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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002689
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】CFRP成形用型材
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20231228BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B29C33/38
C08J5/00 CEY
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102041
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000149136
【氏名又は名称】日本インシュレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健志
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 吉昭
【テーマコード(参考)】
4F071
4F202
【Fターム(参考)】
4F071AA31
4F071AB26
4F071AB28
4F071AD01
4F071AD02
4F071AF13Y
4F071AF54Y
4F071AH19
4F071BA07
4F071BB01
4F202AB16
4F202AB17
4F202AB18
4F202AB25
4F202AC03
4F202AJ03
4F202AJ04
4F202AJ07
4F202AM32
4F202AR15
4F202CA03
4F202CA09
4F202CA30
4F202CB01
4F202CD30
4F202CK11
4F202CK90
4F202CM90
(57)【要約】
【課題】寸法安定性に優れると共に高い引張り強度を有する成形用型材を提供する。
【解決手段】本発明は、CFRP成形用型材であって、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムと、アクリル系樹脂と、無機繊維質粒子とを少なくとも含有する成形体を備え、前記成形体中、前記ゾノトライト系ケイ酸カルシウムの含有割合が50~80質量%であり、前記アクリル系樹脂の含有割合が6~15質量%であり、前記無機繊維質粒子の含有割合が10~30質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CFRP成形用型材であって、
ゾノトライト系ケイ酸カルシウムと、アクリル系樹脂と、無機繊維質粒子とを少なくとも含有する成形体を備え、
前記成形体中、
前記ゾノトライト系ケイ酸カルシウムの含有割合が50~80質量%であり、
前記アクリル系樹脂の含有割合が6~15質量%であり、
前記無機繊維質粒子の含有割合が10~30質量%である、CFRP成形用型材。
【請求項2】
前記無機繊維質粒子がワラストナイトを含む、請求項1に記載のCFRP成形用型材。
【請求項3】
前記成形体は、補強繊維を1~10質量%含む、請求項1又は2に記載のCFRP成形用型材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CFRP成形用型材に関する。
【背景技術】
【0002】
CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics;炭素繊維強化プラスチック)は、樹脂と炭素繊維との複合材料であり、優れた強度や剛性を有することから、土木建築、自動車、航空機、医療機器等の各種用途に広く利用されており、産業界においてその利用価値が極めて高い材料の一つである。
【0003】
CFRPの成形方法は種々知られており、代表的にはオートクレーブ成形法が挙げられる。斯かるオートクレーブ成形法では、所望の形状のCFRP成形体を得るために成形型を使用する。成形型としては、一般的には量産を目的として金属型が用いられ、また、試作品のCFRP成形体を製造する場合は、切削性が良く材料コストも安価であるケイ酸カルシウム成形体が用いられている。例えば、特許文献1には、所定CaO/SiO比で構成されるケイ酸カルシウム水和物(バインダー)と、ガラス繊維と、滑り材を含む無機充填材とを含有するCFRP成形用の成形型基材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-132670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケイ酸カルシウムを含有する成形体は、例えば、吸湿等の影響で寸法が変化しやすいという問題があった。加えて、成形型からCFRPを脱型する際に成形型が破損しないことも求められているところ、従来のケイ酸カルシウムを含有する成形体は引張り強度(層間強度)が十分ではなく、脱型時の破損が起こりやすいものであった。この観点から、CFRP成形においては、寸法安定性に優れると共に高い引張り強度を有する成形用型材(成形型基材)が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、寸法安定性に優れると共に高い引張り強度を有する成形用型材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム、アクリル系樹脂及び無機繊維質粒子を所定の割合で含有する成形体により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
CFRP成形用型材であって、
ゾノトライト系ケイ酸カルシウムと、アクリル系樹脂と、無機繊維質粒子とを少なくとも含有する成形体を備え、
前記成形体中、
前記ゾノトライト系ケイ酸カルシウムの含有割合が50~80質量%であり、
前記アクリル系樹脂の含有割合が6~15質量%であり、
前記無機繊維質粒子の含有割合が10~30質量%である、CFRP成形用型材。
項2
前記無機繊維質粒子がワラストナイトを含む、項1に記載のCFRP成形用型材。
項3
前記成形体は、補強繊維を1~10質量%含む、項1又は2に記載のCFRP成形用型材。
【発明の効果】
【0009】
本発明のCFRP成形用型材は、寸法安定性に優れると共に高い引張り強度を有し、CFRP成形用の型材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
本発明のCFRP成形用型材は、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムと、アクリル系樹脂と、無機繊維質粒子とを少なくとも含有する成形体を備える。前記成形体中、前記ゾノトライト系ケイ酸カルシウムの含有割合が50~80質量%であり、前記アクリル系樹脂の含有割合が6~15質量%であり、前記無機繊維質粒子の含有割合が10~30質量%である。
【0012】
本発明のCFRP成形用型材(以下、「本発明の型材」と略記する)は、寸法安定性に優れると共に高い引張り強度を有する。従って、本発明の型材のCFRPを成形するための型材として好適に使用することができる。
【0013】
本発明の型材は、前述のように、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムと、アクリル系樹脂と、無機繊維質粒子とを所定の割合で少なくとも含有する成形体を備える。
【0014】
成形体に含まれるゾノトライト系ケイ酸カルシウムの種類は特に限定されず、例えば、公知のゾノトライト系ケイ酸カルシウムを広く適用することができる。成形体に含まれるゾノトライト系ケイ酸カルシウムは、例えば、石灰質原料とケイ酸質原料との反応により生成するケイ酸カルシウムが挙げられる。この場合、例えば、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムは、水和物となり得る。
【0015】
石灰質原料は、例えば、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムを製造するために用いられる公知の石灰質原料を広く挙げることができ、具体的には、消石灰、生石灰等を挙げることができる。また、前記ケイ酸質原料は、例えば、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムを製造するために用いられる公知のケイ酸質原料を広く挙げることができ、例えば、珪石粉、ケイ藻土、シリカヒューム等を挙げることができる。
【0016】
ゾノトライト系ケイ酸カルシウムにおいて、CaO及びSiOのモル比を表すCaO/SiOの値は特に限定されず、例えば、0.90~1.40の範囲とすることができる。
【0017】
成形体に含まれるアクリル系樹脂の種類は特に限定されない。成形体に含まれるアクリル系樹脂は、アクリル系樹脂粒子を含むラテックスに由来するものであることが好ましい。この場合、型材の寸法安定性及び引張り強度が向上しやすい。従って、成形体に含まれるアクリル系樹脂は粒子状であることが好ましい。この場合、アクリル系樹脂粒子の平均粒子径は、例えば、10~1000nmであることが好ましく、50~500nmであることが好ましい。平均粒子径は、例えば、動的光散乱法で測定することができる。
【0018】
アクリル系樹脂の種類は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの重合体を挙げることができる。この場合、型材の寸法安定性及び引張り強度が向上しやすい。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステルの重合体はホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステルの重合体は、(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体単位を含むこともでき、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレン等を挙げることができる。アクリル樹脂が(メタ)アクリル酸エステルの重合体がコポリマーである場合、アクリルスチレンポリマーであることが好ましい。
【0020】
成形体にアクリル系樹脂を含有するために用いるアクリル系ラテックスは、例えば、公知の方法で製造することができ、もしくは市販品等から入手することも可能である。アクリル系ラテックスの市販品としては、丸菱油化工業(株)の「ウルトラゾールPJ-100」(平均粒子径80~140nm)や「ウルトラゾールJAC-100」(平均粒子径150~200nm)、日信化学工業(株)の「ビニブランVB」(平均粒子径160nm以下)や「ビニブランHS-832」(平均粒子径約330nm)等を挙げることができる。
【0021】
成形体はアクリル系樹脂を1種のみ含むことができ、あるいは、2種以上を含むこともできる。
【0022】
成形体に含まれる無機繊維質粒子の種類は特に限定されず、例えば、従来のケイ酸カルシウム成形体に含まれる無機繊維質粒子を広く適用することができる。
【0023】
無機繊維質粒子としては、ワラストナイト、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム等を挙げることができる。中でも型材の寸法安定性及び引張り強度が向上しやすくなる点で、無機繊維質粒子は、ワラストナイトを含むことが好ましい。成形体に含まれる無機繊維質粒子はワラストナイトのみからなるものであってもよい。
【0024】
無機繊維質粒子の繊維長は特に限定されず、例えば、10~1000μmとすることができ、15~600μmであることが好ましい。
【0025】
成形体は、無機繊維質粒子を1種のみ含むことができ、あるいは、2種以上を含むこともできる。
【0026】
前述のように、成形体は、前記ゾノトライト系ケイ酸カルシウムを、成形体の全質量に対して50~80質量%(すなわち、50質量%以上、80質量%以下)含む。前記ゾノトライト系ケイ酸カルシウムの含有割合が50質量%未満になると、成形体の強度が低下し、所望の引張り強度を有する型材が得られない。前記ゾノトライト系ケイ酸カルシウムの含有割合が80質量%を超過すると、成形体の強度が低下し、寸法変化率も大きくなり、所望の引張り強度及び寸法変化率を有する型材を得ることができない。
【0027】
成形体は、前記ゾノトライト系ケイ酸カルシウムを、成形体の全質量に対して53質量%以上含むことが好ましく、55質量%以上含むことがより好ましく、60質量%以上含むことがさらに好ましい。また、成形体は、前記ゾノトライト系ケイ酸カルシウムを、成形体の全質量に対して75質量%以下含むことが好ましい。
【0028】
前述のように、成形体は、前記アクリル系樹脂を6~15質量%(すなわち、6質量%以上、15質量%以下)含む。前記アクリル系樹脂の含有割合が6質量%未満になると、成形体の強度が低下し、所望の引張り強度を有する型材が得られない。前記アクリル系樹脂の含有割合が15質量%を超過すると、成形体の強度が低下し、寸法変化率も大きくなり、所望の引張り強度及び寸法変化率を有する型材を得ることができない。
【0029】
成形体は、前記アクリル系樹脂を、成形体の全質量に対して8質量%以上含むことが好まししい。また、成形体は、前記アクリル系樹脂を、成形体の全質量に対して12質量%以下含むことがより好ましく、10質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0030】
前述のように、成形体は、前記無機繊維質粒子を10~30質量%(すなわち、10質量%以上、30質量%以下)含む。前記無機繊維質粒子の含有割合が10質量%未満になると、成形体の寸法変化率が増大し、所望の寸法変化率を有する型材が得られない。前記無機繊維質粒子の含有割合が30質量%を超過すると、成形体の強度が低下し、所望の引張り強度を有する型材を得ることができない。
【0031】
成形体は、前記無機繊維質粒子を、成形体の全質量に対して15質量%以上含むことが好まししい。また、成形体は、前記無機繊維質粒子を、成形体の全質量に対して25質量%以下含むことがより好ましい。
【0032】
成形体は、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム、アクリル系樹脂及び無機繊維質粒子以外を含むことができる。例えば、成形体は、補強繊維を含むことができる。この場合、型材の強度を向上させることができる。
【0033】
補強繊維は、前述の無機繊維質粒子以外であって、例えば、従来のケイ酸カルシウム成形体に含まれる繊維材料を広く挙げることができ、例えば、各種の有機繊維、ガラス繊維を挙げることができる。有機繊維は、例えば、セルロース繊維、炭素繊維等を挙げることができる。
【0034】
成形体が補強繊維を含む場合、その含有割合は特に限定されない。例えば、成形体が補強繊維を含む場合、成形体は、前記補強繊維を1~10質量%(すなわち、1質量%以上、10質量%以下)含むことが好ましい。この場合、成形体は十分な強度を有するので、所望の引張り強度を有する型材が得られやすく、また、型材表面の毛羽立ちも抑制されやすく、平滑性が高まりやすい。
【0035】
成形体は、その他、セメント、樹脂(前記アクリル系樹脂を除く)、赤外線遮蔽物質、顔料、染料、撥水剤、界面活性剤、凝集剤、分散剤、滑り剤等、従来のケイ酸カルシウム成形体に含まれる各種添加剤を広く含むことができる。また、成形体は、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム以外の各種ケイ酸カルシウムを含むこともできる。
【0036】
成形体は、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム、アクリル系樹脂、無機繊維質粒子及び補強繊維を含むことが好ましい。これにより、本発明の型材は、寸法変化率がより小さくなり、また、より高い引張り強度(層間強度)を有することができる。
【0037】
本発明の型材は、前記成形体を備える限り、他の部材と組み合わされて形成されていてもよいし、あるいは、本発明の型材は、前記成形体のみで形成されていてもよい。
【0038】
本発明の型材の形状は特に限定されず、CFRPの形状、用途等に応じて適宜の形状とすることができ、例えば、公知のCFRP成形用の型材と同様の形状及び大きさにすることができる。例えば、型材の嵩密度は、0.5~0.6g/cmとすることができ、この場合、型材は十分な強度を有することができ、また、優れた作業性も有することができる。
【0039】
本発明の型材の製造方法は特に限定されず、例えば、公知のCFRP成形用の型材の製造方法を広く採用することができる。例えば、本発明の型材は、原料スラリーを成形して前記成形体を得る工程を備える製造方法によって得ることができる。以下、この製造方法を一例として説明する。
【0040】
前記原料スラリーは、例えば、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム、アクリル系樹脂を含むラテックス、無機繊維質粒子及び水を含有する。斯かる原料スラリーは、必要に応じて、補強繊維や、セメント等の各種添加剤を含むことができる。
【0041】
前記原料スラリーの調製方法は特に限定されない。例えば、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムを製造するための原料を水中で水熱反応させて水性スラリーを調製し、この水性スラリーにアクリル系樹脂と、無機繊維質粒子と、必要に応じて、補強繊維及びセメント等の各種添加剤を添加することで、前記原料スラリーを得ることができる。ゾノトライト系ケイ酸カルシウムを製造するための原料は、例えば、前記石灰質原料及び前記ケイ酸質原料である。前記水熱反応により、前記石灰質原料及び前記ケイ酸質原料の反応が起こって、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムが生成し得る。生成するゾノトライト系ケイ酸カルシウムは、例えば、二次粒子の形態である。また、前記水性スラリーには、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムの他、少量のトバモライトも含まれ得る。水熱反応の条件は特に限定されず、例えば、公知のゾノトライト系ケイ酸カルシウムを主成分とする成形体を得るための水熱反応と同様とすることができる。
【0042】
前記原料スラリーにおいて、各原料の含有割合は、得られる成形体におけるゾノトライト系ケイ酸カルシウム、アクリル系樹脂及び無機繊維質粒子の含有割合が所望の範囲になるように適宜調節することができる。また、前記原料スラリーは、例えば、固形分濃度が5~15質量%となるように水の量を調節することができる。
【0043】
前記原料スラリーを脱水プレス成形することで、成形体を得ることができる。具体的には、前記原料スラリーを金型に流し込み、所定のプレス圧で脱水プレス成形を行い、生板を形成させ、次いで、生板を乾燥することで、成形体が得られる。
【0044】
前記脱水プレス成形において、プレス圧は、例えば、50~150kg/cmとすることができる。生板を乾燥する条件も特に限定されず、例えば、生板を乾燥機内で加熱することにより、乾燥させることができる。乾燥温度は特に限定されず、成形体の組成や目的、用途に応じて適宜調節することができる。
【0045】
以上のように、原料スラリーを成形及び乾燥することで、前記成形体が得られるので、斯かる成形体に必要に応じてその他部材を組み合わせることで、本発明の型材を得ることができる。
【0046】
本発明の型材は、前記成形体を備えることで、例えば、保管中に吸湿が起こったとしても、寸法変化が起こりにくく、寸法安定性に優れるものである。また、本発明の型材は、引張り強度も高いので、斯かる型材を用いてCFRPを成形し、CFRPを脱型する際に成形型の破損も起こりにくいものである。従って、本発明の型材のCFRPを成形するための型材として好適に使用することができる。
【実施例0047】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0048】
(原材料)
実施例及び比較例に使用した原材料は以下の通りである。
・石灰質原料:生石灰(CaOが93重量%以上)
・ケイ酸質原料:珪石(SiOが95質量%以上)
・ワラストナイト:、巴工業社「WFA―80」(繊維長505μm)
・セメント:ホワイトセメント(太平洋セメント(株))
・アクリル系樹脂(ラテックス):ウルトラゾールPJ―500(丸菱油化工業(株))
・SBR樹脂(ラテックス):クロスレン CMX―110(アイカ工業(株))
・有機繊維:三井化学社製「SWP E-400」
・ガラス繊維:日本電気硝子社製「ACS 13S-750(長さ13mm)
・凝集剤:ADEKA製「アデライトCT―100」
【0049】
(実施例1)
表1に示す成形体組成(質量%)となるように前記原材料を選択し、以下のように成形体を得た。まず、生石灰48質量部、珪石52質量部および水1200質量部を混合して原料スラリーを調製し、この原料スラリーをオートクレーブ中で1.47MPa(15kgf/cm)、温度197℃の条件下で4時間撹拌しながら水熱反応を行った。この水熱反応により、ゾノトライト(CaO/SiO比0.99)と少量のトバモライトが混在した二次粒子を含有する水性スラリーが得られた。上記水性スラリーを固形分換算で73質量部準備し、さらに、この水性スラリーにワラストナイト10質量部、セメント1質量部、アクリル系樹脂(ラテックス)10質量部、有機繊維3質量部、ガラス繊維3質量部を加え、凝集剤を外割で0.1質量部を加えることで、原料スラリーを得た。この原料スラリーを型枠内に流し込んだ後、100kgf/cmの圧力下で脱水させ、得られた脱水成形体を130℃の雰囲気化で乾燥することで成形体を得た。この成形体を表面研磨し、所定のサイズに裁断加工した。
【0050】
(実施例2~3、比較例1~4)
表1に示す成形体組成(質量%)となるように前記原材料を選択したこと以外は実施例1と同様の方法で成形体を得た。
【0051】
(評価方法)
各実施例及び比較例で得た成形体の吸湿率、吸湿寸法変化率、層間強度は以下の手順で評価した。
【0052】
<吸湿率>
吸湿率は、300×100mm(厚み50mm)の成形体を、105℃で恒量まで乾燥させてから、エスペック社の「プラチナスJ PR―3J」を使用し23℃50%条件下で72時間養生し、養生前後の質量増加率を吸湿率とした。
【0053】
<吸湿寸法変化率>
吸湿寸法変化率は、300×100mm(厚み50mm)の成形体を、105℃で恒量まで乾燥させてから、エスペック社の「プラチナスJ PR―3J」を使用し23℃50%条件下で72時間にわたって吸湿させ、吸湿前後の寸法変化を、Mitutoyo ダイヤルゲージ 2119S―10で測定し、寸法変化率を算出した。この寸法変化率から、下記判定基準に基づいて評価した。
<判定基準(吸湿寸法変化率)>
〇:吸湿寸法変化率が0.085%未満であった。
×:吸湿寸法変化率が0.085%以上であった。
【0054】
<層間強度(引張り強度)>
40×40mm(厚み50mm)の成形体の両面(40mm×40mmの面)に金具を貼り付け、その金具を米倉製作所製「万能試験機 YS―50」で上下に引張り、破断した時の荷重(N)を断面積(mm)で除した値を層間強度とした。
<判定基準(層間強度)>
〇:層間強度が0.9N/mm以上であった。
×:層間強度が0.9N/mm未満であった。
【0055】
(評価結果)
表1には、各実施例及び比較例における成形体の各成分の含有割合、及び、各種評価結果(吸湿率、吸湿寸法変化率、層間強度(引張り強度))を示す。
【0056】
表1から、各実施例で得られた成形体は、吸湿寸法変化率が小さい上に、高い層間強度(引張り強度)を有することがわかった。これに対し、各比較例で得られた成形体は、吸湿寸法変化率が大きいか、もしくは、吸湿寸法変化率が小さいものであっても、層間強度(引張り強度)が低いものであった。
【0057】
従って、各実施例で得られた成形体は、寸法安定性に優れると共に高い引張り強度を有するものであり、CFRP用の成形用型材として適したものであることがわかった。
【0058】
【表1】