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特開2024-26771カワラケツメイ属に属する植物の発酵物ならびに前記を含有する化粧料および皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026771
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】カワラケツメイ属に属する植物の発酵物ならびに前記を含有する化粧料および皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240220BHJP
   A61K 36/482 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20240220BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 35/66 20150101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/482
A61K8/99
A61Q19/00
A61Q19/08
A61P17/00
A61P29/00
A61K35/66
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004197
(22)【出願日】2024-01-15
(62)【分割の表示】P 2019235299の分割
【原出願日】2019-12-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成30年12月25日 https://inci.personalcarecouncil.org/inci-app/#TN_ARCHIVE_SEARCH%7Csearch%7C~appno=1-12-2018-8909~category=0~を通じて発表
(71)【出願人】
【識別番号】516273062
【氏名又は名称】サムライ金沢株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503289816
【氏名又は名称】株式会社永廣堂本店
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100158724
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 増美
(72)【発明者】
【氏名】武田 幸男
(72)【発明者】
【氏名】今井 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】西 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】土井 翔太
(57)【要約】
【課題】化粧料や皮膚外用剤の機能発現成分として有用な新規成分を提供し、十分な効果を奏する化粧料または皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物、これを含有する化粧料または皮膚外用剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物。
【請求項2】
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物がカワラケツメイ(Chamaecrista nomame (Siebold) H.Ohashi)である、請求項1に記載の発酵物。
【請求項3】
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の葉、茎、果実、種子および果汁からなる群より選択される1種以上の発酵物である、請求項1または2に記載の発酵物。
【請求項4】
麹が米麹である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発酵物。
【請求項5】
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物および麹を溶媒に混合し、発酵させる工程、前記工程後の混合液を加熱処理する工程、ならびに液状の発酵物を回収する工程を含む、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物の製造方法。
【請求項6】
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物がカワラケツメイ(Chamaecrista nomame (Siebold) H.Ohashi)である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の葉、茎、果実、種子および果汁からなる群より選択される1種以上を用いる、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
麹として米麹を用いる、請求項5~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
溶媒として水を用いる、請求項5~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の発酵物を含有する、化粧料。
【請求項11】
色素沈着の予防または改善用である、請求項10に記載の化粧料。
【請求項12】
皮膚の老化の予防または改善用である、請求項10に記載の化粧料。
【請求項13】
炎症の予防または改善用である、請求項10に記載の化粧料。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項に記載の発酵物を含有する、皮膚外用剤。
【請求項15】
色素沈着の予防または改善用である、請求項14に記載の皮膚外用剤。
【請求項16】
皮膚の老化の予防または改善用である、請求項14に記載の皮膚外用剤。
【請求項17】
炎症の予防または改善用である、請求項14に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料や皮膚外用剤の有効成分として有用な植物の発酵物に関し、詳しくは、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物、ならびに、前記発酵物を含有する化粧料および皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加齢、ストレス、生活習慣等に起因するしわ、たるみ、肌荒れ等や、乾燥、紫外線等による物理的刺激、薬品、化学物質等による化学的刺激に起因するしわ、しみ、肌荒れ等の皮膚の症状や損傷等を予防または改善することを訴求したいわゆる機能性皮膚化粧料が、前記皮膚症状の改善を目的とする皮膚外用剤とともに種々提案されている。
かかる機能性皮膚化粧料や皮膚外用剤としては、主として、しみ、そばかす等の皮膚の色素沈着を予防、改善する美白化粧料または美白用皮膚外用剤、しわ、たるみ、くすみ等の皮膚の老化症状を予防、改善する抗老化化粧料または抗老化用皮膚外用剤、発赤、腫れ、肌荒れ等の皮膚の炎症を予防、改善する抗炎症化粧料または抗炎症用皮膚外用剤等が提案されている。これらにおいては、それぞれ皮膚の症状が生じる過程に作用する成分を機能発現成分として含有するが、皮膚に対する低刺激性、長期間継続使用する場合の安全性等の観点から、従来より、薬用または食用に供されてきた植物の抽出物に機能発現成分を求めるものが多い。
【0003】
しかし、植物抽出物の多くは、機能発現成分として効果が十分でないものが多く、精製等の処理を行ってその効果を増強させると、製造コストが上昇するという問題があった。また、植物抽出物の色や臭い等が化粧料や皮膚外用剤の外観、品質等に及ぼす影響や、植物抽出物の製剤安定性等の観点から、機能発現成分として十分な効果を発揮し得る量の植物抽出物を化粧料等に配合することが困難であることも多い。
【0004】
後述するように、本発明者らは、古くから健康茶として飲用されてきたカワラケツメイに着目し、化粧料または皮膚外用剤の機能発現成分として有用な新規成分の開発を試みた。
カワラケツメイについては、カワラケツメイ属の植物の親水性有機溶媒または水を含む親水性有機溶媒による抽出物を含有する化粧料(特許文献1)や、カワラケツメイ属の植物等のマメ科植物の抽出物を含有する皮膚化粧料(特許文献2)が提案されているが、それらは、効果の点で十分であるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-087731号公報
【特許文献2】特開平7-165527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、化粧料や皮膚外用剤の機能発現成分として有用な新規成分を提供し、十分な効果を奏する化粧料または皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物が、優れた美白作用および抗酸化作用を有すること
を見出し、さらに検討して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物。
[2]カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物がカワラケツメイ(Chamaecrista
nomame (Siebold) H.Ohashi)である、[1]に記載の発酵物。
[3]カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の葉、茎、果実、種子および果汁からなる群より選択される1種以上の発酵物である、[1]または[2]に記載の発酵物。
[4]麹が米麹である、[1]~[3]のいずれかに記載の発酵物。
[5]カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物および麹を溶媒に混合し、発酵させる工程、前記工程後の混合液を加熱処理する工程、ならびに液状の発酵物を回収する工程を含む、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物の製造方法。
[6]カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物がカワラケツメイ(Chamaecrista
nomame (Siebold) H.Ohashi)である、[5]に記載の製造方法。
[7]カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の葉、茎、果実、種子および果汁からなる群より選択される1種以上を用いる、[5]または[6]に記載の製造方法。
[8]麹として米麹を用いる、[5]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]溶媒として水を用いる、[5]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10][1]~[4]のいずれかに記載の発酵物を含有する、化粧料。
[11]色素沈着の予防または改善用である、[10]に記載の化粧料。
[12]皮膚の老化の予防または改善用である、[10]に記載の化粧料。
[13]炎症の予防または改善用である、[10]に記載の化粧料。
[14][1]~[4]のいずれかに記載の発酵物を含有する、皮膚外用剤。
[15]色素沈着の予防または改善用である、[14]に記載の皮膚外用剤。
[16]皮膚の老化の予防または改善用である、[14]に記載の皮膚外用剤。
[17]炎症の予防または改善用である、[14]に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、優れた美白作用および抗酸化作用を有し、化粧料や皮膚外用剤の機能発現成分として有用な新規な植物の発酵物を提供することができる。
さらに、本発明により、良好な美白効果および抗酸化作用を奏し、しみ、そばかす等の色素沈着の予防または改善、しわ、たるみ等の皮膚の老化の予防または改善、肌荒れ等の皮膚の炎症の予防または改善用として有効な化粧料または皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、化粧料や皮膚外用剤の機能発現成分として有用な、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物(以下、本明細書にて「本発明の発酵物」とも称する)を提供する。
【0011】
本発明の発酵物の調製に用いられるカワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物は、マメ科(Leguminosae)ジャケツイバラ亜科(Caesalpinioideae)に属する一年草の植
物であり、前記植物としては、アレチケツメイ(Chamaecrista nicticans)、カワラケツメイ(Chamaecrista nomame (Siebold) H.Ohashi)、ガランビネムチャ(Chamaecrista garambiensis)、タイワンカワラケツメイ(Chamaecrista leschenaultiana)等が挙げら
れ、カワラケツメイ(Chamaecrista nomame (Siebold) H.Ohashi)が好ましく用いられる。
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物は、花、葉、茎、果実、種子、根等の
各部位を用いることができるが、葉、茎、果実、種子等を用いることが好ましい。
【0012】
本発明の発酵物の調製に用いられる麹は、米、麦、大豆等の穀物に、食品の発酵に有効なカビ等の微生物を繁殖させたものである。
本発明において、麹の調製に用いられる微生物としては、通常用いられる麹菌、すなわちコウジカビ(Aspergillus)属に属するカビを挙げることができ、たとえば、ニホンコ
ウジカビ(Aspergillus oryzae)、ショウユコウジカビ(Aspergillus sojae)、黒麹菌(Aspergillus luchuensis)、白麹菌(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)等が挙げられる

本発明の目的には、麹として、米、麦、大豆等の穀物を蒸したものに麹菌を繁殖させた麹を用いることが好ましい。
米としては、イネ(Oryza sativa L.)の果実である籾から外皮を取り去って得られる
ものであれば、特に限定されないが、うるち米が好ましく用いられる。
麹菌としては、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)が好ましく用いられる。
【0013】
上記した麹は、別途麹菌を培養し胞子を採取して種麹とし、蒸した米等の穀物に散布する方法や、選別し保存しておいた良質な麹を蒸した穀物に加える方法(共麹)等により、調製することができるが、専門業者から販売されている市販の麹を用いることもできる。
【0014】
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物は、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物および麹を溶媒に混合し、発酵させた後、加熱処理して麹に含まれる酵素を失活させ、ろ過、遠心分離等により液状の発酵物を回収して、調製することができる。
【0015】
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物は、水洗し、そのまま溶媒と混合してもよいが、細切、乾燥、粉砕等を行って溶媒に添加することが好ましい。また、植物体を溶媒の一部または全部に加え、ホモジネートしてもよく、植物体を圧搾して得られる搾汁等の圧搾物を用いることもできる。
溶媒としては、麹に含まれる微生物や、該微生物によって産生された酵素に悪影響を与えないものが用いられ、通常水、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等の多価アルコール等の親水性有機溶剤、前記親水性有機溶媒と水との混合溶媒等が用いられる。水としては、精製水、脱イオン水等、化粧料や皮膚外用剤の製造に適する水が好ましく用いられる。
カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物および麹は、これらと溶媒との混合重量比(カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物:麹:溶媒)が、1:1:10~4:4:10となるように混合されることが好ましく、1:2:10~1:3:10となるように混合されることがより好ましい。
【0016】
発酵は、30℃~70℃で10時間~100時間行わせることが好ましく、50℃~55℃で20時間~48時間行わせることがより好ましい。
発酵は、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物および麹を溶媒に混合した混合液を上記温度条件下に静置して行わせてもよいが、8000rpm程度までの撹拌速度にて撹拌し、または振とうして行わせてもよい。
【0017】
上記発酵工程終了後の加熱は、麹に含まれるタンパク質を失活させ、また麹中の微生物を死滅させるのに十分な程度であればよいが、好ましくは70℃~100℃で30分間~120分間程度、より好ましくは80℃~90℃で60分間~80分間程度行う。
また、防腐効果等の観点から、上記加熱を行う際に、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールを添加してもよい。
多価アルコールの添加量は、発酵工程で用いた溶媒量の0.25倍~1.5倍とすることが好ましい。
【0018】
液状の発酵物を回収するためのろ過または遠心分離は、上記発酵工程後の混合液から植物体や麹を除去するために、通常行い得る条件で行うことができる。
たとえばろ過は、孔径=0.5μm程度の濾紙やフィルター等を用いて行うことができ、遠心分離は、5000rpm~10000rpmにて5分間~10分間程度行う。
【0019】
回収された液状の発酵物は、そのまま本発明の発酵物とすることができ、また濃縮、凍結乾燥、カラムクロマトグラフィー等による精製等の処理を行って、本発明の発酵物とすることもできる。
本発明の発酵物は、回収後の液状の状態にて、通常1重量%~30重量%、好ましくは10重量%~25重量%の固形分を含有する。
なお、本発明の発酵物の固形分含有量は、加熱乾燥重量測定法により測定することができる。
【0020】
また、本発明の発酵物は、回収された液状の発酵物またはその上記処理物に、必要に応じて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、基剤、溶剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、安定化剤、粘稠剤、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、保存剤、香料、着色剤等、製剤の分野で用いられる一般的な添加剤を加えて、製剤の分野で周知の製剤化手段、たとえば第十七改正日本薬局方製剤総則[3]製剤各条に記載された方法等により、溶液状、懸濁液状、乳液状等の液状;ゲル状、ペースト状、クリーム状等の半固形状;粉末状、顆粒状、タブレット状等の固形状等の形態とすることができる。
【0021】
本発明の発酵物は、優れたチロシナーゼ阻害作用およびラジカル消去作用を示し、化粧料または皮膚外用剤の機能性発現成分として有用である。
【0022】
本発明はまた、化粧料や皮膚外用剤の機能発現成分として有用な、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物の製造方法(以下、本明細書にて「本発明の製造方法」とも称する)を提供する。
本発明の製造方法は、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物および麹を溶媒に混合し、発酵させる工程、前記工程後の混合液を加熱処理する工程、ならびに液状の発酵物を回収する工程を含む。
【0023】
本発明の製造方法において用いるカワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物、麹および溶媒、ならびにこれらの混合重量比については、本発明の発酵物について上記した通りである。
また、本発明の製造方法において、発酵させる工程の発酵条件、加熱処理する工程の加熱条件についても、本発明の発酵物について上記した通りである。
加熱処理する工程の前に、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールを添加してもよく、多価アルコールの添加量については、本発明の発酵物について上記した通りである。
液状の発酵物を回収する工程は、本発明の発酵物について上記した通り、ろ過や遠心分離により行うことができる。
【0024】
本発明の製造方法は、回収した液状の発酵物をさらに処理する工程を含み得る。前記処理としては、本発明の発酵物について上記したように、濃縮、凍結乾燥、カラムクロマトグラフィー等による精製等が挙げられる。
また、本発明の製造方法は、液状の発酵物またはその処理物を溶液状、懸濁液状、乳液状等の液状;ゲル状、ペースト状、クリーム状等の半固形状;粉末状、顆粒状、タブレッ
ト状等の固形状等の形態とする工程を含み得る。
上記形態とするために添加し得る添加剤や、上記形態とするための製剤化手段等については、本発明の発酵物について上記した通りである。
【0025】
本発明の製造方法により、化粧料や皮膚外用剤の機能発現成分として有用な、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物を提供することができる。
【0026】
本発明は、本発明の発酵物を含有する化粧料(以下、本明細書にて「本発明の化粧料」ともいう)を提供する。
上記した本発明の発酵物は、水、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等の多価アルコール等の親水性溶剤、ゼラチン、ポリエチレングリコール等の親水性基剤に添加し、溶解または混和して、本発明の化粧料とすることができる。
【0027】
さらに、本発明の化粧料には、必要に応じて、オリーブ油、ダイズ油、ツバキ油、ゴマ油、落花生油、カカオ脂、牛脂、豚脂等の動植物性油脂;カルナウバロウ、ミツロウ、ホホバ油等のロウ;オクチルドデカノール、セタノール、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール;オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;スクワラン、白色ワセリン、流動パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素等の油脂性基剤、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、大豆レシチン、ポビドン等の懸濁化剤;レシチン、水素添加レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーエル(ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等)、脂肪酸グリセリル(モノステアリン酸グリセリル等)、脂肪酸ポリグリセリル(ジステアリンジグリセリル、イソステアリン酸デカグリセリル等)、ショ糖脂肪酸エステル、N-アシルアミノ酸エステル(N-ミリストイルメチルアミノプロピオン酸ヘキシルデシル等)、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム等)等の界面活性剤または乳化剤;カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(部分ケン化物)等の粘稠剤;グリセリン、ポリグリセリン(トリグリセリン、デカグリセリン等)、1,3-ブチレングリコール、マルチトール、DL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の保湿剤;エデト酸ナトリウム、ソルビトール、チモール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の安定化剤;アスコルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、フェノキシエタノール等の保存剤;塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等のpH調整剤;色素;顔料;香料等の一般的な添加剤を含有させることができる。
上記した添加剤は、目的に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
本発明の化粧料は、好ましくは化粧水、乳液、美容液、ゲル、水中油型または油中水型クリーム、パック等の皮膚化粧料として提供することができる。
【0029】
本発明の化粧料における本発明の発酵物の含有量は、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物の固形分含有量にて、好ましくは0.001重量%~10重量%であり、より好ましくは0.01重量%~5重量%である。
【0030】
本発明の化粧料は、製剤の分野で周知の製剤化手段、たとえば第十七改正日本薬局方製
剤総則[3]製剤各条「11.皮膚などに適用する製剤」に記載された方法等に準じて、製造することができる。
【0031】
本発明の化粧料は、良好な美白効果および抗酸化作用を奏し、しみ、そばかす等の色素沈着の予防または改善、しわ、たるみ等の皮膚の老化の予防または改善、肌荒れ等の皮膚の炎症の予防または改善用として有効である。
【0032】
また、本発明は、本発明の発酵物を含有する皮膚外用剤(以下、本明細書にて「本発明の皮膚外用剤」ともいう)を提供する。
上記した本発明の発酵物は、上記した親水性溶剤や親水性基剤に溶解または混和させて、本発明の皮膚外用剤とすることができる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤には、さらに必要に応じて、上記した油脂性基剤;軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、デキストリン等の賦形剤;アジピン酸ジイソプロピル、カプリン酸、クロタミトン、炭酸プロピレン等の溶解補助剤;上記した懸濁化剤、界面活性剤または乳化剤;粘稠剤;保湿剤;安定化剤;抗酸化剤;保存剤;pH調整剤;トリアセチン、ミリスチン酸イソプロピル等の可塑剤;色素;顔料;香料等の一般的な添加剤を含有させることができる。
上記した添加剤は、目的に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
本発明の皮膚外用剤は、外用散剤等の外用固形剤;ローション剤、リニメント剤等の外用液剤;外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等のスプレー剤;油脂性軟膏剤、水溶性軟膏剤等の軟膏剤;水中油型または油中水型のクリーム剤;水性または油性ゲル剤;テープ剤またはパップ剤等の貼付剤等として提供することができる。
【0035】
本発明の皮膚外用剤における本発明の発酵物の含有量は、カワラケツメイ(Chamaecrista)属に属する植物の麹による発酵物の固形分含有量にて、好ましくは0.001重量%~10重量%であり、より好ましくは0.01重量%~5重量%である。
【0036】
本発明の皮膚外用剤は、製剤の分野で周知の製剤化手段、たとえば第十七改正日本薬局方製剤総則[3]製剤各条「11.皮膚などに適用する製剤」に記載された方法等により、製造することができる。
【0037】
本発明の皮膚外用剤は、良好な美白効果および抗酸化作用を奏し、しみ、そばかす等の色素沈着の予防または改善、しわ、たるみ等の皮膚の老化の予防または改善、肌荒れ等の皮膚の炎症の予防または改善用として有効である。
【実施例0038】
以下、本発明について、実施例によりさらに詳細に説明する。
【0039】
[実施例1]カワラケツメイの米麹による発酵物
カワラケツメイ(Chamaecrista nomame (Siebold) H.Ohashi)の葉および茎を水洗し、細切して精製水を添加し、次いで米麹を加えて混合した。
カワラケツメイの上記植物体および米麹は、カワラケツメイ:米麹:精製水の混合重量比が1:2:10となるように混合した。
米麹としては、蒸した米にニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)を繁殖させて調製されたものを用いた。
上記の混合物を55℃で20時間発酵させた後、80℃で60分間加熱し、次いでろ過して、植物体および米麹をろ別して液状の発酵物を回収し、実施例1のカワラケツメイの米麹による発酵物を得た(以下、本明細書にて「実施例1の発酵物」ということがある)

得られた発酵物中の固形分含有量を加熱乾燥重量測定法により測定したところ、12重量%であった。
【0040】
[実施例2]カワラケツメイの米麹による発酵物
カワラケツメイ(Chamaecrista nomame (Siebold) H.Ohashi)の葉および茎を水洗し、細切して精製水を添加し、次いで米麹を加えて混合した。
カワラケツメイおよび米麹は、カワラケツメイ:米麹:精製水の混合重量比が1:2:10となるように混合した。
米麹としては、実施例1で用いたものと同じ米麹を用いた。
上記の混合物を55℃で20時間発酵させた後、精製水に対し0.3倍の1,3-ブチレングリコールを添加して、80℃で60分間加熱し、次いでろ過して、植物体および米麹をろ別して液状の発酵物を回収し、実施例2のカワラケツメイの米麹による発酵物を得た(以下、本明細書にて「実施例2の発酵物」ということがある)。
得られた発酵物中の固形分含有量を加熱乾燥重量測定法により測定したところ、21重量%であった。
【0041】
[試験例1]チロシナーゼ阻害活性の評価
実施例1の発酵物について、以下の通り、チロシナーゼ阻害活性を評価した。なお、米麹に精製水を加えて、55℃で20時間発酵させ、ろ過して得た米発酵液(加熱乾燥重量法により測定した固形分含有量=22重量%)を比較例1として、同時に評価した。評価結果を表1に示した。
<チロシナーゼ阻害活性の評価方法>
精製水で適宜希釈した試料20μL、67mMのリン酸緩衝液(pH=6.8)100μL、0.2mMのL-ドーパ水溶液40μL、40U/mLのチロシナーゼ(マッシュルーム由来)水溶液40μLを混合した。これを30℃で15分間反応させ、490nmにおける吸光度を測定した。
なお、ブランクとして、試料の代わりに精製水を用いて、同様に測定を行った。
また、チロシナーゼ水溶液の代わりに精製水を用いて同様に測定し、反応時間=0分における吸光度とした。
チロシナーゼ阻害率は、下記式(1)を用いて算出した。
【0042】
【数1】
【0043】
式(1)中、Ast=15は反応時間=15分における試料の吸光度を示し、Ast=0は反応時間=0分における試料の吸光度を示す。Abt=15は反応時間=15分におけるブランクの吸光度を示し、Abt=0は反応時間=0分におけるブランクの吸光度を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
比較例1の米発酵液は美白効果を有することが知られており、優れたチロシナーゼ阻害活性を示すが、表1に示されるように、本発明の実施例1の発酵物は、比較例1の米発酵液よりも優れたチロシナーゼ阻害活性を示し、最終濃度が1重量%である水溶液においても、83.0%という高い阻害率が認められた。
【0046】
[試験例2]抗酸化活性の評価
実施例1の発酵物について、以下の通り、ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカルに対する消去活性を評価した。なお、上記比較例1の米発酵液についても、同時に評価した。評価結果を表2に示した。
<DPPHラジカル消去活性の評価方法>
0.15mMのDPPHエタノール溶液100μLに、適宜精製水で希釈した試料100μLを加えて混合し、30℃で30分間反応させた後、517nmにおける吸光度を測定した。
なお、ブランクとして、試料の代わりに精製水を用いて、同様に測定を行った。
また、DPPHエタノール溶液の代わりに精製水を用いて同様に測定し、反応時間=0分における吸光度(DPPHとの反応開始時の試料またはブランクの吸光度)とした。
DPPHラジカルに対する消去活性は、下記式(2)により算出した。
【0047】
【数2】
【0048】
式(2)中、Ast=0は反応時間=0分における試料の吸光度を示し、Ast=30は反応時間=30分における試料の吸光度を示す。Abt=0は反応時間=0分におけるブランクの吸光度を示し、Abt=30は反応時間=30分におけるブランクの吸光度を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示されるように、本発明の実施例1の発酵物は非常に強いラジカル消去活性を示し、最終濃度が1重量%である水溶液において、97.8%と100%に近い消去率を示すことが認められた。
一方、比較例1の米発酵液は、高濃度ではラジカル消去活性を示すものの、最終濃度が1重量%である水溶液では、26.6%の消去率にとどまった。
【0051】
上記試験例1、2の結果から、本発明の発酵物が、優れたチロシナーゼ阻害活性とラジカル消去活性の双方を示すことが確認され、本発明の発酵物を、機能発現成分として化粧料や皮膚外用剤に添加した際、良好な美白効果および抗酸化効果を奏し得ることが示唆された。
【0052】
次に、本発明の化粧料および皮膚外用剤についての実施例を以下に示す。
【0053】
[実施例3]化粧水
(1)1,3-ブチレングリコール 4.50(重量%)
(2)グリセリン 1.50
(3)実施例1の発酵物 1.00
(4)パラオキシ安息香酸メチル 0.10
(5)エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.01
(6)香料 0.10
(7)精製水 全量を100.00とする量
製法:(1)~(6)を順次(7)に添加して、均一に混合する。
【0054】
[実施例4]乳液
(1)N-ミリストイルメチルアミノプロピオン酸 6.00(重量%)
ヘキシルデシル
(2)流動パラフィン 1.50
(3)モノステアリン酸グリセリル 0.50
(4)ジステアリン酸ジグリセリル 1.50
(5)パラオキシ安息香酸プロピル 0.05
(6)パラオキシ安息香酸メチル 0.10
(7)水素添加レシチン 0.50
(8)マルチトール 5.00
(9)1,3-ブチレングリコール 10.00
(10)グリセリン 5.00
(11)カルボキシビニルポリマー(1.0重量%水溶液) 10.00
(12)精製水 全量を100.00とする量
(13)L-アルギニン 0.10
(14)精製水 2.00
(15)実施例2の発酵物 1.00
製法:(1)~(5)を混合し、80℃で撹拌し溶解する(A相)。(6)~(12)を混合し、75℃で撹拌し溶解する(B相)。(13)、(14)を室温で混合し、撹拌し溶解する(C相)。B相をホモミキサーで撹拌しながらA相を加えて乳化し、さらにC相を加えてホモミキサーで撹拌する。次いで、撹拌しながら40℃まで冷却し、(15)を添加し、均一に混合する。
【0055】
[実施例5]美容液
(1)トリグリセリン 15.00(重量%)
(2)グリセリン 2.00
(3)ジプロピレングリコール 5.00
(4)カルボキシビニルポリマー 0.25
(5)ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
(6)水酸化カリウム(10重量%水溶液) 1.70
(7)精製水 全量を100.00とする量
(8)イソステアリン酸デカグリセリル 0.50
(9)スクワラン 1.00
(10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.05
(11)実施例1の発酵物 1.50
製法:(1)~(7)を混合し、70℃で撹拌し溶解する(A相)。(8)~(10)を混合し、70℃で撹拌し溶解する(B相)。A相にB相を徐々に加え、乳化する。次いで冷却し、40℃にて(11)を添加し、均一に混合する。
【0056】
[実施例6]クリーム
(1)スクワラン 10.0(重量%)
(2)セタノール 5.0
(3)モノステアリン酸グリセリル 2.0
(4)ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 2.0
モノラウレート
(5)キサンタンガム 0.2
(6)1,3-ブチレングリコール 6.0
(7)ペンチレングリコール 4.0
(8)グリセリン 4.0
(9)フェノキシエタノール 0.5
(10)実施例2の発酵物 1.5
(11)精製水 全量を100.0とする量
製法:(1)~(4)を混合し、70℃で撹拌し溶解する(A相)。(5)~(11)を混合し、70℃で撹拌し溶解する(B相)。B相にA相を徐々に加え、乳化する。次いで冷却する。
【0057】
[実施例7]ローション剤
(1)実施例1の発酵物 2.00(重量%)(2)グリセリン 5.00
(3)ポリエチレングリコール1500 2.00
(4)ポリオキシエチレン(15E.O.)オレイルエーテル 2.00
(5)エタノール 15.00
(6)水酸化カリウム 0.03
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.10
(8)精製水 全量を100.00とする量
製法:(1)~(3)および(6)を(8)に添加して溶解する。(5)に(4)および(7)を溶解して、前記溶液に加えて均一とし、ろ過する。
【0058】
[実施例8]水中油型乳剤性軟膏
(1)白色ワセリン 25.0(重量%)
(2)ステアリルアルコール 25.0
(3)グリセリン 12.0
(4)ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
(5)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(6)精製水 全量を100.0とする量
(7)実施例1の発酵物 1.0
(8)実施例2の発酵物 1.0
製法:(1)~(4)を混合、溶解して均一とし、75℃に加熱する(A相)。一方、(5)を(6)に溶解して75℃に加熱する(B相)。B相にA相を添加して乳化し、冷却後40℃にて(7)、(8)を添加、混合する。
【0059】
実施例3~6の化粧料および実施例7、8の皮膚外用剤は、優れたチロシナーゼ阻害活性およびラジカル消去活性を示す実施例1および2の発酵物のいずれかまたは双方を含有し、良好な美白効果および抗酸化効果を奏し、しみ、そばかす等の色素沈着の予防または改善、しわ、たるみ等の皮膚の老化の予防または改善、肌荒れ等の皮膚の炎症の予防または改善用として有効である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上、詳述したように、本発明により、優れた美白作用および抗酸化作用を有し、化粧
料や皮膚外用剤の機能発現成分として有用な新規な植物の発酵物を提供することができる。
さらに、本発明により、良好な美白効果および抗酸化効果を奏し、しみ、そばかす等の色素沈着の予防または改善、しわ、たるみ等の皮膚の老化の予防または改善、肌荒れ等の皮膚の炎症の予防または改善用として有効な化粧料または皮膚外用剤を提供することができる。