(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026731
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】内分泌前駆細胞、膵臓ホルモン発現細胞及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240220BHJP
【FI】
C12N5/071
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002853
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2022118466の分割
【原出願日】2007-03-02
(31)【優先権主張番号】60/778,649
(32)【優先日】2006-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】60/833,633
(32)【優先日】2006-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】60/852,878
(32)【優先日】2006-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503431792
【氏名又は名称】ヴィアサイト,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダムール,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】カーペンター,メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】バン,アンネ
(72)【発明者】
【氏名】ムーアマン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,オリビア ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ベートゲ,エマニュエル イー.
(57)【要約】
【課題】in vitroでヒト胚性幹細胞から誘導されるグルコース応答性インスリン産生細胞、並びにこのような細胞を産生する確かな方法を提供することを課題とする。
【解決手段】膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現し、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)またはNKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)を発現する細胞集団を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現し、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)またはNKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)を発現する細胞集団。
【請求項2】
前記膵臓内胚葉細胞がヒト多能性幹細胞から誘導される、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項3】
γ-セクレターゼ阻害剤をさらに含む、請求項1または2に記載の細胞集団。
【請求項4】
前記細胞集団がPDX1およびNKX6.1を発現する、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項5】
前記細胞集団がインスリン(INS)またはグルカゴン(GCG)を実質的に発現しない、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項6】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現し、PDX1およびNKX6.1または膵臓特異的転写因子1a(PTF1a)を発現する細胞集団。
【請求項7】
PDX1陰性胚体内胚葉細胞を含むin vitro細胞集団を、該PDX1陰性胚体内胚葉細胞の少なくとも一部が膵臓内胚葉細胞に分化するのを促進するのに十分な量のレチノイドと接触させる工程を含む、膵臓内胚葉を産生する方法。
【請求項8】
前記膵臓内胚葉細胞がヒト多能性幹細胞から誘導される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記膵臓内胚葉細胞集団がPDX1およびNKX6.1を発現する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記膵臓内胚葉細胞集団がPDX1、NKX6.1およびPTF1aを発現する、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学及び細胞生物学の分野に関する。特に、本発明は、哺乳類内分泌前駆細胞を含む組成物、及び膵臓ホルモン発現細胞を含む組成物、並びにこのような細胞を製造及び使用する方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許仮出願第60/852,878号(表題「NCAMを使用する、内分泌前駆細胞、未熟膵島細胞及び成熟膵島細胞の濃縮(ENRICHMENT OF ENDOCRINE PRECURSOR CELLS, IMMATURE PANCREATIC ISLET CELLS AND MATURE PANCREATIC ISLET CELLS USING NCAM)」、2006年10月18日出願)に対する米国特許法第119条(e)に基
づく優先権を主張し、且つ米国特許仮出願第60/833,633号(表題「インスリン産生細胞及び産生方法(INSULIN-PRODUCING CELLS AND METHOD OF PRODUCTION)」、2006年7月26日出願)に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張し、且つ米国特許仮出願第60/778,649号(表題「インスリン産生細胞及び産生方法(INSULIN-PRODUCING CELLS AND METHOD OF PRODUCTION)」、2006年3月2日出願)に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張する正規の出願である。上に列記した優先権出願それぞれの開示内容全体が、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
ヒト胚性幹細胞(hESC)は、ヒト体細胞組織及び器官を全て包含する分化細胞型を産生する能力がある。インスリン依存性糖尿病の細胞療法による治療に最も重要なことは、グルコース刺激インスリン放出に対して膵島と同様に機能する膵臓内分泌細胞の非制限産生である。したがって、in vitroでヒト胚性幹細胞から誘導されるグルコース応答性インスリン産生細胞、並びにこのような細胞を産生する確かな方法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の幾つかの実施の形態は、例えばヒト膵島ホルモン発現細胞を含む細胞培養物等の組成物に関する。このような実施の形態において、ヒト膵島ホルモン発現細胞の量は細胞培養物に存在するヒト細胞の約2%~約80%の範囲であり得る。本発明の幾つかの実施の形態において、膵島ホルモン発現細胞は、成熟膵島ホルモン発現細胞、未熟膵島ホルモン発現細胞、又は成熟及び未熟膵島ホルモン発現細胞の組合せのいずれかであり得る。或る特定の実施の形態において、ヒト膵島ホルモン発現細胞はグレリン、インスリン、ソマトスタチン及びグルカゴンから成る群から選択される1つ又は複数のホルモンを発現する。幾つかの実施の形態において、膵島ホルモン発現細胞は、グルコース刺激に応じてインスリンを発現する。
【0005】
他の実施の形態は、ヒト膵島ホルモン発現細胞及びヒト内分泌前駆細胞の両方を含む細胞培養物に関する。このような実施の形態において、ヒト内分泌前駆細胞の量は細胞培養物に存在する細胞の約5%~約80%の範囲であり得る。幾つかの実施の形態において、細胞培養物は主に、未熟膵島ホルモン発現細胞及び内分泌前駆細胞を含む。他の実施の形態において、細胞培養物は、成熟及び未熟膵島ホルモン発現細胞の両方、並びに内分泌前駆細胞を含む。
【0006】
本明細書に記載される幾つかの実施の形態は、ヒト内分泌前駆細胞を含むが、ヒト膵島ホルモン発現細胞細胞をほとんど含んでいない細胞培養物等の組成物を含む。このような実施の形態において、ヒト内分泌前駆細胞の量は細胞培養物に存在するヒト細胞の約5%
~約80%の範囲であり得る。或る特定の実施の形態において、ヒト内分泌前駆細胞は、ニューロゲニン3(NEUROG3又はNGN3)、ペアードボックス4(PAX4)及びNKX2転写因子関連遺伝子座2(NKX2.2)から成る群から選択されるマーカーを発現する。
【0007】
他の実施の形態は、ヒト内分泌前駆細胞及びヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞(PDX1陽性前腸内胚葉細胞)(PDX1陽性膵臓内胚葉細胞は、腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができるPDX1発現多能性細胞である)の両方を含む細胞培養物に関する。このような実施の形態において、ヒト内分泌前駆細胞は当該細胞培養物に存在する細胞の約5%~約95%の範囲であり得る。幾つかの実施の形態において、ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の量は当該細胞培養物に存在する細胞の約5%~約95%の範囲であり得る。
【0008】
本発明のまたさらなる実施の形態は、ヒト成熟膵島ホルモン発現細胞、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞、及びヒト内分泌前駆細胞を産生する方法に関する。幾つかの実施の形態において、ヒト成熟膵島ホルモン発現細胞が、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞から産生される。幾つかの実施の形態において、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、ヒト内分泌前駆細胞から産生される。幾つかの実施の形態において、ヒト内分泌前駆細胞が、ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞から産生される。
【0009】
本発明の他の実施の形態は、ヒト胚性幹細胞(hESC)又は他のヒト多能性細胞からヒト膵島ホルモン発現細胞を産生する方法に関する。このような実施の形態において、初めにhESC又は他のヒト多能性細胞がヒト胚体内胚葉細胞に分化する。胚体内胚葉細胞は、腸管の細胞又はそれから誘導される器官に分化することができる多能性細胞である。ヒト胚体内胚葉細胞及びその産生は、2004年12月23日に提出された米国特許出願第11/021618号(その開示内容全体が参照により援用される)に記載されている。それから、胚体内胚葉細胞は前腸内胚葉に分化する。ヒト前腸内胚葉細胞は、腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができる多能性細胞である。前腸内胚葉細胞及びその産生は、2005年10月27日に提出された米国特許仮出願第60/730917号(その開示内容全体が参照により援用される)に記載されている。それから、前腸内胚葉細胞はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞(PDX1陽性前腸内胚葉)に分化する。ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞は、腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができる多能性細胞である。PDX1陽性膵臓内胚葉細胞及びその産生は、2005年4月26日に提出された米国特許出願第11/115868号及び2005年10月27日に提出された米国特許仮出願第60/730917号(それらの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。2006年7月26日に提出された米国特許仮出願第60/833,633号(その開示内容全体が参照により本明細書に援用される)並びに本明細書で記載の方法に記載されるように、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞は、内分泌前駆細胞に分化し、未熟、それから最終的に成熟膵島ホルモン発現細胞に分化する。
【0010】
本明細書に記載の他の実施の形態は、ヒト内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団を産生する方法と、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団を産生する方法とに関する。幾つかの実施の形態において、内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団を産生する方法は、神経細胞接着分子(NCAM)と結合する試薬を、ヒト内分泌前駆細胞を含む細胞集団に供給すること、及び試薬と結合したヒト内分泌前駆細胞を試薬と結合しない細胞から分離することを伴う。同様に、幾つかの実施の形態において、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団を産生する方法は、NCAMと結合する試薬を、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞集団に供給すること、及び試薬と結合したヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を試薬と結合しない細胞から分離することを伴う。幾つかの実施の形態に
おいて、未熟膵島ホルモン発現細胞のさらなる濃縮は、NCAM陽性細胞集団をCD133と結合する第2の試薬に接触させること、及びそれから第2の試薬と結合する細胞を細胞集団から除去することによって達成することができる。
【0011】
本発明の幾つかの実施の形態において、本明細書に記載の方法によって産生されるヒト膵島ホルモン発現細胞を含む細胞集団は、ヒト内分泌前駆細胞から誘導することができる。ヒト内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団を産生する方法の或る特定の実施の形態において、内分泌前駆細胞は、ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞から誘導することができる。またさらなる実施の形態において、ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞はヒト前腸内胚葉細胞から誘導される。なおさらなる実施の形態において、ヒト前腸内胚葉細胞はヒト胚体内胚葉細胞から誘導される。またさらなる実施の形態において、ヒト胚体内胚葉細胞はヒト胚性幹細胞から誘導される。
【0012】
本発明の他の実施の形態は、ヒト内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団に関する。或る特定の実施の形態において、ヒト内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団は、ニューロゲニン3(NGN3)を発現するが、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、INS、GCG、SST及びGHRLから成る群から選択されるマーカーを実質的に発現しない約5%を超えるヒト内分泌前駆細胞を含む。幾つかの実施の形態において、ヒト内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団は、ヒト内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団の産生に本明細書に記載の方法を用いて得られる。
【0013】
本発明のさらに他の実施の形態は、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団に関する。濃縮された細胞集団は本明細書に記載の方法によって得ることができ、NCAMと結合する試薬を、未熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞集団に供給すること、及び当該試薬と結合した細胞を試薬と結合しない細胞から分離することを含む。或る特定の実施の形態において、細胞集団は、MAFBを発現するが、MAFA及び/又はNGN3を実質的に発現しない未熟膵臓ホルモン発現細胞を少なくとも約25%~少なくとも約90%含む。幾つかの実施の形態において、濃縮された細胞集団は、MAFBを発現するが、MAFA及び/又はNGN3を実質的に発現しない未熟膵島ホルモン発現細胞を少なくとも約50%含む。
【0014】
本発明のさらに他の実施の形態は、ヒト多能性細胞からin vitroで誘導されるヒト成熟膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団に関する。濃縮された細胞集団は、本明細書に記載の方法によって、例えばNCAMと結合する試薬をヒト多能性細胞からin vitroで産生する膵島ホルモン発現細胞を含む細胞集団に供給すること、及び当該試薬と結合する細胞を試薬と結合しない細胞から分離することによって得ることができる。或る特定の実施の形態において、細胞集団は、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST及びPPから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現するが、AFP、SOX7、SOX1、ZIC及びNFMから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しない膵臓ホルモン発現細胞を少なくとも約25%~少なくとも約90%含む。幾つかの実施の形態において、濃縮された細胞集団は、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST及びPPを発現するが、AFP、SOX7、SOX1、ZIC及びNFMから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しない未熟膵島ホルモン発現細胞を少なくとも約50%含む。
【0015】
本発明のさらなる実施の形態は、NCAM結合試薬と、NCAMを発現するヒト内分泌前駆細胞、NCAMを発現するヒト未熟膵島ホルモン発現細胞、又はNCAMを発現するヒト成熟膵島ホルモン発現細胞を含むex vivo試薬-細胞複合体に関する。或る特定の実施の形態において、内分泌前駆細胞、未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞は、ヒト多能性細胞からin vitroで誘導される。試薬-細胞
複合体の試薬は、抗NCAM抗体、及び抗NCAM抗体断片、又はNCAMリガンド等の分子を含み得る。
【0016】
本発明の他の態様は、それらの発生のいずれかの段階の間で酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下では分化しなかった、本明細書に記載のようなin
vitro細胞培養物及びin vitro細胞集団に関する。本明細書に包含される他の態様は、酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の非存在下で内分泌前駆細胞培養物若しくは細胞集団、及び/又は膵臓ホルモン発現細胞培養物若しくは細胞集団を産生する方法に関する。このような態様において、hESCは、酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の非存在下で胚体内胚葉細胞、並びに胚体内胚葉、例えば内分泌前駆細胞及び膵臓ホルモン発現細胞から誘導される細胞型に分化する。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、非組み換え型又は非遺伝子操作型のヒト内分泌前駆細胞及び/又はヒト膵臓ホルモン発現細胞を含む細胞培養物及び細胞集団に関する。幾つかの実施の形態において、細胞培養物及び/又は細胞集団の非組み換えヒト内分泌前駆細胞及び/又はヒト膵臓ホルモン発現細胞は、非組み換えhESCから分化する。幾つかの実施の形態において、非組み換えhESCは、胚体内胚葉細胞、並びに胚体内胚葉、例えば内分泌前駆細胞及び膵臓ホルモン発現細胞から誘導される細胞型に分化する。
【0018】
或る特定の権限において、「含む」という用語の一般的に許容された定義は何もあり得ない。本明細書に記載されるように、「含む」という用語は、任意のさらなる要素の含入を可能にする「オープンな」言語を表すことが意図される。このことに留意して、本発明のさらなる実施の形態を、以下の番号を付した段落を参照しながら説明する。
【0019】
1.ヒト細胞を含むin vitro細胞培養物であって、該ヒト細胞の少なくとも約2%が、グレリン、インスリン、ソマトスタチン及びグルカゴンから成る群から選択される少なくとも1つの膵臓ホルモンを発現する膵島ホルモン発現細胞であり、当該膵島ホルモン発現細胞がin vitroでヒト多能性細胞から誘導される、細胞培養物。
【0020】
2.前記ヒト細胞の少なくとも約5%が膵島ホルモン発現細胞である、段落1のin vitro細胞培養物。
【0021】
3.前記ヒト細胞の少なくとも約10%が膵島ホルモン発現細胞である、段落1のin
vitro細胞培養物。
【0022】
4.前記ヒト細胞の少なくとも約10%がニューロゲニン3(NEUROG3)を発現するヒト内分泌前駆細胞である、段落1~3のいずれかのin vitro細胞培養物。
【0023】
5.前記ヒト内分泌前駆細胞が、ペアードボックス4(PAX4)及びNKX2転写因子関連遺伝子座2(NKX2.2)から成る群から選択されるマーカーを発現する、段落4のin vitro細胞培養物。
【0024】
6.前記ヒト細胞の少なくとも約50%が、ニューロゲニン3(NEUROG3)を発現するヒト内分泌前駆細胞である、段落1~3のいずれかのin vitro細胞培養物。
【0025】
7.前記ヒト内分泌前駆細胞が、ペアードボックス4(PAX4)及びNKX2転写因子関連遺伝子座2(NKX2.2)から成る群から選択されるマーカーを発現する、段落6のin vitro細胞培養物。
【0026】
8.前記膵島ホルモン発現細胞が、グレリン、インスリン、ソマトスタチン及びグルカゴンから成る群から選択される少なくとも2つのホルモンを発現する、段落1のin vitro細胞培養物。
【0027】
9.前記膵島ホルモン発現細胞がグレリン、インスリン、ソマトスタチン及びグルカゴンを発現する、段落1のin vitro細胞培養物。
【0028】
10.前記膵島ホルモン発現細胞の少なくとも約5%がインスリンを発現するが、グレリン、ソマトスタチン及びグルカゴンを有意に発現しない、段落1のin vitro細胞培養物。
【0029】
11.前記膵島ホルモン発現細胞の少なくとも約10%がインスリンを発現するが、グレリン、ソマトスタチン及びグルカゴンを有意に発現しない、段落1のin vitro細胞培養物。
【0030】
12.前記膵島ホルモン発現細胞の少なくとも約20%がインスリンを発現するが、グレリン、ソマトスタチン及びグルカゴンを有意に発現しない、段落1のin vitro細胞培養物。
【0031】
13.前記膵島ホルモン発現細胞の少なくとも約30%がインスリンを発現するが、グレリン、ソマトスタチン及びグルカゴンを有意に発現しない、段落1のin vitro細胞培養物。
【0032】
14.インスリンがグルコース刺激に応じて分泌される、段落10~13のいずれか1つのin vitro細胞培養物。
【0033】
15.C-ペプチドがグルコース刺激に応じて分泌される、段落10~13のいずれか1つのin vitro細胞培養物。
【0034】
16.前記膵島細胞の少なくとも10%が膵島細胞クラスターに存在する、段落1のin vitro細胞培養物。
【0035】
17.前記膵島ホルモン発現細胞が、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、膵臓ポリペプチド(PP)、ISL1転写因子(ISL1)、NKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)及びペアードボックス6(PAX6)から成る群から選択されるマーカーをさらに発現する、段落1のin vitro細胞培養物。
【0036】
18.前記膵島ホルモン発現細胞が、ニューロゲニン3(NEUROG3)及びペアードボックス遺伝子4(PAX4)から成る群から選択されるマーカーを実質的に発現しない、段落17のin vitro細胞培養物。
【0037】
19.少なくとも約1つの膵島ホルモン発現細胞が、前記細胞培養物において約10個の内分泌前駆細胞毎に存在する、段落1のin vitro細胞培養物。
【0038】
20.少なくとも約1つの膵島ホルモン発現細胞が、前記細胞培養物において約5個の内分泌前駆細胞毎に存在する、段落1のin vitro細胞培養物。
【0039】
21.少なくとも約1つの膵島ホルモン発現細胞が、前記細胞培養物において約2個の内分泌前駆細胞毎に存在する、段落1のin vitro細胞培養物。
【0040】
22.前記膵島ホルモン発現細胞が非組み換え細胞である、段落1のin vitro細胞培養物。
【0041】
23.ニコチンアミド(NIC)、エキセンジン4(Ex4)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)及びそれらの組合せから成る群から選択される因子を含む培地をさらに含む、段落1のin vitro細胞培養物。
【0042】
24.エキセンジン4(Ex4)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子1(IGF1)及びそれらの組合せから成る群から選択される因子を含む培地をさらに含む、段落1のin vitro細胞培養物。
【0043】
25.約10mMの濃度でニコチンアミド(NIC)を含む培地をさらに含む、段落1のin vitro細胞培養物。
【0044】
26.約40ng/mlの濃度でエキセンジン4(Ex4)を含む培地をさらに含む、段落1のin vitro細胞培養物。
【0045】
27.約25ng/mlの濃度で肝細胞増殖因子(HGF)を含む培地をさらに含む、段落1のin vitro細胞培養物。
【0046】
28.約50ng/mlの濃度でインスリン様増殖因子1(IGF1)を含む培地をさらに含む、段落1のin vitro細胞培養物。
【0047】
29.ヒト細胞を含むin vitro細胞培養物であって、当該ヒト細胞の少なくとも約5%がニューロゲニン3(NEUROG3)を発現する内分泌前駆細胞であり、当該内分泌前駆細胞がインスリン、ソマトスタチン及びグルカゴンから成る群から選択される少なくとも1つの膵臓ホルモンを発現する膵島ホルモン発現細胞に分化することができる多能性細胞である、ヒト細胞を含むin vitro細胞培養物。
【0048】
30.前記ヒト細胞の少なくとも約10%が内分泌前駆細胞である、段落29のin vitro細胞培養物。
【0049】
31.前記ヒト細胞の少なくとも約25%が内分泌前駆細胞である、段落29のin vitro細胞培養物。
【0050】
32.前記ヒト細胞の少なくとも約50%が内分泌前駆細胞である、段落29のin vitro細胞培養物。
【0051】
33.前記ヒト細胞の少なくとも約10%が、ヒト膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)陽性膵臓内胚葉細胞である、段落29~32のいずれかのin vitro細胞培養物。
【0052】
34.前記ヒト細胞の少なくとも約25%が、ヒト膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)陽性膵臓内胚葉細胞である、段落29~32のいずれかのin vitro細胞培養物。
【0053】
35.前記ヒト細胞の少なくとも約50%が、ヒト膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)陽性膵臓内胚葉細胞である、段落29~32のいずれかのin vitro細胞培養物。
【0054】
36.ヒト膵島ホルモン発現細胞を実質的に欠いている、段落29~32のいずれかのin vitro細胞培養物。
【0055】
37.前記ヒト細胞の少なくとも約10%が、ヒト膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)陽性膵臓内胚葉細胞である、段落36のin vitro細胞培養物。
【0056】
38.前記ヒト細胞の少なくとも約25%が、ヒト膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)陽性膵臓内胚葉細胞である、段落36のin vitro細胞培養物。
【0057】
39.前記ヒト細胞の少なくとも約50%が、ヒト膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)陽性膵臓内胚葉細胞である、段落36のin vitro細胞培養物。
【0058】
40.前記内分泌前駆細胞がペアードボックス4(PAX4)及びNKX2転写因子関連遺伝子座2(NKX2.2)から成る群から選択されるマーカーを発現する、段落29のin vitro細胞培養物。
【0059】
41.少なくとも約1個の内分泌前駆細胞が、前記細胞培養物において約10個のPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に存在する、段落29のin vitro細胞培養物。
【0060】
42.少なくとも約1個の内分泌前駆細胞が、前記細胞培養物において約5個のPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に存在する、段落29のin vitro細胞培養物。
【0061】
43.少なくとも約1個の内分泌前駆細胞が、前記細胞培養物において約2個のPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に存在する、段落29のin vitro細胞培養物。
【0062】
44.前記内分泌前駆細胞が非組み換え細胞である、段落29のin vitro細胞培養物。
【0063】
45.N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)を含む培地をさらに含む、段落29のin vitro細胞培養物。
【0064】
46.前記DAPTの濃度が少なくとも約1μMである、段落45のin vitro細胞培養物。
【0065】
47.前記DAPTの濃度が約3μMである、段落45のin vitro細胞培養物。
【0066】
48.レチノイン酸(RA)及びエキセンジン4(Ex4)から選択される因子をさらに含む、段落45のin vitro細胞培養物。
【0067】
49.前記培地がCMRLである、段落45のin vitro細胞培養物。
【0068】
50.ヒト膵島ホルモン発現細胞に分化することができる多能性細胞であるヒト内分泌前駆細胞を含む細胞集団を得る工程と、前期細胞集団においてヒト膵臓ホルモン発現細胞の存在を検出することによって求められる、ヒト膵島ホルモン発現細胞が形成されるのに十分な時間、培養培地で該ヒト内分泌前駆細胞をインキュベートする工程とを含む、ヒト膵島ホルモン発現細胞を製造する方法。
【0069】
51.前記細胞集団におけるヒト細胞の少なくとも約2%が、ヒト膵島ホルモン発現細胞に分化する、段落50の方法。
【0070】
52.前記細胞集団におけるヒト細胞の少なくとも約5%が、ヒト膵島ホルモン発現細胞に分化する、段落50の方法。
【0071】
53.前記細胞集団におけるヒト細胞の少なくとも約10%が、ヒト膵島ホルモン発現細胞に分化する、段落50の方法。
【0072】
54.前記ヒト内分泌前駆細胞のヒト膵島ホルモン発現細胞への分化をさらに促進するのに十分な量で、ニコチンアミド(NIC)、エキセンジン4(Ex4)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子-1(IGF1)及びそれらの組合せから成る群から選択される因子を前記ヒト膵臓内分泌細胞に供給することをさらに含み、当該ヒト膵島ホルモン発現細胞が、インスリン、ソマトスタチン及びグルカゴンから成る群から選択される少なくとも1つの膵臓ホルモンを発現する、段落50の方法。
【0073】
55.前記因子がEx4、HGF及びIGF1から成る群から選択される、段落54の方法。
【0074】
56.Ex4が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落54の方法。
【0075】
57.Ex4が、約40ng/mlの濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落54の方法。
【0076】
58.前記因子がIGF1である、段落54の方法。
【0077】
59.IGF1が、約10ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落58の方法。
【0078】
60.IGF1が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落58の方法。
【0079】
61.IGF1が、約25ng/ml~約75ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落58の方法。
【0080】
62.IGF1が、約50ng/mlの濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落58の方法。
【0081】
63.前記細胞集団におけるヒト膵島ホルモン発現細胞の存在を検出することが、当該細胞集団の細胞において膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)、グレリン(GHRL)、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、膵臓ポリペプチド(PP)、ISL1転写因子(ISL1)、NKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)及びペアードボックス6(PAX6)から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現を検出することを含む、段落50の方法。
【0082】
64.少なくとも1つの前記マーカーの発現がQ-PCRによって求められる、段落63の方法。
【0083】
65.少なくとも1つの前記マーカーの発現が免疫細胞化学法によって求められる、段
落63の方法。
【0084】
66.ヒト内分泌前駆細胞を含む細胞集団を得る工程が、
腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができる多能性細胞であるヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を得る工程と、
γ-セクレターゼ阻害剤をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒト内分泌前駆細胞の集団を産生する工程を含む、段落50の方法。
【0085】
67.前記γ-セクレターゼ阻害剤が、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)を含む、段落66の方法。
【0086】
68.DAPTが、約1μM~約10μMの範囲の濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落67の方法。
【0087】
69.DAPTが、約3μMの濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落67の方法。
【0088】
70.エキセンジン4(Ex4)をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給することをさらに含む、段落66の方法。
【0089】
71.Ex4が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落70の方法。
【0090】
72.Ex4が、約40ng/mlの濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落70の方法。
【0091】
73.ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を得る工程が、
腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができるPDX1陰性多能性細胞であるヒト前腸内胚葉細胞の集団を得る工程と、
レチノイドをヒト前腸内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を産生する工程を含む、段落70の方法。
【0092】
74.前記レチノイドがレチノイン酸(RA)である、段落73の方法。
【0093】
75.RAが、約1nM~約10μMの範囲の濃度でヒト前腸内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落74の方法。
【0094】
76.ヒト前腸内胚葉細胞の集団を得る工程が、
腸管の細胞又はそれから誘導される器官に分化することができる多能性細胞であるヒト胚体内胚葉細胞の集団を得る工程と、
線維芽細胞増殖因子10(FGF-10)及びヘッジホッグ経路阻害剤をヒト胚体内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒト前腸内胚葉細胞の集団を産生する工程を含む、段落73の方法。
【0095】
77.胚体内胚葉細胞の前記集団に存在し得る前記TGF-βスーパーファミリーの任意の増殖因子を回収することをさらに含む、段落76の方法。
【0096】
78.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子が、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びそれらの組合せから成る群から選択される、段落77の方法。
【0097】
79.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子がアクチビンAである、段落77の方法。
【0098】
80.前記ヘッジホッグ阻害剤がKAAD-シクロパミンを含む、段落76の方法。
【0099】
81.KAAD-シクロパミンが、約0.01μM~約1μMの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落80の方法。
【0100】
82.KAAD-シクロパミンが、約0.2μMの濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落80の方法。
【0101】
83.FGF-10が、約1ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落76の方法。
【0102】
84.FGF-10が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落76の方法。
【0103】
85.FGF-10が、約50ng/mlの濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落76の方法。
【0104】
86.ヒト胚体内胚葉細胞の集団を得る工程が、多能性ヒト胚性幹細胞の集団を得る工程と、前記TGF-βスーパーファミリーの少なくとも1つの増殖因子を多能性ヒト胚性幹細胞の当該集団に供給する工程とを含む、段落76の方法。
【0105】
87.前記少なくとも1つの増殖因子がノーダルである、段落86の方法。
【0106】
88.前記少なくとも1つの増殖因子がアクチビンAである、段落86の方法。
【0107】
89.前記少なくとも1つの増殖因子がアクチビンBである、段落86の方法。
【0108】
90.ウィングレス型MMTV組込部位ファミリー成員3A(Wnt3A)を多能性ヒト胚性幹細胞の前記集団に供給することをさらに含む、段落86の方法。
【0109】
91.前記TGFβスーパーファミリーの複数の増殖因子が供給される、段落86の方法。
【0110】
92.Wnt3Aも供給される、段落91の方法。
【0111】
93.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約10ng/mlの濃度で供給される、段落86の方法。
【0112】
94.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約100ng/mlの濃度で供給される、段落86の方法。
【0113】
95.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約500ng/mlの濃度で供給される、段落86の方法。
【0114】
96.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約1000ng/mlの濃度で供給される、段落86の方法。
【0115】
97.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約5000ng/mlの濃度で供給される、段落86の方法。
【0116】
98.前記多能性ヒト胚性幹細胞が、約2%未満の血清を含む培地でヒト胚体内胚葉細胞に分化する、段落86の方法。
【0117】
99.前記多能性ヒト胚性幹細胞が、桑実胚、胚のICM及び胚の生殖隆起から成る群から選択される組織から誘導される、段落86の方法。
【0118】
100.段落86の方法によって産生されるヒト膵島ホルモン発現細胞。
【0119】
101.ヒト膵島ホルモン発現細胞を製造する方法であって、
(a)多能性ヒト胚性幹細胞の集団を得る工程と、
(b)前記TGF-βスーパーファミリーの少なくとも1つの増殖因子を多能性ヒト胚性幹細胞の前記集団に供給し、それによりヒト胚体内胚葉細胞の集団を産生する工程と、
(c)少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子をヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給し、それによりヒト前腸内胚葉細胞の集団を産生する工程と、
(d)レチノイドをヒト前腸内胚葉細胞の前記集団に供給し、それによりヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を産生する工程と、
(e)γ-セクレターゼ阻害剤をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給し、それによりヒト内分泌前駆細胞を含む集団を産生する工程と、
(f)ヒト膵島ホルモン発現細胞が形成されるのに十分な時間、培養培地でヒト内分泌前駆細胞の前記集団をインキュベートする工程を含む、
ヒト膵島ホルモン発現細胞を製造する方法。
【0120】
102.工程(b)が、ヘッジホッグ経路阻害剤を供給することをさらに含む、段落101の方法。
【0121】
103.前記線維芽細胞増殖因子が、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22及びFGF23から成る群から選択される、段落101の方法。
【0122】
104.前記線維芽細胞増殖因子がFGF10を含む、段落101の方法。
【0123】
105.工程(d)が、インスリン又はインスリン様増殖因子を供給することをさらに含む、段落101の方法。
【0124】
106.前記TGF-βスーパーファミリーの前記少なくとも1つの増殖因子を実質的に回収することをさらに含む、段落101の方法。
【0125】
107.前記レチノイド及び前記γ-セクレターゼ阻害剤が、ほとんど同じ時間で供給される、段落101の方法。
【0126】
108.前記前腸内胚葉細胞が、膵臓細胞にさらに分化する能力がある、段落101の方法。
【0127】
109.ヒト膵島ホルモン発現細胞を製造する方法であって、
(a)多能性ヒト胚性幹細胞の集団を得る工程と、
(b)前記TGF-βスーパーファミリーの少なくとも1つの増殖因子を多能性ヒト胚性幹細胞の前記集団に供給し、それによりヒト胚体内胚葉細胞の集団を産生する工程と、
(c)レチノイドをヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給し、それによりヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を産生する工程と、
(d)ヒト膵島ホルモン発現細胞が形成されるのに十分な時間、レチノイドの存在下でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団をインキュベートする工程を含む、ヒト膵島ホルモン発現細胞を製造する方法。
【0128】
110.線維芽細胞ファミリー増殖因子をヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給する工程をさらに含む、段落109の方法。
【0129】
111.前記線維芽細胞ファミリー増殖因子がFGF10又はFGF7を含む、段落110の方法。
【0130】
112.ヘッジホッグ経路阻害剤をヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給する工程をさらに含む、段落109の方法。
【0131】
113.前記ヘッジホッグ経路阻害剤がKAAD-シクロパミンである、段落112の方法。
【0132】
114.前記レチノイドがレチノイン酸である、段落109の方法。
【0133】
115.γ-セクレターゼ阻害剤をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給する工程をさらに含む、段落109の方法。
【0134】
116.前記γ-セクレターゼ阻害剤が、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)を含む、段落115の方法。
【0135】
117.ヒト内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法であって、神経細胞接着分子(NCAM)と結合する試薬を、ヒト内分泌前駆細胞を含む細胞集団に供給する工程と、当該試薬と結合するヒト内分泌前駆細胞を当該試薬と結合しない細胞から分離し、それによりヒト内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団を産生する工程とを含む、ヒト内分泌前駆細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法。
【0136】
118.前記ヒト内分泌前駆細胞がin vitroでヒト多能性細胞から誘導される、段落117の方法。
【0137】
119.前記ヒト内分泌前駆細胞が、ニューロゲニン3(NGN3)を発現し、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、インスリン(INS)、グルカゴン(GCG)、ソマトスタチン(SST)及びグレリン(GHRL)から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しない、段落117の方法。
【0138】
120.前記ヒト内分泌前駆細胞がペアードボックス遺伝子4(PAX4)を発現する、段落119の方法。
【0139】
121.前記ヒト内分泌前駆細胞がペアードボックス6転写因子(PAX6)を実質的に発現しない、段落119の方法。
【0140】
122.前記試薬が、抗NCAM抗体、抗NCAM抗体断片及びNCAMリガンドから成る群から選択される分子を含む、段落117の方法。
【0141】
123.前記NCAMリガンドがNCAM結合タンパク質10(NBP10)である、段落122の方法。
【0142】
124.前記抗NCAM抗体が標識される、段落122の方法。
【0143】
125.前記抗NCAM抗体が蛍光標識される、段落124の方法。
【0144】
126.前記試薬と結合する二次試薬を前記細胞集団及び当該試薬に供給することをさらに含む、段落117の方法。
【0145】
127.前記試薬が抗NCAM抗体を含み、前記二次試薬が蛍光標識される、段落126の方法。
【0146】
128.前記分離する工程が、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、前記抗NCAM抗体と結合する前記内分泌前駆細胞を当該抗NCAM抗体と結合しない当該細胞から分離することを含む、段落125又は127の方法。
【0147】
129.NCAMと結合する前記試薬を前記細胞集団に供給する前に、ヒト内分泌前駆細胞を含む当該細胞集団において前記細胞を脱集塊化する工程をさらに含む、段落117の方法。
【0148】
130.腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができる多能性細胞であるヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を含む細胞集団を得る工程と、γ-セクレターゼ阻害剤をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒト内分泌前駆細胞の集団を産生する工程とをさらに含む、段落117の方法。
【0149】
131.前記γ-セクレターゼ阻害剤が、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)を含む、段落130の方法。
【0150】
132.前記DAPTが、約1μM~約10μMの範囲の濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落131の方法。
【0151】
133.前記DAPTが、約3μMの濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落131の方法。
【0152】
134.エキセンジン4(Ex4)をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給することをさらに含む、段落130の方法。
【0153】
135.前記Ex4が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落134の方法。
【0154】
136.前記Ex4が、約40ng/mlの濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落134の方法。
【0155】
137.ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を得る工程が、ヒト前腸内胚葉細胞の集団を得る工程(当該ヒト前腸内胚葉細胞が、腸管の前部から誘導される、細胞、組織又
は器官に分化することができるPDX1陰性多能性細胞である)と、レチノイドをヒト前腸内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を産生する工程とを含む、段落130の方法。
【0156】
138.前記レチノイドがレチノイン酸(RA)である、段落137の方法。
【0157】
139.RAが、約1nM~約10μMの範囲の濃度でヒト前腸内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落138の方法。
【0158】
140.ヒト前腸内胚葉細胞の集団を得る工程が、ヒト胚体内胚葉細胞の集団を得る工程(当該ヒト胚体内胚葉細胞が、腸管の細胞又はそれから誘導される器官に分化することができる多能性細胞である)と、線維芽細胞増殖因子10(FGF-10)及びヘッジホッグ経路阻害剤をヒト胚体内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒト前腸内胚葉細胞の集団を産生する工程とを含む、段落137の方法。
【0159】
141.胚体内胚葉細胞の前記集団に存在し得る前記TGF-βスーパーファミリーの外から加えられた因子を回収することをさらに含む、段落140の方法。
【0160】
142.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子が、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びそれらの組合せから成る群から選択される、段落141の方法。
【0161】
143.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子がアクチビンAである、段落142の方法。
【0162】
144.前記ヘッジホッグ阻害剤がKAAD-シクロパミンを含む、段落140の方法。
【0163】
145.KAAD-シクロパミンが、約0.01μM~約1μMの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落144の方法。
【0164】
146.KAAD-シクロパミンが、約0.2μMの濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落145の方法。
【0165】
147.FGF-10が、約10ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落140の方法。
【0166】
148.FGF-10が、約1ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落140の方法。
【0167】
149.FGF-10が、約50ng/mlの濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落140の方法。
【0168】
150.ヒト胚体内胚葉細胞の集団を得る工程が、ヒト多能性細胞の集団を得る工程と、前記TGF-βスーパーファミリーの少なくとも1つの増殖因子をヒト多能性細胞の当該集団に供給する工程とを含む、段落140の方法。
【0169】
151.前記少なくとも1つの増殖因子がノーダルである、段落150の方法。
【0170】
152.前記少なくとも1つの増殖因子がアクチビンAである、段落150の方法。
【0171】
153.前記少なくとも1つの増殖因子がアクチビンBである、段落150の方法。
【0172】
154.ウィングレス型MMTV組込部位ファミリー成員3A(Wnt3A)をヒト多能性細胞の前記集団に供給することをさらに含む、段落150の方法。
【0173】
155.前記TGFβスーパーファミリーの複数の増殖因子が供給される、段落150の方法。
【0174】
156.Wnt3Aも供給される、段落155の方法。
【0175】
157.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約10ng/mlの濃度で供給される、段落150の方法。
【0176】
158.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約100ng/mlの濃度で供給される、段落150の方法。
【0177】
159.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約500ng/mlの濃度で供給される、段落150の方法。
【0178】
160.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約1000ng/mlの濃度で供給される、段落150の方法。
【0179】
161.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約5000ng/mlの濃度で供給される、段落150の方法。
【0180】
162.前記ヒト多能性細胞が、約2%未満の血清を含む培地でヒト胚体内胚葉細胞に分化する、段落150の方法。
【0181】
163.前記ヒト多能性細胞が、桑実胚、胚のICM及び胚の生殖隆起から成る群から選択される組織から誘導されるヒト胚性幹細胞である、段落150の方法。
【0182】
164.濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団であって、当該ヒト内分泌前駆細胞がNGN3を発現し、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、INS、GCG、SST及びGHRLから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しない、濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0183】
165.in vitroでヒト多能性細胞から誘導される、段落164の濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0184】
166.段落117の方法によって産生される、段落164の濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0185】
167.段落150の方法によって産生される、段落164の濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0186】
168.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約5%が、ニューロゲニン3(NGN3)を発現し、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、INS、GCG、SST及びGHRLから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しないヒト内分泌前駆細胞を含む、段落164の濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0187】
169.前記ヒト内分泌前駆細胞がPAX4を発現する、段落168の濃縮されたin
vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0188】
170.前記内分泌前駆細胞がin vitroでヒトPDX1陽性膵臓内胚葉から誘導される、段落164の濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0189】
171.前記ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞がin vitroでヒト前腸内胚葉細胞から誘導される、段落170の濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0190】
172.前記ヒト前腸内胚葉細胞がin vitroで胚体内胚葉細胞から誘導される、段落171の濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0191】
173.前記胚体内胚葉細胞がin vitroでヒト胚性幹細胞(hESC)から誘導される、段落172の濃縮されたin vitroヒト内分泌前駆細胞集団。
【0192】
174.ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法であって、神経細胞接着分子(NCAM)と結合する試薬を、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞集団に供給する工程と、当該試薬と結合するヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を当該試薬と結合しない細胞から分離し、それによりヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団を産生する工程とを含む、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法。
【0193】
175.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞がin vitroでヒト多能性細胞から誘導される、段落174の方法。
【0194】
176.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞がMAFBを発現し、NGN3及びMAFAから成る群から選択されるマーカーを実質的に発現しない、段落174の方法。
【0195】
177.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、MOX1、CER、POU5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及びNFMから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しない、段落176の方法。
【0196】
178.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、シナプトフィジン(SYP)、クロモグラニンA(CHGA)、NKX2.2、Islet1(ISL1)、ペアードボックス遺伝子6(PAX6)、及び神経発生分化1(NEUROD)、PDX1及びHB9から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現する、段落176の方法。
【0197】
179.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、前記未熟膵島ホルモン発現細胞によって産生されたインスリンの約98%未満をプロセシングする、段落174の方法。
【0198】
180.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、前記未熟膵島ホルモン発現細胞によって産生されたインスリンの約70%未満をプロセシングする、段落174の方法。
【0199】
181.前記インスリンのプロセシングが、C-ペプチド放出によって測定される、段落179又は180の方法。
【0200】
182.前記試薬が、抗NCAM抗体、抗NCAM抗体断片及びNCAMリガンドから成る群から選択される分子を含む、段落174の方法。
【0201】
183.前記NCAMリガンドがNCAM結合タンパク質10(NBP10)である、段落182の方法。
【0202】
184.前記抗NCAM抗体が標識される、段落182の方法。
【0203】
185.前記抗NCAM抗体が蛍光標識される、段落184の方法。
【0204】
186.前記試薬と結合する二次試薬を前記細胞集団に供給することをさらに含む、段落174の方法。
【0205】
187.前記試薬が抗NCAM抗体を含み、当該抗NCAM抗体と結合する前記二次試薬が蛍光標識される、段落186の方法。
【0206】
188.前記分離する工程が、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、抗NCAM抗体と結合する前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を当該抗NCAM抗体と結合しない当該細胞から分離することを含む、段落185又は187の方法。
【0207】
189.CD133と結合する第2の試薬を前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞に供給する工程と、当該ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を当該第2の試薬と結合する細胞から分離する工程とをさらに含む、段落174の方法。
【0208】
190.NCAMと結合する前記試薬を前記細胞集団に供給する前に当該細胞集団を解離する工程をさらに含む、段落174の方法。
【0209】
191.ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞に分化することができる多能性細胞であるヒト内分泌前駆細胞を含む細胞集団を得ること、及びヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が形成されるのに十分な時間、培養培地で当該ヒト内分泌前駆細胞をインキュベートすることをさらに含む、段落174の方法。
【0210】
192.前記ヒト内分泌前駆細胞のヒト未熟膵島ホルモン発現細胞への分化をさらに促進するのに十分な量で、ニコチンアミド(NIC)、エキセンジン4(Ex4)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子-1(IGF1)、グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド(GIP)、神経増殖因子(NGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及びそれらの組合せから成る群から選択される因子を前記ヒト内分泌前駆細胞に供給することをさらに含む、段落191の方法。
【0211】
193.前記因子がEx4、HGF及びIGF1から成る群から選択される、段落192の方法。
【0212】
194.前記因子がEx4である、段落193の方法。
【0213】
195.Ex4が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落194の方法。
【0214】
196.Ex4が、約40ng/mlの濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落194の方法。
【0215】
197.前記因子がIGF1である、段落193の方法。
【0216】
198.IGF1が、約10ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度で内分泌
前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落197の方法。
【0217】
199.IGF1が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落197の方法。
【0218】
200.IGF1が、約25ng/ml~約75ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落197の方法。
【0219】
201.IGF1が、約50ng/mlの濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落197の方法。
【0220】
202.腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができる多能性細胞であるヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を含む細胞集団を得る工程と、γ-セクレターゼ阻害剤をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒト内分泌前駆細胞の集団を産生する工程とをさらに含む、段落191の方法。
【0221】
203.前記γ-セクレターゼ阻害剤が、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)を含む、段落202の方法。
【0222】
204.前記DAPTが、約1μM~約10μMの範囲の濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落203の方法。
【0223】
205.前記DAPTが、約3μMの濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落203の方法。
【0224】
206.エキセンジン4(Ex4)をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給することをさらに含む、段落202の方法。
【0225】
207.前記Ex4が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落206の方法。
【0226】
208.前記Ex4が、約40ng/mlの濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落206の方法。
【0227】
209.ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を得る工程が、腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができるPDX1陰性多能性細胞であるヒト前腸内胚葉細胞の集団を得る工程と、レチノイドをヒト前腸内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を産生する工程とを含む、段落202の方法。
【0228】
210.前記レチノイドがレチノイン酸(RA)である、段落209の方法。
【0229】
211.RAが、約1nM~約10μMの範囲の濃度でヒト前腸内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落210の方法。
【0230】
212.ヒト前腸内胚葉細胞の集団を得る工程が、腸管の細胞又はそれから誘導される器官に分化することができる多能性細胞であるヒト胚体内胚葉細胞の集団を得る工程と、線維芽細胞増殖因子10(FGF-10)及びヘッジホッグ経路阻害剤をヒト胚体内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒト前腸内胚葉細胞の集団を産生する工程とを含む
、段落209の方法。
【0231】
213.胚体内胚葉細胞の前記集団に存在し得る前記TGF-βスーパーファミリーの外から加えられた因子を回収することをさらに含む、段落212の方法。
【0232】
214.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子が、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びそれらの組合せから成る群から選択される、段落213の方法。
【0233】
215.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子がアクチビンAである、段落214の方法。
【0234】
216.前記ヘッジホッグ阻害剤がKAAD-シクロパミンを含む、段落212の方法。
【0235】
217.KAAD-シクロパミンが、約0.01μM~約1μMの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落216の方法。
【0236】
218.KAAD-シクロパミンが、約0.2μMの濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落216の方法。
【0237】
219.FGF-10が、約1ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落212の方法。
【0238】
220.FGF-10が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落212の方法。
【0239】
221.FGF-10が、約50ng/mlの濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落212の方法。
【0240】
222.ヒト胚体内胚葉細胞の集団を得る工程が、ヒト多能性細胞の集団を得る工程と、前記TGF-βスーパーファミリーの少なくとも1つの増殖因子をヒト多能性細胞の当該集団に供給する工程とを含む、段落212の方法。
【0241】
223.前記少なくとも1つの増殖因子がノーダルである、段落222の方法。
【0242】
224.前記少なくとも1つの増殖因子がアクチビンAである、段落222の方法。
【0243】
225.前記少なくとも1つの増殖因子がアクチビンBである、段落222の方法。
【0244】
226.ウィングレス型MMTV組込部位ファミリー成員3A(Wnt3A)をヒト多能性細胞の前記集団に供給することをさらに含む、段落222の方法。
【0245】
227.前記TGFβスーパーファミリーの複数の増殖因子が供給される、段落222の方法。
【0246】
228.Wnt3Aも供給される、段落227の方法。
【0247】
229.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約10ng/mlの濃度で供給される、段落222の方法。
【0248】
230.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約100ng/mlの濃度で供給される、段落222の方法。
【0249】
231.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約500ng/mlの濃度で供給される、段落222の方法。
【0250】
232.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約1000ng/mlの濃度で供給される、段落222の方法。
【0251】
233.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約5000ng/mlの濃度で供給される、段落222の方法。
【0252】
234.前記ヒト多能性細胞が、約2%未満の血清を含む培地でヒト胚体内胚葉細胞に分化する、段落222の方法。
【0253】
235.前記ヒト多能性細胞が、桑実胚、胚のICM及び胚の生殖隆起から成る群から選択される組織から誘導されるヒト胚性幹細胞である、段落222の方法。
【0254】
236.濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団であって、当該ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞がMAFBを発現し、NGN3及びMAFAを実質的に発現しない、濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0255】
237.in vitroでヒト多能性細胞から誘導される、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0256】
238.段落174の方法によって産生される、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0257】
239.段落222の方法によって産生される、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0258】
240.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約25%が、MAFBを発現し、NGN3及びMAFAを実質的に発現しないヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、段落238又は239の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0259】
241.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約50%が、MAFBを発現し、NGN3及びMAFAを実質的に発現しないヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、段落238又は239の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0260】
242.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約70%が、MAFBを発現し、NGN3及びMAFAを実質的に発現しないヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、段落238又は239の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0261】
243.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約90%が、MAFBを発現し、NGN3及びMAFAを実質的に発現しないヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、段落238又は239の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0262】
244.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約25%が、MAFBを発現し、NGN3及びMAFAを実質的に発現しないヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0263】
245.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約50%が、MAFBを発現し、NGN3及びMAFAを実質的に発現しないヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0264】
246.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約70%が、MAFBを発現し、NGN3及びMAFAを実質的に発現しないヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0265】
247.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約90%が、MAFBを発現し、NGN3及びMAFAを実質的に発現しないヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0266】
248.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、MOX1、CER、POU5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及びNFMから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しない、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0267】
249.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、シナプトフィジン(SYP)、クロモグラニンA(CHGA)、NKX2.2、Islet1(ISL1)、ペアードボックス遺伝子6(PAX6)、及び神経発生分化1(NEUROD)、PDX1及びHB9から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現する、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0268】
250.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、前記未熟膵島ホルモン発現細胞によって産生されたインスリンの約98%未満をプロセシングする、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0269】
251.前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、前記未熟膵島ホルモン発現細胞によって産生されたインスリンの約70%未満をプロセシングする、段落236の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0270】
252.前記インスリンのプロセシングが、C-ペプチド放出によって測定される、段落250又は251の濃縮されたin vitroヒト未熟膵島ホルモン発現細胞集団。
【0271】
253.ヒト膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法であって、当該ヒト膵島ホルモン発現細胞がin vitroでヒト多能性細胞から誘導され、当該方法が神経細胞接着分子(NCAM)と結合する試薬を、ヒト膵島ホルモン発現細胞を含む細胞集団に供給する工程と、当該試薬と結合するヒト内分泌前駆細胞を当該試薬と結合しない細胞から分離し、それによりヒト膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団を産生する工程とを含む、ヒト膵島ホルモン発現細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法。
【0272】
254.前記試薬が、抗NCAM抗体、抗NCAM抗体断片及びNCAMリガンドから成る群から選択される分子を含む、段落253の方法。
【0273】
255.前記NCAMリガンドがNCAM結合タンパク質10(NBP10)である、段落254の方法。
【0274】
256.前記抗NCAM抗体が標識される、段落254の方法。
【0275】
257.前記抗NCAM抗体が蛍光標識される、段落256の方法。
【0276】
258.前記試薬と結合する二次試薬を前記細胞集団に供給することをさらに含む、段落254の方法。
【0277】
259.前記試薬が抗NCAM抗体を含み、当該抗NCAM抗体と結合する前記二次試薬が蛍光標識される、段落258の方法。
【0278】
260.前記分離する工程が、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、前記抗NCAM抗体と結合する前記膵島ホルモン発現細胞を当該抗NCAM抗体と結合しない当該細胞から分離することを含む、段落257又は259の方法。
【0279】
261.CD133と結合する第2の試薬を前記ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞に供給する工程と、当該ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を当該第2の試薬と結合する細胞から分離する工程とをさらに含む、段落253の方法。
【0280】
262.NCAMと結合する前記試薬を前記細胞集団に供給する前に当該細胞集団を解離する工程をさらに含む、段落253の方法。
【0281】
263.ヒト膵島ホルモン発現細胞に分化することができる多能性細胞であるヒト内分泌前駆細胞を含む細胞集団を得ること、及びヒト膵島ホルモン発現細胞が形成されるのに十分な時間、培養培地で当該ヒト内分泌前駆細胞をインキュベートすることをさらに含む、段落253の方法。
【0282】
264.前記ヒト内分泌前駆細胞のヒト膵島ホルモン発現細胞への分化をさらに促進するのに十分な量で、ニコチンアミド(NIC)、エキセンジン4(Ex4)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子-1(IGF1)、グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド(GIP)、神経増殖因子(NGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及びそれらの組合せから成る群から選択される因子を前記ヒト内分泌前駆細胞に供給することをさらに含み、当該ヒト膵島ホルモン発現細胞がインスリン、ソマトスタチン及びグルカゴンから成る群から選択される少なくとも1つの膵臓ホルモンを発現する、段落263の方法。
【0283】
265.前記因子がEx4、HGF及びIGF1から成る群から選択される、段落264の方法。
【0284】
266.前記因子がEx4である、段落265の方法。
【0285】
267.Ex4が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落266の方法。
【0286】
268.Ex4が、約40ng/mlの濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落266の方法。
【0287】
269.前記因子がIGF1である、段落265の方法。
【0288】
270.IGF1が、約10ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落269の方法。
【0289】
271.IGF1が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度で内分泌前
駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落269の方法。
【0290】
272.IGF1が、約25ng/ml~約75ng/mlの範囲の濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落269の方法。
【0291】
273.IGF1が、約50ng/mlの濃度で内分泌前駆細胞の前記細胞集団に供給される、段落269の方法。
【0292】
274.腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができる多能性細胞であるヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を含む細胞集団を得る工程と、γ-セクレターゼ阻害剤をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒト内分泌前駆細胞の集団を産生する工程とをさらに含む、段落263の方法。
【0293】
275.前記γ-セクレターゼ阻害剤が、N-[N-(3,5,-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)を含む、段落274の方法。
【0294】
276.前記DAPTが、約1μM~約10μMの範囲の濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落275の方法。
【0295】
277.前記DAPTが、約3μMの濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落275の方法。
【0296】
278.エキセンジン4(Ex4)をヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給することをさらに含む、段落274の方法。
【0297】
279.前記Ex4が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落278の方法。
【0298】
280.前記Ex4が、約40ng/mlの濃度でヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落278の方法。
【0299】
281.ヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を得る工程が、腸管の前部から誘導される、細胞、組織又は器官に分化することができるPDX1陰性多能性細胞であるヒト前腸内胚葉細胞の集団を得る工程と、レチノイドをヒト前腸内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒトPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を産生する工程とを含む、段落274の方法。
【0300】
282.前記レチノイドがレチノイン酸(RA)である、段落281の方法。
【0301】
283.RAが、約1nM~約10μMの範囲の濃度でヒト前腸内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落282の方法。
【0302】
284.ヒト前腸内胚葉細胞の集団を得る工程が、腸管の細胞又はそれから誘導される器官に分化することができる多能性細胞であるヒト胚体内胚葉細胞の集団を得る工程と、線維芽細胞増殖因子10(FGF-10)及びヘッジホッグ経路阻害剤をヒト胚体内胚葉細胞の当該集団に供給し、それによりヒト前腸内胚葉細胞の集団を産生する工程とを含む、段落281の方法。
【0303】
285.胚体内胚葉細胞の前記集団に存在し得る前記TGF-βスーパーファミリーの
外から加えられた因子を回収することをさらに含む、段落284の方法。
【0304】
286.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子が、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びそれらの組合せから成る群から選択される、段落285の方法。
【0305】
287.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子がアクチビンAである、段落286の方法。
【0306】
288.前記ヘッジホッグ阻害剤がKAAD-シクロパミンを含む、段落284の方法。
【0307】
289.KAAD-シクロパミンが、約0.01μM~約1μMの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落288の方法。
【0308】
290.KAAD-シクロパミンが、約0.2μMの濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落288の方法。
【0309】
291.FGF-10が、約1ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落284の方法。
【0310】
292.FGF-10が、約10ng/ml~約100ng/mlの範囲の濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落284の方法。
【0311】
293.FGF-10が、約50ng/mlの濃度でヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給される、段落284の方法。
【0312】
294.ヒト胚体内胚葉細胞の集団を得る工程が、ヒト多能性細胞の集団を得る工程と、前記TGF-βスーパーファミリーの少なくとも1つの増殖因子をヒト多能性細胞の当該集団に供給する工程とを含む、段落284の方法。
【0313】
295.前記少なくとも1つの増殖因子がノーダルである、段落294の方法。
【0314】
296.前記少なくとも1つの増殖因子がアクチビンAである、段落294の方法。
【0315】
297.前記少なくとも1つの増殖因子がアクチビンBである、段落294の方法。
【0316】
298.ウィングレス型MMTV組込部位ファミリー成員3A(Wnt3A)をヒト多能性細胞の前記集団に供給することをさらに含む、段落294の方法。
【0317】
299.前記TGFβスーパーファミリーの複数の増殖因子が供給される、段落294の方法。
【0318】
300.Wnt3Aも供給される、段落299の方法。
【0319】
301.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約10ng/mlの濃度で供給される、段落294の方法。
【0320】
302.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約100ng/mlの濃度で供給される、段落294の方法。
【0321】
303.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約500ng/mlの濃度で供給される、段落294の方法。
【0322】
304.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約1000ng/mlの濃度で供給される、段落294の方法。
【0323】
305.前記少なくとも1つの増殖因子が、少なくとも約5000ng/mlの濃度で供給される、段落294の方法。
【0324】
306.前記ヒト多能性細胞が、約2%未満の血清を含む培地でヒト胚体内胚葉細胞に分化する、段落294の方法。
【0325】
307.前記ヒト多能性細胞が、桑実胚、胚のICM及び胚の生殖隆起から成る群から選択される組織から誘導されるヒト胚性幹細胞である、段落294の方法。
【0326】
308.in vitroでヒト多能性細胞から誘導される濃縮されたin vitroヒト膵島ホルモン発現細胞集団。
【0327】
309.段落253の方法によって産生される、段落308の濃縮されたin vitroヒト膵島ホルモン発現細胞集団。
【0328】
310.段落294の方法によって産生される、段落308の濃縮されたin vitroヒト膵島ホルモン発現細胞集団。
【0329】
311.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約25%が、グレリン、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、インスリン(INS)、グルカゴン(GCG)、NKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)、ソマトスタチン(SOM)、及び膵臓ポリペプチド(PP)から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現し、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及びNFMから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しないヒト膵島ホルモン発現細胞を含む、段落309又は310の濃縮されたin vitroヒト膵島ホルモン発現細胞集団。
【0330】
312.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約50%が、グレリン、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、インスリン(INS)、グルカゴン(GCG)、NKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)、ソマトスタチン(SOM)、及び膵臓ポリペプチド(PP)から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現し、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及びNFMから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しないヒト膵島ホルモン発現細胞を含む、段落311の濃縮されたin vitroヒト膵島ホルモン発現細胞集団。
【0331】
313.前記濃縮されたヒト細胞集団の少なくとも約90%が、グレリン、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、インスリン(INS)、グルカゴン(GCG)、NKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)、ソマトスタチン(SOM)、及び膵臓ポリペプチド(PP)から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現し、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及びNFMから成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを実質的に発現しないヒト膵島ホルモン発現細胞を含む、段落311の濃縮されたin vitroヒト膵島ホルモン発現細胞集団。
【0332】
314.NCAMを発現するヒト内分泌前駆細胞を含むex vivo試薬-細胞複合体であって、当該内分泌前駆細胞が、ヒト膵島ホルモン発現細胞に分化することができる
多能性細胞、及び当該NCAMと結合する試薬である、NCAMを発現するヒト内分泌前駆細胞を含むex vivo試薬-細胞複合体。
【0333】
315.前記試薬が抗NCAM抗体、抗NCAM抗体断片及びNCAMリガンドから成る群から選択される分子を含む、段落314のex vivo試薬-細胞複合体。
【0334】
316.前記NCAMリガンドがNCAM結合タンパク質10(NBP10)である、段落315のex vivo試薬-細胞複合体。
【0335】
317.前記試薬が抗NCAM抗体である、段落315のex vivo試薬-細胞複合体。
【0336】
318.前記抗NCAM抗体が標識される、段落317のex vivo試薬-細胞複合体。
【0337】
319.前記抗NCAM抗体が蛍光標識される、段落318のex vivo試薬-細胞複合体。
【0338】
320.前記試薬と結合する二次試薬をさらに含む、段落314のex vivo試薬-細胞複合体。
【0339】
321.前記試薬が抗NCAM抗体を含み、当該抗NCAM抗体と結合する前記二次試薬が蛍光標識される、段落320のex vivo試薬-細胞複合体。
【0340】
322.NCAMを発現するヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含むex vivo試薬-細胞複合体であって、当該ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞が、ヒト膵島ホルモン発現細胞に分化することができる多能性細胞、及び当該NCAMと結合する試薬である、NCAMを発現するヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含むex vivo試薬-細胞複合体。
【0341】
323.前記試薬が抗NCAM抗体、抗NCAM抗体断片及びNCAMリガンドから成る群から選択される分子を含む、段落322のex vivo試薬-細胞複合体。
【0342】
324.前記NCAMリガンドがNCAM結合タンパク質10(NBP10)である、段落323のex vivo試薬-細胞複合体。
【0343】
325.前記試薬が抗NCAM抗体である、段落323のex vivo試薬-細胞複合体。
【0344】
326.前記抗NCAM抗体が標識される、段落325のex vivo試薬-細胞複合体。
【0345】
327.前記抗NCAM抗体が蛍光標識される、段落326のex vivo試薬-細胞複合体。
【0346】
328.前記試薬と結合する二次試薬をさらに含む、段落322のex vivo試薬-細胞複合体。
【0347】
329.前記試薬が抗NCAM抗体を含み、当該抗NCAM抗体と結合する前記二次試薬が蛍光標識される、段落328のex vivo試薬-細胞複合体。
【0348】
330.前記ヒト多能性細胞が、着床前胚から誘導されるヒト胚性幹細胞である、段落86、150、222又は294のいずれかの方法。
【0349】
331.ヒト膵臓ホルモン発現細胞を製造する方法であって、
(a)前記TGF-βスーパーファミリーの少なくとも1つの増殖因子を多能性ヒト胚性幹細胞(hESC)の集団に供給し、それによりヒト胚体内胚葉細胞の集団を産生する工程と、(b)少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子をヒト胚体内胚葉細胞の前記集団に供給し、それによりヒト前腸内胚葉細胞の集団を産生する工程と、(c)ノギンをヒト前腸内胚葉細胞の前記集団に供給し、それによりヒト内分泌前駆細胞を含む集団を産生する工程と、(d)ヒト膵島ホルモン発現細胞が形成されるのに十分な時間、培養培地でヒト内分泌前駆細胞の前記集団をインキュベートする工程(当該ヒト膵島ホルモン発現細胞が形成されるのに十分な時間は、前記細胞集団におけるヒト膵臓ホルモン発現細胞の存在を検出することによって求められている)とを含む、ヒト膵臓ホルモン発現細胞を製造する方法。
【0350】
332.前記細胞集団において前記ヒト細胞の少なくとも約2%がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する、段落331の方法。
【0351】
333.前記細胞集団において前記ヒト細胞の少なくとも約5%がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する、段落331の方法。
【0352】
334.前記細胞集団において前記ヒト細胞の少なくとも約10%がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する、段落331の方法。
【0353】
335.前記細胞集団において前記ヒト細胞の少なくとも約20%がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する、段落331の方法。
【0354】
336.前記細胞集団において前記ヒト細胞の少なくとも約40%がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する、段落331の方法。
【0355】
337.前記細胞集団において前記ヒト細胞の少なくとも約50%がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する、段落331の方法。
【0356】
338.前記細胞集団において前記ヒト細胞の少なくとも約70%がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する、段落331の方法。
【0357】
339.前記細胞集団において前記ヒト細胞の少なくとも約90%がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する、段落331の方法。
【0358】
340.前記細胞集団におけるヒト膵島ホルモン発現細胞の存在を検出することが、当該細胞集団の細胞において膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)、グレリン(GHRL)、インスリン(INS)、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、膵臓ポリペプチド(PP)、ISL1転写因子(ISL1)、NKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)及びペアードボックス6(PAX6)から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現を検出することを含む、段落331の方法。
【0359】
341.少なくとも1つの前記マーカーの発現がQ-PCRによって求められる、段落340の方法。
【0360】
342.少なくとも1つの前記マーカーの発現が免疫細胞化学法によって求められる、
段落340の方法。
【0361】
343.γ-セクレターゼ阻害剤を前記細胞集団に供給することをさらに含む、段落331の方法。
【0362】
344.前記γ-セクレターゼ阻害剤が、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)を含む、段落343の方法。
【0363】
345.前記γ-セクレターゼ阻害剤が、ノギンを供給するのとほぼ同時又はノギンを供給した後に、前記細胞集団に供給される、段落343の方法。
【0364】
346.前記γ-セクレターゼ阻害剤が、約0.1μM~約10μMの範囲の濃度で前記細胞集団に供給される、段落344の方法。
【0365】
347.前記少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子が線維芽細胞増殖因子7(FGF-7)である、段落331の方法。
【0366】
348.前記FGF-7が、約1ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度で前記細胞培養物に供給される、段落347の方法。
【0367】
349.前記少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子を添加するのとほぼ同時に、ヘッジホッグ阻害剤を前記細胞集団に供給することをさらに含む、段落331の方法。
【0368】
350.前記ヘッジホッグ阻害剤がKAAD-シクロパミンを含む、段落349の方法。
【0369】
351.前記KAAD-シクロパミンが、約0.01μM~約10μMの範囲の濃度で前記細胞集団に供給される、段落350の方法。
【0370】
352.胚体内胚葉細胞の前記集団に存在し得る前記TGF-βスーパーファミリーの任意の増殖因子を回収することをさらに含む、段落331の方法。
【0371】
353.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子が、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びそれらの組合せから成る群から選択される、段落331の方法。
【0372】
354.前記TGF-βスーパーファミリーの前記増殖因子がアクチビンAを含む、段落353の方法。
【0373】
355.前記アクチビンAが、約10ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度で前記hESCに供給される、段落354の方法。
【0374】
356.ウィングレス型MMTV組込部位ファミリー成員3A(Wnt3A)を前記hESCに供給することをさらに含む、段落331の方法。
【0375】
357.前記Wnt3Aが、約1ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度で供給される、段落356の方法。
【0376】
358.前記hESCが、約2%未満の血清を含む培地においてヒト胚体内胚葉細胞に分化する、段落331の方法。
【0377】
359.前記hESCが、桑実胚、胚のICM及び胚の生殖隆起から成る群から選択される組織から誘導される、段落331の方法。
【0378】
360.ノギンを供給するのとほぼ同時に、レチノイドを前記細胞集団に供給することをさらに含む、段落331の方法。
【0379】
361.少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子を添加するのとほぼ同時又は添加した後に、レチノイドを前記細胞集団に供給することをさらに含む、段落331の方法。
【0380】
362.前記レチノイドがレチノールである、段落360又は361の方法。
【0381】
363.前記レチノイドがレチノイン酸である、段落360又は361の方法。
【0382】
364.前記レチノイン酸が、約0.01μM~約10μMの範囲の濃度で供給される、段落363の方法。
【0383】
365.少なくとも幾つかの前記細胞が非組み換え細胞である、段落1~49、164~173、236~252又は308~313のいずれかの細胞培養物又は細胞集団。
【0384】
366.前記細胞が非組み換え細胞である、段落1~49、164~173、236~252又は308~313のいずれかの細胞培養物又は細胞集団。
【0385】
367.前記細胞がヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下では培養されていない、段落1~49、164~173、236~252又は308~313のいずれかの細胞培養物又は細胞集団。
【0386】
368.前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が酪酸ナトリウムを含む、段落367の細胞培養物又は細胞集団。
【0387】
369.少なくとも幾つかの前記細胞が非組み換え細胞である、段落50~163、174~235、253~307又は331~364のいずれかの方法。
【0388】
370.前記細胞が非組み換え細胞である、段落50~163、174~235、253~307又は331~364のいずれかの方法。
【0389】
371.前記細胞がヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下では培養されていない、段落50~163、174~235、253~307又は331~364のいずれかの方法。
【0390】
372.前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が酪酸ナトリウムを含む、段落371の方法。
【0391】
前記の方法及び組成物は、in vitroで培養される細胞に関することが理解される。しかしながら、前記のin vitroで分化した細胞組成物は、細胞置換療法等、in vivoでの用途に使用され得る。
【0392】
本発明のさらなる実施の形態は、米国特許仮出願第60/532,004号(表題「胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)」、2003年12月23日出願)、米国特許仮出願
第60/566,293号(表題「PDX1発現内胚葉(PDX1 EXPRESSING ENDODERM)」
、2004年4月27日出願)、米国特許仮出願第60/586,566号(表題「胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVE ENDODERM)」、2004年7月9日出願)、米国特許仮出願第60/587,942号(表題「胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVE ENDODERM)」、2004年7月14日出願)、米国特許出願第11/021,618号(表題「胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)」、2004年12月23日出願)、米国特許出願第11/115,868号(表題「PDX1発現内胚葉(PDX1 EXPRESSING ENDODERM)」、2005年4月26日出願)、米国特許出願第11/165,305号(表題「胚体内胚葉を分化させるための因子の同定方法(METHODS FOR IDENTIFYING FACTORS FOR DIFFERENTIATING DEFINITIVE ENDODERM)」、2005年6月23日出願)、米国特許仮出願第60/730,917号(表題「PDX1を発現する背側及び腹側の前腸内胚葉(PDX1-EXPRESSING DORSAL AND VENTRAL FOREGUT ENDODERM)」、2005年10月27日出願)、米国特許仮出願第60/736,598号(表題「胚体内胚葉のマーカー(MARKERS OF DEFINITIVE ENDODERM)」、2005年11月14日出願)、米国特許仮出願第60/778,649号(表題「インスリン産生細胞及び産生方法(INSULIN-PRODUCING CELLS AND METHOD OF PRODUCTION)」、2006年3月2日出願)、米国特許仮出願第60/833,633号(表題「インスリン産生細胞及び産生方法(INSULIN-PRODUCING CELLS AND METHOD OF PRODUCTION)」、2006年7月26日出願)、及び米国特許仮出願第60/852,878号(表題「NCAMを使用する、内分泌前駆細胞、未熟膵島細胞及び成熟膵島細胞の濃縮(ENRICHMENT OF ENDOCRINE PRECURSOR CELLS, IMMATURE PANCREATIC ISLET CELLS AND MATURE PANCREATIC ISLET CELLS USING NCAM)」、2006年10月18日出願)(これらの開示内容全体が、参照により本明細書中に援用される)にも見出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0393】
【
図1】in vivoでの膵臓の発生中に観察される中間段階に対応するhESCの膵島細胞へのin vitro分化における段階を示す模式図である。様々な増殖因子/培地の組合せ(それぞれの中間体を介したhESCのこの段階的な分化を誘起するのに用いられる)による連続処理が示される。条件及び細胞特性は四角の欄の中に示される。四角の欄の下は、時間(h)又は日数(d)を時間単位で示しており、ヒト胚性幹細胞(hESC)から膵島ホルモン発現細胞への典型的な分化を示す例示的な時系列となっている。それぞれの中間体の下は、発現がこの中間体に特有であるが、必ずしも限定的ではない遺伝子の一覧である。この発達に沿ったそれぞれの中間体に関する1つ又は複数の遺伝子の発現のモニタリングによって、in vitroでのそれぞれの移行の発生が強く示される。略称は以下の通りである:ESC - 胚性幹細胞、ME - 中胚葉、Ant.DE - 前胚体内胚葉。
【
図2-1】21日の分化プロトコル中の様々なマーカーの相対的発現を示す棒グラフである。分化の工程1で用いられる3つの条件の結果として分化に実質的な差異が生じたマーカーは、(A)SOX17、(B)CXCR4、(C)SOX7、(D)ISL1、(E)SOX1及び(F)PAX6である。
【
図2-2】21日の分化プロトコル中の様々なマーカーの相対的発現を示す棒グラフである。パネル(G)PDX1、(H)NGN3、(I)NKX2.2及び(J)NKX6.1は、hESCの膵臓内胚葉及び内分泌前駆細胞への分化に関連したマーカーの相対発現を示す。パネル(K)インスリン、(L)グルカゴン、(M)グレリン及び(N)SOMは、分化プロセスの終結間近の膵島ホルモンであるインスリン、グルカゴン、グレリン、及びソマトスタチンの相対発現を示す。
【
図3】分化プロトコルの0~16日目の(A)FOXA1、(B)HNF1b、(C)HNF6、(D)PDX1、(E)NGN3、(F)PAX4、(G)NKX2.2、(H)NKX6.1、(I)グレリン、(J)グルカゴン、(K)インスリン及び(L)IAPPの相対発現を示す棒グラフである。
【
図4】
図4Aは、様々な培地条件に供した細胞におけるPDX1タンパク質発現のウェスタンブロット分析を示す図である。略称:MS1-PDX1 - PDX1でトランスフェクトしたMS1細胞由来のタンパク質溶解物(陽性対照)、A100 - 100ng/mlのアクチビンA、A25R2 - 25ng/mlのアクチビンA及び2μMのRA、RP - RPMI培地、CM - CMRL培地、Ex - 40ng/mlのエキセンジン4。
図4Bは、
図4Aで記載された7日目、8日目及び9日目の培養物におけるPDX1のmRNAの相対発現を示す棒グラフである。
【
図5】レチノイン酸の存在下又は非存在下での分化の13日後の(A)HB9、(B)PDX1、(C)NGN3、及び(D)NKX2.2、並びに分化の17日後の(E)PDX1、(F)NKX2.2、(G)インスリン及び(H)グルカゴンの相対発現を示す棒グラフである。
【
図6】3つの異なる濃度のγ-セクレターゼ阻害剤DAPTに曝されたか、又は全くDAPTに曝されない分化の19日後の(A)NGN3、(B)NKX2.2、(C)インスリン、(D)グルカゴン、(E)グレリン、及び(F)ソマトスタチン(SOM)の相対発現を示す棒グラフである。
【
図7】(A)インスリン、(B)グルカゴン及び(C)ソマトスタチン(SOM)の免疫反応細胞の顕微鏡写真である。これらの3つの画像を合わせたものを(D)に示し、3重に標識された細胞を矢印で示す。
【
図8】(A)インスリン及び(B)PAX6に対する免疫反応性を示す顕微鏡写真である。これらの顕微鏡写真は、インスリン陽性細胞がPAX6陽性でもあることを示す。(C)インスリン及び(D)ISL1に対する免疫反応性を示す顕微鏡写真は、インスリン陽性細胞がISL1陽性でもあることを示す。インスリン免疫反応性に関して陰性であるISL1細胞も多く存在する(CとDとの比較)。
【
図9】インスリンのmRNA検出(パネルA)が、培養培地に放出されたC-ペプチド(パネルB)を測定する能力と相関があることを示す棒グラフである。略称は以下の通りである:A100 - 100ng/mlのアクチビンA、2NF - 2%ウシ胎児血清(FBS)及び因子なし、Fstnog - 50ng/mlのホルスタチン及び100ng/mlのノギン、「B」 - 1~5日でA100を受ける培養物、「C」 - 1~5日で2%FBSを受け、因子がない培養物、並びに「D」 - 1~5日で50ng/mlのホルスタチン及び100ng/mlのノギンを受ける培養物。
【
図10】強いインスリンのmRNA検出(パネルA)を示す条件が、グルコースで刺激されたC-ペプチド分泌(パネルB)を示す棒グラフである。略記は以下の通りである:g50 - 1.6mMのグルコース、g400 - 16mMのグルコース。
【
図11】hESC株BG01及びBG02が膵島ホルモン発現細胞に分化することができることを示す棒グラフである。パネルA及びパネルBは、BG01(A)及びBG02(B)に対するPDX1のmRNAの上方調節を示し、パネルC及びパネルDは、BG01(C)及びBG02(D)に対するNGN3のmRNAの上方調節を示し、パネルE及びパネルFは、BG01(E)及びBG02(F)に対するインスリンのmRNAの上方調節を示す。
【
図12】NCAM(
図12C)及びNKX2.2(
図12B)に対して初期膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞の免疫反応性を示す顕微鏡写真である。全細胞集団をDAPIで染色する(
図12A)。これらの顕微鏡写真は、NKX2.2陽性細胞がNCAM陽性でもあることを示す(
図12D)。
【
図13】NCAM(
図13C)及びインスリン(
図13B)に対して未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞の免疫反応性を示す顕微鏡写真である。全細胞集団をDAPIで染色する(
図13A)。これらの顕微鏡写真は、インスリン陽性細胞がNCAM陽性でもあることを示す(
図13D)。
【
図14】NCAM(
図14E)、INS(14F)及びPAX6(
図14D)に対して未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞の免疫反応性を示す顕微鏡写真である。全細胞集団をDAPIで染色する(
図14A)。これらの顕微鏡写真は、PAX6陽性細胞がNCAM陽性でもあり(
図14B)、INS陽性細胞がNCAM陽性でもあることを示す(
図14C)。
【
図15】NKX2.2及びシナプトフィジンに対して未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞の免疫反応性を示す顕微鏡写真である。これらの顕微鏡写真は、シナプトフィジン陽性細胞がNKX2.2陽性でもあることを示す(
図15A及び
図15B)。
【
図16】MAFB及びINSに対して内分泌前駆細胞に分化するように処理したhESC由来細胞の免疫反応性を示す顕微鏡写真である。
図16A及び
図16Bは、MAFB及びINSはhESC由来内分泌前駆細胞で同時に発現することを示す。
図16C及び
図16Dは、MAFB及びINSに対する13.5週齢のヒト胎児膵臓の免疫反応性を示す。MAFB及びINSは胎児膵臓で同時に発現する。
【
図17】シナプトフィジン及びNCAMを発現する未熟膵島ホルモン発現細胞の同時分離(
図17A)、並びにINS及びNCAMを発現する未熟膵島ホルモン発現細胞の同時分離(
図17B)を示すフローサイトメトリドットプロットである。
【
図18】未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞のフローサイトメトリドットプロットである。
図18Aは、抗NCAM抗体による、未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞の標識化を示すフローサイトメトリドットプロットである。
図18Bは、NCAM及びSYPに関して陽性又は陰性であるhESC由来細胞の分布を示すフローサイトメトリドットプロットである。
図18Cは、NCAM及びSYPの両方に関して、FACSで再び分析した
図18AのhESC由来NCAM陽性細胞の分布を示すフローサイトメトリドットプロットである。このドットプロットは、NCAM及びSYPの両方に関して陽性又は陰性であるこれらの細胞の分布を示す。
図18Dは、NCAM及びSYPの両方に関して、FACSで再び分析した
図18AのhESC由来NCAM陰性細胞の分布を示すフローサイトメトリドットプロットである。このドットプロットは、NCAM及びSYPの両方に関して陽性又は陰性であるこれらの細胞の分布を示す。
【
図19】未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞のフローサイトメトリドットプロットである。処理細胞は、NCAM陽性細胞に関して選別したか(
図19B、
図19D)、又は選別しなかった(
図19A、
図19C)。
図19A及び
図19Bは、NCAM及びSYPの両方に関して陽性及び陰性である細胞の分布を示す。
図19C及び
図19Dは、NCAM及びINSの両方に関して陽性及び陰性である細胞の分布を示す。
【
図20】未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞のフローサイトメトリドットプロットである。
図20Aは、NCAMに関して蛍光を示した細胞株の小集団を示す。
図20Bは、SYPに関して蛍光を示した細胞株の小集団を示す。
図20Cは、
図20AのNCAM蛍光細胞が回収され、SYPに関して解析される場合、非常に高い割合のhESC由来細胞がSYP陽性であることを示す。
【
図21】未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞のフローサイトメトリドットプロットである。
図21Aは、NCAMに関して染色したhESC由来細胞の分布を示す。
図21Bは、未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC細胞の小集団が、NCAM陽性及びCD133陰性であることを示す。
図21Cは、SYP陽性及びSYP陰性であるNCAM陽性/CD133陰性細胞の分布を示す。
【
図22-1】内分泌前駆細胞(「初期」)に分化するように処理された、又は未熟膵島ホルモン発現細胞(「中期」及び「後期」)に分化するように処理されたhESC由来細胞においてQPCRで検出されるように、或る特定のマーカーのmRNAレベルを示す棒グラフである。「選別前」で標識されたデータは、FACS装置によって処理及び選別されていない細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。「NCAM蛍光」で標識されたデータは、NCAM陽性である細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。「NCAM非蛍光(dim)」で標識されたデータは、NCAM陰性である細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。具体的には、NGN3(
図22A)、PAX4(
図22B)、INS(
図22C)、膵臓ポリペプチド(
図22D)、PAX6(
図22E)、GCG(
図22F)、のmRNAレベルが示される。
【
図22-2】内分泌前駆細胞(「初期」)に分化するように処理された、又は未熟膵島ホルモン発現細胞(「中期」及び「後期」)に分化するように処理されたhESC由来細胞においてQPCRで検出されるように、或る特定のマーカーのmRNAレベルを示す棒グラフである。「選別前」で標識されたデータは、FACS装置によって処理及び選別されていない細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。「NCAM蛍光」で標識されたデータは、NCAM陽性である細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。「NCAM非蛍光(dim)」で標識されたデータは、NCAM陰性である細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。具体的には、GHRL(
図22G)、GCK(
図22H)、SST(
図22I)、NXK2.2(
図22J)及びSYP(
図22K)のmRNAレベルが示される。
【
図23】未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞においてQPCRで検出されるように、或る特定のマーカーのmRNAレベルを示す棒グラフである(19日目)。「選別前」で標識されたデータは、FACS装置によって処理及び選別されていない細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。「NCAM蛍光」で標識されたデータは、NCAM陽性である細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。「NCAM非蛍光」で標識されたデータは、NCAM陰性である細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。具体的には、NEUROD(
図23A)、ISL1(
図23B)、GAS(
図23C)、KIR6.2(
図23D)、及びSUR1(
図23E)のmRNAレベルが示される。
【
図24-1】未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞においてQPCRで検出されるように、或る特定のマーカーのmRNAレベルを示す棒グラフである(19日目)。「選別前」で標識されたデータは、FACS装置によって処理及び選別されていない細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す(ゲート化した生存細胞)。「NCAM蛍光」で標識されたデータは、NCAM陽性である細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。具体的には、NCAM1(
図24A)、NKX2.2(
図24B)、SYP(
図24C)、PAX6(
図24D)、NEUROD(
図24E)、ISL1(
図24F)のmRNAレベルが示される。
【
図24-2】未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞においてQPCRで検出されるように、或る特定のマーカーのmRNAレベルを示す棒グラフである(19日目)。「選別前」で標識されたデータは、FACS装置によって処理及び選別されていない細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す(ゲート化した生存細胞)。「NCAM蛍光」で標識されたデータは、NCAM陽性である細胞におけるマーカーのmRNAレベルを表す。具体的には、INS(
図24G)、GCG(
図24H)、GHRL(
図24I)、SST(
図24J)及びPP(
図24K)のmRNAレベルが示される。
【
図25】未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞のフローサイトメトリドットプロットである。
図25A、
図25C及び
図25Eは、NCAM陽性細胞に関して細胞集団を選別する前に、細胞集団においてそれぞれSYP、CHGA、及びINS陽性であるNCAM陽性細胞の割合を示す。
図25B、
図25D、及び
図25Fは、NCAM発現に関して陽性である細胞に関して細胞を選別した後に、それぞれSYP、CHGA及びINS陽性である細胞の割合を示す。
【
図26】未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞のフローサイトメトリドットプロットである。
図26Aは、SYP陽性であるNCAM陽性細胞の割合を示す。
図26Bは、CD133陰性であるNCAM陽性細胞の割合を示す。
図26Cは、SYP陽性であり、NCAM陽性/CD133陰性細胞に関して選別した細胞の割合を示す。
【
図27】INS(
図27D)、PAX6(
図27C)に関して、未熟膵島ホルモン発現細胞の免疫反応性を示す顕微鏡写真である。全細胞集団は、DAPIで染色される(
図27B)。この細胞は、未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理し、蛍光活性化細胞選別技術を用いて選別されたhESC由来幹細胞である。この顕微鏡写真で表される細胞は、NCAMに関しても蛍光的に染色された。一部のNCAM陽性hESC由来細胞が、PAX6及びINSを同時に発現する(
図27A)。
【
図28】INS(
図28C)又はGCG(
図28D)を発現する未熟膵島ホルモン発現細胞の免疫反応性を示す顕微鏡写真である。この細胞は、未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理し、蛍光活性化細胞選別技術を用いて選別されたhESC由来幹細胞である。この顕微鏡写真で表される細胞は、NCAMに関しても蛍光的に染色された。
図28Aは、INS及びGCGの両方を発現する細胞の重複を示す。
【
図29】膵臓インスリン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞においてQPCRで検出されるように、或る特定のマーカーのmRNAレベルを示す棒グラフである(19日目)。具体的には、PDX1(
図29A)、NGN3(
図29B)、INS(
図29C)、SST(
図29D)、GCG(
図29E)及びGHRL(
図29F)のmRNAレベルが示される。略称は以下のように示される:A100 - 100ng/mlのアクチビンA、KC - 50ng/mlのKGF及び0.25μMのKAADシクロパミン、及びnog - ノギン。
【
図30】ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞においてQPCRで検出されるように、或る特定のマーカーのmRNAレベルを示す棒グラフである(11日目)。具体的には、PDX1(
図30A)、NGN3(
図30B)、PTF1A(
図30C)、NKX6.1(
図30D)、INS(
図30E)及びGCG(
図30F)のmRNAレベルが示される。略称は以下のように示される:A100 - 100ng/mlのアクチビンA、KC - 50ng/mlのKGF及び0.25μMのKAADシクロパミン、N - ノギン、CR0.1 - 0.25μMのKAADシクロパミン及び0.1μMのレチノイン酸、CR2 - 0.25μMのKAADシクロパミン及び2μMのレチノイン酸、「A」 - 0ng/mlのノギン及び0.1μMのレチノイン酸、「B」 - 30ng/mlのノギン及び0.1μMのレチノイン酸、「C」 - 100ng/mlのノギン及び0.1μMのレチノイン酸、「D」 - 0ng/mlのノギン及び2μMのレチノイン酸、「E」 - 30ng/mlのノギン及び2μMのレチノイン酸、並びに「F」 - 100ng/mlのノギン及び2μMのレチノイン酸。
【発明を実施するための形態】
【0394】
未分化hESCを内分泌前駆細胞及び未熟膵島ホルモン発現細胞に、並びに最終的にin vitroでインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、PPY及びグレリンを合成することができる成熟膵臓内分泌細胞(成熟膵島ホルモン発現細胞)に変換する工程の進行が本明細書に記載される。この工程の進行は、in vivoで膵臓発生中に生じることが現在分かっている中間体を経たhESCの逐次分化に関する。hESC由来の膵臓内分泌細胞を産生する一般的な方法は、胚体内胚葉(DE)の産生から始まり、その後のDEパターン形成工程でTGF-βシグナル伝達が変更され、線維芽細胞増殖因子又は線維芽細胞増殖因子2受容体IIIb(FGFR2(IIIb)を刺激若しくはそうでなければ相互作用するリガンドが供給される。PDX1陽性の予めパターン形成された内胚葉は、レチノイン酸及びγ-セクレターゼ阻害剤に一次的に曝されることによって膵臓の内分泌系統にさらに補充され、その後膵臓内分泌ホルモン産生細胞が発生する。
【0395】
米国特許出願第11/021,618号(表題「胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)
」、2004年12月23日提出)及びD'Amour et al. Nat. Biotech. 23, 1534-1541, (2005)(その開示内容全体が参照により本明細書に援用される)で以前に示されたように、本発明者らは、体細胞の胚葉の胚体内胚葉(DE)を産生させる確固たる方法を開発
している。in vivoで、原始線条と呼ばれる領域で生じた胚発生の原腸胚形成段階中にDE系統が発生する。DEの発生は、小腸、胃、肺、胸腺、膵臓内分泌腺、副甲状腺、甲状腺及び膵臓等の組織及び器官の後期特異化(specification:発生運命決定)の必要条件である。
【0396】
ヒト及びほとんどの他の脊椎動物において、膵臓は、腹側膵芽及び背側膵芽の両方として前腸-中腸接合部で前腸内胚葉から誘導される。ヒトでは、腹側膵芽及び背側膵芽が、受胎後(post conception)(p.c.)約41日~45日で膵頭後部及び鉤状突起と呼
ばれる領域を形成するより小さい腹側芽と融合する(Bocian-Sobkowska, J., et al. Histochem. Cell Biol. 112, 147-153, (1999))。ヒトのこの領域は主に、島細胞を産生する膵臓ポリペプチドから成る(Rahier J., et al., Cell Tissue Res. 200 (3), 359-366,(1979)、Malaisse-Langae F., et al., Diabetologia 17(6), 361-365,(1979)、Fiocca R., et al., Histochemistry 77(4), 511-523,(1983)、Stefan Y., et al., Diabetologica 23(2), 141-142,(1982))。背側膵芽は、ヒトにおいては膵頭前部、膵体及び膵尾を形成する。このことによって、全ての膵臓ホルモン産生細胞が作製される。カエル(アフリカツメガエル(Xenopus))及びサカナ(ゼブラフィッシュ(zebrafish))では、背側芽細胞だけが、インスリン産生島細胞を作製する(Kelly, O.G. and Melton, D. A., Dev. Dyn. 218, 615-627,(2000)、Chen, Y., et al., Dev. Biol. 271(1), 144-160,(2004)、Field, H. A., et al., Dev. Biol. 263, 197- 208(2003))。同様に、ヒトでは腹側芽は主に、インスリンの排除のために、膵臓ポリペプチド発現島細胞を作製すると考えられる(Rahier J., et al., Cell Tissue Res. 200 (3), 359-366,(1979)、Malaisse-Langae F., et al., Diabetologia 17(6), 361-365,(1979)、Fiocca R., et al., Histochemistry 77(4), 511-523, (1983)、Stefan Y., et al., Diabetologica 23(2), 141-142, (1982))。これに対して、ウサギ及びマウスでは、腹側芽及び背側芽の両方がインスリン産生細胞を作製する(Spooner, B. S., et al., J. Cell Biology, 47, 235- 246,(1970)、Li, H., et al., Nature 23, 67-70,(1999))。
【0397】
図1で示されるように、膵臓内分泌細胞は、一連の発生段階でhESCから効率的に産生することができる。第1段階は、Tボックス遺伝子ブラキュリの移行発現を特徴とする内胚葉系中胚葉(ME)の形成である。hESCはDEに分化するにつれ、E-カドヘリン及び、上皮性外胚葉状態から間葉性DE細胞への移行を下方調節する(D 'Amour et al. Nat. Biotech. 23, 1534-1541,(2005))。初期DE細胞を規定する主なマーカーは、FOXA2、GSC、N-カドヘリン、CXCR4及びSOX17である。本発明者らの以前の米国特許出願第11/021,618号で説明されたように、DEはさらに、或る特定の他のマーカー、例えばSOX1、SOX7、トロンボモジュリン(TM)、SPARC及びαフェトプロテイン(AFP)の有意な発現の欠如を特徴とする。新生DEは、アクチビンのシグナル伝達の除去によって、その強い前部特徴からより後部へさらにパターン形成されるが、依然として前腸内胚葉である。このような前腸内胚葉は、HNF1b及びFOXA1遺伝子マーカーの発現を特徴とする。この内胚葉は展開し(expands)、FGF10、レチノイン酸及びシクロパミン(ソニックヘッジホッグ(SHH)阻害剤)に曝されることによってより背部の表現型になると考えられる。前腸胚後部(前腸胚の後部領域)パターン形成細胞は、PDX1、PTF1a、HNF1b、Onecut1/2及びHB9を発現する。内分泌前駆細胞を示すこれらの膵臓内胚葉細胞は、NGN3の一時的発現によって示されるように(潜在的にノッチ経路シグナル伝達の阻害による)γ-セクレターゼシグナル伝達の調節によって内分泌系統に優先的に補充される。hESC由来内分泌前駆細胞は、ペアードボックス遺伝子4(PAX4)及びNKX2.2も発現する。内分泌前駆細胞のさらなるインキュベートによって、未熟膵島ホルモン発現細胞が発生する。未熟膵島ホルモン発現細胞は、V-maf筋腱膜線維肉腫癌遺伝子ホモログB(MAFB)並びにNKX2.2を発現し、膵島ホルモン発現細胞はNKX2.2を発現する。最終的に、未熟膵島ホルモン発現細胞のさらなるインキュベートによって、未熟細胞から、内分泌ホルモンである、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、-PPY、グレリン及び膵臓転写因子NKX2.2/6.1、PAX6、NEUROD1、PDX1、ISL1の他に、V-maf筋腱膜線維肉腫癌遺伝子ホモログA(MAFA)を発現することができる成熟膵島ホルモン発現細胞に移行される。
【0398】
定義
本明細書で表される数値域は記載された端点を含み、規定の数値域の端点間の全整数を記載することが理解される。
【0399】
本明細書で用いられるように、「膵島ホルモン発現細胞」は、in vitroでヒト多能性細胞から誘導されており、1つ又は複数の膵臓ホルモンを発現し、ヒト膵島細胞の機能の少なくとも幾つかを有している細胞を表す。膵島ホルモン発現細胞は、成熟であっても未熟であってもよい。未熟膵島ホルモン発現細胞は、或る特定のマーカーの差次的発現に基づいて、成熟膵島ホルモン発現細胞と区別することができる。本発明で用いられるように、「膵臓ホルモン発現細胞」は、「膵島ホルモン発現細胞」と交換可能に用いられる。
【0400】
本明細書で用いられるように、「内分泌前駆細胞」は、ニューロゲニン3(NEUROG3)を発現し、さらに膵島ホルモン発現細胞を含む(が、これに限定されない)内分泌系の細胞に分化することができる胚体内胚葉系統の多能性細胞を表す。内分泌前駆細胞は、あまり明確に分化しない胚体内胚葉系統細胞、例えばPDX1陽性膵臓内胚葉細胞ほど多くの種類の様々な細胞、組織及び/又は器官に分化することはできない。
【0401】
本明細書で用いられるように、「PDX1陽性膵臓内胚葉細胞」及び「PDX1陽性前腸内胚葉細胞」は、膵臓及び十二指腸ホメオボックス遺伝子1(PDX1)を発現し、さらに内分泌前駆体及び膵島ホルモン発現細胞を含む(が、これに限定されない)前腸から誘導された細胞に分化することができる胚体内胚葉系統の多能性細胞を表す。PDX1陽性膵臓内胚葉細胞は、胚体内胚葉細胞ほど多くの種類の様々な細胞、組織及び/又は器官に分化することはできない。
【0402】
本明細書で用いられるように、「複能性」又は「多能性細胞」は、他の特定の細胞型を限られた数、発生することができる細胞型を表す。多能性細胞は、1つ又は複数の胚性細胞の運命に関わっており、したがって多能性細胞とは対照的に、3つの胚性細胞系統のそれぞれ、及び胚体外細胞を発生させることはできない。
【0403】
幾つかの実施形態において、「多能性細胞」は、膵島ホルモン発現細胞の分化のための出発材料として用いられる。「多能性」とは、細胞が3つの胚性細胞系統のそれぞれ及び胚体外細胞を発生することができることを意味している。しかし、多能性細胞は、全生物体(organism)を産生することができるわけではない。
【0404】
或る特定の実施形態において、出発材料として用いられる多能性細胞は、ヒト胚性幹細胞を含む幹細胞である。本発明で用いられるように、「胚性」は、単一の接合体から始まり、発生した配偶子細胞以外の多能性細胞又は全能性細胞を既に含んでいない多細胞構造で終結する生物体の一連の発生段階を表す。配偶子融合によって誘導された胚に加えて、「胚性」という用語は、体細胞の核移植によって誘導された胚を表す。
【0405】
「条件培地」とは、基本培地に比べて変更した培地を意味する。例えば、培地の条件付けによって、分子、例えば栄養分及び/又は増殖因子が、基本培地で見られる元々のレベルから付加又は枯渇され得る。幾つかの実施形態において、或る特定の種類の細胞を培地
中で或る特定期間、或る特定の条件下で培養又は維持させることによって、培地は条件付けされる。例えば、hESCを規定の組成物の培地で規定時間、規定温度で増殖、分化又は維持させることによって、培地を条件付けることができる。当業者によって理解されるように、細胞、培地の種類、期間及び環境条件の数多くの組合せを用いて、条件培地の無限に近い配列を作製することができる。
【0406】
細胞培養物及び/又は細胞集団に関連して使用される場合、「部(portion)」という
用語は、0ではない任意量の細胞培養物又は細胞集団を意味し、これは単一の細胞から細胞培養物又は細胞集団全体の範囲である。好ましい実施形態において、「部」という用語は、細胞培養物及び細胞集団の、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%又は少なくとも95%を意味する。
【0407】
細胞培養物又は細胞集団中の細胞に関して、「実質的に含まない(substantially free
of)」という用語は、細胞培養物又は細胞集団が含まない特定の細胞型の存在量が、細
胞培養物又は細胞集団中に存在する全細胞数の、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満であることを意味する。
【0408】
本明細書で用いられるように、培養物又は条件培地において「外から加えられた」増殖因子及び分化因子等の化合物は、培養物又は培地に既に存在し得る任意の化合物又は増殖因子を補充するために培養物又は培地に添加される増殖因子を表す。例えば、本発明の幾つかの実施形態において、細胞培養物及び/又は細胞集団は外から加えられたレチノイドを含まない。
【0409】
本明細書で用いられるように、「hESCから産生された」、「hESCから誘導された」、「hESCから分化した」及び同等表現は、in vivoよりむしろin vitroでのhESCからの分化細胞型の産生を表す。
【0410】
幾つかの実施形態において、hESCは、「着床前胚」から誘導することができる。本明細書で用いられるように、「着床前胚」は、受精段階と着床段階との間の胚を表す。したがって、着床前胚は典型的に胚盤胞段階を超えて進行することはない。着床は通常、受
精後7~8日で起こる。しかし、着床は受精後約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日又は約14日超で起こる可能性もある。
【0411】
本発明で用いられるように、「ヘッジホッグ阻害剤」又は「ヘッジホッグ経路阻害剤」は、ヘッジホッグシグナル伝達経路の任意の成員を阻害する任意の分子を表す。例示的なヘッジホッグ経路阻害剤としては、KAAD-シクロパミン、シクロパミン類似体、ジェルビン、ジェルビン類似体、ヘッジホッグ経路遮断抗体及び当業者に既知のヘッジホッグ経路機能の任意の他の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0412】
本明細書で用いられるように、「γ-セクレターゼ阻害剤」は、γ-セクレターゼ、又はγ-セクレターゼの活性によって引き起こされるシグナル伝達事象を阻害する任意の分子を表す。例示的なγ-セクレターゼ阻害剤としては、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル(Diflurophenacetyl)-L-アラニル)]-S-フェニルグリシンt-ブ
チルエステル(DAPT)、Fボックスタンパク質SEL-10、γ-セクレターゼ遮断抗体及び当業者に既知のγ-セクレターゼ機能の任意の他の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤はノッチシグナル伝達経路を阻害する。幾つかの実施形態において、ノッチ経路阻害剤又はノッチ特異的阻害剤は、γ-セクレターゼ阻害剤の代わりに用いることができる。
【0413】
本明細書で用いられるように、「レチノイド」は、レチノール、レチナール又はレチノイン酸、並びに任意のこれらの化合物の誘導体を表す。好ましい実施形態において、レチノイドはレチノイン酸である。
【0414】
「FGFファミリー増殖因子」、「線維芽細胞増殖因子」又は「線維芽細胞増殖因子ファミリーの成員」とは、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22及びFGF23から成る群から選択されるFGFを意味する。幾つかの実施形態において、「FGFファミリー増殖因子」、「線維芽細胞増殖因子」又は「線維芽細胞増殖因子ファミリーの成員」とは、既知の線維芽細胞増殖因子ファミリーの成員と類似した相同性及び/又は機能を有する任意の増殖因子を意味する。
【0415】
本明細書に記載されるように、「発現」とは、材料又は物質の産生、及び材料又は物質の産生のレベル又は量を指す。したがって、特定マーカーの発現の判定とは、発現するマーカーの相対量若しくは絶対量を検出すること、又は単にマーカーの有無を検出することのいずれかを指す。
【0416】
本明細書に記載されるように、「マーカー」とは、観察又は検出され得る任意の分子を指す。例えばマーカーとしては、核酸、例えば、特定遺伝子の転写産物、遺伝子のポリペプチド産物、非遺伝子産物ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、糖脂質、脂質、リポタンパク質又は小分子(例えば、分子量が10000amu未満の分子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0417】
本明細書で記載されたほとんどのマーカーに関して、公的なヒト遺伝子解析機構(HUGO)の遺伝子記号が与えられる。HUGO遺伝子命名法委員会によって作製されたこのような記号には、名前が付けられたヒトの遺伝子及び遺伝子産物に対して特有の略称が与えられる。これらの遺伝子記号は当業者によって容易に認識され、対応する特有のヒト遺伝子及び/又はタンパク質配列に容易に関連付けることができる。
【0418】
HUGOの命名により、以下の遺伝子記号は、以下の通り定義される:GHRL - グレリン;IAPP - 膵島アミロイドポリペプチド;INS - インスリン;GCG - グルカゴン;ISL1 - ISL1転写因子;PAX6 - ペアードボックス遺伝子6;PAX4 - ペアードボックス遺伝子4;NEUROG3 - ニューロゲニン3(NGN3);NKX2-2 - NKX2転写因子関連、遺伝子座2(NKX2.2);NKX6-1 - NKX6転写因子関連、遺伝子座1(NKX6.1);IPF1 - インスリンプロモータ因子1(PDX1);ONECUT1 - ワンカットドメイン、ファミリー成員1(HNF6);HLXB9 - ホメオボックスB9(HB9);TCF2 - 転写因子2、肝臓(HNF1b);FOXA1 - フォークヘッドボックスA1;HGF - 肝細胞増殖因子;IGF1 - インスリン様増殖因子1;POU5F1 - POUドメイン、5群、転写因子1(OCT4);NANOG - Nanogホメオボックス;SOX2 - SRY(性決定領域Y)-ボックス2;CDH1 - カドヘリン1、1型、E-カドヘリン(ECAD);T - ブラキュリホモログ(BRACH);FGF4 - 線維芽細胞増殖因子4;WNT3 - ウイングレス型MMTV組込部位ファミリー、成員3;SOX17 - SRY(性決定領域Y)-ボックス17;GSC - グースコイド;CER1 - (ケルベロス1、システインノットスーパーファミリー、ホモログ(CER);CXCR4 - ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体4;FGF17 - 線維芽細胞増殖因子17;FOXA2 - フォークヘッドボックスA2;SOX7 - SRY(性決定領域Y)-ボックス7;SOX1 - SRY(性決定領域Y)-ボックス1;AFP - α-フェトプロテイン;SPARC - 分泌タンパク質、酸性、システインリッチ(オステオネクチン);及びTHBD - トロンボモジュリン(TM)、NCAM - 神経細胞接着分子;SYP - シナプトフィジン;ZIC1 - Zicファミリー成員1;NEF3 - 神経フィラメント3(NFM);SST - ソマトスタチン;MAFA - v-maf筋腱膜繊維肉腫癌遺伝子ホモログA;MAFB - v-maf筋腱膜繊維肉腫癌遺伝子ホモログB;SYP - シナプトフィジン;CHGA - クロモグラニンA(副甲状腺分泌タンパク質1)。
【0419】
以下、本明細書中で使用され得る、非HUGO遺伝子シンボル及び他の省略表現に対応する完全な遺伝子名を示す:SS - ソマトスタチン(SOM);PP - 膵臓ポリペプチド;C-ペプチド - 結合ペプチド;Ex4 - エキセンジン4;NIC -
ニコチンアミド及びDAPT - N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル;RA - レチノイン酸;RPMI - ロズウェルパーク記念研究所(Roswell Park Memorial Institute)培地
;CMRL - コノート医学研究所(Connaught Medical Research Labs)培地;FB
S - ウシ胎児血清;NBP10 - NCAM結合タンパク質10;PTF1a -
膵臓特異的転写因子1a。
【0420】
線維芽細胞増殖因子7(FGF7)及びケラチノサイト増殖因子(keritinocyte growth factor)(KGF)という用語は同義語である。
【0421】
本明細書で用いられるように、「標識」という用語は、例えば当該技術分野で標準的に用いられる放射活性、蛍光、生物学的又は酵素的なタグ又は標識を表す。標識は、核酸、ポリペプチド、例えば抗体、又は小分子と接合又はそうでなければ結合することができる。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドは、ビオチン化dNTP又はrNTPに組み込むこと、又は幾つかの同様な手段(例えば、ビオチンのソラーレン誘導体をRNAと光架橋すること)、その後の標識化ストレプトアビジン(例えば、フィコエリトリン接合ストレプトアビジン)若しくは同等物の添加によって、合成の後に標識することができる。代替的に、蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを用いる場合、フルオレセイン、リサミン(lissamine)、フィコエリトリン(phycoerythirin)、ローダミン(Perkin Elmer Cetus)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、及びFluorX(Amersham)等を核酸に付着させることができる。抗体等のポリペプチドと接合し得る検出可能な標識の比限定的な例としては、放射性標識、例えば3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、76Br、86Y、99Tc、111In、123I、125I、又は177Lu、酵素、例えばホースラディシュペルオキシダーゼ、フルオロフェア、クロモフォア、化学発光剤、キレート複合体、染料、コロイド金又はラテックス粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0422】
ヒト胚性幹細胞
胚体内胚葉細胞、最終的には、内分泌前駆細胞及び/又は膵島ホルモン発現細胞を誘導させる好ましい方法は、ヒト胚性幹細胞を出発材料として利用する。このような多能性細胞は、桑実胚に由来する細胞、胚の内部細胞塊又は胚の生殖隆起から得られる細胞であり得る。ヒト胚性幹細胞は、当該技術分野において既知の方法を使用して、実質的な分化なしに多能性状態で培養物中で維持され得る。このような方法は、例えば、米国特許第5,453,357号、同第5,670,372号、同第5,690,926号、同第5,843,780号、同第6,200,806号及び同第6,251,671号(これらの開示内容全体が、参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0423】
幾つかのプロセスにおいて、hESCはフィーダー層上に維持される。このようなプロセスでは、hESCを多能性状態で維持させる任意のフィーダー層が使用され得る。ヒト胚性幹細胞の培養に一般的に使用される1つのフィーダー層は、マウス線維芽細胞の層である。つい最近になって、ヒト線維芽細胞フィーダー層が、hESCの培養で使用するために開発された(米国特許出願第2002/0072117号(この開示内容全体が、参照により本明細書中に援用される)を参照されたい)。代替的なプロセスは、フィーダー層を使用せずに多能性hESCの維持を可能にする。フィーダー層のない条件下で多能性hESCを維持する方法は、米国特許出願第2003/0175956号(この開示内容全体が、参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0424】
本明細書中で使用されるヒト胚性幹細胞は、血清を含有するか又は含有しないかのいずれかの培養物中に維持され得る。幾つかの胚性幹細胞維持手順では、血清代替物が使用される。他では、無血清培養技法、例えば米国特許出願第2003/0190748号(この開示内容全体が、参照により本明細書中に援用される)に記載されている技法が使用される。
【0425】
幹細胞は、胚体内胚葉、その後最終的に内分泌前駆細胞及び/又は膵島ホルモン発現細胞に分化することが要求されるまで、培養物中において多能性状態で定期的な継代培養により(by routine passage)維持される。
【0426】
胚体内胚葉の産生
幾つかのプロセスにおいて、胚体内胚葉への分化は、胚体内胚葉への分化を促進するのに十分な量で、TGFβスーパーファミリーの増殖因子を幹細胞培養物に供給することによって達成される。胚体内胚葉の産生に有用であるTGFβスーパーファミリーの増殖因子は、ノーダル/アクチビン又はBMPサブグループから選択される。幾つかの好ましい分化プロセスにおいて、増殖因子は、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びBMP4から成る群から選択される。また、増殖因子Wnt3a及び他のWntファミリー成員は、胚体内胚葉細胞の産生に有用である。或る特定の分化プロセスでは、上述の増殖因子のいずれかの組合せが使用され得る。
【0427】
多能性幹細胞の胚体内胚葉細胞への分化のためのプロセスの幾つかに関しては、幹細胞の少なくとも一部の胚体内胚葉細胞への分化を促進するのに十分な濃度で増殖因子が培養
物中に存在するように、上述の増殖因子が細胞に供給される。幾つかのプロセスにおいて、上述の増殖因子は、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約1000ng/ml、少なくとも約2000ng/ml、少なくとも約3000ng/ml、少なくとも約4000ng/ml、少なくとも約5000ng/ml又は約5000ng/mlより高い濃度で細胞培養物中に存在する。
【0428】
多能性幹細胞の胚体内胚葉細胞への分化のための或る特定のプロセスにおいて、上述の増殖因子は、それらの添加後、細胞培養物から除去される。例えば増殖因子は、それらの添加後、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、又は約10日以内に除去され得る。好ましいプロセスにおいて、増殖因子は、それらの添加後約4日で除去される。
【0429】
胚体内胚葉細胞の培養物は、低血清又は無血清の培地中で胚性幹細胞から産生され得る。或る特定の培養条件下、血清濃度は約0.05%(v/v)~約20%(v/v)の範囲であり得る。例えば、幾つかの分化プロセスにおいて、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、又は約20%(v/v)未満であり得る。幾つかのプロセスにおいて、胚体内胚葉細胞を、血清を用いずに、又は血清代替物を用いずに増殖させる。さらに他のプロセスにおいて、胚体内胚葉細胞はB27の存在下で増殖する。このようなプロセスにおいて、B27サプリメントの濃度は、約0.1%(v/v)~約20%(v/v)の範囲であり得る。他の実施形態において、胚体内胚葉細胞はB27の非存在下で増殖する。
【0430】
hESCからヒト胚体内胚葉細胞を分化する幾つかのプロセスにおいて、分化は血清の非存在下で、及びインスリン及び/又はインスリン様増殖因子の非存在下で開始される。分化中に、適切な細胞生存を促進させるために、血清濃度を徐々に増加させることができる。好ましい実施形態において、hESCの胚体内胚葉細胞への分化は、血清の非存在下で、及びインスリン又はインスリン様増殖因子を含む任意のサプリメントの非存在下で開始される。血清の非存在及びインスリン又はインスリン様増殖因子を含むサプリメントの非存在が約1日~約2日間維持され、その後分化の間に分化される細胞培養物に血清を徐々に添加する。好ましい実施形態において、血清濃度は、分化中には約2%を超えない。
【0431】
胚体内胚葉の細胞培養物及び細胞集団、並びに胚性幹細胞から胚体内胚葉を産生する詳細なプロセスは、米国特許出願第11/021,618号(表題「胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)」、2004年12月23日提出)(その開示内容全体が参照により本明
細書に援用される)でさらに記載される。
【0432】
胚体内胚葉の濃縮、単離及び/又は精製
本明細書に記載されたプロセスの幾つかの実施形態において、胚体内胚葉細胞は、さらなる分離の前に濃縮、単離及び/又は精製される。このような実施形態において、胚体内胚葉細胞は、任意の既知の方法を用いて濃縮、単離及び/又は精製することができる。好ましい実施形態において、胚体内胚葉細胞は、米国特許出願第11/021,618号(
表題「胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)」、2004年12月23日提出)及び米国
特許仮出願第60/736,598号(表題「胚体内胚葉のマーカー(MARKERS OF DEFINITIVE ENDODERM)」、2005年11月14日提出)(それらの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)で記載された1つ又は複数の方法を用いて濃縮、単離及び/又は精製される。
【0433】
胚体内胚葉細胞を含む組成物
前記の方法によって産生された細胞組成物には、胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物、及び胚体内胚葉細胞が濃縮された細胞集団が含まれる。例えば、胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団を産生することができ、細胞培養物及び/又は細胞集団における細胞の少なくとも約50%~99%が胚体内胚葉細胞である。分化プロセスの効率が、細胞増殖条件、増殖因子の濃度及び培養工程のタイミングを含む(が、これらに限定されない)或る特定のパラメータを変更することによって調節することができるので、本明細書に記載された分化手順によって、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%又は約99%超の多能性細胞が胚体内胚葉に変換され得る。胚体内胚葉細胞の単離が利用されるプロセスでは、例えばCXCR4受容体と結合する親和性試薬を用いることによって、実質的に純粋な胚体内胚葉細胞集団を回収することができる。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態において、細胞培養物又は細胞集団におけるヒトフィーダー細胞を考慮せずに、前記の割合が算出される。
【0434】
PDX1陽性前腸内胚葉の産生
胚体内胚葉細胞は、これらの細胞のさらなる分化によって膵臓分化へと特異化し、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を産生し得る。本明細書に記載された幾つかの分化プロセスでは、胚体内胚葉細胞を含む、細胞培養物及び濃縮又は精製された細胞集団は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む、細胞培養物及び/又は濃縮された細胞集団へのさらなる分化に用いることができる。
【0435】
典型的に、胚体内胚葉細胞は、レチノイド、例えばレチノイン酸(RA)を、SOX17陽性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物に供給することによって、PDX1陽性前腸内胚葉細胞に分化される。また、幾つかの分化プロセスでは、RA添加の前又はRAの添加とほぼ同時に、線維芽細胞増殖因子ファミリーの成員を培地中の胚体内胚葉細胞に供給する。好ましい線維芽細胞増殖因子はFGF-10である。別の好ましいプロセスでは、線維芽細胞増殖因子は任意の線維芽細胞増殖因子又は線維芽細胞増殖因子2受容体IIIb(FGFR2(IIIb))を刺激する、又はそうでなければそれと相互作用するリガンドを含む。さらにより好ましいプロセスでは、FGFファミリー増殖因子が、ヘッジホッグ経路阻害剤と併せて用いられる。好ましいヘッジホッグ経路阻害剤はKAAD-シクロパミンである。特に好ましい分化プロセスでは、FGF-10及び/又はKAAD-シクロパミンが、RAの存在下でPDX1陰性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物に供給される。或る特定のプロセスでは、BMP4は、RAの存在下でFGF-10及び/又はKAAD-シクロパミンと共に含まれ得る。幾つかのプロセスでは、レチノイドは、増殖因子のTGFβスーパーファミリーの成員、及び/又はコンノート医学研究所(Connaught Medical Research Labs)培地(CRML培地)(Invitrogen, Carlsbad, CA)と併せて用いら
れる。
【0436】
本明細書に記載された分化プロセスの幾つかの実施形態に関して、レチノイド及び/又は前記の分化因子の組合せは、これらの因子が少なくとも一部の胚体内胚葉の細胞培養物又は細胞集団のPDX1陽性前腸内胚葉細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団に存在するように、細胞に供給される。
【0437】
幾つかのプロセスにおいて、レチノイドは、少なくとも約1nM、少なくとも約0.01μM、少なくとも約0.02μM、少なくとも約0.04μM、少なくとも約0.08μM、少なくとも約0.1μM、少なくとも約0.2μM、少なくとも約0.3μM、少なくとも約0.4μM、少なくとも約0.5μM、少なくとも約0.6μM、少なくとも約0.7μM、少なくとも約0.8μM、少なくとも約0.9μM、少なくとも約1μM、少なくとも約1.1μM、少なくとも約1.2μM、少なくとも約1.3μM、少なくとも約1.4μM、少なくとも約1.5μM、少なくとも約1.6μM、少なくとも約1.7μM、少なくとも約1.8μM、少なくとも約1.9μM、少なくとも約2μM、少なくとも約2.1μM、少なくとも約2.2μM、少なくとも約2.3μM、少なくとも約2.4μM、少なくとも約2.5μM、少なくとも約2.6μM、少なくとも約2.7μM、少なくとも約2.8μM、少なくとも約2.9μM、少なくとも約3μM、少なくとも約3.5μM、少なくとも約4μM、少なくとも約4.5μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約30μM、少なくとも約40μM、又は少なくとも約50μMの濃度で存在するように、細胞培養物の細胞に供給される。
【0438】
他ののプロセスにおいて、FGF-10は、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約2 ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で存在するように、細胞培養物の細胞に供給される。他の実施形態において、単独で、又はFGF-10と共に使用する場合、KAAD-シクロパミンは、少なくとも約0.01μM、少なくとも約0.02μM、少なくとも約0.04μM、少なくとも約0.08μM、少なくとも約0.1μM、少なくとも約0.2μM、少なくとも約0.3μM、少なくとも約0.4μM、少なくとも約0.5μM、少なくとも約0.6μM、少なくとも約0.7μM、少なくとも約0.8μM、少なくとも約0.9μM、少なくとも約1μM、少なくとも約1.1μM、少なくとも約1.2μM、少なくとも約1.3μM、少なくとも約1.4μM、少なくとも約1.5μM、少なくとも約1.6μM、少なくとも約1.7μM、少なくとも約1.8μM、少なくとも約1.9μM、少なくとも約2μM、少なくとも約2.1μM、少なくとも約2.2μM、少なくとも約2.3μM、少なくとも約2.4μM、少なくとも約2.5μM、少なくとも約2.6μM、少なくとも約2.7μM、少なくとも約2.8μM、少なくとも約2.9μM、少なくとも約3μM、少なくとも約3.5μM、少なくとも約4μM、少なくとも約4.5μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約30μM、少なくとも約40μM、又は少なくとも約50μMの濃度で供給され得る。本発明の幾つかの実施形態において、線維芽細胞増殖因子、又は線維芽細胞増殖因子2受容体IIIb(FGFR2(IIIb))を刺激するか、又はそうでなければそれと相互作用するリガンドは、単独又はヘッジホッグ経路阻害剤との併用のいずれかで供給される。
【0439】
胚体内胚葉細胞からPDX1陽性前腸内胚葉細胞を産生する好ましいプロセスでは、2μMのRAの存在下でCMRL培地において、50ng/mlのFGF-10及び0.2μMのKAAD-シクロパミンを胚体内胚葉細胞の細胞培養物又は濃縮された細胞集団に供給する。
【0440】
本明細書中に記載される幾つかのプロセスにおいて、アクチビンA及び/又はアクチビンBは、レチノイド及び/又は線維芽細胞増殖因子並びにヘッジホッグ阻害剤と共に、細胞培養物に供給される。例えば、このようなプロセスにおいて、アクチビンA及び/又はアクチビンBは、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも
約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物に供給される。
【0441】
幾つかのプロセスにおいて、分化因子及び/又はCRML培地は、hESCからの分化の開始後、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、又は約日超で、胚体内胚葉細胞に供給される。好ましいプロセスにおいて、分化因子及び/又はCRML培地は、hESCからの分化の開始後約5日目に胚体内胚葉細胞に供給される。
【0442】
本明細書中に記載される或る特定のプロセスにおいて、上述の分化因子は、それらの添加後に細胞培養物から除去される。例えば、上述の分化因子は、それらの添加後、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、又は約10日以内に除去され得る。
【0443】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞の培養物は、低血清又は無血清の培地中で分化し、さらに増殖し得る。血清濃度は、約0.05%(v/v)~約20%(v/v)の範囲であり得る。幾つかのプロセスにおいて、背側PDX1陽性前腸内胚葉細胞は血清代替物で増殖する。例えば、或る特定のプロセスにおいて、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、又は約20%(v/v)未満であり得る。本明細書中に記載される或る特定のプロセスにおいて、分化培地は、血清、血清代替物、又はインスリン若しくはインスリン様増殖因子を含む任意のサプリメントを含まない。
【0444】
或る特定のプロセスにおいて、PDX1陽性前腸内胚葉細胞はB27の存在下で増殖する。このような分化プロセスにおいて、B27は、約0.1%(v/v)~約20%(v/v)の範囲の濃度で、又は約20%(v/v)を超える濃度で、培養培地に供給され得る。或る特定のプロセスにおいて、培地中のB27の濃度は、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.7%(v/v)、約0.8%(v/v)、約0.9%(v/v)、約1%(v/v)、約2%(v/v)、約3%(v/v)、約4%(v/v)、約5%(v/v)、約6%(v/v)、約7%(v/v)、約8%(v/v)、約9%(v/v)、約10%(v/v)、約15%(v/v)、又は約20%(v/v)である。代替的には、B27サプリメントの添加濃度は、市販されているB27原液の濃度の倍数で測定され得る。例えば、B27は50×原液としてInvitrogen(Carlsbad, CA)から入手可能である。この原液を十分量、十分な容量の増殖培地に添加することで、所望量のB27を補充した培地が得られる。例えば、50×B27原液10mlを増殖培地90mlに加えることで、5×B27を補充した増殖培地が得られる。培地中のB27サプリメントの濃度は、約0.1×、約0.2×、約0.3×、約0.4×、約0.5×、約0.6×、約0.7×、約0.8×、約0.9×、約1×、約1.1×、約1.2×、約1.3×、約1.4×、約1.5×、約1.6×、約1.7×、約1.8×、約1.9×、約2×、約2.5×、約3×、約3.5×、約4×、約4.5×、約5×、約6×、約7×、約8×、約9×、約10×、約11×、約12×、約13×、約14×、約15×、約16×、約17×、約18×、約19×、約20×、及び約20×超であり得る。
【0445】
胚体内胚葉細胞からPDX1陽性前腸内胚葉細胞を分化する幾つかのプロセスにおいて、米国特許仮出願第60/730,917号(表題「PDX1を発現する腹側及び背側の前腸内胚葉(PDX1-EXPRESSING DORSAL AND VENTRAL FOREGUT ENDODERM)」、2005年10月27日提出)(その開示内容全体が参照により本明細書に援用される)に記載されたように、腹側膵芽又は背側膵芽のいずれかへさらなる分化が向かうように、胚体内胚葉細胞が分化される。PDX1陽性前腸内胚葉細胞を産生するさらに詳細な方法は、米国特許出願第11/115,868号(表題「PDX1発現内胚葉(PDX1 EXPRESSING ENDODERM)」、2005年4月26日提出)(その開示内容全体が参照により本明細書に援用される)で見出すことができる。
【0446】
PDX1陽性前腸内胚葉の濃縮、単離及び/又は精製
本明細書に記載されたプロセスの幾つかの実施形態において、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、さらなる分離の前に濃縮、単離及び/又は精製される。このような実施形態において、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、任意の既知の方法を用いて濃縮、単離及び/又は精製することができる。好ましい実施形態において、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、米国特許出願第11/115,868号(表題「PDX1発現内胚葉(PDX1 EXPRESSING ENDODERM)」、2005年4月26日提出)及び米国特許仮出願第60/730,917号(表題「PDX1を発現する腹側及び背側の前腸内胚葉(PDX1-EXPRESSING DORSAL AND VENTRAL FOREGUT ENDODERM)」、2005年10月27日提出)(それらの開示内容全体
が参照により本明細書に援用される)で記載された1つ又は複数の方法を用いて濃縮、単離及び/又は精製される。
【0447】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む組成物
前記の方法によって生成された細胞組成物には、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物、及びPDX1陽性前腸内胚葉細胞が濃縮された細胞集団が含まれる。例えば、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団を産生することができ、細胞培養物及び/又は細胞集団における細胞の少なくとも約50%~99%がPDX1陽性前腸内胚葉細胞である。分化プロセスの効率が、細胞増殖条件、増殖因子の濃度及び培養工程のタイミングを含む(が、これらに限定されない)或る特定のパラメータを変更することによって調節することができるので、本明細書に記載された分化手順によって、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%又は約99%超の多能性細胞がPDX1陽性前腸内胚葉に変換され得る。PDX1陽性前腸内胚葉細胞の単離が利用されるプロセスでは、実質的に純粋なPDX1陽性前腸内胚葉細胞集団を回収することができる。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態において、細胞培養物又は細胞集団におけるヒトフィーダー細胞を考慮せずに、前記の割合が算出される。
【0448】
内分泌前駆細胞の産生
本発明の幾つかの実施形態は、hESCから始まる内分泌前駆細胞の産生方法に関する。前記のように、内分泌前駆細胞は、初めにhESCを分化して、胚体内胚葉細胞を産生した後に、さらに胚体内胚葉細胞を分化して、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を産生することによって産生することができる。このような実施形態において、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、複能性の内分泌前駆細胞にさらに分化し、これはヒト膵島ホルモン発現細胞に分化することができる。
【0449】
本発明の一実施形態において、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、内分泌前駆細胞を産生するのに十分な時間、レチノイド、例えばレチノイン酸の存在下でPDX1陽性前腸内胚葉細胞のインキュベートを継続することによって、内分泌前駆細胞に分化される。幾つか
の実施形態において、内分泌前駆細胞を産生するのに十分な時間は、細胞培養物中の一部の細胞におけるPDX1マーカーの発現後、約1時間~約10日の範囲である。幾つかの実施形態において、レチノイドは、細胞培養中の細胞の一部におけるPDX1マーカーの発現後、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約16時間、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、又は約10日超、細胞培養物中に維持される。
【0450】
本明細書中に記載される幾つかのプロセスにおいて、細胞培養物又は細胞集団中のPDX1陽性前腸内胚葉細胞を、内分泌前駆細胞へ分化させるのに使用されるレチノイド濃度は、約1nM~約100μMの範囲である。幾つかのプロセスにおいて、レチノイドは、少なくとも約1nM、少なくとも約0.01μM、少なくとも約0.02μM、少なくとも約0.04μM、少なくとも約0.08μM、少なくとも約0.1μM、少なくとも約0.2μM、少なくとも約0.3μM、少なくとも約0.4μM、少なくとも約0.5μM、少なくとも約0.6μM、少なくとも約0.7μM、少なくとも約0.8μM、少なくとも約0.9μM、少なくとも約1μM、少なくとも約1.1μM、少なくとも約1.2μM、少なくとも約1.3μM、少なくとも約1.4μM、少なくとも約1.5μM、少なくとも約1.6μM、少なくとも約1.7μM、少なくとも約1.8μM、少なくとも約1.9μM、少なくとも約2μM、少なくとも約2.1μM、少なくとも約2.2μM、少なくとも約2.3μM、少なくとも約2.4μM、少なくとも約2.5μM、少なくとも約2.6μM、少なくとも約2.7μM、少なくとも約2.8μM、少なくとも約2.9μM、少なくとも約3μM、少なくとも約3.5μM、少なくとも約4μM、少なくとも約4.5μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約30μM、少なくとも約40μM、少なくとも約50μM、少なくとも約75μM、又は少なくとも約100μMの濃度で存在するように細胞培養物の細胞に供給される。
【0451】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、PDX1陽性前腸内胚葉細胞からの膵臓内分泌前駆細胞への分化は、γ-セクレターゼ阻害剤を、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団に供給することによって媒介される。好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル(Diflurophenacetyl)-L-アラニル)]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)である。
【0452】
本発明の他の実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、分化プロセスの開始時に、例えばhESC段階で供給され、膵島ホルモン発現細胞への分化の間、細胞培養物中に残存する。さらに別の実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、分化開始の後ではあるが、PDX1陽性前腸内胚葉段階への分化の前に添加される。好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、胚体内胚葉のPDX1陽性内胚葉への変換を促進する分化因子が供給されるのとほぼ同時に、細胞培養物又は細胞集団に供給される。他の好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団中の大部分の細胞がPDX1陽性前腸内胚葉細胞に分化した後に、γ-セクレターゼ阻害剤が細胞培養物又は細胞集団に供給される。
【0453】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞の内分泌前駆細胞への分化における幾つかの実施形態に関して、γ-セクレターゼ阻害剤は、少なくとも一部のPDX1陽性細胞の内分泌前駆細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団に存在するように、細胞に供給される。幾つかの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、約0.01μM~約1000μMの範囲の濃度で細胞培養物又は細胞集団に存在する。好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、約0.1μM~約100μMの範囲の濃度で細胞培養物又は細胞集団に存在する。より好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤
は、約1μM~約10μMの範囲の濃度で細胞培養物又は細胞集団に存在する。他の実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、少なくとも約0.01μM、少なくとも約0.02μM、少なくとも約0.04μM、少なくとも約0.08μM、少なくとも約0.1μM、少なくとも約0.2μM、少なくとも約0.3μM、少なくとも約0.4μM、少なくとも約0.5μM、少なくとも約0.6μM、少なくとも約0.7μM、少なくとも約0.8μM、少なくとも約0.9μM、少なくとも約1μM、少なくとも約1.1μM、少なくとも約1.2μM、少なくとも約1.3μM、少なくとも約1.4μM、少なくとも約1.5μM、少なくとも約1.6μM、少なくとも約1.7μM、少なくとも約1.8μM、少なくとも約1.9μM、少なくとも約2μM、少なくとも約2.1μM、少なくとも約2.2μM、少なくとも約2.3μM、少なくとも約2.4μM、少なくとも約2.5μM、少なくとも約2.6μM、少なくとも約2.7μM、少なくとも約2.8μM、少なくとも約2.9μM、少なくとも約3μM、少なくとも約3.5μM、少なくとも約4μM、少なくとも約4.5μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約30μM、少なくとも約40μM、少なくとも約50μM、少なくとも約60μM、少なくとも約70μM、少なくとも約80μM、少なくとも約90μM、少なくとも約100μM、少なくとも約250μM、少なくとも約500μM、少なくとも約750μM、又は少なくとも約1000μMの濃度で細胞培養物又は細胞集団に存在する。
【0454】
本明細書中に記載される内分泌前駆細胞を産生するプロセスの或る特定の実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、予め供給された1つ又は複数の分化因子が細胞培養物から除去された後に供給される。例えば、予め供給された1つ又は複数の分化因子は、γ-セクレターゼ阻害剤添加の、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、又は約10日より前に除去され得る。他の実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、予め供給されていたか又はγ-セクレターゼ阻害剤とほぼ同時に供給された1つ又は複数の分化因子を含む細胞培養物又は細胞集団に供給される。好ましい実施形態において、予め供給されていたか又はγ-セクレターゼ阻害剤とほぼ同時に供給された分化因子としては、FGF-10、KAAD-シクロパミン、アクチビンA、アクチビンB、BMP4及び/又はRAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0455】
本明細書に記載された本発明の幾つかの実施形態において、エキセンジン4は、γ-セクレターゼ阻害剤とほぼ同時に、分化される細胞培養物又は細胞集団に供給される。或る特定の実施形態において、エキセンジン4は、少なくとも約0.1ng/ml、少なくとも約0.2ng/ml、少なくとも約0.3ng/ml、少なくとも約0.4ng/ml、少なくとも約0.5ng/ml、少なくとも約0.6ng/ml、少なくとも約0.7ng/ml、少なくとも約0.8ng/ml、少なくとも約0.9ng/ml、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約15ng/ml、少なくとも約20ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約30ng/ml、少なくとも約35ng/ml、少なくとも約40ng/ml、少なくとも約45ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約55ng/ml、少なくとも約60ng/ml、少なくとも約65ng/ml、少なくとも約70ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約80ng/ml、少なくとも約85ng/ml、少なくとも約90ng/ml、少なくとも約95ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約150ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約250ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約350ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約450ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約550ng/ml、少なくとも約600ng/ml、少なくとも約650ng/ml、少なくとも約700ng/ml、少なくとも約750ng/ml、少なくとも約800ng/ml、少なくとも約850ng/ml、少なくとも約900ng/ml、少なくとも約950ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物又は細胞集団に存在するように供給される。
【0456】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞から内分泌前駆細胞を産生する好ましいプロセスにおいて、PDX1陽性前腸内胚葉細胞の細胞培養物又は細胞集団に3μMのDAPT及び40ng/mlのエキセンジン4を供給する。特に好ましい実施形態において、細胞はCMRLで分化する。PDX1陽性前腸内胚葉細胞から内分泌前駆細胞を産生する、別の特に好ましいプロセスでは、2μMのRAの存在下でPDX1陽性前腸内胚葉細胞の細胞培養物又は細胞集団に3μMのDAPT及び40ng/mlのエキセンジン4を供給する。
【0457】
本明細書に記載されるように、内分泌前駆細胞を産生する或る特定のプロセスにおいて、前記の分化因子が、それらの添加後に細胞培養物又は細胞集団から除去される。例えば、γ-セクレターゼ阻害剤及び/又はエキセンジン4は、それらの添加後、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日又は約10日以内に除去することができる。幾つかの実施形態において、分化因子は細胞培養物から除去されない。
【0458】
内分泌前駆細胞の培養物は、低血清又は無血清の培地中で産生され得る。或る特定の培養条件下、血清濃度は、約0.05%(v/v)~約20%(v/v)の範囲であり得る。例えば、幾つかの分化プロセスにおいて、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、又は約20%(v/v)未満であり得る。幾つかのプロセスにおいて、内分泌前駆細胞を、血清を用いずに、血清代替物を用いずに、且つ/又はインスリン若しくはインスリン様増殖因子を含有する任意のサプリメントを用いずに増殖させる。さらに他のプロセスにおいて、内分泌前駆細胞はB27の存在下で増殖する。このようなプロセスにおいて、B27サプリメントの濃度は、約0.1%(v/v)~約20%(v/v)の範囲であり得る。他の実施形態において、内分泌前駆細胞はB27の非存在下で増殖する。
【0459】
PDX1陽性細胞の内分泌前駆細胞への分化のモニタリング
PDX1陽性内胚葉細胞の内分泌前駆細胞への発達は、内分泌前駆細胞に特有のマーカーの発現を求めることによってモニタリングすることができる。幾つかのプロセスでは、或る特定のマーカーの発現は、マーカーの有無を検出することによって求められる。代替的に、或る特定のマーカーの発現は、細胞培養物又は細胞集団の細胞に存在するマーカーのレベルを測定することによって求めることができる。このようなプロセスでは、マーカー発現の測定は定性的であっても定量的であってもよい。マーカー遺伝子によって作製されるマーカーの発現を定量する1つの方法は、定量的PCR(Q-PCR)を利用するものである。Q-PCRを行う方法は当該技術分野で既知である。当該技術分野で既知の他の方法を用いても、マーカー遺伝子の発現を定量することができる。例えば、マーカー遺伝子産物の発現は、対象のマーカー遺伝子産物に特異的な抗体を用いることによって検出することができる。或る特定のプロセスでは、内分泌前駆細胞に特有のマーカー遺伝子の発現、並びにhESC、胚体内胚葉、PDX1陽性前腸内胚葉、胚体外内胚葉、中胚葉、外肺葉、未熟膵島ホルモン発現細胞又は成熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は他の細胞型に特有のマーカー遺伝子の有意な発現の欠失が求められる。
【0460】
下記の実施例でさらに記載されるように、内分泌前駆細胞の信頼できるマーカーはNG
N3遺伝子である。このように、本明細書で記載されるプロセスで産生される内分泌前駆細胞はNGN3マーカー遺伝子を発現することによって、NGN3遺伝子産物が産生される。内分泌前駆細胞の他のマーカーはNKX2.2及びPAX4である。
【0461】
幾つかのプロセスにおいて、hESC、胚体内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性前腸内胚葉細胞を示す遺伝子の発現もモニタリングされる。例えば、幾つかのプロセスでは、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、及びNFMの発現がモニタリングされる。幾つかのプロセスでは、未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞を示す遺伝子の発現もモニタリングされる。例えば、幾つかの実施形態において、MAFB、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL、及びPAX6の発現がモニタリングされる。
【0462】
NGN3、NKX2.2及び/又はPAX4マーカーの発現が、分化条件によって内分泌前駆細胞において様々なレベルの範囲にわたって誘導されることが理解される。このように、本明細書に記載される幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞又は細胞集団におけるNGN3、NKX2.2及び/又はPAX4マーカーの発現は、非内分泌前駆細胞又は細胞集団、例えば多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、未熟膵島ホルモン発現細胞、成熟膵島ホルモン発現細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外肺葉細胞におけるNGN3、NKX2.2及び/又はPAX4マーカーの発現の少なくとも約2倍~少なくとも約10000倍である。他の実施形態において、内分泌前駆細胞又は細胞集団におけるNGN3、NKX2.2及び/又はPAX4マーカーの発現は、非内分泌前駆細胞又は細胞集団(例えば、多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、未熟膵島ホルモン発現細胞、成熟膵島ホルモン発現細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外胚葉細胞)におけるNGN3、NKX2.2及び/又はPAX4マーカーの発現よりも少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約40倍、少なくとも約80倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約2500倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約7500倍、又は少なくとも約10000倍高い。幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞又は細胞集団におけるNGN3、NKX2.2及び/又はPAX4マーカーの発現は、非内分泌前駆細胞又は細胞集団、例えば多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、未熟膵島ホルモン発現細胞、成熟膵島ホルモン発現細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外肺葉細胞におけるNGN3、NKX2.2及び/又はPAX4マーカーの発現よりもはるかに高い。
【0463】
内分泌前駆細胞の濃縮、単離及び/又は精製
本発明のさらなる態様に関して、内分泌前駆細胞は濃縮、単離及び/又は精製することができる。本発明の幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞に対して濃縮、単離及び/又は精製した細胞集団は、このような細胞を細胞培養物から単離することによって産生される。
【0464】
本明細書に記載されるプロセスのいずれかで産生された内分泌前駆細胞は、このような細胞に特異的な親和性タグを用いることによって、濃縮、単離及び/又は精製することができる。内分泌前駆細胞に特異的な親和性タグの例は、内分泌前駆細胞の細胞表面上に存在するが、本明細書に記載される方法によって産生された細胞培養物で見出される他の細胞型には実質的に存在していない、抗体、抗体断片、リガンド、又はマーカー分子、例えばポリペプチドに特異的な他の結合剤である。幾つかのプロセスでは、内分泌前駆細胞の濃縮、単離又は精製のために、NCAMと結合する抗体を親和性タグとして用いる。他のプロセスでは、NCAMリガンドNBP10、又は現在知られているか若しくは将来発見
される任意の他のNCAMリガンドも、親和性タグとして用いることができる。例えばRonn, L.(2002)Eur J Neurosci., 16:1720-30(その開示内容全体が参照により本明細書に援用される)を参照されたい。このような分子としては、NBP10融合物及びNBP10模倣物が挙げられる。
【0465】
抗体を作製し、それを細胞単離に用いる方法は、当該技術分野で既知であり、このような方法は、本明細書に記載される抗体及び内分泌前駆細胞と共に用いるために行うことができる。1つのプロセスでは、NCAMと結合する抗体は、電磁ビーズに付着した後、細胞間及び基質の接着を低減するように酵素的に処理された細胞培養物において内分泌前駆細胞と結合される。それから、細胞/抗体/ビースの複合体は、ビーズ結合内分泌前駆細胞を非結合細胞から単離するのに用いられる移動性の磁界(movable magnetic field)に曝される。内分泌前駆細胞が培養物中で他の細胞から物理的に単離されると、抗体結合が破壊され、細胞が適切な組織培養培地に再び平板培養される。必要に応じて、単離細胞組成物は、代替的な親和性に基づいた方法によって、又は内分泌前駆細胞に特異的な同一の若しくは異なるマーカーを用いたさらなる一連の濃縮によってさらに精製することができる。
【0466】
濃縮、単離又は精製された内分泌前駆細胞培養物又は内分泌前駆細胞集団を得るさらなる方法も使用され得る。例えば、幾つかの実施形態において、NCAM抗体を、細胞間及び基質の接着を低減させるように処理した内分泌前駆細胞含有細胞培養物とインキュベートする。(本発明者らは二次抗体を使用しない。NCAM抗体は、PE、APC、又はFITCのいずれかと直接結合する。)次に、細胞を洗浄し、遠心分離し、再懸濁させる。次に、細胞懸濁液を、一次抗体と結合することが可能な、FITC結合抗体等の二次抗体とインキュベートする。次に、細胞を洗浄し、遠心分離し、緩衝液中で再懸濁させる。次に、蛍光活性化細胞選別器(FACS)を使用して、細胞懸濁液を分析し、選別する。NCAM陽性細胞を、NCAM陰性細胞と別個に回収することにより、このような細胞型が単離される。必要に応じて、代替的な親和性に基づいた方法を使用することによって、又は内分泌前駆細胞に特異的な同一の若しくは異なるマーカーを使用するさらなる一連の選別によって、単離した細胞組成物をさらに精製し得る。代替的には、内分泌前駆細胞以外の細胞集団中のほとんどの細胞上に存在するマーカーを陰性選別することによって、単離した細胞組成物をさらに精製し得る。
【0467】
さらに別のプロセスにおいて、内分泌前駆細胞は、リガンド又はNCAMと結合する他の分子を用いて濃縮、単離及び/又は精製される。幾つかのプロセスでは、この分子はNBP10若しくはその断片、その融合物、又はその模倣物である。
【0468】
本明細書に記載されるプロセスの幾つかの実施形態において、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸、又は発現性の蛍光マーカー遺伝子(例えば、黄色蛍光タンパク質(YFP)又はルシフェラーゼ等)をコードする別の核酸を用いて、NCAM陽性細胞を標識する。例えば、幾つかの実施形態において、GFP遺伝子産物又はその生物学的に活性な断片の発現がNCAMプロモータ、NGN3プロモータ、又はPAX4プロモータの制御下にあるように、NCAMプロモータ、NGN3プロモータ、PAX4プロモータ、又は任意の内分泌前駆細胞に特異的な遺伝子のプロモータの下流にある、GFPをコードする核酸又はその生物学的に活性な断片の少なくとも1つのコピーを多能性細胞、好ましくはヒト胚性幹細胞に導入する。幾つかの実施形態において、NCAM、NGN3、又はPAX4をコードする、核酸の全コード領域は、GFPをコードする核酸又はその生物学的に活性な断片に置き換えられる。他の実施形態において、GFPをコードする核酸又はその生物学的に活性な断片は、NCAM、NGN3、又はPAX4をコードする核酸の少なくとも一部にフレーム単位で(in frame)融合され、それによって融合タンパク質が生成される。このような実施形態において、融合タンパク質は、GFPと同程度の蛍光活性を維持する。
【0469】
蛍光標識細胞、例えば前記の多能性細胞は、本明細書で記載されるように、内分泌前駆細胞に分化する。内分泌前駆細胞が蛍光マーカー遺伝子を発現するのに対し、他の細胞型は発現しないので、内分泌前駆細胞を他の細胞型から単離することができる。幾つかの実施形態において、蛍光標識された内分泌前駆細胞と標識されない非内分泌前駆細胞との混合物を含む細胞懸濁液はFACSを用いて選別される。内分泌前駆細胞は非蛍光細胞から別々に回収され、それによって内分泌前駆体が単離される。必要に応じて、単離細胞組成物は、内分泌前駆細胞に特異的な同一の若しくは異なるマーカーを用いたさらなる一連の選別によってさらに精製することができる。
【0470】
好ましいプロセスにおいて、内胚葉細胞培養物が内分泌前駆系統に分化するように誘導された後に、内分泌前駆細胞は他の非内分泌前駆細胞から濃縮、単離及び/又は精製される。前記の濃縮、単離及び精製手順は、任意の分化段階でのこのような培養物で用いることができる。
【0471】
前記の手順に加えて、内分泌前駆細胞は、細胞単離の他の技法によっても単離することができる。さらに、内分泌前駆細胞は、内分泌前駆細胞の選択的生存又は選択的増殖を促進する増殖条件下での連続継代培養法によっても濃縮又は単離され得る。
【0472】
本明細書に記載される方法を用いて、内分泌前駆細胞及び/又は組織の濃縮、単離及び/又は精製された集団を、in vitroで、少なくとも何回か分化した、多能性細胞培養物又は細胞集団、例えば幹細胞培養物又は集団から産生することができる。幾つかの方法では、細胞は無作為で分化する。しかし、好ましい方法では、細胞は主として内分泌前駆細胞に分化することに向けられる。幾つかの好ましい濃縮、単離及び/又は精製方法は、ヒト胚性幹細胞からの内分泌前駆細胞のin vitro産生に関する。
【0473】
本明細書中に記載される方法を使用して、細胞集団又は細胞培養物は、未処理の細胞集団又は細胞培養物に比べて、内分泌前駆細胞含量が少なくとも約2倍~約1000倍に濃縮され得る。幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物に比べて、少なくとも約5倍~約500倍に濃縮され得る。他の実施形態において、内分泌前駆細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物に比べて、少なくとも約10倍~約200倍に濃縮され得る。さらに他の実施形態において、内分泌前駆細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物に比べて、少なくとも約20倍~約100倍に濃縮され得る。さらに他の実施形態において、内分泌前駆細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物に比べて、少なくとも約40倍~約80倍に濃縮され得る。或る特定の実施形態において、内分泌前駆細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物に比べて、少なくとも約2倍~約20倍に濃縮され得る。
【0474】
内分泌前駆細胞を含む組成物
本発明の幾つかの実施形態は、内分泌前駆細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の細胞組成物に関し、この内分泌前駆細胞は、内分泌系の細胞、例えば膵島ホルモン発現細胞に分化することができる多能性細胞である。或る特定の実施形態によれば、内分泌前駆細胞は哺乳類細胞であり、好ましい実施形態において、このような細胞はヒト細胞である。
【0475】
本発明の他の実施形態は、内分泌前駆細胞及び内分泌前駆細胞よりも明確に分化しない細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。このような実施形態において、内分泌前駆細胞よりも明確に分化していない細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。
【0476】
他の実施形態は、内分泌前駆細胞、並びに未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞等、内分泌前駆細胞よりも明確に分化する細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。このような実施形態において、内分泌前駆細胞よりも明確に分化する細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。
【0477】
本発明の或る特定の他の実施形態は、内分泌前駆細胞、並びにhESC、前原始線条細胞、内胚葉系中胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陰性前腸内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞(PDX1陽性膵臓内胚葉細胞)、及び中胚葉細胞から成る群から選択される1つ又は複数の細胞型の細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。幾つかの実施形態において、hESCは、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。或る実施形態において、前原始線条細胞は、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。他の実施形態において、内胚葉系中胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。さらに他の実施形態において、胚体内胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。さらに他の実施形態において、PDX1陰性前腸内胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。或る特定の実施形態において、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。さらに他の実施形態において、中胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。
【0478】
本発明の或る特定の他の実施形態は、内分泌前駆細胞、並びに未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞から成る群から選択される1つ又は複数の細胞型の細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約1
5%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。或る特定の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満又は約1%未満である。
【0479】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中に記載されるプロセスによって産生され、且つ主要(majority)細胞型として内分泌前駆細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。幾つかの実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスは、内分泌前駆細胞を少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、少なくとも約90%、少なくとも約89%、少なくとも約88%、少なくとも約87%、少なくとも約86%、少なくとも約85%、少なくとも約84%、少なくとも約83%、少なくとも約82%、少なくとも約81%、少なくとも約80%、少なくとも約79%、少なくとも約78%、少なくとも約77%、少なくとも約76%、少なくとも約75%、少なくとも約74%、少なくとも約73%、少なくとも約72%、少なくとも約71%、少なくとも約70%、少なくとも約69%、少なくとも約68%、少なくとも約67%、少なくとも約66%、少なくとも約65%、少なくとも約64%、少なくとも約63%、少なくとも約62%、少なくとも約61%、少なくとも約60%、少なくとも約59%、少なくとも約58%、少なくとも約57%、少なくとも約56%、少なくとも約55%、少なくとも約54%、少なくとも約53%、少なくとも約52%、少なくとも約51%、又は少なくとも約50%含む細胞培養物及び/又は細胞集団を産生する。好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団の細胞はヒト細胞を含む。他の実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスは、内分泌前駆細胞を少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なくとも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%、又は少なくとも約1%含む細胞培養物及び/又は細胞集団を産生する。好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団の細胞はヒト細胞を含む。幾つかの実施形態において、細胞培養物又は細胞集団中の内分泌前駆細胞の割合は、培養物中に残存するフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0480】
本発明のさらに他の実施形態は、内分泌前駆細胞とPDX1陽性前腸内胚葉細胞との混合物を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。例えば、約95個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約5個の内分泌前駆細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団が産生され得る。他の実施形態において、約5個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約95個の内分泌前駆細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団が産生され得る。さらに、内分泌前駆細胞とPDX1陽性前腸内胚葉細胞とを他の比率で含む、細胞培養物又は細胞集団が考慮される。例えば、約1000000個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約100000個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約10000個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約1000個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約500個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約100個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約10個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約5個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約4個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前
駆細胞、約2個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約2個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約4個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約5個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約10個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約20個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約50個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約100個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1000個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約10000個の内分泌前駆細胞、約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約100000個の内分泌前駆細胞、及び約1個のPDX1陽性前腸内胚葉細胞毎に少なくとも約1000000個の内分泌前駆細胞を含む組成物が考慮される。
【0481】
本発明のさらに他の実施形態は、内分泌前駆細胞と、未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞との混合物を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。例えば、約95個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約5個の内分泌前駆細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団が産生され得る。他の実施形態において、約5個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約95個の内分泌前駆細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団が産生され得る。さらに、内分泌前駆細胞と未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞とを他の比率で含む、細胞培養物又は細胞集団が考慮される。例えば、約1000000個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約100000個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約10000個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約1000個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約100個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約10個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約5個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約4個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約2個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約2個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約4個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約5個の内分泌前駆細胞、約個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約10個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約20個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約50個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約100個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1000個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約10000個の内分泌前駆細胞、約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約100000個の内分泌前駆細胞、並びに約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1000000個の内分泌前駆細胞を含む組成物が考慮される。
【0482】
本発明の幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞が産生されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞は、ヒト多能性細胞、例えばヒト多能性幹細胞から誘導される。或る特定の実施形態において、ヒト多能性細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊、又は胚の生殖隆起から誘導される。或る特定の他の実施形態において、ヒト多能性細胞は、胚形成期後に発生した、多細胞構造を有する生殖腺組織又は胚組織から誘導される。
【0483】
本発明のさらなる実施形態は、ヒト細胞(例えば、ヒト内分泌前駆細胞)を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物であって、NGN3マーカーの発現が、ヒト細胞の少なくとも約2%で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL及び/又はPAX6マーカーの発現よりも大きい、組成物に関する。他の実施形態において、NGN3マーカーの発現は、ヒト細胞の少なくとも約5%で、ヒト細胞の少なくとも約10%で、ヒト細胞の少なくとも約15%で、ヒト細胞の少なくとも約20%で、ヒト細胞の少なくとも約25%で、ヒト細胞の少なくとも約30%で、ヒト細胞の少なくとも約35%で、ヒト細胞の少なくとも約40%で、ヒト細胞の少なくとも約45%で、ヒト細胞の少なくとも約50%で、ヒト細胞の少なくとも約55%で、ヒト細胞の少なくとも約60%で、ヒト細胞の少なくとも約65%で、ヒト細胞の少なくとも約70%で、ヒト細胞の少なくとも約75%で、ヒト細胞の少なくとも約80%で、ヒト細胞の少なくとも約85%で、ヒト細胞の少なくとも約90%で、ヒト細胞の少なくとも約95%で、又はヒト細胞の少なくとも約98%で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL及び/又はPAX6マーカーの発現よりも大きい。幾つかの実施形態において、NGN3の発現が、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL及び/又はPAX6マーカーの発現よりも大きい、細胞培養物又は細胞集団中のヒト細胞の割合は、フィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0484】
本発明の幾つかの実施形態は、ヒト内分泌前駆細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物であって、NKX2.2及びPAX4の発現が、ヒト細胞の少なくとも約2%~約98%超で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL及び/又はPAX6マーカーの発現よりも大きい、組成物に関すると理解される。幾つかの実施形態において、NKX2.2及び/又はPAX4の発現は、ヒト細胞の少なくとも約5%で、ヒト細胞の少なくとも約10%で、ヒト細胞の少なくとも約15%で、ヒト細胞の少なくとも約20%で、ヒト細胞の少なくとも約25%で、ヒト細胞の少なくとも約30%で、ヒト細胞の少なくとも約35%で、ヒト細胞の少なくとも約40%で、ヒト細胞の少なくとも約45%で、ヒト細胞の少なくとも約50%で、ヒト細胞の少なくとも約55%で、ヒト細胞の少なくとも約60%で、ヒト細胞の少なくとも約65%で、ヒト細胞の少なくとも約70%で、ヒト細胞の少なくとも約75%で、ヒト細胞の少なくとも約80%で、ヒト細胞の少なくとも約85%で、ヒト細胞の少なくとも約90%で、ヒト細胞の少なくとも約95%で、又はヒト細胞の少なくとも約98%で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL及び/又はPAX6マーカーの発現よりも大きい。幾つかの実施形態において、NKX2.2及び/又はPAX4の発現が、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL及び/又はPAX6マーカーの発現よりも大きい、細胞培養物又は細胞集団中のヒト細胞の割合は、フィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0485】
本発明のさらなる実施形態は、in vitroで胚体内胚葉から分化した哺乳動物細胞、例えばin vitroで胚体内胚葉から分化したヒト細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物であって、NGN3、NKX2.2及び/又はPAX4マーカーの発現が、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約2%で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL及び/又はPAX6マーカーの発現よりも大きい、組成物に関する。他の実施形態において、NGN3、NKX2.2及び/又はPAX4マーカーの発現は、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約5%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約10%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約15%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約20%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約25%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約30%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約35%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約40%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約45%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約50%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約55%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約60%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約65%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約70%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約75%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約80%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約85%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約90%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約95%で、又はin vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約98%で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL及び/又はPAX6マーカーの発現よりも大きい。
【0486】
本発明の好ましい実施形態において、内分泌前駆細胞の細胞培養物及び/又は細胞集団は、非組み換え細胞であるヒト内分泌前駆細胞を含む。このような実施形態において、細胞培養物及び/又は細胞集団は、組み換えヒト内分泌前駆細胞を欠いているか、又は実質的に含まない。
【0487】
本発明の幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団には、γ-セクレターゼ阻害剤を含む培地も含まれる。好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤はN-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)である。幾つかの好ましい実施形態において、DAPT濃度は少なくとも約1μMである。より好ましい実施形態において、DAPT濃度は少なくとも約3μMである。幾つかの実施形態において、培地はレチノイン酸(RA)及びエキセンジン4(Ex4)から選択される因子も含む。幾つかの実施形態において、培地はCMRLである。
【0488】
本明細書に記載されるプロセスを用いて、他の細胞型を実質的に含まない内分泌前駆細胞を含む組成物を産生することができる。本発明の幾つかの実施形態において、本明細書に記載される方法によって産生された内分泌前駆細胞集団又は細胞培養物は、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーを有意に発現する細胞を実質的に含まない。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される方法によって産生された細胞培養物の内分泌前駆細胞集団は、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL及び/又はPAX6マーカーを有意に発現する細胞を実質的に含まない。
【0489】
本発明の一実施形態において、マーカーの発現に基づく内分泌前駆細胞
の記載は、NGN3高、NKX2.2高、PAX4高、AFP低、SOX7低、SOX1低、ZIC1低、NFM低、MAFA低、SYP低、CHGA低、INS低、GCG低、SST低、GHRL低及び/又はPAX6低である。
【0490】
膵臓内分泌前駆細胞のスクリーニング
本明細書中に記載される或る特定のスクリーニング方法は、内分泌前駆細胞の分化を促進することが可能な少なくとも1つの分化因子を同定する方法に関する。
【0491】
これらの分化スクリーニング方法の幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞、例えばヒト内分泌前駆細胞を含む、細胞集団が得られる。次に細胞集団に候補分化因子が供給される。候補分化因子の供給前又はそれとほぼ同時である第1の時点で、マーカーの発現が求められる。代替的には、マーカーの発現は、候補分化因子の供給後に求められ得る。第1の時点の後であり、且つ細胞集団に候補分化因子を供給する工程の後である第2の時点で、同一マーカーの発現が再度求められる。候補分化因子が内分泌前駆細胞の分化を促進することが可能かどうかは、第1の時点でのマーカーの発現を第2の時点でのマーカーの発現と比較することによって求められる。第2の時点でのマーカーの発現が、第1の時点でのマーカーの発現と比較して増減する場合、候補分化因子は、内分泌前駆細胞の分化を促進することが可能である。
【0492】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態は、ヒト内分泌前駆細胞を含む細胞集団又は細胞培養物を利用する。例えば、細胞集団は内分泌前駆細胞を実質的に精製した集団であり得る。代替的には、細胞集団はヒト内分泌前駆細胞を濃縮した集団であり得る。この場合、細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、又は少なくとも約97%超がヒト内分泌前駆細胞である。本明細書中に記載される他の実施形態において、細胞集団は、ヒト細胞の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約85%超がヒト内分泌前駆細胞である、ヒト細胞を含む。幾つかの実施形態において、細胞集団は、非ヒト細胞、例えば非ヒトフィーダー細胞を含む。他の実施形態において、細胞集団は、ヒトフィーダー細胞を含む。このような実施形態において、前記フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約95%超がヒト内分泌前駆細胞である。
【0493】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の実施形態において、細胞集団は候補(試験)化合物と接触されるか、又はそうでなければ候補(試験)化合物を供給される。候補分化因子は、ヒト内分泌前駆細胞の分化を促進する能力を有し得る任意の分子を含み得る。本明細書中に記載される幾つかの実施形態において、候補分化因子は、1つ又は複数の種類の細胞に関する分化因子であることが知られている分子を含む。代替的な実施形態において、候補分化因子は、細胞分化を促進することが知られていない分子を含む。好ましい実施形態において、候補分化因子は、ヒト内分泌前駆細胞の分化を促進することが知られていない分子を含む。
【0494】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態において、候補分化因子は、小分子を含む。好ましい実施形態において、小分子は、分子量が約10000amu以下の分子である。
【0495】
本明細書中に記載される他の実施形態において、候補分化因子はポリペプチドを含む。ポリペプチドは、任意のポリペプチド、例えば糖タンパク質、リポタンパク質、細胞外基質タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモン、インターロイキン、又は増殖因子であり得るが、これらに限定されない。好ましいポリペプチドとしては、増殖因子が挙げられる。
【0496】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態において、候補分化因子は、アンフィレグリン、Bリンパ球刺激因子、IL-16、チモポイエチン、TRAIL/Apo-2、プレB細胞コロニー増強因子、内皮分化関連因子1(EDF1)、内皮単球活性化ポリペプチドII、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、ナチュラルキラー細胞増強因子(NKEFA)、骨形成タンパク質2、骨形成タンパク質8(造骨タンパク質(osteogeneic protein)2)、骨形成タンパク質6、骨形成タンパク質7、結合組織増殖因子(CTGF)、CGI-149タンパク質(神経内分泌分化因子)、サイトカインA3(マクロファージ炎症性タンパク質1-α)、膠芽腫(Gliablastoma)細胞分化関連タンパク質(GBDR1)、肝細胞癌由来増殖因子、ニューロメジンU-25前駆体、血管内皮増殖因子(VEGF)、血管内皮増殖因子B(VEGF-B)、T細胞特異的RANTES前駆体、胸腺樹状細胞由来因子1、トランスフェリン、インターロイキン-1(IL1)、インターロイキン-2(IL2)、インターロイキン-3(IL3)、インターロイキン-4(IL4)、インターロイキン-5(IL5)、インターロイキン-6(IL6)、インターロイキン-7(IL7)、インターロイキン-8(IL8)、インターロイキン-9(IL9)、インターロイキン-10(IL10)、インターロイキン-11(IL11)、インターロイキン-12(IL12)、インターロイキン-13(IL13)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、ビタミンD3、上皮細胞増殖因子(EGF)、脳由来神経栄養因子、白血病抑制因子、甲状腺ホルモン、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、aFGF、FGF-4、FGF-6、FGF-7/ケラチノサイト増殖因子(KGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血小板由来増殖因子-BB、β神経増殖因子、アクチビンA、形質転換増殖因子β1(TGF-β1)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、バースト促進活性(Burst promoting activity)(BPA)、赤血球促進活性(EPA)、PGE2、インスリン増殖因子-1(IGF-1)、IGF-II、ニュートロフィン増殖因子(NGF)、ニュートロフィン-3、ニュートロフィン4/5、毛様体神経栄養因子、神経膠由来ネキシン、デキサメタゾン、β-メルカプトエタノール、レチノイン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、5-アザシチジン、アムホテリシンB、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩(Ascrorbate)、イソブチルキサンチン、インドメタシン、β-グリセロールホスフェート、ニコチンアミド、DMSO、チアゾリジンジオン類、TWS119、オキシトシン、バソプレシン、メラニン細胞刺激ホルモン、コルチコトロピン(corticortropin)、リポトロピン、チロトロピン、成長ホルモン、プロラクチン、黄体形成ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、コルチコトロピン放出因子、ゴナドトロピン放出因子、プロラクチン放出因子、プロラクチン阻害因子、成長ホルモン放出因子、ソマトスタチン、チロトロピン放出因子、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、副甲状腺ホルモン、グルカゴン様ペプチド1、グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、モチリン、血管活性腸管ペプチド、サブスタンスP、膵臓ポリペプチド、ペプチドチロシンチロシン、神経ペプチドチロシン、インスリン、グルカゴン、胎盤性ラクトゲン、リラキシン、アンジオテンシンII、カルシトリオール(calctriol)、心房性ナトリウム利尿ペプチド、及びメラトニン、チロキシン、トリヨードチロニン、カルシトニン、エストラジオール、エストロン、プロゲステロン、テストステロン、コルチゾール、コルチコステロン、アルドステロン、エピネフリン、ノルエピネフリン(norepinepherine)、アンドロステン(androstiene)、カルシトリオール、コラーゲン、デキサメタゾン、β-メルカプトエタノール、レチノイン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、5-アザシチジン、アムホテリシンB、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソブチルキサンチン、インドメタシン、β-グリセロールホスフェート、ニコチンアミド、DMSO、チアゾリジンジオン、及びTWS119から成る群から選択される1つ又は複数の増殖因子を含む。
【0497】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態において、候補分化因子は、1つ又は複数の濃度で細胞集団に供給される。幾つかの実施形態において、候補分化因子は、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度が約0.1ng/ml~約10mg/mlの範囲であるように細胞集団に供給される。幾つかの実施形態において、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約1ng/ml~約1mg/mlの範囲である。他の実施形態において、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約10ng/ml~約100μg/mlの範囲である。さらに他の実施形態において、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約100ng/ml~約10μg/mlの範囲である。好ましい実施形態において、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約5ng/ml、約25ng/ml、約50ng/ml、約75ng/ml、約100ng/ml、約125ng/ml、約150ng/ml、約175ng/ml、約200ng/ml、約225ng/ml、約250ng/ml、約275ng/ml、約300ng/ml、約325ng/ml、約350ng/ml、約375ng/ml、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、約600ng/ml、約625ng/ml、約650ng/ml、約675ng/ml、約700ng/ml、約725ng/ml、約750ng/ml、約775ng/ml、約800ng/ml、約825ng/ml、約850ng/ml、約875ng/ml、約900ng/ml、約925ng/ml、約950ng/ml、約975ng/ml、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約11μg/ml、約12μg/ml、約13μg/ml、約14μg/ml、約15μg/ml、約16μg/ml、約17μg/ml、約18μg/ml、約19μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約75μg/ml、約100μg/ml、約125μg/ml、約150μg/ml、約175μg/ml、約200μg/ml、約250μg/ml、約300μg/ml、約350μg/ml、約400μg/ml、約450μg/ml、約500μg/ml、約550μg/ml、約600μg/ml、約650μg/ml、約700μg/ml、約750μg/ml、約800μg/ml、約850μg/ml、約900μg/ml、約950μg/ml、約1000μg/ml、又は約1000μg/ml超である。
【0498】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるスクリーニング方法の工程は、第1の時点及び第2の時点で少なくとも1つのマーカーの発現を求めることを含む。幾つかのこれらの実施形態において、第1の時点は、候補分化因子を細胞集団に供給する前又は供給するのとほぼ同時であり得る。代替的には、幾つかの実施形態において、第1の時点は候補分化因子を細胞集団に供給した後である。幾つかの実施形態において、複数のマーカーの発現が第1の時点で求められる。
【0499】
前記の実施形態で用いられる幾つかの好ましいマーカーには、NGN3、NKX2.2及びPAX4から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーが含まれる。
【0500】
第1の時点で少なくとも1つのマーカーの発現を求めることに加えて、本明細書に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態は、第1の時点の後であり、候補分化因子を細胞集団に供給した後である第2の時点で少なくとも1つのマーカーの発現を求めることを考慮する。このような実施形態において、同じマーカーの発現は、第1の時点及び第2の時点の両方で求められる。幾つかの実施形態において、複数のマーカーの発現が第1の時点及び第2の時点の両方で求められる。このような実施形態において、同じ複数のマーカーの発現が第1の時点及び第2の時点の両方で求められる。幾つかの実施形態において、マーカー発現は、それぞれが第1の時点の後であり、それぞれが候補分化因子を細胞集団に供給した後である複数の時点で求められる。或る特定の実施形態において、マーカー発現はQ-PCRによって求められる。他の実施形態において、マーカー発現は免疫細胞化学法によって求められる。
【0501】
本明細書に記載されるスクリーニング方法の或る特定の実施形態において、第1の時点及び第2の時点でその発現を有するマーカーは、内分泌前駆細胞の膵島組織を作製する最終分化細胞の前駆体である細胞への分化に関連するマーカーである。このような細胞は、未熟膵島ホルモン発現細胞を含み得る。幾つかの実施形態において、マーカーは内分泌前駆細胞を示す。好ましい実施形態において、マーカーは、NGN3、NKX2.2、NKX6.1、PAX4、PDX1、インスリン、グレリン及び/又はグルカゴンである。
【0502】
本明細書に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態において、候補分化因子を細胞集団に供給するのと、第2の時点でマーカー発現を求めるのとの間に十分な時間を経過させる。候補分化因子を細胞集団に供給するのと、第2の時点でマーカー発現を求めるのとの間の十分な時間は、最低約1時間~最大約10日であり得る。幾つかの実施形態において、少なくとも1つのマーカーの発現は、候補分化因子を細胞集団に供給した後に複数回求められる。幾つかの実施形態において、十分な時間は、少なくとも約1時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、少なくとも約30時間、少なくとも約36時間、少なくとも約42時間、少なくとも約48時間、少なくとも約54時間、少なくとも約60時間、少なくとも約66時間、少なくとも約72時間、少なくとも約78時間、少なくとも約84時間、少なくとも約90時間、少なくとも約96時間、少なくとも約102時間、少なくとも約108時間、少なくとも約114時間、少なくとも約120時間、少なくとも約126時間、少なくとも約132時間、少なくとも約138時間、少なくとも約144時間、少なくとも約150時間、少なくとも約156時間、少なくとも約162時間、少なくとも約168時間、少なくとも約174時間、少なくとも約180時間、少なくとも約186時間、少なくとも約192時間、少なくとも約198時間、少なくとも約204時間、少なくとも約210時間、少なくとも約216時間、少なくとも約222時間、少なくとも約228時間、少なくとも約234時間、少なくとも約240時間、少なくとも約246時間、少なくとも約252時間、少なくとも約258時間、少なくとも約264時間、又は少なくとも約270時間である。
【0503】
本明細書に記載される方法の幾つかの実施形態において、第2の時点でのマーカーの発現が、第1の時点でのこのマーカーの発現に比べて増減していたか否かがさらに求められる。少なくとも1つのマーカーの発現の増減は、候補分化因子が内分泌前駆細胞の分化を促進することができることを示す。同様に、複数のマーカーの発現が求められる場合、第2の時点での複数のマーカーの発現が、第1の時点でのこの複数のマーカーの発現に比べて増減していたか否かがさらに求められる。マーカー発現の増減は、第1の時点及び第2の時点での細胞集団におけるマーカーの量、レベル又は活性を測定又はそうでなければ評価することによって求めることができる。このような判定は、他のマーカー、例えばハウスキーピング遺伝子の発現に相対的であるか又は絶対的なものであり得る。マーカー発現
が第1の時点と比較して第2の時点で増加する、或る特定の実施形態において、増加量は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍超である。幾つかの実施形態において、増加量は2倍未満である。マーカー発現が第1の時点と比較して第2の時点で減少する実施形態において、減少量は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍超である。幾つかの実施形態において、減少量は2倍未満である。
【0504】
未熟膵島ホルモン発現細胞の産生
本発明の実施形態は、hESCから始まる未熟膵島ホルモン発現細胞を産生する方法に関する。前記のように、未熟膵島ホルモン発現細胞は、最初にhESCを分化し胚体内胚葉細胞を産生して、胚体内胚葉細胞を分化し前腸内胚葉細胞を産生して、前腸内胚葉を分化しPDX1陽性前腸内胚葉細胞を産生した後に、PDX1陽性前腸内胚葉細胞をさらに分化し内分泌前駆細胞を産生することによって、産生することができる。幾つかの実施形態において、このプロセスは、内分泌前駆細胞を未熟膵島ホルモン発現細胞にさらに分化させることによって継続される。
【0505】
本発明の幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞から未熟膵島ホルモン発現細胞への分化は、細胞がNGN3の発現を実質的に停止させ、PAX6の発現を開始し、細胞が少なくとも1つの膵島細胞ホルモンを発現する能力を有するようになるのに十分な時間、γ-セクレターゼ阻害剤との内分泌前駆細胞の培養物のインキュベートを継続することによって進行する。幾つかの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、内分泌前駆細胞のインキュベート後約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日又は約10日超で除去される。好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤はN-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル(Diflurophenacetyl
)-L-アラニル)]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)である。
【0506】
本明細書に開示される未熟膵島ホルモン発現細胞を産生する或る特定のプロセスは、ニコチンアミド、エキセンジン4、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子-1(IGF1)から成る群から選択される1つ又は複数の因子を、ヒト内分泌前駆細胞を含む細胞培養物又は細胞集団に供給することによって媒介される。幾つかの実施形態において、4つの前記因子が全て同時に供給される。幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞の分化の前に、1つ又は複数の前記の因子が細胞培養物に供給され、細胞培養物における少なくとも一部の細胞の内分泌前駆細胞への分化の間、細胞培養物に存在したままである。他の実施形態において、大部分の細胞の内分泌前駆細胞への分化とほぼ同時に、1つ又は複数の前記の因子が細胞培養物に供給され、少なくとも大部分の細胞が未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するまで、細胞培養物に存在したままである。本発明の幾つかの実施形態において、1つ又は複数の前記の因子が、分化プロセスの開始時に、例えばhESC段階で供給され、未熟膵島ホルモン発現細胞への分化の間、細胞培養物に維持される。
【0507】
本明細書中に開示される未熟膵島ホルモン発現細胞の幾つかの製造プロセスにおいて、ニコチンアミド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はニコチン酸は、内分泌前駆細胞の少なくとも一部の未熟膵島ホルモン発現細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在するように細胞に供給される。幾つかの実施形態において、ニコチンアミドは、少なくとも約0.1mM、少なくとも約0.5mM、少なくとも約1mM、少なくとも約2mM、少なくとも約3mM、少なくとも約4mM、
少なくとも約5mM、少なくとも約6mM、少なくとも約7mM、少なくとも約8mM、少なくとも約9mM、少なくとも約10mM、少なくとも約11mM、少なくとも約12mM、少なくとも約13mM、少なくとも約14mM、少なくとも約15mM、少なくとも約16mM、少なくとも約17mM、少なくとも約18mM、少なくとも約19mM、少なくとも約20mM、少なくとも約25mM、少なくとも約30mM、少なくとも約35mM、少なくとも約40mM、少なくとも約45mM、少なくとも約50mM、少なくとも約55mM、少なくとも約60mM、少なくとも約65mM、少なくとも約70mM、少なくとも約75mM、少なくとも約80mM、少なくとも約85mM、少なくとも約90mM、少なくとも約95mM、少なくとも約100mM、少なくとも約250mM、少なくとも約500mM、又は少なくとも約1000mMの濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在する。
【0508】
本明細書中に開示される未熟膵島ホルモン発現細胞の他の製造プロセスにおいて、エキセンジン4は、内分泌前駆細胞の少なくとも一部の未熟膵島ホルモン発現細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在するように細胞に供給される。幾つかの実施形態において、エキセンジン4は、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約15ng/ml、少なくとも約20ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約30ng/ml、少なくとも約35ng/ml、少なくとも約40ng/ml、少なくとも約45ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約55ng/ml、少なくとも約60ng/ml、少なくとも約65ng/ml.少なくとも約70ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約80ng/ml、少なくとも約85ng/ml、少なくとも約90ng/ml、少なくとも約95ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約110ng/ml、少なくとも約120ng/ml、少なくとも約130ng/ml、少なくとも約140ng/ml、少なくとも約150ng/ml、少なくとも約160ng/ml、少なくとも約170ng/ml、少なくとも約180ng/ml、少なくとも約190ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約250ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約350ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約450ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約750ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在する。
【0509】
本明細書中に開示される未熟膵島ホルモン発現細胞のさらに他の製造プロセスにおいて、HGFは、内分泌前駆細胞の少なくとも一部の未熟膵島ホルモン発現細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在するように細胞に供給される。幾つかの実施形態において、HGFは、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約15ng/ml、少なくとも約20ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約30ng/ml、少なくとも約35ng/ml、少なくとも約40ng/ml、少なくとも約45ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約55ng/ml、少なくとも約60ng/ml、少なくとも約65ng/ml、少なくとも約70ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約80ng/ml、少なくとも約85ng/ml、少なくとも約90ng/ml、少なくとも約95ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約110ng/ml、少なくとも約120ng/ml、少なくとも約130ng/ml、少なくとも約140ng/ml、少なくとも約150ng/ml、少なくとも約160ng/ml、少なくとも約170ng/ml、少なくとも約180ng/ml、少なくとも約190ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約250ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約350ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約450ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約750ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在する。
【0510】
本明細書中に開示される未熟膵島ホルモン発現細胞のさらに他の製造プロセスにおいて、IGF1は、内分泌前駆細胞の少なくとも一部の未熟膵島ホルモン発現細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在するように細胞に供給される。幾つかの実施形態において、IGF1は、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約15ng/ml、少なくとも約20ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約30ng/ml、少なくとも約35ng/ml、少なくとも約40ng/ml、少なくとも約45ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約55ng/ml、少なくとも約60ng/ml、少なくとも約65ng/ml、少なくとも約70ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約80ng/ml、少なくとも約85ng/ml、少なくとも約90ng/ml、少なくとも約95ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約110ng/ml、少なくとも約120ng/ml、少なくとも約130ng/ml、少なくとも約140ng/ml、少なくとも約150ng/ml、少なくとも約160ng/ml、少なくとも約170ng/ml、少なくとも約180ng/ml、少なくとも約190ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約250ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約350ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約450ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約750ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在する。
【0511】
本発明で記載されるように、未熟膵島ホルモン発現細胞を産生するプロセスの或る特定の実施形態において、1つ又は複数の予め供給された分化因子を細胞培養物から除去した後、1つ又は複数のニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及びIGF1が供給される。他の実施形態において、1つ又は複数のニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及びIGF1は、予め供給されたか、或いは1つ又は複数のニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及びIGF1とほぼ同時に供給された1つ又は複数の分化因子を含む細胞培養物又は細胞集団に供給される。好ましい実施形態において、予め供給されたか、或いは1つ又は複数のニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及びIGF1とほぼ同時に供給された分化因子としては、DAPT、FGF-10、KAAD-シクロパミン、アクチビンA、アクチビンB、BMP4及び/又はRAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0512】
内分泌前駆細胞から未熟膵島ホルモン発現細胞を産生する1つのプロセスにおいて、10mMのニコチンアミド、40ng/mlのエキセンジン4、25ng/mlのHGF及び50ng/mlのIGF1を内分泌前駆細胞の細胞培養物又は細胞集団に供給する。好ましいプロセスでは、細胞をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で分化する。
【0513】
本明細書に記載されるように、未熟膵島ホルモン発現細胞を産生する或る特定のプロセスにおいて、1つ又は複数の前記の分化因子は、それらの添加後に細胞培養物又は細胞集団から除去される。例えば、ニコチンアミドは、添加後、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日又は約10日以内に除去することができる。幾つかの実施形態において、分化因子は細胞培養物から除去されない。
【0514】
未熟膵島ホルモン発現細胞の培養物は、低血清又は無血清の培地中で産生され得る。或る特定の培養条件下、血清濃度は、約0.05%(v/v)~約20%(v/v)の範囲であり得る。例えば幾つかの分化プロセスにおいて、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、又は約20%(v/v)未満であり得る。幾つかのプロセスにおいて、未熟膵島ホルモン発現細胞を、血清を用いずに、血清代替物を用いずに、且つ/又はインスリン若しくはインスリン様増殖因子を含有する任意のサプリメントを用いずに増殖させる。
【0515】
さらに他のプロセスにおいて、未熟膵島ホルモン発現細胞はB27の存在下で増殖する。このようなプロセスにおいて、B27サプリメントの濃度は、約0.1%(v/v)~約20%(v/v)の範囲、又は約20%(v/v)超の濃度であり得る。或る特定のプロセスにおいて、培地中のB27の濃度は、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.7%(v/v)、約0.8%(v/v)、約0.9%(v/v)、約1%(v/v)、約2%(v/v)、約3%(v/v)、約4%(v/v)、約5%(v/v)、約6%(v/v)、約7%(v/v)、約8%(v/v)、約9%(v/v)、約10%(v/v)、約15%(v/v)又は約20%(v/v)である。代替的には、B27サプリメントの添加濃度は、市販されているB27原液の濃度の倍数で測定され得る。例えば、B27は50×原液としてInvitrogen(Carlsbad, CA)から入手可能である。この原液を十分量、十分な容量の増殖培地に添加することで、所望量のB27を補充した培地が得られる。例えば、50×B27原液10mlを増殖培地90mlに加えることで、5×B27を補充した増殖培地が得られる。培地中のB27サプリメントの濃度は、約0.1×、約0.2×、約0.3×、約0.4×、約0.5×、約0.6×、約0.7×、約0.8×、約0.9×、約1×、約1.1×、約1.2×、約1.3×、約1.4×、約1.5×、約1.6×、約1.7×、約1.8×、約1.9×、約2×、約2.5×、約3×、約3.5×、約4×、約4.5×、約5×、約6×、約7×、約8×、約9×、約10×、約11×、約12×、約13×、約14×、約15×、約16×、約17×、約18×、約19×、約20×、及び約20×超であり得る。
【0516】
未熟膵島ホルモン発現細胞の産生のモニタリング
内分泌前駆細胞の未熟膵島ホルモン発現細胞への発達は、遺伝子マーカー及び表現型マーカーを含む未熟膵島ホルモン発現細胞に特有のマーカーの発現、例えば膵島ホルモンの発現、並びにプロインスリンのインスリン及びCペプチドへの過程を求めることによってモニタリングすることができる。幾つかのプロセスでは、マーカーの有無を検出することによって或る特定のマーカーの発現が求められる。代替的には、或る特定のマーカーの発現は、細胞培養物又は細胞集団の細胞に存在するマーカーのレベルを測定することによって求めることができる。或る特定のプロセスでは、未熟膵島ホルモン発現細胞に特有のマーカーの発現、並びにhESC、胚体内胚葉、前腸内胚葉、PDX1陽性前腸内胚葉、内分泌前駆体、胚体外内胚葉、中胚葉、外肺葉、成熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は他の細胞型に特有のマーカーの有意な発現の欠失が求められる。
【0517】
胚体内胚葉系統の他のあまり分化しない細胞型の産生のモニタリングに関連して記載されるように、定量技法又は半定量技法、例えばブロット転写法(blot transfer methods
)及び免疫細胞化学法を用いて、マーカーの発現を測定することができる。代替的に、マーカーの発現は、Q-PCR等の技法の使用によって正確に定量化することができる。さらに、ポリペプチドレベルで、膵島ホルモン発現細胞の多くのマーカーが分泌タンパク質であることが理解される。このように、細胞外のマーカー含有量を測定する技法、例えばELISAが利用され得る。
【0518】
以下の実施例で記載されるように、未熟膵島ホルモン発現細胞のマーカーとしては、M
AFB、SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、PDX1、HB9、GHRL、IAPP、INS、GCG、SST、PP、及び/又は結合ペプチド(C-ペプチド)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるプロセスによって産生された未熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の上で列記されたマーカーを発現することによって、対応する遺伝子産物を産生する。しかし、未熟膵島ホルモン発現細胞が前記のマーカーを全て発現する必要はないことが理解される。例えば、hESCから分化した膵島ホルモン発現細胞は、INSとGHRLとを同時に発現しない。
【0519】
膵島ホルモン発現細胞は内分泌前駆細胞マーカーNGN3及びPAX4を実質的に発現しないので、内分泌前駆細胞の未熟膵島ホルモン発現細胞への移行は、NGN3及びPAX4の発現の低減をモニタリングする一方で、1つ又は複数のMAFB、PAX6、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、CHGA、SYP及び/又はC-ペプチドの発現の増大をモニタリングすることによって立証することができる。幾つかのプロセスでは、1つ又は複数の前記のマーカーの発現の増大及び/又は低減をモニタリングすることに加えて、hESC、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞及び/又は内分泌前駆細胞を示す遺伝子の発現もモニタリングする。
【0520】
MAFB、PAX6、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、CHGA、SYP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現が、分化条件によって未熟膵島ホルモン発現細胞において様々なレベルの範囲にわたって誘導されることが理解される。このように、本明細書に記載される幾つかの実施形態において、膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるMAFB、PAX6、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、CHGA、SYP、及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、非未熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団、例えば多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞、及び/又は外肺葉細胞におけるMAFB、PAX6、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、CHGA、SYP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現の少なくとも約2倍~少なくとも約10000倍である。他の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるMAFB、PAX6、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、CHGA、SYP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、非未熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団、例えば、多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外胚葉細胞におけるMAFB、PAX6、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX2.2、SST、PP、CHGA、SYP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現よりも少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約40倍、少なくとも約80倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約2500倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約7500倍、又は少なくとも約10000倍高い。幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるMAFB、PAX6、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX2.2、SST、PP、CHGA、SYP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、非未熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団、例えば多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外肺葉細胞におけるMAFB、PAX6、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX2.2、SST、PP、CHGA、SYP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現よりもはるかに高い。
【0521】
NGN3及び/又はPAX4マーカーの発現が、分化条件によって未熟膵島ホルモン発
現細胞において様々なレベルの範囲にわたって低減されることが理解される。このように、本明細書に記載される幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるNGN3及び/又はPAX4マーカーの発現は、内分泌前駆細胞におけるNGN3及び/又はPAX4マーカーの発現よりも少なくとも約2倍~少なくとも約10000倍低い。他の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるNGN3及び/又はPAX4マーカーの発現は、内分泌前駆細胞におけるNGN3及び/又はPAX4マーカーの発現よりも少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約40倍、少なくとも約80倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約2500倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約7500倍、又は少なくとも約10000倍低い。幾つかの実施形態において、NGN3及び/又はPAX4マーカーは、未熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団において実質的に発現しない。
【0522】
本明細書に記載されるプロセスの幾つかの実施形態において、細胞及び/又は細胞集団からのホルモン放出量を求めることができる。例えば、インスリン放出、グルカゴン放出、ソマトスタチン放出及び/又はグレリン放出の量をモニタリングすることができる。好ましい実施形態において、グルコース応答性インスリン分泌(GSIS)の量が測定される。さらに別の実施形態において、分泌の途絶(secreted breakdown)又は未熟膵島ホルモン発現細胞によって産生される副産物、例えばC-ペプチド及び膵島アミロイドタンパク質がモニタリングされ得る。
【0523】
分泌タンパク質の発現を測定する方法は当該技術分野で既知であることが理解される。例えば、膵島細胞によって産生される1つ又は複数のホルモンに対する抗体は、ELISAアッセイに用いることができる。
【0524】
本発明の幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞によるインスリン放出は、C-ペプチド放出の測定によって測定される。C-ペプチドは、プロインスリンの成熟化の間、インスリンに対して等モル量で産生される分解産物である。C-ペプチドの測定が有利なのは、その半減期がインスリンよりも長いからである。C-ペプチド放出を測定する方法は、当該技術分野において既知である(例えば、抗Cペプチドモノクローナル抗体(Linco Research, St. Louis, Missouri)を使用するELISA)。本発明の幾つ
かの実施形態において、hESCから産生される未熟膵島ホルモン発現細胞は、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約650pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約750pmol/細胞DNA
1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約950pmol/細胞DNA 1μg、又はC-ペプチド(インスリン) 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgを分泌する。好ましい実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、単一種の膵島細胞ホルモンを分泌する細胞(例えば、インスリンのみを分泌する細胞)である。或る特定の好ましい実施形態において、インスリンはグルコースに応答して分泌される。他の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の膵島細胞ホルモン、例えば、ソマトスタチン、グルカゴン及び/又はグレリンに加えて、インスリンを分泌する細胞である。
【0525】
本発明の幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、当該未熟膵島ホルモン発現細胞によって産生されるインスリンの約98%未満をプロセシングする。他の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、当該未熟膵島ホルモン発現細胞によって産生されるインスリンの約97%未満、約96%未満、約95%未満、約94%未満、約93%未満、約92%未満、約91%未満、約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、又は約30%未満をプロセシングする。
【0526】
本発明の他の実施形態において、hESCから産生される未熟膵島ホルモン発現細胞は、グルカゴン 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約650pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約750pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約950pmol/細胞DNA 1μg、又はグルカゴン 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgを分泌する。好ましい実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、単一種の膵島細胞ホルモンを分泌する細胞(例えば、グルカゴンのみを分泌する細胞)である。他の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の膵島細胞ホルモン、例えば、グレリン、ソマトスタチン及びインスリンに加えて、グルカゴンを分泌する細胞である。
【0527】
本発明のさらに他の実施形態において、hESCから産生される未熟膵島ホルモン発現細胞は、ソマトスタチン 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約650pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約750pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約950pmol/細胞DNA 1μg、又はソマトスタチン 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgを分泌する。好ましい実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、単一種の膵島細胞ホルモンを分泌する細胞(例えば、ソマトスタチンのみを分泌する細胞)である。他の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の膵島細胞ホルモン、例えば、グレリン、グルカゴン及びインスリンに加えて、ソマトスタチンを分泌する細胞である。
【0528】
本発明の他の実施形態において、hESCから産生される未熟膵島ホルモン発現細胞は、グレリン 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約650pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約750pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約950pmol/細胞DNA 1μg、又はグレリン 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgを分泌する。好ましい実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、単一種の膵島細胞ホルモンを分泌する細胞(例えば、グレリンのみを分泌する細胞)である。他の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の膵島細胞ホルモンに加えて、グレリンを分泌する細胞である。
【0529】
未熟膵島ホルモン発現細胞の濃縮、単離及び/又は精製
任意の前記プロセスによって産生される未熟膵島ホルモン発現細胞は、内分泌前駆細胞の濃縮、単離及び/又は精製に関連して記載される方法を用いて、このような細胞に特異的である親和性タグを用いることによって、濃縮、単離及び/又は精製することができる。未熟膵島ホルモン発現細胞に特異的な親和性タグの例は、抗体、リガンド、又は未熟膵島ホルモン発現細胞の細胞表面上に存在するが、本明細書に記載される方法によって産生される細胞培養物で見出される他の細胞型には実質的に存在しないマーカー分子、例えばポリペプチドに特異的である他の結合剤である。未熟膵島ホルモン発現細胞の濃縮、単離及び/又は精製のための親和性タグの好ましい例は、NCAMに対する抗体である。抗NCAM抗体は、例えばAbcam(Cambridge, MA)で市販されている。未熟膵島ホルモン発現細胞の濃縮、単離及び/又は精製のための親和性タグの別の例は、シナプトフィジン(SYP)に対する抗体である。抗シナプトフィジン抗体は、Dako(Glostrup, Denmark)で市販されている。他のプロセスでは、NCAMリガンドNBP10又は現在知られているか、又は将来発見される任意の他のNCAMリガンドも、親和性タグと結合させるのに用いることができる(Ronn, L., 2002)。このような分子としては、NBP10融合物及びNBP10模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0530】
濃縮、単離又は精製した未熟膵島ホルモン発現細胞培養物又は集団を得るさらなる方法も用いることができる。例えば、幾つかの実施形態において、試薬、例えばNCAM抗体は、未熟膵島ホルモン発現細胞を含有する細胞培養物とインキュベートされ、この細胞培養物は細胞間及び基質の接着を低減させるように処理されている。それから細胞を洗浄、遠心分離及び再懸濁する。その後、細胞懸濁液を二次抗体、例えば一次抗体と結合することができるFITC結合抗体とインキュベートする。それから細胞を洗浄、遠心分離及び緩衝液中で再懸濁する。その後、蛍光活性化細胞選別器(FACS)を用いて、細胞懸濁液を解析及び選別する。抗体結合蛍光細胞を非結合非蛍光細胞とは別に回収し、それによってこのような細胞型が単離される。
【0531】
本明細書に記載されるプロセスの好ましい実施形態において、代替的な親和性に基づいた方法を用いることによって、又は未熟膵島ホルモン発現細胞に特異的である同一の若しくは異なるマーカーを用いたさらなる一連の選別によって、単離細胞組成物をさらに精製することができる。例えば、幾つかの実施形態において、FACS選別を用いて、初めに未熟膵臓ホルモン発現細胞を含む細胞集団由来のNCAM陰性細胞からNCAM陽性未熟膵臓ホルモン発現細胞を単離する。当業者は、他の従来のマーカーベースの細胞選別法を本明細書に記載される方法に用いることができることを理解し、この方法としては様々な磁気ビース選別法又はパニング法が挙げられるが、これらに限定されない。NCAM陽性である細胞を単離するのに再びFACSを用いて、NCAM陽性細胞を選別することによって、この細胞型に特有のマーカー(SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、PDX1、又はHB9を含む)を発現する未熟膵臓ホルモン発現細胞に対して細胞集団を濃縮させる。他の実施形態において、FACS選別を用いて、未熟膵島ホルモン発現細胞以外の細胞集団におけるほとんどの細胞に存在するマーカーに関して陰性選別することによって細胞を分離する。このような陰性選別の例は、1回目の濃縮の後では、NCAM陽性細胞集団における未熟膵島ホルモン発現細胞の表面上で実質的に発現しないが、この細胞集団における多くの他のNCAM陽性細胞では発現するマーカーであるCD133の使用である。
【0532】
本明細書に記載されるプロセスの幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、抗体を用いずに蛍光標識した後、内分泌前駆細胞の濃縮、単離及び/又は精製に関して記載されたものと類似の蛍光活性化細胞選別器(FACS)法を用いることによって非標識細胞から単離される。例えば、幾つかの実施形態において、GFP、YFP、ルシフェラーゼをコードする核酸、その生物学的に活性がある断片は、前記のもののような未熟膵島ホルモン発現細胞の同定に有用なマーカー、例えばSYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、PDX1、又はHB9のプロモータの下流へと多能性細胞に導入することができる。それによって、GFP遺伝子産物又はその生物学的に活性な断片の発現は、未熟膵島ホルモン発現細胞マーカーの制御下にある。内分泌前駆細胞の濃縮、単離及び/又は精製に関して記載されるように、蛍光標識細胞は、未熟膵島ホルモン発現細胞に分化し、他の細胞型から分離することができ、それによって未熟膵島ホルモン発現細胞の濃縮又は精製された集団が産生される。
【0533】
前記の手法に加えて、未熟膵島ホルモン発現細胞は、細胞単離に関する他の技法によっても単離され得ることが理解される。さらに、未熟膵島ホルモン発現細胞は、未熟膵島ホルモン発現細胞の選択的生存又は選択的発現を促進する増殖条件での連続継代培養法によっても濃縮又は単離され得る。
【0534】
本明細書に記載される方法を用いて、in vitroで、少なくとも幾つかの未熟膵島ホルモン発現細胞を産生するように十分な分化を受けた多能性細胞培養物又は細胞集団、例えば幹細胞培養物又は集団から、未熟膵島ホルモン発現細胞の濃縮、単離及び/又は精製された集団、及び/又は組織を産生することができる。好ましい方法では、主に細胞は未熟膵島ホルモン発現細胞に分化することに向けられる。幾つかの好ましい濃縮、単離及び/又は精製の方法は、ヒト胚性幹細胞からの未熟膵島ホルモン発現細胞のin vitro産生に関する。
【0535】
本明細書に記載される方法を用いて、細胞集団又は細胞培養物は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約2倍~約1000倍まで未熟膵島ホルモン発現細胞含有量を濃縮させることができる。幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約5倍~約500倍まで濃縮することができる。他の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約10倍~約200倍まで濃縮することができる。さらに別の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約20倍~約100倍まで濃縮することができる。さらに別の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約40倍~約80倍まで濃縮することができる。或る特定の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約2倍~約20倍まで濃縮することができる。
【0536】
未熟膵島ホルモン発現細胞を含む組成物
本発明の幾つかの実施形態は、未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の細胞組成物に関し、この未熟膵島ホルモン発現細胞は、in vitroでヒト多能性細胞から誘導され、1つ又は複数の膵臓ホルモンを発現し、ヒト膵島細胞の少なくとも幾つかの機能を有する細胞である。或る特定の実施形態によれば、未熟膵島ホルモン発現細胞は哺乳動物細胞であり、好ましい実施形態において、このような細胞はヒト細胞である。
【0537】
本発明の他の実施形態は、未熟膵島ホルモン発現細胞及び未熟膵島ホルモン発現細胞ほど明確に分化しない細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。このような実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞よりも明確に分化されない細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。
【0538】
本発明の或る特定の他の実施形態は、未熟膵島ホルモン発現細胞、並びにhESC、前原始線条細胞、内胚葉系中胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陰性前腸内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞(PDX1陽性膵臓内胚葉細胞)、内分泌前駆細胞、及び中胚葉細胞から成る群から選択される1つ又は複数の細胞型を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。幾つかの実施形態において、hESCは、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。或る特定の実施形態において、前原始線条細胞は、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。他の実施形態において、内胚葉系中胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。さらに他の実施形態において、胚体内胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。さらに他の実施形態において、PDX1陰性前腸内胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。或る特定の実施形態において、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。他の実施形態において、内分泌前駆細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。さらに他の実施形態において、中胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。
【0539】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中に記載されるプロセスによって産生され、且つ主要細胞型として未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。幾つかの実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスは、幾つかの実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスは、未熟膵島ホルモン発現細胞を少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、少なくとも約90%、少なくとも約89%、少なくとも約88%、少なくとも約87%、少なくとも約86%、少なくとも約85%、少なくとも約84%、少なくとも約83%、少なくとも約82%、少なくとも約81%、少なくとも約80%、少なくとも約79%、少なくとも約78%、少なくとも約77%、少なくとも約76%、少なくとも約75%、少なくとも約74%、少なくとも約73%、少なくとも約72%、少なくとも約71%、少なくとも約70%、少なくとも約69%、少なくとも約68%、少なくとも約67%、少なくとも約66%、少なくとも約65%、少なくとも約64%、少なくとも約63%、少なくとも約62%、少なくとも約61%、少なくとも約60%、少なくとも約59%、少なくとも約58%、少なくとも約57%、少なくとも約56%、少なくとも約55%、少なくとも約54%、少なくとも約53%、少なくとも約52%、少なくとも約51%、又は少なくとも約50%含む細胞培養物及び/又は細胞集団を産生する。好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団の細胞はヒト細胞を含む。他の実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスは、未熟膵島ホルモン発現細胞を少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なくとも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくと
も約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%、又は少なくとも約1%含む細胞培養物又は細胞集団を産生する。好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団の細胞はヒト細胞を含む。幾つかの実施形態において、培養物に残存するフィーダー細胞を考慮せずに、細胞培養物又は集団における未熟膵島ホルモン発現細胞の割合が算出される。
【0540】
本発明のさらに別の実施形態は、未熟膵島ホルモン発現細胞と内分泌前駆細胞との混合物を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。例えば、約95個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約5個の未熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞培養物又は細胞集団を産生することができる。他の実施形態において、約5個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約95個の未熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞培養物又は細胞集団を産生することができる。さらに、未熟膵島ホルモン発現細胞と内分泌前駆細胞とを他の比率で含む細胞培養物又は細胞集団が考慮される。例えば、約1000000個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約100000個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約10000個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1000個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約500個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約100個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約10個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約5個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約4個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約2個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約2個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約4個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約5個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約10個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約20個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約50個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約100個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1000個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約10000個の未熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約100000個の未熟膵島ホルモン発現細胞、及び約1個の内分泌前駆細胞毎に少なくとも約1000000個の未熟膵島ホルモン発現細胞を含む組成物が考慮される。
【0541】
本発明の幾つかの実施形態において、産生される未熟膵島ホルモン発現細胞は、ヒト多能性細胞、例えばヒト多能性幹細胞から誘導される。或る特定の実施形態において、ヒト多能性細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊又は胚の生殖隆起から誘導される。或る特定の実施形態において、ヒト多能性細胞は、胚形成期を越えて発達した多細胞構造の性腺組織又は胚組織から誘導される。
【0542】
本発明のさらなる実施形態は、ヒト細胞(例えば、ヒト未熟膵島ホルモン発現細胞)を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物であって、MAFB、SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、PDX1、HB9、GHRL、IAPP、INS、GCG、SST、PP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現が、ヒト細胞の少なくとも約2%で、NGN3、MAFA、MOX1、CER、POU5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも大きい、組成物に関する。他の実施形態において、MAFB、SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、PDX1、HB9、GHRL、IAPP、INS、GCG、SST、PP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、ヒト細胞の少なくとも約5%で、ヒト細胞の少なくとも約10%で、ヒト細胞の少なくとも約15%で、ヒト細胞の少なくとも約20%で、ヒト細胞の少なくとも約25%で、ヒト細胞の少なくとも約30%で、ヒト細胞の少なくとも約35%で、ヒト細胞の少なくとも約40%で、ヒト細胞の少なくとも約45%で、ヒト細胞の少なくとも約50%で、ヒト細胞の少なくとも約55%で、ヒト細胞の少なくとも約60%で、ヒト細胞の少なくとも約65%で、ヒト細胞の少なくとも約70%で、ヒト細胞の少なくとも約75%で、ヒト細胞の少なくとも約80%で、ヒト細胞の少なくとも約85%で、ヒト細胞の少なくとも約90%で、ヒト細胞の少なくとも約95%で、又はヒト細胞の少なくとも約98%で、NGN3、MAFA、MOX1、CER、POU5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも大きい。幾つかの実施形態において、MAFB、SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、PDX1、HB9、GHRL、IAPP、INS、GCG、SST、PP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現が、NGN3、MAFA、MOX1、CER、POU5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも大きい、細胞培養物又は細胞集団中のヒト細胞の割合は、フィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0543】
本発明のさらなる実施形態は、in vitroで胚体内胚葉から分化した哺乳動物細胞、例えばin vitroで胚体内胚葉から分化したヒト細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物であって、MAFB、SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、PDX1、HB9、GHRL、IAPP、INS、GCG、SST、PP及び/又はC-ペプチドマーカーの発現が、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約2%で、NGN3、MAFA、MOX1、CER、POU5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも大きい、組成物に関する。他の実施形態において、MAFB、PAX6、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX2.2、SST、PP、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約5%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約10%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約15%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約20%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約25%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約30%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約35%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約40%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約45%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約50%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約55%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約60%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約65%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約70%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約75%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約80%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約85%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約90%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約95%で、又はin vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約98%で、NGN3、MAFA、MOX1、CER、POU5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも大きい。
【0544】
本発明の好ましい実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞の細胞培養物及び/又は細胞集団は、非組み換え細胞であるヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を含む。このような実施形態において、細胞培養物及び/又は細胞集団は、組み換えヒト未熟膵島ホルモン発現細胞を欠いているか、又は実質的に含まない。
【0545】
本発明の幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団には、ニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及び/又はIGF1から選択される1つ又は複数の因子を含む培地も含まれる。幾つかの好ましい実施形態において、ニコチンアミド濃度は少なくとも約10mMであり、エキセンジン4濃度は少なくとも約40ng/mlであり、HGF濃度は少なくとも約25ng/mlであり、IGF1濃度は少なくとも約50ng/mlである。幾つかの実施形態において、培地はDMEMである。
【0546】
本発明の或る特定の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団には、グレリン、インスリン、ソマトスタチン及び/又はグルカゴンから選択される1つ又は複数の分泌ホルモンを含む培地も含まれる。他の実施形態において、培地はC-ペプチドを含む。好ましい実施形態において、培地中の1つ又は複数の分泌ホルモン又はC-ペプチドの濃度は、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン又はC-ペプチド 少なくとも約1pmol/細胞DNA 1μg~グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン又はC-ペプチド 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgの範囲である。さらに好ましい実施形態において、培地中の1つ又は複数の分泌ホルモン又はC-ペプチドの濃度は、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約1pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約10pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約25pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約75pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 650pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約750pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約950pmol/細胞D
NA 1μg、又はグレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgである。
【0547】
本明細書に記載される細胞培養物及び/又は細胞集団の幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は2つ以上の膵臓ホルモンを分泌する。本明細書に記載される細胞培養物及び/又は細胞集団の他の実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は単一の膵臓ホルモンを分泌する。好ましい実施形態において、このホルモンはインスリンである。さらにより好ましい実施形態において、膵島インスリン発現細胞はグルコースに応答性がある。他の実施形態において、in vitroで分化したヒト膵島インスリン発現細胞は、in vivoでヒト膵臓の膵臓β細胞によって分泌されるインスリン量と同程度又はそれを超える量のインスリンを分泌する。
【0548】
本明細書に記載されるプロセスを用いて、他の細胞型を実質的に含まない未熟膵島ホルモン発現細胞を含む組成物を産生することができる。本発明の幾つかの実施形態において、本明細書に記載される方法によって産生された未熟膵島ホルモン発現細胞集団又は細胞培養物は、NGN3、MAFA、MOX1、CER、POU5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーを有意に発現する細胞を実質的に含まない。本明細書に記載される方法によって産生された未熟膵島ホルモン発現細胞集団又は細胞培養物の幾つかの実施形態において、MAFB、SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、PDX1、HB9、GHRL、IAPP、INS、GCG、SST、PP、及び/又はC-ペプチドから成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、NGN3、MAFA、MOX1、CER、POU5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーから成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現よりも大きい。
【0549】
本発明の一実施形態において、マーカー発現に基づく未熟膵島ホルモン発現細胞の記載は、MAFB高、PAX6高、NKX2.2高、SYP高、PP高、CHGA高、NGN3低、PAX4低、及びMAFA低である。
【0550】
成熟膵島ホルモン発現細胞の産生
本発明の実施形態は、hESCから始まる成熟膵島ホルモン発現細胞を産生する方法に関する。前記のように、膵島ホルモン発現細胞は、最初にhESCを分化し胚体内胚葉細胞を産生して、胚体内胚葉細胞を分化しPDX1陽性前腸内胚葉細胞を産生して、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を分化し内分泌前駆細胞を産生した後、さらに内分泌前駆細胞を分化し未熟膵島ホルモン発現細胞を産生することによって産生することができる。幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞をさらに成熟膵島ホルモン発現細胞に分化させることによって、このプロセスを終わらせる。
【0551】
本発明の幾つかの実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞からの成熟膵島ホルモン発現細胞への分化は、細胞が少なくとも1つの成熟膵島細胞ホルモンを発現する能力を有するようになるのに十分な時間、γ-セクレターゼ阻害剤との未熟膵島ホルモン発現細胞の培養物のインキュベートを継続することによって進行する。幾つかの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、内分泌前駆細胞の誘導後約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日又は約10日超で除去される。好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル(Diflurophenacetyl)-L-アラニル)]-S-フェニルグリシンt-
ブチルエステル(DAPT)である。
【0552】
本明細書に記載される成熟膵島ホルモン発現細胞を産生する或る特定のプロセスは、ニコチンアミド、エキセンジン4、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子-1
(IGF1)から成る群から選択される1つ又は複数の因子をヒト内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞培養物又は細胞集団に供給することによって媒介される。幾つかの実施形態において、4つの前記因子が全て同時に供給される。幾つかの実施形態において、内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞の分化の前に、1つ又は複数の前記の因子が細胞培養物に供給され、細胞培養物における少なくとも一部の細胞の成熟膵島ホルモン発現細胞への分化の間、細胞培養物に存在したままである。他の実施形態において、大部分の細胞の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞への分化とほぼ同時に、1つ又は複数の前記の因子が細胞培養物に供給され、少なくとも大部分の細胞が成熟膵島ホルモン発現細胞に分化するまで、細胞培養物に存在したままである。本発明の幾つかの実施形態において、1つ又は複数の前記の因子が、分化プロセスの開始時に、例えばhESC段階で供給され、成熟膵島ホルモン発現細胞への分化の間、細胞培養物に維持される。
【0553】
本明細書中に開示される成熟膵島ホルモン発現細胞の幾つかの製造プロセスにおいて、ニコチンアミドは、内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞の少なくとも一部の成熟膵島ホルモン発現細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在するように細胞に供給される。幾つかの実施形態において、ニコチンアミドは、少なくとも約0.1mM、少なくとも約0.5mM、少なくとも約1mM、少なくとも約2mM、少なくとも約3mM、少なくとも約4mM、少なくとも約5mM、少なくとも約6mM、少なくとも約7mM、少なくとも約8mM、少なくとも約9mM、少なくとも約10mM、少なくとも約11mM、少なくとも約12mM、少なくとも約13mM、少なくとも約14mM、少なくとも約15mM、少なくとも約16mM、少なくとも約17mM、少なくとも約18mM、少なくとも約19mM、少なくとも約20mM、少なくとも約25mM、少なくとも約30mM、少なくとも約35mM、少なくとも約40mM、少なくとも約45mM、少なくとも約50mM、少なくとも約55mM、少なくとも約60mM、少なくとも約65mM、少なくとも約70mM、少なくとも約75mM、少なくとも約80mM、少なくとも約85mM、少なくとも約90mM、少なくとも約95mM、少なくとも約100mM、少なくとも約250mM、少なくとも約500mM、又は少なくとも約1000mMの濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在する。
【0554】
本明細書中に開示される成熟膵島ホルモン発現細胞の他の製造プロセスにおいて、エキセンジン4は、内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞の少なくとも一部の膵島ホルモン発現細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在するように細胞に供給される。幾つかの実施形態において、エキセンジン4は、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約15ng/ml、少なくとも約20ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約30ng/ml、少なくとも約35ng/ml、少なくとも約40ng/ml、少なくとも約45ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約55ng/ml、少なくとも約60ng/ml、少なくとも約65ng/ml.少なくとも約70ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約80ng/ml、少なくとも約85ng/ml、少なくとも約90ng/ml、少なくとも約95ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約110ng/ml、少なくとも約120ng/ml、少なくとも約130ng/ml、少なくとも約140ng/ml、少なくとも約150ng/ml、少なくとも約160ng/ml、少なくとも約170ng/ml、少なくとも約180ng/ml、少なくとも約190ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約250ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約350ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約450ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約750ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在する。
【0555】
本明細書中に開示される成熟膵島ホルモン発現細胞のさらに他の製造プロセスにおいて、HGFは、内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞の少なくとも一部の膵島ホルモン発現細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在するように細胞に供給される。幾つかの実施形態において、HGFは、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約15ng/ml、少なくとも約20ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約30ng/ml、少なくとも約35ng/ml、少なくとも約40ng/ml、少なくとも約45ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約55ng/ml、少なくとも約60ng/ml、少なくとも約65ng/ml、少なくとも約70ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約80ng/ml、少なくとも約85ng/ml、少なくとも約90ng/ml、少なくとも約95ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約110ng/ml、少なくとも約120ng/ml、少なくとも約130ng/ml、少なくとも約140ng/ml、少なくとも約150ng/ml、少なくとも約160ng/ml、少なくとも約170ng/ml、少なくとも約180ng/ml、少なくとも約190ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約250ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約350ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約450ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約750ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在する。
【0556】
本明細書中に開示される成熟膵島ホルモン発現細胞のさらに他の製造プロセスにおいて、IGF1は、内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞の少なくとも一部の膵島ホルモン発現細胞への分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在するように細胞に供給される。幾つかの実施形態において、IGF1は、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約15ng/ml、少なくとも約20ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約30ng/ml、少なくとも約35ng/ml、少なくとも約40ng/ml、少なくとも約45ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約55ng/ml、少なくとも約60ng/ml、少なくとも約65ng/ml、少なくとも約70ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約80ng/ml、少なくとも約85ng/ml、少なくとも約90ng/ml、少なくとも約95ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約110ng/ml、少なくとも約120ng/ml、少なくとも約130ng/ml、少なくとも約140ng/ml、少なくとも約150ng/ml、少なくとも約160ng/ml、少なくとも約170ng/ml、少なくとも約180ng/ml、少なくとも約190ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約250ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約350ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約450ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約750ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物又は細胞集団中に存在する。
【0557】
本明細書に記載されるように成熟膵島ホルモン発現細胞を産生するプロセスの或る特定の実施形態において、1つ又は複数のニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及びIGF1が、1つ又は複数の予め供給された分化因子が細胞培養物から除去された後に供給される。他の実施形態において、1つ又は複数のニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及びIGF1は、予め供給されたか、或いは1つ又は複数のニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及びIGF1とほぼ同時に供給された1つ又は複数の分化因子を含む細胞培養物又は細胞集団に供給される。好ましい実施形態において、予め供給されたか、或いは1つ又は複数のニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及びIGF1とほぼ同時に供給された分化因子としては、DAPT、FGF-10、KAAD-シクロパミン、アクチビンA、アクチビンB、BMP4及び/又はRAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0558】
内分泌前駆細胞及び/又は未成熟膵島ホルモン発現細胞から成熟膵島ホルモン発現細胞を産生する1つのプロセスにおいて、10mMのニコチンアミド、40ng/mlのエキセンジン4、25ng/mlのHGF及び50ng/mlのIGF1を内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞の細胞培養物又は細胞集団に供給する。好ましいプロセスでは、細胞をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で分化する。
【0559】
本明細書に記載されるように、成熟膵島ホルモン発現細胞を産生する或る特定のプロセスにおいて、1つ又は複数の前記の分化因子は、それらの添加後に細胞培養物又は細胞集団から除去される。例えば、ニコチンアミドは、添加後、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日又は約10日以内に除去することができる。幾つかの実施形態において、分化因子は細胞培養物から除去されない。
【0560】
成熟膵島ホルモン発現細胞の培養物は、低血清又は無血清の培地中で産生され得る。或る特定の培養条件下、血清濃度は、約0.05%(v/v)~約20%(v/v)の範囲であり得る。例えば幾つかの分化プロセスにおいて、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、又は約20%(v/v)未満であり得る。幾つかのプロセスにおいて、成熟膵島ホルモン発現細胞を、血清を用いずに、血清代替物を用いずに、且つ/又はインスリン若しくはインスリン様増殖因子を含有する任意のサプリメントを用いずに増殖させる。
【0561】
さらに他のプロセスにおいて、成熟膵島ホルモン発現細胞はB27の存在下で増殖する。このようなプロセスにおいて、B27サプリメントの濃度は、約0.1%(v/v)~約20%(v/v)の範囲、又は約20%(v/v)超の濃度であり得る。或る特定のプロセスにおいて、培地中のB27の濃度は、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.7%(v/v)、約0.8%(v/v)、約0.9%(v/v)、約1%(v/v)、約2%(v/v)、約3%(v/v)、約4%(v/v)、約5%(v/v)、約6%(v/v)、約7%(v/v)、約8%(v/v)、約9%(v/v)、約10%(v/v)、約15%(v/v)又は約20%(v/v)である。代替的には、B27サプリメントの添加濃度は、市販されているB27原液の濃度の倍数で測定され得る。例えば、B27は50×原液としてInvitrogen(Carlsbad, CA)から入手可能である。この原液を十分量、十分な容量の増殖培地に添加することで、所望量のB27を補充した培地が得られる。例えば、50×B27原液10mlを増殖培地90mlに加えることで、5×B27を補充した増殖培地が得られる。培地中のB27サプリメントの濃度は、約0.1×、約0.2×、約0.3×、約0.4×、約0.5×、約0.6×、約0.7×、約0.8×、約0.9×、約1×、約1.1×、約1.2×、約1.3×、約1.4×、約1.5×、約1.6×、約1.7×、約1.8×、約1.9×、約2×、約2.5×、約3×、約3.5×、約4×、約4.5×、約5×、約6×、約7×、約8×、約9×、約10×、約11×、約12×、約13×、約14×、約15×、約16×、約17×、約18×、約19×、約20×、及び約20×超であり得る。
【0562】
成熟膵島ホルモン発現細胞の産生のモニタリング
内分泌前駆細胞及び未熟膵島ホルモン発現細胞の成熟膵島ホルモン発現細胞への発達は
、膵島ホルモン発現細胞に特有のマーカーの発現を求めることによってモニタリングすることができる。幾つかのプロセスでは、マーカーの有無を検出することによって或る特定のマーカーの発現が求められる。代替的には、或る特定のマーカーの発現は、細胞培養物又は細胞集団の細胞に存在するマーカーのレベルを測定することによって求めることができる。或る特定のプロセスでは、成熟膵島ホルモン発現細胞に特有のマーカーの発現、並びにhESC、胚体内胚葉、PDX1陽性前腸内胚葉、内分泌前駆細胞、未熟膵島ホルモン発現細胞、胚体外内胚葉、中胚葉、外肺葉及び/又は他の細胞型に特有のマーカーの有意な発現の欠失が求められる。
【0563】
胚体内胚葉系統の他のあまり分化しない細胞型の産生のモニタリングに関連して記載されるように、定量技法又は半定量技法、例えばブロット転写法及び免疫細胞化学法を用いて、マーカーの発現を測定することができる。代替的に、マーカーの発現は、Q-PCR等の技法の使用によって正確に定量化することができる。さらに、ポリペプチドレベルで、膵島ホルモン発現細胞の多くのマーカーが分泌タンパク質であることが理解される。このように、細胞外のマーカー含有量を測定する技法、例えばELISAが利用され得る。
【0564】
以下の実施例で記載されるように、成熟膵島ホルモン発現細胞のマーカーとしては、グレリン(GHRL)、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、インスリン(INS)、グルカゴン(GCG)、NKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)、ソマトスタチン(SOM、SST)、膵臓ポリペプチド(PP)、シナプトフィジン(SYP)、グルコキナーゼ(GCK)、クロモグラニンA(CHGA)、及び/又は結合ペプチド(C-ペプチド)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるプロセスによって産生された成熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の上で列記されたマーカーを発現することによって、対応する遺伝子産物を産生する。しかし、成熟膵島ホルモン発現細胞が前記のマーカーを全て発現する必要はないことが理解される。例えば、hESCから分化した膵島ホルモン発現細胞は、INSとGHRLとを同時に発現しない。このパターンの遺伝子発現は、ヒト胎児膵臓におけるこれらの遺伝子の発現に一致する。
【0565】
成熟膵島ホルモン発現細胞は内分泌前駆細胞マーカーNGN3及びPAX4を実質的に発現しないので、内分泌前駆細胞の成熟膵島ホルモン発現細胞への移行は、NGN3及びPAX4の発現の低減をモニタリングする一方で、1つ又は複数のGHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドの発現の増大をモニタリングすることによって立証することができる。幾つかのプロセスでは、1つ又は複数の前記のマーカーの発現の増大及び/又は低減をモニタリングすることに加えて、hESC、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞を示す遺伝子の発現もモニタリングする。
【0566】
GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、SYP、GCK、CHGA及びC-ペプチドマーカーの発現が、分化条件によって成熟膵島ホルモン発現細胞において様々なレベルの範囲にわたって誘導されることが理解される。このように、本明細書に記載される幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるGHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、SYP、GCK、CHGA、及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、非膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団、例えば多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞、及び/又は外肺葉細胞におけるGHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現の少なくとも約2倍~少なくとも約10000倍である。他の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるGHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、非膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団、例えば、多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外胚葉細胞におけるGHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現よりも少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約40倍、少なくとも約80倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約2500倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約7500倍、又は少なくとも約10000倍高い。幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるGHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、非膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団、例えば多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外肺葉細胞におけるGHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SST、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現よりもはるかに高い。
【0567】
MAFAマーカーの発現が、例えばINSを同時に発現する細胞で、成熟膵島ホルモン発現細胞において様々なレベルの範囲にわたって増大されることも理解される。分化条件によって、MAFAマーカーの発現が成熟膵島ホルモン発現細胞において様々なレベルの範囲にわたって誘導される。このように、本明細書に記載される幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるMAFAマーカーの発現は、未熟膵島ホルモン発現細胞又は非膵島ホルモン発現細胞集団、例えば多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外肺葉細胞におけるMAFAマーカーの発現の少なくとも約2倍~少なくとも約10000倍である。他の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるMAFAマーカーの発現は、未熟膵島ホルモン発現細胞又は非膵島ホルモン発現細胞、例えば、多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外胚葉細胞におけるMAFAマーカーの発現よりも少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約40倍、少なくとも約80倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約2500倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約7500倍、又は少なくとも約10000倍高い。幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるMAFAマーカーの発現は、未熟膵島ホルモン発現細胞又は他の非膵島ホルモン発現細胞、例えば多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は外肺葉細胞におけるMAFAマーカーの発現よりもはるかに高い。
【0568】
NGN3及び/又はPAX4マーカーの発現が、分化条件によって成熟膵島ホルモン発現細胞において様々なレベルの範囲にわたって低減されることが理解される。このように、本明細書に記載される幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるNGN3及び/又はPAX4マーカーの発現は、内分泌前駆細胞におけるNGN3及び/又はPAX4マーカーの発現よりも少なくとも約2倍~少なくとも約10000倍低い。他の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団におけるNGN3及び/又はPAX4マーカーの発現は、内分泌前駆細胞におけるNGN3及び/又はPAX4マーカーの発現よりも少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約40倍、少なくとも約80倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約2500倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約7500倍、又は少なくとも約10000倍低い。幾つかの実施形態において、NGN3及び/又はPAX4マーカーは、成熟膵島ホルモン発現細胞又は細胞集団において実質的に発現しない。
【0569】
本明細書に記載されるプロセスの幾つかの実施形態において、細胞及び/又は細胞集団からのホルモン放出量を求めることができる。例えば、インスリン放出、グルカゴン放出、ソマトスタチン放出及び/又はグレリン放出の量をモニタリングすることができる。好ましい実施形態において、グルコース応答性インスリン分泌(GSIS)の量が測定される。さらに別の実施形態において、分泌の途絶又は成熟膵島ホルモン発現細胞によって産生される副産物、例えばC-ペプチド及び膵島アミロイドタンパク質がモニタリングされ得る。
【0570】
分泌タンパク質の発現を測定する方法は当該技術分野で既知であることが理解される。例えば、膵島細胞によって産生される1つ又は複数のホルモンに対する抗体は、ELISAアッセイに用いることができる。
【0571】
本発明の幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞によるインスリン放出は、C-ペプチド放出の測定によって測定される。C-ペプチドは、プロインスリンの成熟化の間、インスリンに対して等モル量で産生される分解産物である。C-ペプチドの測定が有利なのは、その半減期がインスリンよりも長いからである。C-ペプチド放出を測定する方法は、当該技術分野において知られている(例えば、抗Cペプチドモノクローナル抗体(Linco Research, St. Louis, Missouri)を使用するELISA)。本発明の幾
つかの実施形態において、hESCから産生される成熟膵島ホルモン発現細胞は、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約650pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約750pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、C-ペプチド(インスリン) 少なくとも約950pmol/細胞DNA 1μg、又はC-ペプチド(インスリン) 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgを分泌する。好ましい実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、単一種の膵島細胞ホルモンを分泌する細胞(例えば、インスリンのみを分泌する細胞)である。或る特定の好ましい実施形態において、インスリンはグルコースに応答して分泌される。他の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の膵島細胞ホルモン、例えば、ソマトスタチン、グルカゴン及び/又はグレリンに加えて、インスリンを分泌する細胞である。
【0572】
幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、当該成熟膵島ホルモン発現細胞によって産生されるインスリンの約80%超をプロセシングする。幾
つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、当該成熟膵島ホルモン発現細胞によって産生されるインスリンの約85%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、又は約99%超をプロセシングする。
【0573】
本発明の他の実施形態において、hESCから産生される成熟膵島ホルモン発現細胞は、グルカゴン 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約650pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約750pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、グルカゴン 少なくとも約950pmol/細胞DNA 1μg、又はグルカゴン 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgを分泌する。好ましい実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、単一種の膵島細胞ホルモンを分泌する細胞(例えば、グルカゴンのみを分泌する細胞)である。他の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の膵島細胞ホルモン、例えば、グレリン、ソマトスタチン及びインスリンに加えて、グルカゴンを分泌する細胞である。
【0574】
本発明のさらに他の実施形態において、hESCから産生される成熟膵島ホルモン発現細胞は、ソマトスタチン 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約650pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約750pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、ソマトスタチン 少なくとも約950pmol/細胞DNA 1μg、又はソマトスタチン 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgを分泌する。好ましい実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、単一種の膵島細胞ホルモンを分泌する細胞(例えば、ソマトスタチンのみを分泌する細胞)である。他の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の膵島細胞ホルモン、例えば、グレリン、グルカゴン及びインスリンに加えて、ソマトスタチンを分泌する細胞である。
【0575】
本発明の他の実施形態において、hESCから産生される成熟膵島ホルモン発現細胞は、グレリン 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約650pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約750pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、グレリン 少なくとも約950pmol/細胞DNA 1μg、又はグレリン 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgを分泌する。好ましい実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、単一種の膵島細胞ホルモンを分泌する細胞(例えば、グレリンのみを分泌する細胞)である。他の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、1つ又は複数の膵島細胞ホルモンに加えて、グレリンを分泌する細胞である。
【0576】
成熟膵島ホルモン発現細胞の濃縮、単離及び/又は精製
任意の前記プロセスによって産生される成熟膵島ホルモン発現細胞は、このような細胞に特異的である親和性タグを用いることによって、濃縮、単離及び/又は精製することができる。成熟膵島ホルモン発現細胞に特異的な親和性タグの例は、抗体、リガンド、又は成熟膵島ホルモン発現細胞の細胞表面上に存在するが、本明細書に記載される方法によって産生される細胞培養物で見出される他の細胞型には実質的に存在しないマーカー分子、例えばポリペプチドに特異的である他の結合剤である。幾つかのプロセスでは、ヒト膵島細胞上で細胞表面の抗原と結合する抗体は、in vitro方法、例えば本明細書で記載される方法によって産生される成熟膵島ホルモン発現細胞の濃縮、単離又は精製のための親和性タグとして用いられる。このような抗体は既知であり、市販されている。例えば、ヒト膵島細胞で細胞表面マーカーに非常に特異的であるモノクローナル抗体は、USBiological(Swampscott, MA)(カタログ番号P2999-40)で市販されている。他の例には、Srikanta, et al.,(1987)Endocrinology, 120:2240-2244(その開示内容全体が参照により本明細書に援用される)で記載されている、膵島細胞の表面上に位置する糖タンパク質に対して非常に特異的なモノクローナル抗体が含まれる。成熟膵島ホルモン発現細胞、例えばin vitroでヒト多能性細胞から誘導されるものに対する親和性タグの好ましい例はNCAMである。NCAMに対する抗体は、例えばAbcam(Cambridge, MA)で市販されている。
【0577】
当業者には、未熟膵島ホルモン発現細胞の濃縮、単離及び/又は精製のための抗体を作製及び使用するプロセスが、膵島ホルモン発現細胞の濃縮、単離及び/又は精製にも容易に適合可能であることが容易に理解される。例えば、幾つかの実施形態において、試薬、例えばNCAM抗体は、成熟膵島ホルモン発現細胞を含有する細胞培養物とインキュベートされ、この細胞培養物は細胞間及び基質の接着を低減させるように処理されている。それから細胞を洗浄、遠心分離及び再懸濁する。(本発明者らは二次抗体を用いない。本発明者らは、直接蛍光結合NCAM抗体を用いる。その後、細胞懸濁液を二次抗体、例えば一次抗体と結合することができるFITC結合抗体とインキュベートする。それから細胞を洗浄、遠心分離及び緩衝液中で再懸濁する。その後、蛍光活性化細胞選別器(FACS
)を用いて、細胞懸濁液を解析及び選別する。抗体結合蛍光細胞を非結合非蛍光細胞とは別に回収し、それによってこのような細胞型が単離される。
【0578】
本明細書に記載されるプロセスの好ましい実施形態において、代替的な親和性に基づいた方法を用いることによって、又は成熟膵島ホルモン発現細胞に特異的である同一の若しくは異なるマーカーを用いたさらなる一連の選別によって、単離細胞組成物をさらに精製することができる。例えば、幾つかの実施形態において、FACS選別を用いて、初めに成熟膵臓ホルモン発現細胞を含む細胞集団由来のNCAM陰性細胞からNCAM陽性成熟膵臓ホルモン発現細胞を単離する。NCAM陽性である細胞を単離するのに再びFACSを用いて、NCAM陽性細胞を選別することによって、この細胞型に特有のマーカー(NKX6.1、MAFA、ISL1又はPAX6を含む)を発現する成熟膵臓ホルモン発現細胞に対して細胞集団を濃縮させる。他の実施形態において、FACS選別を用いて、成熟膵島ホルモン発現細胞以外の細胞集団におけるほとんどの細胞に存在するマーカーに関して陰性選別することによって細胞を分離する。このような陰性選別の例は、1回目の濃縮の後では、NCAM陽性細胞集団における成熟膵島ホルモン発現細胞の表面上で実質的に発現しないが、この細胞集団における多くの他のNCAM陽性細胞では発現するマーカーであるCD133の使用である。
【0579】
本明細書に記載されるプロセスの幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、抗体を用いずに蛍光標識した後、蛍光活性化細胞選別器(FACS)を用いることによって非標識細胞から単離される。このような実施形態において、GFP、YFPをコードする核酸、又は発現性の蛍光マーカーの遺伝子、例えばルシフェラーゼをコードする遺伝子をコードする別の核酸は、前記の方法を用いて成熟膵島ホルモン発現細胞を標識するのに用いられる。例えば、幾つかの実施形態において、GFPをコードする核酸又はその生物学的に活性な断片の少なくとも1つのコピーが、GFP遺伝子産物又はその生物学的に活性な断片の発現がNKX6.1プロモータの制御下であるように、NKX6.1プロモータの下流へと多能性細胞、好ましくはヒト胚性幹細胞に導入される。幾つかの実施形態において、NKX6.1をコードする、核酸の全コード領域は、GFPをコードする核酸又はその生物学的に活性な断片に置き換えられる。他の実施形態において、GFPをコードする核酸又はその生物学的に活性な断片は、NKX6.1をコードする核酸の少なくとも一部にフレーム単位で融合され、それによって融合タンパク質が生成される。このような実施形態において、融合タンパク質は、GFPと同程度の蛍光活性を維持する。
【0580】
プロモータが膵島ホルモン発現細胞で発現されるマーカーと一致していれば、NKX6.1プロモータ以外のプロモータを用いることができることが理解される。1つの例示的なマーカーはNKX2.2である。
【0581】
これまでに前記で記載されたように、蛍光標識細胞、例えば前記の多能性細胞は、成熟膵島ホルモン発現細胞に分化する。成熟膵島ホルモン発現細胞が蛍光マーカー遺伝子を発現するのに対し、他の細胞型は発現しないので、膵島ホルモン発現細胞を他の細胞型から単離することができる。幾つかの実施形態において、蛍光標識された成熟膵島ホルモン発現細胞と標識されない非膵島ホルモン発現細胞との混合物を含む細胞懸濁液はFACSを用いて選別される。成熟膵島ホルモン発現細胞は非蛍光細胞から別々に回収され、それによって成熟膵島ホルモン発現細胞が単離される。必要に応じて、単離細胞組成物は、成熟膵島ホルモン発現細胞に特異的な同一の若しくは異なるマーカーを用いたさらなる一連の選別によってさらに精製することができる。
【0582】
好ましいプロセスでは、培養物が成熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように誘導された後、成熟膵島ホルモン発現細胞は、他の非膵島ホルモン発現細胞から濃縮、単離及び/又は精製される。
【0583】
前記の手順に加えて、成熟膵島ホルモン発現細胞は、細胞単離の他の技法によっても単離することができる。さらに、成熟膵島ホルモン発現細胞は、膵島ホルモン発現細胞の選択的生存又は選択的増殖を促進する増殖条件下での連続継代培養法によっても濃縮又は単離され得る。
【0584】
本明細書に記載される方法を用いて、成熟膵島ホルモン発現細胞及び/又は組織の濃縮、単離及び/又は精製された集団を、in vitroで、少なくとも幾つかの成熟膵島ホルモン発現細胞を産生するのに十分な分化を受けた、多能性細胞培養物又は細胞集団、例えば幹細胞培養物又は集団から産生することができる。好ましい方法では、主に細胞は成熟膵島ホルモン発現細胞に分化することに向けられる。幾つかの好ましい濃縮、単離及び/又は精製の方法は、ヒト胚性幹細胞からの成熟膵島ホルモン発現細胞のin vitro産生に関する。
【0585】
本明細書に記載される方法を用いて、細胞集団又は細胞培養物は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約2倍~約1000倍まで成熟膵島ホルモン発現細胞含有量を濃縮させることができる。幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約5倍~約500倍まで濃縮することができる。他の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約10倍~約200倍まで濃縮することができる。さらに別の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約20倍~約100倍まで濃縮することができる。さらに別の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約40倍~約80倍まで濃縮することができる。或る特定の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は、未処理又はあまり明確に分化しない細胞集団又は細胞培養物に比べて少なくとも約2倍~約20倍まで濃縮することができる。
【0586】
成熟膵島ホルモン発現細胞を含む組成物
本発明の幾つかの実施形態は、成熟膵島ホルモン発現細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の細胞組成物に関し、この成熟膵島ホルモン発現細胞は、in vitroでヒト多能性細胞から誘導され、1つ又は複数の膵臓ホルモンを発現し、ヒト膵島細胞の少なくとも幾つかの機能を有する細胞である。或る特定の実施形態によれば、膵島ホルモン発現細胞は哺乳動物細胞であり、好ましい実施形態において、このような細胞はヒト細胞である。
【0587】
本発明の他の実施形態は、成熟膵島ホルモン発現細胞、及び成熟膵島ホルモン発現細胞よりも明確に分化されない細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。このような実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞よりも明確に分化されない細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。
【0588】
本発明の或る特定の他の実施形態は、成熟膵島ホルモン発現細胞、並びにhESC、前原始線条細胞、内胚葉系中胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陰性前腸内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞(PDX1陽性膵臓内胚葉細胞)、内分泌前駆細胞、及び中胚葉細胞から成る群から選択される1つ又は複数の細胞型を含む、細胞培養物又は細胞集団
等の組成物に関する。幾つかの実施形態において、hESCは、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。或る特定の実施形態において、前原始線条細胞は、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。他の実施形態において、内胚葉系中胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。さらに他の実施形態において、胚体内胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。さらに他の実施形態において、PDX1陰性前腸内胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。或る特定の実施形態において、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。他の実施形態において、内分泌前駆細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。さらに他の実施形態において、中胚葉細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。
【0589】
本発明の他の実施形態は、成熟膵島ホルモン発現細胞及び未熟膵島ホルモン発現細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。このような実施形態において、未熟膵島ホルモン発現細胞は、培養物中の全細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満である。
【0590】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中に記載されるプロセスによって産生され、且つ主要細胞型として成熟膵島ホルモン発現細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。幾つかの実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスは、成熟膵島ホルモン発現細胞を少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、少なくとも約90%、少なくとも約89%、少なくとも約88%、少なくとも約87%、少なくとも約86%、少なくとも約85%、少
なくとも約84%、少なくとも約83%、少なくとも約82%、少なくとも約81%、少なくとも約80%、少なくとも約79%、少なくとも約78%、少なくとも約77%、少なくとも約76%、少なくとも約75%、少なくとも約74%、少なくとも約73%、少なくとも約72%、少なくとも約71%、少なくとも約70%、少なくとも約69%、少なくとも約68%、少なくとも約67%、少なくとも約66%、少なくとも約65%、少なくとも約64%、少なくとも約63%、少なくとも約62%、少なくとも約61%、少なくとも約60%、少なくとも約59%、少なくとも約58%、少なくとも約57%、少なくとも約56%、少なくとも約55%、少なくとも約54%、少なくとも約53%、少なくとも約52%、少なくとも約51%、又は少なくとも約50%含む細胞培養物及び/又は細胞集団を産生する。好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団の細胞はヒト細胞を含む。他の実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスは、成熟膵島ホルモン発現細胞を少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なくとも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%、又は少なくとも約1%含む細胞培養物及び/又は細胞集団を産生する。好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団の細胞はヒト細胞を含む。幾つかの実施形態において、細胞培養物又は細胞集団中の成熟膵島ホルモン発現細胞の割合は、培養物中に残存するフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0591】
本発明のさらに他の実施形態は、成熟膵島ホルモン発現細胞と、内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞との混合物を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物に関する。例えば、約95個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約5個の成熟膵島ホルモン発現細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団が産生され得る。他の実施形態において、約5個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約95個の成熟膵島ホルモン発現細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団が産生され得る。さらに、成熟膵島ホルモン発現細胞と内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞とを他の比率で含む、細胞培養物又は細胞集団が考慮される。例えば、約1000000個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約100000個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約10000個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1000個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約500個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約100個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約10個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約5個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約4個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約2個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約2個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約4個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約5個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約10個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約20個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約50個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約100個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1000個の成熟膵島ホルモン発現細胞、約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約10000個の成熟膵島ホルモン発現細胞、1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約100000個の成熟膵島ホルモン発現細胞、並びに約1個の内分泌前駆細胞及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞毎に少なくとも約1000000個の成熟膵島ホルモン発現細胞を含む組成物が考慮される。
【0592】
本発明の幾つかの実施形態において、産生される成熟膵島ホルモン発現細胞は、ヒト多能性細胞、例えばヒト多能性幹細胞から誘導される。或る特定の実施形態において、ヒト多能性細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊、又は胚の生殖隆起から誘導される。或る特定の他の実施形態において、ヒト多能性細胞は、胚形成期後に発生した、多細胞構造を有する生殖腺組織又は胚組織から誘導される。
【0593】
本発明のさらなる実施形態は、ヒト細胞(例えば、ヒト成熟膵島ホルモン発現細胞)を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物であって、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SS、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現が、ヒト細胞の少なくとも約2%で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも大きい、組成物に関する。他の実施形態において、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SS、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、ヒト細胞の少なくとも約5%で、ヒト細胞の少なくとも約10%で、ヒト細胞の少なくとも約15%で、ヒト細胞の少なくとも約20%で、ヒト細胞の少なくとも約25%で、ヒト細胞の少なくとも約30%で、ヒト細胞の少なくとも約35%で、ヒト細胞の少なくとも約40%で、ヒト細胞の少なくとも約45%で、ヒト細胞の少なくとも約50%で、ヒト細胞の少なくとも約55%で、ヒト細胞の少なくとも約60%で、ヒト細胞の少なくとも約65%で、ヒト細胞の少なくとも約70%で、ヒト細胞の少なくとも約75%で、ヒト細胞の少なくとも約80%で、ヒト細胞の少なくとも約85%で、ヒト細胞の少なくとも約90%で、ヒト細胞の少なくとも約95%で、又はヒト細胞の少なくとも約98%で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、NGN3及び/又はPAX4マーカーの発現よりも大きい。幾つかの実施形態において、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SS、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現が、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、NGN3及び/又はPAX4マーカーの発現よりも大きい、細胞培養物又は細胞集団中のヒト細胞の割合は、フィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0594】
本発明のさらなる実施形態は、in vitroで胚体内胚葉から分化した哺乳動物細胞、例えばin vitroで胚体内胚葉から分化したヒト細胞を含む、細胞培養物又は細胞集団等の組成物であって、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SS、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現が、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約2%で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、NGN3及び/又はPAX4マーカーの発現よりも大きい、組成物に関する。他の実施形態において、GHRL、IAPP、INS、GCG、NKX6.1、SS、PP、SYP、GCK、CHGA及び/又はC-ペプチドマーカーの発現は、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約5%で、in vi
troで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約10%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約15%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約20%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約25%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約30%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約35%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約40%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約45%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約50%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約55%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約60%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約65%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約70%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約75%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約80%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約85%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約90%で、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約95%で、又はin vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約98%で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、NGN3及び/又はPAX4マーカーの発現よりも大きい。
【0595】
本発明の好ましい実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞の細胞培養物及び/又は細胞集団は、非組み換え細胞であるヒト成熟膵島ホルモン発現細胞を含む。このような実施形態において、細胞培養物及び/又は細胞集団は、組み換えヒト成熟膵島ホルモン発現細胞を欠いているか、又は実質的に含まない。
【0596】
本発明の幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団には、ニコチンアミド、エキセンジン4、HGF及び/又はIGF1から選択される1つ又は複数の因子を含む培地も含まれる。幾つかの好ましい実施形態において、ニコチンアミド濃度は少なくとも約10mMであり、エキセンジン4濃度は少なくとも約40ng/mlであり、HGF濃度は少なくとも約25ng/mlであり、IGF1濃度は少なくとも約50ng/mlである。幾つかの実施形態において、培地はDMEMである。
【0597】
本発明の或る特定の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団には、グレリン、インスリン、ソマトスタチン及び/又はグルカゴンから選択される1つ又は複数の分泌ホルモンを含む培地も含まれる。他の実施形態において、培地はC-ペプチドを含む。好ましい実施形態において、培地中の1つ又は複数の分泌ホルモン又はC-ペプチドの濃度は、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン又はC-ペプチド 少なくとも約1pmol/細胞DNA 1μg~グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン又はC-ペプチド 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgの範囲である。さらに好ましい実施形態において、培地中の1つ又は複数の分泌ホルモン又はC-ペプチドの濃度は、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約1pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約10pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約25pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約50pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約75pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約100pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約150pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約200pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約250pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約300pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約350pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約400pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約450pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約500pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約550pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約600pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約650pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約700pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約750pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約800pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約850pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約900pmol/細胞DNA 1μg、グレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約950pmol/細胞DNA 1μg、又はグレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン若しくはC-ペプチド 少なくとも約1000pmol/細胞DNA 1μgである。
【0598】
本明細書に記載される細胞培養物及び/又は細胞集団の幾つかの実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は2つ以上の膵臓ホルモンを分泌する。本明細書に記載される細胞培養物及び/又は細胞集団の他の実施形態において、成熟膵島ホルモン発現細胞は単一の膵臓ホルモンを分泌する。好ましい実施形態において、このホルモンはインスリンである。さらにより好ましい実施形態において、成熟膵島インスリン発現細胞はグルコースに応答性がある。他の実施形態において、in vitroで分化したヒト成熟膵島インスリン発現細胞は、in vivoでヒト膵臓の膵臓β細胞によって分泌されるインスリン量と同程度又はそれを超える量のインスリンを分泌する。
【0599】
本明細書に記載されるプロセスを用いて、他の細胞型を実質的に含まない成熟膵島ホルモン発現細胞を含む組成物を産生することができる。本発明の幾つかの実施形態において、本明細書に記載される方法によって産生された成熟膵島ホルモン発現細胞集団又は細胞培養物は、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーを有意に発現する細胞を実質的に含まない。
【0600】
本発明の一実施形態において、成熟膵島インスリン発現細胞のマーカーの発現に基づく記載は、NKX6.1高、NKX2.2高、INS高、IAPP高、SYP高、GCK高、CHGA高、NGN3低、PAX4低、及びMAFB低である。成熟膵島グルカゴン(glucogon)発現細胞については、マーカー発現に基づく記載は、NKX6.1高、NKX2.2高、GLC高、SYP高、GCK高、CHGA高、NGN3低、PAX4低、及びMAFB高である。
【0601】
膵島ホルモン発現細胞のスクリーニング
本明細書に記載される或る特定のスクリーニング方法は、未熟及び/又は成熟膵島ホルモン発現細胞(共に膵島ホルモン発現細胞と称される)の少なくとも1つの膵臓機能に影響を与えることができる少なくとも1つの化合物を同定する方法に関する。
【0602】
これらのスクリーニング方法の幾つかの実施形態において、in vitroで多能性細胞から分化した膵島ホルモン発現細胞、例えばヒト膵島ホルモン発現細胞を含む細胞集団が得られる。それから、細胞集団に候補化合物を供給する。候補化合物を供給する前又は供給するのとほぼ同時である第1の時点で、所望の膵臓機能の活性が求められる。代替的に、候補化合物を供給した後に、所望の膵臓機能の活性を求めることができる。第1の時点の後であり、候補化合物を細胞集団に供給する工程の後である第2の時点で再び、所望の膵臓機能の活性が求められる。候補化合物が膵島ホルモン発現細胞の少なくとも1つの膵臓機能に影響を与えることができるか否かは、第1の時点での所望の膵臓機能の活性を第2の時点での所望の膵臓機能の活性と比較することによって求められる。第2の時点での所望の膵臓機能の活性が第1の時点での所望の膵臓機能の活性に比べて増減する場合、候補化合物は膵島ホルモン発現細胞の膵臓機能の活性に影響を与えることができる。
【0603】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態は、ヒト膵島ホルモン発現細胞を含む細胞集団又は細胞培養物を利用する。例えば細胞集団は、膵島ホルモン発現細胞を実質的に精製した集団であり得る。代替的には、細胞集団はヒト膵島ホルモン発現細胞を濃縮した集団であり得る。この場合、細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、又は少なくとも約97%超がヒト膵島ホルモン発現細胞である。本明細書中に記載される他の実施形態において、細胞集団は、ヒト細胞の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約85%超がヒト膵島ホルモン発現細胞である、ヒト細胞を含む。幾つかの実施形態において、細胞集団は、非ヒト細胞、例えば非ヒトフィーダー細胞を含む。他の実施形態において、細胞集団は、ヒトフィーダー細胞を含む。このような実施形態において、前記フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約95%超がヒト膵島ホルモン発現細胞である。
【0604】
本明細書に記載されるスクリーニング方法の実施形態において、細胞集団は候補(試験)化合物と接触されるか、又はそうでなければ候補(試験)化合物を提供される。候補化合物は、ヒト膵島ホルモン発現細胞の1つ又は複数の膵臓機能の活性に影響を与える可能性を有し得る任意の分子を含むことができる。本明細書に記載される幾つかの実施形態において、候補化合物は、1つ又は複数の細胞機能に影響を与える化合物であることが知られている分子を含む。代替的な実施形態において、候補化合物は、任意の細胞機能に影響を与えることが知られていない分子を含む。好ましい実施形態において、候補化合物は、ヒト膵島ホルモン発現細胞の膵臓機能の活性に影響を与えることが知られていない分子を含む。
【0605】
本明細書に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態において、候補化合物は小分子を含む。好ましい実施形態において、小分子は分子量が約10000amu以下の
分子である。
【0606】
本明細書に記載される他の実施形態において、候補化合物はポリペプチドを含む。このポリペプチドは、糖タンパク質、リポタンパク質、細胞外基質タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモン、インターロイキン又は増殖因子を含む(が、これらに限定されない)任意のポリペプチドであり得る。
【0607】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態において、候補化合物は、1つ又は複数の濃度で細胞集団に供給される。幾つかの実施形態において、候補化合物は、細胞周囲の培地中の候補化合物の濃度が約0.1ng/ml~約10mg/mlの範囲であるように細胞集団に供給される。幾つかの実施形態において、細胞周囲の培地中の候補化合物の濃度は、約1ng/ml~約1mg/mlの範囲である。他の実施形態において、細胞周囲の培地中の候補化合物の濃度は、約10ng/ml~約100μg/mlの範囲である。さらに他の実施形態において、細胞周囲の培地中の候補化合物の濃度は、約100ng/ml~約10μg/mlの範囲である。好ましい実施形態において、細胞周囲の培地中の候補化合物の濃度は、約5ng/ml、約25ng/ml、約50ng/ml、約75ng/ml、約100ng/ml、約125ng/ml、約150ng/ml、約175ng/ml、約200ng/ml、約225ng/ml、約250ng/ml、約275ng/ml、約300ng/ml、約325ng/ml、約350ng/ml、約375ng/ml、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、約600ng/ml、約625ng/ml、約650ng/ml、約675ng/ml、約700ng/ml、約725ng/ml、約750ng/ml、約775ng/ml、約800ng/ml、約825ng/ml、約850ng/ml、約875ng/ml、約900ng/ml、約925ng/ml、約950ng/ml、約975ng/ml、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約11μg/ml、約12μg/ml、約13μg/ml、約14μg/ml、約15μg/ml、約16μg/ml、約17μg/ml、約18μg/ml、約19μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約75μg/ml、約100μg/ml、約125μg/ml、約150μg/ml、約175μg/ml、約200μg/ml、約250μg/ml、約300μg/ml、約350μg/ml、約400μg/ml、約450μg/ml、約500μg/ml、約550μg/ml、約600μg/ml、約650μg/ml、約700μg/ml、約750μg/ml、約800μg/ml、約850μg/ml、約900μg/ml、約950μg/ml、約1000μg/ml、又は約1000μg/ml超である。
【0608】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるスクリーニング方法の工程は、第1の時点及び第2の時点で所望の膵臓機能の活性を求めることを含む。幾つかのこれらの実施形態において、第1の時点は、候補化合物を細胞集団に供給する前又は供給するのとほぼ同時であり得る。代替的には、幾つかの実施形態において、第1の時点は候補分化因子を細胞集団に供給した後である。幾つかの実施形態において、幾つかの膵臓機能の活性が第1の時点で求められる。
【0609】
前記の実施形態で求められる幾つかの好ましい膵臓機能には、グレリン分泌、インスリン分泌、グルカゴン分泌及びソマトスタチン分泌から成る群から選択される1つ又は複数の膵臓機能が含まれる。
【0610】
第1の時点で所望の膵臓機能の活性を求めることに加えて、本明細書に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態は、第1の時点の後であり、候補化合物を細胞集団に
供給した後である第2の時点で少なくとも1つのマーカーの所望の膵臓機能の活性を求めることを考慮する。このような実施形態において、同じ所望の膵臓機能の活性は、第1の時点及び第2の時点の両方で求められる。幾つかの実施形態において、複数の所望の膵臓機能の活性が第1の時点及び第2の時点の両方で求められる。このような実施形態において、同じ複数の所望の膵臓機能の活性が第1の時点及び第2の時点の両方で求められる。幾つかの実施形態において、複数の所望の膵臓機能の活性は、それぞれが第1の時点の後であり、それぞれが候補化合物を細胞集団に供給した後である複数の時点で求められる。或る特定の実施形態において、所望の膵臓機能の活性はQ-PCRによって求められる。他の実施形態において、所望の膵臓機能の活性は免疫細胞化学法によって求められる。
【0611】
本明細書に記載されるスクリーニング方法の或る特定の実施形態において、第1の時点及び第2の時点で求められる所望の膵臓機能の活性は、膵臓機能、例えばホルモン分泌の活性である。幾つかの実施形態において、このホルモンはインスリン、グレリン、ソマトスタチン又はグルカゴンである。
【0612】
本明細書に記載されるスクリーニング方法の幾つかの実施形態において、候補化合物を細胞集団に供給するのと、第2の時点で所望の膵臓機能の活性を求めるのとの間に十分な時間を経過させる。候補化合物を細胞集団に供給するのと、第2の時点で所望の膵臓機能の活性を求めるのとの間の十分な時間は、最低約1時間~最大約10日であり得る。幾つかの実施形態において、所望の膵臓機能の活性は、候補化合物を細胞集団に供給した後に、複数回求められる。幾つかの実施形態において、十分な時間は、少なくとも約1時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、少なくとも約30時間、少なくとも約36時間、少なくとも約42時間、少なくとも約48時間、少なくとも約54時間、少なくとも約60時間、少なくとも約66時間、少なくとも約72時間、少なくとも約78時間、少なくとも約84時間、少なくとも約90時間、少なくとも約96時間、少なくとも約102時間、少なくとも約108時間、少なくとも約114時間、少なくとも約120時間、少なくとも約126時間、少なくとも約132時間、少なくとも約138時間、少なくとも約144時間、少なくとも約150時間、少なくとも約156時間、少なくとも約162時間、少なくとも約168時間、少なくとも約174時間、少なくとも約180時間、少なくとも約186時間、少なくとも約192時間、少なくとも約198時間、少なくとも約204時間、少なくとも約210時間、少なくとも約216時間、少なくとも約222時間、少なくとも約228時間、少なくとも約234時間、少なくとも約240時間、少なくとも約246時間、少なくとも約252時間、少なくとも約258時間、少なくとも約264時間、又は少なくとも約270時間である。
【0613】
本明細書に記載される幾つかの実施形態において、第2の時点での所望の膵臓機能の活性が第1の時点での所望の膵臓機能の活性に比べて増減していたか否かがさらに求められる。所望の膵臓機能の活性の増減によって、候補化合物が膵島ホルモン発現細胞において所望の膵臓機能の活性に影響を与えることができることが示される。同様に、複数の膵臓機能の活性が求められる場合、第2の時点での複数の膵臓機能の活性が第1の時点での複数の膵臓機能の活性に比べて増減していたか否かがさらに求められる。所望の膵臓機能の活性が第1の時点と比較して第2の時点で増加する、或る特定の実施形態において、増加量は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍超である。幾つかの実施形態において、増加量は2倍未満である。所望の膵臓機能の活性が第1の時点と比較して第2の時点で減少する実施形態において、減少量は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍超である。幾つかの実施形態において、減少量は2倍未満である。
【0614】
hESCの膵島ホルモン発現細胞への分化のための例示的な因子
表1は、hESC培養物から少なくとも幾つかの膵島ホルモン発現細胞を産生するのに用いることができる因子の8つの例示的な組合せを示す。特に、分化プロセスで用いられるそれぞれの因子の濃度、分化プロセス中のそれぞれの因子の添加及び/又は除去のタイミング、分化プロセス中の分化培地、例えば血清中の成分濃度は、胚体細胞系統を経て、最終的に膵島ホルモン発現細胞に分化するhESCの集団に有意に影響を与えることが理解される。
【0615】
表1の1番左側の列は実施例番号を与える。以降の6つの列は、列の見出しに記載された細胞型を産生するか、又は産生を潜在的に高めるのに用いられ得る因子を列記している。例えば、表1は、hESC(0段階)をTGFβスーパーファミリーの増殖因子とインキュベートすることによって、hESCを胚体内胚葉(1段階)に胚体内胚葉に分化させることを示す。表1から、適切な回数でのTGFβスーパーファミリー増殖因子及びレチノイドの適用は、hESCから少なくとも検出可能な量の膵島ホルモン産生細胞を産生するのに十分であると思われ得る。
【0616】
【0617】
試薬-細胞複合体
本発明の幾つかの態様は、1つ又は複数の試薬と結合した1つ又は複数の内分泌前駆細胞又は未熟膵島ホルモン発現細胞の複合体(試薬-細胞複合体)を含む、細胞培養物及び/又は細胞集団等の組成物に関する。例えば、試薬-細胞複合体を含む、細胞培養物及び/又は細胞集団であって、培養物中の内分泌前駆細胞の少なくとも約5%~少なくとも約100%が試薬-細胞複合体の形態である、細胞培養物及び/又は細胞集団が産生され得る。他の実施形態において、試薬-細胞複合体を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%
、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約100%含む細胞培養物及び/又は細胞集団が産生され得る。幾つかの実施形態において、試薬-細胞複合体は、NCAMと結合する1つ又は複数の抗体と結合した1つ又は複数の内分泌前駆細胞を含む。さらに他の実施形態において、試薬-細胞複合体は、NBP10等の、NCAMと結合する1つ又は複数のリガンドと結合した1つ又は複数の内分泌前駆細胞を含む。
【0618】
他の実施形態は、試薬-細胞複合体を含む、細胞培養物及び/又は細胞集団であって、培養物中の未熟膵島ホルモン発現細胞の少なくとも約5%~少なくとも約100%が試薬-細胞複合体の形態である、細胞培養物及び/又は細胞集団を提供する。他の実施形態において、試薬-細胞複合体を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約100%含む細胞培養物及び/又は細胞集団が産生され得る。幾つかの実施形態において、試薬-細胞複合体は、NCAMと結合する1つ又は複数の抗体と結合した1つ又は複数の未熟膵島ホルモン発現細胞を含む。さらに他の実施形態において、試薬-細胞複合体は、NBP10等の、NCAMと結合する1つ又は複数のリガンドと結合した1つ又は複数の未熟膵島ホルモン発現細胞を含む。
【0619】
本明細書中に記載される幾つかの実施形態は、少なくとも約5%の試薬-細胞複合体~少なくとも約95%の試薬-細胞複合体を含む、細胞培養物及び/又は細胞集団に関する。幾つかの実施形態において、細胞培養物又は細胞集団は哺乳動物細胞を含む。好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団はヒト細胞を含む。例えば、或る特定の実施形態は、ヒト細胞を含む細胞培養物であって、ヒト細胞の少なくとも約5%~少なくとも約95%が試薬-細胞複合体の形態の内分泌前駆細胞である、細胞培養物に関する。他の実施形態は、ヒト細胞を含む細胞培養物であって、ヒト細胞の少なくとも約5%~少なくとも約95%が試薬-細胞複合体の形態の未熟膵島ホルモン発現細胞である、細胞培養物に関する。他の実施形態は、ヒト細胞を含む細胞培養物であって、ヒト細胞の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は90%超が試薬-細胞複合体である、細胞培養物に関する。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態において、前記割合は、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。幾つかの実施形態において、試薬-細胞複合体は、NCAM又はSYPと結合した1つ又は複数の内分泌前駆細胞又は未熟膵島ホルモン発現細胞を含む。
【0620】
幾つかの実施形態において、NGN3、PAX4、及び/又はNKX2.2の発現が、前記した試薬-細胞複合体中に存在する内分泌前駆細胞で、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、SYP、SST、GHRL、PAX6、MAFA、INS、GCG及び/又はCHGAの発現と比較して増強される。好ましい実施形態において、NGN3、NKX2.2及び/又はPAX4を発現する内分泌前駆細胞は、有意なレベル又は量のAFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、SYP、SST、GHRL、PAX6、MAFA、INS、GCG及び/又はCHGAを発現しない。
【0621】
幾つかの実施形態において、MAFBの発現は、AFP、SOX7、SOX1、ZIC
1、NFM、NGN3及び/又はMAFAの発現に比べて前記された試薬-細胞複合体に存在する未熟膵島ホルモン発現細胞で高められる。好ましい実施形態において、MAFBを発現する未熟膵島ホルモン発現細胞は、有意なレベル又は量のAFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、NGN3及び/又はMAFAを発現しない。
【0622】
本明細書に記載されるさらなる実施形態は、多能性細胞、例えば幹細胞及び試薬-細胞複合体の両方を含む、細胞培養物及び/又は細胞集団等の組成物に関する。幾つかの実施形態において、この組成物には、多能性細胞、例えば胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞も含まれる。例えば、本明細書に記載される方法を用いて、hESC及び/又は胚体内胚葉細胞と、内分泌前駆細胞の試薬-細胞複合体との混合物を含む組成物を産生することができる。さらに、本明細書に記載される方法を用いて、hESC、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞と、内分泌前駆細胞の試薬-細胞複合体及び/又は未熟膵島ホルモン発現細胞の試薬-細胞複合体との混合物を含む組成物を産生することができる。幾つかの実施形態において、約95個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約5個の試薬-細胞複合体を含む組成物が提供される。他の実施形態において、約5個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約95個の試薬-細胞複合体を含む組成物が提供される。さらに、試薬-細胞複合体細胞と多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞とを他の比率で含む組成物が考慮される。例えば、約1000000個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の試薬-細胞複合体、約100000個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の試薬-細胞複合体、約10000個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の試薬-細胞複合体、約1000個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の試薬-細胞複合体、約500個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の試薬-細胞複合体、約100個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の試薬-細胞複合体、約10個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の試薬-細胞複合体、約5個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の試薬-細胞複合体、約2個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1個の試薬-細胞複合体、約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約個の試薬-細胞複合体、約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約5個の試薬-細胞複合体、約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約10個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約20個の試薬-細胞複合体、約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約50個の試薬-細胞複合体、約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約個の試薬-細胞複合体、約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1000個の試薬-細胞複合体、約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約10000個の試薬-細胞複合体、約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約100000個の試薬-細胞複合体、並びに約1個の多能性細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性膵臓内胚葉細胞毎に少なくとも約1000000個の試薬-細胞複合体を含む組成物が考慮される。本発明の幾つかの実施形態において、多能性細胞はヒト多能性幹細胞である。或る特定の実施形態において、幹細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊又は胚の生殖隆起から誘導される。或る特定の実施形態において、多能性細胞は、胚形成期を越えて発達した多細胞構造の性腺組織又は胚組織から誘導される。
【0623】
ノギンを用いて、膵臓ホルモン発現細胞を産生する方法
あまり分化しない細胞型から膵臓ホルモン発現細胞を分化する方法が前記されている。これらの方法は、適切な分化段階で分化培地にノギンを添加することによって高めることができる。幾つかの実施形態において、ノギンによって、レチノイドを追加せずに前腸内胚葉細胞の分化を容易にすることができる。しかし、ノギンがレチノイドと併せて用いられる場合、一般的に膵臓ホルモン発現細胞の産生が増大する。hESC細胞の膵臓ホルモン発現細胞への分化におけるノギンの使用を記載している特定のプロトコルが、以下の実施例18及び実施例19に記載される。以下の段落で、どのようにしてノギンを分化プロセスで用いることができるかの一般的な記載が与えられる。以下の開示は、前記で、及び参照により本明細書に援用されている米国特許出願で既に完全に記載された方法を組み込むことを理解するべきである。このように、これまでに既に記載された方法の工程の開示は、以下の段落に適用される。
【0624】
本発明の幾つかの実施形態には、TGF-βスーパーファミリーの少なくとも1つの増殖因子を多能性ヒト胚性幹細胞(hESC)の集団に供給し、ヒト胚体内胚葉細胞を得る工程と、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子をヒト胚体内胚葉細胞の集団に供給し、ヒト前腸内胚葉細胞を得る工程と、それからノギンをヒト前腸内胚葉細胞の集団に供給し、ヒト内分泌前駆細胞を得た後にヒト膵島ホルモン発現細胞を形成するのに十分な時間、インキュベートする工程とを含む、ヒト膵臓ホルモン発現細胞を産生する方法が含まれる。幾つかの実施形態において、ヒト膵臓ホルモン発現細胞を形成するのに十分な時間は、細胞集団におけるヒト膵臓ホルモン発現細胞の存在を検出することによって求められた。前記のように、ヒト膵臓ホルモン発現細胞は、或る特定のマーカー発現によって特徴付けられ得る。したがって、このようなマーカー発現を検出する方法、例えばQ-PCR又は免疫細胞化学法を用いて、膵臓ホルモン発現細胞が形成されるのに十分な大体の時間を求めることができる。幾つかの実施形態において、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX1)、グレリン(GHRL)、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、インスリン(INS)、膵臓ポリペプチド(PP)、ISL1転写因子(ISL1)、NKX6転写因子関連遺伝子座1(NKX6.1)、ペアードボックス6(PAX6)、及び膵臓特異的転写因子1a(PTF1a)から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーが検出される。
【0625】
前記方法の幾つかの実施形態において、細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約2%~少なくとも約95%がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する。幾つかの実施形態において、細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は約95%超がヒト膵臓ホルモン発現細胞に分化する。
【0626】
前記の方法の幾つかの実施形態において、セクレターゼ阻害剤、例えばDAPTで細胞集団を分化させる。或る特定の実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、ノギンを供給するのとほぼ同時に、又はノギンを供給した後で細胞集団に供給される。幾つかの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、ノギンを供給する直前に供給される。例え
ば、γ-セクレターゼ阻害剤は、ノギン添加の約3日前~約7日後に供給することができる。好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、ノギンを細胞培養物又は細胞集団に供給した約1日後~約4日後に供給される。より好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、ノギンを細胞培養物又は細胞集団に供給した約3日後に供給される。本発明の幾つかの実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、約0.1μM~約10μMの範囲の濃度で細胞集団に供給される。好ましい実施形態において、γ-セクレターゼ阻害剤は、約1μMの濃度で細胞集団に供給される。
【0627】
前記方法の他の実施形態において、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子は、FGF-10、FGF-22又はFGF-7(KGF)から選択される。好ましい実施形態において、供給される線維芽細胞増殖因子はKGFである。このような実施形態において、KGFは、約1ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度で細胞培養物に供給される。幾つかの実施形態において、KGFは、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約2ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約15ng/ml、少なくとも約20ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約30ng/ml、少なくとも約35ng/ml、少なくとも約40ng/ml、少なくとも約45ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約55ng/ml、少なくとも約60ng/ml、少なくとも約65ng/ml、少なくとも約70ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約80ng/ml、少なくとも約85ng/ml、少なくとも約90ng/ml、少なくとも約95ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約110ng/ml、少なくとも約120ng/ml、少なくとも約130ng/ml、少なくとも約140ng/ml、少なくとも約150ng/ml、少なくとも約160ng/ml、少なくとも約170ng/ml、少なくとも約180ng/ml、少なくとも約190ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約250ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約350ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約450ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約750ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で、分化する細胞培養物に供給され得る。前記方法の幾つかの実施形態において、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子は、線維芽細胞増殖因子受容体IIIb(FGFR2(IIIb))を刺激するか、又はそうでなければそれと相互作用する、任意の線維芽細胞増殖因子又はリガンドを含む。
【0628】
前記の方法のさらに別の実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子を添加するのとほぼ同時に分化細胞集団に供給される。幾つかの実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、線維芽細胞増殖因子を供給した直後に供給される。例えば、ヘッジホッグ阻害剤は、線維芽細胞増殖因子の添加の約2日前~約3日後に供給することができる。好ましい実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、線維芽細胞増殖因子を細胞培養物又は細胞集団に供給するのとほぼ同時に供給される。好ましい実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤はKAAD-シクロパミンである。
【0629】
好ましい実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、約0.01μM~約10μMの範囲の濃度で細胞培養物に供給される。幾つかの実施形態において、ヘッジホッグ阻害剤は、少なくとも約0.01μM、少なくとも約0.02μM、少なくとも約0.04μM、少なくとも約0.08μM、少なくとも約0.1μM、少なくとも約0.2μM、少なくとも約0.3μM、少なくとも約0.4μM、少なくとも約0.5μM、少なくとも約0.6μM、少なくとも約0.7μM、少なくとも約0.8μM、少なくとも約0.9μM、少なくとも約1μM、少なくとも約1.1μM、少なくとも約1.2μM、少なくとも約1.3μM、少なくとも約1.4μM、少なくとも約1.5μM、少なくとも約1.6μM、少なくとも約1.7μM、少なくとも約1.8μM、少なくとも約1.9μM、少なくとも約2μM、少なくとも約2.1μM、少なくとも約2.2μM、少なくとも約2.3μM、少なくとも約2.4μM、少なくとも約2.5μM、少なくとも約2.6μM、少なくとも約2.7μM、少なくとも約2.8μM、少なくとも約2.9μM、少なくとも約3μM、少なくとも約3.5μM、少なくとも約4μM、少なくとも約4.5μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約30μM、少なくとも約40μM、又は少なくとも約50μMの濃度で供給され得る。
【0630】
hESCを胚体内胚葉細胞に分化させる工程において、TGF-βスーパーファミリーの増殖因子が細胞集団に供給される。幾つかの実施形態において、TGF-βスーパーファミリーは、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB、及びそれらの組合せから成る群から選択される。好ましい実施形態において、TGF-βスーパーファミリーはアクチビンAを含む。幾つかの実施形態において、アクチビンAは、約10ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度で前記hESCに供給される。幾つかの実施形態において、アクチビンAは、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞集団に供給される。
【0631】
前記方法の幾つかの実施形態において、hESCには、ウイングレス型MMTV組込部位ファミリー成員3A(Wnt3A)も供給される。好ましい実施形態において、Wnt3Aは、約1ng/ml~約1000ng/mlの範囲の濃度で供給される。幾つかの実施形態において、Wnt3Aは、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、又は少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞集団に供給される。
【0632】
前記の方法の幾つかの実施形態は、胚体内胚葉細胞の前記細胞集団に存在し得るTGF-βスーパーファミリーの任意の増殖因子を回収することを含む。このような実施形態において、TGF-βスーパーファミリー増殖因子は、細胞培養物に外から供給されたTGF-βスーパーファミリー増殖因子である。すなわち、回収されるTGF-βスーパーファミリー増殖因子は、当業者によって調整されるような培地の基礎成分として存在するTGF-βスーパーファミリー増殖因子ではない。
【0633】
前記の方法のさらなる実施形態は、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子を供給するのとほぼ同時に、又は供給した後で、レチノイドを細胞集団に供給することを含む。或る特定の実施形態において、レチノイドは、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子を供給するのとほぼ同時に、又は少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子を供給した後で、細胞集団に供給される。幾つかの実施形態において、レチノイドは、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子を供給する直前に供給される。他の実施形態において、レチノイドは、ノギンを供給するのとほぼ同時に細胞集団に供給される。例えば、レチノイドは、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子の添加の約3日前~約7日後に供給することができる。好ましい実施形態において、レチノイドは、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子を細胞培養物又は細胞集団に供給した約1日後~約4日後に供給される。より好ましい実施形態において、レチノイドは、少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子を細胞培養物又は細胞集団に供給した約3日後に供給される。
【0634】
前記方法の幾つかの実施形態において、レチノイドは、約0.01μM~約100μMの範囲の濃度で、分化する細胞集団に供給される。幾つかの実施形態において、レチノイ
ドは、少なくとも約1nM、少なくとも約0.01μM、少なくとも約0.02μM、少なくとも約0.04μM、少なくとも約0.08μM、少なくとも約0.1μM、少なくとも約0.2μM、少なくとも約0.3μM、少なくとも約0.4μM、少なくとも約0.5μM、少なくとも約0.6μM、少なくとも約0.7μM、少なくとも約0.8μM、少なくとも約0.9μM、少なくとも約1μM、少なくとも約1.1μM、少なくとも約1.2μM、少なくとも約1.3μM、少なくとも約1.4μM、少なくとも約1.5μM、少なくとも約1.6μM、少なくとも約1.7μM、少なくとも約1.8μM、少なくとも約1.9μM、少なくとも約2μM、少なくとも約2.1μM、少なくとも約2.2μM、少なくとも約2.3μM、少なくとも約2.4μM、少なくとも約2.5μM、少なくとも約2.6μM、少なくとも約2.7μM、少なくとも約2.8μM、少なくとも約2.9μM、少なくとも約3μM、少なくとも約3.5μM、少なくとも約4μM、少なくとも約4.5μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約30μM、少なくとも約40μM、少なくとも約50μM、少なくとも約75μM、又は少なくとも約100μMの濃度で供給される。好ましい実施形態において、レチノイドはレチノールである。このような実施形態において、レチノールは、B27サプリメントに含まれるものであり得る。さらに好ましい実施形態において、レチノイドはレチノイン酸である。
【0635】
前記方法の幾つかの実施形態において、hESCは、約2%未満の血清を含む培地中でヒト胚体内胚葉細胞に分化する。例えば、例えば幾つかの分化プロセスにおいて、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、又は約2%(v/v)未満であり得る。幾つかの実施形態において、分化は、血清非存在下、並びにインスリン及び/又はインスリン様増殖因子非存在下で開始される。分化の間、血清濃度は、適切な細胞生存を促進するために徐々に増加し得る。好ましい実施形態において、hESCの胚体内胚葉細胞への分化は、血清非存在下、及びインスリン又はインスリン様増殖因子を含む任意のサプリメント非存在下で開始される。血清の非存在及びインスリン又はインスリン様増殖因子を含むサプリメントの非存在は、約1日~約2日間維持され、その後分化の間中、血清を分化細胞培養物に徐々に添加する。好ましい実施形態において、血清の濃度は、分化の間、約2%を超えない。
【0636】
前記の方法に関して、hESCは、桑実胚、胚のICM及び胚の生殖隆起から成る群から選択される組織から誘導され得る。好ましい実施形態において、hESCは着床前胚から誘導される。
【0637】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を使用しないhESCの内分泌前駆細胞及び膵臓ホルモン発現細胞への分化
本明細書に挙げられる本発明の幾つかの実施形態は、任意の発達段階の間の相当期間、相当量の酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で培養及び/又は分化しなかったと本明細書に記載されたようなin vitro細胞培養物及びin vitro細胞集団に関する。酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で培養及び/又は分化する細胞に関して、「相当量」は、酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、細胞培養物又は細胞集団におけるヒト細胞の約半数でヒストンデアセチラーゼへの阻害効果を媒介するのに十分な任意の量を意味する。酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で培養及び/又は分化する細胞に関して、「相当期間」は、酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、細胞培養物又は細胞集団におけるヒト細胞の約半数でヒストンデアセチラーゼへの阻害効果を媒介するのに十分な任意の期間を意味する。したがって、酪酸ナトリウム又は他のヒ
ストンデアセチラーゼ阻害剤の濃度、及びそれが細胞培養物に存在する時間の両方が、阻害効果の程度に影響を与える。例えば相当量は、約1nM~約100mMの範囲であり得る。幾つかの実施形態において、相当量は、約1nM、約2nM、約5nM、約10nM、約20nM、約30nM、約40nM、約50nM、約75nM、約100nM、約250nM、約500nM、約750nM、約1μM、約10μM、約25μM、約50μM、約75μM、約100μM、約250μM、約500μM、約750μM、約1mM、約10mM、約25mM、約50mM、約75mM、約100mM、又は約100mM超である。幾つかの実施形態において、相当期間は、約10分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、又は約5日超であり得る。例えば、酪酸ナトリウム又は別のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で培養及び/又は分化しなかった細胞型としては、hESC、ヒト胚体内胚葉細胞、ヒト前腸内胚葉細胞、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞、ヒト内分泌前駆細胞、ヒト未熟膵臓ホルモン発現細胞及び成熟膵臓ホルモン発現細胞が挙げられる。本発明の幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるようなin vitro細胞培養物及びin vitro細胞集団が、それらの発達段階の間の1つ又は複数の時点で酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の完全な非存在下で培養及び/又は分化される。
【0638】
本明細書に記載されるさらなる実施形態には、相当量の酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の非存在下で1つ又は複数の前記の細胞培養物又は細胞集団を産生する方法が含まれる。このような実施形態において、相当量の外因性の酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、分化プロセスの任意の段階間の任意の相当期間、細胞培養物又は細胞集団の細胞に供給されない。前記のように、「相当量」は、細胞培養物又は細胞集団におけるヒト細胞の約半数でヒストンデアセチラーゼへの阻害効果を媒介するのに十分な酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の任意の量を意味する。また前記のように、「相当期間」は、酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、細胞培養物又は細胞集団におけるヒト細胞の約半数でヒストンデアセチラーゼへの阻害効果を媒介するのに十分な任意の期間を意味する。或る特定の実施形態において、本明細書に記載される分化方法には、相当量の酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の非存在下で、hESC、ヒト胚体内胚葉細胞、ヒト前腸内胚葉細胞、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞、ヒト内分泌前駆細胞、ヒト未熟膵臓ホルモン発現細胞及び成熟膵臓ホルモン発現細胞を分化することが含まれる。本発明の幾つかの実施形態において、hESC、ヒト胚体内胚葉細胞、ヒト前腸内胚葉細胞、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞、ヒト内分泌前駆細胞、ヒト未熟膵臓ホルモン発現細胞及び成熟膵臓ホルモン発現細胞が、酪酸ナトリウム又は他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の完全な非存在下で培養及び/又は分化される。
【0639】
非組み換えhESCの内分泌前駆細胞及び膵臓ホルモン発現細胞への分化
本発明のさらなる実施形態は、hESC、ヒト胚体内胚葉細胞、ヒト前腸内胚葉細胞、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞、ヒト内分泌前駆細胞、ヒト未熟膵臓ホルモン発現細胞及び成熟膵臓ホルモン発現細胞から選択される1つ又は複数の細胞型を含む非組み換え細胞培養物及び非組み換え細胞集団に関する。非組み換え細胞培養物及び非組み換え細胞集団の幾つかの実施形態において、少なくとも1つの細胞型が非組み換え細胞型である。好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団における全ての細胞型が非組み換え細胞型である。「非組み換え」とは、細胞が、1つ又は複数の外因性の遺伝子産物、或いは1つ又は複数の外因性の遺伝子、特に選択及び/又はスクリーニングに用いることができる外因性のマーカー遺伝子を含む(が、これらに限定されない)外因性のマーカー遺伝子の機能部分の産物を発現するように遺伝子操作されていないことを意味する。外因性のマーカー遺伝子の具体的な例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、励起緑色蛍光タンパク質(EGFP)、ルシフェラーゼ及び細胞選別に有用な任意の他のマーカーをコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的な外因性のマーカー遺伝子には、抗生物質抵抗性遺伝子が含まれる。幾つかの実施形態において、非組み換え細胞には、外因性又は外来の遺伝子を含有するように遺伝子操作されなかった細胞が含まれる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される細胞培養物及び細胞集団は核型的に(kaiyotypically)正常である。
【0640】
本発明のさらなる実施形態は、hESC、ヒト胚体内胚葉細胞、ヒト前腸内胚葉細胞、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞、ヒト内分泌前駆細胞、ヒト未熟膵臓ホルモン発現細胞及び成熟膵臓ホルモン発現細胞から選択される1つ又は複数の細胞型を含む非組み換え細胞培養物及び非組み換え細胞集団を産生する方法に関する。このような実施形態において、細胞培養物又は細胞集団における1つ又は複数の細胞型は非組み換え細胞型である。好ましい実施形態において、細胞培養物又は細胞集団における全ての細胞型が非組み換え細胞型である。本明細書に記載される方法の特に好ましい実施形態において、非組み換えhESCは、胚体内胚葉細胞に、及びさらにホルモン発現細胞に分化し、それによって非組み換えホルモン発現細胞を産生する。或る特定の実施形態において、本明細書に記載される方法には、外因性又は外来のマーカー遺伝子産物の発現又は非発現に基づき細胞を選別する工程が含まれない。マーカー遺伝子産物の例は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、励起緑色蛍光タンパク質(EGFP)、ルシフェラーゼ及び細胞選別に有用な任意の他のマーカーである。幾つかの実施形態において、外因性又は外来のマーカータンパク質をコードする遺伝子を含有するように遺伝子操作されなかった、細胞培養物又は細胞集団における非組み換え細胞は、胚体内胚葉細胞、及びさらにホルモン発現細胞に分化する。幾つかの実施形態において、非組み換え細胞には、外因性又は外来の遺伝子を含有するように遺伝子操作されなかった細胞が含まれる。幾つかの実施形態において、核型的に正常な細胞は、胚体内胚葉細胞、及びさらにホルモン発現細胞に分化し、それによって非組み換えホルモン発現細胞を産生する。
【0641】
本発明を包括的に記載してきたが、例示のみを目的として本明細書中に提供され、限定することを意図しない、或る特定の実施例を参照することによりさらなる理解が達成され得る。
【実施例0642】
以下の実施例の多くにより、多能性ヒト細胞の使用について説明する。多能性ヒト細胞を産生する方法は、当該技術分野において既知であり、多数の科学出版物、例えば米国特許第5,453,357号、同第5,670,372号、同第5,690,926号、同第6,090,622号、同第6,200,806号、及び同第6,251,671号、並びに米国特許出願公開第2004/0229350号(これらの開示内容全体が、参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0643】
<実施例1>
ヒトES細胞
膵島ホルモン発現細胞の発生についての研究のために、本発明者らは、多能性であり、且つ正常核型を維持しながら培養中に外見上無限に分裂し得るヒト胚性幹細胞を利用した。単離のための免疫学的方法又は機械的方法のいずれかを使用して、5日齢胚内部細胞塊からES細胞を誘導した。特に、ヒト胚性幹細胞株hESCyt-25を、患者によるインフォームドコンセント後に、体外受精周期からの過剰凍結胚から誘導した。解凍の直後に、ES培地(DMEM、20% FBS、非必須アミノ酸、β-メルカプトエタノール、及びFGF2)中のマウス胚線維芽細胞(MEF)上で孵化胚盤胞を平板培養した。胚が培養皿に接着し、約2週間後、未分化hESCの領域を、MEFを含む新たな皿に移した。機械的に切断し、ディスパーゼで簡単に消化した後、細胞クラスターを機械的に採取し出し、洗浄し、再度平板培養することによって移動を達成した。誘導以来、hESCyt-25を100回にわたって連続継代した。本発明者らは、内分泌前駆細胞、及びその後膵島ホルモン発現細胞を産生するための出発材料として、hESCyt-25ヒト胚性幹細胞株を利用した。さらに、本発明者らは、本発明者ら及び他者の両方によって開発された他のhESC株、例えば、限定するものではないが、Cyt-49、Cyt-203、BG01、BG02、及びBG03を使用した。
【0644】
幹細胞又は他の多能性細胞が本明細書中に記載される分化手順のための出発材料としても使用され得ることは当業者によって理解される。例えば、当該技術分野において既知の方法によって単離され得る胚性生殖隆起から得られる細胞は、多能性細胞の出発材料として使用され得る。
【0645】
<実施例2>
hESCyt-25特性化
ヒト胚性幹細胞株hESCyt-25は、培養中18ヶ月にわたって、正常な形態特性、核型特性、増殖特性及び自己再生特性を維持した。この細胞株は、OCT4、SSEA-4及びTRA-1-60抗原(これらはすべて、未分化hESCに特徴的である)に対して強い免疫反応性を示し、且つアルカリホスファターゼ活性、及び他のhESC株化細胞と同一の形態を示す。さらに、ヒト幹細胞株hESCyt-25は、懸濁液中で培養される場合、胚様体(EB)も容易に形成する。その多能性の実証として、hESCyT-25は、3つの主要胚葉を表す各種細胞型に分化する。ZIC1に関するQ-PCR、並びにネスチン及びより成熟した神経細胞マーカーに関する免疫細胞化学(ICC)によって外胚葉産生を実証した。β-IIIチューブリンに関する免疫細胞化学染色を、初期ニューロンに特徴的な伸長細胞のクラスターにおいて観察した。予め、レチノイン酸で懸濁液中のEBを処理して、多能性幹細胞の胚体外系統である臓側内胚葉(VE)への分化を誘導した。処理細胞は、54時間処理することによって、高レベルのα-フェトプロテイン(AFP)及びSOX7(VEの2つのマーカー)を発現した。単層中で分化した細胞は、免疫細胞化学染色によって実証されるように、散在性パッチ中でAFPを発現した。以下に記載するように、hESCyT-25細胞株は、AFP発現がない場合のSOX17に関するリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)及び免疫細胞化学によって立証されるように、胚体内胚葉も形成可能であった。中胚葉への分化を実証するために、分化するEBを、幾つかの時点でのブラキュリ遺伝子発現に関して分析した。ブラキュリ発現は、実験を通して漸進的に増加した。前記に鑑みて、3つの胚葉を表す細胞を形成する能力によって示されるように、hESCyT-25株は多能性である。
【0646】
<実施例3>
膵臓ホルモンを発現する細胞の産生における中間体としての胚体内胚葉細胞
ヒト胚性幹細胞を4工程のプロトコルによって21日間分化させることにより、膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程に関しては3つの異なる条件を使用して、その後はすべてのプレートに同一の処理を施した。第1工程は、下記条件のうち1つの下での5日間の分化を含んだ:i)アクチビンA(100ng/ml)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))、ii)外因性増殖因子を含まない2% FBS(それにより中胚葉及び胚体外内胚葉を産生する)、又はiii)フォリスタチン(50ng/ml)及びノギン(100ng/ml)(それにより神経外胚葉を産生する)。第2工程は、FGF10(50ng/mL)及びKAAD-シクロパミン(1μM)を含有する、2% FBSを含むRPMI中での3日間の分化を含んだ。第3工程は、FGF10(50ng/mL)、KAAD-シクロパミン(1μM)、レチノイン酸(2μM)及びDAPT(1μM)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での5日間の分化を含んだ。第4工程は、ニコチンアミド(10mM)、エキセンジン4(40ng/mL)、肝細胞増殖因子(HGF-25ng/mL)及びインスリン様増殖因子(IGF)-1(50ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEM中での8日間の分化から成っていた。複製試料を複数の時点で各プレートから採取し、遺伝子発現をリアルタイム定量的PCRによって分析した。
【0647】
図2A~
図2Fで示されるように、分化5日目で、SOX17及びCXCR4の発現の上昇によって示されるように、アクチビンA処理によって、胚体内胚葉(DE)が強く産生された。因子(2NF)なしの処理及びホリスタチン/ノギン処理でのSOX17及びCXCR4の発現の相対的欠失によって、ほとんど又は少しのDEも、これらの条件下では産生されないことが示された。これに対して、因子なしの処理によって、胚体外内胚葉のマーカーであるSOX7、及び様々な中胚葉集団で発現されるISL1の強い発現が誘導された。ホリスタチン及びノギンによる処理によって神経外肺葉への強い分化を示す、SOX1及びPAX6の強い発現が誘導された。
図2G~
図2Nで示されるように、本発明者らは、膵臓内胚葉マーカーPDX1、並びに膵臓内分泌転写因子(NGN3、NKX2.2、NKX6.1)及び内分泌ホルモンの発現がDEの産生の後に起こることを見出した。これらの細胞の効率的な産生は、DEの効率的な産生に対応している。胚体外内胚葉/中胚葉又は初期神経外胚葉の系統がDEの代わりに誘導される場合、膵臓内胚葉又は膵臓内分泌マーカーは、DEが濃縮された培養物に適用されると膵島ホルモン遺伝子の発現が生じる同一の培養条件による処理の後にこれらの細胞ではあまり発現しない。しかし、hESCのDEへの前特異化(pre-specification)は、PDX1、NGN3、インスリン、及びグルカゴンの発現を特徴とする成熟膵臓表現型を達成するのに十分である。
【0648】
<実施例4>
インスリン/IGFシグナル伝達はPDX1タンパク質の翻訳を促進する
ヒト胚性幹細胞を、アクチビンA(100ng/ml)を含有するRPMI培地中で5日間分化させた。FBS濃度は、0%(最初の24時間)、続く0.2%(次の24時間)から、その後2%(残りの3日間)へと変化した。次の4日間、プレートを異なる培地条件に付した。i)2% FBS及びアクチビンA(100ng/ml)を含むRPMI、ii)2% FBS、アクチビンA(25ng/ml)及びレチノイン酸を含むRPMI、iii)0.2% FBS及びB27サプリメント(1:100)、アクチビンA(25ng/ml)及びレチノイン酸を含むCMRL、並びにiv)0.2% FBS及びB27サプリメント(1:100)、アクチビンA(25ng/ml)、レチノイン酸及びエキセンジン(40ng/ml)を含むCMRLのいずれかの中でインキュベートした。レチノイン酸の濃度は、2μM(48時間)、続く1μM(24時間)から、0.2μM(最後の24時間)へと変化した。7、8及び9日目に、タンパク質及びmRNAの分析用に細胞を回収した。
【0649】
PDX1タンパク質の発現を促進する別の因子は、インスリン(例えば、約0.2~20μg/mlの濃度)又はインスリン様増殖因子(例えば、約10~500ng/mlの濃度)である。十分なインスリンシグナル伝達なしにPDX1のmRNAは発現したが、PDX1タンパク質への有意な翻訳はなかった(
図4A、
図4B)。基本培地は、2% FBSを含むか又は含まない、RPMI、CMRL、OptiMEM、又はDMEMであり得る。基本培地に十分なインスリン/IGF及びFGF10を補充すると、PDX1タンパク質が発現する。
【0650】
<実施例5>
レチノイン酸はhESCの膵臓インスリン発現表現型への分化を促進する
ヒト胚性幹細胞を4工程のプロトコルによって17日間分化させることにより、膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、アクチビンA(100ng/mL)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))中での5日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/mL)及びKAAD-シクロパミン(1μM)を含有する、2% FBSを含むRPMI中での2日間の分化、その後DAPT(1μM)も含有させてのさらに2日の分化を含んだ。第3工程は、FGF10(50ng/mL)、KAAD-シクロパミン(1μM)、DAPT(1μM)を含有し、且つレチノイン酸(1μM)添加又は無添加のいずれかで、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での5日間の分化を含んだ。第4工程は、ニコチンアミド(10mM)、エキセンジン4(50ng/mL)、肝細胞増殖因子(HGF 25ng/mL)及びインスリン様増殖因子(IGF)-1(50ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での4日間の分化を含んだ。複製試料を複数の時点で各プレートから採取し、遺伝子発現をリアルタイム定量的PCRによって分析した。
【0651】
この初期前腸内胚葉は、レチノイン酸の適用によってさらに特異化され、膵臓ホルモン産生細胞の産生を促進した。重要なことは、レチノイン酸を(約0.1μM~5μMの濃度で)少なくとも約1日間適用させなければ、膵臓内分泌ホルモンであるインスリンは発現しなかった(
図5A~
図5Hを参照されたい)。このことは、背側膵芽がインスリン産生β細胞の産生に対して優勢であることを強く示唆している。この結果は、インスリン及びグルカゴンが腹側芽及び背側芽の両方で発現するラット及びマウスと正反対である。この膵臓内胚葉段階は、PDX1、HB9及びHNF6/onecut2のマーカーの発現を特徴とする。
【0652】
<実施例6>
γ-セクレターゼ阻害は内分泌前駆細胞及びホルモン発現細胞の効率的な誘導を促進する
ヒト胚性幹細胞を5工程のプロトコルによって19日間分化させることにより、膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、アクチビンA(100ng/mL)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))中での5日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/mL)及びKAAD-シクロパミン(0.5μM)を含有する、2% FBSを含むRPMI中での2日間の分化を含んだ。第3工程は、FGF10(50ng/mL)、KAAD-シクロパミン(0.2μM)及びレチノイン酸(1μM)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での4日間の分化を含んだ。第4工程は、エキセンジン4(40ng/mL)を含有し、且つ各種濃度のγ-セクレターゼ阻害剤DAPT(0μM、1μM、3μM、又は10μM)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むCMRLでの2日間の処理を含んだ。最終工程は、ニコチンアミド(10mM)、エキセンジン4(40ng/mL)及びインスリン様増殖因子(IGF)-1(50ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEM中での6日間の分化を含んだ。複製試料を各プレートから採取し、遺伝子発現をリアルタイム定量的PCRによって分析した。
【0653】
前記の因子及び培地条件の一時的な適用に従った高レベルのPDX1タンパク質の産生後、内分泌ホルモン産生に対する最終工程は、γ-セクレターゼ阻害剤の添加であった。γ-セクレターゼ阻害剤は、転写因子NGN3の一過的な誘導を促進した。γ-セクレターゼ阻害剤は、ノッチ細胞内ドメインの酵素放出を効率的に阻害し、したがってノッチ経路活性の阻害剤(ノッチ阻害剤(inbitior))としても機能することが知られている。KDの範囲における任意の標準的なγ-セクレターゼ阻害剤の適用によって、HES1等のノッチ標的遺伝子の発現の阻害によって測定されるように、ノッチが阻害される。
図6A~
図6Fで示されるように、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、又は主な膵臓転写因子はDAPTの非存在下でごくわずかしか又は全く産生されなかった。レチノイン酸の分化工程後、又は分化工程中、短期間でγ-セクレターゼ阻害又はノッチ阻害を与えることが有益である。
【0654】
<実施例7>
胚体内胚葉は内分泌ホルモン発現を達成するために一連の連続工程を通じて分化し得る
ヒト胚性幹細胞を4工程又は5工程のプロトコルによって16日間分化させることにより、膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、アクチビンA(100ng/mL)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))中での3日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/mL)及びKAAD-シクロパミン(0.2μM)を含有する、2% FBSを含むRPMI中での3日間の分化を含んだ。4工程のプロトコルにおいて、第3工程は、FGF10(50ng/mL)、KAAD-シクロパミン(0.2μM)、レチノイン酸(2μM)及びDAPT(1μM)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での4日間の分化を含んだ。5工程のプロトコルでは、この4日の期間を、同一基本培地中での2つの別個の処理に分けた。2日間は、培地はFGF10(50ng/mL)、KAAD-シクロパミン(0.2μM)及びレチノイン酸(2μM)を含有した。続く2日間は、FGF10を除去し、γ-セクレターゼ阻害剤DAPT(1μM)を添加した。両方のプロトコルの最終工程は、ニコチンアミド(10mM)、エキセンジン4(40ng/mL)、肝細胞増殖因子(HGF 25ng/mL)及びインスリン様増殖因子(IGF)-1(50ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEM中での6日間の分化を含んだ。複製試料を複数の時点で各プレートから採取し、遺伝子発現をリアルタイム定量的PCRによって分析した。
【0655】
図1で示されるように、膵臓ホルモン産生細胞の産生を引き起こす転写因子の外観の連続的な不変パターンをもたらす時間的に連続した遺伝子発現が存在していた。
図3A~
図3Lで示されるように、時間的に動的な遺伝子発現によって、hESCが、in vivoで膵臓の発達中に発生する同じ中間体を経て移行することが示された。低FBSでアクチビンを適用する第1工程は、DEを強く産生することがこれまでに特徴付けられている(D 'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541,(2005))。工程2中
の処理の結果、DE形成後にFOXA1及びHNF1bの発現が有意に増大した(
図3A、
図3B)。この工程(日数2~4日)は、内胚葉の後方化(posteriorization)を示すことが多く、アクチビンシグナル伝達の除去によってさらに促進された。さらに、FGF10の添加(5ng/ml~500ng/ml)は、前腸細胞を膵臓ドメインにさらに特異化したKAAD-シクロパミンの添加(0.1μM~2μMのソニックヘッジホッグ阻害剤)と同時が有益であった。分化の次の工程は、レチノイン酸(RA)の適用を伴い、HNF6及びPDX1の発現が強く増大した(
図3C、
図3D)。PDX1発現膵臓前駆体の内分泌系統へのさらなる分化を誘起するために、ノッチシグナル伝達を阻害することが有益であった。このことは、γ-セクレターゼ阻害剤の適用によって達成された。この種類の薬剤は、ノッチ分子の膜内切断を阻害し、それによって活性化ノッチ細胞内ドメインの放出が妨げられる。RA添加の終結日、又はRA回収の直後でのγ-セクレターゼ阻害剤DAPTの2~4日の適用によって、NGN3及びPAX4発現が一過的に誘導された(
図3E、
図3F)。これらの2つの遺伝子は内分泌前駆細胞では発現したが、成熟内分泌ホルモン産生細胞では発現しなかった。転写因子NKX2.2及びNKX6.1、並びに膵臓ホルモンの発現は、内分泌前駆細胞段階の誘導の後に起こった(
図3G~
図3L)。
【0656】
<実施例8>
膵臓内分泌ホルモンの発現
ヒト胚性幹細胞は、実施例3及び実施例4で示されたように、この実験で分化し、それから免疫細胞化学法で処理して膵島抗原を検出した。室温で15分間、PBS中の4%(w/v)パラホルムアルデヒドで培養物を固定し、TBSで数回洗浄して、TBS++(3%正常なロバ血清(Jackson ImmunoResearch Laboratories)と0.25%(w/v)トリトンX-100(Sigma)とを含有するTBS)で30分間遮断した。一次抗体及び二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)をTBS++中で希釈し、それぞれ4℃で24時間又は室温で2時間、インキュベートした。
【0657】
図7A~
図7Dで示されるように、インスリン、グルカゴン及びソマトスタチンは、パッチ内の個々の細胞又は単離された群で、及び2つ以上のホルモンを発現する細胞でも発現された。
図8A~
図8Dで示されるように、hESCからの膵島ホルモン発現細胞への連続分化(ES/ME/DE/FE/膵臓E/膵臓内分泌細胞/膵島ホルモン)後に、インスリン、グルカゴン及びソマトスタチン細胞が個々に産生された。さらに、
図8Dで示されるように、二重及び三重に標識したホルモン含有細胞も産生された。ヒト膵臓の初期の胎児発達中、初めに複数のホルモンを産生する細胞が豊富に存在し、これは時間とともに単一のホルモンを産生する細胞と分離される。本明細書に記載される方法によって産生された典型的な細胞クラスターにおいて、本発明者らは、約32%インスリン、約20%ソマトスタチン、約10%グルカゴン及び約38%二重陽性細胞の比で、単一、二重及び三重の陽性細胞を同時に観察した。
【0658】
<実施例9>
C-ペプチド/インスリン放出及びグルコース応答性の(stimulated)C-ペプチド/インスリン分泌(GSIS)
ヒト胚性幹細胞は、初めにDE産生のために、及び最終的には膵島ホルモン発現のために実施例3に記載されたように分化した。細胞には毎日新しい培地を供給し、培地のサンプルは、連日、分化の工程4後にプレートから回収した。これらの培地サンプルにおけるC-ペプチドのレベルをELISAで測定した(
図9A、
図9Bを参照されたい)。
【0659】
ヒト胚性幹細胞は、実施例4に記載されたように分化した。22日目に、培地をエキセンジン4(50ng/mL)を含有する10%FBSを有するCMRLに変え、1日おきに交換した。26日目に、グルコース刺激アッセイを以下の通りに行った。2時間、細胞を1.6mMのグルコース(g50)を含有する培地に置き、その後培地サンプルを回収した。培地を16mMのグルコース(g400)を含有する新しい培地に交換し、2時間超インキュベートさせて、その後サンプルを回収した。それぞれのプレートから二重のサンプルも採取し、リアルタイム定量的PCRによって遺伝子発現を解析した(
図10A、
図10Bを参照されたい)。
【0660】
機能の証明として、膵臓β細胞は、成熟インスリンを合成、貯蔵及び放出する必要がある。インスリンは、初めにプロインスリンとして合成され、その後ジスルフィド結合を折り畳まれる。ゴルジ体内で折り畳まれたプロインスリン分子が、C(結合)-ペプチドをA鎖とB鎖とを結び付けたジスルフィドから解離させるプロホルモン変換酵素によって特異的に切断される。成熟インスリンが、C-ペプチドとともに(Znと錯体化して)結晶状態で保存され、1:1のモル比で解離した。グルコースレベルの上昇に曝されると、原形質膜との顆粒融合を介して、Ca2+媒介性のインスリン及びC-ペプチドの放出が引き起こされる。
【0661】
図9A、
図9Bで示されるように、インスリンの伝達がQPCRによって確実に示された1日後に、C-ペプチド/インスリンをELISAで測定することができる。C-ペプチドのレベルは、培養物中で経時的に増大し、インスリンのmRNAが停滞した直後に停滞した。
図10A、
図10Bでは、14個の様々な条件が、インスリン産生に関して評価された。QPCRによってインスリン遺伝子の発現が測定可能であった条件2~4及び13はGSIS(グルコース応答性インスリン分泌)も有していた。これらのデータによって、真の(bona fide)GSISがこれらの細胞で起こり、これらのhESC由来膵臓インスリン細胞が機能的であるという主張が強く示唆されている。
【0662】
<実施例10>
さらなるヒト胚性幹細胞株の膵島ホルモン発現細胞への分化
2つのさらなるヒト胚性幹細胞株を5工程のプロトコルによって15日間又は16日間分化させることにより、膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、アクチビンA(100ng/ml)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))での3日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/mL)及びKAAD-シクロパミン(0.5μM)を含有する、2% FBSを含むRPMI中での3日間の分化を含んだ。第3工程は、FGF10(50ng/mL)、KAAD-シクロパミン(0.5μM)及びレチノイン酸(2μM)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での3日間の分化を含んだ。第4工程は、DAPT(1μM)及びエキセンジン4(40ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEM(BG02)又はCMRL(BG01)中での3日間の分化を含んだ。第5工程は、エキセンジン4(40ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL(BG02)又はDMEM(BG01)中での4日間の分化(BG02)又は5日間の分化(BG01)を含んだ。複製試料を複数の時点で各プレートから採取し、遺伝子発現をリアルタイム定量的PCRによって分析した。
【0663】
図11で示されるように、この分化プロトコルによって、インスリン発現膵島細胞の産生の途中で細胞中間体を経た非常に類似した移行が生じた。工程3中(9日目)、レチノイン酸の適用によってPDX1陽性膵臓内胚葉が初めに誘導された。NGN3を発現する内分泌前駆体は、12日目を最大とするノッチシグナル伝達阻害の結果として、工程4中で産生した。続いて、これらの内分泌前駆体が、12~16日目でのインスリン発現の増大によって示されるように、ホルモン発現表現型にさらに分化したので、NGN3レベルは低下した。この分化プロトコル及び類似の分化プロトコルは、hESC株BG03、Cyt-25、及びCyt-49ESC株にも適用されている。所定の分化プロトコルの有効性に関して、細胞株間で量的差異が存在していたが、全ての細胞株は質的に同じ細胞移行を示し、最終的にホルモン発現細胞が得られた。
【0664】
<実施例11>
分化条件の比較
本発明者らは、hESCから膵島ホルモン発現細胞を産生するのに最小限十分であり得る中核となる分化条件を明らかにしている。最も単純な形式では、分化方法は、TGFβ増殖因子をhESCに適用し、胚体内胚葉の分化を誘導した後(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541, (2005))、内胚葉細胞においてレチノイドシグ
ナル伝達を活性化する、適用することを含んでいた。この中核となる条件を構築する際、様々な他の増殖因子が外因的に添加され、hESCとインスリン発現細胞との間の1つ又は複数の工程で分化の有効性が増大した。表2は、中核となる条件(処理番号1)、及びホルモン発現膵島細胞の産生が増大した様々な修飾を記載している。
【0665】
ヒト胚性幹細胞株を5工程のプロトコルによって17日間分化させることにより、膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、アクチビンA(100ng/ml)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))での3日間の分化を含んだ。第2工程は、以下のうち1つを含有する、2% FBSを含むRPMI中での3日間の分化を含んだ:(a)アクチビンA(100ng/mL)(処理i)、(b)外因性増殖因子なし(処理ii)又は(c)FGF10(50ng/mL)及びKAAD-シクロパミン(0.5μM)(処理iii及び処理iv)。第3工程は、(a)レチノイン酸(2μM)(処理i~処理iii)又は(b)レチノイン酸(2μM)及びKAAD-シクロパミン(0.5μM)(処理iv)のいずれかを含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での3日間の分化を含んだ。第4工程及び第5工程は、すべての条件に関して同一であった(処理i~処理iv)。第4工程は、DAPT(1μM)及びエキセンジン4(40ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での2日間の分化を含んだ。第5工程は、エキセンジン4(40ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での5日間の分化を含んだ。複製試料を複数の時点で各プレートから採取し、遺伝子発現をリアルタイム定量的PCRによって分析した。
【0666】
以下の表は、本実験で最低の条件(処理i)に正規化した場合の12日目のNGN3の相対的発現レベル、並びに17日目のインスリン及びグルカゴンの相対的発現レベルを示す。
【0667】
【0668】
工程2(処理ii)中のTGFBシグナル伝達の除去によって、NGN3及びインスリンの発現が適度に改善され、グルカゴン発現がわずかに低減した。工程2中のアクチビンA非存在下でのFGF10及びKAAD-シクロパミンの添加によって、内分泌分化能が有意に増大した。工程3中レチノイン酸の存在下でKAAD-シクロパミンを維持するさらなる修飾によって、レチノイン酸が単独で用いられた処理iiiに比べてその能力がさらに2倍に増大した。
【0669】
また、ヒト胚性幹細胞株を6工程のプロトコルによって15日間分化させることにより、膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、i)アクチビンA(100ng/ml)又はii)アクチビンA(100ng/ml)及びWnt3a(25ng/mL)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))のいずれかでの3日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/ml)及びKAAD-シクロパミン(0.5μM)を含有する、2% FBSを含むRPMI中での3日間の分化を含んだ。第3工程は、FGF10(50ng/mL)、KAAD-シクロパミン(0.5μM)及びレチノイン酸(2μM)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での2日間の分化を含んだ。第4工程は、レチノイン酸(2μM)及びDAPT(1μM)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での2日間の分化を含んだ。第5工程は、DAPT(1μM)及びエキセンジン4(40ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での2日間の分化を含んだ。第6工程は、エキセンジン4(40ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むCMRL中での3日間の分化を含んだ。複製試料を複数の時点で各プレートから採取し、遺伝子発現をリアルタイム定量的PCRによって分析した。
【0670】
表3は、Wnt3aを添加しない条件に正規化した場合の8日目及び12日目のPDX1、12日目のNGN3、並びに15日目のインスリン及びグルカゴンの相対的発現レベルを示す。
【0671】
【0672】
これらのデータは、第1工程中のWnt3aの添加によって内分泌細胞分化が著しく増大したことを示している。
【0673】
<実施例12>
ヒト胚性幹細胞に由来する未熟膵島ホルモン発現細胞の産生及び特性化
また、ヒト胚性幹細胞(hESC)を5工程のプロトコルによって25日間分化させることにより、未熟膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、無血清培地中のWnt3a(25ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)での1日間の分化、その後の0.2% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))での2日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/ml)及びKAAD-シクロパミン(0.25μM)を含有する、2% FBSを含むDMEM中での3日間の分化を含んだ。第3工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)、FGF10(50ng/ml)及びレチノイン酸(2μM)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEM中での2日間の分化を含んだ。第4工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)及びFGF10(50ng/ml)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの6日間の処理を含んだ。第5工程は、エキセンジン4(50ng/ml)及びグルカゴン様ペプチド1、アミノ酸1~37(50ng/mL)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの11日間の処理を含んだ。
【0674】
図16A及び
図16Bで示される実験データに関して、hESC細胞は、実施例16で記載されるように分化した。
【0675】
23日齢の培養物においてヒト未熟膵島ホルモン発現細胞の存在を確認するために、NCAM、NKX2.2、INS、及びPAX6の発現に関して免疫細胞化学法で細胞を解析した。要するに、培養物は、24℃で15分間、PBS中の4%(w/v)パラホルムアルデヒドに固定し、PBS中で数回洗浄し、5%正常なロバ血清(NDS、Jackson ImmunoResearch Laboratories)を含有するPBST(TBS/0.1%(w/v)トリトンX-100(Sigma))中で30分間遮断した。それから、細胞をNCAM、NKX2.2、INS及び/又はPAX6に対する一次抗体とインキュベートした。一次抗体をPBST/5%NDS中で希釈した。4℃で24時間又は24℃で2時間、細胞を一次抗体とインキュベートさせた。それから、細胞を洗浄し、24℃で1時間、2次抗体とインキュベートさせた。必要に応じて、マウス、ウサギ、及びモルモットに対するCy3及びCy5結合ロバ抗体を1:500で用いた(Jackson ImmunoResearch Laboratories)。マウス、ラット、ウサギ、モルモット、及びヤギに対するAlexa-488及びAlexa-555結合ロバ抗体(Molecular Probes)を1:500で用いた。
【0676】
図12A~
図12Dで示されるように、NCAM及びNKX2.2は、hESC由来未熟膵島ホルモン発現細胞で同時に発現した。これらのデータによって、NCAM結合のタイミングが、上皮からの新生内分泌細胞の「層間剥離」に対応することが示唆される。
【0677】
図13A~
図13D及び
図14A~14Fは、NCAM、PAX6及びINSが、未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するように処理したhESC由来細胞で同時に発現したことを示している。これらのデータによって、NCAMがhESC由来の未熟膵島ホルモン発現細胞に良好なマーカーであることが示される。
【0678】
図16A、
図16Bは、MAFBが、hESC由来の未熟膵島ホルモン発現細胞においてインスリン発現細胞と同時に発現されたことを示している。
図16A、
図16Bで示される細胞は、以下の実施例15で記載される分化プロトコルを用いて分化し、免疫細胞化学法のために前記のように処理された。
図16C、
図16Dは、13.5週齢のヒト胎児膵臓から誘導された細胞において同じパターンのMAFB及びINS発現を示している。
【0679】
<実施例13>
ヒト胚性幹細胞から誘導された膵臓ホルモン発現細胞によるシナプトフィジンの発現
シナプトフィジン(SYP)は、in vivo供給源由来の内分泌細胞に対する既知のマーカーである(Protela-Gomez et al, 2004)。hESCからの内分泌細胞の産生を
確認するために、以下のプロトコルを用いて、hESCを分化し、SYP及びNKX2.2の発現に関して免疫細胞化学法で解析した。
【0680】
ヒト胚性幹細胞を6工程のプロトコルによって18日間分化させることにより、膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、無血清培地中のWnt3a(25ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)での1日間の分化、その後の0.2% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)単独での1日間の分化、及び2.0% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))での3
日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/ml)及びKAAD-シクロパミン(0.25μM)を含有する、2% FBSを含むDMEM中での3日間の分化を含んだ。第3工程は、B27サプリメント(1:100)及びレチノイン酸(1μM)を含むDMEM中での1日間の分化を含んだ。第4工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)及びFGF10(50ng/ml)及びレチノイン酸(1μM)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの6日間の処理を含んだ。第5工程は、FGF10(50ng/ml)及びKAAD-シクロパミン(0.25μM)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの1日間の処理を含んだ。第6工程は、B27サプリメント(1:100)及びエキセンジン4(50ng/ml)を含むDMEMでの4日間の処理を含んだ。
【0681】
抗SYP、抗NKX2.2一次抗体を用いて、前記のように細胞を固定及び処理した。
図15A、
図15Bは、SYP及びNKX2.2の同時発現を示し、未熟膵島ホルモン発現細胞の産生を確認する。
【0682】
<実施例14>
フローサイトメトリを使用する、NCAM標識したhESC由来未熟膵島ホルモン発現細胞の分析
ヒト胚性幹細胞(hESC)を5工程のプロトコルによって18日間分化させることにより、未熟膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、無血清培地中のWnt3a(25ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)での1日間の分化、その後の0.2%
FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)での1日間の分化、及び2.0% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))での1日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/ml)及びKAAD-シクロパミン(0.25μM)を含有する、2% FBSを含むDMEM中での3日間の分化を含んだ。第3工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)及びレチノイン酸(2μM)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEM中での4日間の分化を含んだ。第4工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)及びエキセンジン4(50ng/ml)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの3日間の処理を含んだ。第5工程は、エキセンジン4(50ng/ml)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの5日間の処理を含んだ。
【0683】
前記のように処理したhESC由来細胞の単一細胞懸濁液が以下の通りに得られた。細胞培養物は、製造業者の取扱説明書に従って、37℃でトリプレット(商標)(Invitrogen、カタログ番号12563-011)又はアクターゼ(商標)酵素(Innovative Cell Technologies、カタログ番号AT104)のいずれかで解離された。それから、細胞をPBS/10%FBSで洗浄し、遠心分離で回収して、PBS/3%FBSで再び懸濁させた。氷上で20分間、細胞をPEと直接結合した抗NCAM抗体とインキュベートさせた後に洗浄した。製造業者の取扱説明書に従って、前記由来のNCAM-PE染色細胞を、CYTOFIX/CYTOPERM(商標)固定膜浸透化緩衝液(fixation and permeability buffer)及びPERM/WASH(商標)洗浄緩衝液(Beckton Dickinson)で処
理することによって、細胞内抗体染色を行なった。氷上で20分間、細胞を抗インスリン(DakoCytomation、カタログ番号A0564)、及び抗シナプトフィジン(DakoCytomation、カタログ番号A0010)の一次抗体とインキュベートさせた。細胞を洗浄し、製造業者の取扱説明書に従って、ロバ抗モルモットCy5(1:1000)(Jackson Immunoresearch 706-176-148)、ロバ抗ウサギAlexa488(1:2000)(InvitrogenA21206)の二次抗体のいずれかとインキュベートした。
【0684】
フローサイトメトリは、製造業者の取扱説明書に従ってFACSARIA(商標)蛍光活性化細胞選別器(Becton Dickinson)で行い、FACSDIVA(商標)FACS解析ソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて解析した。
【0685】
図17Aで示されるように、記載されたように分化したhESC由来細胞の約10%がSYP陽性であった。さらに、SYP陽性hESC由来細胞のほとんど全てがNCAMに関しても陽性であった。
図17Bは、NCAM陽性hESC由来細胞のほとんど全てがINSに関しても陽性であったことを示している。これらのデータによって、
図12~
図16における免疫細胞化学データが確認され、NCAMがhESC由来の未熟膵島ホルモン発現細胞に有用なマーカーであることが示される。
【0686】
<実施例15>
NCAM陽性hESC由来未熟膵島ホルモン発現細胞集団の選別により、未熟膵島ホルモン発現細胞に関する集団が濃縮される
実験の第2セットにおいて、hESCを6工程のプロトコルによって19日間分化させることにより、未熟膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、無血清培地中のWnt3a(25ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)での1日間の分化、その後の0.2% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)単独での1日間の分化、及び2.0% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))での1日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/mL)及びKAAD-シクロパミン(0.25μM)を含有する、2% FBSを含むDMEM中での3日間の分化を含んだ。第3工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)及びレチノイン酸(2μM)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEM中での4日間の分化を含んだ。第4工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)及びグルカゴン様ペプチド1、アミノ酸1~37(50ng/ml)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの1日間の処理を含んだ。第5工程は、外から加えたエキセンジン4(50ng/mL)及びグルカゴン様ペプチド1、アミノ酸1~37(50ng/ml)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの3日間の処理を含んだ。第6工程は、エキセンジン4(50ng/ml)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの5日間の処理を含んだ。
【0687】
分化プロトコルは、特定の実験について以下のように変更された。
図19で示される実験データに関して、前記のプロトコルの工程3は、ノギンによる処理(100ng/ml)を包含していた。工程4では、グルカゴン様ペプチド1による処理の代わりに、細胞をエキセンジン4(50ng/ml)で処理した。工程5は、グルカゴン様ペプチド1が含まれない5日間の処理を包含した。最終的に、工程6は、エキセンジン4(50ng/ml)を含有するB27サプリメント(1:100)によるCMRL培地における4日間の処理に置き換えられた。
【0688】
図20で示される実験データに関して、工程3はノギン(100ng/ml)を含む3日間の処理に変更された。工程4は、ニコチンアミド(10mM)を含むように変更された。工程5は、ニコチンアミド(nicotinamed)(10mM)を含み、エキセンジン4を
含まない4日間の処理に変更された。工程6は、グルカゴン様ペプチド1、1~37(50ng/ml)及びニコチンアミド(10mM)を含む1日間の処理を包含するように変更された。細胞の分化プロトコルは、CMRL培地におけるB27サプリメント(1:100)、グルカゴン様ペプチド1、1~37(50ng/ml)及びニコチンアミド(10mM)による4日間の処理を包含する第7工程も含んでいた。
【0689】
図25で示される実験データに関して、分化プロトコルの工程3は、1μMのレチノイン酸による処理を包含し、ノギン(50ng/ml)及びニコチンアミド(10mM)による処理を包含するように変更された。工程4は、ニコチンアミド(10mM)を含み、グルカゴン様ペプチド1、1~37による処理を除くように変更された。工程5は、ニコチンアミド(10mM)を含み、グルカゴン様ペプチド1、1~37による処理を除き、エキセンジン4を除くように変更された。工程6は、1日間の処理だけで、エキセンジン4を除くように変更された。細胞分化は、B27(1:100)で補充されたCMRLにおける7日間の処理を包含する第7工程も含んでいた。
【0690】
前記のように、細胞の単一細胞懸濁液が得られた。それから、細胞をPBS/10%FBSで洗浄し、遠心分離で回収して、PBS/3%FBSで再び懸濁させた。氷上で20分間、細胞をPEと直接結合した抗NCAM(NCAM16.2、Becton Dickinson、カタログ番号340363)とインキュベートさせた。その後、細胞をPBS/3%FBSで洗浄し、遠心分離で回収して、ハンクス平衡化塩溶液(2%FBS、20mMのHEPES)で再び懸濁させた。細胞をFACS Aria機器(Becton Dickinson)で選別し、10%FBSでハンクス平衡化塩溶液中に回収した。製造業者の取扱説明書に従って、細胞の予め選別された集団又は細胞のNCAM陽性選別された集団を、CYTOFIX/CYTOPERM(商標)固定膜浸透化緩衝液及びPERM/WASH(商標)洗浄緩衝液(Beckton Dickinson)で処理することによって、細胞内抗体染色を行なった。細胞を洗浄し、製造業者の取扱説明書に従って、ロバ抗モルモットCy5(1:1000)(Jackson Immunoresearch 706-176-148)、ロバ抗ウサギAlexa488(1:2000)(Invitrogen A21206)の二次抗体のいずれかとインキュベートした。
【0691】
フローサイトメトリは、製造業者の取扱説明書に従ってFACSARIA(商標)蛍光活性化細胞選別器(Becton Dickinson)で行い、FACSDIVA(商標)FACS解析ソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて解析した。
【0692】
NCAM陽性細胞及びNCAM陰性細胞を回収した後、NCAM、SYP、PAX6及びCHGAに関して前記のプロトコルを用いたフローサイトメトリによって再び解析した。1つの実験では、選別の後に(
図18Aで示される)、NCAM陽性細胞は、逆懸滴(inverted hanging drops)において集められた。これらの細胞を回収し、PAX6、INS、及びGCGに関して免疫細胞化学法を用いて低温切片で解析した。1つの液滴当たり約7000個のNCAM陽性選別細胞が播種され、10%FBS、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、HGF及びEGFを含有するRPMI培地で培養し、72時間インキュベートした。細胞集合体を回収し、前記のように免疫細胞化学解析のために処理した。
【0693】
図18Bで示されるように、NCAMに関する選別の前にフローサイトメトリによって細胞が解析された場合、細胞集団の約7%が、NCAM陽性及びSYP陽性であった。NCAM陽性細胞の選別(
図18A、「左側の選別」)によって、選別されなかった細胞(
図18B)に比べて、NCAM陽性/SYP陽性細胞が約4倍に濃縮した。
図18Dで示されるように、NCAM陰性細胞の集団は、SYP陽性細胞で検出された。
図19A及び
図19Dは、前記のように分化し、NCAMに関してフローサイトメトリによって解析されたhESC由来細胞集団は、約4%のNCAM陽性/SYP陽性細胞及び約2%のNCAM陽性/INS陽性細胞を含んでいた。
図19Bは、NCAM陽性hESC由来細胞の同一集団の選別によって、NCAM陽性/SYP陽性細胞が10倍を超えて濃縮され、47%のNCAM陽性/SYP陽性細胞を含む細胞集団が産生されたことを示している。
図19Dは、hESC由来細胞の同一集団の選別によって、NCAM陽性/INS陽性細胞が8倍を超えて濃縮されたことを示している。
図20A~
図20Cで示されるように、前記のような分化したNCAM陽性hESC由来細胞の選別によって、72%のNCAM陽性/SYP陽性細胞を含む濃縮細胞集団が生じた。
【0694】
図25A~
図25Fは、独立した実験結果を示す。
図25で示されるように、NCAM陽性/SYP陽性細胞は、選別前では細胞集団の約7.4%を示す。NCAM陽性細胞の選別によって、5倍超濃縮され、約42%のSYP陽性の細胞集団が生じた(
図25A、
図25B)。同様に、NCAM陽性細胞の選別によって、CHGA発現細胞に関して細胞集団が、細胞集団の約8.7%から細胞集団の約42%へと濃縮された(
図25C、
図25D)。同様に、NCAM選別によって、INS発現細胞に関して細胞集団が、全細胞集団の約6%から細胞集団の約24%へと濃縮された(
図25E、
図25F)。
【0695】
図27A~
図27D及び
図28A~
図28Dは、NCAM陽性選別細胞の懸滴集合体が、PAX6及びINSを同時に発現した細胞をかなりの割合含有していたことを示している。
図28A~
図28Dは、NCAM陽性選別細胞が、GCG及びINSを同時に発現した細胞をかなりの割合含有していたことを示している。
【0696】
このデータによって、NCAMがFACSを用いて細胞を選別するのに有用であることが示されている。このように、NCAMを用いて、hESC由来未熟膵臓ホルモン発現細胞を濃縮、単離及び/又は精製することができる。
【0697】
<実施例16>
CD133に対する陰性選択を使用する、NCAM陽性/SYP陽性hESC由来未熟膵島ホルモン発現細胞集団の濃縮
実験の第3セットにおいて、hESCを6工程のプロトコルによって19日間分化させることにより、未熟膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、無血清培地中のWnt3a(25ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)での1日間の分化、その後の0.2% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)単独での1日間
の分化、及び2.0% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))での1日間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/mL)及びKAAD-シクロパミン(0.25μM)を含有する、2% FBSを含むDMEM中での3日間の分化を含んだ。第3工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)、レチノイン酸(2μM)及びエキセンジン4(50ng/ml)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEM中での3日間の分化を含んだ。第4工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)及びエキセンジン4(50ng/ml)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの1日間の処理を含んだ。第5工程は、エキセンジン4(50ng/ml)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの9日間の処理を含んだ。
【0698】
細胞培養物を、実施例14に記載したNCAM、SYP及びCD133一次抗体を使用して前記フローサイトメトリ分析用に処理するか、又は実施例15に記載したNCAM及びCD133抗体を使用して選別した。
【0699】
図21Bに示すように、実施例14に記載したように分化したhESC由来細胞集団中の細胞の約7.5%が、NCAM陽性/CD133陰性であった。SYPに対するこれらの細胞の対比染色により、NCAM陽性/CD133陰性細胞の93%が、SYPに対して陽性であることが示された。
【0700】
図26A及び
図26Bで示されるように、前記で示されるように分化した細胞集団の約4.6%が、SYPに関して陽性で染色し、細胞集団の約5.3%が、NCAMに関しては陽性、及びCD133に関しては陰性で染色した。これに対して、NCAM陽性/CD133陰性細胞の亜集団の約66.5%がSYPに関して陽性で染色した(
図26C)。これらのデータによって、NCAM陽性及びCD133陰性細胞の選別を用いて、hESC由来未熟膵臓ホルモン発現細胞を濃縮、単離及び/又は精製することができることが示されている。
【0701】
<実施例17>
hESCの内分泌前駆細胞及び未熟膵島ホルモン発現細胞への分化
hESCを6工程のプロトコルによって19日間分化させることにより、未熟膵島ホルモン発現細胞を得た。第1工程は、無血清培地中のWnt3a(25ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)での1日間の分化、その後の0.2% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)単独での1日間の分化、及び2.0% FBSを補充した培地中のアクチビンA(100ng/ml)(それによりDEを強く産生する)(D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005))での1日
間の分化を含んだ。第2工程は、FGF10(50ng/mL)及びKAAD-シクロパミン(0.25μM)を含有する、2% FBSを含むDMEM中での3日間の分化を含んだ。第3工程は、外から加えたKAAD-シクロパミン(0.2μM)、レチノイン酸(2μM)、グルカゴン様ペプチド1、アミノ酸1~37(50ng/ml)及びノギン(50ng/ml)を含む、B27サプリメント(1:100)を含むDMEM中での4日間の分化を含んだ。第4工程は、B27サプリメント(1:100)及びグルカゴン様ペプチド1、アミノ酸1~37(50ng/ml)を含むDMEMでの3日間の処理を含んだ。第5工程は、エキセンジン4(50ng/ml)を含有する、B27サプリメント(1:100)を含むDMEMでの6日間の処理を含んだ。12日目、15日目及び1919日目に、実施例14に記載のFACSを使用して細胞を選別することにより、NCAM陽性細胞とNCAM陰性細胞とを分離した。選別前の細胞の複製試料、NCAM陽性細胞及びNCAM陰性細胞を各培養物から採取し、遺伝子発現をリアルタイム定量的PCRによって分析した。
【0702】
図22-1及び
図22-2で示されるように、細胞が内分泌前駆細胞(「初期」)から
未熟膵島ホルモン発現細胞(「中期」及び「後期」)へと発達する間の時間的に連続した遺伝子発現が存在していた。
図22A及び
図22Bは、NCAM陽性細胞がNGN3及びPAX4に関して濃縮されたことを示している。NGN3及びPAX4の発現は、hESCが未熟膵島ホルモン発現細胞に分化するにつれて低減した。また、
図22C~
図22Kで示されるように、NCAM陽性細胞は、未熟膵島ホルモン発現細胞に特有のマーカー(INS、PP、PAX6、GCG、GHRL、GCK、SST、NKX2.2、及びSYPを含む)を発現する細胞に関して、NCAM陰性細胞と比べて高度に濃縮された。内分泌前駆細胞がINS、PP、PAX6、GCG、GHRL、GCK、及びSYPを実質的に発現しなかったのに対して、膵島ホルモン発現細胞へとさらに分化した細胞は、膵臓内分泌細胞に特有の同一マーカーの発現の増大を示した。
【0703】
図23A~
図23Eは、前記のように19日目で分化及び選別したhESC細胞のさらなるQPCRデータを示している。NCAM陽性細胞に関するhESC由来細胞集団の選別によって、NEUROD(
図23A)、ISL1(
図23B)、GAS(
図23C)、KIR6.2(
図23D)、及びSUR1(
図23E)等の内分泌マーカーに関して高度に濃縮された細胞の集団が生じた。
【0704】
図24A~
図24Kは、前記のように19日目で分化及び選別したhESC由来細胞で行った独立した実験を表す。この実験では、「選別前」で標識されたデータは、ゲートされている(gated)が、FACSを用いて選別されていない前記のように分化したhES
Cから得られた。図は、NCAMに関する細胞集団の選別によって、NCAM(
図24A)、並びに予想したように内分泌細胞に特有の以下のマーカー:NKX2.2(
図24B)、SYP(
図24C)、PAX6(
図24D)、NEUROD(
図24E)、ISL1(
図24F)、INS(
図24G)、GCG(
図24H)、GHRL(
図24I)、SST(
図24J)、及びPP(
図24K)に関して高度に濃縮された細胞集団が生じることを示している。これらのデータによって、NCAMが未熟内分泌細胞の濃縮、単離及び精製に有用であることが確認される。
【0705】
<実施例18>
外因性レチノイドなしでノギンを用いてインスリン発現細胞を得る方法
この実施例によって、B27等の培地サプリメントに存在し得る外因性レチノイド供給源、例えばレチノール(ビタミンA)を添加しないでノギン処理を用いて、hESCをインスリン発現細胞に分化する代替方法が示される。
【0706】
RPMI+0% FBS中でのアクチビンA(100ng/ml)及びWnt3a(25ng/ml)による処理(1日目)、並びにその後のRPMI+0.2%(v/v)FBS中でのアクチビンA(100ng/ml)単独による処理(さらに2日間)によって、ヒトESCを胚体内胚葉細胞へと分化させた。RPMI+2%(v/v)FBS中でのKGF(50ng/ml)及びKAAD-シクロパミン(0.25μM)による処理(3日間)によって、胚体内胚葉を前腸内胚葉へと分化させた。その後、KGF(50ng/ml)及びKAAD-シクロパミン(0.25μM)を含有する、DMEM+1%(v/v)B27サプリメント(1日間)、続けてノギン(100ng/ml)を添加したか、又は添加していない同一物(さらに5日間)中で、分化が進行した。使用したB27サプリメントは、ビタミンAあり(B27+)又はビタミンAなし(B27-)のいずれかであった。分化の13日目、14日目及び15日目に、KGFは除去したが、KAAD-シクロパミン(0.25μM)及びノギン(使用する場合)は培養培地中に残存した。16日目~19日目の分化培地は、CMRL+1%(v/v)B27(前の条件同様、ビタミンAあり又はなし)から成り、さらなる因子を含まなかった。培養物を、分化の3日目、
6日目、9日目、12日目、15日目及び19日目に繰り返してサンプリングし、リアルタイムPCRを使用して膵臓マーカーの発現について分析した。
【0707】
PDX1遺伝子発現の誘導は、ノギン処理又はB27サプリメントにおけるビタミンAの有無に依存しなかった(
図29A)。これに対して、12日目に誘導されたNGN3発現によって明らかなように、膵臓内分泌分化の誘導は、ノギンの存在に強く依存していた(
図29B)。NGN3発現の誘導後の膵臓ホルモンINS、GCG、SST、及びGHRLの発現も、ノギンの存在に依存していた(
図29C~
図29F)。ノギンが12日を越えてNGN3発現を維持する能力は、B27サプリメントにおけるビタミンAの存在によって高められた。さらに、膵臓ホルモン発現の程度も、B27サプリメントにおけるビタミンAの存在によって高められたが、外因性レチノイド適用の完全な欠如下であっても、ノギン処理は、依然としてインスリン発現細胞への分化を誘導するのに十分であった。
【0708】
<実施例19>
ノギンとレチノイン酸との組合せを用いてインスリン発現細胞を得る方法
この実施例によって、ノギン及びレチノイン酸を併せて用いて、hESCをインスリン発現細胞に分化することができること、並びに特にレチノイン酸が低濃度で用いられる場合のレチノイン酸へのノギンの添加がレチノイン酸の作用を促進することが示される。
【0709】
ヒトESCは、1日目のRPMI+0%FBSにおけるアクチビンA(100ng/ml)及びWnt3a(25ng/ml)、それからさらに2日間のRPMI+0.2%(v/v)FBSにおけるアクチビンA(100ng/ml)単独の処理によって胚体内胚葉に分化した。胚体内胚葉は、3日間のRPMI+2%(v/v)FBSにおけるKGF(50ng/ml)及びKAAD-シクロパミン(25μM)の処理によって前腸内胚葉に分化した。それから、ノギンを添加して(0、30又は100ng/ml)又は添加しないで、KAAD-シクロパミン(0.25μM)及び全てトランス型のレチノイン酸(0.1μM又は2μM)を含有するDMEM+1%(v/v)B27サプリメントにおいて3日間、分化を進めた。これに、DMEM+1%(v/v)B27で供給されたγ-セクレターゼ阻害剤DAPT(1μM)による2日の処理期間が続き、その後増殖因子を添加せずに、CMRL+1%(v/v)B27で細胞を培養した。
【0710】
レチノイン酸の濃縮及びノギンの添加は、9日目又は11日目でのPDX1の発現レベルにほんのわずかしか影響しなかった(
図30A)。しかし、低用量RA(0.1μM)へのノギンの添加によって、9日目の内分泌前駆マーカーNGN3の発現(
図30B)、並びに11日目のINS及びGCG遺伝子発現の初期発生(
図30E及び
図30F)が劇的に高められた。この結果は、特に低濃度のRA(0.1μM)及び高濃度のノギン(100ng/ml)を用いた条件「C」下での、PTF1A(
図30C)及びNKX6.1(
図30D)の発現の増大によって示されるような膵臓上皮への分化の増強によるものであり得る。これらの結果によって、ノギンとレチノイドシグナル伝達との組合せが相乗的に作用し、膵臓上皮を特異化し、最終的にhESCから誘導された前腸内胚葉から膵臓内分泌細胞を分化することが示された。
【0711】
<実施例20>
膵臓上皮のin vivo成熟
hESC由来材料が、機能的なインスリン産生細胞にさらに分化する能力をさらに研究するために、本発明者らは、in vitro分化細胞を免疫不全マウス(SCID/Bg)に移植した。これを達成するために、改良したマキルベン組織チョッパーを用いて、様々な分化プロセスの段階でのコンフルエント(confluent)細胞を機械的にスコア付け
し(Joannides et al., (2006). Stem Cells 24:230-235(その開示内容全体が参照に
より本明細書に援用される)を参照されたい)、その後培養のために非接着プレートに移
した。得られた集合体をゼラチンスポンジ足場(Gelfoam、Pharmacia)上にピペ
ッティングし、マトリゲル(BD)で被覆した。それぞれ直径8mm×2mmの足場に集合体25μl~40μlを入れた。続いて、2つのこれらの組織構築物をそれぞれのマウスの精巣上体脂肪体に移植した。
【0712】
移植片材料をin vivoで分化及び成熟させた。2週間毎に、インスリン分泌を誘導するアルギニンを動物に注入することによって、これらの移植片におけるインスリン産生細胞の機能性を試験した。アルギニン注入の4分後に血液を採取し、ヒトC-ペプチドに関して試験した。早くも移植の5週間後に動物血清でヒトC-ペプチドが検出され、経時的に増加した。移植の10~16週後、2匹の動物が、グルコースに応答性の移植片を含有していた。これらのデータは、おそらく前駆細胞の増殖及び成熟によって、移植片における機能的なインスリン産生細胞の数が経時的に増加することを示唆している。
【0713】
様々な時点で回収した移植片の組織学的検査によって、増殖及び成熟した膵臓上皮の存在が示された。後の時点で回収した移植片は、この上皮をより大量に有していた。膵臓上皮は、形態、並びにPDX1及びNKX6.1等の典型的な発生マーカーの発現によって同定された。ホルモンマーカーの検査によって、膵臓上皮の膵島様細胞クラスターが、正常な膵臓発生に類似した様式で出芽分離することが示された。これらの細胞クラスターは、NKX6.1陽性及びPDX1陽性でもあるインスリン産生細胞を含む単一陽性ホルモン産生細胞を含有していた。細胞クラスター構造は、正常な胎児膵島の構造と類似していた。
【0714】
本明細書中に記載される方法、組成物及び装置は、現在、好ましい実施形態を代表するものであり、例示であって、本発明の範囲に対する限定を意図するものではない。本発明の精神に包含され、且つ開示内容の範囲によって規定される、その変更及び他の使用が当業者には思い浮かぶであろう。したがって、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、本明細書中に開示される発明に対する種々の置換形態及び変更形態が作製され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0715】
添付の特許請求の範囲において、また本開示内容全体を通して使用される場合、「本質的に~から成る」という語句は、当該語句の後ろに列記される任意の要素を含むことを意味し、列記した要素に関する開示内容において特定される活性又は作用を妨害しないか又はそれに関与しない他の要素に限定される。したがって、「本質的に~から成る」という語句は、列記した要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列記した要素の活性又は作用に影響を及ぼすか否かに応じて、存在してもしなくてもよいということを示唆する。
【0716】
多くの文献及び特許参考文献が本明細書中で言及されている。本明細書中で言及されるありとあらゆる参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0717】
幾つかの参考文献に関しては、本明細書の本文で完全に言及される。他の参考文献に関しては、本明細書の本文で著者及び年で言及され、以下で完全に言及される:
D'Amour, K., et al., Nature Biotechnology 23, 1534-1541(2005)、
Bocian-Sobkowska, J., et al. Histochem. Cell Biol. 112, 147-153(1999)、
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Malaisse-Langae F., et al., Diabetologia 17(6), 361-365(1979)、
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