(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026982
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】直流電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
H02M7/12 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129622
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】清原 豊彦
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA07
5H006CA03
5H006CB03
5H006CC04
5H006DB02
(57)【要約】
【課題】三相交流電源が入力される2台の整流回路を有する直流電源装置の直流側での循環電流を抑制する。
【解決手段】移相角の差が30°である第1変圧器3及び第2変圧器4の一次側では、主巻線及び移相巻線は、UVW相の各々で電流が第1変圧器3及び第2変圧器4を直列に流れる態様で、三相交流電源及び一次側中性点Npの間に星形結線される。第1変圧器3の二次側には、uvw相及びxyz相の二次巻線に対して交流側が接続された第1整流素子群31が配置され、第2変圧器4の二次側には、uvw相及びxyz相の二次巻線に対して交流側が接続された第2整流素子群32が配置される。第1整流素子群31及び第2整流素子群32では、交流側がuvw相の二次巻線と接続された各整流素子の直流側が相互接続される一方で、交流側がxyz相の二次巻線と接続された各整流素子の直流側が相互接続される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源装置であって、
両者の移相角の差が30°である様に構成された第1変圧器及び第2変圧器を備え、
前記第1変圧器は、第1のUVW相一次巻線と、二次側中性点に対して星形結線された第1のuvw相二次巻線及び第1のxyz相二次巻線とを有し、
前記第2変圧器は、第2のUVW相一次巻線と、前記第1変圧器と共通の前記二次側中性点に対して星形結線された第2のuvw相二次巻線及び第2のxyz相二次巻線とを有し、
前記直流電源装置は、
前記第1のuvw相二次巻線及び前記第1のxyz相二次巻線の各巻線に対して交流側がそれぞれ接続された第1整流素子と、
前記第2のuvw相二次巻線及び前記第2のxyz相二次巻線の各巻線に対して交流側がそれぞれ接続された第2整流素子と更にを備え、
前記第1変圧器及び前記第2変圧器の少なくとも一方は、前記第1のUVW相一次巻線又は前記第2のUVW相一次巻線が主巻線及び移相巻線を有する移相変圧器で構成され、
前記第1変圧器及び前記第2変圧器の一次側において、前記第1のUVW相一次巻線及び前記第2のUVW相一次巻線は、U相、V相、及び、W相のそれぞれで、電流が前記第1変圧器及び前記第2変圧器を直列に流れる態様で、三相交流電源及び共通の一次側中性点の間に星形結線され、
前記第1変圧器及び前記第2変圧器の二次側において、前記第1のuvw相二次巻線と接続された前記第1整流素子の直流側と、前記第2のuvw相二次巻線と接続された前記第2整流素子の直流側とが相互接続される一方で、前記第1のxyz相二次巻線と接続された前記第1整流素子の直流側と、前記第2のxyz相二次巻線と接続された前記第2整流素子の直流側とが相互接続される、直流電源装置。
【請求項2】
前記第1のuvw相二次巻線と接続された前記第1整流素子の直流側と、前記第2のuvw相二次巻線と接続された前記第2整流素子の直流側とは、直流負荷の第1端と接続される第1の直流導体に対して共通に接続され、
前記第1のxyz相二次巻線と接続された前記第1整流素子の直流側と、前記第2のxyz相二次巻線と接続された前記第2整流素子の直流側とは、前記直流負荷の前記第1端と接続される第2の直流導体に対して共通に接続され、
前記直流負荷の第2端は、前記二次側中性点と接続される、請求項1記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記第1のUVW相一次巻線は、前記第1変圧器がマイナス15°の移相角を有する移相変圧器で構成される様に結線された、主巻線及び移相巻線を有し、
前記第2のUVW相一次巻線は、前記第2変圧器がプラス15°の移相角を有する移相変圧器で構成される様に結線された、主巻線及び移相巻線を有する、請求項1又は2に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記第1のUVW相一次巻線は、第1U相主巻線、第1U相移相巻線、第1V相主巻線、第1V相移相巻線、第1W相主巻線、及び、第1W相移相巻線を有し、
前記第2のUVW相一次巻線は、第2U相主巻線、第2U相移相巻線、第2V相主巻線、第2V相移相巻線、第2W相主巻線、及び、第2W相移相巻線を有し、
前記第1U相主巻線、前記第2U相主巻線、前記第1V相移相巻線、及び、前記第2W相移相巻線は、前記三相交流電源のU相及び前記一次側中性点の間に電気的に直列接続され、
前記第1V相主巻線、前記第2V相主巻線、前記第1W相移相巻線、及び、前記第2U相移相巻線は、前記三相交流電源のV相及び前記一次側中性点の間に電気的に直列接続され、
前記第1W相主巻線、前記第2W相主巻線、前記第1U相移相巻線、及び、前記第2V相移相巻線は、前記三相交流電源のW相及び前記一次側中性点の間に電気的に直列接続される、請求項3記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記第1のuvw相二次巻線は、第1u相二次巻線、第1v相二次巻線、及び、第1w相二次巻線を有し、
前記第1のxyz相二次巻線は、第1x相二次巻線、第1y相二次巻線、及び、第1z相二次巻線を有し、
前記第2のuvw相二次巻線は、第2u相二次巻線、第2v相二次巻線、及び、第2w相二次巻線を有し、
前記第2のxyz相二次巻線は、第2x相二次巻線、第2y相二次巻線、及び、第2z相二次巻線を有し、
前記第1U相主巻線及び前記第1U相移相巻線は、前記第1u相二次巻線及び前記第1x相二次巻線と磁気結合され、
前記第1V相主巻線及び前記第1V相移相巻線は、前記第1v相二次巻線及び前記第1y相二次巻線と磁気結合され、
前記第1W相主巻線及び前記第1W相移相巻線は、前記第1w相二次巻線及び前記第1z相二次巻線と磁気結合され、
前記第2U相主巻線及び前記第2U相移相巻線は、前記第2u相二次巻線及び前記第2x相二次巻線と磁気結合され、
前記第2V相主巻線及び前記第2V相移相巻線は、前記第2v相二次巻線及び前記第2y相二次巻線と磁気結合され、
前記第2W相主巻線及び前記第2W相移相巻線は、前記第2w相二次巻線及び前記第2z相二次巻線と磁気結合され、
前記第1u相二次巻線、前記第1v相二次巻線、前記第1w相二次巻線、前記第2u相二次巻線、前記第2v相二次巻線、及び、前記第2w相二次巻線の各々は、第1端が対応する相の前記第1整流素子又は前記第2整流素子の交流側と接続される一方で、第2端は前記二次側中性点と接続され、
前記第1x相二次巻線、前記第1y相二次巻線、前記第1z相二次巻線、前記第2x相二次巻線、前記第2y相二次巻線、及び、前記第2z相二次巻線の各々は、第1端が前記二次側中性点と接続される一方で、第2端は対応する相の前記第1整流素子又は前記第2整流素子の交流側と接続される、請求項4記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記第1整流素子及び前記第2整流素子の各々は、導通角が150°となる様に制御されるサイリスタで構成される、請求項1又は2に記載の直流電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流電源装置に関し、より特定的には、三相交流電源を入力とする整流回路を有する直流電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三相交流電源を入力する直流電源の一態様として、高調波抑制対策のために、整流回路を組み合わせることで多相化した構成が知られている。例えば、下記の非特許文献1には、30°の位相差を有する三相交流電圧が入力される2台の整流回路を並列接続することで、所謂、12パルス整流回路を構成することが記載されている。
【0003】
更に、非特許文献1では、2台の整流回路間の出力電圧差を吸収するための相間リアクトルの最適化によって、電源側入力電流の高調波を抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】田中俊彦,小塩修嗣著、「相間リアクトルの最適化による並列接続形サイリスタ整流回路の電源高調波電流低減法」、電気学会論文誌D(産業応用部門誌)、Vol.117,No.1, pp.19-25 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の様な2台の整流回路が接続された12パルス整流回路の直流側では、2台の整流回路間に循環電流が発生することが知られている。この循環電流による電磁誘導によって、整流器の直流端子近傍、又は、整流回路間の直流導体近傍の鉄製構造体が誘導加熱される場合もある。
【0006】
非特許文献1では、相間リアクトルのインダクタンスによって循環電流を抑制することが可能である。或いは、直接リアクトルを配置することなく、整流回路間の直流導体を長くすることで、等価的に循環電流を抑制するためのインダクタンスの確保が図られることもある。
【0007】
しかしながら、上述の様な、循環電流の抑制対策は、相間リアクトル又は直流導体の大型化、及び、大型化に伴う損失増加を招くことが懸念される。
【0008】
本開示は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、三相交流電源を入力とする12パルス整流回路として構成された直流電源装置の直流側での循環電流を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る直流電源装置は、両者の移相角の差が30°である様に構成された第1変圧器及び第2変圧器と、第1整流素子と、第2整流素子とを備える。第1変圧器は、第1のUVW相一次巻線と、二次側中性点に対して星形結線された第1のuvw相二次巻線及び第1のxyz相二次巻線とを有する。第2変圧器は、第2のUVW相一次巻線と、第1変圧器と共通の二次側中性点に対して星形結線された第2のuvw相二次巻線及び第2のxyz相二次巻線とを有する。第1整流素子群は、第1のuvw相二次巻線及び第1のxyz相二次巻線の各巻線に対して交流側がそれぞれ接続される。第2整流素子は、第2のuvw相二次巻線及び第2のxyz相二次巻線の各巻線に対して交流側がそれぞれ接続される。第1変圧器及び第2変圧器の少なくとも一方は、第1のUVW相一次巻線又は第2のUVW相一次巻線が主巻線及び移相巻線を有する移相変圧器で構成される。第1変圧器及び第2変圧器の一次側において、第1のUVW相一次巻線及び第2のUVW相一次巻線は、U相、V相、及び、W相のそれぞれで、電流が第1変圧器及び第2変圧器を直列に流れる態様で、三相交流電源及び共通の一次側中性点の間に星形結線される。第1変圧器及び第2変圧器の二次側において、第1のuvw相二次巻線と接続された第1整流素子の直流側と、第2のuvw相二次巻線と接続された第2整流素子の直流側とが相互接続される一方で、第1のxyz相二次巻線と接続された第1整流素子の直流側と、第2のxyz相二次巻線と接続された第2整流素子の直流側とが相互接続される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、三相交流電源を入力とする12パルス整流回路として構成された直流電源装置の直流側での循環電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】比較例に係る直流電源装置の構成を説明する概念図である。
【
図2】本実施の形態に係る直流電源装置の構成を説明する概念図である。
【
図3】比較例に係る直流電源装置の構成例を示す回路図である。
【
図4】本実施の形態に係る直流電源装置の構成例を示す回路図である。
【
図5】本実施の形態に係る直流電源装置の整流素子の出力電流の波形図である。
【
図6】
図4の変圧器の一次側の各相の電流波形図である。
【
図7】
図4の変圧器の二次側における各相の整流素子の電流波形図である。
【
図8】
図3に示された直流電源装置(比較例)での二次側各相の整流素子の出力電流のシミュレ-ション結果を示す波形図である。
【
図9】
図4に示された直流電源装置(本実施の形態)での二次側各相の整流素子の出力電流のシミュレ-ション結果を示す波形図である。
【
図10】
図3に示された直流電源装置(比較例)の出力電流のシミュレーション結果を示す波形図である。
【
図11】
図4に示された直流電源装置(本実施の形態)の出力電流のシミュレ-ション結果を示す波形図である。
【
図12】二次側が二重星形結線された変圧器の二次側の各相での整流素子の出力電流の概念的な波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
(回路構成)
まず、本実施の形態に係る直流電源装置の回路構成について、非特許文献1と同様の、30°の位相差を有する三相交流電圧が入力される2台の整流回路を並列接続した12パルス整流回路との比較によって説明する。
【0014】
図1は、比較例に係る直流電源装置の構成を説明する概念図である。
【0015】
図1に示される様に、比較例に係る直流電源装置10は、並列接続された整流回路21及び22と、直流リアクトルL1,L2とを備え、負荷(直流負荷)40に対して、直流電力を供給する。
【0016】
整流回路21は、UVW相の各相の主巻線及び移相巻線から構成される一次巻線群3P及びuvw相及びxyz相の各巻線から構成される二次巻線群3Sを有する変圧器3と、第1整流素子群31とを含む。第1整流素子群31の各整流素子は、例えば、サイリスタで構成され、二次巻線群3Sのuvw相及びxyz相の各巻線と接続された交流側(アノード)と、直流導体PL1と接続された直流側(カソード)と有する。
【0017】
同様に、整流回路22は、UVW相の各相の主巻線及び移相巻線から構成される一次巻線群4P及びuvw相及びxyz相の各巻線から構成される二次巻線群4Sを有する変圧器4と、第2整流素子群32とを含む。第2整流素子群32の各整流素子は、例えば、サイリスタで構成され、二次巻線群4Sのuvw相及びxyz相の各巻線と接続された交流側(アノード)と、直流導体PL2と接続された直流側(カソード)と有する。
【0018】
本明細書では、変圧器3及び4の各相について、一次側(UVW相)を大文字、二次側(uvw相、xyz相)を小文字で表記する。更に、変圧器3及び4の一次側のUVW相同士を区別するために、変圧器3の一次側のU相、V相、W相については、U1相、V1相、W1相とも称する。一方で、変圧器4の一次側のU相、V相、W相については、U2相、V2相、W2相とも称する。同様に、変圧器3及び4の二次側でのuvw相及びxyz相同士を区別するために、変圧器3の二次側の各相をu1相、v1相、w1相、及び、x1相、y1相、z1相とも表記する。同様に、変圧器4の二次側の各相については、u2相、v2相、w2相、及び、x2相、y2相、z2相とも表記する。
【0019】
変圧器3の一次巻線群3Pの主巻線及び移相巻線(U1相~W1相)は、移相角-15°を有する移相巻線付変圧器(移相変圧器)として構成される様に、一次側中性点Np1に対して星形結線される。変圧器3の二次巻線群3Sは、u1相、v1相、及び、w1相と、x1相、y1相、及び、z1相との各々で、共通の二次側中性点Nsに対して星形結線される。即ち、u1相~w1相と、x1相~z1相とは並列接続される。
【0020】
一方で、変圧器4の一次巻線群4Pの主巻線及び移相巻線(U2相~W2相)は、移相角+15°を有する移相巻線付変圧器(移相変圧器)として構成される様に、一次側中性点Np2に対して星形結線される。二次巻線群4Sは、二次巻線群3Sと同様に、uvw相(u2相~w2相)と、xyz相(x2相~z2相)との各々で、変圧器3と共通の二次側中性点Nsに対して星形結線される。即ち、u2相~w2相と、x2相~z2相とについても、並列接続されている。
【0021】
変圧器3の一次巻線群3P及び変圧器4の一次巻線群4Pは、電力線PLU,PLV,PLWを介して、図示しない三相交流電源に対して並列接続される。
【0022】
負荷40の第1端は、直流導体PL1及びPL2と接続され、第2端は、共通接続された変圧器3及び4の二次側中性点Nsと接続される。
【0023】
整流回路21及び22は、電力線PLU~PLWによって三相交流電源に対して並列接続されており、第1整流素子群31及び第2整流素子群32を構成する12個の整流素子が、30°ずつ位相差が異なる交流電圧を整流する様に動作することで、12パルス整流回路としての動作が実現される。
【0024】
直流リアクトルL1,L2は、直流導体PL1,PL2のインダクタンスによって構成することも可能であり、非特許文献1の相間リアクトルと同様に、直流導体PL1及びPL2の間を循環する循環電流を抑制する効果を有する。
【0025】
図2には、本実施の形態に係る直流電源装置の構成を説明する概念図が示される。
【0026】
図2を参照して、本実施の形態に係る直流電源装置11は、比較例に係る直流電源装置10(
図1)と比較して、整流回路21及び22の構成要素は同様である一方で、変圧器3及び4の一次側での一次巻線群3P,4Pの結線と、二次側での第1整流素子群31及び第2整流素子群32の直流側の結線とが異なる。
【0027】
具体的には、変圧器3,4の一次側では、一次巻線群3Pの主巻線及び移相巻線(U1相~W1相)と、一次巻線群4Pの主巻線及び移相巻線(U2相~W2相)とは、一次側のUVW相の各相の電流が一次巻線群3P及び4Pを並列ではなく直列に流れる様に、電力線PLU~PLV(三相交流電源)と、変圧器3,4に共通の一次側中性点Npとの間に星形結線される。一次巻線群3P及び4Pの具体的な結線例については、後程回路図を用いて説明する。
【0028】
変圧器3,4の二次側では、第1整流素子群31及び第2整流素子群32は、
図1の様に並列動作するのではなく、各整流素子の直流側が、uvw相同士、及び、xyz相同士で相互接続されることで、一体的に動作する。
図2の例では、直流導体PL1は、第1整流素子群31及び第2整流素子群32を構成する整流素子のうちの、交流側が変圧器3,4のuvw相(u1相~w1相,u2相~w2相)と接続された整流素子の直流側と接続される。又、直流導体PL2は、第1整流素子群31及び第2整流素子群32を構成する整流素子のうちの、交流側が変圧器3,4のxyz相(x1相~z1相,x2相~z2相)と接続された整流素子の直流側と接続される。
【0029】
この様に、本実施の形態に係る直流電源装置11は、変圧器一次側での各相電流が変圧器3及び4に並列に流れるのではなく、変圧器3及び4を直列に流れる様に動作する点で、比較例に係る直流電源装置10と異なっている。この結果、後程の説明で明らかになる様に、直流電源装置11では、比較例に係る直流電源装置10と比較して大幅に循環電流を低減することが可能となり、
図2中に点線で表記する様に、直流リアクトルL1,L2の省略を図ることができる。
【0030】
次に、比較例に係る直流電源装置10と、本実施の形態に係る直流電源装置11との相違点について、
図3及び
図4の回路図を用いて、更に説明する。
【0031】
図3は、
図1に示された直流電源装置10(比較例)の構成例を説明する回路図である。
【0032】
図3を参照して、変圧器3及び4の一次側は、別個の一次側中性点Np1,Np2に対してそれぞれ星形結線される。変圧器3の一次巻線群3Pは、一次側中性点Np1に対して星形結線される、U相(U1相)の主巻線及び移相巻線を構成する一次巻線Pu11及びPw12、V相(V1相)の主巻線及び移相巻線を構成する一次巻線Pv11及びPu12、並びに、W相(W1相)の主巻線及び移相巻線を構成する一次巻線Pw11及びPv12を有する。
【0033】
同様に、変圧器4の一次巻線群4Pは、一次側中性点Np2に対して星形結線される、U相(U2相)の主巻線及び移相巻線を構成する一次巻線Pu21及びPv22、V相(V2相)の主巻線及び移相巻線を構成する一次巻線Pv21及びPw22、並びに、W相(W2相)の主巻線及び移相巻線を構成する一次巻線Pw21及びPu22を有する。
【0034】
尚、各一次巻線の符号については、「P(Primary)」に続いて、U相、V相、及び、W相のうちのいずれの相電流が流れるかをアルファベット(小文字)で表記し、更に、変圧器3(「1」)及び変圧器4(「2」)のいずれの巻線であるかを示す数字と、主巻線(「1」)及び移相巻線(「2」)のいずれであるかを示す数字とを続けて、計4桁で表記している。
【0035】
変圧器3及び4の二次側において、二次巻線群3S及び4Sは、共通の二次側中性点Nsに対して星形結線される。二次巻線群3Sは、uvw相の二次巻線Su1,Sv1,Sw1、及び、xyz相の二次巻線Sx1,Sy1,Sz1を有する。同様に、二次巻線群4Sは、uvw相の二次巻線Su2,Sv2,Sw2、及び、xyz相の二次巻線Sx2,Sy2,Sz2を有する。
【0036】
変圧器3では、移相角をマイナスとする様に、電力線PLU(三相交流電源のU相)と、一次側中性点Np1との間に、一次巻線Pu11(U1相主巻線)及び一次巻線Pu12(V1相移相巻線)が直列接続される。更に、電力線PLV(三相交流電源のV相)と一次側中性点Np1との間に、一次巻線Pv11(V1相主巻線)及び一次巻線Pv12(W1相移相巻線)が直列接続され、電力線PLW(三相交流電源のW相)と一次側中性点Np1との間に、一次巻線Pw11(W1相主巻線)及び一次巻線Pw12(U1相移相巻線)が直列接続される。更に、U1相~W1相の各々において、主巻線及び移相巻線の巻数比(N11:N12)は、移相角の大きさが15°となるよう決められる。
【0037】
変圧器3では、U1相の主巻線及び移相巻線である一次巻線Pu11及びPw12が、u1相の二次巻線Su1及びx1相の二次巻線Sx1と磁気結合される。又、V1相の主巻線及び移相巻線である一次巻線Pv11及びPu12が、v1相の二次巻線Sv1及びy1相の二次巻線Sy1と磁気結合される。更に、W1相の主巻線及び移相巻線である一次巻線Pw11及びPv12が、w1相の二次巻線Sw1及びz1相の二次巻線Sz1と磁気結合される。
【0038】
各二次巻線には、一次巻線(主巻線及び移相巻線)を流れる電流によって合成された磁束に従って、巻数比に従った振幅を有する交流電流が誘起される。この結果、変圧器3は、
図1に示した様に、移相角が-15°の位相変圧器を構成する。
【0039】
これに対して、変圧器4では、移相角をプラスとする様に、電力線PLU(三相交流電源のU相)と一次側中性点Np2の間に、一次巻線Pu21(U2相主巻線)及び一次巻線Pu22(W2相移相巻線)が直列接続される。更に、電力線PLV(三相交流電源のV相)と一次側中性点Np2との間に、一次巻線Pv21(V2相主巻線)及び一次巻線Pv22(U2相移相巻線)が直列接続され、電力線PLW(三相交流電源のW相)と一次側中性点Np2との間に、一次巻線Pw21(W2相主巻線)及び一次巻線Pw22(V2相移相巻線)が直列接続される。
【0040】
変圧器4では、U2相の主巻線及び移相巻線である一次巻線Pu21及びPv22が、u2相の二次巻線Su2及びx2相の二次巻線Sx2と磁気結合される。又、V2相の主巻線及び移相巻線である一次巻線Pv21及びPw22が、v2相の二次巻線Sv2及びy2相の二次巻線Sy2と磁気結合される。更に、W2相の主巻線及び移相巻線である一次巻線Pw21及びPu22が、w2相の二次巻線Sw2及びz2相の二次巻線Sz2と磁気結合される。
【0041】
変圧器3と同様に、各二次巻線には、一次巻線(主巻線及び移相巻線)を流れる電流によって合成された磁束に従って、巻数比に従った振幅を有する交流電流が誘起される。この結果、変圧器4は、
図1に示した様に、移相角が+15°の位相変圧器を構成する。
【0042】
変圧器3の二次側に配置される第1整流素子群31は、整流素子Tu1,Tv1,Tw1,Tx1,Ty1,Tz1を有する。整流素子Tu1,Tv1,Tw1は、二次巻線Su1,Sv1,Sw1に伝達された交流電圧を同極性で受ける交流側(アノード)と、直流導体PL1と接続される直流側(カソード)とを有する。反対に、整流素子Tx1,Ty1,Tz1は、二次巻線Sx1,Sy1,Sz1に伝達された交流電圧を逆極性で受ける交流側(アノード)と、直流導体PL1と接続される直流側(カソード)とを有する。
【0043】
変圧器4の二次側に配置される第2整流素子群32は、整流素子Tu2,Tv2,Tw2,Tx2,Ty2,Tz2を有する。整流素子Tu2,Tv2,Tw2は、二次巻線Su2,Sv2,Sw2に伝達された交流電圧を同極性で受ける交流側(アノード)と、直流導体PL2と接続される直流側(カソード)とを有する。反対に、整流素子Tx2,Ty2,Tz2は、二次巻線Sx2,Sy2,Sz2に伝達された交流電圧を逆極性で受ける交流側(アノード)と、直流導体PL2と接続される直流側(カソード)とを有する。この様に、第1整流素子群31及び第2整流素子群32において、uvw相の各整流素子の交流側と、xyz相の各整流素子の交流側とは、逆の極性で各二次巻線に対して接続される。
【0044】
図3の回路では、負荷40を電流源41と表現して、後述するシミュレーション解析を実行する。直流電源装置10では、整流回路21(第1整流素子群31)からの直流導体PL1及び直流リアクトルL1を通過する出力電流I1と、整流回路22(第2整流素子群32)からの直流導体PL2及び直流リアクトルL2を通過する出力電流I2との和が、負荷40への供給電流となる。出力電流I1及びI2の瞬時値の差分は、直流導体PL1及びPL2の循環電流となる。
【0045】
図4には、
図2に示された直流電源装置11(本実施の形態)の構成例を説明する回路図が示される。
【0046】
図4を参照して、変圧器3及び4の一次側では、一次巻線群3P及び4Pの主巻線及び移相巻線は、U相、V相、及び、W相のそれぞれで共通の一次側中性点Npに対して星形結線される。具体的には、電力線PLU(三相交流電源のU相)と、一次側中性点Npとの間に、変圧器3,4の一次巻線Pu11、Pu12、Pu21、及び、Pu22が直列接続される。同様に、電力線PLV(三相交流電源のV相)と、一次側中性点Npとの間に、変圧器3,4の一次巻線Pv11、Pv22、Pv21、及び、Pv22が直列接続される。更に、電力線PLW(三相交流電源のW相)と、一次側中性点Npとの間に、変圧器3,4の一次巻線Pw11、Pw12、Pw21、及び、Pw22が直列接続される。
【0047】
これにより、
図4の構成例では、変圧器3,4の一次側では、移相角が-15°の移相変圧器を構成するための一次巻線群3Pと、移相角+15°の移相変圧器を構成するための一次巻線群4Pとが、UVW相の各々において直列接続される。即ち、
図3では並列接続されていた主巻線及び移相巻線の組同士が、三相交流電源及び一次側中性点Npの間に直列接続される態様で、単一のUVW相で星形結線された構成となる。
【0048】
変圧器3及び4の二次巻線群3S,4Sは、
図2と同様に、共通の二次側中性点Nsに対して星形結線される。更に、第1整流素子群31及び第2整流素子群32を構成する各整流素子の交流側(アノード)と、二次巻線群3S,4Sを構成する各相の二次巻線との接続関係は、
図3と同様である。
【0049】
一方で、直流導体PL1及びPL2の各々は、第1整流素子群31及び第2整流素子群32の一部ずつの直流側と接続される。具体的には、u相(u1相,u2相)の整流素子Tu1,Tu2、v相(v1相,v2相)の整流素子Tv1,Tv2、及び、w相(w1相,w2相)の整流素子Tw1,Tw2の直流側(カソード)は、相互接続されて、直流導体PL1と共通に接続される。
【0050】
これに対して、x相(x1相,x2相)の整流素子Tx1,Tx2、y相(y1相,y2相)の整流素子Ty1,Ty2、及び、z相(z1相,z2相)の整流素子Tz1,Tz2の直流側(カソード)は、相互接続されて、直流導体PL2と共通に接続される。
【0051】
この様に、本実施の形態に係る11では、上述した通り、変圧器3及び4の一次側での一次巻線群3P,4Pの結線と、二次側での第1整流素子群31及び第2整流素子群32と直流導体PL1,PL2との間の結線とが、比較例に係る直流電源装置10と異なっている。
【0052】
図2及び
図4に示された変圧器3の一次巻線群3Pについて、一次巻線Pu11は「第1U相主巻線」、一次巻線Pv11は「第1V相主巻線」、一次巻線Pw11は、「第1W相主巻線」にそれぞれ対応する。又、一次巻線Pw12は「第1U相移相巻線」、一次巻線Pu12は「第1V相移相巻線」、一次巻線Pv12は「第1W相移相巻線」にそれぞれ対応する。そして、一次巻線Pu11,Pv11,Pw11及び一次巻線Pu12,Pv12,Pv12の集合体は「第1のUVW相一次巻線」に対応する。
【0053】
同様に、変圧器4の一次巻線群4Pについて、一次巻線Pu21は「第2U相主巻線」、一次巻線Pv21は「第2V相主巻線」、一次巻線Pw21は「第2W相主巻線」にそれぞれ対応する。又、一次巻線Pv22は「第2U相移相巻線」、一次巻線Pw22は「第2V相移相巻線」、一次巻線Pu22は「第2W相移相巻線」にそれぞれ対応する。そして、一次巻線Pu21,Pv21,Pw21及び一次巻線Pu22,Pv22,Pw22の集合体は「第2のUVW相一次巻線」に対応する。
【0054】
同様に、
図2及び
図4に示された変圧器3の二次巻線群3Sについて、二次巻線Su1は「第1u相二次巻線」、二次巻線Sv1は「第1v相二次巻線」、二次巻線Sw1は「第1w相二次巻線」にそれぞれ対応する。二次巻線Su1,Sv1,Sw1の集合体は「第1のuvw相二次巻線」に対応する。又、二次巻線Sx1は「第1x相二次巻線」、二次巻線Sy1は「第1y相二次巻線」、二次巻線Sz1は「第1z相二次巻線」にそれぞれ対応する。二次巻線Sx1,Sy1,Sz1の集合体は「第1のxyz相二次巻線」に対応する。
【0055】
更に、変圧器4の二次巻線群4Sについて、二次巻線Su2は「第2u相二次巻線」、二次巻線Sv2は「第2v相二次巻線」、二次巻線Sw2は「第2w相二次巻線」にそれぞれ対応し、二次巻線Su2,Sv2,Sw2の集合体は「第2のuvw相二次巻線」に対応する。又、二次巻線Sx2は「第2x相二次巻線」、二次巻線Sy2は「第2y相二次巻線」、二次巻線Sz2は「第2z相二次巻線」にそれぞれ対応し、二次巻線Sx2,Sy2,Sz2の集合体は「第2のxyz相二次巻線」に対応する。
【0056】
又、変圧器3の二次側に配置された、第1整流素子群31を構成する整流素子Tu1,Tv1,Tw1,Tx1,Ty1,Tz1の各々は「第1整流素子」に対応する。同様に、変圧器4の二次側に配置された第2整流素子群32を構成する整流素子Tu2,Tv2,Tw2,Tx2,Ty2,Tz2の各々は「第2整流素子」に対応する。
【0057】
(理論計算)
次に、本実施の形態に係る直流電源装置11の動作の理論計算について説明する。
【0058】
ここでは、一体的に接続された変圧器3,4の一次側のU相、V相、及び、W相の電流を、それぞれ一次側相電流IU,IV,IWとする。
【0059】
更に、変圧器3,4二次側では、第1整流素子群31での、u1相及びx1相の電流を二次側相電流Iux1、v1相及びy1相の電流を二次側相電流Ivy1、w1相及びz1相の電流を二次側相電流Iwz1とする。同様に、第2整流素子群32での、u2相及びx2相の電流を二次側相電流Iux2、v2相及びy2相の電流を二次側相電流Ivy2、w2相及びz2相の電流を二次側相電流Iwz2とする。
【0060】
変圧器3,4の一次側の各相の主巻線の巻数N11及び移相巻線の巻数N12に対して、二次巻線の巻数をn2とすると、上述の各一次側相電流及び各二次側相電流の関係は、下記の式(1)~(6)によって示される。
【0061】
N11・IU-N12・IW=n2・Iux1 …(1)
N11・IV-N12・IU=n2・Ivy1 …(2)
N11・IW-N12・IV=n2・Iwz1 …(3)
N11・IU-N12・IV=n2・Iux2 …(4)
N11・IV-N12・IW=n2・Ivy2 …(5)
N11・IW-N12・IU=n2・Iwz2 …(6)
尚、上述の式(1)~(6)の二次側相電流Iux1,Ivy1,Iwz1,Iux2,Ivy2,Iwz2の各々については、正値がu相(u1相,u2相)、v相(v1相,v2相)又は、w相(w1相,w2相)の相電流を示し、負値が、x相(x1,x2相)、y相(y1相,y2相)又は、z相(z1相,z2相)の相電流を示すものとしている。
【0062】
式(1)~(6)より、一次側相電流IU,IV,IWは、定数n*=(N12/N11)を用いて、下記の式(7)~(9)で示される。
【0063】
IU=(Iux1+Iux2-n*・(Ivy1+Iwx2))/2 …(7)
IV=(Ivy1+Ivy2-n*・(Iwz1+Iux2))/2 …(8)
IW=(Iwz1+Iwz2-n*・(Iux1+Ivy2))/2 …(9)
但し、式(7)~(9)の導出においては、解析を簡単化するために、n2=(3/2)・N11、かつ、N11/sin45°=N12/sin15°とすることにより、下記の式(10)が成立するものとしている。
【0064】
n2・N11/(N11
2+N11・N12+N12
2)=1 …(10)
図5には、本実施の形態に係る直流電源装置11の変圧器3,4の二次側に配置された各整流素子の出力電流、即ち、二次側の相電流の波形図が示される。
【0065】
図5に示される様に、二次側の各相電流は、変圧器3,4の一次側を直列接続したことから、通電期間150°の階段状の矩形波となる。
【0066】
尚、
図5では、負荷40(電流源41)には2[pu]の電流が流れるものとして、直流導体PL1及びPL2の各々に、1[pu]の電流が流れるものとしている。
【0067】
これに対して、比較例に係る直流電源装置10では、二次側の各相電流は、公知の12パルス整流回路と同様に、通電期間120°の矩形波となることが理解される。この様な、二次側の相電流波形の変化から、循環電流について下記の効果を得ることができる。
【0068】
まず、
図5の相電流(二次側)波形を、式(7)~(9)に代入すると、一次側の各相電流は、
図6に示す通りとなる。
【0069】
図6に示される様に、直列接続された変圧器3,4の一次側相電流IU,IV,IWは、120°ずつ位相がずれた、階段状の交流電流となっている。
【0070】
更に、
図6の一次側相電流IU,IV,IWを、式(1)~(6)に代入すると、変圧器3,4の二次側における各相電流、即ち、整流素子Tu1,Tv1,Tw1,Tx1,Ty1,Tz1、及び、整流素子Tu2,Tv2,Tw2,Tx2,Ty2,Tz2の出力電流(直流側)Iu1,Iv1,Iw1,Ix1,Iy1,Iz1,Iu2,Iv2,Iw2,Ix2,Iy2,Iz2は、
図7に示す通りとなる。
図7に示される波形から、変圧器3,4の二次側では、30°刻みの各位相区間において、5相同時に通電されることが理解される。
【0071】
直流導体PL1を流れる出力電流Iuvw及び直流導体PL2を流れる出力電流Ixyzは、変圧器3,4の二次側の相電流(u1相~w1相,x1相~z1相,u2相~w2相,x2相~z2相)を用いて、下記の式(11),(12)で示される。
【0072】
Iuvw=Iu1+Iv1+Iw1+Iu2+Iv2+Iw2 …(11)
Ixyz=Ix1+Iy1+Iz1+Ix2+Iy2+Iz2 …(12)
式(11),(12)に
図7に示される各相電流(二次側)を代入すると、30°刻みの各位相区間において、出力電流Iuvw及びIxyzの差を0とすることができる。従って、理論計算からは、本実施の形態に係る直流電源装置11では、循環電流を大幅に抑制できることが明らかとなった。
【0073】
尚、二次側の相電流波形における3段階の電流値は、これらの電流値を変数として式(1)~(9)に代入し、更に、式(11)及び(12)において、Iuvw=Ixyz=1.0を解くことによって、求めることができる。具体的には、3段階の電流値は、それぞれ、(4-2√3)[pu]、(2√3-3)[pu]、及び、(2-√3)[pu]と求められる。
【0074】
(シミュレーション解析結果)
次に、
図3及び
図4の回路を対象としたシミュレーション解析結果について説明する。
【0075】
シミュレーション解析では、電流源41を負荷40として、定電流制御を模擬する。又、
図3及び
図4の各々では共通の直流リアクトル(インダクタンス成分)L1,L2を接続した下での電流挙動をシミュレーションした。
【0076】
シミュレーション条件として、三相交流電源の周波数f=60[Hz]、変圧器3,4の一次側電圧Ep=77[kV]、二次側電圧Es=256[V]とし、変圧器3,4の回路定数として、パーセントインピーダンスには、%IX=9.60%(リアクタンス成分)及び%IR=0.90%(抵抗成分)を用いた。更に、直流リアクトルL1,L2の各々のインダクタンスを1[μH]、出力電流I1,I2,Iuvw,Ixyzの各々を30[kA](即ち、電流源41は60[kA])とした。又、各整流素子(サイリスタ)の制御角α=30°とした。
【0077】
図8には、
図3に示された回路、即ち、比較例の直流電源装置10での二次側各相の整流素子の出力電流のシミュレーション結果を示す波形図が示される。
【0078】
図8に示される様に、二次側の各相電流は、周波数60[Hz]の1周期に相当する16.64[ms]を360°とすると、通電期間が5.55[ms]、即ち、導通角120°相当となる、公知の12パルス整流回路での矩形波状の電流波形をベースとして、直流リアクトルL1,L2による振動成分(リップル)が重畳された波形となっている。
【0079】
更に、
図8のシミュレーション電流波形において、平均値は5.00[kA]、実効値は8.68[kA]であった。
【0080】
これに対して、
図9には、
図4に示された回路、即ち、本実施の形態に係る直流電源装置11での二次側各相の整流素子の出力電流のシミュレーション結果を示す波形図が示される。
【0081】
図9に示される様に、二次側の各相電流は、通電期間が6.94[ms]、即ち、導通角150°相当であり、
図5で仮定した各相の出力電流波形と、シミュレーション結果とが良く一致していることが理解される。
図9のシミュレーション電流波形において、平均値は5.00[kA]、実効値は8.00[kA]であった。
【0082】
図8及び
図9の間で出力電流の平均値が同等であるので、本実施の形態に係る直流電源装置11(
図4)は、比較例に係る直流電源装置10(
図3)、即ち、通常の12パルス整流回路と同等の電力を負荷に供給することが可能である。更に、出力電流の実効値の比較から、本実施の形態では、比較例よりも電力損失の低減が期待できる。
【0083】
図10には、シミュレーション結果として求められた、
図8相当の各相電流の第1整流素子群31及び第2整流素子群32のそれぞれでの和で示される、直流導体PL1及びPL2に生じる出力電流I1及びI2のシミュレーション結果が示される。
【0084】
具体的には、
図10においては、
図8及び
図9と同様に、周波数60[Hz]の1周期に相当する16.64[ms]の期間での、出力電流I1及びI2の波形が示される。循環電流Icrの瞬時値は、出力電流I1及びI2の瞬時値の差で示される。
図10のシミュレーション結果では、循環電流Icrは、振幅14.11[kA]の交流電流となった。
【0085】
これに対して、
図11には、
図9相当の各相電流の式(11),(12)に従う和でそれぞれ示される、直流導体PL1及びPL2に生じる出力電流Iuvw及びIxyzのシミュレーション結果が示される。
【0086】
具体的には、
図11(a)には、
図8~
図10と同様に、周波数60[Hz]の1周期に相当する16.64[ms]の期間での、出力電流Iuvw及びIxyzの波形が示される。循環電流Icrの瞬時値は、出力電流Iuvw及びIxyzの瞬時値の差で示される。
図11(a)から、本実施の形態に係る直流電源装置11のシミュレーション結果では、出力電流Iuvw及びIxyzの差が小さく、循環電流が大幅に抑制されることが理解される。
【0087】
図11(b)には、
図11(a)の点線枠内を拡大した波形図が示される。
図11(a),(b)のシミュレーション結果では、循環電流Icrは、振幅111[A]の交流電流となった。
【0088】
尚、上述した理論計算では、変圧器3,4を理想変圧器とした一方で、
図8~11で説明したシミュレーション解析では、変圧器3,4にインピーダンスが存在するため、
図11(a),(b)において、循環電流Icrは完全に0になっていない。しかしながら、
図10及び
図11(b)の比較から、循環電流Icrが大幅に抑制(ここでは、振幅比で99.2%減少)されることが理解される。
【0089】
この様に本実施の形態に係る電源装置では、変圧器3,4の一次側について、変圧器3,4の間で移相角に30°の差が設けられるとともに、三相直流電源及び共通の一次側中性点の間に一次巻線(主巻線及び移相巻線)を直列接続した星形結線とすることで、二次側の各整流素子からの出力電流を通電期間が150°の階段状の波形とできる。更に、二次側の整流素子の直流側を、変圧器3,4毎ではなく、変圧器3,4を一体にしたUVW相及びXYZ相毎で結線とすることで、循環電流を大幅に抑制することができる。
【0090】
尚、今回の実施の形態では、変圧器3及び4について、移相角が-15°の移相変圧器と、移相角が+15°の移相変圧器との組み合わせによって構成する例を説明したが、移相角の設計はこの例に限定されるものではない。例えば、変圧器3及び4の両方を移相変圧器で構成した下で、両者の移相角の組み合わせを、例示した-15°及び+15°の組み合わせ以外として、両者の移相角の差を30°とすることも可能である。
【0091】
或いは、変圧器3及び4の一方を、UVW相一次巻線が、移相巻線を有することなく主巻線のみで構成される、即ち、移相角が0°の変圧器として構成することも可能である。この場合には、当該一方の変圧器(移相角0°)の二次側については、公知の二重星形回路として結線することで、uvw相及びxyz相を設けることができる。二次側を二重星形結線とすることで、
図12に示される様に、120°ずつ位相がずれた一次側のUVW相の電流IU,IV,IWに対して、二次側のuvw相及びxyz相の各整流素子の出力電流Iu,Ix,Iv,Iv,Iy,Iw,Izを得ることができる。
【0092】
この様に一方の変圧器の移相角を0°としたケースでは、変圧器3及び4の他方については、移相角が+30°又は-30°の移相変圧器が構成される様に、UVW相の一次巻線の主巻線及び移相巻線の巻数比が調整される。更に、変圧器3及び4の一次側では、一方の変圧器(移相角0°)の主巻線と、他方の変圧器(移相角30°又は-30°)の主巻線及び移相巻線とが、U相、V相、及び、W相のそれぞれで直列に星形結線される。
【0093】
但し、本実施の形態で例示した、移相角+15°及び-15°の移相変圧器によって変圧器3,4を構成することが、変圧器の構造及び巻線の巻回工程が簡単化される点から、製造上は好適である。
【0094】
又、第1整流素子群31及び第2整流素子群を構成する各整流素子については、各二次巻線の交流電圧を直流電圧に整流する機能を有するものであれば、任意の半導体素子を適用することができる。例えば、サイリスタに代えて、ダイオードを用いて、第1整流素子群31及び第2整流素子群32を構成する各整流素子を構成することも可能である。但し、本実施の形態での例示の様にサイリスタを用いると、導通角の位相(制御角)を制御することによって、出力制御が可能となる。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
3,4 変圧器、3P,4P 一次巻線群、3S,4S 二次巻線群、10,11 直流電源装置、21,22 整流回路、31 第1整流素子群、32 第2整流素子群、40 負荷、41 電流源、I1,I2,Iuvw,Ixyz 出力電流、Icr 循環電流、Iu,Iv,Iw 一次側相電流、Iux1,Iux2,Ivy1,Ivy2,Iwx1,Iwx2,Iwz1,Iwz2 二次側相電流、L1,L2 直流リアクトル、Np,Np1,Np2 一次側中性点、Ns 二次側中性点、PL1,PL2 直流導体、PLU,PLV,PLW 電力線(三相交流電源)、Pu11,Pu12,Pu21,Pu22,Pv11,Pv12,Pv21,Pv22,Pw11,Pw12,Pw21,Pw22 一次巻線、Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2,Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2 二次巻線、Tu1,Tu2,Tv1,Tv2,Tw1,Tw2,Tx1,Tx2,Ty1,Ty2,Tz1,Tz2 整流素子。