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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002693
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】空調家具
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/068 20060101AFI20231228BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20231228BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F24F13/068 C
F24F8/108 120
A47C7/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102047
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹雄
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084JA02
3B084JA05
(57)【要約】
【課題】床面に設置される空調家具を用いて、ウイルスを含む空気が拡散されることを抑制する。
【解決手段】空調家具10は、着座可能な家具本体12と、家具本体12の内部に設けられ、供給口36A、36B、36Cから空気が供給される空気室32と、空気室32の開口部(吹出口34)を覆って配置されて座面14Aを形成する通気性を有するクッション材18Bと、クッション材18Bの内側又は外側に設けられ、開口部から建物の室内空間へ吹出される空気に含まれる粒径が0.3μmより大きく1μm以下の粒子を50%以上捕集可能なフィルタ18Aと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座可能な家具本体と、
前記家具本体の内部に設けられ、供給口から空気が供給される空気室と、
前記空気室の開口部を覆って配置されて座面を形成する通気性を有するクッション材と、
前記クッション材の内側又は外側に設けられ、前記開口部から建物の室内空間へ吹出される空気に含まれる粒径が0.3μmより大きく1μm以下の粒子を50%以上捕集可能なフィルタと、
を備えた空調家具。
【請求項2】
前記フィルタは前記クッション材の外側に設けられ、前記クッション材より通気性が低い、請求項1に記載の空調家具。
【請求項3】
前記フィルタは不織布を用いて形成されている、請求項1又は2に記載の空調家具。
【請求項4】
前記フィルタは荷重を支持する構造体として機能する、請求項1に記載の空調家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調家具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、着座面及び背もたれ面から外部に向けて空気を吹出す空調用椅子が記載されている。これにより着座者は気流感を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-85292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の空調用椅子から吹き出される空気は、建物の床面から吹出した空気や床面付近の空気が、椅子内部の空気流通部に取り込まれたものである。空気中にウイルスが飛散している場合、建物の床面には当該ウイルスが沈降し易い。また、建物のユーザが床面を歩行することなどにより、床面付近に舞い上がったウイルスが飛散し易い。このため、建物の床面に設置される空調椅子を用いると、部屋にウイルスが拡散する虞がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、床面に設置される空調家具を用いて、ウイルスを含む空気が拡散されることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の空調家具は、着座可能な家具本体と、前記家具本体の内部に設けられ、供給口から空気が供給される空気室と、前記空気室の開口部を覆って配置されて座面を形成する通気性を有するクッション材と、前記クッション材の内側又は外側に設けられ、前記開口部から建物の室内空間へ吹出される空気に含まれる粒径が0.3μmより大きく1μm以下の粒子を50%以上捕集可能なフィルタと、を備える。
【0007】
請求項1の空調家具は、粒径が0.3μmより大きく1μm以下の粒子を50%以上捕集可能なフィルタを備えている。この捕集性能を備えたフィルタの一例としては、例えばASHRAEで規定するMERV Ratingが13以上のフィルタが挙げられる。
【0008】
このようなフィルタを用いることにより、空調家具の空気室から建物の室内空間へ吹出される空気が浄化され、空気中にウイルスが飛散している場合でも、当該ウイルスが除去される。したがって、空調家具を利用するユーザ及び空調家具が置かれた部屋を利用するユーザがウイルスに暴露されることを抑制できる。
【0009】
このように、本発明によると、床面に設置される空調家具を用いて、ウイルスを含む空気が拡散されることを抑制し、さらに床面付近の空気を浄化できる。
【0010】
請求項2の空調家具は、請求項1に記載の空調家具において、前記フィルタは前記クッション材の外側に設けられ、前記クッション材より通気性が低い。
【0011】
請求項2の空調家具では、フィルタの通気性がクッション材より低い。換言すると、クッション材の通気性がフィルタより高い。このため、建物の室内空間へ吹出される空気は、通気性が高いクッション材の内部に浸透し、整流されて座面の全体に行き渡りやすい。
【0012】
さらに、フィルタは、クッション材の外側に設けられている。つまりフィルタの内側に、通気性が高いクッション材が設けられている。これにより、供給口から空気室へ供給された空気は、フィルタに到達する前に、あるいはフィルタとの境界部分を伝ってクッション材の内部へ浸透し、クッション材の表面全体から静圧によってフィルタへ向かって吹出される。これによりフィルタがクッション材の「内側」に設けられている場合より整流効果が高められ、空気がフィルタの全体から均等に吹出し易い。
【0013】
これに対して、クッション材がない場合又はクッション材の通気性が低い場合、空気が、フィルタにおいて供給口付近の気流が速い箇所から動圧によって建物の室内空間へ吹出し易い。このため、吹出し空気が均一になり難く、座面の位置によって吹出し量が変化し易い。
【0014】
請求項3の空調家具は、請求項1又は2に記載の空調家具において、前記フィルタは不織布を用いて形成されている。
【0015】
請求項3の空調家具では、フィルタが不織布を用いて形成されている。不織布は金属や鉱物と比較して軟質であるため、クッション材のクッション性を補うことができる。
【0016】
請求項4の空調家具は、請求項1に記載の空調家具において、前記フィルタは荷重を支持する構造体として機能する。
【0017】
請求項4のフィルタは荷重を支持する構造体として機能する。このため、空調家具を構成する他の構造体の構成を簡略化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る空調家具によると、床面に設置される空調家具を用いて、ウイルスを含む空気が拡散されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る空調家具を示す立面図である。
図2】(A)は本発明の実施形態に係る空調家具を示す部分立断面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図3】(A)は本発明の実施形態に係る空調家具におけるクッション材とフィルタの配置の変形例を示した分解断面図であり、(B)は別の変形例を示した分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る空調家具の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。なお、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。また、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
<空調家具>
本発明の実施形態に係る空調家具10は、図1に示すように、家具本体12と、家具本体12と一体的に形成された空調装置30(図2参照)と、を備えている。空調家具10は、例えばオフィスの室内空間において、床面Fに設置され、当該室内空間に滞在する利用者が、執務、会議、談話等の際に座って利用できる椅子状の家具である。
【0022】
<家具本体>
家具本体12は、対向配置された一対の座部14と、これらの座部14の外端部同士を連結する円環状のアーチ部16と、を備えている。なお、それぞれの座部14において、対向する側の端部を「内端部」と称し、対向する側とは反対側の端部を「外端部」と称すものとする。
【0023】
座部14には、着座可能な座面14Aが形成されている。座面14Aは、略水平面とされているが、適宜傾斜をつけることもできる。アーチ部16において、それぞれの座部14との接続部分には、背もたれ16Aが形成されている。2つの背もたれ16Aは、天蓋16Bによって連結されている。
【0024】
<通気材>
図2に示すように、座面14A及び背もたれ16Aは、通気材18を用いて形成されている。通気材18は、フィルタ18A及びクッション材18Bを含んで形成されている。なお、図2においては対向配置された一対の座部14のうち、一方の座部14のみを示しており他方の座部14は省略しているが、通気材18及び後述する空調装置30の構成は同様である。
【0025】
(フィルタ)
フィルタ18Aは、通気材18においてクッション材18Bの外側に設けられ、不織布によって形成されたウイルス濾過機構である。フィルタ18Aは、後述する空気室の開口部(吹出口34)から室内空間へ吹出される空気に含まれる粒子であって、粒径が0.3μmより大きく1μm以下の粒子を、50%以上捕集可能な性能を有している。このような捕集性能を備えたフィルタの一例としては、例えばASHRAEで規定するMERV Ratingが13以上のフィルタが挙げられる。
【0026】
(クッション材)
一方、クッション材18Bは、後述する空気室の開口部(吹出口34)を覆って配置されている。クッション材18Bは、有機繊維が三次元状に絡み合うように形成され、かつ、有機繊維間に隙間が形成されたシート材である。クッション材18Bは、有機繊維の弾性力によりクッション性を備え、また、有機繊維間の隙間により、フィルタ18Aより通気性が高い。換言すると、フィルタ18Aは、クッション材18Bより通気性が低い。
【0027】
なお、クッション材18Bは、不織布によって形成してもよい。この場合、一例として、繊維方向が表側から裏側に向かう方向に沿うように形成することができる。この場合、繊維方向が例えば座面14A及び背もたれ16Aに沿う不織布を用いる場合と比較して、反発力を得易く、また厚みを大きくし易く、さらに通気性を確保し易い。
【0028】
(表皮材)
通気材18の表面、すなわちフィルタ18Aの外側には、表皮材20が配置されている。表皮材20は繊維を編み込んで形成され、通気性を備えている。表皮材20は、座面14A、背もたれ16A及び天蓋16Bに亘って連続して配置されている。
【0029】
<空調装置>
空調装置30は、家具本体12に組み込まれ、着座者周辺の空気環境を調整するための設備機器である。空調装置30は、空気室32と、吹出口34と、供給口36と、を備えている。
【0030】
(空気室、吹出口)
空気室32は、家具本体12において、座面14A及び背もたれ16Aの裏側に形成された空間である。吹出口34は、家具本体12において、空気室32から家具本体12の外部へ向って空気を吹出す送風用の開口部である。
【0031】
吹出口34から吹出した空気は、座面14A及び背もたれ16Aの背面に位置する通気材18並びに座面14A及び背もたれ16Aの表面に位置する表皮材20を通って家具本体12の外部へ吹出される。すなわち吹出口34は、着座者と接する位置又は近接する位置から、着座者(主に背中や臀部、足元)へ向って空気を吹出す吹出口である。
【0032】
なお、図2(A)、(B)における吹出口34の形状は、通風可能であることを模式的に示したものであり、本発明の実施形態はこれに限らない。吹出口34は、例えば後述する図3(A)、(B)に示すように、それぞれ小さな孔34Aの集合体とすることができる。このような孔34Aは、例えばパンチングメタルやグレーチング状の板材P1を用いて形成できる。
【0033】
(供給口)
供給口36は、空気室32へ向って空気を供給する送風用の開口部である。供給口36のうち、供給口36A、36Bは、建物の床下空間V1へ開放している。床下空間V1は建物の空調空気経路とされている。床下空間V1には、室内空間へ吹出し前の調温された空気が循環しており、床下空間V1は室内空間に対して正圧とされている。このため、供給口36A、36Bから空気室32へ、調温された空気が連続的に供給可能とされている。なお、供給口36A、36Bには、空気室32へ空気を供給するための機械的な動力を設けてもよい。
【0034】
また、供給口36のうち供給口36Cは、建物の室内空間へ開放している。供給口36Cから空気室32へ空気を供給するためには、機械的な構成を必要とする。機械的な構成としては、例えば図示しないファン及びモータが用いられる。
【0035】
なお、供給口36のうち、供給口36A、36Bは省略してもよい。これらの供給口を省略する場合、空調家具10は床面Fの任意の場所に設置できる。
【0036】
<作用・効果>
本発明の実施形態に係る空調家具10は、図2に示すように、粒径が0.3μmより大きく1μm以下の粒子を50%以上捕集可能なフィルタ18Aを備えている。このようなフィルタ18Aを用いることにより、空調家具10の空気室32から建物の室内空間へ吹出される空気が浄化され、空気中にウイルスが飛散している場合でも、当該ウイルスが除去される。したがって、空調家具10を利用するユーザ及び空調家具10が置かれた部屋を利用するユーザがウイルスに暴露されることを抑制できる。
【0037】
また、フィルタ18Aは、座面14A及び背もたれ16Aを形成している。すなわち、フィルタ18Aは、空気室32からみて供給口36側ではなく吹出口34側に設けられている。このため、フィルタ18Aを風速が大きい供給口36側に設ける場合と比較して、圧力損失が生じ難く、空気の供給動力を節約できる。また、フィルタ18Aを供給口36側に設ける場合と比較して、フィルタ18Aのサイズを大きくすることができるので、ウイルス捕集効果を高くできる。
【0038】
このように、本発明によると、床面Fに設置される空調家具10を用いて、ウイルスを含む空気が拡散されることを抑制し、さらに床面F付近の空気を浄化できる。
【0039】
また、空調家具10では、フィルタ18Aの通気性がクッション材18Bより低い。換言すると、クッション材18Bの通気性がフィルタ18Aより高い。このため、室内空間へ吹出される空気は、通気性が高いクッション材18Bの内部に浸透し、整流されて座面14A及び背もたれ16Aの全体に行き渡りやすい。
【0040】
さらに、フィルタ18Aは、クッション材18Bの外側に設けられている。つまりフィルタ18Aの内側に、通気性が高いクッション材18Bが設けられている。このため、供給口36から空気室32へ供給された空気は、フィルタ18Aに到達する前に、あるいはフィルタ18Aとの境界部分を伝ってクッション材18Bの内部へ浸透し、クッション材18Bの表面全体から静圧によってフィルタ18Aへ向かって吹出される。これによりフィルタ18Aがクッション材18Bの「内側」に設けられている場合より整流効果が高められ、空気がフィルタ18Aの全体から均等に吹出し易い。
【0041】
これに対して、クッション材18Bがない場合又はクッション材18Bの通気性が低い場合、空気が、フィルタ18Aにおいて供給口36付近の気流が速い箇所から動圧によって室内空間へ吹出し易い。このため、吹出し空気が均一になり難く、座面14A及び背もたれ16Aの位置によって吹出し量が変化し易い。
【0042】
また、空調家具10では、フィルタ18Aが不織布を用いて形成されている。不織布は金属や鉱物と比較して軟質であるため、クッション材18Bのクッション性を補うことができる。
【0043】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、クッション材18Bがフィルタ18Aの「内側」に設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばクッション材18Bをフィルタの「外側」に設けてもよい。これにより、フィルタを比較的硬質な材料で形成しても、着座感が悪くなり難い。
【0044】
例えば図3(A)に示すフィルタ18Cは、繊維材料を用いたシート材を蛇腹状(プリーツ状)に折り曲げて形成されている。このように形成すると、フィルタが空気室32(図2参照)から送られる空気に触れる表面積を大きくすることができるため、ウイルスの捕集性能を高められる場合がある。
【0045】
一方で、フィルタ18Cを形成するシート材が、空調家具10を利用するユーザの体重によって押圧される方向に沿うため、着座感が損なわれる可能性がある。しかしながら、フィルタ18Cの外側にクッション材18Bが設けられているため、着座感が悪くなり難い。
【0046】
また、フィルタ18Cを蛇腹状に形成することで、フィルタ18Cは荷重を支持する構造体として機能する。これにより、例えば板材P1における孔34Aの開口率を大きくして、通気性を向上できる。また、例えば孔34A一つあたりの開口面積を大きくして孔34Aの数を減らすことで、板材P1の構成を簡略化できる。
【0047】
なお、クッション材18Bをフィルタの「外側」に設ける実施形態としては、図3(B)に挙げる例も挙げられる。この例においては、孔34Aが形成された板材P2、P3を組み合わせて箱状に形成し、上記実施形態と同様のフィルタ18Aを箱状の板材P2及びP3の内側に配置する。
【0048】
フィルタ18Aをこのように配置すれば、クッション材18Bが空調家具10を利用するユーザの体重によって押圧されても、フィルタ18Aが変形することを抑制できる。フィルタ18Aの変形を抑制できれば、フィルタ18Aの捕集性能を安定させることができる。
【0049】
さらに、クッション材18Bは、フィルタ18Aの内側及び外側の双方に設けてもよい。例えば、図2(A)に示すフィルタ18Aと表皮材20との間に、さらにクッション材18Bを設けることができる。この場合、フィルタ18Aの内側及び外側それぞれのクッション材18Bの厚みは同一でなくてもよいし、クッション材18Bを形成する素材を変えてもよい。
【0050】
このように、本発明における「クッション材の内側又は外側に設けられたフィルタ」との記載は、フィルタの内側及び外側の双方にクッション材を設けることにより、2層のクッション材の間にフィルタが挟まれた構成を含む。
【0051】
また、上記実施形態における空調家具10は、2つの座部14が対向して配置されたボックス席状の形状としたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば座部14を1つだけ設け、1人掛けの椅子又はソファとして形成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 空調家具
12 家具本体
14A 座面
18A フィルタ
18B クッション材
32 空気室
34 吹出口(開口部)
34A 孔(開口部)
36A 供給口
36B 供給口
36C 供給口
図1
図2
図3