(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026610
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】滑らかなフィルムラミネートが施されたエラストマ物品
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A61M5/315 512
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223149
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2020532637の分割
【原出願日】2018-12-17
(31)【優先権主張番号】62/599,259
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリザン ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥリーズ ダグラス アール
(72)【発明者】
【氏名】ファン リャン
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク ケリー
(57)【要約】
【課題】優れたエラストマ製品を提供する。
【解決手段】容器をシールするエラストマ物品であり、このエラストマ物品は、 外側側壁面および外側頂部面を有するエラストマ本体と、第1フルオロポリマフィルム層と、を備える。第1フルオロポリマフィルム層は、内表面および外表面を有し、第1フルオロポリマフィルム層の内表面が、エラストマ本体の外側の側壁面および頂部面全体にラミネートされ、第1フロオロポリマフィルム層の外側頂部面が、容器に収容された医薬に接触するように構成された医薬接触面を有し、外側側壁面が、容器の内表面に接触するように構成されたシーリング面を有する。第1フルオロポリマフィルム層の外表面は、条痕を実質的に有しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器をシールするエラストマ物品であって、
外側側壁面および外側頂部面を有するエラストマ本体と、
内表面および外表面を有する第1フルオロポリマフィルム層であって、前記第1フルオロポリマフィルム層の前記内表面が、前記エラストマ本体の前記外側の側壁面および頂部面全体にラミネートされ、前記第1フロオロポリマフィルム層の前記外側頂部面が、容器に収容された医薬に接触するように構成された医薬接触面を有し、前記外側側壁面が、前記容器の内表面に接触するように構成されたシーリング面を有する第1フルオロポリマフィルム層と、
を備え、
前記第1フルオロポリマフィルム層の前記外表面は、条痕を実質的に有しない、エラストマ物品。
【請求項2】
前記シーリング面は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の50,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の300,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有する、
請求項1に記載のエラストマ物品。
【請求項3】
前記シーリング面は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の100000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の500,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有する、
請求項1に記載のエラストマ物品。
【請求項4】
前記シーリング面は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の150,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の600,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有する、
請求項1に記載のエラストマ物品。
【請求項5】
前記シーリング面は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の200,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の700,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有する、
請求項1に記載のエラストマ物品。
【請求項6】
前記エラストマ物品は、ピストンまたはバイアルストッパである、
請求項1に記載のエラストマ物品。
【請求項7】
前記第1フロオロポリマフィルム層の前記外表面は、鏡面状仕上げがなされている、
請求項1に記載のエラストマ物品。
【請求項8】
シリコーンフリーバレルと、
前記シリコーンフリーバレルと接するラミネートフィルム層を有するエラストマピストンであって、前記ラミネートフィルム層と前記シリコーンフリーバレルとの間の界面が、約6×10-6atm・cc/secよりも少ないガスの漏洩に耐えるシールを有する、エラストマピストンと、
を備え、
前記ラミネートフィルム層の外表面は、条痕を実質的に有しない、
注射装置。
【請求項9】
前記バレル内での前記ピストンの作動が、15N未満の摺動力を前記バレルに生じる、
請求項8に記載の注射装置。
【請求項10】
前記バレル内での前記ピストンの作動が、10N未満の摺動力を前記バレルに生じる、
請求項8に記載の注射装置。
【請求項11】
前記バレル内での前記ピストンの作動が、7.5N未満の摺動力を前記バレルに生じる、
請求項8に記載の注射装置。
【請求項12】
前記バレル内での前記ピストンの作動が、5N未満の摺動力を前記バレルに生じる、
請求項8記載の注射装置。
【請求項13】
前記バレルは、ガラスまたはポリマからなる、
請求項8に記載の注射装置。
【請求項14】
前記ラミネートフィルム層は、フルオロポリマからなる、
請求項8に記載の注射装置。
【請求項15】
前記シリコーンフリーバレルと接する前記ラミネートフィルム層は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の50,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の300,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有するシーリング面である、
請求項8に記載の注射装置。
【請求項16】
前記シリコーンフリーバレルと接する前記ラミネートフィルム層は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の100,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の500,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有するシーリング面である、
請求項8に記載の注射装置。
【請求項17】
前記シリコーンフリーバレルと接する前記ラミネートフィルム層は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の150,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の600,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有するシーリング面である、
請求項8に記載の注射装置。
【請求項18】
前記シリコーンフリーバレルと接する前記ラミネートフィルム層は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の200,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の700,000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有するシーリング面である、
請求項8に記載の注射装置。
【請求項19】
前記ラミネートフィルム層の前記外表面は、鏡面状仕上げがなされている、
請求項8に記載の注射装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の表示】
【0001】
本願は、2017年12月15日付けで提出された米国仮特許出願第62/599259号(発明の名称:「滑らかなフィルムラミネートが施されたエラストマ物品」)に対する優先権を主張し、その内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、エラストマ物品に関し、より具体的には、エラストマ製のストッパおよびピストンに関する。
【背景技術】
【0003】
エラストマシールまたは他のクロージャ、例えば、ストッパまたはピストンを備える医薬製品用の容器から発生する溶出または移行可能物質から、敏感な医薬製品を保護するため、医薬接触面(つまり、医薬とエラストマとの間)に、エラストマシールまたはクロージャ上のフィルムラミネートを施して、製品性能を改善することが知られており、これは、エラストマからの望まない溶出物および移行物を回避しかつ低減するのに重要なリスク緩和措置である。例えば、多くの典型的なプラスチック製またはガラス製のシリンジアセンブリは、コーティングがあるかまたはコーティングがないエラストマピストンを備える。コーティングがあるピストンでは、医薬接触面と一般的に呼ばれる遠位面は通常、ピストンのエラストマ材料との医薬の相互作用を抑制するため、不活性フィルムによるコーティングが施される。しかし、ピストンの表面全体、より具体的には、周囲の管状面は通常、コーティングが施されない。つまり、典型的なエラストマピストンのうち、シーリングリブを含む円筒状の側壁は、適切なシーリングを提供するため、むき出しのエラストマのまま残されるのである。このことは、コーティングが施されたバイアルストッパついてもまた一般的に該当する。つまり、医薬接触面は、不活性フィルムによるコーティングが施されるが、バイアルに接触するフランジの底面および外側の側壁は、より高いシーリング効果を提供するため、コーティングが施されないままに残される。本明細書で使用されるように、シーリング面は、シーリングリブがあるかまたはシーリングリブがないピストンまたはストッパの周囲の側壁に関連する。
【0004】
むき出しのエラストマがガラスバレルと接触することの1つの結果は、シリンジの円滑で容易な操作が、摩擦力により妨げられることである。結果として、典型的には、シリンジバレルは、シリコーンオイルを用いて処理され、摺動降伏力と呼ばれる静摩擦力を低減するとともに、摺動平衡力または押出力と呼ばれる動摩擦力を低減するため、シリンジバレル上にシリコーンが「焼き付け」られる。
【0005】
しかし、シリコーンオイルは、幾つかの生物学的薬剤と相互作用することが知られている。シリコーンオイルは、バレルから分離し、医薬とともに患者の体内に注入されるようになることも知られている。さらに、目のなかまたは目の周りの手術に際してしばしばレーザが用いられ、レーザ手術中に生じる高温のもとでシリコーンオイルがガスを放出することが知られていることから、一般的には、眼科用途でのシリコーンオイルの使用は、法規制ガイダンスにより抑止されている。
【0006】
よって、望ましいのは、医薬と相互作用することがないかまたは生じさせる溶出物および移行物が最小限に抑えられるエラストマである。シリコーンオイルの発生源ではない容器システムもまた、望ましい。
【0007】
フィルムラミネートが部分的に施されたストッパおよびピストンの双方を製造することに関連する他の欠点は、ラミネートが施されていないかまたはラミネートが全体に施されたストッパおよびピストンを作製するための製造工程と比較して、追加の製造工程が必要となることである。つまり、エラストマ物品にいわゆる「2工程」プロセスが施され、ピストン先端(遠位端)またはストッパ底部、つまり、医薬製品と接触する端部に対し、対応するピストン基部またはストッパフランジとは別に、初めにフィルムによる部分的な処理が施され、その後、ピストン先端およびピストン基部またはストッパ底部およびストッパフランジが結合され、さらに、続く工程において、全体的な処理が施される。
【0008】
しかし、典型的なストッパおよびピストンは、それらの外表面全体に亘ってラミネートされたフィルムを有していないのが一般的である。これは、ラミネートフィルム層における微小な欠陥でさえも、ラミネートフィルム層と容器(つまり、シリンジ、カートリッジまたはバイアル)との間のシールを介するガスまたは流体の浸透を可能として、容器完全性(CCI)を損なわせかねないからである。特に、シーリング面、つまり、不活性フィルムによるラミネートが施されたエラストマのフィルム側と容器(シリンジ、カートリッジまたはバイアル)との間における、医薬が容器の外部に漏洩することを防止する界面を横断する切れ目のない経路の原因となるひっかき傷または小さな欠陥により、CCIが著しく損なわれることがあり得る。例えば、シリンジに使用されるピストンにおいて、シーリングリブに対して垂直であり、シリンジの長手方向軸に対して平行である軸方向のひっかき傷は、CCIを損なわせる経路を形成する(
図4Aを参照)。シーリングリブに対して平行な、ピストンの周囲におけるひっかき傷もまた、CCIを損なわせる場合がある(ただし、そのようなひっかき傷は、医薬の漏洩等のCCIの欠陥を必ずしも生じさせるものではない)(
図4B)。また、充分に高い全体的な表面粗さ(Ra)は、粗さによるランダムな経路を介する医薬製品またはガスの浸透を依然として許容し、よって、CCIを損なわせるのが一般的である。
【0009】
シリコーンを使用するシステムでは、シリコーン自体が、CCIに関わる問題を軽減することが知られている。しかし、シリコーンを含まない(シリコーンフリーな)医薬封入システムでは、CCIに関する問題を軽減することを目的とするシリコーンが存在しないのである。
【0010】
よって、クロージャ(つまり、ピストンまたはストッパ)の全体にフィルムによるラミネートが施され、クロージャのシーリング面と容器基材との界面におけるCCIが充分に高いレベルに維持される、フィルムシリコーンを含まない医薬封入システムを提供することが望まれる。ピストンまたはストッパの全体または大部分が不活性フィルムで被覆されることの他の利点は、ジメチルスルホキシド(DMSO)等、製造プロセスで使用される溶剤を含んだ化学物質に対する意図しない露出からエラストマを保護することである。DMSOは、ゴムを膨張させる原因となり、これにより、ストッパまたはピストンの寸法の幾つかが適切な許容誤差を超えて増大することが知られている。
【0011】
よって、フィルムラミネートが全体に施されることで、単一の硬化プロセスまたは工程により作製することが可能な、適切なシーリング性を有するピストンまたはストッパもまた、望ましい。さらに、シリコーンを含まないガラスシリンジにおいて使用可能に構成され、2工程プロセスにより作製されかつシリコーンオイルで被覆されるか、シリコーンオイルにより被覆されまたはシリコーン系であるシリンジまたはカートリッジバレルを使用する、典型的なピストンに近いシーリングおよび摩擦特性を有する、フィルムラミネートが施されたピストンまたはストッパを提供することも望まれる。
【発明の概要】
【0012】
本開示の一形態は、未硬化のエラストマシート、エラストマシートを完全に覆う第1フィルムおよび第1フィルムを覆う第2フィルムのアセンブリを、第2フィルムが第1フィルムおよび型の内表面と接触しかつそれらの間に配置されるように、型に入れることと、第1フィルムがエラストマシート上にラミネートされて、少なくとも1つのエラストマ物品を形成するように、型においてアセンブリを硬化させることと、を含む、少なくとも1つのエラストマ物品を製造する方法に関する。
【0013】
本開示の他の形態は、外側側壁面および外側頂部面を有するエラストマ本体と、内表面および外表面を有する第1フルオロポリマフィルム層と、を備える、容器をシールするエラストマ物品に関する。第1フロオロポリマフィルム層の内表面は、エラストマ本体の外側の側壁面および頂部面全体にラミネートされる。第1フロオロポリマフィルム層の外側頂部面は、容器に収容された医薬に接触するように構成された医薬接触面を有し、外側側壁面は、容器の内表面に接触するように構成されたシーリング面を有する。
【0014】
本開示の他の形態は、薬剤を注射する装置に関する。この装置は、シリコーンフリーバレルと、シリコーンフリーバレルと接するラミネートフィルム層を有するエラストマピストンと、を備える。ラミネートフィルム層とシリコーンフリーバレルとの間の界面は、約6×10-6atm・cc/secよりも少ないガスの漏れに耐えるシールを有する。
【0015】
本開示の他の形態は、未硬化のエラストマシートおよびエラストマシートを完全に覆う第1フィルムを型に入れることと、エラストマシートを型において第1フィルムとともに少なくとも1つのエラストマ物品に硬化させることと、エラストマ物品を型から外すことと、第1フィルムを少なくとも1つのエラストマ物品から除去することと、を含む、エラストマ物品を製造する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の幾つかの側面に関する以下の詳細な説明は、添付の図面を参照して読むことでより充分に理解することが可能である。しかし、本開示は、図示の正確な構成および手段に限定されるものではないことが理解される。
【0017】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るエラストマ物品を製造する1工程による方法を示す。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るエラストマ物品を製造する2工程による方法の第1工程を示す。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るエラストマ物品を製造する2工程による方法の第2工程を示す。
【
図4A】
図4Aは、シーリングリブに対して垂直でありかつ回転対称軸に対して平行である、CCIを損なわせる経路を形成する軸方向のひっかき傷を有する従来技術に係るピストンを示す。
【
図4B】
図4Bは、シーリングリブに対して平行であるピストンの周囲における、CCIを損なわせる場合があるひっかき傷を有する従来技術に係るピストンを示す。
【
図5A】
図5Aは、本開示の一実施形態に係る方法により作製されたエラストマピストンの医薬接触面の、操作型電子顕微鏡(SEM)画像(倍率150)である。
【
図5B】
図5Bは、本開示の一実施形態に係る方法により作製されたエラストマピストンの周側面、より具体的には、シーリングリブのSEM画像(倍率150)である。
【
図5C】
図5Cは、本開示の一実施形態に係る方法により作製されたエラストマピストンの医薬接触面の、操作型電子顕微鏡(SEM)画像(倍率150)である。
【
図5D】
図5Dは、本開示の一実施形態に係る方法により作製されたエラストマピストンの周側面、より具体的には、シーリングリブのSEM画像(倍率150)である。
【
図6A】
図6Aは、リリースフィルム層を採用しない方法により作製されたエラストマピストンの医薬接触面のSEM画像(倍率150)である。
【
図6B】
図6Bは、リリースフィルム層を採用しない方法により作製されたエラストマピストンの周側面、より具体的には、シーリングリブのSEM画像(倍率150)である。
【
図6C】
図6Cは、リリースフィルム層を採用しない方法により作製されたエラストマピストンの医薬接触面のSEM画像(倍率150)である。
【
図6D】
図6Dは、リリースフィルム層を採用しない方法により作製されたエラストマピストンの周側面、より具体的には、シーリングリブのSEM画像(倍率150)である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態に係る方法により製造されたエラストマ物品および比較物品のサンプルに関する様々な面粗さパラメータのグラフィカルプロットである。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態に係る方法により製造されたエラストマ物品および比較物品のサンプルに関する様々な面粗さパラメータの、2μmのガウスフィルタが適用されたグラフィカルプロットである。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態に係る方法により製造されたエラストマ物品および比較物品のサンプルに関する様々な面粗さパラメータの、0.08μmのガウスフィルタが適用されたグラフィカルプロットである。
【
図10】
図10は、本開示の一実施形態に係る方法により製造されたエラストマ物品および比較物品のサンプルに関する様々なプロファイル粗さパラメータのグラフィカルプロットである。
【
図11】
図11は、1回の接触による形状測定値を、本開示の一実施形態により作製されたエラストマ物品と典型的なエラストマ物品との間の表面粗さの差を強調してグラフにより示す。
【
図13】
図13は、リリースフィルム層を含まない典型的な処理により提供されるものと比較して表面仕上げが改善された、本開示の一実施形態に係るエラストマピストンの光学顕微鏡画像を示す。
【
図14】
図14は、環状オレフィンポリマ容器、より具体的には、Crystal Zenith(登録商標)のもとで生成されおよび/または販売された、大協精工社の供給に係るポリマ(以下「Crystal Zenith(登録商標)ポリマ」という)から形成された容器におけるCCIを、発明サンプルCおよび比較サンプル4についてヘリウム漏れ試験により示す。
【
図15】
図15は、Crystal Zenith(登録商標)ポリマ、シリコーンフリーガラスおよび焼き付きシリコーンガラスにおけるCCIを、発明サンプルCについてヘリウム漏れ試験により示す。
【
図16】
図16は、シリコナイズガラスおよび焼き付きシリコーンガラスにおけるCCIを、発明サンプルDおよび比較サンプル5についてヘリウム漏れ試験により示す。
【
図19B】
図19Bは、比較サンプル1の表面の起伏および粗さプロファイルを示す。
【
図20A】
図20Aは、比較サンプル2の表面の補償光学画像(深さおよび高さを示すのに使用される強度)を示す。
【
図20B】
図20Bは、比較サンプル2の表面の起伏および粗さプロファイルを示す。
【
図21B】
図21Bは、比較サンプル3の表面の起伏および粗さプロファイルを示す。
【
図22B】
図22Bは、発明サンプル1の表面の起伏および粗さプロファイルを示す。
【
図23B】
図23Bは、発明サンプル2の表面の起伏および粗さプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、第1型14、エラストマシート44、第1フィルム16、より具体的には、不活性フィルム層またはバリア層16および第2フィルム46、より具体的には、1工程成形プロセス、より具体的には、1工程圧縮成形プロセスにおけるリリースフィルム層46を使用した、ピストン11等のエラストマ物品を製造する方法が示される。第1型14は、突起15aを有する上部型半体15と、開放凹部17aを有する下部型半体17と、を備える。開放凹部17aは、開放加熱型凹部であるのが好ましい。好ましい実施形態では、第1型14は、一列に並べられた複数の上部および下部夫々の型半体15、17を備える。
【0019】
エラストマシート44は、部分硬化段階で1以上のエラストマ材料から作製されるのが好ましい。好ましい実施形態では、エラストマ材料は、熱硬化性エラストマであるか、熱可塑性エラストマ(TPE)である。エラストマ製のクロージャに使用されるエラストマ材料は、例えば、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、ブロモブチルゴム)、エチレンプロピレンターポリマ、シリコーンゴム等の合成または天然ゴムまたはそれらの組み合わせである。好ましくは、エラストマ材料は、ブチルまたはハロブチルエラストマである。
【0020】
不活性フィルム層16は、ポリマ、より具体的には、バリア性および潤滑性があり、不活性が高いポリマから作製されるのが好ましい。フィルム16は、オレフィンポリマであるのが好ましく、環状オレフィンポリマを含有することが可能である。より具体的には、不活性フィルム層16は、テトラフロオロエチレンまたはエチレンテトラフロオロエチレン等のフルオロポリマから作製される。不活性フィルム層16を形成するのに使用可能な幾つかの限定的でないポリマの例は、テトラフロオロエチレン、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、フッ化ポリビニリデン(PVF)、二フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンクロロトリフロオロエチレン(ECTFE)、ペルフルオロエラストマ(FFPM)、フルオロエラストマポリマ(FPM)、ポリエチレン(PE)、環状オレフィンポリマ(COP)、環状オレフィンコポリマ(COC)およびポリプロピレン(PP)を含む。不活性フィルム層16は、0.5μmから300μmの厚さ、より好ましくは、10μmから150μmの厚さ、最も好ましくは、25μmから100μmの厚さを有するのが好ましい。
【0021】
化学的な要件が異なることから、なお一層多様なポリマがリリースフィルム層46の形成における使用に適する。つまり、不活性フィルム層16の材料として上に掲げられた例示のポリマの全てが、リリースフィルム層46を形成するのにも使用することが可能である。さらに、ポリイミドまたはシリコーン等の高温度相溶性ポリマもまた、リリースフィルム層46の形成における使用に適する。不活性フィルム層16と同様に、リリースフィルム層46は、0.5μmから300μmの厚さ、より好ましくは、10μmから150μmの厚さ、最も好ましくは、25μmから100μmの厚さを有するのが好ましい。
【0022】
エラストマシート44は、第1表面44aと、反対側の第2表面44bと、を有する。不活性フィルム層16は、第1表面16aと、反対側の第2表面16bと、を有する。リリースフィルム層46は、第1表面46aと、反対側の第2表面46bと、を有する。不活性フィルム層16の第1表面16aは、未改質の第2表面16bよりも小さい水接触角と、大きな表面エネルギと、を有するように、表面改質または表面処理を施すことが可能である。不活性フィルム層16の第1表面16aは、エッチング、より好ましくは、プラズマエッチングが施されるのが好ましい。不活性フィルム層16の第1表面16aの表面改質/処理は、圧縮成形後、エラストマシート44に対して強固に接合することを許容可能である。不活性フィルム層16の第2表面16bは、未改質であるため、より大きな水接触角およびより小さな表面エネルギを有し、このことは、リリースフィルム層46等、他のフィルムの未処理の側面からより容易に脱離することを可能とする。
【0023】
エラストマシート44、不活性フィルム層16およびリリースフィルム層46は、互いに固く結合させられてもよいし、互いに独立であり、第1型14に入れられた場合に、この順で互いに緩く積み上げられてもよい。より具体的には、型14における配置のため、リリースフィルム層46は、第2表面46bが下部型半体17の開放凹部17aの内表面19に接触するように構成され、不活性フィルム層16は、不活性フィルム層16の第2表面16bがリリースフィルム層46の第1表面46aと接触し、より好ましくは、リリースフィルム層46の第1表面46aにより全体が被覆されるように構成され、エラストマシート44は、第1表面44aが上部型半体15の突起15aと接触するように配置されかつエラストマシート44の第2表面44bが不活性フィルム層16の第1表面16aと接触し、より好ましくは、エラストマシート44の第2表面44bの全体が不活性フィルム層16の第1表面16aにより被覆されるように構成される。2つの型半体15、17は、その後、各突起15aがエラストマシート44の第1表面44aに接触し、層状に配置されたエラストマシート44、不活性フィルム層16およびリリースフィルム層46を開放凹部17aに押し込んで、この配置に係るエラストマシート44、不活性フィルム層16およびリリースフィルム層46を1回の圧縮成形工程においてそれぞれの開放凹部17aのなかで圧縮および成形するように、互いに接触させられる。
【0024】
この圧縮成形工程は、120℃から310℃の温度および約40から350kg/cm2の圧力で、数秒から30分の持続時間に亘って実行される。より具体的には、単一の圧縮成形工程は、120℃から220℃の温度および約40から70kg/cm2の圧力で、約30秒から30分の持続時間に亘って実行される。最も好ましくは、単一の圧縮成形工程は、約140℃から220℃の温度および約40から70kg/cm2の圧力で、約2から15分の持続時間に亘って実行される。
【0025】
好ましい実施形態では、圧縮成形工程は、160℃から165℃の温度および50kg/cm2の圧力で、約15分の持続時間に亘って実行される。
【0026】
他の好ましい実施形態では、圧縮成形工程は、160℃から175℃の温度および約40から70kg/cm2の圧力で、約8分の持続時間に亘って実行される。
【0027】
圧縮成形工程の間、エラストマシート44は、熱および圧力の影響下で硫化させられ、不活性フィルム層16と分離不能に結合させられる。より具体的には、エラストマシート44は、ピストン11の本体21を形成し、不活性フィルム層16は、表面全体、より具体的には、本体21の側壁面および頂部面に分離不能に形成されたラミネートフィルム23となる。この処理は、これらのフィルムが融合しないように、不活性フィルム層16およびリリースフィルム層46双方の溶融温度未満で行う。よって、リリースフィルム層46は、他方で、ラミネートフィルム層23に対して分離可能に結合されることになる。フィルムが溶融しないのであれば、それらの層は、分離させることが可能である。エラストマ物品上のフィルム層とは異なるフィルム(化学的性質が似ておらずおよび/または融点が高い)をリリース層に使用することが可能である。例えば、多くの複合材料におけるリリース層として、340℃を超える温度で溶融するポリアミドフィルムが使用される。
【0028】
硬化または加硫後、ピストン11が、第1型14から外され、その後、リリースフィルム層46が、ピストン11から剥がされる。リリースフィルム層46は、不活性フィルム層16に貼り付かず、個々のピストン11からの一続きのシートとしてまたは切片部として、例えば、他の技術のなかでも特に、握って引くこと、流体を吹き付けることまたは摩耗により剥がすことで、不活性フィルム層16から機械的に分離させることが可能である。
【0029】
成形プロセスにおけるエラストマシート44、不活性フィルム層16およびリリースフィルム層46のアセンブリの硬化前に、不活性フィルム層16は、第1ピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有する。硬化プロセスおよびリリースフィルム層46の除去後、不活性フィルム層16、より具体的には、ラミネートフィルム層23は、第2ピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有し、第2ピーク密度は、第1ピーク密度に対して増大させられる。不活性フィルム層16のピーク密度は、硬化プロセスおよびリリースフィルム層46の除去後に少なくとも3%だけ、より好ましくは、少なくとも25%だけ、増大させられるのが好ましい。より具体的には、不活性フィルム層16のピーク密度は、硬化プロセスおよびリリースフィルム層46の除去後に3%から165%だけ、より好ましくは、25%から35%だけ、増大させられるのが好ましい。
【0030】
プロセスについてピストン11を作製する観点から説明したが、ストッパまたは他のクロージャ等、他のエラストマ物品を作製するのに同じプロセスを使用可能であることが、当業者にとっては理解可能である。
【0031】
図2および3を参照すると、ピストン12等のエラストマ物品を製造する、本開示の他の実施形態に係る方法が示される。
図2の処理は、エラストマ物品の成形部をピストン頂部12aとして形成するように寸法が付されおよび形状が与えられた第2型24を採用する。よって、型24は、製造プロセスの初めの型として機能する。
図3のプロセスは、エラストマ物品全体(例えば、ピストン12)を形成するように寸法が付されおよび形状が与えられた型14(つまり、
図1に示された型)を使用する。
図2および3は、本開示の一実施形態に係る2工程成形プロセス、より具体的には、2工程圧縮形成プロセスをともに示す。
【0032】
図2を参照すると、2工程成形プロセスの第1工程に使用される型24は、開放凹部25aを有する上部型半体25と、開放凹部27aを有する下部型半体27と、を備える。開放凹部25a、27aは、開放加熱型凹部であるのが好ましい。好ましい実施形態では、第1工程の型24は、一列に並べられた複数の上部および下部夫々の型半体25、27を備える。1工程成形プロセスと同様に、エラストマシート44、不活性フィルム層16およびリリースフィルム層46は、互いに固く結合させられてもよいし、互いに独立であり、第2型24に入れられた場合に、この順で互いに緩く積み上げられてもよい。エラストマシート44、不活性フィルム層16およびリリースフィルム層46の配置は、
図1に関して上に述べたのと同様である。
【0033】
図2に示される成形工程のプロセス条件は、
図1の1工程プロセスについて上に述べたのと同様である。
図1の1工程プロセスと同様に、エラストマシート44は、熱および圧力の影響下で硫化させられ、硫化後のエラストマ材料がピストン頂部12aの本体31を形成し、不活性フィルム層16がピストン頂部12aの表面上に分離不能に形成されたラミネートフィルム層33(つまり、ラミネートされたピストン頂部12a)となるように、不活性フィルム層16と分離不能に結合させられる。リリースフィルム層46は、他方で、ラミネートフィルム層33に分離可能に結合される。
【0034】
加硫後、ラミネートされたピストン頂部12aは、ラミネートされたピストン頂部12a上にリリースフィルム層46が付いたままの状態で型24から外される。次いで、ラミネートされたピストン頂部12aとリリースフィルム層46とのアセンブリが、切り取られ、
図3に示されるように、リリースフィルム層46が下部型半体17の開放凹部17aの内表面19と接触し、リリースフィルム層46がラミネートされたピストン頂部12aと開放凹部17aとの間に挟まれるように、型14に入れられる。よって、
図2および3の2工程プロセスでは、型14は、第2工程の型である。
【0035】
続いて、第2エラストマシート44が、第1型14、より具体的には、下部型半体17の開放凹部17a全体に配置される。2つの型半体15、17は、その後、各突起15aが第2エラストマシート44の第1表面44aに接触し、第2エラストマシート44の材料を開放凹部17aに押し込んで、ラミネートされたピストン頂部12aと接触させ、この配置に係る第2エラストマシート44およびラミネートされたピストン頂部12aを圧縮成形工程においてそれぞれの開放凹部17aのなかで圧縮し、成形するように、互いに接触させられる。加硫は、後続の操作(例えば、ラミネートされた頂部12aではなく、露出されたエラストマ側面のみにシリコーンオイルを有するピストンを作製する操作)において頂部12aにマスクを施すための取外可能なリリースフィルム層46を有するピストン12を作製するため、
図1に関して上に述べたように進行する。
【0036】
成形プロセスにおけるエラストマシート44、不活性フィルム層16およびリリースフィルム層46のアセンブリの硬化前に、不活性フィルム層16は、第1ピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有する。硬化プロセスおよびリリースフィルム層46の除去後、不活性フィルム層16、より具体的には、ラミネートされたフィルム層33は、第2ピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有する。第2ピーク密度は、第1ピーク密度に対して増大させられる。不活性フィルム層16のピーク密度は、硬化プロセスおよびリリースフィルム層46の除去後に少なくとも3%だけ、より好ましくは、少なくとも25%だけ、増大させられるのが好ましい。より具体的には、不活性フィルム層16のピーク密度は、硬化プロセスおよびリリースフィルム層46の除去後に3%から165%だけ、より好ましくは、25%から35%だけ、増大させられるのが好ましい。
【0037】
第1工程の型24は、ピストン頂部12aに代えて、異なるエラストマ物品の異なる部分(例えば、ストッパの本体)を形成するように、寸法を付されおよび形状が与えられてもよく、第2工程の型14は、ピストンに代えて、異なるエラストマ物品を形成するように、寸法を付されおよび形状が与えられてもよいことが理解される。
【0038】
ピストンまたはストッパ等のエラストマ物品を2工程プロセスで成形することにより、不活性フィルム16によるコーティングが施された医薬界面部と、覆いがなされていないエラストマ物品(つまり、むき出しのエラストマ)の残りの表面と、を有する物品が作製される。
【0039】
本開示の一実施形態に係る方法により作製された結果のエラストマ物品11、12は、滑らかなフィルムラミネートが施されたエラストマ物品である。一実施形態では、結果のエラストマ物品11、12は、シリコーンを含まないエラストマ物品である。不活性フィルム層16により被覆されたエラストマシート44と型凹部の表面19との間に挟まれたリリースフィルム層46は、成形および/または離型工程の際に型表面19上を摺動することでラミネートフィルム23、33に生じることのあり得る損傷等、製造プロセスにおける損傷から、滑らかなフィルムラミネートが施された物品(つまり、ピストン11)を保護する。リリースフィルム層46はまた、型表面19により受けたであろうあらゆる表面形状(テクスチャ)から、ラミネートフィルム23、33をも保護する(つまり、ローパスフィルタに対する機械的な類似点である)。リリースフィルム層46の使用はまた、成形プロセスで使用される加工助剤、付着エラストマまたはあらゆる他の環境汚染物質等、型表面19により受けることのあり得るあらゆる物質汚染から、ラミネートフィルム23、33を保護する。リリースフィルム層46の使用は、ラミネートフィルム23、33とリリースフィルム層46との密接な面対面の界面接触、さらに、続くそれらの分離の結果として、独特な表面形態を形成する。
【0040】
さらに、リリースフィルム層46の使用は、ラミネートフィルム層23、33の外表面に対し、鏡面状の仕上がりを付与する。よって、本開示の一実施形態により作製されたエラストマ物品は、外表面、より具体的には、鏡面状の仕上がりを有するか、条痕を実質的に含まずまたは実質的に滑らかなラミネートフィルムにより形成される、外側のシーリング面を有する。
図13は、本開示の一実施形態に係るラミネートフィルムを有するプランジャの表面形状を、典型的なラミネートが施されたプランジャの表面形状に対して比較したものであり、本実施形態に係るプランジャが、粗い外表面を有し、条痕がありかつ鏡面状ではない典型的なフィルムラミネートが施されたプランジャ(右手側)と比較して、滑らかであるかまたは鏡面状の表面を有する外表面(左手側)を有することを示す。
【0041】
本開示に係る特定の幾つかの実施形態について、以下の限定的ではない例および実験の観点から説明する。
【0042】
(実施例1~4)
以下の実施例1~4では、PTFEによるラミネートが施され(つまり、ピストンの本体を被覆し、もって、ピストン外側の側壁面および頂部面を形成するラミネートPTFEフィルム層)、ETFEリリースフィルム層を用いて
図1に関して上で述べられたプロセスにより作製された4つのエラストマピストンを採用する。比較を目的として、PTFEバリア層を夫々有する、リリースフィルム層が用いられない点を除いて同じプロセスによる4つのエラストマピストン(以下「比較例1~4」という)を作製した。実施例1~4の(
図5Aおよび5Cに示される)ピストン頂部および周囲のシーリング面、より具体的には、(
図5Bおよび5Dに示される)第1シーリングリブは、表面に明らかな表面形状、傷跡または条痕のない、極めて滑らかなラミネートされたフィルム面を有する。これに対し、比較例1~4夫々の(
図6Aおよび6Cに示される)ピストン頂部および周囲のシーリング面、より具体的には、(
図6Bおよび6Dに示される)第1シーリングリブのラミネートフィルム面は、任意の深さおよび長さの破断された円、斜線および条痕、任意の寸法および深さの穴、平坦な領域、破断された浅い溝等の形態の顕著な特徴を表面に有する。
【0043】
(試験1)
ラミネートPTFEバリア層を有する5mLのエラストマピストンを、
図1に関して上で述べられたプロセスにより、2mil(~50μm)の厚さを有するETFEから形成されるリリースフィルム層を用いて作製した(分析は、表面全体に亘る変化を示すため、ピストンの第1リブ(つまり、医薬接触面に最も近いリブ)の異なる領域について実行し、よって、表1において、発明サンプルAおよびBとして参照する)。比較を目的として、ラミネートフィルム層またはリリースフィルム層が採用されなかったが、発明サンプルAおよびBを作製する際に使用されたのと同じプロセスパラメータを用いてむき出しのエラストマピストンを作製し(表1において、比較サンプル1として参照する)、リリースフィルム層が採用されなかった点を除き、発明サンプルAおよびBを作製する際に使用されたのと同じプロセスパラメータにより、ラミネートPTFEバリアフィルムが設けられたエラストマピストンを作製し(表1において、比較サンプル2として参照する)、さらに、成形前のPTFEフィルムを提供した(表1において、比較サンプル3として参照する)。
【0044】
各ピストンおよびフィルムの表面形状を、キーエンス社製の3Dレーザ走査型共焦点顕微鏡を用いて測定した。面粗さパラメータ(area roughness parameters)を決定するため、測定結果を、ISO25178、表面形状標準(Surface Texture Standard)を用いて3つの異なる方法で評価した。各ピストンおよびフィルムの面粗さパラメータを決定するため、第1の方法では、例A-1からA-5により反映されるようにフィルタを適用せず、第2の方法では、例B-1からB-5により反映されるように、JIS B0632:2001(ISO11562:1996)およびISO16610-21:2011により、測定値の高周波成分を除去して、粗さからうねりを分離するのに、2μmのガウスフィルタを適用し、第3の方法では、例C-1からC-5により反映されるように、JIS B0632:2001(ISO11562:1996)およびISO16610-21:2011により、測定値の高周波成分を除去して、粗さからうねりを分離するのに、0.08μmガウスフィルタを適用した。面粗さパラメータは、表1に纏められ、
図7から9のグラフに描かれている。
図7から9において、y軸は、ピストンの医薬接触面が各グラフの上部近くに配置されるように、ピストンの長手方向軸に対して平行である。
【0045】
さらに、各サンプルのプロファイル粗さパラメータが、低力プローブを用いたミツトヨ社製のサーフテスト表面形状測定装置から収集され、表2に纏められ、
図10のグラフに描かれている。
図10において、y軸は、ピストンの医薬接触面がグラフの上部近くに配置されるように、ピストンの長手方向軸に対して平行である。3Dレーザ走査型共焦点顕微鏡から得られた各サンプルの表面トポグラフィを示す光学画像が、
図19A、20A、21A、22Aおよび23Aに示され、さらに、各サンプルの表面トポグラフィが、
図19B、20B、21B、22Bおよび23Bに示されている。
【表1】
【表2】
【0046】
表1を参照すると、測定されおよび/または計算されたパラメータは、算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)、表面形状アスペクト比(Str)、算術平均ピーク曲(Spc)、展開界面面積比(Sdr)、クルトシス(Sku)、自動補正長(auto-correction length:Sal)およびピーク密度(Spd)を含む。算術平均高さは、サンプル長に沿った平均高さ(絶対値ではなく、つまり、相対値)に対する絶対値の平均高さである。ピーク密度は、単位面積当たりのピークの数である。光学測定値のため、検出可能な最小ピークは、光源の波長の関数である。データのフィルタリングがノイズ除去のために一般的に使用されるが、フィルタリングは、何がピークとして適するかを効果的に定めるのに使用することも可能である。
【0047】
当業者により理解されるように、算術平均高さおよびピーク密度の双方は、表面粗さを特徴付けるのに使用されるパラメータであり、これらのパラメータは、必ずしも互いに関連または相関するものではない。例えば、不活性フィルムにより被覆されたエラストマ物品が(リリース層を伴わずに)成形される場合に、不活性フィルムは、型の表面に合致し、型の表面プロファイルを示し、よって、理論的には、型の粗さを示す。よって、不活性フィルムのピーク密度および算術平均高さは、型のピーク密度および算術平均高さに直接的に関連する。バニシング等、エラストマ物品に対する後続の表面処理により、ピークのうちの幾つかの高さを低減させ、算術平均高さを効果的に減少させることが可能である。しかし、ピーク密度は、これらの後の表面処理の結果として必ずしも変化するとは限らない。よって、算術平均高さとピーク密度とは、互いに相関可能なパラメータであると考えることはできない。
【0048】
表2を参照すると、測定されおよび/または計算されるパラメータは、算術平均高さ(Ra)、最大高さ(Rz)、プロファイル要素の平均幅(RSm)、クルトシス(Rku)、長さ当たりのピーク(Pc/cm)および算術平均波長(Rλa)を含む。表1に示されるパラメータが、領域に亘って得られる測定値を示すのに対し、表2に示されパラメータは、サンプル線に沿って得られる測定値を示す。測定結果は、比較サンプル2の不活性フィルムが、硬化および加硫の間に型の表面プロファイルおよび粗さを示したであろうことを示す。発明サンプルAおよびBの不活性フィルムの算術平均高さ(Sa)は、比較サンプル1のむき出しのエラストマの算術平均高さ(Sa)よりも著しく良好であった。さらに、表1に見られるように、発明サンプルAおよびBのピーク密度(Spd)は、成型前の不活性フィルム(つまり、比較サンプル3)のものと比べて増大した。これは、発明サンプルAおよびBの不活性フィルムがリリースフィルムの表面プロファイルおよび粗さを示しながら、リリースフィルムの外表面が型の内表面に合致したためである。よって、リリースフィルム層は、リリースフィルム層と不活性フィルム層とが成形プロセスの間に互いに機械的に相互作用する結果として、不活性フィルム層の表面形状を意図的に操作するのに使用可能であることが明らかである。
【0049】
さらに、成形プロセスの間に、不活性フィルム層16およびリリースフィルム層46は、型に押し込まれる際に約400%にまで引き伸ばされる。リリースフィルム層を引き伸ばすことは、2つの効果を奏する。第1に、ポワソン比により表面の特徴が比例的に減少し、算術平均高さが効果的に低減することである。第2に、微少な裂け目に似た特徴が新たな山(ピーク)および谷を形成し、効果的に生成することである。さらに、不活性フィルム層16からリリースフィルム層46を除去することが、追加の山を生成する場合もある。例えば、不活性フィルム16とリリースフィルム層46との間の接着に係る接触領域が局所化されることで、リリースフィルム層46が剥がされる際に、接着結合が破壊されるまで、不活性フィルムの表面がその接触領域において引き伸ばされることがあり得る。不活性フィルム16を引き伸ばすことで、その表面に残存変形ピークが残る。
【0050】
つまり、本発明者らは、リリースフィルム層46がラミネートフィルム23、33を損傷から保護するだけでなく、そのフィルムの表面形状を実際に改善することを発見したのである。より具体的には、(フィルタが適用されていない)ピーク密度により特徴付けられる不活性フィルム16の表面粗さは、ラミネートフィルム23、33を形成する際に、本開示の一実施形態に係る成形プロセスにより3.8%から28.7%だけ増大させられる。(2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の)ピーク密度により特徴付けられる不活性フィルム16の表面粗さは、ラミネートフィルム23、33を形成する際に、本開示の一実施形態に係る成形プロセスにより105.5%から162.5%だけ増大させられる。(0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の)ピーク密度により特徴付けられる不活性フィルム16の表面粗さは、ラミネートフィルム23、33を形成する際に、本開示の一実施形態に係る成形プロセスにより4.9%から34.2%だけ増大させられる。
【0051】
さらに、一実施形態では、容器またはシリンジに対し、エラストマ物品に外接する互いの境界に沿って接触するように構成されたシーリング面は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の50000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の300000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有し、好ましくは、シーリング面は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の100000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の500000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有し、より好ましくは、シーリング面は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の150000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の600000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有し、最も好ましくは、シーリング面は、2.0ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の200000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度または0.08ミクロンのガウスフィルタが適用された場合の700000ピーク/mm2よりも大きなピーク密度により特徴付けられる表面粗さを有する。
【0052】
極端に低く、方向とは無関係な表面粗さにより、本開示の一実施形態により作製されたエラストマ物品は、容器またはシリンジとの最適な界面を形成し、よって、改善されたCCIをもたらす。本開示の一実施形態に係るエラストマ物品は、シリコーンを含まず、つまり、CCIの問題を和らげる助けとするシリコーンオイルがないシステムにおける使用に適用可能である。
【0053】
さらに、視覚的には、リリースフィルム層を用いて作製される本開示の一実施形態に係るエラストマ物品と典型的なエラストマ物品との間で、表面プロファイルのプロットには、例えピストン面についてグラフ(
図12)に示される平均数が大きく異なるようにはみえないとしても、
図11に示されるように、明らかな違いが存在する。痕跡の曲率は、エラストマ物品の根本的な曲率に依拠するものである。定量測定値の集積が、
図12に纏められている。
【0054】
上で述べられた表面仕上げにおける違いは、定量的な視覚評価において明らかに視認可能である。
図13の画像は、光沢があるように改善された表面仕上げが施された、本開示の一実施形態に係るエラストマピストン(「円滑」とのラベルが付されている)を、リリースフィルム層を含まない典型的なプロセスにより設けられた、光沢がないようにみえるピストン(「粗い」とのラベルが付されている)に対して比較して示す。典型的に作製された要素には、目にみえるほどに粗い表面全体に及ぶ表面形状により大きな変動性がある一方、改善された表面仕上げは、側壁面および頂部面に亘って均等に適用される。
【0055】
(試験2)
発明サンプルAおよびB、さらに、比較サンプル1から3に加え、外側の側壁面および頂部面全体にラミネートされたPTFEバリアフィルムを備える、多くの1mL長のエラストマピストンを、
図1に関して上に述べられたプロセスにより、ETFEから形成された2mil(~50μm)の厚さを有するリリースフィルム層を用いて作製し(多様な試験をこの形式のピストンを用いて実施し、
図14、15、17および18に発明サンプルCとして示す)(発明サンプルC)、外側の側壁面および頂部面全体にラミネートされたETFEバリアフィルムを備える、多くの1mL長のエラストマピストンを、発明サンプルCを作製するのに用いられたのと同じプロセスパラメータにより作製した(
図16に発明サンプルDとして示す)(発明サンプルD)。比較を目的として、多くの1mL長のエラストマピストンを、発明サンプルCを作製するのに用いられたのと同じプロセスパラメータを用いるが(つまり、ラミネートPTFEバリアフィルムを有する)、リリースフィルム層を採用せずに作製し(
図14に比較サンプル4として示される)(比較サンプル4)、さらに、多くの1mL長のエラストマピストンを、発明サンプルDを作製するのに用いられたのと同じプロセスパラメータを用いるが(つまり、ラミネートETFEフィルムを有する)、リリースフィルム層を採用せずに作製した(
図16に比較サンプル5として示す)(比較サンプル5)。
【0056】
図14は、Crystal Zenith(登録商標)ポリマにおけるCCIを、リリースライナを用いて(発明サンプルC)および用いずに(比較サンプル4)作製されたPTFEラミネートが施されたピストンについて、ヘリウム漏れ試験により示す。
図14と同様に、
図15は、Crystal Zenith(登録商標)ポリマ、シリコーンを含まないガラス(シリコーンフリーガラス)および焼き付きシリコーンガラスにおけるCCIを、リリースライナを用いて作製されたPTFEラミネートが施されたピストン(発明サンプルC)について、ヘリウム漏れ試験により示す。さらに、
図16は、シリコナイズガラスおよび焼き付きシリコーンガラスにおけるCCIを、リリースライナを用いて(発明サンプルD)および用いずに(比較サンプル5)作製されたETFEラミネートが施されたピストンについて、ヘリウム漏れ試験により示す。ヘリウムの漏れ率は、不活性トレーサガスとしてヘリウムを使用してシールの質を適格とするのに用いられる工業基準である。1つのフィルム層を省くことにより、同じ改善された表面仕上げをむき出しのゴム物品に施すことも可能であるが、その粘弾性流れが圧力のもとで表面の欠陥を満たすであろうから、CCIは、表面粗さの変化による影響を受けるものではない。仕上げ後の物品にポリマフィルムによるラミネートが施される場合に、フィルムは、流動することができず、(いずれかのシーリング面における)あらゆる表面欠陥が、漏れの経路を形成する。
図14から16は、シーリング面の最終粗さが性能にとって重要であり、フィルムの初期粗さがあらゆる状況のもとで機能的な性能に必ずしも相関するものではないことを示す。効果なし(sterility)を示す閾値である6×10
-6atm・cc/secは、Kirschらによる文献(題名:「Pharmaceutical container/closure integrity」)に由来し、これは、USP1207に一致する。PTFEおよびETFEは、これらの試験のために作製されたラミネートピストンであるが、当業者であれば、他のラミネートにより、リリースライナを用いてゴムエラストマのシーリング性を改善可能であることが理解可能である。
【0057】
図17および18は、リリースライナを用いて作製されたPTFEラミネートが施されたピストンの性能を示す。具体的には、
図17は、Crystal Zenith(登録商標)ポリマ、シリコーンフリーガラスおよび焼き付きシリコーンガラスにおける、304.8mm/minでのインストロンBLE法を用いた乾燥条件での発明サンプルCに関する摺動降伏力および平均伸張力を示す。
図18は、Crystal Zenith(登録商標)ポリマ、シリコーンフリーガラスおよび焼き付きシリコーンガラスにおける、304.8mm/minでのインストロンBLE法を用いた乾燥および湿潤条件でのサンプルCに関する摺動降伏力を示す(試験は、焼き付きシリコーンガラスにおけるサンプルCについて湿潤条件では行われていないことに留意されたい)。シーリング性における印が付された改善と同様に、リリースライナを用いて作製されたPTFEラミネートが施されたピストンは、摺動降伏力および平均伸張力において、シリコーンオイルの使用を要する幾つかの商用入手可能なピストンに近い特徴を有する(しかし、シリコーンオイルとともに使用される商用入手可能なピストンは、この実験では試験されていない)。改善された力の性能は、シリコーンオイルとともに使用されることが意図されたピストンについて(仮に)一般的になされるように、医薬界面だけというよりも、むしろ、潤滑性のある不活性フィルムにより被覆されたピストンの接触面全体(つまり、側壁面および頂部面)によるものである。この実験は、PTFEラミネートが施されたピストンの力の性能を特徴付けるものであるが、当業者であれば、リリースライナを用いて作製されたETFEおよび他のラミネートが施されたピストンもまた、バレルの様々な構成において、改善された力の特徴を有することが理解可能である。
【0058】
この方法は、いかなるラミネートフィルム層をも持たないエラストマ物品(つまり、成形プロセスの間にリリースフィルム層46により保護されるむき出しのエラストマ)を作製するのに使用することも可能である。表面に対する他の変更は、滑らかな基板を必要とする化学的な機能化、コーティングを含み得る。
【0059】
表面粗さの上位コントロールは、総接触領域の可同調を実現可能であり、よって、他の機能的な属性(つまり、摺動降伏力および伸張力)を改善する。同様に、これは、以前は可能ではなかった製品ジオメトリを可能とする。
【0060】
この製品は、新しい型の設計を通じて同様に提供することが可能である。他にあり得る製造方法は、限定的ではなく、研磨された型、(フィルムの損傷を防止するために)尖った形状のない型、PTFE(または他のポリマ)によるコーティングが施された型、代わりの型材料(つまり、ポリマまたはセラミック)、代わりの型リリース技術を含む。しかし、リリースフィルムが型の表面形状から不活性フィルム層をどのように保護するかにより、本開示は、粗い型に充分に適するものであるとともに、いかなる型の製品寿命をも延長可能であり、最終的には、費用を削減する。
【0061】
本開示は、注射可能な医薬を収容しまたは接触するように用いられるいかなる形式のシールにおいても好適に使用可能である。これは、限定的ではなく、ピストン、ストッパおよび内張りシールを包含する。本開示に関する最大の需要は、CCIが維持されることが重要なシステムであることから、注射可能な薬剤のためのシリコーンを含まない収容システムにある。本開示は、敏感な生物学的薬剤および眼内投与薬剤についてより好適に使用される。本開示は、注射可能な薬剤の良好なバリア性を有する収容のためのあらゆるエラストマの製造費用を削減するのにも好適に使用される。
【0062】
本開示に係る技術は、完全にまたは部分的にフィルムラミネートが施されたピストン、ストッパ等および/またはシリコーンを含まないバリア性を有するクロージャシステムの製造に使用可能である。好ましくは、本開示に係る技術は、完全にフィルムラミネートが施されたピストン、ストッパ等および/またはバリア性を有するシリコーンを含まないクロージャシステムの製造に使用される。
【0063】
特定の用語法が、以上の説明において単に便宜を目的として、限定的でなく使用された。「近位」、「遠位」、「上方」、「下方」、「底部」および「上部」といった言葉は、参照されるべき図面における方向を示すものである。「内向き」および「外向き」といった単語は、本開示に従って装置の幾何学的な中心およびその指示された部分に向くかまたは幾何学的な中心等から離れる方向を夫々示す。本明細書で特に言及されない限り、「a」、「an」および「the」といった用語は、1つの要素に限定されず、むしろ、「少なくとも1つ」を意味するものとして読まれるべきである。用語法には、上に述べた単語のほか、その派生語および類似の意味の単語が含まれる。
【0064】
以上に述べられた実施形態に対し、本開示の最も広い技術概念から逸脱することなく変更を加え得ることは、本技術分野の当業者により理解される。よって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の精神および範囲にある修正を含むことが意図されているものと理解される。