(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026877
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】部品装着機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H05K13/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006685
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2020065565の分割
【原出願日】2020-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 寛之
(57)【要約】
【課題】リール支持部材の着脱が容易なリール保持装置が着脱可能に設けられた部品装着機を提供する。
【解決手段】複数の部品を収容したキャリアテープを繰り出して部品を供給するフィーダが装備されるフィーダパレットと一体になり、キャリアテープが巻回されたリールを回転可能に保持するリール保持装置が、着脱可能に設けられた部品装着機であって、リール保持装置は、少なくとも左右一対の側板と、左右一対の側板を結合する取り付け軸とで構成され、側板に平行して立てて取り付けられる板状部材の二つの側面にピン部材を用いてリールを支持するリール支持部材に、取り付け軸に取り付ける取り付け溝が設けられ、取り付け軸と取り付け溝によって、リール保持装置に対してリール支持部材が着脱可能に取り付けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を収容したキャリアテープを繰り出して前記部品を供給するフィーダが装備されるフィーダパレットと一体になり、前記キャリアテープが巻回されたリールを回転可能に保持するリール保持装置が、着脱可能に設けられた部品装着機であって、
前記リール保持装置は、少なくとも左右一対の側板と、左右一対の前記側板を結合する取り付け軸とで構成され、
前記側板に平行して立てて取り付けられる板状部材の二つの側面にピン部材を用いて前記リールを支持するリール支持部材に、前記取り付け軸に取り付ける取り付け溝が設けられ、
前記取り付け軸と前記取り付け溝によって、前記リール保持装置に対して前記リール支持部材が着脱可能に取り付けられる、
部品装着機。
【請求項2】
複数の部品を収容したキャリアテープを繰り出して前記部品を供給するフィーダが装備されるフィーダパレットと一体になり、前記キャリアテープが巻回されたリールを回転可能に保持するリール保持装置が、着脱可能に設けられた部品装着機であって、
前記リール保持装置は、
左右一対の側板と、
左右一対の前記側板を結合する取り付け軸と、
前記側板に平行して立てて取り付けられる板状部材、前記板状部材の二つの側面にそれぞれ設けられて前記リールを支持する複数のピン部材、および前記板状部材に設けられ前記取り付け軸に着脱可能に取り付けられる取り付け溝を有するリール支持部材と、を備える、
部品装着機。
【請求項3】
前記取り付け軸は、左右一対の前記側板の前側を結合する前側取り付け軸、および左右一対の前記側板の後側を結合する後側取り付け軸であり、
前記取り付け溝は、前記前側取り付け軸に取り付ける前側取り付け溝、および前記後側取り付け軸に取り付ける後側取り付け溝である、
請求項1または2に記載の部品装着機。
【請求項4】
前記リール支持部材は、まず前記前側取り付け溝が前記前側取り付け軸に取り付けられ、次に前記後側取り付け溝が前記後側取り付け軸に取り付けられる、請求項3に記載の部品装着機。
【請求項5】
前記リール支持部材は、前記フィーダパレットから前記フィーダが引き出される水平方向の引き出し経路よりも下側に配置される、請求項1-4のいずれか一項に記載の部品装着機。
【請求項6】
前記リール保持装置は、前記フィーダパレットおよび前記リール保持装置をまとめて前記部品装着機から引き抜く把手を備える、請求項1-5のいずれか一項に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品装着機に装備されるフィーダと組み合わせて用いられるリール保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。多くの部品装着機は、キャリアテープを繰り出して部品を供給するフィーダを装備している。さらに、キャリアテープが巻回されたリールを回転可能に保持するリール保持装置が併せて用いられる。リール保持装置には、フィーダに一体的に組み込まれる一体型、およびフィーダと別体の別置型がある。また、リールを回転可能に保持する方式として、リールの中心孔をピン部材で支持する中心支持方式、およびリールの外周を複数のローラ部材で支持する外周支持方式がある。外周支持方式では、キャリアテープが引き出されるときにリールが浮揚しないように配慮する必要がある。この種のリール保持装置の一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、取替え位置と動作位置との間に延びるスライド溝が形成されたリールホルダが記載されている。このリールホルダでは、リールの中心孔を支持する中心軸がスライド溝に沿って取替え位置と動作位置との間をスライド移動する。これによれば、中心軸とともにリールを移動させることができ、リールの取り替え作業が簡単である、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の構成に限らず、リール径の大小に応じてリールの保持位置(動作位置)を変更したいというニーズがある。例えば、部品装着機の後部にフィーダが着脱可能に装備され、さらにその後方下部にリール保持装置が配置される構成では、フィーダを後方に引き出すときにリールが邪魔になりがちである。それでも、小径リールについては、フィーダの引き出し経路より下側の邪魔にならない位置に保持することが可能である。一方、大径リールについては、直径が大きい分だけ小径リールよりも高い位置に保持することになる。また、リールの交換作業を容易化する目的や、キャリアテープの引き出し経路を調整する目的で、リール径に応じてリールの保持位置を変更することも考えられる。
【0006】
それゆえ、本明細書では、リール径に応じてリールの保持位置を変更することが可能なリール保持装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、部品装着機に装備されかつ複数の部品を収容したキャリアテープを繰り出して前記部品を供給するフィーダと組み合わせて用いられ、前記キャリアテープが巻回されたリールを回転可能に保持するリール保持装置であって、パレットと、前記パレットに立てて設けられる薄板状の仕切り部材と、前記リールの直径の違いに応じて前記仕切り部材に位置変更可能に設けられるとともに、前記リールの中心孔を支持し、または、前記リールの外周に接触して前記リールの浮揚を規制するピン部材と、を備えるリール保持装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示するリール保持装置において、リールの中心孔を支持し、またはリールの外周に接触するピン部材は、リールの直径の違いに応じて仕切り部材に位置変更可能に設けられる。したがって、リール径に応じてリールの保持位置を変更することが可能となる。リールの保持位置を変更する効果として、例えば、フィーダの交換作業の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のリール保持装置をフィーダとともに示す側面図である。
【
図2】仕切り板の左右に小径リールを保持したリール保持装置をフィーダとともに示す平面図である。
【
図3】移動溝を有する仕切り板を示す側面図である。
【
図4】ピン部材の構造を模式的に示す部分拡大図である。
【
図5】小径用取り付け位置のピン部材が小径リールの中心孔を支持した状態を示す側面図である。
【
図6】小径リールを交換する要領を説明する側面図である。
【
図7】大径用取り付け位置のピン部材が大径リールの中心孔を支持した状態を示す側面図である。
【
図8】仕切り板の左右に大径リールを保持したリール保持装置をフィーダとともに示す平面図である。
【
図9】リールを外周支持部材で支持して、ピン部材が退避位置に退避した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.フィーダ92の構成および実施形態のリール保持装置1との関係
まず、フィーダ92の構成および実施形態のリール保持装置1との関係について、
図1および
図2を参考にして説明する。
図1および
図2の左上の矢印に示されるように、部品装着機91、フィーダ92、およびリール保持装置1に共通する上下前後左右の方向を定める。実施形態のリール保持装置1は、部品装着機91に装備されるフィーダ92と組み合わせて用いられる。
【0011】
図1および
図2に示されるように、部品装着機91の後部の概ね中間高さに、フィーダパレット93が着脱可能に設けられる。フィーダパレット93は、略矩形の平面部931、および平面部931の前側から起立する直立部935などで構成される。平面部931は、前後方向に延びる溝形状に形成されて幅方向に並ぶ複数のスロット932を有する。直立部935の後面の各スロット932に対応する位置に、位置決め部936およびコネクタ937が設けられる。
【0012】
フィーダ92は、幅方向に薄く形成されており、その前面に位置決め部926およびコネクタ927が設けられる。フィーダ92は、スロット932の後方から前方の直立部935に向かい、水平方向の引き出し経路94に沿って挿入され、装備される。このとき、位置決め部(926、936)同士の係合により、フィーダ92が位置決めされる。また、コネクタ(927、937)同士の嵌合により、フィーダ92に電源が供給され、さらに通信の接続が行われる。
図2は、一つ置きのスロット932に3台のフィーダ92が装備された状態を例示している。稼働時には、さらに多数のフィーダ92がフィーダパレット93に装備される。また、フィーダ92は、引き出し経路94に沿って後方に引き出され、取り外される。
【0013】
フィーダ92は、後側の中間高さ付近にテープ挿入口921を有し、前側の上部に部品供給位置922を有する。フィーダ92は、図略のテープ送り機構を有し、テープ挿入口921に挿入されたキャリアテープCTを部品供給位置922に向けて繰り出す。キャリアテープCTは、部品供給位置922まで繰り出される途中でカバーテープが剥離され、部品の採取が可能な状態になる。
【0014】
リール保持装置1は、
図1に示されるように、フィーダ92の後方下部に配置される。詳述すると、フィーダパレット93の後部の左右端に、それぞれアーム部材95が設けられる。アーム部材95は、起立した板形状に形成されており、初めは水平後方に延び、続いて後下方向へ傾斜して延び、最後は水平後方に延びている。左右一対のアーム部材95の傾斜部分に、外方に張り出す前側取り付け座951が設けられる。左右一対のアーム部材95の後側の水平部分に、外方に張り出す後側取り付け座952が設けられる。リール保持装置1は、前側取り付け座951および後側取り付け座952の上に構成される。リール保持装置1は、複数の部品を収容したキャリアテープCTが巻回されたリール(RS)を回転可能に保持し、キャリアテープCTをフィーダ92に送給する。
【0015】
2.実施形態のリール保持装置1の構成および機能
次に、実施形態のリール保持装置1の構成および機能について、
図1~
図4を参考にして説明する。リール保持装置1は、直径の異なる複数種類のリールを保持することができる。例えば、直径7インチの小径リールRSや、直径13インチまたは直径15インチの大径リールRL(
図7参照)などがあり、リールの種類はこれらに限定されない。
図1には、2個の小径リールRSが例示され、
図2には、6個の小径リールRSが例示されている。各リール(RS、RL)の中心には、リール径に依存しない共通の孔径DHの中心孔CHが形成されている(
図4参照)。
【0016】
リール保持装置1が保持可能なリール(RS、RL)の個数は、フィーダパレット93に装備可能なフィーダ92の最大数に等しい。本実施形態において、リール(RS、RL)の幅方向の配置ピッチをフィーダ92の配置ピッチまで縮めることが難しい。このため、リール保持装置1の幅寸法は、フィーダパレット93の幅寸法よりも若干大きくなっている。
【0017】
リール保持装置1は、パレット2、仕切り部材3、およびピン部材5などで構成される。パレット2は、底板21、左右一対の側板23、前側取り付け軸24、および後側取り付け軸25などで構成される。底板21は、左右方向に水平に延在する板状の部材であり、左右の後側取り付け座952に架け渡されて固定される。底板21の後側の左右方向の中央に、把手22が設けられている。作業者は、把手22を後方に引くことにより、フィーダパレット93、複数のフィーダ92、およびリール保持装置1をまとめて部品装着機91から交換用台車(図略)に載せ替えることができる。
【0018】
側板23は、概ね直角三角形の板材である。側板23の直角を挟む第1辺は前側下部から後部に延在し、直角を挟む第2辺は前側下部から前側上部に延在し、斜辺は前側上部から後部に延在している。左右一対の側板23は、向かい合う内側に屈折する底面231を有する。この底面231は、1個のビス232で前側取り付け座951に固定されるとともに、2個のビス233で後側取り付け座952に固定される。これにより、左右一対の側板23は、
図2に示されるように、前側取り付け座951および後側取り付け座952の外方に張り出した端縁に垂直に固定される。
【0019】
前側取り付け軸24は、左右一対の側板23の前側上部を結合する。後側取り付け軸25は、左右一対の側板23の後部を結合する。前側取り付け軸24および後側取り付け軸25は、左右方向に延びる軸部材であり、周方向に周回する取り付け溝26が複数設けられている。複数の取り付け溝26の離間ピッチPDは、リール(RS、RL)の厚み寸法TRの2倍よりも大きめとされている。
【0020】
パレット2は、さらに、4組のローラ軸(61、62、63、64)を有する。上ローラ軸61は、左右一対の側板23の前側上部の位置であって、前側取り付け軸24よりも後上方の位置を結合する。前ローラ軸62は、左右一対の側板23の前側下部を結合する。中ローラ軸63は、左右一対の側板23の前後方向の中間あたりの下部を結合する。後ローラ軸64は、左右一対の側板23の後部を結合する。
【0021】
各ローラ軸(61、62、63、64)は、それぞれ複数の外周支持部材65を有する。外周支持部材65の各々は、円筒形状のローラ部材に形成され、ローラ軸(61、62、63、64)に回転自在に保持される。外周支持部材65の個数は、リール保持装置1が保持可能なリール(RS、RL)の最大数に一致している。外周支持部材65の幅寸法WSは、リール(RS、RL)の厚み寸法TRよりも若干大きめとされている。外周支持部材65は、リール(RS、RL)の外周を回転可能に支持することができる。ただし、後述する固定ピン33やピン部材5が使用される場合に、外周支持部材65は併用されない。
【0022】
仕切り部材3は、前後方向に長い薄板状の部材である。仕切り部材3は、パレット2の前側取り付け軸24および後側取り付け軸25の取り付け溝26に立てて取り付けられる。仕切り部材3は、引き出し経路94よりも下側に配置される。仕切り部材3は、前縁の上部に前側取り付け溝31をもち、下縁の後寄りに後側取り付け溝32をもつ。前側取り付け溝31は、仕切り部材3の前縁から後方に入り込んでいる。後側取り付け溝32は、仕切り部材3の下縁から上方に入り込んだ後、前側に屈折しており、略L字形状に形成されている。
【0023】
仕切り部材3をパレット2に取り付ける手順では、まず、仕切り部材3を後方から前方に進めて、前側取り付け溝31を前側取り付け軸24の取り付け溝26に差し込む。次に、仕切り部材3の後部を下げて、後側取り付け溝32を後側取り付け軸25の取り付け溝26に差し込む。最後に、仕切り部材3を後方に少し引き戻して、後側取り付け溝32の屈折した最奥部に後側取り付け軸25を嵌合させる。これにより、仕切り部材3の取り付け姿勢は安定する。また、仕切り部材3の取り外しの手順は、上記した取り付けの手順の概ね逆になる。上述したように、仕切り部材3の着脱の手順は容易であり、工具やねじ等の取り付け部材が不要である。
【0024】
図2は、パレット2の左側に設けられた3枚の仕切り部材3を例示している。稼働時には、さらに多数の仕切り部材3が互いに平行してパレット2に設けられる。仕切り部材3の最大数は、装備可能なフィーダ92の最大数の半数に等しい。仕切り部材3を着脱式とすることにより、装備されたフィーダ92の個数および配置に対応して、適宜仕切り部材3を配置することができる。さらに、厚み寸法TRが相違する複数種類のリールの使用が可能となる。仕切り部材3の左側面の後寄りの概ね中間高さに、固定ピン33が水平方向に突出して設けられる。固定ピン33は、リール(RS、RL)の中心孔CHを回転可能に支持する。
【0025】
図3に示されるように、仕切り部材3は、ピン部材5が移動する移動溝4を有する。移動溝4は、ピン部材5が停止可能な(取り付け可能な)複数の取り付け位置を通って形成される。詳述すると、移動溝4は、仕切り部材3の前後方向の中間あたりの上部に位置する大径用取り付け位置41を始点とする。移動溝4は、大径用取り付け位置41から少しだけ上方に延在し、すぐに屈折して後方に延在し、次に鋭角的に屈折して前下方向に延在し、小径用取り付け位置に42に到達する。さらに、移動溝4は、小径用取り付け位置42で鋭角的に屈折して後方わずかに斜め上方に延在し、さらに下方に屈折して終点の待機位置43に到達する。待機位置43は、固定ピン33の前方に位置する。
【0026】
上述したように、移動溝4は、複数の取り付け位置(41、42、43)を一筆書きで結び、分岐点および交差点をもたない。したがって、仕切り部材3の機械的剛性の低下が抑制され、仕切り部材3の変形によるピン部材5の脱落が防止される。また、大径用取り付け位置41および待機位置43は、移動溝4の下降した終端(始点および終点)に相当するので、移動してきたピン部材5の位置が安定する。
【0027】
ピン部材5は、仕切り部材3の右側面から水平方向に突出して設けられる。ピン部材5は、リール(RS、RL)の中心孔CHを回転可能に支持する。ピン部材5は、
図4に示されるように、ピン本体51および留め板54で構成される。ピン本体51は、フランジ形状の頭部52、および軸部53をもつ。頭部52の直径D1は、リール(RS、RL)の中心孔CHの孔径DHと概ね等しいか、わずかに小さい。軸部53の直径D2は、頭部52の直径D1よりも小さく、移動溝4の溝幅WCよりもわずかに小さい。軸部53の長さLZは、リール(RS、RL)の厚み寸法TRと仕切り部材3の厚み寸法TSの和よりも少し大きい。留め板54は円板状の部材である。留め板54の直径D3は、頭部52の直径D1よりも大きめである。
【0028】
ピン部材5を移動溝4に取り付けるとき、作業者は、ピン本体51を右側から仕切り部材3に近づけてゆき、軸部53の先端を移動溝4に通す。次に、作業者は、軸部53の先端に留め板54を固定する。軸部53の直径D2が移動溝4の溝幅WCよりも小さいので、作業者は、ピン部材5を移動溝4に沿って移動させることができる。かつ、頭部52の直径D1および留め板54の直径D3が移動溝4の溝幅WCよりも大きいので、ピン部材5は、移動溝4から脱落しない。
【0029】
また、ピン本体51の頭部52は、リール(RS、RL)の中心孔CHをぎりぎりで通り抜ける。したがって、作業者は、リール(RS、RL)を頭部52から軸部53へと進めて装着することができる。ピン部材5は、リール(RS、RL)が装着された状態でも、移動溝4に沿って移動可能である。軸部53に支持されたリール(RS、RL)は、容易に頭部52から抜けず、装着された状態を維持しつつ回転する。
【0030】
3.リール保持装置1の使用方法および作用
次に、実施形態のリール保持装置1の使用方法および作用について、
図5~
図9を参考にして説明する。小径リールRSを使用するとき、作業者は、小径リールRSの中心孔CHを支持したピン部材5を小径用取り付け位置42に移動する。これにより、
図5に示される状態となる。
図5において、リール保持装置1および小径リールRSは、引き出し経路94の下方に位置しており、フィーダ92の交換作業を阻害しない。
【0031】
換言すると、小径リールRSの中心孔CHを支持するピン部材5は、小径リールRSの直径が所定値以下の場合に、小径リールRSの上端がフィーダ92の引き出し経路94より下側となる位置に小径リールRSを支持する。ここで、所定値は、小径リールRSの直径に相当する7インチである。これにより、フィーダ92の交換作業の手間が軽減される。仮に、小径リールRSが引き出し経路94に入り込んでいると、フィーダ92の交換作業時に小径リールRSを一時的に取り外す必要があって、余分な手間がかかる。
【0032】
また、フィーダ92の動作によって小径リールRSからキャリアテープCTが引き出されるとき、キャリアテープCTの張力は、小径リールRSを浮揚させる方向に引っ張る。これにより、小径リールRSからピン部材5に浮揚力F1が作用する。浮揚力F1の方向に対して、移動溝4は角度Aおよび角度Bだけ傾斜して延在する。角度Aおよび角度Bは、概ね90°または90°以上ある。このため、浮揚力F1が作用しても、ピン部材5は小径用取り付け位置42から移動せず、小径リールRSは浮揚しない。さらに、移動溝4は、小径用取り付け位置42から斜め上方に延在している。このため、ピン部材5および小径リールRSは、自重の影響で移動することもない。したがって、小径リールRSは、小径用取り付け位置42を中心にして安定的に回転する。
【0033】
小径リールRSの装着作業や交換作業は、
図6に示される要領で行われる。すなわち、作業者は、ピン部材5を大径用取り付け位置41に移動させ、仕切り部材3を撓ませて小径リールRSをピン部材5に装着する。続いて、作業者は、小径リールRSを支持するピン部材5を、移動溝4に沿って小径用取り付け位置42まで移動させる。また、作業者は、小径リールRSを支持するピン部材5を小径用取り付け位置42から大径用取り付け位置41まで移動させ、仕切り部材3を撓ませて小径リールRSを取り外す。
【0034】
これらの作業では、仕切り部材3を撓ませて、隣の仕切り部材3または側板23との隙間を拡げる必要がある。このため、仕切り板3の固定部位(前側取り付け溝31および後側取り付け溝32)に近い小径用取り付け位置42での作業は難しく、固定部位から離れた大径用取り付け位置41での作業は容易となる。上述のように、大径用取り付け位置41は、小径リールRSの交換を行う交換位置を兼ねる。なお、必ずしも大径用取り付け位置41でなくとも、移動溝4の大径用取り付け位置41に近い高位置の範囲であれば、小径リールRSの交換作業は可能である。
【0035】
図2に示されるように、リール保持装置1は、仕切り部材3の右側面の前寄りにピン部材5を用いて小径リールRSを支持し、左側面の後寄りに固定ピン33を用いて小径リールRSを支持することができる。2個の小径リールRSは、並んで装備される2台のフィーダ92と組み合わせて用いられる。小径リールRSから引き出されるキャリアテープCTは、リール(RS、RL)の厚み寸法TRの3倍程度までの斜行が許容されて、フィーダ92に挿入される。また、左側面の小径リールRSは、引き出し経路94の後方の延長線上に位置するので、保持された高さに関係なく、フィーダ92の交換作業を阻害しない。
【0036】
次に、大径リールRLを使用するとき、作業者は、大径リールRLの中心孔CHを支持したピン部材5を大径用取り付け位置41に保持する。これにより、
図7に示される状態となる。
図7において、直径15インチの大径リールRLが実線で示され、直径13インチの大径リールRLが破線で示されている。
【0037】
フィーダ92の動作によって大径リールRLからキャリアテープCTが引き出されるとき、キャリアテープCTの張力は、大径リールRLを浮揚させる方向に引っ張る。これにより、大径リールRLからピン部材5に浮揚力F2が作用する。浮揚力F2が概ね前方に向いているので、ピン部材5は、大径用取り付け位置41から殆ど上昇せず、仮に上昇しても移動溝4に沿って後方に移動することが無い。したがって、大径リールRLは、大径用取り付け位置41を中心にして安定的に回転する。
【0038】
大径リールRLの装着作業や交換作業は、大径用取り付け位置41で実施可能である。つまり、大径用取り付け位置41は、大径リールRLの交換を行う交換位置を兼ねる。
図8に示されるように、リール保持装置1は、仕切り部材3の右側面の前寄りにピン部材5を用いて大径リールRLを支持し、左側面の後寄りに固定ピン33を用いて大径リールRLを支持することができる。2個の大径リールRLは、並んで装備される2台のフィーダ92と組み合わせて用いられる。左側面の大径リールRLは、引き出し経路94の後方の延長線上に位置するので、保持された高さに関係なく、フィーダ92の交換作業を阻害しない。さらに、リール保持装置1は、仕切り部材3の右側面と左側面とで大きさの異なるリール(RS、RL)を支持することもできる。
【0039】
また、
図9に示されるように、大径リールRLを外周支持部材65で支持して、ピン部材5を用いない保持方法も可能である。この場合に、作業者は、ピン部材5を退避位置43に移動する。これによれば、2枚の仕切り部材3の間に大径リールRLを挿入する際、ピン部材5が邪魔にならない。挿入された大径リールRLは、上ローラ軸61、中ローラ軸63、および後ローラ軸64の外周支持部材65によって、その外周が支持される。
【0040】
また、小径リールRSについても、前ローラ軸62および中ローラ軸63の外周支持部材65で支持し、あるいは、中ローラ軸63および後ローラ軸64の外周支持部材65で支持することができる。この場合も、作業者は、ピン部材5を退避位置43に移動する。ピン部材5は、退避位置43に静止するので、リール(RS、RL)の回転やキャリアテープCTの引き出しを阻害しない。仮に、ピン部材5が移動溝4の途中位置に置き忘れられていると、部品装着機91の稼働中にピン部材5が徐々に移動して、不具合となるおそれがある。
【0041】
実施形態のリール保持装置1において、リール(RS、RL)の中心孔CHを支持するピン部材5は、リール(RS、RL)の直径の違いに応じて仕切り部材3に位置変更可能に設けられる。したがって、リール径に応じてリール(RS、RL)の保持位置を変更することが可能となる。リール(RS、RL)の保持位置を変更する効果として、例えば、フィーダ92の交換作業の手間を軽減することができる。
【0042】
4.実施形態の応用および変形
なお、仕切り部材3の左側面の固定ピン33は、省略されてもよい。リール保持装置1の最小の構成は、パレット2と、固定ピン33が省略された1枚の仕切り部材3と、仕切り部材3の移動溝4を移動する1本のピン部材5とからなる。また、仕切り部材3が二つの移動溝4を有し、左側面の固定ピン33に代えて移動可能なピン部材5が設けられてもよい。さらに、厚み寸法TRが相違する複数種類のリールに対応するために、固定ピン33やピン部材5の長さが相違する複数種類の仕切り部材3を併用してもよい。また、リール径に応じてリール(RS、RL)の保持位置を変更する目的は、リール(RS、RL)の交換作業を容易化するためや、リール(RS、RL)からフィーダ92に向かうキャリアテープCTの引き出し経路を調整するためであってもよい。
【0043】
また、仕切り部材3は、移動溝4を有さず、大径用取り付け位置41、小径用取り付け位置42、および待機位置43にそれぞれ取り付け孔を有し、ピン部材5を取り付け孔に着脱する構成であってもよい。ただし、この構成ではピン部材5を紛失するおそれがあり、実施形態ではピン部材5を紛失するおそれが無い。さらに、移動可能なピン部材5は、リール(RS、RL)の中心孔CHを支持するが、リール(RS、RL)の外周に接触してリール(RS、RL)の浮揚を規制してもよい。本実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:リール保持装置 2:パレット 21:底板 23:側板 24:前側取り付け軸 25:後側取り付け軸 26:取り付け溝 3:仕切り部材 33:固定ピン 4:移動溝 41:大径用取り付け位置 42:小径用取り付け位置 43:待機位置 5:ピン部材 51:ピン本体 54:留め板 61:上ローラ軸 62:前ローラ軸 63:中ローラ軸 64:後ローラ軸 65:外周支持部材 91:部品装着機 92:フィーダ 94:引き出し経路 CT:キャリアテープ RS:小径リール RL:大径リール CH:中心孔