(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026785
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】飛行体、点検方法及び点検システム
(51)【国際特許分類】
B64U 20/80 20230101AFI20240220BHJP
B64U 101/70 20230101ALN20240220BHJP
B64U 101/26 20230101ALN20240220BHJP
【FI】
B64U20/80
B64U101:70
B64U101:26
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004686
(22)【出願日】2024-01-16
(62)【分割の表示】P 2020095991の分割
【原出願日】2019-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】518156358
【氏名又は名称】株式会社センシンロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西本 晋也
(57)【要約】
【課題】点検構造物(の内壁等)に接触させないように飛行させて当該内壁の点検を実施
する技術を提供すること。
【解決手段】本発明は、飛行体を利用して略管状の構造体の内壁を点検するための飛行体
、点検方法及び点検システムである。飛行体は、少なくとも点検開始位置において内壁の
向きを取得する取得部と、取得した向きに基づいて自機の方向を制御する制御部と、所定
の事象の有無を点検する点検部とを備えている。飛行体は、少なくとも点検開始位置にお
いて内壁の向きを取得し、取得した向きに基づいて自機の方向を制御し、点検の特性に応
じて飛行体を飛行させて点検を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象面の向きを取得する取得手段と、
取得した前記向きに基づいて自機の方向を制御する制御手段と、を備えた
飛行体。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面の線成分を検出して前記向きを取得する、
飛行体。
【請求項3】
請求項2に記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面の少なくとも異なる2点の位置情報から前記線成分を検出
する、
飛行体。
【請求項4】
請求項2又は請求項3のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面の複数の前記線成分を取得して前記向きを検出する、
飛行体。
【請求項5】
請求項4に記載の飛行体であって、
前記取得手段は、複数の前記線成分を合成した合成線成分に基づいて前記向きを検出す
る、
飛行体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、異なる複数の前記対象面の向きを取得する、
飛行体。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、互いに対向する2つの前記対象面の向きを取得する、
飛行体。
【請求項8】
請求項1乃至請求7のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面の水平方向に沿った向きを取得する、
飛行体。
【請求項9】
請求項1に記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面上の異なる2点までの距離をそれぞれ取得可能であり、か
つ、当該距離に基づいて前記向きを取得する、
飛行体
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、左右方向に対向する側面の向きを夫々取得する、
飛行体。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、上下方向に対向する側面の向きを夫々取得する、
飛行体。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の飛行体であって、
前記制御手段は、ヨー軸周りに回転制御を行う
飛行体。
【請求項13】
請求項12に記載の飛行体であって、
前記制御手段は、水平方向において90度以下の範囲で前記回転制御を行う、
飛行体。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の飛行体であって、
前記制御手段は、自機の向きが前記対象面の前記向きと平行となるように、制御を行う
、
飛行体。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、少なくとも前記対象面までの距離を取得し、
前記制御手段は、取得した前記距離に基づいて、前記自機が前記対象面から所定の距離
となるように制御する、
飛行体。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の飛行体であって、
少なくとも所定の事象の有無又は所定の事象の程度のいずれかを点検する点検手段を更
に備えており、
前記制御手段は、前記点検の特性に応じて前記飛行体を飛行させる、
飛行体。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、LIDAR(Light Detection and Rangi
ng)を含む、
飛行体。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれかに記載の飛行体であって、
略管状の構造体の内部を飛行するように構成されており、
前記対象面は、前記構造体の内壁を含む、
飛行体。
【請求項19】
飛行体を利用して略管状の構造体の内壁を点検する点検方法であって、
少なくとも点検開始位置において前記内壁の向きを取得する取得ステップと、
取得した前記向きに基づいて自機の方向を制御する制御ステップと、を含む
点検方法。
【請求項20】
請求項19に記載の点検方法であって、
前記飛行体は、少なくとも所定の事象の有無又は所定の事象の程度のいずれかを点検す
る点検手段を更に備えており、
前記制御ステップは、前記自機の前記方向を制御した後に、前記点検の特性に応じて前
記飛行体を飛行させる、ことをさらに含む、
点検方法。
【請求項21】
請求項19又は請求項20に記載の点検方法であって、
前記点検開始位置に至るまでは作業者による手動制御を受け付ける手動制御受付ステッ
プを含む、
点検方法。
【請求項22】
飛行体を利用して略管状の構造体の内壁を点検する点検システムであって、
前記飛行体は、少なくとも点検開始位置において前記内壁の向きを取得する取得部と、
取得した前記向きに基づいて自機の方向を制御する制御部と、所定の事象の有無を点検す
る点検部とを備えており、
前記飛行体は、少なくとも点検開始位置において前記内壁の向きを取得し、取得した前
記向きに基づいて自機の方向を制御し、前記点検の特性に応じて前記飛行体を飛行させて
点検を行う、
点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体並びに当該飛行体を利用した点検方法及び点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飛行体の制御にはGPS(Global Positioning System)が多く用いられているところ
、特に閉所の構造物の点検時などにはGPSの電波が届かないこともある。特許文献1に
は、飛行体に搭載されたセンサによって、当該飛行体と左右側面との距離を最小化する位
置を探知し、飛行体の飛行方法を制御するシステムが開示されている(本願
図15参照)
。
【0003】
また特許文献2には、特に断面が略円形の管状構造部の内部を飛行体で点検する場合、
特許文献1に記載の方法(即ち、左右側面との距離を最小化する位置を探知しながら飛行
する方法)では、管状(上方又は下方ほど左右の幅が小さい)内において飛行体は上昇又
は下降してしまう(本願
図16参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-087917号公報
【特許文献2】特開2017-226259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のシステムでは、例えば、
図17に示
されるように、側面に凹部等がある場合、左右の距離Lが急激に変わることから内壁に衝
突する危険性がある。
【0006】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、点検構造物(の内壁等)に接触
させないように飛行させて当該内壁の点検を実施する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、対象面の向きを取得する取得手段と、取得した前記向きに基づいて自
機の方向を制御する制御手段と、を備えた飛行体が得られる。
【0008】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面に
より明らかにされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、点検構造物(の内壁等)に接触させないように飛行させて当該内壁の
点検を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る点検システムの概要を示す図である。
【
図2】
図1の点検システムに用いれる飛行体のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】
図1の点検システムに用いれる飛行体の機能ブロックを示す図である。
【
図4】
図1の点検システムにおける飛行体の方向制御を示す図である。
【
図5】
図1の点検システムにおける飛行体の方向制御を示す他の図である。
【
図6】
図1の点検システムにおける飛行体の方向制御を示す更に他の図である。
【
図7】
図1の点検システムにおいて、対向する2つの側面を利用した飛行体の方向制御を示す図である。
【
図8】
図1の点検システムにおいて、対向する2つの側面を利用した飛行体の方向制御を示す他の図である。
【
図9】
図1の点検システムにおいて、対向する2つの側面を利用した飛行体の方向制御を示す他の図である。
【
図10】
図1の点検システムにおいて、飛行体の方向制御時の回転範囲を示す図である。
【
図11】
図1の点検システムにおいて、飛行体の水平方向における側面検知範囲を示すイメージ図である。
【
図12】
図1の点検システムにおいて、飛行体の垂直方向における側面検知範囲を示すイメージ図である。
【
図13】
図1の点検システムを利用した点検の流れを示す図である。
【
図14】
図1の点検システムを利用した点検の様子を示すイメージ図である。
【
図15】従来の点検システムによる飛行体の制御を示す図である。
【
図16】従来の点検システムによる飛行体の制御を示す他の図である。
【
図17】従来の点検システムによる飛行体の制御に関する課題の一つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による飛行体は、以
下のような構成を備える。
【0012】
[項目1]
対象面の向きを取得する取得手段と、
取得した前記向きに基づいて自機の方向を制御する制御手段と、を備えた
飛行体。
[項目2]
項目1に記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面の線成分を検出して前記向きを取得する、
飛行体。
[項目3]
項目2に記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面の少なくとも異なる2点の位置情報から前記線成分を検出
する、
飛行体。
[項目4]
項目2又は項目3のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面の複数の前記線成分を取得して前記向きを検出する、
飛行体。
[項目5]
項目4に記載の飛行体であって、
前記取得手段は、複数の前記線成分を合成した合成線成分に基づいて前記向きを検出す
る、
飛行体。
[項目6]
項目1乃至項目5のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、異なる複数の前記対象面の向きを取得する、
飛行体。
[項目7]
項目1乃至項目6のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、互いに対向する2つの前記対象面の向きを取得する、
飛行体。
[項目8]
項目1乃至請求7のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面の水平方向に沿った向きを取得する、
飛行体。
[項目9]
項目1に記載の飛行体であって、
前記取得手段は、前記対象面上の異なる2点までの距離をそれぞれ取得可能であり、か
つ、当該距離に基づいて前記向きを取得する、
飛行体
[項目10]
項目1乃至項目9のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、左右方向に対向する側面の向きを夫々取得する、
飛行体。
[項目11]
項目1乃至項目10のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、上下方向に対向する側面の向きを夫々取得する、
飛行体。
[項目12]
項目1乃至項目11のいずれかに記載の飛行体であって、
前記制御手段は、ヨー軸周りに回転制御を行う
飛行体。
[項目13]
項目12に記載の飛行体であって、
前記制御手段は、水平方向において90度以下の範囲で前記回転制御を行う、
飛行体。
[項目14]
項目1乃至項目13のいずれかに記載の飛行体であって、
前記制御部は、自機の向きが前記対象面の前記向きと平行となるように、制御を行う、
飛行体。
[項目15]
項目1乃至項目14のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、少なくとも前記対象面までの距離を取得し、
前記制御手段は、取得した前記距離に基づいて、前記自機が前記対象面から所定の距離
となるように制御する、
飛行体。
[項目16]
項目1乃至項目15のいずれかに記載の飛行体であって、
所定の事象の有無を点検する点検手段を更に備えており、
前記制御手段は、前記点検の特性に応じて前記飛行体を飛行させる、
飛行体。
[項目17]
項目1乃至項目16のいずれかに記載の飛行体であって、
前記取得手段は、LIDAR(Light Detection and Rangi
ng)を含む、
飛行体。
[項目18]
項目1乃至項目17のいずれかに記載の飛行体であって、
略管状の構造体の内部を飛行するように構成されており、
前記対象面は、前記構造体の内壁を含む、
飛行体。
[項目19]
飛行体を利用して略管状の構造体の内壁を点検する点検方法であって、
少なくとも点検開始位置において前記内壁の向きを取得する取得ステップと、
取得した前記向きに基づいて自機の方向を制御する制御ステップと、を含む
点検方法。
[項目20]
項目19に記載の点検方法であって、
前記飛行体は、所定の事象の有無を点検する点検手段を更に備えており、
前記制御手段は、前記自機の前記方向を制御した後に、前記点検の特性に応じて前記飛
行体を飛行させる、
点検方法。
[項目21]
項目19又は項目20に記載の点検方法であって、
前記点検開始位置に至るまでは作業者による手動制御を受け付ける手動制御受付ステッ
プを含む、
点検方法。
[項目22]
飛行体を利用して略管状の構造体の内壁を点検する点検システムであって、
前記飛行体は、少なくとも点検開始位置において前記内壁の向きを取得する取得部と、
取得した前記向きに基づいて自機の方向を制御する制御部と、所定の事象の有無を点検す
る点検部とを備えており、
前記飛行体は、少なくとも点検開始位置において前記内壁の向きを取得し、取得した前
記向きに基づいて自機の方向を制御し、前記点検の特性に応じて前記飛行体を飛行させて
点検を行う、
点検システム。
【0013】
<概要>
以下、本発明の実施形態に係る飛行体、点検方法及び点検システムについて図面を参照
しながら説明する。
図1に示されるように、本発明による点検システムは、例えば、トン
ネル、ダクト、暗渠のような少なくとも上下左右を囲まれた管状の構造体5の内部を点検
するためのものである。
【0014】
なお、以下における説明は、構造体の内部に存在する「内壁」を例にとって説明をして
いるが、本発明は、構造体の内部のみに限られず、屋外においても、下記の「内壁」に相
当する壁面、側面、その他検知対象面が存在していれば、GPSをも利用して又はGPS
を利用せずに、実施可能である。
【0015】
図示されるように、点検中においては、飛行体1は、左右の内壁LW、RW及び上下の
内壁TW、GNDから等距離離れた所定の1を点検方向dに向かって飛行する。当該点検
に先立って、飛行体1は、点検開始位置において自機の向きが適切な方向となるように初
期方向合わせ(キャリブレーション)を行う(詳しくは後述する)。キャリブレーション
は点検開始時に必須のものであり、当該キャリブレーションが行われない場合には閉所内
において適切な飛行方向を決定することができない。
【0016】
上述した飛行体、点検方法及び点検システムは、互いに同一の発明概念を有しており、
ハードウェア、方法、システムの観点で切り分けたに過ぎない。従って、以下、本実施の
形態は、点検システムを例に説明する。
【0017】
図2は、本実施形態に用いられる飛行体のハードウェア構成を示すブロック図である。
図示されるブロック図は一例であり、これ以外の機能を備えていてもよい。
【0018】
フライトコントローラ11は、プログラマブルプロセッサ(たとえば、中央演算処理装
置(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。
【0019】
フライトコントローラ11は、メモリ12を有しており、当該メモリ12にアクセス可
能である。メモリ12は、1つ以上のステップを行うためにフライトコントローラ11が
実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。
【0020】
メモリ12は、たとえば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離
可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類13から取得し
たデータは、メモリ12に直接に伝達されかつ記憶されてもよい。たとえば、カメラ等1
3で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。カメラ13
は飛行体にジンバル14を介して設置される。
【0021】
フライトコントローラ11は、飛行体1の状態を制御するように構成された制御モジュ
ールを含んでいる。たとえば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並
びに回転運動θx、θy及びθz)を有する飛行体1の空間的配置、速度、および/また
は加速度を調整するために、ESC15を経由して飛行体1の推進機構(モータ16等)
を制御する。モータ16によりプロペラ17が回転することで飛行体1の揚力を生じさせ
る。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができ
る。
【0022】
フライトコントローラ11は、1つ以上の外部のデバイス(たとえば、送受信機(プロ
ポ)、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受
け取るように構成された送受信部18と通信可能である。送受信機18は、有線通信また
は無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。
【0023】
送受信部18は、たとえば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネ
ットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネッ
トワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することが
できる。
【0024】
送受信部18は、センサ類19で取得したデータ、フライトコントローラ11が生成し
た処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのう
ちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0025】
本実施の形態によるセンサ類19は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、
GPSセンサ、近接センサ(たとえば、ソナー)、またはビジョン/イメージセンサ(た
とえば、カメラ)を含み得る。
【0026】
本実施の形態による測定部20は、3次元LIDAR(Light Detectio
n and Ranging)で構成されている。なお、測定部20は、ステレオカメラ
等のように、奥行きを認識することができる機構、離隔した対象物(との距離)を検知可
能な機構であれば、どのようなものでも採用可能である。
【0027】
図3を参照して、機能ブロック図を説明する。飛行体1は、取得手段、制御手段及び点
検手段を有している。取得手段は、少なくとも点検開始位置において内壁の向きを取得す
る。上述したセンサ類がその機能の一部又は全部を担っていてもよい。制御手段は、取得
した向きに基づいて飛行体の方向を制御する。上述したフライトコントローラがその機能
の一部又は全部を担っていてもよい。点検部は、広義には、点検構造物(の内壁)の所定
の事象の有無を点検するために利用される装置、機器等を含む包括的な概念である。例示
すれば、撮像装置(可視光、赤外線カメラ等)や、打鍵装置等、探知装置(金属探知機)
、集音装置、臭気測定器、ガス検知器、空気汚染測定器、検出装置(宇宙線、放射線、電
磁波等を検出するための装置)等の内壁を有する点検構造物の状態を知るために必要な装
置は全て採用可能である。
【0028】
図4を参照して、本実施の形態による飛行体の方向制御の基本原理を説明する。
図4(
a)は方向制御前を示し、
図4(b)は方向制御後を示す。
【0029】
図4(a)において、三角形の飛行体は方向Fが前方(点検装置等が効果的に作用でき
るようにするための飛行体の向き)からずれている。方向Fは、この時点では、内壁から
離れる方向に向いているため、このままでは、内壁から遠ざかる方向に飛行してしまう。
そこで、飛行体は、LIDARを利用することにより、少なくとも内壁の2点P1、P2
までの距離L1、L2を取得することができる。
【0030】
実際にはLIDARの分解能に応じたさらに多くの測距情報を取得できるが、説明を簡
略化するために2点P1、P2(測定点)のみを例にとり説明を行う。取得手段は、距離
L1、L2の情報から内壁の線成分(ベクトル)V1を取得する。
【0031】
なお、
図4(a)、(b)の例においては、測定点として2点P1、P2を用いて線成
分V1を抽出することとしているが、線成分の抽出に用いられる測定点の数はこれに限ら
れない。例えば、2以上の複数の測定点の位置に応じて利用すべき線成分として採用する
こととしてもよい。この場合、当該複数の測定点の位置関係(位置のばらつき、それぞれ
の間の距離のばらつき等)に基づいて、採用/不採用を決定することとしてもよい。例え
ば、複数の測定点の並びが所定の閾値に収まるばらつきの範囲内であれば、採用すべき線
成分(直線の線成分)としてもよいし、所定の閾値に収まるばらつきの範囲外であれば(
即ち、直線が作れない場合には)、線成分を構成する測定点としては不採用とすればよい
。
【0032】
図4(b)に示されるように、制御手段は、方向Fと線成分V1とを比較して、飛行体
の向き(方向F)が内壁と平行になるようにヨー方向における回転制御を行う。これによ
り、飛行体の飛行方向が内壁と平行となることから正しい方向に沿って点検を開始するこ
とが可能となる。なお、後述するように、図示された例は、水平方向のヨー方向において
回転制御を行いキャリブレーションを行っていたが、点検構造物の形状や向きに応じて回
転制御の方向は任意の方向とすることができる。また、内壁と平行にすることのみならず
、例えば、内壁と所定の角度を維持した状態にキャリブレーションを行うこととしてもよ
い。この場合、線成分V1と、方向Fとが所定の角度をなすように飛行体を回転制御する
こととすればよい。
【0033】
図5を参照して、取得手段によって同一の内壁の異なる複数の線成分を利用したキャリ
ブレーションの方法を説明する。図示されるように、
図4に図示した方法と同じ原理によ
り、同一の内壁から複数の線成分V1乃至V4を取得する。取得した複数の線成分V1乃
至V4のうち、線成分V2のみが他の線成分V1、V3、V4と比較して異なる方向とな
っている。このとき、取得手段は、線成分V2をイレギュラーな線成分として回転制御の
ための要素には含めない処理を行う。即ち、
図5に示される飛行体は、線成分V1、V3
、V4から飛行すべき方向Fを算出して回転制御を行う。
【0034】
このように、内壁の一部に欠落箇所が存在している(V2位置)ような場合には、一の
線成分のみを取得していた場合には、偶然に当該欠落箇所の線成分を取得してしまうと誤
ったキャリブレーションが行われてしまう。しかしながら、
図5に示されるように同一の
内壁の異なる複数の線成分を利用することとすれば、ノイズとなる線成分を多数決方式で
排除することができ、点検構造物の内壁の状態にかかわらず正しいキャリブレーションを
行うことが可能となる。また、飛行体の向きを取得しておき、飛行体の向きと一致しない
線成分を一律に排除することとしてもよい。この場合、飛行体の向きと線成分の方向が所
定の閾値を超えたものだけ排除することとしてもよい。
【0035】
なお、ノイズ排除の方法は、多数決方式以外にも、例えば、両隣の線成分と比較を行う
ことにより当該線成分がノイズかどうかを判断することとしてもよい。。また、両隣の線
成分を比較して、より大きな(=長い)線成分を採用し、その隣の線成分と更に比較して
より大きな線成分を採用し、というようなトーナメント方式によって検出範囲の内壁の中
から最大の大きさの線成分を採用することとしてもよい(以下、「トーナメント方式と呼
ぶ)
【0036】
図6を参照して、例えば、自然構造物や著しく経年劣化した人工構造物のように、内壁
に細かい凹凸が存在している場合のキャリブレーションの方法を説明する。図示されるよ
うに、取得手段は、内壁の所定範囲から複数の線成分V1乃至V5を取得する。その後取
得した線成分V1乃至V5を合成することにより一の合成線成分とし(図示せず)、当該
合成線成分に応じて方向Fを算出する。なお、より多くの線成分を取得することにより、
より正確な合成線成分を取得することが可能となる。この場合にも、一の線成分のみを取
得していた場合のように偶然に当該欠落箇所の線成分を取得してしまい誤ったキャリブレ
ーションが行われてしまうことを防ぐことができる。
【0037】
上述した実施の形態は、一の内壁の単数又は複数の線成分を利用してキャリブレーショ
ンを行う方法を説明したが、対向する2つの側面を利用することとしてもよい。この場合
の方法を
図7を参照して説明する。
【0038】
図7(a)は方向制御前を示し、
図7(b)は方向制御後を示す。前記取得手段は、異
なる複数の対象面の線成分V1及びV2を取得する。より詳しくは、
図7(a)において
、三角形の飛行体は方向Fが前方から左方向にずれている。方向Fは、この時点では、右
側の内壁から離れる方向かつ左側の内壁に近づく方向を向いているため、このままでは、
左側内壁に衝突してしまう。そこで、飛行体は、LIDARを利用することにより、少な
くとも右側の内壁の2点P1、P2までの距離L1、L2、及び、左側の内壁の2点P3
、P4までの距離L3、L4を取得することができる。
【0039】
なお、上記と同様に、実際にはLIDARの分解能に応じたさらに多くの測距情報を取
得できるが、説明を簡略化するために一つの内壁あたり2点P1、P2/P3、P4のみ
を例にとり説明を行う。取得手段は、距離L1、L2及び距離L3、L4の情報から内壁
の線成分V1、V2を取得する。
【0040】
図7(b)に示されるように、制御手段は、方向Fと線成分V1、V2とを比較して、
飛行体の向き(方向F)が内壁と平行になるようにヨー方向における回転制御を行う。こ
れにより、飛行体の飛行方向が左右両方の内壁と平行となることから正しい方向に沿って
点検を開始することが可能となる。
【0041】
また、
図5又は
図6を参照して説明した方法を採用し、一方の内壁と他方の内壁から多
数決方式で線成飛行体の向きを取得しておき、飛行体の向きと一致しない線成分を一律に
排除することとしてもよい。この場合も、飛行体の向きと線成分の方向が所定の閾値を超
えたものだけ排除することとしてもよい。採用した(排除しなかった)線成分を内壁夫々
において加算(合成)し、方向制御を行うこととしてもよい。
【0042】
また、
図8に示されるように、一方の内壁と他方の内壁の向きが異なっている場合につ
いても同様である。図示される点検構造物は前方に向かって末広がりの構造を有している
。このとき、右側の内壁のみの線成分を取得してキャリブレーションを行うと、飛行開始
後、進むにつれて左側の内壁との距離が大きくなってしまい、左右方向において同一の状
況下で点検を行うことができない。そこで、図示されるように、左右方向の内壁から取得
した線成分V1、V2の合成線成分(合成ベクトル)V3を生成して、当該V3を飛行方
向Fとすることとすればよい。
【0043】
更に、
図9に示されるように、右側の壁は凹凸が存在し、左側の壁には凹凸が存在して
いない場合、左側の線成分V6乃至V9の前後方向の成分の総和と、右側の線成分V1乃
至V5の総和とを比較すると、左側の線成分の方が大きくなる。これをもって、飛行体の
方向Fを左側の線成分に合わせることとすれば、適切な方向に制御することが可能となる
。
【0044】
図10に示されるように、キャリブレーションのための回転制御は、少なくとも90度
以下の範囲で行うこととすれば十分である。しかしながら、図示される状態においては、
飛行体の機首が出口(Out)方向を向いていたから90度以内の回転制御で飛行すべき
方向にキャリブレーションを行うことができた。キャリブレーションの際には、少なくと
も機首が点検すべき方向を向いていることが好ましい。
【0045】
上述したように、互いに対向する2つの内壁の向き(線成分)を取得することによりキ
ャリブレーションを行うことにより点検構造物の内部状態に即したキャリブレーションを
行うことが可能となる。なお、キャリブレーションに使用する内壁は、左右方向に対向す
る内壁のみならず、上下方向に対向する内壁としてもよい。
【0046】
即ち、
図11に示されるように、取得手段は、左右方向に対向する内壁LW、RWの線
成分D1、D2を夫々取得することによってキャリブレーションを行うこととすれば、水
平方向(XY平面)における飛行方向のキャリブレーションを行うことができる。一方、
図12に示されるように、取得手段は、上下方向に対向する内壁TW、GNDの線成分D
3、D4を夫々取得することによってキャリブレーションを行うこととすれば、垂直方向
(YZ平面)における飛行方向のキャリブレーションを行うことができる。
【0047】
<点検の流れ>
続いて、上述した飛行体を利用した点検方法の流れを説明する。
図13に示されるよう
に、点検は大きく4つの状態により構成される。即ち、点検開始位置までの手動制御、点
検開始地点へ到着、方向合わせ(キャリブレーション)、飛行点検開始の4つの状態であ
る。
図14をも参照して、飛行体は、点検構造物の入り口(点検開始地点)までは例えば
、手動制御を受け付けることにより手動で飛行する。点検開始位置に到着すると、上述し
たキャリブレーションを行い、飛行体が適切な方向となるように制御が行われる。その後
、内壁を撮像等行うことにより構造物内部を点検する。
【0048】
なお、点検開始位置に作業者が近づける場合や、点検開始位置の地面等に飛行体が設置
できる場合には、点検開始位置付近に飛行体を設置してキャリブレーションを行うことと
すればよい。この場合キャリブレーションを行うための高さまでは自動で上昇することと
してもよい。
【0049】
また、上述した実施の形態は、キャリブレーションを主として説明したが、例えば、点
検の最中に飛行方向を調整するために上述した線成分を取得することとしてもよい。これ
により、点検中も適切な方向に飛行を行うことができる。
【0050】
なお、上述した実施の形態は、点検開始時のキャリブレーション(左右の内壁の向きを
検知して自機の向きを変更)を主として説明したが、例えば、点検飛行の最中に同様の方
法でリアルタイムに飛行体の向きを修正することとしてもよい。この場合、内壁の検出の
頻度や、検出の範囲、検出の方向などは適宜調整することができる。また、水平方向の検
出(
図11)と垂直方向の検出(
図12)とを交互に行うこととしてもよい(所定の頻度
で交互に行うこととしてもよい)。これにより、点検飛行中も飛行体の向きと、内壁から
の距離を一定に保ちながら、飛行することが可能となる。
【0051】
上述したように、本発明は、点検飛行開始前のキャリブレーション及び、点検飛行時の
飛行方向制御の両方に適用することが可能である。更には、
図4に示した一方の側面(内
壁)の線成分を取得して方向を制御するという基本制御に基づいて以下のような組み合わ
せも採用可能である。
(1)一方のみの側面の複数の線成分を取得して方向制御を行う方法
(1-1)取得した複数の線成分を合成した合成線成分を取得して方向制御を行う方法
(1-2)取得した複数の線成分を平均した平均線成分を取得して方向制御を行う方法
(1-3)当該取得した複数の線成分のうち、内壁の状態に応じて取得すべき線成分の数
を設定する方法(即ち、基本取得線成分の数を設定し、内壁の起伏が多い場合には取得す
る線成分を多くし、内壁の起伏が少ない場合には取得する線成分を少なくする等)
(1-4)当該取得した複数の線成分を所定の条件による重み付けおよび/または比較を
して、線成分のうちで重要なものを採用する方法(例えばトーナメント方式)
(2)2つ以上の側面の線成分を取得して方向制御を行う方法
(2-1)夫々の内壁において、取得した複数の線成分を合成した合成線成分を取得し、
一方の内壁から得られた合成線成分と他方の内壁から得られた合成成分とを比較して方向
制御を行う方法
(2-2)夫々の内壁において、取得した複数の線成分を平均した平均線成分を取得し、
一方の内壁から得られた平均線成分と他方の内壁から得られた平均線成分とを比較して方
向制御を行う方法
(2-3)夫々の内壁において、当該取得した複数の線成分のうち、内壁の状態に応じて
取得すべき線成分の数を設定する方法(即ち、基本取得線成分の数を設定し、内壁の起伏
が多い場合には取得する線成分を多くし、内壁の起伏が少ない場合には取得する線成分を
少なくする等)
(2-4)夫々の内壁において、当該取得した複数の線成分を所定の条件による重み付け
および/または比較をして、線成分のうちで重要なものを採用し、一方の内壁で採用した
線成分と他方の内壁で採用した線成分を所定の条件による重み付けおよび/または比較し
て方向制御を行う方法
(2-5)上記のほか、夫々の内壁の線成分を夫々取得する方法と、夫々取得した内壁の
線成分を飛行方向に反映させる方法とを、壁面の状況等に応じたより効果的な方法で組み
合わせる方法。(即ち、左壁は合成線成分、右壁は平均線成分、飛行方法への反映は重み
付けによる等)
【0052】
以上説明したように、本発明によれば、GPSが機能しない(機能しにくい)閉所のよ
うな場所であっても、LIDARを利用することによって飛行体1を自律的に飛行させ壁
面を有する構造体の点検(撮像)を行うことが可能となる。
【0053】
本発明の飛行体は、マルチコプター・ドローン等の飛行機関連産業(特に、検知機等を
搭載した検知用の飛行体)において利用することができ、さらに、本発明は、カメラ等を
搭載した空撮用の飛行体としても好適に使用することができる他、セキュリティ分野、イ
ンフラ監視等の様々な産業にも利用することができる。
【0054】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定
して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良
することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 飛行体
5 点検構造物
【手続補正書】
【提出日】2024-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体を利用して略管状の構造体の内壁を点検する点検方法であって、
少なくとも点検開始位置において前記内壁の向きを取得する取得ステップと、
取得した前記向きに基づいて自機の方向を制御する制御ステップと、を含む
点検方法。
【請求項2】
請求項1に記載の点検方法であって、
前記飛行体は、少なくとも所定の事象の有無又は所定の事象の程度のいずれかを点検する点検手段を更に備えており、
前記制御ステップは、前記自機の前記方向を制御した後に、前記点検の特性に応じて前記飛行体を飛行させる、ことをさらに含む、点検方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の点検方法であって、
前記点検開始位置に至るまでは作業者による手動制御を受け付ける手動制御受付ステップを含む、点検方法。