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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026626
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】管理された医療情報交換
(51)【国際特許分類】
   G16H 70/40 20180101AFI20240220BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20240220BHJP
【FI】
G16H70/40
G16H20/10
【審査請求】有
【請求項の数】36
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000312
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2022005996の分割
【原出願日】2015-06-29
(31)【優先権主張番号】62/019,227
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514000967
【氏名又は名称】バクスター・コーポレーション・イングルウッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER CORPORATION ENGLEWOOD
【住所又は居所原語表記】9540 S.Maroon Circle,Suite 400,Englewood,CO 80112 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エイ・ヴァレンタイン
(72)【発明者】
【氏名】ブハヴェシュ・パドゥマニ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ボッシオ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティナ・エフセーエワ
(72)【発明者】
【氏名】スリニヴァス・モデクルティ
(57)【要約】
【課題】情報の管理、特には医療の提供に関するものとして受信される製剤情報に関係する情報の管理への、協業的なアプローチを促せること。
【解決手段】データ源からの医療情報の収集、医療記録の少なくとも一部の編集、および/またはユーザーからのアクセスに応じた医療情報の整形を含む、医療情報の管理方法。これにより医療情報の交換が促進でき、例えば内部ユーザーおよび/もしくは一名以上の外部事業者によるデータ解析を促進できる。医療情報をユーザーがアクセスできる共有可能データ部に格納する前に、その中から患者識別情報および/もしくは保護されるべき医療情報(PHI)を削除しておくことができる。さらには共有可能データ部中の医療情報を、そのデータにアクセスしているユーザーの身元、そのデータが用いられることになる環境、および/もしくは要求されるデータ形式に応じて、整形可能である。こうして医療情報の交換により、種々の有益な目的に貢献しうるデータ解析を促進可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者指定の製剤に関する情報の交換をするためのシステムであって、前記システムが、
一箇所以上の保健施設と通信するよう機能でき、且つ前記一箇所以上の保健施設から、前記一箇所以上の保健施設のうちの対応するそれぞれにおいて調製された患者指定の製剤関連情報を受信するためのデータ記憶装置と、
前記データ記憶装置と通信するよう機能できる、協業モジュールと
を含み、
ここで前記データ記憶装置は、共有可能データ部を含み、前記共有可能データ部が、患者の識別情報を削除した改訂版データ記録を格納し且つ前記一箇所以上の保健施設から受信した製剤関連情報に対応するものであり、
前記協業モジュールが、前記共有可能データ部からデータを抽出するために前記共有可能データ部にアクセスするように機能し、且つ抽出したデータを、所定の動作要件に少なくとも一部は基づくデータ形式に変換するように機能し、且つ形式を整えたデータを、前記データ記憶装置から遠隔にアクセス可能な、遠隔アクセス可能データ格納拠点にロードするように機能する
ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記患者の識別情報が、少なくとも患者の識別子を含んだ保護されるべき医療情報(PHI)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記共有可能データ部に含まれる前記改訂版データ記録のうちの一種以上が、一意識別子を含み、
前記一意識別子が、所与の患者への製剤関連情報のうちの一種以上の部分に紐づけられ、且つその患者に関する識別情報を提示するものでは無い
ことを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記一意識別子が、前記患者の識別子にハッシュ関数を適用することで生成されるハッシュ値を含むことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ハッシュ関数が、前記データ記憶装置においてプロセッサにより実行されることによって、前記共有可能データ部に格納される前記改訂版データ記録を作成することを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ハッシュ関数が、前記一箇所以上の保健施設においてプロセッサにより実行されることによって、前記共有可能データ部に格納するために前記データ記憶装置で受信される前記改訂版データ記録を作成することを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記ハッシュ値が、前記患者の識別子に基づいた、決定論的かつ不可逆な値を含むことを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記データ記憶装置がさらに、
前記一箇所以上の保健施設から受信される前記製剤関連情報のうちの少なくとも一部に対応した前記患者の識別情報を含んだ完全版データ記録を含む、バックアップデータ部
を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記バックアップデータ部および前記共有可能データ部が、前記データ記憶装置上で別々にアクセス可能なものである、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記協業モジュールが、前記共有可能データ部へのアクセスに適用される複数のセキュリティレイヤーに基づいて、複数のユーザーに対し、前記共有可能データ部への選択的且つセキュアなアクセスを提供することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記データ形式が、前記複数のユーザーによりアクセス可能な標準化されたデータ形式を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記データ形式が、複数種の別個のデータ形式を含み、
前記複数種の別個のデータ形式のうちの各々が、前記複数のユーザーのうちの対応する各々によりアクセス可能である
ことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記データ記憶装置が、前記一箇所以上の保健施設から離れて位置するデータ格納サーバーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記データ記憶装置が、別の複数の地理的拠点に分散した複数のミラーリングデータサーバーを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記製剤関連情報が、患者へ投与されることになる製剤のための調剤指示の受信に応じて作成される調剤指示記録を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
さらに
前記データ格納拠点と通信するよう機能でき、整形されたデータを取得するための解析モジュール
を含み、
前記解析モジュールが、特定の患者に関する製剤関連情報に対して一種以上の解析を行いつつ、前記特定の患者の特定の身元識別は行わないように機能できる
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記一種以上の解析が、誤り解析、在庫管理、または供給連鎖管理のうちの一種以上を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記製剤関連情報が、前記データ記憶装置において、前記一箇所以上の保健施設の各々の持つローカルデータポリシーに則って受信される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
患者指定の製剤に関する共有可能な情報を作成するための方法であって、
一箇所以上の保健施設から、前記一箇所以上の保健施設のうちの対応するものにおいて患者への投与のために調製された患者指定の製剤に関する情報を受信するステップと、
前記情報を、前記一箇所以上の保健施設から受信する患者指定の製剤に関する前記情報に対応する改訂版データ記録の形態として、データ記憶装置上に共有可能データ部として保存するステップであって、ここで前記改訂版データ記録からは患者識別情報が削除されているステップと、
前記改訂版データ記録を、所定の使用要件に応じた形式へと整形するステップと、
整形したデータを、遠隔のアクセス可能な格納拠点へとロードすることで、前記格納拠点から離れたユーザーによるアクセスに供するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記患者識別情報が、少なくとも患者識別子を含んだ保護されるべき医療情報(PHI)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに
一意識別子を、所与の患者に対応する前記改訂版データ記録のうちの一種以上と紐づけつつ、前記患者に関して身元を割る能力は提供しないステップ
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
保存するステップがさらに、
前記患者識別子へハッシュ関数を適用するステップと、
適用するステップに応じて前記一意識別子を生成するステップと
を含み、
ここで前記一意識別子が、適用するステップにより得られるハッシュ値を含む
ことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらに
複数のユーザーに対し、前記改訂版データ記録への選択的且つセキュアなアクセスを提供するステップ
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
整形するステップが、
前記改訂版データ記録を、複数のユーザーがアクセス可能な標準化形式へと整形するステップ
を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
整形するステップが、
前記改訂版データ記録を、複数の異なる形式へと整形するステップ
を含み、
ここで前記複数の異なる形式のうちの各々が、複数のユーザーのうちの対応する各々によりアクセス可能なものである
ことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
さらに
患者へと投与されることになる製剤についての調剤指示を受信したことに応じた調剤指示記録を含んだ、製剤に関する前記情報を作成するステップ
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
さらに
前記格納拠点にアクセスして、前記整形したデータを取得するステップと、
製剤に関する前記情報を、所定の患者について解析しつつ、前記所定の患者の身元は解析しないステップと
を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
解析するステップが、
誤り解析、在庫管理、または供給連鎖管理のうちの一種以上
を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
製剤に関する前記情報を受信するステップが、前記一箇所以上の保健施設の各々の持つローカルデータポリシーに少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、米国仮特許出願第62/019,227号『MANAGED MEDICAL INFORMATION EXCHANGE』(2014年06月30日出願、この参照によりその全容は本願明細書に含まれる)に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの保健施設(healthcare facilities)では調剤室/薬剤庫(pharmacy resources)を利用し、患者に投与されることになる製剤を用意している。そうした調剤室は、保健施設と共に在ることもあるし、保健施設から離れていることもある。いずれにしても、調剤指示/投薬指示(medical dose order)を承けて調剤室で調剤を行うことができるわけである。そうした調剤指示が、医療専門家によって為されるような患者指定の調剤指示である場合もよくあり、これはつまり患者への投与のために調製される製剤の調製要請に対応するものである。別の適用例として、調剤指示が在庫発注(ストックオーダー)であったり患者を特定しないものであったりすることもある。
【0003】
多くの保健施設では、調剤指示に応じた記録が調剤室で用意されることで作成されている。そうした記録に含まれるものとしては、調剤指示と共に受信される情報ならびに/または調剤室により記録に追加できる情報(調剤指示に応じた用量を準備するために使われる製品および/もしくは処方についての詳細情報を含む)といったものがある。こうした記録は、さまざまな目的を想定して調剤室でローカルに保存および/もしくは使用してよく、そうした目的としては例えば、規則遵守(企業コンプライアンス)、患者の安全、在庫管理、人事決定、または調剤室および/もしくは製剤の管理に関するその他の目的などを含む。
【0004】
さらには、通信技術と協業ツール(コラボレーションツール)のとどまるところを知らない発展によって、ネットワーク化環境の中でデータの共有とアクセスをしやすくなっている。そうしたネットワーク化環境としては例えば、ソフトウェアサービスを介するもの、データ共有プラットフォームを介するもの、もしくは他のネットワーク接続を介するものなどがあり、これらをまとめて「クラウドサービス」と称することもある。しかしながら医療情報(例えば調剤指示の記録などを含む)には、アクセス制限および/もしくは転送制限が掛けられることがある。例えばそうしたデータへのアクセス制限が、保健施設もしくは調剤室に居る適当な人物によってなされることがある。また米国のthe Health Insurance Portability and Accountability Act(HIPAA法)では、保護されるべき医療情報(protected health information; PHI)を含む可能性のある医療記録の取り扱い、頒布、もしくは他のプライバシーに関する作業についての規制を定めている。つまり調剤指示記録そして特にはPHIを含みうる患者指定の調剤指示記録の使用、頒布、および/もしくはアクセスは、規則遵守(企業コンプライアンス)および/もしくは他のプライバシー問題によって制限される可能性があるわけである。このように、クラウドサービスのアプリケーションが協働的にデータを共有できると有益なことがありえるにもかかわらず、そうした価値あるデータの使用には制限があって、アクセス制限を掛けられてしまうこともあるのである。
【0005】
さらには医療情報の維持および/もしくは作成に使われるシステムは、特定のデータ形式(データフォーマット)を用いるプロプライエタリなものであることもある。するとデータ交換にはデータ形式による制限が掛かってしまうこともある。例えば第一の事業者に特化したプロプライエタリな形式を以って作成や保存をしたデータは、別の事業者には読み出せないこともありえるわけである。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、情報の管理、特には医療の提供に関するものとして受信される製剤情報に関係する情報の管理への、協業的なアプローチを促せるシステムおよび方法に関する。また本開示は、医療情報の管理された交換手法にも関する。医療情報の交換手法の改良にあたっては、医療情報の選択的な改訂および/もしくは整形(formatting)を使用することで行える。例えば、患者識別情報やPHIを含んでいる可能性がある医療情報の交換を増進できるようにするために、医療情報のうちの特定のデータを改訂できる。さらには暗号ハッシュ関数を適用して、情報の一部(患者の識別子に関する情報など)を、匿名的な値(non-identifying value)へと信頼性あるやりかたで変換することも可能である。しかも患者のPHIおよび/もしくは患者識別情報を削除しても、記録を引き続きその患者に紐づけ(関連づけ)ておくこともできるのである。
【0007】
また、本開示に示す医療情報交換に適用可能であるデータ解析の可能性の幅広さを考え、データ交換プラットフォームのユーザーがアクセスするに先立ってデータを整形しておくことで、特定のデータ解析にとって都合を良くすることもできる。そうしたデータ整形先としては、システムの全ユーザーに共通する標準化形式、ならびに/または、特定のユーザー、特定のデータ使用法、および/もしくは特定のデータ型に特化した形式といったものが挙げられる。いずれにせよ本開示に示す交換プラットフォームを用いることで、データへのアクセス性を向上させることができ、ひいてはより拡張性があり堅牢かつ効率的なデータ解析を数多の環境で実現できる。特には、本開示に示す協業(コラボレーション)システムに関連したデータ整形規則を介することで、当事者(party)間でのデータ交換を改善可能である。このように複数のデータ源からのデータを或る形式に則って利用して提供可能なため、データ解析を拡張することができる。例えば複数の当事者間データ源に関連したデータ解析を、本開示に従って促進可能であり、そうすることで(データ蒐集が潜在的に有害な傾向を有していることを認識するなどして)患者の安全性を向上でき、ビジネスインテリジェンス(BI)を提供でき、保健コストの削減を援け、あるいは他の意義ある利益をもたらすことができる。
【0008】
したがって第一の態様には、患者指定製剤に関する情報の交換のためのシステムが含まれる。当該システムには、一箇所以上の保健施設と通信するよう機能できるデータ記憶装置が含まれる。当該データ記憶装置は、一箇所以上の保健施設から、その一箇所以上の保健施設のうちの対応するもので調製された患者指定製剤に関する情報を受信する。そうした医療情報に、一個以上の付加的なデータ源から受信された、患者を指定しないデータが含まれているような実施形態があってもよい。データ記憶装置には共有可能データ部が含まれており、この共有可能データ部には、患者の識別情報(PHIなど)を削除済である改訂版データ記録が保存されている。こうした改訂版データ記録は、一箇所以上の保健施設から受信される製剤に関する情報に対応するものである。またシステムには、データ記憶装置と通信するよう機能できる協業モジュール(コラボレーションモジュール)も含まれる。こうした協業モジュールは以下のように機能する。すなわち、共有可能データ部にアクセスしてそこからデータを抽出し、所定の使用要件に基づいて抽出したデータを或るデータ形式に沿って変換して、データ記憶装置から遠隔アクセス可能であるような、遠隔アクセス(リモートアクセス)可能データ格納拠点にその整形したデータをロードするように機能するわけである。ここで言う所定の使用要件とは、遂行されることになる識別されたデータの解析や、当該データにアクセスしている当事者の身元や、当該データにアクセスしている当事者が要求する形式や、当該データに関するその他特定の目的に基づいたものであってよい。
【0009】
この第一の態様に対しては、数多の特徴改良や特徴の追加を行ってもよい。そうした特徴改良や特徴の追加は、個別に行ってもよいし組み合わせてもよい。つまり、これから論じる下記の特徴のそれぞれを、第一の態様の特徴のうちの他の特徴のいずれかもしくはその組み合わせと共に使用してもよいが、使用せねばならぬというわけでもない。
【0010】
例えばPHIには患者識別子が含まれていてもよい。さらに第一の態様に係るシステムでは、患者の識別情報の削除を促進しつつも、データ記録と所与の患者との間の紐づけは残せるようになっている。したがって共有可能データ部中に保存された改訂版データ記録のうちの一種以上には、一意識別子が含まれていてもよい。ここで言う一意識別子とは、所与の患者への製剤に関する情報のうちの一種以上の部分に紐づけられるものであって、且つその患者に関する特性を識別できるような情報は与えることが無いというものである。一意識別子には、患者識別子にハッシュ関数を適用して得られるハッシュ値が含まれていてもよい。
【0011】
データ記憶装置においてプロセッサでハッシュ関数を実行することにより、共有可能データ部に格納される改訂版データ記録を作成できる。あるいは別の手法として、一箇所以上の保健施設にてハッシュ関数をローカルに実行することで、データ記憶装置にデータを入れる前に患者識別情報を削除するようにしてもよい。したがってシステムは、データ源にて改訂済の医療情報を受信できるわけである。こうすることで、一箇所以上の保健施設においてハッシュ関数をプロセッサで実行することにより、改訂版データ記録を作成して、中央格納サーバーで受信して共有可能データ部に格納するようにできる。或る実施形態においてはハッシュ値に、患者識別子に基づく決定論的且つ不可逆の値が含まれていてもよい。これはつまり、ハッシュ値の生成に用いられた所与の患者の一意識別子のそれぞれに関して、対応した一意のハッシュ値が生成されるということである。さらにハッシュ関数のみを用いたプレーンテキストの患者識別子は、ユーザーにとって確認不能のものであってもかまわない。
【0012】
また或る実施形態におけるデータ記憶装置は、完全版データ記録(すなわちPHIを含んでいる可能性があるもの)を含むバックアップデータ部を有していてもよい。そうした完全版データ記録は、一箇所以上の保健施設から受信した製剤関連情報の少なくとも一部に対応するものである。このようなバックアップデータ部と共有可能データ部とは、データ記憶装置上で別々にアクセス可能なものとしてもよい。つまり共有可能データ部にアクセスするユーザーが、バックアップデータ部にもアクセス可能とはかぎらないというわけである。協業モジュールは、共有可能データ部へのアクセスに適用される複数のセキュリティレイヤーに基づいて、複数のユーザーに対して、当該共有可能データ部への選択的且つセキュアなアクセスを提供できる。
【0013】
或る実施形態においては、協業モジュールが改訂版データを提供する際に使うデータ形式が、複数のユーザーがアクセス可能であるような標準化データ形式を含んでいてもよい。そうしたデータ形式には、複数種の別々のデータ形式が含まれていてもよい。そのようにすることで、その複数種の別のデータ形式のうちの各々に対して、複数のユーザーのうちの対応する各々がアクセス可能であるようにできる。
【0014】
或る実施形態におけるデータ記憶装置には、一箇所以上の保健施設から遠隔に在るデータ格納サーバーを含めてもよい。より具体的にはデータ記憶装置が、別の地理的拠点にてミラーリングする複数のデータサーバーを含んでいてもよい。このようにすることで冗長性が得られ、分散したデータサーバーのいずれもでデータ損失してしまうおそれを減らすことができる。
【0015】
或る実施形態においては、第一の態様に係るシステムを、発注、調製、および/もしくは患者への用量に関係して使用してもかまわない。この場合、患者に投与されることになる製剤に関して受信した調剤指示に応じて作成される調剤指示記録を、製剤関連情報に含めてもよい。
【0016】
また第一の態様に係るシステムが、データ格納拠点と通信するよう機能できる解析モジュールを有することで、整形済データを取得できるようにしてもよい。この場合解析モジュールは、特定の患者の身元を具体的に要することなく、その患者に関する製剤関連情報に対して一種以上の解析を行うように機能可能である。こうしてデータ解析モジュールにより行われる解析は、患者の一意識別子に関する解析を少なくとも含んでいるようにできる。例えば、所与の患者へ投与された用量についての解析が可能である。
【0017】
その他の解析についても、無制限に促進または実施可能である。そうした解析の例としては、一種以上の所与の調剤指示データフィールド(データ欄)に関するエラートラッキング(誤り追跡)が挙げられる。すなわち追跡された誤りを精査することで、根本原因調査に資する共通データパラメータが存在するかどうかを判断できるわけである。例えば、所与の薬品や医療製品について行われた調剤において高い誤り率が発見されたならば、その薬品や医療製品に関する隠れた原因(ラベルなどがまぎらわしい、など)をつきとめる援けとなりえるだろう。
【0018】
さらにはデータ解析を促したり実施することで、用量の製造、発注、調製、頒布、および/もしくは投与に関する供給連鎖(サプライチェーン)を、パラメータ化し評価する援けとなりうる。つまり、所与の用量に関するデータ(その用量の調製に用いられた医療製品情報を含む)をシステムに与えれば、(例えば医療製品製造者から用量の投与に至るまでの)供給連鎖中の一箇所以上において、在庫追跡と供給連鎖評価を行うことが可能になる。こうした解析は少なくとも部分的には、当該システムで受信した医療情報中に含まれる一種以上の調剤指示データフィールドに基づくものとできる。
【0019】
或る実施形態においては製剤関連情報を、一箇所以上の保健施設の各々のローカルデータポリシーに則って、データ記憶装置に受信することができる。こうすると上述したように、第一の態様に係るシステムでデータを受領する前に、医療情報から患者識別情報を削除しておくことが可能である。このような患者識別子の削除は少なくとも部分的には、各々の保健施設のローカルデータポリシーに基づいて行われるものであってよい。なお保健施設のそれぞれが、ローカルデータポリシーを構築可能である。
【0020】
第二の態様には、患者指定製剤に関する共有可能な情報を作成するための方法が含まれる。当該方法には、一箇所以上の保健施設から、その一箇所以上の保健施設のうちの対応するものにおいて患者へ投与するために調製される患者指定製剤に関連する情報を、受信する工程が含まれる。また当該方法には、上記情報を、データ記憶装置上の共有可能データ部として改訂版データ記録の形態で保存する工程も含まれ、ここでこの改訂版データ記録は、一箇所以上の保健施設から受信する患者指定製剤関連情報に対応したものである。またこの改訂版データ記録からは、患者識別情報(PHIなど)を削除済である。さらに当該方法には、改訂版データ記録を所定の使用要件に応じた或る形式へと整形する工程と、遠隔アクセス可能な格納拠点から離れて居るユーザーによるアクセスのため、当該格納拠点に整形したデータをロードする工程とを含む。
【0021】
この第二の態様に対しては、数多の特徴改良や特徴の追加を行ってもよい。そうした特徴改良や特徴の追加は、個別に行ってもよいし組み合わせてもよい。つまり、これから論じる下記の特徴のそれぞれを、第二の態様の特徴のうちの他の特徴のいずれかもしくはその組み合わせと共に使用してもよいが、使用せねばならぬというわけではない。さらに、第一の態様に関して上述した特徴改良や特徴の追加のうちのいずれか一種以上を、第二の態様でも使用してよいが、使用しなければいけないというわけでもない。
【0022】
例えば或る実施形態においては、PHIに少なくとも患者識別子が含まれていてもよい。また当該方法は、所与の患者に対応した改訂版データ記録のうちの一種以上に、一意識別子を紐づける工程も含むことができ、しかも当該患者に関する特性を識別する能力は与えないようにできる。この場合、上記の格納工程にさらに、患者識別子にハッシュ関数を適用する工程と、その適用により一意識別子を生成する工程とを含めてもよい。こうした一意識別子には、ハッシュ関数の適用により結果的にハッシュ値が含まれていてもよい。
【0023】
或る実施形態においては当該方法がさらに、改訂版データ記録への選択的かつセキュアなアクセスを、複数のユーザーへ提供する工程を含んでいてもよい。例えばユーザーが改訂版データ記録にアクセスするためには、ユーザーが認証情報の提供を求めることのある複数のセキュリティレイヤーをくぐらないといけないような構成にしてもよい。
【0024】
或る実施形態においては、上記整形工程に、改訂版データ記録を、複数のユーザーがアクセス可能な標準化形式へと整形する工程が含まれていてもよい。あるいは付加的にか代替的に、当該整形工程が、改訂版データ記録を複数種の異なるデータ形式へと整形する工程を含んでいてもよい。その複数種の異なるデータ形式のうちの各々が、複数のユーザーのうちの対応する各々によってアクセス可能であるようにしてもよい。
【0025】
或る実施形態においては当該方法にさらに、患者へ投与されることになる製剤のための調剤指示の受信に応じて、調剤指示記録を含んだ製剤関連情報を作成する工程が含まれていてもよい。また当該方法には、データ格納拠点にアクセスして整形済データを取得する工程と、特定の患者についての製剤関連情報をその特定の患者の身元を識別してしまうことなく解析する工程とがさらに含まれてもよい。また当該方法では、第一の態様について上述した解析手法のうちのいずれか一種以上を行うようにしてもよい。
【0026】
くわえてさらに当該方法では、製剤関連情報を受信する工程が、一箇所以上の保健施設の各々のローカルデータポリシーに少なくとも部分的に基づいたものであってもよい。こうすると上述したように、ローカルデータポリシーを保健施設で遵守可能になる。
【0027】
上述の記載は、保健施設から医療情報を受信することに関するものではあったが、上述したシステムおよび方法の態様を、複数のデータ源のうちの一個以上から医療情報を受信するために利用することもまた可能である。そうしたデータ源としては、薬剤製品や医療製品(用量の調製時に使用可能なものなど)を製造する製薬業者などが挙げられる。またデータ源には、病院情報システムが含まれていてもよい。病院情報システムでは、保健施設を通じて受信および/もしくは頒布される、医療製品の在庫追跡に関するデータを提供できる。また病院情報システムは、治療記録などを含む医療情報も提供できる。追加的なデータ源としては例えば、医療装置運用データベース(例えば注入ポンプなどの投与装置を含む)からの情報および/もしくは払出機からの情報といったものが挙げられる。さらに、そうしたデータ源のうちのいずれか一種以上が、データ解析などを行う目的でデータにアクセスしてもよいが、アクセスせねばならないというわけではない。こうして、多数のデータ源から受信して集約したデータに対するデータ解析がしやすくなる。つまり、用量の製造、発注、調製、および/もしくは投与に関する複数のデータ源に由来するデータを集約して、当該データに関する広汎な解析の自由を得ることができるわけである。こうした集約・改訂・整形されたデータへのアクセス性を高めることで、数多の環境(患者の安全、薬局の効率、ビジネス開発、在庫管理などを含む)において改善が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】製剤に関する情報の交換のためのシステムに係る実施形態を示す模式図である。
図2】製剤に関する情報の交換のためのシステムに係る実施形態を示す模式図である。
図3】製剤に関する共有情報に対する協業的データ解析を伴う、協業プラットフォームに係る実施形態を示す模式図である。
図4】製剤に関する情報の交換方法に係る実施形態を描いたフローチャートである。
図5】調剤と投与を含んだ特定の環境における、医療情報の交換のための協業プラットフォームの実装例に係る実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の記載は、開示される形態に本発明を限定しようとするものでは無い。つまり、後述する教示、技術、および関連技術に関する知識に相応する変形例および改造例もまた本発明の範囲に入るものである。本開示に記載される実施形態群はさらに、本願発明の実施をする既知の様式を説明することを企図するものであり、且つ当該技術分野における知識を有する他者にそのようなやりかたで本願発明を利用させたり、または本願発明の特定の用途や使用方法に要する他の実施形態や種々の変形例を利用させることを企図するものでもある。
【0030】
本開示は概して医療情報の交換に関し、特には、医療情報に関するデータ解析の提供を目的として、患者への投与のために調製される製剤に関する調剤指示記録を含みうる医療情報を交換することの管理に関する。こうした医療情報の交換によって、データ協業プラットフォームを促進して、そのデータ協業プラットフォームにより多様な当事者がさまざまな目的の下に複数のデータ源を由来としうる医療情報に対してのデータ解析を行うことが可能となる。そうした目的としては例えば、患者の安全性の向上、医療トレンドの追跡、ビジネスインテリジェンスの獲得、または医療情報に関する他の目的が含まれる。
【0031】
各々の当事者には、それぞれ異なる種類の解析を提供する動機があったり、異なる種類の解析を提供するノウハウを有していたりする場合がある。すなわち本開示により促進できるのは、互いにデータ解析を提供できる複数の当事者に対して広汎なデータ共有を可能とするような協業プラットフォームである。つまり、互いに関係を持っているとは限らない複数の当事者に対して、蒐集および/もしくは集約したデータを適切な形式を以って与えられるようなデータ協業プラットフォームを提供することによって、当該プラットフォームにより与えられる整形済データにアクセス可能でありおよび/もしくはその整形済データを解析できるようなさまざまな供給元に基づき、改善されたデータ解析がやりやすくなる。
【0032】
したがって一個以上のデータ記憶装置(バックアップデータ部と共有可能データ部とを含む)を有する協業システムによって、当該プラットフォームを促進可能である。そうした協業システムはさらに、協業モジュールを有していてもよい。また協業システムは、複数のデータ源から医療情報を受信可能である。さらには、(例えばデータ解析を行う目的で)協業システムにアクセスしてデータを受信しようとする複数のユーザーに対して、当該協業システムはアクセス権を与えることができる。データ源を含む当事者にはさらに、データ解析を目的としてデータにアクセスするために協業システムにアクセスする当事者が含まれていてもよい。つまり、協業システムにデータを提供している当事者(個人ユーザー、法人ユーザー、政府ユーザーなど)が、集約済のその当事者から供給されたデータおよび/もしくは他の当事者からのデータを含んでいる協業システムから、あらためてデータを取得してもよいということである。
【0033】
医療情報の交換に特有の懸念としては、患者のプライバシーが医療情報の交換に関わってくるために、患者のプライバシーを保つということが挙げられる。例えば医療情報には、患者識別情報(PHIを含む可能性あり)が含まれてもよい。こうした場合に医療情報の頒布には、規制上の問題(米国のHIPAA法がPHIを有する医療情報の頒布を禁止していることなど)や他のプライバシー問題によって、制限が課される場合がある。したがって本開示に示す実施形態は、医療情報を改訂してデータから患者識別情報(PHIなど)を削除するように機能できる。
【0034】
HIPAA法などの規則や他のプライバシー要因の遵守に照らせば、医療情報の頒布に先立ってPHIや他の患者識別情報の削除をせねばならない。だが所与の患者に関連治療記録を紐づけておくと、たとえ患者の身元が明らかとならないにしても有益となりうる。例えば「名無花子」という名前の患者に紐づけられた多数の医療情報記録があったとしよう。本開示では一意識別子を用いることで、そうした医療情報記録の改訂を促す。例えば名無花子の医療記録を、名無花子の身元へは辿れないようにしてある「患者X」に紐づけることができる。このように医療記録と所与の患者との間に、匿名の紐づけ(non-identifying association)を設けることで、利益を得られるデータ解析もありうる(所与の患者と関係する傾向についての解析や、特定の患者との相関についての解析など)。こうした解析を行う目的で、所与の患者について関連する医療記録を単純に識別することには、たとえその患者の識別情報が無かったとしても、有益な場合がある。このため本開示に示す実施形態では、所与の患者についての医療情報を紐づけできる一意識別子の提供は可能としつつ、いかなる患者識別情報も与えないようにすることができる。例えば患者識別子を、不可逆(one-way)の暗号化ハッシュ関数への入力として使ってもよい。そうしたハッシュ関数からは、一意識別子を含みうるハッシュ値が生成されることになる。こうすることで各一意識別子から、対応する一意のハッシュ値が得られる。この一意のハッシュ値をそのハッシュ関数へ入力したとしても、患者の身元を辿ることはできない。つまり一意識別子(ハッシュ値など)を使えば、医療情報を所与の患者に紐づけしつつも、患者の識別はできないような構成が可能となるのである。
【0035】
このように本開示に係る実施形態により促進される協業プラットフォームでは、改訂版医療情報の作成および/もしくは格納が可能である。また協業プラットフォームは、改訂版データ記録から作成される整形済データへのアクセスも提供し、データ解析を促すこともできる。ここで提供される形式は、遍くユーザーにとって馴染みのある標準化形式であってもよいし、あるいはユーザーや用途や他の基準に基づく専用の形式や特定の形式(プロプライエタリな形式など)を含むものであってもよい。いずれにしても、後述するシステムと方法を含んだ本開示に係るプラットフォームでは、改良されたデータ共有を促すことで、さまざまな目的に応じてクラウドサービスや他のデータ解析に医療情報を適用しやすくなるのである。
【0036】
図1は、医療情報の交換を促すシステム 100 に係る実施形態を描いたものである。或る用途における医療情報には、調剤指示に応じた製剤関連情報が含まれていてもよい。例えば患者への投与のために製剤(本明細書においては用量(dose)とも称する)の調剤能力を有するローカル(地元)のもしくは遠隔の調剤室を、保健施設 110 が利用してもよい。また複数の保健施設 110a, 110b, 110c が、データ記憶装置 120 と通信するよう機能できる。なお図1には三箇所の保健施設 110a~110c を描いてあるが、特に制限無しにこれよりも少ない個数か多い個数の保健施設 110 が、データ記憶装置 120 と通信するよう機能してもよい。
【0037】
図1に示す保健施設 110a~110c は、任意の適切な保健施設に相当するものであって、医療情報の作成、格納、供給、またはアクセスを行うことができる。そうした保健施設 110 に含まれるものとしては、病院、薬局、外来介護者(外来ケアプロバイダー)、在宅介護者などが挙げられるが、これらに限定はされない。いずれにしてもデータ記憶装置 120 に提供される情報には、任意の医療情報を含められる。或る実施形態における医療情報は、製剤に関するものであってよく、例えば調剤指示に応じて調製され患者へ投与されることになる用量に関するものであってよい。特定の実施形態においては医療情報に、保健施設 110 が患者への投与のために調製したか調製を求めた製剤(用量)に対応する患者指定記録が含まれていてもよい。こうして保健施設 110 が、調剤室へアクセスして利用し、患者への投与のために薬剤を調製できる。なお調剤室へのアクセスには、その保健施設の地元(ローカル)に在る薬局の使用も含まれるし、あるいは保健施設 110 に医療情報(調剤指示記録など)と製剤を提供できる遠隔の薬局の使用を含めてもよい。例えば保健施設 110 の少なくとも一部に含まれうるものとしては、調剤指示の受領に応じて、要求された製剤に応じた調剤指示記録を作成する地元の調剤室を含みうる保健施設がある。
【0038】
こうした場合に保健施設 110 は、薬局ワークフロー管理手段を使うことで、データ記憶装置 120 へと提供されることになる医療情報の作成および/もしくは供給を行うことが可能である。こうした薬局ワークフロー管理手段には、米国特許出願第14/022,415号(この参照により全容が本開示に含まれる)のいずれかもしくはすべての細目を含めてもよい。こうした薬局ワークフロー管理手段の例としては、DoseEdge(商標) pharmacy workflow manager(イリノイ州ディアフィールドのBaxter Healthcare Corporation社提供)を含めることができる。すると保健施設 110 は、調剤指示情報を捕捉できるツールを採用することで、患者への投与のために調製されることになる用量に応じた調剤指示記録を作成および/もしくは供給することができる。こうした手法には、指示受付システムから受信した調剤指示データを捕捉することや、ならびに/または、調製されることになる用量および/もしくは用量の調製に関する調剤指示メタデータを有する調剤指示記録を供給することを含めてもよい。詳しくは後述するが、調剤指示記録には、データ記憶装置 120 へと提供できる医療情報が含まれていてもよい。
【0039】
そしてデータ記憶装置 120 は、製剤関連情報を格納するように機能でき、そうした製剤関連情報としては例えば、保健施設 110 から受信される調剤指示記録が挙げられる。この場合に保健施設 110 は、保健提供者から受信する調剤指示に対応した調剤指示記録を提供できる。一例としては、患者へ投与されることになる製剤用量のために、薬局が受信する調剤指示を作成する提供者に応じて、作成される調剤指示記録というものが考えられる。調剤指示を受領すると、保健施設 110 は、その調剤指示に応じた調剤指示記録を作成できる。
【0040】
調剤指示記録には、一種以上の調剤指示記録データフィールドが包含されていてもよい。そうした調剤指示記録データフィールドには、調剤指示に関する調剤指示メタデータを取り込んでもよい。そうした調剤指示メタデータは、(調剤指示受付システムなどの手段により)受信した調剤指示から得るものであってもよい。あるいは調剤指示メタデータは、調剤指示の受領後に、(調剤指示に対応する用量の管理、調製、および/もしくは頒布の際に薬局ワークフロー管理手段などによって)調剤指示に紐づけられたものであってもよい。調剤指示記録データフィールドには、患者識別情報を提供する一種以上のフィールドを含めてもよい。例えば調剤指示記録データフィールドに含められるものとしては、患者名、地理データ、関連日付(生年月日、入院日、投与日など)、電話番号、ファックス番号、電子メールアドレス、社会保障番号、医療記録番号、健康保険受益者番号、口座番号、証明書/免許番号、車両識別子およびシリアル番号(ナンバープレート番号を含む)、デバイス識別子とシリアル番号、URL(Uniform Resource Locator)、インターネットプロトコルアドレス、生体認証識別子(網膜スキャンや指紋)、識別画像、または任意の一意識別の番号、特性、もしくはコードに関するデータが挙げられる。この場合に患者識別子には、調剤指示記録に紐づけられたPHIを含めていてもよい。
【0041】
また他の調剤指示記録データフィールドを、用量の製造、調製、頒布、および/もしくは投与に関して提供することも可能である。例えばそうした調剤指示記録データフィールドとしては、予定の薬剤投与日時、実際の薬剤投与日時、予定の頒布日時、実際の頒布日時、製剤の消費期限、希釈値、用量中の医療製品の個数の計上、調剤指示の受付日時、用量の体積測定値、一連の用量のうちの最初の用量の日時、その用量が一連の用量のうちの最初の用量であるかどうかの表示、その用量が有害物質を含むかの表示、その用量が高リスクな用量であるかどうかの表示、用量識別子、その用量が試験用量であるかどうかの表示、用量に対応するラベルのラベル形式、用量に対応する看護単位、発注指示、調剤指示が保留中であるかどうか、調剤指示が保留された日時、用量の超過量、患者の基礎エネルギー代謝値、患者の体表面積値、患者の身長、患者の体重、用量の継続期間、用量の調製日時、調剤指示がラベルに印刷されているかどうか、いつ調剤指示ラベルが印刷されたか、調剤指示ラベルを印刷したプリンターの名前、用量の投与速度、用量が調製中に薬剤師によって拒絶されたことがあるかどうかの表示、用量が拒絶された日時、用量を拒絶した薬剤師の身元、用量の投与経路、用量に関するスキャン作業の履歴、用量に関するスキャン作業の日時、用量を分類した日時、用量の状態の表示、用量が在庫用量であったかどうかの表示、用量が完全非経口栄養(TPN)のためのものであったかどうか、用量に関連するTPNの種類の表示、用量が薬剤師によって確認された日時、誰がその用量を確認したかの識別、その用量に関連する所定の工程を誰が実施したかの表示、調剤文書(製剤の画像および/もしくは調剤指示中の成分のための製品調製などを含む)、用量に関するエラーログ、または用量に関連する他の適切な情報といったものが挙げられる。或る実施形態においては、上述したフィールドのいずれか一種以上を含んだ調剤指示記録を、データ記憶装置 120 に提供できる。
【0042】
データ記憶装置 120 は、各保健施設 110 から離れて位置しつつそれらと通信するものであってもよい。或る実施形態においては、データ記憶装置 120 において受信された情報が、保健施設 110 から取得された完全版データ記録であってもよい。ここで言う完全版データ記録とは、保健施設 110 が持つデータ記録に含まれていたのと同じ情報が、データ記憶装置 120 でも受信されている場合のデータ記録のことを指す。要するに、完全版データ記録とはデータが削除されていないもののことと考えてもらえばよい。データ記憶装置 120 で受信される情報は、上述した一種以上の調剤指示記録フィールドに関連した情報を有する調剤指示記録であってよい。すなわちデータ記憶装置 120 は、各保健施設 110 から提供される記録のバックアップコピーを格納できる。つまりは保健施設 110 からの調剤指示記録の完全版コピーを、データ記憶装置 120 に与えて格納させておけるということである。そうするとデータ記憶装置 120 には、保健施設 110 の各々から受信した完全版データ記録(調剤指示記録など)を格納するバックアップデータ部 130 を含めてもよい。承知のこととは思うが保健施設 110 から提供されるデータはプロプライエタリなデータ形式であることがあり、第三者には保健施設 110 が実行するプロプライエタリな対応ソフトウェアを使わないかぎりは読めない場合もある。
【0043】
或る実施形態ではバックアップデータ部 130 が、いずれか一箇所以上の保健施設 110 にデータのバックアップ版を提供するように機能できる。例えば保健施設 110a~110c のうちいずれか一箇所以上でデータ損失が起きたとすると、データベースの復旧を目的としてバックアップデータ部 130 が、保健施設 110 にデータベースのバックアップコピーを提供できる。つまり保健施設 110 のうちのいずれかから提供されたデータを、その保健施設 110 へデータバックアップとして返せるということである。こうすることで保健施設 110 による医療情報の提供から、データバックアップというかたちでの利益を保健施設 110 にもたらすことができる。すると患者の健康に関する医療情報をバックアップデータ部 130 で効率的にバックアップでき、且つ保健施設 110 でのデータロス発生の際に保健施設 110 でのデータ復旧にも利用可能なのである。
【0044】
またデータ記憶装置 120 は、共有可能データ部 150 を有していてもよい。共有可能データ部 150 は、医療情報の少なくとも一部を改訂して得られるデータ記録を格納できる。例えば或る実施形態では、共有可能データ部 150 内の記録からは、PHIを削除しておくことができる。この場合、データ選別(データスクリーニング)モジュール 140 が具えられていてもよい。データ選別モジュール 140 は、バックアップデータ部 130 内に格納される完全版データ記録にアクセスできる。データ選別モジュール 140 は、その完全版データ記録から一種以上のデータ(PHIや他の患者識別情報など)を削除できる。こうして改訂版データ記録を共有可能データ部 150 に格納できる。
【0045】
またバックアップデータ部 130 と共有可能データ部 150 を分離して、それぞれのデータ部分へのアクセスを制御するようにしてもよい。各データ部分が同一装置上(共通ドライブ上、サーバ上など)に存するようにしてもよいが、各データ部分を隔離することで、或るデータ部分へのアクセスはできるからと言って別のデータ部分へのアクセスの許可があるとは限らないように構成してもよい。或る実施形態ではデータの各部分を複数の異なる対応する装置で保存するようにしてもよい。
【0046】
所与の患者に関するデータ記録間に紐づけをすることは、たとえその患者の身元は辿れなくても(つまりデータ記録が改訂されていたとしても)、有益なことがある。したがってシステム 100 は、改訂版データ記録と患者を紐づけすることで、実際の患者の身元を割ることなく、どの製剤がその患者に関係していたのかを判断するように機能できる。患者の識別情報にはPHIが含まれていることがあるため、患者の識別情報をデータ記録から修正しつつも、その患者についてのすべての記録間の紐づけは保ったままとすることができるわけである。つまりデータ選別モジュール 140 は、所与の患者に対応する一意識別子を生成できるが、患者の身元を辿ることはできないということである。こうすることで、患者に紐づけられたすべてのデータ記録に、その患者に対応する一意識別子をあてがうことができる。そうしてその患者についてのすべてのデータ記録は識別可能でありつつ、患者の身元自体はわからないように(匿名に)できるわけである。
【0047】
一意識別子の例としては、共有可能データ部 150 内に改訂版データ記録を格納するに先立って、完全版データ記録のうちの一種以上の部分に対して、暗号化ハッシュ関数を適用することにより生成できるハッシュ値を挙げることができる。つまり改訂版データ記録(一意識別子を含んでよい)は、生成したハッシュ値と共に保存できる。或る実施形態では完全版調剤記録に、一種以上の患者識別子が含まれていてもよい。例えば調剤記録には、患者の名前および/もしくは患者に関する他の識別情報を含有するフィールドが含まれていてもよい。そうした他の識別情報としては例えば、その患者についての施設の識別子、生年月日、社会保障番号、もしくは上述した他の患者識別情報などがある。したがって患者識別子にはPHIが含まれていることがある。すると完全版調剤記録中の一種以上の患者識別子が、ハッシュ関数への入力を含んでいてもよい。そうしてできる出力ハッシュ値から、一意識別子が得られる。こうした一意識別子は、共有可能データ部 150 中に格納される対応する改訂版データ記録内に保存できる。
【0048】
データ選別モジュール 140 により、ハッシュ関数を、完全版調剤指示記録中の一種以上の患者識別子フィールドへと適用できる。例えば適用可能な一種以上の暗号化ハッシュ関数としては、SHA-1、SHA-2、SHA-3、MD5、RIPEMD-128/256、RIPEMD-320、RTR0、または既存もしくは開発途上の他の適切なハッシュ関数が挙げられる。好ましくは適用されるハッシュ関数は決定論的なものである。要するに、一意な入力の各々に対して、対応する一意の出力がハッシュ関数によりデータ衝突することなく得られるということである。さらにハッシュ関数は不可逆なものであるのが好ましい。例えばハッシュ関数から得られるハッシュ値について、そのハッシュ値の元になった入力を確認できるようにすべきではない。したがってハッシュ関数は好ましくは、患者識別子の、複数の患者の各々について一意である匿名的な一意の値への不可逆な変換を可能とする。こうすることで、ハッシュ関数を適用する都度、所与の患者については同じ一意な値が得られるということである。したがって所与の患者に関する二種以上の異なる調剤指示記録に対しては、ハッシュ関数をデータ記録に適用すればいずれも同じ一意識別子を付与できるということである。すると、患者識別子に代えて一意識別子を含んだ改訂版調剤指示記録をレビューするに際し、共通する一意の値(ハッシュ値など)に基づいて、所与の患者に対応する調剤指示記録を識別可能である。またそうしたハッシュ値を、さらに符号化してもよく、例えば得られるハッシュ値に対してBase64符号化を用いてもよい。
【0049】
またシステム 100 は、協業モジュール 160 を含んでいてもよい。協業モジュール 160 は、改訂版データ記録を含有する共有可能データ部 150 にアクセス可能である。このとき、システム 100 の一名以上の遠隔ユーザー(リモートユーザー) 170 および/もしくはローカルユーザー 165 が使用可能である形式への変換を行うために、協業モジュール 160 は改訂版データ記録を取得できる。協業モジュール 160 が改訂版データ記録を変換する先の形式は、少なくとも部分的には、協業モジュール 160 からデータを要求するローカルユーザー 165 や遠隔ユーザー 170 の所定の使用要件に基づいたものとすることができる。
【0050】
また協業モジュール 160 は、共有可能データ部 150 から協業モジュール 160 が抽出する整形済データへのアクセスを希望するローカルユーザー 165 および/もしくは遠隔ユーザー 170 に対して、選択的且つセキュアなアクセスを促すこともできる。この場合、複数のアクセスレイヤーを設けて、共有可能データ部 150からの整形済データにアクセスするに先立ち、ユーザーがそのアクセスレイヤー群をくぐらなくてはいけないように構成可能である。例えば遠隔ユーザー 170 は、VPN(仮想閉域網)などの第一のレイヤーにアクセスする必要があるように構成できる。VPNへのアクセスにあたっては、遠隔ユーザー 170 は適切な証明書を提示する必要があるようにできる。そうした証明書としては、有効なユーザー名とパスワードの組み合わせや、暗号化鍵、ワンタイムパスワード、生体認証値などが挙げられる。またローカルユーザー 165 には、協業モジュール 160 を具えた共通ネットワーク(LANなど)上のアクセス端末を用いる必要があるように構成できる。ユーザーが協業モジュール 160 にアクセスする際には、さらなる証明書(有効なユーザー名とパスワード、暗号化鍵、ワンタイムパスワード、生体認証値など)を提示するようにしてもよい。ユーザーがVPNに入るかまたは共通ネットワーク上の協業モジュール 160 にアクセスするかして、協業モジュール 160 へのアクセスに要する証明書を提示した後には、そのユーザーは、協業モジュール 160 で、共有可能データ部 150 内の改訂版データ記録に基づいて整形済のデータにアクセスできるようになる。このように複数のアクセスレイヤーを設けることで、共有可能データ部 150 への不正アクセスを妨げることができる。
【0051】
協業モジュール 160 は、共有可能データ部 150 内の改訂版データ記録にアクセスして、そこからデータを抽出可能である。すると協業モジュール 160 は、データを所与の形式へと変換して(協業モジュール 160 上の記憶装置および/もしくは共有可能データ部 150 などへと)ロードし、ユーザー 165/170 がアクセスできるようにする。データの形式には、標準化形式が含まれていてもよい。標準化形式は、協業モジュール 160 へアクセスする者すべてがアクセス可能なものとできる。標準化形式としては、拡張マークアップ言語(XML)形式が挙げられる。また付加的にか代替的に、標準化形式を、境界をつけた(delineated)テキストファイル、ピボットテーブル、または他の任意の標準化形式やデータ表示として提供してもよい。こうすることで、(上述したような)プロプライエタリな形式で提供されることのあるデータを、そのままでは閲覧できない他の当事者/ユーザーがアクセスおよび/もしくは閲覧できるように、整形できるわけである。こうしてデータを汎く頒布し、さらなる関連データ解析へ供することが可能となる。
【0052】
或る実施形態では協業モジュール 160 が、共有可能データ部 150 から得た改訂版データ記録を或る形式へと整形するにあたって、少なくとも部分的には、そのデータへアクセスしているユーザーが誰であるのか、そのデータの用途、ユーザーが要求する形式、および/もしくは他の適切な基準に基づいて行うことができる。例えば異なる遠隔ユーザー 170 が、協業モジュールへのアクセスができてもよい。上述したように、遠隔ユーザー 170 による協業モジュール 160 へのアクセスには、認証(ユーザー名とパスワードの提示などを含む)を要する一種以上のアクセスプロトコルレイヤーを含めてもよい。こうすると協業モジュール 160 へのアクセスにおいて、協業モジュール 160 へとアクセスしている遠隔ユーザー 170 の身元を少なくとも部分的に識別可能である。このため遠隔ユーザー 170 がアクセスしているデータの形式は、少なくともユーザー 170 の身元に依存するようにできる。例えば第一の遠隔ユーザー 170 が第一の当事者に関連していると、その第一の当事者に関する第一の形式(第一の当事者に対応するプロプライエタリなデータ形式など)を以って整形済なデータを受信できる。また第二の遠隔ユーザーが第二の当事者に関連していると、その第二の当事者に関する第二の形式(第二の当事者に対応するプロプライエタリなデータ形式など)を以って整形済なデータを受信できる。この第一の形式と第二の形式は異なるものであってよく、協業モジュール 160 にアクセスしている特定のユーザーに関して一意のものであってもよい。詳しくは後述するが、協業モジュール 160 により整形済データを提供される異なる遠隔ユーザー群 170 は、異なる使用要件を有する者たちであってもよい。これは協業モジュール 160 が共有可能データ部 150 に保存されるデータに関係しているからである。すなわち、ユーザー 165/170 に提供されるデータの形式は、ユーザー 165/170 がするであろうデータの使用法および/もしくはユーザー 165/170 の要求する形式に基づくものとできる。
【0053】
図1から読み取れるとおり、データ記憶モジュール 120 と協業モジュール 160 とがまとまって、協業システム 305 を構成するようにしてもよい。このとき保健施設 110a~110c には、協業システム 305 へとデータを提供するデータ源を含めてもよい。するとデータ源 110a~110c により提供されるデータに、ユーザー 170 および/もしくはユーザー 165 が協業システム 305 を利用してアクセス可能である。つまり図1に描いている実施形態は、協業システム 305 に係る例示的実施形態を提供するものである。しかしながら図2にからめて後述するとおり、協業システム 305 に係る他の実施形態も想定されている。
【0054】
さらに図1に描いた種々の部品(コンポーネント)は、一種以上のネットワークと通信するよう機能できる。つまり描いてある種々のモジュールと装置が、互いにネットワークを介して通信するように機能できるということである。ネットワーク通信ではインターネットなどの広域ネットワークを利用できる。また追加的にか代替的に、通信をローカルエリアネットワーク、イントラネット、専用ネットワークなどの一種以上を手段として行ってもよい。さらにこれらのモジュールと装置が一体型システムを構成してもよいし、あるいは分散して設けてもよい。例えば或る実施形態では、データ記憶装置 120 が、バックアップデータ部 130 と共有可能データ部 150 のそれぞれに対して分散型ハードウェアを有していてもよい。例えば各データ部を、別々のハードウェア(別々のハードドライブや別々のサーバーなど)上に設けてもよい。あるいは別の手法として、各データ部が、共通の装置(共通のハードドライブや共通のサーバーなど)上で隔離したデータスペースを有するようにしてもよい。同様にデータ選別モジュール 140 および/もしくは協業モジュール 160 が、分散型ハードウェア装置上で実行されているスタンドアロンなモジュールであってもよいし、あるいは、各モジュールが共通ハードウェア装置上で実行されてもよい。なおそうした共通ハードウェア装置は、バックアップデータ部 130 および/もしくは共有可能データ部 150 を含有していてもよいし、していなくてもよい。
【0055】
図2は、別の実施形態として情報交換のためのシステム 200 を描いたものである。特に断わりのないかぎりは、図2のシステム 200 に対しても、図1に関して上述した変形と詳細を適用可能である。システム 200 には概して、保健施設 210a および保健施設 210b が含まれており、これらは主データ記憶装置 222 と通信するよう機能できる。主記憶装置 222 は、副/バックアップデータ記憶装置 224 と通信するよう機能できる。またデータマートモジュール 260 も、バックアップデータ記憶装置 224 と通信するよう機能できる。遠隔ユーザー 270 は、データマートモジュール 260 にアクセス可能である。保健施設 210a および保健施設 210b から受信する医療情報は、有益なデータ解析ができるように遠隔ユーザー 270 へと選択的に提供可能である。
【0056】
図2に示してあるように、各保健施設 210 はバックアップサービスモジュール 212 を有していてもよい。バックアップサービスモジュール 212 は、保健施設が有する一個以上のローカルデータベースと通信するよう機能できる。例えば保健施設 210a におけるバックアップサービスモジュール 212 は、ローカルデータベース 214 およびローカルデータベース 216 と通信するよう機能できる。このとき、ローカルデータベース 214 およびローカルデータベース 216 は保健施設 210a で情報を格納できる。保健施設 210b におけるバックアップサービスモジュール 212 は、保健施設 210b のローカルデータベース 218 と通信するよう機能できる。或る実施形態においては上述したように、患者へ投与するための製剤についての調剤指示に応じた調剤指示記録が、情報に含まれていてもよい。
【0057】
いずれにせよバックアップサービスモジュール 212 は、保健提供者 210 のローカルデータベースにアクセス可能であり、且つ主データ記憶装置 222 へと情報を提供できる。バックアップサービスモジュール 212 は、通信するよう機能している一個以上のデータベースを定期的にプールし、新規な記録や修正の入ったデータ記録を、主データ記憶装置 222 へと提供できる。あるいは別の手法として、バックアップサービスモジュール 212 が継続的に一個以上のデータベースを監視して、リアルタイム的にか準リアルタイム的にデータ記録を主データ記憶装置 222 へと提供するようにしてもよい。
【0058】
またバックアップサービスモジュール 212 は、各保健施設 210 が確立するローカルバックアップポリシーを適用してもよい。例えば保健施設 210 が、特定のデータフィールド(患者識別子および/もしくはPHIに対応するデータフィールドなど)を含んだ情報については、主データ記憶装置 222 への提供を希望しないこともできる。この場合にバックアップサービスモジュール 212 は、主データ記憶装置 222 にデータを提供するに先立って、そのデータのうちの一種以上の部分を改訂しやすくできる。或る実施形態におけるバックアップサービスモジュール 212 は、(データ選別モジュール 140 について上述したように)所与の患者に対応する一意識別子を生成するように機能できる。つまりバックアップサービスモジュール 212 が、一意な値をローカルに生成して、その一意な値は所与の患者を一種以上のデータ記録に一意に紐づけするものであるけれども、その患者の身元を割るものではない、ということである。こうすることでバックアップサービスモジュール 212 が、ハッシュ関数をデータ記録に適用して患者識別子を改訂するように機能できる。またバックアップサービスモジュール 212 から主データ記憶装置 222 へ提供される情報には、患者識別情報に代えて一意識別子を含めるようにしてもよい。
【0059】
主データ記憶装置 222 には、主データ記憶装置 222 においてバックアップデータ部 232 を含めてもよい。また主データ記憶装置 222 は、バックアップデータ記憶装置 224 と通信するように機能できる。バックアップデータ記憶装置 224 はバックアップデータ部 234 を有していてもよい。主データ記憶装置 222 が有するバックアップデータ部 232 を複製して、バックアップデータ記憶装置 224 が有するバックアップデータ部 234 に格納してもよい。主データ記憶装置 222 とバックアップデータ記憶装置 224 とは、個別の拠点に分散して配してもよい。例えば主データ記憶装置 222 を米国の東海岸の第一拠点に配して、バックアップデータ記憶装置 224 を米国の西海岸の第二拠点に配するようにもできる。主データ記憶装置 222 は定期的に、バックアップデータ部 232 からのデータを、バックアップデータ記憶装置 224 の有するバックアップデータ部 234 へと通信できる。こうすることで、バックアップデータ部 234 のバックアップを、各拠点にて保存可能である。したがって地理的に分散した記憶装置拠点を用いることで、複数の施設で同時期にデータ損失が発生するおそれを低減できる。このようにすると主データ記憶装置 222 が保健施設 210 のデータバックアップサービスをしやすくするだけにはとどまらず、バックアップデータ記憶装置 224 を用いたさらなるバックアップの可能性が創出できるのである。こうして保健施設 210 および/もしくは主データ記憶装置 222 においてデータ損失が発生した際に、バックアップデータ記憶装置 224 からデータのバックアップコピーを、保健施設 210 および/もしくは主データ記憶装置 222 に与えることで、データ復旧がしやすくなる。
【0060】
バックアップデータ記憶装置 224 は、データ選別モジュール 240 を有していてもよい。なお、データ選別モジュール 240 を主データ記憶装置 222 の中に設置して、バックアップデータ記憶装置 224 と併存させたりまたはそれと置き換えたりするのも自由である。いずれにしてもデータ選別モジュール 240 の動作は変わらない。図1にからめて説明したように、バックアップデータ記憶装置 224 の共有可能データ部 250 に格納されることになるデータ記録(患者識別子および/もしくはPHIを含むものなど)の一部の改訂を目的として、データ選別モジュール 240 が、患者識別子に関連する一意識別子を生成できる。図2に描いた実施形態においては、保健施設の有するバックアップサービスモジュール 212 から、改訂版の形態としてデータ記録を提供できる。この場合、データ選別モジュール 240 がそのデータ記録をさらに改訂するようにしてもよいし、あるいはその既に改訂されたデータ記録を共有可能データ部 250 へと渡してもよい。いずれにせよ、共有可能データ部 250 に保存された情報は改訂可能である(例えば、そのデータから患者識別子および/もしくはPHIが削除されているようにできる)。
【0061】
共有可能データ部 250 は、協業モジュール 262 と通信するよう機能できる。協業モジュール 262 をデータマートモジュール 260 内に設けてもよい。データマートモジュールによって、協業モジュール 262 が整形済データの抽出、変換(整形など)、およびデータマート記憶装置 264 へのロードを行い、遠隔ユーザー 270 がアクセスできるように構成可能である。上述したところのくりかえしになるが、整形済データは標準化形式で提供してもよいし、あるいは遠隔ユーザー 270 がアクセス可能な特定の形式で提供してもかまわない。
【0062】
ここで図2は、協業システム 305 の別の実施形態を描いており、ここには既に述べた主データ記憶装置 222 と、バックアップデータ記憶装置 224 と、データマートモジュール 260 とが含まれる。なお協業システム 305 には、地理的に離れたバックアップデータ記憶装置群を含めて、データ冗長性をさらに高めるようにしてもよい。また保健施設 210a および保健施設 210b には、協業システム 305 へと医療情報を提供するデータ源が含まれていてもよい。そうして協業システム 305 により、改訂され整形された医療情報へと遠隔ユーザー 270 がアクセスすることが可能となる。
【0063】
図3は、協業プラットフォーム 300 に係る実施形態を示す模式図である。この協業プラットフォーム 300 を用いて、医療情報に対するデータ解析をしやすくする目的を以って、一個以上のデータ源からの医療情報をユーザーへと提供できる。協業プラットフォーム 300 には、協業システム 305 が含まれていてもよい。協業システム 305 は、図1のシステム 100 に関して上述した協業システム 305 や図2の協業システム 305 などのシステムからなっていてもよい。いずれにしても協業システム 305 は保健施設 310 から情報を受信可能である。その情報を協業システム 305 の有する共有可能データ部に与えてユーザーのアクセスに供するような構成とすることで、保健施設 310 から受信した情報を一種以上の第三者によるアクセスに先立って変換できる。例えばそうした変換に含まれうるものとしては、そのデータの患者識別子および/もしくはPHIを改訂すること、ならびに/または、協業システム 305 のユーザーが利用しやすい形式にそのデータを変換すること、といったものが挙げられる。
【0064】
しかしながら協業システム 305 が、保健施設 310 にくわえてかまたはそれに代えて、一個以上の他のデータ源と通信するよう機能してもよい。例えば協業システム 305 が通信するよう機能できる先としては、医療装置運用データベース(用量投与装置データベースや他の適切な医療装置情報源など)、病院情報システム 314 、外部調剤室 316 、および/もしくは他の適切な医療情報源といったものが挙げられる。そうしたデータ源(保健施設 310 、医療装置運用データベース、病院情報システム 314 、外部調剤室 316 、および/もしくは他の適切な医療情報源など)から受信した医療情報に、改訂すべき情報(患者識別子および/もしくはPHIなど)が含まれていた場合には、協業システム 305 はその医療情報を改訂するように機能でき、そして例えば、上述したように患者に関連はするが患者の身元は割れない一意識別子を生成可能である。
【0065】
協業システム 305 が、一個以上のデータ源から作成した整形済データへのアクセスを許すようにしてもよい。協業システム 305 が提供するデータには、データ源の種類に依らず、患者識別子および/もしくはPHIが削除されている改訂版データ記録が含まれていてもよい。また協業システム 305 が提供するデータが、上述した協業モジュールに係る実施形態にからめて説明したようにして、整形してあってもよい。つまり元は異なる形式を使っていた複数のデータ源から得られたデータを、協業システム 305 が整形できる。そうして協業システム 305 が、異なるデータ源からのデータを組み合わせるかおよび/もしくは集約して、標準化形式もしくは特定の形式を以ってユーザーへと提示するように機能できる。
【0066】
したがって協業システム 305 は、複数のデータ源から得られる大量の医療情報を集約して整形できる。こうしてユーザーは、協業システム 305 が与える集約・整形済のデータにアクセスできるわけである。こうしたユーザーは、協業システム 305 にローカルにアクセスするローカルユーザー 320 (LANやイントラネットなどのユーザーなどの、協業システム 305 のつながる共通ネットワーク上のユーザーなど)であってよい。つまり所与の組織における内部解析がやりやすくなるのである。さらには外部ユーザー 330 も協業システム 305 にアクセス可能である(広域ネットワークなどの手段で協業システム 305 にアクセスするユーザーなど)。こうして内部解析ユーザー 320 および/もしくは外部サービス提供者 330 が、協業システム 305 にアクセスできる。異なるユーザーが利用できる形式および/もしくはアクセスできる形式については、ユーザーの身元、ユーザーが内部ユーザーであるか外部ユーザーであるか、および/もしくはデータにアクセスしているユーザーの目的に依って決めることができる。
【0067】
本開示のモジュールは、ソフトウェアで構成されていてもよいし、ハードウェアで構成されていてもよいし、またはその双方から構成されていてもよい。例えば当該システムの有するモジュールが、専用に構成されたハードウェアを含んでもよく、例えば特定用途向け集積回路(ASICs)、プログラマブルフィールドゲートアレイ、または他の適切なプロセッサなどを含んでよい。或る実施形態においてはそうしたモジュールが、メモリーと通信するよう機能できるマイクロプロセッサを含んでいてもよい。そうしたメモリーには、非一過性のコンピュータ可読媒体(機械可読命令を含むことができる)が含まれてもよい。こうしてプロセッサは、メモリーにアクセスでき、そしてその裡に格納された機械可読命令により本開示に掲げるいずれかの機能を実行するような特定の構成を有することができる。くわえて上述したモジュールを、メモリーと通信するよう機能できる汎用プロセッサ(複数のモジュールの機能を提供できる)によって実行してもよい。このときモジュールを単独の汎用プロセッサを用いて実行してもよいし、あるいは別々のモジュールを別々のプロセッサを用いて実行してもかまわない。
【0068】
図4に話を移すと、協業プラットフォームを手段とする医療情報の交換に関する方法 400 に係る実施形態を、フローチャートのかたちで示してある。当該方法には、一個以上のデータ源からの情報の蒐集ステップ 402 が含まれてもよい。上述したように医療情報の蒐集元であるデータ源としては、保健施設、医療装置運用データベース、病院情報システム、外部調剤室、または他の適切な医療情報源といったものが挙げられる。また方法 400 には、医療情報のバックアップデータ部への保存ステップ 404 を含めてもよい。上述したように共有可能データ部には、データ記憶装置の一部が含まれていてもよい。
【0069】
或る実施形態における方法 400 は、バックアップデータ記録の作成ステップ 406 を含んでよい。データ記録のバックアップには、バックアップデータ部に保存されている完全版データ記録のコピーが含まれていてもよい。ステップ 404 においてバックアップデータ記録を、バックアップデータ部から離れた遠隔拠点に保存してもよい。またバックアップデータ記録を使って、保健施設および/もしくは他のデータ源において喪失したり破壊されたりしてしまったデータの復旧を図ることができる。
【0070】
また方法 400 には、完全版医療情報(完全版データ記録など)へのアクセスステップ 408 を含めてもよい。上述したように完全版データ記録の一部を(例えば患者識別情報の削除のために)改訂することは有益と言える。つまり方法 400 には、ステップ 408 でアクセスした医療記録からの情報の一種以上の部分の改訂ステップ 410 を含めてもよい。上述したように改訂ステップ 410 には、(例えば患者識別子および/もしくはPHIを含む)データ記録の少なくとも一部に対して、ハッシュ関数を適用してハッシュ値を生成する工程が含まれていてもよい。そうして方法 400 には、改訂版医療情報の共有可能データ部への保存ステップ 412 が含まれる。この共有可能データ部をバックアップデータ部からは分離しておくことで、いずれかの部分への選択的なアクセスをしやすくできる。
【0071】
或る実施形態では方法 400 が、共有可能データ部からの改訂版データ記録の抽出ステップ 414 を含む。さらに方法 400 が、(データ解析などの目的で)改訂版データ記録にアクセスしているユーザーにとって使いやすいデータ形式へのその改訂版データ記録の整形ステップ 416 を含んでいてもよい。この場合の形式は、当該システムのユーザー全員へ提示される標準化形式でもよいし、あるいは特定のユーザーおよび/もしくはそのデータが使用されることになるデータ解析環境を特に指向した形式であってもよい。さらに方法 400 には、(協業モジュールなどにより)整形済の改訂版データ記録を、それへのアクセスをしやすくするためのローディングステップ 418 を含めてもよい。また方法 400 には、当該プラットフォームのユーザーによる整形済の改訂版データ記録への選択的且つセキュアなアクセスの許可ステップ 420 を含めてもよい。上述したようにユーザーに対しては、標準化形式へのアクセス権がそれぞれ与えられてもよい。あるいはユーザーに対して、ユーザーの身元およびそのデータの使用用途の表明に基づいた特定のデータ形式での提供がなされるようにしてもよい。あるいはユーザーに対して、そのユーザーが要求した形式での提供を行うことも可能である。
【0072】
また蒐集ステップ 402 によりさまざまな医療情報源から蒐集された医療情報を、変換することで例えば医療情報のデータ解析を行うためにユーザーが利用可能なものとしてもよい。したがって方法 400 には、選択的アクセスステップ 420 によりアクセスした整形された改訂版データ記録に関するデータ解析を行うステップ 422 が含まれてもよい。データ解析の例としては、発注を受けた用量に関する傾向(トレンド)の監視が含まれ、その目的としては、発注された用量に関する患者の安全性の向上や、および/または、一種以上の情報源から得た医療情報に対応する活動に関して、使い勝手のよいビジネスインテリジェンスデータを獲得することによるビジネスチャンスの拡大といったものがある。その他のデータ解析も、詳しく後述するようなものなどを行うことができる。こうしてデータ解析を複数種のサービス形態で提供することにより、ユーザーは、クラウドアーキテクチャ中に(ネットワークリソースなどを使って)収められた改訂・整形済の医療情報にアクセスでき、および/もしくはデータ解析を行うことができる。こうすることで、関連する効率性、速度、リソース利用度を向上できる。
【0073】
図5は、協業システム 305 を用いたプラットフォーム 500 に係る実施形態を描いたものであって、データを集めた後に、改訂版の整形されたデータを、一名以上のユーザーへと提供するものである。そのユーザーはその後に当該データへとアクセスできる。ここで協業システム 305 は、図1に示した協業システム 305 に係る実施形態に従うかおよび/もしくは図2に示した協業システム 305 の実施形態に従うかする協業システムからなるものであってもよい。さらには、モジュール、部品(コンポーネント)、または協業システム 305 を含む他の装置の任意の他の組み合わせを想定できるのであれば、こうした組み合わせによって一種以上の情報源から得られる医療情報の改訂と整形を促進できる。なお図1および図2で示した特定の実施形態に関して記載したモジュールの個数よりも、多い個数もしくは少ない個数のモジュールを協業システム 305 が有していてもよい。すなわち図1および図2に示した実施形態はあくまで例示であり、限定をしようとするものではない。
【0074】
図5では、患者への用量の調製を背景として協業システム 305 を論じている。ここで図5の実線矢印は、ここに記載した種々の当事者同士での物理的な商品の流れを意味していると考えてもらいたい。そして図5の破線矢印は、協業システム 305 中の種々の当事者同士でのデータの流れを示している。すなわち図5に示すプラットフォーム 500 とは、協業システム 305 の一用途を示すものであって、患者への用量の調製と投与および保健施設に関連した材料の流れにかかわるものである。
【0075】
プラットフォーム 500 には、製薬業者 510 を含めてもよい。製薬業者 510 は、用量についての医療製品を製造でき、例えば薬剤化合物および/もしくは他の中間媒体(希釈液などを含む)といったものを製造できる。すなわち製薬業者 510 は、医療製品を製造して、病院情報システム 512 を使っている病院へと納品できる。特に、保健施設において病院情報システム 512 が実行する在庫管理システムによって、製薬業者 510 からの商品の受領と追跡が可能となる。
【0076】
また製薬業者 510 も、協業システム 305 へデータを提供できる。このとき製薬業者 510 には、医療情報を協業システム 305 へと提供するデータ源が含まれていてもよい。製薬業者 510 が協業システム 305 へ提供できる適切なデータの例としては、医療製品識別子、ロット番号、消費期限、在庫管理番号、製品濃度、製品サイズ、または製薬業者 510 により製造される医療製品に関連する他の情報が含まれる。
【0077】
病院情報システム 512 の在庫管理コンポーネントは、製薬業者 510 から医療製品を受領した後に、その医療製品を監視してもよく例えばその医療製品への要求が薬局で出された時刻を監視できるし、および/または、その医療製品に関連する情報(ロット番号、消費期限、製品識別子など)を追跡するようにしてもよい。そして保健施設の有する薬局の中に薬局ワークフロー管理手段 514 を設けてもよい。薬局ワークフロー管理手段 514 は、病院情報システム 512 の有する在庫管理システムから製品を受け取ることもできる。例えば薬局ワークフロー管理手段 514 が、在庫管理システム 512 に医療製品を要求して、用量の調製に使ってもよい。つまり在庫管理システム 512 が医療製品の薬局への供給をしやすくすることで、薬局ワークフロー管理手段 514 による追跡が容易となるのである。
【0078】
また病院情報システム 512 の有する在庫管理部も、協業システム 305 へデータを提供できる。データの例としては、平均在庫量、現行在庫量、在庫供給パラメータ(医療製品が使用されるまで在庫になっていた平均期間を含む)、および/または、病院内での医療製品の動向に関するデータ(薬剤製品が薬局ワークフロー管理手段 514 に供給されて用量の調製に用いられることなどを含む)といったものが挙げられる。
【0079】
薬局ワークフロー管理手段 514 によって、患者の投与するための用量の調製がやりやすくなる。上述したように用量の調製は、保健提供者などからの調剤指示を承けて行うようにできる。すると薬局ワークフロー管理手段 514 は、上述したような調剤指示情報を受信できる。さらには薬局ワークフロー管理手段 514 が、そうしたデータに対して、用量の調製に関する情報を補足してもよい。例えば用量の調製に使われる医療製品に関する画像をキャプチャーできる。さらに医療製品に関してデータを集約し、調剤指示に対応する特定の調剤指示記録を記すために使ってもよい。調剤指示は患者を指定するものでもよいし指定しないものであってもよい。すなわち調剤指示記録には、用量の調製のために使われた医療製品のロット番号や消費期限に関する情報を含めてもよい。くわえて薬局ワークフロー管理手段 514 は、その用量を調製した調剤技師の身元、その用量を承認した薬剤師、ひいてはそれらに関連するパラメータ(出来事の日時など)といったデータを補足することもできる。さらに薬局ワークフロー管理手段 514 は、調剤技師に対して、調剤に使われる手順を提供してもよい。そうして使われる特定の手順についても、調剤指示記録と紐づけしてもよい。
【0080】
また薬局ワークフロー管理手段 514 も、協業システム 305 へデータを提供できる。この場合、薬局ワークフロー管理手段 514 に作成および/もしくは受信された上述したデータの一種以上の部分を提供できる。こうして薬局ワークフロー管理手段 514 は、調剤に関する情報および/もしくは用量の調製に使われた医療製品(群)に関する情報を提供できる。さらに薬局ワークフロー管理手段 514 から協業システム 305 へ提供されるデータには、調剤指示の発生に関する何らかの出来事のあった日時に関する情報を含めてもよい。また薬局ワークフロー管理手段 514 は、調剤指示による調製のあいだに発生した誤りを検出できる。例えば調剤技師が、調製されることになる用量に関して使われてしまった間違った医療製品を探査可能である。薬局ワークフロー管理手段 514 が調剤技師にその誤りを警告して直させるようにもできるが、それだけではなく薬局ワークフロー管理手段 514 は誤りが発生した調剤指示に関する誤りの実績をさらに記録しておくこともできる。
【0081】
薬局ワークフロー管理手段 514 は、薬局からの用量の調合の後に、その用量を用量払出機(dose dispensing cabinet) 516 へ与えることができる。用量払出機 516 は、患者、保健施設職員、または調製された用量を取得する別の者によってアクセス可能である。このとき用量払出機 516 は、その用量に関する情報を追跡および/もしくは蒐集可能である。そうしたデータの例としては、用量が回収される前に払出機 516 内に置かれた時刻、払出機 516 に用量を収めたおよび/もしくは払出機 516 から用量を回収した者の身元、払出機 516 内に在る利用可能な用量の残数、払出機 516 内に在る空き領域の残数、または他の関連データといったものが挙げられる。また払出機 516 が、払出機 516 からの調剤指示の回収に関する誤りを追跡することもできる。例えば保管場所へ不正に侵入しようとした事実を記録可能である。さらに保管場所を誤って利用しようとした事実や、間違った階の場所を利用しようとした事実についても、追跡可能である。こうして払出機 516 が蒐集するかまたは利用可能であるデータのいずれかまたは全てについても、協業システム 305 へ提供可能である。
【0082】
払出機 516 から用量を取得した後、その用量は投与装置 518 を使って患者へと投与できる。つまり保健施設の職員(看護師など)が、払出機 516 から用量を取得できるというわけである。また用量を、投与装置 518 に接続してもよい。投与装置 518 としては例えば、用量を患者に送達するために用いられる注入ポンプがある。投与装置 518 は、投与される用量に関した情報を記録でき、例えばその用量を投与された患者についての情報や、他の関連情報(投与時刻、投与についてのパラメータ(例えば投与速度や投与期間)など)や、用量の投与に関して蒐集された他の情報といったものを記録できる。さらに投与装置 518 は、投与装置 518 がアクセスしたかまたは作成した情報のいずれかについても、協業システム 305 へと提供可能である。
【0083】
用量が患者へと届けられると、病院情報システム 520 の有する患者記録部を更新して、患者への用量の投与を記録できる。病院情報システム 520 の患者記録中に記録できるパラメータとしては例えば、用量の投与の責任を負う病院職員、用量の日時、または他の関連医療記録(ヘルスケア提供者の日誌などを含む)といったものが挙げられる。またこうした情報も、協業システム 305 へ提供可能である。投与装置 518 も誤りの追跡が可能である。例えば投与装置 518 が、投与装置 518 が適式にプログラミングされているかをチェックする機構を含んでいてもよい。不適なプログラミングがなされていた場合、その誤りを投与装置 518 が記録できる。
【0084】
したがって協業システム 305 は、用量の製造、調製、および/もしくは患者への投与に関する種々の段階から得られる情報を蒐集できる。上述したように協業システム 305 は、そうしたデータを集約し、改訂し、整形できる。また協業システム 305 の有する協業モジュールにより、データ解析を目的とした集約・改訂・整形済のデータへのアクセスを許可できる。上でも簡潔に述べたが、データ源(図5に記載している当事者のうちのいずれか一種以上)にとっては、協業システム 305 へデータを提供するだけでは無く、さまざまな理由から協業システム 305 からデータを取得することによる利益がありえるわけである。図5からわかるように、示している当事者だけが協業システム 305 に供されるわけではなくて、協業システム 305 へアクセスして集約・改訂・整形されたデータへのアクセスをするユーザーもそれぞれ含まれているわけである。すなわち改訂と整形を行う協業システム 305 の力により、図5に示す当事者のいずれかが、協業システム 305 の有する共有可能データ部にアクセスできることにより、データ解析に用いるためのデータへのアクセスを稼ぐことができる。
【0085】
これはつまり、それら特定の当事者の各々に対し、それら当事者が単独で担当している領域を超えて、利用可能なデータを開放できるということである。すると製薬業者 510 が、協業システム 305 にアクセスすることで、病院情報システム 512 および/もしくは病院情報システム 520 、薬局ワークフロー管理手段 514 、用量払出機 516 、または投与装置 518 に関するデータを取得可能なのである。協業システム 305 が無かったとしたならば、図5に示す当事者の各々が独自に行うそうしたデータの蒐集や使用というのは面倒なものとなってしまい、他の当事者に直接に情報を要請する必要があったりデータプライバシーやセキュリティに懸念を抱えていなくてはいけなかったりすることになってしまうのである。しかしここで協業システム 305 が、共有されたデータをプールして集中型に集約し、改訂し、整形するという構成によって、個々の当事者が協業システム 305 に供給するデータ部分に関する当事者独自が利用可能な領域を超えて、データへと効率的にアクセスできるのである。
【0086】
図5に示すプラットフォーム 500 を使って行えるデータ解析の関連例としては、患者の安全性、医療記録、在庫管理、事業洞察、セキュリティ、もしくはデータ解析に関する他の有用な成果の向上のための解析が含まれる。例えば上述したように、薬局ワークフロー管理手段 514 、払出機 516 、または投与装置 518 のうちのいずれか一種以上において、誤り(エラー)を追跡可能である。患者の安全性を高めるために、製薬業者 510 が協業システム 305 が提供するデータを閲覧してもよい。協業システム 305 がデータを集約することにより、多数のパラメータ(その用量の調製に使われた特定の医療製品を含む)に関し、誤りの発生についての考察を得ることができるので、製薬業者 510 は、薬局ワークフロー管理手段 514 、払出機 516 、または投与装置 518 のいずれか一種以上における誤り率が、特定の医療製品に関してより多く蔓延っているかどうかを判断可能となる。そうした傾向を識別することで、製薬業者 510 が誤りの発生原因の根本を突き止め、その元を断つことができるようになる。例えば薬局ワークフロー管理手段 514 において、包装のラベルの取り違えが、特定の医療製品に関して誤り率が上昇する原因であることが考えられる。すると製薬業者 510 が、その医療製品に関する誤り率の上昇を識別し、根本原因の解析を始めることができるわけである。こうして誤りの原因がラベルの取り違えにあるとわかれば、製薬業者 510 はラベルを改良して、その医療製品に関連する誤りを低減するように努められる。
【0087】
同様に、製薬業者から患者への用量投与に至るまでの供給連鎖のいずれか一箇所以上における供給連鎖特性の改善を目的とした在庫に関する解析を行ったところ、図5に示す当事者の一種以上が解析上興味を惹くということも考えられる。例えば協業システム 305 が提供するデータを、往復時間、用量の使用量(スループット)、サイクル時間などに関した解析に使うことができる。さらに種々のデータ源からの提供された情報を、用量の最適な原材料に関する解析に供することもできる。例えば薬局ワークフロー管理手段 514 が、協業システム 305 からのデータを解析したことに基づいて、薬局内で用量を製造するのが効率的であるのか、あるいは例えば外部業者から既製の用量を買ったほうが効率的であるのかを判断できる。さらに用量払出機 516 の責任者たる当事者が、協業システム 305 から取得したデータを利用して、用量払出機から製品が横流しされているかどうかを判断することもできるのである。
【0088】
こうして協業システム 305 により提供されたデータに含まれた多数の価値あるパラメータを活用することで、データ解析中に有益な洞察を得ることができる。特に、医療情報を匿名化(de-identifying)しつつも、医療情報の種々の部分を所与の患者へと紐づける能力は保っておけるという構成によって、患者指定の解析も着手可能となるのである。こうした構成は、特定の患者への用量の投与に関する洞察を得る上で有益と言える。例えば調剤指示受付から用量の投与までの間に起きた遅れを、特定の患者について精査できるわけである。また、製剤の種類、製剤の投与経路、用量に関連する看護単位、または一般的な設備についてさえ、相関を作成可能である。これはつまり、こうした種々のパラメータに関する測定基準を、調剤指示から投与までの間に発生する遅れと関連して精査することによって、調製工程と患者への投与工程に関する効率を高められるということである。また至急のまたは「STAT」な用量は、緊急事態などの特定の場合において患者への治療効果が一刻を争うものである。こうした理解の下で、上述した構成が特にそのような至急のまたは「STAT」な用量にとって有益となりうることがわかるだろう。
【0089】
図面と上述した明細書において本発明を詳細に示し記載してきたが、それら図面と明細書はあくまで例示であって、その性質上限定的なものでは無い。例えば上述した実施形態群は、他に記載している実施形態群と組み合わせてもよいのであるし、および/または他の手法を以って編成してもよい(工程の要素群を、別の順番で行ってもよい、など)。つまりあくまで好ましい実施形態とその変形例のみが示されているのであって、あらゆる変形と改変は保護を望む本発明の精髄の範疇に入るということを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調剤に関する情報の交換をするためのシステムであって、前記システムが、
複数箇所の保健施設と通信するよう機能でき、且つ前記複数箇所の保健施設から、前記複数箇所の保健施設において調製された複数の調剤に関連する情報を受信するように構成されるデータ記憶装置と、
前記データ記憶装置と通信するよう機能できる、プロセッサ
を含み、
ここで前記データ記憶装置は、
(i) 前記複数の調剤の各々について、患者識別情報を削除した改訂版データ記録を格納する、共有可能データ部と、
(ii) 前記複数の調剤の各々について、前記患者識別情報を含んだデータ記録を同期して格納する、バックアップデータ部と
を含み、前記共有可能データ部が、第一のアクセス制御を有するように構成され、且つ、前記バックアップデータ部は、前記共有可能データ部と前記バックアップデータ部とのあいだのクロスアクセスを抑止するための、異なる第二のアクセス制御を有するように構成され
前記プロセッサが、
前記複数箇所の保健施設から前記複数の調剤に関する情報が受信された際に、前記患者識別情報に暗号化処理を施すことで、一意のハッシュ値を生成すること、
前記患者識別情報に代えて前記一意のハッシュ値を含むようにした改訂版データ記録を生成することと、
前記改訂版データ記録を、前記共有可能データ部に格納することと
を行うように構成される
ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記複数箇所の保健施設から前記複数の調剤に関する情報が受信された際に、前記暗号化処理を行う、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
さらに
前記データ記憶装置と通信するよう機能できる、協業モジュール
を含み、前記協業モジュールが、
前記第一のアクセス制御を用いて、前記共有可能データ部にアクセスすること、
前記共有可能データ部からデータを抽出すること、
抽出したデータを、第三の保健施設若しくは第三者により指定される所定の動作要件に少なくとも一部は基づくデータ形式に変換すること、
形式を整えたデータを、前記データ記憶装置から遠隔にアクセス可能な、遠隔アクセス可能データ格納拠点にロードすること
を行うように構成される
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第三の保健施設若しくは前記第三者が、前記遠隔アクセス可能データ格納拠点から前記形式を整えたデータに遠隔にアクセスすることで、前記第三の保健施設若しくは前記第三者が、前記第三の保健施設において前記形式を整えたデータを使用できる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記患者識別情報が、少なくとも患者の識別子を含んだ保護されるべき医療情報(PHI)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記一意のハッシュ値が、一意識別子を含み、
前記一意識別子が、患者に関する情報のうちの一種以上の部分に紐づけられ、且つその患者に関する識別情報を提示するものでは無い
ことを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記一意識別子が、前記患者の識別子に暗号化処理を適用することで生成される第一の一意のハッシュ値を含むことを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記共有可能データ部に格納される前記改訂版データ記録を作成するための、前記データ記憶装置の一部である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記データ記憶装置において受信れ前記共有可能データ部に格納される前記改訂版データ記録を作成するために、前記複数箇所の保健施設に設置されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記一意のハッシュ値が、前記患者の識別子に基づいた、決定論的かつ不可逆な値を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記バックアップデータ部が、
前記複数箇所の保健施設から受信される前記複数の調剤に関する情報のうちの少なくとも一部に対応した前記患者識別情報を含んだ完全版データ記
含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記バックアップデータ部および前記共有可能データ部が、前記データ記憶装置上で別々にアクセス可能なものである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
記共有可能データ部へのアクセスに適用される複数のセキュリティレイヤーに基づいて、複数のユーザーに対し、前記共有可能データ部への選択的且つセキュアなアクセスを提供するための、協業モジュールをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
ータ形式が、複数のユーザーによりアクセス可能な標準化されたデータ形式を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
ータ形式が、複数種の別個のデータ形式を含み、
前記複数種の別個のデータ形式のうちの各々が、複数のユーザーのうちの対応する各々によりアクセス可能である
ことを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記データ記憶装置が、前記複数箇所の保健施設から離れて位置するデータ格納サーバーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記データ記憶装置が、別の複数の地理的拠点に分散した複数のミラーリングデータサーバーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の調剤に関する情報が、患者へ投与されることになる複数の調剤のための調剤指示の受信に応じて作成される調剤指示記録を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
さらに
遠隔アクセス可能データ格納拠点と通信するよう機能でき、整形されたデータを取得するための解析モジュール
を含み、
前記解析モジュールが、第一の患者へ投与されるための第一の調剤に関する情報に対して一種以上の解析を行いつつ、且つ前記第一の患者の身元識別は行わないように機能できる
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記一種以上の解析が、誤り解析、在庫管理、または供給連鎖管理のうちの一種以上を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記複数の調剤に関する情報が、前記データ記憶装置において、前記複数箇所の保健施設の各々の持つローカルデータポリシーに則って受信される、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
調剤に関する共有可能な情報を作成するための方法であって、
複数箇所の保健施設から、前記複数箇所の保健施設において調製された複数の調剤に関する情報を受信するステップと、
前記情報を、患者識別情報を含んだ、前記複数の調剤の各々についてのデータ記録の形式で、データ記憶装置上にバックアップデータ部として保存するステップと、
前記情報を、前記複数の調剤の各々に対応する改訂版データ記録の形態として、データ記憶装置上に共有可能データ部として保存するステップであって、ここで前記改訂版データ記録からは患者識別情報が削除されているステップと、
前記共有可能データ部に対して第一のアクセス制御を構成し、且つ、前記バックアップデータ部に対して異なる第二のアクセス制御を構成して、前記共有可能データ部と前記バックアップデータ部とのあいだのクロスアクセスを抑止するステップと、
前記情報を前記共有可能データ部として保存するのに先立って、プロセッサにより、前記複数箇所の保健施設から前記複数の調剤に関する情報が受信された際に、前記患者識別情報に暗号化処理を施すことで、一意のハッシュ値を生成するステップと、
前記プロセッサにより、前記改訂版データ記録の各々に対し、前記患者識別情報に代えて一意のハッシュ値を保存するステップと、
前記プロセッサにより、前記改訂版データ記録を、遠隔のアクセス可能な格納拠点へとロードすることで、前記格納拠点から離れたユーザーによるアクセスに供するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項23】
前記患者識別情報が、少なくとも患者識別子を含んだ保護されるべき医療情報(PHI)を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第一の一意のハッシュ値が、第一の患者に対応する一意識別子を含み、
前記一意識別子は、前第一の患者に関して身元を割る能力は提供しない、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
保存するステップがさらに
患者の識別子に対して前記暗号化処理を適用するステップに応じて一意識別子を生成するステッ
を含む
ことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
さらに
複数のユーザーに対し、前記改訂版データ記録への選択的且つセキュアなアクセスを提供するステップ
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
整形するステップが、
前記改訂版データ記録を、複数のユーザーがアクセス可能な標準化形式へと整形するステップ
を含むことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
整形するステップが、
前記改訂版データ記録を、複数の異なる形式へと整形するステップ
を含み、
ここで前記複数の異なる形式のうちの各々が、複数のユーザーのうちの対応する各々によりアクセス可能なものである
ことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
さら
与されることになる複数の調剤についての調剤指示を受信したことに応じた調剤指示記録を含んだ、前記複数の調剤に関する情報を作成するステップ
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
さらに
前記格納拠点にアクセスして、整形したデータを取得するステップと、
第一の患者に投与するための第一の調剤に関する情を解析しつつ、前記第一の患者の身元は解析しないステップと
を含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
解析するステップが、
誤り解析、在庫管理、または供給連鎖管理のうちの一種以上
を含む、請求項30に記載の方法
【請求項32】
前記複数の調剤に関する情報を受信するステップが、前記複数箇所の保健施設の各々の持つローカルデータポリシーに少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記複数の調剤に関する情報を受信するステップが、
第一の患者への投与のために第一の保健施設で調製された第一の調剤に関する第一の情報を、前記第一の保健施設から受信するステップ
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の調剤に関する情報を受信するステップがさらに、
第二の患者への投与のために第二の保健施設で調製された第二の調剤に関する第二の情報を、前記第二の保健施設から受信するステップ
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記格納拠点から離れたユーザーが、第三者に関係する者である、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
さらに
前記プロセッサにより、前記改訂版データ記録を、第三者の所定の動作要件に対応する形式に合わせて整形するステップ
を含む、請求項22に記載の方法。
【外国語明細書】