(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026991
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】異常検知装置、及び機械加工システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20240221BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240221BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240221BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20240221BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20240221BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240221BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20240221BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G05B19/18 X
B23Q17/00 A
B23Q11/10 A
B23Q11/08 Z
B24B5/04
B24B49/10
B24B55/02 A
B24B55/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129644
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖野 祐介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 牧生
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
3C034
3C043
3C047
3C269
【Fターム(参考)】
3C011DD01
3C011EE01
3C029EE01
3C034AA01
3C034BB92
3C034CA24
3C034CA26
3C034CA30
3C034CB11
3C034DD18
3C043AA03
3C043CC03
3C043DD06
3C047FF01
3C047FF11
3C047GG01
3C047HH11
3C269AB07
3C269BB03
3C269BB12
3C269KK11
3C269MN07
3C269MN40
3C269MN44
3C269MN50
(57)【要約】
【課題】異常検知精度の低下を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】異常検知装置11は、ワークWに対する研削加工処理を行う研削加工装置2用の装置である。異常検知装置11は、研削加工装置2の音を集音する集音マイク10と、集音マイク10の出力が与えられる処理装置4と、を備える。処理装置4は、研削加工処理の開始から終了までの研削加工処理期間P2及び研削加工処理期間P2以外の非加工処理期間において集音された前記出力に基づいて音データを取得する取得処理14aと、音データに基づいて異常の有無を判定する異常判定処理14cと、を実行する処理部14を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対する機械加工処理を行う機械加工装置用の異常検知装置であって、
前記機械加工装置の音を集音する集音部と、
前記集音部の出力が与えられる処理装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記機械加工処理の開始から終了までの機械加工処理期間及び前記機械加工処理期間以外の非加工処理期間において集音された前記出力に基づいて音データを取得する取得処理と、
前記音データに基づいて異常の有無を判定する異常判定処理と、を実行する処理部を備える
異常検知装置。
【請求項2】
前記非加工処理期間は、前記機械加工処理期間の前の準備作業期間を含む
請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記準備作業期間は、前記機械加工装置がオン状態に切り替えられたときから前記機械加工処理の開始までの期間を含む
請求項2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記音データを所定のサンプリング間隔で複数のデータブロックに分割するサンプリング処理をさらに実行し、
前記異常判定処理では、前記複数のデータブロック毎に異常の有無が判定される
請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記サンプリング間隔は、前記ワーク1つに対する前記機械加工処理に要する時間以下である
請求項4に記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記機械加工装置は、複数の前記ワークに対して前記機械加工処理を連続的に行うように構成され、
前記サンプリング間隔は、複数の前記機械加工処理のうち連続する一対の機械加工処理の間に設けられるインターバル期間以下である
請求項4に記載の異常検知装置。
【請求項7】
前記機械加工装置は、前記ワークに対して機械加工処理を行う本体部と、機械加工処理時に前記ワークに対して冷却液を供給する供給部と、前記ワーク、前記本体部、及び前記供給部を内部に収容するカバーと、を備え、
前記集音部は、前記カバーの内部に配置される
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項8】
前記機械加工装置は、研削加工装置である
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項9】
ワークに対する機械加工処理を行う機械加工装置と、
請求項1に記載の異常検知装置と、を備える機械加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知装置、及び機械加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工装置用の異常検知装置には、機械加工による作業期間のうち、工具がワークに接触し実際に機械加工が行われる期間(実加工期間)におけるモータの状態や加工音等の状態データに基づいて異常の有無を検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の異常検知装置では、実加工期間の状態データを取得するために、作業期間に含まれる実加工期間を特定するための処理を行う必要がある。
作業時間に含まれる実加工期間を特定するために、作業時の音を録音し、録音した音データに基づいて実加工期間を特定することが考えられる。
【0005】
しかし、音データによって実加工期間を特定する場合、ワークや工具を回転させるモータの動作音や冷却液の供給音等の影響によって必要な音の取得が困難な場合がある。
このため、音データによって作業時間に含まれる実加工期間を特定する際の精度はそれほど高くなく、結果として異常を検知する際の精度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)実施形態である異常検知装置は、ワークに対する機械加工処理を行う機械加工装置用の異常検知装置である。異常検知装置は、前記機械加工装置の音を集音する集音部と、前記集音部の出力が与えられる処理装置と、を備える。前記処理装置は、前記機械加工処理の開始から終了までの機械加工処理期間及び前記機械加工処理期間以外の非加工処理期間において集音された前記出力に基づいて音データを取得する取得処理と、前記音データに基づいて異常の有無を判定する異常判定処理と、を実行する処理部を備える。
【0007】
(8)また、他の観点から見た本実施形態は、機械加工システムである。この機械加工システムは、ワークに対する機械加工処理を行う機械加工装置と、上記(1)に記載の異常検知装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、異常検知精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る機械加工システムの外観図である。
【
図2】
図2は、ベッド上に配置される機器を示す図である。
【
図3】
図3は、研削加工装置を用いてワークを研削加工する際の作業工程の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、処理部が行う処理の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、取得処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、複数のワークに対して研削加工を行ったときに取得された音データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
(1)実施形態である異常検知装置は、ワークに対する機械加工処理を行う機械加工装置用の異常検知装置である。異常検知装置は、前記機械加工装置の音を集音する集音部と、前記集音部の出力が与えられる処理装置と、を備える。前記処理装置は、前記機械加工処理の開始から終了までの機械加工処理期間及び前記機械加工処理期間以外の非加工処理期間において集音された前記出力に基づいて音データを取得する取得処理と、前記音データに基づいて異常の有無を判定する異常判定処理と、を実行する処理部を備える。
【0011】
上記異常検知装置によれば、例えば、非加工処理期間及び機械加工処理期間の音データを学習データとして用い、半教師あり学習又は教師なし学習によって判定モデルを構築し、この判定モデルを用いて異常の有無を判定すれば、非加工処理期間及び機械加工処理期間を含む作業期間における異常の有無を検知することができる。
よって、非加工処理期間と機械加工処理期間とを区別することなく、非加工処理期間から機械加工処理期間に亘って連続的に集音された集音部の出力に基づいて音データを取得し、異常の有無を判定すれば、機械加工処理における異常の有無を判定することができる。
この場合、取得された音データの中から必要なデータを取捨選択する必要がない。つまり、機械加工装置の工具がワークに接触している実加工期間と、工具がワークに接触していない非加工期間とを区別することなく、機械加工処理における異常の有無を判定することができる。
このように、精度よく特定するのが困難な実加工期間の特定を行うことなく異常の有無を判定するので、異常を検知する際の精度が低下するのを抑制することができる。
【0012】
(2)また、非加工処理期間は、前記機械加工処理期間の前の準備作業期間を含むことが好ましい。
この場合、準備作業期間から機械加工処理期間に亘って連続的に集音された集音部の出力に基づいて音データを取得することができる。
【0013】
(3)上記異常検知装置において、前記準備作業期間は、前記機械加工装置がオン状態に切り替えられたときから前記機械加工処理の開始までの期間を含むことが好ましい。
この場合、準備作業期間における音のうち必要な音に関する音データを取得することができる。
【0014】
(4)上記異常検知装置において、前記処理部が、前記音データを所定のサンプリング間隔で複数のデータブロックに分割するサンプリング処理をさらに実行する場合、前記異常判定処理では、前記複数のデータブロック毎に異常の有無が判定されることが好ましい。
この場合、時間軸に沿って連続的に異常の有無の判定を行うことができる。よって、機械加工処理の時間を特定することで、機械加工処理における異常の有無を判定することができる。
【0015】
(5)前記サンプリング間隔は、前記ワーク1つに対する前記機械加工処理に要する時間以下であることが好ましい。
この場合、音データの異常の有無の判定の単位期間が機械加工処理に要する時間以下となるので、機械加工処理における異常有無の判定精度を高めることができる。
【0016】
(6)上記異常検知装置において、前記機械加工装置が、複数の前記ワークに対して前記機械加工処理を連続的に行うように構成されている場合、
前記サンプリング間隔は、複数の前記機械加工処理のうち連続する一対の機械加工処理の間に設けられるインターバル期間以下であってもよい。
この場合、異なる2つのワークに対する機械加工処理の音データが1つのデータブロックに含まれてしまうのを防止できる。
これにより、異なる2つのワークに対する機械加工処理について個別に異常判定処理を行うことができる。
【0017】
(7)また、前記機械加工装置が、前記ワークに対して機械加工処理を行う本体部と、機械加工処理時に前記ワークに対して冷却液を供給する供給部と、前記ワーク、前記本体部、及び前記供給部を内部に収容するカバーと、を備える場合、
前記集音部は、前記カバーの内部に配置されることが好ましい。
この場合、音データは、カバーの内部に配置された集音部の出力に基づくデータである。これにより、機械加工処理に関する音をより詳細に集音することができ、異常検知の精度の低下を効果的に抑制することができる。
【0018】
(8)研削加工では、工具がワークに接触したときの音量が切削等よりも小さいため、実加工期間と非加工期間との区別がより困難である。このため、前記機械加工装置は、研削加工装置であることが好ましい。
この場合、異常検知精度の低下をより効果的に抑制することができる。
【0019】
(9)また、他の観点から見た本実施形態は、機械加工システムである。この機械加工システムは、ワークに対する機械加工処理を行う機械加工装置と、上記(1)に記載の異常検知装置と、を備える。
【0020】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔全体構成について〕
図1は、実施形態に係る機械加工システムの外観図である。
実施形態に係る機械加工システム1は、研削加工装置2と、ワーク搬送装置3と、処理装置4とを含む。
機械加工装置である研削加工装置2は、ベッド2aと、カバー2bとを含む。ベッド2aの上面には、後に説明する主軸台や砥石等が配置される。カバー2bは、ベッド2aの上面に配置される主軸台や砥石等を内部に収容する。カバー2bは、加工時の冷却液(クーラント)が外部へ飛散するのを防止する。
ワーク搬送装置3は、カバー2bの上方に配置されている。ワーク搬送装置3は、研削加工装置2のカバー2b内のワークWを把持し搬送するアームを有する。ワーク搬送装置3は、前記アームによって、加工後のワークWを研削加工装置2から取り出し、加工前の新たなワークWを研削加工装置2へ供給する機能を有する。
カバー2bは、開閉可能なシャッタを上面に有する。カバー2bのシャッタを開放することで、ワーク搬送装置3はベッド2a上のワークWにアクセス可能となる。
処理装置4は、例えば、コンピュータである。処理装置4は、研削加工時に生じる異常の有無を判定する処理を実行する機能を有する。
【0021】
図2は、ベッド2a上に配置される機器を示す図である。
研削加工装置2は、テーブル5と、主軸台6と、砥石7と、心押台8とをさらに含む。
主軸台6は、主軸6a及びチャック6bを回転可能に支持する。チャック6bは、ワークWの一端を把持する。チャック6bは、アクチュエータ等によって開閉制御可能である。心押台8はワークWの他端を保持する。主軸6a、チャック6b、及びチャック6bに把持されたワークWは主軸台6が有するモータによって回転する。砥石7は、図示しない砥石台に支持されている。砥石7は、砥石台が有するモータによって回転可能である。また、砥石7は、アクチュエータ等によって移動可能である。
主軸台6及び心押台8は、テーブル5上に設けられている。テーブル5は、アクチュエータ等によって長手方向(紙面左右方向)に移動可能である。テーブル5は、主軸台6、心押台8、及びこれらに保持されるワークWを砥石7に対して相対移動させる。これにより、ワークWの軸方向における必要な箇所を砥石7によって研磨することができる。
なお、テーブル5、主軸台6、砥石7、及び心押台8は、ワークWに対して研削加工処理を行う本体部15を構成する。
また、研削加工装置2は、ワークWと砥石7とが接触する箇所に冷却液を供給するためのノズル9を有する。
【0022】
心押台8には、集音マイク10が固定されている。集音マイク10(集音部)は、超音波マイク又は汎用マイクである。集音マイク10は、固定台11によって、心押台8に固定されている。集音マイク10は、カバー2b内に配置される。よって、集音マイク10に冷却液が降りかかるのを防止するために、集音マイク10には防水カバー12が装着されている。
集音マイク10は、カバー2b内に配置され、カバー2b内における音を集音する。
集音マイク10は、処理装置4に接続されている。集音マイク10の出力は、処理装置4へ与えられる。
【0023】
研削加工装置2は、さらに、各部を制御する制御部(図示せず)有する。制御部は、主軸6aを回転させるモータや、砥石7を回転させるモータを制御する。また、制御部は、チャック6bの開閉や、テーブル5及び砥石7の移動、カバー2bのシャッタの開閉等のためのアクチュエータを制御する。さらに、制御部は、冷却液の供給を制御する。この制御部は、予め設定された手順に従って各部を動作させ、ワーク搬送装置3から供給されるワークWの研削加工を行う機能を有する。
【0024】
図3は、研削加工装置2を用いてワークWを研削加工する際の作業工程の一例を示す図である。
ワークWに対する研削加工を行う場合、まず、研削加工装置2の電源がオフ状態からオン状態に切り替えられる(
図3中、ステップS1)。
その後、砥石7の準備や、ワークWに応じた治具の準備や、試し研削加工等を含む研削加工に必要な準備作業が行われる(
図3中、ステップS2)。
【0025】
なお、研削加工装置2の電源がオフ状態とは、研削加工装置2の電源スイッチ等がオフであり、研削加工装置2の各部のうちの一部又は全部に電力が供給されていないことにより加工動作が即座に行えない状態をいう。また、研削加工装置2の電源がオン状態とは、研削加工装置2の電源スイッチ等がオンであり、加工動作が即座に実行可能な状態をいう。
【0026】
次いで、研削加工装置2への加工前のワークWの搬入が行われる(
図3中、ステップS3)。
ワークWの搬入では、カバー2bのシャッタが開放され、ワーク搬送装置3が加工前のワークWをカバー2b内へ搬入し、ワークWが研削加工装置2へ供給される。ワークWが供給されると、研削加工装置2は、供給されたワークWをチャック6b及び心押台8で保持し、カバー2bのシャッタを閉鎖する。これにより、研削加工装置2へのワークWの搬入が終了する。
【0027】
その後、研削加工装置2は、ワークWに対して研削加工処理(機械加工処理)を行う(
図3中、ステップS4)。
研削加工処理では、研削加工装置2が、ワークW(主軸6a)及び砥石7の回転を開始するとともに、冷却液の供給を開始する(
図3中、ステップS11)。
【0028】
次いで、研削加工装置2は、ワークW及び砥石7を移動させ、ワークWに対して研削加工を行う(
図3中、ステップS12)。ステップS12の研削加工では、ワークWの研削箇所へ砥石7を相対移動させた後、砥石7をワークWに接触させて加工を行う。その後、ワークWの他の研削箇所へ砥石7を相対移動させ、砥石7をワークWに接触させて加工を行う。このように、研削加工では、1つのワークWを研削加工する際に、砥石7がワークWに接触している実加工期間と、砥石7の移動により砥石7がワークWに接触していない非加工期間とが含まれる。
【0029】
ステップS12の切削加工の手順は予め数値制御等により設定される。設定された手順に従って切削加工を終えると、研削加工装置2は、冷却液の供給及びワークW及び砥石7の回転を停止し(
図3中、ステップS13)、研削加工処理を終える。
【0030】
以上のように、本実施形態では、ワークWの回転及び冷却液の供給の開始(
図3中、ステップS11)から、ワークWの回転及び冷却液の供給の停止(
図3中、ステップS13)までを、1つのワークWに対する研削加工処理(機械加工処理)という。
【0031】
研削加工処理を終えると、研削加工装置2に対するワークWの搬入出が行われる(
図3中、ステップS5)。
ワークWの搬入出では、カバー2bのシャッタが開放され、研削加工装置2はワークWを開放する。開放されたワークWは、ワーク搬送装置3によって把持されてカバー2bの外側へ搬出される。また、ワーク搬送装置3は加工前の新たなワークWをカバー2b内へ搬入し、ワークWが研削加工装置2へ供給される。ワークWが供給されると、研削加工装置2は、ステップS3と同様に、供給されたワークWを保持し、カバー2bのシャッタを閉鎖する。
【0032】
研削加工装置2は、新たなワークWに対して研削加工処理を行う(
図3中、ステップS6)。研削加工処理は、上述した通りである。
研削加工処理を終えると、研削加工装置2に対するワークWの搬入出が行われる(
図3中、ステップS7)。ワークWの搬入出は、上述した通りである。
機械加工システム1は、研削加工装置2による研削加工処理と、ワークWの搬入出とを繰り返すことで、複数のワークWを連続的に研削加工する。
【0033】
複数のワークWのうち、最後のワークWの研削加工処理を終えると、最後のワークWの搬出が行われる(
図3中、ステップS8)。
ワークWの搬出では、ワークWが研削加工装置2から開放され、ワーク搬送装置3は開放されたワークWを搬出する。
その後、研削加工装置2の電源がオン状態からオフ状態に切り替えられる(
図3中、ステップS9)。これにより、複数のワークWを研削加工する際の作業工程が終了する。
【0034】
図4は、処理装置4の構成例を示すブロック図である。
本実施形態において、処理装置4及び集音マイク10は、研削加工装置2用の異常検知装置13を構成する。つまり、異常検知装置13は、処理装置4と、集音マイク10とを含む。
処理装置4には、集音マイク10とともに、研削加工装置2が接続されている。処理装置4は、研削加工装置2の電源の状態(オン状態及びオフ状態)を示す情報を研削加工装置2から取得する。
図4に示すように、処理装置4は、は、プロセッサ等からなる処理部14と、メモリやハードディスクからなる記憶部16とを備える。
【0035】
記憶部16には、処理部14に実行させるためのコンピュータプログラムや、必要な情報等が記憶されている。
処理部14は、記憶部16のようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、処理部14が有する各種処理機能を実現する。
また、記憶部16には、後述する判定モデル16a、及び音データ16bが記憶されている。
【0036】
処理部14は、上述のコンピュータプログラムを実行することで、取得処理14a、サンプリング処理14b、及び異常判定処理14cを実行することができる。これら処理については、後に説明する。
【0037】
〔処理装置が実行する処理について〕
図5は、処理装置4の処理部14が行う処理の一例を示す図である。
処理部14は、集音マイク10の出力から得られる音データに基づいて異常の有無を判定する処理を実行する。
図5に示すように、処理部14は、取得処理S100、サンプリング処理S101、及び異常判定処理S102を実行する。処理部14は、これら各処理を並列的に実行する。
【0038】
取得処理S100は、集音マイク10からの出力に基づいて音データを取得する処理である。
サンプリング処理S101は、取得処理S100によって取得された音データを所定のサンプリング間隔で複数のデータブロックBに分割する処理である。
異常判定処理S102は、複数のデータブロックBに基づいて、異常の有無を判定する処理である。
【0039】
図6は、取得処理S100の一例を示すフローチャートである。
取得処理S100において、処理部14は、まず、研削加工装置2の電源がオン状態か否かを判定する(
図6中、ステップS21)。処理部14は、研削加工装置2から取得する電源の状態を示す情報を参照し、研削加工装置2の電源の状態を判定する。
【0040】
研削加工装置2の電源の状態がオン状態と判定すると、処理部14は、集音マイク10の出力に基づいて音データを取得し、取得した音データをサンプリング処理S101へ与える(
図6中、ステップS22)。
処理部14は、集音マイク10の出力に基づいて、音データとして音圧を得る。処理部14は、集音マイク10の出力を所定のサンプリングレート(例えば、192kHz)で経時的に取得する。処理部14が取得する音データは、時系列に並ぶ音圧の離散値群である。取得した音データは記憶部16に記憶される。
音データをサンプリング処理S101へ与えると、処理部14は、ステップS21へ戻る。
【0041】
一方、研削加工装置2の電源の状態がオフ状態と判定すると、処理部14は、音データの取得を停止し(
図6中、ステップS23)、ステップS21へ戻る。
処理部14は、取得処理S100を継続的に繰り返す。これにより、処理部14は、研削加工装置2の電源がオフ状態のときの出力からは音データを取得せず、研削加工装置2の電源がオン状態のときの出力に基づいて音データを取得する。
これにより、処理部14は、後述する準備作業期間及び研削加工処理期間において集音された集音マイク10の出力に基づいて音データを取得する。
【0042】
図5中、サンプリング処理S101において、処理部14は、取得処理S100からの音データが与えられると、与えられた音データを所定のサンプリング間隔で複数のデータブロックBに分割する。本実施形態において、所定のサンプリング間隔は、例えば、5秒である。各データブロックBは、サンプリング間隔内に含まれる音圧の離散値を含む。
【0043】
処理部14は、音データが与えられると、音データの供給が停止されるのを待たずに連続的にサンプリング処理S101を行う。よって、処理部14は、音データの供給を受けつつ連続的にデータブロックBを生成する。
サンプリング処理S101により生成されたデータブロックBは、異常判定処理S102へ与えられる。
【0044】
図7は、異常判定処理S102の一例を示すフローチャートである。
処理部14は、まず、サンプリング処理S101からデータブロックBが与えられたか否かを判定する(
図7中、ステップS31)。
処理部14は、データブロックBが与えられたと判定するまで、ステップS31を繰り返す。
【0045】
データブロックBが与えられたと判定すると、処理部14は、与えられたデータブロックBに基づいて異常判定を行う(
図7中、ステップS32)。
処理部14は、記憶部16に記憶されている判定モデル16a(
図4)を用いて、データブロックBについて異常の有無を判定する。
【0046】
判定モデル16aは、研削加工装置2の電源がオン状態のときにおける音データから得られるデータブロックBを用いて予め機械学習させることで構築されたモデルである。この場合のデータブロックBに含まれる研削加工処理における音データは、正常な研削加工によって取得された音データである。
本実施形態において、機械学習のアルゴリズムとしてLSTM(Long Short-Term Memory)や、オートエンコーダを用い、半教師あり学習又は教師なし学習によって判定モデル16aを構築した。しかし、これに限定されるわけではなく、教師あり学習によってモデルを得てもよいし、他のアルゴリズムも採用することができる。
【0047】
処理部14は、データブロックBを判定モデル16aに与え、異常の有無を判定する(
図7中、ステップS32)。
異常の有無を判定すると、処理部14は、その判定結果を外部へ出力し(
図7中、ステップS33)、再度、ステップS31へ戻る。
【0048】
〔音データについて〕
図8は、複数のワークWに対して研削加工を行ったときに取得された音データの一例を示す図である。
図8において横軸は時間、縦軸は音圧を示す。
図8中の濃色の部分が音圧を示すグラフである。上下が濃色の部分に囲まれている淡色の部分がRMS(Root Mean Square)(音量)を示すグラフである。
図8では、処理装置4の処理部14が取得処理S100によって取得した音データを示している。よって、
図8中、音データの先頭である時間Tsは、研削加工装置2の電源がオン状態に切り替えられた時間を示す。
図8中、準備作業期間P1は、研削加工処理のための準備作業が行われた期間である。加工期間P2は、複数のワークWの研削加工処理が行われた期間である。
【0049】
本実施形態において、準備作業期間P1は、時間Tsから加工期間P2の開始までの期間である。
準備作業期間P1には、準備作業により生じた音や、研削加工装置2が発する音、研削加工装置2の周囲の音に起因する音圧(音データ)が含まれる。
準備作業期間P1中、時間T1及び時間T2における音圧は、オン状態の研削加工装置2が定常的に発する音や研削加工装置2の周囲において定常的に生じている音等に起因する音圧である。時間T1及び時間T2における音圧は、他の部分と比較して低くなっている。以下の説明において時間T1の音圧や時間T2の音圧といったように他の部分と比較して低くかつ定常的に現れる音圧をベース音圧という。
【0050】
準備作業期間P1中、期間P11は、本加工前の試し研削加工が行われた期間である。よって、期間P11には、試し研削加工の音データが含まれている。期間P11においては、音圧がベース音圧よりも大きく現れているが、これは、試し研削加工による音に起因している。
また、準備作業期間P1には、期間P11以外に、音圧がベース音圧よりも瞬時的に大きくなる部分が数多く見られる。これらは、研削加工処理の準備作業の音に起因している。
【0051】
加工期間P2には、4つのワークWの研削加工処理の音データが含まれる。
図8中、時間Teは、4つのワークWの研削加工処理が終了した時間を示す。
図8において、より多数のワークWの研削加工処理を行う場合、
図8中の加工期間P2はより長期に亘る。
また、時間Teにおいて、研削加工装置2の電源をオフ状態に切り替えてもよい。
【0052】
さらに、所定数のワークWの研削加工処理を行った後、ワークWの変更やメンテナンスのために、準備作業や、準備作業以外の必要な作業を行い、その後さらに、所定数のワークWの研削加工処理を行うこともある。この場合、2つの加工期間P2の間に、準備作業期間P1や、準備作業以外の必要な作業が行われた他の作業期間が介在する。また、作業が停止される停止期間も介在することがある。
このように、研削加工装置2の電源がオン状態である間、準備作業期間P1、加工期間P2、他の作業期間、及び停止期間が必要に応じて組み合わされて繰り返される。
なお、実際の研削加工装置2では、オン状態が数ヶ月以上の間、維持される。
【0053】
図9は、
図8中の加工期間P2を拡大した図である。
図9に示すように、加工期間P2には、4つの研削加工処理期間P21が含まれる。各研削加工処理期間P21は、1つのワークWの研削加工処理の開始から終了までの期間である。
研削加工処理期間P21では、冷却液が供給されるとともにワークW及び砥石7が回転している。よって、研削加工処理期間P21には、冷却液の供給音及びワークWや、砥石7、モータ等の回転音に起因する音データが含まれている。このため、研削加工処理期間P21における音圧は、ベース音圧よりも高く現れる。
なお、研削加工処理(研削加工処理期間P21)には、上述したように、砥石7がワークWに接触している実加工期間と、砥石7がワークWに接触していない非加工期間とが含まれる。
【0054】
互いに隣り合う研削加工処理期間P21同士の間のインターバル期間P22は、ワークWの搬入出が行われる期間である。インターバル期間P22では、冷却液の供給及びワークW及び砥石7の回転が停止される。よって、インターバル期間P22における音圧は、ベース音圧と同等である。
本実施形態では、研削加工処理期間P21は45秒、インターバル期間P22は5秒に設定されている。
【0055】
図8及び
図9にて示した音データは、サンプリング処理S101によって所定のサンプリング間隔(5秒)で分割され、複数のデータブロックBとされる。
処理部14は、複数のデータブロックB毎に異常判定処理S102を実行する。
【0056】
このように、本実施形態において、音データは、研削加工処理期間P21、インターバル期間P22、準備作業期間P1、及び他の作業期間において集音された集音マイク10の出力に基づいて取得される。
本実施形態では、研削加工装置2がオン状態に切り替えられた直後の準備作業期間P1から加工期間P2(研削加工処理期間P21)に亘って連続的に集音された出力に基づいて音データを取得することができる。よって、研削加工装置2がオン状態に切り替えられた以後において異常判定処理が行われる。
なお、研削加工処理期間P21以外の期間であるインターバル期間P22、準備作業期間P1、他の作業期間、及び停止期間は、非加工処理期間である。つまり、非加工処理期間は、インターバル期間P22、準備作業期間P1、他の作業期間、及び停止期間を含む。
【0057】
〔効果について〕
本実施形態では、研削加工装置2の電源がオン状態のときの音データを学習データとして機械学習を行って判定モデルを構築し、この判定モデルを用いて異常の有無を判定するので、研削加工装置2の電源がオン状態のときにおける異常の有無を検知することができる。
研削加工装置2の電源がオン状態のときの音データには、研削加工処理期間P21の音データの他、非加工処理期間の音データも含まれる。
よって、結果的に、非加工処理期間と研削加工処理期間P21(加工期間P2)とを区別することなく、研削加工処理における異常の有無を判定することができる。
さらにこの場合、取得された音データの中から必要なデータを取捨選択する必要がない。つまり、研削加工処理期間P21に含まれる、実加工期間と、非加工期間とについても区別することなく、研削加工処理における異常の有無を判定することができる。
このように、精度よく特定するのが困難な実加工期間の特定を行うことなく異常の有無を判定するので、異常を検知する際の精度が低下するのを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、非加工処理期間と研削加工処理期間P21(加工期間P2)とを区別することなく、研削加工処理における異常の有無を判定することができるので、集音マイク10による集音及び音データの取得を、研削加工装置2がオン状態の間、継続的に行ったとしても、研削加工処理における異常の有無を判定することができる。
これにより、研削加工処理の異常を検知するための作業が容易となり、必要な作業や工数を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、複数のデータブロックB毎に異常の有無が判定されるので、時間軸に沿って連続的に異常の有無の判定を行うことができる。よって、研削加工処理期間P21(研削加工処理の時間)を特定することで、研削加工処理における異常の有無を判定することができる。
【0060】
また、本実施形態のサンプリング間隔は、複数の研削加工処理期間P21のうち連続する一対の研削加工処理期間P21の間のインターバル期間P22と同じである5秒に設定されている。
このため、異なる2つのワークWに対する研削加工処理の音データが1つのデータブロックBに含まれてしまうのを防止できる。つまり、データブロックBが、連続する一対の研削加工処理期間P21のうちの一方の期間P21の音データを含む場合、他方の期間P21の音データを含むことがない。
これにより、異なる2つのワークWに対する研削加工処理について個別に異常判定処理を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態の研削加工装置2は、ワークWに対して研削加工処理を行う本体部15と、研削加工処理時にワークWに対して冷却液を供給するノズル9(供給部)と、ワークW、本体部15、及びノズル9を内部に収容するカバー2bと、を備えている。さらに、集音マイク10は、カバー2bの内部に配置されている。
これにより、音データは、カバー2bの内部に配置された集音マイク10の出力に基づくデータである。これにより、研削加工処理に関する音をより詳細に集音することができ、異常検知の精度の低下を効果的に抑制することができる。
【0062】
〔その他〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。
上記実施形態では、研削加工装置2の電源がオン状態のときの集音マイク10の出力に基づいて音データを取得した場合を例示したが、準備作業期間P1及び研削加工処理期間P21において集音された集音マイク10の出力から音データを取得すればよい。例えば、音データとして取得される集音マイク10の出力は、準備作業期間P1全部の出力を含んでいてもよいし、一部を含んでいてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、機械加工システム1が機械加工装置として研削加工装置2を備える構成とした。しかし、機械加工システム1は、旋盤や、フライス盤等の切削加工を行う装置を備える構成としてもよい。但し、研削加工では、工具がワークに接触したときの音量が切削等よりも小さいため、実加工期間と非加工期間との区別がより困難である。このため、機械加工システム1は、機械加工装置として研削加工装置を備えることが好ましい。
【0064】
また、上記実施形態では、集音マイク10からの出力から音データとして音圧を取得した場合を例示したが、音データとして音の周波数スペクトルを取得し、これを用いてもよい。
【0065】
また、上記実施形態のサンプリング間隔が、複数の研削加工処理期間P21のうち連続する一対の研削加工処理期間P21の間のインターバル期間P22と同じである5秒に設定された場合を例示したが、サンプリング間隔は、少なくとも、ワークW1つに対する研削加工処理に要する時間(研削加工処理期間P21)以下であればよい。
この場合、音データの異常の有無の判定の単位期間が研削加工処理期間P21以下となるので、研削加工処理における異常有無の判定精度を高めることができる。
なお、サンプリング間隔は、インターバル期間P22以下であることがより好ましい。上述のように、異なる2つのワークWに対する研削加工処理について個別に異常判定処理を行うことができるからである。
【0066】
本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 機械加工システム
2 研削加工装置
2b カバー
4 処理装置
9 ノズル
10 集音マイク
13 異常検知装置
14 処理部
14a 取得処理
14b サンプリング処理
14c 異常判定処理
15 本体部
W ワーク