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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002683
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】合成樹脂部材の接合構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20231228BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20231228BHJP
   F16B 5/08 20060101ALI20231228BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20231228BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B29C65/02
B29C65/08
F16B5/08 B
F16B11/00 E
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102026
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 辰二郎
【テーマコード(参考)】
3D023
3J001
3J023
4F211
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB08
3D023BD03
3D023BE35
3J001FA01
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001JD11
3J001KA11
3J001KB01
3J023AA01
3J023BB01
3J023EA03
3J023FA02
3J023GA03
4F211AA11
4F211AG28
4F211AH18
4F211TA01
4F211TC14
4F211TD07
4F211TN02
4F211TN22
(57)【要約】
【課題】接合強度を高めた、合成樹脂部材の接合構造を提供する。
【解決手段】合成樹脂製の、アッパートリム本体31とトリムブラケット32との接合構造であって、アッパートリム本体31には、中空構造の溶着ボス40Aが設けられている。溶着ボス40Aの先端部は、周方向に3つに分割された分岐片部42となっている。トリムブラケット32の接合片部32dには、3つの分岐片部42のそれぞれに対応して周方向に配置された3つの弧状孔部60が形成されている。接合片部32dにおける3つの弧状孔部60に囲まれた部分が内側座面32xとなっている。弧状孔部60に挿通された分岐片部42の先端部が、加熱による溶融変形により溶着頭43として内側座面32xを含む弧状孔部60の周縁部に溶着されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の2つの部材を備え、第1部材に設けられた中空構造の溶着ボスが第2部材に形成された貫通孔に挿通され、上記溶着ボスの先端部が上記貫通孔の周縁部に溶着され、上記第1部材と上記第2部材が接合されている合成樹脂部材の接合構造であって、
上記溶着ボスの先端部が、周方向に複数に分割された分岐片部となっており、
上記貫通孔が、複数の上記分岐片部のそれぞれに対応して周方向に配置された複数の弧状孔部として形成され、上記第2部材における複数の上記弧状孔部に囲まれた部分が内側座面となっており、
上記弧状孔部に挿通された上記分岐片部の先端部が上記内側座面を含む上記弧状孔部の周縁部に溶着されていることを特徴とする合成樹脂部材の接合構造。
【請求項2】
上記第2部材の内側座面に、上記分岐片部の突出方向と同じ方向に突出し溶着に供される副ボスが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂部材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の2つの部材を溶着により接合する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の2つの部材を接合するために、第1部材に設けられた溶着ボスを第2部材に形成された貫通孔に挿通し、貫通孔の周縁部に溶着ボスの先端部を溶着させることが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、図8(A),(B)に示すように、合成樹脂製のドアトリム1をロアトリム2とアッパートリム3とにより構成し、ロアトリム2とアッパートリム3を溶着により接合する構造が開示されている。
【0004】
ロアトリム2は、意匠面の裏側の上端部に円筒形状の溶着ボス2aを有している。アッパートリム3はその下端部に接合片部3aを有し、接合片部3aには貫通孔3bが形成されている。ロアトリム2の溶着ボス2aをアッパートリム3の貫通孔3bに挿通させた後、溶着ボス2aの先端を溶着ホーンにより加圧加熱して溶融させることにより、溶着頭2b(図8(B))が形成される。この溶着頭2bの周縁部が、接合片部3aにおける貫通孔3bの周縁部に溶着することにより、ロアトリム2とアッパートリム3は接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-143479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の接合構造では、図8(B)に示すように、溶着頭2bの周縁部のみが接合片部3aに溶着してロアトリム2とアッパートリム3の接合に寄与しているため、接合強度が弱かった。接合力を高めるために、溶融する溶着ボス2aの先端側を長く設定すれば、溶着時間が長くかかっていた。
【0007】
溶着ボス2aは、ロアトリム2の意匠面にヒケを生じさせないように、円筒形状に形成されている。そのため、溶着ボス2aの先端側を溶融変形させ溶着頭2bを形成するとき、溶着頭2bの中心部が溶着ボス2aの内側に溶け落ちロアトリム2の裏面まで達してしまうことがあった。これにより、意匠面の外観を損ねる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであって、本発明の一態様に係る合成樹脂部材の接合構造は、
合成樹脂製の2つの部材を備え、第1部材に設けられた中空構造の溶着ボスが第2部材に形成された貫通孔に挿通され、上記溶着ボスの先端部が上記貫通孔の周縁部に溶着され、上記第1部材と上記第2部材が接合されている合成樹脂部材の接合構造であって、
上記溶着ボスの先端部が、周方向に複数に分割された分岐片部となっており、
上記貫通孔が、複数の上記分岐片部のそれぞれに対応して周方向に配置された複数の弧状孔部として形成され、上記第2部材における複数の上記弧状孔部に囲まれた部分が内側座面となっており、
上記弧状孔部に挿通された上記分岐片部の先端部が上記内側座面を含む上記弧状孔部の周縁部に溶着されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、第2部材において、内側座面により、溶着ボスの径方向外側だけでなく内側も溶着に供されるため、すなわち溶着頭の周縁部だけでなく中心部も溶着に供されるため、接合強度を高めることができる。ひいては、接合強度を得るために必要な溶着ボスの長さを短くすることができ、溶着時間を短縮できる。
また、内側座面により、溶着ボスの内側の基端側に溶融物が入り込むことを阻止でき、ひいては、第1部材における溶着ボスとは反対側の面の外観に影響が及ぶことを防ぐことができる。
【0010】
好ましくは、上記第2部材の内側座面に、上記分岐片部の突出方向と同じ方向に突出し溶着に供される副ボスが設けられている。
上記構成によれば、副ボスを設けることにより、接合強度を得るために必要な溶着ボスの長さを短くできるとともに、溶着ホーンに接する部分を多くすることができ、加熱効率を高め溶着時間をより短縮できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接合強度を高めた、合成樹脂部材の接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る接合構造を適用するドアトリムを車室外側後方から見た斜視図である。
図2】同接合構造をなす、アッパートリム本体の溶着ボスとトリムブラケットの接合片部とを分離した状態で示す拡大斜視図である。
図3】同溶着ボスの分岐片部が同接合片部の弧状孔部に挿通された状態を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
図4図3(B)のIV-IV線に沿う断面図であって、(A)は溶着前の状態を示し、(B)は溶着後の状態を示す。
図5】本発明の第2実施形態に係る接合構造をなす接合片部を示す拡大斜視図である。
図6】同第2実施形態の接合片部の弧状孔部に溶着ボスの分岐片部が挿通された状態を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
図7図6(B)VII-VII線に沿う断面図であって、(A)は溶着前の状態を示し、(B)は溶着後の状態を示す。
図8】従来の接合構造を適用するドアトリムを示す図であって、(A)は要部分解斜視図、(B)は図8(A)のVIIIB-VIIIB線に沿う断面図であって溶着後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態をなす合成樹脂部材の接合構造について、図1図4を参照して説明する。この実施形態は、車両のドアトリムにおけるアッパートリム本体とトリムブラケットとの接合構造に、本発明を適用したものである。
【0014】
図1に示すドアトリム10は、車両のドアパネル(図示しない)に取り付けられる内装材であって、ロアトリム20とアッパートリム30とを備え、車室側が意匠面となっている。アッパートリム30は、アッパートリム本体31(第1部材)と、アッパートリム本体31の上端部の車室外側に接合されるトリムブラケット32(第2部材)とにより構成されている。
【0015】
アッパートリム本体31は、ポリプロピレン(PP)、フィラー入りポリプロピレン(PPF)等の合成樹脂によって射出成形により構成されている。トリムブラケット32もまた合成樹脂製の射出成形品であり、アッパートリム本体31と同じ材料で構成されてもよい。
【0016】
アッパートリム本体31は、車室外側の裏面の上端部に、トリムブラケット32との接合に用いられる2種類の溶着ボス40A,40Bを有している。溶着ボス40A,40Bは、車両の前後方向に複数(本実施形態では4つ)配置され、それぞれ、車幅方向の車室外側に向かって突出している。
【0017】
トリムブラケット32は、車両の前後方向に延びており、上壁部32aと、この上壁部32aの車室外側から垂下しウエザーストリップSが装着される外壁部32bと、上壁部32aの車室側から垂下する内壁部32cと、を有している。内壁部32cの下端からは、接合片部32dが垂下している。
【0018】
接合片部32dは、上記アッパートリム本体31との接合に用いられるものであって、複数の上記溶着ボス40A,40Bの配置に対応して車両の前後方向に複数(本実施形態では4つ)形成されている。尚、後述するように、これら接合片部32dのうち、溶着ボス40Aに対応するものは、溶着ボス40Bに対応するものと比べ、形成される貫通孔の形状を異ならせている。
【0019】
上記構成のアッパートリム本体31及びトリムブラケット32における、溶着ボス40Aと接合片部32dとによる接合構造について、図2図4を参照して説明する。
先ず、溶着ボス40Aと接合片部32dについて説明する。
【0020】
溶着ボス40Aは、図2に示すように、細長い中空構造をなしており、平面視において環状に形成されている。
溶着ボス40Aの基端側は、円筒部41となっている。これにより、アッパートリム本体31における溶着ボス40Aとは反対側の意匠面に、ヒケを生じさせないようになっている。
【0021】
溶着ボス40Aの先端側は、円筒部41の先端から突出し、周方向に等間隔に分割配置された同一形状の3つの分岐片部42となっている。分岐片部42の内面42a及び外面42bは、それぞれ円筒部41の内周面41a及び外周面41bと、面一をなしており曲率が同一である。
【0022】
溶着ボス40Aの周囲には、周方向に等間隔に配置された3つのリブ51と、これらのリブ51の間で周方向に等間隔に配置された3つのリブ52とが設けられている。
リブ51は、アッパートリム本体31の裏面と、円筒部41とを連ねている。リブ51の車室外側を向く端面51aと円筒部41の先端面41cとは面一に形成されている。
【0023】
リブ52は、アッパートリム本体31の裏面と、円筒部41と、分岐片部42とを連ねている。リブ52の車室外側を向く端面52aは、リブ51の端面51a及び円筒部41の先端面41cとは、仮想の同一平面をなすように形成されている。リブ52における分岐片部42に連なる部分は、先端部が溶着ボス40Aの径方向に先細となるくさび状部52bとなっている。
【0024】
接合片部32dには、上記溶着ボス40Aの分岐片部42を挿通させるための貫通孔として、環状扇形をなす3つの弧状孔部60が形成されている。3つの弧状孔部60は、3つの分岐片部42にそれぞれ対応して周方向に等間隔に配置されている。
【0025】
弧状孔部60は、分岐片部42とくさび状部52bを挿通させることができるように、分岐片部42の外形よりひと回り大きく形成されている。弧状孔部60の孔壁における内側円弧面61及び外側円弧面62は、弧状孔部60に分岐片部42を挿通させたとき、平面視において(図3(B)参照)、分岐片部42の内面42a及び外面42bと同心円状に配置されるように形成されている。
【0026】
接合片部32dにおける3つの弧状孔部60に囲まれた部分が内側座面32xとなっており、後述するように溶着ボス40Aとの溶着による接合に供される。
【0027】
次に、上記構成の溶着ボス40Aと接合片部32とによる接合構造の形成について説明する。
図3に示すように、溶着ボス40Aの3つの分岐片部42とくさび状部52bを、接合片部32dの3つの弧状孔部60にそれぞれ挿通させ弧状孔部60から突出させる。このとき、接合片部32dを、円筒部41の先端面41c、及びリブ51,52の端面51a,52aに当接させることができる。
【0028】
続いて、図4(A)に示すように、分岐片部42の先端に溶着ホーン70を突き当て加熱する。加熱により、図4(B)に示すように、分岐片部42の先端部が溶融し、拡径された溶着頭43が形成される。溶着頭43は、接合片部32における弧状孔部60の周縁部に溶着され、内側座面32xにも溶着される。これにより、溶着ボス40Aと接合片部32とによる接合構造が形成される。
【0029】
溶着頭43において、溶着前の溶着ボス40Aの径方向外側だけでなく内側も内側座面32xへの溶着に供されている。すなわち、溶着頭43の周縁部だけでなく中心部も溶着に供されるため、接合強度を高めることができる。ひいては、従来技術に比べ、接合強度を得るために必要な、溶着ボスにおける溶融させる部分の長さを、短くすることができ、溶着時間を短縮できる。
【0030】
また、内側座面32xにより、溶着ボス40Aの円筒部41の内部基端側に溶融物が入り込むことを阻止できる。ひいては、アッパートリム本体31における溶着ボス40Aとは反対側の意匠面の外観に、悪影響が及ぶことを防止できる。
【0031】
さらに、アッパートリム本体31とトリムブラケット32とを、同一の合成樹脂材料で構成すれば、合成樹脂の相溶性により強固な溶着が可能となる。そのため、溶着ボスの溶融部分の長さを、より短くすることができる。
【0032】
上記実施形態によれば、接合強度を高めた、アッパートリム本体31とトリムブラケット32との接合構造を提供することができる。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態については、上記実施形態と異なる構成だけを説明することとし、同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
[第2実施形態]
図5図7は、本発明の第2実施形態を示す。この実施形態においては、接合片部32dの内側座面32xに、溶着に供される副ボスを設けている。
【0035】
図5図6に示すように、接合片部32の内側座面32xには、分岐片部42の突出方向に突出する副ボス32yが一体に設けられている。副ボス32yは円筒形状をなしており、副ボス32yの内周面32ya及び外周面32ybは、平面視において(図6(B)参照)、弧状孔部60の内側円弧面61及び外側円弧面62と同心円状に配置されている。
【0036】
副ボス32yの突出高さは、本実施形態では、接合片部32からの分岐片部42の突出高さと同じに設定されているが、異ならせてもよい。
【0037】
上記構成の副ボス32yを有する接合片部32による接合構造の形成では、接合片部32dの弧状孔部60から突出させた分岐片部42の先端と、副ボス32yの先端とに、図7(A)に示すように、溶着ホーン70を突き当て加熱する。加熱により、図7(B)に示すように、分岐片部42の先端部及び副ボス32yの先端部が溶融し、拡径された溶着頭43が形成され、内側座面32xを含む、弧状孔部60の周縁部に溶着される。
【0038】
上記実施形態によれば、溶着に供される副ボス32yを設けることにより、弧状孔部60の突出部分を短くできるとともに、溶着ホーン70に接する部分が多くなるため加熱効率が高められる。ひいては、溶着時間をより短縮できる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
溶着ホーン70は、加熱するものを用いたが、超音波振動を利用するものや、その他のものを用いてもよい。
分岐片部42の数は、3未満でもよく、3より多くてもよく、弧状孔部60は、分岐片部42の数に応じて形成すればよい。
上記第2実施形態では、副ボス32yを中空の円筒形状に形成したが、中実の円柱形状や、その他の中実の形状に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、合成樹脂製の2つの部材を溶着により接合する構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 ドアトリム
20 ロアトリム
30 アッパートリム
31 アッパートリム本体(第1部材)
32 トリムブラケット(第2部材)
32a 上壁部
32b 外壁部
32c 内壁部
32d 接合片部
32x 内側座面
32y 副ボス
32ya 内周面
32yb 外周面
40A,40B 溶着ボス
41 円筒部
41a 内周面
41b 外周面
41c 先端面
42 分岐片部
42a 内面
42b 外面
43 溶着頭
51,52 リブ
51a,52a 車室外側の端面
52b くさび状部
60 弧状孔部(貫通孔)
61 内側円弧面
63 外側円弧面
70 溶着ホーン
S ウエザーストリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8