(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026758
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】飲料、容器詰め飲料および飲料の水っぽさの低減方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/56 20060101AFI20240220BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240220BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240220BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20240220BHJP
【FI】
A23L2/56
A23L2/00 A
A23L2/00 G
A23L27/00 C
A23L27/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003771
(22)【出願日】2024-01-15
(62)【分割の表示】P 2018193177の分割
【原出願日】2018-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2018086030
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 彰宏
(57)【要約】
【課題】低カロリーでありながら、水っぽさが低減された飲料に係る技術を提供する。
【解決手段】飲料は、糖度が3.0以下であり、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(a)~(c),(e)~(h)から選択される少なくとも1つ以上を含むものである。
(a)2-イソブチル-3-メトキシピラジン 2.0ppb以上480ppb以下
(b)β-ダマセノン 0.1ppb以上
(c)δ-デカノラクトン 15ppb以上
(e)ゲラニオール 0.1ppb以上
(f)イソ吉草酸 0.1ppb以上
(g)ペンタジオン 1ppb以上
(h)吉草酸 2ppb以上
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖度が3.0以下であり、
砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(a)~(c),(e)~(h)から選択される少なくとも1つ以上を含む、飲料。
(a)2-イソブチル-3-メトキシピラジン 2.0ppb以上480ppb以下
(b)β-ダマセノン 0.1ppb以上
(c)δ-デカノラクトン 15ppb以上
(e)ゲラニオール 0.1ppb以上
(f)イソ吉草酸 0.1ppb以上
(g)ペンタジオン 1ppb以上
(h)吉草酸 2ppb以上
【請求項2】
カフェイン及びナリンギンを実質的に含まない、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
糖度が3.0以下であり、
砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(d)を含む、飲料。
(d)カフェイン 0.02g/L以上
【請求項4】
糖度が3.0以下であり、
砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(i)を含む、飲料。
(i)ナリンギン 0.05mg/L以上
【請求項5】
波長420nmにおける吸光度が0.5以下である、請求項1乃至4いずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
波長650nmにおける吸光度が0.01以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
高甘味度甘味料を実質的に含まない、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載された飲料が透明な容器に充填された容器詰め飲料。
【請求項9】
糖度が3.0以下である飲料において、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(a)~(c),(e)~(h)から選択される少なくとも1つ以上を含むように調製する、飲料の水っぽさの低減方法。
(a)2-イソブチル-3-メトキシピラジン 2.0ppb以上480ppb以下
(b)β-ダマセノン 0.1ppb以上
(c)δ-デカノラクトン 15ppb以上
(e)ゲラニオール 0.1ppb以上
(f)イソ吉草酸 0.1ppb以上
(g)ペンタジオン 1ppb以上
(h)吉草酸 2ppb以上
【請求項10】
糖度が3.0以下である飲料において、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(d)含むように調製する、飲料の水っぽさの低減方法。
(d)カフェイン 0.02g/L以上
【請求項11】
糖度が3.0以下である飲料において、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(i)含むように調製する、飲料の水っぽさの低減方法。
(i)ナリンギン 0.05mg/L以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、容器詰め飲料および飲料の水っぽさの低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の健康志向において、低カロリー飲料の需要は高く、可溶性固形分(Bx)が低い飲料が求められている。一方、飲料を低Bx化すると水っぽい味わいになることが知られており、従来は低Bx化による水っぽい味わいを隠すために高甘味度甘味料などで甘さをある程度付与していた。しかしながら、近年では、高甘味度甘味料のような人工甘味料の使用は、その味の面と人工的なイメージとによって敬遠される傾向にある。
【0003】
また、飲料の嗜好性を向上させる技術としては、例えば、特許文献1には、香辛料フレーバーを飲料に配合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、多数の香辛料フレーバーが挙げられ、多数の香気成分含む香辛料フレーバーを飲料に添加し嗜好性が良好になることが開示されているにとどまり、具体的な香気成分の作用に着目したものではなかった。
【0006】
そこで、本発明者は、砂糖または果糖を含有し、糖度の低い飲料における水っぽさを低減すべく観点から、鋭意検討を行った。その結果、特定の成分を用いることで、低カロリーでありつつも、水っぽさを低減できる飲料が得られることが見出され、本発明が完成された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
糖度が3.0以下であり、
砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(a)~(c),(e)~(h)から選択される少なくとも1つ以上を含む、飲料が提供される。
(a)2-イソブチル-3-メトキシピラジン 2.0ppb以上480ppb以下
(b)β-ダマセノン 0.1ppb以上
(c)δ-デカノラクトン 15ppb以上
(e)ゲラニオール 0.1ppb以上
(f)イソ吉草酸 0.1ppb以上
(g)ペンタジオン 1ppb以上
(h)吉草酸 2ppb以上
【0008】
本発明によれば、
糖度が3.0以下であり、
砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(d)を含む、飲料が提供される。
(d)カフェイン 0.02g/L以上
【0009】
本発明によれば、
糖度が3.0以下であり、
砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(i)を含む、飲料が提供される。
(i)ナリンギン 0.05mg/L以上
【0010】
本発明によれば、
上記の飲料が透明な容器に充填された容器詰め飲料が提供される。
【0011】
本発明によれば、
糖度が3.0以下である飲料において、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(a)~(c),(e)~(h)から選択される少なくとも1つ以上を含むように調製する、飲料の水っぽさの低減方法が提供される。
(a)2-イソブチル-3-メトキシピラジン 2.0ppb以上480ppb以下
(b)β-ダマセノン 0.1ppb以上
(c)δ-デカノラクトン 15ppb以上
(e)ゲラニオール 0.1ppb以上
(f)イソ吉草酸 0.1ppb以上
(g)ペンタジオン 1ppb以上
(h)吉草酸 2ppb以上
【0012】
本発明によれば、
糖度が3.0以下である飲料において、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(d)含むように調製する、飲料の水っぽさの低減方法が提供される。
(d)カフェイン 0.02g/L以上
【0013】
本発明によれば、
糖度が3.0以下である飲料において、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(i)含むように調製する、飲料の水っぽさの低減方法が提供される。
(i)ナリンギン 0.05mg/L以上
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低カロリーでありながらも、水っぽさが低減された飲料に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0016】
〔第1実施形態〕
<飲料>
本実施形態の飲料は、
糖度が3.0以下であり、
砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(a)~(c),(e)~(h)から選択される少なくとも1つ以上を含む、飲料が提供される。成分(a)~(c),(e)~(h)は、それぞれ単独でも用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(a)2-イソブチル-3-メトキシピラジン 2.0ppb以上480ppb以下
(b)β-ダマセノン 0.1ppb以上
(c)δ-デカノラクトン 15ppb以上
(e)ゲラニオール 0.1ppb以上
(f)イソ吉草酸 0.1ppb以上
(g)ペンタジオン 1ppb以上
(h)吉草酸 2ppb以上
本実施形態の飲料は、砂糖及び/又は果糖を含み、糖度が3.0以下であることを前提として、特定の成分(a)~(c),(e)~(h)を特定量配合することで、低カロリーでありながらも、水っぽさを低減できるものである。また、本実施形態の飲料は、成分(a)~(c),(e)~(h)を単に配合するのではなく、特定の範囲の配合量とすることによって、より一層効果的に水っぽさを低減できるものである。
また「水っぽさ」とは、飲料の水分量を示すのではなく、飲料を喫飲した際に、味が薄く、水そのものの味が感じられる状態を意図する。
【0017】
以下、本実施形態の飲料の詳細について説明する。
【0018】
[(a)2-イソブチル-3-メトキシピラジン]
成分(a)の濃度の下限値は、2.0ppb以上であるが、好ましくは、4.0ppb以上、より好ましくは、6.0ppb以上、さらに好ましくは、8.0ppb以上である。
一方、成分(a)の濃度の上限値は、480ppb以下であるが、好ましくは、400ppb以下、より好ましくは、350ppb以下、さらに好ましくは、300ppb以下である。
成分(a)の濃度を、かかる数値範囲とすることで、水っぽさを低減的できる。
【0019】
[(b)β-ダマセノン]
成分(b)の濃度の下限値は、0.1ppb以上であるが、好ましくは、1ppb以上、より好ましくは、100ppb以上、さらに好ましくは、500ppb以上である。
一方、成分(b)の濃度の上限値は、好ましくは、10000ppb以下であり、水っぽさと後味とのバランスを良好にする観点からは、好ましくは7000ppb以下、より好ましくは、5000ppb以下、さらに好ましくは、2000ppb以下である。
成分(b)の濃度を、かかる数値範囲とすることで、水っぽさを低減的できる。
【0020】
[(c)δ-デカノラクトン]
成分(c)の濃度の下限値は、15ppb以上であるが、好ましくは、30ppb以上、より好ましくは、40ppb以上、さらに好ましくは、50ppb以上である。
一方、成分(c)の濃度の上限値は、水っぽさと後味とのバランスを良好にする観点から、好ましくは、7000ppb以下、より好ましくは、1000ppb以下、さらに好ましくは、500ppb以下である。
成分(c)の濃度を、かかる数値範囲とすることで、水っぽさを低減的できる。
【0021】
[(e)ゲラニオール]
成分(e)の濃度の下限値は、0.1ppb以上であるが、好ましくは、0.2ppb以上、より好ましくは、0.5ppb以上、さらに好ましくは、0.8ppb以上である。
一方、成分(e)の濃度の上限値は、ゲラニオールに起因するバラの様な香りを抑制し、水っぽさと後味とのバランスを良好にする観点から、好ましくは、1000ppb以下、より好ましくは、800ppb以下、さらに好ましくは、70ppb以下である。
成分(e)の濃度を、かかる数値範囲とすることで、水っぽさを低減的できる。
【0022】
[(f)イソ吉草酸(3-メチルブタン酸)]
成分(f)の濃度の下限値は、0.1ppb以上であるが、好ましくは、0.2ppb以上、より好ましくは、0.5ppb以上、さらに好ましくは、0.8ppb以上である。
一方、成分(f)の濃度の上限値は、水っぽさと後味とのバランスを良好にする観点から、好ましくは、10000ppb以下、より好ましくは、8000ppb以下、さらに好ましくは、700ppb以下である。
成分(f)の濃度を、かかる数値範囲とすることで、水っぽさを低減的できる。
【0023】
[(g)ペンタジオン]
成分(g)の濃度の下限値は、1ppb以上であるが、好ましくは、2ppb以上、より好ましくは、5ppb以上、さらに好ましくは、8ppb以上である。
一方、成分(g)の濃度の上限値は、水っぽさと後味とのバランスを良好にする観点から、好ましくは、50000ppb以下、より好ましくは、20000ppb以下、さらに好ましくは、8000ppb以下である。
成分(g)の濃度を、かかる数値範囲とすることで、水っぽさを低減的できる。
【0024】
[(h)吉草酸(ペンタン酸)]
成分(h)の濃度の下限値は、2ppb以上であるが、好ましくは、8ppb以上、より好ましくは、15ppb以上、さらに好ましくは、50ppb以上である。
一方、成分(h)の濃度の上限値は、水っぽさと後味とのバランスを良好にする観点から、好ましくは、50000ppb以下、より好ましくは、20000ppb以下、さらに好ましくは、8000ppb以下である。
成分(h)の濃度を、かかる数値範囲とすることで、水っぽさを低減的できる。
【0025】
本実施形態の飲料は、実質的にカフェインおよびナリンギンを含まないことがよい。実質的にカフェインおよびナリンギンを含まないとは、現実的に検出可能な範囲において、カフェインおよびナリンギンが検出されないことを意図する。
【0026】
本実施形態において、成分(a)~(c),(e)~(h)の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS、アジレント・テクノロジー社製、7890GC/5975MSD)を用いた固相マイクロ抽出法(SPME)法により定量することができる。定量には、標準添加法を用いることができるが、必要に応じて絶対検量線法を用いてもよい。なお、上記測定サンプルについて3サンプルずつ準備し、その定量結果の平均値を測定結果とすることができる。準備した測定サンプルを含む20mLバイアル瓶を、50℃で10分間の加熱処理を施した後、当該バイアル瓶の気相部分にシグマアルドリッチ社製のSPMEファイバー(DVB/CAR/PDMS)を挿入し、5分間、揮発成分を捕集した。このSPMEファイバーをGC/MSに設置し、300秒間焼成することにより、捕集した揮発成分を脱離することができる。
【0027】
[砂糖(ショ糖)]
砂糖は、いわゆる甘味料の一成分であり、二糖である。砂糖が含まれる形態は特に限定されず、果汁等の天然物に含まれるものであってもよい。
砂糖の濃度の下限値は、低いほどよく特に限定されないが、飲料全体に対して、0.01g/L以上が好ましく、0.5g/L以上がより好ましい。一方、砂糖の濃度の上限値は、低カロリーとするため、20g/L以下が好ましく、15g/L以下がより好ましい。
【0028】
[果糖]
果糖は、いわゆる甘味料の一成分であり、単糖である。果糖は、本発明の効果に影響を与えない限り、高果糖液糖や果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖、果汁等の天然物に含まれるものであってもよい。
果糖の濃度の下限値は、低いほどよく特に限定されないが、飲料全体に対して、0.01g/L以上が好ましく、0.5g/L以上がより好ましい。一方、果糖の濃度の上限値は、低カロリーとするため、20g/L以下が好ましく、15g/L以下がより好ましい。
【0029】
本実施形態の飲料は、砂糖、果糖の少なくともいずれか一方を含めばよいが、嗜好性を多様にする観点から、砂糖および果糖をともに含むことが好ましい。
【0030】
[その他成分]
本実施形態の飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の種々の成分を含んでもよい。例えば、上記以外の香気成分、上記果糖およびショ糖以外の甘味料、酸味料、pH調整剤、果汁、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、増粘安定剤等を含んでもよい。
ただし、透明性の観点からは、飲料は、着色料を実質的に含まないか、含むとしても少量であることが好ましい。
【0031】
例えば、上記果糖およびショ糖以外の甘味料としては、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料が挙げられる。甘味料は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
ただし、高甘味度甘味料は、健康志向や需要者の嗜好性等の観点から、含まないことがよい。
【0032】
例えば、上記の酸味料としては、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸塩、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。
【0033】
[糖度(ブリックス値)]
本実施形態の飲料の糖度は、3.0以下である。飲料をより低カロリーとする観点から、糖度を低くしてもよく、例えば、2.5以下、2以下、1.5以下であってもよい。
【0034】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、3.2~4.6であることが好ましく、3.3~4.2であることがより好ましく、3.5~4.0であることがさらに好ましい。これにより、水っぽさを低減しつつ、後味を良好に保持できる。
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0035】
[酸度(クエン酸酸度)]
本実施形態の飲料の酸度は、特に限定されないが、適切な酸度に調整されることで、水っぽさを低減しつつ、後味を良好に保持できる。
具体的には、クエン酸の相当量として換算した値(クエン酸度)において、上限が、好ましくは0.15%以下であり、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下である。クエン酸度の好ましい下限は特になく、0%より大きい値である。
【0036】
[透明性]
本実施形態の飲料の波長420nmにおける吸光度は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。ここで、特段の材料や製法を用いていない通常のコーヒー飲料は、焙煎されたコーヒー豆に由来する褐色の色を呈している。これに対し、本実施形態の飲料は、通常のコーヒー飲料とは異なるものであり、波長420nmにおける透明性が得られるものである。
また、本実施形態の飲料は、波長650nmにおける吸光度は、好ましくは0.06以下であり、より好ましくは0.04以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。すなわち、本実施形態の飲料は、透明性が高い飲料であり、いわゆる止渇目的で喫飲されるニアウォーターとすることができる。
【0037】
[製造方法、容器など]
本実施形態の飲料は、果糖及び/又は砂糖、および必要に応じて添加されるその他の成分を、定法に従って水に均一に混合することで得ることができる。
本実施形態の飲料は、加熱殺菌され、容器に詰められた状態の容器詰め飲料としてもよい。このときの容器としては、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。
さらに飲料を外観から観察し、透明性、色などを確認できる観点から、容器は透明であることが好ましく、具体的にはペットボトルまたは無着色の瓶が好ましい。また、取扱性、流通性、携帯性等の観点から、容器はペットボトルであることが好ましい。
【0038】
<飲料の水っぽさの低減方法>
本実施形態の飲料の水っぽさの低減方法は、糖度が3.0以下である飲料において、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(a)~(c),(e)~(h)から選択される少なくとも1つ以上を含むように調製するものである。
(a)2-イソブチル-3-メトキシピラジン 2.0ppb以上480ppb以下
(b)β-ダマセノン 0.1ppb以上
(c)δ-デカノラクトン 15ppb以上
(e)ゲラニオール 0.1ppb以上
(f)イソ吉草酸 0.1ppb以上
(g)ペンタジオン 1ppb以上
(h)吉草酸 2ppb以上
これにより、低カロリーでありながらも、飲料の水っぽさが低減できる。
【0039】
〔第2実施形態〕
上記の第1実施形態においては、成分(a)~(c),(e)~(h)を含む飲料について説明したが、本実施形態おいては、成分(d)を含む飲料について説明する。第2実施形態の飲料においても、第1実施形態の飲料と同様の効果が得られる。以下、第1実施形態と共通する部分の説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0040】
<飲料>
本実施形態の飲料は、
糖度が3.0以下であり、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(d)を含む。
(d)カフェイン 0.02g/L以上
本実施形態の飲料は、砂糖及び/又は果糖を含み、糖度が3.0以下であることを前提として、特定の成分(d)を配合することで、低カロリーでありながらも、水っぽさを低減できるものである。
【0041】
[(d)カフェイン]
成分(d)の濃度の下限値は、0.02g/L以上であるが、好ましくは、0.03g/L以上、より好ましくは、0.04g/L以上である。
一方、成分(d)の濃度の上限値は、好ましくは、1.0g/L以下、より好ましくは、0.8g/L以下、さらに好ましくは、0.7g/L以下である。
成分(d)の濃度を、かかる数値範囲とすることで、水っぽさを低減的できる。
【0042】
なお、成分(d)の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの通常用いられる方法によって測定することができる。例えば、測定対象の飲料を0.45μmのシリンジフィルターでろ過したものを測定用のサンプルとして、以下の条件で測定することができる。
装置:Waters UPLC装置一式(検出器:PDA グラジエント法)
移動相:0.5%ギ酸(A液)、0.5%ギ酸/メタノール(B液)
カラム:Waters Acquity UPLC BEH C18
1.7μm 2.1×100mm
流量:0.3ml/分
グラジエント:A/B=90/10で2分間通液後、65/35で11分間通液
【0043】
<飲料の水っぽさの低減方法>
本実施形態の飲料の水っぽさの低減方法は、糖度が3.0以下である飲料において、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(d)を含むように調製するものである。
(d)カフェイン 0.02g/L以上
これにより、低カロリーでありながらも、飲料の水っぽさが低減できる。
【0044】
〔第3実施形態〕
上記の第1実施形態においては、成分(a)~(c),(e)~(h)を含む飲料について説明したが、本実施形態おいては、成分(i)を含む飲料について説明する。第3実施形態の飲料においても、第1実施形態の飲料と同様の効果が得られる。以下、第1実施形態と共通する部分の説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0045】
<飲料>
本実施形態の飲料は、
糖度が3.0以下であり、砂糖及び/又は果糖と、以下の成分(i)を含む。
(i)ナリンギン 0.05mg/L以上
本実施形態の飲料は、砂糖及び/又は果糖を含み、糖度が3.0以下であることを前提として、特定の成分(i)を配合することで、低カロリーでありながらも、水っぽさを低減できるものである。
【0046】
[(i)ナリンギン]
成分(i)の濃度の下限値は、0.05mg/L以上であるが、好ましくは、0.1mg/L以上、より好ましくは、0.5mg/L以上である。
一方、成分(i)の濃度の上限値は、好ましくは、60mg/L以下、より好ましくは、40mg/L以下、さらに好ましくは、25mg/L以下である。
成分(i)の濃度を、かかる数値範囲とすることで、水っぽさを低減的できる。
【0047】
なお、成分(i)の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの通常用いられる方法によって測定することができる。例えば、分析機器はHPLC(島津製作所社製LC-VPシリーズ)を用い、カラムにはULTRON VX-ODS(5μm、4.6mm×250mm)を装着して、移動相には蒸留水/アセトニトリル/酢酸(80:20:0.01)で混和、脱気したものを使用する。分析条件は、カラム温度40℃、流速1.0ml/min、注入量10μl、検出波長280nmで実施することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0049】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
[実験1]食塩による水っぽさ低減作用の糖度による影響の検証
<対照例1、参考例1、比較例1~4>
表1に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について以下の測定、および評価を行い、結果を表1に示した。なお、表1中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0051】
<測定(物性)>
・糖度(Bx):糖用屈折計示度「RX-5000α」株式会社アタゴ製を用いてブリックス値を測定した。飲料の液温は20℃とした。
・pH:東亜ディーケーケー社製 GST-5741Cにて測定した値(20℃)とした。
・吸光度(D420:波長420nm、D650:波長650nm):飲料を光路長1cmのセルに入れて、市販の分光光度計で測定した値とした。なお、吸光度測定は、20℃の温度条件下、石英セルを用いて実施した。
【0052】
<評価>
・官能評価:実施例および比較例の飲料(20℃)それぞれを、熟練した5名のパネラーが試飲し、以下の評価基準に従い、「味の濃さの良さ」、「後味の良さ」、「塩味の強さ」、「水っぽさがある」それぞれについて、7段階(1~7点)評価を実施し、その平均点を求めた。また、評価する際は、対照例1の飲料を対照品(基準値4点)として評価を実施した。また、「水っぽさがある」については、各比較例に対して0.6点以上評点が小さくなる場合について、水っぽさが低減されたものと判断した。なお、評価は、数値が大きいほど、香味が強いことを表す。
【0053】
・評価基準
「味の濃さの良さ」、「後味の良さ」、「塩味の強さ」、「水っぽさがある」
7点・・・対象品よりも非常に強い
6点・・・対象品よりも強い
5点・・・対象品よりもわずかに強い
4点・・・対象品と同等の強さ
3点・・・対象品よりもわずかに弱い
2点・・・対象品よりも弱い
1点・・・対象品よりも非常に弱いか全く感じない
【0054】
【0055】
表1より、対照例1と参考例1とを対比すると、Bxが4以上の場合は、食塩により、水っぽさが軽減され、塩味が強くなり、また、後味が良くなることが分かる。一方、比較例1~4のようにBxが3以下の場合において、比較例1と2、比較例3と4とをそれぞれ対比すると、食塩の添加により、逆に水っぽさが増強されることが分かる。
【0056】
[実験2]食塩なしでの香気成分の種類の違いの検証
<対照例1、実施例1~4、比較例3,5,6>
表2に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表2に示した。なお、表2中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0057】
【0058】
[実験3](a)2-イソブチル-3-メトキシピラジンの濃度による違いの検証
<対照例1、実施例1,5、比較例3,7~9>
表3に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表3に示した。なお、表3中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0059】
【0060】
[実験4](b)β-ダマセノンの濃度による違いの検証
<対照例1、実施例6~10、比較例3>
表4に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表4に示した。なお、表4中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0061】
【0062】
[実験5](c)δ-デカノラクトンの濃度による違いの検証
<対照例1、実施例3,11,12、比較例3,10,11>
表5に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表5に示した。なお、表5中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0063】
【0064】
[実験6](d)カフェイン濃度による違いの検証
<対照例1、実施例4,13,14、比較例3,12,13>
表6に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表6に示した。なお、表6中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0065】
【0066】
[実験7]糖度3の場合の検証
<対照例1、実施例15、比較例1>
表7に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表7に示した。なお、表7中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0067】
【0068】
[実験8]食塩なしでの香気成分の種類の違いの検証2
<対照例1、実施例16~19、比較例3,14,15>
表8に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表8に示した。なお、表8中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0069】
【0070】
[実験9](e)ゲラニオールの濃度による違いの検証
<対照例1、実施例16,20~24、比較例3>
表9に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表9に示した。なお、表9中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0071】
【0072】
[実験10](h)吉草酸の濃度による違いの検証
<対照例1、実施例19,25~28、比較例3,16>
表10に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表10に示した。なお、表10中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0073】
【0074】
[実験11](i)ナリンギンの濃度による違いの検証
<対照例1、実施例29~33、比較例3>
表11に示す配合比率となるように、各成分を水中で均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表11に示した。なお、表11中の「-」は、配合されていないことを示す。
【0075】