(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026906
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219350
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】松谷 弘康
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤志
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AB01
4M118BA09
4M118CA01
4M118FA06
4M118GB01
4M118GC07
4M118GD03
4M118GD04
4M118HA02
4M118HA07
4M118HA23
4M118HA25
(57)【要約】
【課題】α線の影響を抑えた撮影画像を取得するのに有利な撮像装置及び撮像装置の製造方法を提供する。
【解決手段】撮像装置は、撮影光が入射する光電変換素子を有するセンサ基板と、光電変換素子を覆い、撮影光を透過するカバー基板と、撮影光を透過させるα線透過防止膜と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光が入射する光電変換素子を有するセンサ基板と、
前記光電変換素子を覆い、前記撮影光を透過するカバー基板と、
前記撮影光を透過させるα線透過防止膜と、を備える撮像装置。
【請求項2】
前記α線透過防止膜は、1μm以下の厚みを有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記α線透過防止膜は、0.001count/h以下のα線の透過率を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記α線透過防止膜は、前記センサ基板と前記カバー基板との間に配置される請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記α線透過防止膜は、前記カバー基板に取り付けられている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記カバー基板のうち、前記センサ基板側の面は凹凸形状を有し、
前記α線透過防止膜は、前記カバー基板のうちの前記センサ基板側の面に取り付けられている請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記α線透過防止膜に取り付けられる反射防止膜を備える請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記光電変換素子を覆うオンチップレンズを備え、
前記α線透過防止膜は、前記オンチップレンズと前記センサ基板との間に位置する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記光電変換素子を覆うオンチップレンズを備え、
前記α線透過防止膜は、前記オンチップレンズを介して前記センサ基板とは反対側に位置する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記センサ基板と前記カバー基板との間に設けられる気体層を備える請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記カバー基板のうち前記センサ基板側の面に取り付けられる下部レンズを備え、
前記下部レンズは、気体層を介して前記センサ基板に対向する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記下部レンズの前記センサ基板側の面に取り付けられる反射防止膜を備える請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記カバー基板のうち前記センサ基板とは反対側の面に取り付けられる上部レンズと、
前記上部レンズのうち前記カバー基板とは反対側の面に取り付けられる反射防止膜と、を備える請求項1に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記カバー基板と前記センサ基板との間に位置し、前記カバー基板を前記センサ基板に対して固定する支持体を備え、
前記支持体は、遮光部を含む請求項1に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記カバー基板のうち前記光電変換素子に対向する部分よりの外側の部分に取り付けられる遮光体を備える請求項1に記載の撮像装置。
【請求項16】
センサ基板と、
カバー基板と、
前記センサ基板と前記カバー基板との間に位置し、気体層を介して前記センサ基板に対向する下部レンズと、を備える撮像装置。
【請求項17】
前記気体層は、20μm以下の厚みを有する請求項16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記下部レンズの前記センサ基板側の面に取り付けられる反射防止膜を備える請求項16に記載の撮像装置。
【請求項19】
カバー基板及びα線透過防止膜を含む第1積層体を準備する工程と、
センサ基板を含む第2積層体を準備する工程と、
前記α線透過防止膜が前記カバー基板と前記センサ基板との間に位置するように、前記第1積層体及び前記第2積層体を重ねる工程と、を含む撮像装置の製造方法。
【請求項20】
カバー基板を含む第1積層体を準備する工程と、
センサ基板及びα線透過防止膜を含む第2積層体を準備する工程と、
前記α線透過防止膜が前記カバー基板と前記センサ基板との間に位置するように、前記第1積層体及び前記第2積層体を重ねる工程と、を含む撮像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置及び撮像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光学素子エリアがシールガラスにより覆われたWCPS(Wafer Chip Scale Package)構造の撮像装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ガラス等の部材からはα線(アルファ線)が発せられる。
【0005】
α線が撮影光とともにイメージセンサに入射すると、得られる撮影画像において、イメージセンサにおけるα線の入射箇所に対応する部分に白色点が出現する。このようにα線に起因して撮影画像にもたらされる白色点は、「後発白点」とも呼ばれ、被写体像の画質を損ないうるものである。
【0006】
特許文献1の撮像装置では、シールガラスから発せられるα線が光学素子エリアに入射する。そのため特許文献1の撮像装置により取得される撮影画像には、被写体像に本来的には含まれていない白色点が出現することがある。
【0007】
本開示は上述の事情に鑑みてなされたものであり、α線の影響を抑えた撮影画像を取得するのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、撮影光が入射する光電変換素子を有するセンサ基板と、光電変換素子を覆い、撮影光を透過するカバー基板と、撮影光を透過させるα線透過防止膜と、を備える撮像装置に関する。
【0009】
α線透過防止膜は、1μm以下の厚みを有してもよい。
【0010】
α線透過防止膜は、0.001count/h以下のα線の透過率を有してもよい。
【0011】
α線透過防止膜は、センサ基板とカバー基板との間に配置されてもよい。
【0012】
α線透過防止膜は、カバー基板に取り付けられていてもよい。
【0013】
カバー基板のうち、センサ基板側の面は凹凸形状を有し、α線透過防止膜は、カバー基板のうちのセンサ基板側の面に取り付けられていてもよい。
【0014】
撮像装置は、α線透過防止膜に取り付けられる反射防止膜を備えてもよい。
【0015】
撮像装置は、光電変換素子を覆うオンチップレンズを備え、α線透過防止膜は、オンチップレンズとセンサ基板との間に位置してもよい。
【0016】
撮像装置は、光電変換素子を覆うオンチップレンズを備え、α線透過防止膜は、オンチップレンズを介してセンサ基板とは反対側に位置してもよい。
【0017】
撮像装置は、センサ基板とカバー基板との間に設けられる気体層を備えてもよい。
【0018】
撮像装置は、カバー基板のうちセンサ基板側の面に取り付けられる下部レンズを備え、下部レンズは、気体層を介してセンサ基板に対向してもよい。
【0019】
撮像装置は、下部レンズのセンサ基板側の面に取り付けられる反射防止膜を備えてもよい。
【0020】
撮像装置は、カバー基板のうちセンサ基板とは反対側の面に取り付けられる上部レンズと、上部レンズのうちカバー基板とは反対側の面に取り付けられる反射防止膜と、を備えてもよい。
【0021】
撮像装置は、カバー基板とセンサ基板との間に位置し、カバー基板をセンサ基板に対して固定する支持体を備え、支持体は、遮光部を含んでもよい。
【0022】
撮像装置は、カバー基板のうち光電変換素子に対向する部分よりの外側の部分に取り付けられる遮光体を備えてもよい。
【0023】
本開示の他の態様は、センサ基板と、カバー基板と、センサ基板とカバー基板との間に位置し、気体層を介してセンサ基板に対向する下部レンズと、を備える撮像装置に関する。
【0024】
気体層は、20μm以下の厚みを有してもよい。
【0025】
撮像装置は、下部レンズのセンサ基板側の面に取り付けられる反射防止膜を備えてもよい。
【0026】
本開示の他の態様は、カバー基板及びα線透過防止膜を含む第1積層体を準備する工程と、センサ基板を含む第2積層体を準備する工程と、α線透過防止膜がカバー基板とセンサ基板との間に位置するように、第1積層体及び第2積層体を重ねる工程と、を含む撮像装置の製造方法に関する。
【0027】
本開示の他の態様は、カバー基板を含む第1積層体を準備する工程と、センサ基板及びα線透過防止膜を含む第2積層体を準備する工程と、α線透過防止膜がカバー基板とセンサ基板との間に位置するように、第1積層体及び第2積層体を重ねる工程と、を含む撮像装置の製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、第1実施形態の一例に係る撮像装置の断面構造を概略的に示す図である。
【
図2A】
図2Aは、カバー基板とα線透過防止膜との間の界面構造の第1の例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、カバー基板とα線透過防止膜との間の界面構造の第2の例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、カバー基板とα線透過防止膜との間の界面構造の第3の例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図14】
図14は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態の一例に係る撮像装置の断面構造を概略的に示す図である。
【
図16】
図16は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図18】
図18は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図19】
図19は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図20】
図20は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図21】
図21は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図22】
図22は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図23】
図23は、撮像装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図24A】
図24Aは、第2実施形態の他の例に係る撮像装置の断面構造を概略的に示す図である。
【
図25A】
図25Aは、第2実施形態の他の例に係る撮像装置の断面構造を概略的に示す図である。
【
図26】
図26は、第2実施形態の他の例に係る撮像装置の断面構造を概略的に示す図である。
【
図27】
図27は、第2実施形態の他の例に係る撮像装置の断面構造を概略的に示す図である。
【
図28】
図28は、第2実施形態の他の例に係る撮像装置の断面構造を概略的に示す図である。
【
図29】
図29は、第2実施形態の他の例に係る撮像装置の断面構造を概略的に示す図である。
【
図30】
図30は、撮影画像に出現するフレアの例(具体的にはリングフレア及びクロスフレア)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付図面を参照して撮像装置及び撮像装置の製造方法の実施形態について説明する。
【0030】
以下では、画素部分(すなわち光電変換素子部分)及び信号処理部分が積層された積層型イメージセンサ構造を有するウエハーレベルCSP(Chip Size Package)の撮像装置の例を説明する。
【0031】
ただし以下で説明される技術の適用対象は、積層型イメージセンサ構造の撮像装置及びCSP構造の撮像装置には限定されない。他の構造の撮像装置やそのような撮像装置の製造方法に対しても、以下で説明される技術を適用することが可能である。
【0032】
[第1実施形態]
本実施形態の撮像装置は、センサ基板とカバー基板との間に位置する下部レンズを備える。
【0033】
図1は、第1実施形態の一例に係る撮像装置10の断面構造を概略的に示す図である。
【0034】
図1に示す撮像装置10は、センサ基板11、カバー基板13及びα線透過防止膜14を備える。
【0035】
センサ基板11は、撮影光Lが入射する多数の光電変換素子12と、各光電変換素子12に接続される配線(図示省略)とを有する。光電変換素子12は、センサ基板11の受光面(すなわちカバー基板13側の面)に沿って層延在方向D2へ二次元的に並べられており、入射光に応じた画素信号を出力する。
【0036】
センサ基板11は、ロジック基板40に重ねられ、ロジック基板40と一体的に構成される。一体構造のセンサ基板11及びロジック基板40は積層基板41と総称される。
【0037】
ロジック基板40は、図示は省略するが、ロジック回路と、ロジック回路に接続される配線とを有する。ロジック回路は、光電変換素子12からの画素信号を処理する信号処理回路を含む。
【0038】
積層基板41は、複数の配線電極(裏面電極を含む)42を有する。
図1には、センサ基板11の配線とロジック基板40の配線とを電気的に接続する配線電極42と、ロジック基板40の配線に電気的に接続される配線電極42とが示されている。積層基板41は、他の接続形態を持つ配線電極42を含んでいてもよい。
【0039】
配線電極42は、積層基板41の裏面(すなわちロジック基板40のうちセンサ基板11とは反対側の面)から突出し、外部デバイスに対する接続インタフェースとして機能する。積層基板41の裏面は、絶縁膜であるソルダーレジスト44により覆われている。積層基板41の裏面から突出する配線電極42間のスペースがソルダーレジスト44により埋められた状態で、各配線電極42の端面部分が外方に露出される。
【0040】
図1に示す配線電極42の露出部分は、プリント基板45に設けられた接続電極43に接続される。配線電極42は、接続電極43とともに、積層基板41とプリント基板45との間における信号の伝達路として機能する。
【0041】
ロジック基板40とは反対側に位置するセンサ基板11の受光面(すなわち複数の光電変換素子12の入光面)は、オンチップレンズ23により覆われている。オンチップレンズ23は、複数のマイクロレンズを有する。各マイクロレンズは、割り当てられた1以上の光電変換素子12に向けて撮影光Lを集光する。
【0042】
図示は省略するが、オンチップレンズ23とセンサ基板11(光電変換素子12)との間には任意の機能層(例えばカラーフィルター層)が配置されていてもよい。
【0043】
カバー基板13は、センサ基板11(特に撮影画像の取得に寄与するすべての光電変換素子12の入光面)を覆い、撮影光Lを透過する。カバー基板13は、オンチップレンズ23及びセンサ基板11(特に光電変換素子12)を保護する機能を有し、剛性に優れた透明部材(例えばガラス)により構成可能である。
【0044】
図1に示すカバー基板13は、「リブ」とも称される支持体30を介し、積層基板41(特にセンサ基板11)に固定されている。すなわち支持体30は、カバー基板13とセンサ基板11との間に位置し、カバー基板13及びセンサ基板11の各々に取り付けられ、カバー基板13をセンサ基板11に対して固定する。支持体30は、複数の光電変換素子12を取り囲むように設けられており、内側に気体層20を形成する。
【0045】
このような構造を有する支持体30は、ウエハーレベルで形成することが可能である。この場合、支持体30を所望サイズ(例えば所望幅及び所望高さ)に精度良く形成することができる。
【0046】
支持体30は、任意の材料及び任意の構造を有しうる。後述のように、特定波長域の光の透過率が相対的に低い又は高い波長選択性を有する部材(例えば、黒樹脂、カラーフィルター又はバンドパスフィルター)によって、支持体30の一部又は全部が構成されてもよい。所望の光学特性、耐水性及び/又は他の特性を有する機能性部材によって支持体30の一部又は全部が構成されてもよいし、そのような機能性部材が支持体30に取り付けられてもよい。
【0047】
センサ基板11とカバー基板13との間には、気体層20が位置している。気体層20は、センサ基板11、カバー基板13及び支持体30により囲まれて密閉されている。
図1に示す気体層20は空気により構成される空気層であるが、空気以外の所望特性を持つガスにより気体層20が構成されていてもよい。例えば所望の屈折率をもたらすガスを気体層20に封入することで、気体層20と当該気体層20に隣接する媒質(
図1に示す撮像装置10では、例えば下部レンズ22及びオンチップレンズ23)との間の界面における光反射特性を調整することができる。
【0048】
気体層20の厚み(すなわちセンサ基板11及びカバー基板13が重なる積層方向D1のサイズ)は限定されない。後述のように、光反射界面(例えば下部レンズ22のセンサ基板11側の面やカバー基板13のセンサ基板11側の面)をセンサ基板11に近づけることによって、撮影画像におけるフレアやゴースト(以下、単に「フレア」とも称する)を低減しうる。
【0049】
したがって、迷光L1に起因する撮影画像の画質劣化を抑える観点からは、気体層20の厚みは小さい方が好ましい。例えば、気体層20が20μm以下の厚みを有する場合、撮影画像におけるフレアを有効に低減しうる。
【0050】
カバー基板13のうちセンサ基板11とは反対側の面には、上部レンズ21が取り付けられている。一方、カバー基板13のうちセンサ基板11側の面には、下部レンズ22が取り付けられている。
図1に示す下部レンズ22は、センサ基板11とカバー基板13との間に位置し、気体層20を介してセンサ基板11(特に光電変換素子12)に対向する。
【0051】
実際の撮影の際、被写体からの撮影光Lは、図示しないレンズモジュールを通って光路が調整された後、上部レンズ21、カバー基板13、下部レンズ22及びオンチップレンズ23を通って光電変換素子12に入射する。このようにして撮影光Lが複数の光電変換素子12により受光され、各光電変換素子12から対応の画素信号が出力されることで、被写体の撮影画像が得られる。
【0052】
α線透過防止膜14は、撮影光Lを透過させる際、撮影光Lに含まれるα線の一部(大部分)又は全部を透過させない。
【0053】
α線透過防止膜14は、元素及び/又は電子にα粒子(アルファ粒子)が衝突した際の反作用によるα粒子の減速を利用して撮影光L中のα粒子を低減することが可能な高い膜密度及び/又は高い電子密度を有する。
【0054】
α線透過防止膜14は、任意の組成を有することができ、例えばα線を吸収、トラップ、反射、及び/又は散乱する材料により構成可能である。α線透過防止膜14は、積層方向D1(すなわち光軸方向)に関して1μm以下の厚みを有する場合であっても、0.001count/h以下のα線の透過率を有しうる。
【0055】
カバー基板13で発せられるα線が光電変換素子12に入射するのを防ぐために、α線透過防止膜14は、カバー基板13とセンサ基板11(特に光電変換素子12)との間に設けられることが好ましい。
図1に示すα線透過防止膜14は、カバー基板13と下部レンズ22との間に配置され、カバー基板13(特にカバー基板13のうちセンサ基板11側の面(すなわちセンサ基板11に向けられた面))に取り付けられている。α線透過防止膜14は、カバー基板13に対して直接的に取り付けられてもよいし、図示しない接合層を介してカバー基板13に取り付けられてもよい。
【0056】
なお、撮像装置10におけるα線透過防止膜14の配置位置は、
図1に示す位置には限定されない。α線透過防止膜14は、撮影光Lの進行に関して光電変換素子12よりも上流の任意の位置に配置可能である。すなわちα線透過防止膜14は、光電変換素子12に入射する前の撮影光Lから一部又は全部のα線を除去することができるのであれば、任意の位置に配置可能である。
【0057】
したがってα線透過防止膜14は、オンチップレンズ23と光電変換素子12との間(後述の
図24A及び
図24B参照)に設けられてもよい。例えばオンチップレンズ23と光電変換素子12との間にカラーフィルター(図示省略)が設けられる場合、カラーフィルターとオンチップレンズ23との間やカラーフィルターと光電変換素子12との間に、α線透過防止膜14が設けられてもよい。
【0058】
またα線透過防止膜14は、オンチップレンズ23とカバー基板13との間(後述の
図25A~
図25C参照)に設けられてもよい。例えば、オンチップレンズ23のカバー基板13側の表面や下部レンズ22のセンサ基板11側の表面に、α線透過防止膜14が取り付けられてもよい。
【0059】
なお、α線透過防止膜14は、撮影光Lが透過する際に発熱することがある。そのため撮影画像に対する熱の影響を抑える観点からは、α線透過防止膜14は、光電変換素子12から離れた位置(例えばカバー基板13及び/又は下部レンズ22)に設けられることが好ましい
【0060】
α線透過防止膜14のうちセンサ基板11側の面には、光の反射を抑える反射防止膜15が取り付けられる。
図1に示す例では、α線透過防止膜14と支持体30との間及びα線透過防止膜14と下部レンズ22との間において、反射防止膜15が延在する。
【0061】
反射防止膜15の材料(組成)及び反射防止膜15の形成方法は限定されない。反射防止膜15は、無機材料(SiO2、SiON、SiN、NbO、TiO、AlO等)及び有機材料(中空シリカ粒子等)の一方又は両方によって構成されてもよい。したがって反射防止膜15は、例えば、屈折率が1.5程度の有機膜であってもよいし、高屈折率フィラー入り材料により構成されていてもよいし、シリコン窒化膜等の無機膜であってもよい。
【0062】
反射防止膜15は、単層構造を有していてもよいし、多層構造(すなわち積層構造)を有していてもよい。
【0063】
反射防止膜15の設置箇所は、
図1に示す例には限定されない。光の反射を抑制する観点からは、光の反射をもたらしうる各界面に反射防止膜15を設けることが好ましい。
【0064】
特に、光が反射しやすい屈折率差が大きい媒質間界面に反射防止膜15を設けることによって、意図しない光の反射を効果的に抑え、迷光L1の発生を低減できる。例えば、気体層20と当該気体層20に隣り合う媒質(
図1に示す例では下部レンズ22及びオンチップレンズ23の各々)との間の界面に反射防止膜15を配置することで、意図しない光の反射を効果的に抑えることができる。
【0065】
次に、カバー基板13とα線透過防止膜14との間の界面構造例について説明する。
【0066】
図2Aは、カバー基板13とα線透過防止膜14との間の界面構造の第1の例を示す断面図である。
図2Bは、
図2Aにおいて符号「E」で示されている範囲の拡大図である。
図3は、カバー基板13とα線透過防止膜14との間の界面構造の第2の例を示す断面図である。
図4は、カバー基板13とα線透過防止膜14との間の界面構造の第3の例を示す断面図である。
【0067】
図2A~
図4の各々に示す上部レンズ21、カバー基板13及びα線透過防止膜14は、
図1に示す例と同様の層構造を有する。
【0068】
ただし
図2A~
図4の各々に示す例では、反射防止膜15が、α線透過防止膜14のセンサ基板11側の面だけではなく、上部レンズ21及びカバー基板13の各々のα線透過防止膜14とは反対側の面にも設けられている。すなわち上部レンズ21のうちカバー基板13とは反対側の面にも、反射防止膜15が取り付けられている。
【0069】
図1ではカバー基板13のうちセンサ基板11側の面が平坦面として描かれているが、カバー基板13のうちセンサ基板11側の面(
図2A~
図4における下面)は、凹凸形状を有していてもよい。
【0070】
図2A及び
図2Bに示すカバー基板13は、矩形状断面の凹部を含む凹凸形状面13bを有する。
図3に示すカバー基板13は、三角形状断面の凹部を含む凹凸形状面13bを有する。
図4に示すカバー基板13は、円形状断面(厳密には円の一部分の形状の断面)の凹部を含む凹凸形状面13bを有する。また図示は省略するが、カバー基板13のうちセンサ基板11側の面は、ランダムな凹凸形状を持つ粗面であってもよい。なお、カバー基板13のうち上部レンズ21が取り付けられる面13aは、
図2A~
図4に示す例では平坦形状を有するが、凹凸形状を有していてもよい。
【0071】
図2A~
図4の各々に示すα線透過防止膜14は、カバー基板13のうちセンサ基板11側の凹凸形状面13bに取り付けられている。すなわちα線透過防止膜14のうちカバー基板13側の面(
図2A~
図4における上面)は、カバー基板13の凹凸形状面13bに適合する凹凸形状を有する。そのためα線透過防止膜14のうちカバー基板13側の面は、カバー基板13のうちセンサ基板11側の凹凸形状面13bと、隙間無く密着する。
【0072】
このようにα線透過防止膜14とカバー基板13との間の界面が凹凸構造を持つ場合、当該界面における撮影光Lの屈折によって、α線透過防止膜14における光路長を長大化することができる。その結果、α線透過防止膜14におけるα線の非透過効率(すなわちα線を除去する効率)を向上させることができる。
【0073】
α線透過防止膜14がカバー基板13以外の部材に取り付けられる場合にも、α線透過防止膜14が取り付けられる部材とα線透過防止膜14との間の界面が凹凸構造を持つことで、α線透過防止膜14におけるα線の非透過効率を向上できる。
【0074】
次に、撮像装置10の製造方法の一例を説明する。
【0075】
図5~
図14は、撮像装置10の製造方法の一例を示す断面図である。
【0076】
本例の製造方法によって作られる撮像装置10(
図14参照)は、
図1に示す撮像装置10と同様の構造を有する。ただし本例の製造方法で作られる撮像装置10は、上部レンズ21及びカバー基板13の各々のセンサ基板11とは反対側の面、支持体30とα線透過防止膜14との間、及び下部レンズ22のセンサ基板11側の面に、反射防止膜15が取り付けられる。
【0077】
本製造方法例では、まず
図5に示すように、カバー基板13の一面にα線透過防止膜14が付与される。
【0078】
α線透過防止膜14の付与方法は限定されない。例えばスピンコート方式、ディップ方式、スキージーを使った方式、インクジェット方式、或いは蒸着方式を利用することによって、α線透過防止膜14の構成材料をカバー基板13に付与することが可能である。α線透過防止膜14の構成材料は、自然乾燥によりカバー基板13に固着させてもよいし、熱硬化特性やUV硬化特性を有する場合には加熱や紫外線照射によりカバー基板13への固着が促されてもよい。
【0079】
次に、
図6に示すように、α線透過防止膜14上に下部レンズ22が取り付けられる。
【0080】
なお
図1に示す撮像装置10のように、α線透過防止膜14と下部レンズ22との間に反射防止膜15が設けられる場合には、下部レンズ22の形成に先立って、α線透過防止膜14上に反射防止膜15が付与される。
【0081】
下部レンズ22は、任意の方法で形成可能である。α線透過防止膜14上に下部レンズ22の構成材料を付与し、当該構成材料を成形することによって下部レンズ22が形成されてもよい。例えば、インプリント方式、グレースケールパターニング(グレースケールリソグラフィ)、リフロー方式、或いはリフロー方式とエッチバック方式との組み合わせを利用することによって、α線透過防止膜14上に下部レンズ22を形成することが可能である。或いは、予め作られた下部レンズ22を、図示しない接合層を介してα線透過防止膜14に接合してもよい。
【0082】
次に、
図7に示すように、α線透過防止膜14及び下部レンズ22上に反射防止膜15が付与される。反射防止膜15は、任意の方法で、α線透過防止膜14及び下部レンズ22上に設けられることが可能である。
【0083】
次に、
図8に示すように、α線透過防止膜14上に支持体30が付与される。
【0084】
支持体30は、任意の方法で、α線透過防止膜14上に設けることが可能である。例えば、支持体30を構成する材料をα線透過防止膜14上に塗布し、その後、パターニング(例えばレジストパターニング)を行ってα線透過防止膜14の外周部上に位置する部分のみを残すことで、支持体30を形成してもよい。支持体30が複数の構成層を含む場合には、薄い接着層(例えば1~500nm程度の接着剤)を介して隣り合う構成層同士を固着してもよい。
【0085】
本例の支持体30は、カバー基板13を含む第1積層体に形成されるが、積層基板41(センサ基板11及びロジック基板40)を含む第2積層体に形成されてもよい。
【0086】
次に、
図9に示すように、第1積層体(カバー基板13、α線透過防止膜14、反射防止膜15、下部レンズ22及び支持体30)と、第2積層体(積層基板41及びオンチップレンズ23)とが接合される。
【0087】
第1積層体及び第2積層体の接合方式は限定されない。支持体30が第1積層体(本例では反射防止膜15)に対して良好な固着性を示す場合、支持体30が第1積層体に対して直接的に固着されることで、第1積層体及び第2積層体は接合されてもよい。或いは、図示しない接着層を介して、第1積層体及び第2積層体は接合されてもよい。
【0088】
次に、
図10に示すように、積層基板41が部分的に取り除かれて、積層基板41が薄化される。積層基板41は、任意の方法で薄化可能である。
【0089】
次に、
図11に示すように、積層基板41に配線電極42が形成され、積層基板41の裏面を覆うソルダーレジスト44が形成される。
【0090】
次に、
図12に示すように、カバー基板13が部分的に取り除かれて、カバー基板13が薄化される。カバー基板13は、任意の方法で薄化可能である。
【0091】
次に、
図13に示すように、カバー基板13上に上部レンズ21が設けられる。
【0092】
なおカバー基板13上にアパーチャ等の遮光体(例えばブラックレジストやパターニングされた金属膜)が形成される場合(後述の
図29参照)、上部レンズ21の形成に先立って、そのような遮光体がカバー基板13上に形成されてもよい。
【0093】
上部レンズ21は、上述の下部レンズ22と同様の方法によって、カバー基板13上に設けることが可能である。カバー基板13上に上部レンズ21の構成材料を付与し、当該構成材料を成形することによって上部レンズ21が形成されてもよい。或いは、予め作られた上部レンズ21を、直接的に或いは接合層を介し、カバー基板13に接合してもよい。
【0094】
そして、
図14に示すように、上部レンズ21及びカバー基板13上に反射防止膜15が設けられる。
【0095】
上述の一連の工程を経て作られたウエハーレベルCSPタイプの撮像装置10は、その後ダイシングされて、複数のベアチップが作られる。
【0096】
上述のように、本例の製造方法は、カバー基板13及びα線透過防止膜14を含む第1積層体を準備する工程(
図5~
図8参照)と、センサ基板11(積層基板41)を含む第2積層体を準備する工程とを含む。そして当該製造方法は、α線透過防止膜14がカバー基板13とセンサ基板11との間に位置するように、第1積層体及び第2積層体を重ねる工程(
図9参照)を更に含む。
【0097】
[第2実施形態]
本実施形態において、上述の第1実施形態と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0098】
本実施形態の撮像装置は、下部レンズ22を具備しない。
【0099】
図15は、第2実施形態の一例に係る撮像装置10の断面構造を概略的に示す図である。
【0100】
図15に示す撮像装置10は、上述の
図1に示す撮像装置10と同様の構成を有するが、下部レンズ22を具備しない。
【0101】
本例の撮像装置10によれば、気体層20の積層方向D1の厚みを更に小さくして、カバー基板13をセンサ基板11(特に光電変換素子12)に近づけることができる。
【0102】
これにより、撮像装置10の積層方向D1のサイズの小型化(すなわち低背化)を促進することが可能である。
【0103】
次に、撮像装置10の製造方法の一例を説明する。
【0104】
図16~
図23は、撮像装置10の製造方法の一例を示す断面図である。本例の製造方法により作られる撮像装置10(
図23参照)は、
図15に示す撮像装置10と同様の構造を有する。
【0105】
本製造方法例では、まず
図16に示すように、カバー基板13上にα線透過防止膜14が付与される。
【0106】
その後、
図17に示すようにα線透過防止膜14上に反射防止膜15が付与され、
図18に示すように反射防止膜15上に支持体30が付与される。
【0107】
その後、
図19に示すように、第1積層体(カバー基板13、α線透過防止膜14、反射防止膜15及び支持体30)と、第2積層体(積層基板41及びオンチップレンズ23)とが、支持体30を介して接合される。
【0108】
その後、
図20に示すように積層基板41が薄化され、
図21に示すように積層基板41に対して配線電極42及びソルダーレジスト44が設けられ、
図22に示すようにカバー基板13が薄化される。
【0109】
そして、
図23に示すように、カバー基板13上に上部レンズ21が設けられる。
【0110】
上述の一連の工程を経て作られたウエハーレベルCSPタイプの撮像装置10は、その後、ダイシングされて、複数のベアチップが作られる。
【0111】
図24Aは、第2実施形態の他の例に係る撮像装置10の断面構造を概略的に示す図である。
図24Bは、
図24Aに示す撮像装置10の一部を拡大した図面である。
【0112】
α線透過防止膜14は、オンチップレンズ23とセンサ基板11との間に位置するように設けられてもよい。
【0113】
図24A及び
図24Bに示す例では、オンチップレンズ23とセンサ基板11(光電変換素子12)との間に、α線透過防止膜14及び反射防止膜15が設けられている。α線透過防止膜14はセンサ基板11側に位置し、反射防止膜15はオンチップレンズ23側に位置する。
【0114】
より具体的には、
図24Bに示すように、センサ基板11上に、保護膜55、遮光膜54、平坦化膜53、カラーフィルター層52、α線透過防止膜14、反射防止膜15、有機材料層51及びオンチップレンズ23が順次重ねられている。
【0115】
保護膜55は、光電変換素子12を保護する部材であり、例えば二酸化ケイ素(SiO2)により構成可能である。遮光膜54は、層延在方向D2に関して隣り合う光電変換素子12間に位置し、隣接する光電変換素子12への光の漏れ込みを防止する。平坦化膜53は、カラーフィルター層52が形成される領域を平坦化する。カラーフィルター層52は、光電変換素子12毎に設けられる複数のカラーフィルターを含む。有機材料層51は、接着層として機能し、例えばアクリル系樹脂材料、スチレン系樹脂材料或いはエポキシ系樹脂材料により構成可能である。
【0116】
図25Aは、第2実施形態の他の例に係る撮像装置10の断面構造を概略的に示す図である。
図25Bは、
図25Aに示す撮像装置10の一部に対応し、第1形態のα線透過防止膜14及び反射防止膜15を示す。
図25Cは、
図25Aに示す撮像装置10の一部に対応し、第2形態のα線透過防止膜14及び反射防止膜15を示す。
【0117】
α線透過防止膜14は、オンチップレンズ23を介してセンサ基板11とは反対側に位置していてもよい。
【0118】
図25A~
図25Cに示す例では、α線透過防止膜14及び反射防止膜15が、積層基板41(特にセンサ基板11のカバー基板13側の面)及びオンチップレンズ23を覆うように設けられている。ここで、α線透過防止膜14は積層基板41側に位置し、反射防止膜15は、カバー基板13側に位置し、気体層20と隣り合っている。
図25A~
図25Cに示す例では、カバー基板13のうちのセンサ基板11側の面にも反射防止膜15が取り付けられている。
【0119】
支持体30は、反射防止膜15を介してカバー基板13に取り付けられ、反射防止膜15及びα線透過防止膜14を介して積層基板41(特にセンサ基板11)に取り付けられている。
【0120】
オンチップレンズ23及び積層基板41上のα線透過防止膜14及び反射防止膜15の具体的な積層形態は限定されない。
【0121】
図25Bに示すように、α線透過防止膜14及び反射防止膜15の各々は、ほぼ均一の厚みを持って、オンチップレンズ23及び積層基板41(特にセンサ基板11)上に延びていてもよい。この場合、オンチップレンズ23上のα線透過防止膜14及び反射防止膜15は、オンチップレンズ23のカバー基板13側の曲面の形状に応じた湾曲形状を有する。
【0122】
また
図25Cに示すように、α線透過防止膜14の平坦面上に反射防止膜15が設けられてもよい。すなわちα線透過防止膜14は、オンチップレンズ23の上方において層延在方向D2に延びる平坦面を形成し、反射防止膜15は当該平坦面上に固定されてもよい。
【0123】
反射防止膜15がα線透過防止膜14の曲面上に設けられる場合(
図25B参照)よりも、反射防止膜15がα線透過防止膜14の平坦面上に設けられる場合(
図25C参照)の方が、反射防止膜15を精度良く形成することが容易になる傾向がある。
【0124】
上述の
図24A~
図25Cに示すようにα線透過防止膜14が気体層20とセンサ基板11との間に設けられる場合、以下の製造方法によって撮像装置10を作ることができる。
【0125】
すなわち本製造方法例は、カバー基板13を含む第1積層体を準備する工程と、センサ基板11及びα線透過防止膜14を含む第2積層体を準備する工程と、含む。そして本製造方法は、α線透過防止膜14がカバー基板13とセンサ基板11との間に位置するように、第1積層体及び第2積層体を重ねる工程を含む。
【0126】
次に、
図26~
図29を参照して支持体30の構成例を説明する。
【0127】
【0128】
図26は、第2実施形態の他の例に係る撮像装置10の断面構造を概略的に示す図である。
【0129】
支持体30は複数の構造体を含んでいてもよく、これらの構造体は、お互いに積み重ねられた積層構造を有していてもよい。
【0130】
図26に示す支持体30は、お互いに積み重ねられた第1支持構造体30a及び第2支持構造体30bを有する。第1支持構造体30a及び第2支持構造体30bは、直接的にお互いに接合されてもよいし、図示しない薄い接着層を介してお互いに接合されてもよい。
【0131】
第1支持構造体30a及び第2支持構造体30bは、お互いに異なる材料で構成されてもよいし、お互いに同じ材料で構成されてもよい。例えば、第1支持構造体30a及び第2支持構造体30bは、お互いに異なる機能特性を有する材料(有機膜及び無機膜(無機酸化膜、窒化膜、金属膜等)を含む)で構成されてもよい。そのような機能特性として、機械特性(例えば剛性)、耐水性(水分非透過性)、吸湿性、光非透過性、封止性、及びその他の任意の特性が挙げられる。
【0132】
図27は、第2実施形態の他の例に係る撮像装置10の断面構造を概略的に示す図である。
【0133】
支持体30は、一部又は全体において、遮光部31を含んでいてもよい。
【0134】
図27に示す支持体30は、遮光性能を持つ材料(例えば黒樹脂)により全体が構成されている。本例の支持体30によれば、光電変換素子12への迷光の入射を防ぎ、撮影画像におけるフレアの発生を抑えることができる。
【0135】
図28は、第2実施形態の他の例に係る撮像装置10の断面構造を概略的に示す図である。
【0136】
支持体30には、様々な機能特性を持つ取付体が取り付けられていてもよい。
【0137】
図28に示す支持体30には、遮光体(例えば金属膜)33が取り付けられている。
図28に示す例では、支持体30のカバー基板13側の面と、支持体30の側面(特に気体層20に向けられた面)とに、遮光体33が取り付けられている。
【0138】
図29は、第2実施形態の他の例に係る撮像装置10の断面構造を概略的に示す図である。
【0139】
カバー基板13のうち光電変換素子12に対向する部分よりも外側の部分に、遮光体33が取り付けられてもよい。
【0140】
図29に示す例では、カバー基板13のうちの上部レンズ21が取り付けられる面の外周部において、上部レンズ21を囲むように遮光体33が設けられている。なお遮光体33は、カバー基板13のうちセンサ基板11側の面に取り付けられていてもよい(図示省略)。
【0141】
なお、
図24A~
図29に開示されるα線透過防止膜14及び支持体30に関する構造は、下部レンズ22を持たない撮像装置10に対してだけではなく、下部レンズ22を持つ撮像装置10(上述の第1実施形態の撮像装置10)に対しても応用可能である。
【0142】
以上説明したように上述の各実施形態の撮像装置10によれば、撮影光Lは、α線透過防止膜14を通過した後に光電変換素子12に入射するため、α線透過防止膜14によりα線が低減された状態の撮影光Lを光電変換素子12に入射させることができる。
【0143】
特に、α線透過防止膜14がカバー基板13とセンサ基板11(特に光電変換素子12)との間に配置されることで、カバー基板13から発せられるα線もα線透過防止膜14によって撮影光Lから取り除くことができる。
【0144】
このように、撮像装置10がα線透過防止膜14を備えることによって、撮影画像におけるα線起因の白点の発生を低減し、撮影画像の画質劣化を抑えることができる。
【0145】
またカバー基板13とセンサ基板11との間に気体層20を形成する場合にα線透過防止膜14を設けることによって、撮影画像における白点の発生の低減に加え、撮像装置10の低背化の促進にも有利である。
【0146】
すなわちα線透過防止膜14を設けることによって、カバー基板13とセンサ基板11との間の距離が小さくても、撮影画像におけるα線起因の白点の発生を抑えることができる。
【0147】
そして、カバー基板13とセンサ基板11との間の気体層20の厚みを小さくすることで、撮像装置10全体の積層方向D1(すなわち光軸方向)のサイズを小さくすることができる。
【0148】
また気体層20の厚みを小さくすることによって、カバー基板13及び下部レンズ22を光電変換素子12の近くに設置することができる。カバー基板13及び下部レンズ22は光を効果的に反射させる界面を構成する。したがって気体層20の厚みを小さくすることで、光の反射界面を光電変換素子12の近くに配置することができる。この場合、センサ基板11(特に光電変換素子12)に近い位置で光を反射させることができ、反射光を、本来入射されるべき光電変換素子12又は近傍の光電変換素子12に入射させることができる。
【0149】
フレア(ゴーストを含む)は、光が、意図しない反射等によって、本来入射されるべき光電変換素子とは異なる光電変換素子に入射することでもたらされる。特に、本来入射されるべき光電変換素子から離れた別の光電変換素子に光が入射することで、
図30に示すように、撮影画像においてフレア(リングフレアF1及びクロスフレアF2参照)が目立つ状態で出現する。
【0150】
一方、カバー基板13及び下部レンズ22を光電変換素子12の近くに配置することで、反射光が、本来入射されるべき光電変換素子12から離れた別の光電変換素子12に入射するのを防いで、フレアを低減又は目立ちにくくすることができる。
【0151】
このようにカバー基板13とセンサ基板11との間に気体層20及びα線透過防止膜14が設けられる撮像装置10は、撮影画像における白点及びフレアの発生を低減して撮影画像の画質劣化を抑えつつ、低背化を図るのに、とりわけ有利である。
【0152】
またカバー基板13とセンサ基板11との間に、気体層20とともに下部レンズ22を設けることによって、より一層効果的に、撮影画像におけるフレアの発生を低減することができる。
【0153】
すなわち気体層20と下部レンズ22との間の界面は、屈折率差が大きい光反射界面を構成し、カバー基板13により構成される光反射界面よりも、センサ基板11(特に光電変換素子12)の近くに位置する。オンチップレンズ23やセンサ基板11において意図せずに反射された撮影光Lは、気体層20と下部レンズ22との間の界面で反射されることで、より一層効果的に、本来入射されるべき光電変換素子12又は近傍の光電変換素子12に入射しやすくなる。その結果、撮影画像においてフレアが、より一層、低減又は目立ちにくくなる。
【0154】
また上部レンズ21及び下部レンズ22を設けることによって、撮像装置10におけるCRA(Chief Ray Angle:主光線入射角度)の調整幅を拡大することができる。
【0155】
すなわち撮影光Lの光路は、上部レンズ21及び下部レンズ22によっても調整されることができる。そのため上部レンズ21及び下部レンズ22を設けることによって、上部レンズ21よりも撮影光Lの進行の上流側に設けられるレンズモジュール(図示省略)の設計条件を緩和することが可能である。
【0156】
具体的には、レンズモジュールにおいて、高性能なレンズを使う必要がなくなり、安価なレンズを使用することが可能である。またレンズモジュールに含まれるレンズ数を少なくしたり、薄型のレンズを使用したりすることが可能である。そのため、レンズモジュール全体のサイズを小さくして、レンズモジュールと撮像装置10とを含む装置全体の低背化の促進に有利である。
【0157】
また反射防止膜15を設けることによって、撮影光Lの反射を抑えて迷光の発生を防ぐとともに、撮像装置10の構成要素の反り等の変形を抑えることも期待できる。
【0158】
例えば、樹脂材料(例えば透明樹脂で構成される上部レンズ21及び/又は下部レンズ22)には反りが生じやすいが、そのような樹脂材料に反射防止膜15を取り付けることによって当該樹脂材料の反りを抑制しうる。
【0159】
また支持体30をウエハーレベルで形成する場合、支持体30の幅や高さを高精度に調整することができる。また黒樹脂やメタル膜を利用して支持体30を構成することにより、光電変換素子12への迷光の入射を防いで、撮影画像におけるフレアの発生を抑えることができる。また支持本体に対して無機酸化膜、窒化膜或いは金属膜等と組み合わせることで、支持体30の水分耐性も向上できる。
【0160】
[変形例]
上述の実施形態では、センサ基板11とカバー基板13との間に気体層20が設けられているが、気体層20の代わりに、低屈折率材料又は高屈折率材料により構成される光透過層(例えば透明樹脂)が設けられていてもよい。
【0161】
本明細書で開示されている実施形態及び変形例はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が全体的に又は部分的に組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と組み合わされてもよい。また、本明細書に記載された本開示の効果は例示に過ぎず、その他の効果がもたらされてもよい。
【0162】
上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の装置を製造する方法或いは使用する方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【0163】
なお、本開示は以下の構成を取ることもできる。
[項目1]
撮影光が入射する光電変換素子を有するセンサ基板と、
前記光電変換素子を覆い、前記撮影光を透過するカバー基板と、
前記撮影光を透過させるα線透過防止膜と、を備える撮像装置。
[項目2]
前記α線透過防止膜は、1μm以下の厚みを有する項目1に記載の撮像装置。
[項目3]
前記α線透過防止膜は、0.001count/h以下のα線の透過率を有する項目1又は2に記載の撮像装置。
[項目4]
前記α線透過防止膜は、前記センサ基板と前記カバー基板との間に配置される項目1~3のいずれかに記載の撮像装置。
[項目5]
前記α線透過防止膜は、前記カバー基板に取り付けられている項目1~4のいずれかに記載の撮像装置。
[項目6]
前記カバー基板のうち、前記センサ基板側の面は凹凸形状を有し、
前記α線透過防止膜は、前記カバー基板のうちの前記センサ基板側の面に取り付けられている項目5に記載の撮像装置。
[項目7]
前記α線透過防止膜に取り付けられる反射防止膜を備える項目1~6のいずれかに記載の撮像装置。
[項目8]
前記光電変換素子を覆うオンチップレンズを備え、
前記α線透過防止膜は、前記オンチップレンズと前記センサ基板との間に位置する項目1~7のいずれかに記載の撮像装置。
[項目9]
前記光電変換素子を覆うオンチップレンズを備え、
前記α線透過防止膜は、前記オンチップレンズを介して前記センサ基板とは反対側に位置する項目1~8のいずれかに記載の撮像装置。
[項目10]
前記センサ基板と前記カバー基板との間に設けられる気体層を備える項目1~9のいずれかに記載の撮像装置。
[項目11]
前記カバー基板のうち前記センサ基板側の面に取り付けられる下部レンズを備え、
前記下部レンズは、気体層を介して前記センサ基板に対向する項目1~10のいずれかに記載の撮像装置。
[項目12]
前記下部レンズの前記センサ基板側の面に取り付けられる反射防止膜を備える項目11に記載の撮像装置。
[項目13]
前記カバー基板のうち前記センサ基板とは反対側の面に取り付けられる上部レンズと、
前記上部レンズのうち前記カバー基板とは反対側の面に取り付けられる反射防止膜と、を備える項目1~12のいずれかに記載の撮像装置。
[項目14]
前記カバー基板と前記センサ基板との間に位置し、前記カバー基板を前記センサ基板に対して固定する支持体を備え、
前記支持体は、遮光部を含む項目1~13のいずれかに記載の撮像装置。
[項目15]
前記カバー基板のうち前記光電変換素子に対向する部分よりの外側の部分に取り付けられる遮光体を備える項目1~14のいずれかに記載の撮像装置。
[項目16]
センサ基板と、
カバー基板と、
前記センサ基板と前記カバー基板との間に位置し、気体層を介して前記センサ基板に対向する下部レンズと、を備える撮像装置。
[項目17]
前記気体層は、20μm以下の厚みを有する項目16に記載の撮像装置。
[項目18]
前記下部レンズの前記センサ基板側の面に取り付けられる反射防止膜を備える項目16又は17に記載の撮像装置。
[項目19]
カバー基板及びα線透過防止膜を含む第1積層体を準備する工程と、
センサ基板を含む第2積層体を準備する工程と、
前記α線透過防止膜が前記カバー基板と前記センサ基板との間に位置するように、前記第1積層体及び前記第2積層体を重ねる工程と、を含む撮像装置の製造方法。
[項目20]
カバー基板を含む第1積層体を準備する工程と、
センサ基板及びα線透過防止膜を含む第2積層体を準備する工程と、
前記α線透過防止膜が前記カバー基板と前記センサ基板との間に位置するように、前記第1積層体及び前記第2積層体を重ねる工程と、を含む撮像装置の製造方法。
[項目21]
カバー基板及び下部レンズを含む第1積層体を準備する工程と、
センサ基板を含む第2積層体を準備する工程と、
前記下部レンズが前記カバー基板と前記センサ基板との間に位置するように、前記第1積層体及び前記第2積層体を重ねる工程と、を含む撮像装置の製造方法。
【符号の説明】
【0164】
10 撮像装置、11 センサ基板、12 光電変換素子、13 カバー基板、14 α線透過防止膜、15 反射防止膜、20 気体層、21 上部レンズ、22 下部レンズ、23 オンチップレンズ、30 支持体、30a 第1支持構造体、30b 第2支持構造体、31 遮光部、33 遮光体、40 ロジック基板、41 積層基板、42 配線電極、43 接続電極、44 ソルダーレジスト、45 プリント基板、51 有機材料層、52 カラーフィルター層、53 平坦化膜、54 遮光膜、55 保護膜、D1 積層方向、D2 層延在方向、F1 リングフレア、F2 クロスフレア、L 撮影光、L1 迷光