(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026998
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】皮膚の嗅覚受容体の活性化を調節する芳香族生物活性物質を組み合わせたアロマセラピー用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240221BHJP
A61K 36/738 20060101ALI20240221BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240221BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240221BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20240221BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20240221BHJP
A23L 33/105 20160101ALN20240221BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61P43/00 101
A61P17/00
A61P43/00 111
A61K36/738
A61K36/185
A61Q17/04
A61Q17/00
A61P43/00 121
A61Q13/00 101
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129660
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】508103023
【氏名又は名称】株式会社エトヴォス
(71)【出願人】
【識別番号】522326204
【氏名又は名称】株式会社エル・ビー・エイチ
(71)【出願人】
【識別番号】520511907
【氏名又は名称】イノベーションラボ科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】尾川 ひふみ
(72)【発明者】
【氏名】杉中 靖子
(72)【発明者】
【氏名】岩田 有世
(72)【発明者】
【氏名】那須 みずほ
(72)【発明者】
【氏名】小島 みつこ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD48
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4C083AA031
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4C083BB01
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4C088NA14
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4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】皮膚微生物叢のバランスを調節し、皮膚の嗅覚受容体を活性化し、皮膚を汚染から保護し、皮膚障壁を維持するために使用されるアロマセラピー用組成物を提供する。
【解決手段】皮膚の嗅覚受容体を活性化するために局所的に使用されることを意図したアロマセラピー用組成物であって、天然発酵ロサ・ケンティフォリア花弁、サンタルム・アルバム樹皮およびリベス・ニグラム芽から生じる代謝産物の会合体を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の嗅覚受容体を活性化するために局所的に使用されることを意図したアロマセラピー用組成物であって、
ロサ・ケンティフォリア花弁、サンタルム・アルブム樹皮およびリベス・ニグラム芽の抽出物を組み合わせたものであり、ロサ・ケンティフォリア、サンタルム・アルブムおよびリベス・ニグラムの会合体は、自然発酵したものである、ことを特徴とするアロマセラピー用組成物。
【請求項2】
不揮発性生物活性物質は、最大90℃の沸点を有するように選択され、気中散布によって身体の皮膚の全面に作用するものであることを特徴とする、請求項1に記載のアロマセラピー用組成物。
【請求項3】
前記アロマセラピー用組成物は、皮膚における1型および3型コラーゲンの産生を増加させるために使用されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のアロマセラピー用組成物。
【請求項4】
前記アロマセラピー用組成物は、良好な皮膚の健康を維持し、皮膚の密度および厚さを増加させることによって皮膚バリアを維持するために使用されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のアロマセラピー用組成物。
【請求項5】
前記アロマセラピー用組成物は、汚染およびUV放射線から皮膚を保護するために使用されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のアロマセラピー用組成物。
【請求項6】
前記アロマセラピー用組成物は、循環メラトニンのレベルを調節することによって、循環エンドルフィンのレベルを調節し、循環コルチゾールレベルの調節によってストレスを減少させることによって、睡眠を改善することにより、メンタルヘルスを維持するために使用されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のアロマセラピー用組成物。
【請求項7】
前記アロマセラピー用組成物は、黄色ブドウ球菌表皮型、コリネバクテリア種、ブドウ球菌種、アクチノバクテリア種の皮膚微生物叢の共生細菌によって形成されるバイオフィルムを選択的に強化し、それらの増殖を容易にするように保護することによって、皮膚微生物叢の微生物多様性を維持するために使用されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のアロマセラピー用組成物。
【請求項8】
前記アロマセラピー用組成物は、組成物が精油、母チンキ、マセラート、エマルジョン、ゲル状であり、噴霧、霧化、穏やかな熱、微小拡散、超音波または通気口、香料、スプレー、吸入器によるディフューザー中での拡散または気相中での蒸発のために使用されるものであり、かつ液体、室内香料、香料、コロン、ロールオン、パッチ、ゲル、クリーム、ローション、フェースウォッシュ、エマルジョン、オイル、サンケア配合物、マスク、スプレー、エアロゾル、ワイプ、石?、シャンプー、コンディショナーに限定されることなく、その用途のために提供されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のアロマセラピー用組成物。
【請求項9】
内壁が0.3~20ミクロンの厚さを有する金ナノ粒子の層で覆われたステンレス鋼タンク中で、ロサ・ケンティフォリアの花弁、サンタルム・アルブムの樹皮およびリベス・ニグラムの芽を自然発酵させる少なくとも1つのステップと、
低温での分別蒸留によって生物活性物質を選択するステップと、
異なる抽出物を混合するステップと、
その混合液を1週間静置するステップとを含むことを特徴とする、請求項1に記載のアロマセラピー用組成物の製造方法。
【請求項10】
前記生物活性物質は、不揮発性であって、最大90℃の沸点を有するように選択され、気中散布によって身体の皮膚の全面に作用するものであることを特徴とする、請求項9に記載のアロマセラピー用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の嗅覚受容体を活性化することを意図したアロマセラピー用組成物に関する。より具体的には、この組成物は、ロサ・ケンティフォリア花弁、サンタルム・アルブム樹皮およびリベス・ニグラム芽の抽出物の混合物を含む。これらの抽出物は、自然発酵したものである。
【0002】
用語の定義
生物活性:生物学的効果を有する分子
【背景技術】
【0003】
コラーゲンは、繊維の形態で、特に真皮である皮膚層に存在するタンパク質であることが知られている。これは、我々の体内のタンパク質の30~40%に相当する。それは、時間連続的な分子変化を示す唯一のタンパク質であり、我々はそれを「老化」と言うことができる。ある年齢から、その産生、したがってその量は、組織内で年に約1%ずつ減少する。その結果、皮膚の弾性が失われ、しわが出現する。I型コラーゲンは、皮膚に抵抗性、弾性を与え、線維芽細胞によって合成される。これらの活性の5~15%は、このコラーゲンの産生に充てられている。
【0004】
コラーゲン断片化の増加も加齢と共に観察される。これは、特に、加齢によってマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の発現が増加することによるものである。これらのMMPは、生理的条件下での結合組織のリモデリングと同様に、細胞外マトリックスの再生に関与する蛋白質分解酵素群である。それらは、異なるコラーゲンを分解する能力を有する。あるものは線維芽細胞によっても合成される。
【0005】
いくつかの他の要因が、皮膚におけるコラーゲン貯蔵の破壊の原因である。実際、紫外線への暴露は、それらを産生する細胞のDNAの変形例またはフリーラジカルの産生のような種々の機構を通して、コラーゲンの量の著しい低下を引き起こす。実際、これらは酸素および窒素の代謝から生じる分子であり、体内にそれらが多すぎる場合、細胞は早期老化を誘発する酸化ストレスを受ける。さらに、他の要素は、タバコ、ストレス、または不十分な食事など、コラーゲンの量の減少の加速をもたらし得る。
【0006】
皮膚の最適なバリア効果を維持することは、とりわけ、皮膚を脱水、刺激および放射線から保護するために重要である。ケア製品を毎日皮膚に適用することで、老化にもかかわらず、ある程度の弾力性、柔らかさ、および再生成をできるだけ長く維持することができる。しわのような後者の有害な影響を回避するために、特にコラーゲンの分解を制限することが必須である。
【0007】
精油は、植物起源の原料から、物理的プロセス:水蒸気蒸留か、または柑橘類の外果皮の機械的プロセス、または乾式蒸留のいずれかによって水相を分離した後に得られる。要約すると、これらは、脂肪物質を含有しない、植物性物質に濃縮された液体である。嗅覚受容体は、嗅覚ニューロンが運ぶ線毛の膜に局在する膜タンパク質である。これらは嗅上皮に存在する。それらは、主に臭気分子を検出することが知られている。また、嗅覚以外の生理的細胞機能(胞遊走、走化性、セロトニン分泌の調節など)を調節できるさまざまな組織や細胞にも見出される。皮膚に存在するものもある。
【0008】
皮膚に対する臭気分子の利点は、いくつかの研究によって証明されている。実際、少なくとも5種類の嗅覚受容体が表皮に存在している。さらに、精油から臭気分子を吸入するいくつかの有益な効果が研究されている。精油の有益な効果は長い間研究されており、皮膚に対するそれらの利点は長い間知られている。精油の有益な効果を得るためには最小用量を使用しなければならないが、精油は刺激特性を有し、アレルギーを誘発する。
【0009】
ロサ・ケンティフォリア(西洋バラ)発酵中に産生される分子の嗅覚拡散を研究することによって、出願人は、皮膚の嗅覚受容体が、発酵プロセスを経た後、低温分別蒸留による選択ステップを経たロサ・ケンティフォリア花弁、サンタルム・アルブム樹皮およびリベス・ニグラム芽の抽出物の組成物による空気拡散によって、全体的かつ均一に活性化され得ることを全く予想外に発見した。この組成物は、低沸点を有し、少量で効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、空気拡散による皮膚嗅覚受容体への効果を提供することである。
【発明の効果】
【0012】
このため、本発明者は、天然発酵処理を受けたロサ・ケンティフォリア花弁、サンタルム・アルブム樹皮およびリベス・ニグラム芽のブレンドが1型および3型コラーゲンの産生、皮膚の健康の維持、皮膚バリア、ならびに皮膚の密度および厚さの増加に影響を及ぼすことを見出した。
【0013】
本発明者等は、また、上記ブレンドが皮膚をUV汚染およびUV放射線から保護し、皮膚微生物の多様性を維持することを発見した。皮膚に対する効果とは別に、本発明者等はまた、上記ブレンドが睡眠を改善し、メラトニンのレベルを調節し、そして循環セロトニンのレベルを調節することによって、精神的健康の維持に対する効果を有することを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願人は、以下、RSC組成物の研究中に観察された作用のメカニズムを記載する。以下の説明を明確にするために、本発明者等は、RSCを、ロサ・ケンティフォリア花弁、サンタルム・アルブム樹皮およびリベス・ニグラム芽の抽出物を組み合わせたアロマセラピー用組成物と呼ぶことにし、前記ロサ・ケンティフォリア、サンタルム・アルブムおよびリベス・ニグラムの会合体は、自然発酵したものである。
【0015】
本出願人は、ロサ・ケンティフォリア、サンタルム・アルブムおよびリベス・ニグラムの内生菌によって産生される代謝産物が皮膚に有益な効果を有することを発見した。このために、出願人は生産を最適化し、これらの代謝産物を採取することを意図した製造プロセスを開発した。
【0016】
組成物の芳香族生物活性物質が低沸点であるため、これらの化合物が皮膚上により容易に拡散し、皮膚の嗅覚受容体を活性化することが可能であり、有利である。嗅覚受容体に結合することができる芳香族分子は、低分子量を有する。嗅覚受容体は、ケラチノサイト(皮膚の最も外側の層を形成する細胞)にも存在することがあり、これらの受容体が活性化されると、これらの皮膚細胞の増殖速度や遊走速度が上昇する。出願人は、媒体中の精油の最低1%の濃度が皮膚細胞嗅覚受容体を活性化するために必要であることを発見した。しかしながら、この濃度では、精油がアレルギーおよび皮膚刺激を誘発し得る。
【0017】
発酵抽出物からの揮発性化合物の組み合わせは、全身にわたる嗅覚受容体を活性化することができる大気拡散による物性を実証した。大気拡散は、容易な投与モードであり、それは、刺激的であり得る溶媒の系統的な添加を必要とせずに、本発明を毎日および一日を通して使用することを可能にする。それはまた、均一な拡散のおかげで、少量の混合物の身体の単一の場所への適用のみを使用することによって嗅覚受容体に対する全体的な動作を可能にする。従って、本発明の目的は、嗅覚受容体を活性化するために気中散布経路に使用されるアロマセラピー用組成物に関する。
【0018】
真皮は、主に、皮膚の乾燥重量の90%を占める、コラーゲンなどの細胞外マトリックス(ECM)成分で構成される。皮膚線維芽細胞によって産生される皮膚コラーゲンは、皮膚の引張強度および機械的特性の原因である。1型および3型コラーゲンは、皮膚に最も多くみられるコラーゲンである。UV照射、酸化ストレス、汚染物質に晒されることによるコラーゲン含量の減少は、しわ、皮膚のたるみおよび皮膚の薄化のような老化の目に見える徴候をもたらす。
【0019】
本発明は、嗅覚受容体OR51B5を気中散布により活性化し、コラーゲン、とりわけコラーゲン1および3の産生を増加させる。従って、本発明は、皮膚における1型および3型コラーゲンの産生を増大させるために使用されることを特徴とするアロマセラピー用組成物である。
【0020】
皮膚は、身体と環境との間の主要で最も広範な表面である。これは、環境および化学的攻撃(病原体、化学物質、紫外線)に対する最初の障壁である。それはまた、水および電解質の動きを管理し、従って、身体および皮膚の下の器官の脱水を防止する。表皮バリアの役割は、表皮の最外層である角質層によって行われる。
【0021】
角質層は、扁平化された角質細胞の構造と、セラミド、コレステロールおよび遊離脂肪酸からなる脂質マトリックスとからなる。アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患は、表皮バリア機能(EBF)の機能障害を合併することがある。加齢、ストレス、寒さ、ホルモンの調節、過剰な洗浄は、表皮バリアに影響を及ぼし得る。
【0022】
実施例として、ストレスホルモンは、表皮脂質および構造タンパク質を減少させることによって表皮バリアに悪影響を及ぼし、その結果、角質層水和が減少し、表皮バリアの損失が増加し、その結果、経皮水分損失が増加し、水和が減少し、皮膚弾力性が減少する。出願人が実施した臨床試験において、参加者は、RSCを4週間使用すると、しわの減少、皮膚の硬さの改善、皮膚の粗さの減少、皮膚のたるみの減少、皮膚の厚さの増加という性質があることに気づいたと報告した。
【0023】
従って、本発明は、皮膚の密度および厚さを増加させることによって、皮膚の良好な健康の維持および皮膚バリアの維持のために使用されることを特徴とするアロマセラピー用組成物として記載される。
【0024】
皮膚を汚染および紫外線に晒すことは、皮膚の健康に有害な影響を及ぼす。多環式芳香族炭化水素(PAH)、揮発性有機化合物(VOC)、酸化物、粒子状物質、オゾンおよびタバコの煙などの大気汚染物質は、酸化的損傷を介して、脂質の正常な機能の妨害、ヒト皮膚のDNAおよびタンパク質への損傷を引き起こし得る。空気中の汚染物質への皮膚曝露は、皮膚の老化、およびアトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬または?瘡などの炎症性またはアレルギー性皮膚状態と関連している。
【0025】
人間の皮膚に対する紫外線の影響は、波長によって異なる。主に紫外線照射は、DNAに直接損傷を引き起こすことにより、遺伝子変化のほか、免疫抑制を引き起こす可能性がある。紫外線照射は、炎症性サイトカインの放出増加を介して酸化ストレスを増加させ、次いで活性酸素種(ROS)を生成することにより、脂質蛋白質およびDNAに損傷を引き起こす。
【0026】
UVA放射線は、表皮の基底層に深く浸透し、早期の皮膚老化に関係する。
【0027】
PAHのような汚染物質と組み合わせたUVAが皮膚の可視光損傷を増加させることを示す証拠が増加している。
【0028】
組成物RSCは、抗酸化酵素SOD、GPXおよびγ-GCSの遺伝子発現を活性化することによって皮膚細胞を守る。これらの内因性酵素は、活性酸素種を分解することによって酸化ストレスを減少させる。
【0029】
UV放射線への暴露は、皮膚のタンパク質に損傷を引き起こす。
【0030】
UV放射線は、コラーゲンなどの皮膚の構造を構成するタンパク質の損傷を引き起こす。UV照射への暴露は、二次構造の変化、アンフォールディングおよび凝集を引き起こし、従って、タンパク質の正常な機能を変化させるか、または細胞の死を引き起こす。UV照射は、また、皮膚中のコラーゲンを分解する酵素であるマトリックスメタロプロテイナーゼの発現の増加を引き起こす。これにより、皮膚の老化が促進される。実際、UV放射線は、しわ、乾燥した皮膚、弾性の喪失など、皮膚の老化の目に見える徴候の80%を占める可能性がある。細胞内には、プロテアソームなど損傷を受けたタンパク質を除去する機構がある。プロテアソームは、プロテアーゼと呼ばれる酵素の複合体で、タンパク質分解によって損傷を受けたタンパク質を除去することができる。
【0031】
本発明は、プロテアソームの活性化によって皮膚損傷タンパク質を除去することによって皮膚組織を保護する。RSCはまた、コラゲナーゼ(MMP-1)、ストロメリシン1(MMP-3)およびストロメリシン2(MMP‐10)などのMMP遺伝子発現を阻害する。従って、本発明は、汚染および放射線から皮膚を保護するに使用することを特徴とするアロマセラピー用組成物として記載される。
【0032】
気分およびメンタルヘルスは、神経伝達物質の複合体によって調節される。
【0033】
メラトニンは、しばしば睡眠ホルモンと呼ばれ、時間生物学的リズムを調節する中枢ホルモンである。それは主に夜に合成される。ヒトやすべての哺乳類において、多くのホルモン分泌を調節する。この神経ホルモンは、神経伝達物質であり、自体がトリプトファンから派生するセロトニンから合成される。概日リズムの再同期化は、睡眠の質および身体の全体的な良好な健康に影響を及ぼし、特に酸化ストレスおよび炎症と闘うのに役立つ。
【0034】
コルチゾールは、ストレスエピソードの間に上昇するストレスホルモンレベルである。コルチゾールの過剰分泌、すなわちクッシング症候群の患者はしばしば抑うつ気分を呈し、コルチゾールの上昇を治療すると正常化する。エンドルフィンは、ストレスや痛みのエピソードに対処するために神経系が産生する化学分子である。研究により、うつ病の間の恒常性および行動過程の調節におけるエンドルフィンの役割が示されている。メラトニン、コルチゾールおよびエンドルフィンは、主に神経系によって産生されるが、皮膚でも産生される。出願人によって実施された臨床研究において、100ppmのRSCを含有する製剤の適用は、コルチゾールの減少、睡眠の改善、メラトニンレベルの調節、およびエンドルフィン産生の増加をもたらした。
【0035】
従って、本発明は、循環メラトニンのレベルを調節すること、循環エンドルフィンのレベルを調節すること、および循環コルチゾールレベルの調節によりストレスを減少させることによって、睡眠を改善することによる、メンタルヘルスを維持するために使用されることを特徴とするアロマセラピー用組成物として記載される。
【0036】
細菌叢とも呼ばれる微生物叢は、宿主内の微生物と呼ばれる、特定の環境に生息する細菌、酵母、真菌またはウイルスを含む微生物の集合である。特に、ヒトには多くの微生物叢が存在し、その中でも腸内微生物叢と皮膚微生物叢に注目することができる。
【0037】
しかしながら、微生物叢は、抗生物質治療を受けることによるなど、環境または生活様式の突然の変化によって不均衡になり得る。微生物叢のバランスが崩れるとき、それは代謝異常症と呼ばれる。代謝異常症は、乾癬および酒さ、皮膚炎などの炎症、黒皮症およびアレルギー性発疹、ならびに尋常性ざ瘡の発症につながる可能性がある。皮膚微生物叢は皮膚の生理と免疫において重要な役割を果たしている。
【0038】
皮膚微生物の機能には、病原体に対する直接的な宿主防御、炎症の制御、適応免疫経路の解明などがある。クオラムセンシングは、この集団の密度に依存して細菌集団中のある遺伝子の発現を調節する同期機構に相当する。分子シグナルとして働く微生物によって産生される自己誘導分子の存在を検出することによって、各微生物は、それ自体の種または他の種の集団密度を知る。
【0039】
次いで、これらの微生物は、それらの集団を調節するために、それらの挙動を適応させる。特に、十分な量のクオラム微生物を検出する場合、それらの増殖を増加させることができる。RSCは特定の病原微生物のクオラム検出を破壊し、これにより皮膚および腸内微生物叢におけるバイオフィルムの製造およびそれらの増殖が制限される。特にRSCは、表皮ブドウ球菌、コリネバクテリウム属、ブドウ球菌属、アクチノバクテリア属に作用する。RSCは、これらの細菌の増殖および再生成を促進する。
【0040】
拡散によるその使用により、RSCは、最初に、皮膚に接触し、次いで体内で、周囲の空気を浄化する効果を有する空気中でのこれらの病原性物質の増殖を阻害する。RSCは、病原菌のバイオフィルムの非発生を促進することにより、感染外観のリスクを低下させるため、その生態系を破壊し、それらの通信を阻害する。
【0041】
RSC種類組成物は、カンジダ症、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、大腸菌、連鎖球菌ピクノ遺伝子、ストレプトコカス表皮およびプロピオンアクネ型の病原性微生物によって形成されるクオラムの検出の乱れによって、バイオフィルムの形成を選択的に減少させること、及び皮膚と周囲の空気の両方における繁殖を阻害することによって、真菌種類および病原性細菌の感染から宿主を保護するために特徴付けられるアロマセラピー用組成物であると記載される。
【0042】
従って、本発明は、皮膚微生物叢の微生物多様性を維持するに使用されることを特徴とするアロマセラピー用組成物として記載されている。
【0043】
RSC会合を含有するアロマセラピー用組成物は、精油、マザーチンキ、マセラート、エマルジョン、ゲルの形成であり、噴霧、噴霧、穏やかな熱、微小拡散、超音波または通気口、香料、スプレー、吸入器によるディフューザー中での拡散または気相中での蒸発によるその使用のために、および部屋の芳香、香水、コロン、ロールオン、パッチ、ゲル、クリーム、ローション、フェースウォッシュ、エマルジョン、オイル、サンケア配合物、マスク、スプレー、エアロゾル、拭き取り用品、石けん、シャンプー、コンディショナーに限定されることなく、この用途のために提供することができる。
【0044】
これらの配合物は、以下の成分のうちの1つを含有するが、これに限定されない:水、多価アルコール、界面活性剤、類似物質、スフィンゴ脂質、ワックス、オイル、高級脂肪酸、低級アルコール、高級アルコール、増粘剤、酸化防止剤、キレート化剤、保存剤、保湿剤、アミノ酸、植物エキス、ビタミン、pH調整剤、白化剤、抗炎症剤、しわ防止剤、紫外線吸収剤、紫外線反射剤、顔料、着色剤、髪の毛の静電気発生の抑制、無機塩、ポリグリセリル-10ペンタステアレート、レシチン、水素化レシチン、ポリグリセリル-6ラウレート、セテアリルグルコシド、PEG-100ステアレート、セラミドAG、セラミドAP、セラミドAS、セラミドNG、セラミドNP、セラミドNS、セラミド6II、セラミドEOP、セラミドEOS、グルコシルセラミドスフィンゴ脂質、コレステロール、フィトステロール、パッションフルーツ種油、ツバキ種油、アルガニア・スピノーザ核油、ベタイン、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、シロキクラゲ多糖類、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-61、トレハロース、グリコシルトレハロース、バイオサッカリドガイドガム-1、カルシウムホスホリルオリゴ糖、加水分解デンプン、アルファグルカン酸、グルクロン酸、グルコース、プラヌス・アルメニアカ(アプリコット)果実エキス、ファセオトガリス種子エキス、メリッサオフィシナリスの葉のエキス、ローザ・センティフォリア花エキス、センテラ・アシアティカスエキス、ラベンダーストエカスエキス、コガネバナ根エキス、ユキノシタ属サルメントサエキス、アラリア・エスクリンタエキス、ベリス・ペレニス(デイジー)花エキス、モラス・アルバ・ルートエキス、シトラス・ノビリス(マンダリンオレンジ)ピールエキス、カモミールレクティタ(マトリカリア)花エキス、ドクダミエキス、ナツメフルーツエキス、ローズマリー(ローズマリー)葉エキス、マルスドメスティカフルーツ細胞培養エキス、アルテロモナス発酵エキス、アルガニアスピノサカルス培養エキス、アルビジアジュリブリッシン樹皮エキス、シトラスレティキュラータ(タンジェリン)ピールエキス、ウメフルーツエキス、ラクトバチルス/セイヨウナシ果実発酵液、セイヨウオオバコ種エキス、コモンタイム(タイム)エキス、加水分解セイヨウスモモ、オニマタタビ(キウイ)フルーツエキス、グリチルリザ・グラブラ(リコリス)根エキス、ロサ・ロクスブルギイ果実エキス、ソラヌム・メロンゲナ(なす)果実エキス、ヒナゲシエキス、パンテノール、3-ラウリルグリセリルアスコルビン酸、アスコルビン酸マグネシウム、アルファアルブチン、トラネキサム酸、アスコルビルグルコシド、アスコルビルテトライソパルミテート、3-O-エチルアスコルビン酸、コウジ酸、アスコルビルリン酸ナトリウム、胎盤タンパク質、胎盤エキス、レチノール、パルミチン酸レチニル、ニコチン酸および誘導体
【0045】
本発明の製造工程は、いくつかの段階で行われる。ロサ・ケンティフォリア花弁、サンタルム・アルブム樹皮およびリベス・ニグラム芽は、好ましくは生物力学的プランテーション(すなわち、農薬および肥料などの化学物質を使用せず、植物の自然のリズムを尊重するプランテーション)から収穫される。収穫後、植物は、フランス特許第2104168号に記載されているように、内壁が金ナノ粒子の層で覆われているステンレス鋼タンクを用いて自然発酵される。
【0046】
このために、有機材料(花弁、樹皮、および芽)は、それぞれ、ステンレス鋼タンク内に配置され、その内壁は、0.3~20ミクロンの厚さを有する金ナノ粒子の層で覆われ、30℃~40℃、好ましくは37℃の温度で、少なくとも1日間、好ましくは3日間、発酵させられる。自然発酵の間、細菌は添加されず、有機材料は、植物上に生息する細菌によって発酵される。上記の発酵プロセスは、ペプチド、多糖類、アミノ酸、ビタミンのような、低分子量で低沸点の代謝産物である種々の生物活性物質を産生する。
【0047】
発酵工程の後、バイオ活性物質は、低沸点およびより精密に最大90℃の沸点を有する揮発性分子を好ましく選択することを可能にする低温での分別蒸留工程によって選択される。低沸点は、分子の高い揮発性を可能にし、そのようなものは容易な空気拡散を可能にする。
【0048】
最後のステップは、ロサ・ケンティフォリア花弁、サンタルム・アルブムおよびリベス・ニグラムの発酵抽出物を混合し、壁が金ナノ粒子で覆われた容器中に1週間静置し、金粒子との相互作用により揮発性分子を安定化させる休止ステップである。
【実施例0049】
ここで、本出願人は実施例として、これらの天然物質ならびに組成物を選択することができるようにした研究を提供するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。