(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026592
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】エンジン装置
(51)【国際特許分類】
F02B 37/00 20060101AFI20240220BHJP
F02B 37/013 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F02B37/00 500B
F02B37/00 301H
F02B37/013
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222081
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2023070558の分割
【原出願日】2016-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】内堀 正崇
(57)【要約】
【課題】ディーゼルエンジンに二段過給機を配置するにあたって、二段過給機をできるだけコンパクトにレイアウトする。
【解決手段】エンジン装置1は、排気マニホールド4から排出される排気ガスの流体エネルギーにより吸気マニホールド3に流入させる新気を圧縮させる過給機30を備える。過給機30は、排気マニホールド4と連結した高圧過給機51と、高圧過給機51と連結した低圧過給機52とによる二段過給機で構成されている。高圧過給機51の排気出口と低圧過給機52の排気入口とは、クランク軸方向において異なる位置に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気マニホールドから排出される排気ガスの流体エネルギーにより吸気マニホールドに流入させる新気を圧縮させる過給機を備えるエンジン装置であって、
前記過給機は、前記排気マニホールドと連結した高圧過給機と、該高圧過給機と連結した低圧過給機とによる二段過給機で構成されており、
前記高圧過給機の排気出口と前記低圧過給機の排気入口とは、クランク軸方向にずれた位置に配置されている、
エンジン装置。
【請求項2】
前記低圧過給機の排気入口は、前記高圧過給機の排気出口よりも、前記クランク軸方向において、フライホイール側に配置されている、
請求項1に記載のエンジン装置。
【請求項3】
前記高圧過給機の排気出口と前記低圧過給機の排気入口とを連結する排気ガス管は、前記高圧過給機と平面視の一方向に沿って連結され、前記低圧過給機と上下方向に沿って連結されている、
請求項1又は2に記載のエンジン装置。
【請求項4】
前記排気ガス管は、前記高圧過給機に結合される一端と前記低圧過給機に結合される他端との間に、曲げ部を有する、
請求項3に記載のエンジン装置。
【請求項5】
前記低圧過給機の新気出口と前記高圧過給機の新気入口とを連結する新気通路管は、前記低圧過給機と平面視の一方向に沿って連結され、前記高圧過給機と平面視の一方向に沿って連結されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のエンジン装置。
【請求項6】
前記新気通路管は、前記低圧過給機及び前記高圧過給機に対して同一方向から結合されている、
請求項5に記載のエンジン装置。
【請求項7】
前記新気通路管は、前記低圧過給機に結合される一端と前記高圧過給機に結合される他端との間に、曲げ部を有する、
請求項5又は6に記載のエンジン装置。
【請求項8】
前記低圧過給機の中心と前記高圧過給機の中心とは、平面視において第1ずれ量だけずれた位置に配置されており、
前記クランク軸方向における前記高圧過給機の排気出口と前記低圧過給機の排気入口との間の第2ずれ量は、前記第1ずれ量よりも小さい、
請求項1~7のいずれか1項に記載のエンジン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、過給機を備えたエンジン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン出力の向上や燃費改善を目的として、エンジンのシリンダ内の空気密度を増大させるべく、排気エネルギーにより新気を圧縮させる過給機がエンジン装置に搭載される(特許文献1参照)。ディーゼルエンジンにおいては、高密度の空気を大量にシリンダ内に供給することで多量の燃料を燃焼させて、エンジン出力やエンジントルクを増大させるだけでなく、燃料と空気の混合を促進させることにより予混合燃焼を抑制して、NOx排出量の低減も図れる。
【0003】
また、1台の過給機による単段過給機では、高出力エンジンにおける要求に対して限界があるため、2台の過給機を高圧段と低圧段とで直列に連結させた二段過給機を搭載させたエンジンが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4517550号公報
【特許文献2】特許第5237785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ディーゼルエンジンの搭載スペースは搭載対象の作業車両(建設機械や農作業機等)によって様々だが、近年は、軽量化・コンパクト化の要請で、搭載スペースに制約がある(狭小である)ことが多い。このため、ディーゼルエンジンの構成部品をコンパクトにレイアウトする必要がある。また、搭載スペースの制約という問題もさることながら、EGR装置やターボ過給機などの部品をシリンダヘッドに連結して支持させるため、シリンダヘッドにおいては剛性の高い構造が要求される。
【0006】
また、特許文献2のエンジン装置のように、二段過給機における高圧段と低圧段それぞれの過給機を排気マニホールドから離間した位置で上下に配置した場合、二段過給機を支持する排気マニホールド出口にかかるモーメントが大きくなり、結果的に、二段過給機の支持剛性が低くなる。また、高圧段のタービン側に設けたバイパス経路を外部配管とするため、二段過給機における配管構造が複雑になり、エンジン装置への組付けが煩雑になる。
【0007】
本願発明は、上記のような現状を検討して改善を施したエンジン装置を提供することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の一態様に係るエンジン装置は、排気マニホールドから排出される排気ガスの流体エネルギーにより吸気マニホールドに流入させる新気を圧縮させる過給機を備えるエンジン装置である。前記過給機は、前記排気マニホールドと連結した高圧過給機と、該高圧過給機と連結した低圧過給機とによる二段過給機で構成されている。前記高圧過給機の排気出口と前記低圧過給機の排気入口とは、クランク軸方向において異なる位置に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図9】シリンダヘッドを吸気マニホールド側から見た拡大斜視図である。
【
図10】シリンダヘッドを排気マニホールド側から見た分解斜視図である。
【
図11】シリンダヘッドを吸気マニホールド側から見た分解斜視図である。
【
図14】シリンダヘッド及びEGR装置の断面斜視図である。
【
図15】シリンダヘッド及び排気マニホールドの断面斜視図である。
【
図16】シリンダヘッドにおけるEGRクーラとの連結部分の断面斜視図である。
【
図20】シリンダヘッドにおけるEGRクーラとの連結部分の分解図である。
【
図21】シリンダヘッドにおけるEGRクーラとの連結部分の断面図である。
【
図22】二段過給機の配置を説明するためのエンジンの左側面図である。
【
図29】冷却水ポンプ取り付け部分の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まず、
図1~
図8を参照しながら、ディーゼルエンジン(エンジン装置)1の全体構造について説明する。なお、以下の説明では、クランク軸5と平行な両側部(クランク軸5を挟んで両側の側部)を左右、フライホイールハウジング7設置側を前側、冷却ファン9設置側を後側と称して、これらを便宜的に、ディーゼルエンジン1における四方及び上下の位置関係の基準としている。
【0011】
図1~
図8に示す如く、ディーゼルエンジン1におけるクランク軸5と平行な一側部に吸気マニホールド3を、他側部に排気マニホールド4を配置している。実施形態では、シリンダヘッド2の右側面に吸気マニホールド3がシリンダヘッド2と一体に成形されており、シリンダヘッド2の左側面に排気マニホールド4が設置されている。シリンダヘッド2は、クランク軸5とピストン(図示省略)が内蔵されたシリンダブロック6上に搭載されている。
【0012】
シリンダブロック6の前後両側面から、クランク軸5の前後先端側を突出させている。ディーゼルエンジン1におけるクランク軸5と交差する一側部(実施形態ではシリンダブロック6の前側面側)に、フライホイールハウジング7が固着されている。フライホイールハウジング7内にフライホイール8が配置されている。フライホイール8はクランク軸5の前端側に軸支されていて、クランク軸5と一体的に回転するように構成されている。作業機械(例えば油圧ショベルやフォークリフト等)の作動部に、フライホイール8を介してディーゼルエンジン1の動力を取り出すように構成されている。ディーゼルエンジン1におけるクランク軸5と交差する他側部(実施形態ではシリンダブロック6の後側面側)に、冷却ファン9が設けられている。クランク軸5の後端側からVベルト10を介して冷却ファン9に回転力を伝達するように構成されている。
【0013】
シリンダブロック6の下面にはオイルパン11を配置する。オイルパン11内には潤滑油が貯留されている。オイルパン11内の潤滑油は、シリンダブロック6のフライホイールハウジング7との連結部分であってシリンダブロック6の右側面側に配置されたオイルポンプ(図示省略)にて吸引され、シリンダブロック6の右側面に配置されたオイルクーラ13並びにオイルフィルタ14を介して、ディーゼルエンジン1の各潤滑部に供給される。各潤滑部に供給された潤滑油は、その後オイルパン11に戻される。オイルポンプ(図示省略)はクランク軸5の回転にて駆動するように構成されている。
【0014】
シリンダブロック6のフライホイールハウジング7との連結部分に、燃料を供給するための燃料供給ポンプ15が取り付けられ、燃料供給ポンプ15がEGR装置24下方に配置される。コモンレール16が、シリンダヘッド2の吸気マニホールド3下側でシリンダブロック6側面に固定されており、燃料供給ポンプ15上方に配置されている。ヘッドカバー18で覆われているシリンダヘッド2上面部に、電磁開閉制御型の燃料噴射バルブを有する4気筒分の各インジェクタ(図示省略)が設けられている。
【0015】
各インジェクタが、燃料供給ポンプ15及び円筒状のコモンレール16を介して、作業車両に搭載される燃料タンク(図示省略)が接続されている。燃料タンクの燃料が燃料供給ポンプ15からコモンレール16に圧送され、高圧の燃料がコモンレール16に蓄えられる。各インジェクタの燃料噴射バルブをそれぞれ開閉制御することによって、コモンレール16内の高圧の燃料が各インジェクタからディーゼルエンジン1の各気筒に噴射される。
【0016】
シリンダヘッド2上面部に設ける吸気弁及び排気弁(図示省略)などを覆うヘッドカバー18上面に、ディーゼルエンジン1の燃焼室などからシリンダヘッド2上面側に漏れ出
たブローバイガスを取入れるブローバイガス還元装置19が設けられている。ブローバイガス還元装置19のブローバイガス出口が、還元ホース68を介して、二段過給機30の吸気部に連通される。ブローバイガス還元装置19内にて潤滑油成分が除去されたブローバイガスは、二段過給機30を介して、吸気マニホールド3に還元される。
【0017】
フライホイールハウジング7にエンジン始動用スタータ20が取り付けられ、エンジン始動用スタータ20が排気マニホールド4下方に配置される。エンジン始動用スタータ20は、シリンダブロック6とフライホイールハウジング7との連結部下方となる位置で、フライホイールハウジング7に取り付けられる。
【0018】
シリンダブロック6の後面左寄りの部位には、冷却水潤滑用の冷却水ポンプ21が冷却ファン9の下方に配置されている。クランク軸5の回転にて、冷却ファン駆動用Vベルト10を介して、冷却ファン9と共に冷却水ポンプ21が駆動される。作業車両に搭載されるラジエータ(図示省略)内の冷却水が、冷却水ポンプ21の駆動にて、冷却水ポンプ21に供給される。そして、シリンダヘッド2及びシリンダブロック6に冷却水が供給され、ディーゼルエンジン1を冷却する。
【0019】
冷却水ポンプ21は、排気マニホールド4下方に配置されており、ラジエータの冷却水出口と連通される冷却水入口管22が、シリンダブロック6の左側面であって冷却水ポンプ21と同一高さ位置に固設される。一方、ラジエータの冷却水入口と連通される冷却水出口管23が、シリンダヘッド2の後面上方に固設されている。シリンダヘッド2は、吸気マニホールド3後方に突設させた冷却水排水部35を有しており、当該冷却水排水部35上面に冷却水出口管23が設置される。
【0020】
吸気マニホールド3の入口側は、後述するEGR装置24(排気ガス再循環装置)のコレクタ(EGR本体ケース)25を介してエアクリーナ(図示省略)に連結されている。エアクリーナに吸い込まれた新気(外部空気)は、当該エアクリーナにて除塵・浄化されたのち、コレクタ25を介して吸気マニホールド3に送られ、そして、ディーゼルエンジン1の各気筒に供給される。実施形態では、EGR装置24のコレクタ25が、シリンダヘッド2と一体成形されてシリンダヘッド2の右側面を構成している吸気マニホールド3の右側方に連結している。すなわち、シリンダヘッド2の右側面に設けられる吸気マニホールド3の入口開口部に、EGR装置24のコレクタ25の出口開口部が連結されている。なお、本実施形態では、後述するように、EGR装置24のコレクタ25は、インタークーラ(図示省略)及び二段過給機30を介して、エアクリーナに連結している。
【0021】
EGR装置24は、ディーゼルエンジン1の再循環排気ガス(排気マニホールド4からのEGRガス)と新気(エアクリーナからの外部空気)とを混合させて吸気マニホールド3に供給する中継管路としてのコレクタ25と、エアクリーナにコレクタ25を連通させる吸気スロットル部材26と、排気マニホールド4にEGRクーラ27を介して接続する還流管路の一部となる再循環排気ガス管28と、再循環排気ガス管28にコレクタ25を連通させるEGRバルブ部材29とを有している。
【0022】
EGR装置24は、シリンダヘッド2における吸気マニホールド3の右側方に配置されている。すなわち、EGR装置24は、シリンダヘッド2の右側面に固定され、シリンダヘッド2内の吸気マニホールド3と連通されている。EGR装置24は、コレクタ25がシリンダヘッド2右側面の吸気マニホールド3に連結するとともに、再循環排気ガス管28のEGRガス入口がシリンダヘッド2右側面の吸気マニホールド3前方部分と連結して固定される。また、コレクタ25の前後それぞれにEGRバルブ部材29及び吸気スロットル部材26が連結され、EGRバルブ部材29の後端に再循環排気ガス管28のEGRガス出口が連結される。
【0023】
EGRクーラ27は、シリンダヘッド2の前側面に固定されており、シリンダヘッド2内を流れる冷却水とEGRガスがEGRクーラ27に流出入し、EGRクーラ27においてEGRガスが冷却される。シリンダヘッド2の前側面は、その左右位置にEGRクーラ27を連結するEGRクーラ連結台座33,34を突設し、連結台座33,34にEGRクーラ27が連結されている。すなわち、EGRクーラ27は、EGRクーラ27後端面とシリンダヘッド2の前側面とが離間するようにして、フライホイールハウジング7上方位置であってシリンダヘッド2前方位置に配置されている。
【0024】
排気マニホールド4の側方(実施形態では左側方)に、二段過給機30が配置されている。二段過給機30は、高圧過給機51と低圧過給機52とを備える。高圧過給機51が、タービンホイール(図示省略)を内蔵した高圧タービン53とブロアホイール(図示省略)を内蔵した高圧コンプレッサ54とを有するとともに、低圧過給機52が、タービンホイール(図示省略)を内蔵した低圧タービン55とブロアホイール(図示省略)を内蔵した低圧コンプレッサ56とを有する。
【0025】
排気マニホールド4に高圧タービン53の排気入口57を連結させ、高圧タービン53の排気出口58に高圧排気ガス管59を介して低圧タービン55の排気入口60を連結させ、低圧タービン55の排気出口61に排気ガス排出管(図示省略)の排気ガス取入れ側端部を連結させている。一方、低圧コンプレッサ56の新気取入れ口(新気入口)63に給気管62を介してエアクリーナ(図示省略)の新気供給側(新気出口側)を接続し、低圧コンプレッサ56の新気供給口(新気出口)64に低圧新気通路管65を介して高圧コンプレッサ54の新気取入れ口66を連結させ、高圧コンプレッサ54の新気供給口67に高圧新気通路管71を介してインタークーラ(図示省略)の新気取り込み側を接続させる。
【0026】
高圧過給機51が排気マニホールド4の排気出口58に連結して、排気マニホールド4の左側方に固定される一方、低圧過給機52が高圧排気ガス管59及び低圧新気通路管65を介して高圧過給機51と連結して、排気マニホールド4の上方に固定される。すなわち、小径となる高圧過給機51と排気マニホールド4とが、大径となる低圧過給機52下方で左右に並設されることで、二段過給機30が排気マニホールド4の左側面及び上面を囲うように配置される。すなわち、排気マニホールド4と二段過給機30とが、背面視(正面視)で矩形状に配置されるようにして、シリンダヘッド2左側面にコンパクトに固定されている。
【0027】
次いで、シリンダヘッド2の構成について、
図9~
図16を参照して、以下に説明する。
図9~
図16に示す如く、シリンダヘッド2は、複数の吸気ポート(図示省略)に新気を導入させる複数の吸気流路36と複数の排気ポートから排気ガスを導出させる複数の排気流路37とが形成されている。そして、複数の吸気流路36を集合する吸気マニホールド3が、シリンダヘッド2の右側部に一体に形成されている。シリンダヘッド2と吸気マニホールド3とを一体に構成することで、吸気マニホールド3から吸気流路36に対する気体シール性を向上させるとともに、シリンダヘッド2の剛性を高めることができる。
【0028】
シリンダヘッド2は、吸気マニホールド3が構成される右側面と逆側となる左側面に排気マニホールド4が連結され、左右側面と隣接する前側面(フライホイールハウジング7側側面)にEGRクーラ27が連結される。そして、EGRクーラ27と連結する連結台座(EGRクーラ連結台座)33,34がシリンダヘッド2の前側面より突出して形成され、連結台座33,34内にEGRガス流路(EGRガス中継流路)31,32と冷却水流路(冷却水中継流路)38,39とが形成されている。
【0029】
EGRクーラ27の連結する連結台座33,34にEGRガス中継流路31,32及び冷却水流路38,39を構成することで、EGRクーラ27とシリンダヘッド2との間に冷却水用配管及びEGRガス用配管を設ける必要がない。そのため、EGRガスや冷却水による配管の伸縮などに影響されることなく、EGRクーラ27との連結部分におけるシール性を確保できるだけでなく、熱や振動などによる外部からの変動要素に対する耐性(構造安定性)が向上する上に、コンパクトに構成できる。
【0030】
シリンダヘッド2は、左側面前方部分から前側面に連通する上流側EGRガス中継流路31を備えており、排気マニホールド4前端側に設けられたEGRガス出口41が上流側EGRガス中継流路31と連通している。また、シリンダヘッド2は、右側面前方部分(吸気マニホールド3前方)から前側面に連通する下流側EGRガス中継流路32を備えており、再循環排気ガス管28のEGRガス入口が下流側EGRガス中継流路32と連通している。シリンダヘッド2は、その前側面の左右両縁側(シリンダヘッド2の前左隅部分及び前右隅部分)を前方に突設されたEGRクーラ連結台座33,34を備えている。そして、連結台座33内に上流側EGRガス中継流路31が設けられ、連結台座34内に下流側EGRガス中継流路32が設けられている。
【0031】
EGR装置24が、シリンダヘッド2の右側面で突設されている吸気マニホールド3と連結している。吸気マニホールド3は、シリンダヘッド2右側面後方(冷却ファン9側)寄りに設けられており、シリンダヘッド2右側面下側部分を右側方に突設して構成されており、その前後中心位置に吸気入口40を有している。EGR装置24のコレクタ25における吸気出口83が、シリンダヘッド2右側面に突設された吸気マニホールド3の吸気入口40と連結し、シリンダヘッド2の右側方にEGR装置24が固定される。
【0032】
シリンダヘッド2の右側面前方(フライホイールハウジング7側)に、EGRクーラ27と連結する連結台座34が前方に向かって突設されており、連結台座34右側面に下流側EGRガス中継流路32のEGRガス出口が開口している。そして、EGR装置24の再循環排気ガス管28の一端が連結台座34の右側面に連結することで、EGR装置24のコレクタ25が、再循環排気ガス管28及びEGRバルブ部材29を介して、シリンダヘッド2内の下流側EGRガス中継流路32と連通する。
【0033】
シリンダヘッド2の右側面後方(冷却ファン9側)に、上面が開口して冷却水出口管(サーモスタットカバー)23と連通される冷却水排水部(サーモスタットケース)35が後方に向かって突設されており、その内部にサーモスタット(図示省略)が設置される。シリンダヘッド2の右側面後方でオフセットして冷却水排水部35が構成されるため、冷却ファン9が固定されるファンプーリ9aに巻回されるVベルト10を、冷却水排水部35の下側の空間に通すことができ、ディーゼルエンジン1の前後方向長さを短くできる。冷却水排水部35は、シリンダヘッド2右側面からも突出しており、シリンダヘッド2の右側面において、吸気マニホールド3と冷却水排水部35とが前後に並んで設けられている。
【0034】
シリンダヘッド2の左側面前方(フライホイールハウジング7側)に、EGRクーラ27と連結する連結台座33が前方に向かって突設されており、連結台座33左側面に上流側EGRガス中継流路31のEGRガス入口96が開口している。すなわち、シリンダヘッド2の左側面では、上流側EGRガス中継流路31のEGRガス入口96と複数の排気流路37の排気出口とが、前後方向に並んで開口している。一方、排気マニホールド4は、シリンダヘッド2左側面との連結面となる右側面に、上流側EGRガス中継流路31と連通するEGRガス出口41と、複数の排気流路37と連通する排気入口42とが、前後方向に並んで開口している。そのため、シリンダヘッド2の同一面にEGR入口及び排気出口を並べて設けるため、シリンダヘッド2と排気マニホールド4との連結部分は、1枚のガスケット45を狭持させることにより、容易に気密性(ガスシール性)を確保できる。
【0035】
排気マニホールド4には、EGRガス出口41及び排気入口42と連通している排気集合部43が、前後方向を長手方向とするように内設されており、排気マニホールド4の後方左側面に、排気集合部43と連通する排気出口44が開口されている。排気マニホールド4は、シリンダヘッド2の排気流路37からの排気ガスが排気入口42を通じて排気集合部43に流れ込むと、排気ガスの一部がEGRガスとなり、EGRガス出口41からシリンダヘッド2の上流側EGRガス中継流路31に流れ込み、排気ガスの残りが排気出口44より二段過給機30に流れ込む。
【0036】
シリンダヘッド2の前側面には、左右一対となるEGRクーラ連結台座33,34が、排気マニホールド4側及び吸気マニホールド3側それぞれに設けられている。そして、EGRクーラ連結台座33に、排気マニホールド4及びEGRクーラ27それぞれのEGRガス流路を連通させる上流側EGRガス中継流路31を設けている。一方、EGRクーラ連結台座34に、EGR装置24及びEGRクーラ27それぞれのEGRガス流路を連通させる下流側EGRガス中継流路32を設けている。また、EGRクーラ連結台座33に、EGRクーラ27から冷却水が排出される下流側冷却水流路38を設けている。一方、EGRクーラ連結台座34に、EGR装置24及びEGRクーラ27へ冷却水を供給する上流側冷却水流路39を設けている。
【0037】
EGRクーラ連結台座33,34を突設した構成とすることで、排気マニホールド4、EGRクーラ27、及びEGR装置24それぞれを連通させるEGRガス用の配管が不要となり、EGRガス流路における連結箇所が少なくなる。従って、EGRガスによるNOx低減を図るディーゼルエンジン1において、EGRガス漏れを低減できるだけでなく、配管の伸縮による応力変化などによる変形を抑制できる。また、EGRクーラ連結台座33,34にEGRガス中継流路31,32と冷却水流路38,39とを構成するため、シリンダヘッド2内に構成する各流路31,32,38,39の形状が単純化されることから、複雑な中子を用いることなく、シリンダヘッド2を容易に鋳造することができる。
【0038】
吸気マニホールド3側のEGRクーラ連結台座33と、排気マニホールド4側のEGRクーラ連結台座34とが離間されているため、連結台座33,34それぞれにおける熱変形による相互の影響を抑制できる。従って、EGRクーラ連結台座33,34とEGRクーラ27との連結部分におけるガス漏れや破損を防止できるだけでなく、シリンダヘッド2の剛性バランスを保持できる。また、シリンダヘッド2前側面における容積を低減できることから、シリンダヘッド2の軽量化を図れる.更に、EGRクーラ27をシリンダヘッド2前側面より離間させて配置でき、EGRクーラ27の前後に空間を有する構成とできるため、EGRクーラ27の周辺に冷却空気を流すことができるため、EGRクーラ27における冷却効率を高めることができる。
【0039】
EGRクーラ連結台座33には、下流側冷却水流路38と上流側EGRガス中継流路31とが上下に配置されており、EGRクーラ連結台座34には、下流側EGRガス中継流路32と上流側冷却水流路39とが上下に配置されている。そして、下流側冷却水流路38の冷却水入口と下流側EGRガス中継流路32のEGRガス入口とが同一高さに配置される一方、上流側冷却水流路39の冷却水出口と下流側EGRガス中継流路32のEGRガス出口とが同一高さに配置される。
【0040】
分離して突設させたEGRクーラ連結台座33,34にEGRガス中継流路31,32及び冷却水流路38,39を内設した構成とすることで、EGRクーラ連結台座33,34双方における熱変形の影響が緩和される。また、EGRクーラ連結台座33,34内において、EGRガス中継流路31,32を流れるEGRガスが冷却水流路38,39を流れる冷却水による冷却され、EGRクーラ連結台座33,34における熱変形自体も抑制される。更に、EGRクーラ連結台座33,34それぞれにおいて、EGRガス中継流路31,32と冷却水流路38,39とが、それぞれの上下高さ位置を置換して配置されている。そのため、EGRクーラ連結台座33,34における熱分布が上下逆方向となり、シリンダヘッド2における高さ方向の熱変形の影響を低減できる。
【0041】
シリンダヘッド2は、その上面周縁から上方向に向かって立設させた外周壁により、ヘッドカバー18下面周縁と連結する間座46を備えている。間座46は、右側面に複数の開口部47を備えており、当該開口部47には、シリンダヘッド2に設けられたインジェクタ(図示省略)とコモンレール16とを連結する燃料管48が通されている。シリンダヘッド2上方に間座46を一体に設けた構成とすることで、シリンダヘッド2の剛性を高めることとなり、シリンダヘッド2の自体の歪みを低減できるだけでなく、シリンダヘッド2に連結させる各部品を高剛性に支持できる。
【0042】
次いで、EGR装置24の構成について、
図9~
図11、
図14、
図15及び
図17~
図19を参照して、以下に説明する。
図9~
図11、
図14、
図15及び
図17~
図19に示す如く、EGR装置24は、新気とEGRガスを混合して吸気マニホールド3に供給するコレクタ(本体ケース)25を備えており、吸気マニホールド3と新気導入用の吸気スロットル部材26とがコレクタ25を介して連通接続されている。コレクタ25には、再循環排気ガス管28の出口側につながるEGRバルブ部材29が連通接続されている。
【0043】
コレクタ25内において、新気流れ方向とEGRガス流れ方向とが直交又は鈍角を形成して交わり、EGRガスと新気との混合ガスを吸気マニホールド3に吸気させる方向が新気流れ方向及びEGRガス流れ方向それぞれと交差する方向となる。また、新気が供給される新気入口81と、EGRガスが供給されるEGRガス入口82とが、コレクタ25の前後両側面に振り分けて開口され、吸気マニホールド3と連結する吸気出口83が、コレクタ25の左側面に開口されている。EGRガス入口82と吸気出口83とが同一高さ位置に配置されるとともに、新気入口81とEGRガス入口82が異なる高さ位置に配置されている。
【0044】
コレクタ25内において、吸気スロットル部材26から新気入口81に導入された新気が、前後方向から上下方向にL字状に屈曲して流れる一方、EGRバルブ部材29からEGRガス入口82に導入されたEGRガスが、斜め上方に向かって流れる。そのため、新気の流れる方向に向かうようにしてEGRガスが流れ込むこととなり、新気に対してEGRガスが混合しやすくなる。また、新気とEGRガスとの混合ガスが上下方向から左右方向にL字状に屈曲して流れ、吸気出口83から吸気マニホールド3に流入する。混合ガスの導出方向が、新気の導入方向及びEGRガスの導入方向だけでなく、コレクタ25内での新気及びEGRガスの流れる方向とも交差するため、EGRガスの新気への混合分布を均一化できる。
【0045】
上述のように、コレクタ25内では、新気流れ方向に対するEGRガス流れ方向が90°以上となって、新気流れとEGRガス流れが交差することで、新気に対するEGRガスの混合分布を一様なものとして、吸気マニホールド3内でのEGRガスの偏流を抑制できる。結果、シリンダヘッド2における複数の吸気流路36それぞれに供給される吸気のEGRガス濃度を均一化して、ディーゼルエンジン1における各気筒の燃焼作用のバラツキを抑制できる。その結果、黒煙の発生が抑制され、ディーゼルエンジン1の燃焼状態を良好に保ちながら、NOx量を低減できる。すなわち、特定の気筒で失火を招来することなく、EGRガスの還流による排気ガスの清浄化(クリーン化)を達成できるのである。
【0046】
コレクタ25は、新気入口81を有する上側ケース(第1ケース)84と、EGRガス入口82と吸気出口83とを有する下側ケース(第2ケース)85とが連結されて構成される。コレクタ25を、上側ケース84と下側ケース85とで上下分割可能な構成とすることで、EGRガス流れと新気流れとが90°以上で交差する混合流路をコレクタ25内に容易に構成できる。そのため、コレクタ25を剛性の高い鋳物で構成することができるだけでなく、アルミニウム系の鋳造物とすることで軽量化を図れる。
【0047】
EGRガスが流れるEGRガス流路86の一部である下流側EGRガス流路(第1EGRガス流路)86aと、新気とEGRガスを混合する混合室87とが、上側ケース84に設けられている。下流側EGRガス流路86aとEGRガス入口82とを連通させる上流側EGRガス流路(第2EGRガス流路)86bと、新気とEGRガスが混合された混合ガスを混合室87から吸気マニホールド3に供給する混合ガス流路88とが、下側ケース85に設けられている。
【0048】
下側ケース85にEGRガス入口82が設けられる一方、上側ケース84に新気入口81と混合室87とが設けられるため、混合室87において、新気入口81から流れ込む新気と下側ケース85から流れ込むEGRガスとが、互いに交差するようにして流れることなり、新気とEGRガスが効率よく混合する。更に、下側ケース85に吸気出口83が設けられることにより、上側ケース84に流入した新気が下側ケース85に向かって流れようとすることで、上側ケース84に向かって流れるEGRガスの新気への混合が均一化される。また、EGRガス流路86、混合室87、及び混合ガス流路88それぞれをコレクタ25内にコンパクトに構成でき、コレクタ25の小型化が図れる。
【0049】
平面視において、下流側EGRガス流路86aが混合室87の中心軸に対して吸気出口83の設けられた側面(左側面)と反対側の側面側(右側)にオフセットして連結し、下流側EGRガス流路86aと上流側EGRガス流路86bとが連通されて、EGRガス流路86が螺旋状に構成されている。すなわち、下流側EGRガス流路86aと上流側EGRガス流路86bによるEGRガス流路86が、平面視で吸気出口83と逆側(右側)に膨らむように湾曲させた形状となっている。そして、上流側EGRガス流路86bの底が、EGRガス入口82から上側ケース84に向かう傾斜面(後方上側への傾斜面)で構成される。
【0050】
混合室87においてEGRガス流路86との連通箇所が、吸気出口83と逆側となるため、混合室87内に流入するEGRガスは新気の流れに誘導されて吸気出口83まで到達することとなり、新気に対してEGRガスを均一に混合させることができる。また、EGRガス流路86から混合室87に流れ込むEGRガスは、混合室87から混合ガス流路88に向かう流れに逆らう方向に流れるため、混合室87内において、新気とEGRガスとが互いに衝突するようにして流れることとなり、EGRガスが新気にスムーズに混合する。
【0051】
更に、螺旋状のEGRガス流路86に沿ってEGRガスが流れているため、EGRガスは、時計回りの渦を形成する旋回流となって、混合室87内に流入することとなる。このように乱れたEGRガスが、新気ガスの流れに逆らう方向に流れ込むから、EGRガスは、混合室87内への流入と同時に、内部を流れる新気にスムーズに混合される。従って、コレクタ25内において、新気とEGRガスとを吸気マニホールド3に送り込む前に撹拌しながら効率よく混合でき(混合ガス中においてEGRガスをスムーズに分散でき)、コレクタ25内でのガス混合状態のバラツキ(ムラ)をより確実に抑制できる。その結果、ディーゼルエンジン1の各気筒にムラの少ない混合ガスを分配して、各気筒間のEGRガス量のバラツキを抑制できるため、黒煙の発生を抑制して、ディーゼルエンジン1の燃焼状態を良好に保ちながら、NOx量を低減できる。また、EGRガス流路86を螺旋状とすることで、混合室87内に流入させるEGRガスに十分な旋回性を与えるため、コレクタ25の前後方向長さを短く形成できる。
【0052】
上側ケース84の下面フランジ84aと下側ケース85の上面フランジ85aとをボルト締結して、3方向(前後方向及び左方向)の開口部(新気入口81、EGRガス入口82、及び吸気出口83)を有するコレクタ25が構成される。上側ケース84は、新気入口81を開口した後面フランジ84bに、吸気スロットル部材26の新気出口がボルト締結されている。吸気スロットル部材26は、その内部にある吸気バルブ(バタフライ弁)26aの開度を調節することにより、コレクタ25への新気の供給量を調節する。
【0053】
下側ケース85は、EGRガス入口82を開口した前面フランジ85bに、矩形管状の中継フランジ89を介して、EGRバルブ部材29のEGRガス出口がボルト締結されている。EGRバルブ部材29は、その内部にあるEGRバルブ(図示省略)の開度を調節することにより、コレクタ25へのEGRガスの供給量を調節する。EGRガス入口82に挿入されるリードバルブ90が、下側ケース85の前面フランジ85b内側で固定されている。そして、前面フランジ85bにボルト締結される中継フランジ(間座)89が、リードバルブ90前方を覆うことで、コレクタ25は、EGRガス流路86のEGRガス入口82側にリードバルブ90を内設する。
【0054】
中継フランジ89は、コレクタ25と連結する後面にEGRガス入口82と連通するEGRガス出口89aが開口されている。中継フランジ89の前面は、EGRバルブ部材29と連結するバルブ連結座89b、89cが突設しており、バルブ連結座89b,89cの開口部がEGRバルブ部材29のEGRガス出口と連通している。中継フランジ89では、上下のバルブ連結座89b,89cにおけるEGRガス入口にEGRガスを合流させて、EGRガス入口82からリードバルブ90を介してコレクタ25内のEGRガス流路86へ流入させる。
【0055】
EGRバルブ部材29は、バルブ本体29eに設けたEGRガス流路29fにEGRバルブ(図示省略)を内設し、当該EGRバルブの開度を調節するアクチュエータ29dをバルブ本体29e上方に設け、上下方向を長手方向として、中継フランジ89を介してコレクタ25前方に連結される。EGRバルブ部材29は、下側バルブ本体29eの後面において、中継フランジ89のバルブ連結座89b,89cそれぞれと連結する出口側フランジ29a,29bを上下に設けている。一方、EGRバルブ部材29の前面には、再循環排気ガス管28のEGRガス出口と連通するEGRガス入口を備えた入口側フランジ29cを備える。
【0056】
EGRバルブ部材29は、EGRクーラ27で冷却されたEGRガスが、EGRクーラ連結台座34の下流側EGRガス中継流路32及び再循環排気ガス管28を介して、入口側フランジ29cのEGRガス入口に流入すると、バルブ本体29eのEGRガス流路29fを通じてEGRガスが上下に振り分けられる。そして、EGRガス流路29fにより上下に流れたEGRガスは、EGRバルブにより流量調整されて、上下の出口側フランジ29a,29bにおけるEGRガス出口より、中継フランジ89内に流れ込む。
【0057】
再循環排気ガス管28は、平面視でL字状に屈曲したガス管部28aと、ガス管部28aの外壁内周側から突設させた平板状のリブ28bとを有している。また、再循環排気ガス管28は、EGRバルブ部材29の入口側フランジ29cと連結する出口側フランジ28cをガス管部28a一端(後端)に設ける一方、EGRクーラ連結台座34の右側面と連結する入口側フランジ28dをガス管部28a他端(左端)に設けている。更に、再循環排気ガス管28は、ガス管部28aの屈曲部分の上面に、EGRガス温度センサを取り付けるセンサ取り付け座28eが設けられている。
【0058】
EGR装置24は、コレクタ25の長さを短く構成できるため、EGRバルブ部材29と吸気スロットル部材26との距離を短くでき、結果、EGR装置24の前後長さを短く構成できる。また、EGRバルブ部材29は、アクチュエータ29dを上方に設けた構成とするため、EGRバルブ部材29、コレクタ25、及び吸気スロットル部材26それぞれの最上部を同一高さとできるため、EGR装置24の上下高さを低く構成できるだけでなく、EGR装置24の左右幅を狭く構成できる。従って、EGR装置24がコンパクトに構成されるため、吸気マニホールド3と一体形成されたシリンダヘッド2右側方向において、再循環排気ガス管28で調整するだけで容易に連結できるだけでなく、ディーゼルエンジン1の小型化に貢献する。
【0059】
再循環排気ガス管28は、ガス管部28aの両端を繋ぐようにして平板状のリブ28bが連結された構成となるため、再循環排気ガス管28が高剛性に構成されるとともに、シリンダヘッド2に対してEGR装置24の前端側の支持強度をも高める。また、再循環排気ガス管28は、ガス管部28a内のEGRガス流路28fに沿って平板状のリブ28bを設けた構成となるため、リブ28bによりガス管部28aにおける放熱面積が広くなるため、EGRガス流路28fを流れるEGRガスの冷却効果を高めることとなる。その結果、EGR装置24で精製される混合ガスの冷却に寄与して、混合ガスによるNOx量低減効果を適正な状態に維持し易くなるという効果を奏する。
【0060】
次いで、EGRクーラ27の構成について、
図9~
図11、
図13~
図16、及び
図20~
図21を参照して、以下に説明する。
図9~
図11、
図13~
図16、及び
図20~
図21に示す如く、EGRクーラ27は、冷却水流路とEGRガス流路とが交互に積層された熱交換部91と、熱交換部91の一側面における左右両端部分に設けられた左右一対のフランジ部92,93とを備える。そして、冷却水出口94及び冷却水入口95が左右のフランジ部92,93に振り分けて設けられる一方、EGRガス入口96及びEGRガス出口97が左右のフランジ部92,93に振り分けて設けられている。また、シリンダヘッド2の前側面に左右のフランジ部92,93が連結され、EGRクーラ27がシリンダヘッド2に固定される。
【0061】
左右一対のフランジ部92,93それぞれに、冷却水用の開口部分とEGRガス用の開口部分を設けた構成とすることで、フランジ部92,93それぞれを共通の部材で構成できるだけでなく、フランジ部92,93にかかる材料コストを抑制できる。また、フランジ部92,93は、冷却水用及びEGRガス用それぞれの貫通穴94~97をシリンダヘッド2との連結用の平板に穿設して構成されるため、EGRクーラ27における製造が容易である。また、フランジ部92,93と熱交換部91との連結部分を最低限に構成できるため、熱交換部91に対するシリンダヘッド2からの熱の伝達量を低減でき、熱交換部91におけるEGRガスの冷却効果を高める。
【0062】
EGRクーラ27は、フランジ部92,93を熱交換部91後面より突設した構成とすることで、熱交換部91とシリンダヘッド2の間に空間が構成される。従って、EGRクーラ27は、熱交換部91の前後面の広い範囲が外気に曝された状態となり、熱交換部91からも放熱されるため、EGRクーラ27におけるEGRガスの冷却効果が高くなる。従って、熱交換部91後面前面が取り付けられる場合に比べて、熱交換部91における積層数を減らすことができ、EGRクーラ27の前後長さを短くできるため、ディーゼルエンジン1の小型化をも図れる。
【0063】
左側フランジ部92に、冷却水出口94とEGRガス入口96が設けられる一方、右側フランジ部93に、冷却水入口95とEGRガス出口97が設けられる。そして、左側フランジ部92において、冷却水出口94とEGRガス入口96とが上下に設けられている一方、右側フランジ部93において、EGRガス出口97と冷却水入口95とが上下に設けられている。また、冷却水出口94とEGRガス出口97とが同一高さに配置される一方、冷却水入口95とEGRガス入口96とが同一高さに配置される。
【0064】
このとき、シリンダヘッド2前側面より突出して形成されたEGRクーラ連結台座33,34それぞれに、EGRクーラ27の左右フランジ部92,93が連結される。そして、左側EGRクーラ連結台座33における上流側EGRガス中継流路31及び下流側冷却水中継流路38それぞれが、左側フランジ部92のEGRガス入口96及び冷却水出口94と連通し、右側EGRクーラ連結台座34における下流側EGRガス中継流路32及び上流側冷却水中継流路39それぞれが、右側フランジ部93のEGRガス出口97及び冷却水入口95と連通する。
【0065】
EGRクーラ27のフランジ部92,93が連結される連結台座33,34にEGRガス中継流路31,32及び冷却水流路38,39を構成し、フランジ部92,93にEGRガス入口96及び出口97と冷却水出口94及び入口95と連通させている。そのため、EGRクーラ27とシリンダヘッド2との間に冷却水用配管及びEGRガス用配管を設ける必要がない。従って、EGRガスや冷却水による配管の伸縮などに影響されることなく、EGRクーラ27とシリンダヘッド2との連結部分におけるシール性を確保できる上、EGRクーラ27は、熱や振動などによる外部からの変動要素に対する耐性が向上し、シリンダヘッド2にコンパクトに設置できる。
【0066】
フランジ部92に上下に冷却水出口94とEGRガス入口96を設ける一方で、フランジ部93に上下にEGRガス出口97と冷却水入口95を設ける構成としたため、同一形状となるフランジ部92及び93が、互いに上下反転させて熱交換部91に取り付けられることとなる。そのため、EGRクーラ27を構成する部品の種類が低減でき、EGRクーラ27の組み立て性が良くなるとともに、部品コストが低減される。
【0067】
また、フランジ部92には、熱量の大きい冷却水又はEGRガスが通過する冷却水出口94とEGRガス入口96が設けられる一方、フランジ部93には、熱量の小さい冷却水又はEGRガスが通過する冷却水入口95とEGRガス出口97が設けられる。そのため、フランジ部92,93それぞれにおける熱変形による歪みが抑制されるだけでなく、フランジ部92,93が別体として構成されて、互いの熱変形による影響が少ないため、EGRクーラ27の破損や故障を防止できる。
【0068】
EGRクーラ27は、背面視において、冷却水出口94と冷却水入口95とが対角に配置されるとともに、EGRガス入口96とEGRガス出口97とが対角に配置される。熱量の異なるEGRガス及び冷却水それぞれが、対角位置より供給又は排出されるため、EGRクーラ27とシリンダヘッド2との連結部分における熱変形を互いに緩和して、連結部分の撓みや緩みを抑制できる。従って、EGRクーラ27とシリンダヘッド2におけるEGRガスや冷却水の漏れを防止できるだけでなく、連結強度の低下をも防止できる。
【0069】
板状のガスケット98が、左右のフランジ部92,93を架設するようにして、シリンダヘッド2とフランジ部92,93との間に挟持されている。フランジ部92,93における冷却水出口94及び冷却水入口95それぞれと連通するシリンダヘッド2における冷却水入口及び冷却水出口それぞれにリング状のシール部材であるOリング99が埋設され、Oリング99がフランジ部92,93で覆われている。
【0070】
別体とされるフランジ部92,93が、シリンダヘッド2の連結台座33,34にガスケット98を介して連結されるため、シリンダヘッド2との連結部分における熱変形により、ガスケット98に張力が働く。そのため、EGRガス入口96及びEGRガス出口97それぞれの連結部分において、ガスケット98によるシール性(密封性)が向上することとなり、シリンダヘッド2とEGRクーラ27との間を行き来するEGRガスの漏れを防止できる。また、Oリング99が、シリンダヘッド2の連結台座33,34における冷却水入口及び冷却水出口とフランジ部92,93の後端面とで構成される空間に埋設されているため、冷却水が流れた際に、連結台座33,34及びフランジ部92,93の連通部分をOリング99に当接することとなり、冷却水出入口94,95における連結部分のシール性(密封性)を確保できる。従って、液体及び気体の流出入を行うEGRクーラ27をシリンダヘッド2に連結したとしても、液体及び気体それぞれにおけるシール性を確保でき、EGRガス及び冷却水それぞれの漏れを防止できる。
【0071】
フランジ部92,93の外周部であって外側位置に、ボルト締結用の貫通穴100が穿設されている。すなわち、左側フランジ部92は、上下及び左側に5つの貫通穴100を有しており、右側フランジ部93は、上下及び右側に5つの貫通穴100を有している。従って、左側フランジ部92は、冷却水出口94の上側、EGRガス入口96の下側、及び、冷却水出口94及びEGRガス入口96間の左側それぞれに貫通穴100が設けられることで、シリンダヘッド2の連結台座33とボルト締結した場合に、冷却水出口94及びEGRガス入口96におけるシール性が確保される。同様に、右側フランジ部93は、冷却水入口95の下側、EGRガス出口97の上側、及び、冷却水入口95及びEGRガス出口97間の右側それぞれに貫通穴100が設けられることで、シリンダヘッド2の連結台座34とボルト締結した場合に、冷却水入口95及びEGRガス出口97におけるシール性が確保される。
【0072】
ガスケット98は、貫通穴101~103を設けた2枚の板98a,98bを貼り合わせて構成されており、貫通穴(EGRガス用貫通穴)101をEGRガスが通過し、貫通穴(冷却水用貫通穴)102を冷却水が通過し、貫通穴(ボルト用貫通穴)103に締結用ボルトが挿入される。ガスケット98は、EGRガス用貫通穴101における内周縁が前後方向に反り返るように分岐させた形状を有しており、冷却水用貫通穴102の開口面積を冷却水出入口94,95の開口面積よりも広くなるように構成している。
【0073】
ガスケット98は、前側板98aのEGRガス用貫通穴101における内周縁を前側に反り返らせる一方で、後側板98bのEGRガス用貫通穴101における内周縁を後側に反り返らせおり、前側板98aと後側板98bを溶接により貼り合わせることで、EGRガス用貫通穴101における内周縁がY字状の断面となる。EGRガス用貫通穴101における内周縁が前後に反り返った形状とすることで、EGRガス用貫通穴101の内周縁における前後面を連結台座33,34及びフランジ部92,93それぞれの端面に密着させることとなり、十分な気密性を確保できる。
【0074】
ガスケット98は、冷却水用貫通穴102の開口を冷却水出入口94,95よりも広くなるように構成することで、Oリング99が冷却水用貫通穴102に挿入される。すなわち、フランジ部92,93の冷却水出入口94,95と連結台座33,34内の冷却水中継流路38,39との連通部分が、ガスケット98の冷却水用貫通穴102に嵌合されたOリング99により密封される。
【0075】
また、シリンダヘッド2の連結台座33,34は、冷却水出入口94,95それぞれを段差付きで開口することで、連結台座33,34内の冷却水中継流路38,39の流路径よりも大きく開口させて、連結台座33,34の冷却水出入口94,95に対して、冷却水中継流路38,39の外周側にOリング99が嵌合される。すなわち、Oリング99は、ガスケット98に挿入されるとともに、連結台座33,34における冷却水出入口94,95の段差部分に嵌合されて、連結台座33,34及びフランジ部92,93により狭持される。従って、弾性材で構成されるOリング99の内側を冷却水が通過することにより、Oリング99が外側に広がるように変形し、連結台座33,34及びフランジ部92,93と密着することにより、冷却水のシール性を確保する。
【0076】
リング状のOリング99は、内周部分が前後に膨らんだ形状を備えており、Oリング99の内周部分を通過する冷却水により押圧されることで、内周部分の前後縁が前後に突出するように変形する。これにより、Oリング99の内周部分が連結台座33,34及びフランジ部92,93と密着するため、シリンダヘッド2とEGRクーラ27との連結部分における冷却水のシール性を向上できる。
【0077】
また、リング状のOリング99は、内周部分が前後に膨らんだ形状とした上で、その内周面に凹部を備えた形状を有している。すなわち、Oリング99の内周面を前後にそり返されたY字状の断面で構成することで、Oリング99の内周部分を通過する冷却水により押圧されて、内周部分の前後縁を前後に更に突出させることとなり、Oリング99の内周部分と連結台座33,34及びフランジ部92,93との密着性を高める、従って、シリンダヘッド2とEGRクーラ27との連結部分における冷却水のシール性を向上できる。
【0078】
次いで、二段過給機30の構成について、
図22~
図27等を参照して、以下に説明する。
図22~
図27に示す如く、二段過給機30は、排気マニホールド4から排出される排気ガスの流体エネルギーによりシリンダヘッド2の吸気マニホールド3に流入させる新気を圧縮させる。二段過給機30は、排気マニホールド4と連結した高圧過給機51と、該高圧過給機51と連結した低圧過給機52とで構成されている。
【0079】
高圧過給機51が排気マニホールド4の左側方に配置されるとともに、低圧過給機52が排気マニホールド4上方に配置されている。すなわち、小容量の高圧過給機51を排気マニホールド4に対向して配置する一方で、大容量の低圧過給機52をシリンダヘッド2に対して左側方に突出させて設置した排気マニホールド4上方に配置される。従って、シリンダヘッド2左側方の空間に、排気マニホールド4と二段過給機30をコンパクトに配置できるだけでなく、二段過給機30の最上部位置をディーゼルエンジン1の最上部位置よりも低い位置とできる。そのため、ディーゼルエンジン1の小型化に貢献できるだけでなく、低圧過給機52をシリンダヘッド2寄りに配置して、二段過給機30を高剛性に固定できる。
【0080】
高圧過給機51は、排気マニホールド4の排気出口44と連通する高圧タービン53と、圧縮空気を吸気マニホールド3に供給する高圧コンプレッサ54とを備える。なお、高圧コンプレッサ54は、不図示のインタークーラを介して吸気スロットル部材26の新気入口81(
図17等参照)と連通することで、EGR装置24を介して圧縮空気を吸気マニホールド3に供給する。一方、低圧過給機52は、高圧タービン53の排気出口と排気側中継管を介して排気入口が連通している低圧タービン55と、高圧コンプレッサ54の新気入口と新気側中継管を介して新気出口が連通している低圧コンプレッサ56とを備え、高圧タービン53上方に低圧コンプレッサ56が配置されるとともに、高圧タービン53の前後一側方に高圧コンプレッサ54が配置される一方で、低圧コンプレッサ56の前後他側方に低圧タービン55が配置される。
【0081】
排気マニホールド4は、排気ガスを排出する排気出口44を左右一側方に向けて開口させている。そして、高圧タービン53は、排気入口57を排気マニホールド4に向けて開口させる一方、前方に向けて排気出口58を開口させている。また、低圧タービン55は、排気入口60を下方に向けて開口させる一方、前方に向けて排気出口61を開口させている。
【0082】
互いに対向する排気マニホールド4の排気出口44と高圧タービン53の排気入口57とをフランジでボルト連結して、高圧過給機51が排気マニホールド4の左側方で固定される。そして、高圧タービン53の排気出口58がL字状の高圧排気ガス管59(排気側中継管)の一端(後端)にフランジでボルト連結される一方、低圧タービン55の排気入口60が高圧排気ガス管59の他端(上端)にフランジでボルト連結されて、低圧過給機52が高圧過給機51上方で固定される。
【0083】
排気マニホールド4に高圧タービン53をフランジ結合により連結して、高圧過給機51を高剛性に支持した上で、高圧過給機51前方にフランジ結合で連結した高圧排気ガス管59上面に低圧タービン55をフランジ結合により連結することで、低圧過給機52を高圧過給機51により下側から支持できる。また、低圧過給機52が、排気マニホールド4上方寄りに設置されるため、低圧過給機52の重心位置が排気マニホールド4と高圧過給機51との連結位置の上方あたりに位置することとなる。従って、ディーゼルエンジン1周辺において、二段過給機30を高剛性で且つコンパクトに支持できる。
【0084】
高圧コンプレッサ54は、後方に向けて新気取入れ口63(新気入口)を開口させる一方、新気供給口64(新気出口)を下方に向けて開口させている。一方、低圧コンプレッサ56は、後方に向けて新気取入れ口66(新気入口)を開口させる一方、新気供給口67(新気出口)を左側方から突出させた後に後方に向けて構成している。そして、高圧コンプレッサ54の新気取入れ口63(新気入口)にU字状の低圧新気通路管65(新気側中継管)の一端が固定される一方、低圧新気通路管65の他端と低圧コンプレッサ56の新気供給口67(新気出口)とが連結される。
【0085】
高圧コンプレッサ54と低圧コンプレッサ56とが後方のU字状の低圧新気通路管65で連結されて、排気マニホールド4により高剛性に支持された高圧過給機51に低圧過給機52の前方部位を固定できる。低圧コンプレッサ56は、新気取入れ口66と新気供給口67とを同一方向(後方)に向けて延設して、不図示のエアクリーナと連通する給気管62及び低圧新気通路管65それぞれと連結しやすい構成となっているため、組付け作業性の向上を図れる。
【0086】
低圧新気通路管65は、一端がフランジ連結により高圧コンプレッサ54の新気取入れ口66にボルト締結される金属管65aと、金属管65aの他端と低圧コンプレッサ56の新気供給口67とを連通させる樹脂管65bとによって構成される。これにより、低圧新気通路管65は、金属管65aが高圧コンプレッサ54に高剛性で固定される一方、樹脂管65bにより、低圧コンプレッサ56と金属管65aの組立誤差を緩和させて連通させることができる。
【0087】
低圧コンプレッサ56の新気供給口67が、低圧コンプレッサ56の左側面から左側方に突出させた後に後方上側に向けて構成されているため、低圧新気通路管65(金属管65a)の屈曲部分の曲率を大きくなる。そのため、低圧新気通路管65内での乱流の発生を抑制して、低圧コンプレッサ56から排出される圧縮空気が、スムーズに高圧コンプレッサ54に供給される。
【0088】
ブローバイガスを取入れるブローバイガス還元装置19がシリンダヘッド2上に設置される。ブローバイガス還元装置19は、シリンダヘッド2上面を覆うヘッドカバー18上面に載置固定されている。ブローバイガス還元装置19の後方に設けたブローバイガス出口70が低圧コンプレッサ56の新気取入れ口66(新気入口)に連結する給気管62と還元ホース68を介して連結されている。また、給気管62が、低圧新気通路管65(新気側中継管)とシリンダヘッド2の間に配置されている。
【0089】
給気管62が、二段過給機30上側の構成部品となる低圧過給機52後方に連結されるとともにシリンダヘッド2寄りに配置されるため、シリンダヘッド2上方に配置されたブローバイガス還元装置19と給気管62との距離を近づけることができる。そのため、還元ホース68を短尺化して、低温環境下における還元ホース68内の凍結を防止できる。給気管62が、低圧新気通路管65とシリンダヘッド2とで囲まれた空間に配置されることとなり、不図示のエアクリーナと連結する樹脂管との連結部分における外力に基づく破損などを防止できる。
【0090】
高圧過給機51は、高圧コンプレッサ54の下面におけるシリンダヘッド2側に、下方に向かって開口した新気供給口64を突設させている。高圧コンプレッサ54は、不図示のインタークーラと連通される高圧新気通路管71と連結しており、高圧新気通路管71を介して圧縮空気をインタークーラに供給する。高圧コンプレッサ54の下方には、左側方に向かって開口する冷却水入口管22が設けられている。不図示のラジエータと連通する冷却水配管とともに高圧新気通路管71をシリンダブロック6の後方左側面まで配管させることで、冷却水入口管22及び高圧コンプレッサ54の新気供給口64それぞれに連結できる。このため、冷却水配管及び高圧新気通路管71それぞれの配管の取り回しを集約できるため、ディーゼルエンジン1を搭載する本機側における配管構造を単純化できるだけでなく、組み付け作業やメンテナンス作業をし易い状態に構成できる。
【0091】
また、ディーゼルエンジン1は、シリンダヘッド2上方であって冷却ファン9側に、冷却水出口管23、給気管62、及び吸気スロットル部材26を配置している。そのため、ディーゼルエンジン1を搭載する本機側において、冷却ファン9の冷却風を利用するラジエータ(図示省略)、エアクリーナ(図示省略)、及びインタークーラ(図示省略)が冷却ファン9後方に配置される場合に、ラジエータと接続する冷却水配管や、エアクリーナ及びインタークーラと連通する新気用配管を短尺化できるだけでなく、その配管接続作業をまとめて行える。そのため、本機側における組付け作業性やメンテナンス作業性が容易になるばかりか、本機側において、ディーゼルエンジン1と連結させる各部品を効率的に配置できる。
【0092】
高圧タービン53の排気出口58に、タービンホイール(図示省略)を回転させる排気ガスを排出させるタービン排気穴58aと、排気入口57と排気出口58とを連通させたバイパス穴58bと、バイパス穴58bを開閉するウエストゲートバルブ69とが設けられている。高圧タービン53の排気出口58にタービン排気穴58aとバイパス穴58bとを並設する構成とすることで、ディーゼルエンジン1の回転数に応じて高圧過給機51による圧縮動作の可否を設定できる。従って、二段過給機30において排気エネルギーを効率的に使用して、燃焼室に供給する新気量を安定化し、エンジン出力を増大させつつ、黒煙排出量を低減できる。
【0093】
また、排気マニホールド4から低圧タービン55へのバイパス経路が、高圧タービン53のバイパス穴58bを開放することで構成されるため、高圧タービン53と低圧タービン55とを連通させる高圧排気ガス管59のみを配管すればよく、排気マニホールド4と低圧タービン55とを連通させるバイパス用の配管が不要となる。従って、二段過給機30における配管構造が単純化されるだけでなく、二段過給機30周辺の空間を広げることができ、例えば、二段過給機30前側下方において、作業機用の油圧ポンプ(図示省略)をエンジン始動用スタータ20と上下に並設させることができる。
【0094】
高圧過給機51は、高圧タービン53と高圧コンプレッサ54の連結部分であるセンタハウジング72の上下に、高圧用作動油供給管73及び高圧用作動油戻し管74が連結されている。同様に、低圧過給機52は、低圧タービン55と低圧コンプレッサ56の連結部分であるセンタハウジング75の上下に、低圧用作動油供給管76及び低圧用作動油戻し管77が連結されている。
【0095】
高圧用作動油供給管73は、シリンダブロック6の左側面に設置された連結部材78に下端が接続される一方、上端が高圧過給機51のセンタハウジング72上面に連結されている。高圧過給機51のセンタハウジング72上面には、高圧用作動油供給管73上端と低圧用作動油供給管76下端とを連通させる連結継ぎ手79が設置されている。そして、低圧用作動油供給管76上端が、低圧過給機52のセンタハウジング75上面に連結されている。これにより、シリンダブロック6内の油路を流れる作動油が、高圧用作動油供給管73を通じて高圧過給機51のセンタハウジング72に供給されるとともに、高圧用作動油供給管73及び低圧用作動油供給管76を通じて低圧過給機52のセンタハウジング75に供給される。
【0096】
高圧用作動油供給管73は、シリンダヘッド2及びシリンダブロック6と高圧過給機51との間に通るとともに、排気マニホールド4の排気出口44後方を迂回させて、配管されている。また、低圧用作動油供給管76は、高圧過給機51上面と低圧過給機52のセンタハウジング75に沿うようにして、L字状に配管されている。このように、作動油供給管73,76を短尺化するとともに、高剛性部品である二段過給機30で囲むように配管することで、作動油を効率よく二段過給機30に供給できると同時に、外力による作動油供給管73,76の破損を防げる。
【0097】
高圧用作動油戻し管74は、シリンダブロック6の左側面に設置された連結継ぎ手80の先端(左側先端)に一端(下端)が連結される一方、他端(上端)が高圧過給機51のセンタハウジング72下面に連結されている。また、低圧用作動油戻し管77は、連結継ぎ手80の分岐した上端に一端(下端)が連結される一方、他端(上端)が低圧過給機52のセンタハウジング75下面に連結されている。従って、高圧過給機51及び低圧過給機52それぞれを流れる作動油が、センタハウジング72,75下方の低圧用作動油戻し管74,77から連結継ぎ手80で合流されてシリンダブロック6内の油路に戻される。
【0098】
高圧用作動油戻し管74は、排気マニホールド4の排気出口44後方を迂回させて配管されている。また、低圧用作動戻し管77は、シリンダヘッド2及びシリンダブロック6と高圧過給機51との間に通るとともに、排気マニホールド4の排気出口44前方を迂回させて配管されている。このように、作動油戻し管74,77を短尺化するとともに、高剛性部品である二段過給機30で囲むように配管することで、作動油を効率よく二段過給機30に供給できると同時に、外力による作動油戻し管74,77の破損を防げる。
【0099】
次いで、冷却水ポンプ21及び冷却水入口管22の構成について、
図28及び
図29等を参照して、以下に説明する。
図28及び
図29等に示す如く、シリンダブロック6の左側面における後側面寄りの部位に、冷却水ポンプ21(
図2等参照)が取り付けられる冷却水ポンプ取付部319と、冷却水入口管22(
図3等参照)が取り付けられる入口管取付座320が突設されている。冷却水ポンプ取付部319及び入口管取付座320はシリンダブロック6に一体成形されている。また、入口管取付座320の後側面側の部位は冷却水ポンプ取付部319に連結されている。冷却水ポンプ取付部319及び入口管取付座320は、クランク軸5から離れる方向に突設されており、シリンダブロック6の剛性、強度及び冷却効率を向上できる。
【0100】
シリンダブロック6の後側面312及び冷却水ポンプ取付部319に冷却水循環用の冷却水ポンプ21がボルト締結されている。冷却水ポンプ21は、大きく分けてベースプレート部331とカバープレート部332とポンプ用プーリ333により構成される。
【0101】
ベースプレート部331とカバープレート部332は、ベースプレート部331の周縁部に設けられた5か所の貫通ボルト孔と、その貫通ボルト孔に対応するカバープレート部332の貫通孔にカバープレート部332側からカバー用ボルト347がそれぞれ挿入及び締結されて、周縁部が互いに密着固定されている。
【0102】
また、冷却水ポンプ21は、ベースプレート部331及びカバープレート部332の周縁部の9か所に設けられた貫通孔にそれぞれ装着用ボルト348が挿入されて、プレート部331,332が共締め状態でシリンダブロック6にボルト締結されている。装着用ボルト348の締め付けにより、ベースプレート部331とカバープレート部332の周縁部が互いに密着固定されるとともに、シリンダブロック6の冷却水通路出口327の周囲部と冷却水ポンプ21のポンプ吸入口334の周囲部が互いに密着固定され、さらにシリンダブロック6の冷却水導入口328の周囲部と冷却水ポンプ21のポンプ吐出口335の周囲部が互いに密着固定される。冷却水ポンプ21の周縁部に沿ったボルト347,348の配列において、隣り合うカバー用ボルト347,347の間には1つ又は2つの装着用ボルト348が配置されている。
【0103】
カバー用ボルト347によりベースプレート部331とカバープレート部332が連結されていることにより、冷却水ポンプ21を1部品として流通できるとともに、冷却水ポンプ21を装着用ボルト348によりシリンダブロック6に装着する際の取付け作業が容易になる。
【0104】
ベースプレート部331は、例えば冷却水ポンプ取付部319の部位を含んでシリンダブロック6の後側面の左側寄りの部位に開口された冷却水通路出口327に接続されるポンプ吸入口334と、シリンダブロック6の後側面の左側寄りの部位に開口された冷却水導入口328に接続されるポンプ吐出口335を備えている。
【0105】
ベースプレート部331とカバープレート部332は互いに周縁部が密着されてポンプ吸入口334とポンプ吐出口335を接続するポンプ内冷却水通路336を形成する。ベースプレート部331とカバープレート部332の密着部にはポンプ吸入口334、ポンプ吐出口335及びポンプ内冷却水通路336を囲う環状シール部材が配置される。カバープレート部332は、一端部に羽根車(インペラ)が固着されるポンプ軸337を回転自在に軸支する。ポンプ軸337の他端部にポンプ用プーリ333が固着される。
【0106】
シリンダブロック6の左側面に冷却水通路入口329が開口されている。冷却水通路入口329は左側面に突設された入口管取付座320に開口されている。シリンダブロック6内部に、左側面に開口された冷却水通路入口329と後側面に開口された冷却水通路出口327を接続する略L字状のブロック内冷却水通路338(冷却水通路)が形成されている。
【0107】
入口管取付座320には冷却水通路入口329を挟んで一対のボルト孔が形成されており、冷却水入口339を有する冷却水入口管22(冷却水入口部材)が入口管取付座320に着脱可能にボルト締結される。冷却水入口管22にはラジエータの冷却水出口につながる配管が接続される。ラジエータからの冷却水は、エンジン1に冷却水入口管22から取り込まれ、ブロック内冷却水通路338及び冷却水ポンプ21を介して冷却水導入口328からシリンダブロック6内へ導入される。
【0108】
この実施形態のエンジン1では、冷却水入口339を有する冷却水入口管22が冷却水ポンプ21のポンプ吸入口334につながる冷却水通路入口329に着脱可能に取り付けられるので、冷却水入口管22の形状等を変更するだけで冷却水入口339の位置を変更することができる。これにより、冷却水ポンプ21の冷却水入口339の位置を簡便かつ大幅な設計変更や製造コスト増大を招くことなく変更できる。
【0109】
また、ラジエータからの冷却水を冷却水ポンプ21に供給する冷却水通路出口327と、冷却水ポンプ21からの冷却水をシリンダブロック6内に導入する冷却水導入口328がシリンダブロック6の左右に振り分けて配置されている。さらに、冷却水通路出口327と冷却水導入口328を接続しているポンプ内冷却水通路336はシリンダブロック6の左側面寄りの部位から右側面寄りの部位にわたって配置されている。このような構成により、ポンプ内冷却水通路336内を通過する冷却水は、冷却水通路出口327から冷却水導入口328へ移動する間、冷却ファン9(
図2参照)からの冷却風により冷却される。したがって、冷却水を冷却水導入口328からシリンダブロック6内に導入する前に冷却水ポンプ21内で冷却できるので、エンジン1の冷却効率を向上できる。
【0110】
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0111】
<発明の付記>
一態様に係るエンジン装置は、シリンダヘッドに配置される排気マニホールド及び吸気マニホールドと、前記排気マニホールドから排出される排気ガスの流体エネルギーにより前記吸気マニホールドに流入させる新気を圧縮させる過給機とを備えるエンジン装置であって、前記過給機は、前記排気マニホールドと連結した高圧過給機と、該高圧過給機と連結した低圧過給機とによる二段過給機で構成されており、前記低圧過給機の低圧コンプレッサは、新気入口が新気出口よりも前記シリンダヘッド側に設けられるものである。
【0112】
上記エンジン装置において、前記新気出口は、前記低圧コンプレッサの左右一側方から突出して設けられるようにしてもよい。
【0113】
上記エンジン装置において、前記低圧コンプレッサは、前記新気入口及び前記新気出口が前後一側方に向いているものとしてもよい。
【0114】
上記エンジン装置において、前記高圧過給機の高圧コンプレッサの新気入口が、前記前後一側方に向いているものとしてもよい。
【0115】
上記エンジン装置において、前記高圧過給機が前記排気マニホールドの左右一側方に配置されるとともに、前記低圧過給機が前記排気マニホールド上方に配置されているものとしてもよい。
【0116】
上記構成によると、低圧過給機の新気入口が、低圧過給機の新気出口とシリンダヘッドとで囲まれた空間に配置されることとなるため、エンジン装置の小型化に貢献できるだけでなく、不図示のエアクリーナと連結する樹脂管との連結部分における外力に基づく破損などを防止できる。
【0117】
また、本願の一態様に係るエンジン装置は、シリンダヘッドに配置される排気マニホールド及び吸気マニホールドと、前記排気マニホールドから排出される排気ガスの流体エネルギーにより前記吸気マニホールドに流入させる新気を圧縮させる過給機とを備えるエンジン装置であって、前記過給機は、前記排気マニホールドと連結した高圧過給機と、該高圧過給機と連結した低圧過給機とによる二段過給機で構成されており、前記低圧過給機の中心は、前記高圧過給機の中心よりも、平面視において、前記シリンダヘッド側に配置されている。
【0118】
また、本願の一態様に係るエンジン装置は、排気マニホールドから排出される排気ガスの流体エネルギーにより吸気マニホールドに流入させる新気を圧縮させる過給機を備えるエンジン装置である。前記過給機は、前記排気マニホールドと連結した高圧過給機と、該高圧過給機と連結した低圧過給機とによる二段過給機で構成されている。前記高圧過給機の排気出口と前記低圧過給機の排気入口とを連結する排気ガス管は、前記高圧過給機と平面視の一方向に沿って連結され、前記低圧過給機と上下方向に沿って連結されている。
【符号の説明】
【0119】
1 エンジン
2 シリンダヘッド
3 吸気マニホールド
4 排気マニホールド
5 クランク軸
6 シリンダブロック
7 フライホイールハウジング
8 フライホイール
9 冷却ファン
51 高圧過給機
52 低圧過給機
53 高圧タービン
54 高圧コンプレッサ
55 低圧タービン
56 低圧コンプレッサ
57 排気入口
58 排気出口
58a タービン排気穴
58b バイパス穴
59 高圧排気ガス管
60 排気入口
61 排気出口
62 給気管
63 新気取入れ口
64 新気供給口
65 低圧新気通路管
65a 金属管
65b 樹脂管
66 新気取入れ口
67 新気供給口
68 還元ホース
69 ウエストゲートバルブ
70 ブローバイガス出口
71 高圧新気通路管
72 センタハウジング
73 高圧用作動油供給管
74 高圧用作動油戻し管
75 センタハウジング
76 低圧用作動油供給管
77 低圧用作動油戻し管
78 連結部材
79 連結継ぎ手
80 連結継ぎ手