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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026737
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】位置検出装置及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240220BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240220BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G06F3/041 560
G06F3/041 510
G06F3/044 120
G06F3/046 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003028
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2022083482の分割
【原出願日】2018-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2018022683
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】桂平 勇次
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
(57)【要約】
【課題】センサの全エリアを、電磁誘導方式と静電結合方式とで共用することができる位置検出装置を提供する。
【解決手段】互いに重ならない状態で第1の方向に配列されている複数の第1のループ電極と、互いに重ならない状態で第1の方向と交差する第2の方向に配列されている複数の第2のループ電極と、指示体と電磁誘導結合する状態の場合に、複数の第1のループ電極の中から互いに隣接する複数の第1のループ電極を同時に選択して指示体による指示位置の検出を行う第1の検出回路とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ならない状態で第1の方向に配列されている複数の第1のループ電極と、
互いに重ならない状態で前記第1の方向と交差する第2の方向に配列されている複数の第2のループ電極と、
指示体と電磁誘導結合する状態の場合に、前記複数の第1のループ電極の中から互いに隣接する複数の第1のループ電極を同時に選択して前記指示体による指示位置の検出を行う第1の検出回路と、
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記指示体と前記電磁誘導結合する状態の場合に用いる回路として、
前記複数の第1のループ電極の中から互いに隣接する複数の第1のループ電極を同時に選択する第1の選択回路と、
前記第1の選択回路で選択された複数の第1のループ電極に、前記指示体との電磁誘導結合により流れる誘導電流を加算して増幅する第1の増幅回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記同時に選択する前記互いに隣接する前記複数の第1のループ電極は、互いに並列に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記同時に選択する前記互いに隣接する前記複数の第1のループ電極は、互いに直列に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第1の選択回路は、前記複数の第1のループ電極の中から互いに隣接する複数の第1のループ電極を、1個ずつ順次ずらしながら同時に選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記第1のループ電極及び前記第2のループ電極をコイルとして指示体と電磁誘導結合する状態と、前記第1のループ電極及び前記第2のループ電極の両端を短絡するか、あるいは、一端をオープンとして指示体と静電結合する状態とに切り替えられる
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記コイルとして指示体と電磁誘導結合する状態と、前記両端を短絡するか、あるいは、一端をオープンとして指示体と静電結合する状態とは、時分割で切り替えられる
ことを特徴とする請求項6に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記第1の検出回路は電磁誘導結合している指示体による指示位置を検出し、
さらに、
前記静電結合している指示体による指示位置を検出するための第2の検出回路を備える
ことを特徴とする請求項6に記載の位置検出装置。
【請求項9】
複数の前記第1のループ電極は、基板の表面に形成され、複数の前記第2のループ電極は、前記基板の裏面に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記基板は、透明基板である
ことを特徴とする請求項9に記載の位置検出装置。
【請求項11】
複数の前記第1のループ電極のそれぞれ及び複数の前記第2のループ電極のそれぞれは、それぞれの前記配列方向に直交する方向に細長の形状を有し、前記ループ電極の配列ピッチは、人の指の接触面積に応じたものとされている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項12】
複数の前記第1のループ電極のそれぞれ及び複数の前記第2のループ電極のそれぞれには、ループの内側に向かう突起部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項13】
互いに重ならない状態で第1の方向に配列されている複数の第1のループ電極と、互いに重ならない状態で前記第1の方向と交差する第2の方向に配列されている複数の第2のループ電極とを備える位置検出装置における位置検出方法であって、
指示体と電磁誘導結合する状態の場合に、前記複数の第1のループ電極の中から互いに隣接する複数の第1のループ電極を同時に選択して前記指示体による指示位置の検出を行う検出工程を有する
ことを特徴とする位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁誘導結合による指示体による指示位置の検出と、静電結合による指示体による指示位置の検出とが、共通の位置検出センサを用いて可能な位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電結合方式の位置検出センサを用いて、静電結合方式に対応のスタイラス(電子ペン)による指示位置を検出すると共に、人間の指タッチ位置の検出を行えるようにした位置検出装置が知られている。しかし、この位置検出装置の場合、スタイラスによる指示位置の検出の際に、手などの人体が位置検出センサ面に触れると、スタイラスによる指示位置を正確に検出することが困難になるという問題があった。
【0003】
この点、電磁誘導方式の位置検出センサによりスタイラスによる指示位置を検出し、人間の指タッチ位置の検出は、静電結合方式の位置検出センサで行うようにすれば、上述の問題を解決することができる。
【0004】
しかしながら、位置検出装置に、電磁誘導方式の位置検出センサと静電結合方式の位置検出センサとをそれぞれ別個に設けると、構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0005】
そこで、この問題を解決するために、特許文献1(特許第5702511号公報)や特許文献2(特許第5819565号公報)には、1個の共通の位置検出センサで、電磁誘導方式による位置検出と、静電結合方式の位置検出を実現するようにした位置検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5702511号公報
【特許文献2】特許第5819565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案されている位置検出装置の位置検出センサは、基板の表面と裏面とに、互いに直交する方向に延長する複数の線状の導体(X軸線体及びY軸線体)を設け、X軸線体及びY軸線体の一端側と他端側のそれぞれにスイッチ回路を設けて、電磁誘導結合用のループコイルを形成及びループコイルの切り替えを行ったり、静電結合用途におけるX軸線体及びY軸線体の切り替えを行うように構成されている。このため、構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に提案されている位置検出装置の位置検出センサでは、基板の表面と裏面とに、互いに直交する方向に延長する複数の線状の導体(X軸線体及びY軸線体)を設けると共に、複数のX軸線体及び複数のY軸線体のそれぞれを、電磁誘導方式で用いるものと、静電結合方式で用いるものとで分ける構成とされている。このため、位置検出センサにおいて、電磁誘導方式で検出することができるエリアと、静電結合方式で検出することができるエリアとが分かれて存在するものとなり、位置検出センサの全エリアを、電磁誘導方式と静電結合方式とで共用することができないという問題があった。
【0009】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、
互いに重ならない状態で第1の方向に配列されている複数の第1のループ電極と、
互いに重ならない状態で前記第1の方向と交差する第2の方向に配列されている複数の第2のループ電極と、
指示体と電磁誘導結合する状態の場合に、前記複数の第1のループ電極の中から互いに隣接する複数の第1のループ電極を同時に選択して前記指示体による指示位置の検出を行う第1の検出回路と、
を備えることを特徴とする位置検出装置を提供する。
【0011】
上述の構成の位置検出装置には、互いに交差する第1の方向と、第2の方向とに、複数の第1のループ電極と、複数の第2のループ電極とが配列されている。そして、指示体と電磁誘導結合する場合に、第1の検出回路は、複数の第1のループ電極の中から互いに隣接する複数の第1のループ電極を同時に選択して指示体による指示位置の検出を行う。これにより、幅の広いループコイルを等価的に構成して、指示体を効率よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明による位置検出装置の第1の実施形態の構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態の位置検出装置の電磁誘導モードにおける動作状態を説明するための図である。
図3】第1の実施形態の位置検出装置の静電結合モードにおける動作状態を説明するための図である。
図4】この発明による位置検出装置の第2の実施形態の構成例を示す図である。
図5】第2の実施形態の第1の例の位置検出装置において、電磁誘導モードにおける選択回路によるループ電極の選択制御を説明するための図である。
図6】第2の実施形態の第1の例の位置検出装置において、電磁誘導モードにおける動作を説明するための図である。
図7】第2の実施形態の第1の例の位置検出装置の位置検出センサと等価な位置検出センサのループコイルの配列例を示す図である。
図8】第2の実施形態の第2の例の位置検出装置において、電磁誘導モードにおける動作を説明するための図である。
図9】第2の実施形態の第2の例の位置検出装置において、電磁誘導モードにおける動作を説明するための図である。
図10】第2の実施形態の第2の例の位置検出装置の位置検出センサと等価な位置検出センサのループコイルの配列例を示す図である。
図11】この発明による位置検出装置の第3の実施形態の構成例を示す図である。
図12】第3の実施形態の位置検出装置の電磁誘導モードにおける動作状態を説明するための図である。
図13】この発明による位置検出装置の位置検出センサの他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、この発明の第1の実施形態の位置検出装置1の構成例を示す図である。この実施形態の位置検出装置1では、第1の指示体の例としての電子ペン(スタイラス)と、第2の指示体の例としての人の指とを用いることを可能としており、いずれの指示体によって位置指示されたときにも、それぞれの指示体による指示位置の座標(X,Y)を検出するできるようにしている。
【0014】
この第1の実施形態の位置検出装置で検出対象の第1の指示体である電子ペン2は、以下に説明する例では、図2に示すように、磁性体コア201に巻回されたコイル202を備え、信号発生回路203からの信号をコイル202を通じて電磁誘導エネルギーとして位置検出装置1に送信する構成を備える。なお、電子ペン2は、信号発生回路203を駆動するためのバッテリ(図示は省略)を備える。
【0015】
この実施形態の位置検出装置1は、図1に示すように、位置検出センサ10と、この位置検出センサ10に接続される信号処理回路20とからなる。この例では、位置検出センサ10は、液晶ディスプレイなどの表示装置の表示画面上に配置する透明センサの構成とされている。
【0016】
すなわち、この例の位置検出センサ10では、矩形のガラス基板などの透明基板11の横方向をX軸方向(第1の方向の例)とすると共に、透明基板11の横方向に直交する縦方向をY軸方向(第2の方向の例)として構成し、透明基板11に、ITO(Indium Tin Oxide)または銀や銅などの細線を組み合わせたメタルメッシュ電極により細長いループ電極が互いに重ならないように、一定間隔で複数配列したループ電極群が形成されて構成されている。
【0017】
ループ電極群は、例えば、第1の電極の例としてのループ電極Xの複数個からなるXループ電極群12と、第2の電極の例としてのループ電極Yの複数個からなるYループ電極群13との2層構造になっている。この例では、透明基板11の表面側に、Y軸方向を細長のループの長手方向とするループ電極Xの複数個が、X軸方向に、互いに重ならない状態で、一定間隔で配列されてXループ電極群12が形成される。また、透明基板11の裏面側には、X軸方向を細長のループの長手方向とするループ電極Yの複数個が、Y軸方向に、互いに重ならない状態で、一定間隔で配列されてYループ電極群13が形成されている。この例では、Xループ電極群12は、40個のループ電極X(X1~X40)からなり、Yループ電極群13は、30個のループ電極Y(Y1~Y30)からなる。
【0018】
なお、以下の説明においては、ループ電極X1~X40のそれぞれを区別する必要がないときには、ループ電極Xとのみ記載し、また、同様に、ループ電極Y1~Y30のそれぞれを区別する必要がないときには、ループ電極Yとのみ記載することとする。
【0019】
ループ電極X及びループ電極Yの配列ピッチは、位置検出センサ10上を指でタッチした際の接触面積の大きさに相当する程度の、例えば3~6mmが好ましい。そして、電子ペン2からの信号を効率良く受信するためには、ループコイルの幅は広い方が良いので、図1に示すように、ループ電極X及びループ電極Yの隣り合うものの間の間隔はできるだけ狭い方がよい。そこで、この例では、ループ電極X及びループ電極Yの隣り合うもの同士は、近接する状態とされている。したがって、ループ電極X及びループ電極Yのそれぞれの配列方向のループの幅は、配列ピッチよりも僅かに小さいものとされている。
【0020】
位置検出センサ10に接続される信号処理回路20は、この例では、Xループ電極群12の中から1個のループ電極Xを選択するための選択回路21と、Yループ電極群13の中から1個のループ電極Yを選択する選択回路22と、電磁誘導結合による第1の指示体の検出時と静電結合による第2の指示体の検出時とで切り替えられるモード切替回路23と、電磁誘導結合している第1の指示体による指示位置を検出するための第1の検出回路の例を構成するペン信号受信回路24と、静電結合している第2の指示体による指示位置を検出するための第2の検出回路の例を構成するタッチ検出制御回路25と、コンピュータからなる処理制御回路26とを含んで構成されている。
【0021】
選択回路21は、2個のマルチプレクサ211及び212で構成されており、複数個のループ電極X(X1~X40)のそれぞれの巻き始め端(X1a~X40a)が一方のマルチプレクサ211に接続され、巻き終わり端(X1b~X40b)のそれぞれが他方のマルチプレクサ212に接続されている。そして、2個のマルチプレクサ211及び212が処理制御回路26からの選択制御信号SExにより連動して選択制御されることで、選択回路21により、Xループ電極群12の内からループ電極Xが1個ずつ順次に選択される。
【0022】
そして、Xループ電極群12の内の、選択制御信号SExにより選択された1個のループ電極Xの巻き始め端がマルチプレクサ211で選択されて、このマルチプレクサ211の共通端子XAに接続され、同じループ電極Xの巻き終わり端がマルチプレクサ212で選択されて、このマルチプレクサ212の共通端子XBに接続される。
【0023】
また、選択回路22は、2個のマルチプレクサ221及び222で構成されており、複数個のループ電極Y(Y1~Y30)の巻き始め端(Y1a~Y30a)のそれぞれが一方のマルチプレクサ221に接続され、巻き終わり端(Y1b~Y30b)のそれぞれが他方のマルチプレクサ222に接続されている。そして、2個のマルチプレクサ221及び222は、処理制御回路26からの選択制御信号SEyにより連動して選択制御されることで、選択回路22により、Yループ電極群13の内からループ電極Yが1個ずつ順次に選択される。
【0024】
そして、Yループ電極群13の内の、選択制御信号SEyにより選択された1個のループ電極Yの巻き始め端がマルチプレクサ221で選択されて、このマルチプレクサ221の共通端子YAに接続され、同じループ電極Yの巻き終わり端がマルチプレクサ222で選択されて、このマルチプレクサ222の共通端子YBに接続される。
【0025】
モード切替回路23は、ループ電極X用の切替スイッチ回路23XA及び23XBと、ループ電極Y用の切替スイッチ回路23YA及び23YBとを備える。そして、マルチプレクサ211の共通端子XAは、モード切替回路23の切替スイッチ回路23XAの可動端子に接続され、また、マルチプレクサ212の共通端子XBは、モード切替回路23の切替スイッチ回路23XBの可動端子に接続される。また、マルチプレクサ221の共通端子YAは、モード切替回路23の切替スイッチ回路23YAの可動端子に接続され、マルチプレクサ222の共通端子YBは、モード切替回路23の切替スイッチ回路23YBの可動端子に接続される。
【0026】
そして、モード切替回路23の切替スイッチ回路23XA,23XB,23YA,23YBの一方の固定端子Pはペン信号受信回路24に接続され、他方の固定端子Fはタッチ検出制御回路25に接続される。
【0027】
そして、モード切替回路23の切替スイッチ回路23XAの一方の固定端子Pは、ペン信号受信回路24のX側差動入力アンプ24Xの一方の入力端子(図の例では、反転入力端子)に接続されており、また、切替スイッチ回路23XBの一方の固定端子Pは、X側差動入力アンプ24Xの他方の入力端子(図の例では、非反転入力端子)に接続されている。また、モード切替回路23の切替スイッチ回路23YAの一方の固定端子Pは、ペン信号受信回路24のY側差動入力アンプ24Yの一方の入力端子(図の例では、反転入力端子)に接続されており、また、切替スイッチ回路23YBの一方の固定端子Pは、Y側差動入力アンプ24Yの他方の入力端子(図の例では、非反転入力端子)に接続されている。
【0028】
そして、ペン信号受信回路24のX側差動入力アンプ24X及びY側差動入力アンプ24Yの後段には、図示は省略したが、X軸信号受信回路及びY軸信号受信回路がそれぞれ設けられている。これらX軸信号受信回路及びY軸信号受信回路は、ループ電極X及びループ電極Yで検出されたペン信号(電子ペン2から受信した信号)の受信レベルを検出し、その検出した受信レベルの情報を、処理制御回路26に供給する。処理制御回路26は、ペン信号受信回路24からの情報から、電子ペン2による位置検出センサ10上における指示位置の座標(X,Y)を検出する。
【0029】
また、この例では、切替スイッチ回路23XAの他方の固定端子Fと、切替スイッチ回路23XBの他方の固定端子Fとは互いに接続され、その接続点が、タッチ検出制御回路25のタッチ信号検出アンプ251の入力端に接続される。また、切替スイッチ回路23YAの他方の固定端子Fと、切替スイッチ回路23YBの他方の固定端子Fとは互いに接続され、その接続点が、タッチ検出制御回路25の送信出力ドライバ252の出力端に接続される。したがって、ループ電極X及びループ電極Yは、両端を短絡されるので、それぞれ1本の電極線として動作する。
【0030】
送信出力ドライバ252の前段には、発振回路253が接続されており、この発振回路253からの所定の周波数fの周波数信号が送信出力ドライバ252を通じて、位置検出センサ10に送信される。また、タッチ検出制御回路25のタッチ信号検出アンプ251の後段には、送信出力ドライバ252を通じて位置検出センサ10に送信された信号が、当該位置検出センサ10を通じて受信される信号のレベルを検出し、その検出した信号のレベルの情報を、処理制御回路26に供給するタッチ検出回路(図示は省略)が設けられている。
【0031】
処理制御回路26は、タッチ検出制御回路25からの信号のレベルが、指により指示された位置では変化することを用いて、指による位置検出センサ10上における指示位置の座標(X,Y)を検出する。
【0032】
処理制御回路26は、ペン信号受信回路24及びタッチ検出制御回路25からの受信情報に基づいて、上述のようなそれぞれの指示体の指示位置の座標を検出すると共に、これらペン信号受信回路24及びタッチ検出制御回路25に、タイミング制御信号を供給する。
【0033】
また、処理制御回路26は、選択回路21のマルチプレクサ211及び212に選択制御信号SExを供給して、Xループ電極群12の中から1個のループ電極Xを順次に選択するように制御すると共に、選択回路22のマルチプレクサ221及び222に選択制御信号SEyを供給して、Yループ電極群13の中から1個のループ電極Yを順次に選択するように制御する。
【0034】
さらに、処理制御回路26は、モード切替回路23に、切替スイッチ回路23XA,23XB,23YA,23YBの可動端子を固定端子Pと接続する状態(電磁誘導モード)と、切替スイッチ回路23XA,23XB,23YA,23YBの可動端子を固定端子Fと接続する状態(静電結合モード)とに切り替えるモード切替信号MDを供給する。
【0035】
この実施形態では、処理制御回路26は、モード切替信号MDによりモード切替回路23を所定の時間長期間ごとに、固定端子P側と固定端子F側とに交互に切り替えることで、位置検出装置1を、電磁誘導モードと静電結合モードとを時分割で切り替えるようにする。
【0036】
[第1の実施形態の位置検出装置1の動作]
この実施形態では、処理制御回路26は、所定の時間長期間において、モード切替信号MDにより、モード切替回路23の切替スイッチ回路23XA,23XB,23YA,23YBの可動端子を固定端子Pに接続する状態とすると共に、ペン信号受信回路24を駆動させて電磁誘導モードに切替制御する。そして、処理制御回路26は、この電磁誘導モードの期間において、選択回路21のマルチプレクサ211及び212を、Xループ電極群12の中からループ電極Xのそれぞれを1個ずつ、順次に全て選択するように制御すると共に、選択回路22のマルチプレクサ221及び222を、Yループ電極群13の中からループ電極Yのそれぞれを1個ずつ、順次に全て選択するように制御する。
【0037】
すると、この電磁誘導モードの状態の位置検出装置1では、図2に示すように、選択回路21で選択された1個のループ電極Xの両端は、ペン信号受信回路24のX側差動入力アンプ24Xの反転入力端子及び非反転入力端子に接続される。同様に、選択回路22で選択されたループ電極Yの両端は、ペン信号受信回路24のY側差動入力アンプ24Yの反転入力端子及び非反転入力端子にされる。
【0038】
このときには、位置検出センサ10上で電子ペン2により位置指示されると、電子ペン2からの信号に応じてループ電極X及びループ電極Yに誘起される誘導電流がX側差動入力アンプ24X及びY側差動入力アンプ24Yで増幅され、後段のX軸信号受信回路及びY軸信号受信回路に供給されて、そのレベルが検出される。
【0039】
処理制御回路26は、選択回路21のマルチプレクサ211及び212及び選択回路22のマルチプレクサ221及び222の選択制御信号SEx及び選択制御信号SEyによる切り替えタイミングと、ペン信号受信回路24からの電子ペン2から送出される信号の受信検出出力に基づいて、前述したようにして、電子ペン2による位置検出センサ上における指示位置の座標(X,Y)を検出する。
【0040】
そして、電磁誘導モードの期間が終了すると、この実施形態では、処理制御回路26は、モード切替信号MDにより、モード切替回路23の切替スイッチ回路23XA,23XB,23YA,23YBの可動端子を固定端子Fに接続すると共に、タッチ検出制御回路25を駆動させて静電結合モードに切替制御する。そして、処理制御回路26は、この静電結合モードの期間においても、選択回路21及び選択回路22を選択制御信号SEx及び選択制御信号SEyにより切り替えて、Xループ電極群12の中からループ電極Xのそれぞれを1個ずつ、順次に選択するように制御すると共に、Yループ電極群13の中からループ電極Yのそれぞれを1個ずつ、順次に選択するように制御する。
【0041】
この静電結合モードにおける位置検出装置1では、図3に示すように、選択回路22で選択されて、巻き始め端が接続された共通端子XAと巻き終わり端が接続された共通端子YAとが互いに接続されて1本の電極線として作用するループ電極Yに、順次に、タッチ検出制御回路25の送信出力ドライバ252を通じて発振回路253からの所定の周波数の信号が供給される。また、選択回路21で選択されて、巻き始め端が接続された共通端子YAと巻き終わり端が接続された共通端子YBとが互いに接続されて1本の電極線として作用するループ電極Xは、タッチ検出制御回路25のタッチ信号検出アンプ251の入力端に接続される状態となる。
【0042】
このとき、送信出力ドライバ252を通じて短絡されているループ電極Yに送信されている信号は、短絡されているループ電極Xで受信されて、その受信レベルがタッチ信号検出アンプ251に供給されるが、位置検出センサ10に指3がタッチされているときには、ループ電極Yに送信される信号の一部は、その指3及び人体を通じて流れてしまうので、その指タッチ位置のループ電極Yからループ電極Xへ伝達される信号が減少する。処理制御回路26は、タッチ検出制御回路25からの受信信号レベルの変化を検出することで、指タッチ位置の座標を検出する。
【0043】
そして、静電結合モードの期間が終了すると、この実施形態では、処理制御回路26は、モード切替信号MDにより、上述したようにして、電磁誘導モードに切り替える。以下、同様にして、電磁誘導モードと静電結合モードとを時分割で繰り返す。
【0044】
以上のようにして、上述した第1の実施形態の位置検出装置1では、Xループ電極群12及びYループ電極群13が形成されている位置検出センサ10を用いて、電磁誘導方式により電子ペン2による指示位置の座標を検出することができると共に、静電結合方式により指3による指示位置の座標を検出することができる。
【0045】
そして、この第1の実施形態の位置検出装置1は、位置検出センサ10には、線状の電極ではなく、Xループ電極群12及びYループ電極群13が形成されているので、線状の電極を端部で接続してループ電極を形成をする必要はない。このため、位置検出装置1は、Xループ電極群12の中からループ電極Xのそれぞれ、また、Yループ電極群13の中からループ電極Yのそれぞれを選択する選択回路21及び選択回路22と、モード切替回路23とを用いた簡単な構成とすることができる。
【0046】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態の位置検出装置1では、選択回路21及び選択回路22において、ループ電極X及びループ電極Yを、電磁誘導モード及び静電結合モードの両方において、それぞれ1個ずつを順次に選択するようにした。しかし、電磁誘導モードでは、Xループ電極群12及びYループ電極群13の内から、互いに隣り合う複数個を、同時に選択することにより、幅の広いループコイルを等価的に構成して、電子ペン2からの信号をより効率良く検出することができるようにすることができる。以下に説明する第2の実施形態は、そのように構成した場合である。なお、以下の説明においては、静電結合モードの動作は、第1の実施形態と同様となるので、主として、電磁誘導モードについての動作について説明する。
【0047】
<第2の実施形態の第1の例>
図4図7は、ループ電極X及びループ電極Yのそれぞれ隣接する2個ずつを同時に選択するように構成した第2の実施形態の位置検出装置1Aの構成例を説明するための図である。
【0048】
図4は、第2の実施形態の位置検出装置1Aの構成例を示す図である。この第2の実施形態の位置検出装置1Aにおいては、図4に示すように、第1の実施形態の位置検出装置1における選択回路21と選択回路22に代えて、選択回路21A及び選択回路22Aが設けられると共に、処理制御回路26に代えて、処理制御回路26Aが設けられる。その他は、第1の実施形態の位置検出装置1と同様の構成とされる。この図4において、上述した第1の実施形態の位置検出装置1と同一部分には、同一参照符号を付してその説明は省略する。
【0049】
選択回路21Aは、この第2の実施形態では、セレクトスイッチ211A及びセレクトスイッチ212Aとで構成される。セレクトスイッチ211A及びセレクトスイッチ212Aは、図4に示すように、ループ電極X(X1~X40)の個数分のスイッチを備えるもので、各ループ電極X(X1~X40)の巻き始め端X1a~X40aのそれぞれが、セレクトスイッチ211Aの各スイッチの一端に接続され、巻き終わり端X1b~X40bのそれぞれが、セレクトスイッチ212Aの各スイッチの一端に接続される。
【0050】
そして、セレクトスイッチ211Aの複数個のスイッチの他端側は共通に接続されて、セレクトスイッチ211Aの共通端子XA´に接続されている。同様に、セレクトスイッチ212Aの複数個のスイッチの他端側は共通に接続されて、セレクトスイッチ212Aの共通端子XB´に接続されている。セレクトスイッチ211Aの共通端子XA´は、モード切替回路23の切替スイッチ回路23XAの可動端子に接続され、セレクトスイッチ212Aの共通端子XB´は、モード切替回路23の切替スイッチ回路23XBの可動端子に接続される。
【0051】
そして、この第2の実施形態の第1の例では、電磁誘導モードにおいては、セレクトスイッチ211A及びセレクトスイッチ212Aは、処理制御回路26Aからの選択制御信号SEMxにより、Xループ電極群12の内から、隣接する2個ずつのループ電極Xを、選択する2個のループ電極Xを、1個ずつ順次ずらしながら、選択するように制御される。
【0052】
図5は、この第2の実施形態の第1の例の位置検出装置1Aにおいて、電磁誘導モードにおけるセレクトスイッチ211A及び212Aの複数個のスイッチの選択制御を説明するための図である。この図5は、セレクトスイッチ211A及び212Aにおいて、Xループ電極群12の各ループ電極X1~X40のそれぞれが接続されるスイッチのオン、オフの切替状態を、時間の経過の順に示したものであり、「1」はスイッチオン、「0」はスイッチオフとすることを意味している。電磁誘導モードでは、選択制御信号SEMx及びSEMyにより、図5に示す選択制御が繰り返し行われる。
【0053】
すなわち、選択回路21Aのセレクトスイッチ211Aとセレクトスイッチ212Aとは、同じ、隣接する2個のループ電極Xを、順次に選択するが、最初にループ電極X1及びX2が接続されている2個のスイッチをオンとして、これらループ電極X1及びX2を、共通端子XA´及びXB´に接続する。次いで、ループ電極X2及びX3が接続されている2個のスイッチをオンとして、これらループ電極X2及びX3を、共通端子XA´及びXB´に接続する。さらに、ループ電極X3及びX4、X4及びX5、X5及びX6というように、選択するループ電極Xを1個ずつずらしながら、2個のループ電極Xを共通端子XA´及びXB´に接続する。
【0054】
共通端子XA´及びXB´は、モード切替回路23の固定端子P側を通じてペン信号受信回路24のX側差動入力アンプ24Xに接続されているので、ペン信号受信回路24では、選択された2個ずつのループ電極Xについてペン信号の受信レベルを検出することになる。
【0055】
このように隣接する2個のループ電極Xを同時に選択したときには、図6に示すように、2個のコイルが並列に接続されて、X側差動入力アンプ24Xに供給される状態となる。この場合に、隣接する2個のループ電極Xn及びXn+1(ただし、n=1,2,・・・,39)のそれぞれに電子ペン2との電磁誘導結合により誘起される電流をi1及びi2とすると、X側差動入力アンプ24Xには、これら2個のループ電極Xn及びXn+1に誘起される電流の加算値に対応した出力α(i1+i2)が得られる。
【0056】
以上のようにして、セレクトスイッチ211A及びセレクトスイッチ212Aを、図5に示した順序で隣接する2個のループ電極Xを順次に選択するようにして、電子ペン2からの信号を検出することは、図7に示すように、互いに重複して配設されているループコイル14を、順番に選択するという電磁誘導方式における周知の検出方法と等価となる。この例の場合には、隣接する2個のループ電極を同時に選択するようにすることで、ループ電極の配列ピッチの2倍の幅のループコイルを形成することができる。
【0057】
以上は、X座標を求めるためのXループ電極群12に対する選択回路21Aについて説明したが、Y座標を求めるためのYループ電極群13に対する選択回路22Aについても同様に構成することができる。
【0058】
すなわち、選択回路22Aは、この第2の実施形態では、ループ電極Y(Y1~Y30)の個数分のスイッチを備えるセレクトスイッチ221A及びセレクトスイッチ222Aとで構成され、図4に示すように、各ループ電極Y(Y1~Y30)の巻き始め端Y1a~Y30aのそれぞれが、セレクトスイッチ221Aの各スイッチの一端に接続され、巻き終わり端Y1b~Y30bのそれぞれが、セレクトスイッチ222Aの各スイッチの一端に接続される。
【0059】
そして、セレクトスイッチ221Aの複数個のスイッチの他端側は共通に接続されて、セレクトスイッチ221Aの共通端子YA´に接続され、セレクトスイッチ222Aの複数個のスイッチの他端側は共通に接続されて、セレクトスイッチ222Aの共通端子YB´に接続されている。そして、セレクトスイッチ221Aの共通端子YA´は、モード切替回路23の切替スイッチ回路23YAの可動端子に接続され、セレクトスイッチ222Aの共通端子YB´は、モード切替回路23の切替スイッチ回路23YBの可動端子に接続される。
【0060】
そして、この第2の実施形態の第1の例では、電磁誘導モードにおいては、セレクトスイッチ221A及びセレクトスイッチ222Aは、処理制御回路26Aからの選択制御信号SEMyにより、上述したXループ電極群12の内からの、隣接する2個ずつのループ電極Xの選択制御と同様にして、選択する2個のループ電極Yを、1個ずつ順次ずらしながら、選択するように制御される。
【0061】
したがって、ループ電極Yについても、図6に示した動作と同様となり、ペン信号受信回路24のY側差動入力アンプ24Yには、2個のループ電極Ym及びXm+1(m=1,2,・・・,29)に誘起される電流の加算値に対応した出力α(i1+i2)が得られる。そして、Yループ電極群13についても、互いに重複して配設されているループコイルを、順番に選択するという電磁誘導方式における周知の検出方法と等価となる。
【0062】
なお、前述したように、静電結合モードにおいては、この第2の実施形態においても、セレクトスイッチ211A及びセレクトスイッチ212A、また、セレクトスイッチ221A及びセレクトスイッチ222Aは、ループ電極X及びループ電極Yを1個ずつ選択するように制御される。このため、処理制御回路26Aからは、静電結合モードにおいては、セレクトスイッチ211A及びセレクトスイッチ212A、また、セレクトスイッチ221A及びセレクトスイッチ222Aには、それぞれ複数のスイッチを1個ずつオンとするSECx、SECyが供給される。
【0063】
<第2の実施形態の第2の例>
上述の第1の例は、電磁誘導モードにおいては、隣接する複数(この例では2個)のループ電極X及びループ電極Yを、同時に選択するようにしたが、隣接する2個以上のループ電極X及びループ電極Yを、同時に選択することもできる。第2の例は、その場合の例であり、3個の場合について、以下に説明する。
【0064】
すなわち、この第2の例の場合にも、位置検出装置の構成は、図4に示した位置検出装置1Aの構成をそのまま用いる。そして、この第2の例の位置検出装置においては、処理制御回路26Aから電磁誘導モードにおいて選択回路21Aの2個のセレクトスイッチ211A及び212A、また、選択回路22Aの2個のセレクトスイッチ221A及び222Aに供給する選択制御信号SEMx及びSEMyが、第1の例と異なる。
【0065】
図8は、この第2の実施形態の第2の例の位置検出装置1Aにおいて、電磁誘導モードにおけるセレクトスイッチ211A及び212Aの複数個のスイッチの選択制御を説明するための図である。
【0066】
この例では、選択回路21Aのセレクトスイッチ211Aとセレクトスイッチ212Aとは、同じ、隣接する3個のループ電極Xを、順次に選択するが、最初にループ電極X1,X2及びX3が接続されている3個のスイッチをオンとして、これらループ電極X1,X2及びX3を、共通端子XA´及びXB´に接続する。次いで、ループ電極X2,X3及びX4が接続されている3個のスイッチをオンとして、これらループ電極X2,X3及びX4を、共通端子XA´及びXB´に接続する。さらに、ループ電極X3,X4及びX5、X4,X5及びX6、X5,X6及びX7というように、選択するループ電極Xを1個ずつずらしながら、3個のループ電極Xを共通端子XA´及びXB´に接続する。
【0067】
このように隣接する3個のループ電極Xを同時に選択したときには、図9に示すように、3個のループ電極X(コイル)が並列に接続されて、X側差動入力アンプ24Xに供給される状態となる。この場合に、隣接する3個のループ電極Xn、Xn+1及びXn+2(ただし、n=1,2,・・・,38)のそれぞれに電子ペン2との電磁誘導結合により誘起される電流をi1,i2及びi3とすると、X側差動入力アンプ24Xには、これら3個のループ電極Xn、Xn+1及びXn+2に誘起される電流の加算値に対応した出力α(i1+i2+i3)が得られる。
【0068】
以上のようにして、セレクトスイッチ211A及びセレクトスイッチ212Aを、図8に示した順序で隣接する3個のループ電極Xを順次に選択するようにして、電子ペン2からの信号を検出することは、図10に示すように、互いに重複して配設されているループコイル15を、順番に選択するという電磁誘導方式における周知の検出方法と等価となる。この例の場合には、隣接する3個のループ電極を同時に選択するようにすることで、ループ電極Xの配列ピッチの3倍の幅のループコイルを形成することができる。
【0069】
Y座標を求めるためのYループ電極群13に対する選択回路22Aについても同様に構成することができ、3個のコイルが並列に接続されて、Y側差動入力アンプ24Yに供給される状態となる。
【0070】
[第3の実施形態]
上述した第2の実施形態の位置検出装置1Aでは、電磁誘導モードにおいては、選択回路21A及び選択回路22Aでは、図6及び図9に示したように、複数のループ電極X及び複数のループ電極Yを並列に接続して選択するようにしたが、隣接する複数のループ電極X及び複数のループ電極Yを選択したときにループ電極(コイル)が直列に接続されるように選択回路を構成することもできる。第3の実施形態は、その場合の例である。
【0071】
図11は、第3の実施形態の位置検出装置1Bの構成例を説明するための図である。以下の説明においては、この第3の実施形態の位置検出装置1Bの電磁誘導モードにおける動作を中心として説明する。
【0072】
この第3の実施形態の位置検出装置1Bにおいては、図11に示すように、第1の実施形態の位置検出装置1における選択回路21と選択回路22に代えて、選択回路21B及び選択回路22Bが設けられると共に、処理制御回路26に代えて、処理制御回路26Bが設けられる。その他は、第1の実施形態の位置検出装置1と同様の構成とされる。この図11においては、上述した第1の実施形態の位置検出装置1と同一部分には、同一参照符号を付してその説明は省略する。なお、図11では、ペン信号受信回路24及びタッチ検出制御回路25は図示を省略した。
【0073】
選択回路21Bは、この第3の実施形態では、第1の実施形態のマルチプレクサ211及び212と同様の構成のマルチプレクサ211B及び212Bと、複数個、この例ではループ電極X(X1~X40)の個数分より1個少ない数である39個の3端子スイッチSX1~SX39とで構成される。3端子スイッチは、第1の端子、第2の端子及び第3の端子の3端子を備え、設定制御信号により、それら3つの端子の中から任意の2つの端子の間を接続するように設定することができるスイッチである。
【0074】
そして、ループ電極X(X1~X39)の巻き終わり端X1b~X39bのそれぞれが、各3端子スイッチSX1~SX39の第1の端子に接続され、ループ電極X(X2~X40)の巻き始め端X2a~X40aのそれぞれが、各3端子スイッチSX1~SX39の第2の端子に接続される。そして、各3端子スイッチSX1~SX39の第3の端子が、マルチプレクサ211B及び212Bに接続される。ただし、ループ電極X1の巻き始め端X1aは、マルチプレクサ212Bに直接に接続され、また、ループ電極X40の巻き終わり端X40bは、マルチプレクサ211Bに直接に接続されている。
【0075】
そして、この実施形態では、処理制御回路26Bからは、モード切替信号MDの他に、各3端子スイッチSX1~SX39のそれぞれに対して、その設定を制御する設定制御信号CTxが送出されると共に、マルチプレクサ211Bに対して選択制御信号SExA及びマルチプレクサ212Bに対して選択制御信号SExBがそれぞれ送出される。
【0076】
例えば、隣接する2個のループ電極Xを直列に接続するようにする場合には、まず、ループ電極X1の巻き終わり端X1bが第1の端子に接続されている3端子スイッチSX1が、第1の端子と第2の端子とが接続されるように設定制御されると共に、その隣のループ電極X2の巻き終わり端X2bが第1の端子に接続されている3端子スイッチSX2が、第1の端子と第3の端子とが接続されるように設定制御される。そして、マルチプレクサ211Bは、3端子スイッチSX2を選択し、マルチプレクサ212Bは、ループ電極X1の巻き始め端X1aを選択するように制御される。
【0077】
次いで、3端子スイッチSX1が、第1の端子と第3の端子とが接続されるように設定制御されると共に、その隣の3端子スイッチSX2が、第1の端子と第2の端子とが接続されるように設定制御され、更にその隣の3端子スイッチSX3が、第1の端子と第3の端子とが接続されるように設定制御される。そして、マルチプレクサ211Bは、第1の端子と第3の端子とが接続されている3端子スイッチSX3を選択し、マルチプレクサ212Bは、同様に第1の端子と第3の端子とが接続されている3端子スイッチSX1を選択するように選択制御される。
【0078】
以下順次に、隣接する3個の3端子スイッチSXn~SXn+2の組が、1個の3端子スイッチ分ずつ、順次にずらされて設定制御される。そして、その隣接する3個の3端子スイッチSXn~SXn+2の内、両端の3端子スイッチSXn及びSXn+2は、第1の端子が第3の端子に接続され、中央の3端子スイッチSXn+1は、第1の端子が第2の端子に接続されるように設定制御される。そして、マルチプレクサ211Bとマルチプレクサ212Bは、両端の3端子スイッチSXn+2及び3端子スイッチSXnを選択するように制御される。
【0079】
このように選択回路21Bが選択制御されたときには、図12に示すように、2個のループ電極X(コイル)が直列に接続されて、X側差動入力アンプ24Xに供給される状態となって、2個のループ電極Xに誘起される電流の加算値に対応した出力がX側差動入力アンプ24Xに得られる。
【0080】
なお、2個ずつを直列に接続する場合に限られる訳ではなく、隣接する3個のループ電極Xを直列に接続すると共に、その3個のループ電極Xの組を、1個ずつずらすように制御することもできる。3個以上の場合には、両端のループ電極Xの巻き始め端をマルチプレクサ211B及び212Bに接続すると共に、両端で挟まれる間のループ電極Xは、隣り合うものの、巻き終わり端と巻き始め端とを接続するように、それら複数のループ電極Xが接続される3端子スイッチのそれぞれを制御するようにする。
【0081】
以上は、Xループ電極群12についての説明であるが、Yループ電極群13についての選択回路22Bも同様に構成されて、同様にして複数個のループ電極Yずつを直列に接続するように制御することができる。すなわち、選択回路22Bは、第1の実施形態のマルチプレクサ221及び222と同様の構成のマルチプレクサ221B及び222Bと、複数個、この例ではループ電極Y(Y1~Y30)の個数分より1個少ない数である29個の3端子スイッチSY1~SY29とで構成される。
【0082】
そして、選択回路22Bのこれらのマルチプレクサ221B及び222B、並びに3端子スイッチSY1~SY29が、処理制御回路26Bからの選択制御信号SEyA及びSEyB並びに設定制御信号CTyにより制御されることにより、Xループ電極群12の場合と同様にして、隣接する複数個のループ電極Yを順次に直列に接続して選択するようにすることができる。
【0083】
なお、この第3の実施形態の静電結合モードにおいては、第2の実施形態と同様に、1個ずつのループ電極X及びループ電極Yを、選択回路21B及び選択回路22Bで選択するようにするものである。
【0084】
[他の実施形態]
上述の実施形態では、位置検出センサ10は、透明基板11にITOや銀や銅などの細線を組み合わせたメタルメッシュ電極などの実質的に透明化が可能な導電材料により、ループ電極X、ループ電極Yを形成した。このため、位置検出センサ10を構成する電極のラインは、例えば1ミリメートル程度の所定の幅を持ったパターンとして形成される。このような電極のラインを用いた位置検出センサを、タッチ検出動作に用いると、ループ電極Xの幅及びループ電極Yの幅の内側部分は電気的に空洞になるので、指などの人体との容量が、ループ電極X,ループ電極Yの中央部において減少し、指による指示位置を正確に求めることが難しくなる。
【0085】
このような問題を解決するためには、ループ電極X及びループ電極Yを構成する電極のラインのパターンからループ電極Xの幅の内側及びループ電極Yの幅の内側に突出する突起部を形成すればよい。図13(A)及び(B)は、ループ電極X及びループ電極Yを構成する電極のラインのパターンからループ電極Xの幅の内側及びループ電極Yの幅の内側に突出する突起部の例である。
【0086】
図13(A)及び(B)に示すように、位置検出センサにおいては、ループ電極Xとループ電極Yとは直交して交差するように配置されるので、ループ電極Xの幅分とループ電極Yの幅分とで矩形の空洞領域16が形成される。
【0087】
図13(A)の例においては、ループ電極Xの電極ラインパターンからは、矩形の空洞領域16の中心に向かう位置において、当該電極ラインパターンに直交して交差する方向に突出する互いに対向する2個の突起部17a,17bが形成される。また、ループ電極Yの電極ラインパターンからは、矩形の空洞領域16の中心位置において、当該電極ラインパターンに直交して交差する方向に突出する、互いに対向する2個の突起部18a,18bが形成される。
【0088】
また、図13(B)の例においても、ループ電極Xの電極ラインパターンに直交して交差する方向に突出する突起部17c,17dが形成されるが、この例においては、矩形の空洞領域16の中心からずれた位置に向かい、互いに対向しないように、これら突起部17c,17dが形成される。同様に、ループ電極Yの電極ラインパターンに直交して交差する方向に突出する突起部18c,18dが形成されるが、この例においては、矩形の空洞領域16の中心からずれた位置に向かって互いに対向しない状態で、これら突起部18c,18dが形成される。
【0089】
以上の図13(A)及び(B)に示すように電極パターンを構成した位置検出センサによれば、矩形の空洞領域16に指がタッチしたときにも、当該空洞領域16内には、突起部17a、17b及び突起部18a、18bあるいは突起部17c、17d及び突起部18c、18dが存在するので、指は、実質的にループ電極X及びループ電極Yと接触することになり、指タッチを、より検出し易くなる。
【0090】
このようにループ電極X,Yの内側に突起部17a、17b及び突起部18a、18bあるいは突起部17c、17d及び突起部18c、18dを設けたとしても、電子ペンから放射される磁界は突起部の線幅に比較して十分に広い領域に亘って放射されるので、ペン信号の受信動作時には、突起部17a、17b及び突起部18a、18bあるいは突起部17c、17d及び突起部18c、18dは、電子ペンからの磁界信号を受信する場合に殆ど影響を与えることはない。
【0091】
[その他の実施形態または変形例]
なお、上述の実施形態では、静電結合モードにおいては、ループ電極X及びループ電極Yのそれぞれは、巻き始め端と巻き終わり端とを接続して短絡するようにしたが、巻き始め端と巻き終わり端との一方をオープン(解放端)とし、他方をタッチ検出制御回路25に接続するための端部としてもよい。
【0092】
また、上述の実施形態では、位置検出センサ10は、透明基板11にITOや銀や銅などの細線を組み合わせたメタルメッシュ電極によりループ電極X、ループ電極Yを形成した透明センサの構成としたが、表示装置の表示画面上に配置する用途以外の用途では、不透明センサの構成であっても勿論よい。
【0093】
また、上述の実施形態においては、ペン信号受信回路24のX側入力及びY側入力の増幅回路は、差動アンプの構成としたが、ループ電極X及びループ電極Yのそれぞれの一端を固定電位に接続して、他端を単一入力のアンプに供給する構成としてもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、処理制御回路26,26A,26Bからのモード切替信号MDにより、位置検出装置1,1A,1Bは、電磁誘導モードと静電結合モードとを時分割で実行するように切り替えるようにした。しかし、電磁誘導モードと静電結合モードとの切り替えは、使用者が、手動で切り替えるようにしても勿論よい。その場合には、位置検出装置には、使用者による切り替え操作が可能な切替スイッチや押釦スイッチが設けられ、例えば処理制御回路が当該切替スイッチや押釦スイッチの切替状態に応じて、電磁誘導モードと静電結合モードとを切り替えるようにする。
【0095】
また、位置検出装置が、電子ペンからの信号を位置検出センサを通じて受信する状態であるときには、位置検出装置を電磁誘導モードに切り替え、電子ペンからの信号を位置検出センサを通じて受信しない状態では、静電結合モードとするように切り替えてもよい。
【0096】
また、電子ペン及び位置検出装置の双方に例えばブルートゥース(登録商標)規格の近距離無線通信回路を設け、位置検出装置の近距離無線通信回路が、電子ペンからの信号を受信した状態には、位置検出装置を電磁誘導モードに切り替え、電子ペンからの信号を受信しない状態では、静電結合モードとするように切り替えてもよい。
【0097】
なお、上述の実施形態では、静電結合モードで検出する対象としての第2の指示体は、人体の指としたが、パッシブ静電方式の電子ペンであってもよい。また、アクティブ静電結合方式の電子ペンであってもよい。アクティブ静電結合方式の電子ペンの場合には、タッチ検出制御回路25の代わりに、アクティブ静電結合方式の電子ペンからの信号をループ電極Xとループ電極Yとのそれぞれについて受信して、そのレベルを検出する回路が設けられるものである。
【0098】
また、上述の実施形態では、電磁誘導モードにおいては、発振回路を備える電子ペン2からの信号を受信することで、電子ペン2による指示位置を検出するようにした。しかし、これに限られるものではなく、電子ペンとして、コイルとキャパシタとからなる共振回路を備えるものを用い、電磁誘導モードにおいて、位置検出装置から電磁誘導結合で電子ペンに交流信号を送信し、電子ペンの共振回路を介して帰還される信号を受信することで電子ペンによる指示位置を検出する構成とすることもできる。この場合に、電子ペンに交流信号を送信する手段は、Xループ電極群12及びYループ電極群13を用いてもよいし、別途送信用にループコイルを設けてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B…位置検出装置、2…電子ペン、3…指、10…位置検出センサ、11…透明基板、12…Xループ電極群、13…Yループ電極群、17a,17b,17c,17d…突起部、18a,18b,18c,18d…突起部、21,21A,21B…Xループ電極の選択回路、22,22A,22B…Yループ電極の選択回路、23…モード切替回路、24…ペン信号受信回路、25…タッチ検出制御回路
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