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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000267
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】エクオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 17/06 20060101AFI20231225BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
C12P17/06
C12P1/04 Z
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098960
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】村田 英城
(72)【発明者】
【氏名】三橋 和也
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC19
4B064CA02
4B064CC03
4B064CC07
4B064CC12
4B064CD04
4B064CD09
4B064CD12
4B064CD20
4B064CD21
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AC14
4B065BB02
4B065BB03
4B065BB12
4B065BB13
4B065BB15
4B065BB19
4B065BB23
4B065BB27
4B065BB29
4B065BC02
4B065BC03
4B065BC05
4B065CA18
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】微生物を利用したエクオールを製造において、従来よりも少ない水分条件でエクオールを製造する方法の提供。
【解決手段】ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物で培養する工程;を有してエクオールを産生するエクオールの製造方法であって、前記培養工程において、エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満で培養を行う、上記方法により上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物で培養する工程;を有してエクオールを産生するエクオールの製造方法であって、
前記培養工程において、エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水400重量部未満で培養を行う、上記方法。
【請求項2】
エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水350重量部未満で培養を行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水300重量部未満で培養を行う請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エクオール原料が大豆胚軸であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が請求項1~3のいずれか一項に記載の量で培養を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エクオール原料が大豆胚軸抽出物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が請求項1~3のいずれか一項に記載の量で培養を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記エクオール原料が大豆胚軸抽出物精製物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が請求項1~3のいずれか一項に記載の量で培養を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記エクオール原料が大豆抽出物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が請求項1~3のいずれか一項に記載の量で培養を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エクオール原料が大豆抽出物精製物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が請求項1~3のいずれか一項に記載の量で培養を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクオール産生能を有する微生物によるエクオールの製造方法に関する。本発明は、特に、培養工程において用いる水分量を低く抑えた、エクオール産生能を有する微生物によるエクオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆、葛などのマメ科の植物に多く含まれているイソフラボン類はポリフェノールの分類のひとつであり、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドである。近年の調査により、イソフラボン類は女性ホルモン作用(エストロゲン)や抗酸化作用を有し、イソフラボン類を摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害などに対して予防効果があることが明らかとなっている。
イソフラボン類は、たとえば大豆内では、糖と共有結合した配糖体の形、ダイジン(daidzin)、グリシチン(glycitin)、ゲニスチン(genistin)として存在しており、アグリコンの形ではごく少量存在しているのみである。これら配糖体はさらにマロニル化、アセチル化されているものも存在している。これらの配糖体は、ヒトや動物の体内に入ると消化酵素又は腸内細菌の産生する酵素であるβグルコシダーゼ等の働きにより、それぞれダイゼイン(daidzein)、グリシテイン(glycitein)、ゲニステイン(genistein)となる。さらに、ダイゼインは腸内細菌の働きにより、ジヒドロダイゼイン(dihydrodaidzein)を経て、O-デスメチルアンゴレンシン(O-desmethylangolensin:O-DMA)又はエクオール(equol)へと酵素的に変換されることが知られている。
【0003】
エクオールは、これらの代謝産物の中で最もエストロゲン活性が高いことが知られている。しかしながら、人間の場合、イソフラボンの代謝には個人差があり、上記のようにダイゼインを発酵させてエクオールを産生する能力を有する腸内細菌を保有する人は少なく、その保有率は日本人で約5割、欧米人で約3割程度であることが明らかとなっている。そのため、エクオール産生菌を保有しない人は、大豆等のマメ科食物を摂取してもエクオールを体内で産生することができないという問題点が存在していた。
【0004】
これらの課題を克服するために、乳酸菌等の嫌気性微生物を用いて体外的にエクオールを産生させる試みがなされている(特許文献1~5)。しかしながら、培養濃度が低く、製品化する際に多量の水を蒸発させる必要があり、エネルギーを多量に消費する状況であった。エネルギーの無駄遣いは、二酸化炭素を多く排出し、地球温暖化を進行させてしまう重大な問題である。
【0005】
特許文献5では、適量の水を大豆胚軸に加えて水分含量を調整し、上記エタオール産生菌を接種することにより大豆胚軸の発酵処理を行うことを開示する。また、該文献は、大豆胚軸に添加される水の量が、使用するエタオール産生菌の種類や発酵槽の種類等によって応じて適宜設定されることを開示し、通常、発酵開始時に、大豆胚軸と水が以下の割合で共存することを開示する:大豆胚軸(乾燥重量換算)100重量部に対して、水が400~4000重量部、好ましくは500~2000重量部、更に好ましくは600~1000重量部。しかしながら、上述したとおり、多量の水を用いると製品化の際に多量の水を蒸発させる必要があり、エネルギーを多量に消費するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-204296公報。
【特許文献2】特表2006-504409公報。
【特許文献3】特開2008-61584公報。
【特許文献4】特開2010-104241公報。
【特許文献5】WO2007/066655。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、微生物を利用したエクオールを製造において、従来よりも少ない水分条件でエクオールを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者らは、以下の発明を見出した。
<1> ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物で培養する工程;を有してエクオールを産生するエクオールの製造方法であって、
前記培養工程において、エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満で培養を行う、上記方法。
【0009】
<2> 上記<1>において、エクオール原料が大豆胚軸であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
<3> 上記<1>において、エクオール原料が大豆胚軸抽出物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
<4> 上記<1>において、エクオール原料が大豆胚軸抽出物精製物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
【0010】
<5> 上記<1>において、エクオール原料が大豆抽出物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
<6> 上記<1>において、エクオール原料が大豆抽出精製物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、微生物を利用したエクオールを製造において、従来よりも少ない水分条件でエクオールを製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願は、エクオールの製造方法、特に培養工程において用いる水分量を低く抑えたエクオールの製造方法を提供する。
具体的には、本願は、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物で培養する工程;を有してエクオールを産生するエクオールの製造方法であって、
前記培養工程において、エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満で培養を行う、上記方法を提供する。
【0013】
<培養工程>
培養工程は、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する微生物で培養する工程である。
該培養工程は、エクオールを産生することができれば、その条件等は、用いる水の条件以外、特に限定されない。例えば、従来公知の条件を用いることができるが、該条件に限定されない。
【0014】
前記培養工程において、エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水を400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満で培養を行う。
液体若しくは、高濃度スラリー状態での微生物発酵を利用したエクオールの製造方法は、知られていたものの、上記のような水分量で培養を行うことによって、エクオールを製造する方法は、知られていなかった。
培養工程での水分量を抑えることによって、エクオールを製品化する際に使用するエネルギーを画期的に減らすことが実現でき、安価にエクオールを製造することが可能となる。ひいては、より多くの人々に、エクオールを供給することができるようになる。また、製造する為に必要なエネルギーを大幅に削減することができ、地球温暖化抑制対策としても非常に有効である。
【0015】
具体的には、ある面において、エクオール原料は大豆胚軸であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
また、本発明の他の面において、エクオール原料は、大豆胚軸抽出物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
【0016】
さらに、本発明のさらに他の面において、エクオール原料が大豆胚軸抽出物精製物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
また、本発明のさらなる他の面において、エクオール原料が大豆抽出物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
さらに、本発明のさらなる他の面において、エクオール原料が大豆抽出精製物を含む培地成分であり、その乾燥重量100重量部に対して、水が400重量部未満、好ましくは350重量部未満、より好ましくは300重量部未満であるのがよい。
【0017】
培養工程において、水は、流動性をたもてる程度であればよく、エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、例えば100重量部以上、好ましくは150重量部以上、より好ましくは180重量部以上であるのがよい。
なお、原料は、水分を含んでもよいが、該水分と合わせた水分量が上記範囲であるのがよい。
ここで、「乾燥重量」とは、105℃、4時間で重量減少する水を代表とする揮発成分を除いた重量である。
【0018】
<<エクオール原料>>
本発明の方法において用いるエクオール原料は、文字通り、エクオールの原料として用いられるものであれば、その形態は問わない。
エクオール原料は、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいればよく、その形態は問わない。例えば、ダイゼイン配糖体そのもの、ダイゼインそのもの、又はジヒドロダイゼインそのものであっても、それらを含有するもの、例えば大豆、大豆加工物、大豆胚軸、大豆胚軸加工物、例えば大豆抽出物、大豆胚軸抽出物、大豆胚軸抽出物精製物が挙げられ、具体的には市販イソフラボンであってもよい。
【0019】
<<微生物>>
本発明の方法は、エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物を用いる。なお、「エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力」を、本明細書において、単に「エクオール産生能」という場合がある。
本発明の方法において用いるエクオール産生能を有する微生物は、上記エクオール原料からエクオールを産生する能力を有する微生物であれば、特に限定されない。
なお、エクオール原料は、微生物の「エクオール産生能」との関係において決まる。例えば、ある微生物Aがダイゼイン配糖体については「エクオール産生能」を有しないが、ダイゼインについては「エクオール産生能」を有する場合、該微生物Aのエクオール原料は、「ダイゼイン」となる。また、この場合、ダイゼイン配糖体をダイゼインへと変換する工程を培養工程前に有してもよい。例えば、ある微生物Bがダイゼイン配糖体及びダイゼインについては「エクオール産生能」を有しないが、ジヒドロダイゼインについては「エクオール産生能」を有する場合、該微生物Bのエクオール原料は、「ジヒドロダイゼイン」となる。また、この場合、ダイゼイン配糖体をダイゼインへと変換し、ダイゼインをさらにジヒドロダイゼインへと変換する工程を培養工程前に有してもよい。
微生物として、嫌気性微生物を挙げることができる。該嫌気性微生物は、例えば、37℃付近(例えば30~42℃)の温度でエクオールを産生することができる。
【0020】
なお、エクオール産生能は、培養物中のダイゼイン、ジヒドロダイゼイン、エクオール等を定量することにより確認することができる。これらの定量は、当業者であれば、例えばWO2012/033150、特開2012-135217、特開2012-135218、特開2012-135219等の記載に基づき行うことができる。これらの定量方法の一例を以下に示す。
【0021】
例えば、培養液に酢酸エチルを加えて、激しく攪拌した後遠心し、酢酸エチル層を取り出す。必要に応じて同培養液に同様の操作を数回行い、それら酢酸エチル層を合わせてエクオール抽出液を得ることができる。この抽出液をエバポレーターで減圧下に濃縮、乾固し、メタノールに溶解させる。これをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜等の膜を使用して濾過し、不溶物を除去したものを高速液体クロマトグラフィー測定サンプルとすることができる。高速液体クロマトグラフィーの条件は例えば以下のものを例示することができるがこれに限定されない。
【0022】
[高速液体クロマトグラフィー条件]
カラム:Phenomenox Luna 5uC18、2.0mm×150mm(島津ジーエルシー)
移動相:水/メタノール[55:45,v/v]
流速:0.2mL/min
カラム温度:40℃
検出:UV280nm
保持時間:ジヒドロダイゼインが13.8分、ダイゼインが19.6分、グリシテインが22.5分、エクオールが25.6分、ゲニステインが35.0分
【0023】
エクオール産生する能力を有する微生物として、以下の属に分類される微生物を挙げることができるがこれらに限定されない。
アドレクラウチア(Adlercreutzia)属
バクテロイデス(Bacteroides)属
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属
クロストリジウム(Clostridium)属
エガセラ(Eggerthella)属
エンテロコッカス(Enterococcus)属
エンテロハブダス(Enterorhabdus)属
ユーバクテリウム(Eubacterium)属
フィネゴルディア(Finegoldia)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属
ラクトコッカス(Lactococcus)属
パラエガセラ(Paraeggerthella)属
ペディオコッカス(Pediococcus)属
プロテウス(Proteus)属
シャーペア(Sharpea)属
スラキア(Slackia)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ベイロネラ(Veillonella)属
【0024】
エクオールを産生する能力を有する微生物として、具体的には、以下の微生物を挙げることができるがこれらに限定されない。
アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)
アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. equolifaciens)
バクテロイデス・オバツス(Bacteroides ovatus)
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)
ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)
クロストリジウム・エスピー(Clostridium sp.)
エガセラ・エスピー(Eggerthella sp. )
エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)
エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)
エンテロハブダス・ムコシコラ(Enterorhabdus mucosicola)
ユーバクテリウム・エスピー(Eubacterium sp.)
フィネゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)
ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)
ラクトバチルス・ムコサエ(Lactobacillus mucosae)
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)
ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)
ラクトバチルス・エスピー(Lactobacillus sp.)
ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)
ラクトコッカス・エスピー(Lactococcus sp.)
パラエガセラ・エスピー(Paraeggerthella sp.)
ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)
プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)
シャーペア・アザブエンシス(Sharpea azabuensis)
スラキア・エクオリファシエンス(Slackia equolifaciens)
スラキア・イソフラボニコンバーテンス(Slackia isoflavoniconvertens)
スラキア・エスピー(Slackia sp.)
ストレプトコッカス・コンステラタス(Streptococcus constellatus)
ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)
ベイロネア・エスピー(Veillonella sp.)
【0025】
上記記載の微生物のうち、例えばエガセラ(Eggerthellaceae)科に分類される微生物、ビフィドバクテリアセアエ(Bifidobacteriaceae)科に分類される微生物、クロストリジアセアエ(Clostridiaceae)科に分類される微生物、コーリオバクテリアセアエ(Coriobacteriaceae)科に分類される微生物、エンテロコッカセアエ(Enterococcaceae)科に分類される微生物、ユーバクテリアセアエ(Eubacteriaceae)科に分類される微生物、モルガネラセアエ(Morganellaceae)科に分類される微生物、ペプトニフィラセアエ(Peptoniphilaceae)科に分類される微生物、ラクトバチラセアエ(Lactobacillaceae)科に分類される微生物、ストレプトコッカセアエ(Streptococcaceae)科に分類される微生物、ベイロネラセアエ(Veillonellaceae)科に分類される微生物、又はこれらの類縁微生物が挙げられる。好ましくは、アドレクラウチア(Adlercreutzia)属、バクテロイデス属、ビフィドバクテリウム属、クロストリジウム属、コリオバクテリウム属、エガセラ属、エンテロコッカス属、ユーバクテリウム属、フィネゴルディア属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、パラエガセラ属、ペディオコッカス属、プロテウス属、シャーペア属、スラキア属、ストレプトコッカス属、ベイロネア属、又はこれらの類縁微生物に分類される微生物であるのがよい。さらに好ましくは、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス、バクテロイデス・オバツス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロングム、クロストリジウム・エスピー、エガセラ・エスピー、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロハブダス・ムコシコラ、ユーバクテリウム・エスピー、フィネゴルディア・マグナ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・インテスティナリス、ラクトバチルス・ムコサエ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・エスピー、ラクトコッカス・ガルビエ、ラクトコッカス・エスピー、パラエガセラ・エスピー、ペディオコッカス・ペントサセウス、プロテウス・ミラビリス、シャーペア・アザブエンシス、スラキア・エクオリファシエンス、スラキア・イソフラボニコンバーテンス、スラキア・エスピー、ストレプトコッカス・コンステラタス、ストレプトコッカス・インターメディウス、ベイロネア・エスピーであるのがよい。
【0026】
上記記載の微生物のうち、特に以下に記載する微生物のいずれか又はこれらの菌と同様の種としての性質を有する類縁の菌をより好ましい嫌気性微生物として挙げることができる。
アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)DSM 18785株
アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. equolifaciens)DSM 19450株
バクテロイデス・オバツス(Bacteroides ovatus)E-23-15株
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidibacterium breve)ATCC 15700株
ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)BB536株
クロストリジウム・エスピー(Clostridium sp.)HGH136株
エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)Julong 732株
エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)YY7918株
エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)D1株
エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)INIA P333株
エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)EPI1株
エンテロハブダス・ムコシコラ(Enterohabdus mucosicola)Mt1B8株
ユーバクテリウム・エスピー(Eubacterium sp.)D2株
フィネゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)EPI3株
ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)DPPMA114株
ラクトバチルス・インテスティナリス(Lactobacillus intestinalis)KTCT13676BP株
ラクトバチルス・ムコサエ(Lactobacillus mucosae)EPI2株
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)JS1株
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)DPPMA24W株
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)DPPMASL33株
ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)DPPMAAZ1株
ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)INIA P540株
ラクトバチルス・エスピー(Lactobacillus sp.)Niu-O16株
ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)20-92株
パラエガセラ・エスピー(Paraeggerthella sp.)SNR40-432株
ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)CS1株
プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)LH-52株
シャーペア・アザブエンシス(Sharpea azabuensis)ST18株
スラキア・エクオリファシエンス(Slackia equolifaciens)DSM 24851株
スラキア・イソフラボニコンバーテンス(Slackia isoflavoniconvertens)DSM 2200
6株
スラキア・エスピー(Slackia sp.)FJK1株
スラキア・エスピー(Slackia sp.)NATTS株
スラキア・エスピー(Slackia sp.)YIT11861株
スラキア・エスピー(Slackia sp.)TM-30株
ストレプトコッカス・コンステラタス(Streptococcus constellatus)E-23-17株
ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)A6G-225株
ベイロネア・エスピー(Veillonella sp.)EP株。
【0027】
なお、上記嫌気性微生物は、その寄託番号に示された寄託機関から入手することができる。各受託番号は、当該嫌気性微生物が、それぞれ次の寄託機関に寄託されていることを示す。
FERM 特許生物寄託センター;International Patent Organism Depositary (IPOD)
http://unit.aist.go.jp/pod/ci/index.html
DSM German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (DSMZ)
http://www.dsmz.de/
KCCM Korean Culture Center of Microorganisms
【0028】
本発明においては、エクオールの産生能を有する嫌気性微生物は、エクオールの生産に適した条件で培養される。本発明におけるエクオールの生産に適した条件とは、エクオールの生成活性を持つ嫌気性微生物の生存と活動が維持される条件をいう。より具体的には、嫌気性微生物の生存が可能な気相条件(嫌気性条件)が維持され、当該嫌気性微生物の活性と増殖を支持するための栄養素が与えられることを言う。嫌気性微生物の生存に適した種々の培地組成が公知である。したがって、先に示したエクオールの産生能を有する嫌気性微生物について、当業者は、適切な培地組成を選択することができる。たとえば、Difco社製のBHI培地や、実施例において用いた培地等を使用することができるがこれらに限定されない。
【0029】
本発明で用いられる培地には、水溶性の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性の有機物として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。ここで添加する炭素源は、粉末、固体状、液体状のいずれの性状であっても使用することができる。
ソルボース、フラクトース、グルコース等の糖類;
メタノール等のアルコール類;
吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸等有機酸類、またはこれらの塩。
【0030】
炭素源としての培地に加える有機物の濃度は、効率的に培地中の嫌気性微生物を発育させるために適宜調節することができる。
【0031】
培地には、窒素源を加えることができる。本発明において、窒素源としては通常の発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。好ましい無機窒素源は、アンモニウム塩、及び硝酸塩である。より好ましい無機窒素源は、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、硝酸カリウム及び硝酸ソーダである。一方、好ましい有機窒素源はアミノ酸類、酵母エキス、ペプトン類、肉エキス、肝臓エキス、消化血清末等である。より好ましい有機窒素源はアルギニン、システイン、シスチン、シトルリン、リジン、酵母エキス、ペプトン類である。ここで添加する窒素源は、粉末、固体状、液体状のいずれの性状であっても使用することができる。また、エキス類を使用する場合は、窒素源、炭素源、両方の栄養素として使用することもできる。
【0032】
さらに、炭素源や窒素源に加えて、エクオールの製造に適した他の有機物あるいは無機物を培地に加えることもできる。たとえば、ビタミン等の補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、嫌気性微生物の増殖や活性を増強できる場合もある。たとえば無機化合物、ビタミン類、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。ここで添加するビタミン等の補因子や各種の塩類等の無機化合物は、粉末、固体状、液体状のいずれの性状であっても使用することができる。また、エキス類を使用する場合は、ビタミン類の補因子や各種の塩類等の無機化合物に加え、さらに窒素源、炭素源としての栄養素も兼ねることもできる。
【0033】
無機化合物 ビタミン類
リン酸二水素カリウム ビオチン
硫酸マグネシウム 葉酸
硫酸マンガン ピリドキシン
塩化ナトリウム チアミン
塩化コバルト リボフラビン
塩化カルシウム ニコチン酸
硫酸亜鉛 パントテン酸
硫酸銅 ビタミンB12
明ばん チオオクト酸
モリブデン酸ソーダ p-アミノ安息香酸
塩化カリウム
ホウ酸等
塩化ニッケル
タングステン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウム
硫酸第一鉄アンモニウム
【0034】
これらの無機化合物やビタミン類、あるいは増殖補助因子を添加して培養液を製造する方法として、従来公知の手法を用いることができる。培地は、液体、半固体状、あるいは固体状とすることができる。
液体とする場合、上述の範囲の水分量での溶液を作成し、エクオール原料、例えば大豆胚軸、大豆胚軸抽出物、大豆胚軸抽出物精製物、大豆抽出物または、大豆抽出物精製物に、添加し混錬する。
半固体状とする場合、エクオール原料、例えば大豆胚軸、大豆胚軸抽出物、大豆胚軸抽出物精製物、大豆抽出物、または大豆抽出物精製物に混錬する。
固体状とする場合、エクオール原料、例えば大豆胚軸、大豆胚軸抽出物、大豆胚軸抽出物精製物、大豆抽出物、または大豆抽出物精製物に添加し混合後、少量の水を加えて混錬するか、又は先に上述の範囲の水分量である少量の水を加えて培地成分を添加後、混錬してもよい。
【0035】
本発明において用いる培地は、デキストリン類を含むことができる。デキストリン類を含む培地で嫌気性微生物を培養すれば、培養後に改めて培養物にデキストリン類を接触させることなく、エクオールおよびデキストリン類を含む液を調製することができる。
デキストリン類の培地への添加は、微生物の培養前および培養中に行うことができる。
特にβ-シクロデキストリンを添加する場合は、発酵により、水溶性エクオールβ-シクロデキストリン包接錯体として製造することができる。
【0036】
本発明において用いる培地に、消泡剤 好ましくは大豆油、より好ましくはビタミンE入り大豆油を含むことができる。
【0037】
本願の方法において、微生物、特に嫌気性微生物は、公知の微生物の培養方法にしたがって培養することができる。
【0038】
本願の方法において、嫌気性微生物を用いる場合には、発酵槽内への酸素の混入を防ぐのがよい。発酵槽は、通常用いられる発酵槽がそのまま利用できる。発酵槽内に混入する酸素を、窒素等の不活性気体で置換することにより、嫌気的な雰囲気を作ることができる。
【0039】
本発明における培養工程において、その気相は、水素を含む1種類以上の気体からなるのがよい。気相を構成する気体は、水素を含む1種類以上の気体からなれば特に限定されないが、水素及び水素以外の1種以上の気体を有するのがよい。水素以外の気体として、二酸化炭素、窒素、一酸化炭素等を挙げることができるが、特に限定されない。
前記気体の水素濃度は、特に限定されないが、例えば30%以下、10%以下、4%以下などを挙げることができる。
なお、本発明における培養工程において、通気せずゴム栓で密栓したビンや試験管内等の密閉系で行うこともできる。
【0040】
効率よくエクオールを回収するためには、気相を構成する混合気体の培養槽への通気量として、0.001~2.0V/V/Mガス量/液量/分、例えば0.01~2.0V/V/Mガス量/液量/分とすることができるが、これに限定されない。
【0041】
培養工程は、培養槽で行うことができ、その形状、大きさは特に限定されない。また、密閉して加熱殺菌でき、気相部にガスを吹き込むことができ、発酵中温度を調節できる装置であれば好適に使用することができる。また、攪拌機を備えていると、混錬しながら、気相部と接触できるため、ガス交換がスムースに行え、反応を良好に進行させることができる。培養槽として、例えば、二軸混錬機やニーダー、リボン式フードミキサー、パドル式フードミキサーなどを例示することができるがこれらに限定されない。
培養槽の形状によっては、無攪はんであっても、攪はんを行ってもよい。攪はんを行う場合、培地を十分に撹はんするため、撹はん機等を利用することもできる。培養槽内の培養物を攪拌することによって、培地成分や基質ガスを嫌気性微生物に接触させる機会を増やして、エクオールの生成効率を最適化することができる。また基質ガスをナノバブルとして供給することもできる。
無攪はんで行う場合は、すのこやトレイに薄く敷き詰めることが望ましい。また、これらを多段に重ねて行ってもよい。
【0042】
本発明において、微生物を培養する際は常圧で行うこともできるが、加圧する場合、加圧条件は、当該微生物が生育できる条件であれば特に限定されるものではない。好ましい加圧条件としては、0.2MPa以下の範囲、例えば0.02~0.2MPaの範囲を挙げることができるがこれに限定されない。
【0043】
エクオールの産生量を増加させるため、培養槽の温度は特に制限されるものではないが、好ましくは30℃~40℃をさらに好ましくは33℃~38℃の温度を挙げることができる。
培養時間は、エクオールの生成量、及び/又はイソフラボン類の残存量等に応じて、適宜設定することができる。例えば8~240時間、8~120時間、好ましくは12~160時間、より好ましくは12~72時間、特に好ましくは16~120時間、さらに好ましくは16~60時間を例示することができるがこれらに限定されない。
【0044】
本発明の方法は、培養工程前後に、培養工程以外の工程を有してもよい。
例えば、培養工程前に、上述したように、所望の「エクオール原料」の形態にする工程、例えば、ある微生物Aを本発明の方法の培養工程に用いる場合、該微生物Aがダイゼイン配糖体については「エクオール産生能」を有しないが、ダイゼインについては「エクオール産生能」を有する場合、ダイゼイン配糖体をダイゼインへと変換する工程を有してもよい。
【0045】
また、培養工程後に、培養工程で得られたエクオールを含む培養液にpH調整剤を添加しpHを調整する工程を有してもよい。例えば、pHを酸側に調整する場合、pH調整剤は、有機酸及び無機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を有するのがよい。
有機酸として、炭酸、炭酸水素、クエン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、酢酸、リンゴ酸、アスコルビン酸及び安息香酸を挙げることができるがこれらに限定されない。また、無機酸として、塩酸、硫酸、及びリン酸を挙げることができるがこれらに限定されない。
例えば、pHをアルカリ側に調整する場合、pH調整剤は、アルカリ金属の水酸化物、及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選ばれる1種を有するのがよい。
具体的には、アルカリ側に調整するpH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0046】
さらに、培養工程後に、pHを調整する工程を有する場合にはpHを調整する工程後に、遠心分離工程、膜ろ過工程といったエクオールを産生する能力を有する微生物を除去する工程を有してもよい。
また、培養工程で得られた液を乾燥させる工程を有してもよい。乾燥工程は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、加熱乾燥処理、凍結乾燥処理、流動床乾燥、流動層乾燥などを挙げることができるがこれらに限定されない。
加熱乾燥処理は、例えば回転ドラム乾燥機や棚式乾燥機を、凍結乾燥処理は凍結乾燥機を、流動床乾燥処理は流動床乾燥使用して行うことができる。乾燥方法は、液体を乾燥できる乾燥機ならば、どのような乾燥機でも良い。
また、加熱乾燥処理は、常圧下でも、減圧下でも行うことができる。減圧下で行う場合は、品温の上昇を防ぐことができ、着色など熱の影響を抑えながら乾燥できる。品温と熱媒の温度差が大きく取れることも乾燥を速やかに行うためにも好適である。
乾燥処理されて得られた物は、必要に応じて粉砕化処理に供してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0047】
〔実施例1〕
(前培養)
ブレインハートインフュージョン培地に0.5g/Lになるようにアルギニンを添加溶解し、嫌気性微生物培養用18mm試験管(三紳工業製)に10mL分注し、気相を窒素に置換しながらブチルゴム栓とプラスチックキャップをはめて121℃、15分間滅菌した。この培地に、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)DSM 18785株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間以上置換した後、37℃、48時間静置培養を行い、前培養液を調製した。
【0048】
(本培養)
表1に示したA~G各々の組成で混合し、pH6.9に調整した培地を各々50g採取し、500mLの容器に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液を1mL植菌し、気相を水素:二酸化炭素:窒素=30:10:60比の混合ガスでガス置換し、37℃で静置培養を行った。気相は、24時間毎に同じ組成(水素:二酸化炭素:窒素=30:10:60比)の混合ガスに置換を繰り返し、96時間培養を行い、本培養物中のエクオール濃度をHPLC法にて分析した。
【0049】
【表1】
【0050】
結果を表2に示す。実施例1より、エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水が390重量部以下で、エクオールの濃度が顕著に向上していることを確認した。
【0051】
【表2】
【0052】
〔実施例2〕
(前培養)
GAM培地に10g/Lになるようにアルギニンを添加溶解し、嫌気性微生物培養用18mm試験管(三紳工業製)に10mL分注し、気相を窒素に置換しながらブチルゴム栓とプラスチックキャップをはめて121℃、15分間滅菌した。この培地に、スラキア・エクオリファシエンス(Slackia equlifaciens)DSM 24851株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間以上置換した後、37℃、48時間静置培養を行い、前培養液を調製した。
【0053】
(本培養)
表1に示したA~G各々の組成で混合し、pH6.9に調整した培地を各々50g採取し、500mLの容器に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液を1mL植菌し、気相を水素:二酸化炭素:窒素=30:10:60比の混合ガスでガス置換し、37℃で静置培養を行った。気相は、24時間毎に同じ組成(水素:二酸化炭素:窒素=30:10:60比)の混合ガスに置換を繰り返し、96時間培養を行い、本培養物中のエクオール濃度をHPLC法にて分析した。
【0054】
結果を表3に示す。実施例2より、エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水が390重量部以下で、エクオールの濃度が顕著に向上していることを確認した。
【0055】
【表3】
【0056】
〔実施例3〕
(前培養)
GAM培地に10g/Lになるようにアルギニンを添加溶解し、嫌気性微生物培養用18mm試験管(三紳工業製)に10mL分注し、気相を窒素に置換しながらブチルゴム栓とプラスチックキャップをはめて121℃、15分間滅菌した。この培地に、スラキア・イソフラボニコンバーテンス(Slackia isoflavoniconvertens)DSM 22006株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間以上置換した後、37℃、48時間静置培養を行い、前培養液を調製した。
【0057】
(本培養)
表4に示したH~N各々の組成に調整した培地を200mLの容器に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液を200μL植菌し、気相を水素:二酸化炭素:窒素=30:10:60比の混合ガスでガス置換し、37℃で静置培養を行った。気相は、24時間毎に同じ組成(水素:二酸化炭素:窒素=30:10:60比)の混合ガスに置換を繰り返し、96時間培養を行い、本培養物中のエクオール濃度をHPLC法にて分析した。
【0058】
【表4】
【0059】
結果を表5に示す。実施例3より、エクオール原料の乾燥重量100重量部に対して、水を減じることでエクオール産生量が向上することが確認でき、特に、水が381重量部以下で、エクオールの濃度が顕著に向上していることを確認した。
【0060】
【表5】