(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026879
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】流体ポンプ用ロータならびにその作成方法および金型
(51)【国際特許分類】
A61M 60/17 20210101AFI20240220BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20240220BHJP
A61M 60/414 20210101ALI20240220BHJP
A61M 60/808 20210101ALI20240220BHJP
【FI】
A61M60/17
A61M60/237
A61M60/414
A61M60/808
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006787
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2022093553の分割
【原出願日】2016-04-29
(31)【優先権主張番号】15166042.0
(32)【優先日】2015-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15166045.3
(32)【優先日】2015-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515170724
【氏名又は名称】エーツェーペー エントヴィッケルングゲゼルシャフト エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】シェッケル マリオ
(57)【要約】
【課題】圧縮性の流体ポンプのロータの展開状態における形態を安定化する。
【解決手段】本発明は、圧縮性の流体ポンプ用のロータであって、1つ以上のインペラ要素15を備えるとともに第1の圧縮状態と第2の半径方向展開状態との間で圧縮および展開可能であり、インペラ要素15が強化要素10、11、13、18、19、55、56、62、63が埋め込まれて強化されたプラスチックで構成され、回転軸線14周りに回転するように構成されたロータに関する。このロータは、第1の圧縮状態では予荷重が与えられ、第2の展開状態では外部応力が加わらない。また、ロータ42が荷重下の動作状態で占有する第3の状態が存在する。強化要素が、第2の状態から第3の状態への遷移に際して5%未満、特に、1%未満だけ長くなる程度まで伸張する形態で存在する。
【選択図】
図2c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮性の流体ポンプ用のロータであって、1つ以上のインペラ要素(15)を有するとともに第1の状態である圧縮状態と第2の状態である半径方向展開状態との間で半径方向に圧縮および展開可能であり、少なくとも一部が撚り糸状の強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)により強化されたプラスチックから成り、回転軸線(14)周りに回転するように意図され、前記第1の状態である圧縮状態では予荷重が与えられ、前記第2の状態である展開状態では外部応力が加わらず、当該ロータ(42)が荷重下の動作状態で想定される第3の状態が存在しており、前記第3の状態における当該ロータの前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)が、少なくとも部分的に伸長して延び、
流体抵抗圧のない当該ロータの前記第2の状態である展開状態における前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)が、流体抵抗圧のある動作状態を構成する前記第3の状態への遷移に際して、5%未満、特に、1%未満だけ長くなる程度まで伸長する形態で存在しており、前記伸張が、特に強化要素の両端間の距離に基づいて測定され、
前記インペラ要素(15)は、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)が埋め込まれて強化されたプラスチックから成る、
ことを特徴とする、ロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータであって、当該ロータの前記第3の状態(動作状態)における前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)が、引張応力が生じる当該ロータ(42)の領域において少なくとも一部が伸長して延びるとともに、実質的に前記引張応力の方向に延びることを特徴とする、ロータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の過半数が、前記動作状態で引張応力が生じる当該ロータおよび/または前記インペラ要素の領域に配置されたことを特徴とする、ロータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータ(42)の場合、外形に関する限りは、前記第2の状態である展開状態と前記第3の状態である動作状態との間に実質的な差異がないことを特徴とする、ロータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のロータであって、前記動作状態においては、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の少なくとも一部が、部分的に真っ直ぐに延びることを特徴とする、ロータ。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のロータであって、前記動作状態においては、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の大部分が、部分的に真っ直ぐに延びることを特徴とする、ロータ。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のロータであって、前記動作状態においては、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の少なくとも一部、特に、前記強化要素の大部分が、材料強度学の意味において前記インペラ要素(15)の中立の強化要素(中立軸)および/または中立面よりも小さな曲率で前記インペラ要素の長手方向に沿って延びることを特徴とする、ロータ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータ(42)の前記プラスチックのショア硬度が100D未満、特に、80D未満であることを特徴とする、ロータ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータ(42)の前記展開状態における前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の30%超、特に、50%超の第1の群が、前記回転軸線(14)に最も近く配設された部分(10a、11a、13a)から前記回転軸線(14)の遠くに配設された第2の部分(10b、11b、13b)へと実質的に伸長して延びることを特徴とする、ロータ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の30%超、特に、前記強化要素の50%超である前記強化要素の第1の群が、前記展開状態における当該ロータ(42)の半径方向に測定して、前記インペラ要素(15)の最大高さの少なくとも30%、特に、少なくとも50%に対応する長さを有することを特徴とする、ロータ。
【請求項11】
請求項9または10に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の前記第1の群が、前記回転軸線(14)と実質的に垂直に延びることを特徴とする、ロータ。
【請求項12】
請求項9または10に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の直径が、40マイクロメートル未満であることを特徴とする、ロータ。
【請求項13】
請求項9または10に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の前記第1の群の直径が、40マイクロメートル未満であることを特徴とする、ロータ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の表面に接着促進剤が設けられたことを特徴とする、ロータ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータの前記展開状態における前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)のある群が、前記強化要素の別の群に対して横方向に延びることを特徴とするロータ。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータの前記展開状態における前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)のある群が、前記強化要素の別の群に対して横方向に延び、前記ある群の強化要素が延びる方向と前記別の群の強化要素が延びる方向のなす角のうち小さい方の角の角度が、平均で少なくとも30°であることを特徴とするロータ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の少なくとも一部が、繊維が長手方向および横方向に延びた織物部の形態で存在することを特徴とするロータ。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)が、長さが幅の少なくとも3倍、特に、少なくとも5倍、より詳細には少なくとも10倍の膜ストリップの形態で存在することを特徴とするロータ。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)が埋め込まれたプラスチック材料が、少なくとも前記インペラ要素の流体抵抗圧作用側と比較して、動作中の前記インペラ要素の流体抵抗圧非作用側の領域において異なる特性を有していることを特徴とするロータ。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)が埋め込まれたプラスチック材料が、流体抵抗圧非作用側でより多く架橋もしくは収縮しているか、または、前記インペラ要素(82)上で収縮した支持部(86)であって、1つ以上の膜、被膜、もしくは繊維の形態で設けられた支持部(86)を表面上に有していることを特徴とするロータ。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載のロータであって、前記インペラ要素の流体抵抗圧作用側に配置された前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)に、流体抵抗圧が加わらない状態で内部材料応力が前もって加えられていることを特徴とするロータ。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載のロータであって、少なくとも30%、特に、少なくとも50%の前記強化要素(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の長さが、前記インペラ要素の平均厚さより大きく、特に、少なくとも2倍の長さ、より詳細には少なくとも5倍または10倍の長さであることを特徴とするロータ。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載のロータであって、前記圧縮性の流体ポンプが、血管を通じて患者の身体に導入可能な血液ポンプであることを特徴とするロータ。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項に記載のロータを作製する方法であって、前記ロータが、成形法、特に、射出成形法によって作製され、前記射出成形法が、異なる射出方向および/または2つの異なる射出点からの2つの連続する段階で実行されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、機械学の分野にあり、具体的には、流体ポンプ用ロータに関する。特に、カテーテルポンプに関する医用工学の分野において有利に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
流体ポンプの分野においては、アキシャルポンプまたはラジアルポンプの形態の種々実施形態において、ロータポンプがすでに知られている。いずれの場合も、ロータおよび前記ロータに固定されたインペラ要素の回転によって、搬送対象の流体が軸方向または半径方向に加速される。
【0003】
また、この種のポンプは、先行技術に従って圧縮することにより、省スペースに配置または移送可能である。このことは、特に医療用のカテーテルポンプに当てはまるが、これは、半径方向に圧縮、展開可能であり、手術での設定に先立って、カテーテルまたは患者の身体の空洞を通じて適用部位に移送した後、適用部位で展開可能であることが多い。このようなポンプは、たとえば血液の循環に際して患者の心臓の補助に用いられるが、この目的のため、血管を通じて心室またはその内部まで送られる。
【0004】
この場合は、ロータの小型化に加えて、その圧縮性が特に課題となる。展開状態において、ロータは、その圧縮性にも関わらず、最大回転搬送速度で動作する場合であっても、可能な限り変化しない動作形態を再現性よく想定することによって、効率の低下のほか、搬送対象の血液成分の損傷を防止する必要がある。
【0005】
このような理由から、上記目的のため、広範な材料および材料組み合わせの利用がすでに検討され、調査されている。一例として、国際公開第2010/063494号により、繊維強化材と併せた広範なエラストマの利用がすでに知られている。
【0006】
国際公開第2012/007141号は、たとえば半径方向に配向した形態でロータ中に配置可能な繊維によるポンプロータの強化材を開示している。
【0007】
最後に、国際公開第2012/007140号は、実質的にインペラ要素の外側(たとえば、表面)に設け得る強化要素を備えたポンプロータを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/063494号
【特許文献2】国際公開第2012/007141号
【特許文献3】国際公開第2012/007140号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、先行技術の背景に対して、本発明の目的は、圧縮状態と展開状態との変形後の緩みが最小であるとともに、少なくとも展開状態において、その形状の再現性が最も正確と考えられる上記種類のプラスチックロータを創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、ロータ、ロータの作製方法、および対応するロータの金型によって達成される。
【0011】
上記は、とりわけ、圧縮性の流体ポンプ、特に、血管を通じて患者の身体に導入可能な血液ポンプ用のロータであって、1つ以上のインペラ要素を有するとともに第1の状態である圧縮状態と第2の状態である半径方向展開状態との間で半径方向に圧縮および展開可能であり、少なくとも一部が撚り糸状の強化要素、特に、繊維により強化されたプラスチックから成り、回転軸線周りに回転するように意図され、第1の状態である圧縮状態では予荷重が与えられ、第2の状態である展開状態では外部応力が加わらず、当該ロータが荷重下の動作状態で想定される第3の状態が存在しており、第3の状態における当該ロータの繊維が、少なくとも部分的に伸長して延びることを特徴とする、ロータをもたらす。
【0012】
この種の流体ポンプは通例、圧縮状態でポートを通じて血管(たとえば、動脈)に導入され、患者の心臓に近づくか一部が心臓に入るまで前進して、そこで展開される。ただし、本発明は、この種の血液ポンプに限定されず、圧縮および展開可能なロータを有する他の種類の血液ポンプまたは医療目的もしくは非医療目的で空洞系に導入可能な他の流体ポンプも含む。このようなポンプのロータは、圧縮状態において通例、たとえば外側スリーブによる締め付けによって、半径方向の圧縮応力を受ける。一例として、外側スリーブとしてはカテーテルが可能であり、ポンプはここから滑り出て展開する。ただし、ポンプのロータは、圧縮状態において、その他任意の種類の外径スリーブによる締め付けも可能である。
【0013】
圧縮力が取り除かれた場合は、ポンプまたは少なくともポンプのロータが展伸し、第2の状態である展開・展伸状態に遷移するため、第1の状態である圧縮状態と比較して、ロータの半径方向範囲が著しく大きくなる。
【0014】
その後、ロータの回転駆動によってポンプが動作し、流体が搬送されると、ロータは、搬送液体の荷重下での荷重状態に対応する動作状態に遷移する。特に、この動作状態は、ロータの規定された幾何学的設計に従って起こるが、これは、考え得る最大限度までの荷重の大きさとは無関係であるものとする。また、ロータは、第2および第3の状態間の遷移に際して、形態の変化が最小限であるものとする。ただし、搬送液体の荷重下での第3の状態において、ロータは、第2の状態である展開状態と比較して直径が大きくなるように変形可能である。
【0015】
ロータのプラスチック材料を強化する撚り糸状の強化要素/繊維は、第3の状態において、少なくとも部分的に伸長して延びることにより、荷重に対してロータの形態を安定させるように、プラスチック材料のマトリクスに配置されるものとする。ここで、繊維は、長手方向の引張荷重を受けることが意図される。繊維は実際のところ、長手方向に伸長し得ないため、その長手方向の対応する荷重によっても、実際にはマトリクスの形態が大きく変化することはない。このため、ロータまたはロータの個々の要素(たとえば、インペラ要素)は、繊維が少なくなくとも部分的に伸長するまで、圧縮状態から展開状態へと難なく形態が変化し得る。この時点では、ロータのプラスチック材料における繊維の固定により、少なくとも繊維が伸長する領域においては、荷重下であっても、繊維の長手方向の移動が実際には不可能となる。
【0016】
一例として、解決手段の特定の一実施形態では、ロータの第3の状態(動作状態)における強化要素/繊維が、引張応力が生じる当該ロータの領域において少なくとも一部が伸長して延びるとともに、実質的に引張応力の方向に延びる。
【0017】
強化要素/繊維は、長手方向力の繊維への吸収によって引張応力が阻止されるとともに、ロータの形態が実際には不変のままか、またはそれ以上変化しないように、ロータにおいて引張応力が生じる方向に少なくとも一部が配置されるものとする。
【0018】
一例として、これには、ロータのインペラ要素において、強化要素/繊維の少なくとも一部がいわゆる中立繊維の外側で延びている必要がある。曲げ力学の分野におけるいわゆる中立繊維および/または中立面の領域において、高張力の繊維は、ロータをそれ以上安定させはしない。ここで説明するロータにおいて、曲げ技術における中立繊維は、一般的には面であるため、以下では、明瞭化のため、曲げ中立面または中立面という用語を使用する。
【0019】
したがって、強化要素/繊維の過半数が、動作状態で引張応力が生じるロータおよび/またはインペラ要素の領域に配置されように構成することも可能である。ここで、荷重下で引張応力が生じるロータまたはインペラ要素の領域に多くの繊維が配置されていると特に都合が良い。
【0020】
また、ロータの場合、外形に関する限りは、第2の状態である展開状態と第3の状態である動作状態との間に実質的な差異がないように構成することも可能である。
【0021】
また、全体として、ロータが特に優れた安定性を得るように、一例として、強化要素/繊維が、半径方向に回転軸線を越えて延びるように設けられる構成も可能である。したがって、個々のインペラ要素は、曲げに対してのみならず、回転軸線(たとえば、ハブ)の近くにおけるロータの一部の周りの枢動に対しても安定する。
【0022】
また、動作状態においては、繊維の少なくとも一部、特に、強化要素/繊維の大部分が、部分的に直線状に延びるように構成することも可能であり、都合が良い。繊維の他の直線部ひいては湾曲部についても、強化要素/繊維が直線状に延びる領域間に設けることができる。
【0023】
また、動作状態においては、繊維の少なくとも一部、特に、強化要素/繊維の大部分が、材料強度学の意味においてインペラの中立面よりも小さな曲率でインペラ要素の長手方向に沿って延びるように構成することも可能である。強化要素/繊維に関するこの構成の結果として、強化繊維は、一方では動作状態において大きく伸長しながら、他方ではインペラ要素の中立面の外側ひいては荷重下で引張応力が生じ得る領域を延びるようになる。
【0024】
また、ロータのプラスチックのショア硬度が100D未満、特に、80D未満となるように構成することも可能である。たとえば80D未満にも選択可能な低いショア硬度のため、材料の大きな湾曲または屈曲によって、埋め込まれた強化要素/繊維を弾性基材に押し込んで曲率半径を下方に制限することができる。この結果、要素/繊維の破壊のリスクが低くなる。
【0025】
また、この種のロータの場合は、当該ロータの展開状態における強化要素/繊維の30%超、特に、50%超の第1の群が、回転軸線に最も近く配設された部分から回転軸線の遠くに配設された第2の部分へと実質的に伸長して延びるように構成することも可能である。この強化要素/繊維の位置決め、配向、および形成の結果として、展開状態を超えるロータの伸び過ぎが効果的に回避される。
【0026】
また、このロータは、強化要素/繊維の30%超、特に、50%超である強化要素/繊維の第1の群が、展開状態における当該ロータの半径方向に測定して、インペラ要素の最大高さの少なくとも30%、特に、少なくとも50%に対応する長さを有するように設計することも可能である。これにより、ロータのより大きな部分に及んで全体的に安定させる安定化力が得られる。
【0027】
また、動作状態における強化要素/繊維の第1の群が、回転軸線と実質的に垂直に延びるように構成することも可能である。この強化要素/繊維の配向の結果として、搬送対象の流体の荷重によって生じるロータ中の引張応力を最適に吸収可能である。
【0028】
さらに、このロータは、強化要素/繊維、特に、強化要素/繊維の第1の群の直径が、40マイクロメートル未満となるように設計することも可能である。このような強化要素/繊維の小さな直径によって、小さな曲げ半径を実現可能であり、強化要素/繊維の破壊のリスクがさらに抑えられる。
【0029】
また、強化要素/繊維の表面に接着促進剤が設けられるように構成することも可能である。これにより、マトリクスのプラスチック材料において、強化要素/繊維の良好な固定が実現され、強化要素/繊維による引張応力の吸収がさらに向上する。
【0030】
また、本発明は、成形法、特に、射出成形法により、請求項1および後続の請求項のいずれか1項に記載のロータを作製する方法であって、インペラ要素の材料が、成形材料が半径方向に個々のインペラ要素のボリュームに流れ込むように、回転軸線に関して半径方向に、インペラ要素のボリュームに導入されることを特徴とする、方法に関する。
【0031】
この種の方法において、成形材料は、ロータの中央領域(たとえば、ロータハブのボリューム)において、たとえば軸方向に射出可能であるとともに、そこから個々のインペラ要素へと半径方向に分散可能である。そして、個々のインペラ要素は、材料流の半径方向に内側から外側へ完全に満たされる。ただし、インペラ要素の半径方向外側端から回転軸線に向かって半径方向内方に満たすことも可能である。
【0032】
たとえばガラスのみならず、成形材料に設けられたカーボン、またはポリカーボネート、または金属で構成可能な強化要素/繊維すなわち膜部は、マトリクス材料の流れに取り込まれ、主として、材料の流れの方向に配向する。
【0033】
また、上記ロータの作製および上記方法に対して最適化された金型も提示される。この金型は、成形材料が半径方向に妨げられずに流れ得るように、インペラ要素のボリュームの半径方向延伸縁部に溢流(いつりゅう:オーバーフロー)チャネルが設けられたことを特徴とする。
【0034】
インペラ要素の縁部に設けられた溢流チャネルにより、縁部の領域における局所的な逆流に伴う旋回の形成が防止され、大きな層流を形成可能である。したがって、強化要素/繊維は、マトリクスの主伸長位置に埋め込まれる。このことから、金型によって、第2の展開状態すなわち外部応力のない状態でロータを成形可能であるため、特に都合が良い。
【0035】
インペラ要素の側縁部に設けられた溢流チャネルのほか、金型においては、ボリュームの半径方向外側端にも溢流チャネルを形成可能であり、このような溢流チャネルによれば、インペラ要素の半径方向外側端において、成形材料が流出可能となる。過剰な成形材料は、ロータの少なくとも一部が金型中で固化したら除去可能である。
【0036】
インペラ要素のボリューム中の強化要素/繊維の配置に関して、曲げ中立面からの間隔は、動作状態における流体の抵抗圧による荷重の場合、インペラ要素の外方曲げ時の強化要素/繊維の伸長によって、ある方向の特定の安定性を実現する目的に対して望ましいと考えられる。いずれの場合も、強化要素/繊維は、インペラ要素内で延びるのが好都合であり、インペラ要素の外部境界面から特定の最小距離を維持するものとする。
【0037】
ロータには、長さが異なる複数の強化要素/繊維群も設けることができ、少なくとも1つの群が特定の最小長さを有する一方、1つ以上の群の強化要素/繊維は、これより短いか、または、強化要素/繊維の第1の群の通常長さを下回る繊維長さを超える強化要素/繊維の数が無視できるほどの長さ分布を有する。短い方の強化要素/繊維の平均長さは通常、強化要素/繊維の第1の群の長さの3分の1未満である。
【0038】
ロータは、強化要素/繊維の第1の群の各強化要素/各繊維が、ロータ軸(14)と半径方向に一致した位置から軸方向および/または方位角方向に最大45°まで延伸方向が外れるように設計できるのが好都合である。そして、強化要素/繊維は、たとえば最初に回転軸線から半径方向外方へと垂直に直接延び得るように、ロータの回転軸線全体が延びた平面において延びる。ただし、回転軸線に対して45°~90°の角度での半径方向における回転軸線からの強化要素/繊維の配向も可能である。一実施形態において、強化要素/繊維の範囲にはいずれにしろ、(円周方向に延びる)方位角方向の配向がないか、または、この種の配向がわずかである。
【0039】
ロータは、インペラ要素が発泡材料から成るように設計することも可能である。ここでは、閉孔発泡材料が特に考えられるが、これは、強化繊維によって効果的に安定化可能であるとともに、依然として十分な程度まで容易に圧縮可能である。特に、発泡材料の場合は、圧縮移動中に、臨界湾曲半径の下回りを回避するための強化要素/繊維の撓みが特に容易に可能である。この種の発泡材料は通例、インペラ要素のボリューム内に対応する細孔を有するが、実際には、外部境界表面にて完全に閉鎖されている。
【0040】
また、ロータは、当該ロータの展開状態における強化要素/繊維のある群が、別の群の強化要素/繊維に対して横方向に延び、特に、平均で少なくとも30°の角度を含むように形成することも可能である。このように、特定の繊維群は、繊維の長手方向のロータまたはロータのインペラ要素の湾曲をほぼ完全に防止可能であるが、これは、引張応力が繊維に印加される方向に湾曲が生じることを前提としている。2つの繊維群の異なる配置によって、2つの方向が上記のように識別される場合は、ロータまたはロータの一部の3次元形態が非常に効率良く安定化されるとともに、さまざまな方向の湾曲に対して強化され得る。
【0041】
また、強化要素/繊維の少なくとも一部が、繊維が長手方向および横方向に延びた織物部の形態で存在するように構成することも可能である。一例として、織物部は、いずれの場合にも細長ストリップを構成するように、長手方向において、それに垂直な横方向の少なくとも2倍、3倍、5倍、または10倍だけ延伸可能である。そして、この織物内で第1の繊維が長手方向に容易に設けられた後、その横方向に延びる第2の繊維が垂直または鈍角で容易に設けられる。
【0042】
また、一例として、強化要素が、長さが幅の少なくとも3倍、特に、少なくとも5倍、より詳細には少なくとも10倍の膜ストリップの形態で存在するように構成することも可能である。これらの膜ストリップは、たとえば横方向よりも長手方向の引張強度がはるかに大きい異方性ポリマーから成り得る。ただし、これらの膜ストリップは、たとえば高張力プラスチック材料またはアルミニウム、銀、ニチノール、チタン、もしくは金等の金属性の等方性膜からも成り得る。
【0043】
また、強化要素が、当該ロータの大部分、少なくとも表面の90%、特に、99%の部分、より詳細には全体が構成されるプラスチックにより囲まれるように構成できるのが好都合である。個々の場合、射出成形金型中の強化要素は、最終製品においてロータの外側表面に現れるように、金型の壁に接触し得る。ただし、通常の場合は、強化要素の端部のみがロータの外側に露出して配置されるが、これでさえも、射出成形プロセス中の強化要素の導入および射出成形材料の適当な流れ誘導のため、比較的可能性が低い。
【0044】
また、ロータの場合、強化要素が埋め込まれたプラスチック材料が、少なくともインペラ要素の流体抵抗圧作用側と比較して、動作中のインペラ要素の流体抵抗圧非作用側の領域において異なる特性を有し、特に、流体抵抗圧非作用側でより多く架橋もしくは収縮しているか、または、インペラ要素上で収縮した支持部であり、1つ以上の膜、被膜、もしくは繊維の形態で設けられた、支持部を表面上に有するように構成することも可能である。これに関して、インペラ要素の2つの側は、特定のインペラ要素のボリュームにおいて、曲げ荷重下の湾曲中立面または表面を構成する面または表面の表裏のボリューム領域を意味することが意図される。
【0045】
本発明の達成される目的の1つとして、外力のない状態のロータにより想定されるロータの第2の状態は、流体抵抗圧の作用下でロータが流体中で回転することから、動作中のロータにより想定される第3の状態との違いが最小限である。したがって、すでにロータの第2の状態にある強化繊維は、可能な限り最大限に伸長して、少なくともロータの湾曲を区切る方向に延びるのが望ましい。
【0046】
これは、力が加わっていない第2の状態のロータの形態が射出成形金型のロータにより想定される形態と異なる点で補助可能である。射出成形材料により形成されたプラスチックマトリクスの適切な設計によって、すでに外力のない状態では、射出成形材料の弾性力によって、繊維に前もって負荷を加える変形が第3の状態の方向に生じ得る。この効果は、一例として、強化要素と異なる材料がロータ中またはロータ上に提供され、強化要素に前もって負荷が加えられる形態へとロータ、特に、インペラ要素を至らせる点において実現可能である。マトリクス中の強化要素の実際の成形においては、事実上、これらの要素に力が印加されないため、全体として、射出成形プロセスの完了後、プラスチックマトリクスまたはロータ本体の改良によってこれが実現される。一例として、プラスチックマトリクスは、動作中に流体抵抗圧が印加される側でインペラ要素の材料が延長されるか、または、反対側で収縮または異方的に短縮されるように、射出成形金型から取り外した後、特定の処理が可能である。これは、一例として、インペラ要素の中立繊維の2つの側で異なるプラスチックマトリクスの不規則な架橋によって実現される。ただし、動作中のインペラ要素の流体抵抗圧曝露側の反対側において、たとえば電子ビーム架橋もしくはUV架橋または熱処理によって被覆後に収縮する膜または収縮可能な膜でインペラ要素を被覆することによっても実現可能である。
【0047】
また、第1の状態である圧縮状態と第2の状態である展開状態との間で半径方向に展開および圧縮可能な圧縮性の流体ポンプ用のロータを提供可能であり、当該ロータの1つ以上のインペラ要素が、展開状態において補強を行う強化要素の同時追加を伴う射出成形によって作製され、強化要素が、射出成形材料によって全面が囲まれ、展開状態において少なくとも部分的に伸長しており、特に、少なくとも90%、より詳細には95%、さらに詳細には99%の程度まで伸長しているか、または、織物の使用により、可能な限り最大限に伸長するように構成することも可能である。
【0048】
また、一例として、ロータは、流体抵抗圧のない当該ロータの第2の状態である展開状態における強化要素が、流体抵抗圧のある動作状態を構成する第3の状態への遷移に際して、5%未満、特に、1%未満だけ長くなる程度まで伸長し、上記延長が、引張荷重前および引張荷重時に、特に強化要素の両端間の距離に基づいて測定されるように設計可能である。
【0049】
また、一例として、ロータの場合は、当該ロータの第2の状態である展開状態および/または流体抵抗圧のある第3の状態である動作状態において、強化要素の少なくともある群、特に、少なくとも10%、より詳細には少なくとも30%が、インペラ要素の少なくとも1つの湾曲領域で伸長して真っ直ぐに延びるように構成することも可能である。
【0050】
また、インペラ要素の湾曲領域において、強化要素の少なくとも2つの群が、真っ直ぐに伸長して延びており、強化要素が延びる方向が、同じ群内では平行であるものの、上記2つの異なる群間では異なるように構成することも可能である。さまざまな群内の繊維は、織物の形態で互いに接続された状態または互いに分離した状態、特に、連続した状態で射出成形金型に導入され得る。
【0051】
ロータの別の実施形態では、少なくとも30%、特に、少なくとも50%の強化要素の長さが、インペラ要素の平均厚さより大きく、特に、少なくとも2倍の長さ、より詳細には少なくとも5倍または10倍の長さであるように構成することも可能である。このような長さの強化要素は、成形材料の充填に際して、他の充填要素(たとえば、非常に短い繊維および/または粒子)による補完が可能であり、この短い繊維は、伸長形態でも存在し得る。ただし、これらの繊維が通例は非常に短いことから、ロータの曲率の限界に関してはほとんど効果がない。これに関して、インペラ要素の任意の点におけるインペラ要素の厚さは、インペラ要素の寸法が最小となる方向の寸法を意味する。
【0052】
ロータの別の実施形態では、強化要素、特に、繊維が、埋め込まれるプラスチックに射出成形時に導入され、当該ロータが射出成形金型に配設されるときに、プラスチックの射出成形金型への流れに沿って部分的に湾曲した延伸方向を有するように構成することも可能である。
【0053】
また、本発明は、上記種類のロータ用の射出成形金型にも関し、成形材料が半径方向に妨げられずに流れ得るように、インペラ要素のボリュームの半径方向延伸縁部に溢流チャネルが設けられている。
【0054】
上記ロータを作製する方法では、インペラ要素の材料が、成形材料が半径方向に個々のインペラ要素のボリュームに流れ込むように、ロータ軸に関して半径方向に、インペラ要素のボリュームに導入されるように構成することも可能である。
【0055】
鋳型の溢流チャネルの配置およびサイズにより、流入する成形材料の流れ方向ひいては流れに沿った繊維の配向についても制御可能である。
【0056】
ロータを作製する別の方法では、ロータが、成形、特に、射出成形によって作製され、この射出成形プロセスが、異なる射出方向および/または2つの異なる射出点からの2つの連続する段階で実行されるように構成することも可能である。このため、群を成して異なる方向に延びる強化要素/繊維は、目標とする様態で射出成形材料に導入可能である。
【0057】
また、ロータを作製する方法においては、射出成形の後、ロータが、動作中のインペラ要素の流体抵抗圧作用側の成形材料が反対側と異なる収縮および/または架橋となる処理を受けるように構成することも可能である。このため、ロータには、流体抵抗圧に曝露された場合に、外力の影響なく安定な第3の状態すなわち動作状態が想定済みとなるように、内部応力の生成により前もって負荷を加えることができる。これは、ロータの動作中に強化繊維が曝露される力の順で存在する引張力が結果として強化要素に印加済みとなるように、内部応力が指向および形成される点において実現される。
【0058】
また、一例として、動作中のインペラ要素の流体抵抗圧曝露側と反対側のインペラ要素のうちの少なくとも1つに収縮可能層または収縮層が適用されるように構成することも可能である。
【0059】
上記の代替または追加により、一例として、射出成形材料の射出成形金型に少なくとも2つの異なる射出開口が設けられるように構成することも可能である。このため、金型中の射出成形材料の流れは、さまざまな段階での強化要素の追加により、いずれの場合にも、射出成形プロセスのさまざまな段階に従って、強化要素が射出成形材料の主流方向ひいては異なる方向に配置可能となるように、成形プロセス中に目標とする様態で変更可能である。この目的のため、一例として、第1および第2の射出開口を通して第1および第2の量の射出成形材料をそれぞれ、連続的もしくは同時的または互いに可変割合で射出可能である。
【0060】
以下、図面中の例示的な実施形態に基づいて、本技術革新を提示および説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】患者の心室に導入されたカテーテルポンプの模式断面図である。
【
図2a】血液を搬送するカテーテルポンプのロータの詳細を示した図である。
【
図2b】一例として繊維が示された展伸ロータの断面図である。
【
図2c】第3の状態すなわち動作状態におけるロータの断面図である。
【
図2e】一例として曲げ中立面のマーキングおよび強化繊維を示したインペラ要素の断面図である。
【
図3】ロータの回転軸線を含む平面の模式図である。
【
図4】強化用繊維を備えた平面状のインペラ要素の詳細を示した図である。
【
図5a】成形プロセス中の繊維の配向を示した図である。
【
図6】屈曲プロセス後のインペラ要素の
図4および
図5に示す部分を示した図である。
【
図7】ロータ用の成形具であって、成形プロセスが流れ矢印で示された模式図である。
【
図8】射出方向が
図7と反対のロータ用の金型を示した図である。
【
図9】インペラ要素のボリューム中の射出成形材料の旋回を防止する措置が施された金型を示した図である。
【
図11】膜状のストリップ形状強化要素を示した図である。
【
図14a】力が加わっていない状態の繊維で構成された織物を示した図である。
【
図15a】外力の作用のない展開状態のインペラ要素の斜視図である。
【
図15b】
図15aのA-A矢視断面におけるインペラ要素の断面図である。
【
図16a】外力の作用のない展開状態のインペラ要素の斜視図である。
【
図16b】
図16aのB-B矢視断面におけるインペラ要素の断面図である。
【
図17a】外力の作用のない展開状態のインペラ要素の側面図である。
【
図17b】
図17aのC-C矢視断面におけるインペラ要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、複数の心室を有する患者の心臓1の断面図であって、心室2が大動脈12に接続されている。大動脈12を通じてカテーテル4が心室2まで進められており、回転ポンプを備えたポンプヘッド3がカテーテル4の端部に配置されている。回転ポンプは、カテーテル4を通って延びる回転可能なシャフト6により駆動可能であり、このシャフトは、ポンプヘッド3内でポンプロータ42に接続されている。ポンプロータは、ポンプヘッド3のハウジング(詳しくは図示せず)において回転する。
【0063】
可撓性のシャフト6は、たとえば患者の身体の外側に配置されたモータ7に接続されている。トルクは、たとえば磁気結合によって、モータ7から両回転方向8、9でシャフト6に伝達可能である。
【0064】
カテーテル4は通例、身体の外側からポートを介して、皮膚および組織のほか、血管壁を通して大動脈12およびその内部へと進められる。
【0065】
ポンプは、心室2の血液を吸引して、大動脈12に搬送する。このように、心臓ポンプは、心臓1の機能の補助または少なくとも一時的な置換が可能である。
【0066】
図示した機械的駆動のカテーテルポンプのほか、たとえば人体内で駆動されるポンプを含む液圧または電気駆動のポンプ等、特に体内使用の他のポンプもまた、本特許の課題を構成する。
【0067】
上記ポンプは、ポンプヘッド、ポンプハウジング、およびロータと併せて、動脈中を変位するために半径方向に圧縮され、たとえばカテーテル4内で変位する。その後、ポンプは、カテーテル4から軸方向に滑り出て、半径方向に展延すなわち展開可能である。このプロセスにおいては、ポンプハウジング、特に、ポンプロータの材料に高い要求が課される。ポンプロータのインペラ要素は、壁厚が非常に薄いものの、寸法が安定して、高回転速度であっても、血液を再現性よく搬送する必要がある。
【0068】
この目的のため、ロータが構成されるプラスチックのマトリクスに強化繊維(繊維)が埋め込まれ、たとえば、ガラス繊維またはポリカーボネート繊維として設けられ得る。このような強化要素/繊維は、3つの個別例にて
図2aに図示している。3つの強化要素/繊維10、11、13を示しており、それぞれ、当該強化要素/繊維10、11、13の第2の端部/第2の部分10b、11b、13bよりも回転軸線14に近い第1の端部または第1の部分10a、11a、13aを有する。
【0069】
強化要素/繊維10、11、13は実質的に、ロータの回転軸線14または回転軸線近傍の点から半径方向外方に延びている。ここで、ロータ42は、図示の例のようにハブ43を有する必要がない。また、螺旋状のインペラ要素15は、ロータハブが不要となるように、固有の安定性を有し得る。
【0070】
原理上、1つ以上のインペラ要素15のプラスチックマトリクスは、長さ、および/または厚さ、および/または配向に関して不規則に分布および配置された強化要素/繊維によって強化可能である。一態様では、
図2bに示すロータの展開状態における強化要素/繊維の特定の最小群が回転軸線から遠ざかるように実質的に伸長して延びている。第3の状態に対応するとともに
図2cに示す動作状態においては、これらの強化要素/繊維が伸長するとともに、搬送液体の荷重により生じた引張応力をさらに受ける。ただし、この引張応力は、強化要素/繊維の長手方向の強度のため、顕著な伸延には結び付かず、応力のない展開状態と比較して、ロータの形態が変化することはほとんどない。すなわち、特定の動作点を超えてさらに変形することはない。ロータのプラスチックに埋め込まれた強化要素/繊維全体のうち、上記条件を満たす強化要素/繊維の群は、強化要素/繊維の体積もしくは質量による割合測定または強化要素/繊維の数に基づいて、少なくとも30%とするが、50%が好都合であり、たとえば70%がさらに好都合である。ここでは、たとえばロータの半径の少なくとも約20%、少なくとも40%、または50%等、強化要素/繊維の特定の最小長さが与えられるのが好都合である。強化要素/繊維は、金型の充填時に、ハブ43への軸方向の充填に対応する軸方向配向から、曲げられることなくインペラ要素15の半径方向位置へと容易に変化し得る。これは、インペラ要素15とハブ43との間の角度が30°未満、好ましくは20°未満で、比較的平坦に伸びているためである。このように、強化要素/繊維は、インペラ要素15の半径方向充填時に、周囲のマトリクスによって容易に取り込まれるとともに、
図2aに係るインペラ要素中の材料流れによって、半径方向に配向する。
【0071】
強化要素/繊維の別の有利な特性は、固有の最大厚さであり、前記強化要素/繊維の強い湾曲の場合でも強化要素/繊維が破壊されないように、最大40μmの直径が好都合となり得る。これに対して、約40μmの寸法においては、強化要素/繊維は、変形後に周囲のマトリクスを最初の状態に戻すとともに、永久的な曲げ荷重下でのマトリクスの長期クリープを防止するのに十分な曲げ剛性である。また、直径40μmの強化要素/繊維は、圧縮応力および引張応力に対する耐性を示して、湾曲中立領域外での配置により、復元モーメントを生じるとともに別の変形に抗する。
【0072】
強化要素/繊維は、接着促進剤で被覆して、マトリクスへの接続を改善可能である。
【0073】
図2bは、展伸、展開状態のインペラ要素15’、15’’を備えたロータ42’の断面を示している。この状態の強化要素/繊維55、56は、最大限に伸長した形態であるため、その長手方向の剛性により、ロータのさらなる変形に抗する。
【0074】
矢印57は、動作状態におけるロータの回転方向を示している。矢印58、59は、搬送移動の結果としてインペラ要素15’、15’’に作用する荷重すなわちインペラ要素に作用する流体抵抗圧を示している。
図2bは、回転軸線から半径方向に測定したインペラ要素15’の高さを表す弦60を示している。
【0075】
第3の状態すなわち動作状態におけるロータ42’を示した
図2cにも弦60を示している。強化繊維55、56は、荷重58、59に起因する引張応力を受けており、インペラ要素15’、15’’に生じるひずみを吸収する。弦60の長さすなわちインペラ要素の高さは、第2の状態と比較して、動作状態では一定のままである。あるいは、わずかに増加するものの、小さくなることはない。
【0076】
図2dは、圧縮形態のロータ42’を示しており、インペラ要素がロータハブに対して折り畳まれている。この位置では、狭いチャネルを通して手術部位までポンプを運ぶことができる。
【0077】
図2eは、インペラ要素15’の動作状態の詳細断面図である。「曲げ中立繊維」または「曲げ中立面」を破線61で示している。すなわち、荷重下で、インペラ要素15’が曲げられた場合に、引張りも圧縮も生じない線または面である。一例として62、63で示す複数の強化繊維は、線/面61の、動作状態において引張応力が生じる側に存在する。強化要素/繊維は、ここで部分的に伸長して、真っ直ぐかつ線/面61と実質的に平行に延びる。結果として、強化要素/繊維は、引張応力を効果的に吸収することができる。
【0078】
図3に基づいて、強化要素/繊維の考え得る配向を詳細に説明する。
図3においては、ロータハブを16で示すとともに、回転軸線を14で示している。切断矩形に基づく平面17を示しているが、この平面17は、回転軸線14を含む。すなわち、回転軸線14は、完全に平面17内を延びている。この図は、インペラ要素が通例は螺旋状であり、平面17が平坦ではなく湾曲することから、略図であることに留意するものとする。
【0079】
一例として、2つの強化要素/繊維18、19を示しているが、両者とも、回転軸線14に関して、平面17中で実質的に半径方向に延びている。繊維18は、回転軸線14に対して角度αで延びており、軸方向成分を有するが、この角度αは、45°~90°が好都合である。繊維19は、回転軸線14に対して直角に配置されるように配向している。実際のブレードは、3次元の螺旋状に湾曲しているため、多くの場合、方位角方向の強化要素/繊維の範囲が制限される。
【0080】
個々の強化要素/繊維は、最初の開始点/終了点が回転軸線14またはロータハブ16の領域内となるように位置決めする必要がない。また、個々の強化要素/繊維は、ロータ軸14および/またはロータハブ16から半径方向に離れた2つの端点間で延びるように配置可能である。ただし、軸線を越える如何なる場合も、個々の強化要素/繊維は、第1の半径方向外側ブレード縁部から最大で第2の半径方向反対側ブレード縁部へと延伸可能である。
【0081】
インペラ要素の細部20を
図4に模式的に示しているが、この細部20は、立方体状である。部分20には繊維19を示している。
【0082】
図5aは、繊維19の中央配向の実現方法を明示している。境界壁53および54間の金型を充填する際の好ましくは層状の流れプロファイルは、中央で最高流速、壁近傍で最低流速となる。最初に傾斜している繊維19は、左側から右側へと連続して達する3つの角度位置に示しており、矢印50、51で示す材料流れによって、金型中の速度分布の結果として流れプロファイルの中央の方向に引き寄せられる。流れの速度分布は、軸x(速度)およびy(金型中の位置座標)によって図中のグラフ52に示している。
【0083】
図5bは、インペラ要素の境界面間の略中央の繊維19の延伸方向が見えるように、部分20の材料を透視して示した側面図である。
【0084】
以下、
図6に基づいて、インペラ要素の大きな湾曲または屈曲下での繊維の挙動を説明する。
【0085】
図6は、屈曲後のインペラ要素の部分20を示している。繊維19も変形している。ただし、繊維の特定の固有剛性のため、屈曲の場合には、インペラ要素の材料の弾性によって矢印21の方向へ外方に突出し得るため、繊維の考え得る最大限の曲率半径が実現され、繊維の破壊が防止される。したがって、屈曲点の領域では、屈曲の間、インペラ要素の境界壁間の中央から繊維19が逸れる。
図6においては、明瞭化のため、インペラ要素の中心面の少なくとも一部を点線22で示している。この効果を実現するには、ロータのプラスチックマトリクスの柔軟性が好都合であり、100D未満、特に80D未満のショア硬度に相当する。
【0086】
以下、
図7に基づいて、本発明に係るロータ用の成形具/金型の本発明に係る設計を論じる。
【0087】
図7は、射出成形金型の長手方向断面図であって、ロータハブのボリュームを含む領域を23で示すとともに、個々のインペラ要素のボリュームを24、25、26、および27で示している。また、
図7においては、射出方向を矢印28で示している。その他の矢印29、30、31、32、33は、射出成形材料が最終的なロータの回転軸線14に沿って軸方向に流入し、そこから半径方向外方に、インペラ要素のボリュームに流れ込むことを示している。一例として、インペラ要素のうちの1つの長手軸線を一点鎖線44で示している。十分な数の適当な長さの強化要素/繊維が射出成形材料に導入された場合、これらの強化要素/繊維は、材料の主流方向に従って配向するとともに、材料の固化に際してそれを維持する。
【0088】
追いやられた空気および過剰な成形材料は、インペラ要素の半径方向外側端において、開口45から流出可能である。
【0089】
図8には、反対の射出方向を示しており、インペラ要素の半径方向外側端34、35からロータ23のボリュームへと射出成形材料が半径方向内方に射出される。この場合も、長い強化要素/繊維を導入可能であり、本発明に従って意図されるように配向および配置される。
【0090】
図9に基づいて、狭隘(きょうあい)なインペラ要素36、37の場合には、内側から半径方向に流出する成形材料が特定のインペラ要素のボリュームの縁部38、39で摩擦により旋回するため、成形材料が流入時に層流とならないことを示す。
【0091】
図9の左側には、縁部40、41の領域に溢流開口または溢流スロットを有する金型の変形例を示しており、これらを通って射出成形材料の一部がロータの軸方向に流出可能であることから、
図9の右側に示した旋回が除去される。インペラ要素37の中央領域には、このように疑似層流が形成されるため、(ポンプ動作時に発生する曲げ荷重下での)「中立繊維」または中立面周りの領域において、射出成形材料の流れの影響による変形なく、導入された強化要素/繊維自体が伸長形態となり得る。射出成形材料が固化すると、たとえば切除によって、射出成形金型中のインペラ要素のボリュームの縁部40、41の開口から退出可能な一部が除去される。この状況は、
図7のように、インペラ要素の外側縁部においても同じとなり得る。ここには、強化要素/繊維のないプラスチックが漏出可能な溢流チャネル45が設けられている。
【0092】
流出開口の非対称分布(たとえば、動作時に液体の流体抵抗圧に曝されるインペラ要素の領域近傍のより大きな流出断面)により、そこでは、成形材料の流れがより強くなるため、「中立面」の反対側よりも多くの強化要素/繊維が埋め込まれ、その結果として、多数の強化要素/繊維により引張応力が吸収され得る。
【0093】
図10は、第1の射出開口71および第2の射出開口72を備えた射出成形金型70を模式的に示しており、これら2つの射出開口71、72は、ロータのハブが成形プロセスで形成される中心空洞73の互いに反対側の端に配置されている。インペラ要素が形成される空洞は、かなり模式的に図示しており、74および75で示している。矢印76、77は、金型に流入するプラスチックの流れ方向を示している。プラスチックが第1の射出開口71および第2の射出開口72から金型へと連続的または交互の割合で射出されている場合は、液体成形材料の異なる流れ方向が形成される。これに強化要素が追加されると、作製されたロータにおいても、強化要素が異なる配向となる。このように、成形法において、射出開口を通る射出速度を制御するとともに、さまざまな射出開口を通る射出速度または射出速度の比を変化させることにより、異なる配向パターンを与えることができる。
【0094】
金属箔またはプラスチック膜78の形態の強化要素の斜視図を
図11に示すが、この箔/膜は一例として、厚さがわずか数マイクロメートル、幅が10分の数ミリメートル、長さが数ミリメートルであってもよい。
【0095】
図12は、強化要素としての細長織物ストリップを示しており、長手方向に延びた2つだけの繊維79、80と、横方向に延びた複数の短繊維81とを模式的に有する。この種の織物は、存在する繊維の長手両方向で、引張力を十分に吸収可能である。
【0096】
図13は、インペラ要素82の領域を示した模式断面図である。ここで、83は、動作中に圧迫側に存在して、矢印84で示す流体抵抗圧に曝露されるカバー面を示している。
【0097】
これと反対側またはカバー面83の反対のカバー面は、85で示している。図示の例においては、インペラ要素82のこちら側に被膜86が設けられているが、これは、接着膜または液体被膜(たとえば、ニス塗装)によって設けることができる。
【0098】
また、ポンプ動作時のインペラ要素82の湾曲に際して機械学の意味で中立「繊維」または平面として知られているものを点線87で示している。
【0099】
図13に示すインペラ要素が力の加わっていない状態すなわちインペラ要素に外力が作用していない状態と考えられる場合は、この状態において、一例として88で示す強化要素が伸長形態で力が加わらずに存在するように構成することも可能である。
【0100】
流体中のロータの回転に際して、流体抵抗圧84の作用により、矢印84の方向の湾曲力がインペラ要素に作用すると、インペラ要素の湾曲の結果として図の左側に配置された中立繊維87側が長くなるため、強化要素88は引張荷重を受ける。強化要素88が実際には伸長に抗するため、これらによって湾曲が制限される。
【0101】
力が加わらない第2の状態と第3の状態すなわち荷重印加状態との間のロータの形態の差異をさらに抑えるため、力が加わらない状態すなわちロータに外力が作用しない状態において、強化要素88に内部材料応力を前もって加えるように構成することも可能である。これは、ロータの作製後、より具体的には、射出成形プロセスの完了後、インペラ要素がカバー面83側で伸長されるか、または、カバー面85側で収縮される点において実現される。
【0102】
これは一例として、たとえば射出成形金型の含浸により、射出成形プロセス後または射出成形プロセス中に被膜86がカバー面85に適用される点において実現されるが、この被膜は、乾燥もしくは架橋中またはその後の処理、特に、電子線架橋、UV架橋、もしくは熱処理によって収縮され得る。また、電子線架橋は一例として、1本以上のレーザビームにより導入可能であるため、ごく集中的な様態で局所的に適用可能である。
【0103】
ただし、カバー層86の追加または代替として、カバー層85に対向する繊維87の中立平面側のインペラ要素82の材料が、たとえばインペラ要素の他方側では一切またはわずかにしか生じない熱処理または架橋/重合によって収縮されることも考えられる。
【0104】
図14aおよび
図14bは、一例として、繊維で構成された織物を示している。ここで、繊維90は、繊維束の一部として、他の繊維束91に対するある角度で延びているが、繊維束91は、図の平面に垂直に配置されており、繊維90は、左右交互に繊維束91を通過している。ロータの展伸状態を表す
図14aにおいて、繊維束91は、互いに距離aで配置されており、繊維90は、前後に湾曲した延伸方向を有する。動作中のロータの状態を表す
図14bにおいて、繊維束91は、より大きな相互距離a’で配置されており、繊維90は、より小さく湾曲した延伸方向を有する。
図14aおよび
図14bから、この種のシステムは、繊維90が完全に伸長する前に、実質的な安定状態となっていることが明らかである。
図14bの状態を過ぎると、基材中の繊維90に対して直角に繊維束91が移動する必要があるものの、基本的には、繊維束91および繊維90によってこれが阻止されるためである。
【0105】
図15aは、力が加わらない展開状態のロータの斜視図であって、断面A-Aも示している。
図15bは、前記断面に沿った同じロータの断面図である。点線101および102は、各ブレードの中立繊維または表面を表している。繊維103および104は、一例として、図示の平断面における2つの繊維の延伸方向を示している。繊維は、この状態で湾曲している。荷重下の動作状態では、流体によって、図示の矢印の方向の圧力がブレードに作用するため、前記ブレードがさらに展開される。完全な動作荷重下では、少なくとも105および106で示す領域において、繊維103および104がそれぞれ伸長するため、ブレードのさらなる展開は阻止される。これは、大変高い張力が掛かっている繊維が、軸線方向に更に伸長されなければならないためである。このような設計の利点として、最小回転速度を上回る場合は、ブレードの形態が事実上一定である。
【0106】
図16aは、力が加わらない展開状態のロータの斜視図であって、断面B-Bも示している。
図16bは、前記断面に沿った同じロータの断面図である。点線111および112は、各ブレードの中立繊維または表面を表している。繊維113および114は、一例として、図示の断面における2つの繊維の延伸方向を示している。図示の通り、この例の繊維は、すでに最大限に伸長している。繊維には、大変高い張力が掛かっていることから、これ以上長くなる可能性はほとんどない。動作状態で発生し、流れの圧力によってブレードに作用する
図16bの矢印で示す力が加わっても、このようなブレードは、それ以上あまり変形しないため、事実上、回転速度の全範囲でブレードの形態が不変となる利点がある。
【0107】
図17aは、力が加わらない展開状態のロータの側面図であって、断面C-Cも示している。
図17bは、前記平断面に沿った同じロータの断面図である。点線121および122は、各ブレードの中立繊維または表面を表している。繊維123および124は、一例として、図示の平断面における2つの繊維の延伸方向を示している。図示の通り、この例の繊維は、すでに広い領域で伸長している。繊維には、大変高い張力が掛かっていることから、これ以上繊維が長くなる可能性はほとんどない。動作状態で発生し、流れの圧力によってブレードに作用する
図17bの矢印で示す力が加わっても、このようなブレードは、それ以上あまり変形しない。
【0108】
上述の特徴の結果、特に、ロータの設計および適当な強化要素/繊維の導入の結果として、一部が伸び過ぎたり、または荷重が頻繁に切り替わったり、または曲げ荷重が一定に印加されたりした後でも、形態が十分に正確なロータの安定な設計が実現される。説明された作製方法および提示の射出成形金型の結果として、提示のロータを作製するための好都合かつ有利な可能性が立証された。
【0109】
本発明は、以下の態様も包含するが、これらについても個々に、個別かつ独立して保護され得る。
【0110】
第1の態様:圧縮性の流体ポンプ、特に、血管を通じて患者の身体に導入可能な血液ポンプ用のロータであって、1つ以上のインペラ要素(15)を有するとともに第1の状態である圧縮状態と第2の状態である半径方向展開状態との間で半径方向に圧縮および展開可能であり、少なくとも一部が撚り糸状の強化要素、特に、繊維により強化されたプラスチックから成り、回転軸線周りに回転するように意図され、第1の状態、すなわち圧縮状態では予荷重が与えられ、第2の状態、すなわち展開状態では外部応力が加わらず、当該ロータ(42)が荷重下の動作状態で想定する第3の状態が存在しており、当該ロータの第2の状態において、強化要素の引張および/または伸長を引き起こす材料応力が選択的に生成されるように、当該ロータのさまざまな材料およびその分布が相互に適応されたことを特徴とするロータ。
【0111】
第2の態様:第1の態様に記載のロータであって、強化要素が、当該ロータの大部分、少なくとも表面の90%、特に、99%の部分、より詳細には全体が構成されるプラスチックにより囲まれるようにさらに構成されたことを特徴とするロータ。
【0112】
第3の態様:第1または第2の態様に記載のロータであって、強化要素が埋め込まれたプラスチック材料が、少なくともインペラ要素の流体抵抗圧作用側と比較して、動作中のインペラ要素の流体抵抗圧非作用側、特に、曲げ荷重下のポンプ動作中に湾曲中立繊維または平面を構成する繊維または表面に関するインペラ要素の対応側の領域において異なる特性を有し、特に、流体抵抗圧非作用側でより多く架橋もしくは収縮しているか、または、インペラ要素上で収縮した支持部であって、1つ以上の膜、被膜、もしくは繊維の形態で設けられた、支持部を表面上に有するようにさらに構成されたことを特徴とするロータ。
【0113】
第4の態様:第1、第2、または第3の態様に記載のロータであって、当該ロータの1つ以上のインペラ要素が、展開状態における強化要素の同時追加を伴う射出成形によって作製され、強化要素が、射出成形材料によって全面が囲まれ、展開状態において少なくとも部分的に伸長した形態で存在しており、特に、少なくとも90%、より詳細には95%、さらに詳細には99%の程度まで伸長した形態で存在するようにさらに構成されたことを特徴とするロータ。
【0114】
第5の態様:第1、第2、第3、または第4の態様に記載のロータであって、流体抵抗圧のない当該ロータの第2の状態である展開状態における強化要素が、流体抵抗圧のある動作状態を構成する第3の状態への遷移に際して、5%未満、特に、1%未満だけ長くなる程度まで伸長した形態で存在しており、上記延長が、特に強化要素の両端間の距離に基づいて測定されるようにさらに構成されたことを特徴とするロータ。
【0115】
第6の態様:第1、第2、第3、第4、または第5の態様に記載のロータであって、当該ロータの第2の状態である展開状態および/または流体抵抗圧のある第3の状態である動作状態において、強化要素の少なくともある群、特に、少なくとも10%、より詳細には少なくとも30%が、インペラ要素の少なくとも1つの湾曲領域で伸長して真っ直ぐに延びるようにさらに構成されたことを特徴とするロータ。
【0116】
第7の態様:特に第1の態様に記載の流体ポンプ用のロータを作製する方法であって、射出成形の後、ロータが、動作中のインペラ要素の流体抵抗圧作用側の成形材料が反対側と異なる収縮および/または架橋となる処理を受けるように構成されたことを特徴とする方法。
【0117】
第8の態様:射出成形によって、特に第1の態様に記載の流体ポンプ用のロータを作製する方法であって、動作中のインペラ要素の流体抵抗圧曝露側と反対側のインペラ要素のうちの少なくとも1つに収縮可能層が適用されるように構成されたことを特徴とする方法。
【0118】
第9の態様:第1の態様に記載のインペラ要素を備えた流体ポンプ用のロータ用の金型であって、少なくとも2つの異なる射出開口が設けられたことを特徴とする金型。
【0119】
第10の態様:上記態様のいずれか1項に記載のロータであって、強化要素が、2次元範囲を有し、たとえば、繊維群が互いに交差した膜片または織物として具現化されるように構成されたことを特徴とするロータ(
図14aおよび
図14b参照)。
【0120】
<付記>
[1]
圧縮性の流体ポンプ、特に、血管を通じて患者の身体に導入可能な血液ポンプ用のロータであって、1つ以上のインペラ要素(15)を有するとともに第1の状態である圧縮状態と第2の状態である半径方向展開状態との間で半径方向に圧縮および展開可能であり、少なくとも一部が撚り糸状の強化要素、特に、繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)により強化されたプラスチックから成り、回転軸線(14)周りに回転するように意図され、前記第1の状態である圧縮状態では引っ張られ、前記第2の状態である展開状態では外部応力が加わらず、当該ロータ(42)が荷重下の動作状態で想定される第3の状態が存在しており、前記第3の状態における当該ロータの前記繊維が、少なくとも部分的に伸長して延びることを特徴とする、ロータ。
[2]
上記[1]に記載のロータであって、当該ロータの前記第3の状態(動作状態)における前記強化要素、特に、前記繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)が、引張応力が生じる当該ロータ(42)の領域において少なくとも一部が伸長して延びるとともに、実質的に前記引張応力の方向に延びることを特徴とする、ロータ。
[3]
上記[1]または[2]に記載のロータであって、前記強化要素、特に、前記繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の過半数が、前記動作状態で引張応力が生じる当該ロータおよび/または前記インペラ要素の領域に配置されたことを特徴とする、ロータ。
[4]
上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータ(42)の場合、外形に関する限りは、前記第2の状態である展開状態と前記第3の状態である動作状態との間に実質的な差異がないことを特徴とする、ロータ。
[5]
上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素、特に、前記繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)が、半径方向に前記回転軸線(14)を越えて延びるように設けられたことを特徴とする、ロータ。
[6]
上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のロータであって、前記動作状態においては、前記強化要素、特に、前記繊維の少なくとも一部、特に、前記強化要素/繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の大部分が、部分的に真っ直ぐに延びることを特徴とする、ロータ。
[7]
上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のロータであって、動作状態においては、前記強化要素、特に、前記繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の少なくとも一部、特に、前記強化要素/繊維の大部分が、材料強度学の意味において前記インペラ要素(15)の中立繊維(中立軸)および/または中立面よりも小さな曲率で前記インペラ要素の長手方向に沿って延びることを特徴とする、ロータ。
[8]
上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータ(42)の前記プラスチックのショア硬度が100D未満、特に、80D未満であることを特徴とする、ロータ。
[9]
上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータ(42)の前記展開状態における前記強化要素/繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の30%超、特に、50%超の第1の群が、前記回転軸線(14)に最も近く配設された部分(10a、11a、13a)から前記回転軸線(14)の遠くに配設された第2の部分(10b、11b、13b)へと実質的に伸長して延びることを特徴とする、ロータ。
[10]
上記[1]~[9]のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素/繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の30%超、特に、前記強化要素/繊維の50%超である前記強化要素/繊維の第1の群が、前記展開状態における当該ロータ(42)の半径方向に測定して、前記インペラ要素(15)の最大高さの少なくとも30%、特に、少なくとも50%に対応する長さを有することを特徴とする、ロータ。
[11]
上記[9]または[10]に記載のロータであって、前記強化要素/繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の前記第1の群が、前記回転軸線(14)と実質的に垂直に延びることを特徴とする、ロータ。
[12]
上記[1]~[11]のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素/繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)、特に、前記強化要素/繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の前記第1の群の直径が、40マイクロメートル未満であることを特徴とする、ロータ。
[13]
上記[1]~[12]のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素/繊維(10、11、13、18、19、55、56、62、63)の表面に接着促進剤が設けられたことを特徴とする、ロータ。
[14]
上記[1]~[13]のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータの前記展開状態における強化要素/繊維のある群が、前記第1の部分の前記強化要素/繊維に対して横方向に延び、特に、平均で少なくとも30°の角度を含むことを特徴とするロータ。
[15]
上記[1]~[14]のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素/繊維の少なくとも一部が、繊維が長手方向および横方向に延びた織物部の形態で存在することを特徴とするロータ。
[16]
上記[1]~[15]のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素が、長さが幅の少なくとも3倍、特に、少なくとも5倍、より詳細には少なくとも10倍の膜ストリップの形態で存在することを特徴とするロータ。
[17]
上記[1]~[16]のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素が、当該ロータの大部分、少なくとも表面の90%、特に、99%の部分、より詳細には全体が構成されるプラスチックにより囲まれたことを特徴とするロータ。
[18]
上記[1]~[17]のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素が埋め込まれたプラスチック材料が、少なくとも前記インペラ要素の流体抵抗圧作用側と比較して、動作中の前記インペラ要素の流体抵抗圧非作用側の領域において異なる特性を有し、特に、流体抵抗圧非作用側でより多く架橋もしくは収縮しているか、または、前記インペラ要素(82)上で収縮した支持部(86)であって、1つ以上の膜、被膜、もしくは繊維の形態で設けられた、支持部(86)を表面上に有していることを特徴とするロータ。
[19]
第1の状態である圧縮状態と第2の状態である展開状態との間で半径方向に展開および圧縮可能な圧縮性の流体ポンプ用のロータであって、当該ロータの1つ以上のインペラ要素が、前記展開状態において補強する強化要素の同時追加を伴う射出成形によって作製され、前記強化要素が、射出成形材料によって全面が囲まれ、前記展開状態において少なくとも一部が伸長形態で存在しており、特に、少なくとも90%、より詳細には95%、さらに詳細には99%の程度まで伸長した形態で存在することを特徴とするロータ。
[20]
上記[1]~[19]のいずれか1項に記載のロータであって、流体抵抗圧のない当該ロータの前記第2の状態である展開状態における前記強化要素が、流体抵抗圧のある動作状態を構成する第3の状態への遷移に際して、5%未満、特に、1%未満だけ長くなる程度まで伸長する形態で存在しており、前記伸張が、特に強化要素の両端間の距離に基づいて測定されることを特徴とするロータ。
[21]
上記[1]~[20]のいずれか1項に記載のロータであって、当該ロータの第2の状態である展開状態および/または流体抵抗圧のある第3の状態である動作状態において、前記強化要素の少なくともある群、特に、少なくとも10%、より詳細には少なくとも30%が、前記インペラ要素の少なくとも1つの湾曲領域で伸長して真っ直ぐに延びることを特徴とするロータ。
[22]
上記[21]に記載のロータであって、インペラ要素の湾曲領域において、前記強化要素の少なくとも2つの群が、伸長して真っ直ぐに延びており、前記群の前記強化要素が延びる方向が、同じ群内では平行であるものの、前記2つの異なる群間では異なることを特徴とするロータ。
[23]
上記[1]~[22]のいずれか1項に記載のロータであって、少なくとも30%、特に、少なくとも50%の場合の前記強化要素の長さが、前記インペラ要素の平均厚さより大きく、特に、少なくとも2倍の長さ、より詳細には少なくとも5倍または10倍の長さであることを特徴とするロータ。
[24]
上記[1]~[23]のいずれか1項に記載のロータであって、前記強化要素、特に、前記繊維が、埋め込まれるプラスチックに射出成形時に導入され、当該ロータが射出成形金型に配設されるときに、前記プラスチックの前記射出成形金型への流れに沿って部分的に湾曲した延伸方向を有することを特徴とするロータ。
[25]
成形法、特に、射出成形法により、上記[1]~[24]のいずれか1項に記載のロータ(42)を作製する方法であって、前記インペラ要素(15)の材料が、前記成形材料が半径方向(30、31、32,33)に個々のインペラ要素のボリュームに流れ込むように、前記回転軸線(14)に関して半径方向に、前記インペラ要素のボリュームに導入されることを特徴とする、方法。
[26]
上記[1]~[24]のいずれか1項に記載のロータを作製する方法であって、前記ロータが、成形法、特に、射出成形法によって作製され、前記射出成形法が、異なる射出方向および/または2つの異なる射出点からの2つの連続する段階で実行されることを特徴とする方法。
[27]
上記[25]または[26]に記載の方法であって、前記射出成形の後、前記ロータが、動作中の前記インペラ要素の流体抵抗圧作用側の前記成形材料が反対側と異なる収縮および/または架橋となる処理を受けることを特徴とする方法。
[28]
上記[25]~[27]のいずれか1項に記載の方法であって、動作中の前記インペラ要素の流体抵抗圧曝露側と反対側の前記インペラ要素のうちの少なくとも1つに収縮可能層が適用されることを特徴とする方法。
[29]
上記[1]~[24]のいずれか1項に記載のロータ(42)用の金型であって、前記成形材料が半径方向に妨げられずに流れ得るように、前記インペラ要素(15)のボリュームの半径方向縁部(40、41)に溢流チャネルが設けられたことを特徴とする金型。
[30]
上記[1]~[24]のいずれか1項に記載のロータ用の金型であって、少なくとも2つの異なる射出開口を特徴とする金型。