(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026970
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】水冷式高圧燃料ポンプを備えた車両
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20240221BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240221BHJP
F01P 3/12 20060101ALI20240221BHJP
F02B 29/04 20060101ALI20240221BHJP
F02M 31/20 20060101ALI20240221BHJP
F02M 53/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
F01P7/16 504
B60K11/04 H
F01P7/16 501
F01P3/12
F02B29/04 R
F02M31/20 A
F02M53/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129581
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦山 朋之
(72)【発明者】
【氏名】竹山 若葉
(72)【発明者】
【氏名】山口 和博
(72)【発明者】
【氏名】本間 勇人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 裕充
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC23
3D038AC26
(57)【要約】
【課題】コースティング走行時やエンジン停止時にも高圧燃料ポンプの過度な温度上昇を抑制可能な車両を提供する。
【解決手段】本開示の一形態における車両は、エンジンと、前記エンジンと共にエンジンルーム内に配置される高圧燃料ポンプと、前記エンジンルーム内に配置される電動ウォーターポンプと、前記電動ウォーターポンプからの冷媒が流れる水冷インタークーラと、前記水冷インタークーラからの前記冷媒が流れるサブラジエータと、を含んで構成された水冷インタークーラ用冷却回路と、前記高圧燃料ポンプを冷却するポンプ用水冷回路と、を含み、前記ポンプ水冷回路は、前記水冷インタークーラ用冷却回路から分岐して前記高圧燃料ポンプを通って前記サブラジエータへと接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンと共にエンジンルーム内に配置される高圧燃料ポンプと、
前記エンジンルーム内に配置される電動ウォーターポンプと、前記電動ウォーターポンプからの冷媒が流れる水冷インタークーラと、前記水冷インタークーラからの前記冷媒が流れるサブラジエータと、を含んで構成された水冷インタークーラ用冷却回路と、
前記高圧燃料ポンプを冷却するポンプ用水冷回路と、を含み、
前記ポンプ水冷回路は、前記水冷インタークーラ用冷却回路から分岐して前記高圧燃料ポンプを通って前記サブラジエータへと接続される、
車両。
【請求項2】
前記ポンプ用水冷回路は、少なくとも前記高圧燃料ポンプの内部における副室の周囲に沿って配置されてなる、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記電動ウォーターポンプと前記高圧燃料ポンプとをつなぐ第1流路と、
前記高圧燃料ポンプと前記水冷インタークーラとをつなぐ第2流路と、
前記水冷インタークーラと前記サブラジエータとをつなぐ第3流路と、を含み、
前記水冷インタークーラと前記高圧燃料ポンプが直列となるように、前記電動ウォーターポンプと前記サブラジエータの間に前記水冷インタークーラと前記高圧燃料ポンプが接続されてなる、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記電動ウォーターポンプと前記高圧燃料ポンプとをつなぐ第1流路と、
前記水冷インタークーラと前記サブラジエータとをつなぐ第3流路と、
前記電動ウォーターポンプと前記水冷インタークーラとをつなぐ第4流路と、
前記高圧燃料ポンプと前記サブラジエータとをつなぐ第5流路と、
前記第3流路に設けられた第1流量調整バルブと、
前記第5流路に設けられた第2流量調整バルブと、
前記第1流量調整バルブ及び前記第2流量調整バルブの開度をそれぞれ制御する制御装置と、を含み、
前記水冷インタークーラと前記高圧燃料ポンプが並列となるように、前記電動ウォーターポンプと前記サブラジエータの間に前記水冷インタークーラと前記高圧燃料ポンプが接続されてなる、
請求項2に記載の車両。
【請求項5】
前記電動ウォーターポンプと前記高圧燃料ポンプとをつなぐ第1流路と、
前記水冷インタークーラと前記サブラジエータとをつなぐ第3流路と、
前記高圧燃料ポンプと前記サブラジエータとをつなぐ第5流路と、
前記第5流路から分岐して前記水冷インタークーラにつながる第6流路と、
前記第5流路のうち前記分岐の下流側に設けられた第2流量調整バルブと、
前記第2流量調整バルブの開度を制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置は、前記第2流量調整バルブを介して、前記高圧燃料ポンプを単独で又は前記水冷インタークーラと前記高圧燃料ポンプが直列となるように切り替えて冷却する制御を行う、
請求項2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば液体冷媒の冷却機構を備えた高圧燃料ポンプおよび当該高圧燃料ポンプを搭載する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンを搭載する車両では、エンジンに供給される燃料を所定の圧力まで昇圧する高圧燃料ポンプが搭載されている。また、近年では一部のガソリンエンジンに対して高圧燃料ポンプを組み合わせ、この高圧燃料ポンプによって燃料を所望の圧力まで昇圧して燃料噴射弁に供給することが行われている。
【0003】
かような高圧燃料ポンプは駆動時に発熱するため、高圧燃料ポンプを冷却する冷却機構が必要となる。例えば特許文献1や特許文献2に例示する高圧燃料ポンプでは、車両用エンジン近傍に配置される高圧燃料ポンプに対して水冷式の冷却回路を設けて当該ポンプを冷却可能とした構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-062770号公報
【特許文献1】特表2003-515695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記した特許文献では、エンジン冷却系の冷却水あるいはエアコンの冷却媒体を利用して高圧燃料ポンプを冷却する構造であって、冷却性能の向上には未だに改善の余地が大きい。例えば車両がコースティング(慣性)走行しているときやエンジンが停止している場合には、上記特許文献に記載の冷却方式では高圧燃料ポンプへ冷媒循環が滞る可能性があり、結果として高圧燃料ポンプの過度な温度上昇によるベーパを引き起こしてしまう恐れがある。昨今ではエンジンの高出力化が進展しており、かようなハイパワーエンジンにおける高圧燃料ポンプの冷却対策が今後一層望まれると予想できる。
【0006】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、例えばコースティング走行時やエンジン停止時にも高圧燃料ポンプの過度な温度上昇を抑制可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の一形態における車両は、エンジンと、前記エンジンと共にエンジンルーム内に配置される高圧燃料ポンプと、前記エンジンルーム内に配置される電動ウォーターポンプと、前記電動ウォーターポンプからの冷媒が流れる水冷インタークーラと、前記水冷インタークーラからの前記冷媒が流れるサブラジエータと、を含んで構成された水冷インタークーラ用冷却回路と、前記高圧燃料ポンプを冷却するポンプ用水冷回路と、を含み、前記ポンプ水冷回路は、前記水冷インタークーラ用冷却回路から分岐して前記高圧燃料ポンプを通って前記サブラジエータへと接続される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、例えば車両がコースティング走行を行っているときやエンジンが停止している時でも高圧燃料ポンプの過度な温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両に搭載される高圧燃料ポンプ冷却機構を示す模式図である。
【
図2】高圧燃料ポンプ冷却機構のうちポンプ本体側にポンプ用水冷回路が設置される場合の上面視の模式図である。
【
図3】高圧燃料ポンプ冷却機構のうちポンプ本体側にポンプ用水冷回路が設置される場合の側面視の模式図である。
【
図4】高圧燃料ポンプ冷却機構のうちポンプケース側にポンプ用水冷回路が設置される場合の上面視の模式図である。
【
図5】高圧燃料ポンプ冷却機構のうちポンプケース側にポンプ用水冷回路が設置される場合の側面視の模式図である。
【
図6】インタークーラと高圧燃料ポンプが直列に接続される形態である直列式冷却回路を示す模式図である。
【
図7】直列式冷却回路におけるエンジンの運転条件に応じたインタークーラと高圧燃料ポンプの冷却態様を示すテーブルである。
【
図8】インタークーラと高圧燃料ポンプが並列に接続される形態である並列式冷却回路を示す模式図である。
【
図9】並列式冷却回路におけるエンジンの運転条件に応じたインタークーラと高圧燃料ポンプの冷却態様を示すテーブルである。
【
図10】インタークーラと高圧燃料ポンプとが直列又は並列に切り替え可能に接続される形態である切換式冷却回路を示す模式図である。
【
図11】切換式冷却回路におけるエンジンの運転条件に応じたインタークーラと高圧燃料ポンプの冷却態様を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本開示を実施するための好適な実施形態について説明する。なお本開示に直接関係のない要素や構造に関する図示は適宜省略する場合がある。従って以下で詳述する構成以外のエンジンや車両構造については、例えば特開2020-29833号公報などに記載された水平対向エンジンの構造や、その他のエンジンにも搭載される水冷式インタークーラの構成など公知の構造を適宜補完して実施してもよい。
【0011】
[車両100]
以下、本開示における実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び
図6に、本開示の一実施形態である車両100を示す。
図1及び
図6から理解されるとおり、本実施形態の車両100は、エンジン10、高圧燃料ポンプ20、水冷インタークーラ用冷却回路30及びポンプ用水冷回路40を含んで構成されている。すなわち、
図6に示すように、燃料タンク11から供給される燃料は、供給パイプSPを介して高圧燃料ポンプ20に供給されることで、所望の圧力まで昇圧された後にエンジン10へ供給される。
【0012】
なお車両100の一例としてエンジン10を搭載する四輪自動車が好適であるが、本開示の車両100は上記形態には限られない。すなわち車両100は、エンジン10と公知の二次電池とが併載されたハイブリッド車であってもよいし、二輪自動車であってもよい。また、車両100の駆動方式も、前輪駆動であってもよいし、後輪駆動であってもよいし、全輪駆動であってもよい。
【0013】
エンジン10は、車両100に搭載されて、車両100の駆動に必要な動力を発生する公知の内燃機関である。かようなエンジン10としては、例えば公知のガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどが例示できる。
【0014】
高圧燃料ポンプ20は、四輪自動車の場合には前記したエンジン10と共にエンジンルーム内に配置される。かような高圧燃料ポンプの具体的な構造としては、燃料を所定の噴射圧に昇圧してエンジン10の燃料噴射弁(不図示)に供給可能であれば特に制限はなく、公知の燃料圧縮機構を適用してもよい。
【0015】
水冷インタークーラ用冷却回路30は、
図6、8及び10などに示すように、上記したエンジンルーム内に配置される電動ウォーターポンプ31と、この電動ウォーターポンプ31からの冷媒が流れる水冷インタークーラ32と、この水冷インタークーラ32からの冷媒が流れるサブラジエータ33と、を含んで構成されている。
【0016】
なお本実施形態の水冷インタークーラ用冷却回路30で用いられる冷媒としては、車両のインタークーラに適用可能な種々の公知の冷却水が適用できる。また、それぞれ上記した電動ウォーターポンプ31、水冷インタークーラ32およびサブラジエータ33についても、車両に搭載される公知の水冷式インタークーラ機構で用いられる公知の部材を適用できる。
【0017】
ポンプ用水冷回路40は、上記した高圧燃料ポンプ20を冷却する機能を有して構成されている。より具体的に本実施形態のポンプ用水冷回路40は、前記した水冷インタークーラ用冷却回路30から分岐して高圧燃料ポンプ20を通ってサブラジエータ33へと接続されている。換言すれば、本実施形態のポンプ用水冷回路40は、水冷インタークーラ用冷却回路30で用いられる冷媒(冷却水)を流用して高圧燃料ポンプ20の冷却を行う。
後述するとおり、ポンプ用水冷回路40は、直列式冷却回路、並列式冷却回路および切換式冷却回路のいずれかの形態で、車両に搭載された水冷インタークーラ用冷却回路30と統合されていてもよい。
【0018】
また、
図1に示すように、本実施形態のポンプ用水冷回路40は、少なくとも高圧燃料ポンプ20の内部における副室23の周囲に沿って配置されてなることが好ましい。ここで本実施形態の高圧燃料ポンプ20は、燃料を所定の噴射圧に昇圧して燃料噴射弁に供給するポンプ本体21と、このポンプ本体21をエンジン10に取り付け固定するためのポンプケース22と、を含んで構成されている。
【0019】
より具体的に、例えばポンプ本体21にポンプ用水冷回路40が設けられる場合には、
図2及び
図3に例示されるとおり、ポンプ本体21のフランジの内部であって上記した副室23の周囲に沿って配置される形態が例示できる。また、ポンプケース22にポンプ用水冷回路40が設けられる場合には、
図4及び
図5に例示されるとおり、ポンプケース22のうち上記した副室23の周囲に沿って配置される形態が例示できる。
【0020】
また、高圧燃料ポンプ20における「副室」とは、ポンプ内に設けられて燃料を昇圧させるためのプランジャが配置される空間である。
さらに「副室23の周囲に沿って配置」とは、高圧燃料ポンプ20における副室23で発生した熱が上記冷媒へ伝熱される程度の距離を有して副室23の外形に合わせて(流路が)配置される形態を言う。
【0021】
この副室内では燃料循環のためにプランジャが上下に運動することで減圧され、且つ発熱させられることから、副室内で燃料のベーパ(泡や気泡)が発生しやすいといった課題があると言える。従って本実施形態のポンプ用水冷回路40の流路が少なくとも高圧燃料ポンプ20の副室23周囲に沿って配置されることで、副室内の適正な温度を維持することが可能となって燃料のベーパ発生が抑制できる。
【0022】
さらに本実施形態のポンプ用水冷回路40は、エンジンの冷却水系統とは異なる水冷インタークーラ用冷却回路30で用いられる冷媒を共有していることから、上記したコースティング走行時やエンジン停止時にも電動ウォーターポンプ31を駆動して高圧燃料ポンプ20を冷却することが可能となっている。これにより、例えば車両100のコースティング走行時やエンジン停止時に高圧燃料ポンプ20の副室23で燃料のベーパが発生してしまうことが抑制できる。
【0023】
次に本実施形態のポンプ用水冷回路40における具体的な回路構成例を説明する。本実施形態のポンプ用水冷回路40は、それぞれの回路毎に選択される各流路で構成されて水冷インタークーラ32や高圧燃料ポンプ20を冷却する冷媒流路50(第1流路51~第7流路57)を含んで構成されている。
【0024】
<ポンプ用水冷回路40の具体例その1(直列式冷却回路)>
まず
図6及び
図7を参照しつつ、水冷インタークーラと高圧燃料ポンプの直列式冷却回路を構成する直列式ポンプ用水冷回路40Aについて説明する。
【0025】
図6に示すように、本実施形態における直列式ポンプ用水冷回路40Aは、電動ウォーターポンプ31と高圧燃料ポンプ20とをつなぐ第1流路51と、この高圧燃料ポンプ20と水冷インタークーラ32とをつなぐ第2流路52と、この水冷インタークーラ32とサブラジエータ33とをつなぐ第3流路53を含んで構成されている。さらに直列式ポンプ用水冷回路40Aは、サブラジエータ33と電動ウォーターポンプ31とをつなぐ第7流路57を含んで構成されている。
【0026】
このように直列式ポンプ用水冷回路40Aにおいては、水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20とが直列となるように、電動ウォーターポンプ31とサブラジエータ33の間に水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20が接続(連結)されている。なお本例では、高圧燃料ポンプ20が水冷インタークーラ32に対して上流側に位置するように配置されているが、高圧燃料ポンプ20が水冷インタークーラ32に対して下流側に配置されていてもよい。
【0027】
これにより、電動ウォーターポンプ31で送出された冷媒(冷却水)は、まず第1流路51を介して高圧燃料ポンプ20(例えば上記した副室23の周囲)に供給される。次いで、高圧燃料ポンプ20から送出された冷媒(冷却水)は、第2流路52を介して水冷インタークーラ32に供給される。
【0028】
その後、水冷インタークーラ32から送出された冷媒(冷却水)は、第3流路53を介してサブラジエータ33に供給される。サブラジエータ33で外気と熱交換を経た冷媒(冷却水)は、第7流路57を介して電動ウォーターポンプ31へと還流される。
【0029】
なおエンジン10に対しては、水冷インタークーラ32を通過して冷却された圧縮空気が吸気パイプ71を介して供給される。この圧縮空気は、エアクリーナー13を介して吸気パイプ75を流通するエアーがターボチャージャのタービン12で圧縮された後に、吸気パイプ74を介して水冷インタークーラ32に供給されて冷却される。また、エンジン10から排気パイプ72を介して排気された空気は、上記タービン12のコンプレッサ駆動に利用されると共に、マフラー14を介して排気パイプ73から車外へ放出される。
【0030】
従って本実施形態の直列式ポンプ用水冷回路40Aによれば、
図7に示すように、高圧燃料ポンプ20が作動してエンジン10の負荷が低い時や、過給機(不図示)が作動して断熱圧縮されることで高温になった空気を冷却するために水冷インタークーラ32が熱を受けることで発熱した時など、水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20の少なくとも一方が発熱する際に冷媒(冷却水)をこれらに供給して冷却することが可能となっている。
【0031】
さらに、直列式ポンプ用水冷回路40Aでは水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20を直列接続するため、流路構成が複雑とならず部材のコストも低減しつつ冷却効果を向上させることが可能となっている。
【0032】
また、
図7から明らかなとおり、エンジン10が無負荷な状態(上記したコースティング走行時、エンジン停止時あるいはアイドリングストップ機能を有する場合はそのアイドリング時など)であっても、直列式ポンプ用水冷回路40Aは、水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20の少なくとも一方が発熱している場合に冷媒(冷却水)を供給してこれらを同時に冷却することが可能となっている。
【0033】
<ポンプ用水冷回路40の具体例その2(並列式冷却回路)>
次に
図8及び
図9を参照しつつ、水冷インタークーラと高圧燃料ポンプの並列式冷却回路を構成する並列式ポンプ用水冷回路40Bについて説明する。
【0034】
図8に示すように、本実施形態における並列式ポンプ用水冷回路40Bは、電動ウォーターポンプ31と高圧燃料ポンプ20とをつなぐ第1流路51と、水冷インタークーラ32とサブラジエータ33とをつなぐ第3流路53と、電動ウォーターポンプ31と水冷インタークーラ32とをつなぐ第4流路54と、高圧燃料ポンプ20とサブラジエータ33とをつなぐ第5流路55と、を含んで構成されている。
【0035】
さらに並列式ポンプ用水冷回路40Bは、上記した第3流路53に設けられて当該第3流路53を流れる冷媒の流量を調整可能な第1流量調整バルブV1と、上記した第5流路55に設けられて当該第5流路55を流れる冷媒の流量を調整可能な第2流量調整バルブV2と、これら第1流量調整バルブV1及び第2流量調整バルブV2の開度をそれぞれ制御する制御装置60と、を含んで構成されている。
【0036】
制御装置60は、車載されるECU(電子制御ユニット)として構成されてもよく、例えばCPU(Central Processing Unit)等の一つ又は複数のプロセッサと、当該プロセッサと通信可能に接続されたRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の一つ又は複数のメモリを備えて構成されていてもよい。
【0037】
このように制御装置60は、一つ又は複数のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで、第1流量調整バルブV1及び第2流量調整バルブV2の開度をそれぞれ制御する装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、制御装置60が実行すべき動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、制御装置60に備えられた不図示の記憶部(メモリ)として機能する記録媒体に記録されていてもよく、制御装置60に内蔵された記録媒体又は制御装置60に外付け可能な公知の記録媒体に記録されていてもよい。
なお制御装置60は、第1流量調整バルブV1及び第2流量調整バルブV2の開度をそれぞれ制御する他に、例えば電子制御や高圧燃料ポンプ20の動作制御を行ってもよい。
【0038】
なおコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM及びROM等の記憶素子、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のフラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0039】
このように並列式ポンプ用水冷回路40Bにおいては、水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20とが並列となるように、電動ウォーターポンプ31とサブラジエータ33の間で水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20の流路が独立されている。
【0040】
これにより、電動ウォーターポンプ31で送出された冷媒(冷却水)は、一方の流路として、第1流路51を介して高圧燃料ポンプ20(例えば上記した副室23の周囲)に供給される。さらにこの第1流路51と並行して、電動ウォーターポンプ31で送出された冷媒(冷却水)は、他方の流路として、第4流路54を介して水冷インタークーラ32に供給される。
【0041】
次いで、一方の流路に関し、高圧燃料ポンプ20から送出された冷媒(冷却水)は、第5流路55を介してサブラジエータ33に供給される。また、他方の流路に関し、高圧燃料ポンプ20から送出された冷媒(冷却水)は、第3流路53を介してサブラジエータ33に供給される。
【0042】
このように、高圧燃料ポンプ20から送出された冷媒(冷却水)は、互いに独立してそれぞれ高圧燃料ポンプ20と水冷インタークーラ32に供給された後に、サブラジエータ33で合流する。そしてサブラジエータ33で外気と熱交換を経た冷媒(冷却水)は、第7流路57を介して電動ウォーターポンプ31へと還流される。
【0043】
このとき制御装置60は、第1流量調整バルブV1及び第2流量調整バルブV2の開度をそれぞれ制御可能であることから、冷却が不必要な場合にはバルブを閉塞する制御を行うことが可能となっている。換言すれば、制御装置60は、第1流量調整バルブV1及び第2流量調整バルブV2を制御することで、電動ウォーターポンプ31で送出された冷媒(冷却水)を、(α)第1流量調整バルブV1を閉塞して高圧燃料ポンプ20にのみ流通させ、(β)第2流量調整バルブV2を閉塞して水冷インタークーラ32にのみ流通させ、又は(γ)第1流量調整バルブV1と第2流量調整バルブV2を開いて高圧燃料ポンプ20と水冷インタークーラ32へ並行して冷媒を流通させることができる。
【0044】
従って本実施形態の並列式ポンプ用水冷回路40Bによれば、
図9に示すように、高圧燃料ポンプ20が作動してエンジン10の負荷が低い時や、過給機(不図示)が作動して水冷インタークーラ32が発熱した時など、水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20のうち冷却が必要な方へ必要に応じて任意のタイミングで冷媒(冷却水)を供給することが可能となっている。
【0045】
また、
図9から明らかなとおり、エンジン10が無負荷な状態(上記したコースティング走行時、エンジン停止時あるいはアイドリングストップ機能を有する場合はそのアイドリング時など)であっても、並列式ポンプ用水冷回路40Bは、水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20の少なくとも一方が発熱している場合に、上記した各バルブを介して冷却が必要な側に対して冷媒(冷却水)を効率良く供給することができる。
【0046】
<ポンプ用水冷回路40の具体例その3(切換式冷却回路)>
次に
図10及び
図11を参照しつつ、水冷インタークーラと高圧燃料ポンプの冷却回路を構成する切換式ポンプ用水冷回路40Cについて説明する。
【0047】
図9に示すように、本実施形態における切換式ポンプ用水冷回路40Cは、電動ウォーターポンプ31と高圧燃料ポンプ20とをつなぐ第1流路51と、水冷インタークーラ32とサブラジエータ33とをつなぐ第3流路53と、高圧燃料ポンプ20とサブラジエータ33とをつなぐ第5流路55と、この第5流路55から分岐して水冷インタークーラ32につながる第6流路56と、を含んで構成されている。
【0048】
さらに切換式ポンプ用水冷回路40Cは、上記した第5流路55に設けられて当該第5流路55を流れる冷媒の流量を調整可能な第2流量調整バルブV2と、この第2流量調整バルブV2の開度を制御する制御装置60と、を含んで構成されている。
【0049】
このように切換式ポンプ用水冷回路40Cにおいて、高圧燃料ポンプ20から送出される冷媒が流れる第5流路55は、水冷インタークーラ32から送出される冷媒が流れる第3流路53に接続される。さらに切換式ポンプ用水冷回路40Cにおいて、第5流路55のうち上記第2流量調整バルブV2よりも上流側(高圧燃料ポンプ20側)で分岐した第6流路56が水冷インタークーラ32に接続されている。
【0050】
これにより、電動ウォーターポンプ31で送出された冷媒(冷却水)は、第1流路51を介して、まず高圧燃料ポンプ20(例えば上記した副室23の周囲)に供給される。その後、第2流量調整バルブV2が閉塞されている場合には、高圧燃料ポンプ20から送出された冷媒(冷却水)は、第5流路55及び第6流路56を介して水冷インタークーラ32へ供給される。次いで、水冷インタークーラ32から送出された冷媒(冷却水)は、第3流路53を介してサブラジエータ33に供給される。
【0051】
一方で第2流量調整バルブV2が開いている場合、高圧燃料ポンプ20から送出された冷媒(冷却水)は、水冷インタークーラ32へつながる第6流路56にも多少の冷媒は供給されるものの、より抵抗の少ない側である第5流路55を介してサブラジエータ33へ供給される。
【0052】
このように高圧燃料ポンプ20から送出された冷媒(冷却水)は、サブラジエータ33へ直接流入するか、又は水冷インタークーラ32を経由してサブラジエータ33へ流入するように構成されている。そしてサブラジエータ33で外気と熱交換を経た冷媒(冷却水)は、第7流路57を介して電動ウォーターポンプ31へと還流される。
【0053】
このように、切換式ポンプ用水冷回路40Cにおいては、制御装置60は、上記した第2流量調整バルブV2を制御することで、水冷インタークーラ32へは実質的に冷媒が流通せず高圧燃料ポンプ20に必要な冷媒が流れる単独冷却と、高圧燃料ポンプ20と水冷インタークーラ32にそれぞれ冷媒が流れる同時冷却と、の2種の冷却処理を実行することができる。換言すれば、制御装置60は、第2流量調整バルブV2を介して、高圧燃料ポンプ20を単独で、又は、水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20が直列となるように切り替えて冷却する制御を行う。
【0054】
従って本実施形態の切換式ポンプ用水冷回路40Cによれば、
図11に示すように、高圧燃料ポンプ20が作動してエンジン10の負荷が低い時や、過給機(不図示)が作動して水冷インタークーラ32が発熱した時など、高圧燃料ポンプ20の冷却が必要なタイミングを網羅しつつ水冷インタークーラ32に対しても必要に応じて冷媒(冷却水)を供給することが可能となっている。
【0055】
また、
図11から明らかなとおり、エンジン10が無負荷な状態(上記したコースティング走行時、エンジン停止時あるいはアイドリングストップ機能を有する場合はそのアイドリング時など)であっても、切換式ポンプ用水冷回路40Cは、水冷インタークーラ32と高圧燃料ポンプ20の少なくとも一方が発熱している場合に、上記したバルブを介して冷却が必要な側に対して冷媒(冷却水)を効率良く供給することができる。
【0056】
このように本実施形態のいずれかのポンプ用水冷回路40(40A~40C)を備えた車両100によれば、コースティング走行時やエンジン停止時にも高圧燃料ポンプの過度な温度上昇を抑制することができる。さらに本実施形態のいずれかのポンプ用水冷回路40(40A~40C)を備えた車両100によれば、空冷またはエンジンの冷却水を用いた従来構成に比して、エンジンの回転数に依存せず、高圧燃料ポンプへ供給される冷媒の温度を相対的に低くすることが可能となって冷却効率を向上させることができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、これら実施形態や変形例に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0058】
100 車両
10 エンジン
20 高圧燃料ポンプ
30 水冷インタークーラ用冷却回路
40 ポンプ用水冷回路
50 冷媒流路
60 制御装置