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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026658
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】増幅器および信号処理回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/217 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H03F3/217
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001333
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2019562970の分割
【原出願日】2018-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2017250652
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】芥川 一樹
(57)【要約】
【課題】信号品質の悪化を軽減することができるようにする。
【解決手段】VTCは、装置外に出力するPWM信号である出力PWM信号に含まれる誤差情報を積分し、誤差時間情報に変換する。遅延部は、装置外から入力されたPWM信号である入力PWM信号を用いて複数の遅延信号を生成する。信号選択部は、複数の遅延信号の中から誤差時間情報に応じた遅延信号を選択して、出力PWM信号を出力する。本開示は、例えば、オーディオプレーヤに適用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置外に出力するPWM信号である出力PWM信号をフィードバックする第1のフィードバック部と、
前記装置外から入力されたPWM信号である入力PWM信号とフィードバックされた前記出力PWM信号を比較して得られる差分誤差を積分する積分器と、
積分された前記差分誤差に応じて前記出力PWM信号の信号幅を変化させるための1以上の閾値を有する比較器と、
前記出力PWM信号を出力する複数の出力部と、
前記複数の出力部が段階的に動作するように、前記比較器から出力される信号を遅延させる遅延部と、
前記比較器から出力される信号の値と前記出力PWM信号の値が異なる区間、前記比較器から出力される信号を前記積分器にフィードバックする第2のフィードバック部と
を備える増幅器。
【請求項2】
前記比較器と前記第2のフィードバック部との間に設けられるスイッチと、
前記比較器から出力される信号の値と前記出力PWM信号の値が異なる区間、前記比較器と前記第2のフィードバック部とを接続するように、前記スイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と
をさらに備える請求項1に記載の増幅器。
【請求項3】
1ビットのオーバーサンプルされた2以上のデータのデータレートを2倍以上に増加させる再サンプリング部と、
前記データレートが2倍以上に増加された前記データの位相をシフトさせる位相シフト部と、
前記位相がシフトされた前記データを加算する加算部と
を備える信号処理回路。
【請求項4】
前記再サンプリング部は、前記データがNRT信号である場合、前記データの前記データレートを2倍以上に増加させる
請求項3に記載の信号処理回路。
【請求項5】
前記データのうち一方のデータにはαのゲインを設定し、前記データのうち他方のデータにはβのゲインを設定する(α+β≦1)ゲイン設定部を
さらに備え、
前記再サンプリング部は、設定された前記αのゲインおよび前記βのゲインに基づいて、前記データのデータレートを2倍以上に増加させる
請求項3に記載の信号処理回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、増幅器および信号処理回路に関し、特に、信号品質の悪化を軽減することができるようにした増幅器および信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
パルス幅変調された信号であるPWM信号を出力し、電力を増幅させるD級増幅器が知られている。D級増幅器には、帰還型と無帰還型とがあり、帰還型は、出力信号の誤差を補正するため、歪を低減させやすく、所望の出力信号特性を得ることができる。
【0003】
特許文献1には、出力誤差を積分器で積分し、入力信号の遅延を誤差積分量によって調整することで、PWM信号のエッジ位置を調整する増幅器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2016/194651号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の提案では、遅延量を調整しているため、補正する誤差によっては、信号のパルスの中心位置が入力信号のパルスの中心位置と異なってしまうことがある。
【0006】
信号品質の悪化要因となるため、PWM信号のパルスの中心位置は、パルス毎に等間隔であることが望まれる。特に、出力誤差が信号レベルによって生じる場合、パルスの中心位置の変化が信号レベルによって発生することとなり、パルスの中心位置の変化は、信号歪の要因となる。
【0007】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、信号品質の悪化を軽減することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術の第1の側面の増幅器は、装置外に出力するPWM信号である出力PWM信号をフィードバックする第1のフィードバック部と、前記装置外から入力されたPWM信号である入力PWM信号とフィードバックされた前記出力PWM信号を比較して得られる差分誤差を積分する積分器と、積分された前記差分誤差に応じて前記出力PWM信号の信号幅を変化させるための1以上の閾値を有する比較器と、前記出力PWM信号を出力する複数の出力部と、前記複数の出力部が段階的に動作するように、前記比較器から出力される信号を遅延させる遅延部と、前記比較器から出力される信号の値と前記出力PWM信号の値が異なる区間、前記比較器から出力される信号を前記積分器にフィードバックする第2のフィードバック部とを備える。
【0009】
本技術の第1の側面においては、装置外に出力するPWM信号である出力PWM信号がフィードバックされ、前記装置外から入力されたPWM信号である入力PWM信号とフィードバックされた前記出力PWM信号を比較して得られる差分誤差が積分され、前記出力PWM信号を出力する複数の出力部が段階的に動作するように、積分された前記差分誤差に応じて前記出力PWM信号の信号幅を変化させるための1以上の閾値を有する比較器から出力される信号が遅延され、前記比較器から出力される信号の値と前記出力PWM信号の値が異なる区間、前記比較器から出力される信号が前記積分器にフィードバックされる。
【0010】
本技術の第2の側面の信号処理回路は、1ビットのオーバーサンプルされた2以上のデータのデータレートを2倍以上に増加させる再サンプリング部と、前記データレートが2倍以上に増加された前記データの位相をシフトさせる位相シフト部と、前記位相がシフトされた前記データを加算する加算部とを備える。
【0011】
本技術の第2の側面においては、1ビットのオーバーサンプルされた2以上のデータのデータレートが2倍以上に増加され、前記データレートが2倍以上に増加された前記データの位相がシフトされ、前記位相がシフトされた前記データが加算される。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、信号品質の悪化を軽減することができる。
【0013】
なお、本明細書に記載された効果は、あくまで例示であり、本技術の効果は、本明細書に記載された効果に限定されるものではなく、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術を適用したD級増幅器の第1の構成例を示す回路図である。
図2】誤差補正の動作を説明する図である。
図3】誤差の出力より1パルス遅らせて誤差補正を反映する例を示す図である。
図4図1のD級増幅器の信号処理を説明するフローチャートである。
図5】従来の誤差補正の動作例を示す図である。
図6】遅延部がDLLで構成される場合の例を示す回路図である。
図7】遅延部がPLLで構成される場合の例を示す回路図である。
図8】本技術を適用したD級増幅器の第2の構成例を示すブロック図である。
図9】遅延回路の構成例を示す回路図である。
図10】遅延回路の動作例を説明する図である。
図11】D級増幅器の動作例を説明する図である。
図12図8のD級増幅器の信号処理を説明するフローチャートである。
図13】従来の誤差補正の動作例を示す図である。
図14】本技術を採用した電子機器としての、オーディオプレーヤの構成例を示すブロック図である。
図15】一般的なノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。
図16】本技術を適用したノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。
図17】DSPの構成例を示すブロック図である。
図18】RTZ信号の180°シフトによる直接加算の例を示す図である。
図19】1ビットデータの直接加算の例を示す図である。
図20図17のDSPの信号処理を説明するフローチャートである。
図21】データ幅を任意に変化させた場合のDSPの構成例を示すブロック図である。
図22】データ幅を任意に変化させた場合の1ビットデータの直接加算の例を示す図である。
図23図21のDSPの信号処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(D級増幅器)
2.第2の実施の形態(D級増幅器)
3.第3の実施の形態(1ビットΔΣA/D変換器)
【0016】
< 1.第1の実施の形態 >
<本技術のD級増幅器の構成例>
図1は、本技術を適用したD級増幅器の第1の構成例を示す回路図である。
【0017】
図1に示されるD級増幅器1は、入力部11、遅延部12、エッジセレクタ13、ゲートドライバ14、出力部15、および、VTC(Voltage-to-Time Converter)16で構成される。
【0018】
D級増幅器1には、パルス幅変調された信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号が入力される。D級増幅器1は、入力されたPWM信号(入力PWM信号)の電力を増幅して、その結果得られたPWM信号(出力PWM信号)を出力する。
【0019】
入力部11は、出力部15が変化させる波高値に追従するように、入力PWM信号の波高値を変化させる可変機構を有している。ここで、波高値とは、PWM信号の信号レベル(振幅)を表す。入力部11は、波高値を変化させた入力PWM信号を、遅延部12に出力する。
【0020】
入力部11は、インバータ31、電源回路32、および電源回路33で構成される。
【0021】
インバータ31は、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成される。電源回路32は、可変範囲内の所定の電圧値である正側の電源電圧をインバータ31に出力する。電源回路33は、可変範囲内の所定の電圧値である負側の電源電圧をインバータ31に出力する。電源回路32および電源回路33としては、出力電圧可変の電圧レギュレータ(Low Dropoutレギュレータ)を用いることができる。
【0022】
遅延部12は、入力PWM信号から複数の遅延信号を生成する。遅延部12は、n個のインバータ34-1乃至インバータ34-n(nは2以上の整数)が直列に接続されて構成されている。
【0023】
エッジセレクタ13は、遅延部12において生成された複数の遅延信号のうち、VTC16から供給される誤差時間情報に応じた遅延信号を選択し、選択した遅延信号をゲートドライバ14に出力する。
【0024】
ゲートドライバ14は、エッジセレクタ13から供給される遅延信号を用いて、出力部15を駆動させる。ゲートドライバ14は、偶数個のインバータ35で構成される。
【0025】
出力部15は、ゲートドライバ14の制御に従って駆動するスイッチ回路である。出力部15は、出力PWM信号の波高値を可変(調整)する可変機構を有している。
【0026】
出力部15は、インバータ36、電源回路37、および電源回路38で構成される。
【0027】
インバータ36は、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成される。電源回路37は、可変範囲内の所定の電圧値である正側の電源電圧をインバータ36に出力する。電源回路38は、可変範囲内の所定の電圧値である負側の電源電圧をインバータ36に出力する。電源回路37および電源回路38も、電源回路32および電源回路33と同様に、出力電圧可変の電圧レギュレータを用いることができる。
【0028】
正側の電源電圧および負側の電源電圧の設定値は、例えば、D級増幅器1が組み込まれている装置(例えば、図14のオーディオプレーヤ201)から、無音状態の有無やボリューム設定値などに応じて決定される。
【0029】
出力部15は、ゲートドライバ14から供給される信号を、入力PWM信号の電力を増幅した出力PWM信号として出力する。出力部15から出力された出力PWM信号は、装置外へ出力されるとともに、VTC16へも出力される。
【0030】
VTC16は、出力部15から供給される出力PWM信号に含まれる誤差を積分することによって誤差時間情報に変換し、誤差時間情報をエッジセレクタ13に出力する。
【0031】
<誤差補正の動作例>
図2は、誤差補正の動作を説明する図である。
【0032】
図2の例においては、上から順に、入力PWMパルス波形、遅延パルス波形、および出力PMWパルス波形が示されている。入力PWMパルス波形は入力PWM信号の波形であり、遅延パルス波形は遅延信号の波形である。出力PMWパルス波形は出力PMW信号の波形である。図2では、入力PWM信号に対して8つの遅延信号が生成される場合の例が示されている。
【0033】
入力PWM信号がH(High)の状態になる時刻t1において、遅延信号の生成が開始される。時刻t1から時刻t3までに、8つの遅延信号が順次生成される。
【0034】
入力PWM信号がL(Low)の状態になる時刻t4から時刻t6までに、8つの遅延信号が順次Lの状態になる。
【0035】
図1のエッジセレクタ13においては、複数の遅延信号のエッジの中から、出力誤差を変換して得られた誤差時間情報に応じたエッジの遅延信号が選択される。
【0036】
図2では、誤差時間情報に応じて、5つ目の遅延信号のパルスの立ち上がりエッジと5つ目の遅延信号のパルスの立ち下がりエッジが選択され、5つ目の遅延信号が出力PWN信号として出力される。
【0037】
したがって、出力PWM信号のパルスの中心の位置は、基本的にずれることがなく、維持される。
【0038】
また、VTC16において生成された誤差時間情報は、デジタル値として扱われるので保持可能である。したがって、積分器による積分結果を遅延信号の選択に用いていた従来のように、積分結果の誤差を次の出力PWM信号に即時に反映させる必要がなく、誤差による幅の調整をどのPWM信号に反映させるかを選択することができる。
【0039】
図3は、誤差が出力されたパルスから、1つのパルスを遅らせて誤差補正を反映する例を示す図である。
【0040】
図3の左上に示されるように、補正したいエラーが電圧誤差である場合、VTC16は、矢印#1に示されるように、出力PWM信号に含まれる電圧誤差を積分することで、電圧誤差を誤差時間情報に変換する。
【0041】
エッジセレクタ13は、矢印#2に示されるように、電圧誤差の検出に用いられたパルスの次のパルスのエッジを対象として、候補となる7つの遅延信号のうちの4つ目のエッジに対応する遅延信号を、誤差時間情報に応じて選択することができる。
【0042】
なお、遅延信号の候補数については、分解能の次元の設定時に、両端で補正できるように偶数として設定されるようにしてもよい。また、遅延信号の候補数が奇数である場合には、0.5ずつ分けるようにしてもよい。調整しきれず、誤差が残った場合には、残った誤差を、次のパルスで補正すべき補正と一緒に補正するようにしてもよい。
【0043】
以上のように、本技術においては、出力信号に含まれる誤差をデジタル値の誤差時間情報に変換するようにしたので、即時に反映させる必要がなく、パルスを遅らせて誤差補正を反映させることができる。
【0044】
これにより、PWM信号の両エッジ位置を等しく調整することができる。PWM信号の両エッジ位置を等しく調整することで、PWM信号の中心位置の変化が抑制されるため、PWM信号の中心間隔が保たれ、中心位置が変化することによる信号品質の悪化を抑制することができる。
【0045】
<D級増幅器の動作例>
図4は、図1のD級増幅器1の信号処理を説明するフローチャートである。
【0046】
ステップS11において、入力部11は、PWM信号を入力する。入力PWM信号は、遅延部12に出力される。
【0047】
ステップS12において、遅延部12は、入力PWM信号から複数の遅延信号を生成する。
【0048】
ステップS13において、エッジセレクタ13は、複数の遅延信号のエッジのうち、VTC16から供給される誤差時間情報に応じたエッジを選択する。
【0049】
ステップS14において、エッジセレクタ13は、選択されたエッジに対応する遅延信号を出力する。
【0050】
ステップS15において、出力部15は、ゲートドライバ14の制御のもと、電力を増幅した出力PWM信号を出力するとともに、出力PWM信号をVTC16へフィードバックする。
【0051】
ステップS16において、VTC16は、出力部15からフィードバックされた出力PWM信号に含まれる誤差を積分して、誤差時間情報に変換する。変換された誤差時間情報はエッジセレクタ13に出力され、遅延信号のエッジ選択に用いられる。
【0052】
以上のように、本技術においては、出力PWM信号に含まれる誤差が積分されて、誤差時間情報に変換され、入力PWM信号を遅延させた複数の遅延信号のうち、誤差時間情報に応じた遅延信号が選択される。これにより、PWM信号の両エッジ位置を等しく調整することができる。
【0053】
図5は、従来の誤差補正の動作例を示す図である。
【0054】
図5の例においては、上から順に、入力PWM信号の波形を示す入力PWMパルス波形、積分器出力の波形を示す積分器出力波形、および、出力PMW信号の波形を示す出力PMWパルス波形が示されている。
【0055】
積分器出力は、入力PWM信号がHの状態になる時刻t1から値が増加し、出力PWM信号がHの状態になる時刻t2でHの状態を維持する。積分器出力は、入力PWM信号がLの状態になる時刻t3から値が減少し、出力PWM信号がLになる時刻t4でLを維持する。
【0056】
従来の誤差補正では、出力誤差を積分器で積分し、入力PWM信号の遅延量を誤差積分量によって調整することで、PWM信号の後のエッジ位置が調整されていた。
【0057】
時間的に後方のLの状態へのエッジで遅延量を調整しているため、補正する誤差によっては、出力PWM信号のパルスの中心位置が、入力PWM信号のパルスの中心位置と異なってしまう場合があった。
【0058】
一方、本技術においては、アナログ要素の積分器を必要としないので、出力部にかかる電力を下げることができる。本技術においては、積分器を必要としないので、積分飽和で生じる影響を考える必要がなくなる。
【0059】
上記説明においては、遅延部12が単純な遅延段である複数のインバータで構成されるものとしたが、一般的なDLL(Delay Locked Loop)やPLL(Phase Locked Loop)によって遅延部12が構成されるようにしてもよい。
【0060】
図6は、遅延部12がDLLで構成される場合の例を示す回路図である。
【0061】
図6の上段には、遅延部12の構成例が示されている。図6の遅延部12は、位相検出器61、ローパスフィルタ62、インバータ51-1乃至インバータ51-nで構成される。入力部11から供給された信号は、外部入力として、インバータ51-1および位相検出器61に入力される。
【0062】
位相検出器61は、外部入力と、インバータ51-nから供給されるDLL出力との位相差を検出し、検出した位相差信号を、LPF62に出力する。
【0063】
LPF62は、位相検出器61から供給される位相差信号の波形を平滑化し、波形を平滑化した信号をインバータ51-1乃至インバータ51-nに出力する。
【0064】
インバータ51-1乃至インバータ51-nは、LPF62から供給される信号に基づいて、外部入力をそれぞれ遅延させる。
【0065】
図6の下段には、遅延部12により生成され、エッジセレクタ13に入力される信号#1、および遅延信号#2乃至遅延信号#N+1の波形が示されている。
【0066】
信号#1は、インバータ51-1に入力される信号である。
【0067】
遅延信号#2は、インバータ51-1において遅延され、インバータ51-2に入力される信号である。遅延信号#3は、インバータ51-2により遅延され、インバータ51-3に入力される信号である。遅延信号#4は、インバータ51-3により遅延され、インバータ51-4に入力される信号である。以降、遅延信号#Nまで同様である。遅延信号#N+1は、インバータ51-nにより遅延され、PD61に入力される信号である。
【0068】
エッジセレクタ13は、遅延信号#1乃至遅延信号#N+1の中から、誤差時間情報に応じた遅延信号のエッジを選択する。
【0069】
図7は、遅延部12がPLLで構成される場合の例を示す回路図である。
【0070】
図7の遅延部12は、図6の遅延部12がインバータ51-1乃至インバータ51-nにおいて外部入力を遅延させるのに対し、インバータ51-1乃至インバータ51-nにおいて、インバータ51-nから供給されるPLL出力を遅延させる点が異なっている。
【0071】
すなわち、入力部11から供給された信号は、外部入力として、インバータ51-1には入力されず、位相検出器61にのみ入力される。インバータ51-1には、インバータ51-nから供給されるPLL出力が入力される。インバータ51-1乃至インバータ51-nは、LPF62から供給される信号に基づいて、インバータ51-nから供給されるPLL出力をそれぞれ遅延させる。
【0072】
図7の下段に示される遅延信号の波形は、図6の波形と同様な波形である。
【0073】
以上のように、図6または図7の構成によれば、位相検出器61を用いることによって、外部入力のクロックに同期した遅延PWM信号を生成することができる。
【0074】
< 2.第2の実施の形態 >
<本技術のD級増幅器の構成例>
図8は、本技術を適用したD級増幅器の第2の構成例を示す回路図である。
【0075】
図8に示されるD級増幅器101は、入力部111、積分器112、比較器113、遅延回路114、スイッチ制御部115、スイッチ116、およびフィードバック回路117を含んで構成される。また、D級増幅器101は、ゲートドライバ118-1,118-2、出力部119、およびフィードバック回路120を含んで構成される。
【0076】
D級増幅器101には、パルス幅変調された信号である入力PWM信号(PWNIN)が入力される。D級増幅器101は、入力PWM信号の電力を増幅して、その結果得られたPWM信号である出力PWM信号を出力する。
【0077】
入力部111は、図1の入力部11と同様に、出力部15が変化させる波高値に追従するように波高値を変化させた入力PWM信号を積分器112に出力する。
【0078】
入力部111は、インバータ131、電源回路132、接地回路133、および可変抵抗134で構成される。インバータ131、電源回路132は、それぞれ、図1のインバータ31、電源回路32と同様に構成される。接地回路133は、電源回路33に相当する。可変抵抗134には、積分器112乃至フィードバック回路120からなるLoopに入る前の信号であるループ入力信号(LoopIN)が入力される。
【0079】
積分器112は、オペアンプ135とキャパシタ136で構成される。オペアンプ135の出力端子がキャパシタ136を介して自身の反転入力端子に接続されることにより、負帰還回路が形成される。
【0080】
積分器112は、入力PWM信号と出力PWM信号の誤差を蓄積する。より具体的には、積分器112は、入力PWM信号と、フィードバック回路120から供給される出力PWM信号との誤差信号を積分する。積分器112は、積分した結果を示す信号である積分器出力信号(INTOUT)を比較器113に出力する。
【0081】
比較器113は、ヒステリシスコンパレータで構成される。比較器113は、積分器112から供給された積分器出力信号を、所定の基準値(基準電圧REF)と比較し、比較した結果を示す信号である比較器出力信号(CompOUT)を出力する。比較器113から出力された比較器出力信号は、遅延回路114、スイッチ制御部115、およびスイッチ116に供給される。
【0082】
遅延回路114は、比較器113から供給される比較器出力信号を遅延させることによって複数の遅延信号(OUT’)を生成し、ゲートドライバ118-1およびゲートドライバ118-2に出力する。遅延回路114から出力された遅延信号に基づいて、ゲートドライバ118-1およびゲートドライバ118-2と出力部119が分割駆動する。遅延回路114の詳細については後述する。
【0083】
スイッチ制御部115は、ExOR回路で構成される。スイッチ制御部115は、比較器113から供給された比較器出力信号と出力部119から供給された出力PWN信号とが異なる状態を示すとき、スイッチ116をオンする。スイッチ116がオンの状態となることにより、比較器113から出力された比較器出力信号が、サブ経路出力信号(SubOUT)として、フィードバック回路117に供給される。
【0084】
スイッチ制御部115は、比較器113から供給された比較器出力信号と出力部119から供給された出力PWN信号とが同じ状態を示すとき、スイッチ116をオフする。
【0085】
フィードバック回路117は、抵抗値1/2の可変抵抗で構成される。フィードバック回路117は、スイッチ116がオンの状態であるときに比較器113から供給されたサブ経路出力信号を電流に変換して、積分器112のオペアンプ135の反転入力端子に出力する。
【0086】
可変抵抗134とフィードバック回路120の可変抵抗の抵抗値を1とした場合、フィードバック回路117の可変抵抗の抵抗値は、1/2に設定される。フィードバック回路117の可変抵抗の抵抗値を1/2に設定することで、入力部111からの電流と出力部119からの電流とが、比較器113からの電流と釣り合う状態となる。
【0087】
ゲートドライバ118-1およびゲートドライバ118-2は、それぞれ、偶数個のインバータで構成される。ゲートドライバ118-1およびゲートドライバ118-2は、遅延回路114から供給される遅延信号を用いて、出力部119のインバータを駆動させる。
【0088】
出力部119は、インバータ137、電源回路138、および接地回路139から構成される。インバータ137は、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成される。電源回路138は、可変範囲内の所定の電圧値である正側の電源電圧をインバータ137に出力する。接地回路139は、可変範囲内の所定の電圧値である負側の電源電圧をインバータ137に出力する。
【0089】
出力部119は、ゲートドライバ118-1およびゲートドライバ118-2の制御に従って駆動するスイッチ回路である。出力部119から出力された出力PWM信号は、装置外に出力されるとともに、フィードバック回路120にも出力される。
【0090】
フィードバック回路120は、抵抗値1の可変抵抗で構成される。フィードバック回路120は、出力部119から供給される出力PWM信号を電流に変換し、積分器112のオペアンプ135の反転入力端子に供給することによってフィードバック(負帰還)させる。
【0091】
<遅延回路の構成例>
図9は、遅延回路114の構成例を示す回路図である。図9では、分割数2で、遅延段4(セレクタ数が4)の例が示されている。
【0092】
遅延回路114は、インバータ151、インバータ152、NOR回路153-1およびNOR回路153-2、並びにNANDラッチ154-1およびNANDラッチ154-2を含むように構成される。また、遅延回路114は、セレクタ155-1乃至セレクタ158-1、セレクタ155-2乃至158-2、インバータ159-1乃至インバータ162-1、およびインバータ159-2乃至インバータ162-2を含むように構成される。
【0093】
インバータ151は、入力PWM信号を反転し、反転した信号を、NOR回路153-1およびインバータ152に出力する。
【0094】
NOR回路153-1は、インバータ151から供給された信号とイネーブル信号(ENB)を入力して、NOR演算の結果をNANDラッチ154-1に出力する。
【0095】
NANDラッチ154-1は、NOR回路153-1から供給された信号とセレクタ158-2から供給された信号を入力して、NAND演算の結果をセレクタ155-1に出力する。
【0096】
セレクタ155-1は、NANDラッチ154-1から供給された信号を入力し、図10のDSEL1が示す区間の後、Hの状態となる信号を、インバータ159-1およびセレクタ156-1に出力する。DSEL1は、端子#1および端子#8がHとなる間の区間を表している。
【0097】
セレクタ156-1乃至セレクタ158-1は、セレクタ155-1乃至セレクタ1575-1から供給された信号をそれぞれ入力する。セレクタ156-1乃至セレクタ158-1は、所定の遅延差で、Hの状態となる信号を、インバータ160-1乃至インバータ162-1とセレクタ157-1、セレクタ158-1、NANDラッチ154-2にそれぞれ出力する。
【0098】
インバータ159-1乃至162-1は、入力された信号を反転して、それぞれ、端子#1乃至端子#4に出力する。
【0099】
インバータ152は、インバータ151が反転した信号を反転し、反転した信号をNOR回路153-2に出力する。
【0100】
NOR回路153-2は、インバータ152から供給された信号とイネーブル信号とを入力して、NOR演算の結果をNANDラッチ154-2に出力する。
【0101】
NANDラッチ154-2は、NOR回路153-2から供給された信号とセレクタ158-1から供給された信号を入力して、NAND演算の結果をセレクタ155-2に出力する。
【0102】
セレクタ155-2は、NANDラッチ154-2から供給された信号を入力し、図10のDSEL2が示す区間の後、Hの状態となる信号を、インバータ159-2およびセレクタ156-2に出力する。DSEL2は、端子#4および端子#5がHとなる間の区間を表している。
【0103】
セレクタ156-2乃至セレクタ158-2は、セレクタ155-2乃至セレクタ1575-2から供給された信号をそれぞれ入力する。セレクタ156-2乃至セレクタ158-2は、所定の遅延差で、Hの状態となる信号を、インバータ160-2乃至インバータ162-2とセレクタ157-2、セレクタ158-2、NANDラッチ154-1にそれぞれ出力する。
【0104】
インバータ159-2乃至162-2は、入力された信号を反転して、それぞれ、端子#5乃至端子#8に出力する。
【0105】
なお、図9の構成例は、遅延回路114の一例である。遅延回路114の構成例は、図9の構成例に限らず、他の回路で構成されていてもよい。
【0106】
図10は、図9の遅延回路の動作例を説明する図である。
【0107】
上から順に、入力PWM信号の波形である入力パルス波形、端子#1乃至端子#8から出力される出力信号の波形である出力パルス波形が示されている。端子#1乃至端子#4は、H側の端子であり、端子#5乃至端子#8は、L側の端子である。
【0108】
入力PWM信号がHの状態になる時刻t1の後、端子#5乃至端子#8から出力される出力信号が、ON時間間隔に相当する所定の遅延毎に順次Lの状態になる。ON時間間隔は、セレクタ156-2乃至セレクタ158-2がオン状態となる時間間隔を示す。
【0109】
端子#8から出力される出力信号がLの状態になり、DSEL1が示す区間の後、端子#1からの出力信号が、Hの状態になる。端子#1からの出力信号がHの状態になる時刻t2の後、端子#2乃至端子#4からの出力信号が、所定の遅延毎に順次Hの状態になる。
【0110】
入力PWM信号がLの状態になる時刻t3の後、端子#1乃至端子#4からの出力信号が、所定の遅延差毎にLの状態になる。
【0111】
端子#4からの出力信号がLの状態になり、DSEL2が示す区間の後、端子#5からの出力信号が、Hの状態になる。端子#5からの出力波形がHの状態になる時刻t4の後、端子#6乃至端子#8からの出力信号が、所定の遅延差毎にHの状態になる。
【0112】
時刻t5以降、時刻t1以降と同様の処理が繰り返される。
【0113】
遅延回路114を図9のように構成することで、セレクタの個数と分割個数をかけ合わせた分の遅延信号を発生することができる。
【0114】
<D級増幅器の動作例>
図11は、D級増幅器101の動作例を説明する図である。
【0115】
上から順に、PWMINは、入力部111に入力される入力PWM信号の波形を示す。LoopINは、積分器112乃至フィードバック回路120からなるLoopに入る前の可変抵抗134のループ入力信号の波形を示す。INTOUTは、積分器112から出力される積分器出力の波形を示す。CompOUTは、比較器113から出力される比較器出力信号の波形を示す。
【0116】
OUTは、原理的には、出力部119から出力される出力PWM信号の波形を示す。出力PWM信号には、アナログのノイズが含まれている。比較器出力信号の電流源は、出力PWM信号の電流源と異なる。また、ゲートドライバ118-1およびゲートドライバ118-2と出力部119により生じる遅延は、遅延回路114が生成する遅延と比較すると、無視することができるほど小さい。以上のことより、実質的には、OUTの代わりに、遅延回路114から出力される遅延信号の波形(OUT’)が用いられるようにしてもよい。
【0117】
SubOUTは、スイッチ116からフィードバック回路117に出力されるサブ経路出力信号の波形を示す。
【0118】
入力PWM信号がHの状態になる時刻t11で、ループ入力信号がLの状態になり、積分器出力がHの状態への遷移を開始する。
【0119】
時刻t11では、比較器出力信号と出力PWM信号は同じLの状態となる。サブ経路出力信号は、スイッチ116がオフの状態であるHizを示す。
【0120】
比較器出力信号がHの状態になる時刻t12では、遅延回路114による遅延のため、出力PWM信号がまだLの状態である。比較器出力信号と出力PWM信号の状態が異なるので、スイッチ制御部115は、スイッチ116をオンして、サブ経路出力信号が、Hの状態になる。スイッチ116がオンの状態になると、比較器113の出力は、積分器112に直接接続される。
【0121】
比較器113の出力が積分器112に直接接続されたことで、積分器112への可変抵抗134からの電流と、フィードバック回路120からの電流がフィードバック回路117を流れる。これにより、積分器出力信号においては、比較器113の2つの閾値で構成されるヒステリシス幅を示すhysteresisの上側の閾値で一定の状態が維持される。後述するように、フィードバック回路117を用いない従来の構成においては、積分器出力は、比較器出力信号がHの状態になる時刻t12の後も破線に示されるように上がり続けることになる。
【0122】
遅延回路114による遅延の後、出力PWM信号がHの状態になる時刻t13で、比較器出力信号がHの状態である。したがって、スイッチ制御部115はスイッチ116をオフするので、サブ経路出力信号はHizを示す。
【0123】
入力PWM信号のパルスがLの状態になる時刻t14で、ループ入力信号のパルスがHの状態になり、積分器出力信号のパルスがLの状態に遷移を開始する。時刻t14では、比較器出力と出力PWM信号がLの状態で同じなので、サブ経路出力信号のパルスは、スイッチ116がオフの状態であるHizを示す。
【0124】
積分器出力がLの状態となり、比較器出力信号がLの状態になる時刻t15では、遅延回路114による遅延のため、出力PWM信号はまだHの状態である。したがって、スイッチ制御部115はスイッチ116をオンして、サブ経路出力信号は、Lの状態になる。スイッチ116がオンの状態になると、比較器113と積分器112は直接接続される。
【0125】
遅延回路114による遅延の後、出力PWM信号がLの状態になる時刻t16で、比較器出力信号はLの状態である。したがって、スイッチ制御部115はスイッチ116をオフするので、サブ経路出力信号はHizを示す。
【0126】
従来、比較器出力信号の状態と出力PWM信号の状態が異なっている場合、時刻t12の破線に示されるように、積分器出力信号が遷移し続けてしまう。これに対して、本技術においては、比較器出力信号の状態と出力PWM信号の状態が異なっている場合のみ、比較器出力信号を積分器112に直接接続するようにしたので、積分器出力信号が遷移し続けてしまい、積分器112が飽和状態になってしまうことを抑制することができる。
【0127】
また、本技術においては、比較器出力信号が積分器112に直接接続され、フィードバック回路117の可変抵抗の値が1/2に設定される。これにより、可変抵抗134からの電流およびフィードバック回路120からの電流を、比較器113からの電流に釣り合わせることができるので、遷移を抑制することができる。
【0128】
なお、出力PWM信号が遅延している間に、出力PWM信号のフィードバックを止めれば、積分器の飽和状態は抑制されるが、出力PWM信号の誤差は補正されない。これに対して、本技術によれば、出力PWM信号が遅延している間も、出力PWM信号は積分器112に接続されている。したがって、出力PWM信号の誤差は積分器112に蓄積され、誤差補正を行うことができる。
【0129】
<D級増幅器の動作例>
図12は、図8のD級増幅器101の信号処理を説明するフローチャートである。
【0130】
ステップS111において、入力部111は、PWM信号を入力する。入力PWM信号は、積分器112に出力される。
【0131】
ステップS112において、積分器112は、入力PWM信号と、フィードバックされた出力PWM信号を比較して得られる誤差を積分する。積分器出力信号は、比較器113に出力される。
【0132】
ステップS113において、比較器113は、積分器出力信号と基準信号とを比較して、比較器出力信号を出力する。
【0133】
ステップS114において、スイッチ制御部115は、比較器出力信号と出力PWM信号は異なる状態であるか否かを判定する。
【0134】
ステップS114において、異なる状態であると判定された場合、処理は、ステップS115に進む。ステップS115において、スイッチ制御部115は、スイッチ116をオンする。これにより、比較器出力信号が積分器112にフィードバックされる。
【0135】
ステップS114において、同じ状態であると判定された場合、処理は、ステップS116に進む。ステップS116において、スイッチ制御部115は、スイッチ116をオフする。
【0136】
ステップS117において、遅延回路114は、比較器出力信号から複数の遅延信号を生成する。生成された複数の遅延信号は、ゲートドライバ118-1およびゲートドライバ118-2に出力される。
【0137】
ステップS118において、出力部119は、ゲートドライバ118-1およびゲートドライバ118-2の制御に従って、電力を増幅した出力PWM信号を出力するとともに、出力PWM信号を、フィードバック回路120を介して、積分器112にフィードバックする。
【0138】
以上のように、本技術においては、出力誤差をフィードバックする帰還型のD級増幅器において、誤差を補正した後の信号伝達遅延が生じてしまう場合でも、積分器へのフィードバックが遅延により遅くなってしまうことによる誤差の補正範囲の減少を抑制することができる。
【0139】
図13は、従来の誤差補正の動作例を示す図である。図13では、比較器113からの遅延が存在する場合についての動作例が示されている。すなわち、図13の誤差補正を行うD級増幅器は、スイッチ制御部115、スイッチ116、およびフィードバック回路117が除かれた点以外、図8のD級増幅器101とほぼ同様に構成される。
【0140】
入力PWM信号がHの状態になる時刻t21で、ループ入力信号がLの状態になり、積分器出力がHの状態への遷移を開始する。
【0141】
比較器出力信号がHの状態になる時刻t22では、遅延回路114による遅延のため、出力PWM信号がまだLの状態である。したがって、積分器出力は遷移し続ける。
【0142】
遅延回路114による遅延の後、出力PWM信号がHの状態になる時刻t23で、積分器出力の遷移は、hysteresisに示されるように、ヒステリシス幅をはるかに超えて止まり、一定の状態が維持される。
【0143】
入力PWM信号がLの状態になる時刻t24で、ループ入力信号がHの状態になり、積分器出力がLの状態に遷移を開始する。
【0144】
積分器出力がLの状態となり、比較器出力信号がLの状態になる時刻t25では、遅延回路114による遅延のため、出力PWM信号はまだHの状態である。
【0145】
遅延回路114による遅延の後、時刻t26で出力PWM信号はLの状態になる。
【0146】
その後、同様の処理が繰り返される。
【0147】
以上のように、従来のD級増幅器において、比較器113の後段で遅延が発生する場合、比較器出力信号の状態が変換しても遅延により出力PWM信号の状態が変化しないため、積分器出力の遷移も変化しない。遅延がなければ、積分器112の応答は、比較器113の閾値によって制御される。
【0148】
また、比較器113の後段で遅延が発生する場合、閾値を超えても出力PWM信号の状態が変化しないため、積分器出力信号の遷移が変化しない。比較器出力信号の状態が遅延を伴い、伴った遅延が出力PWM信号の状態に現れると、積分器出力信号が変化するため、遅延と積分器出力信号の遷移の傾きによって比較器113の閾値が変化することになる。
【0149】
積分器出力は、入力PWM信号=出力PWM信号の状態となるときに一定値に保たれるが、誤差を伴う場合、積分器出力は、誤差方向に変化してしまう。誤差の蓄積によっては、電源または接地の値を超えて、積分器112が飽和し、また、hysteresisが示す矢印に示されるように、ヒステリシス幅を超えてしまって、誤出力をしてしまう恐れがある。したがって、従来のD級増幅器では、電源または接地間と、ヒステリシス幅とを注意して設計し、誤差補正範囲を適切に保つ必要があった。
【0150】
これに対して、本技術においては、比較器出力信号が遅延され、比較器出力信号の状態と出力PWM信号の状態が異なっている場合のみ、比較器出力信号を積分器112に直接接続するようにしたので、遅延により積分器が飽和状態になってしまうことを抑制することができる。
【0151】
本技術は、D級増幅器への適用に限られるものではない。すなわち、本技術は、音出力機能を有する電子機器全般に対して適用可能である。音出力機能を有する電子機器は、例えば、オーディオプレーヤなどの音声再生装置、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末装置、並びに、音出力機能を有する複写機やプリンタ装置、撮像装置などからなる。
【0152】
図14は、本技術を採用した電子機器としての、オーディオプレーヤの構成例を示すブロック図である。
【0153】
図14のオーディオプレーヤ201は、操作部211、データ記憶部212、通信部213、制御部214、表示部215、および△Σ(デルタシグマ)変調部216を含むように構成される。オーディオプレーヤ201は、PWM信号生成部217、D級増幅器218、ローパスフィルタ219、およびスピーカ220を含むように構成される。
【0154】
操作部211は、データ記憶部212に記憶されている所定の楽曲(音楽)の再生、停止などのユーザの操作を受け付ける。操作部211は、受け付けた操作に対応する操作信号を制御部214に出力する。
【0155】
データ記憶部212は、例えば、半導体メモリなどで構成される。データ記憶部212は、複数の楽曲のデータを、所定のデータ形式により記憶する。所定のデータ形式としては、MP3(MPEG(Moving Picture Experts Group)1 Audio Layer3)などがある。また、データ記憶部212は、制御部214がオーディオプレーヤ201全体の動作を制御するためのプログラムなども記憶する。
【0156】
通信部213は、例えば、USB(Universal Serial Bus)インタフェースなどで構成される。通信部213は、制御部214の制御により、外部装置と接続して、オーディオデータなどを送受信する。また、通信部213は、ローカルエリアネットワーク、インターネット、その他のネットワークに接続するネットワークインタフェースなどで構成されてもよく、ネットワークを介して外部装置と接続し、オーディオデータなどをやりとりしてもよい。
【0157】
制御部214は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)などで構成され、オーディオプレーヤ201全体の動作を制御する。例えば、ユーザは、操作部211を用いて、データ記憶部212に記憶されている所定の楽曲の再生の指示を行う。制御部214は、ユーザによって操作された操作信号が操作部211から供給された場合、再生の指示が行われた楽曲のオーディオデータをデータ記憶部212から取得して、ΔΣ変調部216に供給する。また、制御部214は、表示部215に表示される画像を制御する。
【0158】
表示部215は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やEL(Electro Luminescence)ディスプレイなどで構成される。表示部215は、制御部214の制御に従い、再生中の楽曲のタイトルや再生時間、データ記憶部212に記憶されているオーディオデータなどを表示する。
【0159】
ΔΣ変調部216は、制御部214から供給されたオーディオデータに対してΔΣ変調処理を施し、ΔΣ変調されたNビット(N>0)のデジタルデータを生成してPWM信号生成部217に出力する。
【0160】
PWM信号生成部217は、ΔΣ変調部216から供給されるΔΣ変調されたNビットのデジタルデータを、PWM信号に変換してD級増幅器218に出力する。
【0161】
D級増幅器218は、PWM信号生成部217から供給されるPWM信号を電力増幅して出力する。D級増幅器218の構成として、図1のD級増幅器1または図8のD級増幅器101の構成が採用されている。
【0162】
ローパスフィルタ219は、D級増幅器218が出力するPWM信号に対して、高周波成分を除去するフィルタ処理を施し、フィルタ処理後の信号をスピーカ220に出力する。スピーカ220は、ローパスフィルタ219を介してD級増幅器218から供給されるPWM信号に基づいて音を出力する。
【0163】
ΔΣ変調部216、PWM信号生成部217、およびD級増幅器218はいずれもデジタル回路であり、D級増幅器218を用いることでA/D変換器が不要となるので、回路規模を縮小することができる。
【0164】
以上のように構成されるオーディオプレーヤ201では、D級増幅器218として、上述した図1のD級増幅器1の構成を採用しており、アナログ要素の積分器を必要としないので、電力を下げることができる。また、積分器を必要としないので、積分飽和で生じる影響を考える必要がなくなる。さらに、PWM信号の両エッジ位置を等しく調整することができる。
【0165】
また、以上のように構成されるオーディオプレーヤ201では、D級増幅器218として、上述した図8のD級増幅器101の構成を採用しているため、遅延により積分器が飽和状態になってしまうことを抑制することができる。また、出力PWM信号が遅延している間も、出力PWM信号の誤差補正を行うことができる。
【0166】
< 3.第3の実施の形態 >
<一般的なノイズキャンセルリングシステムの例>
図15は、一般的なノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。
【0167】
図15のノイズキャンセリングシステム301は、A/Dコンバータ311-1、A/Dコンバータ311-2、インバータ312、DSP(Digtal Signal Processer)313、およびD/Aコンバータ314から構成される。
【0168】
A/Dコンバータ311-1には、オーディオ信号をNビットのデジタルデータが入力される。A/Dコンバータ311-2には、インバータ312を介して反転された環境ノイズが入力される。
【0169】
A/Dコンバータ311-1は、入力されたオーディオ信号をNビットのデジタルデータに変換する。A/Dコンバータ311-1は、変換したNビットのデジタルデータを、DSP313に出力する。A/Dコンバータ311-1は、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-1およびデシメーションフィルタ322-1を含むように構成される。
【0170】
A/Dコンバータ311-2は、入力された環境ノイズをNビットのデジタルデータに変換する。A/Dコンバータ311-2は、変換したNビットのデジタルデータを、DSP313に出力する。A/Dコンバータ311-2は、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-2およびデシメーションフィルタ322-2を含むように構成される。
【0171】
以下、A/Dコンバータ311-1およびA/Dコンバータ311-2を、特に区別する必要がない場合、A/Dコンバータ311と称する。1ビットΔΣA/Dコンバータ321-1および1ビットΔΣA/Dコンバータ321-2を、特に区別する必要がない場合、1ビットΔΣA/Dコンバータ321と称する。デシメーションフィルタ322-1およびデシメーションフィルタ322-2を、特に区別する必要がない場合、デシメーションフィルタ322と称する。
【0172】
1ビットΔΣA/Dコンバータ321は、入力されたオーディオ信号をA/D変換して、1ビットのデジタルデータを生成する。生成された1ビットのデジタルデータは、デシメーションフィルタ322に出力される。
【0173】
デシメーションフィルタ322は、1ビットのデジタルデータを、Nビットのデジタルデータに変換する。変換されたNビットのデジタルデータは、DSP313に出力される。
【0174】
DSP313には、A/Dコンバータ311-1から出力されたNビットのデジタルデータと、A/Dコンバータ311-2から出力されたNビットの反転デジタルデータとが供給される。
【0175】
DSP313は、加算器331を有している。加算器331は、2つのNビットのデジタルデータを加算し、加算したNビットのデジタルデータをD/Aコンバータ314に出力する。
【0176】
D/Aコンバータ314は、DSP313から供給されたNビットのデジタルデータをD/A変換して、アナログのオーディオ信号を生成する。生成されたアナログのオーディオ信号は、後段のスピーカなどに出力される。
【0177】
以上のように、一般的なノイズキャンセリングシステム301では、オーディオ信号をA/D変換し、環境ノイズを反転させて、A/D変換した信号であるキャンセル信号を加算することで、ノイズキャンセリングが行われている。
【0178】
キャンセル信号の遅延は、キャンセル量に影響を及ぼす。したがって、オーディオ信号とキャンセル信号それぞれのA/D変換の加算と、加算されたオーディオ信号を再生するためのD/A変換は、極力遅延なく行われることが望ましい。
【0179】
しかしながら、通常A/D変換には高精度な変換が要求されるので、1ビットΔΣA/D変換方式が用いられることが多い。1ビットΔΣA/D変換方式では、1ビットA/D変換後の処理として、デシメーションフィルタなどが必要となり、処理遅延が発生してしまう。
【0180】
<本技術のノイズキャンセリングシステムの構成例>
図16は、本技術を適用したノイズキャンセリングシステムの構成例を示すブロック図である。図16の構成のうち、図15の構成と対応する部分には同じ符号が付されている。
【0181】
図16のノイズキャンセリングシステム351は、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-1、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-2、インバータ312、DSP361、および1ビットΔΣD/Aコンバータ362から構成される。
【0182】
1ビットΔΣA/Dコンバータ321-1は、入力されたオーディオ信号をA/D変換し、1ビットのデジタルデータを生成する。生成された1ビットのデジタルデータは、DSP361に出力される。
【0183】
1ビットΔΣA/Dコンバータ321-2は、インバータ312を介して反転された環境ノイズをA/D変換して、1ビットのデジタルデータを生成する。生成された1ビットのデジタルデータは、DSP361に出力される。
【0184】
DSP361は、加算部371を有している。加算部371は、2つの1ビットのデジタルデータを加算し、加算した1ビットのデジタルデータを1ビット ΔΣD/Aコンバータ362に出力する。
【0185】
1ビットΔΣD/Aコンバータ362は、DSP361から供給された1ビットのデジタルデータをD/A変換して、アナログのオーディオ信号を生成する。生成されたアナログのオーディオ信号は、後段のスピーカなどに出力される。
【0186】
以上のように、本技術によれば、処理遅延の原因となるデシメーションフィルタを必要としない、より低遅延なシステムを構築することができる。
【0187】
図17は、DSP361の構成例を示すブロック図である。
【0188】
図17のDSP361は、再サンプリング部381、位相シフト部382、および加算部371から構成される。再サンプリング部381には、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-1から供給される1ビットのデジタルデータと、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-2から供給される1ビットのデジタルデータとが入力される。
【0189】
再サンプリング部381は、入力された複数の1ビットの信号を再サンプリングし、データレートを2倍以上に増加させる。
【0190】
位相シフト部382は、必要に応じて、2つの1ビットのデジタルデータのうち、一方のデータの位相を180°シフトさせる。
【0191】
加算部371は、一方の位相がシフトされた1ビットの信号と、位相がシフトされてない他方の1ビットのデジタルデータとを加算する。
【0192】
図18は、RTZ信号の180°シフトによる直接加算の例を示す図である。図18では、1ビットを1ビットのまま加算する方法について説明する。
【0193】
Aは、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-1から供給された1ビットのデジタルデータを示している。Bは、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-2から供給された1ビットのデジタルデータを示している。B’は、Bの位相が180°シフトされたデジタルデータを示している。A+B’は、AのデジタルデータとB’のデジタルデータが加算されたデジタルデータを示している。
【0194】
時刻t3から時刻t4までの期間、時刻t5から時刻t6までの期間、時刻t7から時刻t8までの期間は、AとBのうちのいずれかが1となる期間であるので、AとBは、加算が可能である。
【0195】
しかしながら、時刻t1から時刻t2までの期間、時刻t9から時刻t10までの期間、時刻t11から時刻t12までの期間は、AとBの両方が1になる期間で、加算ができないため、Bの位相が180°シフトされたB’が用いられる。
【0196】
時刻t1から時刻t2の期間、時刻t5から時刻t6の期間、時刻t9から時刻t10までの期間、時刻t11から時刻t12までの期間は、Aが1の状態であり、B’が0の状態の期間である。時刻t2から時刻t3の期間、時刻t4から時刻t5の期間、時刻t8から時刻t9の期間、時刻t10から時刻t11の期間、時刻t12から時刻t13の期間は、Aが0の状態であり、B’が1の状態の期間である。残りは、どちらも0の状態の期間である。
【0197】
B’に示されるように、片方のデータBの位相を180°シフトさせることで、AとB’のうちの両方が1である期間でないので、AとB’は、Aが0の状態でデータを加算することができる。
【0198】
AとB’との加算結果は、A+B’に示されるように、時刻t1から時刻t3の期間、時刻t4から時刻t6の期間、時刻t8から時刻t13までの期間において1の状態となり、それ以外の期間において0の状態となる。
【0199】
図19は、1ビットデータの直接加算の例を示す図である。
【0200】
1段目のA(NRZ)は、NRZ信号の1ビットのデジタルデータの波形を示している。A(NRZ)は、時刻t21から時刻t23までの期間、時刻t25から時刻t27までの期間、および、時刻t29から時刻t33までの期間において1となり、それ以外の期間において0の状態となる。
【0201】
2段目のA(RTZ)は、RTZ信号の1ビットのデジタルデータの波形を示している。A(RTZ)は、時刻t21から時刻t22までの期間、時刻t25から時刻t26までの期間、時刻t29から時刻t30の期間、時刻t31から時刻t32の期間において1の状態となり、それ以外の期間において0の状態となる。
【0202】
3段目のB(NRZ)は、NRZ信号の1ビットのデジタルデータの波形を示している。B(NRZ)は、時刻t21から時刻t25までの期間、時刻t27から時刻t33までの期間において1の状態となり、それ以外の期間において0の状態となる。
【0203】
4段目のB(RTZ)は、RTZ信号の1ビットのデジタルデータの波形を示している。B(RTZ)は、時刻t21から時刻t22までの期間、時刻t23から時刻t24までの期間、時刻t27から時刻t28までの期間、時刻t29から時刻t30までの期間、時刻t31から時刻t32までの期間において1の状態となり、それ以外の期間において0の状態となる。
【0204】
5段目のB’(180°シフト)は、B(RTZ)の位相が180°シフトされたデジタルデータの波形を示している。B’(180°シフト)は、B(RTZ)が180°シフトされている。B’(180°シフト)は、時刻t22から時刻t23までの期間、時刻t24から時刻t25までの期間、時刻t28から時刻t29までの期間、時刻t30から時刻t31までの期間、時刻t32から時刻t33までの期間において1の状態となり、それ以外の期間において0の状態となる。
【0205】
6段目のAは、2番目のA(RTZ)の波形を示している。
【0206】
7段目のBは、4番目のB(RTZ)の波形を示している。
【0207】
8段目のB’(180°シフト)は、5番目のB’(180°シフト)の波形を示している。
【0208】
9段目のA+B’は、6番目のAのデジタルデータと8番目のB’のデジタルデータが加算されたデジタルデータの波形を示している。A+B’は、時刻t21から時刻t23までの期間、時刻t24から時刻t26までの期間、時刻t28から時刻t33までの期間に1の状態となり、それ以外の期間において0の状態となる。
【0209】
1ビットのデータは、振幅が既に1ビットである。したがって、直接加算しようとすれば、1ビットのデータを通常2ビットに拡張する必要がある。しかしながら、後段の処理も1ビットで行いたい場合、データの幅を調整し、1ビットデータに隙間を持たせることで、信号の加算が可能になる。
【0210】
すなわち、図17の再サンプリング部381は、1番目のA(NRZ)と3番目のB(NRZ)に示されるように、2つの1ビットのデータ列をNRZ(Non Return to Zero)として扱い、2倍のレートに再サンプリングし、RTZ信号とする。RTZ信号とすることは、2番目のA(RTZ)と4番目のB(RTZ)に示されるように、データ幅を1/2に変化させたことに相当する。
【0211】
位相シフト部382は、RTZ信号とした2つのデータの他方の位相を180°シフトさせる。これにより、加算部371は、一方の0データの部分にデータを加算することができ、6番目のAと7番目のBをシフトさせた結果の8番目のB’に示されるように、1ビットの直接加算を実現することができる。
【0212】
図20は、図17のDSP361の信号処理を説明するフローチャートである。
【0213】
ステップS311において、再サンプリング部381は、入力されてきた1ビットデータがNRTZ信号であるか否かを判定する。ステップS311において、NRTZ信号であると判定された場合、処理は、ステップS312に進む。
【0214】
ステップS312において、再サンプリング部381は、1ビットデータを、2倍のレートに再サンプリングする。
【0215】
ステップS311において、RTZ信号であると判定された場合、ステップS312の処理をスキップし、処理は、ステップS313に進む。
【0216】
ステップS313において、位相シフト部382は、一方のデータの位相を180°シフトする。
【0217】
ステップS314において、加算部371は、他方のデータと、位相がシフトされた一方のデータとを加算する。
【0218】
以上のように構成することで、1ビットの直接加算を実現することができる。
【0219】
なお、データ幅は任意でよく、データ幅を任意に変化させるならば、複数の信号にゲインを付加して加算することも可能となる。
【0220】
図21は、データ幅を任意に変化させた場合のDSP361の構成例を示す図である。
【0221】
図21のDSP361は、再サンプリング部381、位相シフト部382、および加算部371を含むように構成される点が、図17のDSP361と共通している。図21のDSP361は、ゲイン設定部391が追加された点が、図17のDSP361と異なっている。
【0222】
すなわち、ゲイン設定部391は、2つのデータAとデータBに対して、データAには、α倍のゲインを設定し、データBには、β倍のゲインを設定する。2つのデータが重ならず、α+β>1とならない限りは、αとβの値は自由に設定可能である。
【0223】
再サンプリング部381は、ゲイン設定部391が設定したα倍のゲインと、β倍のゲインに基づいて、再サンプリングを行う。
【0224】
位相シフト部382は、必要に応じて、ゲインが付加された信号の位相をシフトさせる。
【0225】
図22は、データ幅を任意に変化させた場合の1ビットデータの直接加算の例を示す図である。
【0226】
1段目のAは、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-1からの1ビットのデジタルデータの波形を示している。Aは、時刻t51から時刻t52の期間、時刻t53から時刻t55の期間において1の状態となり、それ以外の期間において0の状態となる。
【0227】
2段目のαAは、ゲインのため、時刻t51と時刻t52の期間、時刻t53から時刻t54の期間、時刻t54から時刻t55の期間において、αだけ1の状態であり、(1-α)が0の状態である。αAは、それ以外の期間において0の状態となる。
【0228】
3段目のBは、1ビットΔΣA/Dコンバータ321-2からの1ビットのデジタルデータの波形を示している。Bは、時刻t51から時刻t54までの期間、1の状態となり、それ以外の期間において、0の状態である。
【0229】
4段目のβBは、ゲインのため、時刻t51から時刻t52までの期間、時刻t52から時刻t53までの期間、時刻t53から時刻t54までの期間において、(1-β)だけ1の状態であり、βが0の状態である。βBは、それ以外の期間において0の状態となる。
【0230】
5段目のαA+βBは、時刻t51から時刻t52までの期間において1の状態であり、時刻t52から時刻t53までの期間において、αだけ0の状態であり、残りのβが1の状態である。αA+βBは、時刻t53から時刻t54までの期間において1の状態であり、時刻t54から時刻t55までの期間において、αだけ1の状態であり、残りのβが0の状態である。
【0231】
加算結果後のデータレートは変換しており、データレートは、αとβといったゲインに依存する。上述した図19のように、RTZ信号とする場合には、1/2のゲインであるため、加算後のデータレートは、2倍になる。
【0232】
図23は、図21のDSP361の信号処理を説明するフローチャートである。
【0233】
ステップS331において、ゲイン設定部391は、2つのデータAとデータBに対して、データAには、α倍のゲインを設定し、データBには、β倍のゲインを設定する。
【0234】
ステップS332において、再サンプリング部381は、ゲイン設定部391が設定したα倍のゲインと、β倍のゲインに基づいて、再サンプリングを行う。
【0235】
ステップS333において、位相シフト部382は、必要に応じて、一方のデータの位相をシフトする。
【0236】
ステップS334において、加算部371は、他方のデータと、位相がシフトされた一方のデータとを加算する。
【0237】
以上のように構成することで、1ビットの直接加算を実現することができる。
【0238】
本技術によれば、1ビットのデータに対し、ビット拡張やデシメーションフィルタを用いることなく加算を行うことが可能になり、低遅延なシステムを構築することができる。
【0239】
本技術は、1ビットΔΣ変換器の後段のロジックなどに適用することができる。
【0240】
また、上記説明においては、ノイズキャンセリングシステムに用いる例を説明したが、ノイズキャンセリングシステムに限らず、本技術は、1ビットΔΣ変換器を用いる音声システムに適用することができる。
【0241】
なお、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、および、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0242】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0243】
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0244】
例えば、本技術は、1つの機能を、ネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0245】
また、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0246】
さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0247】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0248】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
装置外に出力するPWM信号である出力PWM信号に含まれる誤差情報を積分し、誤差時間情報に変換するVTCと、
前記装置外から入力されたPWM信号である入力PWM信号を用いて複数の遅延信号を生成する遅延部と、
前記複数の遅延信号の中から前記誤差時間情報に応じた遅延信号を選択して、前記出力PWM信号を出力する信号選択部と
を備える増幅器。
(2)
前記信号選択部は、前記誤差時間情報に応じた遅延信号を選択することで、前記出力PWM信号の信号幅を調整し、
前記信号幅が調整された前記出力PWM信号を前記VTCと前記装置外に出力する出力部を
さらに備える前記(1)に記載の増幅器。
(3)
前記遅延部は複数のインバータからなる
前記(1)または(2)に記載の増幅器。
(4)
前記遅延部はDLL回路からなる
前記(1)または(2)に記載の増幅器。
(5)
前記遅延部はPLL回路からなる
前記(1)または(2)に記載の増幅器。
(6)
装置外に出力するPWM信号である出力PWM信号をフィードバックする第1のフィードバック部と、
前記装置外から入力されたPWM信号である入力PWM信号とフィードバックされた前記出力PWM信号を比較して得られる差分誤差を積分する積分器と、
積分された前記差分誤差に応じて前記出力PWM信号の信号幅を変化させるための1以上の閾値を有する比較器と、
前記出力PWM信号を出力する複数の出力部と、
前記複数の出力部が段階的に動作するように、前記比較器から出力される信号を遅延させる遅延部と、
前記比較器から出力される信号の値と前記出力PWM信号の値が異なる区間、前記比較器から出力される信号を前記積分器にフィードバックする第2のフィードバック部と
を備える増幅器。
(7)
前記比較器と前記第2のフィードバック部との間に設けられるスイッチと、
前記比較器から出力される信号の値と前記出力PWM信号の値が異なる区間、前記比較器と前記第2のフィードバック部とを接続するように、前記スイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と
をさらに備える前記(6)に記載の増幅器。
(8)
1ビットのオーバーサンプルされた2以上のデータのデータレートを2倍以上に増加させる再サンプリング部と、
前記データレートが2倍以上に増加された前記データの位相をシフトさせる位相シフト部と、
前記位相がシフトされた前記データを加算する加算部と
を備える信号処理回路。
(9)
前記再サンプリング部は、前記データがNRT信号である場合、前記データの前記データレートを2倍以上に増加させる
前記(8)に記載の信号処理回路。
(10)
前記データのうち一方のデータにはαのゲインを設定し、前記データのうち他方のデータにはβのゲインを設定する(α+β≦1)ゲイン設定部を
さらに備え、
前記再サンプリング部は、設定された前記αのゲインおよび前記βのゲインに基づいて、前記データのデータレートを2倍以上に増加させる
前記(8)に記載の信号処理回路。
【符号の説明】
【0249】
1 D級増幅器, 12 遅延部, 13 エッジセレクタ, 14 ゲートドライバ, 15 出力部, 16 VTC, 31 インバータ, 32,33 電源回路, 34-1乃至34-n インバータ, 35,36 インバータ, 37,38 電源回路, 51-1乃至51-n インバータ, 61 位相検出器, 62 ローパスフィルタ, 101 D級増幅器, 111 入力部, 112 積分器, 113 比較器, 114 遅延回路, 115 スイッチ制御部, 116 スイッチ, 117 フィードバック回路, 118-1,118-2 ゲートドライバ, 119 出力部, 120 フィードバック回路, 131 インバータ, 132 電源回路, 133 接地回路, 135 オペアンプ, 136 キャパシタ, 137-1,137-2 インバータ, 138 電源回路, 139 接地回路, 201 オーディオプレーヤ, 218 D級増幅器, 301 ノイズキャンセリングシステム, 311-1,311-2 A/Dコンバータ, 312 インバータ, 321-1,321-2 1ビットΔΣA/Dコンバータ, 351 ノイズキャンセリングシステム, 361 DSP, 362 1ビットΔΣD/Aコンバータ, 371 加算部, 381 再サンプリング部, 382 位相シフト部, 391 ゲイン設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
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