的に取り付けられるような方法で、前記第1の繊維と相互接続されている、実施態様12に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(15) 前記第1の繊維の前記ガラス転移温度が、前記第2の繊維の前記ガラス転移温度より少なくとも約30℃高い、実施態様12に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【0098】
(16) 前記第1の繊維が、生体吸収性ポリマー材料でコーティングされている、実施態様12に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(17) 前記スキャフォールドが、前記ステープルカートリッジに熱成形されるように構成され、前記第2のニット層が前記カートリッジデッキに当接する、実施態様12に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(18) 前記カートリッジデッキの外側表面が、前記編まれたスキャフォールドと係合するように構成された1つ以上の取り付け機構を備える、実施態様12に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(19) 前記スキャフォールドが組織内に配備された状態にあるときに、少なくとも3日間、前記スキャフォールドが、前記捕捉された組織に少なくとも約3g/mmの応力を印加するように構成されている、実施態様12に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
(20) 前記スキャフォールドが、非変形時高さから変形時高さまで変形するように構成され、前記非変形時高さは、前記ステープルが形成された形状にあるときの前記複数のステープルのうちの各ステープルの高さよりも大きい、実施態様12に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【0099】
(21) 外科用ステープルカートリッジと共に使用するためのスキャフォールドであって、
それぞれが、第1のタイプの繊維と第2のタイプの繊維とを有する第1のニット層及び第2のニット層であって、前記第1のタイプの繊維が主として存在し、前記第1のタイプの繊維が第1のガラス転移温度を有し、前記第2のタイプの繊維が前記第1のガラス転移温度未満である第2のガラス転移温度を有する、第1のニット層及び第2のニット層と、
前記第1のニット層と前記第2のニット層との間に配設され、前記第2のタイプの繊維から形成されている支持層と、
を備える、スキャフォールド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
【外国語明細書】