(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026645
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】病原体減少血小板組成物および関連方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/078 20100101AFI20240220BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240220BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240220BHJP
C12N 1/06 20060101ALI20240220BHJP
A61K 35/19 20150101ALN20240220BHJP
【FI】
C12N5/078
C12N1/00 G
C12N5/0783
C12N1/06
A61K35/19
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001004
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2020534584の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】62/608,498
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516197160
【氏名又は名称】クック リージェンテック エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】COOK REGENTEC LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】シャルルボワ, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】スリードハー, ティルマラ
(57)【要約】
【課題】実行しやすく、病原体のレベルを効果的に減らし、有益な生物学的活性を保持する処理された材料を提供するようにした、病原体減少血小板組成物を作る方法を提供する。
【解決手段】電子ビーム放射線で血小板組成物(例えば、血小板濃縮物および/または血小板溶解物)を処理するための方法が開示される。ここで、組成物は、電子ビーム放射線の照射中に凍結状態にある。この方法は、組成物の非常に有益な生物活性を保持しながら、該組成物の病原体含有量を減少させるのに有効な線量で電子ビーム放射線を照射することができる。この方法により調製可能な組成物、ならびに電子ビーム処理された材料の使用を含む方法および組成物も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板濃縮物または血小板溶解物を含む凍結組成物の第1面、および該第1面の反対側の該凍結組成物の第2面に、5~15MeVのエネルギーレベルを有する60~100kGyの電子ビーム放射線を照射することを含み、該凍結組成物の該第1面と該第2面との間の最大厚さが5cmである、病原体減少血小板組成物を作る方法。
【請求項2】
該組成物が血小板濃縮物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該組成物が血小板溶解物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該照射の後に、該血小板濃縮物の血小板を溶解して血小板溶解物を形成することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該組成物は、血小板溶解物を含み、非溶解血小板を本質的に含まない、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該照射が、60~70kGyの電子ビーム放射線を該凍結組成物に照射するように行われる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該照射の間に、該凍結組成物が容器内に保持され、該電子ビーム放射線が該容器を突き抜けて該凍結組成物の中に至るようにされた、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該照射の後に、該組成物が、該照射の前に該組成物中に存在していたFGFb、EGF、PDGF-AB、PDGF-BB、およびTGF-β1の少なくとも1つの初期レベルの少なくとも50%を保持する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該照射が、該組成物中の少なくとも1つのウイルスの少なくとも3対数減少を達成するのに有効な線量の電子ビーム放射線を提供する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該凍結組成物の平均厚さが、0.5cm~5cmの範囲である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該照射の間に該凍結組成物を冷却することをさらに含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
該冷却することは、ドライアイスまたは別の凍結塊から負の熱エネルギーを該凍結組成物に移すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該冷却することは、冷却されたガス状雰囲気から負の熱エネルギーを該凍結組成物に移すことを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
該冷却することは機械的冷凍庫内で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該凍結組成物が3cm以下の平均厚さを有する、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
該電子ビーム放射線が該凍結組成物の第1面に照射され、該照射の方向で該凍結塊が5cm以下の平均厚さを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
該平均厚さが3cm以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該照射が、2:1以下の最大/最小線量比を提供するように行われる、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
該凍結組成物が少なくとも3g/dLの総タンパク質含有量を有する、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
該照射の前に、液体形態の該組成物を保持する変形可能な容器を第1の形状に適合させ、該容器で該組成物を該第1の形状で凍結して該凍結組成物を提供することを含む、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
該凍結組成物が、少なくとも50mlの容量を有する、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
該照射の後に、該凍結組成物を解凍して液体組成物を形成することをさらに含む、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
該解凍の後に、該液体組成物を1つの包装容器または複数の包装容器に移送することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
該移送が、該液体組成物を複数の容器に移送することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
該移送が無菌移送操作である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
該凍結組成物が凍結血小板溶解物を含み、該照射の後に、血小板溶解物が、
少なくとも20ng/mlのレベルのTGF-β1、および/または
少なくとも1000pg/mlのレベルのEGF、および/または
少なくとも50pg/mlのレベルのPDGF-AB、および/または
少なくとも1ng/mlのレベルであるPDGF-BB、
を有する、請求項1乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
該凍結組成物が凍結血小板濃縮物を含み、当該方法が、該照射の後に該血小板濃縮物から第1の血小板溶解物を調製することを含み、該第1の血小板溶解物が、
少なくとも20ng/mlのレベルのTGF-β1、および/または
少なくとも1000pg/mlのレベルのEGF、および/または
少なくとも50pg/mlのレベルのFGFb、および/または
少なくとも10ng/mlのレベルのPDGF-AB、および/または
少なくとも1ng/mlのレベルであるPDGF-BB、
を有する、請求項1乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか一項に記載の方法を使用して調製された血小板溶解物組成物を含む培養培地中で細胞を培養することを含む、細胞を培養する方法。
【請求項29】
該細胞が、免疫細胞、好ましくはT細胞またはNK細胞を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
該照射の間に該凍結組成物を冷却することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年12月20日に提出された米国仮出願第62/608,498号の利益を主張し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、血小板または血小板溶解物などの血小板組成物中の病原体を減少させるのに効果的なプロセスに関し、より具体的には、有益な生物学的活性を保持しながら病原体を減少させるのに有効な条件下でのそのような組成物への放射線照射を含む方法に関する。
【0003】
さらなる背景として、生物学的材料は、研究および医療用途での使用のためにますます使用または研究されている。生物学的材料は、細胞増殖をサポートするのに有益であり、患者に投与すると治療効果が可能な多数の生物活性因子を含んでいるため、多くの用途で望まれるものである。しかしながら、生物学的材料は、その材料のヒトまたは他の動物のドナーに由来する病原体、例えばウイルスを含む可能性があるため、使用におけるリスクもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生物学的材料を処理して病原体のレベルを減少させるために、数多くの技術が研究されてきた。それらの技術は病原体レベルを低下させるものであるが、材料の所望の生物学的活性を低下させる可能性があるという点で問題がある。したがって、実行しやすく、病原体のレベルを効果的に減らし、有益な生物学的活性を保持する処理された材料を提供するようにした、血小板組成物などの生物学的材料中の病原体を減少させる方法が必要とされている。本開示の態様は、これらのニーズに対応するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の態様では、本開示は、血小板濃縮物または血小板溶解物を含む組成物に、それらが凍結状態にある間に、電子ビーム(「eビーム」)放射線を照射することを含む、病原体低減組成物を作製する方法を提供する。この方法は、組成物中の生物活性因子、例えば生物活性成長因子の量を維持しながら、組成物中の病原体のレベルを低下させるのに有効な線量で電子ビーム放射線を照射することを含み得る。この方法は、組成物の1つ以上の成長因子のかなりの割合、例えば50%超を維持しながら、組成物中のウイルスの少なくとも3対数減少(3-Log reduction)を達成するのに有効な線量での電子ビームによる照射により行うことができる。1つ以上の成長因子は、FGFb、EGF、PDGF-AB、PDGF-BBおよび/またはTGF-βを含み得る。特定の実施形態では、この方法は、照射の間に凍結組成物を冷却することを含むこともできる。凍結組成物は、照射の開始時に、約-20℃未満、より好ましくは約-40℃未満の温度であり得るものであり、いくつかの実施形態では、照射の間、そのような温度に維持することができる。
【0006】
他の態様では、本開示は病原体減少血小板溶解物組成物を提供する。病原体減少血小板溶解物組成物は、電子ビーム処理された組成物であり得え、少なくとも50pg/mlのレベルのFGFb、少なくとも1000pg/mlのレベルのEGF、少なくとも10ng/mlのレベルのPDGF-AB、少なくとも1ng/mlのレベルのPDGF-BB、および/または少なくとも20ng/mlのレベルのTGF-βを含む成長因子プロファイルを持つことができる。組成物は、測定可能なレベルの電子ビーム誘発タンパク質修飾を有することができる。例えば、組成物は、所与のタンパク質の断片のレベルおよび/または所与のタンパク質の凝集体のレベルを有することができ、例えば、所与のタンパク質がアルブミンである場合、それは、電子ビーム照射を受けなかった場合を除いて、対応する組成物中に生じるものよりも大きい。
【0007】
他の態様では、本開示は、上記または本明細書の他に記載の病原体減少血小板溶解物組成物の存在下で細胞を培養することを含む、細胞を培養する方法を提供する。本明細書のさらなる態様では、そのような培養細胞は、医学的治療の方法で患者に投与することができる。
【0008】
さらに別の態様では、本開示は、上記または本明細書の他に記載の血小板組成物(例えば、血小板溶解物)を患者に投与することを含む、患者を治療する方法を提供する。
【0009】
本開示の追加の態様、ならびにその特徴および利点は、本明細書の説明から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、血小板組成物に電子ビーム放射線を照射するための方法の一実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、本開示による、包装された病原体減少血小板組成物の一実施形態の斜視図である。
【
図3】
図3は、本明細書に記載されるような血小板溶解物または他の血小板組成物を送達するための液体送達デバイスの一実施形態の斜視図を提供する。
【
図4】
図4は、様々な最小の電子ビーム線量範囲で処理されたHPLが補充された培地におけるASC細胞増殖の比較を示す。A:対照群に対する細胞数を用いた細胞増殖分析;B:対照群に対する割合を用いた細胞増殖分析。データは、ASC細胞増殖が40kGy以上の最小線量範囲で有意に減少したことを示している(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。報告データは、異なるHPLバッチの3つの独立した実験の平均である。
【
図5】
図5は、さまざまな最小線量範囲で処理されたHPLが補充されたBM-MSC細胞成長の比較を示す。A:対照群に対する細胞数を使用した細胞増殖分析 B:対照群に対する割合を使用した細胞増殖分析。データは、ASC細胞の成長が40kGy以上の最小線量範囲で有意に減少したことを示している(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。報告データは、異なるHPLバッチの3つの独立した実験の平均である。
【
図6】
図6はELISAにより測定された、電子ビーム処理されたHPL材料と対照群のHPL材料における5つの成長因子(FGFb、EGF、PDGF-AB、PDGF-BB、およびTGF-β1)のレベルを示す。報告データは、異なるHPLバッチの3つの独立した実験の平均である。
【
図7】
図7は、電子ビーム処理された血小板と電子ビーム処理されたHPLとから処理されたHPLを補充した培地におけるASC細胞増殖の比較を示す。A:対照群に対する細胞数を使用した細胞増殖分析;B:対照群に対する割合を使用した細胞増殖分析。(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。
【
図8】
図8は、電子ビーム処理された血小板と電子ビーム処理されたHPLとから処理されたHPLが補充された培地におけるBM-MSC細胞増殖と、電子ビーム処理されていない対照群との比較を示す。A:対照群に対する細胞数を使用した細胞増殖分析;B:対照群に対する割合を使用した細胞増殖分析(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。
【
図9】
図9は、電子ビーム処理された血小板と電子ビーム処理されたHPLとから処理されたHPLにおける、電子ビーム処理されていない対照群に対する、5つの成長因子(FGFb、EGF、PDGF-AB、PDGF-BB、およびTGF-β)の濃度のELISA測定を示す。報告データは、3つの独立した実験の平均である(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は多くの様々な形態で具現化することができるが、本発明の原理の理解を促進する目的で実施形態を参照し、そのいくつかは図面に示されており、また特定の言語を使って説明されている。しかしながら、それらによって本発明の範囲が限定されるのではない。それら説明されている実施形態の如何なる変更及び更なる修正、並びに本明細書に記載される本発明の原理の如何なるさらなる用途も、本発明が関係する技術分野の当業者が通常思い付くであろうように、予期されるものである。さらに、以下の詳細な説明では、材料の構造または組成、または方法を実行するモードに関連するさまざまな特徴について、多数の代替案が示されている。そのような開示された代替案、またはそのような開示された代替案の組み合わせは、要約で説明した、または以下の実施形態のリストで述べたより一般的な特徴と組み合わせて、追加の開示実施形態を提供できることが理解されよう。
【0012】
上記で開示したように、本開示の特定の態様は、血小板濃縮物または血小板溶解物を含む凍結組成物に電子ビーム(「eビーム」)放射線を照射することを含む病原体低減組成物を作製する方法、そのような方法によって得られる組成物、及び、例えば細胞の培養または患者の治療における病原体低減組成物の使用方法に関する。
【0013】
電子ビーム放射線で処理される組成物は、例えば血小板濃縮組成物のような無傷の血小板を含むことができ、または血小板溶解物組成物とすることができ、または、血小板濃縮物および血小板溶解物を含む混合物を含むことができる。これらの組成物は、本明細書中でときどき一緒にして「血小板組成物」と呼ばれる。開示された方法で使用される血小板濃縮組成物は、任意の適切な方法で得ることができる。本明細書で使用する場合、血小板濃縮物という用語は、約1×109以上のレベルで血小板を含有する液体組成物を指す。血小板濃縮物中の血小板の濃度は、好ましくは少なくとも約1×1010血小板/mlである。特に好ましいのは、約1×109~約1×1012血小板/mlの範囲の血小板濃度を有する血小板濃縮物、特にアフェレーシスされた血小板濃縮物ユニット(期限切れまたは非期限切れ)である。血小板濃縮物は、血液源に由来することができ、血液源は、好ましくはヒト全末梢血などのヒト血液である。血液またはその他に由来する場合、血小板濃縮物は、好ましくは赤血球を本質的に含まない、すなわち、約1×106赤血球/ml未満、好ましくは約1×105赤血球/ml未満である。いくつかの実施形態における血小板濃縮物は、血小板および血漿タンパク質の両方を含み、アフェレーシスによってヒトドナーの全末梢血から得られた血小板ユニットによって提供され得る。他の種、例えば哺乳動物種からの全血も、本明細書に記載されるように処理される血小板濃縮物の供給源として使用され得る。特定の実施形態では、複数の異なるヒトまたは他のドナーからの血小板ユニットを、本明細書に記載されるように処理される組成物を得るために、処理中のある時点でプールすることができる。今日の典型的な実施では、各ヒトドナーのアフェレーシスされた血小板ユニットは、約100~約500mL、より典型的には約100~400mLの容量を持っており、また、アフェレーシス処理中に血小板で分離された血漿とともに、約100~500×I09の血小板が含まれている。献血されたヒトのアフェレーシス血小板ユニットは、ヘルスケア施設で使用するための比較的短い、通常は約5日の貯蔵期間を有する。本明細書の方法で使用される血小板ユニットは、医療施設から入手された、最近期限切れのヒトアフェレーシス血小板ユニットとすることができ、本明細書に記載のように、使用前に任意の適切な温度、例えば、約-20℃で凍結保存することができる。
【0014】
血小板溶解物を調製する際、血小板の内容物は適切な方法により放出され得る。いくつかのモードでは、血小板は、血小板内容物を放出するために少なくとも1回の凍結融解サイクル、オプションで複数の凍結融解サイクル(例えば2または3回の凍結融解サイクル)にそれらを供することによって溶解される。凍結融解サイクルの使用において、血小板濃縮物は、任意の適切な温度で凍結され得る。いくつかの実施例においては、血小板濃縮物は、約-10℃~約-80℃の温度で凍結される。特定の好ましい実施形態では、血小板濃縮物は約-20℃で凍結される。血小板を溶解するために、凍結した血小板濃縮物を、例えば37℃の水浴または他の有効な手段で解凍して、「生の」血小板溶解物組成物を形成する。生血小板溶解物には、溶解した血小板膜、成長因子、および溶解した血小板から放出された他の物質が含まれている。解凍された血小板濃縮物が血小板と共に血漿を含む場合、血小板溶解物は、その中に血漿タンパク質を含む血漿も含む。血小板内容物を放出するための他の技術、例えばトロンビンによる活性化もまた、本明細書に記載されるように使用するための血小板溶解物を調製するために使用され得る。しかしながら、血小板を溶解するための凍結融解または他の機械的技術は、血小板濃縮物への非天然タンパク質(例えば、トロンビン)の追加を必要としないという点で有利であると考えられるものであり、この追加をする場合はコストが増加し、下流の処理された材料に少なくとも一部のトロンビンが存在するようになる。このように記載された「生」血小板溶解物は、本明細書に記載されたように、電子ビーム処理を受けることができる。しかしながら、他の実施形態では、生血小板溶解物は、電子ビーム処理に供される前に、特定の成分、特にフィブリノーゲンの量を除去するように処理される。
【0015】
生血小板溶解物には、血小板濃縮物の出発原料からの複数の成長因子が含まれている。これらには、たとえば、トランスフォーミング成長因子ベータ1(TGF-β1)、上皮成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(FGFb)、血小板由来成長因子AB(PDGF-AB)、および血小板由来成長因子BB(PDGF-BB)が含まれる。
【0016】
特定の実施形態では、生血小板溶解物は、以下の成長因子および(元の希釈されていない血小板濃縮物の容量に基づく)量を含む:
約20,000~約150000pg/mlのTGF-β1、好ましくは約70000~約120000pg/mlのTGF-Pl;および/または
約100~600pg/mlのEGF、好ましくは約200~約600pg/mlのEGF;および/または
約5~約250pg/mlのFGFb、好ましくは約50~200pg/mlのFGFb;および/または
約10~約70ng/mlのPDGF-AB、好ましくは約40~約65ng/mlのPDGF-AB;および/または
約1~約20ng/mlのPDGF-BB、好ましくは約2~約15ng/mlのPDGF-BB;および/または
約400~1100pg/mlのSDF-lα、好ましくは約500~約1000pg/mlのSDF-lα;および/または
約10~約800pg/mlのVEGF、好ましくは約100~約600pg/mlのVEGF。
【0017】
好ましい形態において、生血小板溶解物はまた、例えば、フィブリノーゲン、グロブリン、アルブミン、トリグリセリド、グルコース、ナトリウム、カルシウム、および/またはコレステロールを含む、血小板濃縮物出発物質中の血漿に由来する1つ以上の成分を含む。好ましい形態では、生血小板溶解物は、以下の成分および量を含む:
約0.5~2.5g/dLのグロブリン、好ましくは約1.5~2.5g/dLのグロブリン;および/または、
約2~5g/dLのアルブミン、好ましくは約3~4g/dLのアルブミン;および/または、
約100~200mmol/Lのナトリウム、好ましくは約120~約160のmmol/Lナトリウム;
約40~200mg/dLのトリグリセリド、好ましくは約50~120mg/dLのトリグリセリド;および/または、
約150~300mg/dLのグルコース、好ましくは約150~250mg/dLのグルコース;および/または
約5~12mg/dLのカルシウム、好ましくは約6~10mg/dLのカルシウム;および/または
約100万~350万ng/mLのフィブリノーゲン、好ましくは約150万~250万ng/mLのフィブリノーゲン。
【0018】
生血小板溶解物はまた、他の生物活性物質、例えば1つ以上のインターロイキン、インターフェロン、および/または腫瘍壊死因子を含み得る。これらのインターロイキン、インターフェロンおよび/または腫瘍壊死因子は、例えば、インターロイキン(IL)-lb、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、IL-17、インターフェロン-ガンマ(IFN-ガンマ)、および腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ)の1つ、いくつか、またはすべてを含み得る。
【0019】
本明細書の特定の実施形態では、生血小板溶解物は、粒子状物質を除去するために処理され、例えば、1回以上濾過および/または遠心分離される。そのような濾過は、例えば、生血小板溶解物を滅菌フィルターに通すことを含み得る。
【0020】
上述のように、本明細書のいくつかの実施形態では、生血小板溶解物を処理して、生血小板溶解物と比較してフィブリノーゲン濃度が低下したその画分を回収する。フィブリノーゲンは、例えば、血小板溶解物液体から分離することができる固体の凝固物質の形成をもたらすフィブリンへの変換を含む任意の適切な技術によって除去することができる。このようなフィブリンへの変換は、凝固剤の添加により誘発され得る。ここで開示される方法を実施するいくつかの形態においては、凝固剤、例えば塩化カルシウム塩を、生血小板溶解物に加えることができる。実例として、塩化カルシウム塩を、生血小板溶解物の1リットル当たり約0.1g~2gの量で生血小板溶解物に添加することができる。好ましい実施形態では、約0.4gから約0.75gの塩化カルシウム塩が、生血小板溶解物の1リットルあたりに加えられる。血小板溶解物と塩化カルシウムまたは他の凝固剤を組み合わせたものをシェーカーに入れるか、または他の方法で攪拌して、凝固剤と濃縮液との完全な混合を確実にすることができる。次に、得られた混合物は、いくつかの実施形態では、少なくとも約8時間、または少なくとも約12時間、典型的には約8時間から約36時間かけて固形の凝固材料を形成することができるようにされる。いくつかの形態では、得られる凝固物質の少なくとも主要な量(50%を超える量)、および潜在的に得られる凝固物質の少なくとも80%または少なくとも90%は、実質的に均質な凝固ゲルによって構成される。そのような実質的に均質な凝固ゲルは、材料全体にわたって一貫したゲル相を示すことができ、液体が連続的なフィブリンマトリックス内に含まれた状態となる。他の形態では、凝固した物質は、液相内に懸濁した多数の個別の固体凝固粒子として発生する可能性がある。
【0021】
凝固した固体材料が形成された後、液体材料をそこから分離することができる。この目的のために、任意の適切な技術を使用することができる。凝固物質の少なくとも主要な量(50重量%を超え、可能性としては少なくとも80重量%または少なくとも90重量%)が実質的に均質な凝固ゲルによって構成される好ましい形態では、凝固した材料を2つ以上の面の間で押して、凝固した固体を液体から分離する。そのような圧縮は、ゲルのフィブリンマトリックスを圧縮および凝縮しながら、ゲル材料から液体を絞り出すことができる。凝固した物質を押すことは、いくつかの形態では、ビニール袋などの柔軟な容器で行うことができる。凝固ゲルは、例えば手で、手動で、または器具により、バッグまたは他の可撓性容器のある領域(例えば、端)に押し付けることができ、凝固フィブリンマトリックスから絞り出された液体は袋の他の領域(例えば、端)または柔軟な他の容器内に集められる。第2のバッグすなわち他の容器は、プレス中またはプレス後にプレスが行われる第1のバッグに接続することができ、液体材料を第2のバッグすなわち他の容器に移すことができる。他のモードでは、凝固ゲルはバケットなどの硬い容器に入れ、手や器具で押したりして、凝固フィブリンマトリックスから液体を絞り出し、フィブリンマトリックスを圧縮および凝縮することができる。他の形式では、凝固した物質は液相に懸濁した多数の分離した固体の凝固粒子として生じ、組成物を遠心分離して凝固粒子を固体塊に濃縮し、その液相から凝固塊を分離することができる。本明細書に記載される使用のための血小板溶解物の調製においては、これらの技術および/または他の技術の組み合わせが、凝固物質を液体物質から分離する際に使用できる。
【0022】
生血小板溶解物を凝固して液体と固体物質とを分離した後、分離された血小板溶解物液体は、凝固前の生血小板溶解物と比較して、フィブリノーゲンの濃度が低下している。好ましい形態では、生血小板溶解物は、少なくとも100万ng/mL、典型的には約1,500,000~3,500,000(150万~350万)ng/mLの範囲のフィブリノーゲン含有量を有し、凝固および分離後、フィブリノーゲン枯渇血小板溶解物は、約50,000ng/mL未満、好ましくは約20,000ng/mL未満、より好ましくは約5,000ng/mL未満のフィブリノーゲン含有量を有する。実例として、フィブリノーゲン枯渇血小板溶解物は、約500ng/mL~約20,000ng/mL、または約500ng/mL~約10,000ng/mL、または約500ng/mL~5000ng/mLの範囲のフィブリノーゲン含有量を有することができる。追加的にまたは替わりに、フィブリノーゲン枯渇血小板溶解物は、凝固前の未処理血小板溶解物中に存在していたフィブリノーゲンの約5%未満、好ましくは約2%未満、より好ましくは約1%未満を含むことができる。同様に、フィブリノーゲン枯渇血小板溶解物は、生血小板溶解物の体積の少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約75%、典型的には約75%~約90%の範囲を構成することができる。
【0023】
生血小板の凝固および液体・固体/分離後に回収されたフィブリノーゲン枯渇血小板溶解物には、生血小板溶解物からの複数の成長因子が含まれている。これらには、TGF-β1、EGF、FGFb、PDGF-AB、およびPDGF-BBが含まれる。特定の実施形態では、このフィブリノーゲン枯渇血小板溶解物は、生血小板溶解物からの以下の成長因子および量を含む:
約20~約150ng/mlのTGF-β1、好ましくは約25~約150ng/mlのTGF-β1;および/または
約1000~約4000pg/mlのEGF、好ましくは約2000~約3500pg/mlのEGF;および/または
約50~約200pg/mlのFGFb、好ましくは約75~約200pg/mlのFGFb;および/または
約10~約50ng/mlのPDGF-AB、好ましくは約15~約40ng/mlのPDGF-AB;および/または
約1~約15ng/mlのPDGF-BB、好ましくは約2~約15ng/mlのPDGF-BB。
【0024】
好ましい形態において、このフィブリノーゲン枯渇血小板溶解物はまた、例えば、グロブリン、アルブミン、トリグリセリド、グルコース、ナトリウム、および/またはカルシウムを含む、血小板濃縮物出発物質中の血漿に由来する1つ以上の成分を含む。生血小板溶解物を凝固させるために塩化カルシウム塩が使用される場合、フィブリノーゲン枯渇血小板溶解物中に存在するカルシウムは、生血小板溶解物および添加されたカルシウム塩の両方からのものであり得る。特定の実施形態では、この分離された液体血小板溶解物は、以下の成分および量を含む:
約0.5~2.5g/dLのグロブリン、好ましくは約1~2g/dLのグロブリン;および/または
約2~5g/dLのアルブミン、好ましくは約3~4g/dLのアルブミン;および/または
約100~200ミリモル/Lのナトリウム、好ましくは約120~約160ミリモル/Lのナトリウム;および/または
約40~70mg/dLのトリグリセリド、好ましくは約50~65mg/dLのトリグリセリド;および/または
約150~300mg/dLのグルコース、好ましくは約150~250mg/dLのグルコース。
【0025】
同様に、塩化カルシウム塩が生血小板溶解物の凝固剤として使用される場合、フィブリノーゲン枯渇血小板溶解物は、いくつかの形態では、約15~35mg/dL、好ましくは約15~25mg/dLのレベルのカルシウムを含み得る。
【0026】
いくつかの製造モードによれば、フィブリノーゲン枯渇血小板溶解物は、本明細書に記載されるように、電子ビーム放射線で処理される前に滅菌フィルターを通される。好ましい実施形態では、滅菌フィルターは、0.2μmの滅菌フィルターを含む。追加または代替として、フィブリノーゲン枯渇血小板溶解物は、電子ビーム照射の前に、例えば深層濾過(depth filtration)および/または電子ビーム照射に直交することができる他の病原体低減プロセスを含む他の処理、例えば血小板溶解物が溶媒および界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)を含む液体媒体で処理される溶媒洗浄性病原体減少プロセス(solvent-detergent pathogen reduction process)にかけることができる。
【0027】
いくつかの形態では、本明細書で電子ビーム処理に供される血小板組成物(例えば、血小板溶解物)は、少なくとも約3g/dLの総タンパク質含有量を有し得、そしていくつかの形態では、約3~約6g/dLの範囲である総タンパク質含有量を有し得る。
【0028】
血小板組成物中に存在し得る病原体には、例として、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、寄生生物、およびプリオンが含まれる。特にヒトのドナーから得られた血小板組成物に存在する可能性のある典型的なウイルスには、梅毒、B型およびC型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス1および2、ヒトT細胞リンパ向性ウイルスIおよびII、および西ナイルウイルスが含まれる。本明細書の実施形態によれば、電子ビーム照射は、血小板組成物(例えば、血小板および/または血小板溶解物)中のこれらの病原体の1つ、いくつか、またはすべてを枯渇させるのに有効な電子ビーム線量を適用するために使用できる。
【0029】
上記で開示したように、電子ビーム処理では、血小板組成物は凍結状態で提供される。有益な形態では、凍結血小板組成物は、長さ、幅、および厚さ、ならびに間にその厚さを画定する第1および第2の対向面を有する本体(body)の形態であり得る。好ましい実施形態では、本体は、約5cm以下、約3cm以下、またはいくつかの変形例では約2cm以下の最大厚さを有する。追加または代替として、本体は、約5cm以下、約3cm以下、またはいくつかの変形例では約2cm以下の平均厚さを有することができ、いずれの場合にも、任意選択で約0.2cm以上の平均厚さを有する。同様に、本体が実質的に均一な厚さの場合、有益な電子ビーム放射線処理が行われる。そのため、いくつかの実施形態では、本体の少なくとも70%、または本体の少なくとも80%を構成する本体の連続する部分にわたって、本体は第1面から第2面までの厚さが30%以上変化しない(つまり、最も厚い場所の厚さが、最も薄い場所の厚さの1.3倍以下)、または一部の形態では20%以上変化しないようにされる。特定の実施形態では、凍結血小板組成物の本体のそのような連続する部分は、10%以上変化しない厚さを有することができる。しかしながら、凍結血小板組成物のための他の配置が、本明細書に記載される他の実施形態において使用され得る。
【0030】
例えば、上述のような本体の形態での凍結状態の血小板組成物は、バッグ(例えば、クライオバッグ)またはトレイのような、閉じた容器であり得る容器内に収納することができる。いくつかの実施形態では、容器内の血小板組成物の体積は、少なくとも約50ml、または少なくとも約100ml、典型的には約50ml~約10Lの範囲、より典型的には約100ml~約5Lである。これを調製するために、血小板組成物を液体(未凍結)状態で容器に導入し、その後凍結することができる。特に上記のような均一な厚さ特性を有する本体が望まれる場合、液体は凍結前に、凍結された血小板組成物に最終的に望まれる形状を呈するようにさせることができる。バッグなどの変形可能な壁を有する容器では、壁を操作してそれらを変形させ、液体の血小板組成物を凍結状態の組成物に望ましい形状にすることができる。必要または望ましい場合、変形可能な壁付き容器(例えば、バッグ)の外部にある形状、型、または他の物理的壁を使用して、液体組成物を凍結組成物に最終的に望まれる形状に拘束および保持することを容易にすることができる。所望の形状が液体形態で組成物に付与されると、組成物は電子ビーム照射に供される形状に凍結される。
【0031】
血小板組成物は、任意の適切な手段によって液体組成物から凍結組成物に変えることができる。これらには、例えば、液体血小板組成物を機械式冷凍庫によって、または液体窒素などの冷たい液体に浸すことによって、凍結温度に曝すことが含まれる。
【0032】
凍結血小板組成物は、いくつかの動作モードでは、電子ビーム照射の開始時に約-20℃以下の温度とすることができる。好ましくは、この温度は約-40℃以下、より好ましくは約-60℃以下であろう。必要に応じて、これらまたは他の場合において、電子ビーム照射開始時の凍結血小板組成物は約-200℃以上の温度とされる。いくつかの実施形態では、冷凍血小板組成物の温度は、電子ビーム照射の全期間中、これらの温度範囲内に留まる。このようなプロセスでは、電子ビーム放射線の照射中にある程度の温度上昇が発生する可能性があるが、それでも温度は規定の範囲内に留まることができる。
【0033】
様々な適切な電子ビーム滅菌装置が市販されており、本明細書の方法の実施に使用することができる。このような装置の1つは、(アイオトロンインダストリーズ社 Iotron Industries, Inc)のインペラ(Impela:登録商標)電子ビーム加速器(Electron Beam Accelerator)の商品名で市販されている。電子ビーム照射は、例えばガラスまたはプラスチック容器などの容器内の凍結血小板溶解物組成物を電子ビームに曝露することによる、従来の方法で行うことができる。例えば、凍結血小板組成物を含む容器はコンベヤー上に置かれ、通常は集束ビームである電子ビームを通過するようにできる。いくつかの形態では、凍結血小板組成物は、一度だけ電子ビームに曝される。他の形態では、例えば冷凍血小板組成物の第1面(例えば、上記のような冷凍された本体の面)がビーム源に最も近い状態で組成物を電子ビームに通過させることにより、第1面を電子ビームで処理した後に、凍結血小板組成物の第2面(例えば、上記のような凍結した本体の面)が電子ビーム源に最も近い状態で組成物を電子ビームに再度通過させて、第2面を電子ビームで処理する。
【0034】
典型的な方法では、電子ビームのエネルギーレベルは約5から約15MeV、より典型的には約8から約12MeVとされる。ビームへの曝露時間は、典型的には、凍結血小板溶解物組成物の寸法に比例し、大体約30秒~約10分の範囲である。凍結血小板組成物に送達される放射線量は、典型的には約10kGy~約100kGy、より典型的には約20kGy~約80kGy、最も典型的には約30kGy~約70kGyの範囲である。加えて、または代替として、放射線量は、1つまたは複数のウイルスのレベルで少なくとも3対数減少、または少なくとも5対数減少を達成するのに有効な線量とすることができる。他の考慮事項では、凍結血小板溶解産物全体にわたって、照射される線量の実質的な均一性、従って低い「最大/最小比」(組成物の任意の部分が受ける最大線量と、組成物の任意の部分が受ける最小量との最小線量の比)を使うことができる。一部の形態では、血小板溶解物組成物の電子ビーム照射処理の最大/最小線量比は、約2:1以下、より好ましくは約1.5:1以下、さらにより好ましくは約1.3:1以下である。
【0035】
電子ビーム照射中、特定の実施形態では、凍結された血小板組成物に冷却が適用される。これは、例えば、凍結血小板組成物またはそれを含む容器を、凍結血小板組成物と同じかそれよりも低温のものに当てるか、そのような環境内に置くことによって行うことができる。1つの形態では、凍結血小板組成物を含むバッグまたは他の容器の第1面を、ドライアイスのスラブまたは他の塊(凍結二酸化炭素、約-78.5℃)上に置き、この凍結血小板組成物とドライアイスの組み合わせを電子ビームを通過させて、容器の第1面とは反対の第2面に照射することができる。二面処理が必要なプロセスの場合、電子ビームを最初に通過した後、容器を上下逆にして、第2面をドライアイスに当てて配置し、凍結血小板溶解物とドライアイスの組み合わせを再び電子ビームを通過させて、容器の第1面に照射する。凍結血小板組成物の温度以下の例えば約-20℃~約-200℃または約-50℃~約-200℃の範囲の温度の、ドライアイス以外の冷たい塊(例えば、金属製品、セラミック製品、または別の凍結物質)を使用して、同様のプロセスを実施することもできる。さらに、容器の電子ビームに最も近い面(ドライアイスや他の冷たい塊に当たっている面とは反対の面)は、いくつかの実施形態では、如何なるの量のドライアイスまたは他の冷たい塊によっても覆われずに電子ビームに直接曝され得る。同様に、電子ビーム処理は、例えば電子ビーム処理装置の全部または一部を機械的に冷却されたガス環境内に含めることによって凍結血小板溶解物組成物が機械的に冷却されたガス環境内にある状態で、行われるようにすることができる。
【0036】
血小板組成物のビーム前処理の一配置が
図1に概略的に示されている。図示されるように、凍結血小板組成物100(例えば、血小板濃縮物、血小板溶解物、またはそれらの混合物)は、第1面120、第2面130、および面120と130の間の最大厚さ「T」を有するバッグ110内に収納されている。バッグ110の第2面130は、電子ビーム放射線での処理中に血小板組成物100を冷却する(負の熱エネルギーをそこに伝達する)ある量のドライアイス140に対して配置される。バッグの第1面120は、電子ビームの放射線源150に面する。必要に応じて、ドライアイス140およびバッグ110は、コンベヤー(図示せず)上の図示しない第2の容器内に入れて、放射線源150から放出された電子ビームに通される。いくつかの実施形態では、本明細書の別の場所で述べられたように、バッグ110は面120および130のそれぞれが放射線源150によって照射されるようにできる。これを行うために、放射線源150からの電子ビームを最初に通過した後、バッグ110を反転させて、第2面130を放射線源150に向け、第1面120をドライアイス140に当てるようにする。この配置で、バッグ110およびドライアイス140は、放射線源150によって放出された電子ビームを再び通過することができる。
【0037】
血小板組成物の生物学的活性のかなりの量は、本明細書に記載されるような電子ビーム照射処理を通じて保持され得ることが発見されている。特に、電子ビーム処理された凍結血小板溶解物、および電子ビーム処理された凍結血小板濃縮物から調製された血小板溶解物は、電子ビーム処理されていない対応する血小板溶解物と比較して、以下の例示的な実施例1および2でさらに説明されるように、培養中の生存細胞の増殖を促進する有意な保持レベルの能力を示す。同様に、電子ビーム処理された凍結血小板溶解物、および電子ビーム処理された凍結血小板濃縮物から調製された血小板溶解物は、電子ビーム処理を受けていない対応する血小板溶解物と比較して、有意なレベルの成長因子を保持する。いくつかの実施形態では、電子ビーム処理された凍結血小板溶解物または電子ビーム処理された凍結血小板濃縮物から調製された血小板溶解物は、対応する電子ビーム処理されていない血小板溶解物と比較して、少なくとも1つの成長因子の少なくとも約50%を保持する。少なくとも1つの成長因子は、例えば、TGF-β1、EGF、FGFb、PDGF-AB、およびPDGF-BBの1つ、いくつかまたはすべてであり得る。
【0038】
特定の実施形態では、電子ビーム処理された血小板溶解物、または電子ビーム処理された血小板濃縮物から調製された血小板溶解物は、以下の成長因子プロファイルを有する:
少なくとも約20ng/ml、典型的には約20~約150ng/mlの範囲、好ましくは約25~約150ng/mlの範囲のレベルのTGF-β1;および/または
少なくとも約1000pg/mlのレベル、典型的には約1000~約4000pg/mlの範囲、好ましくは約2000~約3500pg/mlの範囲のレベルのEGF;および/または
少なくとも約50pg/ml、典型的には約50~200pg/mlの範囲、好ましくは約75~約200pg/mlの範囲のレベルのFGFb;および/または
少なくとも約10ng/ml、典型的には約10~約50ng/mlの範囲、好ましくは約15~約40ng/mlの範囲のレベルのPDGF-ABは;および/または
少なくとも約1ng/ml、典型的には約1~約15ng/mlの範囲、好ましくは約2~約15ng/mlの範囲のレベルのPDGF-BB。
【0039】
上記の成長因子プロファイルに加えて、またはその代わりに、電子ビーム処理された血小板溶解物は、電子ビームで処理する前の成長因子含有量と比較して、少なくとも以下の割合の成長因子含有量を保持できる:
TGF-Pβ1:少なくとも約60%、典型的には約60%~約90%の範囲;および/または
FGFb:少なくとも約50%、典型的には約50%~約90%の範囲内;および/または
EGF:少なくとも約50%、典型的には約50%~約80%の範囲;および/または
PDGF-AB:少なくとも約50%、典型的には約50%~約80%の範囲;および/または
PDGF-BB:少なくとも約50%、典型的には約50%~約80%の範囲。
【0040】
電子ビーム処理された血小板組成物は、血小板組成物中の1つ以上のウイルス、例えばウシウイルス性下痢ウイルスの少なくとも3対数減少、または少なくとも5対数減少、または少なくとも6対数減少を達成するために有効な線量の電子ビームでの処理後、および/または20~100kGy、または30~70kGyの範囲の電子ビーム放射線による処理後でも、上記で特定されたレベルの成長因子および/または成長因子の保持された割合を有することができる。ウイルスの特定の対数減少を達成するのに有効な線量の電子ビームの使用の本明細書における開示は、処理される組成物が(あり得ることではあるが)そのようなウイルスをその中に必然的に有すること、又はそのような削減を必然的に達成すること(可能ではあるが)を意味するものではないことを理解されたい。この使用法は、適用される電子ビーム放射線の線量に言及し、ウイルスが処理される組成物全体に均一に分布している場合は、特定の対数減少を達成するのに効果的であることを述べている。
【0041】
本明細書の電子ビーム処理された組成物、またはそれらに由来する組成物は、電子ビーム照射によって誘発される識別特性を持っている。例えば、電子ビーム照射は、電子ビーム照射に曝されていない対応する材料と比較して、生物学的材料中のタンパク質の断片化および/または凝集化を引き起こすことが知られている。いくつかの形態では、血小板組成物は、ある量の(例えば、血小板から供給された血清由来の)アルブミンを含むことができ、電子ビーム処理血小板組成物は、電子ビームで処理されていない対応する血小板組成物と比較して、増加したレベルのアルブミンフラグメントおよび/またはアルブミン凝集を有することがある。同様に、上記の測定された成長因子レベルの電子ビーム誘発減少は、成長因子がそれらの生物学的活性を失う原因となる電子ビーム誘発の成長因子の変化と共に起こると予想される。したがって、これらの成長因子の不活性化された量(例えば、断片化、凝集化、不適切な折りたたみ、および/または他の原因による)も特徴を示す機能となり得る。したがって、いくつかの形態では、血小板組成物は、以下の成長因子の電子ビーム不活性化量を有し得る:
少なくとも約10pg/mlのレベルの不活化FGFb;および/または
少なくとも約50pg/mlのレベルの不活化EGF;および/または
少なくとも約3ng/mLのレベルの不活化PDGF-AB;および/または
少なくとも約0.5ng/mLのレベルの不活性化PDGF-BB;および/または
少なくとも約0.5ng/mLのレベルの不活性化TGF-β。
【0042】
電子ビーム処理後、特定のモードでは、病原体減少血小板組成物は、好ましくは凍結血小板組成物を解凍して液体組成物を形成した後に、パッケージに導入することができる。これは、好ましくは無菌移送操作で行われる。これらの目的のために、電子ビーム処理のために血小板組成物が存在するバッグまたは他の容器は、その内部への無菌接続のための無菌コネクタを有するようにすることができ、内容物を、バッグやバイアルなどの1つまたは複数のパッケージ容器に移す。電子ビーム処理後の、電子ビーム処理された血小板組成物を大幅に変更する更なるステップなしでのこの直接パッケージングは、電子ビーム処理が血小板溶解物に対して行われる場合に特に適用可能である。
【0043】
血小板濃縮物を含む組成物に対して電子ビーム処理が行われる場合、得られる電子ビーム処理された組成物は、典型的にはさらなる処理ステップが行われ、いくつかのモードでは電子ビーム処理された無傷の血小板組成物からの血小板溶解物を調製するための処理ステップが行われる。例えば、電子ビーム処理された血小板濃縮物は解凍され、次いで、例えば上記で開示されたフィブリノーゲン枯渇および/または濾過工程などの本明細書に開示される工程で処理されて血小板溶解物組成物を調製し得る。これに関して、血小板濃縮物を含む電子ビーム処理された組成物の解凍は無傷の血小板を溶解するのに役立ち得るものであり、特に、この血小板組成物が凍結されて電子ビーム処理が行われる前に、上述のような事前の凍結/解凍プロセスやトロンビンや他の薬剤による活性化などの血小板を溶解する他のプロセスを受けていない場合には無傷の血小板を溶解するのに役立ち得るものである。例えば後述する特定の実施例で示されるように、電子ビーム処理された血小板濃縮物から調製された血小板溶解物は、好適な高レベルの成長因子を含む。
【0044】
電子ビーム処理された血小板溶解物、または電子ビーム処理された血小板濃縮組成物またはそれから調製された血小板溶解物は、例えば、1つ以上の追加の濾過および/または1つ以上の追加の病原体減少処理、例えば、組成物を有機溶媒および洗浄剤(例えば、非イオン性洗浄剤)と接触させ、続いて(可能性としては微量の)有機溶媒および洗浄剤を除去する、溶媒洗浄剤病原体低減処理などを含む他の工程に供することもできる。次に、最終的に処理された製品は、好ましくは血小板組成物が存在する無菌の密封環境を維持するバッグまたはバイアルなどの容器に包装することができる。
【0045】
本明細書における病原体減少血小板溶解物組成物または他の血小板組成物は、電子ビーム処理としてその全濃度で包装することができ、または包装および後で使用するために水または水性媒体で希釈することができ、例えば血小板組成物の元の濃度の90%から10%に希釈する。そして、そのような希釈された組成物、その結果としての本明細書で特定される成分レベルの減少は、本明細書で開示される追加の実施形態を形成する。
【0046】
パッケージングの1つの実施形態が
図2に示されている。いくつかの実施形態によれば、電子ビーム処理された血小板溶解物または他の血小板濃縮物組成物200は、無菌メディウムボトル210に保管される。無菌メディウムボトルは、例えば、50mLから5000mLの範囲の容量を有し得る。例として、60mL、125mL、250mL、500mL、1000mL、または2000mLのボトルを使用できる。いくつかの形態では、無菌メディウムボトル210のキャップ220は、シュリンクラップ230によって保護される。いくつかの形態では、ボトルは収縮包装される。特定の実施形態では、ボトルは、完成品ラベル240でラベル付けされる。一部の形態では、ボトルはドライアイスの入った製品ボックスに入れられる。
【0047】
特定の実施形態では、病原体低減血小板溶解物または他の血小板組成物は、細胞培養培地を形成するために他の成分と組み合わせるようにすることができる。そのような細胞培養培地は、例えば、最小必須培地(MEM)またはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)などの既知の細胞培養培地に見られるものを含む、細胞培養のための他の栄養素または培地と混合した本開示の血小板溶解物を含む。本開示による細胞培養培地は、例えば、間葉系幹細胞などの幹細胞および/または前駆細胞、またはT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞を含む細胞の成長または維持に必要な栄養素(例えば、成長因子など)を提供するように処方される。病原体低減血小板溶解物または本明細書の他の血小板組成物を細胞の培養培地として使用して培養された細胞は、いくつかの実施形態では、ヒトまたは他の動物患者に投与することにより医学的に使用でき、有益な表現型および/または他のそのような投与のための特性を有することができる。例えば、間葉系または他の幹細胞は、治療目的で、(例えば、静脈内投与によって)患者に局所的および/または全身的に脈管構造に投与することができる。T細胞などの培養免疫細胞を患者に投与して、癌を治療するための免疫療法を提供することができる。一部の形態では、免疫療法は養子細胞移入療法であり、患者自身の免疫細胞(血液から、または腫瘍から直接採取)が癌を治療する。癌は、黒色腫、白血病などの血液癌、またはリンパ腫であり得る。1つの使用様式において、病原体減少血小板溶解物は、「CAR―T細胞療法」、「TCR療法」または「TIL療法」と組み合わせて患者の細胞の培養に使用される。
【0048】
CAR―T細胞療法では、患者のT細胞が血液からアフェレーシスを介して採取される。次に、T細胞が遺伝子改変されて、キメラ抗原受容体またはCARとして知られている合成タンパク質または人工タンパク質を表面に発現させる。T細胞のCARは、がん細胞の表面にある特定のタンパク質に結合するように設計されている。T細胞がCARを発現するように操作された後、それらは、実験室で、培地中、本明細書に記載の病原体減少血小板溶解物中で、典型的には1億個を超えるまで増殖される。CAR―T細胞はその後、通常患者が既存のT細胞本体を枯渇させる化学療法や他の薬剤を受けた後、患者の血管系に注入される。
【0049】
TCR療法には、患者から採取したT細胞を操作して、表面に(T細胞受容体、またはTCRと呼ばれる)受容体を発現させることも含む。T細胞を操作してTCRを発現させた後、典型的には1億個を超えるまで培地中、病原体減少血小板溶解物中で増殖させる。その後、TCR改変細胞はその後、通常、患者が化学療法や既存のT細胞本体を枯渇させる他の薬物を投与された後に患者の血管系に注入される。
【0050】
TIL療法では、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が患者の腫瘍のサンプルから収集され、患者の腫瘍細胞を認識する能力が最も高いリンパ球を特定するためにテストされる。次に、特定されたTILを、本明細書に記載のように、病原体減少血小板溶解物を培地として使用しまたは培地中で典型的には1億個を超えるまで増殖させる。その後、TIL細胞はサイトカインで活性化され、通常、患者が化学療法や既存のT細胞本体を枯渇させる他の薬剤を受けた後に患者の血管系に注入される。
【0051】
他の実施形態では、病原体減少血小板溶解物または他の血小板組成物を治療物質として使用することができる。例えば、それらの組成物は、神経、腱、骨、筋肉、皮膚(例:創傷治癒)、結合組織、眼球および/または心臓血管(例:心臓または大動脈)組織などの病変または損傷組織の治療を含む医学的治療のための治療物質として使用することができる。病原体減少血小板組成物は、単独で、または1つまたは複数の他の成分を含む組成物として、治療する組織に送達することができる。送達は、例えば注射または他の外科的移植または局所投与を含む任意の適切な手段を使用して行うことができる。特定の用途、眼組織の治療において、本明細書における病原体減少血小板溶解物組成物は、例えば、眼の表面欠損または眼の移植片対宿主病(眼のGVHD)、角膜潰瘍、ドライアイ(乾性角結膜炎)などの疾患の治療、または手術もしくは損傷後の角膜修復において、(例えば、液滴の形態で)眼の表面に適用する。
【0052】
特定の形態に従って、本開示の血小板組成物は、哺乳動物患者(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマなど)を治療するために使用される。好ましい使用形態において、血小板溶解物または他の血小板組成物は、治療される患者に関して同種であり、他の実施形態において、血小板溶解物または他の血小板組成物は、治療される患者に関して異種であり得る。例えば、特定の実施形態では、ヒト血小板に由来する病原体減少血小板溶解物組成物を使用して、イヌを治療することができる。イヌの血小板に由来する病原体減少血小板溶解物組成物がイヌを治療するために使用され、またヒト血小板に由来する病原体減少血小板溶解物組成物がヒトを治療するために使用されることができる。ある形態では、ヒト患者は乾性角結膜炎に罹患している。特定の本発明の変形形態によれば、病原体減少血小板溶解物組成物は、乾性角結膜炎に罹患しているイヌを治療するために使用される。イヌは犬種のいずれであってもよいが、角結膜炎を共通して受ける品種には、キャバリアキングチャールズスパニエル、ブルドッグ、チャイニーズシャーペイ、イハサアプソ、シーズー、ウエストハイランドホワイトテリア、パグ、ブラッドハウンド、コッカースパニエル、ペキニーズ、ボストンテリア、ミニチュアシュナウザー、そしてサモエドが含まれる。
【0053】
病原体減少血小板溶解物は、その溶解物を患者の眼に適用するように構成された液体送達デバイスにパックすることができる。いくつかの形態では、液体送達装置は無菌容器である。
図3は液体送達デバイスの一実施形態を示す。図示された実施形態では、病原体減少血小板溶解物はデバイス300内に保管される。デバイス300は、貯蔵部分310および出口部分320を有する。図示の実施形態では、出口部分320は蓋322で覆われるようにすることができる。出口部分320は、血小板溶解物または他の血小板組成物の一部(例えば、個々の滴として)を排出するように構成することができる。いくつかの形態では、貯蔵部分310は、ユーザーが押し込むことができる変形可能なプラスチック材料を含む。他の適切な液体送達装置には、点眼器、およびピペットが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
他の実施形態によれば、病原体減少血小板溶解物または他の血小板組成物は、軟膏に処方される。いくつかの形態では、軟膏は患部(例えば患者の目)に局所的に適用される。
【0055】
さらに他の用途では、本明細書の病原体減少血小板溶解物は、細胞の凍結保存剤として使用することができる。そのような凍結保存用途では、病原体減少血小板溶解物組成物を細胞懸濁液組成物に組み込むことができ、細胞懸濁液組成物を凍結保存して細胞の生存能力を維持することができる。細胞は、間葉系幹細胞、前駆細胞、免疫細胞などの幹細胞を含む、さまざまな細胞のいずれであってもよい。凍結保存は、バッグまたはバイアルなどの適切な容器で行うことができる。
【0056】
以下の特定の実施例は、本開示の特定の態様のさらなる理解を促進するために提供される。これらの実施例は例示的なものであり、限定するものではない。
実施例1
【0057】
この実施例の目的は、細胞培養サプリメントとしてのヒト血小板溶解物(HPL)の特性と機能に対するさまざまな電子ビーム(E-ビーム)照射量の影響を評価することである。電子ビーム照射はプールされた凍結血小板ユニットに適用され、HPLに変換された。得られたHPLは、成長因子レベルと細胞成長をサポートする能力についてテストされた。これは、電子ビーム処理を行わないことを除いて、凍結血小板ユニットから同様に調製されたHPLの成長因子レベルおよび細胞成長サポートと比較された(添付図における対照群)。
方法
【0058】
電子ビーム処理
合計120個の凍結血小板ユニット(それぞれ約250mL)を4℃で一晩解凍し、切り開いて、内容物を1つの25L血液互換性バッグにプールした。解凍およびプールされた血小板のバッグから、600mLの液体血小板を1L極低温凍結保存(Freeze-Pak)バッグに移した。次に、この再パッケージされた血小板ユニットを-20℃で凍結し、バッグの形状と内容物が3cmの厚さになるように均一に平らになるようにした。凍結した600mLの血小板サンプルをそれぞれ、冷たいシッパーコンテナー内のドライアイスにパッケージした。パッケージングされたユニットは、電子ビーム処理施設に一晩移した。パッケージされたユニットは、厚さ3cmのバッグの両面処理により得られた最小-最大線量範囲にかけられた。以下の表Iは、この実施例で評価された最小最大用量範囲を示している。
【0059】
【0060】
HPLの準備
電子ビーム処理した血小板ユニットをHPLに変換した。概ね、解凍後に、血小板ユニットのpHは7.75+/-0.25に調整した。1.0g/Lの塩化カルシウム脱水物を各バッグに加えて凝固を開始させた。次に、バッグを室内の温度および湿度において85RPMで2時間振とうし、4℃でさらに24~48時間インキュベートした。凝固した物質をバッグから分離し、抽出した液体を滅菌グレードのフィルターで濾過した。
【0061】
成長因子の特性
ELISAキットとマイクロプレートリーダー(Synergy Neo2 Plate Reader、BioTek Instruments)を使用して、FGFb、PDGF-BB、PDGF-AB、EGF、およびTGF-βについて、準備したHPLの成長因子測定を行った。各処理および対照の成長因子を三重に分析した。ELISAは製造業者のプロトコルに従って行った。ELISAを実行する前に、一連の希釈を行い、分析した各成長因子に適切な希釈を使用した。
【0062】
細胞増殖の検証
細胞増殖検証アッセイの準備として、先に低温保存された間葉系幹細胞(MSC)を解凍し、適切な細胞培養培地(10%HPLと1%ペニシリン-ストレプトマイシン-アムホテリシン(pen/strep/amp)を添加したDMEM)を使用して5000細胞/cm2でプレーティングした。MSCを70~80%の集密度まで増殖させた後、細胞を回収し実験用に播種(seed)した。細胞培養試験は、マルチウェルプレートを使用して行った。各実験で、細胞を12ウェルプレートに20,000細胞/ウェルで1mLの培地でプレーティングした。播種の翌日に培地交換を行い、5日後に、またはいずれかのサンプルが70~80%の集密度に達したときに実験を停止した。細胞が最初の培地交換の3日後に70~80%の密集度に達しなかった場合、4日目に2回目の培地交換を行った。
【0063】
細胞を回収するために、ウェルを0.5mLのPBSで洗浄し、250μlのトリプル(TrypLE(登録商標))で10分間トリプシン処理した。細胞が剥離したら、各ウェルに250μlの培地を加えて、トリプル(TrypLE)をクエンチした。次にサンプルをマイクロ遠心チューブに移し、2000gで5分間遠心分離した。次に培地を吸引し、ペレットを500μlの新鮮な培地に再懸濁した。各対照および処理ウェルの総細胞数は、Vi-Cell XR細胞アナライザー(Beckman Coulter、USA)を使用して取得した。
【0064】
統計分析
データは、少なくとも3回の実験の平均±標準偏差として示されている。グループ間の統計分析は、スチューデントのt検定と一元配置分散分析を使用して実行された。p<0.05は統計的に有意な差を示すと考えられる(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。
結果
【0065】
細胞培養のパフォーマンス
MSC成長における電子ビーム照射の影響を調べるために、2つの異なるMSC(ASCとBM-MSC)について細胞成長性能をテストした。この実施例で前述したように、細胞は10%HPLおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシン-アムホテリシン(pen/strep/amp)で調製した培地で培養した。その結果を
図4及び
図5に示す。
図4は、様々な最小線量範囲で処理されたHPLが補充された培地におけるASC細胞増殖の比較を提供する。Aは細胞数を使用した細胞増殖分析で、Bは対照群の割合を使用した細胞増殖分析である。データは、ASC細胞の増殖が40kGy以上の最小線量範囲で有意に減少したことを示している(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。報告データは、異なるHPLバッチの3つの独立した実験の平均である。
図5は、様々な最小線量範囲で処理されたHPLが補充された培地におけるBM-MSC細胞増殖の比較を提供する。Aは細胞数を使用した細胞増殖分析で、Bは対照群の割合を使用した細胞増殖分析である。データは、ASC細胞の成長が40kGy以上の最小線量範囲の大幅に減少したことを示している(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。報告データは、異なるHPLバッチの3つの独立した実験の平均である。示されているように、この作業の条件下では、電子ビーム照射は、40kGy以上の放射線量範囲でASC細胞の成長に悪影響を及ぼし始め、BM-MSC細胞成長は45kGy以上の線量範囲で影響を受ける。
【0066】
成長因子分析
図6は、MSC細胞増殖に関連することが知られているELISAによって測定された5つの増殖因子FGFb、EGF、FPDGF-AB、PDGF-BB、およびTGF-βlのレベルを提供する。報告データは、異なるHPLバッチの3つの独立した実験の平均である。示されているように、この研究の条件下では、テストされた成長因子の中で、FGFbが電子ビーム照射によって最も減少した。
【0067】
形態
対照群の中と電子ビームで処理した材料の中とで培養された細胞の間の形態には、明らかな違いはなかった。
実施例2
【0068】
この実施例の目的は、電子ビーム処理された血小板(図の「血小板」)から調製されたヒト血小板溶解物(HPL)材料、または血小板(図の「溶解液」)から調製された後に電子ビーム処理されたHPLの成長因子に対する電子ビーム(eビーム)照射の影響および、ASCおよびMSCの成長のための細胞培養サプリメントとしてのこれらのHPL材料の機能に対する電子ビーム(eビーム)照射の影響の評価である。これらのHPL材料を、電子ビーム処理を行わないことを除いて同様に血小板から調製した血小板溶解液と比較した。
方法
【0069】
血小板およびHPLの電子ビーム処理
合計240個の凍結血小板ユニット(それぞれ約250mL)を4°Cで一晩解凍し、切り開いて内容物をプールした。次に、プールされた血小板を2つの別々の滅菌プラスチック容器に均等に分けた。最初の容器から6.5Lのプールされた液体血小板を4x25Lのフレックスバッグ(Flex bag)のそれぞれに移した。2番目の容器からの血小板を、以下に説明するようにHPLを作るために直ちに処理した。次に、このHPLを各6.5リットルで3x25Lのフレックスバッグのそれぞれに移した。対照として使用するために、100mLのHPLを個別に凍結した。次に、最初の容器から再パッケージされた血小板と2番目の容器から処理されたHPLを-20°Cで凍結し、各フレックスバッグの形状が3cmの厚さでできるだけ均一な平らに近いことを確認した。すべてのサンプルと対照を、コールドシッパーコンテナー内のドライアイス上にパッケージし、電子ビーム処理のために施設に送った。電子ビーム処理に指定されたユニットは、ドライアイスに乗って電子ビームを通して搬送され、厚さ3cmのバッグの第1面に指向性電子ビーム放射線を40-54kGyの線量範囲で照射し、バッグをドライアイス上で反転し、バッグが再びドライアイス上に置かれて運ばれて、厚さ3cmのバッグの第2面に電子ビーム放射線を照射した。送った対照には電子ビーム処理をしなかった。
【0070】
成長因子の特性 ELISAキットとマイクロプレートリーダー(Synergy Neo2、BioTek Instruments)を使用して、成長因子の測定を行った。各処理および対照の成長因子を三重に分析した。ELISAは製造業者のプロトコルに従って行った。ELISAを実行する前に、一連の希釈を行い、分析した各成長因子に適切な希釈を使用した。
【0071】
細胞増殖の検証
細胞増殖検証アッセイの準備として、先に凍結保存していたASCおよびMSCを解凍し、適切な細胞培養培地を使用して5000細胞/cm2でプレーティングした。細胞を70~80%の集密度まで増殖させた後、それらを回収して実験用に播種した。細胞培養実験は、マルチウェルプレートを使用して行った。各実験では、細胞を12ウェルプレート内に、1mLの培地で20,000細胞/ウェルでプレーティングした。播種の翌日に培地交換を行い、5日後に、またはいずれかのサンプルが70~80%の集密度に達したときに実験を停止した。最初の培地交換の3日後に細胞が70~80%の集密度に達しなかった場合には、4日目に2回目の培地交換を行った。
【0072】
細胞を回収するために、ウェルを0.5mLのPBSで洗浄し、250μlのトリプル(TrypLE)で10分間トリプシン処理した。細胞が剥離したら、各ウェルに250μlの培地を加えて、トリプルをクエンチした。次にサンプルをマイクロ遠心チューブに移し、5分間2000gの遠心分離をした。次に培地を吸引し、ペレットを500μlの新鮮な培地に再懸濁した。各対照および処理ウェルの総細胞数は、Vi-CELL XR生死細胞アナライザー(Beckman Coulter、USA)を使用して取得した。
【0073】
統計分析
データは、単一の実験からのスクリーニング実験を除いて、少なくとも3つの実験の平均±標準偏差として表示されている。グループ間の統計分析は、スチューデントのt検定と一元配置分散分析を使用して実行した。p<0.05は、統計的に有意な差を示すとみなされた(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。
結果
【0074】
細胞培養のパフォーマンス
MSC成長に対する電子ビーム照射の影響を調べるために、2つの異なるMSC(ASCとBM-MSC)について細胞成長性能をテストした。これらの細胞は、上記したように、10%HPLおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシン-アムホテリシン(DMEM)で調製した培地で培養した。結果を
図7および8に示す。
図7は、電子ビーム照射された血小板と電子ビーム照射されたHPLとから処理されたHPLを補充した培地におけるASC細胞増殖の比較を提供する。Aは細胞数を使用した細胞増殖分析、Bは対照群に対する割合を使用した細胞増殖分析。(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。
図8は、電子ビーム照射された血小板と電子ビーム照射されたHPLとから処理されたHPLを補充した培地におけるBM-MSC細胞増殖の比較を提供する。Aは細胞数を使用した細胞増殖分析、Bは対照群に対する割合を使用した細胞増殖分析(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。示されているように、テストされた最小-最大線量範囲(40-54kGy)では、電子ビーム照射された血小板とHPLの両方が、ASCおよびBM-MSC細胞の成長をサポートする有益な能力を示した。電子ビーム照射した血小板とHPLの両方は、テストされた条件下での対照群と比較して有意に低下したASC細胞増殖を示した。BM-MSCの場合、対照に比べてBM-MSC成長のわずかな非有意な損失が電子ビーム照射された血小板で観察され、成長の有意な減少が先に電子ビーム照射したHPLで観察された。
【0075】
成長因子分析
図9は、5つの成長因子(MSCの成長に関連することが知られているFGFb、EGF、PDGF-AB、PDGF-BB、およびTGF-β)の濃度のELISA測定の結果を示している。報告データは、3つの独立した実験の平均である(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0002、****=p<0.0001)。示されているように、ビーム処理された材料は、テストされた成長因子の有益なレベルを保持している。テストした条件下では、電子ビーム照射により、血小板とHPLの両方でFGFbの濃度が減少した。対照群と比較したEGF、PDGF-BBおよびTGF-β1のレベルの有意な上昇は、電子ビーム処理した血小板から調製されたHPLでも測定されたが、電子ビーム処理したHPLではこれらの成長因子のレベルに有意な減少が観察された。
【0076】
形態
対照群で培養した細胞と電子ビーム処理した材料で培養した細胞との間に、形態において明らかな違いは認められなかった。
実施例3
【0077】
この実施例の目的は、電子ビーム放射線を使用して、ヒト血小板溶解物(HPL)中の適切な試験ウイルスの不活化を評価することである。この調査で選択したウイルスの詳細を表2に示す。
【0078】
【0079】
電子ビーム処理のための血小板ユニットとHPLの調整
合計125個の凍結血小板ユニット(それぞれ約250mL)を4℃で一晩解凍し、切り開いて、内容物を1つの25L血液適合性バッグにプールした。プールされた血小板ユニットのバッグから、液体血小板を600mLずつ3個の別のIL極低温凍結保存バッグ(Charter Medical、ウィンストンセーラム、ノースカロライナ州)に移した。次に、この再パッケージされた3つの血小板ユニットを-20°Cで凍結し、バッグ+内容物の形状が可能な限り3cmの厚さの均一な平らになるようにした。凍結した600mLの血小板サンプルをそれぞれ、冷たい移送容器内のドライアイスにパッケージした。パッケージされたユニットは、電子ビーム処理のために施設に夜間に移された。電子ビーム処理に指定された血小板ユニットは、厚さ3cmのバッグの両面処理により得られた最小-最大線量範囲にさらされた。表3は、ここで評価された最小-最大線量範囲を示している。
【0080】
【0081】
残りのプールされた血小板を使用して、上記の実施例1に記載された調製方法を使用して電子ビーム処理のためのHPLを調製した。上記のプールされた血小板と同様に、HPLは3個の600mLをIL極低温凍結保存バッグに移した。次に、3つのHPLユニットを-20°Cで凍結し、バッグ+内容物の形状が可能な限り均一に平らになり、3cmの厚さになるようにした。凍結プール血小板の3つのバッグは、ドライアイス上でウイルス処理施設に一晩移され、4℃で一晩解凍され、ウイルス(BVDV)でスパイクされ、再び-80°Cで凍結され、平らな3cm厚に確実に凍結した。次に、BVDVスパイクされた凍結血小板サンプル(合計2つ、各線量範囲のために1つ)を、この適切な二次格納パッケージ内のドライアイス上で一晩、電子ビーム処理のために施設に移した。移されたときに、このスパイクされた凍結血小板ユニットは、電子ビーム処理のためにドライアイスを含む断熱ボックスに再パッケージされた。厚さ3cmの小板ユニットを、各面を下にして2回、電子ビームを通過させた。最初の電子ビーム通過後、この断熱ボックスが開かれ、血小板ユニットが裏返されて2回目の電子ビーム処理がされた。電子ビーム処理が完了した後、処理されたサンプルは、二次格納容器のドライアイス上でウイルス処理施設に一晩移された。ウイルス処理施設では、サンプルをパッケージから取り出し、4℃で一晩解凍した。解凍された血小板ユニットは実施例1に記載されるように、CaCl2使用してフィブリノーゲンを枯渇し血餅分離をした。フィブリノーゲン枯渇血小板サンプルに対して残留ウイルス分析を実施した。
【0082】
上記の血小板サンプルとともに、(実施例1に記載のように調製した)3つのバッグの冷凍フィブリノーゲン除去HPLをウイルス処理施設に送った。HPLサンプルの処理は、凍結血小板ユニットについて前述したのと同じ手順に従った。HPLのバッグを解凍し、ウイルスをスパイクし、厚さ3cmに再度凍結してから、電子ビーム処理のために施設に移した。電子ビーム施設では、HPLサンプルが再パッケージ化され、血小板について上記のように2回の電子ビーム照射がされ、再パッケージ化されてウイルス処理施設に返送され、解凍されたサンプルに対してウイルス分析が行われた。
テスト/結果
【0083】
細胞毒性/干渉試験
指標細胞に対する細胞毒性効果とウイルス感染力の干渉についてサンプルをテストした。細胞毒性および干渉の試験は、ウイルス不活化試験の前に行われた。血小板およびHPLサンプルの干渉結果は表4および5にそれぞれまとめられている。
【0084】
【0085】
【0086】
上記のように、独立したウイルススパイキング実験が、HPLプロセスの2つのポイント:血小板ユニットでの早い段階;HPLのBVDVウイルススパイキングでのプロセスの最後、で実行された。血小板およびHPLサンプルのウイルス不活化の結果を、それぞれ表6および7にまとめた。
【0087】
【表6】
保持対照=実験の全期間を維持したアッセイ対照;
移送対照=移送されたが電子ビーム処理はされていない血小板;
陽性対照=ウイルスでスパイクされた培地;
陰性対照=培地のみ
【0088】
【表7】
保持対照=実験の全期間を維持されたアッセイ対照;
移送対照=移送されたが電子ビーム処理はされていないHPL;
陽性対照=ウイルスでスパイクされた培地。
陰性対照=培地のみ
【0089】
検討
表6および7のウイルス不活化値は、特定の数以上であるとして示されている。これは、電子ビーム処理が、示された不活性化値の最小値を不活性化できたと解釈できる。スパイクされて電子ビーム処理された材料のテストは、サンプル容量600mLからサブサンプリングした代表の20mLに対して実行された。この実験のすべての電子ビーム処理されたサンプル、血小板およびHPLは、テストされたボリュームからプラークを返さなかった。プラークが検出されない場合でも、全体ではなく代表的なサンプルをテストするには、ウイルスの不活化を計算するための統計計算が必要である。この計算では、サンプルのテスト全体の割合と、テストされていない残りに存在する可能性のあるウイルスが検出されない確率に基づいて不活化値が返される。
特定の実施形態のリスト
【0090】
以下は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態のリストである。このリストは非限定的であり、上記の詳細な説明に記載されている個々の特徴またはそれら特徴の組み合わせ(例えば、2つ、3つまたは4つの特徴の組み合わせ)は、追加の開示された実施形態として以下のリストに組み入れることができる。
【0091】
実施形態1 血小板濃縮物または血小板溶解物を含む凍結組成物に電子ビーム放射線を照射することを含む、病原体減少血小板組成物を作製するための方法。
【0092】
実施形態2 上記組成物が血小板濃縮物を含む、実施形態1の方法。
【0093】
実施形態3 上記組成物が血小板溶解物を含む、実施形態1または2の方法。
【0094】
。
実施形態4 実施形態2の方法であって、上記照射の後に、上記血小板濃縮物の血小板を溶解して血小板溶解物を形成することをさらに含む方法。
【0095】
実施形態5 上記組成物が血小板溶解物を含み、本質的に非溶解血小板を含まない、実施形態1に記載の方法。
【0096】
実施形態6 上記照射が、約10~約100kGy、より好ましくは約30~約70kGyの電子ビーム放射線を上記凍結組成物に照射するように行われる、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0097】
実施形態7 電子ビーム放射線が、上記凍結組成物の第1面、および第1面の反対側の凍結組成物の第2面に照射され、好ましくは、上記凍結組成物の第1面と第2面との間の最大厚さが約5cm以下とされている、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0098】
実施形態8 上記照射の間に、凍結組成物が容器内に保持され、電子ビーム放射線が容器を突き抜けて凍結組成物の中に至る、上記実施形態のいずれかの方法。
【0099】
実施形態9 上記照射の後に、上記組成物が、照射の前に上記組成物中に存在していたFGFb、EGF、PDGF-AB、PDGF-BB、およびTGF-β1の少なくとも1つの初期レベルの少なくとも50%を保持する、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0100】
実施形態10 上記照射が、組成物中の少なくとも1つのウイルスの少なくとも3対数減少を達成するのに有効な線量の電子ビーム放射線を提供する、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0101】
実施形態11 上記凍結組成物の平均厚さが0.5cm~5cmの範囲である、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0102】
実施形態12 上記電子ビーム放射線が約5から約15MeVのエネルギーレベルを有する、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0103】
実施形態13 上記照射の間に凍結組成物を冷却することも含む、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0104】
実施形態14 上記冷却することは、ドライアイスから負の熱エネルギーを凍結組成物に移すことを含む、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0105】
実施形態15 上記冷却することは、冷却されたガス状雰囲気から負の熱エネルギーを凍結組成物に移すことを含む、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0106】
実施形態16 上記冷却することは機械的冷凍庫内で行われる、上記実施形態10の方法。
【0107】
実施形態17 上記電子ビーム放射線が凍結組成物の第1面に照射される、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0108】
実施形態18 上記凍結組成物が約3cm以下の平均厚さを有する、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0109】
実施形態19 上記電子ビーム放射線が凍結組成物の第1面に照射され、上記照射の方向で凍結塊が約5cm以下の平均厚さを有する、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0110】
実施形態20 上記平均厚さが3cm以下である、実施形態19に記載の方法。
【0111】
実施形態21 照射が、電子ビーム放射線を組成物中の少なくとも1つのウイルスのレベルの低減を達成するのに有効な線量で凍結組成物に照射することを含む、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0112】
実施形態22 低減は少なくとも3対数低減である、実施形態21の方法。
【0113】
実施形態23 ウイルスがウシウイルス性下痢ウイルスである、実施形態21または22の方法。
【0114】
実施形態24 照射が、約2:1以下の最大/最小線量比を提供するように行われる、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0115】
実施形態25 凍結組成物が少なくとも約3g/dLの総タンパク質含有量を有する、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0116】
実施形態26 照射の前に、液体形態の組成物を保持する変形可能な容器を第1の形状に適合させ、容器で組成物を上記第1の形状で凍結して上記凍結組成物を提供することを含む、先行する実施形態の方法。
【0117】
実施形態27 上記凍結組成物が少なくとも50ml、好ましくは約50ml~約10Lの範囲の容量を有する、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0118】
実施形態28 照射の後に、凍結組成物を解凍して液体組成物を形成することをさらに含む、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0119】
実施態様29 解凍の後に、液体組成物を1つの包装容器または複数の包装容器に移すことをさらに含む、実施態様28の方法。
【0120】
実施態様30 上記移送が、液体組成物を複数の容器に移送することを含む、実施態様30記載の方法。
【0121】
実施態様31 上記移送が無菌移送操作である、実施態様29または30の方法。
【0122】
実施形態32 上記凍結組成物が凍結血小板溶解物を含み、上記照射の後に、血小板溶解物が、
少なくとも約20ng/ml、20~約150ng/mlの範囲、より好ましくは約25~約150ng/mlの範囲のレベルのTGF-β1、および/または
少なくとも約1000pg/ml、好ましくは約1000~約4000pg/mlの範囲、より好ましくは約2000~約3500pg/mlの範囲のレベルのEGF、および/または
少なくとも約50pg/ml、好ましくは約50~約200pg/mlの範囲、より好ましくは約75~約200pg/mlの範囲のレベルのFGFb、および/または
少なくとも約10ng/ml、好ましくは約10~約50ng/mlの範囲、より好ましくは約15~約40ng/mlの範囲のレベルのPDGF-AB、および/または
少なくとも約1ng/ml、好ましくは約1~約15ng/mlの範囲、より好ましくは約2~約15ng/mlの範囲のレベルであるPDGF-BB、
を含む、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0123】
実施形態33 上記凍結組成物が凍結血小板濃縮物を含み、上記方法が、上記照射の後に上記血小板濃縮物から第1の血小板溶解物を調製することを含み、上記第1の血小板溶解物が、
少なくとも約20ng/ml、好ましくは約20~約150ng/mlの範囲、より好ましくは約25~約150ng/mlの範囲のレベルのTGF-β1、および/または
少なくとも約1000pg/ml、好ましくは約1000~約4000pg/mlの範囲、より好ましくは約2000~約3500pg/mlの範囲のレベルのEGF、および/または
少なくとも約50pg/ml、好ましくは約50~約200pg/mlの範囲、より好ましくは約75~約200pg/mlの範囲のレベルのFGFb、および/または
少なくとも約10ng/ml、好ましくは約10~約50ng/mlの範囲、より好ましくは約15~約40ng/mlの範囲のレベルのPDGF-AB、および/または
少なくとも約1ng/ml、好ましくは約1~約15ng/mlの範囲、より好ましくは約2~約15ng/mlの範囲のレベルのDGF-BB、
を含む、上記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0124】
実施形態34 血小板濃縮物または血小板溶解物を含む組成物であって、凍結状態にある間に、(i)上記組成物中の少なくとも1つのウイルスのレベルの低減を達成するのに有効な線量で、および/または(ii)約10kGy~約100kGyの範囲の線量で、電子ビーム放射線が照射された組成物を含む、電子ビームを照射した血小板組成物。
【0125】
実施形態35 上記減少が少なくとも3対数減少である、実施形態34に記載の組成物。
【0126】
実施形態36 上記減少が少なくとも5対数減少である、実施形態34に記載の組成物。
【0127】
実施形態37 電子ビーム誘発タンパク質修飾を有する生物学的に活性な血小板溶解物を有する組成物。
【0128】
実施形態38 少なくとも約20ng/ml、好ましくは約20~約150ng/mlの範囲、より好ましくは約25~約150ng/mlの範囲のレベルのTGF-β1、および/または
少なくとも約1000pg/ml、好ましくは約1000~約4000pg/mlの範囲、より好ましくは約2000~約3500pg/mlの範囲のレベルのEGF、および/または
少なくとも約50pg/ml、好ましくは約50~約200pg/mlの範囲、より好ましくは約75~約200pg/mlの範囲のレベルのFGFb、および/または
少なくとも約10ng/ml、好ましくは約10~約50ng/mlの範囲、より好ましくは約15~約40ng/mlの範囲のレベルのPDGF-AB、および/または
少なくとも約1ng/ml、好ましくは約1~約15ng/mlの範囲、より好ましくは約2~約15ng/mlの範囲のレベルのPDGF-BB、
を有する、実施形態34から37のいずれかに記載の組成物。
【0129】
実施形態39 実施形態34乃至38のいずれかに記載の血小板溶解物組成物、または実施形態1乃至33のいずれかに記載の方法を使用して調製された血小板溶解物組成物を含む培養培地中で細胞を培養することを含む、細胞を培養する方法。
【0130】
実施形態40 細胞が、免疫細胞、好ましくはT細胞またはNK細胞を含む、実施形態39記載の方法。
【0131】
実施形態41 実施形態39または40の方法に従って培養された細胞を患者に投与することを含む、患者を治療する方法。
【0132】
実施形態42 実施形態34乃至38のいずれかに記載の血小板溶解物組成物、または実施形態1乃至33のいずれかに記載の方法を使用して調製された血小板溶解物組成物を患者に投与することを含む、患者を治療する方法。
【0133】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における単数を表す用語および「上記」「該」などおよび類似の用語の使用は、本書に別段の記載がある場合、または文脈によって明らかに矛盾する場合を除き、単数形および複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、各個別の値が本明細書において個別に列挙されているかのようにして明細書に組み込まれている場合でない限り、単に、当該範囲内に含まれるそれぞれの個別の値を個々に参照する簡単な方法として機能することを意図している。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるすべての実施例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図しており、別段の記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言語は、本発明の実施に必須である請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0134】
本明細書で引用されたすべての刊行物および特許出願は、あたかも個々の出版物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書に述べられている理論、動作メカニズム、証明、または発見は、本発明の理解をさらに高めることを意図しており、本発明をそのような理論、動作メカニズム、証明、または発見に決して限定することを意図していない。本発明を図面および前述の説明で詳細に図示し説明したが、これは、例示的であり、限定的ではないとみなされるべきであり、選択された実施形態のみが示され、説明されており、すべての均等物、変更、本明細書または以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神に含まれる修正は保護されることが望まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項16
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項16】
該電子ビーム放射線が該凍結組成物の第1面に照射され、該照射の方向で該凍結塊が5cm以下の平均厚さを有する、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項29
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項29】
該細胞が、免疫細胞であるT細胞またはNK細胞を含む、請求項28に記載の方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
【表7】
保持対照=実験の全期間を維持されたアッセイ対照;
移送対照=移送されたが電子ビーム処理はされていないHPL;
陽性対照=ウイルスでスパイクされた培地。
陰性対照=培地のみ