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特開2024-2659床パネルの固定方法、及びボルト保持体
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  • 特開-床パネルの固定方法、及びボルト保持体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002659
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】床パネルの固定方法、及びボルト保持体
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20231228BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E04G21/16
E04B5/02 C
E04B5/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101990
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】藤山 晴司
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174BA01
2E174DA07
2E174DA17
2E174DA34
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】 床パネルを支持部材に効率よく固定することが可能な床パネルの固定方法を提供する。
【解決手段】 建物の床を構成する床パネルを、床パネルの下方位置で床パネルを支持する支持部材に固定する床パネルの固定方法では、支持部材の上端部をなす支持部に設けられたボルト穴に、ボルトを挿入し、支持部より下方位置に配置されたベース部と支持部との間に、ボルト保持体を配置し、ボルト穴に挿入された状態のボルトをボルト保持体に保持させ、床パネルが備えるパネル側穴に、ボルト穴に挿入された状態のボルトが挿入されるように、床パネルを支持部上に配置し、支持部上に載置された床パネルと支持部とを、ボルト穴及びパネル側穴に挿入された状態のボルトにより固定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床を構成する床パネルを、該床パネルの下方位置で該床パネルを支持する支持部材に固定する床パネルの固定方法であって、
前記支持部材の上端部をなす支持部に設けられたボルト穴に、ボルトを挿入し、
前記支持部より下方位置に配置されたベース部と前記支持部との間に、ボルト保持体を配置し、
前記ボルト穴に挿入された状態の前記ボルトを前記ボルト保持体に保持させ、
前記床パネルが備えるパネル側穴に、前記ボルト穴に挿入された状態の前記ボルトが挿入されるように、前記床パネルを前記支持部上に配置し、
前記支持部上に載置された前記床パネルと前記支持部とを前記ボルトにより固定する、床パネルの固定方法。
【請求項2】
前記ベース部と前記支持部との間に前記ボルト保持体を配置する際には、前記ボルト保持体の下端が前記ベース部から反力を受け、且つ、前記ボルト保持体の上端が前記支持部から反力を受けるように、前記ベース部と前記支持部との間に前記ボルト保持体を嵌め込む、請求項1に記載の床パネルの固定方法。
【請求項3】
前記ベース部と前記支持部との間に前記ボルト保持体を配置する際には、前記ボルト保持体の上端部に設けられた板バネ部を、前記支持部の下面に当接させて前記板バネ部を押し下げながら、前記ベース部と前記支持部との間に前記ボルト保持体を嵌め込む、請求項2に記載の床パネルの固定方法。
【請求項4】
前記支持部材は、H型鋼によって構成され、
前記ボルト保持体の下端には傾斜面が形成されており、
前記傾斜面の傾斜方向における上端が下端よりも前記H型鋼のウェブ部の近くに位置した状態で、前記ベース部と前記支持部との間に前記ボルト保持体を嵌め込む、請求項3に記載の床パネルの固定方法。
【請求項5】
前記支持部上に載置された前記床パネルと、前記支持部とを固定するために、前記ボルト穴及び前記パネル側穴に挿入された状態の前記ボルトの上方に形成された開口を通じて、前記ボルトの上方から前記ボルトにナットを締結する、請求項1に記載の床パネルの固定方法。
【請求項6】
前記床パネルは、前記パネル側穴が形成された下地材と、前記下地材に接合されたパネル本体と、を備え、
前記床パネルを前記支持部上に配置する際に、前記パネル本体が前記下地材の上方に位置した状態で前記下地材を前記支持部上に載せ、
前記床パネルを前記支持部上に配置した段階では、前記開口を外れた位置に前記パネル本体が存在する、請求項5に記載の床パネルの固定方法。
【請求項7】
前記床パネルは、前記パネル側穴が形成された下地材と、前記下地材に接合されたパネル本体と、前記パネル本体に形成された切り欠き部と、を備え、
前記床パネルを前記支持部上に配置する際に、前記パネル本体が前記下地材の上方に位置した状態で前記下地材を前記支持部上に載せ、
前記床パネルを前記支持部上に配置した段階では、前記切り欠き部が、前記ボルトの上方に位置して前記開口をなす、請求項5に記載の床パネルの固定方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の床パネルの固定方法に用いられるボルト保持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床パネルの固定方法に係り、特に、床パネルを支持部材に載置させてから床パネルを支持部材に固定する床パネルの固定方法に関する。
また、本発明は、上記の床パネルの固定方法においてボルトを保持するために用いられるボルト保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建築物の建設工事において、床を構築するために、床パネルを床梁等の支持部材に載置し、床パネルを支持部材にボルト等によって固定することがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、床パネルの根太を横架材の上片(上側フランジ)の上面に載置した状態で、ボルトを上片の挿通孔に挿通して根太のボルト固定部に羅着することで、床パネルが横架材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-70420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床パネルを支持部材に固定する作業では、より効率よく作業を進めることが求められている。一方、特許文献1に記載の床構造を構築する場合には、横架材の上片に形成された挿通孔に挿通されたボルトを根太のボルト固定部に羅着する際に、例えば、ボルトを手で押さえておく必要がある。この場合、ボルトを手で押さえるにあたり、手を入れるスペースがボルト付近に確保されていないと、ボルトを適切に押さえられなくなり、結果として、床パネルの固定が困難になってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、床パネルを支持部材に効率よく固定することが可能な床パネルの固定方法を提供することである。
また、本発明の第二の目的は、上述した床パネルの固定方法においてボルトを適切に保持するボルト保持体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、本発明の床パネルの固定方法によれば、建物の床を構成する床パネルを、当該床パネルの下方位置で床パネルを支持する支持部材に固定する床パネルの固定方法であって、支持部材の上端部をなす支持部に設けられたボルト穴に、ボルトを挿入し、支持部より下方位置に配置されたベース部と支持部との間に、ボルト保持体を配置し、ボルト穴に挿入された状態のボルトをボルト保持体に保持させ、床パネルが備えるパネル側穴に、ボルト穴に挿入された状態のボルトが挿入されるように、床パネルを支持部上に配置し、支持部上に載置された床パネルと支持部とをボルトにより固定することにより解決される。
【0007】
上記の手順にて行われる床パネルの固定方法では、ボルト穴に挿入された状態のボルトをボルト保持体によって保持させることができる。これにより、ボルト穴に挿入された状態のボルトを作業者の手によって押さえる必要がなく、床パネルの固定作業をより効率よく行うことができる。また、ボルト保持体は、支持部材の支持部とベース部との間のスペースに配置されるため、当該スペースを有効利用してボルト保持体を適切に配置することができる。
【0008】
また、上記の床パネルの固定方法において、ベース部と支持部との間にボルト保持体を配置する際には、ボルト保持体の下端がベース部から反力を受け、且つ、ボルト保持体の上端が支持部から反力を受けるように、ベース部と支持部との間にボルト保持体を嵌め込むと、好適である。
上記の構成によれば、支持部材の支持部とベース部との間にボルト保持体が嵌め込まれることで、ボルト保持体の取り付け状態が安定する。これにより、ボルト保持体がボルトを保持した状態を適切に維持することができる。
【0009】
また、上記の床パネルの固定方法において、ベース部と支持部との間にボルト保持体を配置する際には、ボルト保持体の上端部に設けられた板バネ部を、支持部の下面に当接させて板バネ部を押し下げながら、ベース部と支持部との間にボルト保持体を嵌め込むと、より好適である。
上記の構成によれば、ボルト保持体に設けられた板バネ部の弾性変形により、ボルト保持体が支持部材の支持部及びベース部のそれぞれに接した状態を維持することができる。これにより、ボルト保持体の取り付け状態がより安定し、この結果、ボルト保持体がボルトを保持した状態をより適切に維持することができる。
【0010】
また、上記の床パネルの固定方法において、支持部材は、H型鋼によって構成され、ボルト保持体の下端には傾斜面が形成されており、傾斜面の傾斜方向における上端が下端よりもH型鋼のウェブ部の近くに位置した状態で、ベース部と支持部との間にボルト保持体を嵌め込むと、さらに好適である。
上記の構成によれば、ボルト保持体の下端に傾斜面が形成されることにより、ベース部と支持部との間にボルト保持体をスムーズに嵌め込むことができる。
【0011】
また、上記の床パネルの固定方法において、支持部上に載置された床パネルと、支持部とを固定するために、ボルト穴及びパネル側穴に挿入された状態のボルトの上方に形成された開口を通じて、ボルトの上方からボルトにナットを締結すると、なお一層好適である。
上記の構成によれば、ボルトの上方に開口が設けられることで、ボルトの上方が解放されてボルトが露出する。これにより、ボルトにナットをより容易に締結することができる。
【0012】
また、上記の床パネルの固定方法において、床パネルは、パネル側穴が形成された下地材と、下地材に接合されたパネル本体と、を備えてもよい。この場合、床パネルを支持部上に配置する際に、パネル本体が下地材の上方に位置した状態で下地材を支持部上に載せ、床パネルを支持部上に配置した段階では、開口を外れた位置にパネル本体が存在してもよい。
上記の構成によれば、パネル本体の位置を調整すること(具体的には、パネル本体の端位置を本来の配置位置から後退させる等)により、ボルトの上方に開口を容易に設けることができる。
【0013】
また、上記の床パネルの固定方法において、床パネルは、パネル側穴が形成された下地材と、下地材に接合されたパネル本体と、パネル本体に形成された切り欠き部と、を備えてもよい。この場合、床パネルを支持部上に配置する際に、パネル本体が下地材の上方に位置した状態で下地材を支持部上に載せ、床パネルを支持部上に配置した段階では、切り欠き部が、ボルトの上方に位置して開口をなしてもよい。
上記の構成によれば、パネル本体の切り欠き部を利用して、ボルトの上方に開口を容易に設けることができる。
【0014】
また、前述の課題は、上述した床パネルの固定方法に用いられるボルト保持体によって解決される。
上記のボルト保持体を用いることで、床パネルを支持部材に固定するためのボルトを、支持部材の支持部に設けられたボルト穴に挿入した状態で適切に保持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、床パネルをボルトによって支持部材に効率よく固定することができる。また、本発明によれば、床パネルをボルトによって支持部材に固定する際に、支持部材の支持部に設けられたボルト穴に挿入された状態のボルトを保持可能なボルト保持体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】床の構造を示す図であり、床を側方から見た図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係るボルト保持体の斜視図である。
図3】本発明の一つの実施形態に係るボルト保持体の側面図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係るボルト保持体の平面図である。
図5】本発明の一つの実施形態において床パネルを固定する手順に関する第1図である。
図6】本発明の一つの実施形態において床パネルを固定する手順に関する第2図である。
図7】ボルト保持体が備える板バネ部の拡大図であり、板バネ部が弾性変形した状態を示すている。
図8】本発明の一つの実施形態において床パネルを固定する手順に関する第3図である。
図9図8のA-A断面である。
図10】本発明の一つの実施形態において床パネルを固定する手順に関する第4図である。
図11】本発明の一つの実施形態に係る床パネルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<<本発明の一つの実施形態について>>
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して各部材を図示している。また、図中に示す各部材のサイズ(寸法)及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている。
また、本明細書において、「直交」、「垂直」、「平行」及び「水平」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な直交、垂直、平行及び水平に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている状態も含むものとする。
【0018】
以降の説明では、住宅をはじめとする建物の床、特に建物における1階の床を構築する工事(床工事)を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、2階以上の床を構築する場合にも適用可能である。
【0019】
<<床構造について>>
本発明を適用して構築される床(以下、床10)の構造について、図1を参照しながら説明する。
床10は、H型鋼からなる床梁12に複数の床パネル20を固定することによって構成される。床梁12は、床パネル20の下方位置で床パネル20を支持する支持部材であり、詳しくは、1階の床10を構成する横架材、すなわち大引である。床梁12は、図1の紙面を貫く方向に長く延出しており、その方向と直交する方向(図1の左右方向)において一定間隔で複数並べられている。
【0020】
床梁12は、図1に示すように、床梁12の下端部をなす下側フランジ14と、床梁12の上端部をなす上側フランジ16と、フランジ間を連結するウェブ部18と、を有する。下側フランジ14は、ベース部に相当し、不図示の土台に載せられた状態で土台に固定されている。上側フランジ16は、支持部に相当し、図1に示すように、その上面には床パネル20が載置される。詳しく説明すると、上側フランジ16は、ウェブ部18を挟んで互いに反対側に位置する2つの張り出し部16aを備え、図1に示すように、それぞれの張り出し部16aに床パネル20が載置される。
【0021】
また、それぞれの張り出し部16aには、床梁12の長手方向に沿って所定の間隔でボルト穴19が設けられている。ボルト穴19は、床パネル20を床梁12に固定するためのボルト30が挿入される孔である。それぞれの張り出し部16aには、張り出し部16aに載置される床パネル20の数に応じた数のボルト穴19が設けられている。
【0022】
床パネル20は、床10の構成部品であり、図1に示すように、パネル本体22と、パネル本体22に接合された下地材としての根太24とを有する。パネル本体22は、例えば合板、ALC(Autoclaved Light weight Concrete)ボード、又は石膏ボード等の板材からなり、完成した床10において床板を構成する。すなわち、完成した床10において、各床パネル20は、パネル本体22が根太24の上方に位置し、詳しくは、パネル本体22において根太24と反対側に位置する面(以下、パネル本体22の表面)が上方を向いた状態で配置されている。
なお、完成した床10において、パネル本体22の表面(上面)には、フローリング材等のような仕上げ材が載せられてもよい。
【0023】
根太24は、例えばC形鋼のような鋼材からなり、パネル本体22の裏面に接合されてパネル本体22と一体化している。一つの床パネル20には、複数の根太24がパネル本体22の縦方向(又は横方向)において間隔を空けて並べられており、それぞれの根太24は、複数の根太24が並ぶ方向に対して直交する方向に沿って長く延出している。
【0024】
根太24は、図1に示すように、パネル本体22に接合された第1延出部25と、第1延出部25と略平行になるように配置された第2延出部26と、延出部の間で延出部同士を連結する連結部27とを有する。第1延出部25、第2延出部26及び連結部27は、それぞれ、根太24の長手方向に沿って延出している。
【0025】
床パネル20が床梁12の上側フランジ16に載置された状態では、根太24の長手方向が床梁12の長手方向と直交しており、図1に示すように、第2延出部26が、詳しくは第2延出部26の延出方向端部が上側フランジ16の張り出し部16aに載っている。
【0026】
また、第2延出部26の長手方向端部には、パネル側穴29が設けられている(図8等参照)。パネル側穴29は、床パネル20を床梁12に固定する際にボルト穴19と連通し、図1に示すように、パネル側穴29には、ボルト穴19を通過したボルト30の軸部32(ネジ部)が挿入される。
【0027】
ボルト30の軸部32のうち、パネル側穴29を通過した部分には、図1に示すように、ナット36が締結されている。これにより、床パネル20が床梁12の上側フランジ16に固定される。
【0028】
<<ボルト及びボルト保持体について>>
床パネル20を床梁12に固定するために用いられるボルト30は、一般的なボルト、より詳しくは強力ボルトである。ボルト30は、図1に示すように、軸部32が頭部34よりも上方に位置した状態で用いられ、詳しくは、床梁12の上側フランジ16の下方からボルト穴19に軸部32が挿入される。このため、ボルト30によって床パネル20を床梁12に固定する際には、軸部32がボルト穴19に挿入された状態でボルト30を保持(支持)する必要がある。詳しくは、ボルト穴19に挿入されたボルト30が自重で落下しないようにボルト30の頭部34を下側から押さえて支える必要がある。
【0029】
本実施形態では、上記の如くボルト30を支持するために、図2~4に示すボルト保持体40を利用する。ボルト保持体40は、ボルト受け金物であり、図2~4に示すように、台部41と、台部41に固定された支持部42と、ボルト保持体40の上端部をなす板バネ部43と、を有する。
以下では、ボルト保持体40の各部について詳しく説明する。なお、以下では、特に断る場合を除き、ボルト保持体40の各部の位置、及び部分同士の位置関係等については、ボルト保持体40が使用されている状態を想定して説明することとする。
【0030】
台部41は、図2から分かるように略U字状の断面形状を有し、背板部44と、背板部44の両端部から背板部44に対して垂直に突出した一対の側板部45とを有する。背板部44及び一対の側板部45の各々は、上下方向に長く延びており、それぞれ、同一の高さを有する。台部41の高さ(すなわち、背板部44及び側板部45の各々の高さ)は、床梁12における下側フランジ14と上側フランジ16との間に設けられたスペース(以下、フランジ間スペース)の高さよりも幾分短くなっている。
【0031】
また、図3に示すように、各側板部45の下端部の先端部分(自由端部)は、略三角形状に切り欠かれている。すなわち、各側板部45の先端側の底面(下端)には、傾斜面46が形成されている。この傾斜面46は、背板部44から遠ざかるほど上方に位置するように傾斜している。つまり、傾斜面46の傾斜方向における上端は、下端よりも側板部45の先端側に位置し、本実施形態では、側板部45の先端と同位置にある。
【0032】
支持部42は、図2及び3に示すように、ボルト30の頭部34を支持する部分であり、台部41の上端を覆った状態で台部41の上端部にビス、リベット又は溶接等にて固定されている。支持部42は、平坦な載置面47を上端面として有する。この載置面47は、台部41を水平面上に置いた状態では略水平面となり、その上にボルト30の頭部34、詳しくはボルト30の頂面が載置される。
【0033】
板バネ部43は、図2及び3に示すように、支持部42より上側に配置されており、具体的には、支持部42より上方の位置まで立ち上がった立ち上がり部48と、立ち上がり部48の上端から片持ち状に延出した弾性部49とを有する。弾性部49の先端部(自由端部)は、先端部に近づくほど上方に向かうように屈曲している。そして、弾性部49は、その先端部が下側に押されることで、その先端部が下方に向かって撓るように弾性変形する。ここで、弾性部49が弾性変形していない状態でのボルト保持体40の全長、すなわち、弾性部49の先端から台部41の下端までの高さ(図3にて記号hにて示す)は、フランジ間スペースの高さよりも幾分大きい。
【0034】
また、図4に示すように、弾性部49は、その大部分が刳り貫かれた形状であり、平面視で略U字状をなしている。これは、支持部42にボルト30が支持されている状態において、弾性部49とボルト30との干渉を避けるためである。換言すると、ボルト30は、弾性部49のうち、刳り貫かれた部分の内側に配置された状態で載置面47に載置されて支持される。
【0035】
<<床パネルの固定手順について>>
次に、前述した構造の床10を構築する床工事の手順について、図5~11を参照しながら説明する。なお、以下では、引き続き、1階の床を構築する床工事を例に挙げて説明することとする。
【0036】
床工事では、本発明の一つの実施形態に係る床パネルの固定方法が利用され、具体的には、ボルト30、ナット36及びボルト保持体40を用いて床パネル20を床梁12に固定する。
【0037】
より詳しく説明すると、床工事に先立って、建物の躯体工事が実施され、床梁12が所定位置に設置される。その後に床工事が開始され、床工事では、先ず、床梁12の上側フランジ16に形成されたボルト穴19にボルト30を挿入する。この際、図5に示すように、ボルト30の頭部34が軸部32よりも下側に位置した状態で、上側フランジ16の下方から軸部32をボルト穴19に挿入する。
【0038】
次に、ボルト穴19に挿入された状態のボルト30を把持しながら、下側フランジ14と上側フランジ16との間のスペース、すなわち、フランジ間スペース内にボルト保持体40を配置する。このとき、図6に示すように、フランジ間スペースの外側から(詳しくは、下側フランジ14及び上側フランジ16のそれぞれの先端と隣り合う位置から)、フランジ間スペース内に、ボルト保持体40を立てた状態で入れる。ボルト保持体40が立てられた状態とは、台部41よりも板バネ部43が上方に位置し、且つ台部41の長手方向が鉛直方向に沿った状態を意味する。
なお、ボルト保持体40をフランジ間スペース内に入れる作業は、例えば、床梁12の上方に居る作業者が、ボルト保持体40を持った手を床梁12の上側からフランジ間スペースに近づけることで行われる。
【0039】
ボルト保持体40がフランジ間スペース内に入り込む直前の段階では、ボルト保持体40の全長が、フランジ間スペースの高さよりも幾分大きい。そして、ボルト保持体40がフランジ間スペース内に入り始めると、板バネ部43の弾性部49が上側フランジ16の下面に当接し、上側フランジ16から下向きの押圧力を受ける。これにより、図7に示すように、弾性部49が、その先端部分(自由端部)が下方に向かって撓るように弾性変形する。これにより、ボルト保持体40の全長がフランジ間スペースの高さまで縮み、ボルト保持体40がフランジ間スペースの奥側に入り込めるようになる。
【0040】
すなわち、本実施形態では、フランジ間スペース内にボルト保持体40を配置する際には、板バネ部43を上側フランジ16の下面に当接させて板バネ部43を押し下げながら、フランジ間スペース内にボルト保持体40を嵌め込む(詳しくは、押し込む)。このとき、ボルト保持体40の下端に形成された傾斜面46の傾斜方向における上端が、下端よりも床梁12(H型鋼)のウェブ部18の近くに位置した状態で、ボルト保持体40がフランジ間スペース内に嵌め込まれる。つまり、フランジ間スペース内にボルト保持体40を嵌め込む際には、台部41の側板部45がその先端側からフランジ間スペース内に入り込む。ここで、傾斜面46が形成されているため、側板部45の高さ(上下方向の長さ)が、側板部45の先端側でより短くなっている。これにより、フランジ間スペース内にボルト保持体40をスムーズに嵌め込むことができる。
【0041】
そして、ボルト穴19に挿入されたボルト30の頭部34の直下に支持部42の載置面47が位置するようになると、その時点の位置にてボルト保持体40がセットされる。ボルト保持体40が上記の位置にセットされた状態では、図8に示すように、台部41の下端が下側フランジ14の上面に当接しており、板バネ部43の上端が上側フランジ16の下面に当接している。換言すると、本実施形態では、ボルト保持体40の下端が下側フランジ14から反力を受け、且つ、ボルト保持体40の上端が上側フランジ16から反力を受けるように、フランジ間スペース内にボルト保持体40を嵌め込む。これにより、ボルト保持体40は、フランジ間スペース内にて突っ張った状態となる。この結果、ボルト保持体40の取り付け状態を安定させ、また、ボルト保持体40がフランジ間スペースから脱落するのを抑えることができる。
【0042】
なお、下側フランジ14の上面には、図9に示すような位置決め用のナット(以下、位置決め用ナット60)が固定されてもよい。この場合、フランジ間スペース内でボルト保持体40がセットされた状態では、図9に示すように、台部41が備える一対の側板部45が、その間に上記の位置決め用ナット60を挟み込んでもよい。これにより、ボルト保持体40をフランジ間スペース内にセットした後にボルト保持体40の位置ずれを抑制することができる。
【0043】
以上の手順にてフランジ間スペース内にボルト保持体40が嵌め込まれて所定位置にセットされると、ボルト穴19に挿入されたボルト30の頭部34(詳しくは、頭部34の頂面)が、ボルト保持体40の支持部42の上端に位置する載置面47に載る。これにより、ボルト穴19に挿入された状態のボルト30が、その状態にてボルト保持体40により保持(仮固定)される。この結果、以降の工程において、ボルト穴19に挿入された状態のボルト30を作業者が手で押さえる必要がなくなり、床パネル20を固定する作業がより容易になる。かかる効果は、1階の床等のように床下に作業者が入る空間を確保しにくい状況での床工事において、特に有効である。
【0044】
なお、載置面47の上方には板バネ部43の弾性部49が配置されているが、その大部分が刳り貫かれているため、ボルト30と弾性部49との干渉を回避しつつ、ボルト30の頭部34を載置面47に支障なく載せることができる。
また、ボルト保持体40をフランジ間スペース内に配置した後には、ボルト保持体40が下側フランジ14の上面に垂直に立っていることを作業者が目視にて確認するとよい。
【0045】
次に、床パネル20をクレーン等の懸架装置(不図示)によって吊り上げ、床梁12の上側フランジ16の上に載せる。このとき、パネル本体22の表面が上側を向くように床パネル20を保持した上で、床パネル20が備えるパネル側穴29が、ボルト穴19に挿入された状態のボルト30の軸部32の直上に位置するように床パネル20の位置を調整する。そして、位置が調整された床パネル20を下降させ、ボルト30の軸部32がパネル側穴29に挿入されるように、床パネル20を上側フランジ16の上に配置する。詳しくは、パネル本体22が根太24の上方に位置した状態で、根太24を上側フランジ16の張り出し部16aの上に載せる。
【0046】
その後、上側フランジ16上に載置された床パネル20と上側フランジ16とを、ボルト穴19及びパネル側穴29に挿入された状態のボルト30により固定する。具体的には、上記の状態にあるボルト30の軸部32にナット36を締結する。本実施形態では、図10に示すように、ボルト穴19及びパネル側穴29に挿入された状態のボルト30の上方に形成された開口Fを通じて、ボルト30の上方からボルト30の軸部32にナット36を締結する。
【0047】
より詳しく説明すると、本実施形態に係る床パネル20は、パネル本体22の外縁が根太24の長手方向端より150mm程度だけ内側(パネル中央により近い側)にある。そのため、床パネル20を床梁12の上側フランジ16上に配置した段階では、図10に示すように、パネル本体22の端位置が根太24の長手方向端に対して通常の配置位置よりも幾分後退した(控えた)位置にある。この結果、根太24の長手方向端部に形成されたパネル側穴29、及び、パネル側穴29に挿入されたボルト30の上方には、開口Fが形成される。換言すると、根太24の長手方向において開口Fを外れた位置にパネル本体22が存在するように、床パネル20が上側フランジ16上に配置される。
なお、開口Fは、その後に開口Fを塞ぐ作業の負荷を考慮して、必要最小限の開口サイズにするのが好ましい。
【0048】
ボルト30の上方に開口Fを形成する方法は、上述の方法以外にも考えられ、例えば、図11に示すように、パネル本体22の外縁部分の所定箇所に切り欠き部23が形成された床パネル20を用いる方法が考えられる。切り欠き部23は、図11に示すように、パネル側穴29と対向する位置にある。したがって、パネル本体22が根太24の上方に位置した状態で根太24を上側フランジ16上に載せた段階(すなわち、床パネル20を上側フランジ16に配置した段階)では、切り欠き部23が、ボルト30の上方に位置して開口Fをなすようになる。
【0049】
以上のようにボルト30の上方に開口Fが形成されることにより、ボルト30の軸部32が開口Fに臨んで露出する。作業者は、開口Fを通じて、露出した軸部32に手を近付け、軸部32にナット36を締結する。このように開口Fを通じて軸部32の上方からナット36を軸部32に容易に締結することができ、例えば、作業者は、床梁12上に載せられた床パネル20の上でナット36の締結を行うことができる。この結果、床パネル20の固定における作業性が向上する。かかる効果は、1階の床等のように床下に作業者が入る空間を確保しにくい状況での床工事において、特に有効である。
【0050】
なお、ナット36を締結する際には、インパクトレンチ等の電動工具を用いてもよい。このとき、ナット36の回転に伴ってボルト30が回転し、その回転がボルト保持体40にまで伝達されることでボルト保持体40自体も回転(共回り)する可能性がある。一方で、図9に示すように、台部41が備える一対の側板部45が、その間に位置決め用ナット60を挟み込んでいれば、ボルト保持体40の共回りを抑制することができる。
【0051】
その後、上記の開口Fを不図示のパネル片によって塞ぎ、必要に応じてパネル本体22の上にフローリング材のような仕上げ材が設置される。開口Fが上記の切り欠き23により構成される場合には、開口Fを塞がないままの状態で仕上げ材を設置してもよい。
以上までの手順により床パネル20が床梁12に固定され、床工事が完了する。上記一連の手順によれば、床パネル20をより効率よく床梁12に固定することができ、床工事をより簡単に行うことができる。
【0052】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の床パネルの固定方法、及び、ボルト保持体に関する一つの実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0053】
上記の実施形態では、上端部に板バネ部43を備えるボルト保持体40について説明した。このボルト保持体40は、ボルト保持体40をフランジ間スペースに嵌め込む際に板バネ部43の弾性変形によりボルト保持体40の全長を縮めることが可能な構造であり、これにより突っ張った状態でフランジ間スペースに嵌め込まれるものである。ただし、ボルト保持体は、このような構造に限定されるものではなく、フランジ間スペース内にて突っ張った状態で配置可能なものである限り、他の構造でもよい。例えば、上記の実施形態におけるボルト保持体40の台部41に相当する部分が、長尺ボルト及び長尺ナットによって構成され、長尺ボルトのうち、長尺ナットの孔に挿入された部分の長さを変えることで伸縮可能な構造のボルト保持体を用いてもよい。このボルト保持体であれば、フランジ間スペース内に配置した後に全長を伸ばす操作(詳しくは、長尺ネジを長尺ナットに対して所定方向に回す操作)を行うことにより、フランジ間スペース内で突っ張った状態となる。
これに対し、上記の実施形態に係るボルト保持体40であれば、全長を伸ばす操作(すなわち、突っ張った状態となるように全長を調整する操作)を要さずに、フランジ間スペース内で突っ張った状態で配置することができ、その点において、より有利な構造である。
【0054】
また、上記の実施形態では、ボルト保持体40が金属製(金物)であることとしたが、これに限定されない。例えば、ボルト保持体40の一部又は全部が金属以外の材質、例えば、樹脂材料、ゴム、紙、木材又はガラス等によって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 床
12 床梁(支持部材)
14 下側フランジ(ベース部)
16 上側フランジ(支持部)
16a 張り出し部
18 ウェブ部
19 ボルト穴
20 床パネル
22 パネル本体
23 切り欠き部
24 根太(下地材)
25 第1延出部
26 第2延出部
27 連結部
29 パネル側穴
30 ボルト
32 軸部
34 頭部
36 ナット
40 ボルト保持体
41 台部
42 支持部
43 板バネ部
44 背板部
45 側板部
46 傾斜面
47 載置面
48 立ち上がり部
49 弾性部
60 位置決め用ナット
F 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11