(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026934
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】着陸装置
(51)【国際特許分類】
B64C 25/14 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
B64C25/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129487
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】冨松 将
(57)【要約】 (修正有)
【課題】航空機の着陸装置において、車輪支持部に発生する曲げモーメントを小さくする。
【解決手段】車輪14を転動可能に支持する第1部分と、第1部分から機体に向かって第1部分の軸線の方向に延びると共に軸線を中心にして第1部分を回転可能に支持する第2部分とを有する車輪支持部16と、機体に対して車輪支持部16の第2部分を揺動可能に支持する揺動支持部と、車輪支持部16を揺動させて機体への車輪14の格納と機体からの車輪14の展開とを行うリトラクトアクチュエータ42と、機体に取り付けられ、車輪支持部16を支持するブレース22と、車輪支持部16の第1部分にブレース22を連結するジョイント20と、を備える着陸装置10であって、ジョイント20は、揺動支持部よりも車輪14の近くに配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を転動可能に支持する第1部分と、前記第1部分から機体に向かって前記第1部分の軸線の方向に延びると共に前記軸線を中心にして前記第1部分を回転可能に支持する第2部分とを有する車輪支持部と、
前記機体に対して前記車輪支持部の前記第2部分を揺動可能に支持する揺動支持部と、
前記車輪支持部を揺動させて前記機体への前記車輪の格納と前記機体からの前記車輪の展開とを行うリトラクトアクチュエータと、
前記機体に取り付けられ、前記車輪支持部を支持するブレースと、
前記車輪支持部の前記第1部分に前記ブレースを連結するジョイントと、
を備える着陸装置であって、
前記ジョイントは、前記揺動支持部よりも前記車輪の近くに配置される、着陸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の着陸装置であって、
前記車輪支持部は、
前記車輪を転動可能に支持するフォークと、
前記フォークから前記機体まで延びるストラットと、
を有し、
前記ストラットは、シリンダとインナーロッドとを有するダンパであり、
前記フォークと前記インナーロッドとは、前記第1部分であり、
前記シリンダは、前記第2部分であり、
前記インナーロッドは、前記フォークに接続され、
前記ジョイントは、前記フォークに配置され、前記フォークに対して前記軸線を中心にして回転可能であり、
前記フォークと前記ジョイントとにシミーダンパが取り付けられ、
前記シミーダンパは、前記車輪に横力が発生した場合に前記車輪の向きを安定化させると共に、前記車輪が左右に首振りした場合に前記車輪を元の姿勢に戻そうとする復元力を発生させる、着陸装置。
【請求項3】
請求項1に記載の着陸装置であって、
前記車輪支持部は、
前記車輪を転動可能に支持するフォークと、
前記フォークから前記機体まで延びるストラットと、
を有し、
前記ストラットは、シリンダとインナーロッドとを有するダンパであり、
前記フォークと前記インナーロッドとは、前記第1部分であり、
前記シリンダは、前記第2部分であり、
前記インナーロッドは、前記フォークに接続され、
前記ジョイントは、前記フォークに配置され、前記フォークに対して前記軸線を中心にして回転可能であり、
前記ジョイントにステアリングアクチュエータが取り付けられ、
前記ステアリングアクチュエータは、前記ジョイントに対する前記フォークの向きを変えることによって前記車輪を操舵する、着陸装置。
【請求項4】
請求項1に記載の着陸装置であって、
前記車輪支持部は、
前記車輪を転動可能に支持するフォークと、
前記フォークから前記機体まで延びるストラットと、
を有し、
前記ストラットは、シリンダとインナーロッドとを有するダンパであり、
前記フォークと前記インナーロッドとは、前記第1部分であり、
前記シリンダは、前記第2部分であり、
前記インナーロッドは、前記フォークに接続され、
前記ジョイントは、前記インナーロッドのうち前記シリンダよりも前記フォークの近くに配置され、前記インナーロッドに対して前記軸線を中心にして回転可能であり、
前記フォークと前記ジョイントとにシミーダンパが取り付けられ、
前記シミーダンパは、前記車輪に横力が発生した場合に前記車輪の向きを安定化させると共に、前記車輪が左右に首振りした場合に前記車輪を元の姿勢に戻そうとする復元力を発生させる、着陸装置。
【請求項5】
請求項1に記載の着陸装置であって、
前記車輪支持部は、
前記車輪を転動可能に支持するフォークと、
前記フォークから前記機体まで延びるストラットと、
を有し、
前記ストラットは、シリンダとインナーロッドとを有するダンパであり、
前記フォークと前記インナーロッドとは、前記第1部分であり、
前記シリンダは、前記第2部分であり、
前記インナーロッドは、前記フォークに接続され、
前記ジョイントは、前記インナーロッドのうち前記シリンダよりも前記フォークの近くに配置され、前記インナーロッドに対して前記軸線を中心にして回転可能であり、
前記ジョイントにステアリングアクチュエータが取り付けられ、
前記ステアリングアクチュエータは、前記ジョイントに対する前記フォークの向きを変えることによって前記車輪を操舵する、着陸装置。
【請求項6】
請求項1に記載の着陸装置であって、
前記機体の幅方向において、前記車輪支持部及び前記車輪は、前記ブレースが前記機体に接続される部分と前記リトラクトアクチュエータとの間に配置される、着陸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の着陸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、航空機の着陸装置(降着装置ともいう)が示される。着陸装置は、機体への車輪の格納と機体からの車輪の展開とを行う。この着陸装置において、車輪は、車輪支持部によって支持される。車輪支持部は、ストラットを有する。ストラットは、シリンダとピストンロッドとを有する。ピストンロッドは、車輪を転動可能に支持する。シリンダは、機体の揺動支持部によって揺動可能に支持される。また、シリンダは、ブレースによっても支持される。ブレースは、カラーを介してシリンダに連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造によると、カラーがピストンロッドの上方に配置される。すなわち、カラーの位置が車輪から高さ方向に離れている。このため、車輪支持部に発生する曲げモーメントが大きくなる。ストラットに発生するモーメントは小さい方が好ましい。
【0005】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、車輪を転動可能に支持する第1部分と、前記第1部分から機体に向かって前記第1部分の軸線の方向に延びると共に前記軸線を中心にして前記第1部分を回転可能に支持する第2部分とを有する車輪支持部と、前記機体に対して前記車輪支持部の前記第2部分を揺動可能に支持する揺動支持部と、前記車輪支持部を揺動させて前記機体への前記車輪の格納と前記機体からの前記車輪の展開とを行うリトラクトアクチュエータと、前記機体に取り付けられ、前記車輪支持部を支持するブレースと、前記車輪支持部の前記第1部分に前記ブレースを連結するジョイントと、を備える着陸装置であって、前記ジョイントは、前記揺動支持部よりも前記車輪の近くに配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車輪支持部に発生する曲げモーメントを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る着陸装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、機体の外部に車輪が展開された状態の着陸装置の右側面図である。
【
図3】
図3は、機体の外部に車輪が展開された状態の着陸装置を
図2の矢印III方向から見た図である。
【
図4】
図4は、機体の内部に車輪が格納された状態の着陸装置の右側面図である。
【
図5】
図5は、機体の内部に車輪が格納された状態の着陸装置を
図4の矢印V方向から見た図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る着陸装置の車輪支持部に作用する曲げモーメントを説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、従来の着陸装置の車輪支持部に作用する曲げモーメントを説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る着陸装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で説明する着陸装置10は、航空機の機首に配置される。
【0010】
[1 第1実施形態]
[1-1 着陸装置10の構成]
【0011】
図1は、第1実施形態に係る着陸装置10の斜視図である。なお、
図1は、機体12の外部に車輪14が展開された状態の着陸装置10の斜視図である。
図2は、機体12の外部に車輪14が展開された状態の着陸装置10の右側面図である。
図3は、機体12の外部に車輪14が展開された状態の着陸装置10を
図2の矢印III方向から見た図である。
図4は、機体12の内部に車輪14が格納された状態の着陸装置10の右側面図である。
図5は、機体12の内部に車輪14が格納された状態の着陸装置10を
図4の矢印V方向から見た図である。
【0012】
第1実施形態に係る着陸装置10は、車輪14と、車輪支持部16と、リトラクト機構18と、ジョイント20と、ブレース22と、シミーダンパ24とを備える。このタイプの着陸装置10を備える航空機は、機体12(
図2、
図4)の左右後方に配置される他の着陸装置10のブレーキ力を調整することで前輪(車輪14)の向きを変えて左右の旋回を行う。
【0013】
車輪支持部16は、車輪14を転動可能に支持すると共に車輪14から機体12に向かって延びる。車輪支持部16は、揺動可能である。車輪支持部16は、フォーク26とストラット28とを有する。車輪支持部16の各構成は、車輪14から車輪支持部16の揺動の中心(シャフト46、軸線58)に向かって、車輪14、フォーク26、ストラット28という順番で配置される。フォーク26とストラット28の各々は、車輪支持部16の軸線30に沿って配置される。
フォーク26とインナーロッド38とは、車輪支持部16の第1部分に相当し、シリンダ36は、車輪支持部16の第2部分に相当する。
【0014】
フォーク26は、軸部34と脚部32とを有する。脚部32は、U字形状である。脚部32は、車輪14を左右両側から挟み、車輪14を転動可能に支持する。なお、本実施形態の脚部32は、両持ちであるが、片持ちであってもよい。軸部34は、脚部32の左右の中心部からストラット28に向かって延びる。軸部34は、円筒形状である。
【0015】
ストラット28は、シリンダ36とインナーロッド38とを有するダンパである。ストラット28の各構成は、フォーク26から車輪支持部16の揺動の中心(シャフト46、軸線58)に向かって、インナーロッド38、シリンダ36という順番で配置される。シリンダ36とインナーロッド38の各々は、軸線30に沿って配置される。シリンダ36は、リトラクト機構18のシャフト46によって揺動可能に支持される。インナーロッド38は、部分的にシリンダ36に収容される。シリンダ36の外部に配置されるインナーロッド38の端部は、フォーク26の軸部34に嵌められて固定される。インナーロッド38は、シリンダ36によってガイドされる。インナーロッド38は、シリンダ36に対し軸線30に沿って往復可能である。また、インナーロッド38は、シリンダ36に対して、軸線30を中心に回転可能である。
【0016】
リトラクト機構18は、リトラクトアクチュエータ42と、ロッド部44と、シャフト46(揺動支持部)と、アーム48とを有する。
図3で示されるように、左右方向(機体12の幅方向)において、リトラクトアクチュエータ42は、車輪支持部16及び車輪14に対して、左右のいずれか一方にずれて配置される。本実施形態では、リトラクトアクチュエータ42は、車輪支持部16及び車輪14よりも左方向に配置される。リトラクトアクチュエータ42は、電動式又は油圧式のアクチュエータである。リトラクトアクチュエータ42は、ロッド部44を航空機の前後方向に移動させる。ロッド部44は、航空機の前後方向に延びる。ロッド部44の前端部は、リトラクトアクチュエータ42に接続される。ロッド部44の後端部は、2つに分岐する分岐部50を有する。分岐部50は、左右両側からローラ52を挟み、ローラ52を回転可能に支持する。ローラ52は、左右方向に延びる軸線54を中心にして回転可能である。ローラ52の前方には、分岐部50とローラ52によって、孔56が形成される。
【0017】
シャフト46は、シリンダ36に取り付けられる。シャフト46は、左右方向に延びる。シャフト46は、シリンダ36の左右各々に取り付けられる2つの部材から構成される。シャフト46は、機体12に支持されることによって、左右方向に延びる軸線58を中心にして回転可能である。これにより、車輪支持部16は、機体12に対してシャフト46(軸線58)を中心にして揺動可能となる。アーム48は、シリンダ36の左方向に配置されるシャフト46から孔56に向かって延びる。アーム48の先端部は、孔56に挿入される。アーム48の先端部の背面は、ローラ52に当接し得る。
【0018】
ジョイント20は、車輪支持部16にブレース22を連結する。ジョイント20は、揺動中心のシャフト46よりも車輪14の近くに配置される。本実施形態では、ジョイント20は、フォーク26の軸部34の周囲に回転可能に取り付けられる。これにより、ジョイント20は、軸部34にブレース22を連結する。なお、ジョイント20は、インナーロッド38の周囲に回転可能に取り付けられてもよい。この場合、ジョイント20は、インナーロッド38にブレース22を連結する。なお、ジョイント20がインナーロッド38に取り付けられる形態において、ジョイント20は、シリンダ36よりもフォーク26の近くに配置されることが好ましい。例えば、ジョイント20は、インナーロッド38の先端に配置され、フォーク26に近接することが好ましい。ジョイント20は、円環形状であり、軸部34の外周面に嵌められる。ジョイント20は、軸部34に対して、軸線30を中心にして回転可能である。ジョイント20は、第1支持部62と第2支持部64とを有する。第1支持部62は、ブレース22を回転可能に支持する。第2支持部64は、シミーダンパ24を回転可能に支持する。
【0019】
ブレース22は、リンク機構である。ブレース22は、リンクに相当するロア部66とアッパ部68とを有する。ロア部66は、ジョイント20の第1支持部62に接続される。ロア部66は、第1支持部62の軸線70を中心にして回転可能である。軸線70は、軸線30と平行する方向及びジョイント20の径方向と直交する。アッパ部68は、ロア部66に接続される。アッパ部68は、アッパ部68とロア部66との関節部分の軸線72を中心にして回転可能である。軸線72と軸線70とは平行である。また、アッパ部68は、ジョイント74に接続される。ジョイント74は、機体12に接続される。アッパ部68は、アッパ部68とジョイント74との関節部分の軸線76を中心にして回転可能である。更に、アッパ部68は、ジョイント74の軸線78を中心にして回転可能である。軸線76と軸線72とは平行である。
図1~
図3で示されるように、機体12の外部に車輪14が展開された状態において、ブレース22は伸張する。一方、
図4、
図5で示されるように、機体12の内部に車輪14が格納された状態において、ブレース22は畳まれる。
図3で示されるように、左右方向(機体12の幅方向)において、ジョイント74は、車輪支持部16及び車輪14よりも右方向に配置される。
【0020】
例えば、
図3で示されるように、シミーダンパ24は、フォーク26とジョイント20の第2支持部64とに取り付けられる。シミーダンパ24は、車輪14に横力が発生した場合に車輪14の向きを安定化させる。また、シミーダンパ24は、車輪14が左右に首振りした場合に車輪14を元の姿勢に戻そうとする復元力を発生させる。
【0021】
[1-2 着陸装置10の動作]
次のようにして、着陸装置10は、機体12の外部から内部に車輪14を格納する。
【0022】
図1~
図3で示される状態から、リトラクトアクチュエータ42は、ロッド部44を前方に移動させる。ローラ52は、アーム48を前方に押す。前方へのアーム48の移動に伴い、シャフト46は、右方向から見て半時計回りに回転する。すると、車輪支持部16及び車輪14は、右方向から見て半時計回りに揺動する。リトラクトアクチュエータ42が動作を続けると、車輪支持部16及び車輪14は、徐々に機体12に近づく。車輪支持部16及び車輪14は、
図4及び
図5で示されるように、最終的に機体12の内部に格納される。
【0023】
車輪14の格納工程における車輪支持部16の揺動に伴い、ブレース22のロア部66とアッパ部68は各軸線(軸線70、軸線72、軸線76、軸線78)を中心に回転する。これにより、ブレース22は、徐々に畳まれる。
【0024】
ジョイント20は、ブレース22に接続される。このため、車輪14の格納工程における車輪支持部16の揺動に伴い、ジョイント20には、軸線30を中心にして回転する力が作用する。具体的には、ジョイント20には、ストラット28の位置から見て時計回りの方向の力が作用する。ジョイント20とフォーク26とはシミーダンパ24を介して互いに接続されている。従って、ジョイント20、シミーダンパ24、フォーク26、車輪14及びインナーロッド38が一体となって、シリンダ36に対して軸線30を中心にして回転する。このため、
図4で示されるように、車輪14の転動軸線80が略上下方向に延びた状態で、車輪14は機体12に格納される。
【0025】
[1-3 着陸装置10の効果]
図6は、第1実施形態に係る着陸装置10の車輪支持部16に作用する曲げモーメントを説明するための模式図である。
図7は、比較例の着陸装置10´の車輪支持部16に作用する曲げモーメントを説明するための模式図である。
図7は、従来の装置の構造を模式化して示す。
図6と
図7を比較して解るように、着陸装置10においては、車輪14の中心から車輪支持部16とブレース22との接続部位(ジョイント20の位置)までの長さL1が、着陸装置10´の車輪14の中心から車輪支持部16とブレース22との接続部位(ジョイント20の位置)までの長さL2よりも短い。
【0026】
図6及び
図7で示されるように、車輪14には、上向きの荷重Fが作用する。荷重Fは、車輪支持部16の軸線30の方向の成分faと、成分faと直交する成分fnとに分けられる。着陸装置10においては、車輪支持部16に曲げモーメントfn・L1が発生する。従来の着陸装置10´においては、車輪支持部16に曲げモーメントfn・L2が発生する。上述したように、着陸装置10の長さL1は、着陸装置10´の長さL2より小さいため、曲げモーメントfn・L1は曲げモーメントfn・L2より小さくなる。従って、第1実施形態によれば、車輪支持部16に作用する曲げモーメントを小さくすることができる。
【0027】
また、第1実施形態によれば、次の効果も得られる。例えば、第1実施形態とは別に、ジョイント20がシリンダ36に配置される装置がある。このような装置においては、車輪14の格納(及び展開)に応じて車輪14を車輪支持部16の軸周りに回転させるために、ジョイント20とフォーク26とを連結する部材(トルクアーム等)が必要である。これに対して、第1実施形態においては、ジョイント20は、インナーロッド38又はフォーク26に配置される。第1実施形態によれば、車輪支持部16にトルクアームのような部材が不要である。このため、第1実施形態によれば、機体12の重量増加を抑制することができる。
【0028】
[2 第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る着陸装置10の斜視図である。なお、
図8は、機体12の外部に車輪14が展開された状態の着陸装置10の斜視図である。
図8において、第1実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付すか、又は、第1実施形態と同じ構成要素の符号を省略する。
【0029】
第2実施形態に係る着陸装置10は、車輪14と、車輪支持部16と、リトラクト機構18と、ブレース22と、ジョイント20と、ステアリングアクチュエータ82と、ウォームギヤ84とを備える。このタイプの着陸装置10を備える航空機は、ステアリングアクチュエータ82を制御することで操舵を行う。
【0030】
ステアリングアクチュエータ82は、ジョイント20に固定される。ステアリングアクチュエータ82の回転軸には、ウォームギヤ84のウォーム86が固定される。一方、フォーク26の軸部34の周囲には、ウォームギヤ84のウォームホイール88が固定される。
【0031】
ステアリングアクチュエータ82が動作することにより、ウォーム86が回転し、ウォームホイール88が軸線30を中心にして回転する。ウォームホイール88の回転に伴い、フォーク26及び車輪14が軸線30を中心にして回転する。これにより、車輪14が操舵される。
【0032】
第2実施形態において、第1実施形態と同様に、ジョイント20は、フォーク26の軸部34の周囲に取り付けられる。このため、第2実施形態によれば、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0033】
[3 実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0034】
本発明の態様は、車輪(14)を転動可能に支持する第1部分(26、38)と、前記第1部分から機体(12)に向かって前記第1部分の軸線(30)の方向に延びると共に前記軸線を中心にして前記第1部分を回転可能に支持する第2部分(36)とを有する車輪支持部(16)と、前記機体に対して前記車輪支持部の前記第2部分を揺動可能に支持する揺動支持部(46)と、前記車輪支持部を揺動させて前記機体への前記車輪の格納と前記機体からの前記車輪の展開とを行うリトラクトアクチュエータ(42)と、前記機体に取り付けられ、前記車輪支持部を支持するブレース(22)と、前記車輪支持部の前記第1部分に前記ブレースを連結するジョイント(20)と、を備える着陸装置(10)であって、前記ジョイントは、前記揺動支持部よりも前記車輪の近くに配置される。
【0035】
上記構成によれば、車輪支持部に発生するモーメントを小さくすることができる。
【0036】
本発明の態様において、前記車輪支持部は、前記車輪を転動可能に支持するフォーク(26)と、前記フォークから前記機体まで延びるストラット(28)と、を有し、前記ストラットは、シリンダとインナーロッドとを有するダンパであり、前記フォークと前記インナーロッドとは、前記第1部分であり、前記シリンダは、前記第2部分であり、前記インナーロッドは、前記フォークに接続され、前記ジョイントは、前記フォークに配置され、前記フォークに対して前記軸線を中心にして回転可能であり、前記フォークと前記ジョイントとにシミーダンパ(24)が取り付けられ、前記シミーダンパは、前記車輪に横力が発生した場合に前記車輪の向きを安定化させると共に、前記車輪が左右に首振りした場合に前記車輪を元の姿勢に戻そうとする復元力を発生させる。
【0037】
上記構成によれば、車輪支持部にトルクアームのような部材が不要であるため、機体の重量増加を抑制することができる。
【0038】
本発明の態様において、前記車輪支持部は、前記車輪を転動可能に支持するフォークと、前記フォークから前記機体まで延びるストラットと、を有し、前記ストラットは、シリンダとインナーロッドとを有するダンパであり、前記フォークと前記インナーロッドとは、前記第1部分であり、前記シリンダは、前記第2部分であり、前記インナーロッドは、前記フォークに接続され、前記ジョイントは、前記フォークに配置され、前記フォークに対して前記軸線を中心にして回転可能であり、前記ジョイントにステアリングアクチュエータ(82)が取り付けられ、前記ステアリングアクチュエータは、前記ジョイントに対する前記フォークの向きを変えることによって前記車輪を操舵する。
【0039】
上記構成によれば、車輪支持部にトルクアームのような部材が不要であるため、機体の重量増加を抑制することができる。
【0040】
本発明の態様において、前記車輪支持部は、前記車輪を転動可能に支持するフォークと、前記フォークから前記機体まで延びるストラットと、を有し、前記ストラットは、シリンダ(36)とインナーロッド(38)とを有するダンパであり、前記フォークと前記インナーロッドとは、前記第1部分であり、前記シリンダは、前記第2部分であり、前記インナーロッドは、前記フォークに接続され、前記ジョイントは、前記インナーロッドのうち前記シリンダよりも前記フォークの近くに配置され、前記インナーロッドに対して前記軸線を中心にして回転可能であり、前記フォークと前記ジョイントとにシミーダンパが取り付けられ、前記シミーダンパは、前記車輪に横力が発生した場合に前記車輪の向きを安定化させると共に、前記車輪が左右に首振りした場合に前記車輪を元の姿勢に戻そうとする復元力を発生させる。
【0041】
上記構成によれば、車輪支持部にトルクアームのような部材が不要であるため、機体の重量増加を抑制することができる。
【0042】
本発明の態様において、前記車輪支持部は、前記車輪を転動可能に支持するフォークと、前記フォークから前記機体まで延びるストラットと、を有し、前記ストラットは、シリンダとインナーロッドとを有するダンパであり、前記フォークと前記インナーロッドとは、前記第1部分であり、前記シリンダは、前記第2部分であり、前記インナーロッドは、前記フォークに接続され、前記ジョイントは、前記インナーロッドのうち前記シリンダよりも前記フォークの近くに配置され、前記インナーロッドに対して前記軸線を中心にして回転可能であり、前記ジョイントにステアリングアクチュエータが取り付けられ、前記ステアリングアクチュエータは、前記ジョイントに対する前記フォークの向きを変えることによって前記車輪を操舵する。
【0043】
上記構成によれば、車輪支持部にトルクアームのような部材が不要であるため、機体の重量増加を抑制することができる。
【0044】
本発明の態様において、前記機体の幅方向において、前記車輪支持部及び前記車輪は、前記ブレースが前記機体に接続される部分(74)と前記リトラクトアクチュエータとの間に配置されてもよい。
【0045】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0046】
10…着陸装置 12…機体
14…車輪 16…車輪支持部
20…ジョイント 22…ブレース
24…シミーダンパ
26…フォーク(車輪支持部の第1部分)
28…ストラット 30…軸線
36…シリンダ(車輪支持部の第2部分)
38…インナーロッド(車輪支持部の第1部分)
42…リトラクトアクチュエータ 46…シャフト(揺動支持部)
82…ステアリングアクチュエータ