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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002679
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】毛髪化粧料用樹脂及び毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/898 20060101AFI20231228BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/899 20060101ALI20231228BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20231228BHJP
   C08G 73/02 20060101ALI20231228BHJP
   C08G 77/452 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
A61K8/898
A61Q5/06
A61K8/899
A61Q1/10
C08G73/02
C08G77/452
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102019
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 祐一
【テーマコード(参考)】
4C083
4J043
4J246
【Fターム(参考)】
4C083AB132
4C083AB242
4C083AC102
4C083AC732
4C083AD161
4C083AD162
4C083CC14
4C083CC31
4C083DD28
4C083DD38
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE26
4C083FF01
4J043PA09
4J043QA08
4J043QB15
4J043RA08
4J043RA09
4J043SA06
4J043SB03
4J043WA09
4J043ZB60
4J246AA03
4J246AA11
4J246AB02
4J246BA02X
4J246BB021
4J246BB02X
4J246BB321
4J246BB322
4J246BB32X
4J246BB331
4J246BB33X
4J246CA24X
4J246EA23
4J246HA53
(57)【要約】      (修正有)
【課題】べたつきもなく、耐水性、着色性、洗浄容易性などの性能を損なうことなく固着性、くし通り性を高度に両立した毛髪化粧料用樹脂及び毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)のケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N―アシルアルキルイミン)セグメント(b)が結合してなる毛髪化粧料用樹脂であって、前記ヘテロ原子を含むアルキレン基が特定の式で表される基であり、前記セグメント(a)の質量平均分子量が10000~100000であり、上記セグメント(b)の数平均分子量が800未満であり、上記(a)と(b)との質量比〔(a)/(b)〕が58/42~90/10であることを特徴とする毛髪化粧料用樹脂。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)のケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N―アシルアルキルイミン)セグメント(b)が結合してなる毛髪化粧料用樹脂であって、前記ヘテロ原子を含むアルキレン基が下記式(i)~(vii)で表される何れかの基であり、前記セグメント(a)の質量平均分子量が10000~100000であり、上記セグメント(b)の数平均分子量が800未満であり、上記(a)と(b)との質量比〔(a)/(b)〕が58/42~90/10であることを特徴とする毛髪化粧料用樹脂。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記毛髪化粧料用樹脂のヘテロ原子を含むアルキレン基が上記式(i)または(ii)で表される基で表されることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料用樹脂。
【請求項3】
毛髪化粧料用樹脂が、ポリエチルオキサゾリンアモジメチコンまたはポリシリコーン-9であることを特徴とする請求項1又は2に記載の毛髪化粧料用樹脂。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の毛髪化粧料用樹脂を含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固着性と櫛通り性を高度に両立した毛髪化粧料用樹脂及び毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、まつ毛や、頭髪などの毛髪化粧料は、さまざまな配合組成が知られており、また、その使用形態もいろいろな形態で用いられている。
一般に、ブラシや櫛などの塗布具を用いて塗布するタイプの毛髪化粧料は、くし(櫛)通りの良さや、べたつきもなく、固着性、耐水性、着色性、洗浄容易性などが求められている。
【0003】
従来の毛髪化粧料としては、例えば、1)マスカラ等に用いた場合、耐水性に優れ、高湿度下でカール維持性や、水での洗浄容易性に優れるまつ毛化粧剤用樹脂エマルジョンとして、ポリビニルアルコール系樹脂I及びビニル系樹脂Aを含有するものであって、エマルジョン中のポリビニルアルコール系樹脂Iとビニル系樹脂Aの重量比が55:45~99:1であることを特徴とするまつ毛化粧剤用樹脂エマルジョン、及び、このまつ毛化粧剤用アクリル含有樹脂エマルジョンを含有するまつ毛化粧剤(例えば、特許文献1参照)や、
【0004】
2) 伸張性に優れ、しかも水や低級アルコールに対して溶解・分散性に優れるオルガノポリシロキサンとして、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、特定式で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量が800~1600であり、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が65/35~82/18であり、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が10,000~100,000であるオルガノポリシロキサン、このオルガノポリシロキサンを含有する毛髪化粧料(例えば、特許文献2参照)や、
【0005】
3) 着色性、耐水性、色移りのし難さ、着色毛髪の感触の良さ、べたつきのなさ、毛髪への塗布しやすさに優れた一時染毛剤を提供するために、(A)成分として、重量平均分子量が10,000~200,000である主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、特定式で表される繰り返し単位からなる数平均分子量が800~1600のポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなり、オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントとの質量比が83/17~98/2、グラフト点間分子量が12,000~30,000であるオルガノポリシロキサンと、成分(B)として、顔料及び/又は直接染料とを含有し、成分(A)の含有量が3~20質量%である一時染毛剤組成物(例えば、特許文献3参照)、
などが知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~3の毛髪化粧料用樹脂やこれらの樹脂を含有する毛髪化粧料等は、べたつきもなく、耐水性、着色性、洗浄容易性などが良好であるが、含有される着色剤(色材)などを毛髪に塗布した際、上記毛髪化粧料用樹脂(固着樹脂)により毛髪が固まってしまい、周囲の毛髪と風合いに差が出来てしまうことがあった。これを解消するために、塗布乾燥後にくしで梳かすが、この際に塗布した髪が硬いとくしを梳かす際に引っかかり、髪に大きな負荷をかけたりすることがあり、固着性と櫛通り性の両立は困難となるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2019-85366号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2009-24114号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2012-1480号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の課題等について、これを解消しようとするものであり、べたつきもなく、耐水性、着色性、洗浄容易性などの性能を損なうことなく、固着性と櫛通り性を高度に両立した毛髪化粧料用樹脂及び毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記従来の課題等について鋭意検討した結果、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、特定式で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンにおいて、側鎖のポリ(N―アシルアルキルイミン)セグメント(b)の数平均分子量等を所定値以下などとすることにより、上記目的の毛髪化粧料用樹脂及び毛髪化粧料が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明の毛髪化粧料用樹脂は、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)のケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N―アシルアルキルイミン)セグメント(b)が結合してなる毛髪化粧料用樹脂であって、前記ヘテロ原子を含むアルキレン基が下記式(i)~(Vii)で表される何れかの基であり、前記セグメント(a)の質量平均分子量が10000~100000であり、上記セグメント(b)の数平均分子量が800未満であり、上記(a)と(b)との質量比〔(a)/(b)〕が58/42~90/10であることを特徴とする。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
前記毛髪化粧料用樹脂のヘテロ原子を含むアルキレン基が上記式(i)または(ii)で表される基であることが好ましい。
前記毛髪化粧料用樹脂が、ポリエチルオキサゾリンアモジメチコンまたはポリシリコーン-9であることが好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、上記構成の毛髪化粧料用樹脂を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、べたつきもなく、耐水性、着色性、洗浄容易性などの性能を損なうことなく、固着性と櫛通り性とを高度に両立した毛髪化粧料用樹脂及び毛髪化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の毛髪化粧料用樹脂は、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)のケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N―アシルアルキルイミン)セグメント(b)が結合してなる毛髪化粧料用樹脂であって、前記ヘテロ原子を含むアルキレン基が下記式(i)~(vii)で表される何れかの基であり、前記セグメント(a)の質量平均分子量が10000~100000であり、上記セグメント(b)の数平均分子量が800未満であり、上記(a)と(b)との質量比〔(a)/(b)〕が58/42~90/10であることを特徴とするものである。
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
本発明において、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントは、オルガノポリシロキサンセグメントを構成する任意のケイ素原子に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して少なくとも2つ結合することが可能であるが、両末端を除く1以上のケイ素原子に上記ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して結合していることが好ましく、両末端を除く2以上のケイ素原子に上記基を介して結合していることがより好ましい。
【0019】
上記ヘテロ原子を含むアルキレン基は、ポリ(N―アシルアルキルイミン)セグメント(b)の連結基として機能する。このヘテロ原子を含むアルキレン基としては、上記式(i)~(vii)で表される何れかの基から構成されるものであり、好ましくは、上記式(i)または(ii)で表される基であることが好ましく、より好ましくは上記式(i)で表される基が望ましい。
【0020】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)を構成するN-アシルアルキレンイミン単位は、前記一般式(1)で表されるものであるが、一般式(1)において、Rの炭素数1~22のアルキル基としては、例えば、炭素数1~22の直鎖、分岐状又は環状のアルキル基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基等が例示される。中でも、炭素数1~10、特に炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
【0021】
アラルキル基としては、例えば、炭素数7~15のアラルキル基が例示され、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等が例示される。中でも、炭素数7~14のアラルキル基が好ましく、炭素数7~10のアラルキル基がより好ましい。
アリール基としては、例えば、炭素数6~14のアリール基が例示され、具体的には、
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナ
ントリル基等が例示され、中でも、炭素数6~12のアリール基が好ましく、炭素数6~
9のアリール基がより好ましい。
これらの中でも、R1としては、炭素数1~6のアルキル基が特に好ましい。
【0022】
オルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)は58/42~90/10であるが、毛髪化粧料の基本性能である着色性と着色皮膜の耐水性、やわらかな感触、べたつきのなさ、櫛通りの良さを兼ね備えたものとする観点から、好ましくは、61/39~88/12、更に好ましくは、64/36~86/13である。
本明細書において、上記(a)/(b)は、成分(A)のオルガノポリシロキサンを重クロロホルム中に5質量%溶解させ、核磁気共鳴(1H-NMR)分析により、オルガノポリシロキサンセグメント中のアルキル基又はフェニル基と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント中のメチレン基の積分比より求めた値をいう。
【0023】
また、隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの質量平均分子量(グラフト点間分子量;MWg)は1000~3500であるが、毛髪化粧料の基本性能である着色性と着色皮膜の耐水性、やわらかな感触、べたつきのなさ、櫛通りの良さを兼ね備えたものとする観点から、好ましくは、1100~3200、更に好ましくは、1200~3000である。
本明細書において、「隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメント」とは、下記式(2)に示すように、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントのオルガノポリシロキサンセグメントに対する結合点(結合点A)から、これに隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの結合点(結合点B)までの2点間において破線で囲まれた部分であって、1つのRSiO単位と、1つのRと、y+1個のR SiO単位とから構成されるセグメントをいう。また、「ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント」とは、上記Rに結合するZをいう。
【0024】
【化5】
【0025】
上記一般式(2)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1~22のアルキル基又はフェニル基を示し、Rはヘテロ原子を含むアルキレン基を示し、Zはポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを示し、Rは重合開始剤の残基を示し、yは正の数を示す。
【0026】
MWgは、上記一般式(2)において破線で囲まれた部分の分子量であるが、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント1モル当たりのオルガノポリシロキサンセグメントの質量(g/mol)と解することができ、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの官能基がポリ(N-アシルアルキレンイミン)で100%置換されると、変性オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)と一致する。
【0027】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)は、N-アシルアルキレンイミン単位の分子量と重合度とから算出する方法又は後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定法により測定することが可能であるが、本発明においてはGPC測定法により測定される数平均分子量をいい、好ましくは、800未満、好ましくは、100以上~800未満、更に好ましくは、200以上~800未満が望ましい。
この数平均分子量を800未満とすることにより、くし通り性を良好とすることができ、セグメント(a)の質量平均分子量を所定の範囲とし、上記(a)と(b)との質量比の範囲を所定の範囲とすることにより、本発明の固着性と、くし通り性とを高度に両立した毛髪化粧料用樹脂が得られることとなる。上記数平均分子量が800超過では、本発明の効果を発揮できいこととなる(この点に関しては更に後述する製造例等で詳述する)。
【0028】
また、オルガノポリシロキサンセグメント(a)の質量平均分子量(MWg)は、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの含有率(Csi)を用いて下記式により求めることができる。
MWg=(Csi×MWox)/(100―Csi)
【0029】
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの質量平均分子量(MWsi)は10000~100000であるが、エタノール等の低級アルコールへの溶解性と溶解後の取り扱いやすさ、毛髪化粧料の基本性能である着色性と着色皮膜の耐水性、やわらかな感触、べたつきのなさ、櫛通りの良さを兼ね備えたものとする観点から、更に好ましくは、12000~80000、特に好ましくは、14000~60000である。
MWsiは、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンと共通の骨格を有するため、MWsiは原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの質量平均分子量と略同一である。なお、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの質量平均分子量は、下記測定条件によるGPCで測定し、ポリスチレン換算したものである。
【0030】
カラム:TSKgel SupreMultiporeHZ-Mを2つ直列に並べて使用(東ソー株式会社製)
溶離液:1mMトリエチルアミン/THF
流量 :0.35mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
サンプル:50μL
【0031】
本発明におけるオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(MWt)は、好ましくは、11000~170000、より好ましくは、14000~140000、更に好ましくは、17000~95000である。これにより、毛髪化粧料における着色性と着色皮膜の耐水性、やわらかな感触、べたつきのなさ、櫛通りの良さを兼ね備えたものとなり、更にエタノール等の低級アルコールに対する溶解性が優れたものになる。本明細書において、MWtは、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの質量平均分子量と、前述の質量比(a/b)とから求めることができる。
【0032】
オルガノポリシロキサンは、例えば、下記一般式(3)で表される変性オルガノポリシロキサンと、下記一般式(4)で表される環状イミノエーテルを開環重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)とを反応させることにより製造することができる。
【0033】
【化6】
〔式(3)中、Rは上記と同義であり、R、RはそれぞれRと同一の基を示すか又は下記式(viii)~(xiii)
【0034】
【化7】
のいずれかで表される1価の基を示し、Rは上記式で表される1価の基を示し、pは135~1350の整数を示し、qは3~57の整数を示す。〕で表される変性オルガノポリシロキサンと、下記式(4)
【0035】
【化8】
〔式(4)中、R及びnは前記と同義である。〕
【0036】
変性オルガノポリシロキサンは、官能基当量が好ましくは、1000~3500、より好ましくは、1100~3200、特に好ましくは、1200~3000である。質量平均分子量は、前述の主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)と略同一である。
【0037】
環状イミノエーテル(4)の開環重合には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、求電子反応性の強い化合物、例えば、ベンゼンスルホン酸アルキルエステル、p-トルエンスルホン酸アルキルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸アルキルエステル、トリフルオロ酢酸アルキルエステル、硫酸ジアルキルエステル等の強酸のアルキルエステルを使用することができ、中でも硫酸ジアルキルが好適に使用される。重合開始剤の使用量は、通常、環状イミノエーテル(4)2~100モルに対して、重合開始剤1モルである。
【0038】
重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、N,N-ジメチルフォルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒を使用することができ、中でも酢酸エステル類が好適に使用される。溶媒の使用量は、通常、環状イミノエーテル(4)100質量部に対して20~2000質量部である。
重合温度は通常30~170℃、好ましくは40~150℃であり、重合時間は重合温度等により一様ではないが、通常1~60時間である
【0039】
環状イミノエーテル(4)として、例えば、2-置換-2-オキサゾリンを用いれば、前記一般式(1)において、n=2のポリ(N-アシルエチレンイミン)が得られ、2-置換-ジヒドロ-2-オキサジンを用いれば、上記一般式(1)において、n=3のポリ(N-アシルプロピレンイミン)が得られる。
【0040】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)と、オルガノポリシロキサンセグメントとの連結方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
1)環状イミノエーテルをリビング重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)に、上記一般式(3)で表される変性オルガノポリシロキサンを反応させる方法
2)カルボキシル基と水酸基との縮合によるエステルの形成反応
3)カルボキシル基とアミノ基との縮合によるアミドの形成反応
4)ハロゲン化アルキル基と、1級、2級又は3級アミノ基との2級、3級又は4級アンモニウムの形成反応
5)Si-H基を有するオルガノポリシロキサンへのビニル基の付加反応
6)エポキシ基とアミノ基とのβ-ヒドロキシアミン形成反応
【0041】
これらの中でも、上記1)の方法は、下記に示す理論式〔MWiは、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)の分子量〕のように、環状イミノエーテル(4)と重合開始剤の使用量で重合度を容易に制御でき、しかも通常のラジカル重合よりも分子量分布の狭い略単分散のポリ(N-アシルアルキレンイミン)が得られる点で最も好適である。
MWi=〔環状イミノエーテルのモル数/重合開始剤のモル数〕×環状イミノエーテルの分子量+重合開始剤の分子量 ………(理論式)
【0042】
上記オルガノポリシロキサンとしては、ポリ(N-ホルミルエチレンイミン)オルガノシロキサン、ポリ(N-アセチルエチレンイミン)オルガノシロキサン、ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノシロキサン、ポリシリコーン-9、ポリエチルオキサゾリンアモジメチコン等が挙げられる。
【0043】
特に好ましくは、前記毛髪化粧料用樹脂のヘテロ原子を含むアルキレン基が上記式(i)または(ii)であることが好ましい。
更に好ましくは、毛髪化粧料用樹脂は、ポリエチルオキサゾリンアモジメチコンまたは、ポリシリコーン-9であることが好ましい。
【0044】
このように構成される本発明の毛髪化粧料用樹脂は、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)のケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、上記式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N―アシルアルキルイミン)セグメント(b)が結合してなる毛髪化粧料用樹脂であって、前記ヘテロ原子を含むアルキレン基が上記式(i)~(vii)で表される何れかの基であり、前記セグメント(a)の質量平均分子量が10000~100000であり、上記セグメント(b)の数平均分子量が800未満であり、上記(a)と(b)との質量比〔(a)/(b)〕が58/42~90/10であり、これらにより、適度な固さの耐水性樹脂が作製できるので、べたつきもなく、耐水性、着色性、洗浄容易性などの性能を損なうことなく、固着性と、くし通り性とを高度に両立した毛髪化粧料用樹脂が得られることとなる。
【0045】
〔毛髪化粧料〕
本発明の毛髪化粧料は、上記構成の毛髪化粧料用樹脂を含有することを特徴とするものであり、好ましくは、上記構成の毛髪化粧料用樹脂の他、顔料、溶媒を少なくとも含有することが望ましい。
用いることができる顔料としては、毛髪化粧料に用いられるものであれば特に制限はなく用いることができ、例えば、無機顔料、有機顔料、パール顔料、金属粉末顔料、光輝性顔料等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。
【0046】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、黒酸化鉄、黒酸化チタン等の黒色系顔料;酸化鉄(べんがら)、水酸化鉄、チタン酸鉄等の赤色系顔料;γ-酸化鉄等の褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の黄色系顔料;群青、紺青等の青色系顔料;マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の緑色系顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の白色系顔料等の少なくとも1種が挙げられる。これらの中で、カーボンブラック、黒酸化鉄、黒酸化チタン、酸化鉄(べんがら)、黄酸化鉄、群青、紺青などが好ましい。
【0047】
有機顔料としては、例えば、法定色素などの赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色228号、赤色404号、赤色405号、だいだい色203号、だいだい色204号、だいだい色401号、黄色205号、黄色401号、青色404号等の少なくとも1種が挙げられ、これらの中で、赤色202号、赤色404号、黄色205号、黄色401号、青色404号が好ましい。
【0048】
パール顔料としては、例えば、パール粉末、オキシ塩化ビスマス、雲母、金属酸化物被覆雲母(例えば、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母、黒酸化鉄被覆雲母チタン、黄酸化鉄被覆雲母、酸化鉄・黒酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、酸化鉄・紺青被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタンなど)、金属酸化物被覆アルミナフレーク、金属酸化物被覆シリカフレーク、多層コートパール顔料、ダークブルー等の少なくとも1種が挙げられる。
金属粉末顔料としては、例えば、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、真鍮粉等の少なくとも1種が挙げられる。
光輝性顔料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層体、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム体等の少なくとも1種が挙げられる。
【0049】
これらの顔料の合計含有量は、着色性、色移りのしにくさ、塗布後の感触と塗布しやすさの点、毛髪化粧料の用途(一次染毛料、マスカラ化粧料、カラーワックス、カラースプレー)から変動するものであるが、毛髪化粧料全量に対して、0.1~30質量%、更に好ましくは、0.5~20質量%、特に好ましくは、1~15質量%が望ましい。
上記顔料の他、界面活性剤、増粘剤、油分、多価アルコール、香料、パール化剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、各種薬効剤(トリクロサン、トリクロロカルバン等の殺
菌剤、グリチルリチン酸ジカリウム、酢酸トコフェロール等の抗炎症剤、ジンクピリチオ
ン、オクトピロックス等の抗フケ剤)、メチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、リ
ンゴ酸、乳酸、クエン酸等のpH調整剤なども必要に応じて適宜含有することができる。
【0050】
また、上記構成の毛髪化粧料用樹脂の含有量は、毛髪化粧料の基本性能である着色性と着色皮膜の耐水性、やわらかな感触、べたつきのなさ、櫛通りの良さを兼ね備えたものとする点、毛髪化粧料の用途(一次染毛料、マスカラ化粧料、カラーワックス、カラースプレー)、塗布形式などから変動するものであるが、毛髪化粧料全量に対して、5~30質量%、更には、7~28質量%、特に好ましくは、10~25質量%が望ましい。
この毛髪化粧料用樹脂の含有量が5%未満の場合は、固着性、耐水性が不十分であり、好ましくなく、一方、30%を超えると、溶媒中へ溶解できなかったり、毛髪塗布後の風合いが悪化したり、櫛通りが悪くなるため、好ましくない。なお、後述するエアゾール式の場合、噴射剤を含まない原液の全組成物に対しての「含有量」となる。以下、同様。
【0051】
用いることができる溶媒としては、低級アルコール、水、または、水と低級アルコールの混合物を溶媒とすることができる。低級アルコールとしては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール等が挙げられ、これらの中でもエタノール、2-プロパノール、特にエタノールが好ましい。
これらの溶媒の含有量は、顔料分散性、塗布後の速乾性等の点から、毛髪化粧料全量に対して、0.1~95質量%が好ましく、更に好ましくは、10~90質量%、特に好ましくは、20~80質量%が好ましい。
【0052】
本発明の毛髪化粧料には、上記各成分の他に、通常毛髪化粧料に用いられる成分を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができ、例えば、多価アルコール、界面活性剤、油脂、難揮発性炭化水素類、シリコーン油等の油性成分、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤、LPG(液化石油ガス)、ペンタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の噴射剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸化防止剤、植物抽出物等を適宜含有することができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のグリコール類、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等等のグリセリン類などを適宜量、例えば、毛髪化粧料全量に対して、5質量%以下含有することが好ましい。なお、毛髪化粧料の用途により適宜増減することができる。例えば、マスカラタイプ、フォームタイプ、スプレータイプ等の剤型の場合では、少なくすることが好ましい。
【0053】
本発明の毛髪化粧料は、常法により調製することができ、上記毛髪化粧料油尾樹脂、顔料、低級アルコール、水などの各成分を上記各含有量の範囲で配合し均一に撹拌・混合することにより、製造することができる。
例えば、上記毛髪化粧料用樹脂、低級アルコールなどのアルコールと、顔料と水などとを各々を汎用のディスパーなどにて均一になるまで撹拌後、更にpH調整剤、増粘剤などの任意成分を加え、ディスパーなどにて均一になるまで撹拌後、ホモミキサーなどにて撹拌して、調製することができる。また、本発明の毛髪化粧料の剤型、例えばフォーム、ヘアマスカラ、ジェル、スプレー、クリーム、ワックス等の形態に応じて、適宜各好ましい成分を含有して各剤型に調製することができる。
【0054】
このように構成される本発明の毛髪化粧料を使用に供するにあたっては、上記剤型に応じて、用いることができ、毛髪用塗布具を用いる場合は、例えば、ノック式のバルブ装置を備えた塗布具、マスカラタイプの塗布具、チューブタイプの塗布具、ピストン押圧機構を備えた塗布具などを用いて使用に供することもできる。
【0055】
このように構成される本発明の毛髪化粧料は、上記構成の毛髪化粧料用樹脂を含有するので、べたつきもなく、耐水性、着色性、洗浄容易性などの性能を損なうことなく、固着性と、くし通り性とを高度に両立した毛髪化粧料が得られることとなる。
【実施例0056】
以下に、本発明について、更に製造例、実施例、比較例などを参照して詳しく説明する。なお、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0057】
以下の製造例において、毛髪化粧料用樹脂におけるオルガノポリシロキサンセグメントの含有率とは、核磁気共鳴法(1H-NMR)から求めた値であり、また最終生成物の質量平均分子量は計算値である。ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求めた、数平均分子量である。
【0058】
Column:K‐804Lを2つ直列に並べて使用(東ソー株式会社製)
溶離液 :1mmol/ジメチルドデシルアミン/クロロホルム
流量 :1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器 :RI
サンプル量:50μL
ポリスチレン換算
【0059】
(製造例1:毛髪化粧料用樹脂A)
硫酸ジエチル8.5g(0.055モル)と2-エチル-2-オキサゾリン42.1g(0.43モル)を脱水した酢酸エチル101gに溶解し、窒素雰囲気下8時間70℃で加熱し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、770であった。ここに、アモジメチコン(質量平均分子量20000、アミン当量1700)49.4gを酢酸エチルの33%溶液とした上で一括して加え、8時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、ポリエチルオキサゾリンアモジメチコンを、淡黄色ゴム状固体(92g、収率92%)として得た。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、アミノ基は残存していないことがわかった。
【0060】
(製造例2:毛髪化粧料用樹脂B)
上記製造例1と同様の方法により、硫酸ジエチル10.6g(0.069モル)と2-エチル-2-オキサゾリン25.0g(0.25モル)、脱水した酢酸エチル71gから、数平均分子量370のポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を得た。更に、アモジメチコン(重量平均分子量20000、アミン当量1700)64.5gを用いて、ポリエチルオキサゾリンアモジメチコンを淡黄色ゴム状固体(94g、収率94%)として得た。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、アミノ基は残存していないことがわかった。
【0061】
(製造例3:毛髪化粧料用樹脂C)
上記製造例1と同様の方法により、硫酸ジエチル5.1g(0.033モル)と2-エチル-2-オキサゾリン66.1g(0.67モル)、脱水した酢酸エチル142gから、数平均分子量2000のポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を得た。更に、アモジメチコン(重量平均分子量20000、アミン当量1700)28.8gを用いて、ポリエチルオキサゾリンアモジメチコンを淡黄色ゴム状固体(95g、収率95%)として得た。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、アミノ基は残存していないことがわかった。
【0062】
(製造例4:毛髪化粧料用樹脂D)
上記製造例1と同様の方法により、硫酸ジエチル2.1g(0.014モル)と2-エチル-2-オキサゾリン44.1g(0.45モル)、脱水した酢酸エチル92gから、数平均分子量3100のポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を得た。更に、アミノプロピルジメチコン(重量平均分子量8800、アミン当量8000)53.8gを用いて、ポリシリコーン-9を淡黄色ゴム状固体(93g、収率93%)として得た。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、アミノ基は残存していないことがわかった。
【0063】
上記製造例1~4で得られた毛髪化粧料用樹脂の物性を下記表1に示すと共に、下記評価方法により、エタノールへの溶解性について評価した。これらの結果について、下記表1に示す。
【0064】
(エタノールへの溶解性試験)
上記製造例1~4で得られた各毛髪化粧料用樹脂20gをエタノール100mlを収容した容器に混合・撹拌して、下記評価基準で評価した。
これらの結果について、下記表1に示す。
評価基準:
◎:透明である
○:概ね透明であるが、わずかに濁りがある
△:白濁している
×:溶解せず固形の状態のまま存在する樹脂がある
【0065】
【表1】
【0066】
上記表1中のa/b、MWsi、MWox、MWg、MWtは、下記のとおりである。
a/b:オルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比
MWsi:主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量
MWox:ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量
MWg :隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間における、オルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量
【0067】
〔実施例1~9及び比較例1~3:毛髪化粧料の調製〕
上記製造例1~4で得られた毛髪化粧料用樹脂を用いて、下記表2に示す配合組成で常法により調製した。
得られた実施例1~9及び比較例1~3の毛髪化粧料について、下記各評価方法により、手への色つき抑制、櫛通りの良さ、固着性、べたつき性、耐水性、着色性及び洗浄性について評価した。
これらの結果を下記表2に示す。
【0068】
(固着性の評価法)
得られた各毛髪化粧料を1gの人毛白髪に0.2gを塗布し、常温で120分間乾燥後(以下、単に「人毛白髪に塗布・乾燥後」という)に、手で擦過し手にどの程度色が移ったかを、目視で確認して、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:全く色が移っていない
○:わずかに移っているが問題ない範囲
△:やや濃く色が移る
×:濃く色が移る
【0069】
(櫛通りの良さの評価法)
得られた各毛髪化粧料を人毛白髪に塗布・乾燥後、櫛を通した際の手にかかる負荷が、比較例1を標準品とし、相対的にどちらが大きく感じたか、パネラー10名による5段階官能評価を行った。パネラー10名の合計点により下記の基準で評価した。
して、下記評価基準で評価した。
評価基準:
5点:比較例1より小さい
4点:比較例1よりやや小さい
3点:比較例1と同等
2点:比較例1よりやや大きい
1点:比較例1より大きい
◎:46点以上
○:40点以上46点未満
△:31点以上40点未満
×:31点未満
【0070】
(べたつき性の評価法)
得られた各毛髪化粧料を比較例1を標準品とし、相対的に人毛白髪に塗布・乾燥後、毛束に触れた際にどちらがべたつき間があるか、パネラー10名による5段階官能評価を行った
評価基準:
5点:比較例1よりべたつきがない
4点:比較例1よりややべたつきがない
3点:比較例1と同等
2点:比較例1よりややべたつきがある
1点:比較例1よりべたつきがある
◎:40点以上
○:20点以上40点未満
△:15点以上20点未満
×:15点未満
【0071】
(耐水性の評価法)
得られた各毛髪化粧料を人毛白髪に塗布・乾燥後、水で湿らせた濾紙を押し当て、濾紙への色の付き具合を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:濾紙に全く付着しない
○:濾紙に若干付着するが問題のない範囲
△:濾紙にやや濃く付着する
×:濾紙に濃く付着する
【0072】
(着色性の評価法)
得られた各毛髪化粧料を人毛白髪に塗布・乾燥後、目視で観察し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:元の白髪の色に対し、十分に色が変化している
○:◎より少し薄い
△:あまり白髪と色が変わらない
×:白髪とほとんど色が変わらない
【0073】
(洗浄性の評価法)
得られた各毛髪化粧料を人毛白髪に塗布・乾燥後、市販のシャンプーで洗った後に、色が落ちており、べたつきが残っていないかを下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:全く色が残っておらず、べたつきもない
○:わずかに色またはべたつきが残っているが、実使用上問題ない範囲
△:やや色またはべたつきが残っている
×:色またはべたつきが残っている
【0074】
【表2】
【0075】
上記表2に示すように、本発明範囲となる実施例1~9は、本発明の範囲外となる比較例1~3に較べて、べたつきもなく、耐水性、着色性、洗浄容易性などの性能を損なうことなく固着性と櫛通り性を高度に両立した毛髪化粧料用樹脂及び毛髪化粧料となることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0076】
マスカラや、染毛剤、一次染毛剤などの毛髪化粧料に好適な毛髪化粧料用樹脂、毛髪化粧料が得られる。