(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026640
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】医師間の相談のための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20240220BHJP
【FI】
G16H50/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000935
(22)【出願日】2024-01-08
(62)【分割の表示】P 2020145514の分割
【原出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】520156177
【氏名又は名称】株式会社Medii
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕揮
(57)【要約】
【課題】医師間の相談のための方法において、患者の主治医が信頼できる専門医から知見を補うことを可能とする。
【解決手段】装置100が、患者の主治医が用いる第1の端末110に対し、チャットルーム作成画面表示情報を送信する(S301)。主治医がチャットルーム作成画面400に相談内容等の必要な入力を行い、第1の端末110は、チャットルーム作成要求を送信する(S302)。装置100は、当該要求に含まれる診療科の識別子に応じて、主治医の相談に対する回答に適した医師をデータベース104に記憶された医師情報を参照して選定する(S303)。装置100は、選定された1又は複数の医師のうちの少なくとも一部に対し、相談に対する回答の打診を送信する(S304)。いずれかの医師が用いる第2の端末120より当該相談に回答する旨の通知を受信した後(S305)、装置100はチャットルームを生成する(S306)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医師間の相談のための方法であって、
第1の医師が用いる第1の端末から、相談に関する診療科の識別子を受信するステップと、
前記識別子が、前記第1の医師の1又は複数の専門科の識別子のうちのいずれかと一致するか否かを判定するステップと、
前記判定の結果に応じて、前記相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定するステップと
を含むことを特徴とする。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記第1の医師の前記1又は複数の専門科の識別子は、前記受信の前に、前記第1の端末から受信して記憶されていることを特徴とする。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記選定は、前記判定の結果が一致である場合、専門科が前記識別子により識別される診療科と同一であること、及び、前記第1の医師の経験年数よりも経験年数が長いことを条件とすることを特徴とする。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記選定された前記1又は複数の医師のうちの少なくとも一部が用いる1又は複数の端末に対し、経験年数の短い順に、前記相談に対する回答の打診を送信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記選定は、前記判定の結果が不一致である場合、専門科又は対応可能科が前記識別子により識別される診療科と同一であること、及び、経験年数が所定の年数よりも長いことを条件とすることを特徴とする。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記所定の年数は、専門科の経験年数が3年目であることを特徴とする。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の方法であって、
前記選定された前記1又は複数の医師のうちの少なくとも一部が用いる1又は複数の端末に対し、専門科の経験年数の短い順に、前記相談に対する回答の打診を送信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の方法であって、
前記選定された前記1又は複数の医師のうちの少なくとも一部が用いる1又は複数の端末に対し、専門科が前記識別子により識別される診療科と同一である1又は複数の医師の少なくとも一部に対する送信の後に、対応可能科の経験年数の短い順に、前記相談に対する回答の打診を送信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項9】
請求項4、7又は8に記載の方法であって、
前記選定された前記1又は複数の医師のうちのいずれかの医師が用いる端末から、前記打診の対象である前記相談に回答する旨の通知を受信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記通知の受信に応じて、それ以降の前記打診の送信を停止するステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、
前記通知の受信に応じて、前記第1の医師と前記通知を送信した端末を用いる医師との間の双方向にデータを送信可能な接続関係を生成するステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、
前記第1の医師と前記通知を送信した端末を用いる医師との間のつながりを形成するステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の方法であって、
前記第1の端末から、前記相談の内容を受信するステップと、
前記診療科又は前記内容に応じて、前記第1の端末に対し、前記相談に回答する医師に提供すべき情報の確認を促す確認要求を送信するステップと
をさらに含むことを特徴とする。
【請求項14】
コンピュータに、医師間の相談のための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
第1の医師が用いる第1の端末から、相談に関する診療科の識別子を受信するステップと、
前記識別子が、前記第1の医師の1又は複数の専門科の識別子のうちのいずれかと一致するか否かを判定するステップと、
前記判定の結果に応じて、前記相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定するステップと
を含むことを特徴とする。
【請求項15】
医師間の相談のための装置であって、
第1の医師が用いる第1の端末から、相談に関する診療科の識別子を受信して、前記識別子が、前記第1の医師の1又は複数の専門科の識別子のうちのいずれかと一致するか否かを判定し、
前記判定の結果に応じて、前記相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師間の相談のための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日の医療は、さまざまな分野に専門分化した専門医がそれぞれの役割を担うことで提供されている。たとえば、総合内科、血液内科、神経内科、腎臓内科、外科、産婦人科、小児科、泌尿器科、整形外科、耳鼻科、精神科、リウマチ科、感染症内科等の専門分野が挙げられる。
【0003】
規模の大きい病院は、こうしたさまざまな分野の専門医を採用し、どのような患者に対しても必要な医療の提供を可能としているが、必ずしもすべての病院がこのような体制を整えることができるわけではない。
【0004】
そこで、自らに不足する知見を補うためにオンラインで医師間で相談をすることのできるサービスが考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のとおり、今日の医療は専門分化が進んでいることから、適切な専門性を有する医師に質問できるか否かが相談によって知見を補いたい医師にとっては重要であり、医師間で相談をすることができる場があるのみでは問題は解決しない。患者の主治医が目の前の患者に適切な医療を提供するために、相談に対する回答結果の信頼性が求められるのである。
【0006】
この問題は、必要な専門医を揃えることのできる病院は都心に集中していることから、地方でより深刻である。地方では、各地域に必要な専門医が不足し、都心と地方で医療格差が大きい。例として、リウマチ科及び感染症内科は、たとえば我が国では人口10万人当たりの医師数が1人を下回っており、著しく不足している。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、医師間の相談のための装置、方法及びそのためのプログラムにおいて、患者の主治医が、自ら勤務する病院を越えて信頼できる専門医から知見を補うことを可能とすることにある。
【0008】
なお、本明細書において「専門医」とは、専門とする診療科(以下「専門科」)を有する医師を意味し、具体的には、専門科に属する医師が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、医師間の相談のための方法であって、第1の医師が用いる第1の端末から、相談に関する診療科の識別子を受信するステップと、前記識別子が、前記第1の医師の1又は複数の専門科の識別子のうちのいずれかと一致するか否かを判定するステップと、前記判定の結果に応じて、前記相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定するステップとを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様であって、前記第1の医師の前記1又は複数の専門科の識別子は、前記受信の前に、前記第1の端末から受信して記憶されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様であって、前記選定は、前記判定の結果が一致である場合、専門科が前記識別子により識別される診療科と同一であること、及び、前記第1の医師の経験年数よりも経験年数が長いことを条件とすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第4の態様は、第3の態様であって、前記選定された前記1又は複数の医師のうちの少なくとも一部が用いる1又は複数の端末に対し、経験年数の短い順に、前記相談に対する回答の打診を送信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第5の態様は、第1又は第2の態様であって、前記選定は、前記判定の結果が不一致である場合、専門科又は対応可能科が前記識別子により識別される診療科と同一であること、及び、経験年数が所定の年数よりも長いことを条件とすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第6の態様は、第5の態様であって、前記所定の年数は、専門科の経験年数が3年目であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第7の態様は、第5又は6の態様であって、前記選定された前記1又は複数の医師のうちの少なくとも一部が用いる1又は複数の端末に対し、専門科の経験年数の短い順に、前記相談に対する回答の打診を送信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第8の態様は、第5又は6の態様であって、前記選定された前記1又は複数の医師のうちの少なくとも一部が用いる1又は複数の端末に対し、専門科が前記識別子により識別される診療科と同一である1又は複数の医師の少なくとも一部に対する送信の後に、対応可能科の経験年数の短い順に、前記相談に対する回答の打診を送信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第9の態様は、第4、第7及び第8の態様であって、前記選定された前記1又は複数の医師のうちのいずれかの医師が用いる端末から、前記打診の対象である前記相談に回答する旨の通知を受信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第10の態様は、第9の態様であって、前記通知の受信に応じて、それ以降の前記打診の送信を停止するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第11の態様は、第9の態様であって、前記通知の受信に応じて、前記第1の医師と前記通知を送信した端末を用いる医師との間の双方向にデータを送信可能な接続関係を生成するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第12の態様は、第9の態様であって、前記第1の医師と前記通知を送信した端末を用いる医師との間のつながりを形成するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第13の態様は、第1から第12のいずれかの態様であって、前記第1の端末から、前記相談の内容を受信するステップと、前記診療科又は前記内容に応じて、前記第1の端末に対し、前記相談に回答する医師に提供すべき情報の確認を促す確認要求を送信するステップとをさらに含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第14の態様は、コンピュータに、医師間の相談のための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、第1の医師が用いる第1の端末から、相談に関する診療科の識別子を受信するステップと、前記識別子が、前記第1の医師の1又は複数の専門科の識別子のうちのいずれかと一致するか否かを判定するステップと、前記判定の結果に応じて、前記相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定するステップとを含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第15の態様は、医師間の相談のための装置であって、第1の医師が用いる第1の端末から、相談に関する診療科の識別子を受信して、前記識別子が、前記第1の医師の1又は複数の専門科の識別子のうちのいずれかと一致するか否かを判定し、前記判定の結果に応じて、前記相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、患者の主治医が相談したい診療科を当該主治医が用いる第1の端末から入力し、当該診療科の識別子に応じて、装置が当該主治医の相談に対する回答に適した1又は複数の専門医を選定することによって、当該装置が当該主治医と当該選定された1又は複数の専門科のうちのいずれかとの間での相談のための接続関係を生成することができ、当該主治医は、自ら勤務する病院を越えて、当該装置に医師情報が記憶された専門医の中から適切な医師に相談し、患者に対する医療提供に必要な知見を補うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる医師間の相談のための装置を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態において登録された専門医の医師情報の一例である。
【
図3】本発明の第1の実施形態にかかる医師間で相談をするための方法の流れ図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態にかかるチャットルーム作成画面の一例である。
【
図5】本発明の第2の実施形態にかかる相談に回答する医師を決定するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1に本発明の第1の実施形態にかかる医師間の相談のための装置を示す。装置100は、患者に対する医療提供のために自らに不足する知見を補うことを希望する当該患者の主治医が用いる第1の端末110、及び、専門的な知見を提供することを希望する専門医が用いる第2の端末120とIPネットワーク等のコンピュータネットワークを介して通信する。
図1では、簡単のため、第1の端末110及び第2の端末120をそれぞれ1台のみ図示しているが、実際には、複数の主治医及び専門医が装置100と通信可能である。
【0028】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、各処理を行うためのプログラムを実行することによって構成することができる。装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。また当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からアクセス可能なデータベース等の記憶媒体104に記憶しておき、処理部102において実行することができる。以下でデータベース等の記憶媒体104に記憶されるものとして記述されるデータは、その全部又は一部を記憶部103に記憶してもよいことを付言する。
【0029】
データベース104には、専門医に関する医師情報が記憶される。医師情報は、医師の名前に加えて、1又は複数の専門科又はその識別子を含む。また、医師情報は、経験年数、又は、経験年数の起算日若しくは起算日を含む年等の起算点を含む。経験年数は、一例として卒後年数又は医師資格取得後の年数により定めることができ、起算日を含む年は、例として、卒業年又は医師資格取得年とすることができる。経験期間を月数で表現することも考えられるが、これは小数点以下一桁以上の年数に換算可能であれば、経験年数と同義である。医師情報は、各専門医が自らの端末を用いて装置100によって提供される画面上で入力することによって記憶可能である。各医師の専門科は、各医師が自らの専門科として選択したものをそのまま採用する場合と、装置100によって承認された後に、又は装置100によって提供される医師間の相談のためのサービスの運営者によって承認された後に採用する場合が挙げられる。
【0030】
図2に、本発明の第1の実施形態において登録された専門医の医師情報の一例を示す。ここでは、専門医の医師情報が「専門医プロフィール」として表示される例を示している。
図2の例では、名前201として「山田太郎」、起算点202として「1991年」、専門科203として「総合内科」が医師情報に含まれる。さらに、この例では、「対応可能科」204として「放射線診断科 ICU/集中治療科 皮膚科」、診断歴205として肺癌等が医師情報に含まれている。起算点202についてはさまざまな表記が考えられる。専門科203、対応可能科204及び診断歴205については、それぞれに対応する識別子を記憶することも考えられる。診断歴205については更に、各疾患を診断した回数又はそれに対応する保険点数を記憶することが可能である。
【0031】
図2は、専門医の医師情報を表示するものであるが、患者の主治医についても、装置100によって提供される医師間相談サービスを利用するために、医師情報の入力を行う。入力すべき医師情報は、専門医の医師情報と同様であり、名前、経験年数又はその起算点、及び1又は複数の専門科又はその識別子を含む。ある患者についての相談においては相談をする医師も、別の患者の相談においては相談を受ける医師となり得る。
【0032】
図3は、本発明の第1の実施形態にかかる医師間で相談をするための方法の流れ図である。まず、装置100が、患者に対する医療提供のために自らに不足する知見を補うことを希望する当該患者の主治医が用いる第1の端末110に対し、相談のためのチャットルームの作成画面を表示するためのチャットルーム作成画面表示情報を送信する(S301)。ここで、本明細書においては「チャットルーム」という表現を例として用いるが、より一般に、双方向にテキストデータ、さらに必要に応じて画像データ、動画データ等の相談に関するデータを送信可能な接続関係を生成することができればよく、「チャットルーム作成画面」はより一般的には「接続関係生成画面」の一例である。チャットルームは権限付与された医師のみがデータの受信が可能に非公開とすることができ、医師間が非公開のチャット形式でやりとりをすることによって、公開された掲示板形式で第三者も閲覧可能な場合と比較して、主治医は第三者の視線を気にすることなく、専門医に相談をしやすくなる利点がある。
【0033】
チャットルーム作成画面表示情報によって第1の端末110の表示画面に表示されるチャットルーム作成画面の一例を
図4に示す。チャットルーム作成画面400は、相談したい診療科401の入力欄を有し、さらに相談内容を記述した相談文402の入力欄を有することができる。さらに、チャットルーム作成画面400は、必要に応じてチャットルームの名称403及び患者背景404の入力欄を有する。診療科401の入力欄は、一例として、プルダウンメニューとすることができ、第1の端末110を用いる医師が自らが相談したい内容に合致する診療科を選択すればよい。
図4では、皮膚科を選択した状態を示している。
【0034】
主治医がチャットルーム作成画面400に必要な入力を行い、必要に応じて「相談する」ボタン405をクリック又はタップにより選択した後に、第1の端末110は、装置100に対し、チャットルーム作成要求を送信する(S302)。
【0035】
チャットルーム作成要求を受信した装置100は、チャットルーム作成要求に含まれる診療科の識別子に応じて、主治医の相談に対する回答に適した1又は複数の医師を、データベース104に記憶された医師情報を参照して選定する(S303)。医師選定の詳細については、第2の実施形態において後述する。
【0036】
装置100は、選定された1又は複数の医師のうちの少なくとも一部に対し、チャットルーム作成要求に含まれる相談文により記述される相談に対する回答の打診を送信する(S304)。いずれかの医師が用いる第2の端末120より、装置100が当該相談に回答する旨の通知を受信した後(S305)、装置100は、第1の端末110及び第2の端末120から、第1の端末110を用いる主治医及び第2の端末120を用いる専門医がそれぞれ相談に関するデータを送信可能なチャットルームを生成する(S306)。回答の打診は、第1の医師の実名を含むことなく、匿名とすることができる。匿名とすることによって、心理的障壁が下がり、相談を行いやすくなる。また、生成されたチャットルームあるいは接続関係においても、第1の医師の実名を表示又は通知することなく、匿名とすることができる。
【0037】
このように、本発明の一実施形態において、患者の主治医が相談したい診療科を当該主治医が用いる第1の端末110から入力し、当該診療科の識別子に応じて装置100が当該主治医の相談に対する回答に適した1又は複数の専門医を選定し、いずれかの専門医が当該相談に回答する旨を当該専門医が用いる第2の端末120から装置100に通知することによって、装置100が当該主治医と当該専門医との間での相談のためのチャットルームを生成することで、当該主治医は、自ら勤務する病院を越えて、装置100に医師情報が記憶された専門医の中から適切な医師に相談し、患者に対する医療提供に必要な知見を補うことが可能となる。
【0038】
上述の説明では、装置100が選定した1又は複数の医師のうちの少なくとも一部に、主治医の相談に対する回答の打診を送信したが(S304)、装置100が選定した1又は複数の医師のうちの少なくとも一部を表示画面に表示させるための選定結果表示情報を主治医が用いる第1の端末110に送信し、当該選定結果表示情報により表示される医師の中から主治医が指定したいずれかの医師に、回答の打診を送信するようにしてもよい。
【0039】
また、上述の説明では、医師選定は、チャットルーム生成要求を装置100が受信することに応じて、チャットルームの生成に伴って行われたが、主治医が用いる第1の端末110から相談に関する診療科の識別子を受信できれば、チャットルームの生成とは独立して行うことが可能である。一例として、主治医が相談に関する診療科を入力して、相談可能な医師を検索するための検索画面を提供することが考えられる。この場合、検索結果として表示する医師の選定が行われる。
【0040】
なお、「のみに基づいて」、「のみに応じて」、「のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0041】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0042】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において、装置100は、相談に関する診療科の識別子に応じて、主治医の相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定するが(S303)、本発明の第2の実施形態においては、装置100は、さらに各医師の経験年数に応じて、回答に適した1又は複数の医師を選定する。
【0043】
まず、装置100は、第1の医師が用いる第1の端末110から、相談に関する診療科の識別子を受信する(S501)。装置100は、第1の医師の識別子に基づいて医師情報を参照して、第1の医師の1又は複数の専門科の識別子を取得し、受信した識別子が、当該1又は複数の専門科の識別子のいずれかと一致するか否かを判定する(S502)。ここでは、第1の医師の1又は複数の専門科の識別子が、相談に関する診療科の識別子の受信の前に、第1の医師が用いる第1の端末110から受信して記憶されていることを前提としたが、相談に関する診療科の識別子と同時に又はその前後に、第1の医師の1又は複数の専門科の識別子を受信することも考えられる。
【0044】
判定の結果が一致である場合、医師選定は、一例として、専門科が相談に関する診療科の識別子により識別される診療科と同一であること、及び、経験年数が相談者である第1の医師の経験年数以上である又は第1の医師の経験年数を越えることを条件として行う。換言すれば、主治医が自らの専門科について相談をする場合には、比較的経験年数の長い医師を選定する(S503-1)。
【0045】
たとえば、以下の医師A乃至Cが医師情報に含まれ、皮膚科を専門科とする主治医の皮膚科に関する相談に対する回答に適した医師を選定する場合、主治医の経験年数が2年目であると仮定したとき、医師B及びCが選定される。
医師A:(専門:精神科, 対応可能科:皮膚科, 経験年数:5年目)
医師B:(専門:皮膚科, 対応可能科: , 経験年数:3年目)
医師C:(専門:皮膚科, 対応可能科: , 経験年数:9年目)
【0046】
判定の結果が不一致である場合、医師選定は、一例として、専門科又は対応可能科が相談に関する診療科の識別子により識別される診療科と同一であること、及び、経験年数が所定の年数以上である又は所定の年数を越えることを条件として行う。換言すれば、主治医が自らの専門科以外の診療科について相談をする場合には、比較的経験年数の短い医師を選定する(S503-2)。これは、主治医が自らの専門科以外の診療科について知見を補うためには、必ずしも当該診療科を専門科とする経験の長い医師に限定する必要はなく、医師としての経験がたとえば3年目以上の比較的若手の医師であっても、十分に信頼性ある知見を提供することが可能であるという発明者らの理解に基づくものである。加えて、若手の医師は、専門医としての成長意欲が高いことから、こうした相談に対して積極的に回答する可能性も高いことも、上記医師選定アルゴリズムが好ましい理由である。
【0047】
また、主治医が自らの専門科以外の診療科について知見を補うためには、必ずしも当該診療科を専門科とする医師に限定せず、当該診療科を対応可能科とする医師まで広げて医師選定を行うことも考えられる。この場合、当該診療科を対応可能科とする医師の経験年数としては、当該診療科を専門科とする医師と同一の所定年数とすることのほか、当該診療科を専門科とする医師よりも長い所定年数とすることが考えられる。後者は、選定対象の医師を広げて相談に対する回答が得られる確率を高めつつ、回答の信頼性を維持又は向上するために好ましい。
【0048】
たとえば、以下の医師A乃至Dが医師情報に含まれ、麻酔科を専門科とする主治医の皮膚科に関する相談に対する回答に適した医師を選定する場合、所定の経験年数を3年目とし、経験年数が当該所定の年数よりも長いことを条件としたとき、医師Dが選定され、加えて医師A及びBが選定される。
医師A:(専門:精神科, 対応可能科:皮膚科, 経験年数:5年目)
医師B:(専門:精神科, 対応可能科:皮膚科, 経験年数:11年目)
医師C:(専門:皮膚科, 対応可能科: , 経験年数:3年目)
医師D:(専門:皮膚科, 対応可能科: , 経験年数:9年目)
【0049】
次いで、装置100は、選定された1又は複数の医師のうちの少なくとも一部が用いる1又は複数の端末に対し、相談に対する回答の打診を送信する(S504)。ここで、打診の送信は、一例として、経験年数の短い順に行う。より具体的には、経験年数の短い順に所定の順位又は所定の経験年数までの1又は複数の医師に対して打診の送信を行う。
【0050】
たとえば、経験年数3年目以上5年目以下、6年目以上10年目以下、11年目以上15年目以下、16年目以上25年目以下、26年目以上といった経験年数の単位で、経験年数の短い順に打診の送信を行うことが考えられる。別の例として、経験年数を3年目以上4年目以下、5年目以上9年目以下、10年目以上14年目以下、15年目以上24年目以下、25年目以上といった単位に区分することが考えられ、各単位の上限及び下限は、1つ目の例の値を適宜組み合わせてもよい。
【0051】
さらに別の例として、上記判定の結果が不一致である場合、専門科が相談に関する診療科の識別子により識別される診療科と同一である1又は複数の医師の少なくとも一部に対して打診を送信した後に、対応可能科が相談に関する診療科の識別子により識別される診療科と同一である1又は複数の医師の少なくとも一部に対して打診を送信することが考えられる。
【0052】
そして、装置100が、打診が送信されたいずれかの医師が用いる第2の端末から、打診の対象である相談に回答する旨の通知を受信した場合(S505)、回答する医師の決定は終了し、打診の送信を終了してよい。
【0053】
所定の間隔が経過しても上記通知が受信されない場合(S505)、再度打診の送信が行ってもよい。この場合、選定された1又は複数の医師のうち既に打診の送信がなされた医師は除いて、経験年数の短い順に送信することが好ましい。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、相談に関する診療科の識別子に加えて、各医師の経験年数に基づいて、当該相談に対して回答を行う医師を決定することによって、回答の信頼性を損なうおそれを抑制しつつ、回答が得られる確率を高めることができる。
【0055】
本実施形態においてさらに、質問を行う主治医と当該質問に対して回答する専門医との間に装置100が提供するサービス内でのつながりを形成してもよい。たとえば、第1の実施形態において説明した接続関係の中で一方がつながりの申請を送信し、他方がそれを承諾することによって、つながりを形成することができる。また、接続関係の生成がなされたことに基づいて、つながりを形成することも考えられる。
【0056】
上述の説明では、装置100が選定した1又は複数の医師のうちの少なくとも一部に、主治医の相談に対する回答の打診を送信したが(S504)、装置100が選定した1又は複数の医師のうちの少なくとも一部を主治医が用いる第1の端末110の表示画面に表示させ、主治医が指定したいずれかの医師に、回答の打診を送信するようにしてもよい。
【0057】
また、上述の説明では、判定の結果が一致である場合、医師選定は、経験年数が相談者である第1の医師の経験年数以上である又は第1の医師の経験年数を越えることを条件の一部として行うこととしたが、当該条件に合致する医師が医師情報に記憶されていない場合、一例として、経験年数が15年以上又は16年以上であることを代替条件として医師情報を参照し、医師を選定してもよい。自分よりは経験が長くなくとも、比較的経験の長い医師であれば回答の信頼性が高いからである。
【0058】
また、
図5において示される「開始」及び「終了」は、一例を示すものに過ぎず、本実施形態にかかる方法がS501によって必ず開始され、S505によって必ず終了することを意味するものではない。
【0059】
(第3の実施形態)
装置100は、主治医が用いる第1の端末110から、相談したい診療科401又はその識別子、相談内容を記述した相談文402、そして必要に応じて患者背景404を受信するが、多くの場合、専門医が十分な知見を提供するために必要な患者情報が含まれていない。そこで、装置100は、第1の端末110から受信した情報に応じて、専門医に提供すべき情報の確認を促す確認要求を送信する。専門医が回答するために必要な情報を当初より提供して、専門医により回答負担を軽減することができる。
【0060】
具体的には、装置100が、受信した診療科の識別子に応じて、データベース104に記憶された相談補助情報を参照して、相談の追加説明の要求を上記確認要求として第1の端末110に送信することが考えられる。また、相談の内容、より具体的には、相談文及び患者背景の少なくとも一方に応じて、データベース104に記憶された相談補助情報を参照して、相談の追加説明の要求を上記確認要求として第1の端末110に送信することが考えられる。相談補助情報は、一例として、主治医と専門医との間の会話の履歴を用いて、テキストマイニング、機械学習等により生成することができる。
【0061】
また、具体例として、装置100が、受信した診療科の識別子又は相談の内容に応じて、データベース104に記憶された相談補助情報を参照して、相談の内容に含まれる相談文の代替案を上記確認要求に含めて第1の端末110に送信することが考えられる。第1の端末110を用いる医師が、確認要求に基づいて表示される代替案を閲覧して相談文を再度入力して修正したり、表示された代替案を選択して相談文を修正したりすることができる。
【符号の説明】
【0062】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
103 データベース(「記憶媒体」に相当)
110 第1の端末
120 第2の端末
201 名前
202 起算点
203 専門科
204 対応可能科
205 診断歴
400 チャットルーム(「接続関係生成画面」に相当)
401 相談したい診療科
402 相談文
403 名称
404 患者背景
405 ボタン
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが行う、医師間の相談のための方法であって、
第1の医師が用いる第1の端末から、相談に関する診療科の第1の識別子を受信するステップと、
前記第1の識別子が、前記第1の医師の1又は複数の専門科の1又は複数の第2の識別子のうちのいずれかと一致するか否かを判定するステップと、
前記判定の結果に応じて、前記相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記第1の医師の1又は複数の前記第2の識別子は、前記受信の前に、前記第1の端末から受信して記憶されている。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記選定された前記1又は複数の医師のうちの少なくとも一部が用いる1又は複数の端末に対し、前記相談に対する回答の打診を送信するステップをさらに含む。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、
前記第1の端末から、前記相談の内容を受信するステップと、
前記診療科又は前記内容に応じて、前記第1の端末に対し、前記内容に追加して、前記相談に回答する医師に提供すべき情報の確認を促す確認要求を送信するステップと
をさらに含む。
【請求項5】
コンピュータに、医師間の相談のための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
第1の医師が用いる第1の端末から、相談に関する診療科の第1の識別子を受信するステップと、
前記第1の識別子が、前記第1の医師の1又は複数の専門科の1又は複数の第2の識別子のうちのいずれかと一致するか否かを判定するステップと、
前記判定の結果に応じて、前記相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定するステップと
を含む。
【請求項6】
医師間の相談のための装置であって、
第1の医師が用いる第1の端末から、相談に関する診療科の第1の識別子を受信して、前記第1の識別子が、前記第1の医師の1又は複数の専門科の1又は複数の第2の識別子のうちのいずれかと一致するか否かを判定し、
前記判定の結果に応じて、前記相談に対する回答に適した1又は複数の医師を選定するように構成されている。