(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026648
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】完全焦点深度眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20240220BHJP
G02C 7/06 20060101ALI20240220BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61F2/16
G02C7/06
G02C7/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024001105
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2020555205の分割
【原出願日】2019-04-11
(31)【優先権主張番号】62/656,400
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ユエアイ リウ
(57)【要約】
【課題】近距離から無限遠距離まで連続的に完全焦点深度(FDoF)を与える焦点深度拡大を与えるシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】前面及び後面であって、前面及び後面のうち少なくとも1つは、瞳孔の明順応開口に対応する第1の表面領域と、瞳孔の明順応開口と中間順応開口との間の差に対応する第2の表面領域とを含む前面及び後面を含む眼科用レンズ。第1の表面領域に形成されている第1の微細構造パターンであって、明順応視のための完全焦点深度を与えるように入射光の光路に位相摂動を導入する第1の微細構造パターン。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面及び後面であって、前記前面及び後面のうち少なくとも1つは、瞳孔の明順応開口に対応する第1の表面領域と、前記瞳孔の前記明順応開口と中間順応開口との間の差に対応する第2の表面領域とを含む前面及び後面と、
前記第1の表面領域に形成されている第1の微細構造パターンであって、明順応視のための完全焦点深度を与えるように入射光の光路に位相摂動を導入する第1の微細構造パターンと
を含む眼科用レンズ。
【請求項2】
前記第2の表面領域は、屈折力を有し、前記中間順応開口において単焦点視を与える、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項3】
前記第2の表面領域に形成されている第2の微細構造パターンを更に含み、前記第2の微細構造パターンは、前記中間順応開口において二焦点視を与えるように構成されている、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項4】
前記第2の表面領域に形成されている第2の微細構造パターンを更に含み、前記第2の微細構造パターンは、前記中間順応開口において三焦点視を与えるように構成されている、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項5】
前記第1の微細構造パターンは、段差パターンによって規定されている、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項6】
前記段差パターンは、段差高、段差幅、及び位相値によって規定されている、請求項5に記載の眼科用レンズ。
【請求項7】
眼内レンズの光軸に沿って可視光の焦点深度を拡大する第1の微細構造パターンであって、瞳孔の明順応開口に対応する光学ゾーンの第1の表面領域に形成されている第1の微細構造パターン
を含む眼内レンズ。
【請求項8】
前記瞳孔の前記明順応開口と中間順応開口との間の差に対応する前記光学ゾーンの第2の表面領域を更に含み、前記第2の表面領域は、屈折力を有する、請求項7に記載の眼内レンズ。
【請求項9】
前記瞳孔の前記明順応開口と中間順応開口との間の差に対応する前記光学ゾーンの第2の表面領域に形成されている第2の微細構造パターンを更に含み、前記第2の微細構造パターンは、二焦点回折構造を含む、請求項7に記載の眼内レンズ。
【請求項10】
前記瞳孔の前記明順応開口と中間順応開口との間の差に対応する前記光学ゾーンの第2の表面領域に形成されている第2の微細構造パターンを更に含み、前記第2の微細構造パターンは、三焦点回折構造を含む、請求項7に記載の眼内レンズ。
【請求項11】
前記瞳孔の前記明順応開口と中間順応開口との間の差に対応する前記光学ゾーンの第2の表面領域に形成されている第2の微細構造パターンを更に含み、前記第1の微細構造パターンは、第1の段差パターンによって規定されており、前記第2の微細構造パターンは、第2の段差パターンによって規定されている、請求項7に記載の眼内レンズ。
【請求項12】
前記第1の段差パターンは、第1の段差高、第1の段差幅、及び第1の位相値によって規定されており、
前記第2の段差パターンは、第2の段差高、第2の段差幅、及び第2の位相値によって規定されている、請求項11に記載の眼科用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に、眼科用レンズに関し、より詳細には、老眼矯正完全焦点深度眼科用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
人の眼は、眼の瞳孔に入る光の焦点を網膜に合わせるように意図されている角膜及び水晶体を含む。しかし、眼は、光の焦点が適切に網膜に合わないことになる様々な屈折誤差を示すことがあり、その結果、視力が低下することがある。眼球の収差は、近視、遠視、又は正乱視を引き起こす比較的単純な球面及び円柱誤差から、例えばハロー及びスターバーストを人の視力に引き起こすことがあるより複雑な屈折誤差に及ぶことがある。
【0003】
様々な眼球の収差を補正するために、長年にわたって多くの診療が行われている。これらの診療は、眼鏡、コンタクトレンズ、角膜屈折矯正手術(例えば、レーザー支援原位置角膜切開反転術(LASIK)又は角膜移植)、及び眼内レンズ(IOL)を含む。近視、遠視及び乱視の治療のための球面円柱眼鏡及びコンタクトレンズの診断及び仕様は、既に確立されている。
【0004】
老眼は、人の眼が近距離で物体をはっきりと見る能力を失う状態を表す。患者が比較的近距離で物体に焦点を合わせるのに役立つために、多焦点機能を有する眼科用レンズが開発されている。
【0005】
特に、患者が2つ又は3つの焦点面で同時に焦点を合わせることができる多焦点機能を有するIOLが開発されている。しかし、多焦点IOLは通常、近距離から無限遠距離までの全視界を与えることができない。
【0006】
更に、拡大焦点深度(EDF)機能を有するIOLが開発されている。しかしながら、焦点深度の拡大は、患者の老眼を完全に矯正するにはあまりにも制限されている。従って、近距離から無限遠距離まで連続的に完全焦点深度(FDoF)を与える焦点深度拡大を与えるシステム及び方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の実施形態において、眼科用レンズは、前面及び後面であって、前面及び後面のうち少なくとも1つは、瞳孔の明順応開口に対応する第1の表面領域と、瞳孔の明順応開口と中間順応開口との間の差に対応する第2の表面領域とを含む前面及び後面を含む。第1の表面領域に形成されている第1の微細構造パターンであって、第1の微細構造パターンは、明順応視のための完全焦点深度を与えるように入射光の光路に位相摂動を導入する。
【0008】
特定の実施形態において、第2の表面領域は、屈折力を有してもよい。代わりに、第2の微細構造パターンは、第2の表面領域に形成されていてもよい。特定の実施形態において、第2の微細構造パターンは、二焦点回折構造又は三焦点回折構造を含んでもよい。
【0009】
本発明及び本発明の特徴及び利点のより完全な理解のために、添付図面と併せて、下記の説明をここで参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3A-3B】距離主特性及び近主特性を有する明順応開口における貫通焦点エネルギー分布の線図をそれぞれ示す。
【
図4A-4B】
図3A及び
図3Bに示す線図に対応する明順応開口における貫通焦点像をそれぞれ示す。
【
図5A-5B】
図5Aは、明順応開口を越えて屈折力を有する位相摂動のための明順応微細構造の断面図である。
図5Bは、典型的な単焦点レンズに対応する貫通焦点中間順応エネルギー分布と比較して
図5Aに示す微細構造に対応する中間順応開口における貫通焦点エネルギー分布の線図を示す。
【
図6A-6B】
図5Aに示す微細構造に対応する中間順応開口及び典型的な単焦点レンズにおける貫通焦点像をそれぞれ示す。
【
図7A-7B】
図7Aは、明順応開口を越えて二焦点回折微細構造を含む位相摂動のための回折微細構造の断面図である。
図7Bは、典型的な二焦点レンズに対応する貫通焦点中間順応エネルギー分布と比較して
図7Aに示す微細構造に対応する中間順応開口における貫通焦点エネルギー分布の線図を示す。
【
図8A-8B】
図7Aに示す微細構造に対応する中間順応開口及び典型的な二焦点レンズにおける貫通焦点像をそれぞれ示す。
【
図9A-9B】
図9Aは、明順応開口を越えて三焦点回折微細構造を含む位相摂動のための回折微細構造の断面図である。
図9Bは、典型的な三焦点レンズに対応する貫通焦点中間順応エネルギー分布と比較して
図9Aに示す微細構造に対応する中間順応開口における貫通焦点エネルギー分布の線図を示す。
【
図10A-10B】
図9Aに示す微細構造に対応する中間順応開口及び典型的な三焦点レンズにおける貫通焦点像をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的な実施形態は、IOL及びコンタクトレンズなどの眼科用デバイスに関する。下記の説明を、当業者が本発明を製造して使用することができるように提示し、特許出願及び特許出願の要件の文脈で与える。ここに記載の例示的な実施形態、一般的原理及び特徴の様々な修正は、すぐに分かる。特定の実装形態で提供される特定の方法及びシステムの観点から、例示的な実施形態を主に説明する。しかし、方法及びシステムは、他の実装形態で有効に動作する。例えば、方法及びシステムを、IOLの観点から主に説明する。しかし、方法及びシステムを、コンタクトレンズ及び眼鏡で使用してもよい。
【0012】
下記の説明において、開示の主題の説明を容易にするために、詳細を一例として示す。しかし、開示の実施形態が、例示であり、全ての可能な実施形態を網羅していないことは、当業者にとって明らかであるはずである。
【0013】
ここで使用されるように、参照符号のハイフン付きの形は、要素の特定のインスタンスを意味し、参照符号のハイフンなしの形は、総称要素を意味する。従って、例えば、デバイス「12-1」は、総称してデバイス「12」と呼ばれるデバイスクラスのインスタンスを意味し、一般的にデバイス「12」と呼ばれるもののうち何れか1つを意味する。
【0014】
白内障治療、又は人の水晶体と従来単焦点IOLとの交換の後、患者の視力は老眼になる。従来の解決策は、多焦点眼内レンズ(MIOL)設計又は拡大焦点深度(EDF)設計を必要としている。幾つかの二焦点IOLは、遠距離及び近距離で同時に良好な視力を患者に与えることができる。しかし、このような二焦点レンズを埋め込まれた患者は一般的に、不満足な中距離視力を有する。中距離範囲に対して追加屈折力を有する二焦点IOLを使用する場合、より良好な中距離視力が得られることがあるが、近距離視力がより悪くなる。特定の三焦点IOLは、遠距離から近距離までの視力の連続性の欠如にもかかわらず、ある程度の遠距離、中距離及び近距離の視力を患者に与えることがある。典型的なEDF IOLは、焦点深度を中距離視力に制限しているが、EDF IOLを用いた患者の近距離視力をまだ妥協することがある。従って、上述のように、従来の多焦点IOLは、近距離から無限遠距離までの老眼矯正全視界を与えることができない。
【0015】
より詳細に説明されるように、老眼を矯正し、近距離から無限遠距離までの全視界を与える完全焦点深度IOLを開示する。ここに開示の完全焦点深度IOLは、IOLが潜在的光障害に強いことを示す高効率の光エネルギー使用を与えてもよい。ここに開示の完全焦点深度IOLは、明順応開口を越える領域で屈折、二焦点及び三焦点設計を用いて、実施されてもよく、単焦点、二焦点又は三焦点中間順応視に近似する視力を与えることができる。ここに開示の完全焦点深度IOLは、人の水晶体の交換の後、全視界を回復させてもよい。
【0016】
ここに開示の完全焦点深度IOLなどの回折眼科用レンズを、光学的開口に基づいて構成してもよい。この眼科用レンズは、前面、後面、及び複数のエシュレットを含む少なくとも1つの回折構造を有してもよい。回折構造を、前面又は後面に設置してもよい。回折構造は、明順応開口における眼科用レンズに老眼矯正完全焦点深度を与えながら、回折構造の異なる実施形態によって中間順応開口に様々な種類の性能特性を与えてもよい。
【0017】
例えば、明順応開口に設置された回折構造は、様々な明順応貫通焦点性能(例えば、距離主、近主、又は任意の他の所望の性能特性)をもたらしてもよい。明順応開口に設置された回折構造を、明順応開口を越え、中間順応開口内の領域における第2の回折構造と組み合わせてもよい。例えば、第2の回折構造は、第2の回折構造が、屈折性能だけを与え、眼科用レンズの中間順応開口に単焦点のような貫通焦点性能を与えることを意味するヌルであってもよい。更なる例では、第2の回折構造は、二焦点構造であってもよく、眼科用レンズの中間順応開口に二焦点のような貫通焦点性能を与えてもよい。更に別の例では、第2の回折構造は、三焦点構造であってもよく、眼科用レンズの中間順応開口に三焦点のような貫通焦点性能を与えてもよい。
【0018】
さて、
図1の図面について説明する。IOL101は、眼科で使用される任意の種類のIOLを示してもよい。図示のように、IOL101は、便宜的に例示的な構成で示す、光学ゾーン110(ここで、単に「光学部」とも呼ばれる)、及び2つの触覚部112-1、112-2を含む。様々な実装形態において、IOL101は、異なるタイプ及び数の触覚部112を含んでもよい。幾つかの実装形態において、IOL101は、触覚部を有しなくてもよい。光学ゾーン110及び触覚部112のために使用される材料は、異なっていてもよい。例えば、IOL101は、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)レンズを含む光学ゾーン110を有する、折り畳まれていない硬質IOLであってもよい。幾つかの実装形態において、IOL101は、可撓性IOLであってもよく、光学ゾーン110は、様々な材料(例えば、シリコーン、疎水性アクリル、親水性アクリル、ヒドロゲル、コラーゲン共重合体、又はこれらの組み合わせ)を含んでもよい。IOL101において、触覚部112は、様々な材料(例えば、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、疎水性アクリル、親水性アクリル、シリコーン、又はこれらの組み合わせ)を含んでもよい。光学ゾーン110を、指定の光屈折を有するように設計してもよく、又は複数の光屈折力を有する多焦点素子として設計してもよい。
【0019】
特に、老眼を矯正し、近距離から無限遠距離までの全視界を与える完全焦点深度IOLを用いて、光学ゾーン110を実施してもよい。従って、本開示は、通常の屈折単焦点IOL光学部の1つの面に組み込まれる微細構造を対象にする。この微細構造は、ベースIOL光学部自体と同じ材料内にパターンとして形成される。微細構造は、IOL光学部の老眼矯正焦点深度特性の非常に長い拡大をもたらす入射光子の光路に位相摂動を導入する。例えば、焦点深度を、遠距離又は無限遠距離から近距離まで連続的に拡大する。下記の
図2の開口によって記載のように、全被写界深度明順応視を患者に与えるために、位相摂動を、レンズ開口の中央領域に制限してもよい。
【0020】
位相摂動は、多くの不連続同心領域に分布されてもよく、IOL開口(
図2参照)における異なる領域に異なっていてもよい。従って、明順応視及び中間順応視の異なる要求を満たすために、完全焦点深度IOLは、瞳孔サイズ依存性能を与えてもよい。
【0021】
さて、
図2について説明する。
図2は、瞳孔の接眼レンズ開口200の図を示す。明順応開口202は、明るい条件下で、例えば、昼光条件で、又は約3カンデラ毎平方メートル(cd/m
2)以上の周辺光強度で、瞳孔開口を示す。中間順応開口204は、明順応開口202よりも大きく、薄暗い条件下で、例えば、月光下で、又は約3cd/m
2と約0.01cd/m
2との間の周辺光強度で、瞳孔開口を示す。より詳細に後述されるように、明順応開口202及び中間順応開口204に対応する位置で光学ゾーン110の材料に形成されている微細構造表面パターンを用いて、ここに開示の完全焦点深度IOLを実施してもよい。
【0022】
記載のように、全被写界深度IOLの明順応開口における位相摂動は、老眼矯正完全焦点深度明順応視を与えてもよい。
図3A及び
図3Bは、
図7A及び
図9Aにそれぞれ詳細に後述されて示される2つの異なるタイプの位相摂動設計に起因する焦点分布を通る2つのタイプの明順応エネルギーを例示する。
【0023】
さて、
図3Aについて説明する。
図3Aは、貫通焦点エネルギー線
図300-1対焦点深度を示す。線
図300-1において、光子エネルギーは、焦点ぼけ深度に対して作図され、光子エネルギーを遠距離から近距離にわたって分布させる方法を示す。特に、線
図300-1は、遠距離から近距離まで連続焦点深度を有する明順応視を与える遠距離主エネルギー曲線を示すことが分かる(
図4Aも参照)。
【0024】
さて、
図3Bについて説明する。
図3Bは、貫通焦点エネルギー線
図300-2対焦点深度を示す。線
図300-2において、光子エネルギーは、焦点ぼけ深度に対して作図され、光子エネルギーを遠距離から近距離にわたって分布させる方法を示す。特に、線
図300-2は、遠距離から近距離まで連続焦点深度を有する明順応視を与える近距離主エネルギー曲線を示すことが分かる(
図4Bも参照)。
【0025】
さて、
図4Aについて説明する。
図4Aは、貫通焦点エネルギー線
図300-1に対応するレンズ設計に対して貫通焦点文字チャート像400-1を示す。
図4Aにおける5つのチャート像は、表1における焦点ぼけ距離にそれぞれ対応する。
【0026】
【0027】
図4Aにおける文字チャート像(チャート像402-遠、チャート像404-遠-中、チャート像406-中、チャート像408-中-近、及びチャート像410-近)は、表1における距離にそれぞれ対応する。チャート像400-1は、距離の図示の範囲にわたって焦点深度が連続的であることを示す。
【0028】
さて、
図4Bについて説明する。
図4Bは、貫通焦点エネルギー線
図300-2に対応するレンズ設計に対して貫通焦点文字チャート像400-2を示す。
図4Bにおける5つのチャート像(チャート像412-遠、チャート像414-遠-中、チャート像416-中、チャート像418-中-近、及びチャート像420-近)は、表1における焦点ぼけ距離にそれぞれ対応する。チャート像400-2は、距離の図示の範囲にわたって焦点深度が連続的であることを示す。
【0029】
さて、
図5Aについて説明する。
図5Aは、明順応完全焦点深度(FDoF)微細構造500を断面形状として示す。明順応FDoF微細構造500は、明順応開口202にわたって延在するが、明順応開口202を越えて中間順応開口204まで延在しない。明順応開口202と中間順応開口204との間の位置で、通常の屈折補正が行われる。明順応開口の外側の領域(RoPA)に対して、明順応微細構造500は、単焦点のような中間順応視を与えるように屈折力を与える。従って、明順応FDoF微細構造500は、明順応開口202に位相摂動を制限してもよく、明順応開口202を越えて位相摂動がなくてもよい。
【0030】
さて、
図5Bについて説明する。
図5Bは、明順応微細構造500(
図5A参照)に対して貫通焦点エネルギー線
図501対焦点深度を示す。線
図501において、光子エネルギーは、焦点ぼけ深度に対して作図され、光子エネルギーを遠距離から近距離にわたって分布させる方法を示す。特に、線
図501は、単焦点レンズとの類似を示すが、単焦点レンズよりも大きいエネルギーを近距離に対して与えることが分かる。
【0031】
さて、
図6Aについて説明する。
図6Aは、貫通焦点エネルギー線
図501に示すような明順応微細構造500の単焦点設計に対して中間順応開口貫通焦点文字チャート像600-1を示す。
図6Aにおける5つのチャート像(チャート像602-遠、チャート像604-遠-中、チャート像606-中、チャート像608-中-近、及びチャート像610-近)は、表1における焦点ぼけ距離にそれぞれ対応する。チャート像600-1は、遠像602が単焦点品質を有する一方、特に近距離に対して、中程度に連続的な焦点深度を維持することを示す。
【0032】
さて、
図6Bについて説明する。
図6Bは、貫通焦点エネルギー線
図501に示すような従来の単焦点IOLに対して貫通焦点文字チャート像600-2を示す。
図6Bにおける5つのチャート像(チャート像612-遠、チャート像614-遠-中、チャート像616-中、チャート像618-中-近、及びチャート像620-近)は、表1における焦点ぼけ距離にそれぞれ対応する。チャート像600-2は、遠像612が単焦点品質を有する一方、チャート像600-1と正反対に、焦点深度を維持しないことを示す。
【0033】
さて、
図7Aについて説明する。
図7Aは、FDoF二焦点回折微細構造700を断面形状として示す。FDoF二焦点回折微細構造700は、明順応開口202にわたって延在してFDoF特性を示し、明順応開口202を越えて中間順応開口204まで延在して二焦点特性を示す。FDoF二焦点回折微細構造700は、
図4A又は
図4Bの例示のようなFDoF明順応視、及び二焦点のような中間順応視をもたらしてもよい。明順応開口202を越える位相摂動は、二焦点設計の形をとる。二焦点設計の段差高、段差幅、及び位相値を、詳細に後述される設計方法及び手順による所望の貫通焦点エネルギー分布に対して最適化してもよい。
【0034】
さて、
図7Bについて説明する。
図7Bは、FDoF二焦点回折微細構造700(
図7A参照)に対して貫通焦点エネルギー線
図701対焦点深度を示す。線
図701において、光子エネルギーは、焦点ぼけ深度に対して作図され、光子エネルギーを遠距離及び近距離にわたって分布させる方法を示す。特に、線
図701は、
図7Aに示す特定の位相摂動の対応する中間順応性能を示すことが分かる。線
図701において、2つの焦点(遠距離視力用の焦点及び近距離視力用の焦点)は、焦点深度によって識別でき、二焦点レンズとの相関関係は明らかである。
【0035】
さて、
図8Aについて説明する。
図8Aは、貫通焦点エネルギー線
図701に示すようなFDoF二焦点回折微細構造700に対して中間順応開口貫通焦点文字チャート像800-1を示す。
図8Aにおける5つのチャート像(チャート像802-遠、チャート像804-遠-中、チャート像806-中、チャート像808-中-近、及びチャート像810-近)は、表1における焦点ぼけ距離にそれぞれ対応する。チャート像800-1は、遠距離像802及び近距離像810の両方が高品質を有するという中間順応結像効果を示す一方、様々なレベルの焦点深度における中像に、様々な品質を更に形成する。
【0036】
さて、
図8Bについて説明する。
図8Bは、貫通焦点エネルギー線
図701に示すような従来の二焦点IOLに対して貫通焦点文字チャート像800-2を示す。
図8Bにおける5つのチャート像(チャート像812-遠、チャート像814-遠-中、チャート像816-中、チャート像818-中-近、及びチャート像820-近)は、表1における焦点ぼけ距離にそれぞれ対応する。チャート像800-2は、遠距離像812及び近距離像820の両方が高品質を有することを示す一方、様々なレベルの焦点深度における中像がチャート像800-1よりも悪い品質を有する。
【0037】
さて、
図9Aについて説明する。
図9Aは、FDoF三焦点回折微細構造900を断面形状として示す。FDoF三焦点回折微細構造900は、明順応開口202にわたって延在してFDoF特性を示し、明順応開口202を越えて中間順応開口204まで延在して三焦点特性を示す。FDoF三焦点回折微細構造900は、
図4A又は
図4Bの例示のようなFDoF明順応視、及び三焦点のような中間順応視をもたらしてもよい。明順応開口202を越える位相摂動は、三焦点設計の形をとる。三焦点設計の段差高、段差幅、及び位相値を、詳細に後述される設計方法及び手順による所望の貫通焦点エネルギー分布に対して最適化してもよい。
【0038】
さて、
図9Bについて説明する。
図9Bは、FDoF三焦点回折微細構造900(
図9A参照)に対して貫通焦点エネルギー線
図901対焦点深度を示す。線
図901において、光子エネルギーは、焦点ぼけ深度に対して作図され、光子エネルギーを遠距離から近距離にわたって分布させる方法を示す。特に、線
図901は、
図9Aに示す特定の位相摂動の対応する中間順応性能を示すことが分かる。線
図901において、3つの焦点(遠距離視力用の焦点、中距離視力用の焦点、及び近距離視力用の焦点)は、焦点深度によって識別でき、三焦点レンズとの相関関係は明らかである。
【0039】
さて、
図10Aについて説明する。
図10Aは、貫通焦点エネルギー線
図901に示すようなFDoF三焦点回折微細構造900に対して中間順応開口貫通焦点文字チャート像1000-1を示す。
図10Aにおける5つのチャート像(チャート像1002-遠、チャート像1004-遠-中、チャート像1006-中、チャート像1008-中-近、及びチャート像1010-近)は、表1における焦点ぼけ距離にそれぞれ対応する。チャート像1000-1は、遠距離像1002、中距離像1006及び近距離像1010が良い又は高い品質を有するという中間順応結像効果を示す一方、様々なレベルの焦点深度における他の中像に、連続像品質を更に形成する。
【0040】
さて、
図10Bについて説明する。
図10Bは、貫通焦点エネルギー線
図901に示すような従来の三焦点IOLに対して貫通焦点文字チャート像1000-2を示す。
図10Bにおける5つのチャート像(チャート像1012-遠、チャート像1014-遠-中、チャート像1016-中、チャート像1018-中-近、及びチャート像1020-近)は、表1における焦点ぼけ距離にそれぞれ対応する。チャート像1000-2は、遠距離像1012、中距離像1016及び近距離像1020が良い又は高い品質を有するという中間順応結像効果を示す。
【0041】
図5Aに示す明順応FDoF微細構造500、
図7Aに示すFDoF二焦点回折微細構造700、及び
図9Aに示すFDoF三焦点回折微細構造900を全て、下記の方法及び手順に従って設計してもよい。FDoF明順応微細構造500などの明順応微細構造を、段差パターンによって規定してもよい。この段差パターンは、例えば、多くの段差、段差高、段差幅、及び位相値を含む多くのパラメータを特徴としてもよい。様々な数の段差を用いて、明順応微細構造を設計してもよい。例えば、FDoF明順応微細構造500を、6つの段差を用いた
図5Aに示す。しかし、6つの段差よりも多い又は少ない段差を用いて、明順応微細構造を設計してもよい。更に、他の段差パラメータを選択して、眼科用レンズの貫通焦点明順応開口性能を変更してもよい。
【0042】
一旦明順応微細構造が選択されると、明順応微細構造を最適化してもよい。例えば、任意の適切な光学設計ソフトウェアプログラム(例えば、ZEMAX光学設計ソフトウェア)を用いて、明順応微細構造の性能をシミュレートしてもよい。この最適化工程中に、明順応微細構造に対応する貫通焦点明順応開口性能を計算してもよい。更に、基準貫通焦点明順応開口性能は、判定されてもよく、設計及び最適化工程を介して求められている目的又は目標の性能を表してもよい。例えば、基準貫通焦点明順応開口性能は、遠距離主性能又は近距離主性能であってもよい。明順応微細構造の貫通焦点明順応開口性能を、基準貫通焦点明順応開口性能と比較してもよい。第1の貫通焦点開口性能が基準貫通焦点明順応開口性能に十分に近似しない場合、明順応微細構造の段差パラメータを調整してもよい。
【0043】
一旦段差パラメータが調整されると、調整明順応微細構造に対応する第2の貫通焦点明順応開口性能を計算してもよい。次に、この第2の貫通焦点明順応開口性能を、基準貫通焦点明順応開口性能と比較してもよい。第2の貫通焦点明順応開口性能が基準貫通焦点明順応開口性能に十分に近似した場合、眼科用レンズの製造及び形成時に、調整明順応微細構造を選択して実施してもよい。しかし、第2の貫通焦点明順応開口性能が基準貫通焦点明順応開口性能に十分に近似しない場合、調整明順応微細構造の段差パラメータを再度調整してもよい。場合によっては、第1の貫通焦点明順応開口性能が、第2の貫通焦点明順応開口性能よりも基準貫通焦点明順応開口性能に密接に近似することがある。この場合、それに応じて、調整明順応微細構造の段差パラメータを調整してもよい。基準貫通焦点明順応開口性能に十分に近似した貫通焦点明順応開口性能を有する明順応微細構造を与えるために、この工程を、必要に応じて何度でも繰り返してもよい。最後に、眼科用レンズの製造及び形成時に、基準貫通焦点明順応開口性能に最も密接に近似した貫通焦点明順応開口性能を有する明順応微細構造を、選択して実施してもよい。
【0044】
図7Aに示す中間順応開口におけるFDoF二焦点回折微細構造700、及び
図9Aに示す中間順応開口におけるFDoF三焦点回折微細構造900などの中間順応微細構造を、段差パターンによって規定してもよい。この段差パターンは、例えば、多くの段差、段差高、段差幅、及び位相値を含む多くのパラメータを特徴としてもよい。様々なタイプの貫通焦点中間順応開口性能を与えるように、中間順応微細構造を設計してもよい。例えば、二焦点貫通焦点中間順応開口性能に近似するように、FDoF二焦点回折微細構造700を設計してもよく、三焦点貫通焦点中間順応開口性能に近似するように、FDoF三焦点回折微細構造900を設計する。しかし、様々な段差パラメータの選択によって、他の貫通焦点中間順応開口性能に近似するように、中間順応微細構造を設計してもよい。
【0045】
一旦中間順応微細構造が選択されると、中間順応微細構造を最適化してもよい。例えば、任意の適切な光学設計ソフトウェアプログラム(例えば、ZEMAX光学設計ソフトウェア)を用いて、中間順応微細構造をシミュレートしてもよい。この最適化工程中に、中間順応微細構造に対応する貫通焦点中間順応開口性能を計算してもよい。更に、基準貫通焦点中間順応開口性能は、判定されてもよく、設計及び最適化工程を介して求められている目的又は目標の性能を表してもよい。例えば、基準貫通焦点中間順応開口性能は、上述のような二焦点又は三焦点性能であってもよい。中間順応微細構造の貫通焦点中間順応開口性能を、基準貫通焦点中間順応開口性能と比較してもよい。第1の貫通焦点中間順応開口性能が基準貫通焦点中間順応開口性能に十分に近似しない場合、中間順応微細構造の段差パラメータを調整してもよい。
【0046】
一旦段差パラメータが調整されると、調整中間順応微細構造に対応する第2の貫通焦点中間順応開口性能を計算してもよい。次に、この第2の貫通焦点中間順応開口性能を、基準貫通焦点中間順応開口性能と比較してもよい。第2の貫通焦点中間順応開口性能が基準貫通焦点中間順応開口性能に十分に近似した場合、眼科用レンズの製造及び形成時に、調整中間順応微細構造を選択して実施してもよい。しかし、第2の貫通焦点中間順応開口性能が基準貫通焦点中間順応開口性能に十分に近似しない場合、調整中間順応微細構造の段差パラメータを再度調整してもよい。場合によっては、第1の貫通焦点中間順応開口性能が、第2の貫通焦点中間順応開口性能よりも基準貫通焦点中間順応開口性能に密接に近似することがある。この場合、それに応じて、調整中間順応微細構造の段差パラメータを調整してもよい。基準貫通焦点中間順応開口性能に十分に近似した貫通焦点中間順応開口性能を有する中間順応微細構造を与えるために、この工程を、必要に応じて何度でも繰り返してもよい。最後に、眼科用レンズの製造及び形成時に、基準貫通焦点中間順応開口性能に最も密接に近似した貫通焦点中間順応開口性能を有する中間順応微細構造を、選択して実施してもよい。
【0047】
一旦明順応微細構造及び中間順応微細構造の両方が選択されると、眼科用レンズの明順応開口における選択順応微細構造、及び眼科用レンズの中間順応開口における選択中間順応微細構造を用いて、眼科用レンズを形成して製造してもよい。眼科用レンズは、老眼矯正完全焦点深度視を与えてもよい。
【0048】
ここに開示のように、完全焦点深度IOLは、明順応視及び中間順応視を改善するために焦点深度を拡大するIOL光学材料の表面に形成された回折構造を含む。
【0049】
上述の開示の主題は、例示であり、限定しないものと考えられるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の精神及び範囲に含まれる全てのこのような修正、改善、及び他の実施形態を含むように意図されている。従って、法律が許す最大限の範囲で、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲及び特許請求の範囲の均等物の最も広い許容解釈によって決められるべきであり、上述の詳細な説明によって制限又は限定されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面及び後面であって、前記前面及び後面のうち少なくとも1つは、瞳孔の明順応開口に対応する第1の表面領域と、前記瞳孔の前記明順応開口と中間順応開口との間の差に対応する第2の表面領域とを含む前面及び後面と、
前記第1の表面領域に形成されている第1の微細構造パターンであって、明順応視のための完全焦点深度を与えるように入射光の光路に位相摂動を導入する第1の微細構造パターンと
を含む眼科用レンズ。
【外国語明細書】