(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026962
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20240221BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240221BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240221BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240221BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240221BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/00 170
H02J7/35 K
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129562
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】北村 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064BA07
5G064CB12
5G064CB13
5G064DA02
5G064DA11
5G066AA03
5G066AA09
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA04
5G503DA07
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】電力機器の状態変化が発生しても、適切なエネルギー管理を継続して行うことができる電力システムを提供する。
【解決手段】電力システムS1は、電力系統Dとの接続点Kにおける接続点電力を制御する電力システムS1であって、接続点電力を目標電力にするための誘導指令値を算出する第1算出部21を含む処理装置A1と、複数の電力機器Yのうちの対応する電力機器Yがそれぞれ接続された複数の電力制御装置B1とを備える。複数の電力制御装置B1の各々は、処理装置A1より入力された共通の誘導指令値に基づいて、対応する電力機器Yの出力電力を制御する。第1算出部21は、誘導指令値を算出する際、全体電力制御幅を用いる。全体電力制御幅は、複数の電力機器Yの各々の出力可能な最大電力である個別電力制御幅の合計値である。処理装置A1は、全体電力制御幅を更新する第1更新部222をさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統との接続点における接続点電力を制御する電力システムであって、
前記接続点電力を目標電力にするための誘導指令値を算出する第1算出部を含む処理装置と、
複数の電力機器のうちの対応する電力機器がそれぞれ接続された複数の電力制御装置と、
を備え、
前記複数の電力制御装置の各々は、前記処理装置より入力された共通の前記誘導指令値に基づいて、前記対応する電力機器の出力電力を制御しており、
前記第1算出部は、前記誘導指令値を算出する際、全体電力制御幅を用いており、
前記全体電力制御幅は、前記複数の電力機器の各々の出力可能な最大電力である個別電力制御幅の合計値であり、
前記処理装置は、前記全体電力制御幅を更新する第1更新部をさらに含む、電力システム。
【請求項2】
前記処理装置は、前記複数の電力制御装置の各々から前記個別電力制御幅を受信する通信部と、前記通信部が受信した前記個別電力制御幅から前記全体電力制御幅の値を算出する第2算出部をさらに含み、
前記第1更新部は、前記全体電力制御幅を、前記第2算出部によって算出された更新値に更新する、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記複数の電力制御装置の各々は、他の電力制御装置の少なくとも1つと通信を行い、当該通信によって前記個別電力制御幅に基づく内部値を用いた演算を行い、
前記第1更新部は、前記全体電力制御幅を、前記複数の電力制御装置が行う前記演算の結果から算出された更新値に更新する、請求項1に記載の電力システム。
【請求項4】
前記複数の電力制御装置は、前記電力機器としての蓄電装置が接続された少なくとも1つの充放電制御装置を含み、
前記処理装置は、前記蓄電装置の電池容量に基づく電池容量制約を算出する第3算出部をさらに含み、
前記充放電制御装置は、前記共通の誘導指令値と前記処理装置より入力された電池容量制約とに基づいて、前記蓄電装置の充放電の出力電力を制御しており、
前記第3算出部は、前記電池容量制約を算出する際、全体電池容量を用いており、
前記全体電池容量は、前記蓄電装置ごとの電池容量の合計値であり、
前記処理装置は、前記全体電池容量を更新する第2更新部をさらに含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続された複数の電力機器(分散電源)を管理して、電力系統からの受電を制御する電力システムが普及しつつある。例えば、特許文献1には、処理装置と、複数の電力制御装置とを備えた電力システムの一例が開示されている。処理装置は、接続点電力を目標電力に制御するための誘導指令値を算出する。接続点電力は、電力システムと電力系統との接続点における電力のことである。各電力制御装置には、対応する電力機器(分散電源)が接続されている。各電力制御装置は、接続された電力機器の出力電力を制御する。電力機器には、例えば太陽電池、蓄電池および電気自動車などがある。各電力制御装置は、処理装置が算出した誘導指令値を用いて、分散的に出力電力を制御する。このとき、各電力制御装置は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力の目標値を算出する。そして、出力電力が当該目標値となるように、出力電力を制御する。このような電力システムでは、処理装置が複数の電力制御装置を一括して制御する構成と比較して、電力機器の数が増えても処理装置の処理負荷が大きく増えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-150690号公報
【特許文献2】特開2015-166901号公報
【特許文献3】特開2018-121189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力システムにおいて、処理装置には、誘導指令値を算出するための設定値が設定されている。この設定値は、電力システムの運用開始時に予め設定される。このため、従来の電力システムでは、電力機器の状態変化が発生すると、電力システムが行うエネルギー管理に影響が生じて、最適なエネルギー管理を行えない可能性がある。ここで、電力機器の状態変化とは、電力機器の劣化および故障、分散電源の追加および廃止のことである。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、電力機器の状態変化が発生しても、適切なエネルギー管理を継続して行うことができる電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電力システムは、電力系統との接続点における接続点電力を制御する電力システムであって、前記接続点電力を目標電力にするための誘導指令値を算出する第1算出部を含む処理装置と、複数の電力機器のうちの対応する電力機器がそれぞれ接続された複数の電力制御装置と、を備え、前記複数の電力制御装置の各々は、前記処理装置より入力された共通の前記誘導指令値に基づいて、前記対応する電力機器の出力電力を制御しており、前記第1算出部は、前記誘導指令値を算出する際、全体電力制御幅を用いており、前記全体電力制御幅は、前記複数の電力機器の各々の出力可能な最大電力である個別電力制御幅の合計値であり、前記処理装置は、前記全体電力制御幅を更新する第1更新部をさらに含む。
【0007】
前記電力システムの好ましい実施の形態においては、前記処理装置は、前記複数の電力制御装置の各々から前記個別電力制御幅を受信する通信部と、前記通信部が受信した前記個別電力制御幅から前記全体電力制御幅の値を算出する第2算出部をさらに含み、前記第1更新部は、前記全体電力制御幅を、前記第2算出部によって算出された更新値に更新する。
【0008】
前記電力システムの好ましい実施の形態においては、前記複数の電力制御装置の各々は、他の電力制御装置の少なくとも1つと通信を行い、当該通信によって前記個別電力制御幅に基づく内部値を用いた演算を行い、前記第1更新部は、前記全体電力制御幅を、前記複数の電力制御装置が行う前記演算の結果から算出された更新値に更新する。
【0009】
前記電力システムの好ましい実施の形態においては、前記複数の電力制御装置は、前記電力機器としての蓄電装置が接続された少なくとも1つの充放電制御装置を含み、前記処理装置は、前記蓄電装置の電池容量に基づく電池容量制約を算出する第3算出部をさらに含み、前記充放電制御装置は、前記共通の誘導指令値と前記処理装置より入力された電池容量制約とに基づいて、前記蓄電装置の充放電の出力電力を制御しており、前記第3算出部は、前記電池容量制約を算出する際、全体電池容量を用いており、前記全体電池容量は、前記蓄電装置ごとの電池容量の合計値であり、前記処理装置は、前記全体電池容量を更新する第2更新部をさらに含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の電力システムでは、誘導指令値を算出する際に全体電力制御幅が用いられており、当該全体電力制御幅は更新される。この全体電力制御幅は、複数の電力機器の各々の個別電力制御幅の合計値であり、個別電力制御幅は、電力機器の出力可能な最大電力のことである。これにより、電力機器の状態変化が発生しても、誘導指令値を算出するための設定値が、この変化後の状態に応じた値に更新される。したがって、本開示の電力システムは、電力機器の状態変化が発生しても、適切なエネルギー管理を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る電力システムを示す全体構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る電力システムの処理装置が行う信号処理のフローチャートである。
【
図3】第1実施形態の変形例に係る電力システムを示す全体構成図である。
【
図4】第2実施形態に係る電力システムを示す全体構成図である。
【
図5】第2実施形態に係る電力システムの処理装置が行う信号処理のフローチャートである。
【
図6】第3実施形態に係る電力システムを示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の電力システムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、第1実施形態に係る電力システムS1の全体構成例を示している。同図に示すように、電力システムS1は、電力線90、処理装置A1、複数の電力制御装置B1および検出装置C1を備える。
図1において、太線は電力ネットワークを示し、破線は通信ネットワークを示す。
【0014】
電力システムS1は、接続点Kに接続され、電力系統Dに連系されている。電力システムS1は、電力系統Dから受電する。これに加えて、電力系統Dに送電可能(逆潮流)可能であってもよい。本開示において、電力システムS1から電力系統Dに電力が出力されているとき、すなわち、逆潮流しているとき、接続点電力が正の値になるものとする。一方、電力系統Dから電力システムS1に出力されているとき、接続点電力が負の値になるものとする。接続点電力とは、電力システムS1と電力系統Dとの接続点Kにおける電力のことである。
【0015】
電力システムS1は、処理装置A1と複数の電力制御装置B1とが協調して、接続点電力が目標電力となるように電力制御を行う。目標電力とは、接続点電力の目標値(調整目標値)のことである。電力システムS1の電力制御において、処理装置A1は、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御するための誘導指令値を算出する。誘導指令値は、複数の電力制御装置B1で共通する。各電力制御装置B1は、処理装置A1が算出した誘導指令値に基づいて、制御対象(接続された電力機器Y)の出力目標値を算出する。そして、各電力制御装置B1は、算出した出力目標値に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。このように、電力システムS1は、複数の電力制御装置B1が分散的に出力電力の制御を行うことで、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御している。誘導指令値は、各電力制御装置B1が出力目標値を算出するためのものでもある。
【0016】
電力負荷Lは、電力系統Dや各電力制御装置B1から電力が供給される。電力負荷Lは、一般負荷と重要負荷とを含む。一般負荷は、例えば、災害時に電力が遮断されても、比較的影響が少ない電気機器を含む。重要負荷は、災害時でも電力を継続して供給する必要性がある重要な負荷であり、例えば、非常用のエレベータ、連続運転が必要な電気機器、建屋の照明や空調機器などが含まれる。
【0017】
電力線90は、電力系統Dと、電力負荷Lと、複数の電力制御装置B1とに適宜接続されている。電力線90は、電力システムS1における電力ネットワークを構築する。
【0018】
検出装置C1は、接続点電力を検出する。検出装置C1は、検出部81および通信部82を含む。検出部81は、接続点Kと電力系統Dとの間に設置され、接続点電力を検出する。検出部81は、例えば電力トランスデューサである。検出部81は、通信部82と通信可能であり、接続点電力の検出値を通信部82に出力する。通信部82は、検出部81から入力される接続点電力の検出値(アナログ値)をデジタル値に変換するAD変換器を含み、変換後の接続点電力の検出値(デジタル値)を、処理装置A1に送信する。検出装置C1には、適宜、電力システムS1を電力系統Dに連系するための各種保護装置(例えば逆電流継電器や地絡継電器、逆電力継電器など)がさらに設置される。
【0019】
複数の電力制御装置B1はそれぞれ、接続点Kに接続される。複数の電力制御装置B1はそれぞれ、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、自装置の出力電力を制御する。複数の電力制御装置B1はそれぞれ、電力機器Yが接続されている。複数の電力制御装置B1はそれぞれ、電力機器Yの出力電力または入力電力を制御する。なお、入力電力は、負の値の出力電力に相当する。図示された例では、1つの電力制御装置B1に対して、1つの電力機器Yが接続されているが、1つの電力制御装置B1に対して、複数の電力機器Yが接続されていてもよい。
【0020】
図1に示すように、複数の電力制御装置B1は、蓄電池制御装置B11および複数のEV制御装置B12を含む。EVは、Electric Vehicleの略である。なお、蓄電池制御装置B11の数、および、EV制御装置B12の数は、図示された例に限定されない。
【0021】
蓄電池制御装置B11には、電力機器Yとしての蓄電池Y11が接続される。蓄電池制御装置B11は、接続された蓄電池Y11の充放電を行う。蓄電池制御装置B11は、接続点K側から入力される電力を蓄電池Y11に供給することで、蓄電池Y11を充電する。また、蓄電池制御装置B11は、蓄電池Y11に蓄積された電力を接続点K側に出力することで、蓄電池Y11を放電させる。
【0022】
EV制御装置B12には、電力機器Yとしての電気自動車Y12が接続される、EV制御装置B12は、接続された電気自動車Y12の充放電を行う。なお、電気自動車Y12の充放電とは、電気自動車Y12に搭載される蓄電池(電動機に電力を供給する蓄電池)の充放電を行うことである。EV制御装置B12は、接続点K側から入力される電力を電気自動車Y12に供給することで、電気自動車Y12を充電する。また、EV制御装置B12は、電気自動車Y12に蓄積された電力を接続点K側に出力することで、電気自動車Y12を放電させる。
【0023】
複数の電力制御装置B1(蓄電池制御装置B11およびEV制御装置B12)はそれぞれ、信号処理部11および電力変換部12を含む。以下で説明する信号処理部11および電力変換部12は、特段の断りがない限り、複数の電力制御装置B1の各々で共通する。
【0024】
信号処理部11は、処理装置A1および接続される電力機器Yと通信可能である。蓄電池制御装置B11の信号処理部11は、蓄電池Y11と通信可能であり、EV制御装置B12の信号処理部11は、電気自動車Y12と通信可能である。
【0025】
信号処理部11は、処理装置A1から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、電力機器Yの出力目標値を算出する。この最適化問題は、評価関数と制約条件とを含む。当該評価関数は、例えば特許文献1に記載されたものと同じである。本実施形態では、信号処理部11は、特許文献1の記載と同様に、評価関数から導出される下記(1)式および下記(2)式の演算を行う。下記(1)式および下記(2)式において、P
refは電力制御装置B1の出力目標値、prは誘導指令値、pr
lmtは誘導指令値限界、a
1~a
4はそれぞれ、設計パラメータである。誘導指令値限界pr
lmtおよび設計パラメータa
1~a
4は、特許文献1に記載されたものと同じである。そして、特許文献1の記載と同様に、その演算結果を制約条件によって補正することで、出力目標値を算出する。制約条件は、特許文献1に記載された制約条件と同様である。なお、特許文献1に記載の蓄電池PCSに設定された制約条件が、蓄電池制御装置B11の信号処理部11に設定され、特許文献1に記載のEVスタンドに設定された制約条件が、EV制御装置B12の信号処理部11に設定される。これとは異なり、信号処理部11は、制約条件の下で評価関数を解くことで出力目標値を算出してもよい。信号処理部11は、算出した出力目標値を電力変換部12に出力する。
【数1】
【0026】
また、信号処理部11は、接続される電力機器Yから当該電力機器Yの現在の個別電力制御幅を取得する。個別電力制御幅は、電力機器Yの出力可能な電力情報のことであり、電力機器Yの最大出力電力に相当する。個別電力制御幅は、電力機器Yが劣化していない状態では、例えば、当該電力機器Yに規定された定格出力となる。一方で、電力機器Yが劣化した状態では、定格出力よりも小さい値となる。また、EV制御装置B12では、接続される電気自動車Y12によって、個別電力制御幅が増減する。信号処理部11は、取得した個別電力制御幅を、処理装置A1に送信する。
【0027】
電力変換部12は、信号処理部11から入力される出力目標値に基づいて、電力機器Yの出力電力または入力電力を制御する。蓄電池制御装置B11の電力変換部12は、蓄電池Y11の充電電力または放電電力を制御する。本開示では、蓄電池制御装置B11の電力変換部12は、受信した出力目標値が正の値のとき、蓄電池Y11を放電させ、受信した出力目標値が負の値のとき、蓄電池Y11を充電する。EV制御装置B12の電力変換部12は、電気自動車Y12の充電電力または放電電力を制御する。本開示では、EV制御装置B12の電力変換部12は、受信した出力目標値が正の値のとき、電気自動車Y12を放電させ、受信した出力目標値が負の値のとき、電気自動車Y12を充電する。
【0028】
処理装置A1は、複数の電力制御装置B1の各々と、検出装置C1とそれぞれ通信可能である。処理装置A1は、接続点電力を監視し、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御するための誘導指令値を算出する。目標電力(調整目標値)は、設定される制御モードに応じた値が設定される。制御モードは、電力システムS1のシステム機能を決定する設定である。電力システムS1における制御モードには、例えば、接続点電力の出力を抑制する出力抑制モード、所定の時間帯ごとに接続点電力を制御するスケジュールモード、電力系統Dから供給される電力を抑制するピークカットモードおよび、逆潮流が発生しないように接続点電力を制御する逆潮流回避モードなどを含む。制御モードは、これらの例に限定されない。例えば、目標電力は、制御モードに応じて、予め処理装置A1に設定された値、ユーザ操作により設定された値、上位装置(例えば電力会社など)から指示された値などが設定されうる。また、接続点電力は、検出装置C1が検出した検出値を用いてもよいし、各電力制御装置B1から通信によって取得した各出力電力の値から算出される推算値であってもよい。なお、処理装置A1に設定される制御モードに応じて接続点電力として、検出値あるいは推算値のいずれかを用いるようにしてもよい。
図1に示すように、処理装置A1は、第1算出部21、第2算出部221、第1更新部222および通信部24を含む。
【0029】
通信部24は、複数の電力制御装置B1の各々と、検出装置C1と、それぞれ通信を行う。通信部24は、検出装置C1から接続点電力を受信し、各電力制御装置B1から個別電力制御幅を受信する。また、通信部24は、各電力制御装置B1に誘導指令値を送信する。
【0030】
第1算出部21は、例えば下記(3)式ないし下記(5)式の演算を行うことで、誘導指令値を算出する。下記(3)式ないし下記(5)式において、prは誘導指令値、λpは状態変数、P
Cは目標電力(有効電力)、Pは現在の接続点電力(有効電力)、pr(t)は誘導指令値、εは勾配係数、ε
Gainは勾配係数ε調整用のゲイン、dPmaxは全体電力制御幅、Tsは誘導指令値の更新間隔である。なお、下記(3)式および下記(4)式は、特許文献1に記載の演算式と同等である。第1算出部21は、下記(3)式ないし下記(5)式の演算のため、通信部24を介して検出装置C1から接続点電力を受信し、且つ、先述のストレージなどに記憶される設定値を読み出す。下記(3)式ないし下記(5)式から理解されるように、第1算出部21が読み出す設定値には、全体電力制御幅、および、目標電力(調整目標値)などが含まれている。第1算出部21は、算出した誘導指令値を、通信部24を介して、各電力制御装置B1に送信する。
【数2】
【0031】
第2算出部221は、通信部24を介して、各電力制御装置B1から接続された電力機器Yの個別電力制御幅を取得する。そして、取得した各電力機器Yの個別電力制御幅を合算することで、全体電力制御幅を算出する。
【0032】
第1更新部222は、全体電力制御幅の更新を行う。例えば、第1更新部222は、処理装置A1のストレージ(メモリでもよい)に記憶された全体電力制御幅の値に、第2算出部221が算出した全体電力制御幅の値(更新値)を上書きすることで、全体電力制御幅を更新する。
【0033】
図2は、処理装置A1が行う信号処理を示すフローチャートである。
図2に示す信号処理は、
図2(a)に示す第1処理と、
図2(b)に示す第2処理とを含む。第1処理は、周期t1により繰り返され、第2処理は、周期t2により繰り返される。第1処理の周期t1は、第2処理の周期t2よりも大きい。周期t1は、例えば周期t2の10倍以上10000倍以下である。例えば、周期t1は1秒であり、周期t2は1時間(3600秒)である。なお、周期t1と周期t2との関係は、この数値例に限定されない。周期t2は、上記誘導指令値の更新周期Tsに相当する。
【0034】
第1処理は、第2算出部221が行う処理であり、主に全体電力制御幅の算出および更新を行う。
図2(a)のフローチャートに示すように、第1処理では、第2算出部221は、まず、通信部24を介して、各電力制御装置B1から個別電力制御幅を取得する(S101)。次いで、第2算出部221は、各電力制御装置B1から取得した個別電力制御幅を合算することで、全体電力制御幅を算出する(S102)。つまり、全体電力制御幅は、複数の電力制御装置B1の各個別電力制御幅の合計値である。次いで、第2算出部221は、先述のストレージに記憶される全体電力制御幅の設定値に、ステップS102で算出した全体電力制御幅の値を上書きすることで、全体電力制御幅を更新する(S103)。以上の第1処理により、周期t1ごとに、その時の電力機器Yの状態に応じた全体電力制御幅に更新される。
【0035】
第2処理は、第1算出部21が行う処理であり、主に誘導指令値の算出および送信を行う。
図2(b)のフローチャートに示すように、第2処理では、第1算出部21は、まず、現在の接続点電力の検出値を取得する(S201)。次いで、第1算出部21は、誘導指令値を算出するための各設定値を読み出す(S202)。ステップS202での設定値の読み出しには、目標電力の読み出し(S202a)および全体電力制御幅の読み出し(S202b)が含まれる。その他、上記(3)式ないし上記(5)式で用いる他の設定値の読み出しも含まれる。次いで、第1算出部21は、ステップS201で取得した接続点電力の検出値、および、ステップS202で読み出した設定値(目標電力および全体電力制御幅を含む)を用いて、上記(3)式ないし上記(5)式の演算を行うことで、誘導指令値を算出する(S203)。次いで、第1算出部21は、ステップS203で算出した誘導指令値を、通信部24を介して、各電力制御装置B1に送信する(S204)。以上の第2処理により、周期t2ごとに、誘導指令値が更新され、各電力制御装置B1は、更新された誘導指令値に応じて、出力電力を制御する。
【0036】
電力システムS1では、処理装置A1は、全体電力制御幅を更新する第1更新部222を含む。全体電力制御幅は、複数の電力機器Yごとに出力可能な最大電力(個別電力制御幅)の合計値である。電力システムS1と異なる構成において、全体電力制御幅の更新を行わない構成では、各電力機器Yの劣化および故障、並びに、電力機器Yの追加および廃止により、運用開始時の全体電力制御幅と、現在の全体電力制御幅とに相違が生じる。このような相違が生じ、運用開始時の全体電力制御幅が、現在の全体電力制御幅よりも大きければ、上記(3)式ないし上記(5)式から理解されるように、誘導指令値の変化が、変更可能な変化量よりも小さくなる。このため、接続点電力を目標電力にするための時間が増加し、電力制御の速度が低下する。反対に、運用開始時の全体電力制御幅が、現在の全体電力制御幅よりも小さければ、上記(3)式ないし上記(5)式から理解されるように、誘導指令値の変化が、変更可能な変化量よりも大きくなる。このため、電力制御のオーバーシュートおよび異常な電力制御などが生じうる。これに対して、電力システムS1では、処理装置A1は、定期的に(周期t1で)現在の電力機器Yの状態に応じた全体電力制御幅に更新する。この構成によれば、電力システムS1は、各電力機器Yの個別電力制御幅の変化、および、電力機器Yの増加に応じて更新された全体電力制御幅を用いて、誘導指令値の演算を実施することができる。つまり、電力システムS1は、電力機器Yの劣化および故障、並びに、電力機器Yの追加および廃止が発生した場合であっても、それらの変化後の状態に基づいて、誘導指令値を演算することができる。したがって、電力システムS1は、接続される電力機器Yの状態変化が生じても、適切なエネルギー管理を継続して行うことができる。
【0037】
電力システムS1では、全体電力制御幅の更新を行う第1処理の周期t1は、誘導指令値の算出および送信を行う第2処理の周期t2よりも大きい。第1処理の周期t1が、第2処理の周期t2以下である場合、例えば電気自動車Y12の接続が頻繁に変化する状態では、全体電力制御幅が頻繁に更新されるため、誘導指令値が頻繁に変化することになる。これでは、接続点電力を目標電力にするための電力制御が頻繁に変化して、電力制御が不安定化することがある。このため、第1処理の周期t1を、第2処理の周期t2よりも大きくすることで、電力制御の不安定化を抑制することを可能にする。
【0038】
以下に、本開示の電力システムの他の実施形態および変形例について、説明する。各実施形態および各変形例における各部の構成は、技術的な矛盾が生じない範囲において相互に組み合わせ可能である。
【0039】
図3は、第1実施形態の第1変形例に係る電力システムS11の全体構成例を示している。電力システムS11は、全体電力制御幅の算出方法が電力システムS1と異なる。
【0040】
図3に示すように、電力システムS11では、複数の電力制御装置B1はそれぞれ、他の電力制御装置B1のうちの少なくとも1つと通信可能である。図示された例では、複数の電力制御装置B1はそれぞれ、他の電力制御装置B1の全てと通信可能であるが、この例に限定されず、いずれの2つの電力制御装置B1に対しても通信経路が存在している状態(連結状態)であればよい。
【0041】
電力システムS11では、複数の電力制御装置B1の協調制御により、複数の電力機器Yの各個別電力制御幅の平均値および複数の電力機器Yの台数が算出される。そして、算出された個別電力制御幅の平均値と電力機器Yの台数とを乗算することで、全体電力制御幅が算出される。なお、「協調制御」とは、複数の電力制御装置B1が情報を互いに送受信して行う制御のことである。
【0042】
電力システムS11の各電力制御装置B1では、信号処理部11は、上述の通り、他の電力制御装置B1と通信を行う。当該信号処理部11は、
図3に示すように、算出部111を含む。算出部111は、複数の電力機器Yの各個別電力制御幅の平均値および複数の電力機器Yの台数を算出する。本実施形態では、算出部111は、次に示す内部値を用いた演算(以下「合意演算」という)により、各個別電力制御幅の平均値および複数の電力機器Yの台数を算出する。算出部111は、内部値Xiを生成し、内部値Xiを他の電力制御装置B1に送信する。算出部111は、他の電力制御装置B1から内部値Xjを受信する。算出部111は、受信した各内部値Xjから内部値Xiをそれぞれ減算して、減算結果をすべて加算する。そして、当該加算結果を積分して、新たな内部値Xiを生成する。このような演算が繰り返されることで、各電力制御装置B1の内部値Xiが、初期値の相加平均に収束する。なお、合意演算により、内部値Xiが初期値の相加平均に収束することは、特許文献2に記載の技術思想から理解される。
【0043】
算出部111は、個別電力制御幅に対する内部値(以下「第1内部値」という)を生成して、当該第1内部値を用いた合意演算を行うことで、第1内部値が、個別電力制御幅の平均値に収束する。なお、第1内部値の初期値は、電力機器Yから取得する値である。これにより、複数の電力制御装置B1の各々で、複数の電力機器Yの個別電力制御幅の平均値が算出される。
【0044】
また、算出部111は、台数を算出するための内部値(以下「第2内部値」という)を生成して、第2内部値を用いた合意演算を行うことで、第2内部値が複数の電力機器Yの台数の逆数に収束する。なお、第2内部値の初期値は、複数の電力制御装置B1のうちのいずれか1つには「1」が設定され、その他には「0」が設定される。これにより、複数の電力制御装置B1の各々で、第2内部値が複数の電力機器Yの台数の逆数に収束する。そして、収束した第2内部値の逆数をとることで、複数の電力機器Yの台数が算出される。このような合意演算により、複数の電力機器Yの台数が算出されることは、特許文献3に記載の技術思想から理解される。なお、台数の算出方法は、第2内部値を用いた合意演算に限定されず、他の方法を用いてもよい。また、台数が変化した際に、ユーザが処理装置A1に台数の情報を設定する構成であってもよい。
【0045】
電力システムS11の第2算出部221は、複数の電力制御装置B1のいずれか1つから、個別電力幅の平均値および電力機器Yの台数の情報を取得する。そして、個別電力幅の平均値と電力機器Yの台数とを乗算することで、全体電力制御幅を算出する。
【0046】
電力システムS11は、上記したように、複数の電力制御装置B1の協調制御により、複数の電力機器Yの各個別電力制御幅の平均値および複数の電力機器Yの台数を探索する。そして、処理装置A1によって、個別電力制御幅の平均値および複数の電力機器Yの台数を乗算することで全体電力制御幅を算出する。このような構成であっても、現在の電力機器Yの状態に応じて、全体電力制御幅が更新される。
【0047】
電力システムS11では、電力システムS1と同様に、全体電力制御幅が更新される。したがって、電力システムS11は、電力システムS1と同様に、接続される電力機器Yの状態変化が生じても、適切なエネルギー管理を継続して行うことができる。
【0048】
電力システムS11では、処理装置A1は、複数の電力制御装置B1のいずれかから受信する個別電力制御幅の平均値および複数の電力機器Yの台数を乗算することで、全体電力制御幅を算出する。この構成によれば、処理装置A1は、複数の電力制御装置B1のそれぞれから個別電力制御幅を受信する必要がない。したがって、処理装置A1は、複数の電力制御装置B1の少なくともいずれか1つと双方向通信が確立されていればよく、複数の電力制御装置B1のすべてとで、双方向通信を確立する必要がない。このため、新たに電力制御装置B1を追加する場合であっても、当該電力制御装置B1と処理装置A1との双方向通信の設定が不要となる。つまり、電力システムS11は、新たな電力制御装置B1の追加が容易となる。なお、電力システムS11における全体電力制御幅の算出時間は、電力システムS1における全体電力制御幅の算出時間よりも長い。これは、電力システムS11の上記合意演算では、所定の演算を繰り返す必要があるためである。よって、全体電力制御幅の算出時間を短くする上では、電力システムS11よりも電力システムS1の方が好ましい。
【0049】
上記変形例と異なる構成において、複数の電力制御装置B1のいずれかが、個別電力制御幅の平均値および複数の電力機器Yの台数を乗算するようにしてもよい。つまり、複数の電力制御装置B1のいずれかが、全体電力制御幅を算出し、算出した全体電力制御幅を処理装置A1に送信するようにしてもよい。この場合、処理装置A1の演算負荷を低減させることができる。
【0050】
図4は、第2実施形態に係る電力システムS2の全体構成例を示している。電力システムS2は、電力システムS1と比較して、各電力機器Y(蓄電池Y11および電気自動車Y12)の電池容量を考慮した電力制御をさらに行う点で異なる。このため、電力システムS2の処理装置A1は、全体電池容量をさらに算出し、当該全体電池容量に基づく電池容量制約を各電力制御装置B1に送信する。全体電池容量は、蓄電池Y11の電池容量および電気自動車Y12の電池容量の合計値である。電池容量制約は、Cレートの上限を規定するための情報である。電力システムS2は、蓄電池Y11および電気自動車Y12の各電池容量を考慮することで、次のような制御を実現する。すなわち、電力システムS2は、各電力機器Yの電力出力の継続時間を延長する制御、または、電力機器Yの出力電力が想定外に増大することを抑制する制御などを実現する。なお、本実施形態では、蓄電池Y11の電池容量と電気自動車Y12の電池容量とを区別せずに全体電池容量を算出する例を示すが、この例と異なり、蓄電池Y11の電池容量と電気自動車Y12の電池容量とをそれぞれ分割して全体電池容量を算出してもよい。つまり、蓄電池Y11に対する全体電池容量と、電気自動車Y12に対する全体電池容量とをそれぞれ算出して、蓄電池制御装置B11に対する電池容量制約とEV制御装置B12に対する電池容量制約とを設けるようにしてもよい。蓄電池制御装置B11およびEV制御装置B12はそれぞれ、特許請求の範囲に記載の「充放電制御装置」の一例である。また、蓄電池Y11および電気自動車Y12はそれぞれ、特許請求の範囲に記載の「蓄電装置」の一例である。
【0051】
電力システムS2の各電力制御装置B1において、信号処理部11は、接続される電力機器Y(蓄電池Y11または電気自動車Y12)から電池容量を取得する。この電池容量を「個別電池容量」という。信号処理部11は、取得した個別電池容量を、処理装置A1に送信する。
【0052】
電力システムS2の処理装置A1は、電力システムS1の処理装置A1と比較して、第3算出部231および第2更新部232を含む。
【0053】
第3算出部231は、通信部24を介して、各電力制御装置B1から接続された電力機器Yの個別電池容量を取得(受信)する。そして、取得した各電力機器Yの個別電池容量を合算することで、全体電池容量を算出する。
【0054】
第2更新部232は、全体電池容量の更新を行う。例えば、第2更新部232は、処理装置A1のストレージ(メモリでもよい)に記憶された全体電池容量の値に、第3算出部231が算出した全体電池容量の値(更新値)を上書きすることで、全体電池容量を更新する。
【0055】
また、電力システムS2の処理装置A1には、電力システムS2の出力を制限するための上限値(以下「出力上限」という)が設定されている。第1算出部21は、この出力上限と、第2更新部232が更新した全体電池容量とを用いて、上記電池容量制約を算出する。第1算出部21は、算出した電池容量制約を、通信部24を介して各電力制御装置B1に送信する。
【0056】
図5は、第1処理および第2処理に加えて、処理装置A1が行う信号処理を示すフローチャートである。
図5に示す信号処理は、
図5(a)に示す第3処理と、
図5(b)に示す第4処理とを含む。第3処理は、周期t3により繰り返し行われ、第4処理は、周期t4により繰り返し行われる。周期t3は、先述の周期t1と同じであるが、周期t1と異なっていてもよい。例えば、周期t3は、周期t1よりも小さくてもよい。周期t4は、先述の周期t2と同じであるが、周期t2と異なっていてもよい。
【0057】
第3処理は、第3算出部231が行う処理であり、主に全体電池容量の算出および更新を行う。
図5(a)のフローチャートに示すように、第3処理では、第3算出部231は、まず、通信部24を介して、各電力制御装置B1から個別電池容量を取得する(S301)。次いで、第3算出部231は、各電力制御装置B1から取得した個別電池容量を合算することで、全体電池容量を算出する(S302)。つまり、全体電池容量は、複数の電力機器Yの各個別電池容量の合計値である。次いで、第3算出部231は、先述のストレージに記憶される全体個別電池容量の設定値に、ステップS302で算出した全体個別電池容量の値を上書きすることで、全体個別電池容量を更新する(S303)。以上の第3処理により、周期t3ごとに、その時の電力機器Yの状態に応じた全体個別電池容量に更新される。なお、全体電池容量の算出方法は、上記した例に限定されない。電力システムS11の全体電力制御幅の算出時と同様に、複数の電力制御装置B1の協調制御によって、複数の電力機器Yの個別電池容量の平均値および複数の電力機器Yの台数を算出し、この個別電池容量の平均値と電力機器Yの台数とを乗算することで、全体電池容量を算出するようにしてもよい。
【0058】
第4処理は、第1算出部21が行う処理であり、主に電池容量制約の算出および送信を行う。なお、本実施形態では、第1算出部21が、第1処理に加えて第4処理を行う例を示すが、第4処理は、第1算出部21と異なる要素が行うようにしてもよい。
図5(b)のフローチャートに示すように、第4処理では、第1算出部21は、まず、電池容量制約を算出するための各設定値を読み出す(S401)。ステップS401での設定値の読み出しには、出力上限の読み出し(S401a)および全体電池容量の読み出し(S401b)が含まれる。次いで、第1算出部21は、ステップS401aで取得した出力上限を、ステップS401bで読み出した全体電池容量で除算することで、電池容量制約を算出する(S402)。次いで、第1算出部21は、ステップS402で算出した電池容量制約を、通信部24を介して、各電力制御装置B1に送信する(S403)。以上の第4処理により、周期t4ごとに、電池容量制約が更新され、各電力制御装置B1は、誘導指令値に加えて、更新された電池容量制約に応じて、出力電力を制御する。例えば、各電力制御装置B1は、誘導指令値に基づいて電力機器Yの出力電力を制御した際、電池容量制約の範囲を超えていれば、当該電池容量制約の範囲内となるように、電力機器Yの出力電力を補正する。
【0059】
電力システムS2では、電力システムS1と同様に、全体電力制御幅が更新される。したがって、電力システムS2は、電力システムS1と同様に、接続される電力機器Yの状態変化が生じても、適切なエネルギー管理を継続して行うことができる。
【0060】
電力システムS2では、全体電池容量を更新する第2更新部232を含む。この構成によれば、各電力機器Y(蓄電池Y11および電気自動車Y12)の電池容量の変化に合わせた電力制御を可能にする。これにより、電力システムS2は、各電力機器Yの電力出力の継続時間を延長する制御、または、電力機器Yの出力電力が想定外に増大することを抑制する制御などを行うことを可能にする。つまり、電力システムS2は、より高度な電力制御を可能にする。
【0061】
図6は、第3実施形態に係る電力システムS3を示している。電力システムS3は、電力システムS1と比較して、太陽光発電システムおよび負荷制御システムをさらに備える点で異なる。
【0062】
電力システムS3における複数の電力制御装置B1は、蓄電池制御装置B11およびEV制御装置B12に加えて、太陽光発電制御装置B13および負荷制御装置B14を含む。太陽光発電制御装置B13および負荷制御装置B14はそれぞれ、蓄電池制御装置B11およびEV制御装置B12と同様に、信号処理部11および電力変換部12を含む。
【0063】
太陽光発電制御装置B13には、電力機器Yとしての太陽電池Y13が接続される。太陽光発電制御装置B13の電力変換部12は、太陽電池Y13の出力電力の制御を行う。先述の太陽光発電システムは、太陽光発電制御装置B13および太陽電池Y13により構成される。太陽光発電制御装置B13の信号処理部11は、太陽電池Y13から当該太陽電池Y13の個別出力制御幅を取得して、処理装置A1に送信する。
【0064】
負荷制御装置B14には、電力機器Yとしての可制御負荷Y14が接続される。当該可制御負荷Y14は、負荷制御装置B14によって消費電力の制御が可能な負荷である。負荷制御装置B14の電力変換部12は、可制御負荷Y14の消費電力の制御を行うことで、可制御負荷Y14の出力電力の制御を行う。先述の負荷制御システムは、負荷制御装置B14および可制御負荷Y14により構成される。負荷制御装置B14の信号処理部11は、可制御負荷Y14から当該可制御負荷Y14の個別出力制御幅を取得して、処理装置A1に送信する。
【0065】
電力システムS3の処理装置A1(第2算出部221)は、全体電力制御幅の算出において、太陽光発電制御装置B13から受信する太陽電池Y13の個別電力制御幅および負荷制御装置B14から受信する可制御負荷Y14の個別電力制御幅も加える。
【0066】
電力システムS3では、電力システムS1と同様に、全体電力制御幅が更新される。したがって、電力システムS3は、電力システムS1と同様に、接続される電力機器Yの状態変化が生じても、適切なエネルギー管理を継続して行うことができる。
【0067】
電力システムS3では、全体電力制御幅には、太陽電池Y13の個別電力制御幅および可制御負荷Y14の個別電力制御幅を含んでいる。この構成によれば、太陽電池Y13の出力電力および可制御負荷Y14の出力電力を考慮することで、蓄電池Y11の出力電力および電気自動車Y12の出力電力を増減させることを可能にする。したがって、電力システムS3は、よりユーザの運用方針に沿った適切なエネルギー管理を行うことができる。例えば、電力システムS3は、蓄電池Y11の充電を優先した電力制御、および、電気自動車Y12の放電を抑制した電力制御などを可能にする。また、この構成によれば、太陽電池Y13および可制御負荷Y14の各々の劣化および故障、並びに、太陽電池Y13および可制御負荷Y14の各々の追加および廃止による状態変化が生じても、適切なエネルギー管理を継続して行うことができる。
【0068】
本開示に係る電力システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0069】
S1,S11,S2,S3:電力システム、A1:処理装置、21:第1算出部、221:第2算出部、222:第1更新部、231:第3算出部、232:第2更新部、24:通信部、B1:電力制御装置、B11:蓄電池制御装置、B12:EV制御装置、Y:電力機器、Y11:蓄電池、Y12:電気自動車