(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026543
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】建物の外装構造および建物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20240220BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240220BHJP
E04B 1/66 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
E04B1/70 D
E04B1/76 100D
E04B1/76 400N
E04B1/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219959
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2019178496の分割
【原出願日】2019-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】304024083
【氏名又は名称】株式会社ジュープラス
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】永森 裕章
(57)【要約】
【課題】通気性に優れ、内部結露を抑制することのできる外装構造および建物を提供すること。
【解決手段】外装構造1は、壁構造110の屋外側に設けられた防水シート2と、防水シート2の屋外側に設けられた第1縦胴縁3と、第1縦胴縁3の屋外側に設けられた輻射シート4と、輻射シート4の屋外側に設けられた第2縦胴縁5と、第2縦胴縁5の屋外側に設けられた横胴縁6と、横胴縁6の屋外側に設けられた断熱材7と、を有し、第1縦胴縁3によって防水シート2と輻射シート4との間に第1通気空間S1が形成され、第2縦胴縁5によって輻射シート4と横胴縁6との間に第2通気空間S2が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁構造の屋外側に設けられる外装構造であって、
前記壁構造の屋外側に設けられた防水シートと、
前記防水シートの屋外側に設けられた断熱材と、
前記防水シートと前記断熱材との間に形成された通気空間と、を有することを特徴とする外装構造。
【請求項2】
前記防水シートと前記断熱材との間に設けられた輻射シートを有し、
前記通気空間は、前記防水シートと前記輻射シートとの間に形成された第1通気空間と、前記輻射シートと前記断熱材との間に形成された第2通気空間と、を有する請求項1に記載の外装構造。
【請求項3】
前記防水シートと前記輻射シートとの間に設けられた第1縦胴縁と、
前記輻射シートと前記断熱材との間に設けられた第2縦胴縁と、を有し、
前記第1縦胴縁によって前記防水シートと前記輻射シートとの間に前記第1通気空間が形成され、
前記第2縦胴縁によって前記輻射シートと前記断熱材との間に前記第2通気空間が形成されている請求項2に記載の外装構造。
【請求項4】
前記第1縦胴縁と前記第2縦胴縁とは、水平方向に間隔を空けて交互に並んで設けられ、
前記輻射シートは、前記防水シートと前記断熱材との間で波状となって設けられている請求項3に記載の外装構造。
【請求項5】
前記第2縦胴縁と前記断熱材との間に設けられた横胴縁を有する請求項2から4のいずれか1項に記載の外装構造。
【請求項6】
前記防水シートと前記第1縦胴縁との間に設けられた横胴縁を有する請求項2から4のいずれか1項に記載の外装構造。
【請求項7】
前記横胴縁は、鉛直方向に間隔を空けて複数配置されている請求項5または6に記載の外装構造。
【請求項8】
前記防水シートと前記輻射シートとの間に設けられた縦胴縁と、
前記輻射シートと前記断熱材との間に設けられた横胴縁と、を有し、
前記横胴縁は、上面および下面を貫通する通気孔を有する請求項2に記載の外装構造。
【請求項9】
前記防水シートと前記輻射シートとの間に設けられた横胴縁と、
前記輻射シートと前記断熱材との間に設けられた縦胴縁と、を有し、
前記横胴縁は、上面および下面を貫通する通気孔を有する請求項2に記載の外装構造。
【請求項10】
前記断熱材の屋外側に設けられた仕上げ材を有する請求項1から9のいずれか1項に記載の外装構造。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の外装構造を有することを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外装構造および建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている外装構造は、間隔を空けて設けられた複数の柱と、隣り合う一対の柱の間に設けられた断熱材と、柱の屋外側に設けられた構造用合板と、構造用合板の屋外側に設けられた透湿防水シートと、透湿防水シートの屋外側に設けられた断熱ボードと、断熱ボードの屋外側に設けられた外装下塗り材と、外像下塗り材の屋外側に設けられた補強材と、補強材の屋外側に設けられた外装上塗り材と、外装上塗り材の屋外側に設けられたオーバーコート調整材と、オーバーコート調整材の屋外側に設けられたオーバーコート材とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の外装構造においては外装構造内の躯体の湿気、通気、通水対策について何ら考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、通気性に優れ、内部結露を抑制することのできる外装構造および建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の発明により達成される。
【0007】
(1) 建物の壁構造の屋外側に設けられる外装構造であって、
前記壁構造の屋外側に設けられた防水シートと、
前記防水シートの屋外側に設けられた断熱材と、
前記防水シートと前記断熱材との間に形成された通気空間と、を有することを特徴とする外装構造。
【0008】
(2) 前記防水シートと前記断熱材との間に設けられた輻射シートを有し、
前記通気空間は、前記防水シートと前記輻射シートとの間に形成された第1通気空間と、前記輻射シートと前記断熱材との間に形成された第2通気空間と、を有する上記(1)に記載の外装構造。
【0009】
(3) 前記防水シートと前記輻射シートとの間に設けられた第1縦胴縁と、
前記輻射シートと前記断熱材との間に設けられた第2縦胴縁と、を有し、
前記第1縦胴縁によって前記防水シートと前記輻射シートとの間に前記第1通気空間が形成され、
前記第2縦胴縁によって前記輻射シートと前記断熱材との間に前記第2通気空間が形成されている上記(2)に記載の外装構造。
【0010】
(4) 前記第1縦胴縁と前記第2縦胴縁とは、水平方向に間隔を空けて交互に並んで設けられ、
前記輻射シートは、前記防水シートと前記断熱材との間で波状となって設けられている上記(3)に記載の外装構造。
【0011】
(5) 前記第2縦胴縁と前記断熱材との間に設けられた横胴縁を有する上記(2)から(4)のいずれかに記載の外装構造。
【0012】
(6) 前記防水シートと前記第1縦胴縁との間に設けられた横胴縁を有する上記(2)から(4)のいずれかに記載の外装構造。
【0013】
(7) 前記横胴縁は、鉛直方向に間隔を空けて複数配置されている上記(5)または(6)に記載の外装構造。
【0014】
(8) 前記防水シートと前記輻射シートとの間に設けられた縦胴縁と、
前記輻射シートと前記断熱材との間に設けられた横胴縁と、を有し、
前記横胴縁は、上面および下面を貫通する通気孔を有する上記(2)に記載の外装構造。
【0015】
(9) 前記防水シートと前記輻射シートとの間に設けられた横胴縁と、
前記輻射シートと前記断熱材との間に設けられた縦胴縁と、を有し、
前記横胴縁は、上面および下面を貫通する通気孔を有する上記(2)に記載の外装構造。
【0016】
(10) 前記断熱材の屋外側に設けられた仕上げ材を有する上記(1)から(9)のいずれかに記載の外装構造。
【0017】
(11) 上記(1)から(10)のいずれかに記載の外装構造を有することを特徴とする建物。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明によれば、防水シートと断熱材との間に形成された通気空間によって壁構造内や断熱材内の湿気を建物の外部に排出することができる。したがって、壁構造内や外装構造内の結露(すなわち、壁内結露)を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る建物を示す斜視図である。
【
図2】
図1中のA-A線断面図(横断面図)である。
【
図5】第2実施形態に係る建物を示す横断面図である。
【
図6】第3実施形態に係る建物を示す横断面図である。
【
図8】第4実施形態に係る建物を示す横断面図である。
【
図10】第5実施形態に係る建物を示す横断面図である。
【
図12】第6実施形態に係る建物を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1に示す外装構造1は、建物100の外装として適用されている。建物100は、優れた気密性および断熱性を有する高気密・高断熱住宅であり、壁構造110を有する。壁構造110は、鉛直方向に延び、水平方向に離間して設けられた複数の柱120と、隣り合う一対の柱120、120の間に設けられた間柱130および断熱材140とを有する。断熱材140としては、特に限定されず、例えば、グラスウール、ロックウール等の充填断熱材を用いることができる。
【0021】
なお、建物100の構造としては、特に限定されない。例えば、建物100は、高気密・高断熱住宅でなくてもよい。また、建物100は、木造(例えば、木造軸組工法、木造軸組パネル工法、木造枠組壁工法、ラーメン工法等)、軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート造等、如何なる工法で建てられたものであってもよい。また、建物100は、戸建ての住宅に限られず、店舗、アパート、マンション、ビル等、如何なる建物であってもよい。
【0022】
建物100に適用された外装構造1は、
図1に示すように、壁構造110の屋外側に配置されている。外装構造1は、壁構造110の屋外側に設けられた防水シート2(防水紙)と、防水シート2の屋外側に設けられた第1縦胴縁3と、第1縦胴縁3の屋外側に設けられた輻射シート4と、輻射シート4の屋外側に設けられた第2縦胴縁5と、第2縦胴縁5の屋外側に設けられた横胴縁6と、横胴縁6の屋外側に設けられた断熱材7と、断熱材7の屋外側に設けられた下地材8と、下地材8の屋外側に設けられた仕上げ材9とを有する。
【0023】
このような外装構造1では、第1縦胴縁3によって防水シート2と輻射シート4との間に第1通気空間S1が形成され、第2縦胴縁5によって輻射シート4と横胴縁6との間に第2通気空間S2が形成されている。第1、第2通気空間S1、S2は、その下端および上端において建物100の外部と繋がっており、内部に外気が流入することにより、第1、第2通気空間S1、S2内が換気される。そのため、第1通気空間S1を介して壁構造110内の湿気が建物100外へ排出され、第2通気空間S2を介して断熱材7内の湿気が建物100外へ排出される。その結果、断熱材7内や壁構造110内に湿気が籠るのが抑制され、断熱材7内や壁構造110内の結露すなわち壁内結露を効果的に抑制することができる。
【0024】
以下、外装構造1を構成する各部について順に説明する。防水シート2は、柱120の屋外側に設けられている。この防水シート2は、透湿防水シートとも呼ばれ、透湿性と防水性とを兼ね備えている。防水シート2は、例えば、ステープル等の固定用具、接着剤等によって柱120や間柱130の外面に固定されている。ただし、防水シート2の固定方法は、特に限定されない。
【0025】
防水シート2の屋外側には第1縦胴縁3が設けられている。第1縦胴縁3は、鉛直方向に延び、水平方向に離間して複数設けられている。
図1の構成では、第1縦胴縁3は、例えば、釘、ビス等によって柱120に固定されている。ただし、第1縦胴縁3を柱120に固定する方法は、特に限定されない。また、第1縦胴縁3を固定する対象は、柱120に限定されず、例えば、間柱130であってもよしい、それ以外の構造体であってもよい。第1縦胴縁3は、木材で構成され、厚さ×幅=18mm×60mm程度のサイズとなっている。ただし、第1縦胴縁3の構成、特に、材質やサイズは、特に限定されない。
【0026】
第1縦胴縁3の屋外側には輻射シート4が設けられている。輻射シート4は、遮熱シートとも呼ばれ、輻射熱を遮断する機能を有する。輻射熱は、前述の断熱材140では遮断できないため、断熱材140に加えて輻射シート4を設けることにより、建物100の断熱性を高めることができる。なお、輻射シート4は、例えば、さらに断熱性が付与された遮熱断熱シートであってもよい。
【0027】
輻射シート4の屋外側には第2縦胴縁5が設けられている。第2縦胴縁5は、鉛直方向に延び、水平方向に離間して複数設けられている。また、第2縦胴縁5は、第1縦胴縁3と間隔を空けて交互に配置されており、
図1の構成では、例えば、釘、ビス等によって間柱130に固定されている。ただし、第2縦胴縁5を間柱130に固定する方法は、特に限定されない。また、第2縦胴縁5を固定する対象としては、間柱130に限定されず、柱120であってもよしい、それ以外の構造体であってもよい。第2縦胴縁5は、第1縦胴縁3と同様の構成であり、木材で構成され、厚さ×幅=16mm×60mm程度のサイズとなっている。ただし、第2縦胴縁5の構成、特に、材質やサイズは、特に限定されない。また、第2縦胴縁5は、第1縦胴縁3と異なる構成であってもよい。
【0028】
第2縦胴縁5の屋外側には横胴縁6が設けられている。横胴縁6は、水平方向に延び、鉛直方向に離間して複数設けられている。また、横胴縁6は、例えば、釘、ビス等によって柱120および間柱130に固定されている。ただし、横胴縁6を柱120および間柱130に固定する方法は、特に限定されない。また、横胴縁6を固定する対象としては、柱120および間柱130に限定されない。横胴縁6は、木材で構成され、厚さ×幅=18mm×60mm程度のサイズとなっている。ただし、横胴縁6の構成、特に、材質やサイズは、特に限定されない。
【0029】
横胴縁6の屋外側には断熱材7が設けられている。断熱材7は、仕上げ材9の基礎としての機能と、直射日光を遮る機能とを有する。仕上げ材9の基礎として断熱材7を用いることにより、夏の遮熱性を高めることができる。断熱材7は、断熱ボードであり、例えば、発泡プラスチック系の断熱材料で構成されている。特に、本実施形態の断熱材7は、ポリスチレンフォーム、具体的には、EPS、XPS等で構成されている。また、断熱材7は、ワッシャビスBによって横胴縁6に固定されている。
【0030】
ただし、断熱材7の構成材料としては、特に限定されない。また、断熱材7の固定方法としても、特に限定されない。また、断熱材7の厚さとしては、特に限定されないが、20mm~30mm程度であることが好ましくし、本実施形態では、約25mmである。これにより、断熱材7としての機能をより確実に発揮することができると共に、断熱材7をより薄く、軽量とすることができる。ただし、断熱材7の構成、特に、材質やサイズは、特に限定されない。
【0031】
断熱材7の屋外側には下地材8が設けられている。下地材8は、断熱材7の外表面に塗布されている。下地材8は、断熱材7と仕上げ材9との密着力を高めるための密着層(プライマー層)としての機能や、断熱材7を雨風等から保護する機能を有する。下地材8は、例えば、モルタルで構成されている。ただし、下地材8の材質は、特に限定されない。
【0032】
また、下地材8には補強材81が埋設されている。補強材81は、例えば、メッシュ状のガラス繊維ネットである。下地材8に補強材81を埋設することにより、断熱材7を補強することができる。そのため、膨張、収縮およびそれに伴う湾曲等の変形に起因した断熱材7の破損や、断熱材7の変形に伴う下地材8や仕上げ材9の損傷、特にクラックの発生を効果的に抑制することができる。また、補強材81は、隣り合う断熱材7同士を繋ぎ、これらの境界に形成される目地を埋める機能を有する。これにより、目地のない大壁を形成することができ、高い意匠性を有する建物100となる。
【0033】
補強材81の埋設方法としては、特に限定されないが、例えば、断熱材7の外表面に補強材81を配置し、その上から下地材8を塗布する方法や、下地材8を2層にし、その間に補強材81を配置する方法、すなわち、断熱材7の外表面に下地材8を塗布し、その上から補強材81を設置し、さらに、その上から下地材8を塗布する方法が挙げられる。
【0034】
下地材8の屋外側には仕上げ材9が設けられている。仕上げ材9は、外装構造1の意匠性を高める機能や、断熱材7を雨風等から保護する機能を有する。このような仕上げ材9は、塗料を用いることができる。仕上げ材9としては、塗料の他、モルタル、サイディング等、如何なるものを用いてもよい。
【0035】
以上、外装構造1を構成する各部について説明した。このような外装構造1では、前述したように、防水シート2と輻射シート4との間に第1縦胴縁3が設けられ、輻射シート4と横胴縁6との間に第2縦胴縁5が設けられている。つまり、輻射シート4は、第1縦胴縁3と横胴縁6とで挟まれている部分41と、防水シート2と第2縦胴縁5とで挟まれている部分42とを有し、これら部分41、42が水平方向に交互に配置されている。そのため、輻射シート4は、
図1および
図2に示すように、その厚さ方向に波状に変形した状態で外装構造1内に配置されている。
【0036】
このように、第1縦胴縁3および第2縦胴縁5を用いて輻射シート4を波状にすることにより、第1縦胴縁3によって防水シート2と輻射シート4との間に第1通気空間S1が形成され、第2縦胴縁5によって輻射シート4と横胴縁6との間に第2通気空間S2が形成される。そのため、第1通気空間S1に通気させることにより、第1通気空間S1を介して壁構造110内の湿気を建物100外へ排出することができ、第2通気空間S2内に通気させることにより、第2通気空間S2を介して断熱材7内の湿気を建物100外へ排出することがでる。また、万が一、外装構造1内に水が浸入しても、当該水を第1、第2通気空間S1、S2から外装構造1外へ排出することができる。その結果、外装構造1の通気性、通水性が向上する。したがって、断熱材7内や壁構造110内に湿気が籠るのが抑制され、断熱材7内や壁構造110内の結露すなわち壁内結露を効果的に抑制することができる。
【0037】
また、第1通気空間S1を形成して壁構造110と輻射シート4とを離間して配置することにより、輻射シート4によって壁構造110からの輻射熱を効果的に反射することができ、第2通気空間S2を形成して断熱材7と輻射シート4とを離間して配置することにより、輻射シート4によって断熱材7からの輻射熱を効果的に反射することができる。そのため、建物100の断熱性がより向上する。
【0038】
また、第1通気空間S1と壁構造110との間には透湿性を有する防水シート2だけが設けられているため、言い換えると、第1通気空間S1と壁構造110との間には湿気の移動を遮る部材がないため、第1通気空間S1と壁構造110とをより確実に通気させることができる。そのため、第1通気空間S1を介して壁構造110内の湿気をより確実に建物100外へ排出することができる。また、第2通気空間S2と断熱材7との間には隙間Gを空けて配置された複数の横胴縁6しか設けられていないため、この隙間Gを介して、第2通気空間S2と断熱材7とをより確実に通気させることができる。そのため、第2通気空間S2を介して断熱材7内の湿気をより確実に建物100外へ排出することができる。
【0039】
また、前述したように、第1縦胴縁3と第2縦胴縁5とは、水平方向に間隔を空けて交互に設けられている。そのため、第1縦胴縁3と第2縦胴縁5の離間距離D毎に第1、第2通気空間S1、S2が形成され、各第1、第2通気空間S1、S2の幅が短くなる。したがって、外装構造1内により多くの第1、第2通気空間S1、S2を形成することができる。このように、外装構造1内により多くの第1、第2通気空間S1、S2を形成することにより、より効率的に、第1通気空間S1を介して壁構造110内の湿気を建物100外へ排出することができ、第2通気空間S2を介して断熱材7内の湿気を建物100外へ排出することができる。
【0040】
ただし、第1縦胴縁3と第2縦胴縁5とは、交互に並んで配置されなくてもよく、例えば、
図3に示すように、隣り合う一対の第1縦胴縁3、3の間に複数の第2縦胴縁5が設けられていてもよいし、反対に、
図4に示すように、隣り合う一対の第2縦胴縁5、5の間に複数の第1縦胴縁3が設けられていてもよい。
図3の構成では、第1通気空間S1よりも第2通気空間S2を大きく形成することができ、反対に、
図4の構成では、第2通気空間S2よりも第1通気空間S1を大きく形成することができる。例えば、シミュレーション、経験則等により得られる壁構造110内に発生し得る水蒸気量と外装構造1内に発生し得る水蒸気量との差に基づいて第1通気空間S1と第2通気空間S2の大きさのバランスを決定し、決定したバランスとなるように第1縦胴縁3と第2縦胴縁5を配置することもできる。これにより、壁構造110内の湿気と断熱材7内の湿気とをバランスよく建物100外へ排出することができる。
【0041】
<第2実施形態>
本実施形態の外装構造1は、横胴縁6の配置が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0042】
本実施形態の外装構造1では、
図5に示すように、横胴縁6が防水シート2と第1縦胴縁3との間に設けられている。つまり、外装構造1は、壁構造110の屋外側に設けられた防水シート2と、防水シート2の屋外側に設けられた横胴縁6と、横胴縁6の屋外側に設けられた第1縦胴縁3と、第1縦胴縁3の屋外側に設けられた輻射シート4と、輻射シート4の屋外側に設けられた第2縦胴縁5と、第2縦胴縁5の屋外側に設けられた断熱材7と、断熱材7の屋外側に設けられた下地材8と、下地材8の屋外側に設けられた仕上げ材9とを有する。なお、図示しないが、前述した第1実施形態と同様に、断熱材7は、ワッシャビスBによって第1、第2縦胴縁3、5に固定されている。また、横胴縁6は、鉛直方向に離間して複数設けられている。
【0043】
つまり、前述した第1実施形態では、断熱材7が横胴縁6に固定されていたのに対して、本実施形態では、断熱材7が第1、第2縦胴縁3、5に固定されている。鉛直方向に長い断熱材7を水平方向に並べて貼り付ける場合、すなわち所謂「縦壁」の場合には前述した第1実施形態のように横胴縁6に断熱材7を固定する構成が好ましく、反対に、水平方向に長い断熱材7を鉛直方向に並べて貼り付ける場合、すなわち所謂「横壁」の場合には本実施形態のように第1、第2縦胴縁3、5に断熱材7を固定する構成が好ましい。
【0044】
このような構成では、第1縦胴縁3によって防水シート2と輻射シート4との間に第1通気空間S1が形成され、第2縦胴縁5によって輻射シート4と断熱材7との間に第2通気空間S2が形成される。そのため、第1通気空間S1に通気させることにより、第1通気空間S1を介して壁構造110内の湿気を建物100外へ排出することができ、第2通気空間S2内に通気させることにより、第2通気空間S2を介して断熱材7内の湿気を建物100外へ排出することがでる。また、万が一、外装構造1内に水が浸入しても、当該水を第1、第2通気空間S1、S2から外装構造1外へ排出することができる。その結果、外装構造1の通気性、通水性が向上する。したがって、断熱材7内や壁構造110内に湿気が籠るのが抑制され、断熱材7内や壁構造110内の結露すなわち壁内結露を効果的に抑制することができる。
【0045】
<第3実施形態>
本実施形態の外装構造1は、第2縦胴縁5が省略されていることと、横胴縁6として通気胴縁を用いていること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0046】
本実施形態の外装構造1では、
図6に示すように、前述した第1実施形態から第2縦胴縁5が省略されている。つまり、外装構造1は、壁構造110の屋外側に設けられた防水シート2と、防水シート2の屋外側に設けられた第1縦胴縁3と、第1縦胴縁3の屋外側に設けられた輻射シート4と、輻射シート4の屋外側に設けられた横胴縁6と、横胴縁6の屋外側に設けられた断熱材7と、断熱材7の屋外側に設けられた下地材8と、下地材8の屋外側に設けられた仕上げ材9とを有する。なお、図示しないが、前述した第1実施形態と同様に、断熱材7は、ワッシャビスBによって横胴縁6に固定されている。また、横胴縁6は、鉛直方向に離間して複数設けられている。
【0047】
各横胴縁6は、通気胴縁であり、
図7に示すように、その上面および下面を貫通する通気孔62を有する。また、通気孔62は、横胴縁6の延在方向に沿って複数形成されている。このように、横胴縁6に通気孔62を形成することにより、輻射シート4と断熱材7との間に位置し、上下に隣り合う横胴縁6、6の間に形成された隙間G同士が各通気孔62を介して連通し、第2通気空間S2が形成される。なお、本実施形態では、通気孔62は、輻射シート4側の面である内面に開口しているが、これに限定されず、断熱材7側の面である外面に開口していてもよいし、内面にも外面にも開口していなくてもよい。また、通気孔62の断面形状も特に限定されず、図示の形状の他、例えば、矩形であってもよい。
【0048】
このような構成では、第1縦胴縁3によって防水シート2と輻射シート4との間に第1通気空間S1が形成され、横胴縁6によって輻射シート4と断熱材7との間に第2通気空間S2が形成される。そのため、第1通気空間S1に通気させることにより、第1通気空間S1を介して壁構造110内の湿気を建物100外へ排出することができ、第2通気空間S2内に通気させることにより、第2通気空間S2を介して断熱材7内の湿気を建物100外へ排出することがでる。また、万が一、外装構造1内に水が浸入しても、当該水を第1、第2通気空間S1、S2から外装構造1外へ排出することができる。その結果、外装構造1の通気性、通水性が向上する。したがって、断熱材7内や壁構造110内に湿気が籠るのが抑制され、断熱材7内や壁構造110内の結露すなわち壁内結露を効果的に抑制することができる。
【0049】
<第4実施形態>
本実施形態の外装構造1は、第1縦胴縁3が省略されていることと、横胴縁6として通気胴縁を用いていること以外は、前述した第2実施形態と同様である。
【0050】
本実施形態の外装構造1では、
図8に示すように、横胴縁6が防水シート2と輻射シート4との間に設けられている。つまり、外装構造1は、壁構造110の屋外側に設けられた防水シート2と、防水シート2の屋外側に設けられた横胴縁6と、横胴縁6の屋外側に設けられた輻射シート4と、輻射シート4の屋外側に設けられた第2縦胴縁5と、第2縦胴縁5の屋外側に設けられた断熱材7と、断熱材7の屋外側に設けられた下地材8と、下地材8の屋外側に設けられた仕上げ材9とを有する。
【0051】
各横胴縁6は、通気胴縁であり、
図9に示すように、その上面および下面を貫通する通気孔62を有する。また、通気孔62は、横胴縁6の延在方向に沿って複数形成されている。このように、横胴縁6に通気孔62を形成することにより、防水シート2と輻射シート4との間に位置し、上下に隣り合う横胴縁6、6の間に形成された隙間G同士が各通気孔62を介して連通してなる第1通気空間S1が形成される。なお、本実施形態では、通気孔62は、防水シート2側の面である内面に開口しているが、これに限定されず、輻射シート4側の面である外面に開口していてもよいし、内面にも外面にも開口していなくてもよい。また、通気孔62の断面形状も特に限定されず、図示の形状の他、例えば、矩形であってもよい。
【0052】
このような構成では、横胴縁6によって防水シート2と輻射シート4との間に第1通気空間S1が形成され、第2縦胴縁5によって輻射シート4と断熱材7との間に第2通気空間S2が形成される。そのため、第1通気空間S1に通気させることにより、第1通気空間S1を介して壁構造110内の湿気を建物100外へ排出することができ、第2通気空間S2内に通気させることにより、第2通気空間S2を介して断熱材7内の湿気を建物100外へ排出することがでる。また、万が一、外装構造1内に水が浸入しても、当該水を第1、第2通気空間S1、S2から外装構造1外へ排出することができる。その結果、外装構造1の通気性、通水性が向上する。したがって、断熱材7内や壁構造110内に湿気が籠るのが抑制され、断熱材7内や壁構造110内の結露すなわち壁内結露を効果的に抑制することができる。
【0053】
<第5実施形態>
本実施形態の外装構造1は、第1、第2縦胴縁3、5および輻射シート4が省略されていることと、横胴縁6として通気胴縁を用いていること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0054】
本実施形態の外装構造1は、
図10に示すように、壁構造110の屋外側に設けられた防水シート2と、防水シート2の屋外側に設けられた横胴縁6と、横胴縁6の屋外側に設けられた断熱材7と、断熱材7の屋外側に設けられた下地材8と、下地材8の屋外側に設けられた仕上げ材9とを有する。
【0055】
各横胴縁6は、通気胴縁であり、
図11に示すように、その上面および下面を貫通する通気孔62を有する。また、通気孔62は、横胴縁6の延在方向に沿って複数形成されている。そのため、防水シート2と断熱材7との間に通気空間Sが形成される。通気空間Sは、上下に隣り合う横胴縁6、6の間に形成された隙間G同士が各通気孔62を介して連通することにより形成される。なお、本実施形態では、通気孔62は、防水シート2側の面である内面に開口しているが、これに限定されず、断熱材7側の面である外面に開口していてもよいし、内面にも外面にも開口していなくてもよい。また、通気孔62の断面形状も特に限定されず、図示の形状の他、例えば、矩形であってもよい。
【0056】
このような構成では、横胴縁6によって防水シート2と断熱材7との間に通気空間Sが形成される。通気空間Sは、その下端および上端において建物100の外部と繋がっている。そのため、通気空間Sに通気させることにより、通気空間Sを介して壁構造110内の湿気を建物100外へ排出することができ、断熱材7内の湿気を建物100外へ排出することがでる。また、万が一、外装構造1内に水が浸入しても、当該水を通気空間Sから外装構造1外へ排出することができる。その結果、外装構造1の通気性、通水性が向上する。したがって、断熱材7内や壁構造110内に湿気が籠るのが抑制され、断熱材7内や壁構造110内の結露すなわち壁内結露を効果的に抑制することができる。
【0057】
<第6実施形態>
本実施形態の外装構造1は、外張り断熱工法の壁構造110に適用されていること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0058】
図12に示すように、本実施形態の壁構造110は、外張り断熱工法により構成されており、柱120および間柱130の外側に断熱材140が設けられている。外張り断熱工法によれば、建物の外側を断熱材140で切れ目なく囲むことができるため、優れた断熱性を発揮することができる。外装構造1自体は、前述した第1実施形態と同様であり、断熱材140の屋外側に設けられた防水シート2と、防水シート2の屋外側に設けられた第1縦胴縁3と、第1縦胴縁3の屋外側に設けられた輻射シート4と、輻射シート4の屋外側に設けられた第2縦胴縁5と、第2縦胴縁5の屋外側に設けられた横胴縁6と、横胴縁6の屋外側に設けられた断熱材7と、断熱材7の屋外側に設けられた下地材8と、下地材8の屋外側に設けられた仕上げ材9とを有する。
【0059】
以上、本発明の外装構造および建物を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0060】
また、例えば、本発明の外装構造は、新築だけではなく、リフォームにも適用することができる。リフォームの際には、元々の外装構造を剥がしたうえで、本発明の外装構造を施工してもよいし、元々の外装構造の上から本発明の外装構造を施工してもよい。
【0061】
なお、前述した「鉛直方向」とは、鉛直方向と一致する方向の他にも、技術常識的に鉛直方向と同視できる程度に鉛直方向から傾斜した方向も含む意味である。同様に、前述した「水平方向」とは、水平方向と一致する方向の他にも、技術常識的に水平方向と同視できる程度に鉛直方向から傾斜した方向も含む意味である。
【符号の説明】
【0062】
1 外装構造
2 防水シート
3 第1縦胴縁
4 輻射シート
5 第2縦胴縁
6 横胴縁
7 断熱材
8 下地材
9 仕上げ材
41 部分
42 部分
62 通気孔
81 補強材
100 建物
110 壁構造
120 柱
130 間柱
140 断熱材
D 離間距離
G 隙間
S 通気空間
S1 第1通気空間
S2 第2通気空間