(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026817
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】粉体封入容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G01N21/90 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005328
(22)【出願日】2024-01-17
(62)【分割の表示】P 2019033206の分割
【原出願日】2019-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】澤口 博朝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓磨
(57)【要約】
【課題】透明容器内の粉体中の異物が存在することを精度よく判定でき、不良品率の低い粉体封入容器の製造方法を提供する。
【解決手段】粉体封入容器の製造方法は、バイアル20に粉体21を封入する封入工程と、粉体21中の異物を検査する検査工程と、異物が存在すると判定したバイアル20を不良品とする不良品選別工程と、を含む。検査工程は、バイアル20を支持するクランプ12を介してバイアル20に振動を付与しつつ、クランプ12に上下方向5及び左右方向7の往復振動を付与してバイアル20内の粉体21を流動させ、流動する粉体21を、バイアル20を通じて光学的に撮影し、撮影された画像に基づいて粉体21中に異物が存在するかを判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明容器に粉体を封入する封入工程と、
上記粉体中の異物を検査する検査工程と、
異物が存在すると判定した上記透明容器を不良品とする不良品選別工程と、を含む粉体封入容器の製造方法であって、
上記検査工程は、
上記透明容器を支持する支持部を介して上記透明容器に振動を付与しつつ、当該支持部に第1方向の往復振動と当該第1方向と交差する第2方向の往復振動とを付与して、上記透明容器内の粉体を流動させ、
流動する上記粉体を、上記透明容器を通じて光学的に撮影し、
撮影された画像に基づいて上記粉体中に異物が存在するかを判定する粉体封入容器の製造方法。
【請求項2】
上記透明容器は、口部と、当該口部と連続する側壁と、当該側壁と連続する底部とを有する容器本体と、上記口部に打栓される蓋と、を有しており、
上記封入工程において、上記粉体を貯留する上記容器本体に上記蓋が打栓される請求項1に記載の粉体封入容器の製造方法。
【請求項3】
上記検査工程において、
上記第1方向と上記第2方向とが直交しており、
上記支持部は、上記口部と上記底部とが対向する第3方向を、上記第1方向及び上記第2方向と直交させて支持し、
上記側壁を通じて、流動する上記粉体を撮影する請求項2に記載の粉体封入容器の製造方法。
【請求項4】
上記第3方向は、上記口部が上記底部よりも上方として、水平方向に対して傾斜している請求項3に記載の粉体封入容器の製造方法。
【請求項5】
上記検査工程において、流動する上記粉体を、上記透明容器の下方から撮影する請求項1から4のいずれかに記載の粉体封入容器の製造方法。
【請求項6】
上記粉体の安息角は、30度から60度の範囲内である請求項1から5のいずれかに記載の粉体封入容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明容器内の粉体中に異物があるかを検査する異物検査方法及び粉体封入容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、注射剤や散剤、細粒剤、顆粒剤などの粉体の医薬品が包装される形態として、バイアルなどの透明容器がある。この透明容器内の粉体中に異物が存在するかの検査として、目視による検査や、光学的に得られた画像データを分析することによる検査が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された異物検出方法は、粉体が充填された透明容器に、縦方向と横方向との合成振動を付与して、粉体中の異物を光学的に検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、流動性がよくない粉体は、合成振動によって散らばりながら流動せずに、塊のまま流動するので、流動している粉体に含まれる異物が粉体の塊の表面に現れず、異物の検出率がよくないという問題がある。その結果、粉体中に異物が存在するにも拘わらず、異物が存在しない良品であると判定されるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明容器内の粉体中の異物が存在することを精度よく判定でき、不良品率の低い粉体封入容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る粉体封入容器の製造方法は、透明容器に粉体を封入する封入工程と、上記粉体中の異物を検査する検査工程と、異物が存在すると判定した上記透明容器を不良品とする不良品選別工程と、を含む。上記検査工程は、上記透明容器を支持する支持部を介して上記透明容器に振動を付与しつつ、当該支持部に第1方向の往復振動と当該第1方向と交差する第2方向の往復振動とを付与して、上記透明容器内の粉体を流動させ、流動する上記粉体を、上記透明容器を通じて光学的に撮影し、撮影された画像に基づいて上記粉体中に異物が存在するかを判定する。
【0007】
検査工程において、支持部を介して付与された振動により、透明容器内の粉体の塊が崩れて粉体が散らばりやすくなる。第1方向の往復振動及び第2方向の往復振動により、透明容器内において、粉体が循環するように流動される。これにより、透明容器内において、粉体が散らばりつつ流動するので、検査工程において、粉体中の異物が露出されやすく、撮影された画像に異物が現れやすい。そして、不良品選別工程において、異物が存在すると判定した透明容器が不良品とされるので、製造された粉体封入容器の異物混入率が低い。
【0008】
(2) 好ましくは、上記透明容器は、口部と、当該口部と連続する側壁と、当該側壁と連続する底部とを有する容器本体と、上記口部に打栓される蓋と、有しており、上記封入工程において、上記粉体を貯留する上記容器本体に上記蓋が打栓される。
【0009】
透明容器に封入された粉体において、異物の混入を精度よく検査して、異物混入率が低い粉体封入容器が製造される。
【0010】
(3) 好ましくは、上記検査工程において、上記第1方向と上記第2方向とが直交しており、上記支持部は、上記口部と上記底部とが対向する第3方向を、上記第1方向及び上記第2方向と直交させて支持し、上記側壁を通じて、流動する上記粉体を撮影する。
【0011】
透明容器の底部側に溜まっている粉体が、側壁に沿って流動するので、粉体中の異物が露出されやすく、撮影された画像に異物が現れやすい。
【0012】
(4) 好ましくは、上記第3方向は、上記口部が上記底部よりも上方として、水平方向に対して傾斜している。
【0013】
透明容器の側壁に沿って流動する粉体が、底部側に位置するので、画像を撮影する範囲が限定しやすい。
【0014】
(5) 好ましくは、上記検査工程において、流動する上記粉体を、上記透明容器の下方から撮影する。
【0015】
透明容器内を流動しつつ重力により落下した粉体と、往復振動する透明容器と、が衝突した状態が撮影されるので、撮影された画像に異物が現れやすい。
【0016】
(6) 好ましくは、上記粉体の安息角は、30度から60度の範囲内である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、透明容器内の粉体中の異物が存在することを精度よく判定できるので、異物混入率が低い粉体封入容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】
図3は、クランプ12に把持されたバイアル20の傾きを示す図である。
【
図4】
図4は、バイアル20内において楕円運動する粉体21を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。なお、以下の説明において、上下を基準として上下方向5が定義され、上下方向5と垂直な方向に前後方向6(
図2の紙面と垂直な方向)が定義され、上下方向5及び前後方向6とそれぞれ垂直な方向に左右方向7が定義されている。
【0020】
[バイアル20及び粉体21]
図1に示されるように、後述される異物検査装置10により検査される対象は、粉体21が収容されたバイアル20(透明容器及び粉体封入容器の一例)である。図示されないが、バイアル20は、公知の方法により、例えば、アルミキャップにより蓋22及び容器本体23が巻き締めされて密封される。粉体21は、注射剤や散剤、細粒剤、顆粒剤などの薬剤である。薬剤は特に限定されないが、例えば、細胞壁合成阻害作用型抗生物質、細胞膜阻害作用型抗生物質、核酸合成阻害作用型抗生物質、蛋白合成阻害作用型抗生物質、葉酸代謝経路阻害型抗生物質、βラクタマーゼ阻害薬、サルファ薬、抗感染症薬、が好ましい。また、薬物としては、アンピシリン、バカンピシリン、アモキシシリン、ピブメシリナム、アモキシシリン、スルタミシリン、ピペラシリン、アスポキシリン、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、オキサシリン、カルベニシリン、セファロクル、セフロキサジン、セファドロキシル、セフィキシム、セフテラムピボキシル、セフロキシムアキセチル、セフポドキシムプロキセチル、セフォチアムヘキセチル、セフジニル、セフチブテン、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシル、セファゾリン、セフォゾプラン、セフメタゾール、セフォチアム、セフスロジン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフメノキシム、セフトリアキソン、セフタジシム、セフォジシム、セフピロム、セフェピム、ファロペネム、イミペネム、パニペネム、メロペネム、ビアペネム、ドリペネム、アズトレオナム、バンコマイシン、テイコプラニン、ホスミシン、硫酸ポリミキシンB、硫酸コリスチン、グラミシジンS、アンホテリシンB、レボフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、ガチフロキサシン、プルリフロキサシン、モキシフロキサシン、パズフロキサン、リファンピシン、ジベカシン、トブラマイシン、アミカシン、イセパマイシン、ミクロノマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ロキタマイシン、ジョサマイシン、ロキスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、テリスロマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、トリメトプリム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、サルファメトキサゾール、サラゾピリン、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール、グリセオフルビン、アムホテリシンB、5-フルオロシトシン、フルコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール、アシクロビル、ガンシクロビル、ホスカビル、イドクスウリジン、アマンタジン、インターフェロンγ、リバピリン、ラミプジン、メトロニダゾール、チニダゾール、フルコナゾール、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、ジエチルカルバマジン、プラジカンテル、アルベンダゾール、イベルメクチン、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リネゾリド(linezolid)、スペクチノマイシン、ネチルマイシン、シソマイシン(sisomycin)、リンコサミン(lincosamin)、ラモプラニン(ramoplanin)、テリスロマイシン(telithromycin)、ナイスタチン、フシジン酸(fusidic acid)、クロルヘキシジン、およびポリヘキサニド(polyhexanid)などが挙げられる。
【0021】
粉体21の特性としては、例えば、安息角、粒度、充填量、嵩密度が挙げられる。粉体21の安息角は、具体的には、30度から60度の範囲であり、好ましくは、33度から60度の範囲である。粉体21の粒度は、具体的には、平均粒子径(メジアン径:d50)が20μmから70μmの範囲であり、好ましくは21.1μmから55.7μmの範囲である。バイアル20に収容されている粉体21の充填量は、少なくとも0.25g以上であり、充填量が多くても異物検査装置10により検査することは可能である。粉体21の嵩密度は、具体的には、0.300g/mLから0.700g/mLの範囲であり、好ましくは0.340g/mLから0.670g/mLの範囲である。
【0022】
図1に示されるように、バイアル20(透明容器の一例)は、蓋22及び容器本体23を有する。蓋22は、ゴムやエラストマーなどの樹脂から成型されたものである。容器本体23は、例えば透明なガラス製である。容器本体23は、内部空間にある粉体21を、撮影装置15(
図2参照)が光学的に撮影可能な程度の透光性を有していればよい。
【0023】
容器本体23は、内部空間に通ずる開口を形成する口部24、側壁25、及び底部26を有する。容器本体23は、全体として概ね円筒形状であり、口部24の外径が側壁25の外径より小さい所謂細口の容器である。口部24と底部26とは対向している。底部26は円盤形状であり、容器本体23は、底部26が机などに載置されて口部24による開口を上方へ向けて起立する。側壁25は円筒形状である。口部24は側壁25と連続している。口部24は、側壁25へ向かって外径が徐々に拡がる形状である。側壁25と底部26とは連続している。側壁25の外径と底部26の外径とは同等である。
【0024】
蓋22は、口部24と密接する円盤から、口部24により形成される開口へ進入して嵌まり込む凸部が突出した形状である。容器本体23には、例えば、粉末21が充填機により充填され、蓋22が口部24に打栓され、アルミキャップが巻き締めされて、容器本体23が密封される。
【0025】
[異物検査装置10]
異物検査装置10は、バイアル20に封入された粉体21に異物が混入しているかを検査するものである。
図2に示されるように、異物検査装置10は、フレーム11と、クランプ12(支持部の一例)と、振動発生装置13と、合成振動発生装置14と、撮影装置15と、解析装置16と、照明装置17と、を備える。支持部12、振動発生装置13、合成振動発生装置14、及び撮影装置15は、フレーム11に支持されている。フレーム11は、支持部12、振動発生装置13、合成振動発生装置14、及び撮影装置15を支持した状態で、前後方向6が水平方向から傾斜するように姿勢変化可能である。解析装置16は、撮影装置15とデータ通信可能に接続されている。
【0026】
クランプ12は、左右方向7に分かれて一対をなしており、それぞれが左右方向7に移動することによって、バイアル20を挟み持つ状態と、バイアル20を挟み持たない状態とに変化する。クランプ12は、バイアル20の側壁25を左右方向7から挟み持つ。クランプ12がバイアル20を挟み持った状態において、口部24と底部26とが対向する方向(第3方向の一例)、すなわち容器本体23の軸線方向は、前後方向6と平行である。
また、クランプ12がバイアル20を挟み持った状態において、バイアル20の側壁25の一部は、上下方向5に露出されている。
【0027】
振動発生装置13は、一対のクランプ12のそれぞれにおいて、バイアル20と当接しない位置に固定されている。振動発生装置14は、例えば偏心モータの回転によって振動を発生する。振動発生装置13によって発生された振動は、クランプ12を介してバイアル20に伝達される。
【0028】
合成振動発生装置14は、クランプ12に、上下方向5(第1方向の一例)の往復振動と、左右方向7(第2方向の一例)の往復振動と、を付与する。合成振動発生装置14は、モータ40と、上下振動発生機構41と、左右振動発生機構42と、を有する。モータ40は、上下振動発生機構41及び左右振動発生機構42に伝達される駆動力を発生する。
【0029】
上下振動発生機構41は、偏心円盤カム43、カム軸44、リンクアーム45、及びスライダ46を有する。偏心円盤カム43は、フレーム11に支持されて前後方向6に沿って延びるカム軸44に回転自在に支持されている。カム軸44には、偏心円盤カム43が設けられている。偏心円盤カム43は、カム軸44から径方向へ突出している。偏心円盤カム43がカム軸44から突出する長さは、カム軸44の周方向において連続的に変化している。
【0030】
リンクアーム45は、偏心円盤カム43と摺動可能に嵌合している。偏心円盤カム43の回転がリンクアーム45に伝達されることにより、リンクアーム45の位置が上下方向5に変位しつつ回転する。リンクアーム45は、スライダ46と軸47を介して連結されている。スライダ46は、左右振動発生機構42のスライダ51に設けられたスライドレール54と嵌合することによって、上下方向5に沿って移動可能である。したがって、スライダ46は、リンクアーム45の回転のうち上下方向5の移動幅によって上下方向5に往復移動する。
【0031】
リンクアーム45は、左右方向7に沿って延びる支持アーム55を有する。支持アーム55は、クランプ12及び振動発生装置14を支持している。
【0032】
左右振動発生機構42は、偏心円盤カム48、カム軸49、リンクアーム50、及びスライダ51を有する。偏心円盤カム48は、フレーム11に支持されて前後方向6に沿って延びるカム軸49に回転自在に支持されている。カム軸49には、偏心円盤カム48が設けられている。偏心円盤カム48は、カム軸49から径方向へ突出している。偏心円盤カム48がカム軸49から突出する長さは、カム軸49の周方向において連続的に変化している。
【0033】
リンクアーム50は、偏心円盤カム48と摺動可能に嵌合している。偏心円盤カム48の回転がリンクアーム50に伝達されることにより、リンクアーム50の位置が左右方向7に変位しつつ回転する。リンクアーム50は、スライダ51と軸52を介して連結されている。スライダ51は、フレーム11に設けられたスライドレール53と嵌合することによって、左右方向7に沿って移動可能である。したがって、スライダ51は、リンクアーム50の回転のうち左右方向7の移動幅によって左右方向7に往復移動する。
【0034】
スライダ51の左端には、上下方向5に延びるスライドレール54が形成されている。スライドレール54は、上下振動発生機構41のスライダ46と嵌合している。スライドレール54を介して、スライダ51の左右方向7の往復移動が、スライダ46に伝達される。これにより、スライダ46は、左右方向7に往復移動しつつ、上下方向5にも往復移動する。つまり、左右方向7の往復移動と上下方向5の往復移動との合成振動が支持アーム55に伝達される。
【0035】
上下振動発生機構41による上下方向5の往復移動の振幅と、左右振動発生機構42による左右方向7の往復移動の振幅と、が同じであるとすると、偏心円盤カム43,48の位相差を調整することによって、合成振動は、円運動、直線運動、楕円運動のいずれかとなる。例えば、合成振動が楕円運動になるように、偏心円盤カム43,48の位相差が設定される。
【0036】
撮影装置15は、クランプ12の下方に設置されている。撮影装置15は、クランプ12に挟み持った状態のバイアル20において、上下方向5に露出された側壁25の一部を通じて、バイアル20内の粉体21を光学的に撮影するカメラである。撮影装置15は、例えば、毎秒30枚や60枚のフレームレートで、振動するバイアル20の画像を所定時間において複数枚撮影する。
【0037】
解析装置16は、撮影装置15が撮影した画像を解析して、粉体21に異物が混入しているかを判定する判定ソフトがインストールされたコンピュータである。解析装置16は、撮影装置15とデータを送受信可能に接続されている。解析装置16は、例えば、キーボード及びマウスなどの入力デバイスと、ディスプレイなどの表示デバイスと、を有する。撮影装置15から受信した画像は、解析装置16のディスプレイに表示されてもよい。
【0038】
判定ソフトは、撮影装置15が撮影したバイアル20の画像、すなわち画像データに基づいて、バイアル20の粉体21に異物が混入しているかを判定する。具体的には、得られた1枚の画像データを所定数の縦横に細分化された領域として、各領域の色の濃さを複数段階に識別する。粉体21が白色とすると、異物は黒色として認識される。そして、画像データにおけるピーク値(異物の色の濃さ)、強度面積値(異物の縦×横)、から異物が存在するかを判定する。例えば、判定ソフトは、ピーク値、強度面積値のいずれもが所定の条件内であれば、例えば、各値が閾値以上であって連続する所定範囲が存在すれば、バイアル20の粉体21内に異物が存在すると判定する。なお、検出可能な異物は特に限定されず、粉体21とは異なる輝度で画像に写るものであればよい。
【0039】
照明装置17は、クランプ12の上下にそれぞれ設置されている。2つの照明装置17は、クランプ12に挟み持たれて振動するバイアル20に対して、上下方向5のそれぞれから光を照射する。クランプ12の下方に位置する照明装置17は、撮影装置15とクランプ12とが対向する領域と重複しておらず、当該領域に対して前後方向6にオフセットした位置にある。
【0040】
[粉体21が封入されたバイアル20の製造方法]
以下、粉体21が封入されたバイアル20の製造方法が説明される。バイアル20の製造方法は、以下の複数の工程を含む。
(1)バイアル20に粉体21を封入する封入工程。
(2)粉体21中の異物を検査する検査工程(検査方法の一例)。
(3)粉体21中に異物が存在すると判定したバイアル20を不良品とする不良品選別工程。
【0041】
封入工程において、オーガ式充填機により粉体21が容器本体23に充填される。そして、粉体21を貯留する容器本体23に蓋22が打栓され、蓋22と容器本体23との境界を密封するようにしてアルミキャップが巻き締めされる。これにより、内部空間に粉体21が密封されたバイアル20が得られる。
【0042】
検査工程は、異物検査装置10を用いて行われる。内部空間に粉体21が密封されたバイアル20は、異物検査装置10のクランプ12に挟み持たれる。クランプ12に挟み持たれたバイアル20の軸線方向C(
図3参照)は、前後方向6と平行である。
【0043】
異物検査装置10が作動されると、フレーム11が傾斜する。
図3に示されるように、フレーム11が傾斜することによって、バイアル20の軸線方向Cは、容器本体23の口部24が底部26よりも上方として、前後方向6(水平方向)に対して傾斜する。傾斜角度は、0度~15度の範囲内であり、好ましくは、1度から10度の範囲内である。異物検査装置10が作動されると、照明装置17が点灯される。
【0044】
フレーム11が傾斜した後、振動発生装置13が作動されると共にモータ40が作動される。振動発生装置13が作動されることによって、クランプ12に挟み持たれたバイアル20に振動が付与される。バイアル20に振動が付与されることによって、仮に、バイアル20内において粉体21が側壁25に付着していたとしても、振動によって粉体21が側壁25から離れる。また、粉体21の塊が崩れる。これにより、粉体21に混入している異物が、バイアル20の側壁25の内面側に現れやすくなる。
【0045】
モータ40が作動すると、合成振動発生装置14によって前後方向6から視て楕円運動となる合成振動がバイアル20に付与される。この合成振動によって、バイアル20の内部空間において、
図4に示されるように、粉体21が楕円に循環しつつ流動する。この粉体21の流動において、粉体21の各粒子と大きさや重さが異なる異物は、粉体21とは異なる流動となる。例えば、粉体21の各粒子より重い異物は、流動する粉体21の循環の外側に移動する傾向があるので、バイアル20の側壁25の内面側に現れやすくなる。
【0046】
また、バイアル20の軸線方向Cは、容器本体23の口部24が底部26よりも上方として、前後方向6に対して傾斜しているので、粉体21は、底部26側へ溜まりやすくなる。また、粉体21の各粒子より重い異物は、粉体21よりも底部26側へ移動する傾向があるので、バイアル20の底部26付近の側壁25の内面側に現れやすくなる。
【0047】
解析装置16は、バイアル20に振動及び合成振動が付加されているときに撮影装置15が撮影したバイアル20の画像に基づいて、バイアル20の内部の粉体21に異物があるか否かを判定する。
【0048】
不良品選別工程において、粉体21中に異物が存在すると判定したバイアル20が不良品として出荷対象から除外される。
【0049】
[実施形態の作用効果]
前述された実施形態によれば、検査工程において、クランプ12を介して付与された振動により、バイアル20内の粉体21の塊が崩れたり、側壁25から粉体21が離れたりして、粉体21が散らばりやすくなる。また、上下方向5及び左右方向7の合成振動により、バイアル20内において、粉体21が循環するように流動される。これにより、バイアル20内において、粉体21が散らばりつつ流動するので、検査工程において、粉体21中の異物が露出されやすく、撮影された画像に異物が現れやすい。そして、不良品選別工程において、異物が存在すると判定したバイアル20が不良品とされるので、製造されたバイアル20の異物混入率が低い。
【0050】
また、検査工程において、バイアル20の軸線方向Cが前後方向6と平行として支持されるので、バイアル20の側壁25を通じて、流動する粉体21が撮影される。
【0051】
また、検査工程において、バイアル20の軸線方向Cが前後方向6から傾斜しているので、バイアル20の底部26側に溜まっている粉体21が、側壁25に沿って流動する。これにより、粉体21中の異物が露出されやすく、撮影された画像に異物が現れやすい。また、バイアル20の側壁25の底部26付近に異物が現れやすいので、異物判定のために画像を撮影する範囲が限定される。
【0052】
また、検査工程において、流動する粉体21がバイアル20の下方から撮影されるので、バイアル20内を流動しつつ重力により落下した粉体21と、振動する容器本体23の側壁25とが衝突した状態が撮影される。これにより、撮影された画像に異物が現れやすい。
【符号の説明】
【0053】
10・・・異物検査装置
11・・・フレーム
12・・・クランプ(支持部)
13・・・振動発生装置
14・・・合成振動発生装置
15・・・撮影装置
16・・・解析装置
20・・・バイアル
21・・・粉体
22・・・蓋
23・・・容器本体
24・・・口部
25・・・側壁
26・・・底部