(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002671
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】エッチング液組成物の濾過方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20231228BHJP
C23F 1/16 20060101ALI20231228BHJP
C23F 1/46 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01L21/308 F
C23F1/16
C23F1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102003
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】木村 陽介
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA01
4K057WA20
4K057WB01
4K057WB03
4K057WB04
4K057WB05
4K057WB08
4K057WE02
4K057WE04
4K057WE11
4K057WE12
4K057WF06
4K057WH10
4K057WN01
5F043AA22
5F043BB18
5F043BB30
5F043EE10
5F043EE30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】30℃以上の温度で濾過してもエッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制しつつ、濾過速度を向上するエッチング液組成物の濾過方法、製造方法及びエッチング方法を提供する。
【解決手段】濾過方法は、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物を、30℃以上の温度で濾過する工程を含む。エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤及び水を含有し、エッチング液組成物中の有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である。濾過システムは、エッチング液組成物を貯留するタンク1、送液するポンプ2、ろ過処理するフィルタ3、出口5から吐出する流量を制御する出口バルブ4、前記各部を接続する配管P1、配管から分岐してポンプの上流側に接続する循環経路P2及び循環するエッチング液組成物の流量を制御する循環バルブ7を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物を、30℃以上の温度で濾過する工程を含み、
前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、
前記エッチング液組成物中の前記有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である、エッチング液組成物の濾過方法。
【請求項2】
前記金属膜は、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜である、請求項1に記載の濾過方法。
【請求項3】
前記有機酸は、アルコキシカルボン酸、ヒドロキシ酸、脂肪族多価カルボン酸、及び、アルコキシ酢酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の濾過方法。
【請求項4】
前記エッチング抑制剤は、ポリアルキレンイミン及びポリアルキレンポリアミンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から3のいずれかに記載の濾過方法。
【請求項5】
前記基板は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板である、請求項1から4のいずれかに記載の濾過方法。
【請求項6】
前記エッチング液組成物中の過酸化水素の配合量が1質量%未満である、請求項1から5のいずれかに記載の濾過方法。
【請求項7】
基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物を、30℃以上の温度で濾過する工程を含み、
前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、
前記エッチング液組成物中の前記有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である、エッチング液組成物の製造方法。
【請求項8】
30℃以上の温度で濾過することによって得られたエッチング液組成物を用いて基板上に形成された金属膜をエッチングする工程を含み、
前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、
前記エッチング液組成物中の前記有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である、エッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング液組成物の濾過方法、エッチング液組成物の製造方法、及びエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程において、例えば、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウム等の少なくとも1種の金属を含む被エッチング膜をエッチングして所定のパターン形状に加工する工程が行われている。エッチング液としては、リン酸、硝酸及び酢酸を含む混酸水溶液が一般的に使用されている。
近年の半導体分野においては高集積化が進んでおり、配線の複雑化や微細化が求められており、パターンの加工技術やエッチング液に対する要求も高まりつつあり、様々なエッチング液組成物が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、銀を主成分とする金属薄膜をエッチングするエッチング液組成物として、リン酸と硝酸とメトキシ酢酸と水とを含むエッチング液組成物が提案されている。
特許文献2には、インジウムを含む金属酸化物又は亜鉛とインジウムとを含む金属酸化物をエッチングするエッチング液組成物として、少なくとも1種の塩基酸(リン酸、硝酸等)と水とを含み、塩基酸の解離段階のいずれかにおける25℃の酸解離定数pKaが2.15以下であり、25℃の水素イオン濃度pHが4以下のエッチング液組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-253473号公報
【特許文献2】特開2015-60937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エッチング液組成物中に異物が存在すると、エッチング後の基板の清浄性が悪化するという問題がある。そのため、通常、エッチング液組成物はフィルタで濾過されてから使用される。
エッチング液の粘度が高い場合、濾過速度が遅く、生産性が低くなるが、濾過温度を高くすれば、エッチング液の粘度を低減できる。しかし、エッチング液中に酢酸等の揮発しやすい化合物が含まれていると、酢酸等の揮発しやすい化合物が高温での濾過により揮発して濃度が変わり、本来の設計通りのエッチング液組成を維持することが難しい。エッチング液組成が変化すると、エッチング性能を維持できなくなるという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、一態様において、30℃以上の温度で濾過してもエッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制しつつ、濾過速度を向上可能なエッチング液組成物の濾過方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物を、30℃以上の温度で濾過する工程を含み、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記エッチング液組成物中の前記有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である、エッチング液組成物の濾過方法に関する。
【0008】
本開示は、一態様において、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物を、30℃以上の温度で濾過する工程を含み、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記エッチング液組成物中の前記有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である、エッチング液組成物の製造方法に関する。
【0009】
本開示は、一態様において、30℃以上の温度で濾過することによって得られたエッチング液組成物を用いて基板上に形成された金属膜をエッチングする工程を含み、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記エッチング液組成物中の前記有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である、エッチング方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、一態様において、30℃以上の温度で濾過してもエッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制しつつ、濾過速度を向上可能なエッチング液組成物の濾過方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、充填システムの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、一態様において、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含むエッチング液を用いることで、高温(30℃以上)で濾過してもエッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制しつつ、濾過速度を向上できるという知見に基づく。
【0013】
本開示は、一態様において、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物(以下、「本開示の濾過前エッチング液組成物」ともいう)を、30℃以上の温度で濾過する工程(以下、「濾過工程」ともいう)を含み、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記エッチング液組成物中の前記有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である、エッチング液組成物の濾過方法(以下、「本開示の濾過方法」ともいう)に関する。
本開示の濾過方法によれば、30℃以上の温度で濾過してもエッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制しつつ、濾過速度を向上できる。
【0014】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
水への溶解度が900g/L以下の有機酸(例えば、メトキシ酢酸)は、水への溶解度が900g/Lを超える有機酸(例えば、酢酸)に比べて、30℃以上の温度下でも揮発しにくい。本開示では、有機酸として水への溶解度が900g/L以下の有機酸を所定量用いることで、30℃以上の温度で濾過してもエッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制でき、エッチング液組成物の粘度を低減できると考えられる。そして、エッチング液組成物の粘度が低減することで、濾過速度が高くなり、生産性を向上できると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0015】
[濾過工程]
本開示の濾過方法は、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物(本開示の濾過前エッチング液組成物)を、30℃以上の温度で濾過する工程(濾過工程)を含む。濾過工程で得られたエッチング液組成物(濾過後のエッチング液組成物)は、一又は複数の実施形態において、そのままエッチングに使用することができる。
【0016】
前記濾過工程は、一又は複数の実施形態において、フィルタを用いて濾過処理することを含む。フィルタとしては、従来から用いられているプリーツ型フィルタ、デプス型フィルタ、ろ過助剤含有フィルタ等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることができる。濾過速度向上の観点から、プリーツ型フィルタが好ましく、より好ましくはデプス型フィルタとプリーツ型フィルタの組み合わせであり、さらにろ過助剤含有フィルタを組み合わせてもよい。一又は複数の実施形態において、ろ過助剤含有フィルタを用いる場合、後段にはプリーツフィルタを設けることが好ましい。
プリーツ型フィルタとしては、一般にろ過材をひだ状(プリーツ状)に成形加工して、中空円筒形状のカートリッジタイプにしたもの(アドバンテック東洋社、日本ポール社、CUNO社、ダイワボウ社、3M社、Entegris社、cobetter社等)を用いることができる。プリーツ型フィルタは、厚み方向の各部分で捕集するデプス型フィルタとは異なり、ろ過材の厚みが薄く、フィルタ表面での捕集が主体といわれており、一般的にろ過精度が高いことが特徴である。プリーツ型フィルタは1段で用いてもよいし、多段(例えば直列配列)で用いてもよい。
デプス型フィルタの具体例としては、バッグ式(住友スリーエム社等)のフィルタや、カートリッジ式(アドバンテック東洋社、日本ポール社、CUNO社、ダイワボウ社等)のフィルタが挙げられる。デプス型フィルタとは、ろ過材の孔構造が、入口側で粗く、出口側で細かく、かつ、入口側から出口側に向かうにつれて連続的又は段階的に細かくなる特徴を有するフィルタである。よって、エッチング液組成物中の大きな粒子は入口側付近で捕集され、小さな粒子は出口側付近で捕集される。デプス型フィルタの形状としては、袋状のバッグタイプや、中空円筒形状のカートリッジタイプが挙げられる。また、前記特徴を有するろ過材を単にひだ状に成形加工したものは、デプス型フィルタの機能を有するため、デプス型フィルタに分類される。デプス型フィルタは、1段で用いてもよいし、多段(例えば直接配列)で組み合わせて用いてもよいし、孔径の異なるフィルタを孔が大きい順に多段に組み合わせて用いてもよい。さらに、バッグタイプとカートリッジタイプを組み合わせて用いてもよい。
ろ過助剤含有フィルタは、ろ過助剤を含むフィルタである。ろ過助剤としては、例えば、二酸化ケイ素、カオリン、酸性白土、珪藻土、パーライト、ベントナイト、タルク等の不溶性の鉱物性物質が挙げられる。前記ろ過助剤のうち、分散性向上の観点から、二酸化ケイ素、珪藻土、パーライトが好ましく、珪藻土、パーライトがより好ましく、珪藻土がさらに好ましい。ろ過助剤含有フィルタは、前記ろ過助剤をフィルタ表面及びフィルタ内部のいずれか一方若しくは両方に含有するものとすることができる。
【0017】
前記濾過工程における濾過温度としては、濾過速度向上の観点から、30℃以上であって、35℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、エッチング液組成物の揮発性の観点から、80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましく、70℃以下が更に好ましい。より具体的には、濾過温度は、30℃以上80℃以下が好ましく、35℃以上75℃以下がより好ましく、40℃以上70℃以下が更に好ましい。本開示において、濾過温度とは、濾過時のエッチング液組成物の温度をいう。
【0018】
前記濾過工程における濾過圧力としては、生産性の観点から、0.1MPa以上0.5MPa以下が好ましく、0.15MPa以上0.45MPa以下がより好ましく、0.2MPa以上0.4MPa以下が更に好ましい。
【0019】
前記濾過工程における濾過速度としては、生産性の観点から、0.1kg/(m2・分)以上が好ましく、1kg/(m2・分)以上がより好ましく、2kg/(m2・分)以上が更に好ましく、液中パーティクル数低減の観点から、30kg/(m2・分)以下が好ましく、20kg/(m2・分)以下がより好ましく、15kg/(m2・分)以下が更に好ましい。より具体的には、濾過速度は、0.1kg/(m2・分)以上30kg/(m2・分)以下が好ましく、1kg/(m2・分)以上20kg/(m2・分)以下がより好ましく、2kg/(m2・分)以上15kg/(m2・分)以下が更に好ましい。本開示における「濾過速度」とは、単位面積当たりに濾過される時間あたりの重量であり、一又は複数の実施形態において、濾過圧力を調整することにより調節できる。フィルタを複数本使用して濾過する場合は、使用する全てのフィルタ面積の総和から算出された単位面積当たりに濾過される時間当たりの重量である。
【0020】
前記濾過工程における濾過方法としては、繰り返しろ過する循環式でもよく、1パス方式でもよい。また、1パス方式を繰り返すバッチ式を用いてもよい。通液方法は、加圧するために、循環式では好ましくはポンプが用いられ、1パス方式ではポンプを用いる他に、タンクに空気圧等を導入することでフィルタ入口圧力の変動幅が小さい加圧濾過法を用いることができる。
【0021】
[濾過前エッチング液組成物]
本開示の濾過前エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有する。
【0022】
(リン酸)
本開示の濾過前エッチング液組成物中のリン酸の配合量は、エッチング速度、保存安定性、及び濾過速度向上の観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、そして、濾過速度向上の観点から、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の濾過前エッチング液組成物中のリン酸の配合量は、1質量%以上90質量%以下が好ましく、3質量%以上70質量%以下がより好ましく、5質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
【0023】
(硝酸)
本開示の濾過前エッチング液組成物中の硝酸の配合量は、エッチング速度向上の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましく、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が更に好ましく、4質量%以上が更に好ましく、そして、エッチングむら低減の観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましく、6質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の濾過前エッチング液組成物中の硝酸の配合量は、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上7質量%以下が更に好ましく、2質量%以上6質量%以下が更に好ましく、3質量%以上6質量%以下が更に好ましく、4質量%以上6質量%以下が更に好ましい。
【0024】
(有機酸)
本開示の濾過前エッチング液組成物に含まれる20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸としては、エッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制しつつ、濾過速度を向上する観点から、アルコキシカルボン酸、ヒドロキシ酸、脂肪族多価カルボン酸、及びアルコキシ酢酸エステルから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
前記アルコキシカルボン酸としては、例えば、メトキシ酢酸(溶解度:485g/L)が挙げられる。
前記ヒドロキシ酸としては、例えば、クエン酸(溶解度:592g/L)が挙げられる。
前記脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸(溶解度:58g/L)が挙げられる。
前記アルコキシ酢酸エステルとしては、例えば、酢酸3-メトキシブチル(溶解度:4.6g/L)等が挙げられる。
20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本開示の濾過前エッチング液組成物中の20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸の配合量は、エッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制しつつ、濾過速度を向上する観点から、10質量%以上であって、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、そして、有機酸の濃度減少率の抑制の観点から、70質量%以下であって、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。より具体的には、本開示の濾過前エッチング液組成物中の20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下であって、20質量%以上65質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましい。20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸が2種以上の組合せである場合、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸の配合量はそれらの合計配合量である。
【0026】
本開示の濾過前エッチング液組成物中のリン酸、硝酸及び20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸の合計配合量は、エッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制しつつ、濾過速度を向上する観点から、70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましい。本開示の濾過前エッチング液組成物中のリン酸、硝酸及び20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸の合計配合量は、70質量%以上98質量%以下が好ましく、75質量%以上95質量%以下がより好ましく、80質量%以上90質量%以下が更に好ましい。
【0027】
(エッチング抑制剤)
本開示の濾過前エッチング液組成物に含まれるエッチング抑制剤は、一又は複数の実施形態において、カルボキシル基を有さないアミン化合物であり、例えば、ポリアルキレンイミン及びポリアルキレンポリアミンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。前記ポリアルキレンイミンとしては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)等が挙げられる。前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。エッチング抑制剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
エッチング抑制剤がポリアルキレンイミンである場合、エッチング抑制剤の数平均分子量は、エッチングむら低減、保存安定性、及び濾過速度向上の観点から、300以上が好ましく、600以上がより好ましく、1,200以上が更に好ましく、そして、粘度の観点から、100,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、3,000以下が更に好ましい。より具体的には、エッチング抑制剤の数平均分子量は、300以上100,000以下が好ましく、600以上5,000以下がより好ましく、1,200以上3,000以下が更に好ましい。
エッチング抑制剤がポリアルキレンポリアミンである場合、エッチング抑制剤の重量平均分子量は、エッチングむら低減、並びに、保存安定性及び濾過性維持の観点から、50以上が好ましく、80以上がより好ましく、100以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1,000以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。より具体的には、エッチング抑制剤の重量平均分子量は、50以上1,000以下が好ましく、80以上500以下がより好ましく、100以上300以下が更に好ましい。
【0029】
本開示において用いるエッチング抑制剤などの化合物の平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
本開示のエッチング抑制剤の平均分子量の測定方法の例を以下に示す。
<GPC条件(ポリアルキレンイミン)>
試料液:0.1wt%の濃度に調整したもの
装置/検出器: HLC-8320GPC(一体型GPC)東ソー(株)製
カラム:α-M+α-M(東ソー株式会社製)
溶離液:0.15mol/L Na2SO4,1% CH3COOH/水
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
試料液注入量:100μL
標準ポリマー:分子量が既知のプルラン(Shodex社 P-5、P-50,P-200、P-800)
【0030】
本開示の濾過前エッチング液組成物中のエッチング抑制剤の配合量は、エッチングむら低減、保存安定性、及び濾過速度向上の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、2質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の濾過前エッチング液組成物中のエッチング抑制剤の配合量は、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以上2質量%以下が更に好ましい。エッチング抑制剤が2種以上の組合せである場合、エッチング抑制剤の配合量はそれらの合計配合量である。
【0031】
(水)
本開示の濾過前エッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、水を含む。本開示の濾過前エッチング液に含まれる水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が挙げられる。
本開示の濾過前エッチング液組成物中の水の配合量は、濾過速度向上の観点から、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、20質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の濾過前エッチング液組成物中の水の配合量は、2質量%以上35質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましく、7質量%以上25質量%以下が更に好ましく、10質量%以上20質量%以下が更に好ましい。
【0032】
(その他の成分)
本開示の濾過前エッチング液組成物は、本開示の効果が損なわれない範囲で、その他の成分をさらに配合してなるものであってもよい。その他の成分としては、リン酸及び硝酸以外の無機酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸以外の有機酸、キレート剤、界面活性剤、可溶化剤、防腐剤、防錆剤、殺菌剤、抗菌剤、酸化防止剤等が挙げられる。
本開示の濾過前エッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、有機酸として、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸と、20℃の水への溶解度が900g/L以上の有機酸との組み合わせが配合されたものであってもよい。20℃の水への溶解度が900g/L以上の有機酸としては、例えば、酢酸が挙げられる。
【0033】
本開示の濾過前エッチング液組成物は、エッチングむら低減の観点から、過酸化水素を含まないことが好ましい。ここで、「過酸化水素を含まない」とは、一又は複数の実施形態において、過酸化水素を含まないこと、実質的に過酸化水素を含まないこと、又は、エッチング結果に影響を与える量の過酸化水素を含まないこと、を含む。本開示の濾過前エッチング液組成物中における過酸化水素の配合量は、特に限定されないが、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
【0034】
(粘度)
本開示の濾過前エッチング液組成物の60℃における粘度は、濾過速度の観点から、30mPa・s以下が好ましく、25mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以下が更に好ましい。
本開示において、エッチング液組成物の粘度は、B型粘度計やウベローデ粘度計といった汎用の粘度計を用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0035】
(pH)
本開示の濾過前エッチング液組成物のpHは、保存安定性及びエッチングむら低減の観点から、1以下が好ましく、0以下がより好ましく、0未満が更に好ましく、-1程度が更に好ましい。なお、本開示の濾過前エッチング液組成物のpHは、-5以上、又は-3以上とすることができる。本開示において、エッチング液組成物のpHは、25℃における値であって、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0036】
[濾過前エッチング液組成物の製造方法]
本開示の濾過前エッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、リン酸と、硝酸と、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸と、エッチング抑制剤と、水と、所望により上述した任意成分とを公知の方法で配合することにより得られる。
【0037】
[濾過後のエッチング液組成物]
本開示の濾過工程で得られる濾過後のエッチング液組成物(以下、「本開示の濾過後エッチング液組成物」ともいう)に含まれる成分及びその配合量は、一又は複数の実施形態において、上述した本開示の濾過前エッチング液組成物と同様とすることができる。
本開示において「濾過後のエッチング液組成物中の各成分の配合量」とは、一又は複数の実施形態において、エッチング工程に使用される、すなわち、エッチング処理への使用を開始する時点(使用時)でのエッチング液組成物中の各成分の配合量をいう。
本開示の濾過後のエッチング液組成物中の各成分の配合量は、一又は複数の実施形態において、本開示の濾過後のエッチング液組成物中の各成分の含有量とみなすことができる。ただし、中和の影響を受ける場合は、配合量と含有量が異なる場合がある。
【0038】
本開示の濾過後エッチング液組成物の粘度及びpHは、一又は複数の実施形態において、上述した濾過前エッチング液組成物のpHと同様とすることができる。
【0039】
本開示の濾過後エッチング液組成物の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1液型であってもよいし、使用時に混合される、いわゆる2液型であってもよい。
【0040】
本開示の濾過後エッチング液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造・輸送コストを低くできる点で好ましい。そしてこの濃縮液は、必要に応じて水又は酸水溶液を用いて適宜希釈してエッチング工程で使用することができる。希釈割合は例えば、3~100倍とすることができる。
【0041】
[被エッチング膜]
本開示の濾過後エッチング液組成物を用いてエッチング処理される被エッチング膜は、一又は複数の実施形態において、少なくとも1種の金属を含む金属膜である。ここで、金属膜としては、本開示の効果の奏する限り特に限定されるものではないが、例えば、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜が挙げられる。金属膜は、一又は複数の実施形態において、銀を含まない。
本開示の濾過後エッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜(ただし、銀を含まない)のエッチングに用いられることが好ましく、一又は複数の実施形態において、タングステン膜、モリブデン膜、又はニッケル膜のエッチングに好適に用いられる。すなわち、被エッチング膜は、一又は複数の実施形態において、タングステン膜、モリブデン膜又はニッケル膜である。
【0042】
[エッチング液組成物の製造方法]
本開示は、一態様において、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物を、30℃以上の温度で濾過する工程(以下、「濾過工程」ともいう)を含み、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記エッチング液組成物中の前記有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である、エッチング液組成物の製造方法(以下、「本開示のエッチング液製造方法」ともいう)に関する。本開示のエッチング液製造方法によれば、エッチング液組成物の生産性を向上できる。
本開示のエッチング液製造方法における濾過工程における濾過方法や濾過条件は、一又は複数の実施形態において、上述した本開示の濾過方法における濾過工程と同様とすることができる。
本開示のエッチング液製造方法における濾過工程で濾過されるエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、上述した本開示の濾過前エッチング液組成物である。
【0043】
本開示のエッチング液製造方法は、一又は複数の実施形態において、前記濾過工程の前に、少なくとも、リン酸と、硝酸と、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸と、エッチング抑制剤と、水とを配合する工程を含むことができる。本開示において「少なくとも、リン酸と、硝酸と、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸と、エッチング抑制剤と、水とを配合する」とは、一又は複数の実施形態において、リン酸と、硝酸と、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸と、エッチング抑制剤と、水と、必要に応じて上述した任意成分とを同時に又は順に混合することを含む。混合する順序は、特に限定されなくてもよい。前記配合は、例えば、プロペラ型撹拌機、ポンプによる液循環撹拌、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。
本開示のエッチング液製造方法において各成分の好ましい配合量は、上述した本開示の濾過前エッチング液組成物中の各成分の好ましい配合量と同じとすることができる。
【0044】
[エッチング方法]
本開示は、一態様において、30℃以上の温度で濾過することによって得られたエッチング液組成物を用いて基板上に形成された金属膜をエッチングする工程(以下、「本開示のエッチング工程」ともいう)を含み、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記エッチング液組成物中の前記有機酸の配合量は、10質量%以上70質量%以下である、エッチング方法(以下、「本開示のエッチング方法」ともいう)に関する。本開示のエッチング工程で用いるエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、上述した本開示の濾過後エッチング液組成物である。本開示のエッチング方法によれば、30℃以上の温度で濾過してもエッチング液組成物の含有成分の濃度変化を抑制しつつ、濾過速度を向上可能なエッチング液組成物を用いることで、半導体基板の生産性を向上できる。本開示のエッチング方法は、一又は複数の実施形態において、エッチング液組成物を循環濾過する工程を含んでもよい。前記循環濾過する工程は、一又は複数の実施形態において、循環されるエッチング液組成物に上述した本開示の濾過方法を行う工程を含むことができる。
【0045】
本開示のエッチング工程において、エッチング処理方法としては、例えば、浸漬式エッチング、枚葉式エッチング等が挙げられる。
【0046】
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がタングステン膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング液組成物の温度(エッチング温度)は、エッチングむら低減の観点から、0℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましく、そして、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。同様の観点から、一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がタングステン膜の場合、エッチング温度は、0℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上130℃以下がより好ましく、70℃以上110℃以下が更に好ましい。
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がモリブデン膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング液組成物の温度(エッチング温度)は、エッチングむら低減の観点から、0℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、25℃以上が更に好ましく、そして、80℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましく、50℃以下が更に好ましい。同様の観点から、一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がモリブデン膜の場合、エッチング温度は、0℃以上80℃以下が好ましく、15℃以上65℃以下がより好ましく、25℃以上50℃以下が更に好ましい。
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がニッケル膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング液組成物の温度(エッチング温度)は、エッチングむら低減の観点から、0℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましく、そして、80℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましく、50℃以下が更に好ましい。同様の観点から、一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がニッケル膜の場合、エッチング温度は、0℃以上80℃以下が好ましく、15℃以上65℃以下がより好ましく、30℃以上50℃以下が更に好ましい。
【0047】
本開示のエッチング工程において、エッチング時間は、例えば、1分以上180分以下に設定できる。
【0048】
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がタングステン膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング速度は、生産性向上の観点から、0.0001mg/分以上が好ましく、0.0005mg/分以上がより好ましく、0.001mg/分以上が更に好ましく、そして、エッチングむら低減の観点から、10mg/分以下が好ましく、1mg/分以下がより好ましく、0.1mg/分以下が更に好ましい。
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がモリブデン膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング速度は、生産性向上の観点から、0.01mg/分以上が好ましく、0.03mg/分以上がより好ましく、0.05mg/分以上が更に好ましく、そして、エッチングむら低減の観点から、10mg/分以下が好ましく、3mg/分以下がより好ましく、1mg/分以下が更に好ましい。
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がニッケル膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング速度は、生産性向上の観点から、0.001mg/分以上が好ましく、0.005mg/分以上がより好ましく、0.01mg/分以上が更に好ましく、そして、エッチングむら低減の観点から、10mg/分以下が好ましく、1mg/分以下がより好ましく、0.5mg/分以下が更に好ましい。
【0049】
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、一又は複数の実施形態において、電子デバイス、特に、半導体ウエハの製造工程において、金属をエッチングするために用いることができる。
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、一又は複数の実施形態において、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板の作製に好適に用いることができる。すなわち、本開示は、一態様において、本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法を用いて、基板上に形成された金属膜をエッチングする工程を含み、前記基板は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板である、基板処理方法(以下、「本開示の基板処理方法ともいう」)に関する。本開示の基板処理方法によれば、本開示の濾過方法で濾過されたエッチング液を用いることで、半導体基板の生産性及び収率を向上できる。
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、一又は複数の実施形態において、電子デバイス、特に、NAND型フラッシュメモリを含む不揮発性メモリ等の半導体メモリの製造工程において、電極をエッチングするために用いることができる。
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、一又は複数の実施形態において、三次元構造を有するパターンの作製に好適に用いることができる。これにより、大容量化されたメモリ等の高度なデバイスを得ることができる。
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、例えば、特開2020-145412号公報に開示されるようなエッチング方法に用いることができる。
【実施例0050】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0051】
1.エッチング液の調製(実施例1~6、比較例1~2)
リン酸、硝酸、表1に示す有機酸、表1に示すエッチング抑制剤及び水を配合して実施例1~6及び比較例1~2のエッチング液(pH:0~-2)を得た。
調製したエッチング液における各成分の配合量(質量%、有効分)を表1に示した。なお、表1中の水の配合量には、酸水溶液等に含まれる水の配合量も含まれている。
【0052】
エッチング液の調製には、下記成分を用いた。
リン酸[燐化学工業社製、濃度85%]
硝酸[富士フイルム和光純薬株式会社、濃度70%]
酢酸[富士フイルム和光純薬株式会社、濃度100%、20℃の水への溶解度:1000g/L]
メトキシ酢酸[富士フイルム和光純薬株式会社、濃度95%、20℃の水への溶解度:485g/L]
ポリエチレンイミン[数平均分子量1,800、株式会社日本触媒製の「エポミンSP-018」]
水[栗田工業株式会社製の連続純水製造装置(ピュアコンティ PC-2000VRL型)とサブシステム(マクエース KC-05H型)を用いて製造した超純水]
【0053】
2.パラメータの測定方法
[エッチング液のpH]
エッチング液の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜ディーケーケー社製)を用いて測定した値であり、pHメータの電極をエッチング液へ浸漬して1分後の数値である。
【0054】
[エッチング液の粘度]
エッチング液の粘度は、下記粘度計を用いて下記条件で測定した。
装置名:東機産業社製のTVB-10形粘度計(恒温槽付き)
ローター:Spindle No. M1, Cord No. 20
回転数:100rpm,60秒後の粘度値を測定
測定温度:25℃、60℃
【0055】
[有機酸の濃度減少率]
調製した各エッチング液組成物に配合されている有機酸濃度と同じ濃度の有機酸を含む有機酸の水溶液(残部は水)を調整する。その後、60℃で30分間を開放系で保管し、保管前後で水溶液の重量を測定する。
そして、以下の式で有機酸の濃度減少率を計算する。
有機酸の濃度減少率(%)=100―(60℃で30分間保管した際の有機酸水溶液の重量)/初期の有機酸水溶液の重量
【0056】
3.エッチング液の評価
[濾過速度(生産性)の評価]
調製した各エッチング液組成物を、
図1に示す濾過システムを用いて下記条件で濾過し、下記評価基準に基づいて濾過速度(生産性)を評価した。
ここで、
図1に示す濾過システムは、エッチング液組成物を貯留するタンク1と、エッチング液組成物を送液するポンプ2と、エッチング液組成物をろ過処理するフィルタ3と、出口5から吐出するエッチング液組成物の流量を制御する出口バルブ4と、タンク1とポンプ2とフィルタ3と出口バルブ4と出口5とを接続する配管P1と備え、さらにフィルタ3と出口バルブ4との間の配管P1から分岐してポンプ2の上流側に接続する循環経路P2を備える。また、
図1に示す充填システムは、循環経路P2を循環させるエッチング液組成物の流量を制御する循環バルブ7をさらに備える。
まず、調製したエッチング液組成物をタンク1に収容する。そして、タンク1内のエッチング液組成物をポンプ2で送液し、フィルタ3でろ過し、濾過後のエッチング液組成物を容器6に充填する。
<条件・設備>
ポンプ2:ダイヤフラムポンプDP-10BPT(ヤマダコーポレーション社製)
配管P1、P2:波形フレキホース15A(フロンケミカル社製)
フィルタ3:フロロガードFP CWEX010V1(Entegris社製、20nm)
容器6:20L容器(ポリ缶(色:グレー)、コダマ樹脂工業製)
<条件>
濾過温度:表1記載
濾過時間:表1記載
濾過圧力:0.3MPa
濾過流量:0.5~20kg/(m
2・min)
スケール:エッチング液組成物300kg
<評価基準>
〇:生産性、エッチング液組成物の成分変化ともに問題なく生産できる
×:粘度が高く濾過時間が長いため、生産性に課題あり
【表1】
【0057】
表1に示されるように、20℃の水への溶解度が900g/L以下の有機酸(メトキシ酢酸)とエッチング抑制剤とを組み合わせて用いた実施例1~6では、20℃の水への溶解度が900g/L超の有機酸(酢酸)とエッチング抑制剤とを組み合わせて用いた比較例1~2に比べて、濾過前後の有機酸の濃度減少率が小さく、かつ、粘度が低く濾過時間が短いことから、30℃以上の温度で濾過してもエッチング液組成物の含有成分の濃度変化が抑制されつつ、濾過速度が向上していることが分かった。
本開示の濾過方法を用いて得られるエッチング液組成物は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板上の金属膜のエッチングに有用である。