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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026680
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20240220BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08L71/00
C08K3/40
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001624
(22)【出願日】2024-01-10
(62)【分割の表示】P 2020193775の分割
【原出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】池内 拓人
(57)【要約】
【課題】 本発明は、優れた耐火性を有する硬化物を生成することができる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の硬化性組成物は、分子中にウレタン結合又はウレア結合を有し且つ末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体と、ガラスフリットとを含み、好ましくは、ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対してガラスフリット10~200質量部を含有しているので、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態を保持し、優れた耐火性を有している硬化物を生成することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にウレタン結合又はウレア結合を有し且つ加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体と、
ガラスフリットとを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対してガラスフリット10~200質量部を含有していることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
長石類を含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ポリアルキレンオキサイド系重合体は、主鎖の末端にウレタン結合又はウレア結合を介して加水分解性シリル基が結合していることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
ウレタン結合又はウレア結合と、加水分解性シリル基とがアルキレン基を介して結合していることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
加水分解性シリル基が、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
ポリアルキレンオキサイド系重合体の23℃における粘度が10000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の目地構造は、壁部を構成している壁部材間に形成された目地部に、シーリング材を充填することによって構成されている。
【0003】
上記目地構造において、シーリング材は有機物であるため、燃焼に対して弱く、火災時にシーリング材の硬化物が目地部から脱落し、目地部から炎が廻り込むことがあり、建築構造物の壁部の耐火性能が不十分となるという問題点を有している。
【0004】
特許文献1には、(A)末端に加水分解によってシラノール基を形成しうるケイ素含有官能基をもつポリアルキレンエーテル、(B)マイクロカプセル化ポリリン酸アンモニウム粉末、(C)炭酸カルシウム粉末及び(D)シラノール縮合触媒からなる防火性シーリング材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3848379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記防火性シーリング材は、火災時の熱によって発泡した後、炭化層膜を形成するが、発泡により燃焼残渣が脆くなるため、燃焼炎の風圧によって容易に破壊し、目地部からの脱落を生じ、建築構造物の壁部の耐火性能が依然として不十分であるという問題点を有する。
【0007】
本発明は、優れた耐火性を有する硬化物を生成することができる硬化性組成物を提供する。本発明は、火災時においても目地部などのシーリング部に充填された状態を確実に保持し、シーリング部を通じての炎の回り込みを阻止し、建築構造物の壁部に優れた耐火性能を付与することができ、シーリング材として好適に用いることができる硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬化性組成物は、分子中にウレタン結合又はウレア結合を有し且つ加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体と、
ガラスフリットとを含む。
【0009】
[ポリアルキレンオキサイド系重合体]
ポリアルキレンオキサイド系重合体は、分子中にウレタン結合(-NHCOO-)又はウレア結合(-NHCONH-)を有し且つ加水分解性シリル基を有する。
【0010】
ポリアルキレンオキサイド系重合体としては、主鎖が、一般式:-(R-O)n-(式中、Rは炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0011】
主鎖とは、分子中において、50質量%以上を占める重合体単位をいう。重合体単位は、単量体が重合することによって形成されたものをいう。なお、重合体単位を構成する単量体は、重合体単位中に2分子以上含まれているものをいう。重合体単位が複数の単量体から構成されている場合、重合体単位は、ランダム重合又はブロック重合の何れから構成されたものであってもよい。複数の重合体単位が互いに結合して分子鎖を形成し、その分子鎖が、分子中の50質量%以上を占めている場合、互いに結合した重合体単位の全体を主鎖とする。複数の重合体単位が結合して分子鎖を形成している場合、重合体単位間に存在する分子構造は主鎖に含まれるものとする。
【0012】
ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化性組成物の硬化物に優れた耐火性を付与することができる。
【0013】
ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖骨格は、上述した一般式:-(R-O)n-で表される繰り返し単位以外に、ウレタン結合やウレア結合などを含んでいてもよいが、ウレタン結合及びウレア結合を含んでいないことが好ましく、-(R-O)n-で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0014】
ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量は、2000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、5000以上がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量は、100000以下が好ましく、80000以下がより好ましく、50000以下がより好ましく、30000以下がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量が2000以上であると、硬化性組成物の硬化物の柔軟性が向上する。ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量が100000以下であると、硬化性組成物の硬化物において、架橋点間の距離が小さくなり、硬化物の架橋密度が高くなって、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態を保持し、優れた耐火性を有している。
【0015】
なお、本発明において、ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、ポリアルキレンオキサイド系重合体6~7mgを採取し、採取したポリアルキレンオキサイド系重合体を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo-DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてポリアルキレンオキサイド系重合体の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0016】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてポリアルキレンオキサイド系重合体をBHTを含むo-DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量を測定することができる。
【0017】
ポリアルキレンオキサイド系重合体における数平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0018】
ポリアルキレンオキサイド系重合体は、分子内に加水分解性シリル基を有している。ポリアルキレンオキサイド系重合体は、その主鎖の両末端のうちの少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましく、主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有していることがより好ましい。ポリアルキレンオキサイド系重合体が主鎖の両末端のうちの少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していると、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態を保持し、優れた耐火性を有している。
【0019】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。ポリアルキレンオキサイド系重合体に含有されている加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0020】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基及びトリアルコキシシリル基が好ましく、ジメトキシシリル基及びトリメトキシシリル基がより好ましい。
【0021】
ポリアルキレンオキサイド系重合体において、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数は、1~5個が好ましく、1.4~4個がより好ましく、2.1~3個がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド系重合体における加水分解性シリル基の数が上記範囲内にあると、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態を保持し、優れた耐火性を有している。
【0022】
なお、ポリアルキレンオキサイド系重合体中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド系重合体中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0023】
ポリアルキレンオキサイド系重合体は、分子中にウレタン結合(-NHCOO-)又はウレア結合(-NHCONH-)を有している。ポリアルキレンオキサイド系重合体が分子中にウレタン結合又はウレア結合を有していることによって、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態を保持し、優れた耐火性を有している。
【0024】
ポリアルキレンオキサイド系重合体は、主鎖末端のうちの少なくとも一方に加水分解性シリル基を有することが好ましい。加水分解性シリル基は、主鎖末端のうちの少なくとも一方にウレタン結合又はウレア結合を介して結合していることが好ましい。加水分解性シリル基が主鎖末端にウレタン結合又はウレア結合を介して結合していると、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態をより確実に保持し、優れた耐火性を有している。
【0025】
加水分解性シリル基と、ウレタン結合又はウレア結合との間に、アルキレン基が介在していることが好ましい。アルキレン基が介在していることによって、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態をより確実に保持し、優れた耐火性を有している。
【0026】
アルキレン基は、-CnH2m-(mは自然数である)で表され、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ドデシレン基などが挙げられ、炭素数が1~6のアルキレン基が好ましく、炭素数が1~5のアルキレン基がより好ましく、炭素数が1~4のアルキレン基がより好ましく、炭素数が1~3のアルキレン基がより好ましい。
【0027】
ポリアルキレンオキサイド系重合体の23℃における粘度は、50000Pa・s以下が好ましく、40000Pa・s以下がより好ましく、35000Pa・s以下が好ましい。ポリアルキレンオキサイド系重合体の23℃における粘度が50000Pa・s以下であると、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態をより確実に保持し、優れた耐火性を有している。
【0028】
なお、ポリアルキレンオキサイド系重合体の23℃における粘度は、B型粘度計を用いて日本接着剤工業会規格JAI-7-1999に準拠して温度23℃、回転速度20rpmの条件下にて測定して得られた溶融粘度をいう。なお、B型粘度計としては、例えば、ブルックフィールド社から商品名「B型粘度計デジタルレオメーターDVII(ローターNo.29)」にて市販されている。
【0029】
[ガラスフリット]
硬化性組成物は、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣において、ポリアルキレンオキサイド系重合体の燃焼残渣同士を結合させるためにバインダー成分としてガラスフリットを含有している。
【0030】
ガラスフリットを構成しているガラスとしては、たとえば、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラス、酸化ビスマス系ガラス、珪酸系ガラス、酸化ナトリウム系ガラスなどが挙げられ、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラスが好ましく、リン酸系ガラスがより好ましい。これらのガラスフリットは、B23、P25、ZnO、SiO2、Bi23、Al23、BaO、CaO、MgO、MnO2、ZrO2、TiO2、CeO2、SrO、V25、SnO2、Li2O、Na2O、K2O、CuO、Fe23などを所定の成分割合で調整して得ることができる。なお、ガラスフリットは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0031】
ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は、燃焼時にポリオキシアルキレン系重合体の燃焼残渣同士をより効果的に結合させることができるので、350℃以上が好ましく、360℃以上がより好ましく、370℃以上がより好ましく、380℃以上がより好ましい。ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は、燃焼時にポリオキシアルキレン系重合体の燃焼残渣同士をより効果的に結合させることができるので、650℃以下が好ましく、560℃以下がより好ましく、540℃以下がより好ましく、520℃以下がより好ましい。なお、ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は、ガラスの粘度が107.6dPa・s(logη=7.6)となる温度である。
【0032】
硬化性組成物中におけるガラスフリットの含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対して10質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、50質量部以上がより好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるガラスフリットの含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対して200質量部以下が好ましく、170質量部以下がより好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下がより好ましい。ガラスフリットの含有量が10質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態をより確実に保持し、優れた耐火性を有している。ガラスフリットの含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態をより確実に保持し、優れた耐火性を有している。
【0033】
硬化性組成物が後述する長石類を含有している場合、硬化性組成物中において、長石類の含有量とガラスフリットの含有量との比(長石類の含有量/ガラスフリットの含有量)は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上がより好ましく、1以上がより好ましい。硬化性組成物が後述する長石類を含有している場合、硬化性組成物中において、長石類の含有量とガラスフリットの含有量との比(長石類の含有量/ガラスフリットの含有量)は、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、12以下がより好ましく、6以下がより好ましい。長石類の含有量とガラスフリットの含有量との比(長石類の含有量/ガラスフリットの含有量)が0.1以上であると、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態をより確実に保持し、優れた耐火性を有している。長石類の含有量とガラスフリットの含有量との比(長石類の含有量/ガラスフリットの含有量)が20以下であると、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態をより確実に保持し、優れた耐火性を有している。
【0034】
[長石類]
硬化性組成物は長石類を含有していることが好ましい。長石類は、長石及び準長石を含有しており、準長石が好ましい。なお、長石類は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0035】
長石としては、例えば、正長石、サニディン、微斜長石、アノーソクレースなどのアルカリ長石;曹長石、灰曹長石、中性長石、曹灰長石、亜灰長石、灰長石などの斜長石などが挙げられる。
【0036】
準長石としては、例えば、カリ霞石(カルシライト)、灰霞石(カンクリナイト)などの霞石(ネフェリン)、霞石閃長石(ネフェリンサイアナイト)、白榴石(リューサイト)、方ソーダ石(ソーダライト)、藍方石(アウイン)、青金石(ラズライト)、黝方石(ノゼアン)、黄長石(メリライト)などが挙げられ、霞石閃長石(ネフェリンサイアナイト)が好ましい。なお、霞石閃長石は、閃長石と記載されることもある。
【0037】
長石類の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上がより好ましい。
長石類の平均粒子径は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、25μm以下がより好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がより好ましい。長石類の平均粒子径が0.01μm以上であると、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態をより確実に保持し、優れた耐火性を有している。長石類の平均粒子径が100μm以下であると、硬化性組成物中に均一に分散させることができ、硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態をより確実に保持し、優れた耐火性を有している。
【0038】
なお、長石類の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による画像解析によって測定された値をいう。具体的には、長石類を透過型電子顕微鏡を用いて倍率100倍の拡大写真を撮影し、任意の50個の長石類を抽出し、各長石類の直径を測定し、各長石類の直径の相加平均値を長石類の平均粒子径とする。なお、長石類の直径は、長石類を包囲し得る最小径の真円の直径をいう。
【0039】
硬化性組成物中における長石類の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対して1質量部以上が好ましく、30質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、80質量部以上がより好ましく、100質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における長石類の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対して800質量部以下が好ましく、600質量部以下が好ましく、450質量部以下がより好ましく、300質量部以下がより好ましく、200質量部以下がより好ましい。長石類の含有量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣は、硬くなりすぎず亀裂を生じることがなく、燃焼前の形態を保持することができる。長石類の含有量が800質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣は、硬くなりすぎず亀裂を生じることがなく、燃焼前の形態を保持することができる。
【0040】
[シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、ポリアルキレンオキサイド系重合体が含有する加水分解性シリル基が加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0041】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0042】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、硬化性組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0043】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対して10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化速度を速くして、硬化性組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物が適度な硬化速度を有し、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0044】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、アミノシランカップリング剤、揺変剤及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0045】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0046】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド系重合体100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましい。
【0047】
硬化性組成物は、ポリアルキレンオキサイド系重合体と、ガラスフリットと、必要に応じて、長石類及び添加剤とを混合することによって製造することができる。
【0048】
建築構造物を構成している部材間に形成された隙間や、建築構造物を構成している部材の部品間に形成された隙間(以下、これらを総称して「隙間部」ということがある)に硬化性組成物を充填した後に養生させて、空気中又は部材などに含まれている水分により硬化させることによって硬化物を生成させ、建築構造物及び建築構造物を構成している部材に優れた耐火性を付与することができる。得られる耐火構造は、互いに隣接する部材又は部材の部品と、互いに隣接する部材間又は部材の部品間に形成された隙間部に充填された、硬化性組成物の硬化物とを含む。
【0049】
建築構造物を構成している部材としては、特に限定されず、例えば、壁部材(例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材など)、ドア部材、間仕切り部材などが挙げられる。
【0050】
硬化性組成物の硬化物は、燃焼によって強固な燃焼残渣を生成し、この燃焼残渣は、火災時においても隙間部を充填して閉塞した状態を確実に保持して隙間部を通じた炎の回り込みを阻止し、建築構造物又はこの建築構造物を構成する部材に優れた耐火性能を付与することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明の硬化性組成物は、空気中又は硬化性組成物が接触している部材などに含まれている水分によって硬化して硬化物を生成する。硬化性組成物の硬化物は、燃焼して残渣となった後も燃焼前の形態を保持し、優れた耐火性を有している。
【0052】
硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣は、火災時においても隙間部を閉塞した状態を確実に保持して隙間部を通じた炎の回り込みを阻止し、建築構造物又はこの建築構造物を構成している部材などに優れた耐火性能を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0054】
実施例及び比較例の硬化性組成物の製造において下記の原料を使用した。
【0055】
・分子中にウレタン結合を有し且つ主鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体1(ポリアルキレンオキサイド系重合体1、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、主鎖骨格にウレタン結合及びウレア結合を有していない、数平均分子量:17400、主鎖の両末端にウレタン結合を介してメチルジメトキシシリル基を有する、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:3.0個、メチルジメトキシシリル基とウレタン結合との間にメチレン基を有する、23℃における粘度:500mPa・s、旭化成ワッカーシリコーン社製 商品名「XT-50」)
【0056】
・分子中にウレタン結合を有し且つ主鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体2(ポリアルキレンオキサイド系重合体2、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、主鎖骨格にウレタン結合及びウレア結合を有していない、数平均分子量:17900、主鎖の両末端にウレタン結合を介してメチルジメトキシシリル基を有する、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:2.0個、メチルジメトキシシリル基とウレタン結合との間にメチレン基を有する、23℃における粘度:10000mPa・s、旭化成ワッカーシリコーン社製 商品名「GENIOSIL STP-E10」)
【0057】
・分子中にウレタン結合を有し且つ主鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体3(ポリアルキレンオキサイド系重合体3、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、主鎖骨格にウレタン結合及びウレア結合を有していない、数平均分子量:30300、主鎖の両末端にウレタン結合を介してメチルジメトキシシリル基を有する、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:2.0個、メチルジメトキシシリル基とウレタン結合との間にメチレン基を有する、23℃における粘度:30000mPa・s、旭化成ワッカーシリコーン社製 商品名「GENIOSIL STP-E30」)
【0058】
・分子中にウレア結合を有し且つ主鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体4(ポリアルキレンオキサイド系重合体4、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、主鎖骨格にウレタン結合又はウレア結合を有している、数平均分子量:22300、主鎖の両末端にウレア結合を介してトリメトキシシリル基を有する、1分子中のトリメトキシシリル基の平均個数:3.0個、トリメトキシシリル基とウレア結合との間にプロピレン基を有する、23℃における粘度:2500mPa・s、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 商品名「SPUR3030」)
【0059】
・分子中にウレア結合を有し且つ主鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体5(ポリアルキレンオキサイド系重合体5、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、主鎖骨格にウレタン結合又はウレア結合を有している、数平均分子量:22500、主鎖の両末端にウレア結合を介してトリメトキシシリル基を有する、1分子中のトリメトキシシリル基の平均個数:3.0個、トリメトキシシリル基とウレア結合との間にプロピレン基を有する、23℃における粘度:7000mPa・s、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 商品名「SPUR3040」)
【0060】
・主鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体6(ポリアルキレンオキサイド系重合体6、分子中にウレタン結合及びウレア結合を有しない、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、数平均分子量:5200、主鎖の両末端にメチルジメトキシシリル基を有する、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:1.4個、23℃における粘度:600mPa・s、カネカ社製 商品名「SAT010」)
【0061】
・主鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体7(ポリアルキレンオキサイド系重合体7、分子中にウレタン結合及びウレア結合を有しない、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、数平均分子量:4000、主鎖の両末端にメチルジメトキシシリル基を有する、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:2.1個、23℃における粘度:600mPa・s、カネカ社製 商品名「SAT015」)
【0062】
・主鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体8(ポリアルキレンオキサイド系重合体8、分子中にウレタン結合及びウレア結合を有しない、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、数平均分子量:15000、主鎖の両末端にメチルジメトキシシリル基を有する、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:2.1個、23℃における粘度:600mPa・s、AGC社製 商品名「S6250」)
【0063】
[ガラスフリット]
・ガラスフリット(リン酸系ガラス、日本フリット社製 「VY0144」、主成分:P25、AI23及びR2O、Rはアルカリ金属原子、軟化点:404℃)
【0064】
[長石類]
・準長石(平均粒子径:5μm、ネフェリンサイアナイト 白石カルシウム社製 商品名「ネスパー」)
【0065】
[酸化防止剤]
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製 製品名「イルガノックス1010」)
【0066】
[シラノール縮合触媒]
・シラノール縮合触媒(1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、日東化成社製 商品名「ネオスタンU-130」)
【0067】
(実施例1~7及び比較例1~3)
ポリアルキレンオキサイド系重合体1~8、ガラスフリット、準長石、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びシラノール縮合触媒を表1に示した配合量となるようにして、プラネタリーミキサーを用いて真空雰囲気下にて60分間に亘って均一になるまで混合することによって硬化性組成物を得た。
【0068】
得られた硬化性組成物について、燃焼後のゴム弾性及びダンベル伸び率を下記の方法で測定し、その結果を表1に示した。
【0069】
(燃焼後のゴム弾性)
硬化性組成物の燃焼後のゴム弾性を下記の要領で測定した。具体的には、硬化性組成物をポリエチレンフィルム上に厚み10mmにて塗工し、雰囲気温度23℃及び相対湿度50%の条件下にて14日間養生して試験片を作製した。試験片を600℃に設定したマッフル炉内に30分間静置し、燃焼後の試験片(燃焼残渣)をマッフル炉から取り出し、燃焼残渣を23℃の雰囲気下にて3時間放置した。得られた燃焼残渣について、JIS K6253に準拠したデュロメーターAを用いて表面に押し当て15秒後の数値をショアAとして測定した。
A・・・ショアA 50以上であった。
B・・・ショアA 50未満であり且つ30以上であった。
C・・・ショアA 30未満であった。
【0070】
(ダンベル伸び率)
硬化性組成物を離型処理された基板上に厚みが3mmとなるように塗工した後、硬化性組成物を23℃、相対湿度50%にて1カ月間養生した。硬化性組成物の硬化物をJIS K6251準拠の3号ダンベルに切り出して試験片を作製した。
【0071】
得られた試験片を用いて200mm/minの引張速度で引張試験を行った。3号ダンベルの引張方向の評点間距離(初期評点間距離)20mmに対して、引張試験により変化した評点間距離(引張後評点間距離)を測定した。ダンベル伸び率を下記式に基づいて算出して下記基準に基づいて評価した。
ダンベル伸び率(%)=100×引張後評点間距離/初期評点間距離
A・・・ダンベル伸び率200%以上。
B・・・ダンベル伸び率200%未満100%以上。
C・・・ダンベル伸び率100%未満。
【0072】
【表1】