(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026949
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
A01B69/00 302
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129519
(22)【出願日】2022-08-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
(72)【発明者】
【氏名】藤井 克朋
(72)【発明者】
【氏名】山田 信芳
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043AB15
2B043BA02
2B043BB14
2B043DA07
2B043DA15
2B043DA17
2B043EB05
2B043ED12
2B043ED13
2B043EE01
(57)【要約】
【課題】コンバインと搬送車両の離間距離を短時間に調整して、穀粒の排出作業を速やかに行うことができるコンバインを提供する。
【解決手段】エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路(A1)に、エンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、操縦部(5)に、排出オーガ(8)を操作する操作具(14)と無段変速装置(30)を操作する変速レバー(16)を設け、操作具(14)に、無段変速装置(30)を操作して、農道に停車した搬送車両に穀粒を排出する排出位置に移動したコンバインを前後方向に微速走行速度で移動させる前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)を設けた。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の左側後方に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の右側後方に操縦部(5)を設け、該操縦部(5)の後側に穀粒を貯留するグレンタンク(7)と、該グレンタンク(7)内の穀粒を外部に排出する排出オーガ(8)を設けたコンバインにおいて、
前記エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路(A1)に、前記エンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、
前記操縦部(5)に、前記排出オーガ(8)を操作する操作具(14)と無段変速装置(30)を操作する変速レバー(16)を設け、
該操作具(14)に、前記無段変速装置(30)を操作して、農道に停車した搬送車両に穀粒を排出する排出位置に移動したコンバインを前後方向に微速走行速度で移動させる前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記コンバインの前後方向に延在する第1中心線(L1)に平行な仮想線(L2)と搬送車両の前後方向に延在する第2中心線(L3)の交差角度(θ)が反時計方向のマイナス角度の場合には、前記後進スイッチ(45B)の操作を無効にして、前記前進スイッチ(45A)を操作時にコンバインを前進させ、
前記交差角度(θ)が時計方向のプラス角度の場合には、前記前進スイッチ(45A)の操作を無効にして、前記後進スイッチ(45B)を操作時にコンバインを後進させる請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記微速走行速度を、前記コンバインの最高走行速度の8~10%に設定した請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記変速レバー(16)が前側傾斜姿勢又は後側傾斜姿勢に操作されている場合には、前記前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)の操作を規制する請求項3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記排出オーガ(8)が駆動操作されている場合には、前記前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)の操作を規制する請求項3記載のコンバイン。
【請求項6】
前記前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)をモーメンタリ式スイッチで形成した請求項1記載のコンバイン。
【請求項7】
前記前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)をオルタネート式スイッチで形成した請求項1記載のコンバイン。
【請求項8】
前記操作具(14)に、前記エンジン(E)の駆動を停止させる緊急停止スイッチ(47)と、停止した前記エンジン(E)を再始動する再始動スイッチ(48)を設けた請求項1記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置の走行速度の増減速を行う無段変速装置を備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動走行するコンバインにおいて、グレンタンクに貯留された穀粒が所定の量を超えた場合には、コンバインが自動走行する設定経路を離れて、予め設定された排出位置に移動させた後に、作業者がリモコンを操作して排出オーガを駆動して圃場に隣接する農道に停車したトラック等の搬送車両に穀粒を排出する技術が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、操縦部の変速レバーを操作してコンバインを前進等させてコンバインと搬送車両の離間距離を調整するのが難しいために、穀粒の排出時間に時間がかかる恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、コンバインと搬送車両の離間距離を短時間に調整して、穀粒の排出作業を速やかに行うことができるコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の左側後方に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の右側後方に操縦部(5)を設け、該操縦部(5)の後側に穀粒を貯留するグレンタンク(7)と、該グレンタンク(7)内の穀粒を外部に排出する排出オーガ(8)を設けたコンバインにおいて、
前記エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路(A1)に、前記エンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、前記操縦部(5)に、前記排出オーガ(8)を操作する操作具(14)と無段変速装置(30)を操作する変速レバー(16)を設け、該操作具(14)に、前記無段変速装置(30)を操作して、農道に停車した搬送車両に穀粒を排出する排出位置に移動したコンバインを前後方向に微速走行速度で移動させる前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)を設けたことを特徴とするコンバインである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記コンバインの前後方向に延在する第1中心線(L1)に平行な仮想線(L2)と搬送車両の前後方向に延在する第2中心線(L3)の交差角度(θ)が反時計方向のマイナス角度の場合には、前記後進スイッチ(45B)の操作を無効にして、前記前進スイッチ(45A)を操作時にコンバインを前進させ、前記交差角度(θ)が時計方向のプラス角度の場合には、前記前進スイッチ(45A)の操作を無効にして、前記後進スイッチ(45B)を操作時にコンバインを後進させる請求項1記載のコンバインである。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記微速走行速度を、前記コンバインの最高走行速度の8~10%に設定した請求項1又は2記載のコンバインである。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記変速レバー(16)が前側傾斜姿勢又は後側傾斜姿勢に操作されている場合には、前記前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)の操作を規制する請求項3記載のコンバインである。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記排出オーガ(8)が駆動操作されている場合には、前記前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)の操作を規制する請求項3記載のコンバインである。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)をモーメンタリ式スイッチで形成した請求項1記載のコンバインである。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)をオルタネート式スイッチで形成した請求項1記載のコンバインである。
【0013】
請求項8記載の発明は、前記操作具(14)に、前記エンジン(E)の駆動を停止させる緊急停止スイッチ(47)と、停止した前記エンジン(E)を再始動する再始動スイッチ(48)を設けた請求項1記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路(A1)に、エンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、操縦部(5)に、排出オーガ(8)を操作する操作具(14)と無段変速装置(30)を操作する変速レバー(16)を設け、操作具(14)に、無段変速装置(30)を操作して、農道に停車した搬送車両に穀粒を排出する排出位置に移動したコンバインを前後方向に微速走行速度で移動させる前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)を設けたので、コンバインを搬送車両に向かって微速走行速度で移動させて、コンバインと搬送車両の離間距離を短時間に調整して穀粒の排出作業を速やかに行うことができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、コンバインの前後方向に延在する第1中心線(L1)に平行な仮想線(L2)と搬送車両の前後方向に延在する第2中心線(L3)の交差角度(θ)が反時計方向のマイナス角度の場合には、後進スイッチ(45B)の操作を無効にして、前進スイッチ(45A)を操作時にコンバインを前進させ、交差角度(θ)が時計方向のプラス角度の場合には、前進スイッチ(45A)の操作を無効にして、後進スイッチ(45B)を操作時にコンバインを後進させるので、作業者による誤操作を防止して、コンバインと搬送車両の離間距離をより短時間に調整して穀粒の排出作業をより速やかに行うことができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、微速走行速度を、コンバインの最高走行速度の8~10%に設定したので、コンバインの発進時と停止時の衝撃を抑制することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明による効果に加えて、変速レバー(16)が前側傾斜姿勢又は後側傾斜姿勢に操作されている場合には、前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)の操作を規制するので、コンバインの急発進と急停止を防止して、コンバインの過度の移動を防止することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項3記載の発明による効果に加えて、排出オーガ(8)が駆動操作されている場合には、前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)の操作を規制するので、排出オーガ(8)の外部との衝突を防止して、排出オーガ(8)の破損等を防止することができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)をモーメンタリ式スイッチで形成したので、前進スイッチ(45A)や後進スイッチ(45B)の操作を中断して走行装置(2)の走行を速やかに停止させることができる。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、前進スイッチ(45A)と後進スイッチ(45B)をオルタネート式スイッチで形成したので、前進スイッチ(45A)や後進スイッチ(45B)を操作すると再操作するまで走行装置(2)を継続して走行させて作業負担を軽減することができる。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、操作具(14)に、エンジン(E)の駆動を停止させる緊急停止スイッチ(47)と、停止したエンジン(E)を再始動する再始動スイッチ(48)を設けたので、穀粒の排出作業時に緊急事態が生じた場合にはエンジン(E)を速やかに停止することができ、また、操縦部(5)に搭乗することなくエンジン(E)を再始動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】排出オーガを反時計方向に旋回させたコンバインの平面図である。
【
図14】コンバインに対して搬送車両が反時計方向に傾いて停車した説明図である。
【
図15】コンバインに対して搬送車両が反時計方向に傾いて停車した説明図である。
【
図16】無段変速装置の(a)はモータ固定容量型であり、(b)はモータ可変容量型の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~3に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側部に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側部に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0024】
操縦部5の下側には、エンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ8によって外部に排出される。排出オーガ8は、グレンタンク7の後側に設けられた上下方向に延在する縦排出筒8Aと、縦排出筒8Aの上部から前後方向に延在する横排出筒8Bと、横排出筒8Bの先端部の排出部8Cで形成されている。
【0025】
操縦部5の操縦席の前方には、フロントパネル10が設けられ、操縦席の左方には、サイドパネル15が設けられている。
【0026】
フロントパネル10の左部には、エンジンのEの出力回転等を表示するタッチパネル式のモニタ11が設けられ、右部には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する操作レバー12が設けられている。
【0027】
モニタ11と操作レバー12の間には、排出オーガ8を収納位置からトラック等の搬送車に穀粒を排出する排出位置に移動させるオーガスイッチ13が設けられ、フロントパネル10の後面には、排出オーガ8を操作するリモコン(請求項の「操作具」)14が吊下げられている。また、リモコン14は、操縦席の後部や右部に吊下げることもできる。なお、
図4には、排出オーガ8の縦排出筒8Aを反時計方向に回転させて、横排出筒8Bの先端部を前方右側に移動させた形態を図示している。
【0028】
サイドパネル15の前部には、エンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置30を操作する主変速レバー(請求項の「変速レバー」)16が設けられ、主変速レバー16の後側には、無段変速装置30の出力回転の増減速を行うトランスミッション31を操作する副変速レバー17が設けられている。
【0029】
主変速レバー16の左側には、オーガクラッチ35の接続と接続解除を操作するオーガレバー18が設けられ、副変速レバー17の左側には、刈取クラッチ33と脱穀クラッチ34の接続と接続解除を操作する刈脱レバー19が設けられている。
【0030】
図5に示すように、RTK-GPS測位方式である測位ユニット20は、測位衛星21と、既知の位置に設けられた基地局22と、コンバインに設けられた移動局26で構成されている。これにより、測位衛星21から移動局26に送信されてくる位置情報と基地局22から移動局26に送信されてくる補正用の位置情報から移動局26の位置によってコンバインの位置を正確に得ることができる。
【0031】
基地局22は、固定用通信機23と、測位衛星21からの位置情報を受信する固定用GPSアンテナ24と、移動局26に補正用の位置情報を送信する固定用データ送信アンテナ25で構成されている。
【0032】
移動局26は、移動用通信機27と、測位衛星21からの位置情報を受信する移動用GPSアンテナ28と、基地局22からの補正用の位置情報を受信する移動用データ送信アンテナ29で構成されている。
【0033】
図6に示すように、エンジンEの出力回転は、伝動経路A1に設けられた無段変速装置30に伝動される。無段変速装置30の入力軸に伝動されたエンジンEの出力回転は、無段変速装置30内で増減速と回転方向の切替えが行われた後に、無段変速装置30からトランスミッション31に伝動される。
【0034】
トランスミッション31の入力軸に伝動された無段変速装置30の出力回転は、トランスミッション31内の多段ギヤで増減速された後に、走行装置2と刈取装置3に伝動されるに伝動される。また、トランスミッション31の出力軸と走行装置2の入力軸の間には走行クラッチ32が設けられ、トランスミッション31の出力軸と刈取装置3の入力軸の間には刈取クラッチ33が設けられている。
【0035】
エンジンEの出力回転は、伝動経路A2に設けられた脱穀装置4に伝動される。また、エンジンEの出力軸と脱穀装置4の入力軸の間には脱穀クラッチ34が設けられている。
【0036】
エンジンEの出力回転は、伝動経路A3に設けられた排出オーガ8に伝動される。また、エンジンEの出力軸と排出オーガ8の入力軸の間にはオーガクラッチ35が設けられている。
【0037】
図7に示すように、主変速レバー16を中立姿勢にした場合には、無段変速装置30の出力回転はゼロになる。主変速レバー16を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速し、前側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速する。また、主変速レバー16を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速し、後側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速する。
【0038】
副変速レバー17を中立姿勢にした場合には、トランスミッション31の出力回転は増減速されない。副変速レバー17を中立姿勢から前側傾斜姿勢にした場合には、トランスミッション31の出力回転は増速し、副変速レバー17を中立姿勢から後側傾斜姿勢にした場合には、トランスミッション31の出力回転は減速する。
【0039】
オーガレバー18を前側傾斜姿勢にした場合には、オーガクラッチ35の接続は解除されて、エンジンEの出力回転の排出オーガ8への伝動が遮断されて排出オーガ8は停止する。オーガレバー18を後側傾斜姿勢にした場合には、オーガクラッチ35が接続されて、エンジンEの出力回転が排出オーガ8に伝動され排出オーガ8が駆動する。
【0040】
刈脱レバー19を前側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ33と脱穀クラッチ34の接続は解除されて、エンジンEの出力回転の刈取装置3と脱穀装置4への伝動が遮断されて刈取装置3と脱穀装置4は停止する。刈脱レバー19を後側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ33と脱穀クラッチ34が接続されて、エンジンEの出力回転が刈取装置3と脱穀装置4に伝動されて刈取装置3と脱穀装置4は駆動する。刈脱レバー19を中立姿勢にした場合には、刈取クラッチ33の接続は解除され、脱穀クラッチ34は接続されて、刈取装置3は停止し、脱穀装置4は駆動する。
【0041】
主変速レバー16の傾斜姿勢等は、主変速レバー16の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ16Sで測定され、副変速レバー17の傾斜姿勢等は、副変速レバー17の下部に装着された角度センサ17Sで測定され、オーガレバー18の傾斜姿勢等は、オーガレバー18の下部に装着された角度センサ18Sで測定され、刈脱レバー19の傾斜姿勢等は、刈脱レバー19の下部に装着された角度センサ19Sで測定される。
【0042】
図8に示すように、無段変速装置30のトラニオン軸40には、扇形形状の操作具41の基部が支持されている。操作具41の外周部に形成されたギヤには、前進用モータ42の出力軸に支持されたギヤ42Aと、後進用モータ43の出力軸に支持されたギヤ43Aが係合している。これにより、主変速レバー16の姿勢、すなわち、角度センサ16Sの測定値に基づいて前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して無段変速装置30のトラニオン軸40を回動して無段変速装置30の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行うことができる。
【0043】
また、
図8に図示した形態に替えて、無段変速装置30のトラニオン軸40に径方向に延在するアームの一側を支持し、アームの他側に前進用ソレノイドで駆動される前進用シリンダと後進用ソレノイドで駆動される後進用シリンダを連結して無段変速装置30のトラニオン軸40を回動することもできる。
【0044】
図9には、刈取クラッチ33と脱穀クラッチ34が接続された接続時におけるエンジンEの出力回転の出力制限マップが図示されている。
図9に示すように、出力制限マップの横軸はエンジンEの出力回転[rpm]を示し、縦軸は無段変速装置30の制限比率[%]を示している。
【0045】
本実施形態では、出力制限マップは、第1~7制限ライン(C1~C5)で形成されている。なお、本明細書では、第1~5制限ライン(C1~C5)を総称して制御ラインCという。
【0046】
第1制御ライン(C1)は、エンジン(E)の回転数が1000~1300rpmで前進用モータ42と後進用モータ43の制限比率が40%に設定され、第2制御ライン(C2)は、エンジン(E)の回転数が1300~1600rpmで前進用モータ42と後進用モータ43の制限比率が40~70%に設定され、第3制御ライン(C3)は、エンジン(E)の回転数が1600~2000rpmで前進用モータ42と後進用モータ43の制限比率が70%に設定され、第4制御ライン(C4)は、エンジン(E)の回転数が2000~2300rpmで前進用モータ42と後進用モータ43の制限比率が70~100%に設定され、第5制御ライン(C5)は、エンジン(E)の回転数が2300~2700rpmで前進用モータ42と後進用モータ43の制限比率が100%に設定されている。なお、本実施形態のエンジン(E)では、出力回転が1000~2700rpmの範囲で回転トルクが略直線状に増減し、エンジン(E)に加わる負荷トルクが所定以上になるとエンジン(E)の出力回転は2700rpmから減速する。
【0047】
制限比率の技術的意義を明確にするために、主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に操作した場合に、無段変速装置30内でエンジンEの出力回転が増速され、無段変速装置30の出力回転がエンジンEの出力回転の120%、すなわち、無段変速装置30内での増速率が20%になる具体的形態を例に取って以下説明する。
【0048】
第5制御ライン(C5)は、エンジン(E)に加わる負荷トルクが所定未満でありエンジン(E)の出力回転が2300rpm以上~2700rpm未満の場合には、制限比率が100%であり、無段変速装置30内での増速率が20%であることを示している。すなわち、無段変速装置30に伝動されたエンジンEの出力回転2300~2700rpmが無段変速装置30内で20%増速されて無段変速装置30の出力回転が2760~3240rpmになる。
【0049】
第4制御ライン(C4)は、エンジン(E)に加わる負荷トルクが所定以上でありエンジン(E)の出力回転が2000rpm以上~2300rpm未満の場合には、制限比率が70~100%であり、無段変速装置30内での増速率が14~20%であることを示している。すなわち、無段変速装置30に伝動されたエンジンEの出力回転2000~2300rpmが無段変速装置30内で14~20%増速されて無段変速装置30の出力回転が2280~2760rpmになる。また、刈脱レバー19が後側傾斜姿勢に操作されて刈取クラッチ33と脱穀クラッチ34が接続されて刈取脱穀作業が行われている場合にはエンジンEの出力回転は2400~2700rpmに設定され、エンジンEの出力回転が2300rpm未満になった場合に、無段変速装置30の制限比率の制御を開始している。これにより、エンジンEに加わる負荷トルクが所定以下の場合には、エンジンEの出力回転を2400~2600rpmに維持して刈取脱穀作業を効率良く行うことができる。
【0050】
第3制御ライン(C3)は、エンジン(E)に加わる負荷トルクが所定以上でありエンジン(E)の出力回転が1600rpm以上~2000rpm未満の場合には、制限比率が70%であり、無段変速装置30内での増速率が14%であることを示している。すなわち、無段変速装置30に伝動されたエンジンEの出力回転1600~2000rpmが無段変速装置30内で14%増速されて無段変速装置30の出力回転が1824~2280rpmになる。
【0051】
第2制御ライン(C2)は、エンジン(E)に加わる負荷トルクが所定以上でありエンジン(E)の出力回転が1300rpm以上~1600rpm未満の場合には、制限比率が40~70%であり、無段変速装置30内での増速率が8~14%であることを示している。すなわち、無段変速装置30に伝動されたエンジンEの出力回転1300~1600rpmが無段変速装置30内で8~14%増速されて無段変速装置30の出力回転が1404~1824rpmになる。
【0052】
第1制御ライン(C1)は、エンジン(E)に加わる負荷トルクが所定以上でありエンジン(E)の出力回転が1000rpm以上~1300rpm未満の場合には、制限比率が40%であり、無段変速装置30内での増速率が8%であることを示している。すなわち、無段変速装置30に伝動されたエンジンEの出力回転1000~1300rpmが無段変速装置30内で8%増速されて無段変速装置30の出力回転が1080~1404rpmになる。また、アイドリング時のエンジンEの出力回転は1000rpmに設定されている。これにより、エンジンEに短時間に所定以上の過大な負荷トルクが加わる場合を除いてはエンジンEの出力回転は1000rpm以上に維持されるので刈取脱穀作業の効率を所定以上に維持することができる。
【0053】
図10に示すように、リモコン14の上部には、走行装置2を微速走行速度で前進させる前進スイッチ45Aと、微速走行速度で後進させる後進スイッチ45Bが設けられている。リモコン14の中間部には、排出オーガ8の縦排出筒8Aと横排出筒8Bを駆動して排出部8Cを上側に移動させる上排出スイッチ46Aと、下側に移動させる下排出スイッチ46Bと、左側に移動させる左排出スイッチ46Cと、右側に移動させる右排出スイッチ46Dが設けられている。なお、本明細書では、前進スイッチ45Aと後進スイッチ45Bを総称して前後進スイッチ45といい、上排出スイッチ46A、下排出スイッチ46B、左排出スイッチ46C、及び右排出スイッチ46Dを総称して排出スイッチ46という。
【0054】
リモコン14の下部には、緊急時にエンジンEの駆動を停止する緊急停止スイッチ47と、エンジンEを再始動させる再始動スイッチ48が設けられている。これにより、穀粒の排出時に緊急事態が生じた場合にはエンジンEを速やかに停止することができ、また、操縦部5に搭乗することなくエンジンEを再始動させることができる。
【0055】
前後進スイッチ45には、モーメンタリ式スイッチやオルタネート式スイッチを使用することができる。前後進スイッチ45にモーメンタリ式スイッチを使用した場合には、前後進スイッチ45の操作時にのみ走行装置2が微速走行速度で前進又は後進する。これにより、作業者が前進スイッチ45A又は後進スイッチ45Bから指を離すと走行装置2の走行が速やかに停止するので安全性を高めることができる。一方、前後進スイッチ45にオルタネート式スイッチを使用した場合には、前後進スイッチ45を一度操作すれば再操作するまでの間、走行装置2が微速走行速度で前進又は後進する。これにより、作業者が前進スイッチ45A又は後進スイッチ45Bを一度操作すると再操作するまで走行装置2が継続して走行するので作業負担を軽減することができる。
【0056】
前後進スイッチ45に替えてジョイスティック、ロッカースイッチ等に変更することもできる。これにより、前進スイッチ45Aと後進スイッチ45Bを一体化して部品点数を削減することができる。
【0057】
同様に、排出スイッチ46には、モーメンタリ式スイッチやオルタネート式スイッチを使用することができる。排出スイッチ46にモーメンタリ式スイッチを使用した場合には、排出スイッチ46の操作時にのみ縦排出筒8Aが回動し、横排出筒8Bが上下移動と伸縮する。これにより、作業者が排出オーガ8を目視しながらトラック等の搬送車両の荷台上方に排出部8Cを移動させることができるので排出時の排出ロスを抑制することができる。一方、排出スイッチ46にオルタネート式スイッチを使用した場合には、排出スイッチ46を一度操作すれば再操作するまでの間、縦排出筒8Aが回動し、横排出筒8Bが上下移動と伸縮する。これにより、作業者の作業負担を軽減させることができる。
【0058】
排出スイッチ46に替えてジョイスティック、ロッカースイッチ等に変更することもできる。これにより、上排出スイッチ46A、下排出スイッチ46B、左排出スイッチ46C、及び右排出スイッチ46Dを一体化が図られ部品点数を削減することができる。
【0059】
本実施形態では、リモコン14は、ケーブル(図示省略)を介してコントローラ50に接続されているが、無線を介してコントローラ50に接続することもできる。これにより、作業者は、コンバインから降りて搬送車両に近傍に立って排出オーガ8を移動させることができ、排出時の排出ロスをより低減することができる。
【0060】
図11に示すように、コンバインのコントローラ50は、CPU等からなる処理部51と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部52と、外部とのデータ通信用の通信部53から形成されている。
【0061】
処理部51は、コンバインの刈取装置3の幅等から設定経路71の設定等を行う。
【0062】
記憶部52は、処理部51で算出された設定経路71や排出位置72等の保存を行う。
【0063】
通信部53は、移動用GPSアンテナ28を介して測位衛星21や移動用データ送信アンテナ29を介して基地局22からの位置情報の受信を行う。
【0064】
コントローラ50の入力側には、主変速レバー16の操作姿勢を測定する角度センサ16Sと、オーガレバー18の操作姿勢を測定する角度センサ18Sと、コンバインの走行装置2を微速走行速度で前進させる前進スイッチ45A及び後進させる後進スイッチ45Bと、コンバインと搬送車両の距離を測定するコンバインの前部に設けられた前距離センサ60及び後部に設けられた後距離センサ61と、縦排出筒8Aの上下方向に延在する軸心回りの回動を測定する回転センサ62Aと、横排出筒8Bの先端部を上下方向に移動させる基部の左右方向に延在する軸心回りの回動を測定する回転センサ62Bと、排出部8Cを通過して外部に排出される穀粒の有無を測定する穀粒センサ62Cと、排出オーガ8の搬送螺旋8Dを起動させてグレンタンク7に貯留された穀粒を搬送して排出部8Cから外部に排出する排出スイッチ63が所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0065】
コントローラ50の出力側には、無段変速装置30の増減速を操作する前進用モータ42及び後進用モータ43と、前後進スイッチ45の誤操作時に作業者に注意を喚起するブザー65が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0066】
図12に示すように、コンバインのグレンタンク7に貯留された穀粒が所定以上になった場合には、自動走行しているコンバインは圃場70内に予め設定された反時計回りの設定経路71から離れて、予め設定された排出位置72に移動する。なお、圃場70に隣接する農道73における排出位置72に対向する駐車位置74には穀粒を搬送するトラック等の搬送車両が停車している。
【0067】
<穀粒の排出方法>
図13に示すように、ステップS1で、コントローラ50の処理部51は、オーガレバー18の基部に装着された角度センサ18Sの入力信号を判断する。角度センサ18Sの入力信号からオーガレバー18が後側傾斜姿勢に操作されてオーガクラッチ35が接続されていると判断した場合にはステップS2に進み、オーガレバー18が前側傾斜姿勢に操作されてオーガクラッチ35の接続が解除されていると判断した場合にはステップS1を繰返す。
【0068】
ステップS2で、処理部51は、前距離センサ60と後距離センサ61の入力信号から排出位置72に停止したコンバインの前後方向に延在する中心線(請求項の「第1中心線」)L1に平行に引かれた仮想線L2と駐車位置74に停止した搬送車両の前後方向に延在する中心線(請求項の「第3中心線」)L3の交差角度θを判断する。
図14に示すように、仮想線L2よりも中心線L3の前部が圃場70側に位置して、仮想線L2よりも中心線L3の後部が農道73側に位置して、交差角度θが反時計方向のマイナス角度であると判断した場合にはステップS3に進む。また、
図15に示すように、仮想線L2よりも中心線L3の前部が農道73側に位置して、仮想線L2よりも中心線L3の後部が圃場70側に位置して、交差角度θが時計方向のプラス角度であると判断した場合には、ステップ9に進む。
【0069】
ステップS3で、処理部51は、主変速レバー16の基部に装着された角度センサ18S、縦排出筒8Aに装着された回転センサ62A、横排出筒8Bに装着された回転センサ62B、及び排出部8Cに装着された穀粒センサ62Cの入力信号を判断する。角度センサ18Sの入力信号から主変速レバー16が中立姿勢に操作され、回転センサ62Aと回転センサ62Bからの入力信号から排出オーガ8が移動しておらず、且つ、穀粒センサ62Cの入力信号から排出部8Cの内部を穀粒が通過していないと判断した場合にはステップS4に進み、角度センサ18Sの入力信号から主変速レバー16が前側傾斜姿勢又は後側傾斜姿勢に操作されたり、回転センサ62Aと回転センサ62Bからの入力信号から排出オーガ8が移動中であったり、又は穀粒センサ62Cの入力信号から排出部8Cの内部を穀粒が通過していると判断した場合にはステップS3を繰返す。これにより、走行装置2の急発進と急停止を防止して、コンバインの過度の移動を防止することができる。また、排出オーガ8と外部の衝突を防止して、排出オーガ8の破損等を防止することができる。
【0070】
ステップS4で、処理部51は、前進スイッチ45Aが操作されたか否か判断する。前進スイッチ45Aが操作されていると判断した場合にはステップS5に進み。後進スイッチ45Bが操作されていると判断した場合にはステップS8に進む。これにより、作業者による誤操作を防止して、コンバインと搬送車両の離間距離を短時間に調整して穀粒の排出作業を速やかに行うことができる。
【0071】
ステップS5で、処理部51は、前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して、エンジンEの出力回転を無段変速装置30で減速して走行装置2の走行速度をコンバインの最高走行速度の8~10%の微速走行速度に減速してコンバインを前進させてステップS6に進む。なお、条数によってコンバインの最高走行速度は異なるが、3~4条刈りコンバインの最高走行速度が2.4~2.6m/secである場合には、微速走行速度は0.19~0.26m/secまで減速される。これにより、コンバインを搬送車両に向かって微速走行速度で移動させて、コンバインと搬送車両の離間距離を短時間に調整して穀粒の排出作業を速やかに行うことができる。また、走行装置2の発進時と停止時の衝撃を抑制することができる。
【0072】
ステップS6で、処理部51は、穀粒の排出スイッチ63が操作されたか否か判断する。排出スイッチ63が操作されていると判断した場合にはステップS7に進み、排出スイッチ63が操作されていないと判断した場合にはステップS6を繰返す。
【0073】
ステップS7で、処理部51は、排出オーガ8の縦排出筒8A等に内装された搬送螺旋8Dを回動させて、排出部8Cから穀粒の排出を開始してステップS1に進む。
【0074】
ステップS8で、処理部51は、ブザー65を所定時間鳴らしステップS4に戻る。これにより、作業者に後進スイッチ45Bを誤って操作していることを喚起することができる。
【0075】
ステップS9で、処理部51は、主変速レバー16の基部に装着された角度センサ18S、縦排出筒8Aに装着された回転センサ62A、横排出筒8Bに装着された回転センサ62B、及び排出部8Cに装着された穀粒センサ62Cの入力信号を判断する。角度センサ18Sの入力信号から主変速レバー16が中立姿勢に操作され、回転センサ62Aと回転センサ62Bからの入力信号から排出オーガ8が移動しておらず、且つ、穀粒センサ62Cの入力信号から排出部8Cの内部を穀粒が通過していないと判断した場合にはステップS10に進み、角度センサ18Sの入力信号から主変速レバー16が前側傾斜姿勢又は後側傾斜姿勢に操作されたり、回転センサ62Aと回転センサ62Bからの入力信号から排出オーガ8が移動中であったり、又は穀粒センサ62Cの入力信号から排出部8Cの内部を穀粒が通過していると判断した場合にはステップS9を繰返す。これにより、走行装置2の急発進と急停止を防止して、コンバインの過度の移動を防止することができる。また、排出オーガ8と外部の衝突を防止して、排出オーガ8の破損等を防止することができる。
【0076】
ステップS10で、処理部51は、後進スイッチ45Bが操作されたか否か判断する。後進スイッチ45Bが操作されていると判断した場合にはステップS11に進み。前進スイッチ45Aが操作されていると判断した場合にはステップS14に進む。これにより、作業者による誤操作を防止して、コンバインと搬送車両の離間距離を短時間に調整して穀粒の排出作業を速やかに行うことができる。
【0077】
ステップS11で、処理部51は、前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して、エンジンEの出力回転を無段変速装置30で減速して走行装置2の走行速度を最高走行速度の8~10%の微速走行速度に減速してコンバインを後進させてステップS12に進む。なお、条数によってコンバインの最高走行速度は異なるが、3~4条刈りコンバインの最高走行速度が2.4~2.6m/secである場合には、微速走行速度は0.19~0.26m/secまで減速される。これにより、コンバインを搬送車両に向かって微速走行速度で移動させて、コンバインと搬送車両の離間距離を短時間に調整して穀粒の排出作業を速やかに行うことができる。また、走行装置2の発進時と停止時の衝撃を抑制することができる。
【0078】
ステップS12で、処理部51は、穀粒の排出スイッチ63が操作されたか否か判断する。排出スイッチ63が操作されていると判断した場合にはステップS13に進み、排出スイッチ63が操作されていないと判断した場合にはステップS12を繰返す。
【0079】
ステップS13で、処理部51は、排出オーガ8の縦排出筒8A等に内装された搬送螺旋8Dを回動させて、排出部8Cから穀粒の排出を開始してステップS1に進む。
【0080】
ステップS14で、処理部51は、ブザー65を所定時間鳴らしステップS10に戻る。これにより、作業者に前進スイッチ45Aを誤って操作していることを喚起することができる。
【0081】
図16(a)に示すように、無段変速装置30のエンジンEの出力回転が伝動される入力軸80側には、オイルを循環させるポンプ81が設けられ、無段変速装置30内で増減速された出力回転が出力される出力軸82側には固定容量型のモータ83が設けられている。また、ポンプ81とモータ83の間の油圧回路にはオイルをタンク84に排出するリリーフ弁が設けられている。これにより、ポンプ81に連結されたトラニオン軸40を前進用モータ42と後進用モータ43で回動させて無段変速装置30に伝動されたエンジンEの出力回転の増減速を行うことができる。また、ポンプ81は走行装置2のクローラに加わるトルクやグレンタンク7に貯留された穀粒の重さ等に応じて駆動される。
【0082】
図16(b)に示すように、無段変速装置30のエンジンEの出力回転が伝動される入力軸80側には、オイルを循環させるポンプ81が設けられ、無段変速装置30内で増減速された出力回転が出力される出力軸82側には可変容量型のモータ83Aが設けられている。また、ポンプ81とモータ83の間の油圧回路にはオイルをタンク84に排出するリリーフ弁が設けられている。これにより、ポンプ81に連結されたトラニオン軸40を前進用モータ42と後進用モータ43で回動させて無段変速装置30に伝動されたエンジンEの出力回転の増減速し、さらに、モータ83のトラニオン軸を前進用モータと後進用モータで回動させて無段変速装置30に伝動されたエンジンEの出力回転の増減速をより広範囲に行うことができる。また、ポンプ81とモータ83は走行装置2のクローラに加わるトルクやグレンタンク7に貯留された穀粒の重さ等に応じて駆動される。
【符号の説明】
【0083】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
4 脱穀装置
5 操縦部
7 グレンタンク
8 排出オーガ
14 リモコン(操作具)
16 主変速レバー(変速レバー)
30 無段変速装置
45A 前進スイッチ
45B 後進スイッチ
47 緊急停止スイッチ
48 再始動スイッチ
A1 伝動経路
E エンジン
L1 中心線(第1中心線)
L2 仮想線
L3 中心線(第2中心線)
θ 交差角度