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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026842
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】配線回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240220BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K1/11 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005800
(22)【出願日】2024-01-18
(62)【分割の表示】P 2019204943の分割
【原出願日】2019-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 理人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 周作
(57)【要約】
【課題】配線層における電気抵抗を低減できながら、カバー絶縁層の配線層からの剥離を抑制できる配線回路基板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】配線回路基板1は、ベース絶縁層2と、ベース絶縁層2の厚み方向一方側に配置される第1配線層7と、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に、第1配線層7を被覆するように配置されるカバー絶縁層3とを備える。第1配線層7は、ベース絶縁層の一方面に接触する第1配線部8と、第1配線部の厚み方向一方面に接触する第2配線部9とを備える。第2配線部9の厚み方向および伝送方向に直交する幅方向の両端面は、第1配線部8の両端面より、幅方向内側に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の厚み方向一方側に配置される配線層と、前記ベース絶縁層の厚み方向一方面に、前記配線層を被覆するように配置されるカバー絶縁層とを備え、
前記配線層は、
前記ベース絶縁層の前記一方面に接触する第1配線部と、
前記第1配線部の前記厚み方向一方面に接触する第2配線部とを備え、
前記第2配線部の前記厚み方向および伝送方向に直交する幅方向の両端面は、前記第1配線部の両端面より、前記幅方向内側に配置されていることを特徴とする、配線回路基板。
【請求項2】
前記第1配線部の厚みT1に対する前記第2配線部の厚みT2の比(T2/T1)が、0.7以上、3.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記配線層は、
前記ベース絶縁層の前記厚み方向一方面に接触する第3配線部と、
前記第3配線部と前記厚み方向一方側に間隔が隔てられる第4配線部と
をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記配線層は、
前記第1配線部および前記第2配線部を含む第1パターン部と、
前記第3配線部および前記第4配線部を含み、前記第1パターン部と独立する第2パターン部と
を備えることを特徴とする、請求項3に記載の配線回路基板。
【請求項5】
請求項4に記載の配線回路基板の製造方法であり、
前記ベース絶縁層を形成する工程と、
前記第1配線部と、前記第3配線部とを形成する工程と、
前記第2配線部と、前記第4配線部とを、同時に形成する工程と、
前記カバー絶縁層を形成する工程と
を備えることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベース絶縁層と、その上に形成され、断面矩形状の配線層と、配線層を被覆するカバー絶縁層とを備える配線回路基板が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-119599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、配線回路基板には、配線層に大電流を効率よく伝送させること求められる。
【0005】
そこで、配線層の幅を広くしたり、配線層の厚みを厚くしたりして、断面における面積を大きくして、配線層の電気抵抗を低減することが試案される。配線層の幅は、配線層の設置スペースが限定される場合には、広くできない場合があることを踏まえると、配線層の厚みを厚くする方法がとりわけ試案される。
【0006】
しかし、この場合には、カバー絶縁層が、配線の上端における幅方向両端から剥離し易いという不具合がある。
【0007】
本発明は、配線層における電気抵抗を低減できながら、カバー絶縁層の配線層からの剥離を抑制できる配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、ベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の厚み方向一方側に配置される配線層と、前記ベース絶縁層の厚み方向一方面に、前記配線層を被覆するように配置されるカバー絶縁層とを備え、前記配線層は、前記ベース絶縁層の前記一方面に接触する第1配線部と、前記第1配線部の前記厚み方向一方面に接触する第2配線部とを備え、前記第2配線部の前記厚み方向および伝送方向に直交する幅方向の両端面は、前記第1配線部の両端面より、前記幅方向内側に配置されている、配線回路基板を含む。
【0009】
この配線回路基板では、配線層は、第1配線部と、第2配線部とを備える。そのため、断面における面積を大きくして、配線層の電気抵抗を低減できる。
【0010】
また、第2配線部の幅方向の両端面は、第1配線部の両端面より、幅方向内側に配置されている。そのため、配線層の幅方向両端部のそれぞれでは、第1配線部と第2配線部とから、2つの段差を形成できる。そのため、カバー絶縁層は、これら段差を被覆するアンカー効果によって、カバー絶縁層の配線層からの剥離を抑制できる。
【0011】
本発明(2)は、前記第1配線部の厚みT1に対する前記第2配線部の厚みT2の比(T2/T1)が、0.7以上、3.0以下である、(1)に記載の配線回路基板を含む。
【0012】
この配線回路基板では、第1配線部の厚みT1に対する前記第2配線部の厚みT2の比(T2/T1)が0.7以上、3.0以下であるので、配線層の断面における面積を大きくできながら、アンカー効果を確実に奏して、カバー絶縁層の配線層からの剥離をより確実に抑制できる。
【0013】
本発明(3)は、前記配線層は、前記ベース絶縁層の前記厚み方向一方面に接触する第3配線部と、前記第3配線部と前記厚み方向一方側に間隔が隔てられる第4配線部とをさらに備える、(1)または(2)に記載の配線回路基板を含む。
【0014】
この配線回路基板では、配線層が、第3配線部と、第4配線部とを備えるので、第3配線部および第4配線部を、第1配線部および第2配線部と同じ用途または別の用途に用いることができる。そのため、配線層を広範囲の用途に用いることができる。
【0015】
本発明(4)は、前記配線層は、前記第1配線部および前記第2配線部を含む第1パターン部と、前記第3配線部および前記第4配線部を含み、前記第1パターン部と独立する第2パターン部とを備える、(3)に記載の配線回路基板を含む。
【0016】
この配線回路基板では、配線層が、第1パターンと、これに独立する第2パターンとを備えるので、これらパターンのそれぞれをそれぞれの用途に用いることができる。
【0017】
本発明(5)は、(4)に記載の配線回路基板の製造方法であり、前記ベース絶縁層を形成する工程と、前記第1配線部と、前記第3配線部とを形成する工程と、前記第2配線部と、前記第4配線部とを、同時に形成する工程と、前記カバー絶縁層を形成する工程とを備える、配線回路基板の製造方法を含む。
【0018】
この方法では、第1パターンに含まれる第2配線部と、第2パターンに含まれる第4配線部とを、同時に形成するので、互いに異なるパターンに含まれる第2配線部および第4配線部を、一度に簡便に形成できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の配線回路基板によれば、配線層の電気抵抗を低減できながら、カバー絶縁層の配線層からの剥離を抑制できる。
【0020】
本発明の配線回路基板の製造方法によれば、互いに異なるパターンに含まれる第2配線部および第4配線部を一度に簡便に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1A図1Bは、本発明の配線回路基板の一実施形態の拡大図であり、図1Aが、平面図、図1Bが、図1AのX-X線に沿う正断面図である。
図2図2A図2Bは、図1A図1Bに示す配線回路基板の側断面図であり、図2Aが、図1A図1BのY-Y線に沿う断面図、図2Bが、図1A図1BのZ-Z線に沿う断面図である。
図3図3A図3Eは、図1Bに示す配線回路基板の製造工程図であり、図3Aが、ベース絶縁層を準備する工程、図3Bが、第1配線部および第3配線部を形成する工程、図3Cが、第1カバー絶縁層を形成する工程、図3Dが、第2配線部および第4配線部を形成する工程、図3Eが、第2カバー絶縁層を形成する工程を示す。
図4図4は、図1Bに示す配線回路基板の変形例(第1パターン部が第2カバー絶縁層を有する態様)の断面図である。
図5図5は、図1Bに示す配線回路基板の変形例(第2カバー絶縁層が第2配線部の側面の一部に接触する態様)の断面図である。
図6図6は、図1Bに示す配線回路基板の変形例(第2カバー絶縁層が第1配線部の厚み方向一方面の一部に接触する態様)の断面図である。
図7図7は、図1Bに示す配線回路基板の変形例(庇部が第2配線部に連続する態様)の断面図である。
図8図8A図8Bは、図1A図1Bに示す配線回路基板の変形例(第2パターン部を備えず、第1パターン部を備える態様)であり、図8Aが、平面図、図8Bが、図8AのZ-Z線に沿う側断面図である。
図9図9A図9Eは、別の配線回路基板の製造方法の工程図配線回路基板の断面図であり、図9Aが、第1配線部を形成する工程、図9Bが、第2配線部および第3配線部を形成する工程、図9Cが、第1カバー絶縁層を形成する工程、図9Dが、第4配線部を形成する工程、図9Eが、第2カバー絶縁層を形成する工程を示す。
図10図10は、比較例1の配線回路基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<一実施形態>
本発明の配線回路基板の一実施形態を図1A図2Bを参照して説明する。なお、図1A中、カバー絶縁層3(後述)は、配線層6(後述)の相対位置を明確に示すために、省略している。
【0023】
この配線回路基板1は、所定厚みを有し、先後方向(図1Aにおける紙面上下方向、図1Bにおける紙面奥行き方向)に長く延びる平帯形状を有する。配線回路基板1は、ベース絶縁層2と、その厚み方向一方側に配置される配線層6と、これを被覆するカバー絶縁層3とを備える。
【0024】
ベース絶縁層2は、平面視において、配線回路基板1と同一の外形形状を有する。ベース絶縁層2の材料としては、例えば、ポリイミドなどの絶縁樹脂が挙げられる。ベース絶縁層2の厚みは、例えば、5μm以上であり、また、例えば、30μm以下である。
【0025】
配線層6は、第1配線層7と、第2配線層10と、第3配線層12とを備える。配線層6の材料としては、例えば、銅などの導体が挙げられる。配線層6は、先後方向に延びる。すなわち、配線層6が延びる方向が、伝送方向であり、先後方向でもある。配線層6の形状、配置および寸法は、後で詳述する。
【0026】
カバー絶縁層3は、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に配置されている。カバー絶縁層3は、配線層6を被覆する。カバー絶縁層3の材料としては、例えば、ポリイミドなどの絶縁樹脂が挙げられる。
【0027】
また、配線回路基板1は、第1パターン部4と、第2パターン部5とを備える。第1パターン部4は、配線回路基板1における幅方向(厚み方向および先後方向に直交する方向)一方側部であり、第2パターン部5は、配線回路基板1における幅方向他方側部である。第1パターン部4と第2パターン部5とは、幅方向に互いに間隔が隔てられる。第1パターン部4および第2パターン部5の間には、マージン部19が設けられている。マージン部19は、カバー絶縁層3および配線層6(後述)を含まず、ベース絶縁層2のみを含む。
【0028】
図1Bの左側図および図2Aに示すように、第1パターン部4は、ベース絶縁層2と、第1配線層7と、カバー絶縁層3とを備える。
【0029】
第1配線層7は、例えば、電源電流(例えば、10mA以上、さらには、100mA以上の大電流)を伝送するための電源配線である。第1配線層7は、第1パターンの一例である。
【0030】
第1配線層7は、先後方向に沿って延びる平面視略矩形状を有する。または、第1配線層7は、第1配線層7の伝送方向および厚み方向に直交する断面において、略凸字(逆T字)形状を有する。
【0031】
図1Bに示すように、第1配線層7は、第1配線部8と、それより幅狭の第2配線部9とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。好ましくは、第1配線層7は、第1配線部8と、第2配線部9とのみを備える。
【0032】
第1配線部8は、第1配線層7における厚み方向他方部である。第1配線部8は、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に配置されている。第1配線部8は、幅方向に長い略矩形状を有する。第1配線部8の厚み方向他方面の全ては、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に接触している。
【0033】
第2配線部9は、第1配線層7における厚み方向一方部である。第2配線部9は、第1配線部8の厚み方向一方面の幅方向中間部(両端部の間の部)に配置されている。第2配線部9は、第1配線層7の伝送方向および厚み方向に直交する断面において、略矩形状を有する。第2配線部9の厚み方向他方面の全ては、第1配線部8における厚み方向一方面の幅方向両端部に接触せず、厚み方向一方面の幅方向中間部に接触する。
【0034】
これにより、第1配線層7では、第2配線部9の幅方向の両端面が、第1配線部8の両端面より、幅方向内側に配置される。
【0035】
第1配線層7の幅方向一端部では、第1配線部8の側端面および厚み方向一方面と、第2配線部9の側端面および厚み方向一方面とからなる2つの一方側段差17が形成される。また、第1配線層7の幅方向他端部では、第1配線部8の側端面および厚み方向一方面と、第2配線部9の側端面および厚み方向一方面とからなる2つの他方側段差18が形成される。
【0036】
上記した第1配線部8および第2配線部9は、第1パターンを構成する。
【0037】
第1配線部8の厚みT1は、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、40μm以下、好ましくは、25μm以下である。第2配線部9の厚みT2は、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。第1配線部8の厚みT1に対する第2配線部9の厚みT2の比(T2/T1)は、例えば、0.7以上、好ましくは、0.9以上、より好ましくは、1.0以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.0以下、より好ましくは、1.5以下である。第1配線部8の厚みT1は、第1配線部8の厚み方向一方面と、ベース絶縁層2の厚み方向一方面との間の長さである。第2配線部9の厚みT2は、第2配線部9の厚み方向一方面と、第1配線部8の厚み方向一方面との間の長さである。比が上記した範囲にあれば、第1配線層7の断面における面積を大きくできながら、カバー絶縁層3(第2カバー絶縁層16)の第1配線層7に対するアンカー効果を確実に奏して、カバー絶縁層3の第1配線層7からの剥離をより確実に抑制できる。
【0038】
第1配線部8の幅は、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、250μm以下である。第1配線部8の幅は、第1配線部8の幅方向の両端面間の距離である。第1配線部8の幅が上記した上限以下であれば、狭いスペースでも第1配線層7を配置できる。第2配線部9の幅は、例えば、5μm以上、好ましくは、15μm以上、より好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、450μm以下、好ましくは、200μm以下である。第2配線部9の幅は、第2配線部9の幅方向の両端面間の距離である。第1配線部8の幅に対する第2配線部9の幅の比は、例えば、0.8以下、好ましくは、0.6以下であり、また、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上である。
【0039】
第1配線層7の厚みは、第1配線部8の厚みT1および第2配線部9の厚みT2の合計である。第1配線層7の幅は、第1配線部8の幅と同一である。
【0040】
なお、第1配線層7の先後方向両端には、図示しない端子が接続される。端子は、電極と電気的に接続される。電極は、第1配線層7に電源電流を入力するための電源装置や、第1配線層7から電源電流を取り出すための駆動装置に備えられる。
【0041】
図1Bおよび図2Aに示すように、第1パターン部4において、カバー絶縁層3は、第2カバー絶縁層16を備える。具体的には、この実施形態では、カバー絶縁層3は、第2カバー絶縁層16のみを備える。
【0042】
第2カバー絶縁層16は、図1Bの左側図に示すように、第1配線層7を被覆する。具体的には、第2カバー絶縁層16は、ベース絶縁層2の厚み方向一方面における第1配線部8の外側近傍部分と、第1配線部8の幅方向両端面および厚み方向一方面と、第2配線部9の幅方向両端面および厚み方向一方面とに接触する。より具体的には、第2カバー絶縁層16は、第1配線層7の2つの一方側段差17および2つの他方側段差18に接触(密着)する。第2カバー絶縁層16は、第1配線層7の幅方向両端部のそれぞれに固着する。
【0043】
第2カバー絶縁層16の厚み方向一方面と、第2配線部9の厚み方向一方面との長さは、第2カバー絶縁層16の厚みに相当し、例えば、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下である。
【0044】
図1Bの右側図および図2Bに示すように、第2パターン部5は、ベース絶縁層2と、第2配線層10と、第1カバー絶縁層15と、第3配線層12と、第2カバー絶縁層16とを備える。
【0045】
第2パターン部5におけるベース絶縁層2は、第1パターン部4におけるベース絶縁層2と同一層である。
【0046】
第2配線層10は、例えば、電気信号(例えば、10mA未満、さらには、1mA未満の微弱電流)を伝送するための信号配線である。第2配線層10は、略矩形状の第3配線部13を備える。好ましくは、第2配線層10は、第3配線部13のみを備える。
【0047】
第3配線部13は、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に配置されている。第3配線部13の厚み方向他方面の全ては、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に接触している。第3配線部13の厚みT3は、例えば、第1配線部8の厚みT1と同一である。第3配線部13の幅は、特に限定されず、この実施形態では、例えば、第2配線部9の幅と同一である。そうすると、この実施形態では、第3配線部13の幅は、第1配線部8の幅より、狭い。
【0048】
第1カバー絶縁層15は、第1配線層7の伝送方向および厚み方向に直交する断面において、第3配線部13を被覆する。具体的には、第1カバー絶縁層15は、ベース絶縁層2の厚み方向一方面における第3配線部13の外側近傍部分と、第3配線部13の幅方向両端面および厚み方向一方面とに接触する。第1カバー絶縁層15の厚み方向一方面と、第3配線部13の厚み方向一方面との長さは、第1カバー絶縁層15の厚みに相当し、例えば、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下である。
【0049】
第3配線層12は、例えば、電気信号(例えば、10mA未満、さらには、1mA未満の微弱電流)を伝送するための信号配線である。第3配線層12は、略矩形状の第4配線部14を備える。好ましくは、第3配線層12は、第4配線部14のみを備える。
【0050】
第4配線部14は、第1カバー絶縁層15の厚み方向一方面に配置されている。第4配線部14の厚み方向他方面の全ては、第1カバー絶縁層15の厚み方向一方面に接触している。厚み方向に投影したときに、第4配線部14は、第3配線部13に重複する。具体的には、第4配線部14の平面視形状は、第3配線部13の平面視形状に合致する。第4配線部14の厚みT4は、例えば、第3配線部13の厚みT3と同一である。第4配線部14の幅は、第3配線部13の幅と同一である。
【0051】
上記した第2配線層10および第3配線層12は、第2パターンの一例である。第3配線部13および第4配線部14は、第2パターンを構成する。
【0052】
第2カバー絶縁層16は、第4配線部14を被覆する。具体的には、第2カバー絶縁層16は、第1カバー絶縁層15の厚み方向一方面における第4配線部14の外側近傍部分と、第4配線部14の幅方向両端面および厚み方向一方面とに接触する。第2カバー絶縁層16の厚み方向一方面と、第4配線部14の厚み方向一方面との長さは、第2カバー絶縁層16の厚みに相当し、例えば、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下である。
【0053】
上記した第1カバー絶縁層15および第2カバー絶縁層16は、カバー絶縁層3に備えられる。好ましくは、第2パターン部5におけるカバー絶縁層3は、第1カバー絶縁層15および第2カバー絶縁層16のみを備える。
【0054】
次に、この配線回路基板1の製造方法を、図3A図3Eを参照して説明する。配線回路基板1の製造方法は、ベース絶縁層2を準備する第1工程、第1配線部8および第3配線部13を形成する第2工程、第1カバー絶縁層15を形成する第3工程、第2配線部9および第4配線部14を形成する第4工程、第2カバー絶縁層16を形成する第5工程を含む。第1工程~第5工程は、順に実施される。
【0055】
図3Aに示すように、第1工程では、例えば、感光性の絶縁樹脂組成物をフォトリソグラフィして、ベース絶縁層2を形成する。
【0056】
図3Bに示すように、第2工程では、第1配線部8および第3配線部13を、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法などのパターン形成法によって、同時に形成する。第2パターン部5では、第3配線部13を備える第2配線層10(信号配線)が形成される。
【0057】
図3Cに示すように、第3工程では、例えば、感光性の絶縁樹脂組成物を、第1配線部8および第3配線部13を被覆するように、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に塗布し、その後、フォトリソグラフィする。これによって、第2パターン部5に、第3配線部13を被覆する第1カバー絶縁層15を形成する。
【0058】
図3Dに示すように、第4工程では、第2配線部9および第4配線部14を、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法などのパターン形成法によって、同時に形成する。これによって、第1パターン部4では、第1配線部8および第2配線部9を備える第1配線層7(電源配線)が形成される。また、第2パターン部5では、第4配線部14を備える第3配線層12(信号配線)が形成される。
【0059】
図3Eに示すように、第5工程では、例えば、感光性の絶縁樹脂組成物を、第2配線部9および第4配線部14を被覆するように、ベース絶縁層2および第1カバー絶縁層15の厚み方向一方面に塗布し、その後、フォトリソグラフィする。これによって、第1パターン部4および第2パターン部5の両方に、第2カバー絶縁層16を形成する。これによって、第1パターン部4では、第2カバー絶縁層16を備えるカバー絶縁層3が形成される。第2パターン部5では、第1カバー絶縁層15および第2カバー絶縁層16を備えるカバー絶縁層3が形成される。
【0060】
(一実施形態の作用効果)
そして、この配線回路基板1では、配線層6の第1配線層7は、第1配線部8と、第2配線部9とを備える。そのため、断面における面積を大きくして、第1配線層7の電気抵抗を低減できる。
【0061】
また、第2配線部9の幅方向の両端面は、第1配線部8の両端面より、幅方向内側に配置されている。そのため、第1配線層7の幅方向一端部では、第1配線部8と第2配線部9とから、2つの一方側段差17を形成できる。第1配線層7の幅方向他端部では、第1配線部8と第2配線部9とから、2つの2つの他方側段差18を形成できる。そのため、カバー絶縁層3は、これらの段差を被覆するアンカー効果によって、カバー絶縁層3の第1配線層7からの剥離を抑制できる。
【0062】
一方、図10に示す比較例1のように、第2配線部9の幅方向の両端面が、第1配線部8の両端面と同一位置にあって、一方側段差17および他方側段差18のそれぞれが1つであれば、カバー絶縁層3の第1配線層7に対するアンカー効果が顕著に低減する。そのため、カバー絶縁層3の第1配線層7からの剥離を十分に抑制できない。
【0063】
また、一実施形態の配線回路基板1では、第1配線部8の厚みT1に対する第2配線部9の厚みT2の比(T2/T1)が0.9以上、2.0以下であれば、第1配線層7の断面における面積を大きくできながら、アンカー効果を確実に奏して、カバー絶縁層3の第1配線層7からの剥離をより確実に抑制できる。
【0064】
さらに、この配線回路基板1では、配線層6の第2配線層10および第3配線層12が、第3配線部13と、第4配線部14とをそれぞれ備える。そのため、第3配線部13を含む第2配線層10と、第4配線部14を含む第3配線層12とを、第1配線部8および第2配線部9とは別の用途、具体的には、信号配線に用いることができる。そのため、配線層6を広範囲の用途に用いることができる。
【0065】
さらにまた、この配線回路基板1では、配線層6が、第1配線層7(第1パターン)と、これに独立する第2配線層10および第3配線層12(第2パターン)とを備えるので、例えば、第1配線層7を電源配線として用い、第2配線層10および第3配線層12を信号配線として用いることができる。
【0066】
また、この方法では、図3Dに示すように、第1配線層7に含まれる第2配線部9と、第3配線層12に含まれる第4配線部14とを、同時に形成するので、互いに異なるパターンに含まれる第2配線部9および第4配線部14を一度に簡便に形成できる。
【0067】
(変形例)
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0068】
図4図7に示すように、マージン部19が、カバー絶縁層3を含んでもよい。これらの変形例では、マージン部19におけるカバー絶縁層3は、第1カバー絶縁層15である。マージン部19における第1カバー絶縁層15は、第1パターン部4の第1カバー絶縁層15と、第2パターン部5の第1カバー絶縁層15とを幅方向に連結する。
【0069】
図4に示すように、第1パターン部4において、カバー絶縁層3は、第1カバー絶縁層15をさらに含む。つまり、第1パターン部4において、カバー絶縁層3は、第1カバー絶縁層15および第2カバー絶縁層16を備える。
【0070】
第1カバー絶縁層15は、ベース絶縁層2におけるベース絶縁層2の厚み方向一方面における第1配線部8の外側近傍部分と、第1配線部8の幅方向両端面とに接触する。
【0071】
第2カバー絶縁層16は、第1配線部8の厚み方向一方面に接触する。
【0072】
図5に示すように、第2カバー絶縁層16は、第2配線部9の幅方向両端面の厚み方向一方側部分に接触する。一方、第1カバー絶縁層15は、第2配線部9の幅方向両端面の厚み方向他方側部分に接触する。
【0073】
図6に示すように、第2カバー絶縁層16は、第2配線部9の幅方向両端面の全てと、第1配線部8の厚み方向一方面における第2配線部9の外側近傍部分とに接触する。一方、第1カバー絶縁層15は、第2配線部9の第1配線部8の厚み方向一方面における幅方向両端部に接触する。
【0074】
図7に示すように、第2配線部9の幅方向両端面の厚み方向一方側部分には、庇部20が連続してもよい。庇部20は、第2配線部9の幅方向両端面の厚み方向一方側部分から幅方向両外側に向かって突出する。幅方向一方側における庇部20の端面と、幅方向他方側における庇部20の端面との間の長さは、例えば、第1配線部8の幅と同一である。この変形例において、庇部20と、第1配線部8の幅方向端部との間に、溝部23が形成される。なお、第2配線部9の幅方向両端面の厚み方向他方側部分は、第1配線部8の幅方向両端面より幅方向に内側に配置されており、溝部23を、庇部20および第1配線部8の両端部とともに形成する。溝部23には、第1カバー絶縁層15が充填される。そのため、カバー絶縁層3は、カバー絶縁層3が溝部23に基づくアンカー効果を奏することができる。
【0075】
図8A図8Bに示すように、配線回路基板1は、第2パターン部5を備えず、第1パターン部4を備える。
【0076】
第1パターン部4は、先側領域21と、後側領域22と、後側に向かって順に有する。
【0077】
先側領域21の正断面は、図8A図8BのX-X線に沿う切断面であって、図1Bの左側図と同様である。図1Bの左側図に示すように、第1パターン部4は、先側領域21において、ベース絶縁層2と、第1配線部8と、第2配線部9と、第2カバー絶縁層16とを備える。
【0078】
後側領域22の正断面は、図8A図8BのY-Y線に沿う切断面であって、図1Bの右側図と同様である。図1Bの右側図に示すように、第1パターン部4は、後側領域22において、ベース絶縁層2と、第3配線部13と、第1カバー絶縁層15と、第4配線部14と、第2カバー絶縁層16とを備える。
【0079】
図8Bに示すように、第1パターン部4は、第1配線部8および第3配線部13を含む1層の第4配線層24と、第2配線部9および第4配線部14を含む第5配線層25とを備える。第4配線層24と第5配線層25とは、先側領域21において第1配線部8および第2配線部9が厚み方向に互いに接触することから、電気的に接続されている。
【0080】
この配線回路基板1でも、図1Bの左側図に示すように、先側領域21において、上記した2つの一方側段差17および2つの他方側段差18によって、カバー絶縁層3が第1配線部8および第2配線部9からの剥離することを抑制できる。
【0081】
図3Eの仮想線で示すように、配線回路基板1は、金属支持層29をさらに備えることができる。金属支持層29は、ベース絶縁層2の厚み方向一方面に接触する。
【0082】
また、本発明の配線回路基板の製造方法の別の変形例を、図9A図9Eを参照して説明する。
【0083】
一実施形態の製造方法では、図3Dに示すように、第2配線部9を、第4配線部14と同時に形成するが、例えば、この変形例であって、図9Bに示すように、第2配線部9を、第3配線部13と同時に形成する。
【0084】
この変形例では、まず、図9Aに示すように、ベース絶縁層2を準備する。続いて、第1配線部8のみを形成する。
【0085】
次いで、図9Bに示すように、第2配線部9および第3配線部13を同時に形成する。
【0086】
次いで、図9Cに示すように、第1カバー絶縁層15を、第2配線部9および第3配線部13を被覆するように、形成する。
【0087】
次いで、図9Dに示すように、第4配線部14のみを形成する。
【0088】
その後、図9Eに示すように、第2カバー絶縁層16を、第4配線部14のみを被覆するように、形成する。
【0089】
この方法で得られる配線回路基板1の第1パターン部4では、カバー絶縁層3は、第1カバー絶縁層15を備える。
【0090】
この変形例の製造方法と一実施形態の製造方法とのうち、一実施形態の製造方法が好適である。
【0091】
一実施形態の製造方法であれば、図3Bに示すように、第1配線部8および第3配線部13を一度に形成する。また、図3Dに示すように、第2配線部9および第4配線部14を一度に形成する。従って、2つの工程(図3B図3D)で、配線層6を形成できる。
【0092】
対して、上記の変形例であれば、図9Aの工程で、第1配線部8を形成し、図9Bの工程で、第2配線部9を形成し、図9Dの工程で、第4配線部14を形成する。従って、3つの工程、つまり、一実施形態より多い工数で、配線層6を形成する。
【符号の説明】
【0093】
1 配線回路基板
2 ベース絶縁層
3 カバー絶縁層
4 第1パターン部
5 第2パターン部
6 配線層
7 第1配線層
8 第1配線部
9 第2配線部
10 第2配線層
12 第3配線層
13 第3配線部
14 第4配線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース絶縁層と、
厚み方向において前記ベース絶縁層の一方側に配置される配線層であって、前記厚み方向において前記ベース絶縁層の一方面に接触する第1配線部と、前記厚み方向において前記第1配線部の一方面に接触する第2配線部とを備え、前記厚み方向および伝送方向に直交する幅方向における前記第2配線部の両端面が、前記幅方向において、前記第1配線部の両端面より内側に配置される配線層と、
前記厚み方向において前記ベース絶縁層の前記一方面と接触し、かつ、前記幅方向において前記第1配線部の前記両端面と接触する第1カバー絶縁層と、
前記厚み方向において、前記第1カバー絶縁層の一方面および前記第2配線部の一方面と接触する第2カバー絶縁層と
を備えることを特徴とする、配線回路基板。
【請求項2】
前記第1配線部の厚みT1に対する前記第2配線部の厚みT2の比(T2/T1)が、0.7以上、3.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記配線層は、
前記ベース絶縁層の前記厚み方向一方面に接触する第3配線部と、
前記第3配線部と前記厚み方向一方側に間隔が隔てられる第4配線部と
をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記配線層は、
前記第1配線部および前記第2配線部を含む第1パターン部と、
前記第3配線部および前記第4配線部を含み、前記第1パターン部と独立する第2パターン部と
を備えることを特徴とする、請求項3に記載の配線回路基板。
【請求項5】
請求項4に記載の配線回路基板の製造方法であり、
前記ベース絶縁層を形成する工程と、
前記第1配線部と、前記第3配線部とを形成する工程と、
前記第1カバー絶縁層を形成する工程と
前記第2配線部と、前記第4配線部とを、同時に形成する工程と、
前記第2カバー絶縁層を形成する工程と
を備えることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【請求項6】
配線回路基板の製造方法であって、
前記配線回路基板は、
ベース絶縁層と、
厚み方向において前記ベース絶縁層の一方側に配置される配線層であり、前記厚み方向において前記ベース絶縁層の一方面に接触する第1配線部と、前記厚み方向において前記第1配線部の一方面に接触する第2配線部と、前記第1配線部から独立し、前記厚み方向において前記ベース絶縁層の前記一方面に接触する第3配線部と、前記厚み方向において前記第3配線部の一方側に間隔を隔てて配置される第4配線部とを備え、前記厚み方向および伝送方向に直交する幅方向における前記第2配線部の両端面が、前記幅方向において、前記第1配線部の両端面より内側に配置される配線層と、
前記第1配線部、前記第2配線部、および、前記第3配線部を被覆する第1カバー絶縁層と、
前記第4配線部を被覆する第2カバー絶縁層と
を備え、
前記ベース絶縁層を形成する工程と、
前記第1配線部を形成する工程と、
前記第2配線部と、前記第3配線部とを、同時に形成する工程と、
前記第1カバー絶縁層を形成する工程と
前記第4配線部を形成する工程と、
前記第2カバー絶縁層を形成する工程と
を備えることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。