(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026655
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】アデノウイルスの複製動態を測定するための高スループットアッセイ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/861 20060101AFI20240220BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240220BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20240220BHJP
C12N 15/41 20060101ALN20240220BHJP
C12N 15/42 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
C12N7/01
C12Q1/70
C12N15/41
C12N15/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001276
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2021146744の分割
【原出願日】2017-02-23
(31)【優先権主張番号】62/298,649
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513037649
【氏名又は名称】ソーク インスティテュート フォー バイオロジカル スタディーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クローダ オシェア
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム パートロ
(72)【発明者】
【氏名】コリン パワーズ
(57)【要約】
【課題】アデノウイルスの複製動態を測定するための高スループットアッセイの提供。
【解決手段】異種オープンリーディングフレーム(ORF)および自己切断ペプチドコーディング配列を含む、組換えアデノウイルスゲノムが、記載される。組換えアデノウイルスゲノムおよび開示されるゲノムによって産生される組換えアデノウイルスは、例えば、ウイルス複製動態を測定するための高スループットアッセイにおいて使用することができる。組換えアデノウイルスの複製動態を測定するための方法もまた、記載される。一局面において、異種オープンリーディングフレーム(ORF)および自己切断ペプチドコーディング配列を、いずれも内因性アデノウイルスORFと同じリーディングフレーム内に、それと作動可能に連結した状態で含む、組換えアデノウイルスゲノムが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2016年2月23日に出願された米国仮出願第62/298,649号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、組換えアデノウイルス構築物における外因性オープンリーディングフレームの最適な配置、およびアデノウイルスの複製動態を測定するためのアッセイにおける組換えウイルスの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
アデノウイルス血清型5(Ad5)は、基礎研究適用、マウス肺がんモデル、およびヒト遺伝子療法の治験において最適なベクターである。アデノウイルスは、感染を特定の細胞型上の受容体に標的化するAdファイバータンパク質突起(spike)で覆われたタンパク質キャプシドによって保護された安定な36kbの二本鎖DNAゲノムを有する。アデノウイルスは、宿主DNAに組み入れられず、確立されたプロトコールを使用して高い力価で産生させることができ、ヒト遺伝子療法およびがんでの適用における安全性が証明されている。したがって、Adに基づくベクターは、がんの診断および治療法において非常に有望である。しかしながら、臨床上および治療上の使用のために設計された組換えアデノウイルスの複製動態を評価する高速かつ高スループットな手段に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
異種オープンリーディングフレーム(ORF)および自己切断ペプチドコーディング配列を含む、組換えアデノウイルスゲノムが、本明細書において開示される。組換えアデノウイルスゲノムおよび開示されるゲノムによって産生される組換えアデノウイルスは、例えば、ウイルス複製動態を測定するためのアッセイにおいて使用することができる。
【0005】
異種ORFおよび自己切断ペプチドコーディング配列を、いずれも内因性アデノウイルスORFと同じリーディングフレーム内に、それと作動可能に連結した状態で含む、組換えアデノウイルスゲノムが、本明細書において提供される。自己切断ペプチドコーディング配列は、異種ORFと内因性ORFとの間に位置する。一部の実施形態では、内因性ORFが、E1B-55kであり、異種ORFが、E1B-55kの3’にあるか、内因性ORFが、DNAポリメラーゼであり、異種ORFが、DNAポリメラーゼの5’にあるか、内因性ORFが、DNA結合タンパク質(DBP)であり、異種ORFが、DBPの3’にあるか、内因性ORFが、アデノウイルス死タンパク質(adenovirus death protein)(ADP)であり、異種ORFが、ADPの5’にあるか、内因性ORFが、E3-14.7kであり、異種ORFが、E3-14.7kの3’にあるか、または内因性ORFが、E4-ORF2であり、異種ORFが、E4-ORF2の5’にある。
【0006】
本明細書に開示される組換えアデノウイルスゲノムを含む、組換えアデノウイルスが、本明細書においてさらに提供される。
【0007】
組換えアデノウイルスの複製動態を測定するための方法もまた、提供される。一部の実施形態では、組換えアデノウイルスのゲノムは、蛍光タンパク質をコードする異種ORFおよび自己切断ペプチドコーディング配列を、いずれもE1B-55k、DNAポリメラーゼ、DBP、ADP、E3-14.7k、およびE4-ORF2から選択される内因性アデノウイルスORFと同じリーディングフレーム内に、それらと作動可能に連結した状態で、含む。自己切断ペプチドコーディング配列は、異種ORFと内因性アデノウイルスORFとの間に位置する。一部の実施例では、本方法は、細胞に、組換えアデノウイルスのゲノムをトランスフェクトするか、または細胞に、組換えアデノウイルスの粒子を感染させることと、トランスフェクトした細胞または感染させた細胞を少なくとも2日間培養することと、培養期間の間、規則的な間隔で蛍光を測定することと、蛍光測定値から対数スロープを計算することとを含む。本方法を使用して、例えば、腫瘍細胞を得て(例えば、生検によって)、腫瘍細胞において、組換えアデノウイルスの複製動態を測定することによって、腫瘍の処置に適切な治療用アデノウイルス(腫瘍溶解性アデノウイルスなど)を選択することができ、この組換えアデノウイルスは、治療用アデノウイルスの治療用ORFが蛍光タンパク質をコードするORFと置き換えられていることを除き、治療用アデノウイルスに相当する。同様に、本方法を使用して、特定の治療用アデノウイルスでの処置に応答するであろうがん患者を選択するか、または特定の腫瘍に対して最も有効な治療用アデノウイルスを特定することができる。
【0008】
本開示の上述およびその他の目的および特性は、以下の詳細な説明、続いて添付の図面への参照により、さらに明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、アデノウイルス構築物を試験するための例示的な作業フローの概略図である。全ウイルスゲノムプラスミドを産生し、マルチウェルプレートにおいて、好適な細胞、例えば、293-E4細胞にトランスフェクトする。トランスフェクトした細胞が増えると、それらを、凍結/解凍に供して、ウイルス粒子を放出させ、続いて、遠心分離によって細胞残屑をペレットにする。上清(ウイルス粒子を含有する)を、複数のより大きな培養プレートに移す。ウイルス粒子を、トランスフェクトした細胞から採取し、CsCl精製し、感染ウイルス力価を、ELISAによって測定する。次いで、目的の細胞型に、精製したウイルスを公知のMOIで感染させる。感染の48時間後または72時間後に、アデノウイルス後期タンパク質、アデノウイルスゲノム、またはプラークを、それぞれ、ウエスタンブロット、q-PCR、またはプラークアッセイによって測定する。
【0010】
【
図2】
図2は、指数関数的ウイルス増殖を示す概略図である。腫瘍内のすべての細胞の腫瘍溶解性殺滅には、指数関数的ウイルス増殖が必要である。しかしながら、ほとんどの事例において、腫瘍細胞のうち、初回に感染されるものはわずかな割合のみである。したがって、1回の複製当たりの子孫の数のわずかな違いが、たった数回の複製後でも粒子の総数に大きな違いをもたらす。1サイクル当たり3ビリオンを産生するウイルスと、1サイクル当たり5ビリオンを産生するウイルスとの間の比較を示す。グラフに示されているように、5~6回の複製後に、これら2つのウイルスのウイルス力価は、有意に異なる。
【0011】
【
図3】
図3は、本明細書において開示される蛍光に基づくウイルス動態(FBVK)アッセイの作業フローを示す概略図である。全ウイルスゲノムプラスミドを産生し(例えば、AdsemblyまたはAdSLICによって)、これを、マルチウェルプレートにおいて目的の細胞型にトランスフェクトするために使用する。あるいは、細胞に、組換えアデノウイルス粒子を感染させる。アデノウイルスゲノムは、ウイルス複製動態を実質的に変化させないウイルスゲノム内の位置に、蛍光タンパク質をコードする少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。蛍光を経時的にモニタリングして、ウイルス複製動態を計算する。
【0012】
【
図4A】
図4A~4Bは、アデノウイルスゲノムプラスミドを用いて開始した場合の例示的な動態アッセイ環境を概説する。このアッセイは、初回トランスフェクション効率の把握を必要としない。トランスフェクション条件は、細胞のうちのおよそ5~10%が、初回にトランスフェクトされるように選択される。示されている実施例では、48ウェルプレートを使用しており、これにより、3つの模擬感染ウェルおよびツール感度変動を補償するためのFLUORESBRITE(商標)ビーズを有する3つのウェルとともに、14種類の異なるウイルス構築物を3連で試験することが可能となる。(
図4A)48ウェルプレートの上半分のウェルは、6種類の異なるウイルスのゲノムプラスミドをトランスフェクトした細胞、模擬感染細胞、およびブランク(FLUORESBRITE(商標)ビーズ)を、それぞれ3連で含有する。(
図4B)48ウェルプレートの下半分のウェルは、8種類の異なるウイルスのゲノムプラスミドをトランスフェクトした細胞を、3連で含有する。マルチウェルプレートは、継続的な蛍光モニタリングのために、プレートリーダー(TECANプレートリーダーなど)に設置する。
【
図4B】
図4A~4Bは、アデノウイルスゲノムプラスミドを用いて開始した場合の例示的な動態アッセイ環境を概説する。このアッセイは、初回トランスフェクション効率の把握を必要としない。トランスフェクション条件は、細胞のうちのおよそ5~10%が、初回にトランスフェクトされるように選択される。示されている実施例では、48ウェルプレートを使用しており、これにより、3つの模擬感染ウェルおよびツール感度変動を補償するためのFLUORESBRITE(商標)ビーズを有する3つのウェルとともに、14種類の異なるウイルス構築物を3連で試験することが可能となる。(
図4A)48ウェルプレートの上半分のウェルは、6種類の異なるウイルスのゲノムプラスミドをトランスフェクトした細胞、模擬感染細胞、およびブランク(FLUORESBRITE(商標)ビーズ)を、それぞれ3連で含有する。(
図4B)48ウェルプレートの下半分のウェルは、8種類の異なるウイルスのゲノムプラスミドをトランスフェクトした細胞を、3連で含有する。マルチウェルプレートは、継続的な蛍光モニタリングのために、プレートリーダー(TECANプレートリーダーなど)に設置する。
【0013】
【
図5】
図5は、組換えウイルスを用いて開始した場合の例示的な動態アッセイ環境を概説する。このアッセイは、ウイルス力価の把握を必要としない。組換えウイルスを連続希釈し、これを使用して、マルチウェルプレートに播種した細胞に感染させる。示されている実施例では、96ウェルプレートを使用しており、各ウイルスを1:100、1:300、1:900、1:2700、1:8100、1:24,300、1:72,900、および1:218,700に希釈し、11種類のウイルスを同時に試験することが可能である。4つのウェルは模擬感染であり、ツールの感度および変動を補償するために、FLUORESBRITE(商標)ビーズを4つのウェルに入れる。マルチウェルプレートは、継続的な蛍光モニタリングのために、プレートリーダー(TECANプレートリーダーなど)に設置する。
【0014】
【
図6A】
図6A~6Cは、組換えアデノウイルスのコンビナトリアルアセンブリのためのAdsembly技法およびAdSLIC技法の概略図を示す。(
図6A)アデノウイルスゲノムを、4つのモジュール-E1、コア、E3、およびE4に分ける。(
図6B)Adsemblyは、マルチサイトGateway反応を使用したゲノムの再アセンブリを伴う。(
図6C)AdSLICは、配列およびライゲーション非依存性クローニング(SLIC)を利用して、アデノウイルスモジュールをアセンブリする。
【
図6B】
図6A~6Cは、組換えアデノウイルスのコンビナトリアルアセンブリのためのAdsembly技法およびAdSLIC技法の概略図を示す。(
図6A)アデノウイルスゲノムを、4つのモジュール-E1、コア、E3、およびE4に分ける。(
図6B)Adsemblyは、マルチサイトGateway反応を使用したゲノムの再アセンブリを伴う。(
図6C)AdSLICは、配列およびライゲーション非依存性クローニング(SLIC)を利用して、アデノウイルスモジュールをアセンブリする。
【
図6C】
図6A~6Cは、組換えアデノウイルスのコンビナトリアルアセンブリのためのAdsembly技法およびAdSLIC技法の概略図を示す。(
図6A)アデノウイルスゲノムを、4つのモジュール-E1、コア、E3、およびE4に分ける。(
図6B)Adsemblyは、マルチサイトGateway反応を使用したゲノムの再アセンブリを伴う。(
図6C)AdSLICは、配列およびライゲーション非依存性クローニング(SLIC)を利用して、アデノウイルスモジュールをアセンブリする。
【0015】
【
図7】
図7は、E1領域における蛍光タンパク質をコードする組換えアデノウイルスの自然対数スロープ(ln-slope)を示す、棒グラフである。直接的な融合による構築物YPet-E1A、ならびにそれぞれP2A部位を含有するYPet-P2A-E1A、E1A-P2A-mCherry、およびE1B-55k-P2A-YPet構築物の値を示す。YPet-P2A-ADP構築物は、比較のために示される。
【0016】
【
図8】
図8は、蛍光に基づくウイルス動態アッセイの動態データの分析および解釈の概略図である。
【0017】
【
図9A】
図9A~9Cは、Ad5、Ad9、またはAd34に由来し、E3-14.7k(またはAd9およびAd34におけるその同等物)ORFの3’に異種ORFを含有する、組換えアデノウイルスの自然対数スロープ値を示す、棒グラフである。293細胞(
図9A)、A549細胞(
図9B)、およびU2OS細胞(
図9C)におけるAd5(E3-14.7k-P2A-YPet、PCMN-887)、Ad9(E3-15k-P2A-YPet、PCMN-888)、およびAd34(E3-14.8k-P2A-YPet、PCMN-889)の値を示す。Ad5コア(E3-14.7k-P2A-YPetを含む)、ならびにAd9(Ad5/Ad9)またはAd34(Ad5/Ad34)のいずれかに由来するファイバーシャフト/ノブを含む、キメラウイルスの値もまた、それぞれの図に示す。
【
図9B】
図9A~9Cは、Ad5、Ad9、またはAd34に由来し、E3-14.7k(またはAd9およびAd34におけるその同等物)ORFの3’に異種ORFを含有する、組換えアデノウイルスの自然対数スロープ値を示す、棒グラフである。293細胞(
図9A)、A549細胞(
図9B)、およびU2OS細胞(
図9C)におけるAd5(E3-14.7k-P2A-YPet、PCMN-887)、Ad9(E3-15k-P2A-YPet、PCMN-888)、およびAd34(E3-14.8k-P2A-YPet、PCMN-889)の値を示す。Ad5コア(E3-14.7k-P2A-YPetを含む)、ならびにAd9(Ad5/Ad9)またはAd34(Ad5/Ad34)のいずれかに由来するファイバーシャフト/ノブを含む、キメラウイルスの値もまた、それぞれの図に示す。
【
図9C】
図9A~9Cは、Ad5、Ad9、またはAd34に由来し、E3-14.7k(またはAd9およびAd34におけるその同等物)ORFの3’に異種ORFを含有する、組換えアデノウイルスの自然対数スロープ値を示す、棒グラフである。293細胞(
図9A)、A549細胞(
図9B)、およびU2OS細胞(
図9C)におけるAd5(E3-14.7k-P2A-YPet、PCMN-887)、Ad9(E3-15k-P2A-YPet、PCMN-888)、およびAd34(E3-14.8k-P2A-YPet、PCMN-889)の値を示す。Ad5コア(E3-14.7k-P2A-YPetを含む)、ならびにAd9(Ad5/Ad9)またはAd34(Ad5/Ad34)のいずれかに由来するファイバーシャフト/ノブを含む、キメラウイルスの値もまた、それぞれの図に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(配列表)
添付の配列表に列挙されている核酸配列およびアミノ酸配列は、37 C.F.R.1.822に定義されるように、ヌクレオチド塩基の標準的な略字およびアミノ酸の3文字コードを使用して示されている。それぞれの核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、相補鎖は、提示された鎖に対する任意の参照により含まれると理解される。配列表は、2017年2月21日に作成された609KBのASCIIテキストファイルとして提出されており、参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表においては、以下の通りである。
【0019】
配列番号1は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-379(YPet-P2A-E1A)のヌクレオチド配列である。
【0020】
配列番号2は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-432(E1A-P2A-YPet)のヌクレオチド配列である。
【0021】
配列番号3は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-456(E1B-55k-P2A-YPet)のヌクレオチド配列である。
【0022】
配列番号4は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-499(E1B-55k-P2A-mCherry)のヌクレオチド配列である。
【0023】
配列番号5は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-530(YPet-P2A-(DNAポリ))のヌクレオチド配列である。
【0024】
配列番号6は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-886(DBP-P2A-YPet)のヌクレオチド配列である。
【0025】
配列番号7は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-403(YPet-P2A-ADP)のヌクレオチド配列である。
【0026】
配列番号8は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-429(ADP-P2A-YPet)のヌクレオチド配列である。
【0027】
配列番号9は、合成アデノウイルスゲノムPCMN-887(E3-14.7k-P2A-YPet)のヌクレオチド配列である。
【0028】
配列番号10は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-457(YPet-P2A-E4-ORF2)のヌクレオチド配列である。
【0029】
配列番号11は、合成アデノウイルスゲノムCMBT-633(mCherry-P2A-E4-ORF2)のヌクレオチド配列である。
【0030】
配列番号12は、P2Aのアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号13は、F2Aのアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号14は、E2Aのアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号15は、T2Aのアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号16は、N末端にGSGを含む修飾されたP2Aのアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号17は、N末端にGSGを含む修飾されたF2Aのアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号18は、N末端にGSGを含む修飾されたE2Aのアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号19は、N末端にGSGを含む修飾されたT2Aのアミノ酸配列である。
【0038】
配列番号20は、合成アデノウイルスゲノムPCMN-888(Ad9 E3-15k-P2A-YPet)のヌクレオチド配列である。
【0039】
配列番号21は、合成アデノウイルスゲノムPCMN-889(Ad34 E3-14.8k-P2A-YPet)のヌクレオチド配列である。
【0040】
I.略語
Ad アデノウイルス
ADP アデノウイルス死タンパク質
BFP 青色蛍光タンパク質
DBP DNA結合タンパク質
E2A ウマ鼻炎Aウイルス2A
ELISA 酵素結合免疫吸着法
ERAV ウマ鼻炎Aウイルス
F2A 口蹄疫ウイルス2A
FACS 蛍光活性化細胞分取
FMDV 口蹄疫ウイルス(food and mouth disease virus)
GFP 緑色蛍光タンパク質
MOI 感染多重度
OD 光学密度
ORF オープンリーディングフレーム
P2A ブタテッショウウイルス-1 2A
pIX タンパク質IX
PTV1 ブタテッショウウイルス-1
RFP 赤色蛍光タンパク質
SLIC 配列およびライゲーション非依存性クローニング
T2A Thosea asignaウイルス2A
TaV Thosea asignaウイルス
YFP 黄色蛍光タンパク質
【0041】
II.用語および方法
別途注記されない限り、技術用語は、従来の使用法に従って使用される。分子生物学における一般用語の定義は、Oxford University Pressによって1994年に刊行されたBenjamin Lewin、Genes V(ISBN 0-19-854287-9);Blackwell Science Ltd.によって1994年に刊行されたKendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology(ISBN 0-632-02182-9);およびVCH Publishers, Inc.によって1995年に刊行されたRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference(ISBN 1-56081-569-8)に見出すことができる。
【0042】
本開示の様々な実施形態の考察を容易にするために、特定の用語の説明を、以下に提供する。
【0043】
2Aペプチド:一部のRNAウイルス、例えば、ピコルナウイルスによってコードされる自己切断ペプチドの一種である。2Aペプチドは、リボソームが2AエレメントのC末端におけるペプチド結合の合成をスキップするようにし、2A配列の末端と下流のペプチドとの分離をもたらすことによって機能する(Kimら、PLoS One、6巻(4号)、e18556、2011年)。「切断」は、2AペプチドのC末端に見出されるグリシン残基とプロリン残基との間に生じる。例示的な2Aペプチドとしては、本明細書において配列番号12~15として記載されている、Thosea asignaウイルス(TaV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)、および口蹄疫ウイルス(FMDV)によってコードされる2Aペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、2Aペプチドは、切断効率を改善するために、N末端に、Gly-Ser-Glyを含む(配列番号16~19)。
【0044】
アデノウイルス:線形二本鎖DNAゲノムおよび正二十面体キャプシドを有する、非エンベロープ型ウイルスである。現在、ヒトアデノウイルスには、68種類の血清型が公知であり、7つの種(種A、B、C、D、E、F、およびG)に分類される。異なる血清型のアデノウイルスは、異なる種類の疾患と関連付けられており、一部の血清型は、呼吸器疾患(主として種BおよびC)、結膜炎(種BおよびD)、ならびに/または胃腸炎(種FおよびG)を引き起こす。
【0045】
アデノウイルス死タンパク質(ADP):他の細胞に感染するために細胞の溶解およびアデノウイルスの放出を媒介する、アデノウイルス感染の後期に合成されるタンパク質である。ADPは、核膜、小胞体、およびゴルジ体に局在化する、101個のアミノ酸の内在性膜糖タンパク質である。ADPは、以前、E3-11.6Kと称されていた)。
【0046】
キメラ:起源が異なる少なくとも2つの部分から構成されるものである。本開示の文脈において、「キメラアデノウイルス」とは、少なくとも2つの異なる血清型に由来する(例えば、Ad5および第2の血清型のアデノウイルスに由来する)遺伝物質および/またはタンパク質を有するアデノウイルスである。この文脈において、「キャプシド交換型」アデノウイルスとは、キャプシドタンパク質が、1つの血清型のアデノウイルスに由来し、残りのタンパク質が、別のアデノウイルス血清型に由来する、キメラアデノウイルスを指す。同様に、「キメラファイバー」とは、少なくとも2つの異なる血清型のアデノウイルスに由来するアミノ酸配列を有するファイバータンパク質である。例えば、キメラファイバーは、Ad5由来のファイバーシャフトおよび第2の血清型のアデノウイルスに由来するファイバーノブから構成され得る。別の実施例では、キメラファイバーは、Ad5テール、ならびに第2の血清型のアデノウイルス(Ad9またはAd34など)に由来するファイバーシャフトおよびノブから構成される。
【0047】
接触させること:直接的な物理的会合におくことであり、固体形態および液体形態の両方を含む。
【0048】
縮重バリアント:本開示の文脈において、「縮重バリアント」とは、遺伝子コードの結果として縮重となる配列を含むペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。天然のアミノ酸が20個あり、その大半が、1つを上回るコドンによって指定される。したがって、ヌクレオチド配列によってコードされるペプチドのアミノ酸配列が変化しない限り、そのペプチドをコードするすべての縮重ヌクレオチド配列が、含まれる。
【0049】
欠失した:「欠失した」タンパク質(E4orf1またはE4orf6/7タンパク質など)をコードするアデノウイルスゲノムは、タンパク質コーディング配列の完全な欠失、またはタンパク質発現の不在をもたらす部分的欠失を有するアデノウイルスを指す。
【0050】
E2Fの脱制御(deregulation):E2F転写因子および下流の標的遺伝子の活性の増加を指し、これは、ほぼすべての種類のヒトのがんにおいて生じる。E2F経路活性および転写の脱制御は、Rb、p107、およびp130腫瘍抑制因子の機能喪失変異および欠失など、経路の上流の任意の構成要素における様々な異なる変異の結果として生じ得る。Rbは、特定された最初の腫瘍抑制因子であり、ヒト腫瘍の少なくとも3分の1で、不在であるか、または変異している。加えて、p16変異および/またはエピジェネティックサイレンシングは、腫瘍細胞においてE2Fを活性化し得る。サイクリンDおよびCDK4の変異、遺伝子増幅、または過剰発現もまた、ヒト腫瘍においてE2F活性の脱制御をもたらし得る。加えて、E2Fは、EGFR、RTK、RAS、RAF、PI-3K、PTEN、RAF、MYCを含む、増殖因子受容体経路の変異によって活性化される。p16INK4a-サイクリンD:cdk4/6-RB-E2F経路における変異は、概して、相互排他的様式で生じるため、一方の「ヒット」(例えば、p16)が、他方(例えば、Rb変異またはサイクリンD:cdk過剰発現)を伴うことはない。しかしながら、現在の化学療法はほとんどが、E2Fの転写標的を阻害するが、正常な細胞に対しても毒性であり、破壊的な医原性合併症を有することの多い、増殖性の毒である。本明細書において開示されるように、代替的な治療的アプローチは、p16-サイクリンD:cdk4-RB-E2F経路の脱制御を有するがん細胞病変部において選択的な溶解性複製を起こすウイルスを使用することである。
【0051】
DNA結合タンパク質(DBP):このアデノウイルスタンパク質は、一本鎖DNAおよびRNA、ならびに二本鎖DNAに結合する。72キロダルトンのタンパク質であるDBPは、アデノウイルスDNAの複製に必須である。
【0052】
E1A:アデノウイルス初期領域1A(E1A)遺伝子およびこの遺伝子から発現されるポリペプチドである。E1Aタンパク質は、細胞を、細胞周期に入れることによって、ウイルスゲノム複製における役割を果たす。本明細書において使用されるとき、「E1Aタンパク質」という用語は、E1A遺伝子から発現されるタンパク質を指し、この用語には、あらゆるアデノウイルス血清型によって産生されるE1Aタンパク質が含まれる。
【0053】
E3-RIDα/RIDβおよびE3-14.7k:E3遺伝子によって産生される初期発現タンパク質である。E3-RIDα、E3-RIDβ、およびE3-14.7kタンパク質は、受容体内部移行分解複合体(receptor internalization and degradation complex)(RID)を成し、これが、核膜に局在化し、感染した細胞を宿主の抗ウイルス応答から保護するように、CD95(FasL受容体)ならびにTNFR1および2(TNF/TRAIL受容体)を含む様々な受容体のエンドサイトーシスおよび分解を引き起こす。E3-RIDα、E3-RIDβ、およびE3-14.7kのコーディング配列は、この順序で、互いに隣接している。
【0054】
E4orf1:E4遺伝子によって産生されるアデノウイルスタンパク質である。「E4orf1タンパク質」という用語には、あらゆるアデノウイルス血清型に由来するE4遺伝子によって産生されるE4orf1タンパク質が含まれる。
【0055】
E4orf6/7:アデノウイルスE4遺伝子によってコードされるタンパク質である。「E4orf6/7タンパク質」という用語には、あらゆるアデノウイルス血清型に由来するE4遺伝子によって産生されるE4orf6/7タンパク質が含まれる。
【0056】
蛍光タンパク質:特定の波長の光に曝露したときに、ある特定の波長の光を放出するタンパク質である。蛍光タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP、EGFP、AcGFP1、Emerald、Superfolder GFP、Azami Green、mWasabi、TagGFP、TurboGFP、およびZsGreenなど)、青色蛍光タンパク質(EBFP、EBFP2、Sapphire、T-Sapphire、Azurite、およびmTagBFPなど)、シアン蛍光タンパク質(ECFP、mECFP、Cerulean、CyPet、AmCyan1、Midori-Ishi Cyan、mTurquoise、およびmTFP1など)、黄色蛍光タンパク質(EYFP、Topaz、Venus、mCitrine、YPet、TagYFP、PhiYFP、ZsYellow1、およびmBanana)、橙色蛍光タンパク質(Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mOrange、mOrange2、およびmTangerine)、赤色蛍光タンパク質(mRuby、mApple、mStrawberry、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、HcRed1、mRaspberry、dKeima-Tandem、HcRed-Tandem、mPlum、AQ143、tdTomato、およびE2-Crimson)、橙色/赤色蛍光タンパク質(dTomato、dTomato-Tandem、TagRFP、TagRFP-T、DsRed、DsRed2、DsRed-Express(T1)、およびDsRed-Monomer)、ならびにこれらの修飾されたバージョンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
融合タンパク質:少なくとも2つの異なる(異種)タンパク質またはペプチドに由来するアミノ酸配列を含有するタンパク質である。融合タンパク質は、例えば、2つの異なる(異種)タンパク質の少なくとも一部分をコードする核酸配列から操作された核酸配列の発現によって、生成することができる。融合タンパク質を作出するためには、核酸配列は、同じリーディングフレーム内になければならず、内部終止コドンを含有してはならない。融合タンパク質、特に、短い融合タンパク質は、化学的合成によって生成することもできる。
【0058】
異種:異種タンパク質または異種ポリペプチドとは、異なる供給源または種に由来するタンパク質またはポリペプチドを指す。
【0059】
ヘキソン:主要なアデノウイルスキャプシドタンパク質である。
【0060】
単離された:「単離された」生物学的構成要素(核酸分子、タンパク質、ウイルス、または細胞など)は、その構成要素が天然に存在する、生物の細胞もしくは組織または生物自体における他の生物学的構成要素、例えば、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質、ならびに細胞から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製されたものが含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸分子およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸分子およびタンパク質を包含する。
【0061】
修飾:核酸の配列またはタンパク質配列における変化である。例えば、アミノ酸配列の修飾には、例えば、置換、挿入、および欠失、またはそれらの組合せが含まれる。挿入には、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに配列内への単一もしくは複数のアミノ酸残基の挿入が含まれる。欠失は、タンパク質配列からの、1つまたは複数のアミノ酸残基の除去によって特徴付けられる。本明細書における一部の実施形態では、修飾(置換、挿入、または欠失など)は、タンパク質の特定の活性の低減または強化など、機能の変化をもたらす。本明細書において使用されるとき、「Δ」または「デルタ」は、欠失を指す。置換修飾は、少なくとも1つの残基が、除去され、その場所に異なる残基が挿入されているものである。アミノ酸置換は、典型的に、単一の残基のものであるが、いくつかの異なる位置で同時に生じてもよい。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組合せを、最終的な変異体の配列に到達するように組み合わせてもよい。これらの修飾は、タンパク質をコードするDNAにおけるヌクレオチドの修飾によって調製することができ、それによって、この修飾をコードするDNAが産生される。公知の配列を有するDNAの所定の部位において、挿入、欠失、および置換の変異を行うための技法は、当該技術分野において周知である。「修飾された」タンパク質、核酸、またはウイルスは、上記に概説された1つまたは複数の修飾を有するものである。
【0062】
新形成、悪性疾患、がん、および腫瘍:新生物は、過剰な細胞分裂の結果として生じる、組織または細胞の異常な増殖である。新生物性増殖により、腫瘍が産生され得る。個体における腫瘍の量は、「腫瘍量」であり、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる。転移しない腫瘍は、「良性」と称される。周囲の組織に侵入する、および/または転移し得る腫瘍は、「悪性」と称される。悪性腫瘍は、「がん」とも称される。
【0063】
血液系がんは、血液または骨髄のがんである。血液系(または造血系)がんの例としては、白血病、例えば、急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、ならびに骨髄芽球性、前骨髄球性(promyelocytic)、骨髄単球性、単球性、および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ性白血病など)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無痛性および高悪性度形態)、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞性白血病、ならびに脊髄形成異常が挙げられる。一部の事例では、リンパ腫は、固形腫瘍とみなされる。
【0064】
固形腫瘍は、通常は嚢胞も液体区域も含有しない、異常な組織の塊である。固形腫瘍は、良性の場合も悪性の場合もある。異なる種類の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類に応じて命名される(肉腫、癌腫、およびリンパ腫など)。肉腫および癌腫など、固形腫瘍の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜性腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵臓がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭状癌、褐色細胞腫、脂腺癌、乳頭状癌、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染新形成、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーム、胆管癌、絨毛癌、ウイルムス腫瘍、子宮頸がん(cervical cancer)、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(膠腫など(脳幹膠腫および混合性膠腫など)、膠芽腫(多形性膠芽腫としても公知である)星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽細胞腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、および脳転移など)が挙げられる。
【0065】
腫瘍溶解性ウイルス:増殖性障害の細胞、例えば、がん/腫瘍細胞を、選択的に殺滅させるウイルスである。がん細胞の殺滅は、任意の方法、例えば、生存細胞数を決定すること、またはがん細胞における細胞変性効果、アポトーシス、もしくはウイルスタンパク質の合成(例えば、複製に必要なウイルス遺伝子の代謝標識、イムノブロット、もしくはRT-PCRによって)または腫瘍のサイズの低減を検出することによって、検出することができる。
【0066】
作動可能に連結した:第1の核酸配列が、第2の核酸配列との機能的関係にある場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列に作動可能に連結している。例えば、プロモーターが、コーディング配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは、コーディング配列に作動可能に連結している。一般に、作動可能に連結したDNA配列は、連続的であり、2つのタンパク質コーディング領域を接合する必要がある場合、同じリーディングフレーム内にある。
【0067】
ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質:モノマーがアミノ酸残基であり、それらが、アミド結合を通じて一緒に接合された、ポリマーである。アミノ酸が、アルファアミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれも使用することができる。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において互換可能に使用される。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。「残基」または「アミノ酸残基」という用語には、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに組み込まれているアミノ酸への参照が含まれる。
【0068】
ポリペプチドにおける保存的置換は、タンパク質配列における1つのアミノ酸残基を、類似の生物学的特質を有する異なるアミノ酸残基の代わりに使用することである。典型的に、保存的置換は、結果として得られるポリペプチドの活性にほとんど影響を及ぼさないかまたは全く影響を及ぼさない。例えば、1つまたは複数の保存的置換(例えば、1つを上回らない、2つを上回らない、3つを上回らない、4つを上回らない、または5つを上回らない置換)を含むタンパク質またはペプチドは、野生型のタンパク質またはペプチドの構造および機能を保持する。ポリペプチドは、例えば、部位特異的変異誘発またはPCRなどの標準的な手順を使用して、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を操作することによって、1つまたは複数の保存的置換を含有するように産生させることができる。一実施例では、そのようなバリアントは、抗体の交差反応性または抗体が免疫応答を誘導する能力を試験することによって、容易に選択することができる。保存的置換の例を、以下に示す。
【表1】
【0069】
保存的置換は、一般に、(a)置換の区域における、例えば、シートコンフォメーションもしくはヘリックスコンフォメーションとしての、ポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さを維持する。
【0070】
一般に、タンパク質特質に最も大きな変化をもたらすことが予測される置換は、非保存的なもの、例えば、(a)親水性残基、例えば、セリルもしくはスレオニルが、疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、もしくはアラニルを置換する(もしくはそれらによって置換される)変化、(b)システインもしくはプロリンが、任意の他の残基を置換する(もしくはそれらによって置換される)変化、(c)電気陽性の側鎖を有する残基、例えば、リシル、アルギニル、もしくはヒスタジルが、電気陰性の残基、例えば、グルタミルもしくはアスパルチルを置換する(もしくはそれらによって置換される)変化、または(d)嵩高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を有さないもの、例えば、グリシンを置換する(もしくはそれらによって置換される)変化であろう。
【0071】
プロモーター:核酸(例えば、遺伝子)の転写を導く/開始するDNAの領域である。プロモーターは、転写の開始部位の近傍の必要な核酸配列を含む。典型的に、プロモーターは、転写する遺伝子の近傍に位置する。プロモーターはまた、任意選択で、転写開始部位から数千塩基対程度離れて位置し得る、遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントも含む。「構成的プロモーター」は、継続的に活性であり、外部シグナルまたは分子による制御に供されないプロモーターである。対照的に、「誘導的プロモーター」の活性は、外部シグナルまたは分子(例えば、転写因子またはテトラサイクリン)によって制御される。
【0072】
タンパク質IX(pIX):ヘキソンタンパク質と会合するアデノウイルスキャプシドの主要ではない構成要素である。
【0073】
精製された:「精製された」という用語は、絶対的な純度を必要とするものではなく、相対的な用語として意図される。したがって、例えば、精製されたペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物は、天然に会合するタンパク質および他の混入物質から、全体または部分的に単離されているものである。ある特定の実施形態では、「実質的に精製された」という用語は、細胞、細胞培養培地、または他の粗調製物から単離されており、初期調製物の様々な構成要素、例えば、タンパク質、細胞残屑、および他の構成要素を除去するために分画に供されている、ペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物を指す。
【0074】
組換え:組換え核酸分子、タンパク質、またはウイルスは、天然に存在しない配列を有するもの、または他の点で別個である配列の2つのセグメントの人工的な組合せによって作製された配列を有するものである。この人工的な組合せは、化学的合成によって、または単離された核酸分子のセグメントの人工的な操作によって、例えば、遺伝子操作技法によって、達成することができる。「組換え」という用語には、天然の核酸分子、タンパク質、またはウイルスの一部分の付加、置換、または欠失のみによって変化されている、核酸、タンパク質、およびウイルスも含まれる。
【0075】
複製欠損:(腫瘍細胞と比較して)非腫瘍細胞において「複製欠損」を呈するアデノウイルスは、正常細胞において、腫瘍細胞と比較して低減されたウイルス複製を呈するアデノウイルスを指す。複製欠損は、例えば、腫瘍細胞と比較して、正常細胞におけるウイルス後期タンパク質発現の欠如、ウイルスDNA合成の低減、E2F標的遺伝子(例えば、サイクリンAおよびB)を誘導する能力の低減、S期進入を誘起する能力の低減、ならびに/または細胞殺滅を誘導する能力の低減によって、明らかである。
【0076】
複製欠乏ウイルス:所与の表現型を有する所定の細胞集団(例えば、E2F経路の脱制御を有する腫瘍細胞)において、細胞増殖を優先的に阻害するか、細胞溶解を引き起こすか、またはアポトーシス(集合的に、殺滅とみなされる)を誘導する、ウイルスである。そのようなウイルスは、細胞増殖の低減もしくは阻害、細胞溶解の発生、アポトーシスの誘導、またはそれ以外では所定の細胞表現型を有さない細胞(正常な非腫瘍細胞など)における複製を行うことができないか、またはその能力が限定されている。
【0077】
自己切断ペプチド:リボソームがC末端におけるペプチド結合の合成をスキップするように誘導し、そのペプチド配列と下流のポリペプチドとの分離をもたらす、ペプチドである。ウイルスによってコードされる2Aペプチドは、自己切断ペプチドの一種である。ウイルスによってコードされる2Aペプチドとしては、例えば、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)、およびThosea asignaウイルス(TaV)に由来する2Aペプチドが挙げられる。
【0078】
配列同一性:2つもしくはそれよりも多い核酸配列間または2つもしくはそれよりも多いアミノ酸配列間における同一性または類似性は、配列間の同一性または類似性として表される。配列同一性は、同一性の割合として測定することができ、割合が高いほど、配列がより同一である。配列類似性は、類似性(保存的アミノ酸置換を考慮に入れる)の割合として測定することができ、割合が高いほど、配列がより類似している。核酸配列またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的な方法を使用してアラインメントした場合に、比較的高い程度の配列同一性/類似性を有する。この相同性は、オルソロガスなタンパク質またはcDNAが、より緊密に関連する種に由来する場合に(例えば、ヒト配列およびマウス配列)、関連性がより遠い種(例えば、ヒト配列およびC.Elegans配列)と比較して、より顕著である。
【0079】
比較のための配列のアラインメント方法は、当該技術分野において周知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、説明されている:SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math.、2巻482頁、1981年;NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol.、48巻、443頁、1970年;PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA、85巻、2444頁、1988年;HigginsおよびSharp、Gene、73巻、237~44頁、1988年;HigginsおよびSharp、CABIOS、5巻、151~3頁、1989年;Corpetら、Nuc. Acids Res.、16巻、10881~90頁、1988年;Huangら、Computer Appls. in the Biosciences、8巻、155~65頁、1992年;ならびにPearsonら、Meth. Mol. Bio.、24巻、307~31頁、1994年。Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻、403~10頁、1990年は、配列アラインメント方法および相同性の計算に関する詳細な考察を提示している。
【0080】
NCBIのBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻、403~10頁、1990年)が、National Center for Biological Information(NCBI)およびインターネットを含む、複数の供給元から、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxと併せて使用するために、入手可能である。追加の情報は、NCBIのウェブサイトにおいて見出すことができる。
【0081】
血清型:特徴的な抗原セットによって区別される緊密に関連する微生物(ウイルスなど)の群である。
【0082】
被験体:ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むカテゴリーの、生きた多細胞脊椎動物の生物である。
【0083】
合成:研究室において人工的な手段によって産生されたものであり、例えば、合成核酸またはタンパク質は、研究室において化学的に合成され得る。
【0084】
Uエクソン(Uexon):l鎖(左方向への転写)において初期E3領域とファイバー遺伝子との間に位置するオープンリーディングフレームである(Tollefsonら、J Virol、81巻(23号)、12918~12926頁)。
【0085】
別途説明されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、文脈により別途明確に示されない限り、複数形の参照物を含む。「AまたはBを含む」とは、A、もしくはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに関して与えられる、すべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量値は、およそのものであり、説明のために提供されることを、さらに理解されたい。本明細書において記載されるものに類似であるかまたはそれと同等である方法および材料を、本開示の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が、以下に記載されている。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾が生じた場合には、用語の説明を含め、本明細書が優先される。加えて、材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0086】
III.実施形態の概要
異種オープンリーディングフレーム(ORF)および自己切断ペプチドコーディング配列を含む、組換えアデノウイルスゲノムが、本明細書において開示される。組換えアデノウイルスゲノムおよび開示されるゲノムによって産生される組換えアデノウイルスは、例えば、ウイルス複製動態を測定するための高スループットアッセイにおいて使用することができる。
【0087】
異種ORFおよび自己切断ペプチドコーディング配列を、いずれも内因性アデノウイルスORFと同じリーディングフレーム内に、それと作動可能に連結した状態で含む、組換えアデノウイルスゲノムが、本明細書において提供される。自己切断ペプチドコーディング配列は、異種ORFと内因性ORFとの間に位置する。一部の実施形態では、内因性ORFが、E1B-55kであり、異種ORFが、E1B-55kの3’にあるか、内因性ORFが、DNAポリメラーゼであり、異種ORFが、DNAポリメラーゼの5’にあるか、内因性ORFが、DNA結合タンパク質(DBP)であり、異種ORFが、DBPの3’にあるか、内因性ORFが、アデノウイルス死タンパク質(ADP)であり、異種ORFが、ADPの5’にあるか、内因性ORFが、E3-14.7kであり、異種ORFが、E3-14.7kの3’にあるか、または内因性ORFが、E4-ORF2であり、異種ORFが、E4-ORF2の5’にある。
【0088】
一部の実施形態では、自己切断ペプチドは、2Aペプチドまたはそのバリアントである。一部の実施例では、2Aペプチドは、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)2A(P2A)ペプチド、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチド、またはThosea asignaウイルス(TaV)2A(T2A)ペプチド、またはそれらのバリアントを含む。特定の実施例では、P2Aペプチド配列は、配列番号12または配列番号16のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。一部の実施例では、2Aペプチドバリアントは、N末端に追加のアミノ酸配列(GSGなど)を含む。
【0089】
特定の実施例では、F2Aペプチド配列は、配列番号13または配列番号17のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。特定の実施例では、E2Aペプチド配列は、配列番号14または配列番号18のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。特定の実施例では、T2Aペプチド配列は、配列番号15または配列番号19のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。特定の非限定的な実施例では、自己切断ペプチドは、配列番号12~19のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0090】
一部の実施形態では、異種ORFは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、または青色蛍光タンパク質(BFP)などであるがこれらに限定されない、蛍光タンパク質をコードする。例示的な蛍光タンパク質は、当該技術分野において公知であり、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
BFP-EBFP、EBFP2、Sapphire、T-Sapphire、Azurite、mTagBFP、
シアン蛍光タンパク質-ECFP、mECFP、Cerulean、CyPet、AmCyan1、Midori-Ishi Cyan、mTurquoise、mTFP1、
GFP-GFP、EGFP、AcGFP1、Emerald、Superfolder GFP、Azami Green、mWasabi、TagGFP、TurboGFP、ZsGreen、
YFP-EYFP、Topaz、Venus、mCitrine、YPet、TagYFP、PhiYFP、ZsYellow1、mBanana、
橙色蛍光タンパク質-Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mOrange、mOrange2、mTangerine、
橙色または赤色蛍光タンパク質-dTomato、dTomato-Tandem、TagRFP、TagRFP-T、DsRed、DsRed2、DsRed-Express(T1)、DsRed-Monomer、および
RFP-mRuby、mApple、mStrawberry、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、HcRed1、mRaspberry、dKeima-Tandem、HcRed-Tandem、mPlum、AQ143、tdTomato、E2-Crimson。
【0091】
特定の非限定的な実施例では、YFPが、YPetであるか、またはRFPが、mCherryである。
【0092】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスゲノムは、5’から3’の方向に、E1B-55K-P2A-YPet、E1B-55K-P2A-mCherry、YPet-P2A(DNAポリメラーゼ)、DBP-P2A-YPet、YPet-P2A-ADP、E3-14.7k-P2A-YPet、YPet-P2A-E4-ORF2、またはmCherry-P2A-E4-ORF2を含む。一部の実施例では、組換えアデノウイルスゲノムのヌクレオチド配列は、配列番号3~7、9~11、20、および21のうちのいずれか1つに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。特定の非限定的な実施例では、組換えアデノウイルスゲノムのヌクレオチド配列は、配列番号3~7、9~11、20、および21のうちのいずれか1つを含むか、またはそれからなる。
【0093】
一部の実施形態では、アデノウイルスは、アデノウイルス5型(Ad5)である。他の実施形態では、アデノウイルスは、Ad2、Ad3、Ad9、Ad11、Ad12、またはAd34である。さらに他の実施形態では、アデノウイルスは、キメラアデノウイルス、例えば、Ad5/Ad9またはAd5/Ad34キメラアデノウイルスであるが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書において開示される組換えアデノウイルスゲノムを含む、組換えアデノウイルスが、本明細書においてさらに提供される。
【0095】
組換えアデノウイルス、例えば、本明細書において開示される組換えアデノウイルスの複製動態を測定するための方法もまた、提供される。一部の実施形態では、組換えアデノウイルスのゲノムは、蛍光タンパク質をコードする異種ORFおよび自己切断ペプチドコーディング配列を、いずれもE1B-55k、DNAポリメラーゼ、DNA結合タンパク質(DBP)、アデノウイルス死タンパク質(ADP)、E3-14.7k、およびE4-ORF2から選択される内因性アデノウイルスORFと同じリーディングフレーム内に、それらと作動可能に連結した状態で含む。自己切断ペプチドコーディング配列は、異種ORFと内因性アデノウイルスORFとの間に位置する。一部の実施形態では、本方法は、細胞に、組換えアデノウイルスのゲノムをトランスフェクトするか、または細胞に、組換えアデノウイルスの粒子を感染させることと、トランスフェクトした細胞または感染させた細胞を少なくとも2日間培養することと、培養期間の間、規則的な間隔で蛍光を測定することと、蛍光測定値から対数スロープを計算することとを含む。一部の実施例では、細胞は、マルチウェルプレートにおいて培養される。
【0096】
一部の実施形態では、内因性ORFが、E1B-55kであり、異種ORFが、E1B-55kの3’にあるか、内因性ORFが、DNAポリメラーゼであり、異種ORFが、DNAポリメラーゼの5’にあるか、内因性ORFが、DNA結合タンパク質(DBP)であり、異種ORFが、DBPの3’にあるか、内因性ORFが、アデノウイルス死タンパク質(ADP)であり、異種ORFが、ADPの5’にあるか、内因性ORFが、E3-14.7kであり、異種ORFが、E3-14.7kの3’にあるか、または内因性ORFが、E4-ORF2であり、異種ORFが、E4-ORF2の5’にある。一部の実施例では、組換えアデノウイルスは、第2の異種ORFをさらに含む。
【0097】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスの複製動態は、第1の細胞型および第2の細胞型において測定される。一部の実施例では、第1の細胞型は、腫瘍細胞(上記に列挙された腫瘍型のうちのいずれかに由来するなど)であり、第2の細胞型は、非腫瘍細胞(正常な哺乳動物細胞など)である。
【0098】
一部の実施形態では、トランスフェクトした細胞または感染させた細胞は、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、または少なくとも7日間、培養される。一部の実施例では、トランスフェクトした細胞または感染させた細胞は、約2日間~約14日間、例えば、約4日間~約12、または約6日間~約10日間、培養される。特定の非限定的な実施例では、トランスフェクトした細胞または感染させた細胞は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約8、約9、約10、約11、約12、約13、または約14日間、培養される。
【0099】
一部の実施形態では、蛍光は、およそ2分ごと、4分ごと、6分ごと、8分ごと、10分ごと、15分ごと、20分ごと、30分ごと、45分ごと、60分ごと、90分ごと、または120分ごとに測定される。一部の実施例では、蛍光は、TECAN(商標)蛍光プレートリーダーなどの蛍光プレートリーダーを使用して測定される。
【0100】
ウイルス複製動態アッセイの一部の実施形態では、本方法は、細胞に、組換えアデノウイルスのゲノムをトランスフェクトすることを含む。一部の実施例では、トランスフェクションにより、細胞のうちのおよそ5~10%がトランスフェクトされる。
【0101】
ウイルス複製動態アッセイの他の実施形態では、本方法は、細胞に、組換えアデノウイルスの粒子を感染させることを含む。一部の実施例では、細胞に、組換えアデノウイルス粒子の連続希釈物を感染させる。好適な数のウイルス希釈物が、当業者によって選択され得る。一部の実施例では、ウイルスの約4回~約24回希釈物、例えば、約4回~約20回、約6回~約16回、または約8回~約12回希釈物が、アッセイにおいて使用される。特定の実施例では、少なくとも4回、少なくとも5回、約6回、約7回、または少なくとも8回希釈物が、アッセイにおいて使用される。特定の非限定的な実施例では、希釈は、1:100、1:300、1:900、1:2700、1:8100、1:24,300、1:72,900、および1:218,700である。
【0102】
一部の実施形態では、本方法は、患者から得られた腫瘍細胞において組換えアデノウイルスの複製動態を測定することによって、患者の腫瘍の処置に適切な治療用アデノウイルスを選択することを含み、ここで、組換えアデノウイルスは、治療用アデノウイルスの治療用ORFが蛍光タンパク質をコードするORFと置き換えられていることを除き、治療用アデノウイルスに相当する。一部の実施例では、治療用アデノウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルスである。一部の実施例では、腫瘍細胞は、生検によって得られる。
【0103】
一部の実施形態では、本方法は、患者から得られた腫瘍細胞において組換えアデノウイルスの複製動態を測定することによって、治療用アデノウイルスでの処置に応答するであろうがん患者を選択することを含み、ここで、組換えアデノウイルスは、治療用アデノウイルスの治療用ORFが蛍光タンパク質をコードするORFと置き換えられていることを除き、治療用アデノウイルスに相当する。この方法は、例えば、がん患者を、特定の治療用アデノウイルスに対する予測レスポンダーおよび予測非レスポンダーに層別化するために使用することができる。一部の実施例では、治療用アデノウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルスである。一部の実施例では、腫瘍細胞は、生検によって得られる。
【0104】
一部の実施形態では、本方法は、患者から得られた腫瘍細胞において組換えアデノウイルスのパネルの複製動態を測定することによって、患者の腫瘍にとって最も有効な治療用アデノウイルスを特定することを含み、ここで、組換えアデノウイルスは、治療用アデノウイルスの治療用ORFが蛍光タンパク質をコードするORFと置き換えられていることを除き、治療用アデノウイルス候補に相当する。一部の実施例では、治療用アデノウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルスである。一部の実施例では、腫瘍細胞は、生検によって得られる。
【0105】
本明細書において開示される組換えアデノウイルスゲノムまたは組換えアデノウイルスと、細胞、細胞培養培地、および/またはマルチウェルプレートとを含む、キットが、本明細書においてさらに提供される。一部の実施形態では、細胞は、腫瘍細胞(本明細書において列挙される腫瘍型のうちのいずれかに由来する細胞など)である。一部の実施形態では、細胞は、非腫瘍細胞である。一部の実施形態では、細胞培養培地は、高いシグナル対バックグラウンド比をもたらすように選択される。一部の実施例では、細胞培養培地は、フェノールレッド不含である。一部の実施形態では、マルチウェルプレートは、48ウェル、96ウェル、または384ウェルのプレートである。特定の実施例では、マルチウェルプレートは、TECAN(商標)蛍光プレートリーダーなどの蛍光プレートリーダーで読み取ることができる任意のプレートである。
【0106】
IV.外因性ORFの最適な配置
36kbのアデノウイルスゲノムは、小型であり、様々な遺伝子のコーディングにトップストランド(top strand)とボトムストランド(bottom strand)の両方を使用する。アデノウイルスゲノム内の多数の位置において、トップストランドとボトムストランドとの両方が、別個の遺伝子のコーディングに同時に使用される。ゲノムのサイズは、そのキャプシドへの挿入に最適となるように進化してきた。結果として、外因性遺伝子の挿入は、キャプシドのサイズ容量によって制限されるが、これは、外因性核酸の過剰な追加により、キャプシドへのゲノムローディング(genome loading)が不完全となり、ウイルス動態が低減されるためである。
【0107】
アデノウイルスゲノムにおいて利用できる空間が制限されていることにより提示される課題の解決策は、外因性オープンリーディングフレーム(ORF)を、融合生成物として本来のアデノウイルスORF内に位置づけることである。この戦略は、すでにゲノムにコードされているアデノウイルスプロモーター、5’UTR、およびポリA尾部を利用する。しかしながら、本来のアデノウイルスタンパク質と外因性タンパク質との融合体の発現は、一方または両方のタンパク質機能に有害となり得、アデノウイルス複製動態の有意な減少をもたらし得る。
【0108】
本開示は、本来のORFと外因性ORFとの間に配置される自己切断ペプチド配列を使用することによって、この問題に対する解決策を提供する。単一のmRNA上の2つのORFの間に配置された場合、自己切断ペプチド配列の存在により、リボソームスキップが生じ、第1のタンパク質が第2のタンパク質とは別個に放出される。本明細書において開示される一部の実施形態では、自己切断ペプチドは、2Aペプチド(P2A)である。
【0109】
アデノウイルスゲノム内における外因性ORFの最適な配置部位の特定もまた、本明細書において開示される。自己切断ペプチド配列と、外因性ORFの良好な配置とを組み合わせることにより、高い発現がもたらされ、ウイルス動態に及ぼす影響が最小限となるか全くなくなる。ウイルス複製動態を測定するための高スループットアッセイにおける、外因性遺伝子を発現する組換えアデノウイルスの使用が、本明細書においてさらに開示される。
【0110】
以下の実施例1に記載されるように、異種ORFを挿入したときにアデノウイルス複製動態が阻害されなかった、アデノウイルスゲノム内の複数の部位が、特定された。具体的には、異種ORFは、E1B-55k ORFのC末端側、DNAポリメラーゼORFのN末端側、DBP ORFのC末端側、ADP ORFのN末端側、E3-14.7k ORFのC末端側、またはE4-ORF2のN末端側に挿入することができると決定された。それぞれの事例において、自己切断ペプチド配列(P2A部位)を、アデノウイルスORFと異種ORFとの間に挿入した。したがって、本開示は、複製動態を測定するためのアッセイにおける、以下の組換えアデノウイルスの使用を企図する(「SC」は、P2Aなど、自己切断ペプチドをコードする配列を指す)。
E1B-55k-SC-異種ORF
異種ORF-SC-(DNAポリメラーゼ)
DBP-SC-異種ORF
異種ORF-SC-ADP
E3-14.7k-SC-異種ORF
異種ORF-SC-E4-ORF2
【0111】
本明細書における一部の実施形態では、自己切断ペプチドは、ウイルスによってコードされる2Aペプチド、または以下にさらに記載されるようなその修飾バージョンである。
【0112】
V.自己切断ペプチド配列
自己切断ペプチドは、リボソームがC末端におけるペプチド結合の合成をスキップするように誘導し、そのペプチド配列と下流のポリペプチドとの分離をもたらす、ペプチドである。自己切断ペプチドの使用により、単一のORFから、自己切断ペプチドに隣接する複数のタンパク質の発現が可能となる。ウイルスによってコードされる2Aペプチドは、自己切断ペプチドの一種である。
【0113】
他の自己切断ペプチドと同様に、2Aペプチドは、リボソームが2AエレメントのC末端におけるペプチド結合の合成をスキップするようにし、2A配列の末端と下流のペプチドとの分離をもたらすことによって機能する(Kimら、PLoS One、6巻(4号)、e18556、2011年)。「切断」は、2AペプチドのC末端に見出されるグリシン残基とプロリン残基との間に生じる。例示的な2Aペプチドとしては、Thosea
asignaウイルス(TaV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)、および口蹄疫ウイルス(FMDV)によってコードされる2Aペプチド、またはそれらの修飾バージョンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
本明細書における特定の実施例では、2Aペプチドは、PTV1 2A(P2A)、FMDV 2A(F2A)、ERAV 2A(E2A)、またはTaV 2A(T2A)を含み、これらの配列は、配列番号12~15として、以下に示され、本明細書に記載されている。
P2A:ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号12)
F2A:VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号13)
E2A:QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号14)
T2A:EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号15)
【0115】
一部の実施例では、2Aペプチドは、切断効率を改善するために、N末端に、Gly-Ser-Glyを含むように修飾される。修飾されたP2A、F2A、E2A、およびT2Aの配列は、配列番号16~19として、以下に示され、本明細書に記載されている。
修飾されたP2A:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号16)
修飾されたF2A:GSGVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号17)
修飾されたE2A:GSGQCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号18)
修飾されたT2A:GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号19)
【0116】
一部の実施形態では、2Aポリペプチドは、本明細書において開示される2Aポリペプチドのバリアントである。バリアントは、野生型または本明細書において開示される修飾された2Aポリペプチドに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれよりも高い配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。バリアントは、例えば、配列番号12~19のうちのいずれか1つの2Aポリペプチドから、少なくとも1つのN末端アミノ酸が欠失しているもの、例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸(列挙された値のうちのいずれか2つの間の範囲を含む)が欠失しているものを含み得る。バリアントは、配列番号12~19のうちのいずれか1つの2Aポリペプチドから、少なくとも1つのC末端アミノ酸が欠失しているもの、例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸(列挙された値のうちのいずれか2つの間の範囲を含む)が欠失しているものを含み得る。バリアントは、少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換も含み得る。
【0117】
VI.組織培養物においてウイルス動態をモニタリングするための方法
選択的に複製するウイルスの評価のための重要な基準は、複数回の複製にわたり、がん細胞と正常細胞との間で、ウイルス増殖動態を比較することである。ウイルス複製におけるわずかな差は、高いMOIではマスクされ得る。複数回のウイルス複製を測定することにより、この問題を克服することができる。
【0118】
高速なウイルス動態アッセイの必要性に対処するためには、ウイルス複製動態の体系的高スループットスクリーニングが必要である。ウイルス複製を評価する現在の方法は、ルシフェラーゼまたはレポーターが組み込まれた特定の細胞株に頼ることが多い。しかしながら、コードされたレポーターによって付与される導入遺伝子発現の活性およびレベルは、ウイルス複製自体ではなく、細胞生存度を測定するものである。さらに、アデノウイルスタンパク質は、全体的な遺伝子発現(p300、E2F、CBP、媒介因子、スプライシングなど)を破壊する。
【0119】
アデノウイルス複製を評価する現在の方法は、ある特定の細胞型においてのみ使用することができ、Ad5特異的抗体に依存し、全ウイルスライフサイクルを複数回にわたって測定するものではなく、ウイルス力価の把握を必要とし、ウイルスプラスミドのトランスフェクションを使用することができず、ウイルス複製を定量化するものではなく、細胞殺滅を予測するものではなく、異なるサブグループ間での比較が可能ではない、間接的で感度の低いエンドポイントアッセイである。
【0120】
現在使用されているアッセイとしては、(1)ウエスタンブロットによるAd5後期ウイルスタンパク質の測定、(2)q-PCRによるアデノウイルスゲノムの測定、(3)特殊かつ限定された細胞型におけるプラークアッセイ、(4)細胞生存度アッセイを使用したウイルス複製の間接的な測定(wst-1/mttなど)、ならびに(5)アデノウイルス特異的抗体を使用したELISAおよび/またはFACSが挙げられる。
【0121】
これらのアッセイのそれぞれは、著しい欠点を有する。最初の2つの方法は、ウイルス取込み、遺伝子発現、ウイルス遺伝子複製、キャプシドアセンブリ、キャプシドへのゲノムローディング、溶解、拡散、および生産的二次感染などのステップを含む、全ウイルスライフサイクルを測定するものではなく、したがって、これらの方法の有用性は著しく制限される。
【0122】
プラークアッセイは、特殊な細胞株ならびに効率的なウイルス感染および相補性が必要なため、68種類ある異なるAd血清型の複製を比較することが困難となっている。加えて、プラークアッセイは、細胞が、寒天のオーバーレイに耐える必要があるが、これは、限られた細胞型でしか可能ではない。さらに、プラークアッセイは、本質的に、主観的であり、手がかかり、ウイルス複製が選択的に減損されているかまたは強化されている場合(例えば、初回感染、遺伝子発現、複製、溶解など)に関する見識は提供しない。さらに、プラークアッセイまたはELISAなどの方法によるキャプシド交換型ウイルスの適正な力価の決定は、細胞型の選択が、ウイルス進入に影響を及ぼし得るため、可能ではない。また、Ad5抗体は、ウイルス親和性を変化させるために用いられたファイバー交換を認識しない。
【0123】
ELISAアッセイおよびFACSアッセイに関して、これらの方法は、アデノウイルスタンパク質に特異的な抗体を使用し、FACSまたはELISAにより抗体の結合を検出することによって力価を定量化することに依存する。しかしながら、従来のアッセイにおいて使用される抗体は、特定の血清型しか認識せず、ウイルスの動態または異なるアデノウイルスを比較するためには使用することができない。なぜなら、それらが、利用可能な抗体によって認識されないためである。
【0124】
本明細書において開示されるように、1つまたは複数のウイルスタンパク質と同時に発現される蛍光レポーターを組み込むことにより、細菌または酵母の増殖を測定するために使用されるものと類似の方法を使用して、ウイルス動態を測定することが可能となる。本明細書において開示される方法では、細菌または酵母培養物の光学密度(OD)を測定して対数スロープ増殖速度を決定するのと同様に、蛍光発現レベルを経時的にモニタリングし、対数増殖曲線に当てはめる。対数スロープが、唯一の関連パラメーターであるため、この方法は、初期感染力価における変動または誤差に対してロバストであり、精製されたビリオンによる感染ではなく、全ゲノムプラスミドのトランスフェクションを用いることすら可能である。
【0125】
組織培養物において経時的にフルオロフォアの発現をモニタリングすることにより、非侵襲的な複数時点でのウイルス進行に関する尺度が得られる。これらの測定値は、複数回の複製にわたるウイルス動態に関する詳細な情報を提供し、したがって、ウイルスのライフサイクルのすべての態様を含む。
【0126】
本明細書において開示される蛍光に基づくアッセイは、高スループットであり、初期ウイルス力価およびウイルス進入の変動に寛容である。このアッセイは、初期条件に対する寛容性が非常に高いため、ビリオン産生および精製をスキップし、単純に、これまでに説明されているAdsemblyおよびAdSLICプロトコールによって産生した全ゲノムプラスミドの直接的なトランスフェクションを使用することが可能である(国際公開第2012/024351号を参照されたく、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。数週間の時間、多量の試薬、培地、および組織培養の供給物質が、このプロセスでは省かれる。本明細書において開示されるアッセイは、高速かつ正確なウイルス構築物の評価になくてはならないツールである。
【0127】
加えて、ウイルス動態を評価する方法は、あらゆるアデノウイルス血清型、ならびにあらゆる細胞型に適用することができ、開始ウイルス力価、選択されたフルオロフォアの種類、およびウイルスタンパク質の半減期に依存することがない。
【0128】
ウイルス動態は、一部の事例では、最大約10日間にわたる、複数の時点にわたって測定された蛍光の対数スロープから決定される。それぞれがおよそ48時間続く複数のウイルスライフサイクルを捕捉するためには、この時間の長さが、最適であることが多い。一部の実施形態では、蛍光は、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、または少なくとも7日間、測定される。一部の実施例では、蛍光は、約2日間~約14日間、例えば、約4日間~約12、または約6日間~約10日間、測定される。特定の非限定的な実施例では、蛍光は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約8、約9、約10、約11、約12、約13、または約14日間、測定される。
【0129】
それぞれが潜在的に異なるフルオロフォアおよびシグナルレベルを有する異なるウイルス構築物間での動態の比較は、対数スロープの使用によって対処することができる。時間に対する蛍光シグナルの指数関数的増殖の対数のスロープを取得することにより、それぞれのウイルス構築物に対して単一の値を得、この値を、シグナルの規模または指数関数的増殖が開始する前に生じる可能性のある任意の初期時間遅延に関係なく、交差比較することができる。データ解釈のこの特性により、このアッセイは、初期開始点に感受性とはならない。調節不良または初期ウイルス力価の把握ですら、指数関数的増殖中の対数スロープには影響を及ぼさない。組織培養皿におけるわずかな割合の細胞の形質導入をもたらす初期感染(またはトランスフェクション)のみが、必要である。残りの感染しなかった細胞は、二次感染および三次感染に利用可能である。
【0130】
このアッセイは、数日間の期間にわたって複数の時点で蛍光測定を行うことを要するため、データ点にわたり正規化が可能な参照標準物を見出さなければならない。この参照標準物は、蛍光測定に使用される時間、温度、湿度、および励起放射に対する曝露に対して安定でなければならない。一部の実施形態では、参照標準物は、空のウェルのポリスチレンからのバックグラウンド蛍光である。他の実施形態では、フルオロフォアが包埋された市販入手可能なラテックスビーズが、参照標準物である。
【0131】
本明細書において開示されるアッセイに使用される細胞培養培地は、高いシグナル対バックグラウンド比をもたらすことが理想的である。高いバックグラウンドをもたらす因子としては、培地中のフェノールレッドまたはFBSが挙げられる。したがって、一部の実施形態では、ウイルス動態アッセイにおいて使用される培養培地は、フェノールレッド不含の培地である。フルオロフォアの選択もまた、培地からのバックグラウンド蛍光を克服するように選択され得る。例えば、YPetは、強化GFP(eGFP)よりも2倍明るい。したがって、一部の実施形態では、蛍光タンパク質は、YPetである。他の実施形態では、蛍光タンパク質は、mCherryである。
【0132】
VI.AdsemblyおよびAdSLIC
アデノウイルスゲノムは、E1、E2、E3、E4、およびL1-5とラベル付けされた複数の機能的な群に組織化される。E1領域は、すべての他のウイルス遺伝子の転写を調節するタンパク質をコードし、宿主細胞にS期を誘導する。E2領域は、ウイルスDNA複製を駆動させるタンパク質をコードする。E3領域のタンパク質は、宿主細胞の免疫応答をモジュレートし、細胞培養においては必須ではない。E4領域は、異なる機能セットの遺伝子を含有する。そしてL1-5領域は、ウイルス粒子の構造タンパク質をコードする。
【0133】
機能性のこの天然の隔離を利用し、本発明者らは、これまでに、
図6Aに示されるように、E1、E3、E4、およびコアの4つのプラスミドに分離することによって、36kbのAdゲノムの迅速かつ容易な操作を可能にする、組換えアデノウイルスアセンブリの方法を開発した(AdsemblyおよびAdSLIC、国際公開第2012/024351号を参照されたく、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。それらのより合理的なサイズのため、これらのより小さなプラスミドは、標準的な技法を使用して操作することが容易である。
【0134】
AdsemblyおよびAdSLICにより、適合性のあるゲノムライブラリーの部分から、4時間以内に、新規な特質を有するアデノウイルスのin vitroでのコンビナトリアルアセンブリを可能とする。AdsemblyおよびAdSLICは、新規な特質を有する合成ウイルスを、4つの機能的部分のライブラリーを使用してアセンブリすることを可能にする、一般的なゲノム設計プラットフォームを提供する(
図6A)。これらの部分のライブラリーは、複数部位特異的組換え部位(Adsembly、
図6B)または配列非依存性シームレスクローニング(AdSLIC、
図6C)のいずれかを使用して、あらゆる可能な組合せで再アセンブリすることができる。
【0135】
AdsemblyおよびAdSLICの技術は、固有の能力を有するアデノウイルスのモジュール設計および産生を可能にする。自動化された高スループットの様式でウイルスを設計、製造、および試験する能力を開発することにより、治療研究、診断研究、および調査研究のための新しいウイルスの開発が、加速し、拡大されるであろう。
【0136】
クローニングステップは、かつては、新しいウイルス構築物の産生の障害であったが、AdsemblyおよびAdSLICの出現により、ウイルスゲノムを構築する能力は、それらを試験する能力を凌ぐようになった。同等に高スループットの動態アッセイは、AdsemblyおよびAdSLICの方法を使用して、合成の個別化されたウイルス治療および診断の最大限の可能性および高コンテンツなアセンブリを引き出すために、極めて重要である。
【0137】
以下の実施例は、ある特定の具体的な特性および/または実施形態を例示するために提供される。これらの実施例は、本開示を、記載される特定の特性または実施形態に限定するとみなされるものではない。
【実施例0138】
(実施例1:アデノウイルスゲノムにおける外因性ORFの最適な位置の特定)
この実施例では、ウイルス動態を破壊することなく、自己切断ペプチド配列とともに、外因性ORFを挿入することができる、アデノウイルスゲノム内での特異的な位置の特定について記載する。
【0139】
アデノウイルスベクターへの外因性遺伝子の挿入は、アデノウイルスキャプシドのサイズ容量によって制限される。外因性核酸の過剰な追加により、キャプシドへのゲノムローディングが不完全となり、ウイルス動態が低減される。アデノウイルスゲノムにおいて利用できる空間が制限されていることにより提示される課題の解決策は、外因性オープンリーディングフレーム(ORF)を、融合生成物として本来のアデノウイルスORF内に位置づけることである。この戦略は、すでにゲノムにコードされているアデノウイルスプロモーター、5’UTR、およびポリA尾部を利用する。しかしながら、本来のアデノウイルスタンパク質と外因性タンパク質との融合体の発現は、一方または両方のタンパク質機能に有害となり得、アデノウイルス複製動態の有意な減少をもたらし得る。実際に、本明細書において開示される研究は、外因性ORFのアデノウイルスE1A、DNAポリメラーゼ、またはADPのORFへの直接的な融合が、アデノウイルス複製動態を有意に阻害することを実証している。加えて、本発明者らは、これまでに、内部リボソーム進入部位(IRES)を使用して外因性ORFを挿入することを試みたが、これも、野生型動態を有する組換えウイルスの産生に失敗している。
【0140】
この実施例では、本来のアデノウイルスORFと外因性ORFとの間に配置される自己切断ペプチド配列を使用することによる、この問題に対する解決策について記載する。単一のmRNA上の2つのORFの間に配置された場合、自己切断ペプチド配列の存在により、リボソームスキップが生じ、第1のタンパク質が第2のタンパク質とは別個に放出される。この実施例において生成されるアデノウイルス構築物では、自己切断ペプチドP2Aおよび外因性ORFとして蛍光タンパク質(例えば、YPet、mCherry)を使用する。
【0141】
以下の表は、生成した構築物の一覧を提供し、293-E4細胞およびA549細胞という2つの異なる細胞株における外因性ORFの発現レベル(低い、中等度、または高い)およびウイルス複製動態のレベル(低い、中等度、または高い)を示す。
【表2】
【0142】
両方の細胞型において「高い」複製動態(すなわち、野生型アデノウイルスに匹敵する複製動態)を呈する構築物を、実施例2に記載されるウイルス複製動態アッセイにおいて使用するための候補と考えた(候補構築物は、太字で示す)。
【0143】
直接的な融合とP2A部位の挿入との比較
蛍光タンパク質をアデノウイルスORFに直接的に融合したいくつかの構築物を、生成した。具体的には、以下の直接的融合体を、生成した:YPet-E1A、YPet(DNAポリメラーゼ)、およびmCherry-ADP。
【0144】
YPet-E1Aアデノウイルスは、ウイルス動態における有意な減損を呈した。P2A部位をYPetとE1Aとの間に挿入すること(YPet-P2A-E1A)により、ウイルス動態は改善されたが、ウイルス動態が野生型レベルまで回復することはなかった。次いで、E1AのC末端へのP2AおよびYPetの融合を試験するために、別の構築物を生成した(E1A-P2A-YPet)。この構築物は、ウイルス動態がさらに改善されたが、ここでも、動態が野生型アデノウイルスのレベルまで回復することはなかった。
【0145】
YPet-(DNA-ポリ)ゲノムプラスミドをトランスフェクトする試みを数回行ったが、生存能力のあるウイルスの産生は失敗した(プラークが全く形成されなかった)。しかしながら、YPet-P2AをDNAポリメラーゼのN末端に融合させると(YPet-P2A-(DNAポリ))、上記の表に示されるように、野生型動態を有するウイルスが産生された。
【0146】
最後に、mCherryのADPへの直接的な融合(mCherry-ADP)により、有意に減損された動態を有するウイルスが産生された。しかしながら、P2A部位をmCherry ORFとADP ORFとの間に挿入すると、野生型動態を有するウイルスが得られた(mCherry-P2A-ADP)。異なる蛍光タンパク質を使用しても、同じ結果が得られ、YPet-P2A-ADP構築物は、野生型ウイルス動態を呈した。しかしながら、ADPのC末端側にP2Aおよび異種ORFを配置すると、複製しないウイルスが産生された。したがって、ADPについては、異種ORFは、N末端に配置しなければならない。
【0147】
野生型ウイルス動態を有する追加の構築物
図7は、5種類の異なる構築物の自然対数スロープの比較を示す:YPet-E1A、YPet-P2A-E1A、E1A-P2A-mCherry、E1B-55k-P2A-YPet、およびYPet-P2A-ADP。上述のように、YPetのE1Aへの直接的な融合により、有意に減損された動態を有するウイルスが産生され、P2A部位をN末端(YPet-P2A-E1A)またはC末端(E1A-P2A-mCherry)のいずれかに付加することにより、ウイルス動態は改善されたが、野生型レベルには至らなかった。しかしながら、P2A部位および異種ORFを、E1B-55kのC末端(E1B-55k-P2A-YPet)またはADPのN末端(YPet-P2A-ADP)に挿入することにより、野生型ウイルス動態を有する組換えウイルスが生成された。
【0148】
P2A部位および異種ORFをDBPのC末端(DBP-P2A-YPet)もしくはE3-14.7kのC末端(E3-14.7k-P2A-YPet)に有する構築物、またはP2A部位および異種ORFをE4-ORF2のN末端(YPet-P2A-E4-ORF2およびmCherry-P2A-E4-ORF2)に有する構築物のウイルス動態の評価により、野生型複製動態を有するウイルスが得られた。
【0149】
これらのデータの結果は、少なくとも以下のアデノウイルスゲノム構築物を、実施例2に記載されるウイルス複製アッセイに使用することができることを実証する。
E1B-55k-SC-異種ORF
異種ORF-SC-(DNAポリメラーゼ)
DBP-SC-異種ORF
異種ORF-SC-ADP
E3-14.7k-SC-異種ORF
異種ORF-SC-E4-ORF2
【0150】
本明細書において開示されるウイルス複製アッセイにおける使用に関して、異種ORFは、蛍光タンパク質、例えば、(限定されないが)YPetまたはmCherryをコードする。
【0151】
他のアデノウイルス血清型
これまでに説明されているウイルス動態を測定する方法は、すべて、細胞型特異的アッセイに高度に依存し、したがって、それぞれのアデノウイルス血清型の多様な親和性に起因して、血清型特異的である。本明細書において開示されるアデノウイルス動態アッセイは、いずれか1つの細胞型に依存するものではなく、そのため、Ad5以外の血清型に拡張することが可能である。すべてのアデノウイルス血清型は、Ad5 E3-14.7kと同等のORFを含有する。したがって、Ad9(E3-15kを含有する)およびAd34(E3-14.8kを含有する)を使用して、Ad5 E3-14.7k-P2A-YPet(PCMN-887、配列番号9)と同等のウイルスを生成した:PCMN-888(Ad9 E3-15k-P2A-YPet、配列番号20)およびPCMN-889(Ad34 E3-14.8k-P2A-YPet、配列番号21)。Ad5コア、ならびにAd9またはAd34のいずれかに由来するファイバーシャフトおよびノブを含有するキメラウイルスもまた、生成した。次いで、4つの組換えウイルスを、293細胞(
図9A)、A549細胞(
図9B)、およびU2OS細胞(
図9C)を使用して、FBVKアッセイにおいて試験した。4つすべての組換えウイルスは、高いレベルのYPet発現を呈し、外因性ORFの挿入によって生じるウイルス動態への影響は最小限であった。
【0152】
(実施例2:アデノウイルスの複製動態を評価するための方法)
組換えアデノウイルスをアセンブリするためのAdsembly方法およびAdSLIC方法は、短時間で、多数の組換えウイルスゲノムおよびウイルスを生成するための手段を提供する。しかしながら、臨床上および治療上の使用のために設計された組換えアデノウイルスの複製動態を評価する高速かつ高スループットな方法に対する必要性が存在する。この実施例では、組換えアデノウイルスのウイルス複製動態を試験するために使用することができる、蛍光に基づくウイルス動態アッセイについて説明する(
図3)。このアッセイは、組換えアデノウイルスゲノムプラスミドまたは組換えアデノウイルス粒子のいずれかを出発材料として用いて、行うことができる。
【0153】
組換えアデノウイルスゲノムを用いて開始する場合、アッセイには、細胞にアデノウイルスゲノムプラスミド(実施例1において上述のものなど)をトランスフェクトし、フルオロフォアの発現を経時的にモニタリングすることが含まれる(
図4A~4B)。トランスフェクション条件は、細胞のうちの約5~10%が、初回にトランスフェクトされるように、選択する。初回にトランスフェクトされなかった細胞は、初回のトランスフェクションによって産生されたウイルス粒子による二次感染に利用可能である。対数スロープを、二次感染、三次感染、および四次感染(など)に基づく動態の尺度として使用するため、初回にトランスフェクトされた細胞の割合を把握する必要はない。
図4Aおよび4Bは、組換えアデノウイルスゲノムプラスミドを用いて開始する例示的なウイルスに基づく動態アッセイを示す。この実施例では、48ウェルプレートを使用しており、これにより、14種類の異なるウイルス構築物を(3連で)同時に試験することが可能となる。48ウェルプレートの上半分(
図4A)には、6種類の異なるウイルス、3つの模擬感染ウェル、およびツール感度変動を補償するFLUORESBRITE(商標)ビーズを有する3つの「ブランク」ウェルが含まれる。48ウェルプレートの下半分(
図4B)には、8種類の異なるウイルス構築物の3連のウェルが含まれる。細胞をトランスフェクトしたら、プレートを、継続的な蛍光モニタリングのために、TECAN(商標)プレートリーダーに設置する。収集したデータを使用して、各構築物の自然対数スロープを計算する(
図8)。
【0154】
このアッセイは、細胞に組換えウイルス粒子を感染させることによって行うこともできる。このバージョンのアッセイでは、細胞に、組換えウイルス粒子を感染させ、フルオロフォア発現を、経時的にモニタリングする(
図5)。ゲノムプラスミドバージョンのアッセイと同様に、開始時のウイルスストックの正確な力価を把握する必要はない。典型的には、
図5に示されるように、希釈系列、例えば、1:100から1:218,700の範囲の希釈系列を、初回感染に使用する。1:100の希釈物では、一般に、すべての細胞の感染がもたらされ、一方で、1:218,700の希釈物では、一般に、非常に少ない細胞の初回感染がもたらされる。この実施例では、96ウェルプレートを使用しており、11種類の異なるウイルス構築物を、8つの異なる希釈物(1:100、1:300、1:900、1:2700、1:8100、1:24,300、1:72,900、および1:218,700)で同時に試験する。プレートには、模擬感染細胞の4つのウェルおよびFLUORESBRITE(商標)ビーズの4つのウェルも含まれる。細胞を感染させたら、プレートを、継続的な蛍光モニタリングのために、TECAN(商標)プレートリーダーに設置する。収集したデータを使用して、各構築物の自然対数スロープを計算する(
図8)。
【0155】
TECAN(商標)プレートリーダーは、インキュベーション機能も提供する(適切な温度、ならびにCO2レベルおよびO2レベルを維持する)。データ点を、15分ごとに取得して、自然対数スロープを計算する。これらの方法を使用することで、多数の異なるウイルス間および異なる細胞型間で、動態を高速かつ効率的に比較することが可能である。例えば、特定の組換えアデノウイルスが、腫瘍溶解性ウイルスとして治療的に使用することができるかどうかを評価するためには、このアッセイを用いて、腫瘍細胞において高い複製動態を呈するが、非腫瘍細胞においては緩徐なウイルス動態を呈するウイルスを見出すことができる。さらに、組換えウイルスのウイルス動態は、このアッセイにおいて目的の腫瘍細胞型に感染またはトランスフェクトを行うことによって、評価することができる。
【0156】
対数スロープの計算
対数スロープを測定するために、時間に対する蛍光強度の線形プロットを、それぞれの時点で測定した蛍光強度の自然対数を取得することによって、片対数プロットに変換する。蛍光強度は、ウイルス複製時には指数関数的増殖を呈するため、この変換は、時間に対する自然対数(蛍光強度)をプロットすると直線となる。次いで、この直線を、標準的な最小二乗法を使用して当てはめる。この当てはめにより産生された結果として得られるスロープは、時間に対する蛍光の自然対数スロープであり、したがって、時間に対するウイルス増殖の自然対数スロープである。式を、以下に示す。
【化1】
式中、FIは、測定された蛍光強度であり、tは時間であり、F
0は、時間=t
0における初期蛍光強度であり、αは自然対数スロープである。
両側の自然対数を取得すると:
【化2】
右手側は、αの自然対数スロープを有する線形方程式となる。
【0157】
本開示の原理を適用することができる多数の可能性のある実施形態を考慮して、例示された実施形態が、本開示の例にすぎず、本開示の範囲を限定するものとして捉えられるものではないことを認識されたい。むしろ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。したがって、本発明者らはこれらの特許請求の範囲の範囲および趣旨の範囲内のものすべてに関して権利を主張する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
異種オープンリーディングフレーム(ORF)および自己切断ペプチドコーディング配列を、いずれも内因性アデノウイルスORFと同じリーディングフレーム内に、それと作動可能に連結した状態で含む、組換えアデノウイルスゲノムであって、前記自己切断ペプチドコーディング配列が、前記異種ORFと前記内因性ORFとの間に位置し、かつ
前記内因性ORFが、E1B-55kであり、前記異種ORFが、E1B-55kの3’にあるか、
前記内因性ORFが、DNAポリメラーゼであり、前記異種ORFが、DNAポリメラーゼの5’にあるか、
前記内因性ORFが、DNA結合タンパク質(DBP)であり、前記異種ORFが、DBPの3’にあるか、
前記内因性ORFが、アデノウイルス死タンパク質(ADP)であり、前記異種ORFが、ADPの5’にあるか、
前記内因性ORFが、E3-14.7kであり、前記異種ORFが、E3-14.7kの3’にあるか、または
前記内因性ORFが、E4-ORF2であり、前記異種ORFが、E4-ORF2の5’にある、組換えアデノウイルスゲノム。
(項目2)
前記自己切断ペプチドが、2Aペプチドまたはそのバリアントである、項目1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目3)
前記2Aペプチドが、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)2A(P2A)ペプチド、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチド、またはThosea asignaウイルス(TaV)2A(T2A)ペプチド、またはそれらのバリアントを含む、項目2に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目4)
前記自己切断ペプチドのアミノ酸配列が、配列番号12~19のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である、項目3に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目5)
前記自己切断ペプチドが、配列番号12~19のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、項目3に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目6)
前記異種ORFが、蛍光タンパク質をコードする、項目1から5のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目7)
前記蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、または青色蛍光タンパク質(BFP)である、項目6に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目8)
前記YFPが、YPetであるか、または前記RFPが、mCherryである、項目7に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目9)
5’から3’の方向に、
E1B-55K-P2A-YPet、
E1B-55K-P2A-mCherry、
YPet-P2A-(DNAポリメラーゼ)、
DBP-P2A-YPet、
YPet-P2A-ADP、
E3-14.7k-P2A-YPet、
YPet-P2A-E4-ORF2、または
mCherry-P2A-E4-ORF2を含む、項目1から8のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目10)
配列番号3~7、9~11、20、および21のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、項目1から9のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目11)
項目1から10のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムを含む、組換えアデノウイルス。
(項目13)
項目1に記載の組換えアデノウイルスゲノムを含む組換えアデノウイルスの複製動態を測定するための方法であって、前記異種ORFが、蛍光タンパク質をコードし、前記方法は、以下:
(i)細胞に、前記組換えアデノウイルスのゲノムをトランスフェクトするか、または細胞に、前記組換えアデノウイルスの粒子を感染させるステップと、
(ii)トランスフェクトした前記細胞または感染させた前記細胞を、少なくとも2日間培養するステップと、
(iii)前記培養期間の間、規則的な間隔で、蛍光を測定するステップと、
(iv)前記蛍光測定値から対数スロープを計算し、それによって、前記組換えアデノウイルスの複製動態を測定するステップとを含む、方法。
(項目14)
前記組換えアデノウイルスが、第2の異種ORFをさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記細胞が、マルチウェルプレートにおいて培養される、項目13または項目14に記載の方法。
(項目16)
前記組換えアデノウイルスの複製動態が、第1の細胞型および第2の細胞型において測定される、項目13から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記第1の細胞型が、腫瘍細胞であり、前記第2の細胞型が、非腫瘍細胞である、項目16に記載の方法。
(項目18)
蛍光が、およそ10分ごと、15分ごと、30分ごと、60分ごと、または120分ごとに測定される、項目13から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
蛍光が、TECAN(商標)蛍光プレートリーダーにおいて測定される、項目13から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
細胞に、前記組換えアデノウイルスのゲノムをトランスフェクトするステップを含む、項目13から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
トランスフェクションにより、細胞のおよそ5~10%がトランスフェクトされる、項目20に記載の方法。
(項目22)
細胞に、前記組換えアデノウイルスの粒子を感染させるステップを含む、項目13から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記細胞に、前記組換えアデノウイルス粒子の連続希釈物を感染させる、項目22に記載の方法。
(項目24)
1:100、1:300、1:900、1:2700、1:8100、1:24,300、1:72,900、および1:218,700の希釈物を含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
(i)項目1から10のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムまたは項目11に記載の組換えアデノウイルスと、
(ii)細胞、細胞培養培地、および/またはマルチウェルプレートと
を含む、キット。